JP2013215240A - バイオセラミックスを含む人工骨の改質方法と、その方法で改質された人工骨 - Google Patents

バイオセラミックスを含む人工骨の改質方法と、その方法で改質された人工骨 Download PDF

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悠 森口
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Taisei Ri
大成 李
Yasuji Kojima
保次 小嶋
Nobuo Ono
信男 大野
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剛 小泉
Daizo Tokimasa
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Abstract

【課題】多孔質ハイドロキシアパタイト型人工骨の表面及び内部空孔表面まで効率的にプラズマ処理し、生体親和性と骨誘導性を向上させた人工骨の改質方法とその改質方法によって改質された人工骨を提供する。
【解決手段】改質された人工骨101〜104を得るための人工骨の改質方法は、多孔質ハイドロキシアパタイト型の人工骨200の表面及び内部を骨再生活性化するためにプラズマ処理するプラズマ処理工程を含む。プラズマ処理工程は、少なくとも酸素原子を含むガスを用いたプラズマによる処理工程であり、減圧下で行われる。
【選択図】図1

Description

本発明は、バイオセラミックスを含む人工骨の改質方法と、その方法で改質された人工骨に関する。
従来から外科、整形外科等の医療分野において、疾病、事故、手術等によって生じた骨の欠損部及び空隙に対して、自分の他の身体部分の骨を採取、充填することで骨組織の再建を図ることが広く行われてきた。しかし、骨採取のための手術は合併症が多く大きな苦痛を伴う上に、骨採取に要する費用や労力も多大である。また、欠損部が広範囲に及ぶ場合、欠損部を人骨だけで補綴するには十分な量を確保できないことも多い。このため、近年、補綴用人工骨材に関する研究が盛んに行われている。例えば、ハイドロキシアパタイトは、骨補填材として生体内に埋入した場合、これを足場として速やかに骨修復が行われ、新生骨と直接結合するという優れた骨伝導能を発揮する。また、β−リン酸三カルシウム(β−TCP)も、生体内で分解され易く、徐々に新生骨に置換するという特徴を有している。
しかし、無気孔で緻密なリン酸カルシウム系焼結材を埋入した場合には、生体内での骨組織形成が遅く、治癒までに長期間を要する。そのため、開気孔を有する多孔質体とし、開気孔内に骨組織が入り込み易くしたリン酸カルシウム系焼結材が提案されている(特許文献1)。
このように、従来の人工骨はハイドロキシアパタイトを含む人工骨であって、ハイドロキシアパタイトの多孔を緻密連通させることで骨再生活性化するよう構造改善されていた。バイオセラミックスの特殊多孔質構造においては、骨組織細胞(骨芽細胞)や血管が孔内に入り込み、骨組織形成が早期になされる。
特開2002−17846号公報
しかし、人工骨の構造を特殊多孔質構造に改善するには、人工骨を形成する段階で特殊な工程が必要であった。また、人工骨の構造を改善させるのみならず、さらに容易な改良をすることで、骨伝導能を向上させる技術が求められている。
本発明は上記技術的課題を解決するためになされたものであり、構造を改善(改造)することなく性質を改善(改質)することで、骨再生活性化された人工骨と人工骨の改質方法を提供することを目的とする。
特に、多孔質ハイドロキシアパタイト型人工骨の表面及び内部空孔表面まで効率的にプラズマ処理し、生体親和性と骨誘導性を向上させる人工骨の改質方法とその改質方法によって改質された人工骨を提供することを目的とする。
この発明に従った人工骨の改質方法は、多孔質ハイドロキシアパタイト型の人工骨の表面及び内部を骨再生活性化するためにプラズマ処理するプラズマ処理工程を含む。プラズマ処理工程は、少なくとも酸素原子を含むガスを用いたプラズマによる処理工程であり、減圧下で行われる。
