JP2013221608A - 油圧制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】シールリングの近傍に堆積する異物を排出することのできる油圧制御装置を提供する。
【解決手段】回転軸に形成された第1油路を介して回転軸と相対回転可能に設けられた油圧室に油圧を供給し、かつ、回転軸と油圧室との間の隙間を、回転軸に形成された凹部に嵌め込まれたシール部材に油圧を供給して凹部における内壁面のうち回転軸の軸線方向で第1油路とは反対側の内壁面にシール部材を押し付けることによりシールするように構成されている油圧制御装置において、回転軸における凹部を挟んで第1油路とは反対側に設けられた第2油路と、第2油路における油圧を油圧室における油圧よりも高くし(ステップS2)、その後に第2油路における油圧を油圧室における油圧よりも低くする手段(ステップS3)とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】回転軸に形成された第1油路を介して回転軸と相対回転可能に設けられた油圧室に油圧を供給し、かつ、回転軸と油圧室との間の隙間を、回転軸に形成された凹部に嵌め込まれたシール部材に油圧を供給して凹部における内壁面のうち回転軸の軸線方向で第1油路とは反対側の内壁面にシール部材を押し付けることによりシールするように構成されている油圧制御装置において、回転軸における凹部を挟んで第1油路とは反対側に設けられた第2油路と、第2油路における油圧を油圧室における油圧よりも高くし(ステップS2)、その後に第2油路における油圧を油圧室における油圧よりも低くする手段(ステップS3)とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
この発明は、油圧供給部に対して供給する油圧を制御する装置に関するものである。
機械装置類を作動させるための油圧の一部を相互に荷重を与えあって接触する部分や摺動する部分などに供給して潤滑や冷却を行うことは広く知られている。例えば特許文献1には、変速機のケーシングと、ケーシングに対して相対回転するクラッチドラムとの間の隙間をシールリングによってシールし、かつ、そのシールリングをクラッチの油圧室に供給する油圧によって潤滑するように構成された変速機の回転体支持構造が記載されている。より具体的に説明すると、上述したシールリングはケーシングに一体のスリーブの外周面に形成された溝部に嵌め込まれている。そして、その溝部に上記の隙間を介してクラッチの油圧室に供給する油圧が浸入して溝部における内壁面のうち、クラッチの油圧室に連通されている側とは反対側の壁面に、シールリングが押し付けられることにより上記の隙間がシールされるように構成されている。この溝部における内壁面のうち、クラッチの油圧室に連通されている側を、以下、内側と称する。一方、シールリングが押し付けられる側には、ケーシングとスリーブとの間に形成された油路を介してクラッチの油圧室に供給する油圧の一部が供給されるように構成されている。このシールリングが押し付けられる側を、以下、外側と称する。なお、上記のシールリングの外側はケーシングの内部の解放されている。このように特許文献1に記載された構成では、上述した油圧室に油圧を供給する場合、その油圧の一部を上述したシールリングに絶えず供給することになる。そのため、特許文献1に記載された発明によれば、シールリングの近傍に滞留する劣化したオイルや堆積する摩耗粉などの不純物、すなわち異物を洗い流すことができるので、シールリングが異物によって損傷することを防止もしくは抑制することができる、とされている。
なお、特許文献2には、変速機のケーシングの一部であって非回転部材である第1部材と、第1部材の外周側に変速機の回転軸と同軸上に設けられた回転部材である第2部材との間に、シールリングを設けた装置が記載されている。シールリングは第1部材に形成された凹溝に嵌め込まれるとともに、第2部材と一体的に回転するようになっている。そして、第1部材に形成された油路から第2部材に形成された油路に油圧を供給する場合、その油圧の一部が上記の凹溝に浸入してシールリングを潤滑するように構成されている。
上述した特許文献1に記載された構成では、シールリングの外側に堆積する異物をオイルによって洗い流すことができるものの、溝部におけるオイルは上記の外側のオイルのように入れ替わらないために、シールリングの内側に堆積する異物を洗い流すことができない虞がある。また、特許文献1に記載された構成では、シールリングの外側はケーシング内に解放されているため、上述したようにシールリングの外側に油圧を供給する場合、その油圧がケーシング内に漏れ出てしまい、油圧室の油圧に不足を生じる虞がある。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、シールリングにおける油路側に堆積する異物を排出することのできる油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、回転軸に形成された第1油路を介して前記回転軸と相対回転可能に設けられた油圧室に油圧を供給し、かつ、前記回転軸と前記油圧室との間の隙間を、前記回転軸に形成された凹部に嵌め込まれたシール部材に前記油圧を供給して前記凹部における内壁面のうち前記回転軸の軸線方向で前記第1油路とは反対側の内壁面に前記シール部材を押し付けることによりシールするように構成されている油圧制御装置において、前記回転軸における前記凹部を挟んで前記第1油路とは反対側に設けられた第2油路と、前記第2油路における油圧を前記油圧室における油圧よりも高くし、その後に前記第2油路における油圧を前記油圧室における油圧よりも低くする手段とを備えることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記手段は、前記シール部材の近傍に滞留する異物が予め定めた量を超えたことが判断される場合に前記第2油路における油圧を前記油圧室における油圧よりも高くするように構成されていることを特徴とする油圧制御装置である。
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記第2油路における油圧を前記油圧室における油圧よりも高くし、その後に前記第2油路における油圧を前記油圧室における油圧よりも低くしている場合に、前記油圧室における油圧を増大するように構成されていることを特徴とする油圧制御装置である。
