本発明に基づいた各実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。特に制限が無い限り、各実施の形態に示す構成に示す構成を適宜組み合わせて用いることは、当初から予定されていることである。
[実施の形態1]
(流体送り装置510)
図1を参照して、本実施の形態における流体送り装置510について説明する。本実施の形態における流体送り装置510は、たとえば、サーキュレータとして用いられることができる。流体送り装置510は、プロペラファン110と、駆動モータ(図示せず)とを備える。サーキュレータとしての流体送り装置510は、たとえば、広い室内において、エアコンから送出された冷気を撹拌するために用いられる。
(プロペラファン110)
本実施の形態におけるプロペラファン110は、3枚の翼21を有する。プロペラファン110は、駆動モータ(図示せず)に駆動されることによって、中心軸101を中心として矢印102に示す方向に回転する。翼21の回転によって風が生成され、流体送り装置510は送風することが可能となる。
プロペラファン110は、3枚以外の複数枚の翼21を備えていてもよいし、1枚のみの翼21を備えていてもよい。プロペラファン110が1枚のみの翼21を備える場合、中心軸101に対して翼21の反対側に、バランサーとしての錘が設けられるとよい。プロペラファン110は、サーキュレータとしての流体送り装置510に限られず、扇風機、エアーコンディショナ、空気清浄機、加湿機、除湿機、ファンヒータ、冷却装置、または換気装置などの各種の流体送り装置に用いられることもできる。
以下、図2〜図10を参照して、プロペラファン110の基本的な構造について説明する。図2は、プロペラファン110を吸込側から見た第1斜視図である。図3は、プロペラファン110を吸込側から見た第2斜視図である。図4は、プロペラファン110を吸込側から見た平面図である。図5は、プロペラファン110を噴出側から見た斜視図である。図6は、プロペラファン110を噴出側から見た平面図である。図7〜図10は、それぞれ、プロペラファン110を示す第1〜第4側面図である。
プロペラファン110は、たとえば、AS(acrylonitrile-styrene)樹脂等の合成樹脂により、樹脂成型品として一体成形されている。プロペラファン110は、回転軸部としてのボスハブ部41と、翼21A〜21C(図2参照)とを備える。以下、翼21A〜21Cを特に区別しない場合は、翼21A〜21Cの各々を翼21という。
プロペラファン110は、たとえば、一枚物の板金を捻り加工することによって作製されてもよいし、曲面を有して形成される一体の薄肉状物から作製されてもよい。これらの場合、そのプロペラファンは、別に成形したボスハブ部41に翼21A、翼21Bおよび翼21Cを接合する構造としてもよい。
ボスハブ部41は、プロペラファン110を、駆動源である駆動モータ(図示せず)の出力軸に接続する部分である。ボスハブ部41は、駆動モータからの回転動力を受けることにより、仮想の中心軸101を中心として所定の回転方向(矢印102方向)で回転する。本実施の形態のボスハブ部41は、中心軸101に沿って軸方向に延びる有底の円筒形状を有する。
翼21A〜21C(図2参照)は、ボスハブ部41の外表面41Sから中心軸101の半径方向外側に延出するように形成されている。翼21A〜21Cは、プロペラファン110の回転軸(中心軸101)の周方向において、等間隔に並んで配置されている。翼21Bは、翼21Aに対してプロペラファン110の回転方向の側に隣り合って配置され、翼21Cは、翼21Bに対してプロペラファン110の回転方向の側に隣り合って配置されている。
翼21A〜21Cが中心軸101を中心として矢印102に示す方向に回転する際、翼21A〜21Cはボスハブ部41と一体的に回転する。翼21A〜21Cは、中心軸101を中心に回転することにより、図中の吸込側から噴出側に送風を行なう。本実施の形態では、翼21A〜21Cは、同一形状に形成されている。いずれかの翼21を中心軸101を中心に回転させた場合に、その翼21の形状と別の翼21の形状とは一致する。
(翼21)
翼21は、翼根部34および翼根部34から板状に延びる翼面28を含む。翼根部34は、翼21とボスハブ部41の外表面41Sとの間(境目)に配置される。翼面28は、正圧面26と、正圧面26の裏側に配置される負圧面27とから構成されている。正圧面26は、中心軸101の軸方向において翼面28の噴出側に位置する。負圧面27は、中心軸101の軸方向において翼面28の吸込側に位置する。正圧面26および負圧面27の各々の表面は、全体として滑らかに形成されている。
翼面28は、プロペラファン110の回転に伴って送風を行ない、吸込側から噴出側に空気を送り出す。プロペラファン110の回転時、翼面28上で空気流れが発生することに伴って、正圧面26で相対的に大きく、負圧面27で相対的に小さくなる圧力分布が生じる。
翼面28の周縁には、翼根部34のうちの回転方向の側の部分から翼根部34のうちの回転方向の反対側の部分に向かって、前縁部22、翼先端部104(図4、図6、および図7〜図10参照)、外縁部23、翼後端部105(図4、図6、および図7〜図10参照)、および、後縁部24がこの順で環状に形成される。
翼21を平面的に見た場合に、翼21は、前縁部22と外縁部23とが交わる翼先端部104を先端にして、鎌状に尖った形状を有する。前縁部22および後縁部24の径方向内側の部分においては、回転方向に沿ったそれらの幅が徐々に小さくなうように構成されており、前縁部22および後縁部24の径方向外側の部分においては、回転方向に沿ったそれらの幅が徐々に大きくなるように構成されている。
具体的には、前縁部22は、翼21の回転方向(矢印102方向)の上流側に配置される。プロペラファン110を中心軸101の軸方向から見た場合(換言すると、プロペラファン110を平面的に見た場合)に、前縁部22は、翼根部34のうちの回転方向の側の部分から、中心軸101を中心とする半径方向内側から同方向外側に向けて延びている。前縁部22は、中心軸101を中心とする半径方向内側から同方向外側に湾曲しながら、プロペラファン110の回転方向に向かって延びている。
翼先端部104は、中心軸101から見て前縁部22の半径方向外側に配置される。翼先端部104は、前縁部22と次述する外縁部23とが接続される部分である。本実施の形態における翼先端部104は、翼21の中で最も回転方向の側に位置している。
後縁部24は、翼21の回転方向(矢印102方向)の下流側に配置される。プロペラファン110を中心軸101の軸方向から見た場合(換言すると、プロペラファン110を平面的に見た場合)に、後縁部24は、翼根部34のうちの回転方向の反対側の部分から、中心軸101を中心とする半径方向内側から同方向外側に向けて延びている。後縁部24は、中心軸101を中心とする周方向において、前縁部22と対向して配置されている。後縁部24は、中心軸101を中心とする半径方向内側から同方向外側に緩やかに湾曲しながら、プロペラファン110の回転方向に向かって延びている。
翼後端部105は、中心軸101から見て後縁部24の半径方向外側に配置される。翼後端部105は、後縁部24と次述する外縁部23とが接続される部分である。本実施の形態のプロペラファン110における翼先端部104は、翼後端部105よりも中心軸101を中心とする内周側に配置されている。
外縁部23は、中心軸101の周方向に沿って延び、翼先端部104と翼後端部105との間を接続するように設けられる。外縁部23は、外縁部23の周方向に延びる線上においてプロペラファン110の最も回転方向の側に位置する翼先端部104で前縁部22と交わり、外縁部23の周方向に延びる線上においてプロペラファン110の最も回転方向の反対側に位置する翼後端部105で後縁部24と交わっている。外縁部23は、全体として、翼先端部104と翼後端部105との間で円弧状に延びている。
前縁部22、翼先端部104、外縁部23、翼後端部105、および、後縁部24は、翼根部34とともに翼21の周縁を形成する周縁部を構成している。この周縁部(前縁部22、翼先端部104、外縁部23、翼後端部105、および、後縁部24)は、いずれも概ね弧状の形状を有するように形成されることで、角部を有さない滑らかな形状とされている。翼面28は、翼根部34とこの周縁部(前縁部22、翼先端部104、外縁部23、翼後端部105、および、後縁部24)とに囲まれた領域の内側の全域に亘って形成されている。
図2、図3、図5および図7〜図10を参照して、翼面28は、前縁部22から後縁部24に向かう周方向において、吸込側から噴出側に向かって全体として滑らかに湾曲するように形成されている。本実施の形態のプロペラファン110における翼21は、前縁部22と後縁部24とを結ぶ周方向の断面形状の厚みが、前縁部22および後縁部24から翼中心付近に向かうほど厚くなり、翼中心よりも前縁部22側に寄った位置に最大厚みを有する翼型形状を有している。
図4および図6を参照して、複数の翼21の周囲には、仮想的な外接円109が形成される。外接円109は、中心軸101を中心として半径Rを有し、その内側に複数の翼21が内接している。換言すると、翼21は、中心軸101を中心として最大半径Rを有し、外接円109は、翼21の外縁部23に接している。
本実施の形態における外縁部23は、外縁部23が外接円109に重なる位置と外縁部23が外接円109から離れる位置との境界に、最大径端部111(図4参照)を有する。外縁部23は、最大径端部111から翼先端部104に向けて、中心軸101を中心とする半径方向内側に湾曲しながら延びている。
(内側領域31・外側領域32・連結部33)
図11は、プロペラファン110を部分的に拡大し、吸込側から見た斜視図である。図12は、プロペラファン110を部分的に拡大し、吸込側から見た第1平面図である。図13は、プロペラファン110を部分的に拡大し、吸込側から見た第2平面図である。図14は、図13中のXIV−XIV線に沿った矢視図である。図15は、図13中のXV−XV線に沿った矢視断面図である。
図16は、図13中のXVI−XVI線に沿った矢視断面図である。図17は、図13中のXVII−XVII線に沿った矢視断面図である。図18は、図13中のXVIII−XVIII線に沿った矢視断面図である。図19は、図13中のXIX−XIX線に沿った矢視断面図である。図20は、図13中のXX−XX線に沿った矢視断面図である。図21は、図13中のXXI−XXI線に沿った矢視図である。
図11および図12(ならびに図2〜図10)を参照して、プロペラファン110の翼面28は、内側領域31、外側領域32、および、連結部33を有する。内側領域31、外側領域32、および、連結部33は、正圧面26および負圧面27の双方にそれぞれ形成されている。
内側領域31は、翼根部34をその一部に含み、連結部33および外側領域32に比べて中心軸101の半径方向の内側に位置する。外側領域32は、翼後端部105をその一部に含み、連結部33および内側領域31に比べて中心軸101の半径方向の外側に位置する。内側領域31における正圧面26の表面形状と、外側領域32における正圧面26の表面形状とは、相互に異なるように形成されている。内側領域31における負圧面27の表面形状と、外側領域32における負圧面27の表面形状とも、相互に異なるように形成されている。
連結部33は、翼面28の正圧面26側が凸となり且つ翼面28の負圧面27側が凹となるように、内側領域31と外側領域32とを連結している。連結部33は、概ね回転方向に沿うように設けられており、連結部33のうちの回転方向の最上流側に位置する前端部33Aから、連結部33のうちの回転方向の最下流側に位置する後端部33Bまで延在している。
連結部33は、内側領域31から外側領域32に向かうにしたがって翼面28がやや急峻な曲率変化を持って湾曲するようにして形成されており、相互に異なる表面形状を有する内側領域31および外側領域32との境目においてこれら同士を湾曲しながら連結している。
連結部33は、その付近において翼面28の半径方向断面視における曲率が極大となるように設けられており、正圧面26上においては湾曲状に突出した突条部として前端部33Aから後端部33Bに向かって筋状に延びるように現れており、負圧面27上においては湾曲状の窪んだ溝部として前端部33Aから後端部33Bに向かって筋状に延びるように現れている。
