JP2013216743A - 耐熱性ポリ乳酸系成形体、およびその製造方法 - Google Patents

耐熱性ポリ乳酸系成形体、およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の方法では融点(Tm)近傍でアニーリング処理を施した場合、結晶化に時間が掛り過ぎるため実用的ではなく、さらに時間を掛けて結晶化した場合、ポリ乳酸樹脂が劣化するといった問題があった。そこで本発明は耐熱性を有するポリ乳酸樹脂成形体を提供すること、さらにはポリ乳酸樹脂の融点(Tm)近傍でアニーリングを実施した場合でも短時間で結晶化するポリ乳酸系成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂(A)の過冷却溶融体であるポリ乳酸樹脂過冷却溶融体(A1)を成形して得られるポリ乳酸系成形体であって、前記ポリ乳酸樹脂過冷却溶融体(A1)に前記ポリ乳酸樹脂(A)の微小結晶を含み、前記ポリ乳酸系成形体の示差走査型熱量計(DSC)による昇温測定で測定された結晶融解熱量(ΔHm−comp)が25J/g以上である耐熱性ポリ乳酸系成形体。
【選択図】図1

Description

本発明は耐熱性を有するポリ乳酸系成形体、およびその製造方法に関する。
近年、環境保護の観点から、ポリ乳酸樹脂等の生分解性樹脂を用いた樹脂成形体が注目されている。ポリ乳酸樹脂は剛性が強く透明性が高いことが特徴として挙げられる。また、原料となるL−乳酸がトウモロコシ、芋等の植物から抽出して生産されるために総二酸化炭素排出量が汎用ポリマーと比較し、少なくなるという利点を有している。
また、最近ではモノマーである乳酸が微生物を利用した発酵法により安価に製造されるようになり、より一層低コストでポリ乳酸を生産できるようになってきた。
そのため、汎用ポリマーとしての利用も検討されるようになり、容器、フィルム等の包装材料、衣料、フロアマット、自動車用内装材等の繊維材料、及び電気・電子製品の筺体や部品等の多種にわたる成型材料として期待されている。
しかし、ポリ乳酸樹脂は、結晶化速度が遅いため、低結晶化度の成形体が得られ易い。低結晶化度の成形体は、60℃前後のガラス転移点(Tg)を越えると熱変形を起こし易いため、耐熱性に乏しく、用途は限定されてしまう。そのため、ポリ乳酸樹脂の結晶化度を高め耐熱性を付与する試みがなされている。
特許文献1においては、結晶化度を上げるために、ポリ乳酸樹脂非晶性成形体をガラス転位点(Tg)から融点(Tm)の範囲でアニーリングを施し、結晶化する方法が開示されている。
特開平11−116785号公報
しかし、従来の方法では融点(Tm)近傍でアニーリング処理を施した場合、結晶化に時間が掛り過ぎるため実用的ではなく、さらに時間を掛けて結晶化した場合、ポリ乳酸樹脂が劣化するといった問題があった。
そこで上記のような状況に鑑み、本発明は耐熱性を有するポリ乳酸樹脂成形体を提供すること、さらにはポリ乳酸樹脂の融点(Tm)近傍でアニーリングを実施した場合でも短時間で結晶化するポリ乳酸系成形体を提供することを目的とする。
前述の課題を解決するために本発明が用いた手段は、ポリ乳酸樹脂(A)の過冷却溶融体であるポリ乳酸樹脂過冷却溶融体(A1)を成形して得られるポリ乳酸系成形体であって、ポリ乳酸樹過冷却脂溶融体(A1)にポリ乳酸樹脂(A)の微小結晶を含み、ポリ乳酸系成形体の示差走査型熱量計(DSC)による昇温測定で測定された結晶融解熱量(ΔHm−comp)が25J/g以上である耐熱性ポリ乳酸系成形体とすることである。
また、微小結晶に由来する示差走査型熱量計(DSC)による昇温測定で測定された結晶融解熱量(ΔHm−mc)を0.05〜10J/gとしてもよい。
また、ポリ乳酸樹脂過冷却溶融体(A1)は微小結晶が生成する温度においてプレアニーリング処理された過冷却溶融体としてもよい。
また、ポリ乳酸樹脂(A)を示差走査型熱量計(DSC)において200℃まで昇温し、その後、設定温度(I)まで冷却した状態で0.1〜1分間保持し、さらに200℃まで昇温した際に微小結晶に由来する融解ピークが観察された場合の設定温度(I)を微小結晶生成温度と定義し、溶融したポリ乳酸樹脂(A)を微小結晶生成温度においてプレアニーリング処理することが好ましい。
また、本発明の耐熱性ポリ乳酸系成形体は、ポリ乳酸樹脂(A)を融点(Tm)以上で溶融させ、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化温度(Tc)±30℃でプレアニーリング処理し、ポリ乳酸樹脂(A)の融点(Tm)‐30℃からTmの間でアニーリング処理して得られたものでもよい。
そして、ポリ乳酸樹脂(A)を融点(Tm)以上で溶融し、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化温度(Tc)±30℃でプレアニーリング処理し、ポリ乳酸樹脂(A)の融点(Tm)‐30℃からTmの間でアニーリング処理する製造方法によって耐熱性ポリ乳酸系成形体を得てもよい。
