JP2013216180A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ABS作動時のWin超過を好適に防止する。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置(50)は、回転電機(12)から蓄電手段(14)への充電量が充電制限値(Win)を超えないように制限する充電制限手段(140)と、油圧制動手段(40)の制動力を、スリップ率が小さくなるように増減させるアンチロック制御手段(130)と、アンチロック制御開始前の充電制限値から、アンチロック制御開始時の油圧制動手段の目標制動力に基づいて算出した制御量を差し引くことで、アンチロック制御時の充電制限値とする充電制限値設定手段(160)と、アンチロック制御時の充電制限値に基づいて、蓄電手段への充電量が充電制限値内となる下限トルクを算出する下限トルク算出手段(150)と、下限トルクを下回らないように回生トルクを制御する回生トルク制御手段(150)とを備える。
【選択図】図9
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置(50)は、回転電機(12)から蓄電手段(14)への充電量が充電制限値(Win)を超えないように制限する充電制限手段(140)と、油圧制動手段(40)の制動力を、スリップ率が小さくなるように増減させるアンチロック制御手段(130)と、アンチロック制御開始前の充電制限値から、アンチロック制御開始時の油圧制動手段の目標制動力に基づいて算出した制御量を差し引くことで、アンチロック制御時の充電制限値とする充電制限値設定手段(160)と、アンチロック制御時の充電制限値に基づいて、蓄電手段への充電量が充電制限値内となる下限トルクを算出する下限トルク算出手段(150)と、下限トルクを下回らないように回生トルクを制御する回生トルク制御手段(150)とを備える。
【選択図】図9
Description
本発明は、油圧により作動して車輪を制動する油圧制動手段、及び回転電機の回生トルクにより車輪を制動する回生制動手段を備えるハイブリッド車両の制御装置の技術分野に関する。
ハイブリッド車両等の回転電機を備える車両には、油圧により作動する油圧制動装置に加えて、回転電機の回生時に発生するトルクを回生制動力として車輪に伝達する回生制動装置が備えられる場合がある。また、車両のスリップ率を低減するために、油圧制動装置の制動力を増減させるABS(Anti-lock Brake System)が備えられる場合がある。
上述した油圧制動装置及び回生制動装置を備える車両では、油圧制動装置及び回生制動装置の各々から出力される制動力の合計値が実現すべき総制動力となるように制御が行われる。即ち、実現すべき総制動力が、油圧制動装置及び回生制動装置で夫々分担して出力される。このような場合、ABSの作動時には、油圧制動装置の制動力が一時的に大きく変動するため、回生制動装置に対してより正確な制御が求められる。
このため、例えば特許文献1では、ABS動作時に、低下した油圧制動装置の制動力以下に限界回生制動力を設定することで、ABSの性能を確保したまま回生制動を実施可能とする技術が提案されている。また特許文献2では、ABS作動時に、発電側上限、蓄電側上限、操作側上限の最小値を回生制動力とする技術が提案されている。
回生制動装置によって回生された電力は、バッテリに充電される。このバッテリには、通常、単位時間当たりの充放電量の制限値(具体的には、充電側の制限値Win、及び放電側の制限値Wout)が設定される。
しかしながら、限界回生制動力以下の回生トルクが回生制動装置に指令されている状態でABSが作動すると、油圧制動装置の油圧の変化によってドライブシャフトにかかるトルクが変化し、ドライブシャフトに捩れが生じる場合がある。また、車輪の回転変動も不規則な状態となる。
ドライブシャフトの捩れや車輪の回転変動が発生すると、回生制動を行う回転電機にも回転変動が生じる。このため、ABS作動前においては充電制限値Winの範囲内に収まっていた回生量が、ABSの作動時において充電制限値Winを超過してしまうという状況が生じ得る。制限値Winを超過してしまうと、例えばバッテリの寿命低下や、昇圧コンバータへの過電流によってIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の破損等が発生してしまう。
これに対し、特許文献1及び2の技術では、このような充電制限値Winの超過を考慮した制御がなされていない。即ち、上述した先行技術文献を含む従来技術は、ABS作動時において回生制動装置による回生量が充電制限値Winを超過してしまうおそれがあるという技術的問題点を有している。
