(第1実施形態)
以下、本発明に係る制御装置を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。制御装置は、高電圧バッテリから供給される電力によって、モータを駆動させることにより走行する電気自動車(電動車両)に適用される。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付している。
図1に示すように、電気自動車(以下、単に車両10と示す)は、車載主機であるモータ20と、充放電可能な高電圧バッテリ30と、高電圧バッテリ30に接続された電気負荷40と、制御装置としてのECU50と、を備えている。
モータ20は、電動機及び発電機として機能する回転電機であり、例えば、永久磁石を用いた同期式3相交流モータである。モータ20の回転軸21は、減速機22を介して駆動軸としての車軸23と機械的に連結されている。モータ20が電動機として機能する場合、モータトルクによって、回転軸21及び当該回転軸21に連結された車軸23が回転し、車軸23に固定されている駆動輪24が回転駆動する。一方、車両10の減速時に、モータ20が発電機として機能する場合、モータ20は、駆動輪24の回転を抑制する回生ブレーキ(回生制動)を行う。そして、モータ20は、駆動輪24の運動エネルギーを電力に変換して高電圧バッテリ30に回収(充電)する。つまり、モータ20は、減速時に回生発電を行う。
モータ20は、電力変換回路であるインバータ25を介して高電圧バッテリ30に接続されている。モータ20が電動機として駆動する場合には、ECU50の指令により、インバータ25は、高電圧バッテリ30からモータ20に電力を供給する。その結果、モータ20が駆動(力行駆動)する。一方、モータ20が発電機として機能する場合には、ECU50の指令により、インバータ25は、モータ20に回生発電させ、発電電力を高電圧バッテリ30に供給する。
高電圧バッテリ30は、充放電可能な蓄電池であり、高電圧バッテリ30の出力電圧は、例えば100~400Vである。なお、高電圧バッテリ30としては、例えば、リチウムイオン蓄電池やニッケル水素蓄電池を用いることができる。
また、高電圧バッテリ30には、バッテリーマネージメントユニット(以下、BMU31と示す)が接続されている。BMU31は、高電圧バッテリ30の状態を監視し、その情報を取得する。例えば、BMU31は、高電圧バッテリ30の情報として、高電圧バッテリ30の蓄電状態(SOC)や温度を取得する。そして、BMU31は、取得した高電圧バッテリ30の情報をECU50に出力する。なお、ECU50がBMU31の機能を兼ね備えてもよい。
電気負荷40は、電圧変換器としてのDC-DCコンバータ(以下、単にコンバータ41と示す)を介して前記高電圧バッテリ30と接続されている。電気負荷40には、コンバータ41に接続された低電圧バッテリ42と、コンバータ41に接続された補機としての補機類43と、が含まれる。
コンバータ41は、高電圧バッテリ30から供給された高圧電流を降圧して出力する降圧コンバータである。コンバータ41は、ECU50からの指令に基づく電流量を出力する。なお、コンバータ41は、電圧を変換する際に、電力を消費する(損失が生じる)。
低電圧バッテリ42は、充放電可能な蓄電池であり、低電圧バッテリ42の出力電圧は、例えば12Vである。なお、低電圧バッテリ42としては、例えば、鉛蓄電池を用いることができる。低電圧バッテリ42は、コンバータ41を介して高電圧バッテリ30から供給された電力により充電可能に構成されている。つまり、充電時において、低電圧バッテリ42は、電気負荷に相当する。低電圧バッテリ42の状態は、ECU50により監視されており、低電圧バッテリ42の情報がECU50に入力されるように構成されている。例えば、ECU50は、低電圧バッテリ42の情報として、低電圧バッテリ42の蓄電状態(SOC)などを取得する。
補機類43は、複数種類の低電圧補機から構成されている。低電圧補機としては、例えば、ヘッドランプ、オーディオ装置、ラジエータファン、エアコンのブロワ、ウォーターポンプが挙げられる。補機類43は、コンバータ41を介して高電圧バッテリ30から電力を供給可能に構成されており、電力供給に基づき駆動する。また、補機類43は、低電圧バッテリ42にも接続されており、低電圧バッテリ42からも電力を供給可能に構成されている。このため、低電圧バッテリ42は、補機側蓄電池に相当する。
ECU50は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えた電子制御装置である。このECU50は、各種情報を取得可能に構成されている。
例えば、ECU50は、アクセル操作量を検出するアクセルセンサや、ブレーキペダルのブレーキ操作量を検出するブレーキセンサなど、各種センサからドライバ操作情報を取得(入力)する。また、ECU50は、BMU31から、高電圧バッテリ30の情報を取得する。また、ECU50は、インバータ25から、モータ20に関する情報(例えば、モータ20の回転速度など)を取得する。また、ECU50は、車速センサなどの各種センサから、車両10に関する情報(車両速度など)を取得する。また、ECU50は、電気負荷40から、低電圧バッテリ42の情報(SOC等)や、補機類43の駆動状態に関する情報を取得する。
そして、ECU50は、取得した各種情報に基づき、各種制御を実行する。例えば、ECU50は、インバータ25を介してモータ20の力行駆動及び回生発電を制御する。
ところで、モータ20が力行駆動又は回生発電する場合、モータ20の回転速度及びモータトルクによって、モータ効率が異なることが知られている。
モータ効率とは、モータ20の入出力電力(電圧×電流)と、モータ20の入出力動力(回転速度×トルク)との比を百分率で表したものである。より詳しくは、力行駆動する場合には、モータ20への入力電力に対するモータ20からの出力動力の比を百分率で表したものであり、回生発電する場合には、モータ20への入力動力に対するモータ20からの出力電力の比を百分率で表したものである。
例えば、図2にモータ効率のマップ(マップデータ)を示す。図2のモータ効率のマップでは、モータ20の回転速度とモータトルクとをパラメータとしてモータ効率が定められている。このモータ効率のマップでは、モータ効率を同じにする領域が等高線にて示されている。このうち、モータ効率が最高であることを示す高効率領域F0が規定されており、その高効率領域F0から遠ざかるほど、モータ効率が低下するような関係が定められている。
図2に示すような、マップは、実験やシミュレーションなどにより取得可能である。なお、図2では、モータトルクが正の場合(つまり、力行駆動の場合)におけるモータ効率のマップを示しているが、モータトルクが負の場合(つまり、回生発電の場合)におけるモータ効率のマップも同様である。
従来、モータ20を効率的に制御する場合、上述したようなモータ効率のマップを参照して、高効率領域F0でモータ20を制御していた。しかしながら、図2のようなモータ効率のマップは、高電圧バッテリ30やインバータ25による損失が考慮されていない。高電圧バッテリ30の電池損失は、高電圧バッテリ30に流れる通電量(充電又は放電時の電流量)の2乗に、高電圧バッテリ30の電池抵抗を乗算することにより算出される。インバータ25の損失も、同様に、電流量及び回路抵抗に比例する。
このため、モータ効率だけでなく、高電圧バッテリ30やインバータ25の損失を考慮して、動力システム101全体で考えて効率的にモータ20を制御することが望ましい。つまり、インバータ25を介して高電圧バッテリ30とモータ20との間で通電している場合において、高電圧バッテリ30の入出力電力とモータ20の入出力動力との比を示すシステム効率を考慮して、モータ20を制御することが望ましい。システム効率とは、高電圧バッテリ30、インバータ25及びモータ20からなる動力システム101全体の効率を指す。この動力システム101には、コンバータ41及び電気負荷40は除かれている。
そこで、本実施形態では、回転速度及びモータトルクをパラメータとして、システム効率を特定可能なマップ(システム効率のマップ)を作成し、ECU50の記憶装置に記憶している。
なお、力行駆動時におけるモータ20の入力電力及び発電時のモータ20の出力電力は、回転速度及びモータトルクが定まれば、一定値となる。このため、電気負荷40への電力供給を考慮しない場合、すなわち、高電圧バッテリ30から電気負荷40側へ出力される電流量がゼロの場合、システム効率のマップは1通りに定めることができる。このシステム効率のマップは、実験やシミュレーションなどにより取得可能である。
図3に、システム効率のマップを示す。図3のシステム効率のマップでは、モータ20の回転速度とモータトルクとをパラメータとしてシステム効率が定められている。このシステム効率のマップでは、システム効率を同じにする領域が等高線にて示されている。このうち、システム効率が最高効率であることを示す高効率領域F1が規定されており、その高効率領域F1から遠ざかるほど、システム効率が低下するような関係が定められている。なお、図3では、モータトルクが正の場合のマップを示しているが、モータトルクが負の場合も同様である。
そして、モータ20を効率的に制御するためには、ECU50は、まず、システム効率のマップを参照する。そして、ECU50は、モータ動作点(システム効率、モータトルク及び回転速度を特定する動作点)の中から、高効率領域F1のモータ動作点を特定する。そして、ECU50は、当該モータ動作点により特定される回転速度及びモータトルクでモータ20を制御すればよいこととなる。このようにする場合、車速(すなわち、モータ20の回転速度)は、ドライバの要求に従う必要がある。しかしながら、高効率領域F1のモータ動作点でモータ20を制御する場合、要求に対してモータトルクが過剰となる可能性がある。
そこで、本実施形態において、ECU50は、モータ20を断続運転させることとしている。具体的には、ECU50は、モータ20により車両10を駆動又は制動させる走行期間と、モータ20により制動又は駆動させずに(すなわち、モータ20の出力トルクをゼロ又はゼロ近傍にして)車両10を惰行させる惰行期間と、をそれぞれ周期的に、かつ、交互に設定する。そして、ECU50は、走行期間及び惰行期間が設定される1運転周期におけるモータ20の平均トルクが、要求トルクと等しくなるようにして、ドライバの要求を満たすこととしている。
ちなみに、高効率領域F1のモータ動作点でモータ20を制御する際、要求トルクとモータトルクが等しい場合、又は要求トルクに対してモータトルクが足らない場合がある。この場合には、システム効率に関係なく(効率を向上できなくても)、ECU50は、ドライバの要求を優先して、要求トルクに応じたモータトルクを出力させるように、モータ20を制御することとしている。この場合、断続運転させることなく、継続運転させる。
ところで、本実施形態の高電圧バッテリ30には、モータ20以外に、電気負荷40が接続されており、モータ20とは無関係に、高電圧バッテリ30から電気負荷40へ電力が供給される。このため、例えば、補機類43の駆動状態によって、モータ20の状態に関わらず、高電圧バッテリ30の通電量が増減する。同様に、低電圧バッテリ42の蓄電状態によって、モータ20の状態に関わらず、高電圧バッテリ30の通電量が増減する。そして、電気負荷40への電力供給に基づく高電圧バッテリ30の通電量が変化すれば、電池損失も変化する。このため、動力システム101のシステム効率に影響を与えることとなる。
