JP2013221047A - ポリ乳酸系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属水酸化物の含有量が比較的少量であっても十分な難燃性を有し、強度低下も少なく、かつ結晶性に優れるポリ乳酸系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】D体含有量が1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上であるポリ乳酸(A)、金属水酸化物(B)及びスルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を含有する樹脂組成物であって、ポリ乳酸(A)と金属水酸化物(B)の合計100質量部に対して、スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を0.1〜10質量部含有しており、ポリ乳酸(A)と金属水酸化物(B)の質量比〔(A)/(B)〕が50/50〜75/25であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】D体含有量が1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上であるポリ乳酸(A)、金属水酸化物(B)及びスルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を含有する樹脂組成物であって、ポリ乳酸(A)と金属水酸化物(B)の合計100質量部に対して、スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を0.1〜10質量部含有しており、ポリ乳酸(A)と金属水酸化物(B)の質量比〔(A)/(B)〕が50/50〜75/25であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、特定のポリ乳酸と金属水酸化物および特定の結晶核剤を含有してなる樹脂組成物であって、難燃性と結晶性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物に関するものである。
ポリ乳酸はバイオマス由来樹脂として種々の検討がなされており、さまざまな分野に応用展開が図られようとしている。特に、従来、結晶化速度が遅いために応用が難しかった射出成形分野においても、結晶性が高く、耐熱性を有し、成形性に優れたポリ乳酸が供給されるようになってきた。その結果、ポリ乳酸成形体は種々の分野へ応用され、たとえば家電機器や自動車部品のような、従来は使用が困難とされていた分野にも展開が図られようとしている。
また、ポリ乳酸成形体をこれら家電機器や自動車部品分野で使用する場合には、ポリ乳酸に難燃性を付与することが必要となる。難燃効果の高いハロゲン系化合物やリン系化合物を生分解性樹脂に含有させることにより、他の樹脂と同様に、生分解性樹脂に難燃性を付与できることは知られている。しかし、これらの化合物は、環境問題、毒性や電子機器などへの悪影響などから、その使用は好ましくなく、代替方法が検討されている。
そこで、例えば、難燃剤として金属水酸化物を大量に添加する方法や、純度の高い水酸化物系化合物、リン系化合物などを添加する方法により、難燃性が付与できることが開示されている(例えば特許文献1、2参照)。
しかしながら、これらの無機化合物を大量に添加すると、難燃性は付与できるものの、強度が低下するなど、樹脂組成物としての物性が非常に低下するという問題があった。また、大量の無機化合物により樹脂の結晶化が阻害され、結晶性に劣るものとなり、成形速度が遅く、得られた成形体は耐熱性に劣るものになるという問題もあった。
しかしながら、これらの無機化合物を大量に添加すると、難燃性は付与できるものの、強度が低下するなど、樹脂組成物としての物性が非常に低下するという問題があった。また、大量の無機化合物により樹脂の結晶化が阻害され、結晶性に劣るものとなり、成形速度が遅く、得られた成形体は耐熱性に劣るものになるという問題もあった。
また、これら難燃剤に加えて結晶核剤を添加することで、結晶性を向上させた難燃性ポリ乳酸樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、開示されている結晶核剤では結晶性は十分に向上せず、耐熱性に優れた成形体を作製することはできなかった。
また、ポリ乳酸に(メタ)アクリル酸エステル化合物や過酸化物を添加し、架橋構造を有するものとし、このような架橋ポリ乳酸に金属酸化物や金属水酸化物を添加することにより、難燃性と成形性を向上させる方法も開示されている(例えば、特許文献4)。
しかしながら、架橋構造であること、また架橋剤が添加されていることによって、難燃性の効果が十分に奏されないため、金属酸化物や金属水酸化物の含有量を多くする必要があった。このため、上記と同様、強度面で十分なものが得られず、また、樹脂の結晶化が阻害され、結晶性が十分に向上しないものであった。
しかしながら、架橋構造であること、また架橋剤が添加されていることによって、難燃性の効果が十分に奏されないため、金属酸化物や金属水酸化物の含有量を多くする必要があった。このため、上記と同様、強度面で十分なものが得られず、また、樹脂の結晶化が阻害され、結晶性が十分に向上しないものであった。