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、ABS作動時のWin超過を好適に防止することが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを課題とする。
本発明のハイブリッド車両の制御装置は上記課題を解決するために、油圧により作動して車輪を制動する油圧制動手段、回転電機の回生トルクにより前記車輪を制動する回生制動手段、及び前記回転電機に対する充放電を行う蓄電手段を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、前記回転電機から前記蓄電手段への充電量が所定の充電制限値を超えないように制限する充電制限手段と、前記油圧制動手段の制動力を、前記ハイブリッド車両のスリップ率が小さくなるように増減させるアンチロック制御を行うアンチロック制御手段と、前記アンチロック制御開始前の充電制限値から、前記アンチロック制御開始時の前記油圧制動手段の目標制動力に基づいて算出した制御量を差し引くことで、前記アンチロック制御時の充電制限値とする充電制限値設定手段と、前記アンチロック制御時の充電制限値に基づいて、前記蓄電手段への充電量が前記充電制限値内となる前記回転電機の下限トルクを算出する下限トルク算出手段と、前記アンチロック制御時に、前記下限トルクを下回らないように前記回転電機の前記回生トルクを制御する回生トルク制御手段とを備える。
本発明に係る車両は、例えばハイブリッド車両等の回転電気を備える車両であり、車輪に制動力を与える制動手段として、油圧により作動する油圧制動手段及び回転電機の回生トルクを用いて制動する回生制動手段を備えている。回生制動手段によれば、回転電機における回生トルクを制動力として利用できると共に、回生によって得られた電力をバッテリ等の蓄電手段に充電して車両の駆動に利用することができる。よって、油圧制動手段だけが備えられる場合と比べて、エネルギ効率の高い駆動を実現できる。
本発明のハイブリッド車両の制御装置は、上述した油圧制動手段及び回生制動手段による制動力の出力を制御する制御装置であって、例えば、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、各種プロセッサ又は各種コントローラ、或いは更にROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バッファメモリ又はフラッシュメモリ等の各種記憶手段等を適宜に含み得る、単体の或いは複数のECU(Electronic Controlled Unit)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る。
本発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、充電制限手段によって、回転電機から蓄電手段への充電量が所定の充電制限値を超えないように制限されている。なお、ここでの「充電制限値」とは、蓄電手段への充電量が大きくなり過ぎることで何らかの不具合が発生してしまうような状況を防止するための閾値として設定されており、例えば蓄電手段の劣化や蓄電手段に接続される部材の破損を防止できるような値として、予め求められた上で設定されている。なお、充電制限値は、車両の走行状態に応じて可変な値として設定されていても構わない。
本発明のハイブリッド車両の制御装置の動作時には、例えばABSとして構成されるアンチロック制御手段によって、油圧制動手段の制動力を増減させるアンチロック制御が行われる。アンチロック制御は、所定の条件下(例えば、車両のスリップ率が所定の閾値より大きくなる或いは大きくなることが予測される場合)において行われる。即ち、アンチロック制御は常時行われている訳ではない。アンチロック制御手段によれば、例えば急ブレーキ時のスリップ率を小さくすることができるため、車両の挙動を安定させることができる。
ここで、本願発明者の研究するところによれば、限界回生制動力以下の回生トルクが回生制動手段に指令されている状態でアンチロック制御が開始されると、油圧制動手段の油圧の変化によってドライブシャフトにかかるトルクが変化し、ドライブシャフトに捩れが生じるおそれがあることが判明している。また、車輪の回転変動も不規則な状態になることが判明している。
ドライブシャフトの捩れや車輪の回転変動が発生すると、回生制動手段に回生トルクを出力する回転電機にも回転変動が生じる。このため、アンチロック制御開始前においては充電制限値の範囲内に収まっていたはずの回生量が、アンチロック制御時において充電制限値を超過してしまうという状況が生じ得る。
