JP2013214637A - 波面計測方法及び装置、並びに露光方法及び装置 - Google Patents

波面計測方法及び装置、並びに露光方法及び装置 Download PDF

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哲也 小池
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Abstract

【課題】回折格子を用いて得られる干渉縞に基づいて、被検光学系の波面情報を高精度に計測する。
【解決手段】計測用レチクル4及び投影光学系POを通過した光束を2次元の回折格子10に入射させ、回折格子10から発生する光束による干渉縞22に基づいて投影光学系POの波面情報を求める波面計測方法であって、回折格子10と計測用レチクル4とを、X方向及びY方向で位相に換算した間隔が180°異なる少なくとも2つの平行な経路に沿って相対移動させて、その相対移動量に対応させて干渉縞22の強度分布を複数回計測し、この計測結果から投影光学系POを通過した光束のシアリング波面を求める。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えばシアリング干渉で生成される干渉縞に基づいて被検光学系の波面情報を計測する波面計測技術、この波面計測技術を用いる露光技術、及びこの露光技術を用いるデバイス製造方法に関する。
半導体デバイス等を製造するためのリソグラフィー工程で使用される露光装置においては、解像度を高めるために露光光の短波長化が進み、最近では、露光光としてArF又はKrFエキシマレーザのような遠紫外域から真空紫外域にかけての波長のレーザ光を用いる露光装置が使用されている。さらに、波長が100nm程度以下の軟X線を含む極端紫外光(Extreme Ultraviolet Light:以下、EUV光という)を露光光として用いる露光装置(EUV露光装置)も開発されている。これらの露光装置においては、投影光学系の波面収差を高精度に計測する必要がある。
従来の波面収差の計測装置として、投影光学系の物体面に一つ若しくは複数のピンホール等を配置し、このピンホール等から発生する球面波等を投影光学系及び直交する方向に周期性を持つ2次元の回折格子に通し、この回折格子から発生する複数の回折光による横ずれした波面の干渉縞を撮像素子で受光するシアリング干渉方式の計測装置が知られている。このような計測装置における干渉縞の解析方法として、2次元の回折格子とピンホール等とを所定の経路に沿って2次元的に相対移動しながら干渉縞の複数の画像を検出し、得られた複数の画像から2つの方向のシアリング波面を求め、この2つのシアリング波面から元の波面を復元する位相シフト法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2011−108696号公報
従来の位相シフト法で2次元の回折格子を用いたときには、回折格子から元の波面の復元に必要な回折光以外の種々の方向及び次数の回折光が射出され、これら多数の回折光が重なって干渉縞が形成される。このため、干渉縞に例えば高次干渉光ノイズが混入し、復元される波面の精度が低下する恐れがあった。
本発明の態様は、このような事情に鑑み、回折格子を用いて得られる干渉縞に基づいて、被検光学系の波面情報を高精度に計測することを目的とする。
本発明の第1及び第2の態様によれば、計測用マスク及び被検光学系を通過した光束を互いに交差する第1方向及び第2方向に周期性を持つ回折格子に入射させ、その回折格子から発生する複数の光束による干渉縞に基づいてその被検光学系の波面情報を求める波面計測方法が提供される。そして、第1の態様の波面計測方法は、その回折格子とその計測用マスクとを、その第1方向及びその第2方向の少なくとも一方で位相に換算した間隔が互いに異なる少なくとも2つの平行な経路に沿って相対移動させながら、その回折格子とその計測用マスクとの相対移動量に対応させてその干渉縞の強度分布を複数回計測することと、その干渉縞の強度分布の複数回の計測結果からその被検光学系を通過した光束のその第1方向へのシアリング波面及びその第2方向へのシアリング波面を求めることと、を含むものである。
また、第2の態様の波面計測方法は、その回折格子とその計測用マスクとを、その第1方向及びその第2方向の位相に換算した相対移動量の幅がそれぞれ360°の計測範囲を含む領域内で、2次元的に相対移動させながら、その回折格子とその計測用マスクとの相対移動量に対応させてその干渉縞の強度分布を実質的に連続して計測することと、その干渉縞の強度分布の計測結果からその被検光学系を通過した光束のその第1方向へのシアリング波面及びその第2方向へのシアリング波面を求めることと、を含むものである。
また、第3の態様によれば、露光光でパターンを照明し、その露光光でそのパターン及び投影光学系を介して基板を露光する露光方法において、その投影光学系の波面収差を計測するために、第1の態様又は第2の態様の波面計測方法を用いる露光方法が提供される。
また、第4の態様及び第5の態様によれば、計測用マスク及び被検光学系を通過した光束を互いに交差する第1方向及び第2方向に周期性を持つ回折格子に入射させ、その回折格子から発生する複数の光束による干渉縞に基づいてその被検光学系の波面情報を求める波面計測装置が提供される。そして、第4の態様の波面計測装置は、その干渉縞の強度分布を検出する検出器と、その回折格子とその計測用マスクとをその第1方向及びその第2方向に相対移動する移動装置と、その回折格子とその計測用マスクとを、その移動装置を介してその第1方向及びその第2方向の少なくとも一方で位相に換算した間隔が互いに異なる少なくとも2つの平行な経路に沿って相対移動させながら、その検出器によってその回折格子とその計測用マスクとの相対移動量に対応させてその干渉縞の強度分布を複数回計測させる制御装置と、その干渉縞の強度分布の複数回の計測結果からその被検光学系を通過した光束のその第1方向へのシアリング波面及びその第2方向へのシアリング波面を求める演算装置と、を備えるものである。
また、第5の態様の波面計測装置は、その干渉縞の強度分布を検出する検出器と、その回折格子とその計測用マスクとをその第1方向及びその第2方向に相対移動する移動装置と、その移動装置を介して、その回折格子とその計測用マスクとを、その第1方向及びその第2方向の位相に換算した相対移動量の幅がそれぞれ360°の計測範囲を含む領域内で、2次元的に相対移動させながら、その検出器によってその回折格子とその計測用マスクとの相対移動量に対応させてその干渉縞の強度分布を実質的に連続して計測させる制御装置と、その干渉縞の強度分布の計測結果からその被検光学系を通過した光束のその第1方向へのシアリング波面及びその第2方向へのシアリング波面を求める演算装置と、を備えるものである。
また、第6の態様によれば、露光光でパターンを照明し、その露光光でそのパターン及び投影光学系を介して基板を露光する露光装置において、その投影光学系の波面収差を計測するために、第4の態様又は第5の態様の波面計測装置を備える露光装置が提供される。
また、第7の態様によれば、第3の態様の露光方法又は第6の態様の露光装置を用いて感光性基板を露光することと、その露光された感光性基板を処理することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
本発明の第1の態様又は第4の態様によれば、回折格子と計測用マスクとを、第1方向及び第2方向の少なくとも一方で位相に換算した間隔が180°異なる少なくとも2つの平行な経路に沿って相対移動させ、このときに複数回計測される干渉縞の強度分布を用いて、第1方向及び第2方向のシアリング波面を求めている。従って、高次干渉光等の影響を軽減させて、被検光学系の波面情報を高精度に計測できる。
また、本発明の第2の態様又は第5の態様によれば、回折格子と計測用マスクとを、第1方向及び第2方向の位相に換算した相対移動量の幅がそれぞれ360°の計測範囲を含む領域内で、2次元的に相対移動させ、このときに実質的に連続して計測される干渉縞の強度分布を用いて、第1方向及び第2方向のシアリング波面を求めている。従って、高次干渉光等の影響を軽減させて、被検光学系の波面情報を高精度に計測できる。
第1の実施形態に係る波面収差計測装置を備えた露光装置を示す図である。 (A)は図1中の投影光学系PO及び計測本体部8を示す図、(B)は図2(A)のピンホールアレー6の一部を示す拡大図、(C)は計測用レチクルの別のパターンの例の一部を示す拡大図、(D)は図2(A)の回折格子の一部を示す拡大図、(E)は図2(A)の干渉縞の一例を示す図である。 (A)は図2(A)の回折格子から発生する複数の回折光の一例を示す図、(B)は回折格子の移動方法の一例を示す図、(C)は回折格子の移動経路の第1の例を示す図、(D)は回折格子の移動経路の第2の例を示す図、(E)は位相が180°(π)異なる2つの計測点の組み合わせの例を示す図、(F)は影響が低減される次数の回折光のスペクトルを示す図である。 投影光学系POの波面収差の計測動作の一例を示すフローチャートである。 (A)は計測順序の第1の例を示す図、(B)は図5(A)の位相シフト量を示す図、(C)は計測順序の第2の例を示す図、(D)は図5(C)の位相シフト量を示す図である。 (A)は計測順序の第3の例を示す図、(B)は計測順序の第4の例を示す図、(C)は計測順序の第5の例を示す図である。 (A)は位相がπ(180°)異なる2つの計測点の例を示す図、(B)は位相が2π異なる2つの計測点の例を示す図、(C)は位相が2方向に2π異なる2つの計測点の例を示す図である。 (A)は第2の実施形態に係る波面計測方法における回折格子の移動経路の第1の例を示す図、(B)は回折格子の移動経路の第2の例を示す図である。 (A)は第3の実施形態に係る波面計測方法における回折格子の移動経路の第1の例を示す図、(B)は回折格子の移動経路の第2の例を示す図である。 (A)は計測本体部の第1変形例を示す図、(B)は計測本体部の第2変形例を示す図である。 (A)は第4の実施形態に係る投影光学系PO及び計測本体部8Aを示す図、(B)は図11(A)のピンホールアレー6Aの一部を示す拡大図、(C)は計測用レチクルの別のパターンの例の一部を示す拡大図、(D)は図11(A)の回折格子の一部を示す拡大図、(E)は図11(A)中の干渉縞の一例を示す図である。 電子デバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態につき図1〜図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る露光装置EXの全体構成を概略的に示す。露光装置EXは、一例としてスキャニングステッパー(スキャナー)よりなる走査露光型の投影露光装置である。図1において、露光装置EXは投影光学系PO(投影ユニットPU)を備えており、以下においては、投影光学系POの光軸AXと平行にZ軸を取り、これに直交する面(ほぼ水平面に平行な面)内でレチクルとウエハとが相対走査される方向(走査方向)に沿ってY軸を、Z軸及びY軸に直交する方向(非走査方向)に沿ってX軸を取り、X軸、Y軸、及びZ軸の回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθstx 、θsty 、及びθstz 方向として説明を行う。