本発明は、上記の問題点を解決するものであって、金属水酸化物の含有量が比較的少量であっても十分な難燃性を有し、強度低下も少なく、かつ結晶性に優れるポリ乳酸系樹脂組成物を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者は、上記の課題を解決すべく検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明はD体含有量が1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上であるポリ乳酸(A)、金属水酸化物(B)及びスルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を含有する樹脂組成物であって、ポリ乳酸(A)と金属水酸化物(B)の合計100質量部に対して、スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を0.1〜10質量部含有しており、ポリ乳酸(A)と金属水酸化物(B)の質量比〔(A)/(B)〕が50/50〜75/25であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物を要旨とするものである。
すなわち、本発明はD体含有量が1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上であるポリ乳酸(A)、金属水酸化物(B)及びスルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を含有する樹脂組成物であって、ポリ乳酸(A)と金属水酸化物(B)の合計100質量部に対して、スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を0.1〜10質量部含有しており、ポリ乳酸(A)と金属水酸化物(B)の質量比〔(A)/(B)〕が50/50〜75/25であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物を要旨とするものである。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、D体含有量が特定範囲のポリ乳酸(A)を用い、かつ結晶核剤としてスルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を用いているため、結晶性能が向上し、短い成形サイクルで耐熱性に優れた成形体を得ることができる。
また、難燃剤として金属水酸化物(B)を用いると、このように結晶性能が向上している樹脂中において、難燃剤が効果的に作用し、難燃剤の含有量が比較的少量であっても十分な難燃性を付与することができる。
さらに、ポリ乳酸(A)が直鎖状のポリ乳酸であると、難燃剤と結晶核剤が樹脂中に均一に分散することから、これらの効果がより顕著に奏され、難燃性と結晶性がより向上する。
さらに、ポリ乳酸(A)としてアセトン処理が施されており、残存ラクチド量が700ppm以下であるものを用いると、結晶性がより向上することから、難燃剤もより効果的に作用し、難燃性も向上する。
このように、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、結晶性に優れることから短い成形サイクルで成形体を得ることができ、かつ得られる成形体は耐熱性が向上したものとなる。つまり、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、難燃性、耐熱性、機械的強度に優れた成形体を操業性よく得ることが可能であり、家電機器や自動車部品分野における使用に適している。
また、難燃剤として金属水酸化物(B)を用いると、このように結晶性能が向上している樹脂中において、難燃剤が効果的に作用し、難燃剤の含有量が比較的少量であっても十分な難燃性を付与することができる。
さらに、ポリ乳酸(A)が直鎖状のポリ乳酸であると、難燃剤と結晶核剤が樹脂中に均一に分散することから、これらの効果がより顕著に奏され、難燃性と結晶性がより向上する。
さらに、ポリ乳酸(A)としてアセトン処理が施されており、残存ラクチド量が700ppm以下であるものを用いると、結晶性がより向上することから、難燃剤もより効果的に作用し、難燃性も向上する。
このように、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、結晶性に優れることから短い成形サイクルで成形体を得ることができ、かつ得られる成形体は耐熱性が向上したものとなる。つまり、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、難燃性、耐熱性、機械的強度に優れた成形体を操業性よく得ることが可能であり、家電機器や自動車部品分野における使用に適している。
まず、本発明のポリ乳酸(A)について説明する。本発明におけるポリ乳酸(A)は、D体含有量が1.0モル%以下であるか、または、D体含有量が99.0モル%以上であることが必要であり、中でも、0.1〜0.6モル%であるか、または、99.4〜99.9モル%であることが好ましい。D体含有量がこの範囲内であることにより、結晶性に優れるため、成形性に優れる(成形サイクルが短くなる)とともに、得られる成形体は耐熱性が向上したものとなる。さらに、後述するようなスルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を含有することにより、結晶核剤として有効に作用するため、より結晶性が向上する。D体含有量がこの範囲外であるポリ乳酸であると、結晶性の向上が不十分な樹脂組成物となり、成形性が向上せず、得られる成形体の耐熱性を向上させることも困難となる。
さらに、D体含有量が上記の範囲を満足するポリ乳酸(A)を用いた場合は、金属水酸化物(B)を特定の割合で含有させることによる、難燃性の向上効果が特に顕著に発現する。よって、D体含有量が1.0モル%を超えるポリ乳酸(A)に含有させる場合よりも、少ない含有量で優れた難燃性を付与することができる。
この理由としては、D体含有量が上記の範囲を満足するポリ乳酸(A)は結晶性に優れるため、成形体を得る際に、金属水酸化物(B)の働きが活性化され、難燃性を付与するという効果がより顕著に奏されるためではないかと推測される。
この理由としては、D体含有量が上記の範囲を満足するポリ乳酸(A)は結晶性に優れるため、成形体を得る際に、金属水酸化物(B)の働きが活性化され、難燃性を付与するという効果がより顕著に奏されるためではないかと推測される。
