JP2004128149A - 収差計測方法、露光方法及び露光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】投影光学系の収差を精度良く計測する。
【解決手段】ウエハステージWSTが+Y方向に駆動されると、スリット122が計測マークPMの空間像に対してY軸方向に走査される。この走査中に、スリット122を通過する照明光ILが、ウエハステージWST内の光導出部、ミラー96、受光レンズ89を介して光センサ24で受光され、その光電変換信号Pが主制御装置に供給される。主制御装置は、光電変換信号Pに基づく計測マークPMの空間像に含まれる空間周波数成分のうち、そのマークの周期に対応する1次の基本周波数成分とその3次の高調波成分との位相差に基づいて、投影光学系PLに発生する奇関数収差を算出する。
【選択図】 図3
【解決手段】ウエハステージWSTが+Y方向に駆動されると、スリット122が計測マークPMの空間像に対してY軸方向に走査される。この走査中に、スリット122を通過する照明光ILが、ウエハステージWST内の光導出部、ミラー96、受光レンズ89を介して光センサ24で受光され、その光電変換信号Pが主制御装置に供給される。主制御装置は、光電変換信号Pに基づく計測マークPMの空間像に含まれる空間周波数成分のうち、そのマークの周期に対応する1次の基本周波数成分とその3次の高調波成分との位相差に基づいて、投影光学系PLに発生する奇関数収差を算出する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、収差計測方法、露光方法及び露光装置に係り、さらに詳しくは、投影光学系の収差を計測する収差計測方法、該収差計測方法を含む露光方法、及び投影光学系の収差を計測する機能を有する露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体素子又は液晶表示素子等をフォトリソグラフィ工程で製造する際に、フォトマスク又はレチクル(以下、「レチクル」と総称する)のパターンを、投影光学系を介して表面にフォトレジスト等の感光剤が塗布されたウエハ又はガラスプレート等の基板上に転写する投影露光装置、例えばステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置(いわゆるステッパ)や、ステップ・アンド・スキャン方式の走査型投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ)等が用いられている。
【0003】
ところで、半導体素子等を製造する場合には、異なる回路パターンを感光物体としての基板上に幾層にも積み重ねて形成する必要があるため、回路パターンが描画されたレチクルを、基板上の各ショット領域に既に形成されたパターンに正確に重ね合わせて転写可能であることが求められる。かかる重ね合わせ転写を精度良く実行するためには、投影光学系の光学特性が所望の状態に調整されていることが必要不可欠である。
【0004】
この投影光学系の光学特性を適切に調整するには、まず、その光学特性を正確に計測する必要がある。この光学特性の計測方法として、所定のパターンが形成された計測用マスクを用いて露光を行い、そのパターンの投影像が転写形成された基板を現像することによって得られるレジスト像を計測した計測結果に基づいて光学特性を算出する方法(以下、「焼き付け法」と呼ぶ)が、主として用いられている。これに対し、実際に露光を行うことなく、計測用マスクの計測マークが照明光により照明され投影光学系によって投影され形成された計測用パターンの空間像(投影像)を計測し、この計測結果に基づいてその投影光学系の光学特性を算出する方法(以下、「空間像計測法」と呼ぶ)も行われている。かかる空間像の計測及びこれに基づく投影光学系の結像特性の算出については、例えば、特許文献1等に詳細に開示されている。
【0005】
また、上述の空間像計測法を用い、例えば、ピッチが異なる複数の周期パターンの空間像をそれぞれ計測し、それぞれ空間像の空間周波数成分間の相対的な位置ずれに基づいて投影光学系の結像特性の1つであるコマ収差を計測する方法や、あるピッチの周期パターンの空間像を計測し、その空間周波数成分のうち、そのパターンのピッチに対応する空間周波数を有する基本周波数成分と、その2次の高調波成分との相対的な位置ずれに基づいてそのコマ収差を計測する方法などが開示されている(例えば、特許文献2、特許文献3等参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−209031号公報(段落0024−段落0085、第1図〜第10図)
【特許文献2】
特開平11−297614号公報(段落0014−段落0075、第1図〜第9図)
【特許文献3】
特開平11−297615号公報(段落0013−段落0101、第1図〜第11図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、空間像計測方法を用いてコマ収差を計測する上述の2つの方法には、以下に示す不都合があった。
【0008】
(1) マスク上におけるピッチが異なる複数の周期パターンの形成位置に、製造誤差、例えば周期パターン同士の形成位置のオフセットがあると、計測された位置ずれ量にそのオフセットが含まれてしまい、そのオフセットがコマ収差の計測精度の低下の原因となる。
【0009】
(2) 空間像に含まれる2次の高調波成分は、一般的にその成分の大きさが小さいため、周期パターンの製造誤差に対する感度が高く、その製造誤差による影響を受けやすいうえ、空間像を計測する計測器の入力−出力特性の非線形性の影響も受けやすいため、コマ収差の計測精度の向上に限界がある。
【0010】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、投影光学系の収差を精度良く計測することができる収差計測方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、マスクのパターンを基板上に精度良く転写することができる露光方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の第3の目的は、マスクのパターンを基板上に精度良く転写することができる露光装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、第1面上のパターンを第2面上に投影する投影光学系(PL)の収差を計測する収差計測方法であって、前記第1面上に配置された周期パターンを含む少なくとも1つの計測マーク(例えばPM)が照明光(IL)により照明され前記投影光学系によって前記第2面上に投影されることによって前記第2面上に形成される前記計測マークの空間像(例えばPM’)に対し、所定の計測用パターンを前記第2面上で走査させ、該走査中に前記所定の計測用パターンを介して得られる前記照明光を光電検出し、前記空間像に対応する光強度信号を得る第1工程と;前記光強度信号に含まれる基本周波数成分と奇数次の高調波成分との位相差に基づいて、前記投影光学系の射出瞳上の波面収差を示す収差関数を展開することによって得られる動径多項式の各項(Zi)の動径関数が奇関数で表される奇関数収差の収差量を算出する第2工程と;を含む収差計測方法である。
【0014】
一般に、投影光学系の射出瞳上の波面収差を示す収差関数(W(ρ、θ):Wは極座標で表わされており、ρは、投影光学系PLの射出瞳の半径方向の規格化された瞳位置、θは角度である。)は、その動径ρと角度θの変数が分離した形で表される完全直交系の動径多項式、例えば、以下の式(1)に示されるフリンジツェルニケの多項式を用いて級数展開することが可能である。
【0015】
【数1】
【0016】
ここで、Ziは、投影光学系の諸収差の大きさを表す係数である。なお、一例として第1項〜第37項までのfiを例示すると、次の表1のようになる。
【0017】
【表1】
【0018】
上述の表1に示されるように、動径多項式の各項のfi(ρ,θ)は、動径(ρ)と角度(θ)の変数が分離した形で表現される。このうち、動径(ρ)で表される部分を動径関数と呼ぶ。
【0019】
また、動径多項式の各項は、その動径関数が奇関数であるものと偶関数であるものとに分類することができる。例えば、表1に示されるf7及びf8については、その動径関数がともに3ρ3−2ρで、奇関数であり、f5及びf6は、その動径関数がともにρ2で偶関数となっている。一般に、その角度成分mθ(mを自然数とする)のmが奇数である場合には、その動径関数が奇関数となり、mが偶数である場合には、その動径関数が偶関数となる。このように、動径関数が奇関数で表される収差を奇関数収差と呼び、偶関数で表される収差を偶関数収差と呼ぶ。
【0020】
ところで、一般的に、第1面上のパターンを第2面上に投影する投影光学系は、第1面上のパターンからの複数の回折光が第2面上の結像面に集光するように作用する。投影光学系の収差が存在する場合には、それらの回折光が通過する投影光学系の射出瞳における位置がそれぞれ異なるため、第2面上における結像状態がその収差の影響を受ける。特に、その投影光学系に奇関数収差が存在する場合、第2面上における各次の回折光の結像位置は、第2面内方向にずれる(これを横ずれと呼ぶ)。したがって、第1面上の計測マークが周期パターンを含んでいる場合、その周期パターンの周期に対応する空間周波数を基本周波数とすると、第2面上における光強度信号におけるその基本周波数成分と、その奇数次の高調波成分とには、第2面上において相対的な位相差が生ずる。
【0021】
本出願人は、その基本周波数成分と奇数次の高調波成分との位相差と、奇関数収差の収差量がほぼ線形関係にあることをつきとめた。本発明では、その線形関係を利用して、その周期パターンを含む計測マークの空間像に対応する光強度信号を得て、その光強度信号に含まれる基本周波数成分と奇数次の高調波成分との位相差を計測し、計測された位相差に基づいて投影光学系の奇関数収差の収差量を算出する。このようにすれば、1つの周期パターンだけで奇関数収差を計測することができるため、周期パターンの製造誤差によるオフセットに関わらず、精度良く奇関数収差を求めることができる。
【0022】
なお、基本周波数成分と偶数次、例えば2次の高調波成分との位相差に基づいて奇関数収差の収差量を求めることも可能であるが、特に、計測マークの周期パターンが、デューティ比が50%で、その強度が矩形状に変化するようなパターンである場合には、偶数次の高調波成分のスペクトルの大きさがほぼ0となるため、奇数次の高調波成分を用いた方が、周期パターンの製造誤差や空間像を計測する計測器の入力−出力特性に影響を受けにくくなる。そのため、前述の奇関数収差を精度良く算出することができる。
【0023】
この場合、請求項2に記載の収差計測方法のごとく、前記第2工程では、前記光強度信号に含まれる基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差に基づいて、前記収差量を算出することとすることができる。
【0024】
これによれば、3次の高調波成分は、奇数次の高調波成分の中で、最もその成分の大きさが大きい成分であるため、その3次の高調波成分を用いれば、基本周波数成分との位相差の周期パターンの製造誤差等に対するS/N比を最も大きくすることができるので、投影光学系の奇関数収差を最も精度良く算出することができる。
【0025】
上記請求項1又は2に記載の収差計測方法において、請求項3に記載の収差計測方法のごとく、前記動径多項式は、フリンジツェルニケ多項式であることとすることができる。
【0026】
また、上記請求項1〜3のいずれか一項に記載の収差計測方法において、請求項4に記載の収差計測方法のごとく、前記奇関数収差は、コマ収差であることとすることができる。
【0027】
例えば、フリンジツェルニケ多項式において、3次以上の1θ項の係数(Z7,Z8,Z14,Z15,Z23,Z24,Z34,Z35)等はコマ収差成分を示す。これらは奇関数収差に含まれ、本発明では、奇関数収差としてこれらのコマ収差の収差量を算出することができる。
【0028】
上記請求項1〜4のいずれか一項に記載の収差計測方法において、前記第2工程に先立って、前記位相差と前記奇関数収差の収差量との関係を、前記投影光学系の数学モデルを用いたシミュレーションによって算出する第3工程をさらに含むこととすることができる。
【0029】
また、上記請求項1〜5のいずれか一項に記載の収差計測方法において、請求項6に記載の収差計測方法のごとく、前記第1工程を、前記周期パターンの周期がそれぞれ異なる複数の前記計測マークについて実行する第4工程と;計測マーク毎に得られる前記位相差と、各位相差の変化に対応する幾つかの奇関数収差の感度とに基づいて、前記幾つかの奇関数収差の各々の収差量を算出する第5工程と;をさらに含むこととすることができる。
【0030】
前述のように、奇関数収差には、低次及び高次のコマ収差等が含まれており、低次のコマ収差と高次のコマ収差とを分離する必要がある場合もある。一方、周期が異なる周期パターンでは、0次回折光の進行方向と各次の回折光の進行方向とのなす角度の大きさはそれぞれ異なっており、それぞれの周期によって、同じ次数の回折光の投影光学系の射出瞳上の通過位置も異なる。そのため、周期パターンの周期が異なれば、その周期パターン毎に得られる位相差と、各位相差の変化に対応する各奇関数収差(低次のコマ収差及び高次のコマ収差)の感度とは当然異なったものとなる。したがって、周期パターン毎に求められる位相差と、その周期パターン毎に異なる奇関数収差の感度とを用いれば、それぞれの奇関数収差、例えば低次のコマ収差と高次のコマ収差とを抽出することが可能となる。
【0031】
上記請求項1〜6のいずれか一項に記載の収差計測方法において、請求項7に記載の収差計測方法のごとく、記所定の計測用パターンは、スリットパターンであることとすることができる。
【0032】
また、上記請求項1〜6のいずれか一項に記載の収差計測方法において、請求項8に記載の収差計測方法のごとく、前記所定の計測用パターンは、ピンホールパターンであることとすることができる。
【0033】
請求項9に記載の発明は、マスク(R)のパターンを、投影光学系(PL)を介して感光物体(W)上に転写する露光方法であって、請求項1〜8のいずれか一項に記載の収差計測方法によって、前記投影光学系の収差を計測する工程と;前記計測された収差に基づいて、前記投影光学系の結像特性を調整する工程と;前記調整後の前記投影光学系を介して前記パターンを前記感光物体上に転写する工程と;を含む露光方法である。
【0034】
これによれば、請求項1〜8のいずれか一項に記載の収差計測方法によって、投影光学系の奇関数収差を精度良く計測することができ、その計測された収差に基づいて、投影光学系の結像特性を調整することができるため、結像特性が適切な状態に調整された投影光学系を介してマスクのパターンを感光物体に精度良く転写することが可能となる。
【0035】
請求項10に記載の発明は、第1面上のマスク(R)のパターンを、投影光学系(PL)を介して第2面上の感光物体(W)上に転写する露光装置であって、前記第1面上に配置されたマーク形成部材(RFM)を照明光により照明する照明ユニット(12等)と;前記マーク形成部材を介した前記照明光が前記投影光学系により前記第2面上に投射されることにより前記第2面上に形成される前記マーク形成部材に形成された周期パターンを含む少なくとも1つの計測マークの空間像に対して、所定の計測用パターンを前記第2面上で走査し、該走査中に前記所定の計測用パターンを介して得られる前記照明光を光電検出し、前記空間像に対応する光強度信号を得る空間像計測装置(59)と;前記光強度信号に含まれる基本周波数成分と奇数次の高調波成分との位相差に基づいて、前記投影光学系の射出瞳上の波面収差を示す収差関数を展開することによって得られる動径多項式の各項の動径関数が奇関数で表される奇関数収差の収差量を算出する処理装置(50)と;前記算出された収差量に基づいて、前記投影光学系の結像特性を調整する調整装置(50)と;前記照明ユニットからの照明光で前記第1面上に配置されたパターンを照明して前記調整後の前記投影光学系を介して前記パターンを前記感光物体上に転写する転写装置(50)と;を備える露光装置である。
【0036】
これによれば、空間像計測装置によって計測された光強度信号に含まれる基本周波数成分と奇数次の高調波成分との位相差に基づいて、投影光学系の奇関数収差が処理装置によって精度良く計測される。さらに、計測された収差に基づいて、投影光学系の結像特性を調整装置によって調整し、結像特性が適切な状態に調整された投影光学系を介してマスクのパターンを転写装置によって感光物体に精度良く転写することが可能となる。
【0037】
この場合、請求項11に記載の露光装置のごとく、前記パターンが形成されたマスクを保持するマスクステージを更に備え、前記マーク形成部材は、前記マスクステージ上に配置された基準マーク板であることとすることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図13に基づいて説明する。
【0039】
図1には、本発明の一実施形態に係る露光装置10の概略的な構成が示されている。この露光装置10は、ステップ・アンド・スキャン方式の走査型投影露光装置、すなわちいわゆるスキャニング・ステッパである。
【0040】
この露光装置10は、光源14及び照明光学系12を含む照明系(照明ユニット)、マスクとしてのレチクルRを保持するマスクステージとしてのレチクルステージRST、投影光学系PL、感光物体としてのウエハWを保持し、図1に示すX軸及びY軸を含むXY平面内を自在に移動可能なウエハステージWST、及びこれらを制御する制御系等を、装置の一構成部分として備えている。また、上記各構成部分のうち、光源14及び制御系以外の部分は、実際には、内部の温度、圧力等の環境条件が高精度に制御され一定に維持されている不図示の環境制御チャンバ(エンバイロンメンタル・チャンバ)内に収容されている。
【0041】
前記光源14は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)を出力するエキシマレーザ光源である。この光源14は、実際には、上記環境制御チャンバが設置されるクリーンルームとは別のクリーン度の低いサービスルーム等に設置されており、不図示の送光光学系を介して環境制御チャンバ内部の照明光学系12に接続されている。光源14は、主制御装置50によってそのレーザ発光のオン・オフや、中心波長、スペクトル半値幅、繰り返し周波数などが制御される。なお、光源として、KrFエキシマレーザ出力(波長248nm)の光源等を用いることもできる。
【0042】
前記照明光学系12は、ビーム整形光学系18、オプティカルインテグレータ(ホモジナイザ)としてのフライアイレンズ22、照明系開口絞り板24、リレー光学系28A,28B、固定レチクルブラインド30A、可動レチクルブラインド30B、ミラーM、及びコンデンサレンズ32等を備えている。なお、オプティカルインテグレータとして、ロッド型(内面反射型)インテグレータ、あるいは回折光学素子等を用いてもよい。
【0043】
前記ビーム整形光学系18内には、光源14でパルス発光されたレーザビームLBの断面形状を、該レーザビームLBの光路後方に設けられたフライアイレンズ22に効率良く入射するように整形するための、例えばシリンダレンズやビームエキスパンダ(いずれも図示省略)等が含まれている。
【0044】
前記フライアイレンズ22は、ビーム整形光学系18から出たレーザビームLBの光路上に配置され、レチクルRを均一な照度分布で照明するために多数の点光源(光源像)からなる面光源、即ち2次光源を形成する。この2次光源から射出されるレーザビームを本実施形態では、「照明光IL」と呼ぶものとする。
【0045】
フライアイレンズ22の射出側焦点面の近傍には、円板状部材から成る照明系開口絞り板24が配置されている。この照明系開口絞り板24には、ほぼ等角度間隔で、例えば通常の円形開口より成る開口絞り(通常絞り)、小さな円形開口より成りコヒーレンスファクタであるσ値を小さくするための開口絞り(小σ絞り)、輪帯照明用の輪帯状の開口絞り(輪帯絞り)、及び変形光源法用に複数の開口を偏心させて配置して成る変形開口絞り(例えばSHRINCとも呼ばれる四重極照明絞り)等が配置されている。この照明系開口絞り板24は、主制御装置50により制御されるモータ等の駆動装置40により回転されるようになっており、この回転動作により、いずれかの開口絞りが照明光ILの光路上に主制御装置50によって選択的に設定される。
【0046】
照明系開口絞り板24から出た照明光ILの光路上に、反射率が小さく透過率の大きなビームスプリッタ26が配置され、更にこの後方の光路上に、レチクルブラインド30A、30Bを介在させてリレー光学系(28A,28B)が配置されている。
【0047】
固定レチクルブラインド30Aは、レチクルRのパターン面に対する共役面から僅かにデフォーカスした面に配置されており、その固定レチクルブラインド30Aには、レチクルR上の照明領域IARを規定する矩形開口が形成されている。また、この固定レチクルブラインド30Aの近傍には、走査露光時の走査方向(ここではY軸方向とする)と、これに直交する非走査方向(X軸方向)にそれぞれ対応する方向とに光学的に対応する位置及び幅が可変の開口部を有する可動レチクルブラインド30Bが配置されている。走査露光の開始時及び終了時において、主制御装置50からの指示により、固定レチクルブラインド30Aによって規定されている照明領域IARが、可動レチクルブラインド30Bによって更に制限されることによって、不要な部分(後述するレチクルR上の回路パターン等の転写すべき部分以外の部分)の露光が防止されるようになっている。また、本実施形態では、可動レチクルブラインド30Bは、後述する空間像計測の際の照明領域の設定にも用いられる。
【0048】
一方、照明光学系12内のビームスプリッタ26で反射された照明光ILの光路上には、集光レンズ44、及び遠紫外域で感度が良く、かつ光源14のパルス発光を検出するために高い応答周波数を有するPIN型フォトダイオード等の受光素子から成るインテグレータセンサ46が配置されている。
【0049】