請求項4の発明は、請求項1または2の発明において、前記回転軸における前記第2油路を挟んで前記凹部とは反対側にシール部が設けられていることを特徴とする油圧制御装置である。
請求項1の発明によれば、第2油路の油圧を増大させた場合、第2油路側から第1油路側に作用する油圧によって、シール部材は回転軸の軸線方向で凹部における第1油路側に移動させられ、かつ、凹部における内壁面のうち回転軸の軸線方向で第1油路側の内壁面に押し付けられて回転軸と油圧室との間の隙間をシールする。そしてその後に、第2油路の油圧を低下させた場合、第1油路側から第2油路側に作用する油圧によって、シール部材は回転軸の軸線方向で凹部における第2油路側に移動させられ、かつ、凹部における内壁面のうち回転軸の軸線方向で第2油路側の内壁面に押し付けられて回転軸と油圧室との間の隙間をシールする。このようにしてシール部材が凹部における第1油路側から第2油路側に移動する過渡状態において、回転軸と油圧室との間に隙間が形成された場合、その隙間を通じて凹部に滞留した劣化したオイルや堆積した摩耗粉などの異物を第1油路側のオイルとともに第2油路側に排出することができる。その結果、上述したような異物がシール部や回転軸および油圧室を摩耗させる要因となったり、これらの部材の耐久性を損なう要因となるなどのことを防止もしくは抑制することができる。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明による効果と同様の効果に加えて、異物の堆積量が予め定めた量を超えたと判断される場合には上述したようにして第2油路に排出することができる。
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明による効果と同様の効果に加えて、第2油路の油圧を低下させた場合、第1油路を介して油圧室に供給する油圧を増大させるため、上述した油圧の漏洩によって油圧室の油圧が低下することを防止もしくは抑制することができる。すなわち、油圧に不足が生じることによる動作不良を防止もしくは抑制することができる。
請求項4の発明によれば、請求項1または2の発明による効果と同様の効果に加えて、他のシール部が設けられているので、第2油路の油密状態を保つことができる。
つぎにこの発明を具体的に説明する。図8に、この発明に係る油圧制御装置を適用することができる車両の一例を模式的に示してある。駆動力源1は、ガソリンエンジンなどの内燃機関や電動機もしくはこれら内燃機関と電動機とを組み合わせたいわゆるハイブリッド式のものであってよい。以下の説明では駆動力源1をエンジン1と記す。
エンジン1の出力側にトルクコンバータ2が連結されている。このトルクコンバータ2は、従来知られているものと同様の構成のものであって、入力側の要素と出力側の要素とを直接的に連結する直結クラッチ3を備えている。このトルクコンバータ2に続けて前後進切替機構4が配置されている。この前後進切替機構4は、要は、入力されたトルクをそのまま出力し、またトルクの作用方向を反転して出力できる任意の構成のものであればよい。前後進切替機構4は、図8に示す例では、ダブルピニオン型遊星歯車機構を主体として構成されている。すなわち、トルクコンバータ2の出力要素に連結されたサンギヤ5と同心円上に、内歯歯車であるリングギヤ6が配置されており、これらサンギヤ5とリングギヤ6との間に、サンギヤ5に噛み合っているピニオンギヤ7と、そのピニオンギヤ7およびリングギヤ6に噛み合っている他のピニオンギヤ8とが配置されており、これらのピニオンギヤ7,8がキャリヤ9によって自転および公転できるように保持されている。
サンギヤ5に入力されたトルクの作用方向を反転せずにそのまま出力する前進状態を設定するためのクラッチC1が設けられている。このクラッチC1は、要は、上記のダブルピニオン型遊星歯車機構におけるいずれか二つの要素を連結して遊星歯車機構の全体を一体化して回転させるように構成されたクラッチであり、図8に示す例では、サンギヤ5とキャリヤ9とを選択的に連結するように構成されている。このクラッチC1は、具体的には、湿式の多板クラッチによって構成することができ、したがって複数の摩擦板およびプレートとそれらを密着させるための油圧室とを備えている。クラッチC1およびその油圧室に油圧を給排する構成については後述する。
また、サンギヤ5に入力されたトルクの方向を反転して出力する後進状態を設定するためのブレーキB1が設けられている。このブレーキB1は、図8に示す例では、リングギヤ6を後述する無段変速機のケーシングなどの固定部10に選択的に連結してリングギヤ6に反力を与えてその回転を止めるように構成されている。また、このブレーキB1は、具体的には、湿式の多板クラッチによって構成することができ、詳細は図示しないが、複数の摩擦板およびプレートとそれらを密着させるための油圧アクチュエータとを備えている。したがって、図8に示す例では、サンギヤ5が入力要素、リングギヤ6が反力要素、キャリヤ9が出力要素となっている。クラッチC1が係合してサンギヤ5とキャリヤ9とが連結されることにより、遊星歯車機構の全体が一体となって回転し、サンギヤ5およびキャリヤ9に入力されたトルクがそのまま出力されて前進状態が設定される。またクラッチC1に替えてブレーキB1が係合することによりリングギヤ6が固定されると、サンギヤ5に対してキャリヤ9が反対方向に回転する。そのため、入力されたトルクとは反対方向に作用するトルクが出力され、後進状態が設定される。
上記の前後進切替機構4の出力側にベルト式無段変速機11が連結されている。このベルト式無段変速機11は、従来知られているものと同様の構成のものであって、一対のプーリ12,13を備え、各プーリ12,13は、それぞれ固定シーブと、これに対向して配置された可動シーブとを備えている。そして、それらの固定シーブと可動シーブとによって形成されるV溝にベルト14が巻き掛けられている。一方のプーリ12が駆動側のプーリであって、このプライマリプーリ12が上述した前後進切替機構4におけるキャリヤ9に連結されている。以下、これをプライマリプーリと称する。またプライマリプーリ12における可動シーブの背面側に油圧室15が設けられている。油圧室15は、可動シーブの背面と、後述するベルト式無段変速機11のケーシングと一体のスリーブの外周側に設けられたドラムの内側の面とによって形成されており、その油圧室15に供給する油圧を高くし、あるいはオイルの量を増大させることによりV溝の幅が狭くなってベルト14の巻き掛け半径が増大するように構成されている。すなわち、図8に示す例では、プライマリプーリ12の油圧あるいは圧油の量を制御することにより、変速比を変化させるように構成されている。