露光装置EXは、照明系ILS、照明系ILSからの露光用の照明光(露光光)ELにより照明されるレチクルR(マスク)を保持するレチクルステージRST、レチクルRから射出された照明光ELをウエハW(基板)に投射する投影光学系POを含む投影ユニットPU、ウエハWを保持するウエハステージWST、装置全体の動作を制御するコンピュータよりなる主制御系16、及び投影光学系POの波面収差情報を計測する波面計測装置80を備えている。
照明系ILSは、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源と、照明光学系とを含み、照明光学系は、回折光学素子又は空間光変調器等を含み通常照明、複数極照明、又は輪帯照明等のための光量分布を形成する光量分布形成光学系、オプティカルインテグレータを含む照度均一化光学系、視野絞り(固定レチクルブラインド及び可動レチクルブラインド)、並びにコンデンサ光学系(いずれも不図示)等を有する。照明系ILSは、視野絞りで規定されたレチクルRのパターン面(下面)のX方向に細長いスリット状の照明領域IARを照明光ELによりほぼ均一な照度で照明する。
照明光ELとしては、一例としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。なお、照明光としては、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)、YAGレーザ若しくは固体レーザ(半導体レーザなど)の高調波、又は水銀ランプの輝線(i線等)なども使用できる。
レチクルRはレチクルステージRSTの上面に真空吸着等により保持され、レチクルRのパターン面には、回路パターン及びアライメントマークが形成されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むステージ駆動系(不図示)によって、XY平面内で微少駆動可能であると共に、走査方向(Y方向)に指定された走査速度で駆動可能となっている。
レチクルステージRSTの移動面内の位置情報(X方向、Y方向の位置、及びθstz 方向の回転角を含む)は、レーザ干渉計よりなるレチクル干渉計72によって、移動鏡74(又は鏡面加工されたステージ端面)を介して例えば0.5〜0.1nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計72の計測値は、主制御系16に送られる。主制御系16は、その計測値に基づいて上記のステージ駆動系を制御することで、レチクルステージRSTの位置及び速度を制御する。
図1において、レチクルステージRSTの下方に配置された投影ユニットPUは、鏡筒60と、鏡筒60内に所定の位置関係で保持された複数の光学素子を有する投影光学系POとを含む。投影光学系POは、例えば両側テレセントリックで所定の投影倍率β(例えば1/4倍、1/5倍などの縮小倍率)を有する。照明系ILSからの照明光ELによってレチクルRの照明領域IARが照明されると、レチクルRを通過した照明光ELにより、投影ユニットPU(投影光学系PO)を介して照明領域IAR内のレチクルRのパターンの像が、ウエハWの一つのショット領域上の露光領域IA(照明領域IARと共役な領域)に形成される。ウエハWは、例えばシリコン等からなる直径が200mmから450mm程度の円板状の基材の表面に、フォトレジスト(感光剤)を所定の厚さ(例えば数10〜200nm程度)で塗布した基板を含む。
また、本実施形態では、投影光学系POの結像特性を補正するために、例えば米国特許出願公開第2006/244940号明細書に開示されているように、投影光学系PO中の所定の複数の光学素子の光軸方向の位置、及び光軸に垂直な平面内の直交する2つの軸の回りの傾斜角を制御する結像特性補正装置2が設けられている。結像特性の補正量に応じて結像特性補正装置2を駆動することで、投影光学系POの結像特性が所望の状態に維持される。
また、露光装置EXは、液浸法を適用した露光を行うため、投影光学系POを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子である先端レンズ66を保持する鏡筒60の下端部の周囲を取り囲むように、局所液浸装置の一部を構成するノズルユニット62が設けられている。ノズルユニット62は、露光用の液体Lq(例えば純水)を供給可能な供給口と、液体Lqを回収可能な多孔部材(メッシュ)が配置された回収口とを有する。ノズルユニット62の供給口は、供給流路及び供給管64Aを介して、液体Lqを送出可能な液体供給装置(不図示)に接続されている。
液浸法によるウエハWの露光時に、その液体供給装置から送出された液体Lqは、図1の供給管64A及びノズルユニット62の供給流路を流れた後、その供給口より照明光ELの光路空間を含むウエハW上の液浸領域に供給される。また、液浸領域からノズルユニット62の回収口を介して回収された液体Lqは、回収流路及び回収管64Bを介して液体回収装置(不図示)に回収される。なお、液浸タイプの露光装置としない場合には、上記の局所液浸装置は設けなくともよい。
また、ウエハステージWSTは、不図示の複数のエアパッドを介して、ベース盤WBのXY面に平行な上面に非接触で支持されている。また、ウエハステージWSTは、例えば平面モータ、又は直交する2組のリニアモータを含むステージ駆動系17によってX方向及びY方向に駆動可能である。露光装置EXは、ウエハステージWSTの位置情報を計測するためにレーザ干渉計よりなるウエハ干渉計76及び/又はエンコーダシステム(不図示)を含む位置計測システムを備えている。
ウエハステージWSTの移動面内の位置情報(X方向、Y方向の位置、及びθstz 方向の回転角を含む)は、その位置計測システムによって例えば0.5〜0.1nm程度の分解能で常時検出され、その計測値は主制御系16に送られる。主制御系16は、その計測値に基づいてステージ駆動系17を制御することで、ウエハステージWSTの位置及び速度を制御する。
ウエハステージWSTは、X方向、Y方向に駆動されるステージ本体70と、ステージ本体70上に搭載されたウエハテーブルWTBと、ステージ本体70内に設けられて、ステージ本体70に対するウエハテーブルWTB(ウエハW)のZ方向の位置、及びθstx 方向、θsty 方向のチルト角を相対的に微小駆動するZ・レベリング機構とを備えている。ウエハテーブルWTBの中央の上部には、ウエハWを真空吸着等によってほぼXY平面に平行な吸着面上に保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。
ウエハテーブルWTBの上面には、ウエハホルダ上に載置されるウエハの表面とほぼ同一面となる、液体Lqに対して撥液化処理された表面(又は保護部材)を有し、かつ外形(輪郭)が矩形でその中央部にウエハホルダ(ウエハの載置領域)よりも一回り大きい円形の開口が形成された高平面度の平板状のプレート体68が設けられている。
また、ウエハステージWSTの上部に、上面がプレート対68の表面とほぼ同じ高さになるように、投影光学系POの波面収差を計測するための計測本体部8(詳細後述)が装着されている。そして、投影光学系POの波面収差計測時には、一例としてレチクルステージRSTにレチクルRの代わりに、計測用レチクル4がロードされる。波面計測装置80は、照明系ILS、計測用レチクル4、計測本体部8、計測本体部8の撮像素子14(図2(A)参照)から出力される撮像信号を処理して投影光学系POの波面収差情報を求める演算装置12、及び計測本体部8の動作を制御する主制御系16を有する。演算装置12は求めた波面収差情報を主制御系16に供給する。主制御系16は、必要に応じてその計測された波面収差を補正するように、結像特性補正装置2を介して投影光学系POの結像特性を補正する。
さらに、露光装置EXは、レチクルR及びウエハWのアライメントを行うためのアライメント系、及びウエハWの表面のZ位置(フォーカス位置)の分布を計測するオートフォーカスセンサを有する。オートフォーカスセンサの計測値に基づいて、ウエハステージWSTのZ・レベリング機構を駆動することで、露光中にウエハWの表面を投影光学系POの像面に合焦される。
ウエハWの露光時に、基本的な動作として、ウエハWのアライメントが行われた後、ウエハステージWSTのX方向、Y方向への移動(ステップ移動)によって、ウエハWの露光対象のショット領域が投影光学系POの露光領域の手前に移動する。そして、主制御系12の制御のもとで、レチクルRのパターンの一部の投影光学系POによる像でウエハWの当該ショット領域を露光しつつ、レチクルステージRST及びウエハステージWSTを同期して駆動することによって、投影光学系POに対してレチクルR及びウエハWを例えば投影倍率を速度比としてY方向に走査することによって、当該ショット領域の全面にレチクルRの転写用パターンの像が走査露光される。このようにステップ移動と走査露光とを繰り返すことによって、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハWの複数のショット領域に対して順次レチクルRのパターンの像が露光される。
このような露光に際しては、投影光学系POの波面収差が所定の許容範囲内に収まっている必要がある。そのためには、まず波面計測装置80を用いて投影光学系POの波面収差を高精度に計測する必要がある。
以下、本実施形態の露光装置EXが備える波面計測装置80の構成、及び投影光学系POの波面収差の計測方法につき説明する。投影光学系POの波面収差計測時には、レチクルステージRSTに計測用レチクル4がロードされる。計測用レチクル4のパターン面には、一例として複数の規則的に配列されたピンホールアレー6が形成されている。そして、投影光学系PLの露光領域に計測本体部8の上部が移動し、照明系ILSから射出された照明光ELがピンホールアレー6及び投影光学系POを介して計測本体部8に入射する。また、露光装置EXが液浸型であるときには、投影光学系POの波面収差計測時にも投影光学系POと計測本体部8との間に液体Lqを供給してもよい。ただし、液体Lqを供給することなく、投影光学系POの波面収差を計測してもよい。
図2(A)は、投影光学系POの波面収差の計測時の計測用レチクル4、投影光学系PO、及び計測本体部8の配列の一例を示す。図2(A)において、計測本体部8は、XY平面にほぼ平行に配置されて、2次元の格子パターンが形成された回折格子10と、回折格子10からの複数の回折光によるシアリング干渉の干渉縞を検出するCCD型又はCMOS型等の2次元の撮像素子14と、回折格子10及び撮像素子14を保持する保持部材(不図示)と、この保持部材に対して回折格子10をX方向及びY方向に微小量(回折格子10の1周期〜2周期程度の距離)駆動するピエゾ素子等の2軸の駆動素子9と、を備えている。駆動素子9の駆動量は図1の主制御系16により制御され、撮像素子14の検出信号は演算装置12に供給される。なお、駆動素子9を備えることなく、ウエハステージWSTによって回折格子10を計測用レチクル4に対して移動するようにしてもよい。