本発明において、ポリ乳酸(A)のD体含有量とは、ポリ乳酸(A)を構成する総乳酸単位のうち、D乳酸単位が占める割合(モル%)である。したがって、例えば、D体含有量が1.0モル%のポリ乳酸(A)の場合、このポリ乳酸(A)は、D乳酸単位が占める割合が1.0モル%であり、L乳酸単位が占める割合が99.0モル%である。
本発明においては、ポリ乳酸(A)のD体含有量は、実施例にて後述するように、ポリ乳酸(A)を分解して得られるL乳酸とD乳酸を全てメチルエステル化し、L乳酸のメチルエステルとD乳酸のメチルエステルとをガスクロマトグラフィー分析機で分析する方法により算出するものである。
本発明に用いるポリ乳酸(A)としては、市販の各種ポリ乳酸樹脂のうち、D体含有量が本発明で規定する範囲のポリ乳酸を用いることができる。また、乳酸の環状2量体であるラクチドのうち、D体含有量が十分に低いL-ラクチド、または、L体含有量が十分に低いD-ラクチドを原料に用い、公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造したものを用いることができる。
本発明において、ポリ乳酸(A)は、中でも架橋構造等を有していない、直鎖状のポリ乳酸であることが好ましい。直鎖状のポリ乳酸を用いることにより、難燃性と結晶性がより向上する理由は以下のように推定される。ポリ乳酸が架橋構造等の複雑な構造を有していると、金属水酸化物(B)やスルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を添加した際に分子レベルで均一に分散されにくくなる。このため、難燃剤を添加したことによる難燃効果や結晶核剤を添加したことによる結晶化効果が十分に奏されず、いずれの性能も不十分なものとなる。一方、直鎖状のポリ乳酸であると、添加した金属水酸化物(B)やスルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)は、分子レベルで均一に分散されやすく、金属水酸化物(B)とスルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を添加したことによる難燃性と結晶性の向上効果が十分に奏されることとなる。
さらには、本発明におけるポリ乳酸(A)は、アセトン処理が施されており、残存ラクチド量が700ppm以下であることが好ましい。
ポリ乳酸(A)としてアセトン処理が施されており、残存ラクチド量が700ppm以下であるものを用いることにより、本発明の樹脂組成物はさらに結晶性が向上し、耐熱性、成形性がより向上したものとなる。また、金属水酸化物(B)がより効果的に作用するため、難燃性もさらに向上する。
ポリ乳酸(A)としてアセトン処理が施されており、残存ラクチド量が700ppm以下であるものを用いることにより、本発明の樹脂組成物はさらに結晶性が向上し、耐熱性、成形性がより向上したものとなる。また、金属水酸化物(B)がより効果的に作用するため、難燃性もさらに向上する。
アセトン処理とは、ポリ乳酸をアセトンで洗浄することであり、アセトンでの洗浄方法としては、以下のような方法が好ましい。ポリ乳酸とアセトンとの質量比を1:1〜1:3とし、攪拌翼などによって30分以上の攪拌を行う。なお、攪拌時の温度は、0℃〜60℃の範囲が好ましく、中でも10℃〜40℃、より好ましくは20℃〜30℃である。温度が60℃を超える場合、アセトンの沸点を超えているため、アセトンの揮発が大きくなる。0℃未満の場合、アセトンの冷却を行わなければならないため、コスト的に不利となる。攪拌翼の攪拌速度は、50〜1000rpmが好ましく、中でも100〜500rpmが好ましく、より好ましくは150〜300rpmである。1000rpmを超える場合、攪拌速度が速すぎ、樹脂同士が激しくぶつかることによってダストの発生が多くなる。50rpm未満の場合、アセトン中に抽出されるラクチド量が少なくなり、処理時間が長時間となる。
一般に、ポリ乳酸中の未反応ラクチドを抽出するためには、メタノール等の他の溶媒も使用できるが、本発明においては、アセトンを溶媒として使用することにより、未反応ラクチドを抽出すると同時に、ポリ乳酸の結晶化速度を向上させることも可能となる。
アセトンは、ラクチドだけでなく、ポリ乳酸中の低分子オリゴマーの抽出も可能である。また、処理後の残渣から、乳酸が検出されないため、抽出物が分解して乳酸になることがなく安定である。これらのことにより、上記したようなポリ乳酸の結晶化速度の向上効果が生じるものと推定される。また、アセトンは比較的安価な溶媒でありコスト的に有利である。
アセトンに代えて、メタノールなどの他の溶媒を用いた場合、残渣から乳酸が多く検出される。このため、樹脂中に乳酸が残存した場合などは、加工や保存中に分子量低下などの問題が生じることがあり、このようなポリ乳酸では結晶化速度は向上していない。
また、ポリ乳酸中の未反応ラクチドを除去する方法として、一軸押出し機、二軸押出し機などでラクチド除去を行う方法も一般的である。しかしながら、これらの方法でラクチド除去を行った場合も低分子オリゴマーがポリ乳酸中に残存しており、得られるポリ乳酸は結晶化速度が向上したものとはならない。
本発明におけるポリ乳酸(A)は、上記のようなアセトン処理が施されることにより、樹脂中の残存ラクチド量が700ppm以下であることが好ましく、中でも500ppm以下であることが好ましく、さらには400ppm以下であることが好ましい。残存ラクチド量が700ppmを超える場合、結晶化速度の向上効果が小さく、また、溶融加工時に分子量低下や着色が生じることもある。
ポリ乳酸(A)の残存ラクチド量は以下のようにして測定、算出する。まず、試料0.1gに、塩化メチレン9ml、内部標準液1ml(2,6−ジメチル−γ−ピロンの5000ppm溶液)を加え、ポリマーを溶解させる。ポリマー溶解液にシクロヘキサン40mlを添加し、ポリマーを析出させる。HPLC用ディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過後、Agilent Technologies社製7890A GCSystemでGC測定し、ラクチド含有量を算出する。