この発明に従った人工骨の改質方法においては、ガスは酸素ガスであることが好ましい。
この発明に従った人工骨の改質方法においては、プラズマ処理工程は、非重合性型のプラズマ反応で行われることが好ましい。
この発明に従った人工骨の改質方法においては、プラズマ処理工程は、10〜1000Paの減圧下で行われることが好ましい。
この発明に従った人工骨の改質方法においては、プラズマは、高周波電源によるプラズマ源によってプラズマ化され、高周波電源の周波数は1〜100MHzであることが好ましい。
この発明に従った人工骨の改質方法においては、プラズマ処理工程は、等方性プラズマによって行われることが好ましい。
改質された人工骨は、上記のいずれかの改質方法によって改質されたものである。
本発明の一つの実施形態として全部改質された人工骨(A)と部分的に改質された人工骨(B)〜(D)と、改質されていない人工骨(E)の断面を示すCT画像である。 人工骨の多孔質を示す写真又は模式図である。 従来の人工骨の例を示す表である。 人工骨改質装置の全体を模式的に示す系統図である。 人工骨改質装置の処理室と高周波電源部とを模式的に示す図である。 本発明のプラズマ処理工程を実施する前のハイドロキシアパタイト基材に水を滴下したときの状態を示す写真(A)と、プラズマ処理工程後のハイドロキシアパタイト基材に水を滴下したときの状態を示す写真(B)である。 人工骨へのプラズマ照射時間と改質層の内部侵行度合いとの関係を示す写真である。 人工骨へのプラズマ照射時間と改質層の内部侵行度合いとの関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(人工骨)
図1は、本発明の一つの実施形態として、全部改質された人工骨(A)と部分的に改質された人工骨(B)〜(D)と、改質されていない人工骨(E)の断面を示すCT画像である。人工骨は、生体内の欠損部分を補う人工的な素材である。人工骨として、例えば円柱状のものが用いられた場合の円形断面を図1に示す。円柱状の人工骨は、例えば、直径が6mm、長さが15mmものが用いられる。
図1の(A)に示すように、本発明の一つの実施形態として、改質された人工骨101は表面から内部まで、全体が改質層120によって形成されている。図1の(B)〜(D)に示すように、部分的に改質された人工骨102〜104は、未改質層110と改質層120とを含む。図1の(B)〜(D)のうちでは、(B)の人工骨102は最も改質層120が大きく、(D)の人工骨104では最も改質層120が小さい。
改質層120は、後述するプラズマ処理工程において骨再生活性化された部分である。改質層120は、バイオセラミックスを含む。骨再生活性化された改質構造は、プラズマ改質構造である。プラズマ改質は、多孔質ハイドロキシアパタイト型の人工骨の表面及び内部を骨再生活性化するためにプラズマ処理するプラズマ処理工程によってなされる。プラズマ処理工程は、少なくとも酸素原子を含むガスを用いたプラズマによる処理工程であり、減圧下で行われる。プラズマ改質によって、改質層120の親水性、細胞の接着性、増殖性、及び、誘導性が改善され得る。改質層120に含まれるバイオセラミックスは、多孔質である。改質層120は複数の気孔を有する。気孔と気孔とを区分するのは、壁部である。気孔には複数の種類がある。例えば、連球状開気孔、粒界空隙状開気孔及び閉気孔である。気孔の詳細は、図2を参照して後述する。プラズマ改質によって改質層120の親水性が改善されるため、改質層120の多孔質内に液体が侵入する。従って、図1の(A)〜(D)に示す人工骨101〜104において、表面から破線で示される位置までの深さは、人工骨101〜104の上に水滴を垂らした時に水が浸入し得る深さをも表す。改質層120は水の浸入し易い個所(侵入容易層)であり、未改質層110は、水の浸入し難い個所(侵入非容易層)を表す。図1の(A)に示すように、人工骨の全体が改質されて改質層120になり、未改質層110がなくてもよい。