しかるに本発明では、アンチロック制御時において、以下に説明するような各種処理が実行されることで充電制限値の超過が防止される。
先ず、充電制限値設定手段では、アンチロック制御開始時の油圧制動手段の目標制動力に基づいて制御量が算出される。なお、ここでの「目標制動力」とは、油圧制動手段によって実現することが求められる制動力の値を指している。また、ここでは「アンチロック制御開始時」とされているが、アンチロック制御が開始する瞬間に限定されるものではなく、算出される制御量が後述する効果を発揮しうる限り多少のマージンを含んでいてもよい。「制御量」は、アンチロック制御時において充電制限値を一時的に変更するための制御量であり、例えばアンチロック制御によって油圧制動手段の油圧が低下される分、回転電機において発電されることになる電力に対応している。制御量は、例えば予め設定されたマップや数式等に基づいて算出される。
続いて、充電制限値設定手段では、アンチロック制御開始前の充電制限値から、制御量を差し引くことで、アンチロック制御時の充電制限値が設定される。即ち、充電制限手段によって設定されている充電制限値(即ち、アンチロック制御開始前の充電制限値)は、アンチロック制御時において一時的に変更される。なお、アンチロック制御時の充電制限値は、制御量を差し引いて求めることからも分かるように、アンチロック制御開始前の充電制限値よりも小さい値となる。
次に、下限トルク算出手段によって、アンチロック制御時の充電制限値に基づき、蓄電手段への充電量が充電制限値内となる回転電機の下限トルクが算出される。なお、下限トルクの算出には、アンチロック制御時の充電制限値加えて、他のパラメータ(例えば、回転電機単体のトルク下限)を用いてもよい。
下限トルクが算出されると、回生トルク制御手段によって、下限トルクを下回らないようにアンチロック制御時の回転電機の回生トルクが制御される。このため、上述したように、アンチロック制御が開始されることに起因して、充電制限値の超過が発生してしまうことを好適に防止することができる。従って、例えば充電制限値の超過によって不具合が生じ得る蓄電手段等の各部位の信頼性を効果的に高めることができる。
以上説明したように、本発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、油圧制動手段及び回生制動手段を備えるハイブリッド車両において、アンチロック制御時の充電制限値超過を好適に防止することが可能である。
本発明のハイブリッド車両の制御装置の一態様では、前記充電制限値設定手段は、前記アンチロック制御開始時の前記油圧制動手段の目標制動力が大きいほど、前記制御量を大きい値として算出する。
この態様によれば、アンチロック制御開始時における油圧制動手段の目標制動力の大小に応じて制御量が算出されるため、制御量の算出処理を比較的容易なものとすることができる。
ちなみに、油圧制動手段の目標制動力が大きいほど制御量を大きい値とする根拠としては、油圧制動手段の目標制動力が大きいほどドライブシャフトの捩れが大きくなり、結果としてオーバーシュートが大きくなってしまうことが挙げられる。
本発明のハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記充電制限値設定手段は、前記アンチロック制御開始時の前記油圧制動手段の目標制動力に加えて、前記アンチロック制御開始時の車速に基づいて前記制御量を算出する
この態様によれば、アンチロック制御開始時の車速を利用する分、アンチロック制御開始時の油圧制動手段の目標制動力だけに基づいて制御量を算出する場合と比べて、より効果的な(即ち、アンチロック制御時の充電制限値をより適切な値として算出し得る)制御量を算出することができる。なお、ここでの「車速」は、回転電機の回転数と同義であり、車速に代えて、回転電機の回転数を利用するようにしてもよい。
この態様によれば、アンチロック制御開始時の車速を利用する分、アンチロック制御開始時の油圧制動手段の目標制動力だけに基づいて制御量を算出する場合と比べて、より効果的な(即ち、アンチロック制御時の充電制限値をより適切な値として算出し得る)制御量を算出することができる。なお、ここでの「車速」は、回転電機の回転数と同義であり、車速に代えて、回転電機の回転数を利用するようにしてもよい。
上述したアンチロック制御開始時の車速に基づいて制御量を算出する態様では、前記充電制限値設定手段は、前記アンチロック制御開始時の車速が小さいほど、前記制御量を大きい値として算出してもよい。