連結部33の前端部33Aは、翼先端部104寄りに位置し、後縁部24からは離れて設けられている。本実施の形態における連結部33の前端部33Aは、翼先端部104から回転方向とは反対側に向かって翼面28の内側にわずかに変位した位置に設けられている(図4、図6、図11、および図12参照)。
連結部33の前端部33Aは、後縁部24から離れていれば、前縁部22寄りに位置するように設けられていてもよいし、外縁部23寄りに位置するように設けられていてもよい。連結部33の前端部33Aは、前縁部22、翼先端部104、または外縁部23のいずれかと重なるように、前縁部22上に設けられていてもよいし、翼先端部104上に設けられていてもよいし、外縁部23上に設けられていてもよい。
連結部33の後端部33Bは、後縁部24寄りに位置し、前縁部22、翼先端部104および外縁部23のいずれに対しても離れて設けられている。本実施の形態における連結部33の後端部33Bは、中心軸101の半径方向における後縁部24の略中央位置から回転方向に向かって翼面28の内側にわずかに変位した位置に設けられている(図4、図6、図11、および図12参照)。連結部33の後端部33Bは、後縁部24と重なるように、後縁部24上に設けられていてもよい。連結部33は、翼先端部104から翼後端部105までの途中に位置する外縁部23の部分から、後縁部24まで設けられていてもよい。
図12に示すように、翼21が中心軸101を中心として矢印102に示す方向に回転した場合、翼面28上には、翼先端部104の付近を中心として、前縁部22、翼先端部104、および外縁部23のそれぞれから後縁部24に向かって流れる翼先端渦340が発生する。この翼先端渦340は、正圧面26上および負圧面27上のそれぞれに発生する。好ましくは、連結部33は、この翼先端渦340の流れに沿うように設けられる。
(連結部33の湾曲度合い)
図13〜図15に示すように、本実施の形態の連結部33は、連結部33の前端部33Aが前縁部22、翼先端部104、および外縁部23のいずれにも到達しない(重ならない)ように設けられている。連結部33の存在に起因した湾曲は、前縁部22、翼先端部104、および外縁部23のいずれにも現れておらず、連結部33の前端部33Aの周囲に位置する翼面28(正圧面26および負圧面27)は、前端部33Aを通り且つ中心軸101の半径方向に沿った断面視において、180°となるように平坦に形成されている。
図13および図16に示すように、連結部33は、翼面28(正圧面26および負圧面27)が連結部33における前端部33Aの回転方向とは反対側の近傍で比較的急峻に湾曲するように設けられている。図13、図17および図18に示すように、連結部33は、連結部33の負圧面27側に仮想的に形成される内角θが、前端部33Aから回転方向における連結部33の中心付近に向かうにつれて徐々に小さくなるように設けられている。好ましくは、この内角θは、回転方向における連結部33の中心付近で最も小さくなるように形成されているとよい。
図13および図19に示すように、連結部33は、連結部33の負圧面27側に仮想的に形成される内角θが、回転方向における連結部33の中心付近から後端部33Bに向かうにつれて徐々に大きくなるように設けられている。図13、図20、および図21に示すように、本実施の形態の連結部33は、連結部33の後端部33Bが後縁部24に到達しない(重ならない)ように設けられている。連結部33の存在に起因した湾曲は、後縁部24には現れておらず、連結部33の後端部33Bの周囲に位置する翼面28(正圧面26および負圧面27)は、後端部33Bを通り且つ中心軸101の半径方向に沿った断面視において、180°となるように平坦に形成されている。
(食い違い角θA,θB)
図22は、図11中のXXII−XXII線に沿った矢視断面図である。図11および図22に示すように、翼面28のうちの連結部33よりも半径方向内側に位置する内側領域31は、所定の食い違い角θA(図22参照)を有する。内側領域31における前縁部22上の点と内側領域31における後縁部24上の点とを結ぶことにより、仮想直線31L(図22参照)が形成される。食い違い角θAとは、仮想直線31Lと中心軸101とがこれらの間になす角度のことである。
図22に示すように、本実施の形態における翼21の内側領域31は、前縁部22および後縁部24を両端として内側領域31の中腹部が仮想直線31Lから噴出側に向かって遠ざかるように湾曲し、翼面28(内側領域31)の正圧面26側が凸となり翼面28(内側領域31)の負圧面27側が凹となるように反った形状を有している。
また、本実施の形態における翼21は、翼面28のうちの連結部33よりも半径方向内側の部分の食い違い角θAが、ボスハブ部41に近づくにしたがって小さくなるように形成されている。
図23は、図11中のXXIII−XXIII線に沿った矢視断面図である。図11および図23に示すように、翼面28のうちの連結部33よりも半径方向外側に位置する外側領域32は、所定の食い違い角θB(図23参照)を有する。外側領域32における前縁部22上の点と外側領域32における後縁部24上の点とを結ぶことにより、仮想直線33L(図23参照)が形成される。食い違い角θBとは、仮想直線33Lと中心軸101とがこれらの間になす角度のことである。
図23に示すように、本実施の形態における翼21の外側領域32は、前縁部22および後縁部24を両端として外側領域32の中腹部が仮想直線33Lから吸込側に向かって遠ざかるように湾曲し、翼面28(外側領域32)の正圧面26側が凹となり翼面28(外側領域32)の負圧面27側が凸となるように反った形状を有している。
図22および図23を参照して、本実施の形態における翼21は、食い違い角θBよりも食い違い角θAの方が小さくなるように形成される。翼21は、翼根部34における食い違い角θAも、外縁部23における食い違い角θBに比べて小さくなるように形成される。さらに、翼21は、翼根部34および内側領域31においては正圧面26側が凸となり負圧面27側が凹となるように反った形状を有し、外側領域32および外縁部23においては正圧面26側が凹となり負圧面27側が凸となるように反った形状を有している(逆キャンバー構造)。
(作用・効果)
図24〜図26を参照して、本実施の形態における流体送り装置510(図1参照)およびプロペラファン110の作用および効果について説明する。図24は、プロペラファン110の翼21が回転している際の様子を吸込側から見た平面図である。図25は、プロペラファン110の翼21が回転している際の様子を噴出側から見た平面図である。図26は、プロペラファン110を連結部33に沿って仮想的に切断したときの断面図であり、プロペラファン110の翼21が回転している際の様子を示す図である。
図24および図25に示すように、流体送り装置510(図1参照)が使用される際には、プロペラファン110の翼21が中心軸101を中心として矢印102に示す方向に回転する。本実施の形態のプロペラファン110における翼21の翼面28(正圧面26および負圧面27の双方)上には、翼先端渦340、主流310、二次流れ330、馬蹄渦320、および馬蹄渦350が、空気流れとしてそれぞれ発生する。
翼先端渦340は、プロペラファン110の回転時、主として翼先端部104が空気と衝突することによって形成される。翼先端渦340は、主として翼先端部104を起点として発生し、翼先端部104、翼先端部104の近傍に位置する前縁部22の翼先端部104寄りの部分、および、翼先端部104の近傍に位置する外縁部23の翼先端部104寄りの部分から、翼面28上を通過して後縁部24に向かってそれぞれ流れる。
主流310は、プロペラファン110の回転時、翼先端渦340よりも翼面28のさらに上層側に形成される。換言すると、主流310は、翼先端渦340が形成される翼面28の表層に対して、翼先端渦340を挟んで翼面28の反対側に形成される。主流310は、前縁部22、翼先端部104、および外縁部23から翼面28上に流入し、後縁部24に向かって流れる。
馬蹄渦320は、プロペラファン110の回転に伴って生じる正圧面26と負圧面27との圧力差に起因して、正圧面26から負圧面27に流れ込むように外縁部23に沿って発生する。二次流れ330は、プロペラファンの回転に伴って生じる遠心力に起因して、ボスハブ部41から外縁部23に向かって流れるように発生する。馬蹄渦350は、連結部33が翼面28に設けられている部分を二次流れ330が横切るように流れることにより発生する。
上述のとおり、本実施の形態における連結部33の前端部33Aは、翼先端部104から回転方向とは反対側に向かって翼面28の内側にわずかに変位した位置に設けられ、連結部33の後端部33Bは、中心軸101の半径方向における後縁部24の略中央位置から回転方向に向かって翼面28の内側にわずかに変位した位置に設けられている(図4、図6、図11、および図12参照)。この構成によって、連結部33は、主流310および翼先端渦340の流れる方向に概ね沿うように形成されることになる。
図26に示すように、内側領域31および外側領域32を湾曲して連結する連結部33は、翼面28の表層における連結部33の近傍に、馬蹄渦350および翼先端渦340を保持させ、翼面28の表層から馬蹄渦350および翼先端渦340が剥離してしまうことを抑制する。連結部33は、連結部33の近傍で発生し連結部33によって保持されながら流れる馬蹄渦350が、発達したり変動したりすることも抑制する。
翼先端部104の近傍で発生し連結部33によって保持されながら流れる翼先端渦340と、連結部33の近傍で発生し連結部33によって保持されながら流れる馬蹄渦350とは、主流310に対して運動エネルギを付与する。運動エネルギを付与された主流310は、翼面28上の下流側で翼面28から剥離しにくくなる。結果として、剥離領域52を縮小もしくは消滅させることができる。プロペラファン110は、剥離が抑制されることによって、回転時に発生する騒音を低減することができ、連結部33を設けない場合と比較して風量を増加させて高効率化することが可能となる。
図27は、一般的なプロペラファンを本実施の形態におけるプロペラファン110の連結部33に対応する部分に沿って仮想的に切断したときの断面図であり、このプロペラファンの翼が回転している際の様子を示す図である。この一般的なプロペラファンは、連結部33を有していない点のほかは、プロペラファン110と略同様に構成される。
この一般的なプロペラファンにおいては、翼面28の正圧面26および負圧面27の各々に発生する主流310および翼先端渦340が、前縁部22、翼先端部104、および外縁部23に近い翼面28上の上流側では翼面28に沿った流れとなるものの、後縁部24に近い翼面28上の下流側では翼面28に沿った流れとなりにくい。下流側で翼先端渦340から主流310に対して運動エネルギが付与されないため、主流310が翼面28から剥離する剥離領域52が生じやすい。このプロペラファンは、回転時に発生する騒音を低減することは困難となる。このような傾向は、正圧面26および負圧面27のうち、特に負圧面27上で顕著となる。
本実施の形態のプロペラファン110の回転時、連結部33が設けられている領域の近傍においては、主流310は半径方向外側から同方向内側に向かって流れる。したがって、連結部33を主流310の流れに概ね沿うように形成し、連結部33が設けられている領域についても翼型を採用することで、あらゆる主流310の流れに対して翼型を実現できるため、より効率的な送風を行うことが可能となる。
内側領域31側から外側領域32側に向かって翼面28が滑らかに湾曲するようにして連結部33が設けられていることによって、翼面28の形状に設計上の自由度を確保することができる。たとえば、馬蹄渦の発生を抑制するために、翼先端部104に向かって前縁部22および外縁部23の幅が細くなる鎌形状を維持しながらボスハブ部41付近での翼面28の高さを高くするといった複雑な翼面28の形状についても対応可能となる。