図1の(E)は、改質されていない人工骨200の断面を示す写真である。人工骨101〜104と同様、人工骨200もバイオセラミックスを含み、多孔質である。人工骨200は、多孔質ハイドロキシアパタイト型、すなわち、ハイドロキシアパタイトを含むバイオセラミックスによって形成されている。しかし、人工骨200は骨再生活性化された改質構造を有しない。従って、人工骨200の表面は親水性が悪く、液体を弾く。
図2は、人工骨の多孔質を示す写真又は模式図である。図2を参照して、種々の気孔を説明する。
図2(a1)は、人工骨100aを示す写真であり、図2(a2)は、人工骨100aの断面の一部を拡大した写真である。人工骨100aは、連球状開気孔を有する。ここで、気孔とは、ひとまとまりの物体に含まれる微小な空洞であり、開気孔は、外気と連通している気孔である。連球状開気孔は、複数の開気孔であって、それらの各々が球状であり、3次元的に連通している複数の開気孔である。
図2(b1)は、人工骨100bを示し、図2(b2)は、人工骨100bの一部を拡大した模式図であり、図2(b3)は、人工骨100bの一部を更に拡大した模式図である。人工骨100bは、人工骨100aと異なる内部構造を有する。すなわち、人工骨100bは、微小粒子(個体)の集合体であり、隣接する微小粒子の間に隙間を有し、これが細孔をなす。すなわち、人工骨100bは、粒界空隙状開気孔を有する。ここで、粒界空隙状開気孔とは、粒子と粒子との間に生じる空隙が連なる開気孔である。
図2(c1)は、人工骨100cを示す写真であり、図2(c2)は、人工骨100cの断面の一部を拡大した写真である。人工骨100cは、閉気孔を有する。閉気孔は物体内部に孤立している気孔である。従って、外気と接続していない。人工骨100cに含まれる複数の気孔の各々は、壁部によって区分されている。
図3は、従来の人工骨200の例を示す表である。人工骨200は、人工骨101〜104,100a,100bと同様にバイオセラミックスを含むが、骨再生活性化された改質構造を有しない。しかし、人工骨200に含まれるバイオセラミックスに骨再生活性化のための改質処理を施すことによって、人工骨200を改質して改質された人工骨101〜104を得ることができる。人工骨200は改質処理されていない改質未処理人工骨であり、人工骨100は改質処理されている改質処理済人工骨である。骨再生活性化のための改質処理の具体例は、プラズマ改質処理であり、多孔質ハイドロキシアパタイト型の人工骨の表面及び内部を骨再生活性化するためにプラズマ処理するプラズマ処理工程を含む。プラズマ処理工程は、少なくとも酸素原子を含むガスを用いたプラズマによる処理工程であり、減圧下で行われる。
人工骨200aは、ペンタックスHOYAから販売名ボンフィルで販売されている人工骨である。人工骨200aの組成は、ハイドロキシアパタイトである。人工骨200aは、閉気孔を有し、連通性はない。製品に応じて気孔径は90、200、300μm、気孔率は60、70%である。
人工骨200bは、コバレントマテリアルから販売名ネオボーンで販売されている人工骨である。人工骨200bの組成は、ハイドロキシアパタイトである。人工骨200bは、連球状開気孔を有し、連通性がある。気孔径は、約150μmであり、気孔率75%を有する。連通径は、50μmである。
なお、人工骨の内部にまで骨再生のための細胞や栄養を導入し易くする等の観点から、人工骨200bの平均気孔率は90μm以上600μm以下であることが好ましい。また、気孔率は50%以上90%以下であり、特に、65%以上85%以下が好ましい。また、人工骨200bの連球状開気孔の連通部分の平均孔径は20μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましい。
人工骨200bは、撹拌起泡により製造し得る。具体的には、以下に示すステップ1〜ステップ4を実行することで人工骨200bを製造することができる。