このようにして構成された照明系の作用を簡単に説明すると、光源14からパルス発光されたレーザビームLBは、ビーム整形光学系18に入射し、ここで後方のフライアイレンズ22に効率よく入射するようにその断面形状が整形された後、フライアイレンズ22に入射する。これにより、フライアイレンズ22の射出側焦点面(照明光学系12の瞳面)に2次光源が形成される。この2次光源から射出された照明光ILは、照明系開口絞り板24上のいずれかの開口絞りを通過した後、透過率が大きく反射率が小さなビームスプリッタ26に至る。このビームスプリッタ26を透過した照明光ILの大部分は、第1リレーレンズ28Aを経て固定レチクルブラインド30Aの矩形の開口部及び可動レチクルブラインド30Bを通過した後、第2リレーレンズ28Bを通過してミラーMによって光路が垂直下方に折り曲げられた後、コンデンサレンズ32を経て、レチクルステージRST上に保持されたレチクルR上の照明領域IARを均一な照度分布で照明する。
【0050】
一方、ビームスプリッタ26で反射された照明光ILの一部は、集光レンズ44を介してインテグレータセンサ46で受光され、インテグレータセンサ46の光電変換信号が、不図示のピークホールド回路及びA/D変換器を有する信号処理装置80を介して主制御装置50に供給される。本実施形態では、インテグレータセンサ46の計測値は、露光量制御に用いられる他、投影光学系PLに対する照射量の計算に用いられ、この照射量は、ウエハ反射率(これは、インテグレータセンサの出力と不図示の反射率モニタの出力とに基づいて求めることもできる)とともに、投影光学系PLの照明光吸収による結像特性の変化量の算出にも用いられる。
【0051】
本実施形態では、主制御装置50によって、その照射量がインテグレータセンサ46の出力に基づいて所定の時間間隔で計算され、その計算結果が照射履歴として、後述するメモリ51内に記憶されるようになっている。
【0052】
前記レチクルステージRST上には、レチクルRが、例えば真空吸着(又は静電吸着)により固定されている。これにより、レチクルR上に形成された所望の回路パターンは、第1面上に配置された状態となる。レチクルステージRSTは、ここでは、リニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系56Rにより、後述する投影光学系PLの光軸AXに垂直なXY平面内で2次元的に(X軸方向及びこれに直交するY軸方向及びXY平面に直交するZ軸回りの回転方向(θz方向)に)微少駆動可能であるとともに、レチクルステージRSTの基盤であるレチクルベースRBS上をY軸方向に指定された走査速度で移動可能となっている。
【0053】
また、レチクルステージRST上には、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)54Rからのレーザビームを反射する移動鏡52Rが固定されており、レチクルステージRSTのXY面内の位置はレチクル干渉計54Rによって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。ここで、実際には、レチクルステージRST上には走査露光時の走査方向(Y軸方向)に直交する反射面を有する移動鏡と非走査方向(X軸方向)に直交する反射面を有する移動鏡とが設けられ、レチクル干渉計54RはY軸方向に少なくとも2軸、X軸方向に少なくとも1軸設けられているが、図1ではこれらが代表的に移動鏡52R、レチクル干渉計54Rとして示されている。
【0054】
レチクル干渉計54RからのレチクルステージRSTの位置情報は、ステージ制御装置70、及びこれを介して主制御装置50に送信される。ステージ制御装置70は、主制御装置50の指示によってレチクルステージ駆動系56Rを介してレチクルステージRSTの移動を制御する。なお、レチクルステージRSTの端面を鏡面加工して前述の反射面を形成しても良い。
【0055】
また、レチクルステージRSTの−Y側端部近傍には、空間像計測用マークが形成されたマーク形成部材としてのレチクルフィデューシャルマーク板(以下、「レチクルマーク板」と略述する)RFMが、レチクルRと並ぶように配置されている。これにより、レチクルマーク板に形成された後述する計測マークPM(図3参照)も、レチクルR上に形成されている回路パターンと同様に、第1面上に配置された状態となる。このレチクルマーク板RFMは、レチクルRと同材質のガラス素材、例えば合成石英やホタル石、フッ化リチウムその他のフッ化物結晶などから構成されており、レチクルステージRSTに固定されている。なお、このレチクルマーク板RFMの具体的構成等については後述する。レチクルステージRSTは、レチクルRの全面とレチクルマーク板RFMの全面とが少なくとも投影光学系PLの光軸AXを横切ることができる程度のY軸方向の移動ストロークを有している。
【0056】
また、レチクルステージRSTには、レチクルR及びレチクルマーク板RFMの下方に、開口がそれぞれ形成されている。後述するように、この開口は照明光ILの通路となる。また、レチクルベースRBSの投影光学系PLのほぼ真上の部分(光軸AXを中心とする部分)には、照明光ILの通路となる、少なくとも照明領域IARより大きな長方形の開口が形成されている。
【0057】
また、露光装置10では、レチクルRの上方には、投影光学系PLを介してレチクルR上又はレチクルマーク板RFM上のマークと、ウエハステージWST上の後述する基準マーク板(不図示)上の基準マークとを同時に観察するための露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)アライメント系から成る一対のレチクルアライメント顕微鏡(以下、便宜上「RA顕微鏡」と呼ぶ)が設けられていてもよい。これらのRA顕微鏡の検出信号は、不図示のアライメント制御装置を介して、主制御装置50に供給されるようになっている。この場合、レチクルRからの検出光をそれぞれのRA顕微鏡に導くための不図示の偏向ミラーが移動自在に配置され、露光工程が開始されると、主制御装置50からの指令のもとで、不図示のミラー駆動装置により偏向ミラーが待避される。なお、RA顕微鏡と同等の構成は、例えば特開平7−176468号公報等に開示されており、公知であるからここでは詳細な説明は省略する。
【0058】
前記投影光学系PLは、レチクルベースRBSの図1における下方に配置されている。その光軸AXの方向をZ軸方向とする。投影光学系PLは、ここでは両側テレセントリックな縮小系であり、光軸AX方向に沿って所定間隔で配置された複数枚、例えば8枚のレンズエレメント131、132、……、138(図2参照)から成る屈折光学系が使用されている。この投影光学系PLの投影倍率は、例えば1/4(又は1/5)等となっている(以下の説明では、1/4であるとする)。このため、照明光学系12からの照明光ILによってレチクルR上のスリット状照明領域IARが照明されると、このレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してそのスリット状照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(部分倒立像)が表面にフォトレジストが塗布されたウエハW上の前記照明領域IARと共役な露光領域IAに形成される。
【0059】
図2に示されるように、投影光学系PLを構成するレンズエレメント131、132、……、138のうち、その一部、例えばレンズエレメント131、132は、それぞれ複数の駆動素子(例えばピエゾ素子など)20によって光軸AX方向及びXY面に対する傾斜方向に微小駆動可能に構成されている。また、レンズエレメント134、135の間、レンズエレメント136、137の間には、それぞれ密閉状態とされた第1、第2密閉室34、36が形成されている。これら第1、第2密閉室34、36内には、不図示のガス供給機構から圧力調整機構41を介してクリーンな気体、例えば窒素が供給されるようになっている。
【0060】
本実施形態では、各駆動素子20に与えられる駆動電圧(駆動素子の駆動量)及び第1、第2密閉室34、36内部の気体の圧力(以下、適宜「内部の圧力」又は「内部圧力」という)を調整する圧力調整機構41が、主制御装置50からの指令に応じて結像特性補正コントローラ78により制御される。これによって、投影光学系PLの結像特性、例えば、像面湾曲、ディストーション、倍率、コマ収差、非点収差、球面収差等が補正される。なお、かかる結像特性を調整する結像特性調整機構は、レンズエレメント131のような可動レンズエレメントのみによって構成しても良く、その可動レンズエレメントの数も任意で良い。但し、この場合、可動レンズエレメントの数が、フォーカスを除く、投影光学系PLの結像特性の補正可能な種類に対応するので、補正が必要な結像特性の種類に応じて可動レンズエレメントの数を定めれば良い。
【0061】
図1に戻り、前記ウエハステージWSTは、XYステージ42と、該XYステージ42上に搭載されたZチルトステージ38とを含んで構成されている。
【0062】
前記XYステージ42は、ウエハステージWSTの基盤であるウエハベース16の上面の上方に不図示のエアベアリングによって例えば数μm程度のクリアランスを介して浮上支持されている。さらに、XYステージ42は、ウエハステージ駆動系56Wを構成する不図示のリニアモータ等によって走査方向であるY軸方向(図1における紙面内左右方向)及びこれに直交するX軸方向(図1における紙面直交方向)に2次元駆動可能に構成されている。このXYステージ42上にZチルトステージ38が搭載され、該Zチルトステージ38上にウエハホルダ25が載置されている。このウエハホルダ25によって、ウエハWが真空吸着等により保持されている。これにより、ウエハWの表面は、第2面上に配置されることになる。
【0063】
Zチルトステージ38は、図2に示されるように、3つのZ位置駆動部27A、27B、27C(但し、紙面奥側のZ位置駆動部27Cは不図示)によってXYステージ42上に3点で支持されている。これらのZ位置駆動部27A〜27Cは、Zチルトステージ38下面のそれぞれの支持点を投影光学系PLの光軸方向(Z軸方向)に独立して駆動する3つのアクチュエータ(例えばボイスコイルモータなど)21A、21B、21C(但し、図2における紙面奥側のアクチュエータ21Cは不図示)と、Zチルトステージ38のZ位置駆動部27A,27B,27Cによる各支持点のアクチュエータ21A、21B、21CによるZ軸方向の駆動量(基準位置からの変位)を検出するエンコーダ23A〜23C(但し、図2における紙面奥側のエンコーダ23Cは不図示)とを含んで構成されている。
【0064】
ここで、エンコーダ23A〜23Cとしては、例えば光学式又は静電容量式等のリニアエンコーダが使用されている。本実施形態では、上記アクチュエータ21A、21B、21Cによって、Zチルトステージ38を、光軸AX方向(Z軸方向)及び光軸に直交する面(XY面)に対する傾斜方向、すなわちX軸回りの回転方向であるθx方向、Y軸回りの回転方向であるθy方向に駆動する。また、エンコーダ23A〜23Cで計測されるZチルトステージ38のZ位置駆動部27A、27B、27Cによる各支持点のZ軸方向の駆動量(基準点からの変位量)は、ステージ制御装置70及びこれを介して主制御装置50に供給される。主制御装置50は、Zチルトステージ38のZ軸方向の位置及びレベリング量(θx回転量、θy回転量)を算出する。なお、図1では、XYステージ42を駆動するリニアモータ等、及びZ位置駆動部27A〜27C(アクチュエータ21A〜21C及びエンコーダ23A〜23C)を含めてウエハステージ駆動系56Wとして示されている。
【0065】
前記Zチルトステージ38上には、ウエハレーザ干渉計(以下、「ウエハ干渉計」という)54Wからのレーザビームを反射する移動鏡52Wが固定されている。そのため、このウエハ干渉計54Wによって、Zチルトステージ38(ウエハステージWST)のXY面内の位置を、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出することができる。
【0066】
ここで、実際には、Zチルトステージ38上には、走査露光時の走査方向であるY軸方向に直交する反射面を有する移動鏡と非走査方向であるX軸方向に直交する反射面を有する移動鏡とが設けられ、これに対応してウエハ干渉計もX軸方向、Y軸方向にそれぞれ複数軸設けられ、Zチルトステージ38の5自由度方向(X軸方向、Y軸方向、θx方向、θy方向、θz方向)の位置が計測可能となっているが、図1ではこれらが代表的に移動鏡52W、ウエハ干渉計54Wとして示されている。ウエハステージWSTの位置情報(又は速度情報)は、ステージ制御装置70、及びこれを介して主制御装置50に供給されるようになっている。ステージ制御装置70は、主制御装置50の指示に応じてウエハステージ駆動系56Wを介してウエハステージWSTのXY面内の位置を制御する。なお、Zチルトステージ38の端面を鏡面加工して前述の反射面を形成するようにしてもよい。
【0067】
また、Zチルトステージ38の内部には、投影光学系PLの光学特性の計測に用いられる空間像計測装置59を構成する光学系の一部が配置されている。ここで、この空間像計測装置59の構成について詳述する。この空間像計測装置59は、図3に示されるように、Zチルトステージ38に設けられたステージ側構成部分、すなわちパターン形成部材としてのスリット板90、レンズ84、86から成るリレー光学系、光路折り曲げ用のミラー88、送光レンズ87と、ウエハステージWST外部に設けられたステージ外構成部分、すなわちミラー96、受光レンズ89、光電変換素子から成る光センサ94等とを備えている。
【0068】
これを更に詳述すると、スリット板90は、図3に示されるように、ウエハステージWSTの一端部上面に設けられた上部が開口した突設部58に対し、その開口を塞ぐ状態で上方から嵌め込まれている。このスリット板90は、平面視長方形の受光ガラス82の上面に遮光膜を兼ねる反射膜83が形成され、その反射膜83の一部に所定の計測用パターンとしての所定幅2Dのスリット状の開口パターン(以下、「スリット」と呼ぶ)122がパターンニングされている。
【0069】
前記受光ガラス82の素材としては、ここでは、ArFエキシマレーザ光の透過性の良い、合成石英、あるいはホタル石などが用いられる。
【0070】
スリット122下方のZチルトステージ38内部には、スリット122を介して鉛直下向きに入射した照明光束(像光束)の光路を水平に折り曲げるミラー88を介在させてレンズ84、86から成るリレー光学系(84、86)が配置されている。また、このリレー光学系(84、86)の光路後方のウエハステージWSTの+Y側の側壁には、リレー光学系(84、86)によって所定の光路長分リレーされた照明光束をウエハステージWSTの外部に送光する送光レンズ87が固定されている。
【0071】
送光レンズ87によってウエハステージWSTの外部に送り出される照明光束の光路上には、X軸方向に所定長さを有するミラー96が傾斜角45°で斜設されている。このミラー96によって、ウエハステージWSTの外部に送り出された照明光束の光路が鉛直上方に向けて90°折り曲げられるようになっている。この折り曲げられた光路上に送光レンズ87に比べて大径の受光レンズ89が配置されている。この受光レンズ89の上方には、光センサ94が配置されている。これら受光レンズ89及び光センサ94は、所定の位置関係を保ってケース92内に収納されている。ケース92は、取付け部材93を介してウエハベース16の上面に植設された支柱97の上端部近傍に固定されている。
【0072】
前記光センサ94としては、微弱な光を精度良く検出することが可能な光電変換素子(受光素子)、例えばフォト・マルチプライヤ・チューブ(PMT、光電子増倍管)などが用いられる。光センサ94からの光電変換信号Pは、図1の信号処理装置80を介して主制御装置50に送られるようになっている。なお、信号処理装置80は、例えば増幅器、サンプルホルダ、A/Dコンバータ(通常16ビットの分解能のものが用いられる)などを含んで構成することができる。
【0073】
なお、前述の如く、スリット122は反射膜83に形成されているが、以下においては、便宜上スリット板90にスリット122が形成されているものとして説明を行う。なお、スリット122の配置及び寸法については、後述する。
【0074】
上述のようにして構成された空間像計測装置59によると、後述する、レチクルマーク板RFMに形成された計測マークPMの投影光学系PLを介して得られる投影像(空間像)の計測の際に、投影光学系PLを透過してきた照明光ILによって空間像計測装置59を構成するスリット板90が照明されると、そのスリット板90上のスリット122を透過した照明光ILがレンズ84、ミラー88及びレンズ86、送光レンズ87を介してウエハステージWSTの外部に導き出される。そして、そのウエハステージWSTの外部に導き出された光は、ミラー96によって光路が鉛直上方に折り曲げられ、受光レンズ89を介して光センサ94によって受光され、該光センサ94からその受光量に応じた光電変換信号(光量信号)Pが信号処理装置80を介して主制御装置50に出力される。
【0075】
本実施形態では、計測マークの投影像(空間像)の計測がスリットスキャン方式によって実行されるので、その際には、送光レンズ87が、受光レンズ89及び光センサ94に対して移動することになる。そこで、空間像計測装置59では、所定の範囲内で移動する送光レンズ87を介した光がすべて受光レンズ89に入射するように、各レンズ、及びミラー96の大きさが設定されている。
【0076】
このように、空間像計測装置59では、スリット板90、レンズ84、86、ミラー88、及び送光レンズ87により、スリット122を介した光をウエハステージWST外に導出する光導出部が構成され、受光レンズ89及び光センサ94によって、ウエハステージWST外へ導出された光を受光する受光部が構成されている。この場合、これら光導出部と受光部とは、機械的に分離されている。そして、空間像計測に際してのみ、光導出部と受光部とは、ミラー96を介して光学的に接続される。
【0077】
すなわち、空間像計測装置59では、光センサ94がウエハステージWSTの外部の所定位置に設けられているため、光センサ94の発熱に起因するウエハ干渉計54Wの計測精度等に及ぼす悪影響を可能な範囲で抑制するようにしている。また、ウエハステージWSTの外部と内部とがライトガイド等によって接続されていないので、ウエハステージWSTの外部と内部とがライトガイドによって接続された場合のようにウエハステージWSTの駆動精度が悪影響を受けることはない。
【0078】
勿論、熱の影響等を無視、あるいは排除できるような場合には、光センサ94をウエハステージWSTの内部に設けてもよい。なお、空間像計測装置59を用いて行われる空間像計測方法及び収差計測方法などについては、後に詳述する。
【0079】
図1に戻り、投影光学系PLの側面には、ウエハW上のアライメントマーク(位置合わせマーク)を検出するマーク検出系としてのオフアクシス・アライメント系ALGが設けられている。本実施形態では、このアライメント系ALGとして、画像処理方式のアライメントセンサ、いわゆるFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。このアライメント系ALGは、アライメント用光源と、ハーフミラー及び対物レンズ群から成る光学系、撮像素子(CCD)等を含んで構成されている。アライメント用光源として、ブロードバンドの照明光を出射するハロゲンランプ等が用いられる。このアライメント用光源からの照明光により、光学系を介してウエハW上のアライメントマークが照明され、そのアライメントマークからの反射光を、光学系を介して撮像素子が受光する。これにより、撮像素子の受光面に、そのアライメントマークの明視野像が結像される。そして、この明視野像に対応する光電変換信号、すなわちアライメン卜マークの反射像に対応する光強度信号が撮像素子から不図示のアライメント制御装置を介して主制御装置50に供給される。主制御装置50は、この光強度信号に基づき、アライメント系ALGの検出中心を基準とするウエハW上のアライメントマークの位置を算出するとともに、その算出結果とそのときのウエハ干渉計54Wの出力であるウエハステージWSTの位置情報とに基づいて、ウエハ干渉計54Wの光軸で規定されるステージ座標系におけるアライメン卜マークの座標位置を算出するようになっている。
【0080】
さらに、本実施形態の露光装置10では、図1に示されるように、照射系60a及び受光系60bから成る斜入射方式の多点焦点位置検出系(60a,60b)が設けられている。照射系60aは、主制御装置50によってそのオン・オフが制御される光源を有しており、投影光学系PLの結像面に向けて多数のピンホール又はスリットの像を形成するための結像光束を、光軸AXに対して斜め方向よりウエハWの表面に照射する。受光系60bは、それらの結像光束がウエハW表面で反射することによって発生する反射光束を受光し、主制御装置50に対して焦点ずれを検出するための焦点ずれ信号を送信する。なお、この多点焦点位置検出系(60a、60b)と、同様の多点焦点位置検出系の詳細な構成は、例えば特開平6−283403号公報等に開示されているため、その構成についての詳細な説明は省略する。
【0081】
主制御装置50は、後述する走査露光時等に、受光系60bからの焦点ずれ信号(デフォーカス信号)、例えばSカーブ信号に基づいて、投影光学系PLの焦点ずれが零となるように、ウエハステージ駆動系56Wを介してZチルトステージ38のZ軸方向への移動及び傾斜(すなわち、θx,θy方向の回転)を制御する。すなわち、主制御装置50は、多点焦点位置検出系(60a、60b)を用いてZチルトステージ38の移動を制御することにより、照明光ILの照射領域(照明領域IARと結像関係)内で投影光学系PLの結像面とウエハWの表面とを実質的に合致させるオートフォーカス(自動焦点合わせ)及びオートレベリングを実行する。なお、投影光学系PLのフォーカスが変動した場合、主制御装置50は、例えば、受光系60b内の図示しない平行平板の反射光束の光軸に対する傾きを制御することにより、投影光学系PLのフォーカス変動量に応じて多点焦点位置検出系(60a、60b)に原点の再設定を行ってそのキャリブレーションを行うようになっている。
【0082】
また、前述した不図示の環境制御チャンバ内の投影光学系PL近傍には、大気圧変動や、温度変動を検知する環境センサ81が設けられている。この環境センサ81による計測結果は主制御装置50に供給されている。
【0083】
前記制御系は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)から成る主制御装置50を中心として、該主制御装置50の制御下にあるステージ制御装置70などを含んで構成されている。主制御装置50には、記憶装置としてのメモリ51が併設されている。このメモリ51内には、本実施形態の収差計測方法によって求められた投影光学系PLの奇関数収差の収差量などが記憶される。