また、他方のプーリ13が従動側のプーリであってその可動シーブの背面側に油圧室16が設けられており、その油圧室16に供給する油圧によって、ベルト14を挟み付けて所定の伝達トルク容量を設定する挟圧力を生じさせるように構成されている。以下、これをセカンダリプーリと称する。そして、このセカンダリプーリ13のプーリ軸17が、カウンタギヤユニット18を介してデファレンシャル19に連結され、そのデファレンシャル19から図示しない左右の駆動輪に動力を分配して伝達するように構成されている。
上記の直結クラッチ3やクラッチC1およびブレーキB1ならびに無段変速機11などは油圧によって作動されるように構成されており、その制御のための油圧制御装置20が設けられている。この油圧制御装置20について簡単に説明すると、油圧制御装置20は例えば電気的に制御される複数の電磁弁を備え、それらの電磁弁のオン・オフの状態に応じて出力される油圧によって上記の直結クラッチ3やクラッチC1あるいはブレーキB1を係合もしくは解放させ、また無段変速機11で設定する変速比を変化させ、あるいはベルト挟圧力を高低に変化させるように構成されている。
さらに、油圧制御装置20に対して指令信号を出力することにより、すなわち例えば変速比やベルト挟圧力を制御し、またクラッチC1やブレーキB1に対する油圧の給排を制御する電子制御装置(ECU)21が設けられている。このECU21はマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータや予め記憶しているデータに基づいて演算を行って制御指令信号を出力するように構成されている。また、このECU21はエンジン1の出力をも制御するように構成されており、したがってECU21からエンジン1に対して制御指令信号が出力されるように構成されている。
図9に、上述したクラッチC1の一例を模式的に示してあり、無段変速機11の入力軸22に環状のクラッチドラム23が一体的に取り付けられている。クラッチドラム23は、図9に示す例では、円盤状の底部23aと、その両端部に環状に形成された環状部23bと、その環状部23bにおける外周側の部分よりも変速機入力軸22の半径方向で外側に形成された円筒状の円筒部23cとを有している。環状部23bにおける内周側の部分には後述する油圧室に油圧を供給するための油孔24が形成されており、その油孔24は後述するオイルポンプのポンプカバー25と一体の固定軸に形成された油路26に連通されている。
環状部23bの内側に環状の油圧ピストン27が変速機入力軸22の軸線方向に移動可能に設けられている。油圧ピストン27の底部27aにおけるクラッチドラム23側の面と、クラッチドラム23の円盤状の部分23aにおける油圧ピストン27側の面とが対向している。また、油圧ピストン27の外周面と環状部23bの内周面とが対向している。さらに、油圧ピストン27の外周面にはその全周に亘って大径の溝部27bと小径の溝部27cとが形成されており、それらの溝部27b,27cにシールリング28,29がそれぞれ嵌め込まれている。これらのシールリング28,29によって環状部23bと油圧ピストン27との間の隙間がシールされるようになっている。
このようにしてクラッチドラム23と油圧ピストン27との間に形成される空間が油圧室30となっており、この油圧室30に伝達トルク容量に応じた油圧を上述した油路26および油孔24を介して供給するように構成されている。そして油圧室30の油圧を増大させることにより発生させた推力によって油圧ピストン27を軸線方向、すなわち図9での左側に移動させてクラッチC1を係合するように構成されている。なお、油圧室30に対して油圧を供給するための構成については後述する。
油圧ピストン27の内側には、上述した推力に抗して油圧ピストン27を変速機入力軸22の軸線方向に移動させるリターンスプリング31が設けられている。すなわち、リターンスプリング31の弾性力はクラッチC1を解放させるように作用する。リターンスプリング31の一方の端部は底部27aに取り付けられ、他方の端部は円環状のリテーナ32に取り付けられている。このリテーナ32の内周縁はクラッチドラム23の環状部23bに嵌め込まれ、またスナップリング33によって抜け止めされている。一方、リテーナ32の外周縁は油圧ピストン27の内周面に接触している。その外周縁には溝32aが形成され、その溝32aに嵌め込まれたシールリング34によってリテーナ32と油圧ピストン27との間の隙間がシールされている。
上述した円筒部23cの内側に複数のプレート35が変速機入力軸22の軸線方向に移動可能にスプライン嵌合されるとともに、円筒部23cの端部に取り付けられたスナップリング36によって抜け止めされている。各プレート35に押し付けられる複数の摩擦板37が上述したキャリヤ9に一体のハブ38にスプライン嵌合されている。またハブ38にはオイルガイド39が取り付けられており、変速機入力軸22の半径方向でクラッチドラム23の内側に形成された貫孔40から供給されたオイルをキャリヤ9に案内するように構成されている。また、各プレート35および摩擦板37は、図9に示すように、軸線方向に交互に配置され、またスナップリング36とは反対側に取り付けられた皿バネ41によって予め定めた圧力によって相互に押し付けられている。
このようにして構成されるクラッチC1の動作について簡単に説明する。上述した油圧室30における油圧を増大して推力を発生させ、その推力がリターンスプリング31の弾性力よりも大きくなると、油圧ピストン27はリターンスプリング31を圧縮しつつ、図9での左側に移動する。そして、油圧ピストン27がプレート35と摩擦板37とを相互に押し付けることによりクラッチC1が係合する。これとは反対に、例えば油圧室30をドレーン箇所に連通させることによりその油圧を低下させて推力を減少させ、リターンスプリング31の弾性力が上記の推力よりも大きくなると、油圧ピストン27は弾性力によって図9での右側に移動する。このようにして油圧ピストン27の推力がプレート35と摩擦板37とに作用しなくなると、クラッチC1が解放される。