この場合、アンチロック制御開始時の車速の大小に応じて制御量が算出されるため、制御量の算出処理を比較的容易なものとすることができる。
ちなみに、油圧制動手段の目標制動力が大きいほど制御量を大きい値とする根拠としては、車速が大きいほどアンチロック制御に用いるパルスの数が多くなり、結果としてアンチロック制御の制御性が高まることが挙げられる。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
先ず、本実施形態に係るハイブリッド車両の全体構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、実施形態に係る制動装置が搭載される車両の構成を示す概略構成図である。
図1において、車両1は、内燃機関(以下、エンジンと称することがある。)10と、第1モータジェネレータ(以下、第1MGと略称することがある。)11と、第2モータジェネレータ(以下、第2MGと略称することがある。)12とを備えている。なお、エンジン10は、ハイブリッド車両に搭載される周知の内燃機関であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
第1MG11及び第2MG12は、電動機及び発電機として機能する周知のものである。第1MG11は、ロータ軸11aと一体回転するロータ11bと、ロータ11bの外周に同軸に配置されてケース3に固定されたステータ11cとを備えている。第2MG12も同様に、ロータ軸12aと一体回転するロータ12bと、ロータ12bの外周に同軸に配置されてケース3に固定されたステータ12cとを備えている。第1MG11は、第1インバータ13を介してバッテリ14と電気的に接続されている。第2MG12は、第2インバータ15及び第1インバータ13を介してバッテリ14と電気的に接続されている。
なお、第2MG12は、本発明の「回転電機」の一例である。即ち、第2MG12は、本発明の「回生制動手段」の一部として回生制動力を出力する。また、バッテリ14は、本発明の「蓄電手段」一例である。
車両1には、動力分割機構16と、車両1の前輪2Fに動力を伝達するための出力部17とが設けられている。このため、前輪2Fが車両1の駆動輪となる。出力部17は、ドライブシャフト18と、ドライブシャフト18と一体に回転するドライブギア19とを備えている。ドライブギア19は第1中間軸20と一体に回転するドリブンギア21と噛み合っている。また、第1中間軸20には第1中間ギア22が一体回転するように設けられている。第1中間ギア22は、第2中間軸23と一体に回転する第2中間ギア24と噛み合っている。第2中間軸23には、出力ギア25が一体回転するように設けられている。出力ギア25は、デファレンシャル機構26のケースに設けられたリングギア26aと噛み合っている。デファレンシャル機構26は、伝達された動力を左右の前輪2Fに分配する周知のものである。
動力分割機構16には、エンジン10、第1MG11及び出力部17が接続されている。動力分割機構16は、シングルピニオン型の遊星歯車機構27を備えている。遊星歯車機構27は、外歯歯車であるサンギアS1、そのサンギアS1に対して同軸的に配置された内歯歯車としてのリングギアR1と、これらのギアS1、R1に噛み合うピニオンギアP1を自転可能かつサンギアS1の周囲を公転可能に支持するキャリアC1とを備えている。この図に示すように、サンギアS1は第1MG11のロータ軸11aと連結されている。キャリアC1はダンパー28を介してエンジン10の出力軸10aと接続されている。なお、ダンパー28は内部に設けられた不図示のバネの伸縮により振動を減衰する周知のものである。リングギアR1は出力部17のドライブシャフト18と連結されている。
第2MG12は、減速機構29を介して出力部17と接続されている。減速機構29は、シングルピニオン型の減速用遊星歯車機構30を備えている。減速用遊星歯車機構30は、外歯歯車であるサンギアS2、そのサンギアS2に対して同軸的に配置された内歯歯車としてのリングギアR2と、これらのギアS2、R2に噛み合うピニオンギアP2を自転可能かつサンギアS2の周囲を公転可能に支持するキャリアC2とを備えている。この図に示すように、サンギアS2は第1MG12のロータ軸12aと連結されている。キャリアC2は回転不能なようにケース3に固定されている。リングギアR2は出力部17のドライブシャフト18と連結されている。
次に、本発明の「油圧制御手段」の一例である油圧ブレーキについて、図2及び図3を参照して説明する。ここに図2は、車両に設けられている油圧ブレーキの構成を示す概略構成図である。また図3は、ブレーキキャリパの内部を示す部分拡大図である。
