以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。また、後述する各工程の間にはその他の工程が含まれていてもよいことは言うまでもない。
図1(a)〜(h)に、本実施の形態の配線シート付き太陽電池セルの製造方法を図解する模式的な断面図を示す。
<裏面電極型太陽電池セルを用意する工程>
まず、図1(a)に示すように、基板1と、基板1の一方の表面である基板1の裏面上に所定の間隔を空けて設けられたn型用電極6およびp型用電極7と、を含む裏面電極型太陽電池セル8を用意する。
なお、本実施の形態においては、太陽電池セルとして裏面電極型太陽電池セルを用いる場合について説明するが、裏面電極型太陽電池セルに限定されない。また、ここではn型用電極6およびp型用電極7は説明の便宜のためそれぞれ1つずつしか図示しかされていないが、それぞれ複数あってもよいことは言うまでもない。
裏面電極型太陽電池セル8としては、たとえば以下のようにして製造した裏面電極型太陽電池セル8を用いることができる。以下、図2(a)〜(g)の模式的断面図を参照して、本実施の形態で用いられる裏面電極型太陽電池セル8の製造方法の一例について説明する。
まず、図2(a)に示すように、たとえばインゴットからスライスすることなどによって、基板1の表面にスライスダメージ1aが形成された基板1を用意する。基板1としては、たとえば、n型またはp型のいずれかの導電型を有する多結晶シリコンまたは単結晶シリコンなどからなるシリコン基板を用いることができる。
次に、図2(b)に示すように、基板1の表面のスライスダメージ1aを除去する。ここで、スライスダメージ1aの除去は、たとえば基板1が上記のシリコン基板からなる場合には、上記のスライス後のシリコン基板の表面をフッ化水素水溶液と硝酸との混酸または水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液などでエッチングすることなどによって行なうことができる。
スライスダメージ1aの除去後の基板1の大きさおよび形状も特に限定されないが、基板1の厚さをたとえば50μm以上400μm以下とすることができる。
次に、図2(c)に示すように、基板1の裏面に、n型不純物拡散領域2およびp型不純物拡散領域3をそれぞれ形成する。n型不純物拡散領域2は、たとえば、n型不純物を含むガスを用いた気相拡散などの方法により形成することができ、p型不純物拡散領域3は、たとえば、p型不純物を含むガスを用いた気相拡散などの方法により形成することができる。
n型不純物拡散領域2およびp型不純物拡散領域3はそれぞれ図2の紙面の表面側および/または裏面側に伸びる帯状に形成されており、n型不純物拡散領域2とp型不純物拡散領域3とは基板1の裏面において交互に所定の間隔をあけて配置されている。
n型不純物拡散領域2はn型不純物を含み、n型の導電型を示す領域であれば特に限定されない。なお、n型不純物としては、たとえばリンなどのn型不純物を用いることができる。
p型不純物拡散領域3はp型不純物を含み、p型の導電型を示す領域であれば特に限定されない。なお、p型不純物としては、たとえばボロンまたはアルミニウムなどのp型不純物を用いることができる。
n型不純物を含むガスとしては、たとえばPOCl3のようなリンなどのn型不純物を含むガスを用いることができ、p型不純物を含むガスとしては、たとえばBBr3のようなボロンなどのp型不純物を含むガスを用いることができる。
次に、図2(d)に示すように、基板1の裏面にパッシベーション膜4を形成する。ここで、パッシベーション膜4は、たとえば、熱酸化法またはプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの方法により形成することができる。
パッシベーション膜4としては、たとえば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、または酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層体などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
パッシベーション膜4の厚みは、たとえば0.05μm以上1μm以下とすることができ、特に0.2μm程度とすることが好ましい。
次に、図2(e)に示すように、基板1の受光面の全面にテクスチャ構造などの凹凸構造を形成した後に、その凹凸構造上に反射防止膜5を形成する。
テクスチャ構造は、たとえば、基板1の受光面をエッチングすることにより形成することができる。たとえば、基板1がシリコン基板である場合には、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液にイソプロピルアルコールを添加した液をたとえば70℃以上80℃以下に加熱したエッチング液を用いて基板1の受光面をエッチングすることによって形成することができる。
反射防止膜5は、たとえばプラズマCVD法などにより形成することができる。なお、反射防止膜5としては、たとえば、窒化シリコン膜などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
次に、図2(f)に示すように、基板1の裏面のパッシベーション膜4の一部を除去することによってコンタクトホール4aおよびコンタクトホール4bを形成する。ここで、コンタクトホール4aは、n型不純物拡散領域2の表面の少なくとも一部を露出させるようにして形成され、コンタクトホール4bは、p型不純物拡散領域3の表面の少なくとも一部を露出させるようにして形成される。
なお、コンタクトホール4aおよびコンタクトホール4bはそれぞれ、たとえば、フォトリソグラフィ技術を用いてコンタクトホール4aおよびコンタクトホール4bの形成箇所に対応する部分に開口を有するレジストパターンをパッシベーション膜4上に形成した後にレジストパターンの開口からパッシベーション膜4をエッチングなどにより除去する方法、またはコンタクトホール4aおよびコンタクトホール4bの形成箇所に対応するパッシベーション膜4の部分にエッチングペーストを塗布した後に加熱することによってパッシベーション膜4をエッチングして除去する方法などにより形成することができる。