【0084】
次に、本実施形態の露光装置10における走査露光動作について簡単に説明する。
【0085】
まず、不図示のレチクル搬送系によりレチクルRが搬送され、ローディングポジションにあるレチクルステージRSTにレチクルRが吸着保持される。次に、主制御装置50は、レチクルRを用いた露光に最適な照明条件をオペレータの指示に基づいて設定する。
【0086】
次いで、主制御装置50の指示の下、ステージ制御装置70によりウエハステージWST及びレチクルステージRSTの位置が制御され、主制御装置50により、レチクルR上に形成された不図示のレチクルアライメントマークの投影像(空間像)が空間像計測装置59を用いて後述するようにして計測され、レチクルパターン像の投影位置が求められる。すなわち、レチクルアライメントが行われる。なお、レチクルアライメントは、前述の一対のRA顕微鏡(不図示)により、レチクルR上の一対のレチクルアライメントマーク(不図示)の像とウエハステージWST上の基準マーク板(不図示)に形成されたレチクルアライメント用基準マークの投影光学系PLを介した像とを同時に観察し、両マーク像の相対位置関係と、そのときのレチクル干渉計54R及びウエハ干渉計54Wの計測値とに基づいてレチクルパターン像の投影位置を求めることにより行ってもよい。
【0087】
次に、主制御装置50によって、スリット板90がアライメント系ALGの直下へ位置するように、ウエハステージWSTが移動され、アライメント系ALGによって空間像計測装置59の位置基準となるスリット122が検出される。主制御装置50は、このアライメント系ALGの検出信号及びそのときのウエハ干渉計54Wの計測値、並びに先に求めたレチクルパターン像の投影位置に基づいて、レチクルRのパターン像の投影位置とアライメント系ALGとの相対位置、すなわちアライメント系ALGのベースラインを求める。
【0088】
かかるベースライン計測が終了すると、主制御装置50により、例えば特開昭61−44429号公報などに詳細に開示されるEGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)等のウエハアライメントが行われ、ウエハW上の全てのショット領域の位置が求められる。なお、このウエハアライメントの際には、ウエハW上の複数のショット領域のうちの予め定められた所定のサンプルショットのウエハアライメントマークが、アライメント系ALGを用いて、前述した如くして計測される(図3参照)。
【0089】
次いで、主制御装置50は、上で求めたウエハW上の各ショット領域の位置情報及びベースラインに基づいて、干渉計54W、54Rからの位置情報をモニタしつつ、ウエハステージWSTを第1ショット領域の走査開始位置(加速開始位置)に位置決めするとともに、レチクルステージRSTを走査開始位置(加速開始位置)に位置決めして、その第1ショット領域の走査露光を行う。
【0090】
具体的には、転写装置としての主制御装置50は、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとをY軸方向に互いに逆向きに移動させることによって相対走査を開始させる。両ステージRST、WSTがそれぞれの目標走査速度に達すると、照明光ILによってレチクルRのパターン領域が照明され始め、走査露光が開始される。なお、この走査露光の開始に先立って、光源14の発光は開始されており、主制御装置50によって可動レチクルブラインド30Bの各ブレードの移動がレチクルステージRSTの移動に対して同期制御されている。これにより、レチクルR上のパターン領域外への照明光ILの照射は遮光される。
【0091】
主制御装置50は、上述の走査露光時には、レチクルステージRSTのY軸方向の移動速度VrとウエハステージWSTのY軸方向の移動速度Vwとが前述の投影光学系PLの投影倍率に応じた速度比に維持されるようにレチクルステージRST及びウエハステージWSTを同期制御する。
【0092】
そして、レチクルRのパターン領域の異なる領域が、照明光ILで逐次照明され、パターン領域全面に対する照明が完了することにより、ウエハW上の第1ショット領域の走査露光が終了する。これにより、レチクルRの回路パターンが投影光学系PLを介して第1ショット領域に縮小転写される。
【0093】
こうして第1ショット領域の走査露光が終了すると、ウエハステージWSTを次の第2ショット領域の走査開始位置(加速開始位置)へ移動させるショット間のステッピング動作を行う。そして、その第2ショット領域に対する走査露光を上述と同様にして行う。以後、第3ショット領域以降のショット領域に対する走査露光も同様にして行う。
【0094】
このようにして、ショット間のステッピング動作とショットの走査露光動作とが繰り返され、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハW上の全てのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。
【0095】
ここで、上記の走査露光中には、投影光学系PLに一体的に取付けられたフォーカスセンサ(60a、60b)を用いて、前述したオートフォーカス、オートレベリングが行われる。
【0096】
ところで、上述した走査露光動作において、レチクルRのパターンとウエハW上のショット領域に既に形成されたパターンとを正確に重ね合わせるためには、投影光学系PLの結像特性やベースラインが正確に計測されていること、及び投影光学系PLの結像特性が所望の状態に調整されていることなどが重要である。また、ウエハ上に転写されるパターンの線幅の均一性には、投影光学系PLの結像特性のうち、コマ収差等の奇関数収差が多大な影響を与えるため、その奇関数収差の低減は精度良い露光を実現するために特に重要である。
【0097】
本実施形態では、上記のコマ収差等の奇関数収差の計測に、前述した空間像計測装置59が用いられる。以下、この空間像計測装置59による空間像計測、及び投影光学系PLのコマ収差等の奇関数収差の計測等について詳述する。
【0098】
図3には、空間像計測装置59を用いて、レチクルマーク板RFMに形成された計測マークPMの空間像が計測されている最中の状態が示されている。なお、レチクルマーク板RFMに代えて、空間像計測専用のレチクル、あるいはデバイスの製造に用いられるレチクルRに専用の計測マークを形成したものなどを用いることも可能である。ここで、レチクルマーク板RFMには、所定の箇所にY軸方向に周期性を有するライン部の幅とスペース部の幅との比(デューティ比)が1:1のラインアンドスペース(L/S)パターン(周期パターン)から成る計測マークPMが前述のように第1面上に形成されているものとする。
【0099】
ここで、空間像計測装置59を用いた空間像計測の方法について簡単に説明する。なお、前提としてスリット板90には、例えば図4(A)に示されるように、X軸方向に伸びる所定幅2Dのスリット122が形成されているものとする。
【0100】
空間像の計測にあたり、主制御装置50によって、可動レチクルブラインド30Bが不図示のブラインド駆動装置を介して駆動され、図3に示されるように、レチクルRの照明光ILの照明領域が計測マークPMを含む所定領域のみに制限される。
【0101】
この状態で、照明光ILがレチクルマーク板RFMに照射されると、図4(A)に示されるように、計測マークPMによって回折、散乱した光(照明光IL)は、投影光学系PLにより屈折され、該投影光学系PLの像面に計測マークPMの空間像(投影像)PM’が形成される。このとき、ウエハステージWSTは、空間像計測装置59のスリット板90上のスリット122の+Y側(−Y側でもよい)に前記空間像PM’が形成される位置に設定されているものとする。このときの空間像計測装置59の投影光学系PL側から見たときの上面図が図4(A)に示されている。
【0102】
そして、主制御装置50によって、ウエハステージ駆動系56Wを介してウエハステージWSTが図4(A)中に矢印Fで示されるように+Y方向に駆動されると、スリット122が空間像PM’に対してY軸方向に走査される。この走査中に、スリット122を通過する光(照明光IL)がウエハステージWST内の光導出部、ミラーM、受光レンズ89を介して光センサ24で受光され、その光電変換信号Pが信号処理装置80を介して主制御装置50に供給される。主制御装置50は、その光電変換信号Pに基づいて空間像PM’に対応する光強度分布を計測する。
【0103】
図4(B)には、上記の空間像計測の際に得られる光電変換信号(光強度信号)Pの一例が示されている。
【0104】
この場合、空間像PM’は、スリット122の走査方向(Y軸方向)の幅(2D)の影響で像が平均化する。
【0105】
したがって、スリット122をp(y)とし、空間像の強度分布をi(y)とし、観測される光強度信号をm(y)とすると、空間像の強度分布i(y)と観測される強度信号m(y)との関係は、以下の式(2)で表される。なお、この式(2)において、強度分布i(y)、強度信号m(y)の単位は、単位長さ当たりの強度であるとする。
【0106】
【数2】
【0107】
ただし、スリット122の関数p(y)は、以下の式(3)で表される。
【0108】
【数3】
【0109】
すなわち、観測される強度信号m(y)は、スリッ卜p(y)と空間像の強度分布i(y)のコンボリューションになる。
【0110】
従って、計測精度の面からは、スリット122の走査方向(Y軸方向)の幅(以下、単に「スリット幅」と呼ぶ)2Dは小さい程良い。本実施形態のように、フォト・マルチプライヤ・チューブ(PMT)を光センサ24として用いる場合には、スリット幅が非常に小さくなっても走査速度を遅くして計測に時間を掛ければ光量(光強度)の検出は可能である。しかしながら、現実には、スループットの面から空間像計測時の走査速度に一定の制約があるため、スリット幅2Dがあまりにも小さいと、スリット122を透過する光量が小さくなり過ぎて、計測が困難となってしまう。
【0111】
なお、実際には、空間像計測装置59を構成するスリット板90上には、図5に示されるように、X軸方向に伸びる所定幅2D、長さLのスリット122aと、Y軸方向に伸びる所定幅2D、長さLのスリット122bとが形成されている。ここで、2Dは例えば200nm以下に設定されており、Lは例えば16μmであって、計測マークのラインパターンの長さより短くなるように設定されている。また、スリット122bはスリット122aの−X側に約4μm隔てて配置され、かつ+Y側に約4μm隔てて配置されている。また、ウエハステージWSTの内部の光導出部、ミラーM及び受光レンズを介して光センサ24によりスリット122a、122bのいずれを透過した光をも受光が可能になっているものとする。なお、以下では、特に必要が無い限り、スリット122a、122bを区別することなくスリット122と呼ぶ。
【0112】
以上述べたように、空間像計測装置59を用いた上述の空間像計測動作によって、計測マークPMの空間像(投影像)PM’における光強度分布を計測することができる。本実施形態では、計測された光強度分布に基づいて、投影光学系PLにおける奇関数収差、例えばコマ収差を計測する。なお、奇関数収差には、低次及び高次のコマ収差が含まれているが、低次のコマ収差は高次のコマ収差に比べてレンズエレメントの微小な移動によって容易に変化しうるため、奇関数収差のうち、特に重要なのは低次のコマ収差である。したがって、本実施形態では、低次のコマ収差を、主な計測対象として説明を進める。なお、低次のコマ収差は、フリンジツェルニケ多項式では、第7項Z7及び第8項Z8で表される。
【0113】
前述のように、露光装置10において、ウエハW上に転写されるパターンの線幅の均一化を図るには、投影光学系PLのコマ収差を低減することが重要となる。コマ収差は、転写されるパターンの空間像に非対称性を生じさせる。この非対称性は、転写されるパターンの空間像に含まれる空間周波数成分の位相差によってもたらされるものである。
【0114】
図6(A)には、露光装置10の投影光学系PLの数学モデルを用いたシミュレーションによって算出された計測マークPMの空間像(投影像)PM’の詳細な光強度分布が1点鎖線で示されている。図6(A)に示されるグラフにおいて、横軸は、その空間像PM’のY軸方向の位置を示し、縦軸はその位置での光強度を示す。なお、シミュレーション条件として、計測マークPMを2.0μmL/Sパターン(周期4.0μm)とし(投影光学系PLの投影倍率を1/4としているため、空間像PM’の周期は0.5μmL/Sパターン(周期1.0μm)となる。なお、以下にシミュレーション条件として示す計測マークPMのサイズは、ウエハW上に投影されるその空間像PM’のサイズを示すものとする)、投影光学系PLの開口数(N.A.)を0.78とし、コヒーレンスファクタσを0.3とし、照明光ILの波長λを193nm(ArFエキシマレーザ光相当)とし、スリット幅2Dを200nmとし、コマ収差の収差量、例えばフリンジツェルニケ多項式におけるZ8のオフセットを−20mλとし、投影光学系PLのレンズ収差として、位相計測装置(PMI)によって計測されたデータを用いた。なお、このグラフには、空間像PM’の光強度分布の他に、その光強度分布に含まれる空間周波数成分のうち、計測マークPMのパターンの周期に対応する基本周波数成分が点線で示されており、その基本周波数成分の3倍の高調波成分、すなわち3次の高調波成分が実線で示されている。
【0115】
投影光学系PLに収差が存在すると、その射出瞳の瞳位置によって通過する光に位相差が生じる。さらに、その収差が奇関数収差である場合、各次数の回折光のウエハW上の結像位置にいわゆる横ずれが生じる。そのため、図6(A)に示される基本周波数成分と3次の高調波成分との間には、Y軸方向に相対的な位相差が生じている。
【0116】
1点鎖線で示される空間像PM’の光強度分布は、バイアス成分(不図示)、基本周波数成分(点線)、3次の高調波成分(実線)を含む高次の高調波成分との和に対応する。したがって、前述のように基本周波数成分とその高調波成分との間に相対的な位相差があった場合、その光強度分布の分布状態もその位相差に影響を受ける。図6(A)に示されるように、計測マークPMの周期パターンに対応して周期的に表れる光強度のピークは、それぞれが左右に2つのピークを有しているが、前述した基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差により、左右のピークは非対称となっている。
【0117】
図6(B)には、図6(A)のグラフにおける光強度分布の1つのピークが拡大して示されている。図6(B)に示されるように、光強度分布における左右のピークは非対称となっているため、左右のピーク波形を左右のピークの間の光強度の極小値(C点)で横軸にスライスすることによって形成される左のピーク部分の面積Aと、右のピーク部分の面積Bには差が存在する。したがって、この面積Aと面積Bとの面積差から、投影光学系PLのコマ収差を計測することができる。この面積差に基づいてコマ収差を計測する方法を面積法という。この面積法では、例えば、それらの面積差を、A−B/max(A,B)として、面積A、Bの大きい方の面積で規格化する(max(A,B)は、A,Bのうちの大きい方を意味する)。
【0118】
図7(A)には、このような規格化を用いた面積法におけるコマ収差(フリンジツェルニケ多項式の第8項(Z8))と面積差とのシミュレーション及び実計測による対応関係が示されている。図7(A)に示されるように、このような規格化による面積差は、投影光学系PLのコマ収差に対してS字状に若干変化しているのがわかる。
【0119】
この面積法では、面積Aと面積Bとの面積差を、面積Aと面積Bとの和で規格化してもよい。図7(B)には、この規格化を用いた面積法におけるコマ収差(フリンジツェルニケ多項式の第8項(Z8))と面積差とのシミュレーション及び実計測による対応関係が示されている。図7(B)に示されるように、この規格化によれば、面積差とコマ収差との線形性は、図7(A)で示される規格化によって得られる関係に比べて著しく改善される。なお、図7(A)での計測での再現性は、フリンジツェルニケ多項式におけるZ8換算で3σ=12mλであり、図7(B)での計測では3σ=14mλであった。
【0120】
以上述べたように、投影光学系PLのコマ収差は、上述した面積法でも計測可能である。しかしながら、上述の面積A及び面積Bの面積差は、空間像PM’の光強度分布に含まれる基本周波数成分とその高調波成分との位相差によって生じるものであり、その位相差を直接計測した方が、より高い線形関係(その位相差とコマ収差との関係)のもとで、より高精度に投影光学系PLのコマ収差を計測することができる。
【0121】
ところで、投影光学系PLの射出瞳における瞳関数として、低次のコマ収差、例えばフリンジツェルニケ多項式におけるZ7だけを考慮すると、その瞳関数F(ξ,η)は、以下の式(4)のように表される。なお、ξ、ηは、投影光学系PLの射出瞳上における直交座標軸である。
【0122】
【数4】
【0123】
図8(A)には、式(4)に示される投影光学系PLの射出瞳上の瞳位置と、その瞳位置に対応する位相遅れレベルとの関係が示されている。このグラフにおいて、横軸は規格化された瞳位置ρを示し、縦軸はその瞳位置における位相遅れレベルを示す。図8(A)に示されるように、投影光学系PLの射出瞳上の瞳位置に対する位相遅れのレベルは、フリンジツェルニケ多項式の第7項Z7に対応しており、その位相差レベルを瞳位置に対する関数として表現すると、その関数は規格化された瞳位置に対して奇関数となっている。
【0124】
一方、計測マークPMの空間像PM’におけるY軸方向の複素振幅分布をo(y)とし、その空間周波数スペクトルをO(s)とする(sは、空間周波数軸の流通座標である)。計測マークPMの周期パターンに含まれる空間周波数成分のうち、2つの空間周波数成分をそれぞれf’、f”とすると、そのスペクトルO(f’)、O(f”)とのビートによって生じる干渉縞に、ある重みを掛けたものを全体の空間周波数で積分したものが計測マークPMの空間像の強度分布i(y)となる。この重みをクロスモジュレーション係数(The Cross modulation coefficient)というが、このクロスモジュレーション係数は、以下の式(5)によって定義される。
【0125】
【数5】
【0126】
ここで、Fは、前述のように瞳関数であり(*は複素共役を示す)、σ(ξ,η)は有効光源である。
【0127】
したがって、部分コヒーレント照明による計測マークPMの結像式は、以下の式(6)によって表される。
【0128】
【数6】
【0129】
計測マークPMの周期パターンがL/SパターンでピッチがPh=1/fhで、50%デューティ(ラインとスペースの幅が同じ)である場合、その計測マークの空間像のN次成分(Nは奇数)の強度は、以下の式(7)で示される。ここで、計測マークPMの空間像の1次成分、すなわちN=1の成分を基本周波数成分とする。なお、fhは、計測マークPMの基本周波数である。
【0130】
【数7】
【0131】
ここで、c0は、0次のフーリエスペクトルの振幅(複素フーリエ係数)を表し、cNは、N次のフーリエスペクトルの振幅(複素フーリエ係数)を表す。N次の高調波の位相ΦhNは、以下の式(8)によって示される。
【0132】
【数8】
【0133】
本実施形態では、1次の基本周波数成分の位相Φh1と奇数(N)次の高調波成分の位相ΦhNとの位相差ΦhN−Φh1を検出する。この位相差は、例えば、N=3とした場合に、以下の式(9)で表される。
【0134】
【数9】
【0135】
図8(B)には、N次の高調波成分と1次の周波数(基本周波数)成分の位相差ΦhN−Φh1が示されている。ここで、実線はN=3のときの1次とN次の周波数成分の位相差であり、点線はN=5のときの1次とN次の周波数成分の位相差である。なお、このグラフの横軸は、規格化空間周波数Nfh/fc=Nfh/(N.A./λ)である。この規格化空間周波数は、N次の回折光の投影光学系PLの射出瞳上における規格化瞳座標上の位置と等価である。なお、このときコヒーレンスファクタσを0としている。図8(B)に示されるように、N=3の方がN=5よりも、投影光学系PLの射出瞳上における規格化瞳座標上の位置に対する感度が高く、また、3次の高調波成分の振幅の方が、5次の高調波成分の振幅も大きいため、基本周波数と5次の高調波成分との位相差より、基本周波数と3次の高調波成分との位相差に基づいてコマ収差を求めた方が、計測結果が良好になると考えられる。
【0136】
図9には、σ=0.3のときの1次の基本周波数とその3次の高調波との位相差の特性が示されている。なお、このグラフでは、ArFエキシマレーザ相当の波長193nmの光に用いられ、開口数(N.A.)が0.78の投影光学系PLについて、その投影光学系PLの収差を、位相計測装置(PMI)で計測されたデータを収差として使用した場合(▲)、使用しなかった場合(■)の特性も示されている。図9に示されるように、その位相差の特性は、位相計測装置(PMI)のデータの使用の有無でほとんど変わっていない。また、σ=0.3の場合には、瞳座標の端の方では、1次回折光が投影レンズの瞳からはみ出すようになるので、σ=0の場合(図では点線で示されている)に比べて位相差の増加が抑制されている。
【0137】
以上述べたように、計測マークPMの空間像PM’の光強度分布に含まれる1次の基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差と、投影光学系PLのコマ収差とはほぼ線形関係にあり、それらの位相差を計測すれば、投影光学系PLのコマ収差を容易に求めることができるようになる。
【0138】
しかし、そのためには、まず、1次の基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差と、投影光学系PLのコマ収差との対応関係を予め求めておく必要がある。本実施形態では、それらの対応関係をシミュレーション又は実際の計測によって予め算出しておく(シミュレーションの場合は、この算出工程が第3工程に対応する)。なお、シミュレーションでは、収差データのオフセット量を変化させて計算を実行し、実際の計測では、例えば主制御装置50の制御により、結像特性補正コントローラ78等を用いて、投影光学系PLの実際の投影レンズの傾きを変えて、コマ収差を発生させて計測する。
【0139】