また、図9に示すように、油路26を挟んで両側に形成された凹部42,43にシールリング44,45がそれぞれ嵌め込まれ、クラッチドラム23とポンプカバー25との間の隙間を各シールリング44,45によってシールすることにより上記の隙間から油路26に供給した油圧が漏洩しないようになっている。
また図9に示すシールリング44,45の近傍に堆積する異物を排出する例について説明する。図4に示すように、各シールリング44,45における油路26側とは反対側に、具体的には、クラッチドラム23とポンプカバー25との間の隙間における大気に解放されている変速機のケーシングの内部に連通する側に、異物排出油路46,47がそれぞれ形成されている。各異物排出油路46,47には後述する電気的に制御することのできる電磁弁が設けられており、その電磁弁を電気的に制御することにより、各異物排出油路46,47における油圧を増大もしくは減少するように構成されている。以下の説明では、上述した隙間のうち、油路26とシールリング44との間の隙間を隙間48と記し、油路26とシールリング45との間の隙間を隙間49と記す。また、上述した隙間のうち、異物排出油路46とシールリング44との間の隙間を隙間50と記し、異物排出油路47とシールリング45との間の隙間を隙間51と記す。なお、油路26がこの発明における第1油路に相当し、凹部が42,43がこの発明における凹部に相当し、各シールリング44,45がこの発明におけるシール部材に相当し、異物排出油路46,47がこの発明における第2油路に相当している。また、上記の異物排出油路46,47に油圧を給排する電磁弁がこの発明における「第2油路における油圧を前記油圧室における油圧よりも相対的に高くし、その後に、第2油路における油圧を油圧室における油圧よりも相対的に低くする手段」に相当している。
また図4に示すように、各異物排出油路46,47における油路26側とは反対側にシール部52,53がそれぞれ構成されている。これらのシール部52,53は、図4に示す例では、相対回転するクラッチドラム23とポンプカバー25との間に形成される隙間の距離あるいは幅を、例えばこれらの部材同士が互いに干渉しない程度の距離あるいは幅のうち可能な限り短い距離あるいは幅に形成されている。
また、油圧制御装置20は、例えば電動機により駆動されてオイルパンからオイルを汲み上げて吐出するオイルポンプ54を有している。オイルポンプ54が発生させる油圧は、無段変速機11で必要とする最大油圧あるいはそれよりも高い油圧であり、その油圧が調圧弁であるプライマリレギュレータバルブ55によって無段変速機11やクラッチC1あるいはブレーキB1などを制御するのための元圧であるライン圧に調圧されるように構成されている。そしてこのプライマリレギュレータバルブ55によって減圧した油圧が、上述した直結クラッチ3に対する油圧の供給を制御するためのロックアップコントロールバルブ(図示せず)や、無段変速機11における、相互に摩擦接触する箇所や軸受などのいわゆる摺動部分あるいは発熱する部分に供給されるようになっている。
一方、図4に示す例では、オイルポンプ54とクラッチC1の油圧室30とを連通する油路26に、供給側電磁開閉弁56が設けられ、この供給側電磁開閉弁56を電気的に制御して油路26を開閉することにより、クラッチC1に対して伝達トルク容量に応じて設定した油圧を供給し、また油圧の供給を遮断するように構成されている。また詳細は図示しないが、クラッチC1から油圧をドレイン箇所に排出する排出油路が設けられており、その排出油路には、排出側電磁開閉弁が設けられている。そしてこの排出側電磁開閉弁を電気的に制御して排出油路を開閉することにより、クラッチC1の油圧をドレイン箇所に排出し、また油圧の排出を遮断するように構成されている。
他方、オイルポンプ54と各異物排出油路46,47とを連通する油路57に、電気的に制御される切替弁58が設けられ、この切替弁58を電気的に制御して各異物排出油路46,47をオイルポンプ54あるいはドレイン箇所に選択的に連通するようになっている。図4に示す切替弁58は、いわゆる常閉型の電磁弁であって、従来知られている電磁三方弁によって構成されている。具体的には、この切替弁58は、オイルポンプ54が連通されるポート58aと、ポート58aに選択的に連通されるポート58bと、ポート58bに選択的に連通されるポート58cとを備えている。ポート58bは油路57に連通されており、ポート58cはドレイン箇所に連通されている。また、ポート58aとポート58bとの間、および、ポート58bとポート58cとの間を連通もしくは遮断するスプール(図示せず)と、そのスプールが予め定めた方向に移動するように弾性力を付与するスプリング58dと、通電されることによりスプールに対してスプリングの弾性力に抗する力を付与する電磁コイル部58eとを有している。
この切替弁58の作用について簡単に説明すると、図4に示す例では、切替弁58は、電磁コイル部58eに通電しないOFF状態では、スプールはスプリング58dからの弾性力によって、ポート58aとポート58bとの間を遮断しかつポート58bとポート58cとの間を連通する状態を設定する位置に移動する。すなわち、図4に符号Aで示す状態となって、各異物排出油路46,47とドレイン箇所とが連通されるようになっている。これとは反対に、電磁コイル部58eに通電するON状態では、スプールはスプリング58dからの弾性力に抗してそれを上回る電磁力による吸引力を受けて、ポート58aとポート58bとの間を連通しかつポート58bとポート58cとの間を遮断する状態を設定する位置に移動する。すなわち、図4に符号Bで示す状態となって、オイルポンプ54と各異物排出油路46,47とが連通され、元圧であるライン圧が各異物排出油路46,47に供給されるようになっている。