図13等を参照して上述したとおり、本実施の形態におけるプロペラファン110は、連結部33の前端部33Aの周囲に位置する翼面28(正圧面26および負圧面27)が、前端部33Aを通り且つ中心軸101の半径方向に沿った断面視において180°となるように平坦に形成され、さらに、連結部33の後端部33Bの周囲に位置する翼面28(正圧面26および負圧面27)は、後端部33Bを通り且つ中心軸101の半径方向に沿った断面視において、180°となるように平坦に形成されている。当該構成によれば、翼面28に流入する風および翼面28から流出する風を乱さないので、主流310に対する抵抗を少なくすることが可能となる。なお、当該構成は、必要に応じて設けられるとよい。
図22および図23等を参照して上述したとおり、本実施の形態におけるプロペラファン110は、翼21が、食い違い角θBよりも食い違い角θAの方が小さくなるように形成される。翼21は、翼根部34における食い違い角θAも、外縁部23における食い違い角θBに比べて小さくなるように形成される。当該構成によれば、不快感の原因となっている半径方向外側の風速のピークを調整することが可能である。
図22および図23等を参照して上述したとおり、本実施の形態における翼21は、翼根部34および内側領域31においては正圧面26側が凸となり負圧面27側が凹となるように反った形状を有し、外側領域32および外縁部23においては正圧面26側が凹となり負圧面27側が凸となるように反った形状を有している。当該構成は、逆キャンバー構造ということができる。
一般的なプロペラファンは、その構造に起因して、半径方向内側の部分の周速は遅く、半径方向外側の部分の周速は速くなる。空気の流入角は、半径方向内側に位置する翼根部側と半径方向外側に位置する外縁部側(翼端側)とで異なることになる。したがって、外縁部側(翼端側)で適切な空気の流入が行われるように外縁部側(翼端側)の流入角(キャンバー角)を設計すると、翼根部側では空気の流入が良好に行われにくくなり、翼根部側では空気流れに剥離が生じてしまう場合がある(逆も然り)。
そのために、本実施の形態におけるプロペラファン110のように、半径方向内側に位置する翼根部34側と半径方向外側に位置する外縁部23側(翼端側)とでそれぞれ適切にキャンバー角を変化させ、翼根部34側の空気の流入角が大きな領域においては逆キャンバー構造を与えることにより、半径方向の全域にわたって翼面28に対して空気を適切な流入角で流入させることができ、さらには空気流れの剥離を防止することが可能となる。
なお、翼根部34および内側領域31においては正圧面26側が凸となり負圧面27側が凹となるように反った形状を有し、外側領域32および外縁部23においては正圧面26側が凹となり負圧面27側が凸となるように反った形状を有するような翼面28の構成(逆キャンバー構造)は、翼面28に連結部33が設けられるという技術的な思想とは独立して実施することが可能である。
プロペラファンに連結部33が設けられていなくても、翼面28が逆キャンバー構造を有するという構成によれば、半径方向の全域にわたって翼面28に対して空気を適切な流入角で流入させることができ、さらには空気流れの剥離を防止するといった課題が解決されることとなる。
図22等を参照して上述したとおり、本実施の形態における翼21は、翼面28のうちの連結部33よりも半径方向内側の部分の食い違い角θAが、ボスハブ部41に近づくにしたがって小さくなるように形成されている。当該構成によって、中心軸101を中心とする内周側においては、中心軸101に近づくにつれて送風能力が高くなる。
一般的なプロペラファンにおいては、半径方向の吹き出し風速分布に大きな差があり、半径方向外側では風速が大きくなり、翼の先端部付近では最も高速となり極端なピーク点を有する。中心軸101の近傍の翼21が機能していない部分と、翼21が最も機能している部分とでは、風速の差が過大となり、吹き出し風速のムラが生じ、これが不快感の大きな原因となってしまう。
これに対して本実施の形態におけるプロペラファン110によれば、内周側と外周側との間の風量(風速)の差を緩和することができる。プロペラファン110によってより均一な送風が行われ、送風を受けた人が不快に感じることを抑制することが可能となる。プロペラファン110によれば、ファンの占有可能な空間を最大限活用することもでき、強力な送風をすることも可能となる。なお、当該構成は、必要に応じて設けられるとよい。
プロペラファン110によってより均一な送風を行うという観点からは、翼21は、翼21のうちの連結部33よりも半径方向内側の部分(内側領域31)の翼面積が、翼面28のうちの連結部33よりも半径方向外側の部分(外側領域32)の翼面積と同一若しくはこれよりも大きくなるように形成されているとよい。
当該構成によって、翼21のうちの連結部33よりも半径方向内側の部分(内側領域31)の送風能力を増加させ、翼面28のうちの連結部33よりも半径方向外側の部分(外側領域32)の送風能力を低減することができる。内周側と外周側との間の風量(風速)の差を緩和することができ、プロペラファン110によってより均一な送風が行われ、送風を受けた人が不快に感じることを抑制することが可能となる。当該構成は、必要に応じて設けられるとよい。
[実施の形態1の変形例]
上述の実施の形態1におけるプロペラファン110の連結部33は、内側領域31から外側領域32に向かうにしたがって翼面28がやや急峻な曲率変化を持って湾曲するようにして形成されており、相互に異なる表面形状を有する内側領域31および外側領域32との境目においてこれら同士を湾曲しながら連結している。
図28に示すように、連結部33は、内側領域31から外側領域32に向かうにしたがって翼面28がやや急峻な曲率変化を持って湾曲するようにして形成され、相互に異なる表面形状を有する内側領域31および外側領域32との境目においてこれら同士を屈曲しながら連結していてもよい。当該構成によっても、上述の実施の形態1におけるプロペラファン110と略同様の作用および効果を得ることができる。
なお、連結部33において翼面28があまり極端に折れ曲がると、その連結部33の形状は、翼面28で発生する主流ではない二次流れに影響しやすくなる。同じ空間を最大限使用する場合にも、連結部33での空気流れを考慮し、適切な湾曲度合いまたは屈曲度合いを定めるとよい。
[実施の形態2]
図29および図30を参照して、本実施の形態におけるプロペラファン120について説明する。プロペラファン120は、上述の実施の形態1におけるプロペラファン110の構成に加えて、前縁部22から外縁部23の翼先端部104寄りの部分までの領域R1において、中心軸101の軸方向においてこれらが一定の高さを維持するように形成されている。本実施の形態におけるこの領域R1は、前縁部22上においてはその全域に亘って形成されており、外縁部23上においては、最大径端部111よりも翼先端部104寄りの部分に形成されている。
軸方向の高さの基準面として、噴出側において中心軸101に直交する仮想平面を規定したとする。この場合、一般的なプロペラファンの前縁部22は、前縁部22の仮想平面からの高さが、中心軸101の外周側で高く、内周側で低く設けられる。この場合、翼21の仮想平面からの高さが、中心軸101を中心とする外周側と比較して、内周側で極端に小さくなり、その内周側における翼21の送風能力が極めて低くなってしまう。
これに対して、本実施の形態におけるプロペラファン120においては、前縁部22が、中心軸101を中心とする内周側と外周側との間で一定の高さを有する。このような構成により、中心軸101を中心とする内周側において翼21の仮想平面からの高さが大きく設定されることになり、送風能力を向上させることができる。これにより、同じ直径および同じ高さの翼を有する一般的なプロペラファンと比較した場合に、プロペラファンから送り出される風量を大幅に増大させることができる。
中心軸101を中心とする内周側で送風能力を高めることによって、複数の翼21の回転によって仮想的に形成される占有空間の体積に対する送風効率を高めることができる。この場合、同一風量を送風することに際しても、翼21の回転数をより低い値に抑えることができるため、省エネルギや低騒音の観点において有利となる。
また、中心軸101を中心とする内周側で送風能力を高めることによって、内周側と外周側との間の風量(風速)の差を緩和することができる。これにより、プロペラファン120からより均一な送風が可能となり、送風を受けた人が不快に感じることを防止できる。
[実施の形態2の変形例]
上述の実施の形態2におけるプロペラファン120では、前縁部22から外縁部23の翼先端部104寄りの部分までの領域R1が、前縁部22上においてはその全域に亘って形成されており、外縁部23上においては、最大径端部111よりも翼先端部104寄りの部分に形成されている。
図31に示すプロペラファン120Aのように、上記の領域R1は、ボスハブ部41と、ボスハブ部41から中心軸101の半径方向外側に離れた位置との間に形成されていてもよい。プロペラファン120Aの前縁部22も、領域R1において中心軸101の軸方向において一定の高さを有している。
前縁部22が中心軸101の軸方向において一定の高さを有する領域R1は、たとえば、ボスハブ部41と、中心軸101から0.4R〜0.6R(Rは、プロペラファン120の平面視における翼21の最大半径(図4および図6参照))だけ離れた位置との間に形成される。
プロペラファン120Aのように、中心軸101の軸方向において一定の高さを有する領域R1が前縁部22のボスハブ部41よりの一部に形成されている場合であっても、中心軸101を中心とする内周側において翼21の高さが大きく設定されることになり、送風能力を向上させることができ、上述の実施の形態2におけるプロペラファン120と略同様の作用および効果を得ることが可能となる。
また、翼21の前縁部22の高さが、ボスハブ部41からある区間までは一定とし、それ以降は低くなっていくように構成してもよい。この構成によると、前縁部22のボスハブ部41側の部分が、前縁部22の翼先端部104側の部分に比べて高くなる。半径方向内側では遅くなりがちな風速が速くなるため、前縁部22のボスハブ部41側の部分と前縁部22の翼先端部104側の部分との間に生じてしまう風速の差を縮めることが可能となる。結果として、翼21の下流側で発生する風のムラが小さくなる。前縁部22のボスハブ部41側の部分での風速が遅く、前縁部22の翼先端部104側の部分で風速が極端に速くなってしまうことを抑えることにより、半径方向で風速の分布が均一になるため、生じる風がより滑らかで快適となる。
[実施の形態3]
図32を参照して、本実施の形態におけるプロペラファン130について説明する。プロペラファン130は、上述の実施の形態2におけるプロペラファン120の構成に加えて、後縁部24が、中心軸101を中心とする外周側の領域R2で、中心軸101の軸方向において一定の高さを有している。
図32中には、プロペラファン130の噴出側に、中心軸101に直交する仮想平面107が示されている。この仮想平面107を基準にして、後縁部24は、中心軸101を中心とする外周側の領域R2で一定の高さH2を有している。
このような構成によれば、中心軸101を中心とする外周側においても、翼21の高さを大きく維持する。これにより、複数の翼21の回転によって仮想的に形成される占有空間の体積に対するプロペラファン130の送風効率をさらに高めることができる。
プロペラファン130では、駆動モータから延出する回転シャフトにボスハブ部41を固定するための図示しないスピンナーと、翼21とが相互に干渉することを避けるために、後縁部24の高さが、中心軸101を中心とする内周側で高くなっている。このような構成に限られず、ボスハブ部41を噴出側に延長して、後縁部24の高さをボスハブ部41と外縁部23との間で一定としてもよい。
[実施の形態4]
図33〜図38を参照して、本実施の形態におけるプロペラファン140について説明する。図33および図34に示すように、プロペラファン140の翼21は、上述の実施の形態3におけるプロペラファン130の翼21の構成に加えて、翼21の外縁部23が、前縁部22側に位置する前方外縁部37と、後縁部24側に位置する後方外縁部39と、前方外縁部37および後方外縁部39を接続する所定形状の接続部38とを含んでいる。本実施の形態においては、翼21の外縁部23に、中心軸101側に向けて窪む形状を有する接続部38が形成されている。接続部38は、外縁部23における翼先端部104と翼後端部105との間の途中の位置に形成されている。外縁部23に接続部38が形成されることにより、翼21の外縁部23には、外縁部23の翼先端部104側に位置する前方外縁部37と、外縁部23の翼後端部105側に位置する後方外縁部39とが設けられることになる。