ハイドロキシアパタイト粉末に、架橋重合性樹脂としてポリエチレンイミン等を添加し、分散媒として水を用いて、混合、解砕し、スラリーを調製する(ステップ1)。スラリーに、起泡剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル等を添加し、撹拌して起泡させる(ステップ2)。スラリーに、架橋剤としてソルビトールグリシジルエーテル等を添加し、得られた泡沫状スラリーを注型して、泡構造を固定した状態で乾燥させる(ステップ3)。泡沫状スラリーを800〜1300℃程度で焼結する(ステップ4)。
人工骨200cは、日本特殊陶行から販売名セラタイトで販売されている人工骨である。人工骨200cの組成は、ハイドロキシアパタイト70%、β−TCP(β−リン酸三カルシウム)30%である。人工骨200cは多孔質であり、気孔径は150〜200μmであるが、連通性はあまりよくない。連通径は、40〜80μmである。
人工骨200dは、オリンパステルモバイオマテリアルから販売名ボーンセラムPで販売されている人工骨である。人工骨200dの組成は、ハイドロキシアパタイトである。人工骨200dは多孔質であり、気孔径は30〜400μmであるが、連通性はない。
上述のように人工骨200に含まれるバイオセラミックスに骨再生活性化のための改質処理を施すことによって、人工骨200を改質して人工骨100を得ることができる。人工骨200a、人工骨200b、人工骨200c、人工骨200d以外に、種々の人工骨を使用し得る。人工骨200は、好適には、生体為害性を有さず、かつ、十分な機械的強度を有する材質のバイオセラミックスを含む。具体的には、アルミナ、ジルコニア、シリカ、ムライト、ディオプサイト、ウォラストナイト、エーライト、ベライト、アーケルマナイト、モンティセライト、生体用ガラス及びリン酸カルシウム系セラミックスのうち、少なくとも1種を含む。リン酸カルシウム系セラミックスは生体適合性に優れ、最も好適である。リン酸カルシウム系セラミックスとしては、ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、フッ化アパタイトが挙げられる。特に、骨との同化性、癒着性、強度等の観点から、改質される人工骨200は骨の主組成成分であるハイドロキシアパタイトを含む。
以上、本発明に従って改質された人工骨101〜104を説明した。この発明に従った人工骨の改質方法は、多孔質ハイドロキシアパタイト型の人工骨200の表面及び内部を骨再生活性化するためにプラズマ処理するプラズマ処理工程を含む。プラズマ処理工程は、少なくとも酸素原子を含むガスを用いたプラズマによる処理工程であり、減圧下で行われる。
減圧下でプラズマ処理することによって、人工骨200の多孔質の孔内のガスが排気され、内孔表面の吸着水分が除去された状態で、人工骨200の内孔表面に充分にプラズマを行き渡らせることができる。また、少なくとも酸素原子を含むガスを用いたプラズマによる処理工程であることによって、ハイドロキシアパタイト(Ca(POOH)の最表面において酸素原子の組成比が増加し、Ca(PO等に変質すると考えられる。このようにすることにより、多孔質ハイドロキシアパタイト型人工骨の表面及び内部空孔表面まで効率的にプラズマ処理し、生体親和性と骨細胞誘導性を向上させた人工骨を提供することができる。また、人工骨のより内部まで改質されることで、骨再生の速度が大きくなるので、患者の完治までの期間をより短縮することが可能になる。
また、人工骨の改質方法においては、ガスは酸素ガスであることが好ましい。ガスは、酸素ガスの他、酸素原子を含むガスと、例えば窒素ガスや水蒸気など、他のガスとの混合ガスであってもよい。
また、人工骨の改質方法においては、プラズマ処理工程は、非重合性型のプラズマ反応で行われることが好ましい。主に酸素ガスを含む非重合性プラズマを用いることによって、人工骨の細孔内部まで表面改質し、かつ、細孔を塞ぐことのなく、プラズマ処理を行うことができる。
また、人工骨の改質方法においては、プラズマ処理工程は、10〜1000Paの減圧下で行われることが好ましい。プラズマ処理工程は、より好ましくは、30〜200Paの減圧下で行われれる。