そこで、本実施形態では、高電圧バッテリ30の通電量に基づき、システム効率、回転速度、及びモータトルクをパラメータとして特定可能なモータ動作点を設定することとした。具体的には、電気負荷40への電力供給に基づく高電圧バッテリ30の通電量毎に、システム効率が最高効率であるモータ動作点の曲線(マップ)をECU50の記憶装置に記憶しておく。そして、ECU50は、電気負荷40への電力供給に基づく高電圧バッテリ30の通電量を取得し、取得した通電量に基づき、最高効率であるモータ動作点の曲線を読み出す。そして、ECU50は、当該曲線に示されるモータ動作点に基づき、ドライバの要求を満たすようにモータトルク及び回転速度を決定することとした。
図4に、システム効率が最高効率であるモータ動作点の曲線を、高電圧バッテリ30の通電量毎に例示する。図4において、曲線M0は、電気負荷40への電力供給に基づく高電圧バッテリ30の通電量が「0」である場合において、システム効率が最高効率であるモータ動作点の曲線である。曲線M1は、電気負荷40への電力供給に基づく高電圧バッテリ30の通電量が「A1(>0)」である場合において、システム効率が最高効率であるモータ動作点の曲線である。曲線M2は、電気負荷40への電力供給に基づく高電圧バッテリ30の通電量が「A2(>A1)」である場合において、システム効率が最高効率であるモータ動作点の曲線である。
なお、図4では、モータトルクが正の場合のマップを示しているが、モータトルクが負の場合も同様である。また、高電圧バッテリ30の通電量毎に、図3に示すような、システム効率、回転速度、及びモータトルクをパラメータとして特定可能なモータ動作点を示すシステム効率のマップを取得(作成)、記憶し、これらに基づき、モータ20を制御してもよい。
上述したような方法で、効率的に力行駆動及び回生発電を行うため、ECU50には、以下に示すような種々の機能を備えた。すなわち、図5に示すように、ECU50は、要求トルク算出部51と、通電量算出部52と、回転電機設定部としてのモータ設定部53と、走行モード判定部54と、トルク決定部55と、回転電機制御部としてのモータ制御部56と、を備えた。これらの機能は、ECU50が備えるROM等に記憶された制御プログラムが実行されることで、各種機能が実現される。なお、各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよく、あるいは、少なくとも一部をソフトウェア、すなわちコンピュータ上で実行される処理によって実現されてもよい。
要求トルク算出部51は、ドライバ操作情報及び車速に基づき、モータ20に要求する要求トルクを算出する。ドライバ操作情報とは、アクセル操作量や、ブレーキ操作量などのことである。一般的に、力行駆動時(加速時)においては、正トルクが要求トルクとなり、発電時(減速時、アクセルオフ時)においては、負トルクが要求トルクとなる。
なお、車速は、速度センサから取得してもよいし、本実施形態のように電気自動車の場合、ECU50は、モータ20の回転速度を取得し、モータ20の回転速度に基づき、車速を算出してもよい。
通電量算出部52は、高電圧バッテリ30の通電量を算出する。より詳しくは、通電量算出部52は、電気負荷40への電力供給に基づき発生する高電圧バッテリ30の放電電流量を算出する。つまり、通電量算出部52は、補機類43の要求に基づく電流量と、低電圧バッテリ42への充電に基づく電流量とを、合算することにより、電気負荷40への電力供給に基づき発生する高電圧バッテリ30の放電電流量を算出する。
補機類43の要求に基づく電流量は、補機類43の駆動状態に基づき、マップ演算などにより推定可能である。また、低電圧バッテリ42への充電に基づく電流量は、低電圧バッテリ42の蓄電状態に基づき、マップ演算などにより推定可能である。
なお、低電圧バッテリ42への充電に基づく電流量は、補機類43の要求に基づく電流量の変化量と比較して一定とみなすことができるので、予め決められた値にしてもよい。低電圧バッテリ42への充電に基づく電流量を一定値とする場合、低電圧バッテリ42への充電に基づく電流量による影響を、システム効率のマップに予め反映させておいてもよい。すなわち、低電圧バッテリ42への放電電流に基づく高電圧バッテリ30の電池損失を考慮して、システム効率のマップを作成してもよい。また、補機類43の要求に基づく電流量と比較して、低電圧バッテリ42への充電に基づく電流量が十分小さければ、無視してもよい。
モータ設定部53は、通電量算出部52により算出された高電圧バッテリ30の通電量に基づき、システム効率、モータトルク及び回転速度を特定可能なモータ動作点を設定する。本実施形態では、システム効率が最高効率であるモータ動作点の曲線を、通電量に応じて読み出す(設定する)。
走行モード判定部54は、走行期間中において、周期的に惰行期間を設定する断続運転を実行させるか否かを判定する。具体的には、走行モード判定部54は、取得した車速に基づき、モータ20の回転速度を算出する。そして、走行モード判定部54は、モータ設定部53により設定された最高効率を示すモータ動作点の曲線に基づき、算出した回転速度をパラメータとするモータ動作点を特定する。そして、走行モード判定部54は、特定したモータ動作点により特定されるモータトルクと、要求トルク算出部51により算出された要求トルクとを比較して、断続運転を実行させるか否かを判定する。
つまり、走行モード判定部54は、モータ動作点により特定されるモータトルクが、要求トルクよりも大きいのであれば(トルクが余剰となる場合)、断続運転を実行させると判定する。一方、走行モード判定部54は、モータ動作点により特定されるモータトルクが、要求トルク以下であれば(トルクが同じ又は不足する場合)、断続運転を実行できないと判定する。この場合、継続運転させると判定することとなる。
トルク決定部55は、走行モード判定部54により断続運転させると判定された場合、モータ設定部53により設定された最高効率を示すモータ動作点の曲線に基づき、車速(すなわち、回転速度)に応じたモータ動作点を特定する。そして、ECU50は、当該モータ動作点により特定されるモータトルクを、走行期間中にモータ20から出力させる第1トルクとして決定する。
また、トルク決定部55は、惰行期間中にモータ20から出力させる第2トルクとして、ゼロを決定する。なお、トルク決定部55は、惰行期間中にモータ20への通電を停止させることを決定してもよい。モータ20への通電を停止させた場合において誘導起電力(逆起電力)に基づきモータトルクが発生する。誘導起電力に基づき発生するモータトルクは、回転速度等に基づき、推定可能である。
一方、トルク決定部55は、走行モード判定部54により断続運転させないと判定された場合(継続運転させる場合)、要求トルク算出部51により算出された要求トルクを、モータ20から出力させるモータトルクとして決定する。
モータ制御部56は、断続運転させると判定された場合、走行期間及び惰行期間を設定する運転周期を決定する。運転周期は、走行期間及び惰行期間の各々の期間の開始から終了までの速度変化幅と、走行期間及び惰行期間の各々の期間中に出力されるトルクと、に基づき、決定される。速度変化幅とは、走行期間(又は惰行期間)の開始時における車速(又は回転速度)と、終了時における車速との差のことを示す。
例えば、走行期間における速度変化幅(ΔV1)を走行期間における車両加速度(α1)で除算した値に、惰行期間における速度変化幅(ΔV2)を惰行期間における車両加速度(α2)で除算した値を加算することにより決定される。つまり、運転周期(T)は、数式(1)に基づき算出される。
T=ΔV1/α1+ΔV2/α2・・・(1)
走行期間における車両加速度(α1)は、第1トルク、車速及び車両性能により決定される。具体的には、走行期間における車両加速度(α1)は、第1トルク及び車速に基づき、マップ演算により特定される。惰行期間における車両加速度(α2)も同様である。すなわち、第2トルク及び車速に基づき、マップ演算により特定される。
一方、速度変化幅(ΔV1、ΔV2)には、所定の範囲内からモータ制御部56によって決定される。詳しく説明すると、図6に示すように、速度変化幅が第1閾値Th1未満である場合、モータ20の応答性能により、取り得ることが不可能となっている。また、速度変化幅が第2閾値Th2以上である場合、ドライバがその変化を許容できないため、取り得ることが不可能となっている。また、速度変化幅が第3閾値Th3以上である場合、走行抵抗が増加し、エネルギー損失が増大するため、取り得ることが不可能となっている。したがって、モータ制御部56は、第1閾値Th1以上であって、かつ、第2閾値Th2及び第3閾値Th3よりも小さい範囲において、速度変化幅を決定する。その際、モータ制御部56は、車速に応じて所定の範囲内から速度変化幅を決定することが望ましい。
次に、モータ制御部56は、断続運転させると判定された場合、要求トルク、走行期間中に出力される第1トルク、及び惰行期間中に出力される第2トルクに基づき、走行期間及び惰行期間を決定する。
具体的には、モータ制御部56は、1運転周期における要求トルクの積算値が、1運転周期における走行期間中に出力される第1トルクの積算値と、1運転周期における惰行期間中に出力される第2トルクの積算値との合計値が、等しくなるように、走行期間と惰行期間を決定する。例えば、数式(2)(3)を満たすように、走行期間と惰行期間を決定する。
T×Nr=T1×N1+T2×N2・・・(2)
T=T1+T2・・・(3)
数式(2)(3)において、「T」は運転周期、「Nr」は要求トルク、「T1」は走行期間、「N1」は第1トルク、「T2」は惰行期間、「N2」は第2トルクを示す。なお、ドライバに違和感を与えないように、走行期間及び惰行期間は、予め決められた範囲内で決定されることが望ましい。
そして、モータ制御部56は、断続運転させる場合、図7に示すように、走行期間中において(時点P11~P12)、第1トルクを出力させるようにインバータ25に対して指令を行う。そして、モータ制御部56は、走行期間の開始後(時点P11)、決定された走行期間が経過した時(時点P12)に、惰行期間を開始させる。そして、モータ制御部56は、惰行期間中において(時点P12~P13)、第2トルクを出力させるようにインバータ25に対して指令を行う。
モータ制御部56は、惰行期間の開始後(時点P12)、決定された惰行期間を経過した時(時点P13)に、走行期間を開始させる。つまり、モータ制御部56は、決定された運転周期ごとに、走行期間及び惰行期間を設定する。以降、条件が変更されるまで、走行期間と惰行期間との切り替えを、繰り返し実行する。
一方、モータ制御部56は、継続運転させる場合、要求トルクを出力させるようにインバータ25に対して指令を行う。
次に、図8に基づき、モータ20の制御に関するモータ制御処理について説明する。モータ制御処理は、ECU50により、所定のタイミングごとに実行される。所定のタイミングは、予め決められた時間が経過するタイミングであってもよいし、ドライバ操作情報や車速など、ECU50の外部の状況が変化したタイミングであってもよい。つまり、外部信号に基づき、モータ制御処理が実行されてもよい。
要求トルク算出部51としてのECU50は、走行要件(ドライバ操作情報及び車速)に基づき、モータ20に要求する要求トルクを算出する(ステップS101)。
次に、通電量算出部52としてのECU50は、高電圧バッテリ30の通電量を算出する(ステップS102)。ステップS102において、ECU50は、電気負荷40(低電圧バッテリ42及び補機類43)への電力供給に基づき発生する高電圧バッテリ30の放電電流量を算出する。
次に、モータ設定部53としてのECU50は、ステップS102において算出された高電圧バッテリ30の通電量に基づき、システム効率、モータトルク及び回転速度を特定可能なモータ動作点を設定する(ステップS103)。ステップS103において、ECU50は、システム効率が最高効率であるモータ動作点の曲線(マップ)を、通電量に応じて設定する。