なお、ポリ乳酸(A)と金属水酸化物(B)及びスルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を含有する樹脂組成物において、ポリ乳酸(A)の残存ラクチド量を測定する際にも上記と同様に測定、算出できる。このときは、樹脂組成物を試料として用いる。
なお、ポリ乳酸(A)と金属水酸化物(B)及びスルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を含有する樹脂組成物において、ポリ乳酸(A)の残存ラクチド量を測定する際にも上記と同様に測定、算出できる。このときは、樹脂組成物を試料として用いる。
本発明においては、難燃剤として金属水酸化物(B)を用いるものである。金属水酸化物(B)は、上記したように、特定のポリ乳酸と特定の結晶核剤を用いて結晶性が向上した組成物中において、その働きが活性化され、難燃性付与効果をより顕著に奏することができるものである。ポリ乳酸に難燃性を付与することができる化合物は金属水酸化物以外にもあるが、これらの他の難燃剤を使用した場合には、ポリ乳酸の結晶性を低下させる場合がある。ポリ乳酸の結晶性が低下すると、成形サイクルが長くなり、得られる成形体の耐熱性が低下する。さらには、難燃剤の効果も活性化されず、優れた難燃性能が発揮されないこととなる。
本発明に用いる金属水酸化物(B)としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、水酸化カリウム、水酸化珪素、水酸化チタン、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化ナトリウム、水酸化ニッケル、水酸化ホウ素、水酸化マンガン、水酸化リチウムなどを挙げることができる。これらは、環境に対する負荷が小さく、しかも十分な難燃性を示す。
中でも、分子量あたりの水酸基濃度が高いために難燃効果が高く、また毒性が低く、しかも安価であるなどの理由から、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムを使用することが望ましい。これらの中でもポリ乳酸の結晶性を低下させず、難燃性能を十分に発揮でき、さらには耐衝撃性にも優れるものとして、水酸化アルミニウムが最も好ましい。
中でも、分子量あたりの水酸基濃度が高いために難燃効果が高く、また毒性が低く、しかも安価であるなどの理由から、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムを使用することが望ましい。これらの中でもポリ乳酸の結晶性を低下させず、難燃性能を十分に発揮でき、さらには耐衝撃性にも優れるものとして、水酸化アルミニウムが最も好ましい。
ポリ乳酸系樹脂組成物中のポリ乳酸(A)と金属水酸化物(B)の質量比〔(A)/(B)〕は、50/50〜75/25であり、中でも60/40〜75/25であることが好ましい。
金属水酸化物(B)の割合が上記範囲より少ないと十分な難燃性を付与することができない。また、曲げ弾性率や耐衝撃性も低いものとなる。一方、金属水酸化物(B)の割合が上記範囲より多いと、難燃性は飽和するだけでなく、金属水酸化物が二軸押出機の根元供給口に詰まり、樹脂組成物を得られない場合がある。たとえ樹脂組成物が得られたとしても、耐衝撃性が低下したものとなる。
金属水酸化物(B)の割合が上記範囲より少ないと十分な難燃性を付与することができない。また、曲げ弾性率や耐衝撃性も低いものとなる。一方、金属水酸化物(B)の割合が上記範囲より多いと、難燃性は飽和するだけでなく、金属水酸化物が二軸押出機の根元供給口に詰まり、樹脂組成物を得られない場合がある。たとえ樹脂組成物が得られたとしても、耐衝撃性が低下したものとなる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸(A)の結晶性を向上させるために、結晶核剤としてスルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を含有することが必要である。
本発明において結晶核剤としてスルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を含有することにより、ポリ乳酸(A)の結晶性が向上し、より結晶性能に優れた樹脂組成物を得ることができる。このため、樹脂組成物を成形する際の成形サイクルを短縮することができ、耐熱性に優れた成形体を得ることができる。さらには、金属水酸化物(B)による難燃性の付与効果がより顕著に奏される。
スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)の含有量は、ポリ乳酸(A)と金属水酸化物(B)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、中でも0.5〜8質量部であることが好ましい。含有量が0.1質量部未満であると、結晶化促進効果が乏しくなる。一方、10質量部を超えると、結晶核剤としての効果が飽和し経済的に不利であるだけでなく、強度が低下する。また、生分解後の残渣分が増大するため環境面でも好ましくない。
スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)としては、5−スルホイソフタル酸ジメチルバリウム、5−スルホイソフタル酸ジメチルカリウム、5−スルホイソフタル酸ジメチルマグネシウム、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウムなどが挙げられる。中でも、結晶化促進効果の点から、5−スルホイソフタル酸ジメチルバリウム、5−スルホイソフタル酸ジメチルカリウムが好ましい。