図10(A)には、シミュレーション及び実際の計測によって求められた1次の基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差と、コマ収差の収差量との関係が示されている。このグラフでは、横軸はフリンジツェルニケ多項式におけるZ8のレベル、すなわち低次コマ収差の収差量を示し、縦軸は位相差のレベルを示す。また、●は、シミュレーションの値を示し、▲は、実際の計測値を示す。図10(A)に示されるように、このグラフでは、シミュレーション及び実測値とは、非常に良い一致を見せている。なお、1回のスリットスキャンでの空間像計測による収差の計測再現性(3σ)はフリンジツェルニケ多項式におけるZ8換算で16mλであった。
【0140】
なお、投影光学系PLのコマ収差は、1次の基本周波数成分と2次の高調波成分との位相差を評価量としても計測可能である。しかしながら、デューティ50%のL/Sパターンである計測マークPMの像の空間周波数成分には、2次の高調波成分が原則的には存在しないため、この場合には、他の周波数成分同士のビートを、2次の高調波成分として用いる。
【0141】
上述のように、計測マークが50%デューティでピッチ(周期)がP=1/fhのL/Sパターンの場合、O(y)はフーリエ級数によって以下の式(10)のように表される。
【0142】
【数10】
【0143】
ただし、c0、c1、c3、c5はフーリエ係数であり、それぞれ1/2、1/4、−1/12、1/20となる。
【0144】
ここで、計測マークを0.5μmL/Sパターン(ピッチP=1.0μm)とし、投影光学系PLの開口数(N.A.)を0.78とし、コヒーレント照明の場合を考えると、投影光学系PLを実際に通過する高調波は3次までとなるので、式(10)は、以下の式(11)に変換される。
【0145】
【数11】
【0146】
なお、式(11)においては、フリンジツェルニケ多項式における第7項Z7は、上述の式(4)に示されるように奇関数となるので、基本周波数成分における収差量をexp(iφ1)とし、3次の高調波成分における収差量をexp(iφ3)とした。
【0147】
上述の式(11)より、2次の高調波に相当するビート成分には、1次の基本周波数成分及び3次の高調波成分のビート成分と、1次の基本周波数成分及び1次(−1)の基本周波数成分のビート成分が考えられる。
【0148】
ここで、1次の基本周波数成分と3次の高調波成分とのビート成分Ih2_1_3は、以下の式(12)のようになる。
【0149】
【数12】
【0150】
このビート成分Ih2_1_3は、コヒーレント照明の場合には、以下の式(13)のようになる。
【0151】
【数13】
【0152】
また、1次の基本周波数成分と1次の基本周波数成分とのビート成分Ih2_1_1は、以下の式(14)のようになる。
【0153】
【数14】
【0154】
このビート成分Ih2_1_1は、コヒーレント照明の場合には、以下の式(15)のように表される。
【0155】
【数15】
【0156】
結果的に、コヒーレント照明においては、2次の高調波成分は、式(13)で示される1次の基本周波数成分と3次の高調波成分とのビート成分と、式(15)で示される1次の基本周波数成分と1次の基本周波数成分とのビート成分とのベクトル合成で求めることができ、その位相Φh2は、以下の式(16)で表される。
【0157】
【数16】
【0158】
この2次高調波成分の位相の投影光学系PLに対する感度を調べる。計測マークPMをデューティ比50%で、計測マークPMのウエハW上での投影されるサイズを、0.5μmL/Sパターン(ピッチ1.0μm)とすると、1次の回折光の投影光学系PLの射出瞳上の瞳位置はρ=0.247相当となり、3次の回折光の投影光学系PLの射出瞳上の瞳位置はρ=0.741相当となる。したがって、式(4)より、それぞれの回折光の位相遅れレベルは以下の式(17)、式(18)のようになる。
【0159】
Z7(ρ=0.247)=−0.449 (17)
Z7(ρ=0.741)=−0.261 (18)
【0160】
さらに、例えば20mλのコマ収差が発生すると、1次の基本周波数成分の位相遅れφ1は、以下の式(19)に示すようになり、3次の高調波成分の位相遅れφ3は、以下の式(20)に示すようになる。
【0161】
φ1=−0.449×20mλ=−3.23° (19)
φ3=−0.261×20mλ=−1.88° (20)
【0162】
このときの2次の高調波成分の位相Φh2は上述の式(16)より、Φh2=−21.47°となり、大幅に増大する。
【0163】
図10(B)には、1次の基本周波数成分及び2次の高調波成分の位相差と、投影光学系PLのコマ収差との対応関係(●は、シミュレーションによるものであり、▲は、実計測によるものである)が示されている。
【0164】
また、図11には、1次の基本波周波数成分及び2次の高調波成分の位相差と、1次の基本波周波数成分及び3次の高調波成分の位相差とを比較した様子が示されている。横軸は、投影光学系PLの射出瞳上の3次高調波の瞳位置を示し、縦軸は、瞳の中心での位相に対するその瞳位置での相対的な位相の変化量を示す。図11に示されるように、1次の基本波周波数成分及び3次の高調波成分の相対的な位相の変化量に比べ、1次の基本波周波数成分及び2次の高調波成分の相対的な位相の変化量は、3次回折光が通過する投影光学系PLの射出瞳上の瞳位置に応じて著しく変化しているのがわかる。したがって、1次の基本周波数成分及び2次の高調波成分との位相差をコマ収差の評価量として用いるよりも、1次の基本波周波数成分及び3次の高調波成分との位相差をコマ収差の評価量として用いた方が、投影光学系PLの射出瞳上の3次回折光の通過位置に関わらず、安定してコマ収差を求めることができる。
【0165】
次に、本実施形態における投影光学系PLのコマ収差の算出方法について具体的に説明する。なお、前提として、図10(A)に示されるような投影光学系PLのコマ収差と1次の基本周波数成分及び3次の高調波成分の位相差との線形関係がメモリ51に記録されているものとする。
【0166】
まず、上述した空間像計測動作で述べたように、主制御装置50が、ウエハステージ駆動系を介してウエハステージWSTを+Y方向に駆動してスリット122が空間像PM’に対してY軸方向に走査されることによって得られた光電変換信号Pは最終的に主制御装置50に供給される。主制御装置50は、その光電変換信号Pに基づいて空間像PM’に対応する光強度分布を取得する(第1工程)。
【0167】
図12には、計測された空間像PM’における光強度分布が示されている。主制御装置50は、この光強度分布をi(y)とすると、計測マークPMのウエハW上での周期を基準とする基本周波数成分を有するサイン関数及びコサイン関数で表現される2つのフーリエ係数(a1、b1)を算出する。
【0168】
【数17】
【0169】
また、主制御装置50は、その基本周波数成分の3倍の高調波成分を有するサイン関数及びコサイン関数で表現できる2つのフーリエ係数(a2、b2)を算出する。
【0170】
【数18】
【0171】
主制御装置50は、以上の式(21)〜式(24)に示される4つのフーリエ係数を算出し、以下の式(25)、式(26)によって、それぞれの成分の位相Φ1、Φ3を算出する。
【0172】
【数19】
【0173】
処理装置としての主制御装置50は、基本周波数成分とその3次の高調波成分の位相差Φ3−Φ1を算出する。そして、主制御装置50は、メモリ51に記憶されている図10(A)に示すような位相差とコマ収差との線形関係から、位相差Φ3−Φ1に対応する奇関数収差、例えばコマ収差を算出する(第2工程)。
【0174】
次に、調整装置としての主制御装置50は、算出されたコマ収差に基づいて、結像特性補正コントローラ78を駆動して投影光学系PLのコマ収差を調整する。投影光学系PLの結像特性が調整された後に、上述の走査露光動作を実行すれば、レチクルR上に形成された回路パターンを精度良くウエハW上に転写することができるようになる。
【0175】
以上詳細に述べたように、本実施形態では、計測マークPMの空間像PM’の光強度分布を計測し、コマ収差等の奇関数収差と線形関係にある、その光強度分布に含まれる1次の基本周波数成分と奇数次、例えば3次の高調波成分との位相差に基づいて、奇関数収差の収差量を計測する。このようにすれば、光強度分布のピークにおける左右のピークの面積差や、奇数次の高調波成分同士のビート成分である2次の高調波成分などのそれらの位相差により間接的に発生する現象を計測することなく、コマ収差によって直接的に発生する位相差に基づいて奇関数収差を評価することができるため、奇関数収差を精度良く計測することができる。
【0176】
また、上記実施形態では、計測用パターンとして、スリット122を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ピンホールパターンを用いてもよい。なお、この場合、スリット122と同レベルの光量を確保するため、ピンホールパターンの直径は、2倍程度(400μm以下)とすることが望ましい。
【0177】
なお、上記実施形態では、フリンジツェルニケ多項式におけるZ7、Z8で示される低次のコマ収差を計測対象とした。しかしながら、投影光学系PLのレンズによっては、低次のコマ収差とともに、高次のコマ収差も発生することがある。通常では、投影光学系PLの結像特性に対しては、高次のコマ収差よりも低次のコマ収差の影響の方が大きいが、現状では、投影光学系PLのレンズエレメントの傾き、上下動によってコマ収差をより高精度に除去可能となっているため、高次のコマ収差を低次のコマ収差から分離した方が望ましい場合もある。
【0178】
そこで、低次のコマ収差と高次のコマ収差とを分離する方法を以下に説明する。なお、この方法では、高次のコマ収差として、フリンジツェルニケ多項式におけるZ14、Z15を対象とする。なお、これらの高次コマ収差が発生しても、前述の1次の基本周波数成分と、奇数次、例えば3次の高調波成分との位相差は変化する。したがって、低次コマ収差と高次コマ収差とが同時に発生している場合、1次の基本周波数成分と奇数次の高調波成分との位相差は、Z7及びZ14(又はZ8及びZ15)の両方に起因する位相差の合計として計測されることになる。
【0179】
そこで、ここでは、計測マークとして、ピッチ(周期)が異なる周期パターンを有する2つの計測マークを用意する。そして、主制御装置50の制御の下、前述の第1工程を、それぞれの計測マークについて実行し、それぞれの計測マークについての1次の基本周波数成分とその3次の高調波成分との位相差を求める(第4工程)。
【0180】
図13には、1μmL/Sパターン(ピッチ2μm)の周期パターンを有する計測マークと、0.5μmL/Sパターン(ピッチ1μm)の計測マークとを、それぞれ計測マークとした場合における、低次コマ収差(Z7)及び高次コマ収差(Z14)の収差量に対する感度(シミュレーション)が示されている。図13(A)には、1.0μmL/Sパターンのときの低次コマ収差(Z7)の感度が示されており、図13(B)には、1.0μmL/Sパターンのときの高次コマ収差(Z14)の感度が示されており、図13(C)には、0.5μmL/Sパターンのときの低次コマ収差(Z7)の感度が示されており、図13(D)には、0.5μmL/Sパターンのときの高次コマ収差(Z14)の感度が示されている。なお、ここで、計測された収差量は、1次の基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差に基づく収差量であり、投影光学系PLの開口数(N.A.)を0.78とし、照明光の波長を193nmとし、コヒーレンスファクタσを0.3とし、コマ収差以外の収差の収差量を0としてシミュレーションを行って得た収差量である。
【0181】
図13(A)〜図13(D)において、各グラフの直線の傾きは、その条件におけるコマ収差のツェルニケ感度を示している。なお、以下の式(27)〜式(30)に、図13(A)〜図13(D)における直線の式、すなわちツェルニケ感度の式を示す。
【0182】
y=0.1002x+2.8148 (27)
y=−0.0196x+2.811 (28)
y=−0.114x+2.8067 (29)
y=0.073x+2.8076 (30)
【0183】
図13に示されるように、計測マークの周期パターンの周期によって、低次のコマ収差と高次のコマ収差とのツェルニケ感度がそれぞれ異なるので、低次コマ収差(Z7)と高次コマ収差(Z14)との分離が可能となる。0.5μmL/Sパターン(ピッチ1μm)での1次の基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差をΦ(L/S=0.5)とし、1.0μmL/Sパターン(ピッチ1μm)での1次の基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差をΦ(L/S=1.0)とする。さらに、図13(A)より得られる1.0μmのZ7に対するツェルニケ感度α1(=0.1002)、図13(B)より得られる1.0μmのZ14に対するツェルニケ感度β1(=−0.0196)、図13(C)より得られる0.5μmのZ7に対するツェルニケ感度α2(=−0.114)、図13(D)より得られる0.5μmのZ14に対するツェルニケ感度β2(=0.073)を用いると、以下の式(31)、式(32)が得られる。
【0184】
Φ(L/S=1.0)=α1Z7+β1Z14 (31)
Φ(L/S=0.5)=α2Z7+β2Z14 (32)
【0185】
したがって、主制御装置50によって、式(31)、(32)を連立方程式としてそれらを解けば、計測された収差量から、低次コマ収差(Z7)と高次コマ収差(Z14)とを分離することができる(第5工程)。
【0186】
なお、さらに他のコマ収差をZ7及びZ14から分離したい場合、すなわち3つのコマ収差成分を分離する場合には、さらに異なるピッチの周期パターン(計3つの計測パターン)の空間像を計測し、その空間像における1次の基本周波数成分とその3次の高調波成分との位相差を計測すれば、3つの方程式により連立方程式を作成して、それらを解けばよい。
【0187】
また、上記実施形態では、レチクルマーク板RFMに計測マークPMだけ形成されているとしたが、他の計測マークを形成しておいてもよい。例えば、その周期方向がX軸方向に配置されたL/Sパターンの計測マークなどを形成し、X軸方向のスリットスキャン動作を実行して(この場合には、スリット板90上のスリット122bを用いる)、空間像を計測するようにしてもよい。
【0188】
また、上記実施形態では、空間像計測装置59の光導出部と受光部とを機械的に分離しているとしたが、これらを可撓な光ファイバケーブルで接続するようにしてもよい。
【0189】
また、上記実施形態では、空間像の光強度分布に含まれる1次の基本周波数成分とその3次の高調波成分との位相差に基づいて投影光学系のコマ収差を求めたが、前述のように、1次の基本周波数成分とその5次又はさらに高次の奇数次の高調波成分との位相差に基づいて投影光学系のコマ収差を求めるようにしてもよい。しかしながら、それら奇数次の高調波成分の中では、3次の高調波成分の大きさが最も大きいため、3次の高調波成分を用いた方が最も精度良く、コマ収差を求めることができる。
【0190】
また、上記実施形態では、奇関数収差としてコマ収差を計測対象としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、フリンジツェルニケ多項式における各項の動径関数が奇関数である収差(例えばZ10等)であれば、その収差量を計測可能である。
【0191】
また、上記実施形態では、露光用照明光としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)などを用いる場合について説明したが、これに限らず、前述のKrFエキシマレーザ光(波長248nm)、あるいはg線(波長436nm)、i線(波長365nm)、F2レーザ光(波長157nm)、銅蒸気レーザ、YAGレーザの高調波等を露光用照明光として用いることができる。
【0192】
また、上記実施形態では、投影光学系として縮小系を用いる場合について説明したが、これに限らず、投影光学系として等倍あるいは拡大系を用いても良いし、屈折系、反射屈折系、及び反射系のいずれであっても良い。
【0193】
なお、上記実施形態では、本発明がステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置に適用された場合について説明したが、これに限らず、マスクと基板とを静止した状態でマスクのパターンを基板に転写するとともに、基板を順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート型の露光装置等他のタイプの露光装置にも本発明は適用することができる。
【0194】
また、本発明は、半導体製造用の露光装置に限らず、液晶表示素子などを含むディスプレイの製造に用いられる、デバイスパターンをガラスプレート上に転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられるデバイスパターンをセラミックウエハ上に転写する露光装置、及び撮像素子(CCDなど)、マイクロマシン、DNAチップなどの製造に用いられる露光装置などにも適用することができる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。ここで、DUV(遠紫外)光やVUV(真空紫外)光などを用いる露光装置では一般的に透過型レチクルが用いられ、レチクル基板としては石英ガラス、フッ素がドープされた石英ガラス、螢石、フッ化マグネシウム、又は水晶などが用いられる。また、プロキシミティ方式のX線露光装置、又は電子線露光装置などでは透過型マスク(ステンシルマスク、メンブレンマスク)が用いられ、マスク基板としてはシリコンウエハなどが用いられる。
【0195】
半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置によりレチクルのパターンをウエハに転写するステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。
【0196】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の収差計測方法によれば、投影光学系の収差を精度良く計測することができるという効果がある。
【0197】
また、本発明の露光方法及び装置によれば、マスクのパターンを基板上に精度良く転写することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1のウエハステージ近傍を拡大し、Zチルトステージの駆動装置とともに示す図である。
【図3】図1の空間像計測装置の内部構成を示す図である。
【図4】図4(A)は、スリット板上のスリットを示す図であり、図4(B)は、空間像計測の際に得られる光電変換信号の一例を示す図である。
【図5】実際のスリット板上のスリットの配置を示す図である。
【図6】図6(A)は、シミュレーションによって算出された計測マークの空間像の詳細な光強度分布を示す図であり、図6(B)は、その光強度分布の1つのピークを拡大して示す図である。
【図7】図7(A)は、規格化された面積差とコマ収差とのシミュレーション及び実計測による対応関係を示す図であり、図7(B)は、もう1つの規格化方法で規格化された面積差とコマ収差とのシミュレーション及び実計測による対応関係を示す図である。
【図8】図8(A)は、投影光学系の射出瞳上の瞳位置と、その瞳位置に対応する位相遅れレベルとの関係を示すグラフであり、図8(B)は、1次の周波数(基本周波数)成分とそのN次の高調波成分との位相差を示すグラフである。
【図9】1次の基本周波数成分とその3次の高調波成分との位相差の特性を示すグラフである。
【図10】図10(A)は、シミュレーション及び実際の計測によって求められた1次の基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差と、コマ収差の収差量との関係を示すグラフであり、図10(B)は、シミュレーション及び実際の計測によって求められた1次の基本周波数成分と2次の高調波成分との位相差と、コマ収差の収差量との関係を示すグラフである。
【図11】1次の基本波周波数成分及び2次の高調波成分の位相差と、1次の基本波周波数成分及び3次の高調波成分の位相差とを比較を示すグラフである。
【図12】計測された空間像PM’における光強度分布を示すグラフである。
【図13】図13(A)は、1.0μmL/Sパターンのときの低次コマ収差の感度を示すグラフであり、図13(B)は、1.0μmL/Sパターンのときの高次コマ収差の感度を示すグラフであり、図13(C)は、0.5μmL/Sパターンのときの低次コマ収差の感度を示すグラフであり、図13(D)は、0.5μmL/Sパターンのときの高次コマ収差の感度を示すグラフである。
【符号の説明】
12…照明光学系(照明ユニット)、14…光源(照明ユニット)、50…主制御装置(処理装置、調整装置、転写装置)、59…空間像計測装置、78…結像特性補正コントローラ、80…信号処理装置、PM…計測マーク、PL…投影光学系、R…レチクル(マスク)、RFM…レチクルマーク板(マーク形成部材)、RST…レチクルステージ、W…ウエハ(感光物体)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、収差計測方法、露光方法及び露光装置に係り、さらに詳しくは、投影光学系の収差を計測する収差計測方法、該収差計測方法を含む露光方法、及び投影光学系の収差を計測する機能を有する露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体素子又は液晶表示素子等をフォトリソグラフィ工程で製造する際に、フォトマスク又はレチクル(以下、「レチクル」と総称する)のパターンを、投影光学系を介して表面にフォトレジスト等の感光剤が塗布されたウエハ又はガラスプレート等の基板上に転写する投影露光装置、例えばステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置(いわゆるステッパ)や、ステップ・アンド・スキャン方式の走査型投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ)等が用いられている。
【0003】
ところで、半導体素子等を製造する場合には、異なる回路パターンを感光物体としての基板上に幾層にも積み重ねて形成する必要があるため、回路パターンが描画されたレチクルを、基板上の各ショット領域に既に形成されたパターンに正確に重ね合わせて転写可能であることが求められる。かかる重ね合わせ転写を精度良く実行するためには、投影光学系の光学特性が所望の状態に調整されていることが必要不可欠である。