次に、走行モード判定部54としてのECU50は、断続運転を実行させるか否かを判定する(ステップS104)。ステップS104の判定結果が肯定の場合、ECU50は、断続運転の実行を決定し、否定の場合には、モータ20により継続的に制動又は駆動させる継続運転の実行を決定する。
ステップS104の判定結果が肯定の場合、トルク決定部55としてのECU50は、走行期間中に出力される第1トルクと、惰行期間中に出力される第2トルクを決定する(ステップS105)。ステップS105において、ECU50は、ステップS103で設定された最高効率を示すモータ動作点の曲線を参照して、車速に基づき、モータ動作点を決定する。そして、ECU50は、当該モータ動作点により特定されるモータトルクを第1トルクとして決定する。また、ECU50は、第2トルクとしてゼロを決定する。
次に、モータ制御部56としてのECU50は、走行期間及び惰行期間を設定する運転周期、及び走行期間及び惰行期間を決定する(ステップS106)。ステップS106において、ECU50は、走行期間及び惰行期間の各々の期間の開始から終了までの速度変化幅と、走行期間及び惰行期間の各々の期間中に出力されるトルクと、に基づき、運転周期を決定する。また、ECU50は、1運転周期における要求トルクの積算値が、1運転周期における走行期間中に出力される第1トルクの積算値と、1運転周期における惰行期間中に出力される第2トルクの積算値との合計値が、等しくなるように、走行期間と惰行期間を決定する。そして、モータ制御処理を終了する。
一方、ステップS104の判定結果が否定の場合、ECU50は、モータトルクとして要求トルクを決定する(ステップS107)。そして、モータ制御処理を終了する。
モータ制御処理の終了後、モータ制御処理において決定された情報に基づいて、ECU50は、モータ20の制御を実行する。すなわち、ECU50は、断続運転させると決定された場合、走行期間中、ステップS105において決定された第1トルクを、モータ20から出力させるようにインバータ25に対して指令を行う。そして、ECU50は、走行期間が開始してから、ステップS106において決定された走行期間が経過した後、惰行期間を開始させる。ECU50は、惰行期間中、ステップS105において第2トルクをモータ20から出力させるようにインバータ25に対して指令を行う。ECU50は、惰行期間が開始してから、ステップS106において決定された惰行期間を経過した後、走行期間を開始させる。以降、新たなモータ制御処理が実行されるまで、これらの制御を繰り返し実行する。
一方、ECU50は、継続運転させると決定された場合、新たなモータ制御処理が実行されるまで、要求トルクをモータ20から出力させるようにインバータ25に対して指令を行う。
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
高電圧バッテリ30の通電量により、電池損失が特定される。このため、ECU50は、高電圧バッテリ30の入出力電力に対するモータ20の入出力動力の比率を示すシステム効率、モータトルク及び回転速度が特定されるモータ動作点を、通電量に基づき設定した。具体的には、ECU50は、システム効率が最高効率であるモータ動作点の曲線(マップ)を、通電量に応じて設定した。そして、設定したモータ動作点の曲線に基づき、モータ20を制御することとした。すなわち、ECU50は、設定したモータ動作点の曲線を参照して、車速に基づきモータ動作点を特定し、特定したモータ動作点により特定されるモータトルクを出力させるように、モータ20を制御した。これにより、高電圧バッテリ30の電池損失を考慮して、動力システム101全体で考えて効率的な電力利用を図ることをできる。すなわち、車両10において総合的に消費電力を低減し、電費を向上することができる。
ECU50は、走行期間と惰行期間を周期的に切り替えて断続運転させる場合、走行期間中において、継続運転させる場合と比較して効率的なモータ動作点でモータ20を制御した。本実施形態では、ECU50は、断続運転させる場合、走行期間中において最高効率を示すモータ動作点でモータ20を制御した。このため、モータ20の消費電力を抑制しつつ、効率的に車両10を走行させることができる。また、モータ設定部53により設定されたモータ動作点は、モータ20の効率性だけでなく、高電圧バッテリ30の通電量、すなわち、電池損失も考慮して設定されている。このため、車両10を走行させる際、消費電力を総合的に低減しつつ、電費を向上させることができる。
ECU50は、車両10の走行要件に基づき、要求トルクを算出する。そして、ECU50は、断続運転させる場合において、要求トルク、走行期間中に出力される第1トルク、及び惰行期間中に出力される第2トルクに基づき、走行期間及び惰行期間を決定する。これにより、車両10を走行させる際、走行要件を適切に満たしつつ、車両10全体において電費を向上させることができる。
速度変化幅が大きい場合、小さい場合と比較して走行抵抗が大きくなる。走行抵抗が大きくなると、エネルギー損失が大きくなり、断続運転による電費向上効果を打ち消す場合がある。そこで、ECU50は、走行期間及び惰行期間の各々の期間の開始から終了までの速度変化幅と、走行期間及び惰行期間の各々の期間中に出力されるトルクと、に基づき、走行期間及び惰行期間の設定する運転周期を決定することとした。このため、速度変化幅を所望の範囲内とすることができる。つまり、速度変化幅が、断続運転による電費向上効果を打ち消さない範囲内となるようにすることができる。
ECU50は、電気負荷40への電力供給により生じる高電圧バッテリ30の放電電流量を、高電圧バッテリ30の通電量とした。これにより、電気負荷40への電力供給により生じる高電圧バッテリ30の放電電流量に基づく電池損失を考慮して、モータ動作点を設定することができる。すなわち、車両10全体として、電費を向上させることができる。
ECU50は、図4に示すように、高電圧バッテリ30の通電量が多い場合には、少ない場合と比較して、システム効率のうち最高効率を示すモータ動作点により特定されるモータトルクをそれぞれ低くした。このように、モータトルクを低くすることにより、モータ20の通電量が減り、結果として高電圧バッテリ30の通電量も減らすことができる。すなわち、電池損失を低減し、動力システム101全体としては効率を向上させることができる。
ECU50は、断続運転させる場合において、走行期間中に最高効率を示すモータ動作点にて、モータ20を制御した。これにより、動力システム101の効率をより向上させることができる。
ECU50は、断続運転させる場合、走行期間の開始から終了までの速度変化幅、及び惰行期間の開始から終了までの速度変化幅を、図6に示すように、所定の範囲内の中から決定している。これにより、ドライバに違和感がないような速度変化幅とすることができる。また、電費を悪化させるような速度変化幅とならないようにすることができる。
ECU50は、断続運転させる場合、予め決められた範囲内で、走行期間及び惰行期間を決定している。このため、ドライバに違和感を与えないようにすることができる。例えば、加速中に、ドライバの想定通りに加速しない、あるいは減速中に、ドライバの想定通りに回生ブレーキがかからないという違和感を与えることを防止できる。
ECU50は、断続運転させる場合、惰行期間中に出力される第2トルクを、ゼロとした。すなわち、ECU50は、惰行期間において、モータ20に生じる逆起電力を打ち消すように、弱め界磁を行うこととした。これにより、逆起電力による故障を防止できる。また、力行駆動中、負トルク(制動トルク)が発生して、効率が悪くなることを抑制できる。特に、車速が高速である場合、大きな負トルクが発生して、弱め界磁のための電費悪化と比較して電費が悪くなるため、これを防止できる。
ECU50は、補機類43の要求に基づく電流量と、低電圧バッテリ42への充電に基づく電流量を、合算することにより、電気負荷40への電力供給に基づき発生する高電圧バッテリ30の放電電流量を算出する。このため、補機類43及び低電圧バッテリ42による影響を考慮して、システム効率を向上させることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の制御装置について説明する。なお、以下では、各実施形態で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
モータ20の回転軸21は、減速機22を介して車軸23と機械的に連結している。より詳しく説明すると、減速機22は、複数のギヤから構成されており、モータ20の側のモータ側ギヤと、車軸23の側の駆動軸側ギヤを噛み合わせることにより、力を伝達させている。ところで、ギヤのティースの間には、回転方向(運動方向)に、隙間(いわゆるバックラッシュ)が設けられている。この隙間により、ギヤはスムースに回転することが可能となっている。
しかしながら、モータ側ギヤに対して、駆動軸側ギヤの駆動非駆動が切り替わる場合、ティース間には隙間があることから、ティース同士が衝突し、騒音や振動の原因となり得る。特に、第1実施形態のように断続運転させる場合、周期的、かつ、継続的に、モータトルクを切り替えている。このため、周期的、かつ、継続的に、ティース同士が衝突し、騒音や振動が生じる可能性がある。
そこで、第2実施形態では、第1実施形態の構成に加えて、断続運転させる場合において、トルク切替時の衝突を緩和するための構成を備えた。以下、詳しく説明する。
まず、バックラッシュに基づき、モータ側ギヤと駆動軸側ギヤとが一旦離間し、その後衝突する原理について説明し、それから緩和方法について説明する。図9では、加速時の車両10が断続運転する際に、モータトルクが、走行期間の第1トルク(正トルク)から、惰行期間の第2トルク(ゼロトルク)に移行するまでの間におけるモータトルク、及び駆動軸トルクの変化態様について図示したものである。図9では、モータトルクを実線で示し、駆動軸トルクを一点鎖線で示す。また、理解を容易とするため、第1トルクから、第2トルクに移行する期間を拡大して図示している。
駆動軸トルクとは、モータ側ギヤと駆動軸側ギヤとの間で伝達されるトルクのことであり、駆動軸トルクが正トルクである場合と、負トルクである場合とは、トルクの伝達方向が異なる。駆動軸トルクは、モータトルク及びフリクション(機械的摩擦損失)により、特定可能である。つまり、モータ側ギヤと駆動軸側ギヤとが噛み合っている場合、モータトルクからフリクションに基づき駆動輪24の側から加えられる力(以下、単にフリクショントルクと示す)を減算した値が、駆動軸トルクとなっている。フリクショントルクは、回転速度に応じて増加する。
図9に示すように、走行期間の終了後(時点P21)、モータトルクが第1トルクN1から低下していく。これに伴い、駆動軸トルクも低下していく。その後、駆動軸トルクがゼロとなると(時点P22)、すなわち、モータトルクとフリクショントルクが釣り合うと、バックラッシュの存在により、ギヤ歯同士が離間し始める。
さらに、モータトルクを低下させると、モータ側ギヤと駆動軸側ギヤが噛み合っていないため、駆動軸トルクはゼロとなったままであるが、フリクショントルクに対してモータトルクが小さくなるので、駆動軸側ギヤは、モータ側ギヤに対して、駆動非駆動が切り替わる。これにより、駆動軸側ギヤのティースは、それまで当接していたモータ側ギヤのティースとは回転方向において反対側のティースに接近していくこととなる。
その後、反対側のティースに接触し(時点P23)、駆動軸側ギヤとモータ側ギヤが逆方向において噛み合うこととなる。噛み合った後、モータトルクはゼロとなるまで低下する。このとき、駆動軸トルクは、モータトルクはフリクショントルクにより小さいので、負トルクとなる。つまり、フリクションに基づき、駆動軸側ギヤからモータ側ギヤへトルクが付与され、駆動非駆動が切り替わる。