図2(A)の光学系は、シアリング干渉を行うタルボ(Talbot)干渉計である。図2(A)において、投影光学系POの物体面に計測用レチクル4のピンホールアレー6が設置され、ピンホールアレー6が照明光ELで照明される。ピンホールアレー6は、計測用レチクル4の平板状のガラス基板のパターン面(下面)の金属膜よりなる遮光膜6b中に周期的に形成された複数のピンホール6Sよりなる。
図2(B)に示すように、ピンホールアレー6は、複数のピンホール6SをX方向、Y方向に周期(ピッチ)Ps/βで配列したものである。ここで、βは投影光学系POの投影倍率であり、ピンホールアレー6の投影光学系POによる像(複数のピンホールの像6SP)のX方向、Y方向の周期はPsである。なお、ピンホールアレー6のX方向、Y方向の周期は異なっていてもよい。個々のピンホール6Sの直径は、一例として回折限界以下程度である。照明光ELの波長λ、投影光学系POの物体側の開口数NAinを用いると、回折限界はλ/(2NAin)である。
ピンホール6Sの直径≦λ/(2NAin) …(A1)
ここで、波長λを193nm、開口数NAinをほぼ0.25とすると、回折限界はほぼ400nmとなるため、ピンホール6Sの直径は例えば400nm程度又はこれより小さい。実際には、一つのピンホール6Sを用いるのみでも投影光学系POの波面収差を計測することができる。ただし、このような多数のピンホール6Sが周期的に形成されたピンホールアレー6を使用することで、撮像素子14上での干渉縞の光量が大きくなるため、高いSN比でシアリング干渉方式の波面計測を行うことができる。
また、ピンホールアレー6の周期Ps/βは、例えば照明光ELの空間的コヒーレンス長以上である。照明光学系の射出側の開口数NAIL及び波長λを用いて、その空間的コヒーレンス長は、一例として高々、λ/NAILである。従って、周期Ps/βは次の条件を満たせばよい。
Ps/β≧λ/NAIL≒λ/NAin …(A2)
この場合、波長λを193nm、開口数NAinを0.25とすると、空間的コヒーレンス長はほぼ800nmとなるため、周期Ps/βは例えば800nm程度より大きければよい。ただし、後述のようにピンホールアレー6の像の周期Psは、さらに所定の条件を満たす必要があるとともに、周期Psは例えば1μm程度以上となる。この場合、投影倍率βを1/4とすると、ピンホールアレー6の周期Ps/βはほぼ4μm程度以上となり、式(A2)の条件は十分に満たされる。
なお、ピンホールアレー6の代わりに、図2(C)に示すように、例えば遮光膜中にX方向、Y方向に周期Ps/βで形成された複数の幅がほぼPs/(2β)の正方形の開口パターン6aよりなるパターンを使用することも可能である。この場合にも、開口パターン6aを矩形としてそのX方向、Y方向の周期が異なっていてもよい。
また、図2(A)において、ピンホールアレー6の投影光学系POによる像が像面18上に形成され、この像面18から−Z方向に距離Lgの位置に回折格子10が配置され、この下方で像面18から距離Lcの位置に撮像素子14の受光面が配置される。回折格子10は、平板状のガラス基板の一面の金属膜等の遮光膜10b中にX方向、Y方向に周期的に開口パターン10aを形成したものである。
図2(D)に示すように、回折格子10の遮光膜10b中に照明光ELを通す多数のほぼ正方形の開口パターン10aがX方向、Y方向に周期Pgで形成されている。ピンホールアレー6を通過した照明光ELが投影光学系POを介して回折格子10に入射し、回折格子10から発生する0次光(0次回折光)20、+1次回折光20A、及び−1次回折光20B等によって撮像素子14の受光面に、図2(E)に示すようなシアリング干渉の干渉縞(フーリエ像)22が形成される。回折格子10に関しても、X方向、Y方向の周期が異なっていてもよい。
回折格子10の周期Pgは、回折光の所望の横ずれ量(シア量)に応じて設定されるが、例えば数100nm〜数μm程度で、例えば1μm〜数μm程度に設定される。
この場合、撮像素子14の受光面に干渉縞22が形成されるためには、回折格子10の開口パターン10aの形成面の像面18からの距離Lg、及び撮像素子14の受光面の像面18からの距離Lcは、露光波長λ、回折格子10の周期Pg、及びタルボ次数nを用いて、次の条件(タルボ条件)を満たす必要がある。なお、タルボ条件(Talbot条件)の詳細は、「応用光学1(鶴田)」(p.178-181,培風館,1990年)に記載されている。
(1/Lg)+{1/(Lc−Lg)}=λ/(2nPg2) …(A3)
なお、n=0,0.5,1,1.5,2,…である。即ち、タルボ次数nは整数又は半整数である。
本実施形態では、Lc≫Lgが成立するため、式(A3)の代わりに次の近似式を使用することができる。
Lg=2n×Pg2/λ …(A4)
さらに、撮像素子14上に干渉縞が高いコントラストで形成されるためには、ピンホールアレー6の像の周期Psは、周期Pg、距離Lg、距離Lc、及び所定の整数m(例えば2又は4)を用いて次の条件を満たす必要がある。この条件については、例えば特開2011−108696号公報に開示されている。
Ps={Pg/(1−Lg/Lc)}m …(A5)
この条件は、図2(A)において、撮像素子14上の干渉縞22上の或る点22aに、ピンホールアレー6の一つのピンホールの像6SPからの光束E1が到達する場合に、他のピンホールの像6SPからの光束E2も達する条件である。言い換えると、この条件によって、高いコントラストの干渉縞22が形成される。
なお、Lg/Lcは1よりもかなり小さい値であるため、式(A5)の代わりに次の近似式を使用してもよい。
Ps=Pg×m …(A6)
この式において周期Pgを1μm、mを2とすると、ピンホールアレー6の像の周期Psは2μmとなる。この場合、投影倍率βを1/4として、ピンホールアレー6の周期は8μmとなる。
式(A4)及び式(A6)の条件のもとで、撮像素子14の受光面に形成される干渉縞22の強度分布の情報を図1の演算装置12に取り込み、その強度分布に後述の演算を施すことで、投影光学系POの波面とこれをX方向にずらした波面とのシアリング波面(以下、X方向のシア波面という)ΔWx(又はφx)、及び投影光学系POの波面とこれをY方向にずらした波面とのシアリング波面(Y方向のシア波面)ΔWy(又はφy)を求めることができる。さらに、演算装置12は、これらのシア波面ΔWx,ΔWy(φx,φy)から投影光学系POの波面、ひいてはその波面収差を求め、この波面収差の情報を主制御系16に供給する。
なお、図10(A)の計測本体部の第1変形例で示すように、回折格子10は、投影光学系POの像面18の上方に距離Lgの位置に配置することも可能である。この場合には、距離Lgを負の値として扱えばよい。
また、本実施形態のように照明光ELとしてArFエキシマレーザ光(波長193nm)のような紫外光が使用される場合には、図10(B)の第2変形例で示すように、回折格子10を投影光学系POの像面18に配置することも可能である。この場合には、上記のタルボ条件は満たす必要がない。
また、図2(A)の回折格子10から発生する複数の回折光のスペクトルは図3(A)に示すようになる。図3(A)において、回折格子10から発生する0次光L0、X方向の±1次回折光LX1,LX(-1)、±2次回折光LX2,LX(-2)等、Y方向の±1次回折光LY1,LY(-1)、±2次回折光LY2,LY(-2)等、及びX方向、Y方向の両方に±1次の回折光L(1,1),L(-1,1),L(1,-1),L(-1,-1)が表示されている。これらの回折光のうちで、シア波面ΔWx,ΔWyを求めるために有効な回折光は、0次光L0、±1次回折光LX(1),LX(-1)、及び±1次回折光LY(1),LY(-1)のみであるため、本実施形態では、以下のようにして不要な回折光同士の干渉縞(高次干渉光ノイズ)を除去して、実質的に必要な回折光の干渉縞のみを抽出する。
本実施形態では位相シフト法で干渉縞22を解析するため、一例として計測用レチクル4(ピンホールアレー6)を静止させた状態で、駆動素子9によって回折格子10をX方向及び/又はY方向に移動し、回折格子10の移動量(ピンホールアレー6に対する相対移動量)が所定量になるときに撮像素子14で干渉縞22の光量分布(強度分布)を計測するという動作をK回(ここでは、Kは2以上の整数)繰り返す。そして、k回目(k=1〜K)の計測時の回折格子10のX方向、Y方向への移動量を、図3(B)に示すようにΔXk,ΔYkとして、撮像素子14の各画素で計測される干渉縞22の光量(干渉縞強度)をIkとする。各画素に関して、全部でK回計測される干渉縞強度Ikに後述の演算を施すことによって個々の画素の位置における投影光学系POのシア波面φx,φyを求める。また、そのX方向及びY方向の移動量を、回折格子10の周期Pgを2π(rad)又は360°とした位相シフト量δx,δyに換算すると次のようになる。なお、以下では単位のない位相は(rad)である。
δx=2π×ΔXk/Pg …(A7),δy=2π×ΔYk/Pg …(A8)
本実施形態では、k回目の計測時の回折格子10のX方向及びY方向の位相シフト量(δx,δy)は、図3(C)の原点(0,0)を通過して位相シフト量(δx,δy)の変化量が同じ第1の経路31A(ここでは、X方向に反時計回りに45°で交差する方向32Bに平行な経路)、第1の経路31Aを+X方向に位相π(180°)だけ平行にずらした第2の経路31B(方向32Cに平行な経路)、及び第1の経路31Aを+Y方向に位相π(180°)だけ平行にずらした第3の経路31C(方向32Aに平行な経路)のいずれかの位置の計測点MPにある。一例として、位相シフト量(δx,δy)は原点(0,0)を中心として±πの範囲内で変化するものとしている。なお、位相シフト量(δx,δy)は原点以外の任意の位置を中心として±πの範囲内で変化するものとしてもよい。経路31A〜31Cは、例えば回折格子10の中心点の移動経路とみなすことも可能である。さらに、本実施形態では、3つの経路31A〜31Cにおいて隣接する2つの計測点MPのX方向、Y方向の位相シフト量の差は、それぞれ4以上の整数nを用いて(2π/n,2π/n)である。
なお、回折格子10のX方向又はY方向の位相シフト量が2π異なる計測点では、計測誤差がないときには干渉縞の光量分布は同じである。このため、図3(C)の3つの経路31A〜31Cの代わりに、図3(D)に示すように、第1の経路31A及び第1の経路31Aを+X方向(又は+Y方向でもよい)に位相π(180°)だけ平行にずらした第2の経路31Dに沿って位相シフト量(δx,δy)を変化させてもよい。