また、人工骨の改質方法においては、プラズマは、高周波電源によるプラズマ源によってプラズマ化され、高周波電源の周波数は1〜100MHzであることが好ましい。
また、人工骨の改質方法においては、プラズマ処理工程は、等方性プラズマによって行われることが好ましい。このようにすることにより、人工骨200の全方向からプラズマを照射することができるので、人工骨200の表面全体にプラズマ処理を行うことができる。
改質された人工骨101〜104は、上記のいずれかの改質方法によって改質されたものである。上述のいずれかの方法によって改質された人工骨101〜104は、多孔質ハイドロキシアパタイト型人工骨の表面及び内部空孔表面まで効率的にプラズマ処理され、生体親和性と骨誘導性を向上させられる。
また、本発明の人工骨の改質方法は、構造を改善(改造)させることなく性質を改善(改質)させることで、骨再生活性化された人工骨101〜104を得ることができる。
また、本発明の好適な人工骨の改質方法によれば、改質構造は、プラズマ改質構造である。本発明の改質された人工骨101〜104においては、バイオセラミックスは多孔質である。従って、多孔質でないバイオセラミックスと比較して、骨再生活性化された改質面積が広く、骨伝導能が向上する。その結果、骨欠損部における早期治癒が可能となる。
更に、本発明の好適な人工骨の改質方法によれば、バイオセラミックスは連球状開気孔を有する。連球状開気孔は、球状であり、3次元的に連通している。従って、プラズマ照射によって骨再生活性化する場合は、燃焼ガスを気孔内に導入し易く、広範囲なプラズマ改質が可能となる。さらに、連球状開気孔は、粒界空隙状開気孔や閉気孔と比べ、気孔径が大きいため、気孔内にまで生体液や骨組織細胞(骨芽細胞)が侵入し得、骨伝導能を向上し得る。
更に、本発明の好適な人工骨の改質方法によれば、バイオセラミックスは、リン酸カルシウム含有セラミックスを含む。リン酸カルシウム含有セラミックス又はガラスセラミックスは、人工骨の材料として一般に使用されているので、入手が容易である。さらに、リン酸カルシウム含有セラミックスは生体骨の成分でもあり、再生骨に馴染みやすい。
なお、本発明の改質された人工骨において、バイオセラミックスの全てが骨再生活性化された改質構造を有するに限定されない。バイオセラミックスの一部が骨再生活性化された改質構造であり得る。従って、改質部分を選択し得、目的に応じて人工骨を使い分け得る。特に、人工骨の深部に至るまで改質構造を有し得る場合には、骨の再生が人工骨の深部にまで及び、骨欠損部における早期治癒が可能となる。
更に、本発明の改質された人工骨において、未改質層110と改質層120とを有する人工骨102〜104について説明したが、人工骨100は、改質層120を有しさえすれば未改質層110の有無は限定されない。人工骨200へのプラズマ照射によって、人工骨200の全てを改質した場合は、改質された人工骨101は未改質層110と改質層120とのうち、改質層120のみを有する。
更に、プラズマ処理の対象としては、骨再生活性化のための改質処理を実行して人工骨を改質し得る限りは、図3を参照して説明した人工骨200a、人工骨200b、人工骨200c、人工骨200dやその他種々の人工骨を活用し得る。
(人工骨改質装置および人工骨改質方法)
図4は、人工骨改質装置の全体を模式的に示す系統図であり、図5は人工骨改質装置の処理室と高周波電源部とを模式的に示す図である。人工骨改質装置300によって、人工骨200(図1)が改質されて、改質された人工骨101〜104(図1)が得られる。人工骨改質装置300は、人工骨200に含まれるバイオセラミックスに対してプラズマAを照射し、骨再生活性化のための改質処理をする処理装置として機能する。人工骨改質装置300による改質方法は、バイオセラミックスに骨再生活性化のための改質処理をする処理工程を包含する。処理工程は、多孔質ハイドロキシアパタイト型の人工骨の表面及び内部を骨再生活性化するためにプラズマ処理するプラズマ処理工程である。プラズマ処理工程は、少なくとも酸素原子を含むガスを用いたプラズマによる処理工程であり、減圧下で行われる。