また、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中には、難燃性をより向上させる目的でドリップ防止剤(E)を添加してもよい。ドリップ防止剤(E)を添加することによって、燃焼時における溶融樹脂のドリップ(燃焼に際して樹脂が溶融することで液状化して垂れ落ちること)を防止することができる。このようなドリップ防止剤(E)としては公知のものを利用することができるが、中でも、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系樹脂が好ましい。
ドリップ防止剤(E)の含有量は、ポリ乳酸(A)と金属水酸化物(B)の合計100質量部に対し、0.05〜5質量部であることが好ましく、中でも0.5〜2質量部であることが好ましい。含有量が0.05質量部未満ではドリップ防止効果が小さく、一方、5質量部を超えると得られる成形体の外観、および、樹脂組成物の流動性が損なわれる場合があり、また経済的に好ましくない。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、充填材等を添加することも可能である。
熱安定剤や酸化防止剤としては、たとえばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物を使用することができる。
充填材としては、無機充填材と有機充填材とが挙げられる。無機充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ、ケナフ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品が挙げられる。
また、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリ乳酸(A)以外の他の樹脂成分を含有していてもよい。また、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を使用する際には、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物と他の樹脂成分とを配合して使用することもできる。
このような他の樹脂成分としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)共重合体、液晶ポリマー、ポリアセタールなどが挙げられる。
次に、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法について説明する。ポリ乳酸(A)、金属水酸化物(B)及びスルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)、さらには必要に応じて、ドリップ防止剤(E)や各種添加剤等を配合して、通常の加熱溶融後、従来より公知である一軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダー等を用いる混練法によって混練するとよい。また、スタティックミキサーやダイナミックミキサーを併用することも効果的である。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形および、シート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法により、各種成形体とすることができる。とりわけ、射出成形法を採用することが好ましく、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等も採用できる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物に適した射出成形条件の一例を挙げれば、シリンダ温度をポリ乳酸の融点または流動開始温度以上、好ましくは180〜250℃、最適には190〜240℃の範囲とし、また、金型温度を樹脂組成物の(融点−20℃)以下とするのが適当である。
このような成形温度とすることにより、成形サイクルを50秒以下とすることが可能であり、操業性よく成形体を得ることが可能となる。
成形温度(シリンダー温度)が低すぎると成形体に充填不良が発生するなど操業性が不安定になったり、過負荷に陥りやすく、逆に成形温度が高すぎると樹脂組成物が分解し、得られる成形体の強度が低下したり、着色する等の問題が発生しやすい。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物に適した射出成形条件の一例を挙げれば、シリンダ温度をポリ乳酸の融点または流動開始温度以上、好ましくは180〜250℃、最適には190〜240℃の範囲とし、また、金型温度を樹脂組成物の(融点−20℃)以下とするのが適当である。
このような成形温度とすることにより、成形サイクルを50秒以下とすることが可能であり、操業性よく成形体を得ることが可能となる。
成形温度(シリンダー温度)が低すぎると成形体に充填不良が発生するなど操業性が不安定になったり、過負荷に陥りやすく、逆に成形温度が高すぎると樹脂組成物が分解し、得られる成形体の強度が低下したり、着色する等の問題が発生しやすい。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物から得られる成形体としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルム、繊維およびシート等が挙げられる。これらの成形品は、電気・電子部品、機械部品、光学機器、建築部材、自動車部品および日用品等各種用途に使用することができる。特に難燃性と耐熱性に優れるため、使用環境温度が比較的高く、難燃性も要求されるような部品や製品等にも用いることができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物から得られる成形体の具体例としては、パソコン筐体部品および筐体、携帯電話筐体部品および筐体、その他OA機器筐体部品、コネクター類等の電化製品用樹脂部品;バンパー、インストルメントパネル、コンソールボックス、ガーニッシュ、ドアトリム、天井、フロア、エンジン周りのパネル等の自動車用樹脂部品;コンテナーや栽培容器等の農業資材や農業機械用樹脂部品;浮きや水産加工品容器等の水産業務用樹脂部品;皿、コップ、スプーン等の食器や食品容器;注射器や点滴容器等の医療用樹脂部品;ドレーン材、フェンス、収納箱、工事用配電盤等の住宅・土木・建築材用樹脂部品;花壇用レンガ、植木鉢等の緑化材用樹脂部品;クーラーボックス、団扇、玩具等のレジャー・雑貨用樹脂部品;ボールペン、定規、クリップ等の文房具用樹脂部品等が挙げられる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、各種物性測定および評価は以下の通りに行った。