そのような経路31A〜31C(又は31A,31D)を用いることによって、所定の高次干渉光ノイズを除去できることについて説明する。ここで、k回目の位相シフト量が(δx,δy)である計測時に得られる高次干渉光ノイズを含む干渉縞強度をIとして、この干渉縞強度I及びその計測時に対してY方向の位相シフト量を±πだけ変化させた計測時に得られる干渉縞強度I±πを次のように表す。
Figure 2013214637
ここで、nx,ny,mx,myは回折光の次数を表す整数、φmx,my;nx,nyは、X方向mx次でY方向my次の回折光と、X方向nx次でY方向ny次の回折光との位相差、Amx,my;nx,nyは、X方向mx次でY方向my次の回折光と、X方向nx次でY方向ny次の回折光との干渉縞の強度の振幅であり、AO,Oはバイアスである。
Y方向の回折光の次数差(Y方向次数差)(my−ny)が奇数の場合、式(2)は次の式(3)になり、その次数差(my−ny)が偶数の場合、式(2)は次の式(4)になる。
Figure 2013214637
これらの式のうち式(3)はバイアス以外の項が式(1)と符号が逆になっており、式(4)は式(1)と等しい。これは、Y方向の位相シフト量がδy及びδy±πの計測時に得られる干渉縞強度の和を取れば、Y方向次数差が奇数である高次干渉光は除去できることを意味する。これをX方向のシア波面(Xシア波面)を求めるための演算において適用すれば、Y方向次数差が奇数の高次干渉光ノイズを全て除去できることになる。Y方向のシア波面(Yシア波面)についても、同様にX方向の位相シフト量がδx及びδx±πの干渉縞強度の和を取れば、X方向の回折光の次数差(X方向次数差)が奇数である高次干渉光ノイズを全て除去できる。
以上より、各計測時の位相シフト量(計測点)を決める際、図3(E)に示すように、X方向の位相シフト量がδx及びδx±πの計測点MPa,MPb及びMPc,MPdという計測点の対33YA,33YBを作り、Y方向の位相シフト量がδy及びδy±πの計測点MPa,MPc及びMPb,MPdという計測点の対33XA,33XBを作るようにアルゴリズムを決定し、計測点の対33YA,33YBで得られる干渉縞強度の和を取り、計測点の対33XA,33XBで得られる干渉縞強度の和を取ることにより、各々シア方向に直交する方向の回折光次数差が奇数の高次干渉光ノイズが全て除去される。
これに関して、図3(C)の経路31A上の間隔が(2π/n,2π/n)の全部の計測点MPは、それぞれ経路31B又は31C上にY方向又はX方向の位相シフト量の差がπとなる計測点MPが存在する。逆に、経路31B,31C上の間隔が(2π/n,2π/n)の全部の計測点MPも、それぞれ経路31A上にY方向又はX方向の位相シフト量の差がπとなる計測点MPが存在する。従って、3つの経路31A〜31Cに沿って間隔(2π/n,2π/n)の計測点MPを設定し、X方向又はY方向の位相差がπの計測点で得られる干渉縞強度の和を取ることによって、シア方向に直交する方向の回折光次数差が奇数の高次干渉光ノイズが全て除去されるため、投影光学系POの波面収差を高精度に計測できる。
次に、Xシア波面についてシア方向に平行な干渉光のみ考える。my=nyの場合、式(1)は、次の式(5)になる。式(5)を展開すると式(6)になる。
Figure 2013214637
残したい干渉光は0次と±1次の干渉光であり、それ以外の高次干渉光は調和高次光とみなすことができる。式(6)の干渉縞強度を下記のi番目の計測時に得られる干渉縞強度Ii(x,y,αi)で置き直し、1次元で考える。なお、この式に関しては、参考文献「Phase shifting for nonsinusoidal waveforms with phase-shift errors: Hibino et al., J. Opt. Soc. Am. A,Vol. 12, No. 4/April (1995)」がある。
Figure 2013214637
ここで、s0(x, y)はバイアス、s(x, y) cos[αil(x, y)]は残したい成分、それ以降の項は除去したい高次調和光成分である。φl(x, y)は計測したいシア波面の位相であり、αiは位相シフト間隔で、式(8)で表される。Kは計測回数(干渉縞強度の計測枚数)である。このとき、Xシア波面又はYシア波面の位相φは、K回の干渉縞強度Iiを用いて次のように計算できる。なお、係数(サンプリング振幅)ai及びbiは式(10)を満たす必要がある。
Figure 2013214637
式(7)を式(9)に代入して回折光次数のm次毎に式(10)の条件を纏めると以下の式(11)になる。
なお、δk,lはクロネッカのデルタで、k=lのとき1、それ以外は0になる。回折光次数のj次まで式(11)を成立させたい場合、m=n−pとおくと、式(12)が得られる。なお、nは、図3(C)又は図3(D)に示すように、位相が±π(範囲で2π)の間におけるX方向及びY方向の計測点(サンプリング点)の分割数である。
Figure 2013214637
式(12) を使って調和高次光を除去する条件を考えると、図3(F)の回折光の次数p毎のパワースペクトルPSで示すように、p次回折光を除去するときには(n−p)次回折光も除去される。しかしながら、1次回折光はシア波面を求めるために必要であるため、(n−1)次回折光も除去できないことになる。
すなわち、j 次まで除去したいなら、位相が2πの間での計測点の分割数n(計測点間の位相シフト差が2π/n)は、次の条件を満たす必要がある。
j≦n−2, すなわち n≧j+2 …(A9)
言い換えると、シア波面を位相シフト法で求めるための計測点MPの配置(位相シフトアルゴリズム)を作成する際、除去したい最大の高次回折光成分の次数をjとすれば、位相が2πの間での計測点の分割数nを(j+2)として、位相シフト間隔を2π/(j+2)とすればよい。これはXシア波面、Yシア波面のそれぞれに適用できる。例えば2次の高次光まで除去したい場合、nは4になるため、位相シフト間隔はπ/2(=2π/4)とすればよい。
また、図3(C)の経路31A〜31C(経路31A,31Dも同様)は、X方向(Y方向)に45°で交差しているため、経路31A上にある計測点MPは、Y方向及びX方向に位相がπ離れた計測点MPが存在する。従って、経路31A〜31Cに沿った計測点MPを用いることによって、全体として少ない数の計測点MPを用いて除去可能な高次回折光成分の次数jを大きくできる。
また、シア方向に直交する方向の次数差が奇数である高次光を除去するには、位相2πの分割数nは偶数である必要がある。このとき、経路31A,31B,31Cに沿った計測点MPの数はそれぞれ(n+1)、(n/2+1)、(n/2+1)であるため、計測点MPの個数(干渉縞22の計測回数)Kは、次のように(2n+3)となる。
K=(n+1)+(n/2+1)+(n/2+1)=2n+3 …(13)
ただし、経路31Aの両端の計測点MPは実質的に等価(形成される干渉縞の光量分布が同じ)であり、経路31Cの両端の計測点MPは経路31Bの両端の計測点MPと実質的に等価であるため、実際の計測回数Kは、少なくとも2nであればよい。
また、経路31A〜31Cに沿ったk番目の計測点MPに関して撮像素子14の各画素で計測される干渉縞強度をIkとして、同じ強度を示す1周期(2π)ずれて計測された2つの干渉縞が3組あることを考慮して導入した重みwkを用いると、演算装置12は、Xシア波面φx及びYシア波面φxを次のように計算できる。
Figure 2013214637
ここで、ik,jkは整数で、(ik2π/n,jk2π/n)はk番目の計測時のX方向、Y方向の位相シフト量(δx,δy)である。また、重みwkは上記の3組で計6つの干渉縞に関しては1/2で、それ以外は1 となる。
また、計測される干渉縞のX方向、Y方向のコントラストCx,Cyは次のように計算できる。これらのコントラストからXシア波面及びYシア波面の質を評価できる。
Figure 2013214637
具体的に、図5(A)に示すように、n(分割数)=4(j=2)の場合、計測点の数(計測回数)Kは11であり、k回目(k=1〜11)の計測時の回折格子10の位相シフト量(δx,δy)及び重みwkは図5(B)のようになる。また、計測順序は、経路31Cの計測点MP1から順次計測点MP2〜MP11となる。
この場合、Xシア波面については、Y方向の次数差が奇数である高次干渉光と、Y方向の次数が等しい干渉光のうち、X方向の次数差が2次の干渉光が除去できる。Yシア波面については、X方向の次数差が奇数である高次干渉光と、X方向の次数が等しい干渉光のうち、Y方向の次数差が2次の干渉光が除去できる。
また、式(14A)、(14B)のシア波面φx,φyは以下のNxからDyを用いて式(19)になる。なお、以下の式(17A)〜(17D)をまとめて式(17)とも呼ぶ。コントラストCx,Cyは、式(17)、(18)を用いて式(20)になる。
Nx=I2+I5−I7−I10 …(17A)
Dx=(1/2)(I1−I3−I4+2I6−I8−I9+I11) …(17B)
Ny=−I2+I5−I7+I10 …(17C)
Dy=(1/2)(−I1+I3−I4+2I6−I8+I9−I11) …(17D)
B={I2+I5−I7−I10+(1/2)(I1−I3−I4+2I6−I8−I9+I11)}/2 …(18)
φx=tan-1(Nx/Dx),φy=tan-1(Ny/Dy) …(19)
x=(Nx2+Dx21/2/B,Cy=(Ny2+Dy21/2/B …(20)
また、図5(C)に示すように、n(分割数)=6(j=4)の場合、計測点の数Kは15であり、k回目(k=1〜15)の計測時の回折格子10の位相シフト量(δx,δy)及び重みwkは図5(D)のようになる。また、計測順序は、経路31Cの計測点MP1から順次計測点MP2〜MP15となる。
この場合、Xシア波面については、Y方向の次数差が奇数である高次干渉光と、Y方向の次数が等しい干渉光のうち、X方向の次数差が4次の干渉光が除去できる。Yシア波面については、X方向の次数差が奇数である高次干渉光と、X方向の次数が等しい干渉光のうち、Y方向の次数差が4次の干渉光が除去できる。シア波面φx,φy及びコントラストCx,Cyは式(14A)〜(16B)で計算できる。
また、n(分割数)=8(j=6)の場合、計測点の数Kは19であり、Xシア波面については、Y方向の次数差が奇数である高次干渉光と、Y方向の次数が等しい干渉光のうち、X方向の次数差が6次の干渉光が除去できる。Yシア波面については、X方向の次数差が奇数である高次干渉光と、X方向の次数が等しい干渉光のうち、Y方向の次数差が6次の干渉光が除去できる。シア波面φx,φy及びコントラストCx,Cyは式(14A)〜(16B)で計算できる。以下、どのようなn(分割数)に関しても同様に計測点MPの配置を設定でき、シア波面及びコントラストを計算できる。
以下、本実施形態の露光装置EXにおいて、波面計測装置80を用いて投影光学系POの波面収差を計測する動作の一例につき図4のフローチャートを参照して説明する。この計測動作は主制御系16によって制御される。
先ず、ステップ102において、図1のレチクルステージRSTに計測用レチクル4をロードし、計測用レチクル4のピンホールアレー6を照明装置ILSの照明領域に移動する。次のステップ104おいて、ウエハステージWSTを駆動し、図2(A)に示すように、計測本体部8の回折格子10の中心をピンホールアレー6の像の中心に移動する。