人工骨改質装置300は、バレルタイプのプラズマ処理装置であり、処理室310と、酸素ガス供給部320と、真空ポンプ330と、高周波電源340と、第1電極341と第2電極342とを備える。
処理室310は、内径が300mm程度の絶縁体(例えば、石英、ガラス、セラミクスなど)からなる略球形状のチャンバーである。処理室310にはガス供給口と真空排気口(図示なし)とが形成されている。ガス供給口は、管路によって酸素ガス供給部320に連通されている。真空排気口は、管路によって真空ポンプ330に連通されている。
酸素ガス供給部320は、人工骨改質装置300の外部の酸素ボンベ等、酸素ガス源から処理室310に酸素を供給するためのものである。酸素ガス供給部320には流量計321が配置されており、処理室310内に供給される酸素ガスの量や供給の開始と停止とを使用者が制御できるように構成されている。酸素ガスは、酸素原子含有ガスの一例である。
高周波電源340は、第1電極341と第2電極342との間に高周波を印加するためのものである。第1電極341と第2電極342とは、処理室310の外周面を外側から覆うように配置されている。第1電極341と第2電極342とは、一対のプラズマ発生用の電極であり、処理室310の上側の半球の外周面上と下側の半球の外周面上とに各々設置されている。第1電極341に高周波を印加し、第2電極342をグラウンド電位とする。高周波電源340は、1〜100MHz程度の高周波(例えば、13.56MHz)を第1電極341と第2電極342との間に印加して放電させることにより、処理室310内にプラズマAを発生させる。なお、第1電極341をグラウンド電位にして、第2電極342に高周波を印加してもよい。
人工骨改質装置300を用いた人工骨の改質方法のプラズマ処理工程は、例えば、次のステップS1〜S3を含む。まず、処理室310内に被改質処理対象の人工骨を配置する。ステップS1として、真空ポンプ330が駆動され、処理室310内が、例えば30〜200Paの範囲内のいずれかの真空度に減圧される。次にステップS2として、酸素ガス供給部320から酸素ガスが処理室310内に供給される。次に、ステップS3では、高周波電源340が駆動されて1〜100MHz程度の高周波が第1電極341と第2電極342との間に印加される。
このようにすることにより、処理室310内に発生したプラズマAによって処理室310内の人工骨が改質される。
なお、誘電体を含む電極系は一種のコンデンサとみなせるため、プラズマ処理による人工骨改質装置300へは交流電圧を印加しなければならない。商用から高周波仕様まで様々な電源を使って簡単に誘電体バリア放電を形成し、プラズマを発生し得る。
また、本発明の好適な人工骨改質装置及び人工骨改質方法によれば、バイオセラミックスへのプラズマ照射時間を長くする場合には、人工骨の内部の未改質層に至るまでプラズマが到達し、人工骨の内部の未改質層を骨再生活性化した改質構造にし得る。また、プラズマ照射時間を短くする場合には、人工骨の表面付近の未改質層を骨再生活性化した改質構造にし得る。その結果、改質部分を選択的に形成し得、目的に応じた人工骨を改質し得る。
また、本発明の好適な人工骨改質装置及び人工骨改質方法によれば、周辺空間を減圧することで、バイオセラミックスの多孔内部にプラズマを導入し得る。その結果、バイオセラミックスの多孔内部を骨再生活性化した改質構造にし得る。
本発明に従った人工骨の改質方法によって改質された人工骨において、親水性が向上されていることを以下のようにして確認した。
まず、本発明のプラズマ処理によって、緻密質ハイドロキシアパタイト基材の親水性が向上することを次のようにして確認した。ハイドロキシアパタイト基材としては、ハイドロキシアパタイトを焼結させて緻密な板状に形成したものを用いた。ハイドロキシアパタイト基材の表面は平滑な平面であった。このハイドロキシアパタイト基材に、減圧下で酸素ガスを供給しながら、プラズマ処理工程を行った。プラズマ処理工程は、上述の図4と図5に示す人工骨改質装置を用いて行い、酸素ガスの流量は500cc/min、高周波の出力は500W、真空度は100Pa、プラズマの照射時間は5分間であった。