このように、駆動軸トルクがゼロとなる期間において、モータ側ギヤに対して、駆動軸側ギヤの駆動非駆動が切り替わり、その後、衝突することとなる。そこで、駆動軸トルクがゼロとなる場合に、フリクショントルクに相当するモータトルクを一時的に出力させることにより、駆動非駆動が切り替わる際の相対速度を遅くし、衝突する際の衝撃を抑制することができると考えられる。
そこで、第2実施形態では、第1トルクと第2トルクとの間に、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクが存在する場合、走行期間と惰行期間との間に第3トルク(フリクショントルクに相当するモータトルク)を出力させる猶予期間を設けることとした。
猶予期間は、ティース同士が離間した後、再びティース同士が噛み合う直前に設定されることが望ましく、電費の観点からいえば、極力短い方が望ましい。ただしモータ20等の応答性の問題から、再びティース同士が噛み合う直前に一瞬だけモータトルクを出力させることは困難であるため、ある程度の余裕をもって猶予期間を設定している。本実施形態では、回転速度、及びバックラッシュの大きさに基づき、マップによって決定している。
また、第3トルクとして、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクを設定した場合、すなわち、フリクショントルクとモータトルクとを完全に一致させた場合、駆動軸側ギヤが、モータ側ギヤに対して駆動非駆動が切り替わらなくなる。このため、回転方向を考慮して、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクの近傍で第3トルクを設定することが望ましい。
例えば、正トルク側から負トルク側へトルクを切り替える場合には、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクよりもわずかに小さいトルクを第3トルクとすることが望ましい。また、負トルク側から正トルク側へトルクを切り替える場合には、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクよりもわずかに大きいトルクを第3トルクとすることが望ましい。これにより、駆動軸側ギヤを、モータ側ギヤに対してゆっくりと駆動非駆動を切り替えて、反対側のティースに当接させることができる。
そして、上述したような猶予期間を設けるため、第2実施形態のECU50には、以下に示すような機能を備えた。すなわち、図10に示すように、ECU50は、要求トルク算出部51と、通電量算出部52と、モータ設定部53と、走行モード判定部54と、トルク決定部55と、モータ制御部56と、猶予判定部57と、を備えた。なお、要求トルク算出部51と、通電量算出部52と、モータ設定部53と、走行モード判定部54は、第1実施形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。
猶予判定部57は、走行モード判定部54により断続運転すると判定された場合、第1トルク及び第2トルクに基づき、走行期間と惰行期間との間に、第3トルクを出力させる猶予期間を設けるか否かを判定する。なお、第1トルクと第2トルクは、第1実施形態と同様に、トルク決定部55により決定される。
より詳しく説明すると、猶予判定部57は、第1トルクと第2トルクとの間に、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクが存在するか否かを判定する。駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクが存在する場合には、駆動軸側ギヤがモータ側ギヤに対して駆動非駆動を切り替えて、ティース同士が衝突すると判定し、猶予期間を設けると判定する。一方、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクが存在しない場合には、衝突する可能性がないと判定し、猶予期間を設けないと判定する。駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクは、回転速度に応じて変化するため、猶予判定部57は、回転速度に応じてマップに基づき算出する。
第2実施形態のトルク決定部55は、猶予期間を設定すると判定された場合、猶予期間においてモータ20から出力される第3トルクを決定する。具体的には、トルク決定部55は、回転速度に応じてマップに基づき、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクを算出する。
そして、負トルク側から正トルク側へトルクを切り替える場合、ECU50は、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクよりもわずかに大きいトルクを第3トルクとして決定する。一方、正トルク側から負トルク側へトルクを切り替える場合、ECU50は、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクよりもわずかに小さいトルクを第3トルクとして決定する。駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクに対して増減させる大きさは、バックラッシュの大きさなどに基づき決定することが望ましい。
第2実施形態のモータ制御部56は、猶予期間を設定すると判定された場合、まず、猶予期間の長さを決定する。具体的には、モータ制御部56は、回転速度及びバックラッシュの大きさに基づき、マップによって決定している。
次に、モータ制御部56は、運転周期を決定する。運転周期は、猶予期間の長さ、走行期間及び惰行期間の各々の期間の開始から終了までの速度変化幅、及び走行期間及び惰行期間の各々の期間中に出力されるトルクに基づき、決定される。
例えば、走行期間における速度変化幅(ΔV1)を走行期間における車両加速度(α1)で除算した値に、惰行期間における速度変化幅(ΔV2)を惰行期間における車両加速度(α2)で除算した値と、猶予期間の長さ(T3)とを加算することにより決定される。つまり、運転周期Tは、数式(4)に基づき算出される。なお、1運転周期において、走行期間から惰行期間の間、及び惰行期間から走行期間の間の2度において、猶予期間が設けられる。このため、数式(4)では、猶予期間を2倍している。
T=ΔV1/α1+ΔV2/α2+T3×2・・・(4)
次に、モータ制御部56は、要求トルク、第1トルク、第2トルク及び第3トルクに基づき、走行期間及び惰行期間を決定する。具体的には、モータ制御部56は、1運転周期における要求トルクの積算値が、1運転周期における走行期間中に出力される第1トルクの積算値と、1運転周期における惰行期間中に出力される第2トルクの積算値と、1運転周期における猶予期間中に出力される第3トルクの積算値との合計値が、等しくなるように、走行期間と惰行期間を決定する。
例えば、数式(5)(6)を満たすように、走行期間と惰行期間を決定する。
T×Nr=T1×N1+T2×N2+T3×N3a+T3×N3b・・・(5)
T=T1+T2+T3×2・・・(6)
数式(5)(6)において、「T」は運転周期、「Nr」は要求トルク、「T1」は走行期間、「N1」は第1トルク、「T2」は惰行期間、「N2」は第2トルク、「T3」は猶予期間を示す。また、「N3a」は走行期間から惰行期間へ移行する際の第3トルク、「N3b」は惰行期間から走行期間へ移行する際の第3トルクを示す。
1運転周期において、走行期間から惰行期間の間、及び惰行期間から走行期間の間の2度において、猶予期間が設けられる。このため、数式(5)(6)では、猶予期間を2倍している。なお、第3トルクが付与される猶予期間が、走行期間及び惰行期間と比較して十分に小さいのであれば、猶予期間を無視して、第1実施形態と同様に設定してもよい。
そして、モータ制御部56は、断続運転させる場合であって、猶予期間を設定する場合、図11に示すように、走行期間中において(時点P101~P102)、第1トルクN1を出力させるようにインバータ25に対して指令を行う。そして、モータ制御部56は、走行期間の開始後(時点P101)、決定された走行期間が経過した時(時点P102)に、猶予期間を開始させる。そして、モータ制御部56は、猶予期間中において(時点P102~P103)、第3トルクN3aを出力させるようにインバータ25に対して指令を行う。
なお、この猶予期間(時点P102~P103)中に出力される第3トルクN3aは、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクNtよりもわずかに小さいトルクである。図11において、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクNtを、破線で示す。
モータ制御部56は、猶予期間の開始後(時点P102)、決定された猶予期間を経過した時(時点P103)に、惰行期間を開始させる。そして、モータ制御部56は、惰行期間中において(時点P103~P104)、第2トルクを出力させるようにインバータ25に対して指令を行う。モータ制御部56は、惰行期間の開始後(時点P103)、決定された惰行期間を経過した時(時点P104)に、猶予期間を開始させる。そして、モータ制御部56は、猶予期間中において(時点P104~P105)、第3トルクN3bを出力させるようにインバータ25に対して指令を行う。
なお、この猶予期間(時点P104~P105)中に出力される第3トルクN3bは、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクNtよりもわずかに大きいトルクである。
モータ制御部56は、猶予期間の開始後(時点P104)、決定された猶予期間を経過した時(時点P105)に、走行期間を開始させる。以降、条件が変更されるまで、走行期間と惰行期間との切り替えを、繰り返し実行する。
次に、図12に基づき、第2実施形態のモータ制御処理について説明する。なお、ステップS101~ステップS105は、第1実施形態のステップS101~ステップS105と同じであるため、説明を省略する。
ステップS105の処理後、猶予判定部57としてのECU50は、ステップS105の第1トルク及び第2トルクに基づき、猶予期間を設けるか否かを判定する(ステップS201)。
ステップS201の判定結果が肯定の場合、トルク決定部55としてのECU50は、第3トルクを決定する(ステップS202)。具体的には、ECU50は、回転速度に応じてマップに基づき、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクを算出する。そして、負トルク側から正トルク側へトルクを切り替える場合、ECU50は、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクよりもわずかに大きいトルクを第3トルクとして決定する。一方、正トルク側から負トルク側へトルクを切り替える場合、ECU50は、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクよりもわずかに小さいトルクを第3トルクとして決定する。
そして、モータ制御部56としてのECU50は、走行期間、惰行期間及び猶予期間の長さ及び運転周期を決定する(ステップS203)。ステップS203において、ECU50は、回転速度及びバックラッシュの大きさに基づき、マップによって猶予期間の長さを決定する。また、ECU50は、数式(4)に基づき、運転周期を決定する。そして、ECU50は、要求トルク、第1トルク、第2トルク及び第3トルクに基づき、数式(5)(6)を満たすように、走行期間及び惰行期間を決定する。そして、モータ制御処理を終了する。