次のステップ106において、主制御系16は、制御用のパラメータkの値を1にセットし(初期化し)、駆動素子9を用いて回折格子10の位相シフト量を1回目の計測点(図5(A)の場合には計測点MP1)の値に設定する。次のステップ108において、照明装置ILSからピンホールアレー6に照明光ELを照射し、回折格子10から発生する0次光を含む複数の回折光によるk回目(ここでは1回目)のシアリング干渉の干渉縞22の強度分布Ikを撮像素子14で検出する。検出結果は演算装置12内の記憶装置に記憶される(ステップ110)。
次のステップ112において、主制御系16は、パラメータkが予め定められた計測回数を示すKに達したか否かを判断する。この段階では、パラメータkはKより小さいため、動作はステップ114に移行して、主制御系16はパラメータkの値に1を加算する。
次のステップ116において、主制御系16は、駆動素子9を介して計測本体部8の回折格子10をX方向にΔXk及びY方向にΔYkだけ移動して、位相シフト量をk回目の計測点MPでの値に合わせる。この後、ステップ108に戻り、回折格子10から発生する回折光によるk番目のシアリング干渉の干渉縞22の強度分布Ikの検出、及びこの光強度分布の記憶(ステップ110)を繰り返す。このステップ108及び110は、K回、例えば図5(A)の場合には計測点MP1〜MP11に関して繰り返される。
その後、ステップ112において、パラメータkがKに達しているときには、動作はステップ118に移行する。そして、演算装置12は、内部の記憶装置からK個の干渉縞の強度分布Ik(k=1〜K)の情報を読み出し、上記の計測毎の回折格子10の移動量ΔXk,ΔYkの組み合わせ(移動経路)に応じて予め求められているk番目の位相シフト量及び重みwkと強度分布Ikとを用いて、式(14A)、(14B)よりX方向のシア波面φx及びY方向のシア波面φyを計算する。このシア波面は、撮像素子14の各画素の検出信号(光強度)毎に計算される位相分布である。
次のステップ120において、演算装置12は、X方向及びY方向のシア波面より投影光学系POを通過する照明光の波面を求め、さらにこの波面から波面収差を求める。ここで求められた波面収差の情報は主制御系16に供給される。
次のステップ122において、主制御系16は、必要に応じて、結像特性補正装置2を用いて投影光学系POの波面収差を補正する。この後、ステップ124においてレチクルステージRSTに実際の露光用のレチクルRをロードし、ステップ126においてウエハステージWSTに順次載置されるウエハの複数のショット領域にレチクルRのパターン像を走査露光する。
この際に、波面計測装置80によって投影光学系POの波面収差を高精度に計測できるため、常に投影光学系POの結像特性を所望の状態に維持して高精度に露光を行うことができる。
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態の波面計測装置80は、計測用レチクル4及び投影光学系POを通過した光束をX方向及びY方向に周期性を持つ2次元の回折格子10に入射させ、回折格子10から発生する複数の光束による干渉縞22に基づいて投影光学系POの波面情報を求める。そして、波面計測装置80は、干渉縞22の強度分布を検出する撮像素子14と、回折格子10と計測用レチクル4とをX方向及びY方向に相対移動する駆動素子9(移動装置)と、回折格子10と計測用レチクル4とを、駆動素子9を介してX方向及びY方向の少なくとも一方で位相に換算した間隔がπ(180°)異なる少なくとも2つの平行な経路31A〜31C(又は31A,31D)に沿って相対移動させながら、駆動素子9によって回折格子10と計測用レチクル4との相対移動量に対応させて干渉縞22の強度分布を複数回計測させる主制御系16と、干渉縞22の強度分布の複数回の計測結果から投影光学系POを通過した光束のX方向及びY方向のシア波面(シアリング波面)φx及びφyを求める演算装置12と、を備えている。
また、波面計測装置80による投影光学系POの波面計測方法は、回折格子10と計測用レチクル4とを、X方向及びY方向の少なくとも一方で位相に換算した間隔がπ(180°)異なる少なくとも2つの平行な経路31A〜31C(又は31A,31D)に沿って相対移動させながら、回折格子10と計測用レチクル4との相対移動量に対応させて干渉縞22の強度分布を複数回計測するステップ108,116と、干渉縞22の強度分布の複数回の計測結果から投影光学系POを通過した光束のX方向及びY方向のシア波面を求めるステップ118と、を有する。
本実施形態によれば、2次元の回折格子10を計測用レチクル4に対してX方向及びY方向で位相に換算した間隔がπ異なる3つの平行な経路31A〜31C、又は2つの平行な経路31A,31Dに沿って2次元的に移動する間に複数回、干渉縞22の強度分布を計測し、この計測結果からX方向及びY方向へのシア波面を求めている。従って、高次干渉光等の影響を軽減させて、投影光学系POの波面情報を効率的に、かつ高精度に計測できる。
また、本実施形態では、2次元の回折格子10を経路31A〜31C(31A,31D)に沿って1回移動して得られる複数の干渉縞強度を用いて、位相シフト解析を行うことによって、波面計測を行うことができる。これにより、回折格子10等に付着する異物等による輝度むらに影響されない計測が可能となる。また、1種類の回折格子10を1回移動するのみでよいため、非点収差の誤差が実質的に発生しない状態で波面計測が可能となる。
また、本実施形態では、干渉縞22の強度分布の計測回数がK回の場合に、式(14A)、(14B)からX方向、Y方向のシア波面φx,φyを求めている。従って、計算が容易である。
また、本実施形態の露光方法は、照明光EL(露光光)でレチクルRのパターンを照明し、照明光ELでそのパターン及び投影光学系POを介してウエハW(基板)を露光する露光方法において、投影光学系POの波面収差を計測するために、本実施形態の波面計測方法を用いている。また、本実施形態の露光装置EXは、投影光学系POの波面収差を計測するために波面計測装置80を備えている。
従って、露光装置の投影光学系POの波面収差を露光波長で高精度に評価できる。従って、計測された波面収差を補正することによって、高精度に露光を行うことができる。
また、その波面収差の計測結果を投影光学系POの各光学部材のアラインメントに使用することで、高性能の投影光学系を製造できる。さらに、オンボディで投影光学系POのフルフィールドでの干渉計データを取得し、投影光学系POの光学部材の波面収差を計測することで、露光装置の重要なパラメータをモニタするための最適化ソリューションを提供することができる。
なお、本実施形態では、計測用レチクル4を静止させて回折格子10をX方向、Y方向に移動しているが、回折格子10を静止させて、計測用レチクル4をX方向、Y方向に移動させながら、干渉縞22の強度分布を計測し、この計測結果からX方向、Y方向のシア波面を求めても良い。
また、上記の実施形態では、計測用レチクル4にピンホールアレー6(光源)が形成されている場合の干渉計における波面解析を説明したが、本発明は、周期的面光源を用いたインコヒーレント照明計測系にも適用できる。また、本発明は、単一ピンホールを用いたコヒーレント照明計測系にも適用できる。
次に、上記の実施形態の変形例につき説明する。
上記実施形態では、駆動素子9を用いて回折格子10をX方向、Y方向に移動する際に、Z方向の振動外乱の影響を受ける恐れがある。そこで、Z方向の振動外乱の影響を低減させる方法につき説明する。
まず、分割数がnの場合のk回目の干渉縞の計測時における回折格子10の位相シフト量(δx,δy)は(ik2π/n,jk2π/n)であるため、このときに得られる干渉縞強度Ikを以下のように表す。
Figure 2013214637
また、干渉縞強度の計測開始からK回目の計測終了までの間に、周期νでZ方向に振動する外乱が存在するとし、この振動外乱の振幅をεとする。このとき、干渉縞強度の計測回数Kを奇数であるとすると、実際の位相シフト量には次の誤差が発生する。
誤差=ε×sin [{(k−(K+1)/2)/(K−1)}2πν]
このときの干渉縞強度Ik’を以下の式(38)で表す。また、振動外乱の振幅εが十分小さいものとして(ε≪1)、式(38)をテーラー展開すると式(39)が得られる。
Figure 2013214637
また、図5(A)の例(分割数n=4)において、式(39)を用いると、k回目の計測点MPで計測される振動外乱の影響を受けた干渉縞強度Ik’(k=1〜11)は以下のようになる。
Figure 2013214637
式(43)のIk’を、式(17A)〜(17D)のIkに代入すると以下の式(44)が得られる。なお、O(ε2)の項は、ほぼ振動外乱の振幅εの2乗で表される項である。式(44)を式(19)に代入することにより、振動外乱による位相誤差を含むシア波面φx及びφyは式(45)となる。
Figure 2013214637
すなわち、図5(A)の例のようにn=4の場合に、計測点MP1〜MP11の順に計測順序を設定することによって、振動外乱の影響を振幅εの2乗のオーダーまで低減できることが分かる。
なお、分割数n=4の例では、11個の計測点の計測順序を、図6(A)のMP1〜MP11の順序に設定しても、振動外乱の影響をεの2乗のオーダーまで低減することができる。ただし、図6(A)の例でも、各計測点MP1〜MP11は、X軸に対して45°で交差するY方向の位相が互いにπだけ異なる3つの平行な経路のいずれかの上にある点は同じである。
また、分割数n=6の例では、15個の計測点の計測順序を、図6(C)のMP1〜MP15の順序に設定しても、振動外乱の影響をεの2乗のオーダーまで低減することができる。ただし、図6(C)の例でも、各計測点MP1〜MP15は、X軸に対して45°で交差するY方向の位相が互いにπだけ異なる3つの平行な経路のいずれかの上にある点は同じである。
同様に、分割数nが6以上の場合にも、振動外乱の影響をεの2乗のオーダーまで低減できる計測順序がある。
次に、分割数n=4の場合(X方向、Y方向の位相シフト量の差がπ/2)では、干渉縞22の光量分布を計測するときの回折格子10の位置(計測点)を、図6(B)の変形例で示す計測点MP1〜MP9よりなる9点に設定してもよい。この変形例では、k回目(k=1〜9)の回折格子10のX方向、Y方向の位相シフト量(δk x,δk y)は次のようになり、干渉縞は9回計測される。ただし、図6(C)の変形例でも、各計測点MP1〜MP9は、X軸に対して45°で交差するY方向の位相が互いにπだけ異なる3つの平行な経路のいずれかの上にある点は図5(A)の例と同じである。
Figure 2013214637
この計測順序で計測された干渉縞強度Ikは以下の通りである。
Figure 2013214637
式(52)を用いて、投影光学系POのX方向、Y方向のシア波面φx,φyは次式から計算できる。