図2に示すように、車両1には、左右の前輪2F及び左右の後輪2Rを制動する油圧ブレーキ40が設けられている。なお、以降において前輪2Fと後輪2Rとを区別する必要がない場合には単に車輪2を称する。
油圧ブレーキ40は、車輪2とともに回転するブレーキディスク41と、ブレーキディスク41を挟み込んで車輪2に制動力を付与するブレーキキャリパ42とを備えている。この図に示すように、これらブレーキディスク41及びブレーキキャリパ42は、各車輪2に設けられている。
図3に拡大して示すように、ブレーキキャリパ42は、ブレーキディスク41に押し付けられるブレーキパッド43と、ブレーキパッド43を駆動するシリンダ44とを備えている。各シリンダ44は、ブレーキ配管45を介してブレーキアクチュエータ46にそれぞれ接続されている。
ブレーキアクチュエータ46は、その内部に油圧ポンプ及び電磁バルブ等を有し、この油圧ポンプにてブレーキペダルBPにて操作されるマスタシリンダ47内のブレーキオイルを各シリンダ44に送出することにより各車輪に制動力を付与する。ブレーキアクチュエータ46は、その内部に設けられている電磁バルブの開閉によって各シリンダ44内の油圧をそれぞれ調整でき、これにより各車輪2に付与する制動力をそれぞれ別々に調節することができる。
図1に戻り、エンジン10、第1MG11、第2MG12及びブレーキアクチュエータ46の油圧ポンプ及び電磁バルブの各動作は、車両制御装置50にて制御されている。車両制御装置50は、本発明の「ハイブリッド車両の制御装置」の一例であり、マイクロプロセッサ及びその動作に必要なRAM、ROM等の周辺機器を含んだコンピュータユニットとして構成されている。車両制御装置50は、車両1を適切に走行させるための各種制御プログラムを保持しており、これらのプログラムを実行することによりエンジン10、第1MG11及び第2MG12等の制御対象に対する制御を行っている。
なお、車両制御装置50は、第1インバータ13を制御することにより第1MG11を、第2インバータ15を制御することにより第2MG12をそれぞれ制御する。車両制御装置50には、車両1に係る情報を取得するための種々のセンサが接続されている。車両制御装置50には、例えば車両1の速度(車速)に対応した信号を出力する車速センサ51、ブレーキペダルBPの操作量に対応した信号を出力するブレーキペダルセンサ52及びブレーキアクチュエータ46から各シリンダ44に送られる油圧(以下、ブレーキ油圧と称することがある。)に対応した信号を出力する油圧センサ53等が接続されている。車両制御装置50には、この他にも種々のセンサが接続されているが、説明の便宜上、それらの図示は省略している。
車両制御装置50は、ブレーキペダルBPが操作された場合に第2MG12及び油圧ブレーキ40を制御して車両1を制動する。第2MG12は、減速機構29及び出力部17を介して前輪2Fと動力伝達可能に接続されている。このため、第2MG12からトルクを付与することにより前輪2Fを制動できる。
車両1では制動モードとして、第2MG12のみを使用して車両1を制動する回生制動モード、油圧ブレーキ40のみを使用して車両1を制動する油圧制動モード及び第2MG12及び油圧ブレーキ40の両方を使用して車両1を制動する協調制動モードが設定されている。回生制動モードでは、第2MG12を発電機として機能させるとともに第2MG12から回生トルクを出力させ、この回生トルクにて前輪2Fを制動する。油圧制動モードでは、油圧ブレーキ40のブレーキキャリパ42でブレーキディスク41を挟み込んで車輪2を制動する。協調制動モードでは、第2MG12から回生トルクを出力させるとともにブレーキキャリパ42でブレーキディスク41を挟み込んで車輪2を制動する。
車両制御装置50は、ブレーキペダルBPの操作量及び単位時間当たりのブレーキペダルBPの操作量の変化量(以下、操作変化量と称することがある。)等に応じてこれらの制動モードを適宜に選択して車両1を制動する。
次に、車両制御装置50の具体的な構成について、図4を参照して説明する。ここに図4は、車両制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図4では、説明の便宜上、車両制御装置50が含み得る部位のうち、本実施形態と関わりの深いもののみを図示し、その他の部位については図示を省略している。
図4において、車両制御装置50は、総制動力算出部110と、油圧指令部120と、ABS制御部130と、充電制限部140と、回生トルク指令部150と、充電制限値設定部160と、下限トルク算出部170とを備えて構成されている。