(1)ポリ乳酸(A)のD体含有量
得られた樹脂組成物より取り出したポリ乳酸を0.3g秤量し、1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した。次いで、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させ、サンプルとして5mLを計り取った。このサンプルに純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HP−6890SeriesGCsystem(HewletPackard社製)を用いてガスクロマトグラフィー測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをポリ乳酸のD体含有量(モル%)とした。
(1)ポリ乳酸(A)のD体含有量
得られた樹脂組成物より取り出したポリ乳酸を0.3g秤量し、1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した。次いで、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させ、サンプルとして5mLを計り取った。このサンプルに純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HP−6890SeriesGCsystem(HewletPackard社製)を用いてガスクロマトグラフィー測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをポリ乳酸のD体含有量(モル%)とした。
(2)曲げ強度、曲げ弾性率
得られた樹脂組成物のペレットを70℃で24時間真空乾燥したのち、射出成形機(東芝機械社製、「IS−80G型」)を用いて、シリンダー温度190℃、金型温度を90℃に調整しながら、ASTMダンベル型試験片を作製した。得られた試験片を用い、ASTM‐D‐790に従い、変形速度1mm/分で荷重をかけて測定した。
(3)耐衝撃性(シャルピー衝撃値)
(2)と同様にして得られた試験片を用い、ISO179に準拠して、所定のノッチ加工を施した後にシャルピー衝撃値(ノッチあり)を測定した。
得られた樹脂組成物のペレットを70℃で24時間真空乾燥したのち、射出成形機(東芝機械社製、「IS−80G型」)を用いて、シリンダー温度190℃、金型温度を90℃に調整しながら、ASTMダンベル型試験片を作製した。得られた試験片を用い、ASTM‐D‐790に従い、変形速度1mm/分で荷重をかけて測定した。
(3)耐衝撃性(シャルピー衝撃値)
(2)と同様にして得られた試験片を用い、ISO179に準拠して、所定のノッチ加工を施した後にシャルピー衝撃値(ノッチあり)を測定した。
(4)耐熱性
(2)と同様にして得られた試験片を用い、ASTM‐D‐638に従い、荷重0.45MPaで荷重たわみ温度(DTUL)を測定した。
(2)と同様にして得られた試験片を用い、ASTM‐D‐638に従い、荷重0.45MPaで荷重たわみ温度(DTUL)を測定した。
(5)難燃性
(2)に記載した試験片の作製方法と同様の条件で、厚み0.8mmの試験片を作製した。この試験片を用い、UL94(米国におけるUnder Writers Laboratories Inc.で定められた規格)の方法に従って測定した。
すなわち、試験片を垂直に保ち、下端にバーナーの火を10秒間接炎させた後で炎を取り除き、試験片に着火した火が消えるまでの時間を測定した。次に、火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間開始し、1回目と同様にして着火した火が消えるまでの時間を測定した。また、落下する火種により試験片の下の綿が着火するか否かについても同時に評価した。
1回目と2回目の燃焼時間、綿の着火の有無などから、上述のUL−94規格の垂直燃焼試験法にしたがって難燃性のランクをつけた。V−0が最高のものであり、以下V−1、V−2となるにつれて難燃性は低下する。燃焼が試験片のクランプ部まで進んだものについては、評価は規格外(NG)とした。
(2)に記載した試験片の作製方法と同様の条件で、厚み0.8mmの試験片を作製した。この試験片を用い、UL94(米国におけるUnder Writers Laboratories Inc.で定められた規格)の方法に従って測定した。
すなわち、試験片を垂直に保ち、下端にバーナーの火を10秒間接炎させた後で炎を取り除き、試験片に着火した火が消えるまでの時間を測定した。次に、火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間開始し、1回目と同様にして着火した火が消えるまでの時間を測定した。また、落下する火種により試験片の下の綿が着火するか否かについても同時に評価した。
1回目と2回目の燃焼時間、綿の着火の有無などから、上述のUL−94規格の垂直燃焼試験法にしたがって難燃性のランクをつけた。V−0が最高のものであり、以下V−1、V−2となるにつれて難燃性は低下する。燃焼が試験片のクランプ部まで進んだものについては、評価は規格外(NG)とした。
(6)成形性(成形サイクル)