Figure 2013214637
また、式(52)の干渉縞強度Ikを用いて、Xシア波面及びYシア波面のコントラストCx,Cyを以下の式から計算でき、これらのコントラストからシア波面の質を評価できる。
Figure 2013214637
次に、この変形例において、Z方向の振動外乱の影響を低減させる方法につき説明する。k回目の干渉縞の計測時における回折格子10の位相シフト量(δk x,δk y)を用いて、このときに得られる干渉縞強度Ikを以下の式(58)で表す。
ここで、K回の計測を行い、l(エル)回目の計測時の位相シフト量(δl x,δl y)が(0,0)であるとする。そして、干渉縞の計測開始から計測終了までの間に、l回目の計測時の回折格子10のZ位置に対して、周期νでZ方向に振動する外乱が存在するとし、この振動外乱の振幅をεとする。このとき、k回目の計測時の位相シフト量には次の誤差がのることになる。
誤差=ε×sin [{(k−l)/(K−1)}2πν]
このときの干渉縞強度Ik’は以下の式(59)で表すことができる。また、振動外乱の振幅εが十分小さいものとして(ε≪1)、式(59)をテーラー展開すると式(60)が得られる。
Figure 2013214637
次に、振幅εのオーダー(1次のオーダー)の振動項を除去する条件を求める。振動はl番目を中心に対称になるので、(l−m)回目の計測と(l+m)回目の計測とで打ち消せると予想できる(mは0以外の整数)。(l−m)回目と(l+m)回目とで計測される干渉縞強度それぞれ下記の通りである。
Figure 2013214637
振幅εのオーダーの振動項を相殺できる位相シフト量(δl-m x,δl-m y)と(δl+m x,δl+m y)との組み合わせを考える。(l+m)回目は(l−m)回目からπの整数倍位相シフトしている場合、すなわち
δl+m x=δl-m x+pπ …(61A), δl+m y=δl-m y+qπ …(61B)
となるとき(p,qは整数)、(l+m)回目に計測される干渉光強度は下記の式(62)の通りである。ここで、εの2次のオーダー以上の項は省略した。p,q共に奇数のとき、式(62)は式(63)となり、式(61)より干渉光強度Il-m’との差を取るとεの振動項を相殺できることが分かる。また、p,q共に偶数のとき、式(62)は式(64)となり、式(61)より干渉光強度Il-m’との和を取るとεの振動項を相殺できることが分かる。
Figure 2013214637
ここで、p,q共に奇数のときを考える。正弦波は2π周期であるため、|p|=|q|=1としてよい。式(61)及び(63)より、以下の式(65)のようにIl-m’とIl+m’との差で振動項を除去できる。
また、(l−m)回目と(l+m)回目との計測で以下の式(66)のように位相シフト量を設定し、その干渉光強度をそれぞれIl-m’とIl+m’とおくと、その差は以下の式(67)となる。式(65)と式(67)とを使うと、以下の式(68)のようにXシア波面とYシア波面とを分離できる。
Figure 2013214637
すなわち、位相シフト量(δx,δy)が式(62)と式(66)とを満たすような4つの干渉縞があれば、振動項を除去してXシア波面とYシア波面とを分離できる計測順序(アルゴリズム)が作成できる。これは、例えば図7(A)に示すように、計測点MPAを(l−m)回目に、計測点MPBを(l+m)回目に、計測点MPCを(l−n)回目に、計測点MPDを(l+n)回目に計測することを意味する。
次に、p,q共に偶数のときを考える。正弦波は2π周期であるため、|p|=|q|=2、|p|=2,q=0、あるいはp=0,|q|=2であればよい。すなわち、(l−m)回目の計測時と(l+m)回目の計測時とで位相シフト量の差は±2π又は0である。位相シフト量を−πとπとの間で定義すると、位相シフト量(δl-m x,δl-m y)はどちらの成分も±π又は0である。式(61)及び(64)より、以下の式(69)のようにIl-m’とIl+m’との和で振動項を除去できる。また、l回目の干渉縞強度の2倍は式(70)となる。
Figure 2013214637
式(69)と式(70)とを使って、バイアス成分aを消去し、Xシア波面とYシア波面とを分離する。例えば、(δl-m x,δl-m y)=(±π,0)のとき、式(69)は以下の式(72)となるため、式(70)との差でYシア波面を取り出すことができる。これは、例えば図7(B)に示すように、X方向において、計測点MPAを(l−m)回目に、計測点MPBを(l+m)回目に、計測点MPC(位相シフト量が0)をl回目に計測することを意味する。同様に、Y方向において、計測点MPDを(l−m)回目に、計測点MPEを(l+m)回目に、計測点MPC(位相シフト量が0)をl回目に計測することになる。
Figure 2013214637
また、(δl-m x,δl-m y)=±(±π,±π)のとき、式(69)は上記の式(73)となるため、式(71)との差を取ればYシア波面を取り出すことができ、式(72)との差を取ればXシア波面を取り出すことができる。これは、例えば図7(C)に示すように、計測点MPAを(l−m)回目に、計測点MPBを(l+m)回目に、計測点MPCを(l−n)回目に、計測点MPDを(l+n)回目に計測することを意味する。
このようにこの変形例では、振動外乱の振幅εのオーダー(1次のオーダー)の振動項を除去するためには、上記の干渉縞の組み合わせが必要である。すなわち、全ての干渉縞を無駄なく使うためには、計測回数Kは奇数で、かつ位相シフト量が(0,0)となるときの計測順序lは(K+1)/2であることが好ましい。
また、振動外乱がl(エル)回目の計測時を基準に振動していると仮定した場合、l回目の計測時刻と(l−m)回目の計測時刻との差Δt1と、(l+m)回目の計測時刻とl回目の計測時刻との差Δt2とは等しいことが好ましい。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態につき図8(A)、(B)を参照して説明する。本実施形態の露光装置EX及び波面計測装置80の構成は第1の実施形態(図1)と同じであるが、投影光学系POのシア波面を計測する動作が異なっている。
図8(A)は、本実施形態において、投影光学系POのシア波面を求めるために、計測用レチクル4に対して回折格子10をX方向、Y方向に移動するときの回折格子10の移動経路31A,31B,31Cを示す。経路31A〜31Cは、第1の実施形態の図3(C)の経路31A〜31Cと同じである。なお、本実施形態では、回折格子10のX方向、Y方向の周期をPとして、回折格子10の移動方向であるX方向及びY方向をそれぞれξ方向及びη方向とする。
図8(A)において、ξ方向(X方向)に45°で交差する経路31Aに対して経路31B,31Cはξ方向(又はη方向(Y方向))に位相が±πだけシフトしている。この場合、回折格子10のξ方向、η方向の位相シフト量δx,δyはそれぞれ以下のようになる。
δx=2πξ/P, δy=2πη/P
また、経路31A,31B,31Cに沿った方向の回折格子10の変位を位相に換算して表す変数をs1,s3,s2、回折格子10の位相シフト量が経路31A〜31C上にあるときに演算装置12の各画素で計測される干渉縞の光量分布(干渉縞強度)をI(si)(i=1〜3)として、本実施形態の演算装置12は、投影光学系POのXシア波面ΔWx及びYシア波面ΔWyを以下の線積分を含む式で計算する。
Figure 2013214637
式(81A)、(81B)において、変数siは経路31A,31C,31Bではそれぞれs1,s2,s3となり、変数s1,s2,s3の線積分の範囲は、それぞれ経路31Aに沿った範囲(±21/2π)、経路31Cに沿った範囲(0〜21/2π)、及び経路31Bに沿った範囲(0〜21/2π)である。また、式(81A)、(81B)において、sin(2πξ/P)等はシア波面計測のために付加する重み正弦波(余弦波)である。なお、以下ではシア波面をφx及びφyとも表す。
また、経路31A,31C,31Bに沿って計測される干渉縞強度I(si)(si=s1,s2,s3)は次の通りである。
Figure 2013214637
この式を用いて式(81A)の分母、分子を計算すると次のようになる。
Figure 2013214637
この式からXシア波面φxは次のように計算できる。
φx=tan-1(−XS/XC) …(84)
式(82A)〜(82C)を用いて式(81B)の分母、分子を計算すると次のようになる。また、X方向及びY方向のコントラストCx,Cyは次のように計算できる。
Figure 2013214637
式(85)からYシア波面φyは次のように計算できる。
φy=tan-1(−YS/XC) …(85)
なお、本実施形態においても、図8(A)の3つの平行な経路31A〜31Cの代わりに、図8(B)の2つの平行な経路31A,31Dを使用し、経路31A,31Dに沿って干渉縞強度を線積分としてシア波面を計算してもよい。
また、線積分の代わりに、例えば経路31A〜31Cを移動方向に所定幅の多くの区間に分けて、区間毎の積の積算値を計算してもよい。
本実施形態によれば、高次干渉ノイズ光の影響を軽減して高精度に投影光学系POのシア波面、ひいては波面収差を求めることができる。
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態につき図9(A)、(B)を参照して説明する。本実施形態の露光装置EX及び波面計測装置80の構成は第1の実施形態(図1)と同じであるが、投影光学系POのシア波面を計測する動作が異なっている。
図9(A)は、本実施形態において、投影光学系POのシア波面を求めるために、計測用レチクル4に対して2次元の回折格子10をX方向、Y方向に移動するときの回折格子10の移動経路を示す。なお、本実施形態では、回折格子10のX方向、Y方向の周期をPとして、回折格子10の周期方向(X方向及びY方向)に平行な移動方向であるX方向及びY方向をそれぞれξ方向及びη方向とする。
図9(A)において、本実施形態では、ξ方向、η方向において回折格子10の1周期(P)の範囲を計測範囲として、回折格子10の移動量がその計測範囲の全面を覆うように回折格子10を2次元的に移動する。そして、回折格子10の移動量が(ξ,η)の位置で計測される干渉縞強度をI(ξ,η)として、本実施形態の演算装置12は、投影光学系POのXシア波面ΔWx及びYシア波面ΔWyを以下の面積分を含む式で計算する。
Figure 2013214637
式(91A)、(91B)において、面積分の範囲は図9(A)の計測範囲の全面である。
ただし、実用的には、面積分の代わりに、離散化して計測したデータの積算を行ってもよい。このためには、図9(A)の計測範囲をξ方向、η方向にN分割して(Nは例えば10以上の整数)、ξ方向、η方向にi番目及びj番目の計測点MP(i,j)の座標を(ξi,ηj)とする(i=0〜I;j=0〜J)。そして、回折格子10の位相シフト量が計測点MP(i,j)にあるときに計測される干渉縞強度をI(ξi,ηj)とすると、演算装置12は、次式からシア波面ΔWx及びΔWyを計算できる。次式の積算は、図9(A)の全部の計測点MP(i,j)で実行される。なお、このように離散化した積分では、面積は台形公式又はシンプソンの公式から計算してもよい。