一方、ステップS201の判定結果が否定の場合、ECU50は、第1実施形態と同様に、ステップS106の処理を実行する。そして、モータ制御処理を終了する。また、ステップS104の判定結果が否定の場合、ECU50は、モータトルクとして要求トルクを決定する(ステップS107)。そして、モータ制御処理を終了する。
モータ制御処理の終了後、モータ制御処理において決定された情報に基づいて、ECU50は、モータ20の制御を実行する。すなわち、ECU50は、断続運転させると判定された場合であって猶予期間を設定すると判定された場合、第1トルクを付与する走行期間を設定した後、第3トルクを付与する猶予期間を設定する。そして、当該猶予期間の終了後に、第2トルクを付与する惰行期間を設定する。そして、惰行期間の終了後に、再び猶予期間を設定し、その後、走行期間を設定する。
以上詳述した第2実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
第1トルク及び第2トルクに基づき、猶予期間を設けると判定された場合、走行期間と惰行期間との間に、第3トルクをモータ20に出力させる猶予期間が設けられる。そして、第3トルクは、第1トルク及び第2トルクの間のトルクであって、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクを含む所定範囲内の中から決定される。すなわち、走行期間と惰行期間との間に駆動軸トルクがゼロ付近となるような第3トルクが出力される。このため、ティースの間にバックラッシュが存在しても、猶予期間中、第3トルクが出力されることにより、ティース同士が急激に衝突することを抑制することができる。
ECU50は、猶予期間において、負トルク側から正トルク側にモータトルクを変化させる場合、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクよりも第3トルクを大きく決定する。一方、ECU50は、猶予期間において、正トルク側から負トルク側にモータトルクを変化させる場合、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクよりも第3トルクを小さく決定する。これにより、第3トルクを、ティース同士が衝突する直前に、衝突を緩和するように付与することができる。
ECU50は、モータ20の回転速度に基づき、第3トルクを決定する。つまり、ECU50は、回転速度に応じてマップに基づき、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクを算出し、当該モータトルク及びモータトルクの回転方向に基づき、第3トルクを決定する。これにより、モータ20の回転速度の変化に伴い、駆動輪24を介して車軸23に加えられるフリクショントルクが変化して、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクが変化した場合であっても、第3トルクを適切に決定することができる。
第1トルク及び第2トルクの間に、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクが存在しない場合、つまり、第1トルクと第2トルクとの間でモータトルクを切り替える際に、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクを跨がない場合、駆動軸側ギヤは、モータ側ギヤに対して駆動非駆動が切り替わらないこととなる。駆動非駆動が切り替わらない場合、バックラッシュに基づく衝突が発生しない。そこで、ECU50は、第1トルク及び第2トルクの間に、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクが存在しない場合、猶予期間を設定しないと判定し、第3トルクを付与しないようにした。これにより、モータ20の消費電力を低減することができる。
第1トルクと第2トルクとの間でモータトルクを切り替える際に、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクを跨がない場合とは、例えば、回生発電を行う場合に発生する。すなわち、図13に示すように、走行期間中において付与される第1トルクは負トルクであり、惰行期間中において付与される第2トルクもゼロトルク近傍の値であって、ゼロトルク以下である。一方、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクNtは、フリクションの関係から、必ず正トルクとなる。このため、回生発電を行う場合、駆動軸側ギヤは、モータ側ギヤに対して駆動非駆動が切り替わることはないため、猶予期間を設ける必要はない。
なお、力行駆動から回生発電に切り替える際に、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクを跨ぐようにモータトルクを切り替えるのであれば、力行駆動から回生発電に切り替える際、図13の時点P201~P202に示すように、猶予期間を設定してもよい。同様に、回生発電から力行駆動に切り替える際、図13の時点P203~P204に示すように、猶予期間を設定してもよい。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の制御装置について説明する。なお、以下では、各実施形態で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。第3実施形態では、説明の都合上、高電圧バッテリ30とモータ20との間で通電量が一定となる状態、例えば、モータ20が継続運転している状態であることを前提として以下説明する。
第3実施形態では、コンバータ41による電圧変換方法について説明する。コンバータ41が、高電圧バッテリ30からの電圧を降圧する際、すなわち、電圧変換を行う際、損失が生じることが知られている。
電圧変換を行う場合におけるコンバータ41の効率とは、コンバータ41への入力電力(電圧×電流)に対する、出力電力の比率を、百分率で表したものである。例えば、コンバータ41の効率は、図14において破線で示すように、コンバータ41からの出力電流をパラメータとして、コンバータ41の効率を示す曲線(マップ)が定められている。図14に示すような、マップは、実験やシミュレーションなどにより取得可能である。
従来、電圧変換を効率的に行う場合、上述したコンバータ41の効率を示す曲線を参照して、最高効率となる出力電流でコンバータ41を制御していた。しかしながら、図14のようなコンバータ41の効率を示す曲線は、高電圧バッテリ30による電池損失が考慮されていない。高電圧バッテリ30の電池損失は、高電圧バッテリ30に流れる通電量(充電又は放電時の電流量)の2乗に、高電圧バッテリ30の電池抵抗を乗算することにより算出される。
このため、コンバータ41の効率だけでなく、高電圧バッテリ30の電池損失を考慮して、高電圧バッテリ30及びコンバータ41を含む電源システム201の全体で考えて効率的に電圧変換することが望ましい。つまり、高電圧バッテリ30と電気負荷40との間で通電している場合において、高電圧バッテリ30の出力電力に対する電気負荷40への入力電力との比を示す電力変換効率を考慮して、コンバータ41を制御することが望ましい。電力変換効率とは、高電圧バッテリ30及びコンバータ41からなる電源システム201の全体の効率を指す。この電源システム201には、モータ20及び電気負荷40は除かれている。
そこで、第3実施形態では、コンバータ41の出力電流をパラメータとして、電力変換効率を特定可能な変換動作点のマップ(電力変換効率のマップ)を作成し、ECU50の記憶装置に記憶している。
なお、高電圧バッテリ30とモータ20との間において通電していない場合、高電圧バッテリ30の通電量は、コンバータ41の出力電流と対応しており、当該出力電流によって一律に特定される。このため、電源システム201において電力変換効率のマップは1通りに定めることができる。このマップは、実験やシミュレーションなどにより取得可能である。
図14において、実線で電力変換効率のマップを示す。図14では、コンバータ41の出力電流をパラメータとして電力変換効率を特定する変換動作点の曲線で、電力変換効率のマップを示す。
そして、コンバータ41による電圧変換を効率的に実施するために、ECU50は、電力変換効率のマップを参照して、最高効率の変換動作点を特定し、当該変換動作点で特定される出力電流を出力させるようにコンバータ41を制御すればよいこととなる。このようにする場合、コンバータ41から出力(供給)される出力電力(出力電流×出力電圧)は、電気負荷40の要求電力と等しくすることが望ましい。しかしながら、最高効率の変換動作点で電圧変換を実行させる際、電気負荷40の要求電力に対してコンバータ41からの出力電力が過剰となる可能性がある。
そこで、ECU50は、コンバータ41により電圧を変換させる変換期間と、コンバータ41による電圧の変換を停止させる変換停止期間と、をそれぞれ周期的に、かつ、交互に設定し、断続的な電圧変換を実行させるように構成している。そして、ECU50は、変換期間及び変換停止期間の1変換周期におけるコンバータ41からの出力電力が、1変換周期における電気負荷40の要求電力と等しくなるようにしている。
ちなみに、最高効率の変換動作点で電圧変換を実行させる際、要求電力とコンバータ41からの出力電力が等しい場合、又は要求電力に対して出力電力が足らない場合がある。この場合には、電力変換効率に関係なく(効率が悪くなっても)、ECU50は、電気負荷40からの要求を優先して、要求電力に応じた出力電流を出力させるようにコンバータ41を制御することとしている。この場合、電圧の変換を停止させることなく、継続的に電圧変換を実行する。
ところで、本実施形態の高電圧バッテリ30には、電気負荷40以外に、モータ20が接続されており、電気負荷40とは無関係に、高電圧バッテリ30とモータ20との間で電力が入出力される。そして、モータ20との間における入出力電力に基づき高電圧バッテリ30の通電量(充放電量)が変化すれば、電池損失も変化する。つまり、コンバータ41及び高電圧バッテリ30からなる電源システム201へ影響を与え、電力変換効率が変わることとなる。
そこで、第3実施形態では、モータ20との間における高電圧バッテリ30の充放電量に基づき、電力変換効率及びコンバータ41からの出力電流をパラメータとして特定可能な変換動作点を設定することとした。具体的には、モータ20と高電圧バッテリ30との間における高電圧バッテリ30の充放電量毎に、電力変換効率とコンバータ41からの出力電流とを特定できる変換動作点のマップを記憶装置に記憶しておく。
そして、ECU50は、モータ20と高電圧バッテリ30との間における高電圧バッテリ30の充放電量に応じて、変換動作点のマップを読み出す。そして、ECU50は、当該マップに基づき、最高効率の変換動作点を特定し、コンバータ41からの出力電流を決定することとした。
図15に、変換動作点のマップを、モータ20と高電圧バッテリ30との間における充放電量毎に例示する。図15において、マップM10は、モータ20との間における充放電量が「0」である場合における変換動作点のマップである。マップM11は、モータ20との間における充放電量が「A11(>0)」である場合における変換動作点のマップである。マップM12は、モータ20との間における充放電量が「A12(>A11)」である場合における変換動作点のマップである。