本発明によれば耐熱性を有するポリ乳酸樹脂成形体を提供することができる。さらにはポリ乳酸樹脂の融点(Tm)近傍でアニーリングを実施した場合でも短時間で結晶化するポリ乳酸系成形体を提供することができる。
微小結晶の結晶融解熱量(ΔHm−mc)を求めるための本発明の一実施態様におけるチャートであって、示差走査型熱量計(DSC)で測定された130℃で1分間保持後、昇温時のDSC曲線図である。 結晶化温度(Tc) を求めるための本発明の一実施態様におけるチャートであって、示差走査型熱量計(DSC)で測定された降温時のDSC曲線図である。 結晶化ピーク時間(τt)を求めるための本発明の一実施態様におけるチャートであって、示差走査型熱量計(DSC)で測定された等温時のDSC曲線図である。 ポリ乳酸系成形体の結晶融解熱量(ΔHm−comp)を求めるための本発明の一実施態様におけるチャートであって、示差走査型熱量計(DSC)で測定された0℃から昇温時のDSC曲線図である。
以下、本発明について詳述する。
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)の過冷却溶融体であるポリ乳酸樹脂過冷却溶融体(A1)にはポリ乳酸樹脂(A)の微小結晶を含み、さらに成形後のポリ乳酸系成形体の示差走査型熱量計(DSC)による昇温測定で測定された結晶融解熱量(ΔHm-comp)を25J/g以上とすることが重要である。
ここで成形後のポリ乳酸系成形体とはポリ乳酸樹脂過冷却溶融体(A1)を成形工程において所定の形を与え冷却された物体をいう。
また、示差走査型熱量計(DSC)による昇温測定で測定されたポリ乳酸樹脂(A)の微小結晶に由来する結晶融解熱量(ΔHm−mc)が0.05〜10J/gであることが好ましく、この微小結晶はプレアニーリング処理により得ることができる。以下、まず微小結晶について説明する。
ポリ乳酸樹脂(A)の微小結晶とは、溶融状態のポリ乳酸樹脂(A)において生成されるポリ乳酸樹脂(A)の微小な結晶であって、ポリ乳酸樹脂(A)が結晶化する際の核となるものである。そして、示差走査型熱量計(DSC)による昇温測定で測定された結晶融解熱量(ΔHm−mc)が0.05〜10J/gとなる微細結晶が溶融状態のポリ乳酸樹脂(A)に存在することで、その後の成形において結晶化がより速くなるとの効果が得られ好ましい。さらに、結晶融解熱量(ΔHm−mc)は0.1〜5J/gがより好ましく、0.4〜1J/gがさらに好ましい。
ここで、溶融状態とは過冷却溶融体の状態を含むものである。
ここで微小結晶は融点以上で溶融させたポリ乳酸樹脂(A)を融点以下に下げるプレアニーリング処理によって効率的に生成させることが可能である。そして、融点以上で溶融させたポリ乳酸樹脂(A)を融点以下に下げた状態を過冷却溶融体と定義すると、微小結晶はポリ乳酸樹脂(A)を過冷却溶融体であるポリ乳酸樹脂過冷却溶融体(A1)とすることで効率よく生成させることが可能である。
ポリ乳酸樹脂過冷却溶融体(A1)をより具体的に説明すると、ポリ乳酸樹脂(A)のガラス転位点(Tg)から融点(Tm)までの状態にあるポリ乳酸樹脂(A)のことを指し、概ねポリ乳酸樹脂(A)の結晶化温度(Tc)とするとTc−30℃以上であってTc+30℃以下の温度状態にあるポリ乳酸樹脂(A)をいう。
したがって、プレアニーリング処理によって微小結晶をより効率的に生成させるためには、ポリ乳酸樹脂(A)をガラス転位点(Tg)から融点(Tm)までの間の温度で保持することが好ましい。そして、この温度は概ねTc−30℃以上であってTc+30℃以下の温度を選択することができる。
さらに好ましいプレアニーリング処理としては、ポリ乳酸樹脂(A)を示差走査型熱量計(DSC)において200℃まで昇温し、その後、設定温度(I)まで冷却した状態で0.1〜1分間保持し、さらに200℃まで昇温した際に微小結晶に由来する融解ピークが観察された場合の設定温度(I)を微小結晶生成温度と定義し、この微小結晶生成温度にてポリ乳酸樹脂(A)の微小結晶を生成させる方法が挙げられる。
プレアニーリング処理の時間は、微小結晶が生成されるのに足る時間であればよいが、微小結晶の存在を示差走査型熱量計(DSC)で確認する場合には、微小結晶の結晶融解熱量(ΔHm−mc)が0.05〜10J/gとなる範囲であればよい。そして、0.1〜1分間程度プレアニーリング処理の時間で微小結晶が生成されるのが時間効率的に好ましい。
次にポリ乳酸系成形体の結晶融解熱量(ΔHm−comp)およびアニーリング処理について説明する。
成形後のポリ乳酸系成形体の結晶融解熱量(ΔHm−comp)は25J/g以上とすることが好ましい。結晶融解熱量(ΔHm−comp)を25J/g以上とするためにはプレアニーリング処理後にアニーリング処理を行うことが好ましい。成形後のポリ乳酸系成形体の結晶融解熱量(ΔHm−comp)が高ければ耐熱性が高くなることから、成形後のポリ乳酸系成形体の結晶融解熱量(ΔHm−comp)は30J/g以上がさらに好ましく、40J/g以上が特に好ましい。
これは、結晶融解熱量(ΔHm−comp)が高ければ成形後のポリ乳酸系成形体の結晶化度が高く、ガラス転移点(Tg)を超える温度においても結晶の存在によって熱変形を防止できるためである。