ここで、接続部38は、図示するように滑らかに湾曲した形状となるように形成されていることが好ましいが、必ずしもこれが湾曲した形状とされず、屈曲した形状とされていてもよい。本実施の形態においては、接続部38が外縁部23上において比較的浅く窪むように形成されているため、接続部38は、略鈍角形状を有している。接続部38が形成される位置は、外縁部23上の位置であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態においては、外縁部23の翼後端部105寄りの位置に接続部38が形成されている。本実施の形態においては、前方外縁部37の回転方向に沿った幅は、後方外縁部39の回転方向に沿った幅よりも大きく形成されている。このような形状の外縁部23とすることにより、以下のような効果が得られることになる。
第一に、上記構成の翼21とすることにより、径方向における風速分布をより均一にすることができ、風速のムラを抑制することが可能となって風当たりの良い風とすることができる。
すなわち、外縁部23に窪み形状の接続部38が形成されていない翼形状とした場合には、径方向外側に向かうにつれてほぼ比例して風速が大きくなるため、径方向内側寄りの部分において発生する風の風速と、径方向外側寄りの部分において発生する風の風速との間に大きな差が生じ、発生する風に大きな風速のムラが生じてしまうことになる。
これに対し、本実施の形態においては、外縁部23上に窪み形状の接続部38が形成されているため、外縁部23上に窪み形状の接続部38が形成されていない場合に比べ、外縁部23近傍(すなわち径方向外側寄りの部分)において翼面積が減少することになる。そのため、径方向外側に向かうにつれてほぼ比例して大きくなる風速が、外縁部23寄りの部分において緩和されることになり、径方向内側寄りの部分において発生する風の風速と、外縁部23寄りの部分において発生する風の風速とが近づくことになり、径方向における風速分布がより均一になる。したがって、風速のムラが抑制可能となり、風当たりの良い風とすることができる。
第二に、上記構成の翼21とすることにより、径方向外側寄りの部分において発生される風に含まれる圧力変動が小さくなる風当たりの良い風を発生させることができる。
すなわち、外縁部23に窪み形状の接続部38が形成されていない翼形状とした場合には、翼と翼との間の比較的大きな空間を空気が通過することとなり、発生する風に大きな圧力変動が生じてしまうことになる。これは、より風速の速い風が発生される外縁部23側の部分において特に顕著となり、翼21の枚数が少なくなればなるほど大きな圧力差を含む風が発生することになる。
これに対し、本実施の形態においては、外縁部23に窪み形状の接続部38が形成された翼形状であるため、1枚の翼21の前方外縁部37と後方外縁部39との間に比較的小さな空間(すなわち窪み形状の接続部38が位置する空間)が形成されることになり、当該空間が、翼21の中に風を発生させない空間として存在することになる。
その結果、風速の速い風が発生される外縁部23側の部分において、翼面積が減少することで発生される風に生じる圧力差が緩和されることとなる上に、圧力変動がより小刻みに生じることになるため、1枚の翼21に設けられた前方外縁部37と後方外縁部39とがあたかも2枚分の翼で風を送風する場合と近似の役目を果たすことになり、全体として圧力変動が小さな風当たりの良い風を発生させることができる。
第三に、上記構成の翼21とすることにより、低速回転時においては、広範囲に拡散する風当たりの良い風とすることができ、高速回転時においては、直進性が高くより遠くへ到達する風とすることができる。この点につき、図35ないし図38を参照して、より詳細に説明する。
図35は、プロペラファン140を低速回転させた場合に得られる風の流れを示す概念図である。図36は、流体送り装置520においてプロペラファン140を低速回転させた場合に得られる風の状態を模式的に示す図である。図37は、プロペラファン140を高速回転させた場合に得られる風の流れを示す概念図である。図38は、流体送り装置520においてプロペラファン140を高速回転させた場合に得られる風の状態を模式的に示す図である。図35および図37においては、翼先端渦の代表的な軌道として、外縁部23の翼先端部104付近で発生する翼先端渦の軌道を破細線にて模式的に示し、馬蹄渦の代表的な軌道を細線にて模式的に示し、さらに翼21の外縁部23寄りの位置にて発生される風の軌道を太線にて模式的に示している。
上述したように、本実施の形態においては、翼21の外縁部23上の位置に窪み形状の接続部38が形成されている。外縁部23上の位置は、翼先端部104の下流側であってかつ翼面上を流れる翼先端渦の流線に沿った位置に該当することになる。
図35に示すように、翼21が低速で回転した場合には、翼21が回転することで生じる翼先端渦および馬蹄渦の運動エネルギーが小さく、そのため翼先端渦および馬蹄渦が窪み形状の接続部38によって捉えられることなく当該部分においてその剥離が促されることになる。これにより、翼先端渦および馬蹄渦は、いずれも窪み形状の接続部38が形成された部分において遠心力によって半径方向外側に飛ばされることになる。したがって、図36に示すように、翼21で発生された風が流体送り装置520の前方において拡散することになり、風当たりの良い風800が広範囲に送風できることになる。そのため、夜間等の就寝時に風を殆ど感じることなく扇風機を運転させたい場合に、これを満足する微風運転の実現も可能になる。
一方、図37に示すように、翼21が高速で回転した場合には、翼21が回転することで生じる翼先端渦および馬蹄渦の運動エネルギーが大きく、そのため翼先端渦および馬蹄渦が窪み形状の接続部38によって捉えられて保持されることになり、翼先端渦および馬蹄渦の変動や発達が抑制されることになる。また、その際、翼先端渦および馬蹄渦が窪み形状の接続部38に沿って内側に移動することになるため、その後、外縁部23の翼後端部105において剥離した翼先端渦および馬蹄渦が高速回転による大風量および高静圧によって軸方向に飛ばされることになる。したがって、図38に示すように、翼21で発生された風が流体送り装置520の前方において収束することになり、直進性が高くより遠くへ到達する風900が送風できることになる。そのため、効率よく送風を行なうことが可能になるとともに、風の直進性が高まることによって騒音の発生をも抑制することが可能になる。
このように、本実施の形態におけるプロペラファン140およびこれを備えた流体送り装置520とすることにより、発生される風の圧力変動が小さく快適な風を送り出すことが可能になるとともに、騒音の低減を図ることが可能になる。
[実施の形態4の変形例]
上述の実施の形態4におけるプロペラファン140では、外縁部23の翼後端部105寄りの位置に窪み形状の接続部38が形成されている。本実施の形態におけるプロペラファン150では、外縁部23上の翼先端部104と翼後端部105との間の途中領域に窪み形状の接続部38が設けられている。当該構成によっても、実施の形態4におけるプロペラファン140と略同様の作用および効果を得ることができる。
[第1検証実験]
図40〜図44を参照して、上記の各実施の形態のプロペラファンに共通して設けられる連結部33に関して行なった第1検証実験について説明する。第1検証試験においては、連結部33の設けられている位置が異なる複数のプロペラファン160をサンプルとして準備し、これに基づいて各プロペラファン160を回転させてその際に得られる風量および得られた風に含まれる圧力変動を相対値として測定した。
図40および図41に示すように、プロペラファン160の基本的な形状としては、プロペラファン160の外縁部23は半径Rを有し、ボスハブ部41は半径rを有し、翼21は半径方向の長さr1(=R−r)を有し、連結部33の前端部33Aは無次元位置ηを有し、連結部33の後端部33Bは無次元位置ξを有する。翼21には、前端部33Aの無次元位置ηから後端部33Bの無次元位置ξまで延びる連結部33が設けられている。
ボスハブ部41の外表面41Sから連結部33の前端部33Aまでの半径方向に沿う長さ寸法をRaとすると、無次元位置ηとは、Raを翼21の半径方向の長さr1で除算した値(Ra/r1)である。ボスハブ部41の外表面41Sから連結部33の後端部33Bまでの半径方向に沿う長さ寸法をRbとすると、無次元位置ξとは、Rbを翼21の半径方向の長さr1で除算した値(Rb/r1)である。
また、プロペラファン160の翼21は、連結部33よりも半径方向内側(内側領域31側)の食い違い角と連結部33よりも半径方向外側(外側領域32側)の食い違い角とが略一定に形成され、且つ、連結部33よりも半径方向内側(内側領域31側)の食い違い角が連結部33よりも半径方向外側(外側領域32側)の食い違い角よりも小さくなるように形成されている。
翼面28の前縁部22の高さについては、従来のプロペラファン(図41中の実線で示す)を矢印AR1方向に変形し、半径方向の内側で高くなり且つ一定の高さを有するように形成されたもの(図41中の点線で示すもの)を準備した。半径方向の内側で高くなるように形成した前縁部22の高さは、プロペラファン160の回転によって形成される占有空間LM1の上面高さに一致するように形成している。
風量および圧力変動については、いずれもプロペラファン160の中心軸101に沿って噴出側に30mm離れた位置であってかつプロペラファン160の中心軸101からの半径方向に沿った距離が外縁部23の最大半径Rの80%となる位置において測定した。当該プロペラファン160の中心軸101からの半径方向に沿った距離が外縁部23の最大半径の70%〜80%付近位置は、概して風速が最も大きくなる位置であり、そのため圧力変動が最も生じる位置でもある。
図42は、第1検証試験において得られた翼形状と相対風量との関係を示すグラフである。図42においては、横軸が後端部33Bの無次元位置ξを表わしており、縦軸が相対風量を表わしている。縦軸に示した相対風量は、各サンプルにおいて測定された風速を連結部33が形成されていないプロペラファンにおける風速にて除算した値である。
図42に示されるように、前端部33Aの無次元位置ηが比較的小さいときは、後端部33Bの無次元位置ξを大きくすると風量が微増することがわかる。前端部33Aの無次元位置ηが比較的大きいときは、後端部33Bの無次元位置ξを大きくすると風量が顕著に増大することがわかる。
図43は、第1検証試験において得られた翼形状と相対圧力変動との関係を示すグラフである。図43においては、横軸が後端部33Bの無次元位置ξを表わしており、縦軸が相対圧力変動を表わしている。縦軸に示した相対圧力変動は、各サンプルにおいて測定された相対圧力変動を連結部33が形成されていないプロペラファンにおける風速にて除算した値である。
図43に示されるように、後端部33Bの無次元位置ξを増加させるにつれて相対圧力変動の値は徐々に小さくなり、後端部33Bの無次元位置ξが約0.5のときを変曲点として、後端部33Bの無次元位置ξを増加させるにつれて相対圧力変動の値は徐々に大きくなることがわかる。この傾向は、前端部33Aの無次元位置ηが比較的大きいときほど顕著に現れることがわかる。
図44は、第1検証試験において得られた翼形状と快適指数との関係を示すコンター図である。当該コンター図は、上述した図42および図43に示される結果に基づいて、快適指数を含むファン性能として、第1検証試験の結果を表わしたものである。快適指数は、図42において示す相対風量を図43において示す相対圧力変動にて除することにより算出されるものであり、この値が高いほど快適性が上がることになる。図44の縦軸は前端部33Aの無次元位置ηを示す値であり、図44の横軸は後端部33Bの無次元位置ξを示す値である。
図44に示されるように、ηに着目して見た場合には、0.4≦η≦1の範囲で快適指数が約1.2以上となることがわかる。一方、ξに着目して見た場合には、0.3≦ξ≦0.7の範囲で快適指数が約1.4以上となることがわかる。さらに、ηおよびξの両方に着目して見た場合には、ηが0.80≦η≦1.0の条件を満たし、且つ、ξが0.40≦ξ≦0.65の条件を満たすことにより、快適指数が約1.5以上となることがわかる。