図6に示すように、緻密質のハイドロキシアパタイト基材をプラズマ処理することによって、水の接触角が低下し、親水性が向上したことがわかった。上述のプラズマ処理工程の前後において、ハイドロキシアパタイト基材の表面に水5μLを滴下して接触角測定器(マツボー社製PG−X)によって接触角を測定した。プラズマ処理工程の前に測定された接触角は73.3°であった。プラズマ処理されたハイドロキシアパタイト基材の接触角は13.5°であった。
次に、円柱状の人工骨にプラズマ照射する時間の長さと、改質層の内部侵行度合いとの関係を以下のようにして調べた。
直径6mm、長さ15mmの円柱状に形成された、多孔質ハイドロキシアパタイト型の人工骨(コバレントマテリアル製、ネオボーン)に、上述の図4と図5に示す人工骨改質装置を用いてプラズマ処理を行った。プラズマ処理において、酸素ガスの流量は500cc/min、高周波の出力は500W、真空度は100Paであった。プラズマの照射時間は、0分、5分、20分、30分、60分の各時間とした。プラズマ処理後の人工骨に水を接触させ、円形断面のCT画像を撮影し、全断面積に対する、水が浸入した部分の断面積の比を内孔親水率[%]として求めた。CT画像の撮影と内孔親水率の計算にはCT画像撮影装置を用いた。
図7と図8とに示すように、プラズマ照射時間が0分の人工骨(i)は、内孔親水率が20%より小さく、人工骨の表面は水で濡れるが、人工骨の内部にはほとんど水が入らなかった。プラズマ照射時間が5分の人工骨(ii)では内孔親水率が約40%になり、プラズマ照射時間が20分の人工骨(iii)では内孔親水率が60%近くなった。プラズマ照射時間が30分の人工骨(iv)とプラズマ照射時間が60分の人工骨(v)では、内孔親水率が約60%であった。このように、プラズマ照射時間の増加に伴って、人工骨のより内部まで改質され、内孔親水率が高まったことがわかった。
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変形を含むものである。
本発明の人工骨の改質方法とその方法によって改質された人工骨は、主に、外科、整形外科等の医療分野において、骨の欠損部及び空隙への欠損補填の実現に利用可能である。
100a,100b,101,102,103,104:改質された人工骨、110:未改質層、120:改質層、200:改質されていない人工骨。

Claims (7)

  1. 多孔質ハイドロキシアパタイト型の人工骨の表面及び内部を骨再生活性化するためにプラズマ処理するプラズマ処理工程を含み、
    前記プラズマ処理工程は、少なくとも酸素原子を含むガスを用いたプラズマによる処理工程であり、減圧下で行われる、人工骨の改質方法。
  2. 前記ガスは酸素ガスである、請求項1に記載の人工骨の改質方法。
  3. 前記プラズマ処理工程は、非重合性型のプラズマ反応で行われる、請求項1または請求項2に記載の人工骨の改質方法。
  4. 前記プラズマ処理工程は、10〜1000Paの減圧下で行われる、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の人工骨の改質方法。
  5. 前記プラズマは、高周波電源によるプラズマ源によってプラズマ化され、前記高周波電源の周波数は1〜100MHzである、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の人工骨の改質方法。
  6. 前記プラズマ処理工程は、等方性プラズマによって行われる、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の人工骨の改質方法。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の改質方法によって改質された人工骨。
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