ここでアニーリング処理とは、結晶化を行うことを目的とし、適当な温度に保持する操作のことをいうものとする。しかし、成形品の内部ひずみを除去することを目的とし、適当な温度に保持する操作であっても結果として結晶化が行われていれば本明細書のアニーリング処理に該当する。また、金型等の中で形を与える成形の工程において、形を与えるために一定時間その状態を保持する場合であっても、結晶化が行われていれば本明細書のアニーリング処理に該当する。
本発明はポリ乳酸樹脂の融点(Tm)近傍でアニーリング処理を実施した場合でも短時間で結晶化することを特徴とするものである。そのため、結晶化にかかる時間を評価することで実用性を判断することができる。そこで結晶化にかかる時間の評価基準を示差走査型熱量計(DSC)にて求められる結晶化ピーク時間(τt)とした。そして、評価基準に用いた結晶化ピーク時間(τt)は所定温度で等温結晶化を行った際、結晶化による発熱量がピークになった時の時間とした。
ここで本発明の実施形態である耐熱性ポリ乳酸系成形体は、成形前のポリ乳酸樹脂(A)に微小結晶を含むために、その後のアニーリング処理において結晶化が速くなる。したがって、結晶化ピーク時間(τt)は微小結晶を含まないものと比較して短くなる。成形サイクルを考慮するとこの結晶化ピーク時間(τt)は60分以内が好ましく、40分以内がより好ましく、20分以内がさらに好ましい。なお、微細結晶を含まないポリ乳酸樹脂における結晶化ピーク時間(τt)は所定の測定時間内では観測されない場合もあり、このような場合は結晶化の速度が著しく遅く、成形サイクル等を考慮すると好ましくない。
次に結晶融解熱量等の熱融解特性の測定方法について図1〜図4を参照して説明する。熱融解特性は、示差走型査熱量計(DSC)によって測定することが可能であって、本明細書においては、パーキン・エルマー社製 「Pyris1」を用い、試料約10mgを精秤し、JIS K 7121及びJIS K 7122に準拠して求めた。なお、図1〜図4は本発明の一実施態様に係る示差走型査熱量計(DSC)曲線図であって、本発明は図1〜図4に限定されるものではない。
<結晶化温度(Tc)>
示差走査型熱量計(DSC)において室温から100℃/分の速度で200℃まで昇温し、その状態で、10分間保持する。その後、室温まで10℃/分の速度で冷却し、図1のようなDSC等温結晶化曲線を得る。このDSC等温結晶化曲線から、発熱ピークを得て、発熱ピークの頂点が結晶化温度(Tc)として求められる。
そして、滑剤、酸化防止剤を配合したポリ乳酸樹脂(A)のコンパウンドを試料として用いた図1においては100℃から130℃付近にかけての発熱ピークの頂点(d)を結晶化温度(Tc)としている。なお、このときの結晶化温度(Tc)は、112℃であった。
<微小結晶の結晶融解熱量(ΔHm−mc)>
微小結晶の結晶融解熱量(ΔHm−mc)はプレアニーリング処理を示差走査型熱量計(DSC)測定において行い、このプレアニーリング処理と連続してDSC測定をおこなっている。
具体的には示差走査型熱量計(DSC)において200℃まで昇温し、その状態で、10分保持する。その後、120〜140℃の所定温度まで100℃/分の速度で冷却し、その状態で1分間保持する。この冷却、保持の工程がプレアニーリング処理に相当する。その後、10℃/分の速度で200℃まで昇温し、図2のようなDSC曲線を得る。このDSC曲線から、150〜180℃の範囲にある吸熱ピーク(a)を得て、吸熱ピーク(a)から結晶融解熱量(ΔHm−mc)を求めることができる。
なお、ピーク高さは、140℃〜160℃付近のベースラインと180℃〜200℃付近のベースラインを結ぶことにより得られるベースラインからの高さで求められる。
そして、滑剤、酸化防止剤を配合したポリ乳酸樹脂(A)のコンパウンドを試料として用いた図2においては163℃付近と177℃付近とを結ぶことによって得られるベースラインからの高さで求められた斜線部の吸熱ピーク(a)を結晶融解熱量(ΔHm−mc)としている。
<結晶化ピーク時間(τt)>
結晶化ピーク時間(τt)はプレアニーリング処理を示差走査型熱量計(DSC)測定において行い、このプレアニーリング処理と連続してDSC測定を行っている。
具体的には示差走査型熱量計(DSC)において室温から100℃/分の速度で200℃まで昇温し、その状態で、10分間保持する。その後、120〜140℃の所定温度まで100℃/分の速度で冷却し、その状態で1分間保持する。この冷却、保持の工程がプレアニーリング処理に相当する。その後、130〜160℃の所定温度まで100℃/分の速度で昇温し、その状態で、60分保持し、図3のようなDSC等温結晶化曲線を得る。このDSC等温結晶化曲線から、発熱ピークを得て、0分から発熱ピークが観測される時間までの時間(e)を結晶化ピーク時間(τt)として求められる。
そして、滑剤、酸化防止剤を配合したポリ乳酸樹脂(A)のコンパウンドを試料として用いた図3においては、破線で示された0分から発熱ピークが観測されたときまでの時間(e)である約5分を結晶化ピーク時間(τt)としている。