この発明に係る油圧制御装置では、油路26における各シールリング44,45の近傍に堆積した異物を、上記の異物排出油路46,47に排出することができるように、以下の制御を実行するように構成されている。その制御の一例を、図1のフローチャートに示してある。このフローチャートで示されるルーチンは、予め定めた短時間毎に繰り返し実行される。図1において、先ず、異物が堆積しているか否かが判断される(ステップS1)。例えばオイルを使用している時間が長くなれば、その分オイルが劣化しまた摩耗粉も増えるため、このステップS1では、一例として車両の総走行距離が予め定めた距離を超えた場合や、車両が走行を開始してから連続して走行している時間が予め定めた時間を超えた場合などに、予め定めた量以上の異物が各シールリング44,45の近傍に堆積していると判断するように構成されている。またこのように車両の総走行距離によって異物の堆積の有無を判断することに替えて、クラッチドラム23やプライマリプーリにおける累積の回転数が予め定めた回転数以上になった場合や、油圧制御や潤滑などのために使用するオイルを無段変速機11に供給あるいは充填してからその後にオイルを入れ替えるまでの期間、すなわち無段変速機11においてオイルを連続して使用している期間が予め定めた時間や期間に達した場合などに、予め定めた量以上の異物が堆積していると判断するように構成してもよい。さらに、上述した各種のパラメータを複数を組み合わせることによって予め定めた量以上の異物が堆積しているか否かを判断するように構成してもよい。
上記のステップS1で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、リターンする。これに対して、ステップS1で肯定的に判断された場合には、切替弁58の電磁コイル部58eに通電することにより、ポート58aとポート58bとの間を連通しかつポート58bとポート58cとの間を遮断する状態を設定するとともに、この状態を予め定めた時間Tcon、維持する(ステップS2)。このステップS2では、具体的には、各異物排出油路46,47にライン圧を供給することにより、各異物排出油路46,47における油圧をクラッチC1を係合させるための油圧室30の油圧、すなわちクラッチC1の制御油圧よりも高くする。また、電磁コイル部58eに通電したとしても、各異物排出油路46,47における油圧がクラッチC1の制御油圧よりも十分に高くなるためには、ある程度の時間を要する。そのため、電磁コイル部58eに通電する時間は不可避的な油圧の応答遅れを考慮する必要がある。また、各異物排出油路46,47における油圧がクラッチC1の制御油圧よりも高い状態を、後述するようにある程度維持する必要がある。したがって、予め定めた時間Tconは、少なくとも不可避的な油圧の応答遅れを考慮に入れた時間であって、実験やシミュレーションなどにより予め設定することができる。
ここで、各シールリング44,45の作用について説明する。先ず、上記のステップS2の制御を実行する以前においては、常閉型の電磁弁である切替弁58の電磁コイル部58eに通電していないために切替弁58は閉となっており、各異物排出油路46,47とドレイン箇所とが連通されている。そのため、油路26の油圧が各異物排出油路46,47の油圧に比較して高くなっている。詳細は図示しないが、このような場合においては、油路26の油圧は隙間48,49を介して各凹部42,43に供給され、各凹部42,43における油圧が増大している。また、図4に示すように、シールリング44における異物排出油路46側の側面が、凹部42における異物排出油路46側の壁面に押し付けられており、シールリング45における異物排出油路47側の側面が、凹部43における異物排出油路47側の壁面に押し付けられている。すなわち、各シールリング44,45は各異物排出油路46,47側に寄っており、隙間48と隙間50との間をシールリング44が遮断し、隙間49と隙間51との間をシールリング45が遮断している。
次いで、上記のステップS2の制御を実行することにより電磁コイル部58eに通電した場合、上述したように、各異物排出油路46,47にライン圧が供給される。詳細は図示しないが、異物排出油路46に供給されたライン圧は隙間50を介して凹部42に供給される。このライン圧が、クラッチC1の制御油圧に比較して高い圧力の油圧であることにより、シールリング44は凹部42における異物排出油路46側の壁面から離れて凹部42における油路26側の壁面に向かって移動する。そして、シールリング44における油路26側の側面が、凹部42における油路26側の壁面に押し付けられる。これと同様に、異物排出油路47に供給されたライン圧は隙間51を介して凹部43に供給され、シールリング45は異物排出油路47側の壁面から離れて凹部43における油路26側の壁面に向かって移動する。そして、シールリング45における油路26側の側面が、凹部43における油路26側の壁面に押し付けられる。このステップS2の処理における上述した通電時間が上述した予め定めた時間Tconであって、その通電時間は異物排出油路46,47の油圧をクラッチC1の制御油圧よりも高くしかつ異物排出油路46,47の油圧によって各シールリング44,45を各凹部42,43における油路26側の壁面に押し付けることができる時間であればよい。
なお、このように各シールリング44,45が異物排出油路46,47側から油路26側へ向けて移動する過渡状態において、隙間48と隙間50との間が凹部42を介して、また、隙間49と隙間51との間が凹部43を介して一時的に連通され、各異物排出油路46,47から各凹部42,43を介して油路26にオイルが漏洩する場合がある。
上述したステップS2での制御に続けて、切替弁58の電磁コイル部58eに対する電力の供給を断つことにより、ポート58aとポート58bとの間を遮断しかつポート58bとポート58cとの間を連通する状態を設定する(ステップS3)。すなわち、各異物排出油路46,47がドレイン箇所に連通されて各異物排出油路46,47における油圧が上述した制御油圧よりも低くされる。その結果、各シールリング44,45が各凹部42,43における油路26側から各異物排出油路46,47へ向けて移動し、各凹部42,43における異物排出油路46,47側の壁面に押し付けられる。このように、各シールリング44,45が各凹部42,43における各異物排出油路46,47側の壁面に押し付けられるまでの間において、隙間48と隙間50との間が凹部42を介して一時的に連通され、また、隙間49と隙間51との間が凹部43を介して一時的に連通される。このような過渡状態においては、油路26から各異物排出油路46,47に向けて漏洩するオイルとともに、各シールリング44,45の近傍に堆積した異物が各異物排出油路46,47に排出される。その後、このルーチンが一旦終了される。