総制動力算出部110は、例えばブレーキペダルBPの操作量変化量に応じて、車両全体に対して求められている制動力の合計値を算出する。具体的には、総制動力算出部110は、油圧ブレーキ40及び第2MG12で実現すべき制動力の合計値(総制動力)を算出する。また、総制動力算出部110は、算出された総制動力を、油圧ブレーキ40及び第2MG12で夫々どのように配分するか否かを決定する。
油圧指令部120は、総制動力算出部110において算出された総制動力のうち、油圧ブレーキ40に配分された制動力を出力するように油圧を制御する。
ABS制御部130は、本発明の「アンチロック制御手段」の一例であり、車両1のスリップ率を低減するために、油圧ブレーキ40で付与する制動力を増減させるアンチロック制御を行う。ABS制御部130は、例えば車輪2がロックすると判定した場合にアンチロック制御を開始するよう、油圧指令部120に指示を出力する。
充電制限部140は、本発明の「充電制限手段」の一例であり、バッテリ14における充電制限値Win及び放電制限値Woutを設定する。充電制限部140は、通常、予め設定された充電制限値Win及び放電制限値Woutを利用するが、後述するように、アンチロック制御時にはアンチロック制御時の充電制限値Winを利用する。
回生トルク指令部150は、総制動力算出部110において算出された総制動力のうち、第2MG12に配分された制動力を出力するように回生トルクを制御する。
充電制限値設定部160は、本発明の「充電制限値設定手段」の一例であり、アンチロック制御時の充電制限値を設定して充電制限部140へと出力する。アンチロック制御時の充電制限値の導出方法については後に詳述する。
下限トルク算出部170は、本発明の「下限トルク算出手段」の一例であり、充電制限値設定部160で設定されたアンチロック制御時の充電制限値に基づいて、第2MG12における下限トルクを算出する。これにより、回生トルク指令部150では、下限トルクを下回らないように第2MG12が制御される。即ち、ここでの回生トルク指令部150は、本発明の「回生トルク制御手段」の一例として機能する。
尚、車両制御装置50は、上述した各部位を含んで構成された一体の電子制御ユニットであり、上記各部位に係る動作は、全て車両制御装置50によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係る上記部位の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各部位は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
次に、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作について、図5を参照して説明する。ここに図5は、車両制御装置の動作を示すフローチャートである。なお、図5では、説明の便宜上、車両制御装置50が実行する各種処理のうち、本実施形態に特有の制動力制御と関連の深い処理のみを示し、その他の一般的な処理については省略している。
図5において、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作時には、先ずABS制御中であるか否かが判定される(ステップS101)。即ち、ABS制御部130によるアンチロック制御が行われているか否かが判定される。
ABS制御中である場合(ステップS101:YES)、充電制限値設定部160において、ABS制御開始時の目標制動力及び第2MG12の回転数からWin制御量が算出される(ステップS102)。なお、Win制御量は、充電制限値Winを一時的に変更するための制御量であり、例えばABS制御の開始に起因して増加し得る回生電力に対応している。
以下では、Win制御量の算出について、図6及び図7を参照して詳細に説明する。ここに図6は、Win制御量の算出方法の一例を示すマップである。また図7は、目標制動力とオーバーシュートとの関係を示すグラフである。
図6において、Win制御量は、ABS制御開始時の油圧ブレーキ40の目標制動力が大きいほど、大きい値として算出される。具体的には、車速が大である場合について着目すると、目標制動力が小の場合のWin制御量は3kw、目標制動力が中の場合のWin制御量は4kw、目標制動力が大の場合のWin制御量は5kwとされる。車速が中である場合について着目すると、目標制動力が小の場合のWin制御量は4kw、目標制動力が中の場合のWin制御量は5kw、目標制動力が大の場合のWin制御量は6kwとされる。車速が小である場合について着目すると、目標制動力が小の場合のWin制御量は5kw、目標制動力が中の場合のWin制御量は6kw、目標制動力が大の場合のWin制御量は7kwとされる。