Figure 2013214637
図9(A)では計測範囲は17×17点(=289点)に分割されているが、分割数は任意である。
また、積分を簡略化するために、図9(B)のξ方向に平行な2つの列35A,35Bに沿った1次元積分(又は積算)からXシア波面を計算し、η方向に平行な2つの行36A,36Bに沿った1次元積分(又は積算)からYシア波面を計算してもよい。
さらに、より積分を簡略化するために、図9(B)のξ方向に平行な一つの列35Aに沿った1次元積分(又は積算)からXシア波面を計算し、η方向に平行な一つの行36Aに沿った1次元積分(又は積算)からYシア波面を計算してもよい。
このように本実施形態の波面計測装置80は、計測用レチクル4及び投影光学系POを通過した光束をX方向及びY方向に周期性を持つ2次元の回折格子10に入射させ、回折格子10から発生する複数の光束による干渉縞22に基づいて投影光学系POの波面情報を求める。そして、波面計測装置80は、干渉縞22の強度分布を検出する撮像素子14と、回折格子10と計測用レチクル4とをX方向及びY方向に相対移動する駆動素子9(移動装置)と、回折格子10と計測用レチクル4とを、駆動素子9を介してX方向(ξ方向)及びY方向(η方向)の位相に換算した相対移動量の幅がそれぞれ2π(360°)の計測範囲内で、2次元的に相対移動させながら、回折格子10と計測用レチクル4との相対移動量に対応させて干渉縞の光量分布を実質的に連続して計測させる主制御系16と、実質的に連続して計測される干渉縞22の光量分布の計測結果から投影光学系POを通過した光束のX方向及びY方向のシア波面を求める演算装置12と、を備えている。
本実施形態によれば、高次干渉光ノイズ光の影響を軽減して高精度に投影光学系POのシア波面、ひいては波面収差を求めることができる。
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態につき図11(A)〜(E)を参照して説明する。本実施形態の波面収差計測装置の基本的な構成は図1の波面計測装置80と同様であるが、本実施形態では、計測用レチクルのパターン(光源)及び回折格子のパターンが斜め市松格子である点が異なっている。以下、図11(A)〜(E)において、図2(A)〜図2(E)に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略又は簡略化する。
図11(A)は、本実施形態の波面収差計測装置の計測本体部8A、計測用レチクル4、及び投影光学系POを示す図である。本実施形態では、計測用レチクル4には、図11(B)に示すように、遮光膜6Ab中にピンホール6SをX方向、Y方向に周期(ピッチ)Ps/βで市松格子状に配列したピンホールアレー6Aが形成されている。この場合にも、ピンホールアレー6Aの代わりに、図8(C)の市松格子状に遮光パターン6aを配列したパターン6AHを使用可能である。
また、計測本体部8Aの回折格子10Aには、図11(D)に示すように、遮光膜10Ab中に開口パターン10aがX方向、Y方向に周期Pgで市松格子状に形成されている。従って、計測本体部8Aの撮像素子14の受光面には、0次光20A、+1次回折光20AA、及び−1次回折光20AB等による干渉縞22A(図11(E)参照)が形成される。回折格子10Aからの複数の回折光のスペクトルは、0次光、X軸上の2つの回折光、及びY軸上の2つの回折光等を含んでいる。
本実施形態においても、第1の実施形態の図4の計測動作と同様の動作によって、投影光学系POのX方向のシア波面ΔWx及びY方向のシア波面ΔWyを求めることができる。なお、本実施形態の回折格子10Aは斜め市松格子であるが、通常の市松格子であってもよい。
なお、上記の実施形態の計測方法及び装置は、タルボ干渉計以外の任意の干渉計を用いてシアリング干渉等による干渉縞を検出して被検光学系の波面収差を計測する場合に適用可能である。
また、上記の実施形態の露光装置EX又は露光方法を用いて半導体デバイス等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造する場合、この電子デバイスは、図12に示すように、デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造するステップ223、前述した実施形態の露光装置EX又は露光方法によりマスクのパターンを基板に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
言い替えると、上記のデバイスの製造方法は、上記の実施形態の露光装置EX又は露光方法を用いて、マスクのパターンを介して基板(ウエハW)を露光する工程と、その露光された基板を処理する工程(即ち、基板のレジストを現像し、そのマスクのパターンに対応するマスク層をその基板の表面に形成する現像工程、及びそのマスク層を介してその基板の表面を加工(加熱及びエッチング等)する加工工程)と、を含んでいる。
このデバイス製造方法によれば、露光精度を高く維持でき、レチクルのパターンを高精度に基板に露光できるため、電子デバイスを効率的に高精度に製造できる。
なお、上記の実施形態の波面計測方法及び装置は、ステッパー型の露光装置の投影光学系の波面収差を計測する場合にも適用できる。
また、上記の実施形態では、露光用の照明光EL(露光光)としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)等を用いて屈折系又は反射屈折系等からなる投影光学系を使用する露光装置において、投影光学系の波面収差を計測している。しかしながら、上記の実施形態の波面計測方法及び装置は、露光光として、波長が100nm程度以下で例えば11〜15nm程度の範囲内(例えば13.5nm)のEUV光(Extreme Ultraviolet Light)を用いて、反射系からなる投影光学系を使用する露光装置(EUV露光装置)において、投影光学系の波面収差を計測する場合にも適用できる。EUV露光装置に適用する場合には、計測本体部の計測用レチクルも反射型である。
さらに、本発明は、露光装置の投影光学系以外の光学系、例えば顕微鏡の対物レンズ、又はカメラの対物レンズ等の波面収差を計測する場合にも適用可能である。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
EX…露光装置、ILS…照明装置、R…レチクル、RST…レクチルステージ、PO…投影光学系、W…ウエハ、WST…ウエハステージ、WB…ウエハベース、4…計測用レチクル、6…ピンホールアレー、8…計測本体部、9…駆動素子、10…回折格子、12…演算装置、14…撮像素子、16…主制御系、17…ウエハステージ制御系、80…波面計測装置

Claims (31)

  1. 計測用マスク及び被検光学系を通過した光束を互いに交差する第1方向及び第2方向に周期性を持つ回折格子に入射させ、前記回折格子から発生する複数の光束による干渉縞に基づいて前記被検光学系の波面情報を求める波面計測方法であって、
    前記回折格子と前記計測用マスクとを、前記第1方向及び前記第2方向の少なくとも一方で位相に換算した間隔が互いに異なる少なくとも2つの平行な経路に沿って相対移動させながら、前記回折格子と前記計測用マスクとの相対移動量に対応させて前記干渉縞の強度分布を複数回計測することと、
    前記干渉縞の強度分布の複数回の計測結果から前記被検光学系を通過した光束の前記第1方向へのシアリング波面及び前記第2方向へのシアリング波面を求めることと、
    を含むことを特徴とする波面計測方法。
  2. 前記回折格子の前記第1方向の周期と前記第2方向の周期とは互いに等しく、
    前記少なくとも2つの平行な経路は、前記第1方向に45°傾斜した方向に平行であるであることを特徴とする請求項1に記載の波面計測方法。
  3. 前記少なくとも2つの平行な経路は、前記第1方向及び前記第2方向の位相に換算した前記相対移動量の幅がそれぞれ360°の計測範囲内で、前記第1方向に45°傾斜した方向に平行で前記計測範囲の中心を通る第1経路、前記計測範囲内で前記第1経路に対して前記第2方向に位相に換算した間隔が+180°異なるとともに前記第1経路に平行な第2経路、及び前記計測範囲内で前記第1経路に対して前記第2方向に位相に換算した間隔が−180°異なるとともに前記第1経路に平行な第3経路を含むことを特徴とする請求項2に記載の波面計測方法。
  4. 前記干渉縞の強度分布の計測は、前記第1方向及び前記第2方向の少なくとも一方に沿った前記相対移動量が位相に換算して360°/(j+2)(jは2以上の整数)だけ異なるように配列された少なくとも2(j+2)個の計測点で行われることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の波面計測方法。
  5. 前記干渉縞の強度分布の計測は、前記第1方向及び前記第2方向の位相に換算した前記相対移動量の幅がそれぞれ360°の計測範囲内でK回(Kは8以上の整数)行われ、前記相対移動量が前記計測範囲の中心にあるときにa回目(aは2以上でKより小さい整数)の計測が行われ、前記相対移動量が前記中心に対して対称な第1及び第2の計測点にあるときに、それぞれ(a−b)回目(bは1以上でaより小さい整数)及び(a+b)回目の計測が行われることを特徴とする請求項4に記載の波面計測方法。
  6. 前記干渉縞の強度分布の計測回数をK(Kは8以上の整数)、前記干渉縞の強度分布のk番目(k=1〜K)の画素毎の計測結果をI、前記相対移動の経路に応じて定まるk番目の係数をA,B,A’,B’として、前記第1方向へのシアリング波面ΔWx及び前記第2方向へのシアリング波面ΔWyを次式
    Figure 2013214637
    より個別に計算することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の波面計測方法。
  7. 前記干渉縞の強度分布を複数回計測するときに、前記回折格子と前記計測用マスクとの相対移動量に対応させて前記干渉縞の強度分布を実質的に連続的に計測し、
    前記第1方向及び前記第2方向へのシアリング波面を求めることは、前記干渉縞の強度分布の計測値に前記回折格子の前記計測用マスクに対する前記第1方向及び前記第2方向の相対位置に応じた係数を掛けて得られる値を、前記少なくとも2つの経路に沿って積分することを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の波面計測方法。
  8. 前記回折格子の前記第1方向の周期及び前記第2方向の周期を共通のP、前記回折格子の前記計測用マスクに対する前記第1方向及び前記第2方向の相対位置をξ及びη、前記少なくとも2つの経路のうちi番目(iは1以上の整数)の経路に沿った方向の相対位置をsi、前記相対位置がsiにあるときに計測される前記干渉縞の強度分布の画素毎の計測値をI(si)として、前記第1方向及び前記第2方向へのシアリング波面ΔWx及びΔWyを線積分を含む次式