このように、各異物排出油路46,47の油圧を油路26の油圧よりも一旦、増大させた後にドレイン箇所に連通することにより、油路26側から各異物排出油路46,47側に漏洩するオイルとともに、各シールリング44,45の近傍に堆積した異物を積極的に各異物排出油路46,47に排出することができる。そのため、異物によって上述した各隙間48,49,50,51を挟んで対向しているクラッチドラム23やポンプカバー25などが摩耗したり、各シールリング44,45が損傷するなどのことを防止もしくは抑制することができる。
ところで、図1に示す制御例では、異物を排出している間において油路26から各異物排出油路46,47にオイルが漏洩するため、クラッチC1の制御油圧が低下する虞がある。そのため、制御油圧に不足を生じさせないためには、例えば異物を排出している場合において制御油圧を増大させることが好ましい。その制御の一例を、図2のフローチャートに示してある。なお、この図2に示すフローチャートにおいて、図1のフローチャートと同じ処理については、図1と同じステップ番号を付してある。
この図2において、ステップS3で切替弁58の電磁コイル部58eに対する電力の供給が遮断された場合、現時点で設定されているクラッチC1の目標油圧Ptgtが新たな目標油圧Ptgtnewに変更され、かつその状態が予め定めた時間Tadd、維持される(ステップS4)。この新目標油圧Ptgtnewは、上述したようにして異物を排出するのと同時に、オイルが漏洩することによる制御油圧の低下分を補って所期の制御油圧を設定するための油圧であり、これは、例えば、現時点で設定されているクラッチC1の目標油圧Ptgtに対して上記のオイルの漏洩による油圧の低下分を相殺する分の油圧Paddを加算して算出される。また、この新目標油圧Ptgtnewが設定されかつ維持される時間Taddは、一例として異物を排出するために必要十分な時間であってよい。したがって、上記の油圧Paddや時間Taddは実験やシミュレーションなどにより予め設定することができる。
そして、上述した予め定めた時間Taddが経過した場合、クラッチC1の制御油圧が新目標油圧Ptgtnewから目標油圧Ptgtに変更される(ステップS5)。すなわち、このステップS5では、異物を排出するための油圧制御を終了して従前のクラッチC1の制御に変更され、その後、このルーチンをリターンする。
上記の制御を実行した場合におけるクラッチC1の油圧室30の油圧の変化を、図3のタイムチャートに示してある。伝達するべきトルク容量に応じてクラッチ1の油圧室30における油圧が増大され、時刻t1の時点において、クラッチC1が係合される。一方、切替弁58は、電磁コイル部58eに通電しないOFF状態になっている。そして、時刻t2の時点において、例えば車両の総走行距離が予め定めた距離を超えた場合、あるいは、車両が走行を開始してから終了するまでの連続走行時間が予め定めた時間を越えた場合などに、電磁コイル部58eに通電され、切替弁58がON状態にされる。すなわち、図1のステップS1で肯定的に判断され、ステップS2の制御が実行された時点がこの時刻t2の時点に相当している。より具体的には、各異物排出油路46,47とオイルポンプ54とが連通されることにより各異物排出油路46,47にライン圧が供給される。この切替弁58のON状態は、少なくとも各シールリング44,45が各凹部42,43における油路26側の壁面に押し付けられる時刻t3の時点まで継続される。この継続時間が、上述した予め定めた時間Tconに相当している。
時刻t3の時点において、電磁コイル部58eに対する通電が遮断されて切替弁58がOFF状態にされ、かつ、現時点でのクラッチC1の目標制御油圧Ptgtが新目標制御油圧Ptgtnewに変更される。すなわち、上述した現時点での目標制御油圧Ptgtに油圧Paddを加算した新目標制御油圧Ptgtnewを使用してクラッチC1の油圧制御が行われる。この制御は、時刻t4の時点まで継続される。この継続時間が、上述した異物を排出するのに必要十分な時間であって予め定めた時間Taddに相当している。これらの制御が図1のフローチャートにおけるステップS3およびステップS4での制御に相当している。そして、時刻t4の時点において、異物を排出するための油圧制御を終了して従前のクラッチC1の制御に変更される。その後、伝達するべきトルク容量に応じてクラッチC1の油圧室30の油圧が増大もしくは減少される。図3に示す例では、時刻t5の時点において、例えば変速比が減少されることにより、伝達するべきトルクが減少されて油圧室30の油圧が低下された場合を示している。
このように、この発明によれば、異物を排出している場合に、クラッチC1の制御油圧を一時的に増大することにより、異物の排出に伴うオイルの漏洩に起因するクラッチC1の制御油圧の不足を防止もしくは抑制することができる。そのため、クラッチC1において伝達するべきトルク容量に不足が生じることを未然に防止することができる。
図5に、クラッチC1とポンプカバーとの間の隙間をシールするシールリングの近傍に堆積した異物を排出するための他の例を模式的に示してあり、ここに示す例は、図4に示す各シール部52,53に替えてシールリング60,62によって上記の隙間をシールするように構成した例である。具体的に説明すると、異物排出油路46を挟んで油路26とは反対側に凹部59が形成され、その凹部59にシールリング60が嵌め込まれている。また、異物排出油路47を挟んで油路26とは反対側に凹部61が形成され、その凹部61にシールリング62が嵌め込まれている。