図40を参照して、連結部33の設けられる位置については、回転方向における連結部33の中心位置P1を通り、且つ、中心軸101を中心とする仮想の同心円Z1を描いた場合に、連結部33の前端部33Aは同心円Z1の半径方向外側に位置し、連結部33後端部33Bは同心円Z1の半径方向内側に位置しているとよい。
この構成によると、プロペラファンの回転時、連結部33が設けられている領域の近傍においては、主流は半径方向外側から同方向内側に向かって流れる。したがって、連結部33を主流の流れに概ね沿うように形成し、連結部33が設けられている領域についても翼型を採用することで、あらゆる主流の流れに対して翼型を実現できるため、より効率的な送風を行うことが可能となる。
[第2検証実験]
図45〜図49を参照して、上記の各実施の形態のプロペラファンに共通して設けられる連結部33に関して行なった第2検証実験について説明する。第2検証試験においては、連結部33の設けられている位置が異なる複数のプロペラファン170をサンプルとして準備し、これに基づいて各プロペラファン170を回転させてその際に得られる風量および得られた風に含まれる圧力変動を相対値として測定した。
図45および図46に示すように、プロペラファン170の基本的な形状としては、プロペラファン170の外縁部23は半径Rを有し、ボスハブ部41は半径rを有し、翼21は半径方向の長さr1(=R−r)を有し、翼21の外縁部23はコード長さ寸法Cを有し、連結部33の前端部33Aは外縁部23寄りに位置し、連結部33の前端部33Aは無次元位置κを有し、連結部33の後端部33Bは無次元位置ξを有する。翼21には、前端部33Aの無次元位置κから後端部33Bの無次元位置ξまで延びる連結部33が設けられている。
ボスハブ部41の外表面41Sから連結部33の後端部33Bまでの半径方向に沿う長さ寸法をRbとすると、無次元位置ξとは、Rbを翼21の半径方向の長さr1で除算した値である。翼先端部104から前端部33Aまでの長さ寸法をRcとすると、無次元位置κとは、Rcを翼21の外縁部23のコード長さ寸法Cで除算した値(Rc/C)である。
また、プロペラファン170の翼21は、連結部33よりも半径方向内側の食い違い角と連結部33よりも半径方向外側(外側領域32側)の食い違い角とが略一定に形成され、且つ、連結部33よりも半径方向内側(内側領域31側)の食い違い角が連結部33よりも半径方向外側(外側領域32側)の食い違い角よりも小さくなるように形成されている。
翼面28の前縁部22の高さについては、従来のプロペラファン(図46中の実線で示す)を矢印AR2方向に変形し、半径方向の内側で高くなり且つ一定の高さを有するように形成されたもの(図46中の点線で示すもの)を準備した。半径方向の内側で高くなるように形成した前縁部22の高さは、プロペラファン170の回転によって形成される占有空間LM2の上面高さに一致するように形成している。
風量および圧力変動については、いずれもプロペラファン170の中心軸101に沿って噴出側に30mm離れた位置であってかつプロペラファン170の中心軸101からの半径方向に沿った距離が外縁部23の最大半径Rの80%となる位置において測定した。当該プロペラファン170の中心軸101からの半径方向に沿った距離が外縁部23の最大半径の80%となる位置は、概して風速が最も大きくなる位置であり、そのため圧力変動が最も生じる位置でもある。
図47は、第2検証試験において得られた翼形状と相対風量との関係を示すグラフである。図47においては、横軸が後端部33Bの無次元位置ξを表わしており、縦軸が相対風量を表わしている。縦軸に示した相対風量は、各サンプルにおいて測定された風量を連結部33が形成されていないプロペラファンにおける風量にて除算した値である。
図47に示されるように、前端部33Aの無次元位置κが比較的大きいときは、後端部33Bの無次元位置ξを大きくすると風量が微増することがわかる。前端部33Aの無次元位置κが比較的小さいときは、後端部33Bの無次元位置ξを大きくすると風量が顕著に増大することがわかる。
図48は、第2検証試験において得られた翼形状と相対圧力変動との関係を示すグラフである。図48においては、横軸が後端部33Bの無次元位置ξを表わしており、縦軸が相対圧力変動を表わしている。縦軸に示した相対圧力変動は、各サンプルにおいて測定された圧力変動を連結部33が形成されていないプロペラファンにおける圧力変動にて除算した値である。
図48に示されるように、後端部33Bの無次元位置ξを増加させるにつれて相対圧力変動の値は徐々に小さくなり、後端部33Bの無次元位置ξが約0.5のときを変曲点として、後端部33Bの無次元位置ξを増加させるにつれて相対圧力変動の値は徐々に大きくなることがわかる。この傾向は、前端部33Aの無次元位置κが比較的小さいときほど顕著に現れることがわかる。
図49は、第2検証試験において得られた翼形状と快適指数との関係を示すコンター図である。当該コンター図は、上述した図47および図48に示される結果に基づいて、快適指数を含むファン性能として、第2検証試験の結果を表わしたものである。快適指数は、図47において示す相対風量を図48において示す相対圧力変動にて除することにより算出されるものであり、この値が高いほど快適性が上がることになる。図49の縦軸は前端部33Aの無次元位置κを示す値であり、図49の横軸は後端部33Bの無次元位置ξを示す値である。
図49に示されるように、κに着目して見た場合には、0≦κ≦0.5の範囲で快適指数が約1.6以上となることがわかる。一方、ξに着目して見た場合には、0.3≦ξ≦0.8の範囲で快適指数が約1.5以上となることがわかる。さらに、κおよびξの両方に着目して見た場合には、ξが0.40≦ξ≦0.70の条件を満たし、且つ、κが0≦κ≦0.3の条件を満たすことにより、快適指数が約1.6以上となることがわかる。
図50を参照して、連結部33の設けられる位置については、連結部33が翼先端部104から翼後端部105までの途中に位置する外縁部23の部分から後縁部24まで設けられている場合、連結部33は、翼面28の厚さTTが最大となる部分よりも回転方向の下流側から設けられているとよい。特に、翼面28を厚く形成し、翼面28の断面形状を翼型にする場合には、翼面28の最大厚み位置より下流域から連結部33を設けると効果的である。
[第3検証実験]
図51〜図57を参照して、上記の各実施の形態のプロペラファンに共通して設けられる連結部33に関して行なった第3検証実験について説明する。第3検証実験においては、図51および図52に示すプロペラファン180と、図53および図54に示すプロペラファン910とを準備し、プロペラファン180,910をそれぞれ回転させてその際に得られる風量、騒音、および消費電力を測定した。
図51および図52を参照して、プロペラファン180の基本的な構成は、上述の第1検証実験で用いられたプロペラファン160(図40および図41参照)と略同一である。連結部33の前端部33Aの無次元位置ηの値は0.9である。連結部33の後端部33Bの無次元位置ξの値は0.5である。点線LL2で示されるように、プロペラファン180の翼21は、連結部33の回転方向の中央付近で、所定の深さで折れ曲っている。
プロペラファン180の直径D10は180mmである。プロペラファン180の回転によって形成される占有空間LM10の中心軸101方向における高さH10は40mmである。ボスハブ部41の直径D10は30mmである。プロペラファン180と占有空間LM10との間には、所定の体積を有する隙間SAが形成される。
図53および図54を参照して、プロペラファン910は、プロペラファン180のような連結部33を有しておらず、翼21は略平坦に形成される。プロペラファン910の直径D20は、プロペラファン180の直径D10(180mm)と同一である。プロペラファン910の回転によって形成される占有空間LM20の中心軸101方向における高さH20も、プロペラファン180における高さH10(40mm)と同一である。
ボスハブ部41の直径D20も、プロペラファン180におけるボスハブ部41の直径D10(30mm)と同一である。プロペラファン910と占有空間LM20との間には、所定の体積を有する隙間SBが形成される。隙間SBは、隙間SAよりも大きい。
図55は、プロペラファン180,910の回転数n(rpm)と、プロペラファン180,910の各々から得られる風量Q(m3/min)との関係を示すグラフである。プロペラファン910の回転数nと風量Qとの関係は、線L1によって示される。プロペラファン180の回転数nと風量Qとの関係は、線L2によって示される。
線L1および線L2を対比すると、回転数nが同一の場合、プロペラファン180はプロペラファン910に対して40%増加した風量が得られている。したがって、プロペラファン180は、プロペラファンの直径、プロペラファンの回転によって形成される占有空間の高さ、および、ボスハブ部の直径がそれぞれ同一に構成されたプロペラファン910に比べて、多くの風量を得ることができることがわかる。
図56は、プロペラファン180,910の到達距離風量Q(m3/min)と、プロペラファン180,910の各々から発生する騒音(dB)との関係を示すグラフである。プロペラファン910の到達距離風量Qと騒音との関係は、線L1によって示される。プロペラファン180の到達距離風量Qと騒音との関係は、線L2によって示される。
線L1および線L2を対比すると、到達距離風量Qが同一の場合、プロペラファン180から発生する騒音は、プロペラファン910から発生する騒音に対して5dB低減している。したがって、プロペラファン180は、プロペラファンの直径、プロペラファンの回転によって形成される占有空間の高さ、および、ボスハブ部の直径がそれぞれ同一に構成されたプロペラファン910に比べて、騒音を低減できることがわかる。
図57は、プロペラファン180,910の到達距離風量Q(m3/min)と、プロペラファン180,910の各々で使用される消費電力(W)との関係を示すグラフである。プロペラファン910の到達距離風量Qと消費電力との関係は、線L1によって示される。プロペラファン180の到達距離風量Qと消費電力との関係は、線L2によって示される。
線L1および線L2を対比すると、到達距離風量Qが同一の場合、プロペラファン180で使用される消費電力は、プロペラファン910で使用される消費電力に対して5%低減している。したがって、プロペラファン180は、プロペラファンの直径、プロペラファンの回転によって形成される占有空間の高さ、および、ボスハブ部の直径がそれぞれ同一に構成されたプロペラファン910に比べて、消費電力を低減できることがわかる。
[第4検証実験]
図58〜図63を参照して、上記の各実施の形態のプロペラファンに共通して設けられる連結部33に関して行なった第4検証実験について説明する。第4検証実験においては、図58および図59に示すプロペラファン190と、上述の第3検証実験で使用したプロペラファン910(図53および図54参照)とをそれぞれ回転させてその際に得られる風量、騒音、消費電力、および風速分布を測定した。
図58および図59に示すように、プロペラファン190の基本的な形状としては、上述の第3検証実験で使用したプロペラファン180(図51および図52参照)と略同一である。点線LL3で示されるように、プロペラファン190の翼21は、連結部33の回転方向の中央付近で、かなり深く折れ曲っている。連結部33の負圧面27側に形成される内角は、プロペラファン190の方が、プロペラファン180に比べて小さく形成されている。
図60は、プロペラファン190,910の回転数n(rpm)と、プロペラファン190,910の各々から得られる風量Q(m3/min)との関係を示すグラフである。プロペラファン910の回転数nと風量Qとの関係は、線L1によって示される。プロペラファン190の回転数nと風量Qとの関係は、線L3によって示される。
線L1および線L3を対比すると、回転数nが同一の場合、プロペラファン190はプロペラファン910に対して40%増加した風量が得られている。したがって、プロペラファン190は、プロペラファンの直径、プロペラファンの回転によって形成される占有空間の高さ、および、ボスハブ部の直径がそれぞれ同一に構成されたプロペラファン910に比べて、多くの風量を得ることができることがわかる。