<ポリ乳酸系成形体の結晶融解熱量(ΔHm−comp)>
示差走査型熱量計(DSC)において0℃から10℃/分の速度で200℃まで昇温し、図4のような昇温時のDSC曲線を得る。このDSC曲線から、80〜120℃の範囲にある発熱ピーク(c)、150〜180℃の範囲にある吸熱ピーク(b)を得て、発熱ピーク(c)から冷結晶化量(ΔHc)、吸熱ピーク(b)から結晶融解熱量(ΔHm)を求める。さらに下記の式にてポリ乳酸系成形体の結晶融解熱量(ΔHm−comp)が求められる。
(ΔHm−comp) = (ΔHm) − (ΔHc)
なお、ピーク高さは、65℃〜85℃付近のベースラインと170℃〜200℃付近のベースラインを結ぶことにより得られるベースラインからの高さで求められる。
そして、ポリ乳酸樹脂過冷却溶融体(A1)を成形して得られた耐熱性ポリ乳酸系成形体を試料として用いた図4においては80℃付近と170℃付近を結ぶことで得られるベースラインからの高さで求められた斜線部(右上がり)の吸熱ピーク(b)を結晶融解熱量(ΔHm)とし、斜線部(右下がり)の発熱ピーク(c)を冷結晶化量(ΔHc)としている。
以下、本発明において使用することができる各種配合材料について説明する。ただし、本明細書に記載のない材料等の使用を排除するものではない。
ポリ乳酸系樹脂(A)は、実質的にL−乳酸及び/又はD−乳酸由来のモノマー単位を主たる構成成分とした熱可塑性樹脂である。ここで「実質的に」とは、本発明の効果を損なわない範囲で、他のヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価アルコール、脂肪族多塩基酸等を共重合しても構わないという意味である。更に、分子量増大を目的にして、少量の鎖延長剤(例えばジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物等)を使用してもかまわない。
ポリ乳酸系樹脂(A)の製造方法としては、既知の任意の重合方法を採用する事ができる。最も代表的に知られているのは、乳酸の無水環状二量体であるラクチドを開環重合する方法(ラクチド法)であるが、乳酸を直接縮合重合しても構わない。
ポリ乳酸系樹脂(A)の分子量や分子量分布については、特に限定しないが通常、重量平均分子量で10,000〜1,000,000であり、好ましくは100,000〜300,000の範囲である。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。また、異なる分子量のポリ乳酸樹脂を混合して用いても良い。
ポリ乳酸系樹脂(A)の光学純度は95%以上が好ましく、97%以上がさらに好ましい。光学純度が95%未満ではポリ乳酸系樹脂(A)の結晶化速度が遅く、本発明の効果が得られない場合が出てくる。ここでいう光学純度とは総乳酸成分の内、L−乳酸又はD−乳酸のどちらか高含有成分の純度のことを指している。
また、ポリ乳酸系樹脂(A)には、望むべき物性や用途に応じて、本発明を逸脱しない範囲でポリ乳酸系樹脂の中から適宜選択し、使用することができる。また必要に応じて2種類以上のポリ乳酸系樹脂を組み合わせて用いてもかまわない。
ちなみに、本発明に用いることが可能なポリ乳酸系樹脂(A)としては既に上市されているものがある。具体的には、NatureWorks社よりIngeo(登録商標)やユニチカ社よりテラマック(登録商標)が市販されており、本発明ではこのようなポリ乳酸系樹脂を好適に用いることができる。
プレアニーリング処理での微小結晶生成速度を速くするために結晶核剤、可塑剤を用いることが好ましい。結晶化核剤と可塑剤はそれぞれ単独で使用してもよいし、両方を併用してもよい。
結晶核剤としては、シリカ、タルク、窒化ホウ素等の無機微粒子、アミド系化合物、ソルビトール誘導体、リン酸エスエル金属塩、塩基性無機アルミニウム化合物、ホスホン酸の金属塩等が挙げられる。
これらの中では、有機系の結晶核剤が成形体の透明性を維持するために好適であり、さらには、1価ないし3価の金属、例えばリチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、バリウム、銅、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケル等の各種金属塩化合物が好適であり、フェニルホスホン酸等のホスホン酸の亜鉛塩などの金属塩が結晶核剤としての効果が大きく好適である。
ちなみに、このような結晶核剤としては、既に上市されているものがあり、具体的には日産化学工業社より上市されているエコプロモート(登録商標)などが好適に使用できる。
結晶核剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、0.05〜3重量部がより好ましく、0.1〜1重量部がさらに好ましい。0.01重量部未満では結晶化促進効果が乏しく、5重量部を超えると添加量に対する結晶化促進効果は得られなくなると同時に、混練時に分解触媒として作用して熱分解を促進するおそれがある。