そして、上述した図1におけるステップS2に示す制御を行って各異物排出油路46,47に供給したライン圧が各凹部59,61に供給された場合、シールリング60は図5での右側に移動してクラッチドラム23とポンプカバー25との隙間を遮断し、シールリング62は図5での左側に移動してクラッチドラム23とポンプカバー25との隙間を遮断するようになっている。このように、図5に示す例では、シールリング60,62によって、異物排出油路46,47に供給した油圧が変速機のケーシングの内部に漏洩しないようになっている。また、上述した図1におけるステップS1およびステップS3に示す制御を行った場合、各異物排出油路46,47はドレイン箇所に連通されるため、各凹部59,61における油圧は低下する。そして、上述したシールリング60,62による上記の隙間の遮断は解除される。一方で、油路26の油圧は相対的に増大するので、上述した図4に示す例と同様に、各シールリング44,45によって隙間50,51が遮断される。また、図2に示す制御を行うことによって異物の排出に伴うクラッチC1の制御油圧の不足を防止もしくは抑制することができる。
図6に、クラッチC1とポンプカバーとの間の隙間をシールするシールリングの近傍に堆積した異物を排出するための更に他の例を模式的に示してある。ここに示す例は、車両の前進状態を設定する場合にクラッチC1を係合させかつブレーキB1を解放させ、これに対して、車両の後進状態を設定する場合にクラッチC1を解放させかつブレーキB1を係合させるように、クラッチC1やブレーキB1の油圧室のそれぞれに対して選択的に油圧を供給するマニュアルバルブと上記の切替弁58とを一体化した例である。それらのバルブを一体化した複合弁63について簡単に説明すると、図6に示す複合弁63は、クラッチC1あるいはブレーキB1のいずれか一方の油圧室をオイルポンプ54に選択的に連通していずれか一方を選択的に係合するマニュアルバルブ64と、マニュアルバルブ64の動作に連動してすなわちクラッチC1あるいはブレーキB1の係合に応じて各異物排出油路46,47をオイルポンプ54あるいはドレイン箇所に選択的に連通する切替弁65とを備えている。
マニュアルバルブ64は、供給側電磁開閉弁56を介してオイルポンプ54が連通されるポート64aと、油路26に連通されるポート64bと、ブレーキB1に連通されるポート64cと、ドレイン箇所に連通される64dとを備えている。また、「ポート64aとポート64bとの間を連通しかつポート64cとポート64dとの間を連通する状態、すなわちクラッチC1を係合しかつブレーキB1を解放する状態(Dレンジと称することがある)」と、「ポート64aとポート64cとの間を連通しかつポート64bとポート64dとの間を連通する状態、すなわちクラッチC1を解放しかつブレーキB1を係合する状態(Rレンジと称することがある)」と、「ポート64aとポート64bならびにポート64cそしてポート64dとの間を連通する状態、すなわちクラッチC1およびブレーキB1に作用する油圧をいずれもドレイン箇所に排出させる状態(NレンジもしくはPレンジと称することがある)」とのうち、いずれか1つの状態を選択的に設定するスプール(図示せず)を備えている。これらの状態は、例えば、手動によるセレクタレバーの操作に応じた電気的な上述した各レンジの切り替え操作に連動して上述したスプールの位置を切り替えることにより選択的に設定されるように構成されている。
一方、切替弁65は、オイルポンプ54が連通されるポート65aと、油路57に連通されるポート65bと、ドレイン箇所に連通される65cとを備えている。また、上述したスプールの位置に応じて、「ポート65aとポート65bとの間を遮断しかつポート65bとポート65cとの間を連通する状態、すなわち各異物排出油路46,47をドレイン箇所に連通する状態」と、「ポート65aとポート65bとの間を連通しかつポート65bとポート65cとの間を遮断する状態、すなわち各異物排出油路46,47にライン圧を供給する状態」とのうち、いずれか1つの状態が選択的に設定されるように構成されている。より具体的には、図6に示す例において、DレンジもしくはRレンジが設定された場合、各異物排出油路46,47をドレイン箇所に連通する状態が設定されるように構成されている。この状態は、上述した図4に符号Aで示す状態と同様の状態である。他方、図6に示す例において、NレンジもしくはPレンジが設定された場合、各異物排出油路46,47とオイルポンプ54とが連通する状態が設定されるように構成されている。この状態は、上述した図4に符号Bで示す状態と同様の状態である。
このように、図6に示す例では、車両が停止してNレンジもしくはPレンジが設定された場合に、上述した図1に示すステップS2と同様に、各異物排出油路46,47にライン圧が供給されてそれらの油圧がクラッチC1の制御油圧よりも増大させられる。そして、各シールリング44,45が各凹部42,43における油路26側の壁面に押し付けられる。その後、車両の走行を開始するためにDレンジもしくはRレンジが設定された場合、上述した図1に示すステップS3と同様に、各異物排出油路46,47がドレイン箇所に連通される。そして、これらの油路26と油路46,47との間の差圧により、各シールリング44,45が各凹部42,43における各異物排出油路46,47側の壁面に移動する過程において、隙間48と隙間50との間が連通され、かつ隙間49と隙間51との間が連通されることにより、異物が各異物排出油路46,47に排出される。また、図2に示す制御を行うことによって、異物の排出に伴うクラッチC1の制御油圧の不足を防止もしくは抑制することができる。これらに加えて、図6に示す例では、上述した構成の複合弁63を用いるので、バルブの部品点数を少なくできる。また、複合弁63は上述したレンジの切り替え操作に連動して動作するため、複雑な制御を特には必要とせず、その分、製造や組立に係る工数を低減することができる。
図7に、上述したプライマリプーリとスリーブとの間の隙間をシールするシールリングの近傍に堆積した異物を排出するための一例を模式的に示してある。図7に示すように、無段変速機11のケーシング66と一体のスリーブ67の外周側に、油圧室15の一部であるドラム68が設けられている。ケーシング66およびスリーブ67には、油圧室15とオイルポンプ54とを連通する油路69が形成されている。この油路69は、オイルポンプ54と油圧室15とを連通する油路70に連通されている。油路70には、プライマリプーリ用の供給側電磁開閉弁71が設けられており、その電磁弁を電気的に制御して油路70を開閉することにより、油圧室15に対して供給する油圧を高くし、あるいはオイルの量を増大させて上述したベルト式無段変速機11のV溝の幅を変更するように構成されている。他方、詳細は図示しないが、油圧室15からドレイン箇所に油圧を排出する排出油路が設けられており、その排出油路には、排出側電磁開閉弁が設けられている。そしてこの排出側電磁開閉弁を電気的に制御して排出油路を開閉することにより、油圧室15の油圧をドレイン箇所に排出し、また油圧の排出を遮断するように構成されている。