上述したような方法で、効率的に電圧変換を実行させるため、第3実施形態のECU50には、第1実施形態又は第2実施形態の構成に加えて、以下に示すような種々の機能を備えた。すなわち、図16に示すように、ECU50は、要求電力算出部151と、充放電量算出部152と、変換動作点設定部としてのコンバータ設定部153と、要求電力判定部としての変換モード判定部154と、電力決定部155と、変換器制御部としてのコンバータ制御部156と、を備えた。これらの機能は、ECU50が備えるROM等に記憶された制御プログラムが実行されることで、各種機能が実現される。なお、図16では、電圧変換に係る機能について図示している。
要求電力算出部151は、電気負荷40の状態に基づき、コンバータ41から供給されるべき要求電力を算出する。詳しく説明すると要求電力算出部151は、補機類43からの要求に基づく電力と、低電圧バッテリ42への充電に必要とされる電力とを、合算することにより、コンバータ41から供給されるべき要求電力を算出する。
補機類43の要求に基づく電力は、補機類43の駆動状態に基づき、マップ演算などにより推定可能である。また、低電圧バッテリ42への充電に必要とされる電力は、低電圧バッテリ42の蓄電状態に基づき、マップ演算などにより推定可能である。なお、低電圧バッテリ42への充電に必要とされる電力は、低電圧バッテリ42の通電量を電流センサにより検出し、その検出結果に基づき推定してもよい。すなわち、要求電力算出部151は、補機類43の駆動状態、低電圧バッテリ42の蓄電状態(又は通電量)に基づき、コンバータ41から供給されるべき要求電力を算出する。
充放電量算出部152は、高電圧バッテリ30の充放電量を算出する。より詳しくは、充放電量算出部152は、モータ20の状態に基づき、モータ20と高電圧バッテリ30との間における充放電量を算出する。例えば、充放電量算出部152は、モータ20の回転速度及びモータトルクに基づき、モータ20と高電圧バッテリ30との間における充放電量をマップ演算により算出する。
本実施形態において、モータ20は、高電圧バッテリ30の出力電圧と同じ電圧が入力される第2電気負荷に相当する。なお、補機類43及び低電圧バッテリ42が、高電圧バッテリ30の出力電圧とは異なる電圧が入力される第1電気負荷に相当する。
コンバータ設定部153は、充放電量算出部152により算出された高電圧バッテリ30の充放電量に基づき、電力変換効率及び出力電流を特定可能な変換動作点を設定する。本実施形態では、出力電流に基づき、電力変換効率が特定可能な変換動作点のマップを、通電量に応じて読み出す(設定する)。
変換モード判定部154は、変換期間中において、周期的に変換停止期間を設定して断続的な電圧変換を実行するか否かを判定する。具体的には、変換モード判定部154は、コンバータ設定部153により設定された変換動作点のマップを参照し、電力変換効率が最高効率である変換動作点を特定する。そして、変換モード判定部154は、特定した変換動作点により特定される出力電流に基づき算出される出力電力と、要求電力算出部151により算出された要求電力とを比較して、断続的な電圧変換を実行するか否かを判定する。
つまり、変換モード判定部154は、出力電力が、要求電力よりも大きいのであれば(電力が余剰となる場合)、断続的な電圧変換を実行すると判定する。一方、変換モード判定部154は、出力電力が、要求電力よりも小さいのであれば(電力が不足する場合)、断続的な電圧変換を実行しないと判定する。この場合、継続的に電圧変換させると判定することとなる。
このため、変換モード判定部154は、要求電力が、所定値よりも大きいか否かを判定する要求電力判定部に相当する。所定値は、モータ20の通電停止中に、コンバータ設定部153により設定された変換動作点のうち、最高効率の電力変換効率でコンバータ41にて電圧を変換した場合に、出力される電力である。
電力決定部155は、変換モード判定部154により断続的な電圧変換を実行すると判定された場合、コンバータ設定部153により設定された変換動作点のマップを参照して、電力変換効率が最高効率である変換動作点を特定する。そして、ECU50は、当該変換動作点により特定される出力電流を、変換期間中にコンバータ41から出力させる第1出力電流として決定する。また、電力決定部155は、変換停止期間においては、電圧変換を停止させることを決定する。つまり、電力決定部155は、変換停止期間において出力させる第2出力電流として、ゼロを決定する。
一方、電力決定部155は、変換モード判定部154により断続的な電圧変換を実行しないと判定された場合(継続的な電圧変換を実行する場合)、要求電力算出部151により算出された要求電力に基づきコンバータ41の出力電流を算出し、コンバータ41に出力させる出力電流として決定する。なお、要求電力を、コンバータ41の出力電圧で除算することにより、コンバータ41の出力電流を算出することができる。
コンバータ制御部156は、断続的な電圧変換を実行すると判定された場合、変換周期を決定する。なお、変換停止期間中においては、低電圧バッテリ42から補機類43へ電力供給している。このため、低電圧バッテリ42の蓄電状態(SOC)を考慮して変換周期を決定することが望ましい。また、変換周期は、変換期間及び変換停止期間を設定する周期ともいえる。
次に、コンバータ制御部156は、断続的な電圧変換を実行すると判定された場合、要求電力、及び変換期間中におけるコンバータ41の出力電力に基づき、変換期間及び変換停止期間を決定する。
具体的には、コンバータ制御部156は、1変換周期における要求電力の積算値が、1変換周期における変換期間中に出力される出力電力の積算値が、等しくなるように、変換期間と変換停止期間を決定する。例えば、数式(7)(8)を満たすように、変換期間と変換停止期間を決定する。
X×Wr=X1×W1・・・(7)
X=X1+X2・・・(8)
数式(7)(8)において、「X」は変換周期、「Wr」は要求電力、「X1」は変換期間、「W1」は出力電力、「X2」は変換停止期間である。
そして、コンバータ制御部156は、断続的な電圧変換を実行する場合、図17に示すように、変換期間中において(時点P301~P302)、電圧変換を実行させる際、最高効率を示す変換動作点で特定された出力電流を出力させるようにコンバータ41に対して指令を行う。そして、コンバータ制御部156は、変換期間の開始後(時点P301)、決定された変換期間が経過した時(時点P302)に、変換停止期間を開始させる。コンバータ制御部156は、変換停止期間中において(時点P302~P303)、電圧変換を停止させるようにコンバータ41に対して指令を行う。コンバータ制御部156は、変換停止期間の開始後(時点P302)、決定された変換停止期間を経過した時(時点P303)に、変換期間を再び開始させる。つまり、コンバータ制御部156は、決定された変換周期ごとに、変換停止期間及び変換期間を設定する。以降、条件が変更されるまで、変換期間と変換停止期間との切り替えを、繰り返し実行する。
一方、コンバータ制御部156は、継続的な電圧変換を実行する場合、要求電力に応じた出力電流を出力させるようにコンバータ41に対して指令を行う。
次に、図18に基づき、コンバータ41の制御に関するコンバータ制御処理について説明する。コンバータ制御処理は、ECU50により、所定のタイミングごとに実行される。所定のタイミングは、予め決められた時間が経過するタイミングであってもよいし、補機類43の駆動状態が変化した時など、ECU50の外部の状況が変化したタイミングであってもよい。つまり、外部信号に基づき、コンバータ制御処理が実行されてもよい。
要求電力算出部151としてのECU50は、電気負荷40の状態に基づき、コンバータ41から供給されるべき要求電力を算出する(ステップS301)。
次に、充放電量算出部152としてのECU50は、高電圧バッテリ30の充放電量を算出する(ステップS302)。ステップS302において、ECU50は、モータ20の状態に基づき、モータ20と高電圧バッテリ30との間における充放電量を算出する。
次に、コンバータ設定部153としてのECU50は、ステップS302において算出された高電圧バッテリ30の充放電量に基づき、電力変換効率及びコンバータ41からの出力電流を特定可能な変換動作点のマップを設定する(ステップS303)。
次に、変換モード判定部154としてのECU50は、断続的な電圧変換を実行するか否かを判定する(ステップS304)。ステップS304の判定結果が肯定の場合、ECU50は、断続的な電圧変換を決定し、否定の場合には、継続的な電圧変換を決定する。
ステップS304の判定結果が肯定の場合、電力決定部155としてのECU50は、変換期間中にコンバータ41に出力させる第1出力電流を決定する(ステップS305)。ステップS305において、ECU50は、ステップS303で設定された変換動作点のマップに基づき、電力変換効率が最高効率である変換動作点を特定する。そして、ECU50は、当該変換動作点により特定される出力電流を、変換期間中にコンバータ41に出力させる第1出力電流として決定する。なお、ECU50は、変換停止期間においては、電圧変換を停止させることを決定する。つまり、第2出力電流としてゼロを決定する。
次に、コンバータ制御部156としてのECU50は、変換周期、及び変換期間及び変換停止期間を決定する(ステップS306)。そして、コンバータ制御処理を終了する。
一方、ステップS304の判定結果が否定の場合、ECU50は、要求電力に基づき、コンバータ41からの出力電流を決定する(ステップS307)。コンバータ41からの出力される電圧(すなわち、低電圧バッテリ42及び補機類43から要求される電圧)は、あらかじめ決まっている。このため、ステップS307において、ECU50は、要求電力を、コンバータ41からの出力される電圧で除算することにより、コンバータ41からの出力電流を決定する。そして、コンバータ制御処理を終了する。
コンバータ制御処理の終了後、コンバータ制御処理において決定された情報に基づいて、ECU50は、コンバータ41による電圧変換を実行する。すなわち、ECU50は、断続的な電圧変換を実行すると決定した場合、変換期間中、ステップS305において決定された第1出力電流を出力させるようにコンバータ41に対して指令を行う。そして、ECU50は、変換期間が開始してから、ステップS306において決定された変換期間が経過した後、変換停止期間を開始させる。ECU50は、変換停止期間中、電圧変換を停止させるようにコンバータ41に対して指令を行う。ECU50は、変換停止期間が開始してから、ステップS306において決定された変換停止期間を経過した後、変換期間を再び開始させる。以降、新たなコンバータ制御処理が実行されるまで、これらの制御を繰り返し実行する。
一方、ECU50は、継続的な電圧変換を実行すると決定した場合、新たなコンバータ制御処理が実行されるまで、ステップS307で決定された出力電流を出力させるようにコンバータ41に対して指令を行う。
以上詳述した第3実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
モータ20との間における高電圧バッテリ30の充放電量により、高電圧バッテリ30の電池損失が決定される。このため、電力変換効率と、コンバータ41からの出力電流とが特定される変換動作点を高電圧バッテリ30の充放電量に基づいて設定した。そして、ECU50は、設定した変換動作点でコンバータ41を制御することにより、高電圧バッテリ30の電池損失を考慮したうえで、電源システム201全体で効率のよい変換動作点で電圧変換を実行して、電気負荷40に電力を供給することができる。すなわち、車両10の全体で考えて消費電力を低減することができる。