図7において、本願発明者の研究するところによれば、ABS制御開始時の油圧ブレーキ40の目標制動力が比較的小さい場合には、ドライブシャフト18の捩れも小さくなり、オーバーシュートも小さくできることが判明している。一方で、ABS制御開始時の油圧ブレーキ40の目標制動力が比較的大きい場合には、ドライブシャフト18の捩れが大きくなり、オーバーシュートも大きくなってしまうことが判明している。
以上のように、ABS制御開始時の油圧ブレーキ40の目標制動力が大きいと、ABS制御の開始に起因して増加し得る回生電力も大きくなる。よって、上述したように、ABS制御開始時の油圧ブレーキ40の目標制動力が大きいほど、Win制御量を大きい値として算出するようにすれば、比較的容易な処理で適切なWin制御量を算出できる。
図6に戻り、Win制御量は、ABS制御開始時の車速が大きいほど、小さい値として算出される。具体的には、油圧ブレーキ40の目標制動力が小である場合について着目すると、車速が大の場合のWin制御量は3kw、車速が中の場合のWin制御量は4kw、車速が小の場合のWin制御量は5kwとされる。油圧ブレーキ40の目標制動力が中である場合について着目すると、車速が大の場合のWin制御量は4kw、車速が中の場合のWin制御量は5kw、車速が小の場合のWin制御量は6kwとされる。油圧ブレーキ40の目標制動力が大である場合について着目すると、車速が大の場合のWin制御量は5kw、車速が中の場合のWin制御量は6kw、車速が小の場合のWin制御量は7kwとされる。
ここで、本願発明者の研究するところによれば、ABS制御開始時の車速が大きいほどアンチロック制御に用いるパルスの数が多くなり、結果としてアンチロック制御の制御性が高まることが判明している。言い換えれば、車速が大きいほど、ABS制御の開始に起因して増加し得る回生電力を小さくすることができる。よって、上述したように、ABS制御開始時の車速が大きいほど、Win制御量を小さい値として算出するようにすれば、比較的容易な処理で適切なWin制御量を算出できる。
図5に戻り、Win制御量が算出されると、通常時の充電制限値WinからWin制御量を差し引いた値が、ABS制御時の充電制限値Winとして設定される(ステップS103)。即ち、ABS制御時には、充電制限値Winが、Win制御量分だけ小さくされる。
ABS制御時の充電制限値Winが設定されると、下限トルク算出部170において、第2MG12の下限トルクが算出される(ステップS104)。下限トルクは、ABS制御時の充電制限値Win及び第2MG12のトルク単体下限に基づいて、回生によるバッテリ14への充電量が充電制限値Winを超過しないような値として算出される。
トルク下限が算出されると、回生トルク指令部150によって、下限トルクを下回らないようにABS制御時の第2MG12の回生トルクが制御される。このため、上述したように、ABS制御が開始されることに起因して、充電制限値Winの超過が発生してしまうことを好適に防止することができる。従って、例えば充電制限値の超過によって不具合が生じ得るバッテリ14等の各部位の信頼性を効果的に高めることができる。
以下では、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置による制御について、図8及び図9を参照して、より具体的に説明する。ここに図8は、比較例に係る各種パラメータの変動を示すタイムチャート(その1)である。また図9は、実施形態に係る各種パラメータの変動を示すタイムチャート(その1)である。
図8において、上述したWin制御量を用いたABS制御時の充電制限値Winの算出、及び下限トルクに基づいた回生トルクの制御が行われない比較例について考える。このような比較例では、ABSによる油圧ブレーキ40の制動力の低下に伴い、ドライブシャフト18に捩れが生じ、結果的にバッテリ14への充電量が充電制限値Winを超過してしまう期間が発生する。より具体的には、ドライブシャフト18の回転数にオーバーシュートが発生してしまう分、第2MG12における回転数が高まり、回生トルクを保ったままであっても回生電力が増加してしまう。
図9において、しかるに本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、Win制御量によってABS時の充電制限値Winが新たに設定されると共に、ABS時の充電制限値Winに基づいて算出された下限トルクに応じて第2MG12の回生トルクが制御される。よって、図を見ても分かるように、ABS制御時の充電制限値Winの超過を防止することができる。