得られた樹脂組成物のペレットを用い、(2)と同様にして、射出成形機(東芝機械社製、「IS−80G」)でASTMダンベル型試験片を作製した。具体的には、シリンダー温度190℃で溶融し、金型温度90℃の条件で溶融樹脂を充填した。成形サイクルは、樹脂組成物が金型内に射出(充填、保圧)、冷却された後、成形体が金型に固着、または、抵抗なく取り出すことができ、突き出しピンによる変形がなく、良好に離型できるまでの所要時間(秒)とした。
得られた樹脂組成物のペレットを用い、(2)と同様にして、射出成形機(東芝機械社製、「IS−80G」)でASTMダンベル型試験片を作製した。具体的には、シリンダー温度190℃で溶融し、金型温度90℃の条件で溶融樹脂を充填した。成形サイクルは、樹脂組成物が金型内に射出(充填、保圧)、冷却された後、成形体が金型に固着、または、抵抗なく取り出すことができ、突き出しピンによる変形がなく、良好に離型できるまでの所要時間(秒)とした。
〈原料〉
<ポリ乳酸(A)>
・PLA−1;トヨタ自動車社製 S−12 D体含有量=0.1モル% 残存ラクチド量=1100ppm。
・PLA−2;PLA−1に以下のようにアセトン処理を施し、PLA−2を得た。
PLA−1とアセトンの質量比が1:2になるよう計測し、PLA−1にアセトンを加え、室温条件下で1時間、150rpmで攪拌した。その後、ろ過して70℃×24時間真空乾燥(Yamato Vacuum dry DP61を使用)することでアセトンの除去を行い、ポリ乳酸(PLA−2)を得た。得られたPLA−2の残存ラクチド量は400ppmであった。
・PLA−3;トヨタ自動車社製 A−1 D体含有量=0.6モル% 残存ラクチド量=1020ppm。
・PLA−4;PLA−3にPLA−2を得たときと同様のアセトン処理を施し、PLA−4を得た。得られたPLA−2の残存ラクチド量は280ppmであった。
・PLA−5;ユニチカ社製 TE−4000 D体含有量=1.3モル% 残存ラクチド量=2000ppm。
・架橋PLA;二軸押出機(東芝機械社製 商品名「TEM37BS型」)を用い、押出機の根元供給口からポリ乳酸(A)としてPLA−1を供給し、また、混練途中からポリ乳酸100質量部に対して0.2質量部となる量の過酸化物を注入し、バレル温度190℃、スクリュー回転数180rpm、吐出量15kg/hの条件で、ベントを効かせながら溶融押出を実施した。押出機先端から吐出された溶融樹脂をストランド状に引き取り、冷却水を満たしたバットを通過させて冷却した後、ペレット状にカッティングして、架橋ポリ乳酸(架橋PLA)のペレットを得た。
<金属水酸化物(B)>
・Al;水酸化アルミニウム:日本軽金属社製、商品名「BE023」
・Mg;水酸化マグネシウム:協和化学工業社製、商品名「キスマ5A」
・Ca;水酸化カルシウム:関東化学社製
<スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)>
・Ba;5−スルホイソフタル酸ジメチルバリウム:竹本油脂社製、商品名「LAK−403」
・K;5−スルホイソフタル酸ジメチルカリウム:竹本油脂社製、商品名「LAK−301」
<その他の難燃剤>
・リン酸エステル化合物:大八化学社製 商品名「PX−200」
<その他の結晶核剤>
・タルク:林化成社製、商品名「MW−HST」
<ドリップ防止剤(E)>
・ポリテトラフルオロエチレン(PTFE):三井デュポンフルオロケミカル社製、「テフロン(登録商標)30J」
<ポリ乳酸(A)>
・PLA−1;トヨタ自動車社製 S−12 D体含有量=0.1モル% 残存ラクチド量=1100ppm。
・PLA−2;PLA−1に以下のようにアセトン処理を施し、PLA−2を得た。
PLA−1とアセトンの質量比が1:2になるよう計測し、PLA−1にアセトンを加え、室温条件下で1時間、150rpmで攪拌した。その後、ろ過して70℃×24時間真空乾燥(Yamato Vacuum dry DP61を使用)することでアセトンの除去を行い、ポリ乳酸(PLA−2)を得た。得られたPLA−2の残存ラクチド量は400ppmであった。
・PLA−3;トヨタ自動車社製 A−1 D体含有量=0.6モル% 残存ラクチド量=1020ppm。
・PLA−4;PLA−3にPLA−2を得たときと同様のアセトン処理を施し、PLA−4を得た。得られたPLA−2の残存ラクチド量は280ppmであった。
・PLA−5;ユニチカ社製 TE−4000 D体含有量=1.3モル% 残存ラクチド量=2000ppm。
・架橋PLA;二軸押出機(東芝機械社製 商品名「TEM37BS型」)を用い、押出機の根元供給口からポリ乳酸(A)としてPLA−1を供給し、また、混練途中からポリ乳酸100質量部に対して0.2質量部となる量の過酸化物を注入し、バレル温度190℃、スクリュー回転数180rpm、吐出量15kg/hの条件で、ベントを効かせながら溶融押出を実施した。押出機先端から吐出された溶融樹脂をストランド状に引き取り、冷却水を満たしたバットを通過させて冷却した後、ペレット状にカッティングして、架橋ポリ乳酸(架橋PLA)のペレットを得た。
<金属水酸化物(B)>
・Al;水酸化アルミニウム:日本軽金属社製、商品名「BE023」
・Mg;水酸化マグネシウム:協和化学工業社製、商品名「キスマ5A」
・Ca;水酸化カルシウム:関東化学社製
<スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)>
・Ba;5−スルホイソフタル酸ジメチルバリウム:竹本油脂社製、商品名「LAK−403」
・K;5−スルホイソフタル酸ジメチルカリウム:竹本油脂社製、商品名「LAK−301」
<その他の難燃剤>
・リン酸エステル化合物:大八化学社製 商品名「PX−200」
<その他の結晶核剤>
・タルク:林化成社製、商品名「MW−HST」
<ドリップ防止剤(E)>
・ポリテトラフルオロエチレン(PTFE):三井デュポンフルオロケミカル社製、「テフロン(登録商標)30J」