変換期間と停止期間を周期的に切り替えて断続的な電圧変換を実行させる場合、変換期間中、継続的な電圧変換を実行させる場合と比較して電力変換効率が良い変換動作点で電圧を変換させる。具体的には、最高効率の変換動作点でコンバータ41を制御する。このため、コンバータ41及び高電圧バッテリ30の損失を抑制しつつ、効率的に電圧を変換させることができる。それと共に、要求電力に応じた出力電力をコンバータ41から出力させることができる。
低電圧バッテリ42を設けることにより、コンバータ41による電圧の変換を停止させても、低電圧バッテリ42から補機類43へ電力供給が行われるため、補機類43への電力の出力が遮断されることを防止できる。また、補機類43の駆動状態に基づいて算出された要求電力と、コンバータ41から出力される出力電力とに基づき、変換期間及び変換停止期間が決定される。これにより、補機類43へ要求された電力を継続的に供給しつつ、断続的な電圧変換を実行させて、効率の向上を図ることができる。
低電圧バッテリ42の蓄電状態が高い場合、低い場合と比較して、低電圧バッテリ42の充電時における電流量が少なくなる。すなわち、低電圧バッテリ42の通電量が少なくなり、その結果、低電圧バッテリ42の電池損失が少なくなる。一方、蓄電状態が低い場合には、逆となる。そこで、ECU50は、低電圧バッテリ42の蓄電状態又は通電量に基づき、要求電力を算出することとした。すなわち、ECU50は、低電圧バッテリ42の蓄電状態又は通電量に基づき、低電圧バッテリ42への充電に基づき必要とされる電力を算出した。これにより、低電圧バッテリ42を充電するために、補機類43へ供給する電力が不足することを防止できる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の制御装置について説明する。なお、以下では、各実施形態で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
第4実施形態では、第3実施形態に引き続き、コンバータ41による電圧変換方法について説明する。高電圧バッテリ30における電池損失は、前述したように、高電圧バッテリ30の通電電流量の2乗に、高電圧バッテリ30の電池抵抗を乗算することにより特定される。このため、高電圧バッテリ30において、モータ20との間における通電量と、電気負荷40との間における通電量が重畳し、通電量のピーク値が大きくなると、電池損失も急増することとなる。したがって、電池損失を低減するためには、モータ20との間における通電と、電気負荷40との間における通電を分散して、ピーク値を低減させることが望ましい。つまり、モータ20への電力出力を行う期間と、電気負荷40への電力出力を行う期間を分けて、高電圧バッテリ30の通電量のピーク値を低減させることが望ましい。
ところで、第1実施形態で述べたように、モータ20を効率的に制御するために、モータ20を断続運転させる場合がある。すなわち、モータ20と高電圧バッテリ30との間における通電量(充放電量)がゼロ又はゼロ近傍となる惰行期間が周期的に設定される場合がある。
そこで、第4実施形態では、モータ20が断続運転する場合には、惰行期間中に変換期間を設定して、通電量のピーク値を抑制することとした。このため、第4実施形態のECU50には、第3実施形態の構成に加えて、以下に示すような機能を備えた。
すなわち、図19に示すように、ECU50は、要求電力算出部151と、充放電量算出部152と、コンバータ設定部153と、変換モード判定部154と、電力決定部155と、コンバータ制御部156と、断続運転判定部157と、を備えた。なお、図19では、電圧変換に関係する機能について図示している。また、第4実施形態の要求電力算出部151、変換モード判定部154、電力決定部155は、第3実施形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。
断続運転判定部157は、断続運転中か否かを判定する。例えば、モータ制御処理のステップS104において、断続運転の実行が決定されたか否かについて判定する。
第4実施形態の充放電量算出部152は、断続運転の実行中である場合、モータ20と高電圧バッテリ30との間における充放電量を予め決められた値(本実施形態ではゼロとする)として算出する。
第4実施形態のコンバータ設定部153は、断続運転の実行中である場合、高電圧バッテリ30の充放電量が予め決められた値(本実施形態ではゼロ)である場合における変換動作点のマップを読み出す(設定する)。
第4実施形態のコンバータ制御部156は、断続運転の実行中である場合に断続的な電圧変換を実行すると判定された場合、変換周期として、走行期間及び惰行期間を設定する運転周期を決定する。運転周期は、モータ制御処理のステップS106において決定されている。
次に、第4実施形態のコンバータ制御部156は、断続運転の実行中である場合に断続的な電圧変換を実行すると判定された場合、要求電力、及び変換期間中におけるコンバータ41の出力電力に基づき、第3実施形態と同様にして、変換期間及び変換停止期間を決定する。
なお、決定された変換期間が惰行期間よりも長い場合がある。この場合、ECU50は、コンバータ41からの出力電流を大きくして(すなわち、電力変換効率を下げて)、変換期間と惰行期間とを一致させるようにしてもよい。特に、高電圧バッテリ30からモータ20への放電量が多い場合、又はモータ20から高電圧バッテリ30への充電量が多い場合には、変換期間と惰行期間とを一致させて、通電量のピーク値を低減させることが望ましい。
そして、コンバータ制御部156は、断続運転の実行中である場合に、断続的な電圧変換を実行する場合、図20に示すように、惰行期間の開始と共に変換期間を開始し(時点P401)、惰行期間中において(時点P401~P403)、変換期間(時点P401~P402)を設定する。そして、コンバータ制御部156は、変換期間が終了した後、変換停止期間を設定する(時点P402~P404)。以降、同様にして、惰行期間の開始と共に変換期間を開始する(時点P404)。
なお、図20は、高電圧バッテリ30の出力電流を示し、実線で走行期間を示し、一点鎖線で変換期間を示す。
次に、図21に基づき、第4実施形態のコンバータ制御処理について説明する。
断続運転判定部157としてのECU50は、断続運転中か否かを判定する(ステップS401)。この判定結果が否定の場合、図18に示すステップS301以降の処理を実行する。
一方、ステップS401の判定結果が肯定の場合、要求電力算出部151としてのECU50は、電気負荷40の状態に基づき、コンバータ41から供給されるべき要求電力を算出する(ステップS402)。
次に、充放電量算出部152としてのECU50は、高電圧バッテリ30の充放電量としてゼロを決定する(ステップS403)。
次に、コンバータ設定部153としてのECU50は、高電圧バッテリ30の充放電量がゼロであるとして、電力変換効率及びコンバータ41からの出力電流を特定可能な変換動作点を設定する(ステップS404)。
次に、変換モード判定部154としてのECU50は、断続的な電圧変換を実行するか否かを判定する(ステップS405)。ステップS405の判定結果が肯定の場合、ECU50は、断続的な電圧変換を決定し、否定の場合には、継続的な電圧変換を決定する。
ステップS405の判定結果が肯定の場合、電力決定部155としてのECU50は、変換期間中にコンバータ41に出力させる第1出力電流を決定する(ステップS406)。ステップS406において、ECU50は、ステップS404で設定された変換動作点に基づき、電力変換効率が最高効率である変換動作点を特定する。そして、ECU50は、当該変換動作点により特定される出力電流を、変換期間中にコンバータ41に出力させる第1出力電流として決定する。なお、ECU50は、変換停止期間においては、電圧変換を停止させることを決定する。
次に、コンバータ制御部156としてのECU50は、変換周期、及び変換期間及び変換停止期間を決定する(ステップS407)。ステップS407において、走行期間及び惰行期間を設定する運転周期を変換周期として設定する。そして、コンバータ制御処理を終了する。
一方、ステップS405の判定結果が否定の場合、ECU50は、要求電力に基づき、コンバータ41からの出力電流を決定する(ステップS408)。そして、コンバータ制御処理を終了する。
コンバータ制御処理の終了後、コンバータ制御処理において決定された情報に基づいて、ECU50は、コンバータ41による電圧変換を実行する。すなわち、ECU50は、断続運転の実行中である場合に断続的な電圧変換を実行すると決定した場合、惰行期間が開始した時に、変換期間を設定する。そして、ECU50は、変換期間中、ステップS406において決定された第1出力電流を出力させるようにコンバータ41に対して指令を行う。そして、ECU50は、変換期間が開始してから、ステップS407において決定された変換期間が経過した後、変換停止期間を開始させる。ECU50は、変換停止期間中、電圧変換を停止させるようにコンバータ41に対して指令を行う。ECU50は、変換停止期間が開始してから、ステップS406において決定された変換停止期間を経過した後、惰行期間の開始と共に、変換期間を開始させる。以降、新たなコンバータ制御処理が実行されるまで、これらの制御を繰り返し実行する。
一方、ECU50は、断続運転の実行中である場合に継続的な電圧変換を実行すると決定した場合、新たなコンバータ制御処理が実行されるまで、ステップS408で決定された出力電流を出力させるようにコンバータ41に対して指令を行う。
以上詳述した第4実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
高電圧バッテリ30とモータ20との間で通電している場合に、電気負荷40に電力を供給すると、高電圧バッテリ30の通電量が重畳する。通電量のピーク値が増加する。電池損失は、充放電量の2乗に比例するため、蓄電池の充放電量のピーク値が大きくなると、電池損失が急増することとなり、モータ20、高電圧バッテリ30、及び電気負荷40を含む全体で考えた場合、効率が低下する可能性がある。
そこで、ECU50は、モータ20への通電停止中に、変換期間を設定することとした。より詳しくは、周期的にモータ20へ通電が停止される(又は限りなく小さくなる)惰行期間が設定される断続運転が実行されている場合、惰行期間中に、変換期間を設定することとした。これにより、モータ20との間における通電時期と、電気負荷40との間における通電時期とをずらして、高電圧バッテリ30の通電量のピーク値を低減させることができる。このため、高電圧バッテリ30の電池損失を低減し、車両10全体で効率を向上させることができる。
第4実施形態において、モータ20の断続運転をさせる場合、モータ制御処理のステップS102において、電気負荷40との間における高電圧バッテリ30の通電量をゼロとすればよい。そして、以降のステップS103~107の処理を実行すればよい。これにより、走行期間中に出力されるモータトルクを大きくすることができ、効率的な走行を実現することができる。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態の制御装置について説明する。なお、以下では、各実施形態で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
第4実施形態のコンバータ制御処理において、ステップS405の判定結果が否定の場合、ECU50は、継続的な電圧変換を決定した。しかしながら、この場合においても、断続運転に同期して断続的な電圧変換を実行し、高電圧バッテリ30の通電量のピーク値を低減した方が、電費が向上する場合がある。特に、モータ20との間における充放電量が多い場合には、断続運転に同期して断続的な電圧変換を実行した方が、効率を向上させやすい。