図61は、プロペラファン190,910の到達距離風量Q(m3/min)と、プロペラファン190,910の各々から発生する騒音(dB)との関係を示すグラフである。プロペラファン910の到達距離風量Qと騒音との関係は、線L1によって示される。プロペラファン190の到達距離風量Qと騒音との関係は、線L3によって示される。
線L1および線L3を対比すると、到達距離風量Qが同一の場合、プロペラファン190から発生する騒音は、プロペラファン910から発生する騒音に対して3dB低減している。したがって、プロペラファン190は、プロペラファンの直径、プロペラファンの回転によって形成される占有空間の高さ、および、ボスハブ部の直径がそれぞれ同一に構成されたプロペラファン910に比べて、騒音を低減できることがわかる。
図62は、プロペラファン190,910の到達距離風量Q(m3/min)と、プロペラファン190,910の各々で使用される消費電力(W)との関係を示すグラフである。プロペラファン910の到達距離風量Qと消費電力との関係は、線L1によって示される。プロペラファン190の到達距離風量Qと消費電力との関係は、線L3によって示される。
線L1および線L3を対比すると、到達距離風量Qが同一の場合、プロペラファン190で使用される消費電力は、プロペラファン910で使用される消費電力に対して5%低減している。したがって、プロペラファン190は、プロペラファンの直径、プロペラファンの回転によって形成される占有空間の高さ、および、ボスハブ部の直径がそれぞれ同一に構成されたプロペラファン910に比べて、消費電力を低減できることがわかる。
図63は、プロペラファン190,910の各々における中心軸101からの半径方向の距離(無次元)と、風速(無次元)との関係を示すグラフである。プロペラファン910における中心軸101からの半径方向の距離(無次元)と風速(無次元)との関係は、線L1によって示される。プロペラファン190における中心軸101からの半径方向の距離(無次元)と風速(無次元)との関係は、線L3によって示される。
線L1および線L3を対比すると、プロペラファン190,910の双方とも、中心軸101から0.8R(Rは、プロペラファンの平面視における翼21の最大半径)だけ離れた位置で、風速が大きなピーク値を示している。一方で、プロペラファン190においては、中心軸101を中心とする内周側において送風能力を向上させ、中心軸101を中心とする外周側において送風能力を低減させることによって、風速のピークが解消されていることがわかる。
第4検証実験の考察としては、翼面28上に連結部33を設け、翼面28の内側の食い違い角を比較的小さくし、翼面28の外側の食い違い角を比較的大きくし、プロペラファンとしての占有可能空間をほぼ最大限使用しながら鎌形状とすることによって、総風量を大幅に増大させ、騒音および消費電力を低減できることがわかる。
また、翼面28が連結部33において深く折れ曲がるように形成される場合、連結部33で一旦最大となった食い違い角が外縁部23側で再び増加し、半径方向に沿って切断した翼面28の断面形状は、半径方向に沿って上下する。翼面28が連結部33においてあまり極端に折れ曲がると、その翼面28および連結部33の形状は、翼面28で発生する主流ではない二次流れに影響し、騒音の発生を効果的に抑制するという効果が低下しやすくなる。したがって、占有可能空間内を最大限使用する場合にも、連結部33の近傍での主流および馬蹄渦などの空気流れを考慮し、連結部33の湾曲度合い、屈曲度合い、および形状を定めるとよい。
[第5検証実験]
図64〜図68を参照して、上記の各実施の形態のプロペラファンに共通して設けられる連結部33に関して行なった第5検証実験について説明する。第5検証実験においては、図64および図65に示すプロペラファン200と、上述の第4検証実験で使用したプロペラファン190(図58および図59参照)とをそれぞれ回転させてその際に得られる風量、騒音、および消費電力を測定した。
図64および図65に示すように、プロペラファン200の基本的な形状としては、上述の第4検証実験で使用したプロペラファン190(図58および図59参照)と略同一である。点線LL4で示されるように、プロペラファン200の翼21は、連結部33の回転方向の中央付近で緩やかに折れ曲っている。連結部33の負圧面27側に形成される内角は、プロペラファン200の方が、プロペラファン190に比べて大きく形成されている。
プロペラファン200の前縁部22は、プロペラファン190の前縁部22に比べて回転方向の前方側(矢印AR5参照)に延出している。図64中の点線DL5は、プロペラファン190の前縁部22が形成されている位置に相当している。また、連結部33より半径方向の内側の部分の食い違い角は、プロペラファン200の方がプロペラファン190に比べて小さくなるように設けられている。連結部33より半径方向の内側の部分の食い違い角は、プロペラファン190に比べてプロペラファン200の方が、連結部33より半径方向の外側の部分の食い違い角に近い。
図66は、プロペラファン200,190の回転数n(rpm)と、プロペラファン200,190の各々から得られる風量Q(m3/min)との関係を示すグラフである。プロペラファン200の回転数nと風量Qとの関係は、線L4によって示される。プロペラファン190の回転数nと風量Qとの関係は、線L3によって示される。線L3および線L4を対比すると、ほとんど違いは見られないことがわかる。
図67は、プロペラファン200,190の到達距離風量Q(m3/min)と、プロペラファン200,190の各々から発生する騒音(dB)との関係を示すグラフである。プロペラファン200の到達距離風量Qと騒音との関係は、線L4によって示される。プロペラファン190の到達距離風量Qと騒音との関係は、線L3によって示される。線L3および線L4を対比すると、ほとんど違いは見られないことがわかる。
図68は、プロペラファン200,190の到達距離風量Q(m3/min)と、プロペラファン200,190の各々で使用される消費電力(W)との関係を示すグラフである。プロペラファン200の到達距離風量Qと消費電力との関係は、線L4によって示される。プロペラファン190の到達距離風量Qと消費電力との関係は、線L3によって示される。線L3および線L4を対比すると、ほとんど違いは見られないことがわかる。
[第6検証実験]
図69〜図73を参照して、上記の各実施の形態のプロペラファンに共通して設けられる連結部33に関して行なった第6検証実験について説明する。第6検証実験においては、図69および図70に示すプロペラファン210と、上述の第4検証実験で使用したプロペラファン190(図58および図59参照)とをそれぞれ回転させてその際に得られる風量、騒音、および消費電力を測定した。
図69および図70に示すように、プロペラファン210の基本的な形状としては、上述の第4検証実験で使用したプロペラファン190(図58および図59参照)と略同一である。点線LL5で示されるように、プロペラファン210の翼21は、連結部33の回転方向の中央付近で緩やかに折れ曲っている。連結部33の負圧面27側に形成される内角は、プロペラファン210の方が、プロペラファン190に比べて大きく形成されている。
図70中の矢印AR6に示すように、プロペラファン210においては、連結部33の外側の外縁部23が、プロペラファン190のものに比べて噴出側(矢印AR6参照)に位置している。図70中の点線DL6は、プロペラファン190における連結部33の外側の外縁部23が形成されている位置に相当している。連結部33より半径方向の外側の部分の食い違い角は、プロペラファン210の方がプロペラファン190に比べて小さくなるように設けられている。
図71は、プロペラファン210,190の回転数n(rpm)と、プロペラファン210,190の各々から得られる風量Q(m3/min)との関係を示すグラフである。プロペラファン210の回転数nと風量Qとの関係は、線L5によって示される。プロペラファン190の回転数nと風量Qとの関係は、線L3によって示される。
線L3および線L5を対比すると、回転数nが同一の場合、プロペラファン210はプロペラファン190と比べてやや少ないが略同一の風量が得られていることがわかる。したがって、回転数nが同一の場合、プロペラファン190は、上述の第3検証実験で使用したプロペラファン910(図53および図54参照)に対して40%増加した風量が得られている。
図72は、プロペラファン210,190の到達距離風量Q(m3/min)と、プロペラファン210,190の各々から発生する騒音(dB)との関係を示すグラフである。プロペラファン210の到達距離風量Qと騒音との関係は、線L5によって示される。プロペラファン190の到達距離風量Qと騒音との関係は、線L3によって示される。
線L5および線L3を対比すると、到達距離風量Qが同一の場合、プロペラファン210から発生する騒音は、プロペラファン190から発生する騒音に対してさらに2dB低減している。したがって、プロペラファン210は、プロペラファンの直径、プロペラファンの回転によって形成される占有空間の高さ、および、ボスハブ部の直径がそれぞれ同一に構成されたプロペラファン190に比べて、騒音をさらに低減できることがわかる。
図73は、プロペラファン210,190の到達距離風量Q(m3/min)と、プロペラファン210,190の各々で使用される消費電力(W)との関係を示すグラフである。プロペラファン210の到達距離風量Qと消費電力との関係は、線L5によって示される。プロペラファン190の到達距離風量Qと消費電力との関係は、線L3によって示される。
線L5および線L3を対比すると、到達距離風量Qが同一の場合、プロペラファン210で使用される消費電力は、プロペラファン190で使用される消費電力に対してさらに15%低減している。したがって、プロペラファン210は、プロペラファンの直径、プロペラファンの回転によって形成される占有空間の高さ、および、ボスハブ部の直径がそれぞれ同一に構成されたプロペラファン190に比べて、消費電力をさらに低減できることがわかる。
第6検証実験の考察としては、プロペラファン210においては、プロペラファンとしての占有可能空間を連結部33より内側では最大限使用し、連結部33より外側では食い違い角をより大きくしている。外縁部23の半径方向外側の高さを下げ、食い違い角が半径方向外側で単調増加していく滑らかな曲面とすることで二次流れが適切に抵抗少なく流れ、乱流および騒音が低減され、消費電力(流れ損失)をも低減可能となることがわかる。
[第7検証実験]
図74〜図80を参照して、上記の各実施の形態のプロペラファンに共通して設けられる逆キャンバー構造に関して行なった第7検証実験について説明する。第7検証実験においては、図74〜図77に示すプロペラファン220と、上述の第6検証実験で使用したプロペラファン210(図69および図70参照)とをそれぞれ回転させてその際に得られる風量、騒音、および消費電力を測定した。
図74は、プロペラファン220を吸込側から見た斜視図である。図75は、プロペラファン220の側面図である。図76は、図74中のLXXVI−LXXVI線に沿った矢視断面図である。図77は、図74中のLXXVII−LXXVII線に沿った矢視断面図である。
図74および図75に示すように、プロペラファン220の基本的な形状としては、上述の第6検証実験で使用したプロペラファン210(図69および図70参照)と略同一である。プロペラファン210は逆キャンバー構造を有している。プロペラファン220は逆キャンバー構造を有しておらず、いわゆる正キャンバー構造を有している。
図74〜図76に示すように、プロペラファン220における翼21の内側領域31は、前縁部22および後縁部24を両端として内側領域31の中腹部が仮想直線31Lから吸込側に向かって遠ざかるように湾曲し、翼面28(内側領域31)の正圧面26側が凹となり翼面28(内側領域31)の負圧面27側が凸となるように反った形状を有している。
図74、図75、および図77に示すように、プロペラファン220における翼21の外側領域32は、前縁部22および後縁部24を両端として外側領域32の中腹部が仮想直線33Lから吸込側に向かって遠ざかるように湾曲し、翼面28(外側領域32)の正圧面26側が凹となり翼面28(外側領域32)の負圧面27側が凸となるように反った形状を有している。