可塑剤としては、一般にポリマーの可塑剤として用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤及びエポキシ系可塑剤などを挙げることができる。耐ブリード性の面からエステル系可塑剤が好ましく、さらに耐水性の面からアジピン酸エステル系可塑剤が好ましい。具体的にはメチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、ベンジルブチルジグリコールアジペートなどを挙げることができる。
ちなみに、このような可塑剤としては、既に上市されているものがあり、具体的には大八化学工業社より上市されているDAIFATTY(登録商標)などが好適に使用できる。
可塑剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂(A)100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、2〜30重量部がより好ましい。
また、熱安定性を向上する目的で、酸化防止剤を配合することができる。
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物などを挙げることができる。
また、酸化防止剤の配合量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.03〜2重量部がさらに好ましい。0.01重量部未満では熱安定性付与の効果が不十分であり、5重量部を超える場合は酸化防止剤添加量に対する効果が得られ難くなる。
また、金属剥離性の改良により成形性を向上する目的で、滑剤を配合することができる。
滑剤の種類は特に限定されないが、成形加工時、劣化や蒸発により成形加工が困難になる可能性があることから、炭素数20以上の脂肪酸および/または炭素数20以上の脂肪酸エステルおよび/または炭素数20以上の脂肪酸金属塩を配合することが好ましい。
具体的には、ベヘン酸、ベヘン酸エステル、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、ベヘン酸リチウム、モンタン酸、モンタン酸エステル、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸マグネシウムなどが挙げられ、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
また、滑剤の配合量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、0.03〜2重量部がさらに好ましい。0.01重量部未満では金属剥離性の効果が乏しく、5重量部を超える場合は滑性が高すぎて成形加工が困難になる場合がある。
また、ポリ乳酸系樹脂は水の存在下で加水分解が発生することから、加工時の粘度低下抑制や成形体への耐久性付与が必要な場合は封鎖剤を配合することが好ましい。
封鎖剤としては、ポリマーのカルボキシル末端基を封鎖することのできる化合物であれば特に制限はなく、ポリマーのカルボキシル末端の封鎖剤として用いられているものを用いることができる。その中でもカルボキシル基反応性末端封鎖剤は、ポリ乳酸樹脂の末端を封鎖するのみではなく、ポリ乳酸樹脂や天然由来の有機充填剤の熱分解や加水分解などで生成する乳酸やギ酸などの酸性低分子化合物のカルボキシル基も封鎖することができることから好ましい。また、上記末端封鎖剤は、熱分解により酸性低分子化合物が生成する水酸基末端も封鎖できる化合物であることがさらに好ましい。このようなカルボキシル基反応性末端封鎖剤としては、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、カルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1 種の化合物を使用することが好ましく、なかでもエポキシ化合物および/ またはカルボジイミド化合物が好ましい。
ちなみに、このような封鎖剤としては、既に上市されているものがあり、具体的には日清紡ケミカル社よりカルボジライト(登録商標)が市販されている。
カルボキシル基反応性末端封鎖剤の量は、ポリ乳酸樹脂100 重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましく、0 .05〜3重量部がさらに好ましい。
また、表面外観性、成形性、機械特性を改良することを目的とし、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合することができる。