【0004】
この投影光学系の光学特性を適切に調整するには、まず、その光学特性を正確に計測する必要がある。この光学特性の計測方法として、所定のパターンが形成された計測用マスクを用いて露光を行い、そのパターンの投影像が転写形成された基板を現像することによって得られるレジスト像を計測した計測結果に基づいて光学特性を算出する方法(以下、「焼き付け法」と呼ぶ)が、主として用いられている。これに対し、実際に露光を行うことなく、計測用マスクの計測マークが照明光により照明され投影光学系によって投影され形成された計測用パターンの空間像(投影像)を計測し、この計測結果に基づいてその投影光学系の光学特性を算出する方法(以下、「空間像計測法」と呼ぶ)も行われている。かかる空間像の計測及びこれに基づく投影光学系の結像特性の算出については、例えば、特許文献1等に詳細に開示されている。
【0005】
また、上述の空間像計測法を用い、例えば、ピッチが異なる複数の周期パターンの空間像をそれぞれ計測し、それぞれ空間像の空間周波数成分間の相対的な位置ずれに基づいて投影光学系の結像特性の1つであるコマ収差を計測する方法や、あるピッチの周期パターンの空間像を計測し、その空間周波数成分のうち、そのパターンのピッチに対応する空間周波数を有する基本周波数成分と、その2次の高調波成分との相対的な位置ずれに基づいてそのコマ収差を計測する方法などが開示されている(例えば、特許文献2、特許文献3等参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−209031号公報(段落0024−段落0085、第1図〜第10図)
【特許文献2】
特開平11−297614号公報(段落0014−段落0075、第1図〜第9図)
【特許文献3】
特開平11−297615号公報(段落0013−段落0101、第1図〜第11図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、空間像計測方法を用いてコマ収差を計測する上述の2つの方法には、以下に示す不都合があった。
【0008】
(1) マスク上におけるピッチが異なる複数の周期パターンの形成位置に、製造誤差、例えば周期パターン同士の形成位置のオフセットがあると、計測された位置ずれ量にそのオフセットが含まれてしまい、そのオフセットがコマ収差の計測精度の低下の原因となる。
【0009】
(2) 空間像に含まれる2次の高調波成分は、一般的にその成分の大きさが小さいため、周期パターンの製造誤差に対する感度が高く、その製造誤差による影響を受けやすいうえ、空間像を計測する計測器の入力−出力特性の非線形性の影響も受けやすいため、コマ収差の計測精度の向上に限界がある。
【0010】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、投影光学系の収差を精度良く計測することができる収差計測方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、マスクのパターンを基板上に精度良く転写することができる露光方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の第3の目的は、マスクのパターンを基板上に精度良く転写することができる露光装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、第1面上のパターンを第2面上に投影する投影光学系(PL)の収差を計測する収差計測方法であって、前記第1面上に配置された周期パターンを含む少なくとも1つの計測マーク(例えばPM)が照明光(IL)により照明され前記投影光学系によって前記第2面上に投影されることによって前記第2面上に形成される前記計測マークの空間像(例えばPM’)に対し、所定の計測用パターンを前記第2面上で走査させ、該走査中に前記所定の計測用パターンを介して得られる前記照明光を光電検出し、前記空間像に対応する光強度信号を得る第1工程と;前記光強度信号に含まれる基本周波数成分と奇数次の高調波成分との位相差に基づいて、前記投影光学系の射出瞳上の波面収差を示す収差関数を展開することによって得られる動径多項式の各項(Zi)の動径関数が奇関数で表される奇関数収差の収差量を算出する第2工程と;を含む収差計測方法である。
【0014】
一般に、投影光学系の射出瞳上の波面収差を示す収差関数(W(ρ、θ):Wは極座標で表わされており、ρは、投影光学系PLの射出瞳の半径方向の規格化された瞳位置、θは角度である。)は、その動径ρと角度θの変数が分離した形で表される完全直交系の動径多項式、例えば、以下の式(1)に示されるフリンジツェルニケの多項式を用いて級数展開することが可能である。
【0015】
【数1】
【0016】
ここで、Ziは、投影光学系の諸収差の大きさを表す係数である。なお、一例として第1項〜第37項までのfiを例示すると、次の表1のようになる。
【0017】
【表1】
【0018】
上述の表1に示されるように、動径多項式の各項のfi(ρ,θ)は、動径(ρ)と角度(θ)の変数が分離した形で表現される。このうち、動径(ρ)で表される部分を動径関数と呼ぶ。
【0019】
また、動径多項式の各項は、その動径関数が奇関数であるものと偶関数であるものとに分類することができる。例えば、表1に示されるf7及びf8については、その動径関数がともに3ρ3−2ρで、奇関数であり、f5及びf6は、その動径関数がともにρ2で偶関数となっている。一般に、その角度成分mθ(mを自然数とする)のmが奇数である場合には、その動径関数が奇関数となり、mが偶数である場合には、その動径関数が偶関数となる。このように、動径関数が奇関数で表される収差を奇関数収差と呼び、偶関数で表される収差を偶関数収差と呼ぶ。
【0020】
ところで、一般的に、第1面上のパターンを第2面上に投影する投影光学系は、第1面上のパターンからの複数の回折光が第2面上の結像面に集光するように作用する。投影光学系の収差が存在する場合には、それらの回折光が通過する投影光学系の射出瞳における位置がそれぞれ異なるため、第2面上における結像状態がその収差の影響を受ける。特に、その投影光学系に奇関数収差が存在する場合、第2面上における各次の回折光の結像位置は、第2面内方向にずれる(これを横ずれと呼ぶ)。したがって、第1面上の計測マークが周期パターンを含んでいる場合、その周期パターンの周期に対応する空間周波数を基本周波数とすると、第2面上における光強度信号におけるその基本周波数成分と、その奇数次の高調波成分とには、第2面上において相対的な位相差が生ずる。
【0021】
本出願人は、その基本周波数成分と奇数次の高調波成分との位相差と、奇関数収差の収差量がほぼ線形関係にあることをつきとめた。本発明では、その線形関係を利用して、その周期パターンを含む計測マークの空間像に対応する光強度信号を得て、その光強度信号に含まれる基本周波数成分と奇数次の高調波成分との位相差を計測し、計測された位相差に基づいて投影光学系の奇関数収差の収差量を算出する。このようにすれば、1つの周期パターンだけで奇関数収差を計測することができるため、周期パターンの製造誤差によるオフセットに関わらず、精度良く奇関数収差を求めることができる。
【0022】
なお、基本周波数成分と偶数次、例えば2次の高調波成分との位相差に基づいて奇関数収差の収差量を求めることも可能であるが、特に、計測マークの周期パターンが、デューティ比が50%で、その強度が矩形状に変化するようなパターンである場合には、偶数次の高調波成分のスペクトルの大きさがほぼ0となるため、奇数次の高調波成分を用いた方が、周期パターンの製造誤差や空間像を計測する計測器の入力−出力特性に影響を受けにくくなる。そのため、前述の奇関数収差を精度良く算出することができる。
【0023】
この場合、請求項2に記載の収差計測方法のごとく、前記第2工程では、前記光強度信号に含まれる基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差に基づいて、前記収差量を算出することとすることができる。
【0024】
これによれば、3次の高調波成分は、奇数次の高調波成分の中で、最もその成分の大きさが大きい成分であるため、その3次の高調波成分を用いれば、基本周波数成分との位相差の周期パターンの製造誤差等に対するS/N比を最も大きくすることができるので、投影光学系の奇関数収差を最も精度良く算出することができる。
【0025】
上記請求項1又は2に記載の収差計測方法において、請求項3に記載の収差計測方法のごとく、前記動径多項式は、フリンジツェルニケ多項式であることとすることができる。
【0026】
また、上記請求項1〜3のいずれか一項に記載の収差計測方法において、請求項4に記載の収差計測方法のごとく、前記奇関数収差は、コマ収差であることとすることができる。
【0027】
例えば、フリンジツェルニケ多項式において、3次以上の1θ項の係数(Z7,Z8,Z14,Z15,Z23,Z24,Z34,Z35)等はコマ収差成分を示す。これらは奇関数収差に含まれ、本発明では、奇関数収差としてこれらのコマ収差の収差量を算出することができる。
【0028】
上記請求項1〜4のいずれか一項に記載の収差計測方法において、前記第2工程に先立って、前記位相差と前記奇関数収差の収差量との関係を、前記投影光学系の数学モデルを用いたシミュレーションによって算出する第3工程をさらに含むこととすることができる。
【0029】
また、上記請求項1〜5のいずれか一項に記載の収差計測方法において、請求項6に記載の収差計測方法のごとく、前記第1工程を、前記周期パターンの周期がそれぞれ異なる複数の前記計測マークについて実行する第4工程と;計測マーク毎に得られる前記位相差と、各位相差の変化に対応する幾つかの奇関数収差の感度とに基づいて、前記幾つかの奇関数収差の各々の収差量を算出する第5工程と;をさらに含むこととすることができる。
【0030】
前述のように、奇関数収差には、低次及び高次のコマ収差等が含まれており、低次のコマ収差と高次のコマ収差とを分離する必要がある場合もある。一方、周期が異なる周期パターンでは、0次回折光の進行方向と各次の回折光の進行方向とのなす角度の大きさはそれぞれ異なっており、それぞれの周期によって、同じ次数の回折光の投影光学系の射出瞳上の通過位置も異なる。そのため、周期パターンの周期が異なれば、その周期パターン毎に得られる位相差と、各位相差の変化に対応する各奇関数収差(低次のコマ収差及び高次のコマ収差)の感度とは当然異なったものとなる。したがって、周期パターン毎に求められる位相差と、その周期パターン毎に異なる奇関数収差の感度とを用いれば、それぞれの奇関数収差、例えば低次のコマ収差と高次のコマ収差とを抽出することが可能となる。
【0031】
上記請求項1〜6のいずれか一項に記載の収差計測方法において、請求項7に記載の収差計測方法のごとく、記所定の計測用パターンは、スリットパターンであることとすることができる。
【0032】
また、上記請求項1〜6のいずれか一項に記載の収差計測方法において、請求項8に記載の収差計測方法のごとく、前記所定の計測用パターンは、ピンホールパターンであることとすることができる。
【0033】
請求項9に記載の発明は、マスク(R)のパターンを、投影光学系(PL)を介して感光物体(W)上に転写する露光方法であって、請求項1〜8のいずれか一項に記載の収差計測方法によって、前記投影光学系の収差を計測する工程と;前記計測された収差に基づいて、前記投影光学系の結像特性を調整する工程と;前記調整後の前記投影光学系を介して前記パターンを前記感光物体上に転写する工程と;を含む露光方法である。
【0034】
これによれば、請求項1〜8のいずれか一項に記載の収差計測方法によって、投影光学系の奇関数収差を精度良く計測することができ、その計測された収差に基づいて、投影光学系の結像特性を調整することができるため、結像特性が適切な状態に調整された投影光学系を介してマスクのパターンを感光物体に精度良く転写することが可能となる。
【0035】
請求項10に記載の発明は、第1面上のマスク(R)のパターンを、投影光学系(PL)を介して第2面上の感光物体(W)上に転写する露光装置であって、前記第1面上に配置されたマーク形成部材(RFM)を照明光により照明する照明ユニット(12等)と;前記マーク形成部材を介した前記照明光が前記投影光学系により前記第2面上に投射されることにより前記第2面上に形成される前記マーク形成部材に形成された周期パターンを含む少なくとも1つの計測マークの空間像に対して、所定の計測用パターンを前記第2面上で走査し、該走査中に前記所定の計測用パターンを介して得られる前記照明光を光電検出し、前記空間像に対応する光強度信号を得る空間像計測装置(59)と;前記光強度信号に含まれる基本周波数成分と奇数次の高調波成分との位相差に基づいて、前記投影光学系の射出瞳上の波面収差を示す収差関数を展開することによって得られる動径多項式の各項の動径関数が奇関数で表される奇関数収差の収差量を算出する処理装置(50)と;前記算出された収差量に基づいて、前記投影光学系の結像特性を調整する調整装置(50)と;前記照明ユニットからの照明光で前記第1面上に配置されたパターンを照明して前記調整後の前記投影光学系を介して前記パターンを前記感光物体上に転写する転写装置(50)と;を備える露光装置である。
【0036】
これによれば、空間像計測装置によって計測された光強度信号に含まれる基本周波数成分と奇数次の高調波成分との位相差に基づいて、投影光学系の奇関数収差が処理装置によって精度良く計測される。さらに、計測された収差に基づいて、投影光学系の結像特性を調整装置によって調整し、結像特性が適切な状態に調整された投影光学系を介してマスクのパターンを転写装置によって感光物体に精度良く転写することが可能となる。
【0037】
この場合、請求項11に記載の露光装置のごとく、前記パターンが形成されたマスクを保持するマスクステージを更に備え、前記マーク形成部材は、前記マスクステージ上に配置された基準マーク板であることとすることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図13に基づいて説明する。
【0039】
図1には、本発明の一実施形態に係る露光装置10の概略的な構成が示されている。この露光装置10は、ステップ・アンド・スキャン方式の走査型投影露光装置、すなわちいわゆるスキャニング・ステッパである。
【0040】
この露光装置10は、光源14及び照明光学系12を含む照明系(照明ユニット)、マスクとしてのレチクルRを保持するマスクステージとしてのレチクルステージRST、投影光学系PL、感光物体としてのウエハWを保持し、図1に示すX軸及びY軸を含むXY平面内を自在に移動可能なウエハステージWST、及びこれらを制御する制御系等を、装置の一構成部分として備えている。また、上記各構成部分のうち、光源14及び制御系以外の部分は、実際には、内部の温度、圧力等の環境条件が高精度に制御され一定に維持されている不図示の環境制御チャンバ(エンバイロンメンタル・チャンバ)内に収容されている。
【0041】
前記光源14は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)を出力するエキシマレーザ光源である。この光源14は、実際には、上記環境制御チャンバが設置されるクリーンルームとは別のクリーン度の低いサービスルーム等に設置されており、不図示の送光光学系を介して環境制御チャンバ内部の照明光学系12に接続されている。光源14は、主制御装置50によってそのレーザ発光のオン・オフや、中心波長、スペクトル半値幅、繰り返し周波数などが制御される。なお、光源として、KrFエキシマレーザ出力(波長248nm)の光源等を用いることもできる。
【0042】
前記照明光学系12は、ビーム整形光学系18、オプティカルインテグレータ(ホモジナイザ)としてのフライアイレンズ22、照明系開口絞り板24、リレー光学系28A,28B、固定レチクルブラインド30A、可動レチクルブラインド30B、ミラーM、及びコンデンサレンズ32等を備えている。なお、オプティカルインテグレータとして、ロッド型(内面反射型)インテグレータ、あるいは回折光学素子等を用いてもよい。
【0043】
前記ビーム整形光学系18内には、光源14でパルス発光されたレーザビームLBの断面形状を、該レーザビームLBの光路後方に設けられたフライアイレンズ22に効率良く入射するように整形するための、例えばシリンダレンズやビームエキスパンダ(いずれも図示省略)等が含まれている。
【0044】
前記フライアイレンズ22は、ビーム整形光学系18から出たレーザビームLBの光路上に配置され、レチクルRを均一な照度分布で照明するために多数の点光源(光源像)からなる面光源、即ち2次光源を形成する。この2次光源から射出されるレーザビームを本実施形態では、「照明光IL」と呼ぶものとする。
【0045】
フライアイレンズ22の射出側焦点面の近傍には、円板状部材から成る照明系開口絞り板24が配置されている。この照明系開口絞り板24には、ほぼ等角度間隔で、例えば通常の円形開口より成る開口絞り(通常絞り)、小さな円形開口より成りコヒーレンスファクタであるσ値を小さくするための開口絞り(小σ絞り)、輪帯照明用の輪帯状の開口絞り(輪帯絞り)、及び変形光源法用に複数の開口を偏心させて配置して成る変形開口絞り(例えばSHRINCとも呼ばれる四重極照明絞り)等が配置されている。この照明系開口絞り板24は、主制御装置50により制御されるモータ等の駆動装置40により回転されるようになっており、この回転動作により、いずれかの開口絞りが照明光ILの光路上に主制御装置50によって選択的に設定される。
【0046】
照明系開口絞り板24から出た照明光ILの光路上に、反射率が小さく透過率の大きなビームスプリッタ26が配置され、更にこの後方の光路上に、レチクルブラインド30A、30Bを介在させてリレー光学系(28A,28B)が配置されている。
【0047】
固定レチクルブラインド30Aは、レチクルRのパターン面に対する共役面から僅かにデフォーカスした面に配置されており、その固定レチクルブラインド30Aには、レチクルR上の照明領域IARを規定する矩形開口が形成されている。また、この固定レチクルブラインド30Aの近傍には、走査露光時の走査方向(ここではY軸方向とする)と、これに直交する非走査方向(X軸方向)にそれぞれ対応する方向とに光学的に対応する位置及び幅が可変の開口部を有する可動レチクルブラインド30Bが配置されている。走査露光の開始時及び終了時において、主制御装置50からの指示により、固定レチクルブラインド30Aによって規定されている照明領域IARが、可動レチクルブラインド30Bによって更に制限されることによって、不要な部分(後述するレチクルR上の回路パターン等の転写すべき部分以外の部分)の露光が防止されるようになっている。また、本実施形態では、可動レチクルブラインド30Bは、後述する空間像計測の際の照明領域の設定にも用いられる。
【0048】
一方、照明光学系12内のビームスプリッタ26で反射された照明光ILの光路上には、集光レンズ44、及び遠紫外域で感度が良く、かつ光源14のパルス発光を検出するために高い応答周波数を有するPIN型フォトダイオード等の受光素子から成るインテグレータセンサ46が配置されている。
【0049】
このようにして構成された照明系の作用を簡単に説明すると、光源14からパルス発光されたレーザビームLBは、ビーム整形光学系18に入射し、ここで後方のフライアイレンズ22に効率よく入射するようにその断面形状が整形された後、フライアイレンズ22に入射する。これにより、フライアイレンズ22の射出側焦点面(照明光学系12の瞳面)に2次光源が形成される。この2次光源から射出された照明光ILは、照明系開口絞り板24上のいずれかの開口絞りを通過した後、透過率が大きく反射率が小さなビームスプリッタ26に至る。このビームスプリッタ26を透過した照明光ILの大部分は、第1リレーレンズ28Aを経て固定レチクルブラインド30Aの矩形の開口部及び可動レチクルブラインド30Bを通過した後、第2リレーレンズ28Bを通過してミラーMによって光路が垂直下方に折り曲げられた後、コンデンサレンズ32を経て、レチクルステージRST上に保持されたレチクルR上の照明領域IARを均一な照度分布で照明する。
【0050】
一方、ビームスプリッタ26で反射された照明光ILの一部は、集光レンズ44を介してインテグレータセンサ46で受光され、インテグレータセンサ46の光電変換信号が、不図示のピークホールド回路及びA/D変換器を有する信号処理装置80を介して主制御装置50に供給される。本実施形態では、インテグレータセンサ46の計測値は、露光量制御に用いられる他、投影光学系PLに対する照射量の計算に用いられ、この照射量は、ウエハ反射率(これは、インテグレータセンサの出力と不図示の反射率モニタの出力とに基づいて求めることもできる)とともに、投影光学系PLの照明光吸収による結像特性の変化量の算出にも用いられる。
【0051】
本実施形態では、主制御装置50によって、その照射量がインテグレータセンサ46の出力に基づいて所定の時間間隔で計算され、その計算結果が照射履歴として、後述するメモリ51内に記憶されるようになっている。
【0052】
前記レチクルステージRST上には、レチクルRが、例えば真空吸着(又は静電吸着)により固定されている。これにより、レチクルR上に形成された所望の回路パターンは、第1面上に配置された状態となる。レチクルステージRSTは、ここでは、リニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系56Rにより、後述する投影光学系PLの光軸AXに垂直なXY平面内で2次元的に(X軸方向及びこれに直交するY軸方向及びXY平面に直交するZ軸回りの回転方向(θz方向)に)微少駆動可能であるとともに、レチクルステージRSTの基盤であるレチクルベースRBS上をY軸方向に指定された走査速度で移動可能となっている。
【0053】
また、レチクルステージRST上には、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)54Rからのレーザビームを反射する移動鏡52Rが固定されており、レチクルステージRSTのXY面内の位置はレチクル干渉計54Rによって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出される。ここで、実際には、レチクルステージRST上には走査露光時の走査方向(Y軸方向)に直交する反射面を有する移動鏡と非走査方向(X軸方向)に直交する反射面を有する移動鏡とが設けられ、レチクル干渉計54RはY軸方向に少なくとも2軸、X軸方向に少なくとも1軸設けられているが、図1ではこれらが代表的に移動鏡52R、レチクル干渉計54Rとして示されている。