図76および図77を参照して、プロペラファン220における翼21は、翼根部34および内側領域31において正圧面26側が凹となり負圧面27側が凸となるように反った形状を有し、外側領域32および外縁部23においても正圧面26側が凹となり負圧面27側が凸となるように反った形状を有している(正キャンバー構造)。
図78は、プロペラファン220,210の回転数n(rpm)と、プロペラファン220,210の各々から得られる風量Q(m3/min)との関係を示すグラフである。プロペラファン220の回転数nと風量Qとの関係は、線L6によって示される。プロペラファン210の回転数nと風量Qとの関係は、線L5によって示される。
線L5および線L6を対比すると、回転数nが同一の場合、プロペラファン220はプロペラファン210と比べてやや少ないが略同一の風量が得られていることがわかる。回転数nが同一の場合、正キャンバー構造を有するプロペラファン220であっても、上述の第3検証実験で使用したプロペラファン910(図53および図54参照)に対して40%増加した風量が得られている。
図79は、プロペラファン220,210の到達距離風量Q(m3/min)と、プロペラファン220,210の各々から発生する騒音(dB)との関係を示すグラフである。プロペラファン220の到達距離風量Qと騒音との関係は、線L6によって示される。プロペラファン210の到達距離風量Qと騒音との関係は、線L5によって示される。
線L5および線L6を対比すると、到達距離風量Qが同一の場合、プロペラファン220から発生する騒音は、プロペラファン210から発生する騒音に対してわずかに大きくなることがわかる。到達距離風量Qが同一の場合、正キャンバー構造を有するプロペラファン220であっても、上述の第3検証実験で使用したプロペラファン910(図53および図54参照)に比べると騒音は低減されている。
図80は、プロペラファン220,210の到達距離風量Q(m3/min)と、プロペラファン220,210の各々で使用される消費電力(W)との関係を示すグラフである。プロペラファン220の到達距離風量Qと消費電力との関係は、線L6によって示される。プロペラファン210の到達距離風量Qと消費電力との関係は、線L5によって示される。
線L5および線L6を対比すると、到達距離風量Qが同一の場合、プロペラファン220で使用される消費電力は、プロペラファン210で使用される消費電力に対してわずかに増加している。到達距離風量Qが同一の場合、正キャンバー構造を有するプロペラファン220であっても、上述の第3検証実験で使用したプロペラファン910(図53および図54参照)に比べると消費電力は低減されている。
第7検証実験の考察としては、風量、騒音、および消費電力の観点では正キャンバー構造に比べると逆キャンバー構造の方が優れていることがわかる。翼面28の高さとコード長さ寸法との関係によっては、翼根部34で送風が良好には行われなくなる場合もあるため、このような場合には、逆キャンバー構造を採用することがよいことがわかる。なお、プロペラファンの直径が180mm、ボスハブ部41の直径が30mm、プロペラファンの回転によって形成される占有空間の中心軸101方向における高さが40mmの場合、正キャンバー構造に比べて逆キャンバー構造の方が顕著に優れた効果が得られることが分かっている。
図81は、第7検証実験に用いられたプロペラファンの変形例を示す断面図であり、当該変形例のプロペラファンを図76と同一の切断面で切断したときに得られる図である。図81に示すプロペラファン230における翼21の翼根部34のように、中心軸101の周方向に沿う断面視がS字状を呈するように形成されているとよい場合もあることが分かっている。なおこの場合も、翼根部34における食い違い角θAは、外縁部23における食い違い角θBよりも小さく設けられる。
プロペラファン230の内側領域31は、前縁部22から後縁部24に向かうにつれて、仮想直線31Lから噴出側に向かって離れるようにして湾曲する反った形状と、仮想直線31Lから吸込側に向かって離れるようにして湾曲する反った形状とが、全体としてS字状に連続するように形成されている。翼面28の高さとコード長さ寸法との関係によっては、翼根部34で送風が良好には行われなくなる場合があるため、このような場合には、翼根部34が断面視S字状に形成されていることにより良好な送風が得られる。このような構成(S字キャンバー構造)は、翼面28に連結部33が設けられるという技術的な思想とは独立して実施することが可能である。
[実施の形態5]
(流体送り装置610)
図82を参照して、本実施の形態における流体送り装置610について説明する。本実施の形態における流体送り装置610は、たとえば、扇風機として用いられることができる。流体送り装置610は、プロペラファン250と、駆動モータ(図示せず)とを備える。
(プロペラファン250)
図83は、プロペラファン250を吸込側から見た斜視図である。図84は、プロペラファン250を吸込側から見た平面図である。図85は、プロペラファン250を噴出側から見た斜視図である。図86は、プロペラファン250を噴出側から見た平面図である。図87は、プロペラファン250を示す第1側面図である。図88は、プロペラファン250を示す第2側面図である。
プロペラファン250は、駆動モータ(図示せず)に駆動されることによって、中心軸101を中心として矢印102に示す方向に回転する。翼21の回転によって風が生成され、流体送り装置610(図82参照)は送風することが可能となる。
本実施の形態におけるプロペラファン250は、回転軸部としてのボスハブ部41と、7枚の翼21とを有する。プロペラファン250は、7枚以外の複数枚の翼21を備えていてもよいし、1枚のみの翼21を備えていてもよい。プロペラファン250は、扇風機としての流体送り装置610に限られず、サーキュレータ、エアーコンディショナ、空気清浄機、加湿機、除湿機、ファンヒータ、冷却装置、または換気装置などの各種の流体送り装置に用いられることもできる。
ボスハブ部41は、プロペラファン250を、駆動源である駆動モータ(図示せず)の出力軸に接続する部分である。翼21は、ボスハブ部41の外表面から中心軸101の半径方向外側に延出するように形成されている。7枚の翼21は、プロペラファン250の回転軸(中心軸101)の周方向において、等間隔に並んで配置されている。本実施の形態では、7枚の翼21は、同一形状に形成されている。いずれかの翼21を中心軸101を中心に回転させた場合に、その翼21の形状と別の翼21の形状とは一致する。
(翼21)
翼21は、翼根部34および翼根部34から板状に延びる翼面28を含む。翼根部34は、翼21とボスハブ部41の外表面との間(境目)に配置される。翼面28は、正圧面26と、正圧面26の裏側に配置される負圧面27とから構成されている。正圧面26は、中心軸101の軸方向において翼面28の噴出側に位置する。負圧面27は、中心軸101の軸方向において翼面28の吸込側に位置する。正圧面26および負圧面27の各々の表面は、全体として滑らかに形成されている。
翼面28は、プロペラファン250の回転に伴って送風を行ない、吸込側から噴出側に空気を送り出す。プロペラファン250の回転時、翼面28上で空気流れが発生することに伴って、正圧面26で相対的に大きく、負圧面27で相対的に小さくなる圧力分布が生じる。
翼面28の周縁には、翼根部34のうちの回転方向の側の部分から翼根部34のうちの回転方向の反対側の部分に向かって、前縁部22、翼先端部104、外縁部23、翼後端部105、および、後縁部24がこの順で環状に形成される。
翼21を平面的に見た場合に、翼21は、前縁部22と外縁部23とが交わる翼先端部104を先端にして、鎌状に尖った形状を有する。前縁部22および後縁部24の径方向内側の部分においては、回転方向に沿ったそれらの幅が徐々に小さくなうように構成されており、前縁部22および後縁部24の径方向外側の部分においては、回転方向に沿ったそれらの幅が徐々に大きくなるように構成されている。
具体的には、前縁部22は、翼21の回転方向(矢印102方向)の上流側に配置される。プロペラファン250を中心軸101の軸方向から見た場合(換言すると、プロペラファン250を平面的に見た場合)に、前縁部22は、翼根部34のうちの回転方向の側の部分から、中心軸101を中心とする半径方向内側から同方向外側に向けて延びている。前縁部22は、中心軸101を中心とする半径方向内側から同方向外側に湾曲しながら、プロペラファン250の回転方向に向かって延びている。
翼先端部104は、中心軸101から見て前縁部22の半径方向外側に配置される。翼先端部104は、前縁部22と次述する外縁部23とが接続される部分である。本実施の形態における翼先端部104は、翼21の中で最も回転方向の側に位置している。
後縁部24は、翼21の回転方向(矢印102方向)の下流側に配置される。プロペラファン250を中心軸101の軸方向から見た場合(換言すると、プロペラファン250を平面的に見た場合)に、後縁部24は、翼根部34のうちの回転方向の反対側の部分から、中心軸101を中心とする半径方向内側から同方向外側に向けて延びている。後縁部24は、中心軸101を中心とする周方向において、前縁部22と対向して配置されている。後縁部24は、中心軸101を中心とする半径方向内側から同方向外側に緩やかに湾曲しながら、プロペラファン250の回転方向に向かって延びている。
翼後端部105は、中心軸101から見て後縁部24の半径方向外側に配置される。翼後端部105は、後縁部24と次述する外縁部23とが接続される部分である。本実施の形態のプロペラファン250における翼先端部104は、翼後端部105よりも中心軸101を中心とする内周側に配置されている。
外縁部23は、中心軸101の周方向に沿って延び、翼先端部104と翼後端部105との間を接続するように設けられる。外縁部23は、外縁部23の周方向に延びる線上においてプロペラファン250の最も回転方向の側に位置する翼先端部104で前縁部22と交わり、外縁部23の周方向に延びる線上においてプロペラファン250の最も回転方向の反対側に位置する翼後端部105で後縁部24と交わっている。外縁部23は、全体として、翼先端部104と翼後端部105との間で円弧状に延びている。
前縁部22、翼先端部104、外縁部23、翼後端部105、および、後縁部24は、翼根部34とともに翼21の周縁を形成する周縁部を構成している。この周縁部(前縁部22、翼先端部104、外縁部23、翼後端部105、および、後縁部24)は、いずれも概ね弧状の形状を有するように形成されることで、角部を有さない滑らかな形状とされている。翼面28は、翼根部34とこの周縁部(前縁部22、翼先端部104、外縁部23、翼後端部105、および、後縁部24)とに囲まれた領域の内側の全域に亘って形成されている。
翼面28は、前縁部22から後縁部24に向かう周方向において、吸込側から噴出側に向かって全体として滑らかに湾曲するように形成されている。本実施の形態のプロペラファン250における翼21は、前縁部22と後縁部24とを結ぶ周方向の断面形状の厚みが、前縁部22および後縁部24から翼中心付近に向かうほど厚くなり、翼中心よりも前縁部22側に寄った位置に最大厚みを有する翼型形状を有している。
プロペラファン250の翼面28は、内側領域31、外側領域32、および、連結部33を有する。内側領域31、外側領域32、および、連結部33は、正圧面26および負圧面27の双方にそれぞれ形成されている。
内側領域31は、翼根部34をその一部に含み、連結部33および外側領域32に比べて中心軸101の半径方向の内側に位置する。外側領域32は、翼後端部105をその一部に含み、連結部33および内側領域31に比べて中心軸101の半径方向の外側に位置する。内側領域31における正圧面26の表面形状と、外側領域32における正圧面26の表面形状とは、相互に異なるように形成されている。内側領域31における負圧面27の表面形状と、外側領域32における負圧面27の表面形状とも、相互に異なるように形成されている。
連結部33は、翼面28の正圧面26側が凸となり且つ翼面28の負圧面27側が凹となるように、内側領域31と外側領域32とを連結している。連結部33は、概ね回転方向に沿うように設けられており、連結部33のうちの回転方向の最上流側に位置する前端部33Aから、連結部33のうちの回転方向の最下流側に位置する後端部33Bまで延在している。