具体例としてはポリ乳酸樹脂以外のポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、芳香族および脂肪族ポリケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、熱可塑性澱粉樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ− 4 − メチルペンテン− 1 、ポリエーテルイミド樹脂、酢酸セルロー樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができ、中でもポリ乳酸系樹脂以外のポリエステル樹脂が好ましい。ポリ乳酸系樹脂以外のポリエステル樹脂の具体例としては( ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリエチレン( テレフタレート/ サクシネート) 樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂およびセルロースアセテート、セルロースジアセテートセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートなどのセルロースエステル樹脂)などが挙げられる。
また、上記成分以外にも、光安定剤、紫外線吸収剤、衝撃改良剤、帯電防止剤、顔料、着色剤、離型剤、相溶化剤、発泡剤、香料、抗菌抗カビ剤、シラン系、チタン系、アルミニウム系等の各種カップリング剤、その他の各種充填剤等、一般的な合成樹脂の製造時に、通常使用される各種添加剤も併用することができる。
耐熱性ポリ乳酸系成形体を得るにあたって、予備混練が必要な場合には、通常、熱可塑性樹脂において用いられている公知の装置を利用することができる。例えば、ポリ乳酸系樹脂(A)および必要に応じて滑剤や酸化防止剤などの配合剤を添加したものを高速攪拌機、低速攪拌機、ヘンシェルミキサーなどで均一に混合し、バッチ式混練ミキサー、バンバリーミキサー、コニーダ、押出機などで溶融混合し、直ちに成形してもよい。また、溶融混合した後、一旦ペレット化し、その後成形してもよい。
耐熱性ポリ乳酸系成形体を得るにあたって、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて通常、熱可塑性樹脂において用いられている公知の装置を利用することができる。例えば、プレス成形機や押出成形機、射出成型機などの成形機がある。
耐熱性ポリ乳酸系成形体の製造方法としては、ポリ乳酸樹脂(A)を融点(Tm)以上で溶融させ、その後、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化温度(Tc)±30℃でプレアニーリング処理することでポリ乳酸樹脂過冷却溶融体(A1)とし、このポリ乳酸樹脂過冷却溶融体(A1)を成形し、さらにポリ乳酸樹脂(A)の融点(Tm)‐30℃からTmの間でアニーリング処理することが好ましい。
具体例としては、例えばポリ乳酸樹脂(A)の融点が166.2℃である場合に、プレス成形において、200℃にて10分間保持し、ポリ乳酸樹脂(A)溶融させ、設定温度130℃、圧力0.3Mpa、時間1分の条件でプレアニーリング処理することでポリ乳酸樹脂過冷却溶融体(A1)を得る。そして、設定温度150℃、圧力0.3Mpa、時間60分の条件で板状に成形すると同時にアニーリング処理を実施し、その後冷却することで板状の耐熱性ポリ乳酸系成形体を製造することができる。
このようにプレス成型においては、金型の設定温度、圧力を変えることで、プレアニーリング、成形、アニーリングを連続して行うことができるために好ましい製造方法である。また、成形とアニーリングは同条件で同時に行うことも可能である。
このようなプレアニーリング処理の温度条件は次のようにして把握してもよい。すなわち、ポリ乳酸樹脂(A)を示差走査型熱量計(DSC)において200℃まで昇温し、その後、設定温度(I)まで冷却した状態で0.1〜1分間保持し、さらに200℃まで昇温した際に微小結晶に由来する融解ピークが観察された場合の設定温度(I)を微小結晶生成温度と定義する。そして、この微小結晶生成温度をプレアニーリング処理の温度条件とすることができる。このような方法によりプレアニーリング処理における温度条件を簡単かつ適切に把握することができる。
この示差走査型熱量計(DSC)を用いた測定方法は、上述の<微小結晶の結晶融解熱量(ΔHm−mc)>の測定方法に準じて行うことができる。そしてこの場合、120〜140℃の所定温度を設定温度(I)として測定を行う。
耐熱性ポリ乳酸系成形体には、必要に応じて延伸操作を行ってもかまわない。延伸操作を行う場合、アニーリング処理段階で延伸するのが好ましい。アニーリング処理段階で延伸操作を行うことで、より短時間で結晶化を行うことが可能となる。
また、耐熱性ポリ乳酸系成形体をシート又はフィルムとする場合、シート又はフィルム構成としては、単層であってもかまわないし、表面に易滑性、接着性、粘着性、耐熱性、耐候性など新たな機能を付与するために積層構成としてもよい。例えば、本発明のシート又はフィルムからなるA層に、樹脂または添加剤の組成の異なるB層、C層を積層した場合には、A/Bの2層、B/A/B、B/A/C、あるいはA/B/Cの3層などが例として挙げられる。さらには必要に応じて3層より多層の積層構成であってもよく、各層の積層厚み比も任意に設定できる。
また、印刷性、ラミネート性、コーティング適性を向上させるために一般的に行われる表面処理を施しても良い。表面処理方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、酸処理などが挙げられる。