続いて、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置による制御の他の実施例について、図10及び図11を参照して説明する。ここに図10は、比較例に係る各種パラメータの変動を示すタイムチャート(その2)である。また図9は、実施形態に係る各種パラメータの変動を示すタイムチャート(その2)である。
図10に示す比較例では、モータ回転数をなました値が車体速として推定される。そして下限モータトルクは、この推定車体速及び充電制限値Winに基づいて設定される。この場合、モータ回転数が、ABS制御による回転落ち込みから比較的早期に復帰する。このため、図を見ても分かるように、車体速よりモータ回転数が大きくなる期間が生じ、その期間においてWin超過が発生する。
図11において、しかるに本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、Win制御量によってABS時の充電制限値Winが新たに設定されると共に、ABS時の充電制限値Winに基づいて算出された下限トルクに応じて第2MG12の回生トルクが制御される。よって、図を見ても分かるように、ABS制御時の充電制限値Winの超過を防止することができる。
以上説明したように、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、油圧ブレーキ40及び第2MG12を制動手段として備えるハイブリッド車両において、ABS制御時の充電制限値Win超過を好適に防止することが可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
1…車両、2…車輪、10…内燃機関、11…第1モータジェネレータ、12…第2モータジェネレータ、13…第1インバータ、14…バッテリ、15…第2インバータ、16…動力分割機構18…ドライブシャフト、19…減速機構、40…油圧ブレーキ、41…ブレーキディスク、42…ブレーキキャリパ、43…ブレーキパッド、44…シリンダ、45…ブレーキ配管、46…ブレーキアクチュエータ、47…マスタシリンダ、50…車両制御装置、51…車速センサ、110…総制動力算出部、120…油圧指令部、130…ABS制御部、140…充電制限部、150…回生トルク指令部、160…充電制限値設定部、170…下限トルク算出部。
Claims (4)
- 油圧により作動して車輪を制動する油圧制動手段、回転電機の回生トルクにより前記車輪を制動する回生制動手段、及び前記回転電機に対する充放電を行う蓄電手段を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記回転電機から前記蓄電手段への充電量が所定の充電制限値を超えないように制限する充電制限手段と、
前記油圧制動手段の制動力を、前記ハイブリッド車両のスリップ率が小さくなるように増減させるアンチロック制御を行うアンチロック制御手段と、
前記アンチロック制御開始前の充電制限値から、前記アンチロック制御開始時の前記油圧制動手段の目標制動力に基づいて算出した制御量を差し引くことで、前記アンチロック制御時の充電制限値とする充電制限値設定手段と、
前記アンチロック制御時の充電制限値に基づいて、前記蓄電手段への充電量が前記充電制限値内となる前記回転電機の下限トルクを算出する下限トルク算出手段と、
前記アンチロック制御時に、前記下限トルクを下回らないように前記回転電機の前記回生トルクを制御する回生トルク制御手段と
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 前記充電制限値設定手段は、前記アンチロック制御開始時の前記油圧制動手段の目標制動力が大きいほど、前記制御量を大きい値として算出することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記充電制限値設定手段は、前記アンチロック制御開始時の前記油圧制動手段の目標制動力に加えて、前記アンチロック制御開始時の車速に基づいて前記制御量を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記充電制限値設定手段は、前記アンチロック制御開始時の車速が小さいほど、前記制御量を大きい値として算出することを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
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