また、スリーブ67に形成された凹部72にシールリング73が嵌め込まれており、そのシールリング73によってスリーブ67の外周面と、これに対向するドラム68側の面との間の隙間74をシールするようになっている。また、シールリング73を挟んで油圧室15とは反対側に異物排出油路75が設けられている。この異物排出油路75は、油路76を介して例えばドレイン箇所に連通されており、その途中に電気的に制御可能な切替弁77が設けられている。したがって、この切替弁77を電気的に制御して異物排出油路75をオイルポンプ54あるいはドレイン箇所に選択的に連通するようになっている。
図7に示す切替弁77は、常閉型の電磁弁であって、具体的には、オイルポンプ54が連通されるポート77aと、ポート77aに選択的に連通されるポート77bと、ポート77bに選択的に連通されるポート77cとを備えている。ポート77bは油路76に連通されており、ポート77cはドレイン箇所に連通されている。また、ポート77aとポート77bとの間、および、ポート77bとポート77cとの間を連通もしくは遮断するスプール(図示せず)と、そのスプールが予め定めた方向に移動するように弾性力を付与するスプリング77dと、通電されることによりスプールに対してスプリング77dの弾性力に抗する力を付与する電磁コイル部77eとを有している。すなわち、切替弁77に通電しないOFF状態では、図7に符号Aで示す状態となって、異物排出油路75とドレイン箇所とが連通されるようになっている。これとは反対に、切替弁77に通電するON状態では、図7に符号Bで示す状態となって、オイルポンプ54と異物排出油路75とが連通され、異物排出油路75に元圧であるライン圧が供給されるようになっている。また、上記の隙間74における大気に解放されている側に、すなわち無段変速機11のケーシング66の内部に連通する側に、シール部78が形成されている。このシール部78は、例えば図4に示すシール部52,53と同様に形成されている。
そして、上述した図1におけるステップS2に示す制御を行って異物排出油路75に供給したライン圧が凹部72に供給された場合、シールリング73は図7での右側に移動するとともに、スリーブ67とドラム68との間の隙間74を遮断する。その後、上述した図1におけるステップS3に示す制御を行った場合、異物排出油路75はドレイン箇所に連通されるため、凹部72における油圧は低下し、相対的に油路70の油圧は増大する。そして、シールリング73は図7での左側に移動する。このようにシールリング73が図7における右側から左側に移動する過程において、一時的に上記の隙間74を介して油圧室15と異物排出油路75とが連通するので、油圧室15から異物排出油路75に向けてオイルが漏洩し、その漏洩するオイルとともに、油圧室15側におけるシールリング73の近傍に堆積した異物を積極的に異物排出油路75に排出することができる。また、図2に示す制御を行うことによって異物の排出に伴う油圧室15の制御油圧の不足を防止もしくは抑制することができる。
なお、この発明は上記の各例に限定されないのであって、ベルト式無段変速機以外の自動変速機を対象とする油圧制御装置に適用することができ、油圧によって駆動し、また制御する一般の産業機械や装置類の油圧制御装置に広く適用することができる。また上述した各例では、各異物排出油路46,47,75にライン圧を供給するように構成したが、クラッチC1の制御油圧やプライマリプーリの油圧室15に供給する油圧よりも相対的に高い圧力に調整された油圧を供給するように構成してもよい。
ここで、上述した例とこの発明との関係を簡単に説明すると、ステップS2およびステップS3の制御を実行する機能的手段が、この発明における「回転軸におけるシール部を挟んで第1油路とは反対側に設けられた第2油路に相対的に高い油圧を選択的に供給して第2油路における油圧を油圧室における油圧よりも相対的に高くし、その後に第2油路における油圧を油圧室における油圧よりも相対的に低くする手段」に相当する。
20…油圧制御装置、 22…変速機入力軸、 26…油路(第1油路)、 30…クラッチC1の油圧室、 44,45…シールリング、 46,47…異物排出油路(第2油路)、 54…オイルポンプ、 58…切替弁。
Claims (4)
- 回転軸に形成された第1油路を介して前記回転軸と相対回転可能に設けられた油圧室に油圧を供給し、かつ、前記回転軸と前記油圧室との間の隙間を、前記回転軸に形成された凹部に嵌め込まれたシール部材に前記油圧を供給して前記凹部における内壁面のうち前記回転軸の軸線方向で前記第1油路とは反対側の内壁面に前記シール部材を押し付けることによりシールするように構成されている油圧制御装置において、
前記回転軸における前記凹部を挟んで前記第1油路とは反対側に設けられた第2油路と、
前記第2油路における油圧を前記油圧室における油圧よりも高くし、その後に前記第2油路における油圧を前記油圧室における油圧よりも低くする手段とを備える
ことを特徴とする油圧制御装置。 - 前記手段は、前記シール部材の近傍に滞留する異物が予め定めた量を超えたことが判断される場合に前記第2油路における油圧を前記油圧室における油圧よりも高くするように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の油圧制御装置。 - 前記第2油路における油圧を前記油圧室における油圧よりも高くし、その後に前記第2油路における油圧を前記油圧室における油圧よりも低くしている場合に、前記油圧室における油圧を増大するように構成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の油圧制御装置。 - 前記回転軸における前記第2油路を挟んで前記凹部とは反対側にシール部が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の油圧制御装置。
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