【0054】
レチクル干渉計54RからのレチクルステージRSTの位置情報は、ステージ制御装置70、及びこれを介して主制御装置50に送信される。ステージ制御装置70は、主制御装置50の指示によってレチクルステージ駆動系56Rを介してレチクルステージRSTの移動を制御する。なお、レチクルステージRSTの端面を鏡面加工して前述の反射面を形成しても良い。
【0055】
また、レチクルステージRSTの−Y側端部近傍には、空間像計測用マークが形成されたマーク形成部材としてのレチクルフィデューシャルマーク板(以下、「レチクルマーク板」と略述する)RFMが、レチクルRと並ぶように配置されている。これにより、レチクルマーク板に形成された後述する計測マークPM(図3参照)も、レチクルR上に形成されている回路パターンと同様に、第1面上に配置された状態となる。このレチクルマーク板RFMは、レチクルRと同材質のガラス素材、例えば合成石英やホタル石、フッ化リチウムその他のフッ化物結晶などから構成されており、レチクルステージRSTに固定されている。なお、このレチクルマーク板RFMの具体的構成等については後述する。レチクルステージRSTは、レチクルRの全面とレチクルマーク板RFMの全面とが少なくとも投影光学系PLの光軸AXを横切ることができる程度のY軸方向の移動ストロークを有している。
【0056】
また、レチクルステージRSTには、レチクルR及びレチクルマーク板RFMの下方に、開口がそれぞれ形成されている。後述するように、この開口は照明光ILの通路となる。また、レチクルベースRBSの投影光学系PLのほぼ真上の部分(光軸AXを中心とする部分)には、照明光ILの通路となる、少なくとも照明領域IARより大きな長方形の開口が形成されている。
【0057】
また、露光装置10では、レチクルRの上方には、投影光学系PLを介してレチクルR上又はレチクルマーク板RFM上のマークと、ウエハステージWST上の後述する基準マーク板(不図示)上の基準マークとを同時に観察するための露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)アライメント系から成る一対のレチクルアライメント顕微鏡(以下、便宜上「RA顕微鏡」と呼ぶ)が設けられていてもよい。これらのRA顕微鏡の検出信号は、不図示のアライメント制御装置を介して、主制御装置50に供給されるようになっている。この場合、レチクルRからの検出光をそれぞれのRA顕微鏡に導くための不図示の偏向ミラーが移動自在に配置され、露光工程が開始されると、主制御装置50からの指令のもとで、不図示のミラー駆動装置により偏向ミラーが待避される。なお、RA顕微鏡と同等の構成は、例えば特開平7−176468号公報等に開示されており、公知であるからここでは詳細な説明は省略する。
【0058】
前記投影光学系PLは、レチクルベースRBSの図1における下方に配置されている。その光軸AXの方向をZ軸方向とする。投影光学系PLは、ここでは両側テレセントリックな縮小系であり、光軸AX方向に沿って所定間隔で配置された複数枚、例えば8枚のレンズエレメント131、132、……、138(図2参照)から成る屈折光学系が使用されている。この投影光学系PLの投影倍率は、例えば1/4(又は1/5)等となっている(以下の説明では、1/4であるとする)。このため、照明光学系12からの照明光ILによってレチクルR上のスリット状照明領域IARが照明されると、このレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してそのスリット状照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(部分倒立像)が表面にフォトレジストが塗布されたウエハW上の前記照明領域IARと共役な露光領域IAに形成される。
【0059】
図2に示されるように、投影光学系PLを構成するレンズエレメント131、132、……、138のうち、その一部、例えばレンズエレメント131、132は、それぞれ複数の駆動素子(例えばピエゾ素子など)20によって光軸AX方向及びXY面に対する傾斜方向に微小駆動可能に構成されている。また、レンズエレメント134、135の間、レンズエレメント136、137の間には、それぞれ密閉状態とされた第1、第2密閉室34、36が形成されている。これら第1、第2密閉室34、36内には、不図示のガス供給機構から圧力調整機構41を介してクリーンな気体、例えば窒素が供給されるようになっている。
【0060】
本実施形態では、各駆動素子20に与えられる駆動電圧(駆動素子の駆動量)及び第1、第2密閉室34、36内部の気体の圧力(以下、適宜「内部の圧力」又は「内部圧力」という)を調整する圧力調整機構41が、主制御装置50からの指令に応じて結像特性補正コントローラ78により制御される。これによって、投影光学系PLの結像特性、例えば、像面湾曲、ディストーション、倍率、コマ収差、非点収差、球面収差等が補正される。なお、かかる結像特性を調整する結像特性調整機構は、レンズエレメント131のような可動レンズエレメントのみによって構成しても良く、その可動レンズエレメントの数も任意で良い。但し、この場合、可動レンズエレメントの数が、フォーカスを除く、投影光学系PLの結像特性の補正可能な種類に対応するので、補正が必要な結像特性の種類に応じて可動レンズエレメントの数を定めれば良い。
【0061】
図1に戻り、前記ウエハステージWSTは、XYステージ42と、該XYステージ42上に搭載されたZチルトステージ38とを含んで構成されている。
【0062】
前記XYステージ42は、ウエハステージWSTの基盤であるウエハベース16の上面の上方に不図示のエアベアリングによって例えば数μm程度のクリアランスを介して浮上支持されている。さらに、XYステージ42は、ウエハステージ駆動系56Wを構成する不図示のリニアモータ等によって走査方向であるY軸方向(図1における紙面内左右方向)及びこれに直交するX軸方向(図1における紙面直交方向)に2次元駆動可能に構成されている。このXYステージ42上にZチルトステージ38が搭載され、該Zチルトステージ38上にウエハホルダ25が載置されている。このウエハホルダ25によって、ウエハWが真空吸着等により保持されている。これにより、ウエハWの表面は、第2面上に配置されることになる。
【0063】
Zチルトステージ38は、図2に示されるように、3つのZ位置駆動部27A、27B、27C(但し、紙面奥側のZ位置駆動部27Cは不図示)によってXYステージ42上に3点で支持されている。これらのZ位置駆動部27A〜27Cは、Zチルトステージ38下面のそれぞれの支持点を投影光学系PLの光軸方向(Z軸方向)に独立して駆動する3つのアクチュエータ(例えばボイスコイルモータなど)21A、21B、21C(但し、図2における紙面奥側のアクチュエータ21Cは不図示)と、Zチルトステージ38のZ位置駆動部27A,27B,27Cによる各支持点のアクチュエータ21A、21B、21CによるZ軸方向の駆動量(基準位置からの変位)を検出するエンコーダ23A〜23C(但し、図2における紙面奥側のエンコーダ23Cは不図示)とを含んで構成されている。
【0064】
ここで、エンコーダ23A〜23Cとしては、例えば光学式又は静電容量式等のリニアエンコーダが使用されている。本実施形態では、上記アクチュエータ21A、21B、21Cによって、Zチルトステージ38を、光軸AX方向(Z軸方向)及び光軸に直交する面(XY面)に対する傾斜方向、すなわちX軸回りの回転方向であるθx方向、Y軸回りの回転方向であるθy方向に駆動する。また、エンコーダ23A〜23Cで計測されるZチルトステージ38のZ位置駆動部27A、27B、27Cによる各支持点のZ軸方向の駆動量(基準点からの変位量)は、ステージ制御装置70及びこれを介して主制御装置50に供給される。主制御装置50は、Zチルトステージ38のZ軸方向の位置及びレベリング量(θx回転量、θy回転量)を算出する。なお、図1では、XYステージ42を駆動するリニアモータ等、及びZ位置駆動部27A〜27C(アクチュエータ21A〜21C及びエンコーダ23A〜23C)を含めてウエハステージ駆動系56Wとして示されている。
【0065】
前記Zチルトステージ38上には、ウエハレーザ干渉計(以下、「ウエハ干渉計」という)54Wからのレーザビームを反射する移動鏡52Wが固定されている。そのため、このウエハ干渉計54Wによって、Zチルトステージ38(ウエハステージWST)のXY面内の位置を、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出することができる。
【0066】
ここで、実際には、Zチルトステージ38上には、走査露光時の走査方向であるY軸方向に直交する反射面を有する移動鏡と非走査方向であるX軸方向に直交する反射面を有する移動鏡とが設けられ、これに対応してウエハ干渉計もX軸方向、Y軸方向にそれぞれ複数軸設けられ、Zチルトステージ38の5自由度方向(X軸方向、Y軸方向、θx方向、θy方向、θz方向)の位置が計測可能となっているが、図1ではこれらが代表的に移動鏡52W、ウエハ干渉計54Wとして示されている。ウエハステージWSTの位置情報(又は速度情報)は、ステージ制御装置70、及びこれを介して主制御装置50に供給されるようになっている。ステージ制御装置70は、主制御装置50の指示に応じてウエハステージ駆動系56Wを介してウエハステージWSTのXY面内の位置を制御する。なお、Zチルトステージ38の端面を鏡面加工して前述の反射面を形成するようにしてもよい。
【0067】
また、Zチルトステージ38の内部には、投影光学系PLの光学特性の計測に用いられる空間像計測装置59を構成する光学系の一部が配置されている。ここで、この空間像計測装置59の構成について詳述する。この空間像計測装置59は、図3に示されるように、Zチルトステージ38に設けられたステージ側構成部分、すなわちパターン形成部材としてのスリット板90、レンズ84、86から成るリレー光学系、光路折り曲げ用のミラー88、送光レンズ87と、ウエハステージWST外部に設けられたステージ外構成部分、すなわちミラー96、受光レンズ89、光電変換素子から成る光センサ94等とを備えている。
【0068】
これを更に詳述すると、スリット板90は、図3に示されるように、ウエハステージWSTの一端部上面に設けられた上部が開口した突設部58に対し、その開口を塞ぐ状態で上方から嵌め込まれている。このスリット板90は、平面視長方形の受光ガラス82の上面に遮光膜を兼ねる反射膜83が形成され、その反射膜83の一部に所定の計測用パターンとしての所定幅2Dのスリット状の開口パターン(以下、「スリット」と呼ぶ)122がパターンニングされている。
【0069】
前記受光ガラス82の素材としては、ここでは、ArFエキシマレーザ光の透過性の良い、合成石英、あるいはホタル石などが用いられる。
【0070】
スリット122下方のZチルトステージ38内部には、スリット122を介して鉛直下向きに入射した照明光束(像光束)の光路を水平に折り曲げるミラー88を介在させてレンズ84、86から成るリレー光学系(84、86)が配置されている。また、このリレー光学系(84、86)の光路後方のウエハステージWSTの+Y側の側壁には、リレー光学系(84、86)によって所定の光路長分リレーされた照明光束をウエハステージWSTの外部に送光する送光レンズ87が固定されている。
【0071】
送光レンズ87によってウエハステージWSTの外部に送り出される照明光束の光路上には、X軸方向に所定長さを有するミラー96が傾斜角45°で斜設されている。このミラー96によって、ウエハステージWSTの外部に送り出された照明光束の光路が鉛直上方に向けて90°折り曲げられるようになっている。この折り曲げられた光路上に送光レンズ87に比べて大径の受光レンズ89が配置されている。この受光レンズ89の上方には、光センサ94が配置されている。これら受光レンズ89及び光センサ94は、所定の位置関係を保ってケース92内に収納されている。ケース92は、取付け部材93を介してウエハベース16の上面に植設された支柱97の上端部近傍に固定されている。
【0072】
前記光センサ94としては、微弱な光を精度良く検出することが可能な光電変換素子(受光素子)、例えばフォト・マルチプライヤ・チューブ(PMT、光電子増倍管)などが用いられる。光センサ94からの光電変換信号Pは、図1の信号処理装置80を介して主制御装置50に送られるようになっている。なお、信号処理装置80は、例えば増幅器、サンプルホルダ、A/Dコンバータ(通常16ビットの分解能のものが用いられる)などを含んで構成することができる。
【0073】
なお、前述の如く、スリット122は反射膜83に形成されているが、以下においては、便宜上スリット板90にスリット122が形成されているものとして説明を行う。なお、スリット122の配置及び寸法については、後述する。
【0074】
上述のようにして構成された空間像計測装置59によると、後述する、レチクルマーク板RFMに形成された計測マークPMの投影光学系PLを介して得られる投影像(空間像)の計測の際に、投影光学系PLを透過してきた照明光ILによって空間像計測装置59を構成するスリット板90が照明されると、そのスリット板90上のスリット122を透過した照明光ILがレンズ84、ミラー88及びレンズ86、送光レンズ87を介してウエハステージWSTの外部に導き出される。そして、そのウエハステージWSTの外部に導き出された光は、ミラー96によって光路が鉛直上方に折り曲げられ、受光レンズ89を介して光センサ94によって受光され、該光センサ94からその受光量に応じた光電変換信号(光量信号)Pが信号処理装置80を介して主制御装置50に出力される。
【0075】
本実施形態では、計測マークの投影像(空間像)の計測がスリットスキャン方式によって実行されるので、その際には、送光レンズ87が、受光レンズ89及び光センサ94に対して移動することになる。そこで、空間像計測装置59では、所定の範囲内で移動する送光レンズ87を介した光がすべて受光レンズ89に入射するように、各レンズ、及びミラー96の大きさが設定されている。
【0076】
このように、空間像計測装置59では、スリット板90、レンズ84、86、ミラー88、及び送光レンズ87により、スリット122を介した光をウエハステージWST外に導出する光導出部が構成され、受光レンズ89及び光センサ94によって、ウエハステージWST外へ導出された光を受光する受光部が構成されている。この場合、これら光導出部と受光部とは、機械的に分離されている。そして、空間像計測に際してのみ、光導出部と受光部とは、ミラー96を介して光学的に接続される。
【0077】
すなわち、空間像計測装置59では、光センサ94がウエハステージWSTの外部の所定位置に設けられているため、光センサ94の発熱に起因するウエハ干渉計54Wの計測精度等に及ぼす悪影響を可能な範囲で抑制するようにしている。また、ウエハステージWSTの外部と内部とがライトガイド等によって接続されていないので、ウエハステージWSTの外部と内部とがライトガイドによって接続された場合のようにウエハステージWSTの駆動精度が悪影響を受けることはない。
【0078】
勿論、熱の影響等を無視、あるいは排除できるような場合には、光センサ94をウエハステージWSTの内部に設けてもよい。なお、空間像計測装置59を用いて行われる空間像計測方法及び収差計測方法などについては、後に詳述する。
【0079】
図1に戻り、投影光学系PLの側面には、ウエハW上のアライメントマーク(位置合わせマーク)を検出するマーク検出系としてのオフアクシス・アライメント系ALGが設けられている。本実施形態では、このアライメント系ALGとして、画像処理方式のアライメントセンサ、いわゆるFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。このアライメント系ALGは、アライメント用光源と、ハーフミラー及び対物レンズ群から成る光学系、撮像素子(CCD)等を含んで構成されている。アライメント用光源として、ブロードバンドの照明光を出射するハロゲンランプ等が用いられる。このアライメント用光源からの照明光により、光学系を介してウエハW上のアライメントマークが照明され、そのアライメントマークからの反射光を、光学系を介して撮像素子が受光する。これにより、撮像素子の受光面に、そのアライメントマークの明視野像が結像される。そして、この明視野像に対応する光電変換信号、すなわちアライメン卜マークの反射像に対応する光強度信号が撮像素子から不図示のアライメント制御装置を介して主制御装置50に供給される。主制御装置50は、この光強度信号に基づき、アライメント系ALGの検出中心を基準とするウエハW上のアライメントマークの位置を算出するとともに、その算出結果とそのときのウエハ干渉計54Wの出力であるウエハステージWSTの位置情報とに基づいて、ウエハ干渉計54Wの光軸で規定されるステージ座標系におけるアライメン卜マークの座標位置を算出するようになっている。
【0080】
さらに、本実施形態の露光装置10では、図1に示されるように、照射系60a及び受光系60bから成る斜入射方式の多点焦点位置検出系(60a,60b)が設けられている。照射系60aは、主制御装置50によってそのオン・オフが制御される光源を有しており、投影光学系PLの結像面に向けて多数のピンホール又はスリットの像を形成するための結像光束を、光軸AXに対して斜め方向よりウエハWの表面に照射する。受光系60bは、それらの結像光束がウエハW表面で反射することによって発生する反射光束を受光し、主制御装置50に対して焦点ずれを検出するための焦点ずれ信号を送信する。なお、この多点焦点位置検出系(60a、60b)と、同様の多点焦点位置検出系の詳細な構成は、例えば特開平6−283403号公報等に開示されているため、その構成についての詳細な説明は省略する。
【0081】
主制御装置50は、後述する走査露光時等に、受光系60bからの焦点ずれ信号(デフォーカス信号)、例えばSカーブ信号に基づいて、投影光学系PLの焦点ずれが零となるように、ウエハステージ駆動系56Wを介してZチルトステージ38のZ軸方向への移動及び傾斜(すなわち、θx,θy方向の回転)を制御する。すなわち、主制御装置50は、多点焦点位置検出系(60a、60b)を用いてZチルトステージ38の移動を制御することにより、照明光ILの照射領域(照明領域IARと結像関係)内で投影光学系PLの結像面とウエハWの表面とを実質的に合致させるオートフォーカス(自動焦点合わせ)及びオートレベリングを実行する。なお、投影光学系PLのフォーカスが変動した場合、主制御装置50は、例えば、受光系60b内の図示しない平行平板の反射光束の光軸に対する傾きを制御することにより、投影光学系PLのフォーカス変動量に応じて多点焦点位置検出系(60a、60b)に原点の再設定を行ってそのキャリブレーションを行うようになっている。
【0082】
また、前述した不図示の環境制御チャンバ内の投影光学系PL近傍には、大気圧変動や、温度変動を検知する環境センサ81が設けられている。この環境センサ81による計測結果は主制御装置50に供給されている。
【0083】
前記制御系は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)から成る主制御装置50を中心として、該主制御装置50の制御下にあるステージ制御装置70などを含んで構成されている。主制御装置50には、記憶装置としてのメモリ51が併設されている。このメモリ51内には、本実施形態の収差計測方法によって求められた投影光学系PLの奇関数収差の収差量などが記憶される。
【0084】
次に、本実施形態の露光装置10における走査露光動作について簡単に説明する。
【0085】
まず、不図示のレチクル搬送系によりレチクルRが搬送され、ローディングポジションにあるレチクルステージRSTにレチクルRが吸着保持される。次に、主制御装置50は、レチクルRを用いた露光に最適な照明条件をオペレータの指示に基づいて設定する。
【0086】
次いで、主制御装置50の指示の下、ステージ制御装置70によりウエハステージWST及びレチクルステージRSTの位置が制御され、主制御装置50により、レチクルR上に形成された不図示のレチクルアライメントマークの投影像(空間像)が空間像計測装置59を用いて後述するようにして計測され、レチクルパターン像の投影位置が求められる。すなわち、レチクルアライメントが行われる。なお、レチクルアライメントは、前述の一対のRA顕微鏡(不図示)により、レチクルR上の一対のレチクルアライメントマーク(不図示)の像とウエハステージWST上の基準マーク板(不図示)に形成されたレチクルアライメント用基準マークの投影光学系PLを介した像とを同時に観察し、両マーク像の相対位置関係と、そのときのレチクル干渉計54R及びウエハ干渉計54Wの計測値とに基づいてレチクルパターン像の投影位置を求めることにより行ってもよい。
【0087】
次に、主制御装置50によって、スリット板90がアライメント系ALGの直下へ位置するように、ウエハステージWSTが移動され、アライメント系ALGによって空間像計測装置59の位置基準となるスリット122が検出される。主制御装置50は、このアライメント系ALGの検出信号及びそのときのウエハ干渉計54Wの計測値、並びに先に求めたレチクルパターン像の投影位置に基づいて、レチクルRのパターン像の投影位置とアライメント系ALGとの相対位置、すなわちアライメント系ALGのベースラインを求める。
【0088】
かかるベースライン計測が終了すると、主制御装置50により、例えば特開昭61−44429号公報などに詳細に開示されるEGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)等のウエハアライメントが行われ、ウエハW上の全てのショット領域の位置が求められる。なお、このウエハアライメントの際には、ウエハW上の複数のショット領域のうちの予め定められた所定のサンプルショットのウエハアライメントマークが、アライメント系ALGを用いて、前述した如くして計測される(図3参照)。
【0089】
次いで、主制御装置50は、上で求めたウエハW上の各ショット領域の位置情報及びベースラインに基づいて、干渉計54W、54Rからの位置情報をモニタしつつ、ウエハステージWSTを第1ショット領域の走査開始位置(加速開始位置)に位置決めするとともに、レチクルステージRSTを走査開始位置(加速開始位置)に位置決めして、その第1ショット領域の走査露光を行う。
【0090】