そこで、第5実施形態では、最高効率の変換動作点により特定される出力電流に基づき算出される出力電力が、要求電力よりも小さい場合であっても、断続運転に同期して断続的な電圧変換を決定することとした。以下、第4実施形態とは異なる点について説明する。
図22に示すように、ステップS405の判定結果が否定の場合、コンバータ制御部156としてのECU50は、断続運転に同期して断続的な電圧変換を実行させることを決定する(ステップS501)。また、ステップS501において、コンバータ制御部156は、運転周期を、変換周期として決定し、惰行期間を変換期間として決定し、走行期間を、変換停止期間として決定する。
そして、電力決定部155としてのECU50は、変換期間中にコンバータ41に出力させる第1出力電流を決定する(ステップS502)。ステップS502において、ECU50は、数式(9)(10)を満たすように、電力変換効率に関わらず、コンバータ41から出力させる第1出力電流を決定する。数式(9)(10)において、「T」は運転周期(=変換周期)、「Wr」は要求電力、「T2」は惰行期間(=変換期間)、「Z1」は第1出力電流、「V1」は、コンバータ41からの出力電圧(=12V)、「T1」は走行期間(=変換停止期間)である。
T×Wr=T2×Z1×V1・・・(9)
T=T1+T2・・・(10)
そして、コンバータ制御処理を終了する。コンバータ制御処理の終了後、コンバータ制御処理において決定された情報に基づいて、ECU50は、コンバータ41による電圧変換を実行する。すなわち、ECU50は、ステップS501で断続運転に同期して断続的な電圧変換を実行すると決定した場合、惰行期間中、変換期間を設定する。そして、ECU50は、変換期間中、ステップS502において決定された第1出力電流を出力させるようにコンバータ41に対して指令を行う。そして、ECU50は、変換期間が開始してから、ステップS501において決定された変換期間が経過した後、すなわち、走行期間の開始後、変換停止期間を設定する。ECU50は、変換停止期間中、電圧変換を停止させるようにコンバータ41に対して指令を行う。ECU50は、変換停止期間が開始してから、ステップS501において決定された変換停止期間を経過した後、すなわち、惰行期間の開始と共に、変換期間を開始させる。以降、新たなコンバータ制御処理が実行されるまで、これらの制御を繰り返し実行する。
なお、第5実施形態のステップS501において、無条件で断続運転に同期して断続的な電圧変換を実行させることを決定したが、充放電量が所定の電流量以上であることを条件として、断続的な電圧変換の実行を決定してもよい。所定の電流量は、断続的な電圧変換を実施することにより、電費向上効果を期待できる電流量であることが望ましい。
以上詳述した第5実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
要求電力に対して、最高の電力変換効率で変換しても出力電力が不足する場合であっても、断続運転に同期して断続的な電圧変換を実施することとした。これにより、高電圧バッテリ30の通電量におけるピーク値を低減して電池損失を少なくし、全体として電費を向上させることができる。なお、電力変換効率に関わらず、要求電力に応じた出力電力を出力させるようにしているため、要求電力に対して電力が不足することを防止できる。
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されず、例えば以下のように実施してもよい。なお、以下では、各実施形態で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
上記実施形態において、ECU50は、猶予期間中、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクを含む所定範囲内にモータトルクが存在する場合、時間あたりのトルク変化量に上限を設けるようにしてもよい。例えば、図23に示すように、モータトルクを徐々に変化させてもよい。これにより、モータトルクを緩やかに変化させることができ、急激に変化させる場合と比較して、ティース同士が衝突する際の衝撃を抑えることができる。つまり、モータ側ギヤに対する駆動軸側ギヤの相対回転速度を遅くして、衝撃を抑えることができる。
上記実施形態において、モータ20の回転速度によっては、バックラッシュに基づくティース同士の衝撃や衝突音が少ない場合がある。そこで、ECU50は、モータ20の回転速度が閾値未満の場合、猶予期間を設けないと判定してもよい。これにより、第3トルクを付与する必要がなくなり、モータ20の消費電力を低減することができる。
上記第2実施形態において、猶予期間中、第3トルクを駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクとしてもよい。
・上記実施形態において、低電圧バッテリ42の通電に基づく、電池損失を考慮してもよい。つまり、低電圧バッテリ42の通電に基づく、電池損失を考慮して、システム効率のマップ、及び電圧変換効率のマップを作成してもよい。
・上記実施形態において、走行期間中、電気負荷40への電力供給を停止してもよい。高電圧バッテリ30の電池損失は、電流の2乗に比例するため、ピーク値を抑えることにより、電費を向上させることができる。なお、この場合であっても、低電圧バッテリ42から、補機類43への電力供給を継続することができる。
上記実施形態において、高電圧バッテリ30の電流量を計測する電流センサを備え、電流センサにより検出された電流量に基づき、動作点を設定してもよい。例えば、電気負荷40と高電圧バッテリ30との間における経路に電流センサを備え、当該電流センサにより検出された電流量に基づき、モータ動作点を設定してもよい。また、例えば、モータ20と高電圧バッテリ30との間における経路に電流センサを備え、当該電流センサにより検出された電流量に基づき、変換動作点を設定してもよい。
・上記実施形態では、第1トルク及び第2トルクに基づき、走行期間と惰行期間との間に、第3トルクを出力させる猶予期間を設けるか否かを判定した。この別例として、第1トルク及び第2トルクのうち少なくともいずれかのトルクに基づき、走行期間と惰行期間との間に、第3トルクを出力させる猶予期間を設けるか否かを判定してもよい。例えば、第2トルクがゼロ又はゼロ近傍であることが予め定められているのであれば、第1トルクに基づき、第1トルクとゼロトルクとの間に、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクが存在するか否かを判定すればよい。
・上記実施形態では、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルク(フリクショントルク)を、回転速度に応じて設定したが、一定値としてもよい。
・上記実施形態において、ECU50は、惰行期間中にモータ20への通電を停止させてもよい。惰行期間中にモータ20への通電を停止させることにより、消費電力をより低減することができる。ところで、惰行期間中にモータ20への通電を停止させた場合、車軸23と連結されているモータ20の回転軸は、回転し続けることから、モータ20には逆起電力が生じ、負トルクが発生する。逆起電力及びそれに伴う負トルクは、モータ20の回転速度に応じて増加するため、モータ20の回転速度が所定の速度以上となると、インバータ25が故障する虞がある。
そこで、図24に示すように、ECU50は、惰行期間中、回転速度が所定の速度未満の場合、モータ20への通電を停止させる一方、回転速度が所定の速度以上の場合、モータ20への通電を行うことが望ましい。なお、所定の速度は、逆起電力に基づくインバータ25が故障する虞がある速度であり、インバータ25の性能などにより決定される。具体的には、回転速度が所定の速度以上の場合、第2トルクをゼロトルクになるようにモータ20へ通電すればよい。
なお、ECU50は、図25に示すように、回転速度が所定の速度以上の場合、回転速度に応じてモータ20への通電量を決定し、当該決定した通電量で、モータ20への通電を行ってもよい。つまり、回転速度が所定の速度以上の場合、インバータ25の故障が抑制できるのであれば、それよりも弱いモータトルクとなるように、回転速度に応じてモータ20への通電量を決定してもよい。これにより、モータ20及びインバータ25の消費電力を抑えつつ、インバータ25の故障を抑制できる。
上記実施形態において、モータ20により制動又は駆動させない状態とは、モータ20への通電を遮断した状態、及びモータ20の出力トルクをゼロ(又はゼロ近傍の値)とした状態の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
上記実施形態において、高電圧バッテリ30には、高電圧バッテリ30の出力電圧が入力される第2電気負荷としての高電圧補機が接続されていてもよい。この場合、通電量算出部52は、高電圧補機への電力供給に基づく高電圧バッテリ30の通電量も含めて、通電量を算出することが望ましい。同様に、充放電量算出部152は、高電圧補機への電力供給に基づく高電圧バッテリ30の放電量も含めて、充放電量を算出することが望ましい。
上記実施形態において、コンバータ41は、昇圧コンバータであってもよい。この場合、電気負荷40の入力電圧は、高電圧バッテリ30の出力電圧よりも高くなる。また、高電圧バッテリ30と、インバータ25との間に昇圧コンバータを設けてもよい。
上記実施形態において、低電圧バッテリ42にキャパシタ等の蓄電装置を接続してもよい。これにより、高電圧バッテリ30の通電量を減らして、電池損失を低減することができる。
上記実施形態では、最高効率のモータ動作点でモータ20を制御したが、継続運転させる場合におけるモータ動作点のシステム効率よりも高いのであれば、最高効率のモータ動作点でなくてもよい。同様に、最高効率の変換動作点でコンバータ41を制御したが、継続的に電圧変換させる場合における変換動作点の電力変換効率よりも高いのであれば、最高効率の変換動作点でなくてもよい。
上記実施形態において、内燃機関を備える車両、例えば、ハイブリッド車両などに適用してもよい。
上記実施形態において、マップは、高電圧バッテリ30の状態(出力電圧、蓄電状態、温度)や、モータ20の温度などにより補正されてもよい。すなわち、モータ動作点、及び変換動作点は、高電圧バッテリ30の状態(出力電圧、蓄電状態、温度)や、モータ20の温度などにより補正されてもよい。
上記実施形態において、ブレーキが操作された場合、断続運転を実行させないと判定してもよい。
上記実施形態において、モータ20及び電気負荷40との間で入出力される高電圧バッテリ30の電流量を算出し、当該電流量に基づき、モータ動作点及び変換動作点を設定してもよい。この場合、当該電流量に応じて、システム効率のマップ、及び電力変換効率のマップをそれぞれ作成し、記憶する必要がある。
上記実施形態において、駆動軸トルクがゼロとなるモータトルクは、ギヤ等に用いられる潤滑油の温度などにより補正してもよい。
上記実施形態において、図26に示すように、モータ20を駆動輪24のホイール24aに収納したインホイールモータ車両に適用してもよい。この場合、図27に示すように、減速機22を介さずに、モータ20の回転軸21をスプライン嵌合によりホイール24aのハブ24bと連結させるダイレクトドライブ方式を採用してもよい。なお、ダイレクトドライブ方式であっても、回転軸21と、ホイール24aのハブ24bとの間には、バックラッシュが存在するため、断続運転させる場合、猶予期間を設けてもよい。