次に、実施例より本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(使用材料)
ポリ乳酸系樹脂(A):融点(Tm)166.2℃、光学純度:98.7%であるポリL乳酸樹脂(商品名;Ingeo4032D、NatureWorks社製)
結晶核剤:フェニルホスホン酸亜鉛系(商品名;エコプロモート、日産化学工業社製)
可塑剤:アジピン酸エステル系(商品名;DAIFATTY101、大八化学工業社製)
酸化防止剤:ヒンダードフェノール系(商品名;アデカスタブAO−60、アデカ社製)
滑剤:モンタン酸エステル(商品名;Licolub WE−40、クラリアントジャパン社製)
<実施例1〜5、比較例1〜5>
表1または2に示したポリ乳酸系樹脂(A)及びその他の添加剤からなる配合物を、容量100cc(0.0001立方メートル)のバッチ式ミキサーで5分間溶融混練した。次に、170℃に設定した10インチ(直径0.254m)の2本ロール成形装置を用いて圧延し、厚さ500μmのシートを作製した。
実施例については先に得たシートを用い、設定温度200℃のプレス成形機にて10分間保持し溶融し、表1の条件にてプレアニーリング処理を行うことでポリ乳酸系樹脂過冷却溶融体(A1)を得た。そして、連続してポリ乳酸系樹脂過冷却溶融体(A1)を金型内で成形すると同時にアニーリング処理を実施し、冷却後にシート状のポリ乳酸系成形体を得た。アニーリング処理は融点(Tm)−30℃からTmの間の温度で行った。
比較例については、プレアニーリング処理を行わず、先に得たシートを用い、設定温度200℃のプレス成形機にて10分間保持し溶融し、表2の条件にて成形すると同時にアニーリング処理を実施し、冷却後に成形体を得た。
結晶化温度(Tc)、微小結晶の結晶融解熱量(ΔHm−mc)、結晶化ピーク時間(τt)、ポリ乳酸系成形体の結晶融解熱量(ΔHm−comp)、は示差走査熱量計(DSC)として、パーキン・エルマー社製 「Pyris1」を用い、試料約10mgを精秤し、JIS K 7121及びJIS K 7122に準拠して求めた。
以下に詳細方法を説明する。
<結晶化温度(Tc)>
表1または2に示した実施例1〜5または比較例1〜5の配合物を、2本ロール成形装置にて得た厚さ500μmのシートを用いた。示差走査型熱量計(DSC)においてポリ乳酸系成形体サンプルを200℃まで昇温し、その状態で、10分保持した。その後、室温まで10℃/分の速度で冷却し、DSC等温結晶化曲線を得た。得られたDSC等温結晶化曲線から、発熱ピークを得、発熱ピークのトップの温度を結晶化温度(Tc)として、求めた。
<微小結晶の結晶融解熱量(ΔHm−mc)>
微小結晶の結晶融解熱量(ΔHm−mc)はプレアニーリング処理を示差走査型熱量計(DSC)測定において再現し、プレアニーリング処理と連続してDSC測定を行うことで測定した。一方、比較例においてはプレアニーリング処理を行わないので、本測定を行っていない。
そこで実施例においては表1に示した実施例1〜5の配合物を、2本ロール成形装置にて混練して得た厚さ500μmのシートを用いた。示差走査型熱量計(DSC)においてシートサンプルを200℃まで昇温し、その状態で、10分保持した。その後、表1のプレアニーリング温度まで100℃/分の速度で冷却し、その状態で表1のプレアニーリング時間、保持した。この冷却し保持する工程がプレアニーリング処理に相当する。例えば、実施例1では130℃まで冷却し、その状態で1分間保持した。その後、10℃/分の速度で200℃まで昇温し、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線から、150〜180℃の範囲にある吸熱ピークを得、吸熱ピークから結晶融解熱量(ΔHm−mc)を求めた。
なお、ピーク高さは、140℃〜150℃付近のベースラインと180℃〜200℃付近のベースラインを結ぶことにより得られるベースラインからの高さで求めた。
<結晶化ピーク時間(τt)>
結晶化ピーク時間(τt)はプレアニーリング処理を示差走査型熱量計(DSC)測定において再現し、プレアニーリング処理と連続してDSC測定を行うことで測定した。一方、比較例においてはプレアニーリング処理を行わないのでDSC測定を行った。
具体的な測定方法として実施例においては表1に示した実施例1〜5の配合物を、2本ロール成形装置にて混練して得た厚さ500μmのシートを用いた。示差走査型熱量計(DSC)においてポリ乳酸系成形体サンプルを200℃まで昇温し、その状態で、10分保持した。その後、表1のプレアニーリング温度まで100℃/分の速度で冷却し、その状態で表1のプレアニーリング時間、保持した。この冷却し保持する工程がプレアニーリング処理に相当する。例えば、実施例1では130℃まで冷却し、その状態で1分間保持した。その後、130〜160℃の所定温度まで100℃/分の速度で昇温し、その状態で、60分保持し、DSC等温結晶化曲線を得た。得られたDSC等温結晶化曲線から、発熱ピークを得、発熱ピークのトップの時間を結晶化ピーク時間(τt)として、求めた。