具体的には、転写装置としての主制御装置50は、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとをY軸方向に互いに逆向きに移動させることによって相対走査を開始させる。両ステージRST、WSTがそれぞれの目標走査速度に達すると、照明光ILによってレチクルRのパターン領域が照明され始め、走査露光が開始される。なお、この走査露光の開始に先立って、光源14の発光は開始されており、主制御装置50によって可動レチクルブラインド30Bの各ブレードの移動がレチクルステージRSTの移動に対して同期制御されている。これにより、レチクルR上のパターン領域外への照明光ILの照射は遮光される。
【0091】
主制御装置50は、上述の走査露光時には、レチクルステージRSTのY軸方向の移動速度VrとウエハステージWSTのY軸方向の移動速度Vwとが前述の投影光学系PLの投影倍率に応じた速度比に維持されるようにレチクルステージRST及びウエハステージWSTを同期制御する。
【0092】
そして、レチクルRのパターン領域の異なる領域が、照明光ILで逐次照明され、パターン領域全面に対する照明が完了することにより、ウエハW上の第1ショット領域の走査露光が終了する。これにより、レチクルRの回路パターンが投影光学系PLを介して第1ショット領域に縮小転写される。
【0093】
こうして第1ショット領域の走査露光が終了すると、ウエハステージWSTを次の第2ショット領域の走査開始位置(加速開始位置)へ移動させるショット間のステッピング動作を行う。そして、その第2ショット領域に対する走査露光を上述と同様にして行う。以後、第3ショット領域以降のショット領域に対する走査露光も同様にして行う。
【0094】
このようにして、ショット間のステッピング動作とショットの走査露光動作とが繰り返され、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハW上の全てのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。
【0095】
ここで、上記の走査露光中には、投影光学系PLに一体的に取付けられたフォーカスセンサ(60a、60b)を用いて、前述したオートフォーカス、オートレベリングが行われる。
【0096】
ところで、上述した走査露光動作において、レチクルRのパターンとウエハW上のショット領域に既に形成されたパターンとを正確に重ね合わせるためには、投影光学系PLの結像特性やベースラインが正確に計測されていること、及び投影光学系PLの結像特性が所望の状態に調整されていることなどが重要である。また、ウエハ上に転写されるパターンの線幅の均一性には、投影光学系PLの結像特性のうち、コマ収差等の奇関数収差が多大な影響を与えるため、その奇関数収差の低減は精度良い露光を実現するために特に重要である。
【0097】
本実施形態では、上記のコマ収差等の奇関数収差の計測に、前述した空間像計測装置59が用いられる。以下、この空間像計測装置59による空間像計測、及び投影光学系PLのコマ収差等の奇関数収差の計測等について詳述する。
【0098】
図3には、空間像計測装置59を用いて、レチクルマーク板RFMに形成された計測マークPMの空間像が計測されている最中の状態が示されている。なお、レチクルマーク板RFMに代えて、空間像計測専用のレチクル、あるいはデバイスの製造に用いられるレチクルRに専用の計測マークを形成したものなどを用いることも可能である。ここで、レチクルマーク板RFMには、所定の箇所にY軸方向に周期性を有するライン部の幅とスペース部の幅との比(デューティ比)が1:1のラインアンドスペース(L/S)パターン(周期パターン)から成る計測マークPMが前述のように第1面上に形成されているものとする。
【0099】
ここで、空間像計測装置59を用いた空間像計測の方法について簡単に説明する。なお、前提としてスリット板90には、例えば図4(A)に示されるように、X軸方向に伸びる所定幅2Dのスリット122が形成されているものとする。
【0100】
空間像の計測にあたり、主制御装置50によって、可動レチクルブラインド30Bが不図示のブラインド駆動装置を介して駆動され、図3に示されるように、レチクルRの照明光ILの照明領域が計測マークPMを含む所定領域のみに制限される。
【0101】
この状態で、照明光ILがレチクルマーク板RFMに照射されると、図4(A)に示されるように、計測マークPMによって回折、散乱した光(照明光IL)は、投影光学系PLにより屈折され、該投影光学系PLの像面に計測マークPMの空間像(投影像)PM’が形成される。このとき、ウエハステージWSTは、空間像計測装置59のスリット板90上のスリット122の+Y側(−Y側でもよい)に前記空間像PM’が形成される位置に設定されているものとする。このときの空間像計測装置59の投影光学系PL側から見たときの上面図が図4(A)に示されている。
【0102】
そして、主制御装置50によって、ウエハステージ駆動系56Wを介してウエハステージWSTが図4(A)中に矢印Fで示されるように+Y方向に駆動されると、スリット122が空間像PM’に対してY軸方向に走査される。この走査中に、スリット122を通過する光(照明光IL)がウエハステージWST内の光導出部、ミラーM、受光レンズ89を介して光センサ24で受光され、その光電変換信号Pが信号処理装置80を介して主制御装置50に供給される。主制御装置50は、その光電変換信号Pに基づいて空間像PM’に対応する光強度分布を計測する。
【0103】
図4(B)には、上記の空間像計測の際に得られる光電変換信号(光強度信号)Pの一例が示されている。
【0104】
この場合、空間像PM’は、スリット122の走査方向(Y軸方向)の幅(2D)の影響で像が平均化する。
【0105】
したがって、スリット122をp(y)とし、空間像の強度分布をi(y)とし、観測される光強度信号をm(y)とすると、空間像の強度分布i(y)と観測される強度信号m(y)との関係は、以下の式(2)で表される。なお、この式(2)において、強度分布i(y)、強度信号m(y)の単位は、単位長さ当たりの強度であるとする。
【0106】
【数2】
【0107】
ただし、スリット122の関数p(y)は、以下の式(3)で表される。
【0108】
【数3】
【0109】
すなわち、観測される強度信号m(y)は、スリッ卜p(y)と空間像の強度分布i(y)のコンボリューションになる。
【0110】
従って、計測精度の面からは、スリット122の走査方向(Y軸方向)の幅(以下、単に「スリット幅」と呼ぶ)2Dは小さい程良い。本実施形態のように、フォト・マルチプライヤ・チューブ(PMT)を光センサ24として用いる場合には、スリット幅が非常に小さくなっても走査速度を遅くして計測に時間を掛ければ光量(光強度)の検出は可能である。しかしながら、現実には、スループットの面から空間像計測時の走査速度に一定の制約があるため、スリット幅2Dがあまりにも小さいと、スリット122を透過する光量が小さくなり過ぎて、計測が困難となってしまう。
【0111】
なお、実際には、空間像計測装置59を構成するスリット板90上には、図5に示されるように、X軸方向に伸びる所定幅2D、長さLのスリット122aと、Y軸方向に伸びる所定幅2D、長さLのスリット122bとが形成されている。ここで、2Dは例えば200nm以下に設定されており、Lは例えば16μmであって、計測マークのラインパターンの長さより短くなるように設定されている。また、スリット122bはスリット122aの−X側に約4μm隔てて配置され、かつ+Y側に約4μm隔てて配置されている。また、ウエハステージWSTの内部の光導出部、ミラーM及び受光レンズを介して光センサ24によりスリット122a、122bのいずれを透過した光をも受光が可能になっているものとする。なお、以下では、特に必要が無い限り、スリット122a、122bを区別することなくスリット122と呼ぶ。
【0112】
以上述べたように、空間像計測装置59を用いた上述の空間像計測動作によって、計測マークPMの空間像(投影像)PM’における光強度分布を計測することができる。本実施形態では、計測された光強度分布に基づいて、投影光学系PLにおける奇関数収差、例えばコマ収差を計測する。なお、奇関数収差には、低次及び高次のコマ収差が含まれているが、低次のコマ収差は高次のコマ収差に比べてレンズエレメントの微小な移動によって容易に変化しうるため、奇関数収差のうち、特に重要なのは低次のコマ収差である。したがって、本実施形態では、低次のコマ収差を、主な計測対象として説明を進める。なお、低次のコマ収差は、フリンジツェルニケ多項式では、第7項Z7及び第8項Z8で表される。
【0113】
前述のように、露光装置10において、ウエハW上に転写されるパターンの線幅の均一化を図るには、投影光学系PLのコマ収差を低減することが重要となる。コマ収差は、転写されるパターンの空間像に非対称性を生じさせる。この非対称性は、転写されるパターンの空間像に含まれる空間周波数成分の位相差によってもたらされるものである。
【0114】
図6(A)には、露光装置10の投影光学系PLの数学モデルを用いたシミュレーションによって算出された計測マークPMの空間像(投影像)PM’の詳細な光強度分布が1点鎖線で示されている。図6(A)に示されるグラフにおいて、横軸は、その空間像PM’のY軸方向の位置を示し、縦軸はその位置での光強度を示す。なお、シミュレーション条件として、計測マークPMを2.0μmL/Sパターン(周期4.0μm)とし(投影光学系PLの投影倍率を1/4としているため、空間像PM’の周期は0.5μmL/Sパターン(周期1.0μm)となる。なお、以下にシミュレーション条件として示す計測マークPMのサイズは、ウエハW上に投影されるその空間像PM’のサイズを示すものとする)、投影光学系PLの開口数(N.A.)を0.78とし、コヒーレンスファクタσを0.3とし、照明光ILの波長λを193nm(ArFエキシマレーザ光相当)とし、スリット幅2Dを200nmとし、コマ収差の収差量、例えばフリンジツェルニケ多項式におけるZ8のオフセットを−20mλとし、投影光学系PLのレンズ収差として、位相計測装置(PMI)によって計測されたデータを用いた。なお、このグラフには、空間像PM’の光強度分布の他に、その光強度分布に含まれる空間周波数成分のうち、計測マークPMのパターンの周期に対応する基本周波数成分が点線で示されており、その基本周波数成分の3倍の高調波成分、すなわち3次の高調波成分が実線で示されている。
【0115】
投影光学系PLに収差が存在すると、その射出瞳の瞳位置によって通過する光に位相差が生じる。さらに、その収差が奇関数収差である場合、各次数の回折光のウエハW上の結像位置にいわゆる横ずれが生じる。そのため、図6(A)に示される基本周波数成分と3次の高調波成分との間には、Y軸方向に相対的な位相差が生じている。
【0116】
1点鎖線で示される空間像PM’の光強度分布は、バイアス成分(不図示)、基本周波数成分(点線)、3次の高調波成分(実線)を含む高次の高調波成分との和に対応する。したがって、前述のように基本周波数成分とその高調波成分との間に相対的な位相差があった場合、その光強度分布の分布状態もその位相差に影響を受ける。図6(A)に示されるように、計測マークPMの周期パターンに対応して周期的に表れる光強度のピークは、それぞれが左右に2つのピークを有しているが、前述した基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差により、左右のピークは非対称となっている。
【0117】
図6(B)には、図6(A)のグラフにおける光強度分布の1つのピークが拡大して示されている。図6(B)に示されるように、光強度分布における左右のピークは非対称となっているため、左右のピーク波形を左右のピークの間の光強度の極小値(C点)で横軸にスライスすることによって形成される左のピーク部分の面積Aと、右のピーク部分の面積Bには差が存在する。したがって、この面積Aと面積Bとの面積差から、投影光学系PLのコマ収差を計測することができる。この面積差に基づいてコマ収差を計測する方法を面積法という。この面積法では、例えば、それらの面積差を、A−B/max(A,B)として、面積A、Bの大きい方の面積で規格化する(max(A,B)は、A,Bのうちの大きい方を意味する)。
【0118】
図7(A)には、このような規格化を用いた面積法におけるコマ収差(フリンジツェルニケ多項式の第8項(Z8))と面積差とのシミュレーション及び実計測による対応関係が示されている。図7(A)に示されるように、このような規格化による面積差は、投影光学系PLのコマ収差に対してS字状に若干変化しているのがわかる。
【0119】
この面積法では、面積Aと面積Bとの面積差を、面積Aと面積Bとの和で規格化してもよい。図7(B)には、この規格化を用いた面積法におけるコマ収差(フリンジツェルニケ多項式の第8項(Z8))と面積差とのシミュレーション及び実計測による対応関係が示されている。図7(B)に示されるように、この規格化によれば、面積差とコマ収差との線形性は、図7(A)で示される規格化によって得られる関係に比べて著しく改善される。なお、図7(A)での計測での再現性は、フリンジツェルニケ多項式におけるZ8換算で3σ=12mλであり、図7(B)での計測では3σ=14mλであった。
【0120】
以上述べたように、投影光学系PLのコマ収差は、上述した面積法でも計測可能である。しかしながら、上述の面積A及び面積Bの面積差は、空間像PM’の光強度分布に含まれる基本周波数成分とその高調波成分との位相差によって生じるものであり、その位相差を直接計測した方が、より高い線形関係(その位相差とコマ収差との関係)のもとで、より高精度に投影光学系PLのコマ収差を計測することができる。
【0121】
ところで、投影光学系PLの射出瞳における瞳関数として、低次のコマ収差、例えばフリンジツェルニケ多項式におけるZ7だけを考慮すると、その瞳関数F(ξ,η)は、以下の式(4)のように表される。なお、ξ、ηは、投影光学系PLの射出瞳上における直交座標軸である。
【0122】
【数4】
【0123】
図8(A)には、式(4)に示される投影光学系PLの射出瞳上の瞳位置と、その瞳位置に対応する位相遅れレベルとの関係が示されている。このグラフにおいて、横軸は規格化された瞳位置ρを示し、縦軸はその瞳位置における位相遅れレベルを示す。図8(A)に示されるように、投影光学系PLの射出瞳上の瞳位置に対する位相遅れのレベルは、フリンジツェルニケ多項式の第7項Z7に対応しており、その位相差レベルを瞳位置に対する関数として表現すると、その関数は規格化された瞳位置に対して奇関数となっている。
【0124】
一方、計測マークPMの空間像PM’におけるY軸方向の複素振幅分布をo(y)とし、その空間周波数スペクトルをO(s)とする(sは、空間周波数軸の流通座標である)。計測マークPMの周期パターンに含まれる空間周波数成分のうち、2つの空間周波数成分をそれぞれf’、f”とすると、そのスペクトルO(f’)、O(f”)とのビートによって生じる干渉縞に、ある重みを掛けたものを全体の空間周波数で積分したものが計測マークPMの空間像の強度分布i(y)となる。この重みをクロスモジュレーション係数(The Cross modulation coefficient)というが、このクロスモジュレーション係数は、以下の式(5)によって定義される。
【0125】
【数5】
【0126】
ここで、Fは、前述のように瞳関数であり(*は複素共役を示す)、σ(ξ,η)は有効光源である。
【0127】
したがって、部分コヒーレント照明による計測マークPMの結像式は、以下の式(6)によって表される。
【0128】
【数6】
【0129】
計測マークPMの周期パターンがL/SパターンでピッチがPh=1/fhで、50%デューティ(ラインとスペースの幅が同じ)である場合、その計測マークの空間像のN次成分(Nは奇数)の強度は、以下の式(7)で示される。ここで、計測マークPMの空間像の1次成分、すなわちN=1の成分を基本周波数成分とする。なお、fhは、計測マークPMの基本周波数である。
【0130】
【数7】
【0131】
ここで、c0は、0次のフーリエスペクトルの振幅(複素フーリエ係数)を表し、cNは、N次のフーリエスペクトルの振幅(複素フーリエ係数)を表す。N次の高調波の位相ΦhNは、以下の式(8)によって示される。
【0132】
【数8】
【0133】
本実施形態では、1次の基本周波数成分の位相Φh1と奇数(N)次の高調波成分の位相ΦhNとの位相差ΦhN−Φh1を検出する。この位相差は、例えば、N=3とした場合に、以下の式(9)で表される。
【0134】
【数9】
【0135】
図8(B)には、N次の高調波成分と1次の周波数(基本周波数)成分の位相差ΦhN−Φh1が示されている。ここで、実線はN=3のときの1次とN次の周波数成分の位相差であり、点線はN=5のときの1次とN次の周波数成分の位相差である。なお、このグラフの横軸は、規格化空間周波数Nfh/fc=Nfh/(N.A./λ)である。この規格化空間周波数は、N次の回折光の投影光学系PLの射出瞳上における規格化瞳座標上の位置と等価である。なお、このときコヒーレンスファクタσを0としている。図8(B)に示されるように、N=3の方がN=5よりも、投影光学系PLの射出瞳上における規格化瞳座標上の位置に対する感度が高く、また、3次の高調波成分の振幅の方が、5次の高調波成分の振幅も大きいため、基本周波数と5次の高調波成分との位相差より、基本周波数と3次の高調波成分との位相差に基づいてコマ収差を求めた方が、計測結果が良好になると考えられる。
【0136】
図9には、σ=0.3のときの1次の基本周波数とその3次の高調波との位相差の特性が示されている。なお、このグラフでは、ArFエキシマレーザ相当の波長193nmの光に用いられ、開口数(N.A.)が0.78の投影光学系PLについて、その投影光学系PLの収差を、位相計測装置(PMI)で計測されたデータを収差として使用した場合(▲)、使用しなかった場合(■)の特性も示されている。図9に示されるように、その位相差の特性は、位相計測装置(PMI)のデータの使用の有無でほとんど変わっていない。また、σ=0.3の場合には、瞳座標の端の方では、1次回折光が投影レンズの瞳からはみ出すようになるので、σ=0の場合(図では点線で示されている)に比べて位相差の増加が抑制されている。
【0137】
以上述べたように、計測マークPMの空間像PM’の光強度分布に含まれる1次の基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差と、投影光学系PLのコマ収差とはほぼ線形関係にあり、それらの位相差を計測すれば、投影光学系PLのコマ収差を容易に求めることができるようになる。
【0138】
しかし、そのためには、まず、1次の基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差と、投影光学系PLのコマ収差との対応関係を予め求めておく必要がある。本実施形態では、それらの対応関係をシミュレーション又は実際の計測によって予め算出しておく(シミュレーションの場合は、この算出工程が第3工程に対応する)。なお、シミュレーションでは、収差データのオフセット量を変化させて計算を実行し、実際の計測では、例えば主制御装置50の制御により、結像特性補正コントローラ78等を用いて、投影光学系PLの実際の投影レンズの傾きを変えて、コマ収差を発生させて計測する。
【0139】
図10(A)には、シミュレーション及び実際の計測によって求められた1次の基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差と、コマ収差の収差量との関係が示されている。このグラフでは、横軸はフリンジツェルニケ多項式におけるZ8のレベル、すなわち低次コマ収差の収差量を示し、縦軸は位相差のレベルを示す。また、●は、シミュレーションの値を示し、▲は、実際の計測値を示す。図10(A)に示されるように、このグラフでは、シミュレーション及び実測値とは、非常に良い一致を見せている。なお、1回のスリットスキャンでの空間像計測による収差の計測再現性(3σ)はフリンジツェルニケ多項式におけるZ8換算で16mλであった。
【0140】
なお、投影光学系PLのコマ収差は、1次の基本周波数成分と2次の高調波成分との位相差を評価量としても計測可能である。しかしながら、デューティ50%のL/Sパターンである計測マークPMの像の空間周波数成分には、2次の高調波成分が原則的には存在しないため、この場合には、他の周波数成分同士のビートを、2次の高調波成分として用いる。
【0141】
上述のように、計測マークが50%デューティでピッチ(周期)がP=1/fhのL/Sパターンの場合、O(y)はフーリエ級数によって以下の式(10)のように表される。
【0142】
【数10】
【0143】
ただし、c0、c1、c3、c5はフーリエ係数であり、それぞれ1/2、1/4、−1/12、1/20となる。
【0144】
ここで、計測マークを0.5μmL/Sパターン(ピッチP=1.0μm)とし、投影光学系PLの開口数(N.A.)を0.78とし、コヒーレント照明の場合を考えると、投影光学系PLを実際に通過する高調波は3次までとなるので、式(10)は、以下の式(11)に変換される。
【0145】
【数11】
【0146】
なお、式(11)においては、フリンジツェルニケ多項式における第7項Z7は、上述の式(4)に示されるように奇関数となるので、基本周波数成分における収差量をexp(iφ1)とし、3次の高調波成分における収差量をexp(iφ3)とした。
【0147】
上述の式(11)より、2次の高調波に相当するビート成分には、1次の基本周波数成分及び3次の高調波成分のビート成分と、1次の基本周波数成分及び1次(−1)の基本周波数成分のビート成分が考えられる。
【0148】
ここで、1次の基本周波数成分と3次の高調波成分とのビート成分Ih2_1_3は、以下の式(12)のようになる。
【0149】
【数12】
【0150】
このビート成分Ih2_1_3は、コヒーレント照明の場合には、以下の式(13)のようになる。
【0151】
【数13】
【0152】
また、1次の基本周波数成分と1次の基本周波数成分とのビート成分Ih2_1_1は、以下の式(14)のようになる。
【0153】
【数14】
【0154】
このビート成分Ih2_1_1は、コヒーレント照明の場合には、以下の式(15)のように表される。
【0155】
【数15】
【0156】
結果的に、コヒーレント照明においては、2次の高調波成分は、式(13)で示される1次の基本周波数成分と3次の高調波成分とのビート成分と、式(15)で示される1次の基本周波数成分と1次の基本周波数成分とのビート成分とのベクトル合成で求めることができ、その位相Φh2は、以下の式(16)で表される。