    Figure 2013214637
    より個別に計算することを特徴とする請求項7に記載の波面計測方法。
  9. 計測用マスク及び被検光学系を通過した光束を互いに交差する第1方向及び第2方向に周期性を持つ回折格子に入射させ、前記回折格子から発生する複数の光束による干渉縞に基づいて前記被検光学系の波面情報を求める波面計測方法であって、
    前記回折格子と前記計測用マスクとを、前記第1方向及び前記第2方向の位相に換算した相対移動量の幅がそれぞれ360°の計測範囲を含む領域内で、2次元的に相対移動させながら、前記回折格子と前記計測用マスクとの相対移動量に対応させて前記干渉縞の強度分布を実質的に連続して計測することと、
    前記干渉縞の強度分布の計測結果から前記被検光学系を通過した光束の前記第1方向へのシアリング波面及び前記第2方向へのシアリング波面を求めることと、
    を含むことを特徴とする波面計測方法。
  10. 前記回折格子と前記計測用マスクとを前記領域内で2次元的に相対移動させることは、前記計測範囲内で、前記第1方向及び第2方向にそれぞれ位相に換算して180°以下の間隔で前記第1方向及び前記第2方向に設定された複数の経路に沿って、前記回折格子と前記計測用マスクとを相対移動することを含むことを特徴とする請求項9に記載の波面計測方法。
  11. 前記回折格子と前記計測用マスクとを前記領域内で2次元的に相対移動させることは、前記計測範囲内で、前記第1方向及び第2方向に平行な経路に沿ってそれぞれ1回ずつ前記回折格子と前記計測用マスクとを相対移動することを含む請求項9に記載の波面計測方法。
  12. 前記回折格子の前記第1方向の周期及び前記第2方向の周期を共通のP、前記回折格子の前記計測用マスクに対する前記第1方向及び前記第2方向の相対位置をξ及びη、前記相対位置が(ξ,η)にあるときに計測される前記干渉縞の強度分布の画素毎の計測値をI(ξ,η)として、前記第1方向及び前記第2方向へのシアリング波面ΔWx及びΔWyを、前記回折格子と前記計測用マスクとの相対移動の全部の経路に関する面積分を含む次式
    Figure 2013214637
    より個別に計算することを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の波面計測方法。
  13. 前記面積分を、前記経路に沿って設定される複数の計測点で計測される前記干渉縞の強度分布の値の加重積算値として求めることを特徴とする請求項12に記載の波面計測方法。
  14. 前記回折格子の格子パターンは市松格子であることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の波面計測方法。
  15. 露光光でパターンを照明し、前記露光光で前記パターン及び投影光学系を介して基板を露光する露光方法において、
    前記投影光学系の波面収差を計測するために、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の波面計測方法を用いることを特徴とする露光方法。
  16. 計測用マスク及び被検光学系を通過した光束を互いに交差する第1方向及び第2方向に周期性を持つ回折格子に入射させ、前記回折格子から発生する複数の光束による干渉縞に基づいて前記被検光学系の波面情報を求める波面計測装置であって、
    前記干渉縞の強度分布を検出する検出器と、
    前記回折格子と前記計測用マスクとを前記第1方向及び前記第2方向に相対移動する移動装置と、
    前記回折格子と前記計測用マスクとを、前記移動装置を介して前記第1方向及び前記第2方向の少なくとも一方で位相に換算した間隔が互いに異なる少なくとも2つの平行な経路に沿って相対移動させながら、前記検出器によって前記回折格子と前記計測用マスクとの相対移動量に対応させて前記干渉縞の強度分布を複数回計測させる制御装置と、
    前記干渉縞の強度分布の複数回の計測結果から前記被検光学系を通過した光束の前記第1方向へのシアリング波面及び前記第2方向へのシアリング波面を求める演算装置と、
    を備えることを特徴とする波面計測装置。
  17. 前記回折格子の前記第1方向の周期と前記第2方向の周期とは互いに等しく、
    前記少なくとも2つの平行な経路は、前記第1方向に45°傾斜した方向に平行であるであることを特徴とする請求項16に記載の波面計測装置。
  18. 前記少なくとも2つの平行な経路は、前記第1方向及び前記第2方向の位相に換算した前記相対移動量の幅がそれぞれ360°の計測範囲内で、前記第1方向に45°傾斜した方向に平行で前記計測範囲の中心を通る第1経路、前記計測範囲内で前記第1経路に対して前記第2方向に位相に換算した間隔が+180°異なるとともに前記第1経路に平行な第2経路、及び前記計測範囲内で前記第1経路に対して前記第2方向に位相に換算した間隔が−180°異なるとともに前記第1経路に平行な第3経路を含むことを特徴とする請求項17に記載の波面計測装置。
  19. 前記制御装置は、
    前記干渉縞の強度分布の計測を、前記第1方向及び前記第2方向の少なくとも一方に沿った前記相対移動量が位相に換算して360°/(j+2)(jは2以上の整数)だけ異なるように配列された少なくとも2(j+2)個の計測点で行わせることを特徴とする請求項16から請求項18のいずれか一項に記載の波面計測装置。
  20. 前記干渉縞の強度分布の計測回数をK(Kは8以上の整数)、前記干渉縞の強度分布のk番目(k=1〜K)の画素毎の計測結果をI、前記相対移動の経路に応じて定まるk番目の係数をA,B,A’,B’として、
    前記演算装置は、前記第1方向へのシアリング波面ΔWx及び前記第2方向へのシアリング波面ΔWyを次式
    Figure 2013214637
    より個別に計算することを特徴とする請求項16から請求項19のいずれか一項に記載の波面計測装置。
  21. 前記制御装置は、
    前記干渉縞の強度分布を複数回計測するときに、前記検出器によって前記回折格子と前記計測用マスクとの相対移動量に対応させて前記干渉縞の強度分布を実質的に連続的に計測させ、
    前記演算装置は、
    前記第1方向及び前記第2方向へのシアリング波面を求めるために、前記干渉縞の強度分布の計測値に前記回折格子の前記計測用マスクに対する前記第1方向及び前記第2方向の相対位置に応じた係数を掛けて得られる値を、前記少なくとも2つの経路に沿って積分することを特徴とする請求項16から請求項18のいずれか一項に記載の波面計測装置。
  22. 前記回折格子の前記第1方向の周期及び前記第2方向の周期を共通のP、前記回折格子の前記計測用マスクに対する前記第1方向及び前記第2方向の相対位置をξ及びη、前記少なくとも2つの経路のうちi番目(iは1以上の整数)の経路に沿った方向の相対位置をsi、前記相対位置がsiにあるときに計測される前記干渉縞の強度分布の画素毎の計測値をI(si)として、
    前記演算装置は、前記第1方向及び前記第2方向へのシアリング波面ΔWx及びΔWyを線積分を含む次式
    Figure 2013214637
    より個別に計算することを特徴とする請求項21に記載の波面計測装置。
  23. 計測用マスク及び被検光学系を通過した光束を互いに交差する第1方向及び第2方向に周期性を持つ回折格子に入射させ、前記回折格子から発生する複数の光束による干渉縞に基づいて前記被検光学系の波面情報を求める波面計測装置であって、
    前記干渉縞の強度分布を検出する検出器と、
    前記回折格子と前記計測用マスクとを前記第1方向及び前記第2方向に相対移動する移動装置と、
    前記移動装置を介して、前記回折格子と前記計測用マスクとを、前記第1方向及び前記第2方向の位相に換算した相対移動量の幅がそれぞれ360°の計測範囲を含む領域内で、2次元的に相対移動させながら、前記検出器によって前記回折格子と前記計測用マスクとの相対移動量に対応させて前記干渉縞の強度分布を実質的に連続して計測させる制御装置と、
    前記干渉縞の強度分布の計測結果から前記被検光学系を通過した光束の前記第1方向へのシアリング波面及び前記第2方向へのシアリング波面を求める演算装置と、
    を備えることを特徴とする波面計測装置。
  24. 前記制御装置は、
    前記回折格子と前記計測用マスクとを前記領域内で2次元的に相対移動させるために、前記移動装置を介して、前記計測範囲内で、前記第1方向及び第2方向にそれぞれ位相に換算して180°以下の間隔で前記第1方向及び前記第2方向に設定された複数の経路に沿って、前記回折格子と前記計測用マスクとを相対移動させることを特徴とする請求項23に記載の波面計測装置。
  25. 前記制御装置は、
    前記回折格子と前記計測用マスクとを前記領域内で2次元的に相対移動させるために、前記移動装置を介して、前記計測範囲内で、前記第1方向及び第2方向に平行な経路に沿ってそれぞれ1回ずつ前記回折格子と前記計測用マスクとを相対移動させることを特徴とする請求項23に記載の波面計測装置。
  26. 前記回折格子の前記第1方向の周期及び前記第2方向の周期を共通のP、前記回折格子の前記計測用マスクに対する前記第1方向及び前記第2方向の相対位置をξ及びη、前記相対位置が(ξ,η)にあるときに計測される前記干渉縞の強度分布の画素毎の計測値をI(ξ,η)として、
    前記演算装置は、前記第1方向及び前記第2方向へのシアリング波面ΔWx及びΔWyを、前記回折格子と前記計測用マスクとの相対移動の全部の経路に関する面積分を含む次式
    Figure 2013214637
    より個別に計算することを特徴とする請求項23から請求項25のいずれか一項に記載の波面計測装置。
  27. 前記演算装置は、
    前記面積分を、前記経路に沿って設定される複数の計測点で計測される前記干渉縞の強度分布の値の加重積算値として求めることを特徴とする請求項26に記載の波面計測装置。
  28. 前記回折格子の格子パターンは市松格子であることを特徴とする請求項16から請求項27のいずれか一項に記載の波面計測装置。
  29. 露光光でパターンを照明し、前記露光光で前記パターン及び投影光学系を介して基板を露光する露光装置において、
    前記投影光学系の波面収差を計測するために、請求項16から請求項28のいずれか一項に記載の波面計測装置を備えることを特徴とする露光装置。
  30. 請求項15に記載の露光方法を用いて感光性基板を露光することと、
    前記露光された感光性基板を処理することと、を含むデバイス製造方法。
  31. 請求項29に記載の露光装置を用いて感光性基板を露光することと、
    前記露光された感光性基板を処理することと、を含むデバイス製造方法。
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