連結部33は、内側領域31から外側領域32に向かうにしたがって翼面28がやや急峻な曲率変化を持って湾曲するようにして形成されており、相互に異なる表面形状を有する内側領域31および外側領域32との境目においてこれら同士を湾曲しながら連結している。連結部33は、これら同士を屈曲しながら連結していてもよい。
連結部33は、その付近において翼面28の半径方向断面視における曲率が極大となるように設けられており、正圧面26上においては湾曲状に突出した突条部として前端部33Aから後端部33Bに向かって筋状に延びるように現れており、負圧面27上においては湾曲状の窪んだ溝部として前端部33Aから後端部33Bに向かって筋状に延びるように現れている。本実施の形態の連結部33は、翼先端部104から翼後端部105までの途中に位置する外縁部23の部分から、後縁部24まで設けられている。
本実施の形態における翼21は、いわゆる正キャンバー構造を有する。翼21は、内側領域31および外側領域32の双方において、正圧面26側が凹となり負圧面27側が凸となるように反った形状を有している。翼21は、翼面28のうちの連結部33よりも半径方向内側(内側領域31側)の部分の食い違い角(θA)の方が、翼面28のうちの連結部33よりも半径方向外側(外側領域32側)の部分の食い違い角(θB)よりも小さくなるように形成されている。翼21の外縁部23には、窪み形状の接続部38が設けられている。本実施の形態における窪み形状の接続部38は、外縁部23の翼後端部105寄りの部分から中心軸101側に向けて窪むように形成されている。
図87および図88には、プロペラファン250の噴出側、すなわち翼21の正圧面26が面する側に、プロペラファン250の回転軸である中心軸101に直交する仮想平面107が示されている。この仮想平面107を基準にして、翼21の後縁部24は、中心軸101を中心とする外周側の領域R3で、外縁部23(翼後端部105)に近づくほど大きくなる高さH3を有する。
後縁部24の高さH3は、中心軸101を中心とする内周側で、ボスハブ部41から遠ざかるほど小さくなり、中心軸101を中心とする外周側で、外縁部23(翼後端部105)に近づくほど大きくなる。言い換えれば、後縁部24は、ボスハブ部41と外縁部23との間で、中心軸101の軸方向において噴出側で凸となるように湾曲して延びている。後縁部24の高さH3が外縁部23に近づくほど大きくなり始める位置は、中心軸101を中心に0.4R〜0.7R(Rは、プロペラファン250の平面視における翼21の最大半径)の範囲にあることが好ましい。
(作用・効果)
本実施の形態における流体送り装置610(図1参照)およびプロペラファン250によっても、翼先端部104の近傍で発生し連結部33によって保持されながら流れる翼先端渦と、連結部33の近傍で発生し連結部33によって保持されながら流れる馬蹄渦とが、主流に対して運動エネルギを付与する。運動エネルギを付与された主流は、翼面28上の下流側で翼面28から剥離しにくくなる。結果として、剥離領域を縮小もしくは消滅させることができる。プロペラファン250は、剥離が抑制されることによって、回転時に発生する騒音を低減することができ、連結部33を設けない場合と比較して風量を増加させて高効率化することが可能となる。
窪み形状の接続部38が外縁部23に設けられていることにより、半径方向における風速分布をより均一にすることができ、風速のムラを抑制することが可能となって風当たりの良い風とすることができ、半径方向外側寄りの部分において発生される風に含まれる圧力変動が小さくなる風当たりの良い風を発生させることができ、そして、低速回転時においては、広範囲に拡散する風当たりの良い風とすることができ、高速回転時においては、直進性が高くより遠くへ到達する風とすることができる。
後縁部24の高さH3が外縁部23(翼後端部105)に近づくほど大きくなることにより、中心軸101を中心とする外周側において送風能力を抑制することによって、ファンからの送風の不快感が低減されるプロペラファンを実現することができる。
[第8検証実験]
図89〜図93を参照して、上述の実施の形態5におけるプロペラファン250(図88参照)に関して行った第8検証実験について説明する。第8検証実験においては、上述の実施の形態5におけるプロペラファン250と、図89に示すプロペラファン950とをそれぞれ回転させてその際に得られる風量、騒音、消費電力、および風速分布を測定した。
第8検証実験に用いたプロペラファン250の翼21の形状は、上述の第1検証実験で用いられたプロペラファン160(図40および図41参照)と略同一である。連結部33の前端部33Aの無次元位置ηの値は約0.1である。連結部33の後端部33Bの無次元位置ξの値は約0.6である。プロペラファン250の直径は320mmである。プロペラファン250の回転によって形成される占有空間LM50(図88参照)の中心軸101方向における高さは55mmである。ボスハブ部41の直径は70mmである。プロペラファン250と占有空間LM50との間には、所定の体積を有する隙間S1,S2(図88参照)が形成される。内周側の隙間S1の体積は極めて小さく、外周側の隙間S2の体積は多い。
図89を参照して、プロペラファン950は、プロペラファン250と比較して、連結部33を有しておらず、後縁部24の高さが外縁部23(翼後端部105)に近づくほど大きくなるようには形成されていない。プロペラファン950と占有空間LM50との間には、所定の体積を有する隙間S3が形成される。隙間S3の体積は、隙間S1と隙間S2との総和に比べて大きい。その他の点については、プロペラファン950はプロペラファン250と略同様に構成される。
図90は、プロペラファン950,250の回転数n(rpm)と、プロペラファン950,250の各々から得られる風量Q(m3/min)との関係を示すグラフである。プロペラファン950の回転数nと風量Qとの関係は、線L10によって示される。プロペラファン250の回転数nと風量Qとの関係は、線L20によって示される。
線L10および線L20を対比すると、回転数nが同一の場合、プロペラファン250はプロペラファン950に対して25%増加した風量が得られている。したがって、プロペラファン250は、プロペラファンの直径、プロペラファンの回転によって形成される占有空間の高さ、および、ボスハブ部の直径がそれぞれ同一に構成されたプロペラファン950に比べて、多くの風量を得ることができることがわかる。
図91は、プロペラファン950,250の到達距離風量Q(m3/min)と、プロペラファン950,250の各々から発生する騒音(dB)との関係を示すグラフである。プロペラファン950の到達距離風量Qと騒音との関係は、線L10によって示される。プロペラファン250の到達距離風量Qと騒音との関係は、線L20によって示される。
線L10および線L20を対比すると、到達距離風量Qが同一の場合、プロペラファン250から発生する騒音は、プロペラファン950から発生する騒音に対して8dB低減している。したがって、プロペラファン250は、プロペラファンの直径、プロペラファンの回転によって形成される占有空間の高さ、および、ボスハブ部の直径がそれぞれ同一に構成されたプロペラファン950に比べて、騒音を低減できることがわかる。
図92は、プロペラファン950,250の到達距離風量Q(m3/min)と、プロペラファン950,250の各々で使用される消費電力(W)との関係を示すグラフである。プロペラファン950の到達距離風量Qと消費電力との関係は、線L10によって示される。プロペラファン250の到達距離風量Qと消費電力との関係は、線L20によって示される。
線L10および線L20を対比すると、到達距離風量Qが同一の場合、プロペラファン250で使用される消費電力は、プロペラファン950で使用される消費電力よりも小さくなる。たとえば、到達距離風量Qが約50m3/minの場合、プロペラファン250で使用される消費電力は、プロペラファン950で使用される消費電力に対して30%低減している。したがって、プロペラファン250は、プロペラファンの直径、プロペラファンの回転によって形成される占有空間の高さ、および、ボスハブ部の直径がそれぞれ同一に構成されたプロペラファン950に比べて、消費電力を低減できることがわかる。
図93は、プロペラファン950,250の各々における中心軸101からの半径方向の距離(無次元)と、風速(無次元)との関係を示すグラフである。プロペラファン950における中心軸101からの半径方向の距離(無次元)と風速(無次元)との関係は、線L10によって示される。プロペラファン250における中心軸101からの半径方向の距離(無次元)と風速(無次元)との関係は、線L20によって示される。
線L10および線L20を対比すると、プロペラファン250は、プロペラファン910に比べて風速のピークが大きく解消され、中心軸101からの半径方向の距離(無次元)が0.1から0.7の範囲ではほぼ完全に風速の均一化が実現できていることがわかる。
第8検証実験の考察としては、翼面28上に連結部33を設け、翼面28の内側の食い違い角を比較的小さくし、翼面28の外側の食い違い角を比較的大きくし、外縁部23に窪み形状の接続部38を設け、さらに、後縁部24が外周側の領域R3で外縁部23(翼後端部105)に近づくほど大きくなる高さH3を有していることによって、風量の均一化が実現でき、騒音および消費電力を低減できることがわかる。
図94を参照して、内周側での送風能力をさらに高めるために、プロペラファン260のように、前縁部22から外縁部23の翼先端部104寄りの部分までの領域R1において、中心軸101の軸方向においてこれらが一定の高さを維持するように形成してもよい(上述の実施の形態2参照)。図95を参照して、外周側での送風能力を高めるために、プロペラファン270のように、外縁部23に窪み形状の接続部38を設けない構成としてもよい。図96を参照して、外周側での送風能力を高めるために、プロペラファン280のように、後縁部24が、中心軸101を中心とする外周側の領域R2で、中心軸101の軸方向において一定の高さを有していてもよい(上述の実施の形態3参照)。
[実施の形態6]
(成形用金型)
本実施の形態では、上述の各実施の形態および各検証実験における各種のプロペラファンを樹脂を用いて成形するための成形用金型61について説明する。
図97は、プロペラファンの製造に用いられる成形用金型を示す断面図である。成形用金型61は、固定側金型62および可動側金型63を有する。固定側金型62および可動側金型63により、プロペラファンと略同一形状であって、流動性の樹脂が注入されるキャビティが規定されている。
成形用金型61には、キャビティに注入された樹脂の流動性を高めるための図示しないヒータが設けられてもよい。このようなヒータの設置は、たとえば、ガラス繊維入りAS樹脂のような強度を増加させた合成樹脂を用いる場合に特に有効である。
図97中に示す成形用金型61においては、プロペラファンにおける正圧面側表面を固定側金型62によって形成し、負圧面側表面を可動側金型63によって形成することを想定しているが、プロペラファンの負圧面側表面を固定側金型62によって形成し、プロペラファンの正圧面側表面を可動側金型63によって形成してもよい。
プロペラファンとして、材料に金属を用い、プレス加工による絞り成形により一体に形成するものがある。これらの成形は、厚い金属板では絞りが困難であり、質量も重くなるため、一般的には薄い金属板が用いられる。この場合、大きなプロペラファンでは、強度(剛性)を保つことが困難である。これに対して、翼部分より厚い金属板で形成したスパイダーと呼ばれる部品を用い、翼部分を回転軸に固定するものがあるが、質量が重くなり、ファンバランスも悪くなるという問題がある。また、一般的には、薄く、一定の厚みを有する金属板が用いられるため、翼部分の断面形状を翼型にすることができないという問題がある。
これに対して、プロペラファンを樹脂を用いて形成することにより、これらの問題を一括して解決することができる。
以上、本発明に基づいた各実施の形態および各検証実験について説明したが、今回開示された各実施の形態および各検証実験はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。