【0157】
【数16】
【0158】
この2次高調波成分の位相の投影光学系PLに対する感度を調べる。計測マークPMをデューティ比50%で、計測マークPMのウエハW上での投影されるサイズを、0.5μmL/Sパターン(ピッチ1.0μm)とすると、1次の回折光の投影光学系PLの射出瞳上の瞳位置はρ=0.247相当となり、3次の回折光の投影光学系PLの射出瞳上の瞳位置はρ=0.741相当となる。したがって、式(4)より、それぞれの回折光の位相遅れレベルは以下の式(17)、式(18)のようになる。
【0159】
Z7(ρ=0.247)=−0.449 (17)
Z7(ρ=0.741)=−0.261 (18)
【0160】
さらに、例えば20mλのコマ収差が発生すると、1次の基本周波数成分の位相遅れφ1は、以下の式(19)に示すようになり、3次の高調波成分の位相遅れφ3は、以下の式(20)に示すようになる。
【0161】
φ1=−0.449×20mλ=−3.23° (19)
φ3=−0.261×20mλ=−1.88° (20)
【0162】
このときの2次の高調波成分の位相Φh2は上述の式(16)より、Φh2=−21.47°となり、大幅に増大する。
【0163】
図10(B)には、1次の基本周波数成分及び2次の高調波成分の位相差と、投影光学系PLのコマ収差との対応関係(●は、シミュレーションによるものであり、▲は、実計測によるものである)が示されている。
【0164】
また、図11には、1次の基本波周波数成分及び2次の高調波成分の位相差と、1次の基本波周波数成分及び3次の高調波成分の位相差とを比較した様子が示されている。横軸は、投影光学系PLの射出瞳上の3次高調波の瞳位置を示し、縦軸は、瞳の中心での位相に対するその瞳位置での相対的な位相の変化量を示す。図11に示されるように、1次の基本波周波数成分及び3次の高調波成分の相対的な位相の変化量に比べ、1次の基本波周波数成分及び2次の高調波成分の相対的な位相の変化量は、3次回折光が通過する投影光学系PLの射出瞳上の瞳位置に応じて著しく変化しているのがわかる。したがって、1次の基本周波数成分及び2次の高調波成分との位相差をコマ収差の評価量として用いるよりも、1次の基本波周波数成分及び3次の高調波成分との位相差をコマ収差の評価量として用いた方が、投影光学系PLの射出瞳上の3次回折光の通過位置に関わらず、安定してコマ収差を求めることができる。
【0165】
次に、本実施形態における投影光学系PLのコマ収差の算出方法について具体的に説明する。なお、前提として、図10(A)に示されるような投影光学系PLのコマ収差と1次の基本周波数成分及び3次の高調波成分の位相差との線形関係がメモリ51に記録されているものとする。
【0166】
まず、上述した空間像計測動作で述べたように、主制御装置50が、ウエハステージ駆動系を介してウエハステージWSTを+Y方向に駆動してスリット122が空間像PM’に対してY軸方向に走査されることによって得られた光電変換信号Pは最終的に主制御装置50に供給される。主制御装置50は、その光電変換信号Pに基づいて空間像PM’に対応する光強度分布を取得する(第1工程)。
【0167】
図12には、計測された空間像PM’における光強度分布が示されている。主制御装置50は、この光強度分布をi(y)とすると、計測マークPMのウエハW上での周期を基準とする基本周波数成分を有するサイン関数及びコサイン関数で表現される2つのフーリエ係数(a1、b1)を算出する。
【0168】
【数17】
【0169】
また、主制御装置50は、その基本周波数成分の3倍の高調波成分を有するサイン関数及びコサイン関数で表現できる2つのフーリエ係数(a2、b2)を算出する。
【0170】
【数18】
【0171】
主制御装置50は、以上の式(21)〜式(24)に示される4つのフーリエ係数を算出し、以下の式(25)、式(26)によって、それぞれの成分の位相Φ1、Φ3を算出する。
【0172】
【数19】
【0173】
処理装置としての主制御装置50は、基本周波数成分とその3次の高調波成分の位相差Φ3−Φ1を算出する。そして、主制御装置50は、メモリ51に記憶されている図10(A)に示すような位相差とコマ収差との線形関係から、位相差Φ3−Φ1に対応する奇関数収差、例えばコマ収差を算出する(第2工程)。
【0174】
次に、調整装置としての主制御装置50は、算出されたコマ収差に基づいて、結像特性補正コントローラ78を駆動して投影光学系PLのコマ収差を調整する。投影光学系PLの結像特性が調整された後に、上述の走査露光動作を実行すれば、レチクルR上に形成された回路パターンを精度良くウエハW上に転写することができるようになる。
【0175】
以上詳細に述べたように、本実施形態では、計測マークPMの空間像PM’の光強度分布を計測し、コマ収差等の奇関数収差と線形関係にある、その光強度分布に含まれる1次の基本周波数成分と奇数次、例えば3次の高調波成分との位相差に基づいて、奇関数収差の収差量を計測する。このようにすれば、光強度分布のピークにおける左右のピークの面積差や、奇数次の高調波成分同士のビート成分である2次の高調波成分などのそれらの位相差により間接的に発生する現象を計測することなく、コマ収差によって直接的に発生する位相差に基づいて奇関数収差を評価することができるため、奇関数収差を精度良く計測することができる。
【0176】
また、上記実施形態では、計測用パターンとして、スリット122を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ピンホールパターンを用いてもよい。なお、この場合、スリット122と同レベルの光量を確保するため、ピンホールパターンの直径は、2倍程度(400μm以下)とすることが望ましい。
【0177】
なお、上記実施形態では、フリンジツェルニケ多項式におけるZ7、Z8で示される低次のコマ収差を計測対象とした。しかしながら、投影光学系PLのレンズによっては、低次のコマ収差とともに、高次のコマ収差も発生することがある。通常では、投影光学系PLの結像特性に対しては、高次のコマ収差よりも低次のコマ収差の影響の方が大きいが、現状では、投影光学系PLのレンズエレメントの傾き、上下動によってコマ収差をより高精度に除去可能となっているため、高次のコマ収差を低次のコマ収差から分離した方が望ましい場合もある。
【0178】
そこで、低次のコマ収差と高次のコマ収差とを分離する方法を以下に説明する。なお、この方法では、高次のコマ収差として、フリンジツェルニケ多項式におけるZ14、Z15を対象とする。なお、これらの高次コマ収差が発生しても、前述の1次の基本周波数成分と、奇数次、例えば3次の高調波成分との位相差は変化する。したがって、低次コマ収差と高次コマ収差とが同時に発生している場合、1次の基本周波数成分と奇数次の高調波成分との位相差は、Z7及びZ14(又はZ8及びZ15)の両方に起因する位相差の合計として計測されることになる。
【0179】
そこで、ここでは、計測マークとして、ピッチ(周期)が異なる周期パターンを有する2つの計測マークを用意する。そして、主制御装置50の制御の下、前述の第1工程を、それぞれの計測マークについて実行し、それぞれの計測マークについての1次の基本周波数成分とその3次の高調波成分との位相差を求める(第4工程)。
【0180】
図13には、1μmL/Sパターン(ピッチ2μm)の周期パターンを有する計測マークと、0.5μmL/Sパターン(ピッチ1μm)の計測マークとを、それぞれ計測マークとした場合における、低次コマ収差(Z7)及び高次コマ収差(Z14)の収差量に対する感度(シミュレーション)が示されている。図13(A)には、1.0μmL/Sパターンのときの低次コマ収差(Z7)の感度が示されており、図13(B)には、1.0μmL/Sパターンのときの高次コマ収差(Z14)の感度が示されており、図13(C)には、0.5μmL/Sパターンのときの低次コマ収差(Z7)の感度が示されており、図13(D)には、0.5μmL/Sパターンのときの高次コマ収差(Z14)の感度が示されている。なお、ここで、計測された収差量は、1次の基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差に基づく収差量であり、投影光学系PLの開口数(N.A.)を0.78とし、照明光の波長を193nmとし、コヒーレンスファクタσを0.3とし、コマ収差以外の収差の収差量を0としてシミュレーションを行って得た収差量である。
【0181】
図13(A)〜図13(D)において、各グラフの直線の傾きは、その条件におけるコマ収差のツェルニケ感度を示している。なお、以下の式(27)〜式(30)に、図13(A)〜図13(D)における直線の式、すなわちツェルニケ感度の式を示す。
【0182】
y=0.1002x+2.8148 (27)
y=−0.0196x+2.811 (28)
y=−0.114x+2.8067 (29)
y=0.073x+2.8076 (30)
【0183】
図13に示されるように、計測マークの周期パターンの周期によって、低次のコマ収差と高次のコマ収差とのツェルニケ感度がそれぞれ異なるので、低次コマ収差(Z7)と高次コマ収差(Z14)との分離が可能となる。0.5μmL/Sパターン(ピッチ1μm)での1次の基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差をΦ(L/S=0.5)とし、1.0μmL/Sパターン(ピッチ1μm)での1次の基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差をΦ(L/S=1.0)とする。さらに、図13(A)より得られる1.0μmのZ7に対するツェルニケ感度α1(=0.1002)、図13(B)より得られる1.0μmのZ14に対するツェルニケ感度β1(=−0.0196)、図13(C)より得られる0.5μmのZ7に対するツェルニケ感度α2(=−0.114)、図13(D)より得られる0.5μmのZ14に対するツェルニケ感度β2(=0.073)を用いると、以下の式(31)、式(32)が得られる。
【0184】
Φ(L/S=1.0)=α1Z7+β1Z14 (31)
Φ(L/S=0.5)=α2Z7+β2Z14 (32)
【0185】
したがって、主制御装置50によって、式(31)、(32)を連立方程式としてそれらを解けば、計測された収差量から、低次コマ収差(Z7)と高次コマ収差(Z14)とを分離することができる(第5工程)。
【0186】
なお、さらに他のコマ収差をZ7及びZ14から分離したい場合、すなわち3つのコマ収差成分を分離する場合には、さらに異なるピッチの周期パターン(計3つの計測パターン)の空間像を計測し、その空間像における1次の基本周波数成分とその3次の高調波成分との位相差を計測すれば、3つの方程式により連立方程式を作成して、それらを解けばよい。
【0187】
また、上記実施形態では、レチクルマーク板RFMに計測マークPMだけ形成されているとしたが、他の計測マークを形成しておいてもよい。例えば、その周期方向がX軸方向に配置されたL/Sパターンの計測マークなどを形成し、X軸方向のスリットスキャン動作を実行して(この場合には、スリット板90上のスリット122bを用いる)、空間像を計測するようにしてもよい。
【0188】
また、上記実施形態では、空間像計測装置59の光導出部と受光部とを機械的に分離しているとしたが、これらを可撓な光ファイバケーブルで接続するようにしてもよい。
【0189】
また、上記実施形態では、空間像の光強度分布に含まれる1次の基本周波数成分とその3次の高調波成分との位相差に基づいて投影光学系のコマ収差を求めたが、前述のように、1次の基本周波数成分とその5次又はさらに高次の奇数次の高調波成分との位相差に基づいて投影光学系のコマ収差を求めるようにしてもよい。しかしながら、それら奇数次の高調波成分の中では、3次の高調波成分の大きさが最も大きいため、3次の高調波成分を用いた方が最も精度良く、コマ収差を求めることができる。
【0190】
また、上記実施形態では、奇関数収差としてコマ収差を計測対象としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、フリンジツェルニケ多項式における各項の動径関数が奇関数である収差(例えばZ10等)であれば、その収差量を計測可能である。
【0191】
また、上記実施形態では、露光用照明光としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)などを用いる場合について説明したが、これに限らず、前述のKrFエキシマレーザ光(波長248nm)、あるいはg線(波長436nm)、i線(波長365nm)、F2レーザ光(波長157nm)、銅蒸気レーザ、YAGレーザの高調波等を露光用照明光として用いることができる。
【0192】
また、上記実施形態では、投影光学系として縮小系を用いる場合について説明したが、これに限らず、投影光学系として等倍あるいは拡大系を用いても良いし、屈折系、反射屈折系、及び反射系のいずれであっても良い。
【0193】
なお、上記実施形態では、本発明がステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置に適用された場合について説明したが、これに限らず、マスクと基板とを静止した状態でマスクのパターンを基板に転写するとともに、基板を順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート型の露光装置等他のタイプの露光装置にも本発明は適用することができる。
【0194】
また、本発明は、半導体製造用の露光装置に限らず、液晶表示素子などを含むディスプレイの製造に用いられる、デバイスパターンをガラスプレート上に転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられるデバイスパターンをセラミックウエハ上に転写する露光装置、及び撮像素子(CCDなど)、マイクロマシン、DNAチップなどの製造に用いられる露光装置などにも適用することができる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。ここで、DUV(遠紫外)光やVUV(真空紫外)光などを用いる露光装置では一般的に透過型レチクルが用いられ、レチクル基板としては石英ガラス、フッ素がドープされた石英ガラス、螢石、フッ化マグネシウム、又は水晶などが用いられる。また、プロキシミティ方式のX線露光装置、又は電子線露光装置などでは透過型マスク(ステンシルマスク、メンブレンマスク)が用いられ、マスク基板としてはシリコンウエハなどが用いられる。
【0195】
半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置によりレチクルのパターンをウエハに転写するステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。
【0196】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の収差計測方法によれば、投影光学系の収差を精度良く計測することができるという効果がある。
【0197】
また、本発明の露光方法及び装置によれば、マスクのパターンを基板上に精度良く転写することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1のウエハステージ近傍を拡大し、Zチルトステージの駆動装置とともに示す図である。
【図3】図1の空間像計測装置の内部構成を示す図である。
【図4】図4(A)は、スリット板上のスリットを示す図であり、図4(B)は、空間像計測の際に得られる光電変換信号の一例を示す図である。
【図5】実際のスリット板上のスリットの配置を示す図である。
【図6】図6(A)は、シミュレーションによって算出された計測マークの空間像の詳細な光強度分布を示す図であり、図6(B)は、その光強度分布の1つのピークを拡大して示す図である。
【図7】図7(A)は、規格化された面積差とコマ収差とのシミュレーション及び実計測による対応関係を示す図であり、図7(B)は、もう1つの規格化方法で規格化された面積差とコマ収差とのシミュレーション及び実計測による対応関係を示す図である。
【図8】図8(A)は、投影光学系の射出瞳上の瞳位置と、その瞳位置に対応する位相遅れレベルとの関係を示すグラフであり、図8(B)は、1次の周波数(基本周波数)成分とそのN次の高調波成分との位相差を示すグラフである。
【図9】1次の基本周波数成分とその3次の高調波成分との位相差の特性を示すグラフである。
【図10】図10(A)は、シミュレーション及び実際の計測によって求められた1次の基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差と、コマ収差の収差量との関係を示すグラフであり、図10(B)は、シミュレーション及び実際の計測によって求められた1次の基本周波数成分と2次の高調波成分との位相差と、コマ収差の収差量との関係を示すグラフである。
【図11】1次の基本波周波数成分及び2次の高調波成分の位相差と、1次の基本波周波数成分及び3次の高調波成分の位相差とを比較を示すグラフである。
【図12】計測された空間像PM’における光強度分布を示すグラフである。
【図13】図13(A)は、1.0μmL/Sパターンのときの低次コマ収差の感度を示すグラフであり、図13(B)は、1.0μmL/Sパターンのときの高次コマ収差の感度を示すグラフであり、図13(C)は、0.5μmL/Sパターンのときの低次コマ収差の感度を示すグラフであり、図13(D)は、0.5μmL/Sパターンのときの高次コマ収差の感度を示すグラフである。
【符号の説明】
12…照明光学系(照明ユニット)、14…光源(照明ユニット)、50…主制御装置(処理装置、調整装置、転写装置)、59…空間像計測装置、78…結像特性補正コントローラ、80…信号処理装置、PM…計測マーク、PL…投影光学系、R…レチクル(マスク)、RFM…レチクルマーク板(マーク形成部材)、RST…レチクルステージ、W…ウエハ(感光物体)。
Claims (11)
- 第1面上のパターンを第2面上に投影する投影光学系の収差を計測する収差計測方法であって、
前記第1面上に配置された周期パターンを含む少なくとも1つの計測マークが照明光により照明され前記投影光学系によって前記第2面上に投影されることによって前記第2面上に形成される前記計測マークの空間像に対し、所定の計測用パターンを前記第2面上で走査させ、該走査中に前記所定の計測用パターンを介して得られる前記照明光を光電検出し、前記空間像に対応する光強度信号を得る第1工程と;
前記光強度信号に含まれる基本周波数成分と奇数次の高調波成分との位相差に基づいて、前記投影光学系の射出瞳上の波面収差を示す収差関数を展開することによって得られる動径多項式の各項の動径関数が奇関数で表される奇関数収差の収差量を算出する第2工程と;を含む収差計測方法。 - 前記第2工程では、
前記光強度信号に含まれる基本周波数成分と3次の高調波成分との位相差に基づいて、前記収差量を算出することを特徴とする請求項1に記載の収差計測方法。 - 前記動径多項式は、フリンジツェルニケ多項式であることを特徴とする請求項1又は2に記載の収差計測方法。
- 前記奇関数収差は、コマ収差であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の収差計測方法。
- 前記第2工程に先立って、
前記位相差と前記奇関数収差の収差量との関係を、前記投影光学系の数学モデルを用いたシミュレーションによって算出する第3工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の収差計測方法。 - 前記第1工程を、前記周期パターンの周期がそれぞれ異なる複数の前記計測マークについて実行する第4工程と;
計測マーク毎に得られる前記位相差と、各位相差の変化に対応する幾つかの奇関数収差の感度とに基づいて、前記幾つかの奇関数収差の各々の収差量を算出する第5工程と;をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の収差計測方法。 - 前記所定の計測用パターンは、スリットパターンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の収差計測方法。
- 前記所定の計測用パターンは、ピンホールパターンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の収差計測方法。
- マスクのパターンを、投影光学系を介して感光物体上に転写する露光方法であって、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の収差計測方法によって、前記投影光学系の収差を計測する工程と;
前記計測された収差に基づいて、前記投影光学系の結像特性を調整する工程と;
前記調整後の前記投影光学系を介して前記パターンを前記感光物体上に転写する工程と;を含む露光方法。 - 第1面上のマスクのパターンを、投影光学系を介して第2面上の感光物体上に転写する露光装置であって、
前記第1面上に配置されたマーク形成部材を照明光により照明する照明ユニットと;
前記マーク形成部材を介した前記照明光が前記投影光学系により前記第2面上に投射されることにより前記第2面上に形成される前記マーク形成部材に形成された周期パターンを含む少なくとも1つの計測マークの空間像に対して、所定の計測用パターンを前記第2面上で走査し、該走査中に前記所定の計測用パターンを介して得られる前記照明光を光電検出し、前記空間像に対応する光強度信号を得る空間像計測装置と;
前記光強度信号に含まれる基本周波数成分と奇数次の高調波成分との位相差に基づいて、前記投影光学系の射出瞳上の波面収差を示す収差関数を展開することによって得られる動径多項式の各項の動径関数が奇関数で表される奇関数収差の収差量を算出する処理装置と;
前記算出された収差量に基づいて、前記投影光学系の結像特性を調整する調整装置と;
前記照明ユニットからの照明光で前記第1面上に配置されたパターンを照明して前記調整後の前記投影光学系を介して前記パターンを前記感光物体上に転写する転写装置と;を備える露光装置。 - 前記パターンが形成されたマスクを保持するマスクステージを更に備え、
前記マーク形成部材は、前記マスクステージ上に配置された基準マーク板であることを特徴とする請求項10に記載の露光装置。
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