比較例においては、示差走査型熱量計(DSC)においてポリ乳酸系成形体サンプルを200℃まで昇温し、その状態で、10分保持した。その後、プレアニーリング処理を経ることなく130〜160℃の所定温度まで100℃/分の速度で冷却し、その状態で、60分保持し、DSC等温結晶化曲線を得た。得られたDSC等温結晶化曲線から、発熱ピークを得、発熱ピークのトップの時間を結晶化ピーク時間(τt)として、求めた。
60分間で発熱ピークが観測されなかった場合には、表において「観測できず」と記載した。
<ポリ乳酸系成形体の結晶融解熱量(ΔHm−comp)>
実施例1〜5、比較例1〜5で得られたポリ乳酸系成形体を0℃から10℃/分の速度で200℃まで昇温した。昇温時のDSC曲線を得、得られたDSC曲線から、80〜120℃の範囲にある発熱ピーク、150〜180℃の範囲にある吸熱ピークを得、発熱ピークから冷結晶化量(ΔHc)、吸熱ピークから結晶融解熱量(ΔHm)を求めた。さらに下記式にてポリ乳酸系成形体の結晶融解熱量(ΔHm−comp)を求めた。
(ΔHm−comp) = (ΔHm) − (ΔHc)
なお、ピーク高さは、65℃〜85℃付近のベースラインと170℃〜200℃付近のベースラインを結ぶことにより得られるベースラインからの高さで求めた。
<耐熱性>
実施例1〜5、比較例1〜5で得られたポリ乳酸系成形体を、120℃のオーブン中で1時間熱処理した後の外観を目視にて観察し、以下の3段階で評価した。
○:変形なし
△:一部変形等が生じた箇所がある
×:大部分で変形等が生じた
Figure 2013216743
Figure 2013216743
上記の表1及び2から明らかなように、アニーリング処理のみの場合と比較し、プレアニーリング処理を行ってからアニーリング処理を実施することで短時間で結晶化し、耐熱性を有したポリ乳酸樹脂成形体が得られていることがわかる。
本発明によるとポリ乳酸樹脂の融点(Tm)近傍でアニーリングを実施した場合でも短時間で結晶化し、耐熱性を有するポリ乳酸樹脂成形体を得ることができるため、容器、カード、及び電気・電子製品の筺体や部品として広く利用することができる。
(a) 吸熱ピーク:微小結晶の結晶融解熱量(ΔHm−mc)
(b) 発熱ピークの頂点:結晶化温度(Tc)
(c) 0分から発熱ピークが観測されたときまでの時間:結晶化ピーク時間(τt)
(d) 吸熱ピーク:結晶融解熱量(ΔHm)
(e) 発熱ピーク:冷結晶化量(ΔHc)

Claims (6)

  1. ポリ乳酸樹脂(A)の過冷却溶融体であるポリ乳酸樹脂過冷却溶融体(A1)を成形して得られるポリ乳酸系成形体であって、
    前記ポリ乳酸樹脂過冷却溶融体(A1)に前記ポリ乳酸樹脂(A)の微小結晶を含み、
    前記ポリ乳酸系成形体の示差走査型熱量計(DSC)による昇温測定で測定された結晶融解熱量(ΔHm−comp)が25J/g以上である耐熱性ポリ乳酸系成形体。
  2. 前記微小結晶に由来する示差走査型熱量計(DSC)による昇温測定で測定された結晶融解熱量(ΔHm−mc)が0.05〜5J/gである請求項1に記載の耐熱性ポリ乳酸系成形体。
  3. 前記ポリ乳酸樹脂過冷却溶融体(A1)は前記微小結晶が生成する温度においてプレアニーリング処理された過冷却溶融体である請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の耐熱性ポリ乳酸系成形体。
  4. 前記ポリ乳酸樹脂(A)を示差走査型熱量計(DSC)において200℃まで昇温し、その後、設定温度(I)まで冷却した状態で0.1〜1分間保持し、さらに200℃まで昇温した際に前記微小結晶に由来する融解ピークが観察された場合の前記設定温度(I)を微小結晶生成温度と定義し、
    前記ポリ乳酸樹脂(A)を前記微小結晶生成温度においてプレアニーリング処理して得られる請求項3に記載の耐熱性ポリ乳酸系成形体。
  5. 前記ポリ乳酸樹脂(A)を融点(Tm)以上で溶融させ、
    前記ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化温度(Tc)±30℃でプレアニーリング処理し、
    前記ポリ乳酸樹脂(A)の融点(Tm)‐30℃から融点(Tm)の間でアニーリング処理して得られる請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の耐熱性ポリ乳酸系成形体。
  6. ポリ乳酸樹脂(A)を融点(Tm)以上で溶融し、
    前記ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化温度(Tc)±30℃でプレアニーリング処理し、
    前記ポリ乳酸樹脂(A)の融点(Tm)‐30℃から融点(Tm)の間でアニーリング処理することを特徴とする耐熱性ポリ乳酸系成形体の製造方法。
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