実施例1〜21、比較例1〜17
二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)を用い、ポリ乳酸(A)、金属水酸化物(B)、スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)のそれぞれについて、表1、2に示す種類のものを、表1、2に示す割合でドライブレンドした。これを押出機の根元供給口からトップフィードし、バレル温度190℃、スクリュー回転数200rpm、吐出18kg/hの条件で、ベントを効かせながら溶融押出しを実施した。押出機先端から吐出された溶融樹脂をストランド状に引き取り、冷却水を満たしたバットを通過させて冷却固化した後、ペレット状にカッティングしてポリ乳酸系樹脂組成物(ペレット状のもの)を得た。
二軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)を用い、ポリ乳酸(A)、金属水酸化物(B)、スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)のそれぞれについて、表1、2に示す種類のものを、表1、2に示す割合でドライブレンドした。これを押出機の根元供給口からトップフィードし、バレル温度190℃、スクリュー回転数200rpm、吐出18kg/hの条件で、ベントを効かせながら溶融押出しを実施した。押出機先端から吐出された溶融樹脂をストランド状に引き取り、冷却水を満たしたバットを通過させて冷却固化した後、ペレット状にカッティングしてポリ乳酸系樹脂組成物(ペレット状のもの)を得た。
実施例1〜21、比較例1〜17で得られたポリ乳酸系樹脂組成物の特性値を表1、2に示す。
表1から明らかなように実施例1〜21で得られた樹脂組成物は、短い成形サイクルで成形体を得ることができ、得られた成形体は難燃性、耐熱性、耐衝撃性に優れていた。
中でも、実施例14、17で得られた樹脂組成物は、アセトン処理が施され、残存ラクチド量が700ppm以下であるPLA−2を用いたため、PLA−1を用い、同様の組成である実施例2、6の樹脂組成物よりも、成形性、耐熱性、難燃性ともに優れていた。
また、実施例16、19で得られた樹脂組成物は、アセトン処理が施され、残存ラクチド量が700ppm以下であるPLA−4を用いたため、PLA−3を用い、同様の組成である実施例15、18の樹脂組成物よりも、成形性、耐熱性、難燃性ともに優れていた。
中でも、実施例14、17で得られた樹脂組成物は、アセトン処理が施され、残存ラクチド量が700ppm以下であるPLA−2を用いたため、PLA−1を用い、同様の組成である実施例2、6の樹脂組成物よりも、成形性、耐熱性、難燃性ともに優れていた。
また、実施例16、19で得られた樹脂組成物は、アセトン処理が施され、残存ラクチド量が700ppm以下であるPLA−4を用いたため、PLA−3を用い、同様の組成である実施例15、18の樹脂組成物よりも、成形性、耐熱性、難燃性ともに優れていた。
一方、比較例1〜3で得られた樹脂組成物は、D体含有量が1.0モル%を超えるPLA−5を用いたものであったため、PLA−1を用い、同様の組成である実施例2、3、8の樹脂組成物よりも、成形性、耐熱性、難燃性、耐衝撃性のいずれにおいても劣るものであった。比較例4〜6で得られた樹脂組成物は、ポリ乳酸(A)の割合が多すぎたため、金属水酸化物(B)の割合が少なくなりすぎ、難燃性に劣るものであった。比較例7〜8では、金属水酸化物(B)の割合が多すぎたため、金属水酸化物が二軸押出機の根元供給口に詰まり、樹脂組成物を得ることができなかった。比較例9〜12で得られた樹脂組成物は、スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を含有しないものであったため、また、比較例13で得られた樹脂組成物は、スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)の含有量が少ないため、結晶性が向上しないものとなり、成形性、耐熱性、難燃性ともに劣るものであった。比較例14で得られた樹脂組成物は、スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)の含有量が多すぎたため、曲げ強度に劣るものであった。比較例15で得られた樹脂組成物は、金属水酸化物(B)に代えてリン酸エステル化合物を用いたため、難燃効果が十分に発現せず、また、結晶性も低下し、難燃性、成形性、耐熱性、耐衝撃性ともに劣るものとなった。比較例16〜17の樹脂組成物は、結晶核剤としてタルクを用いたものであったため、結晶性が十分に向上せず、耐熱性、成形性に劣るものであった。さらには、金属水酸化物(B)による難燃性も向上せず、難燃性にも劣るものであった。
Claims (3)
- D体含有量が1.0モル%以下であるか、または99.0モル%以上であるポリ乳酸(A)、金属水酸化物(B)及びスルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を含有する樹脂組成物であって、ポリ乳酸(A)と金属水酸化物(B)の合計100質量部に対して、スルホイソフタル酸ジメチル金属塩(C)を0.1〜10質量部含有しており、ポリ乳酸(A)と金属水酸化物(B)の質量比〔(A)/(B)〕が50/50〜75/25であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
- ポリ乳酸(A)は、直鎖状のポリ乳酸である請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
- ポリ乳酸(A)は、アセトン処理が施されており、残存ラクチド量が700ppm以下である請求項1又は2記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
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