次に、図2(g)に示すように、コンタクトホール4aを通してn型不純物拡散領域2に接するn型用電極6と、コンタクトホール4bを通してp型不純物拡散領域3に接するp型用電極7と、を形成することによって、裏面電極型太陽電池セル8を作製する。
n型用電極6およびp型用電極7としては、たとえば、銀などの金属からなる電極を用いることができる。n型用電極6およびp型用電極7はそれぞれ図2の紙面の表面側および/または裏面側に伸びる帯状に形成されており、n型用電極6およびp型用電極7はそれぞれパッシベーション膜4に設けられた開口部を通して、基板1の裏面のn型不純物拡散領域2およびp型不純物拡散領域3に沿って、n型不純物拡散領域2およびp型不純物拡散領域3にそれぞれ接するように形成されている。
図3に、上記のようにして製造した裏面電極型太陽電池セル8の基板1の裏面側から見たときの模式的な平面図を示す。図3に示すように、n型用電極6およびp型用電極7はそれぞれ櫛形状に形成されており、櫛形状のn型用電極6の櫛歯に相当する部分と櫛形状のp型用電極7の櫛歯に相当する部分とが1本ずつ交互に噛み合わさるようにn型用電極6およびp型用電極7が配置されている。その結果、櫛形状のn型用電極6の櫛歯に相当する部分と櫛形状のp型用電極7の櫛歯に相当する部分とはそれぞれ1本ずつ交互に所定の間隔を空けて配置されることになる。
裏面電極型太陽電池セル8の基板1の裏面のn型用電極6およびp型用電極7のそれぞれの形状および配置は、図3に示す構成に限定されず、後述する配線シートのn型用配線およびp型用配線にそれぞれ電気的に接続可能な形状および配置であればよい。
図4に、裏面電極型太陽電池セル8の基板1の裏面の他の一例の模式的な平面図を示す。図4に示すように、n型用電極6およびp型用電極7はそれぞれ同一方向に伸長(図4の上下方向に伸長)する帯状に形成されており、基板1の裏面において上記の伸長方向と直交する方向にそれぞれ1本ずつ交互に配置されている。
図5に、裏面電極型太陽電池セル8の基板1の裏面のさらに他の一例の模式的な平面図を示す。図5に示すように、n型用電極6およびp型用電極7はそれぞれ点状に形成されており、点状のn型用電極6の列(図5の上下方向に伸長)および点状のp型用電極7の列(図5の上下方向に伸長)がそれぞれ基板1の裏面において1列ずつ交互に配置されている。
<固定樹脂を設置する工程>
次に、図1(b)に示すように、裏面電極型太陽電池セル8の基板1の裏面のn型用電極6とp型用電極7との間に未硬化の絶縁性樹脂である固定樹脂22aを設置する。
ここで、裏面電極型太陽電池セル8の電極間だけでなく、裏面電極型太陽電池セル8の電極(n型用電極6、p型用電極7)と周縁部31との間にも固定樹脂22aを設置することが好ましい。この場合には、裏面電極型太陽電池セル8と後述する配線シートとの機械的な接続の安定性をさらに向上することができる。
また、固定樹脂22aの設置方法としては、たとえば、スクリーン印刷法、ディスペンサ塗布法またはインクジェット塗布法などの方法を挙げることができる。なかでも、固定樹脂22aの設置方法としては、スクリーン印刷法を用いることが好ましい。スクリーン印刷法により固定樹脂22aを設置する場合には、簡易に、低コストで、かつ短時間で固定樹脂22aを設置することができる。
裏面電極型太陽電池セル8の基板1側における固定樹脂22aの幅は、n型用電極6およびp型用電極7と接触しないような幅であることが好ましい。この場合には、裏面電極型太陽電池セル8の電極と後述する配線シートの配線との間の電気的な接続の安定性を向上することができる。
裏面電極型太陽電池セル8の基板1側とは反対側における固定樹脂22aの幅は、後述する配線シートの配線の間隔よりも狭いことが好ましい。この場合にも、裏面電極型太陽電池セル8の電極と後述する配線シートの配線との間の電気的な接続の安定性を向上することができる。
固定樹脂22aの形状は、裏面電極型太陽電池セル8の基板1の裏面のn型用電極6およびp型用電極7のそれぞれに沿うライン状とすることが好ましいが、後述する封止材中への封止工程において、第1硬化状態の固定樹脂が軟化して十分に拡がることできる程度の隙間が電極との間に設けられていれば、断続的に配置するような形状でも構わない。
固定樹脂22aとしては、Bステージ化可能な樹脂が用いられることが好ましい。Bステージ化可能な樹脂とは、液体状態の未硬化の固定樹脂22aを加熱したときに、粘度が上昇して硬化状態(第1の硬化状態)となった後に粘度が低下して軟化し、その後に再度粘度が上昇して硬化状態(第2の硬化状態)となる樹脂のことである。上記の第1の硬化状態がBステージと言われる。Bステージ化可能な樹脂としては、たとえば、液体状態から溶媒を揮発させて固体状態(Bステージ)とすることができる樹脂などがある。また、Bステージ化可能な樹脂としては、たとえば、第2の硬化状態の後に、裏面電極型太陽電池セル8の裏面の電極間および後述する配線シートの配線間の短絡を防止することができる程度の絶縁性を有するとともに、配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの長期信頼性を保つために裏面電極型太陽電池セル8と配線シートとの間の機械的な接続強度を保持することができる程度の接着力を有する樹脂を用いることができる。
また、固定樹脂22aとしては、膨潤タイプの樹脂を用いることも好ましい。膨潤タイプの樹脂は、未硬化で液体状態の樹脂と、微粒子状態の樹脂と、の混合物である。膨潤タイプの樹脂の熱挙動はたとえば以下のようである。膨潤タイプの樹脂を微粒子状態の樹脂のガラス転移温度以上に加熱すると、微粒子状態の樹脂の分子間に液体状態の樹脂が入り込む。これにより、見かけ上、微粒子状態の樹脂の体積が膨張した状態(膨潤状態)となって粘度が上昇するため、見かけ上硬化状態(第1の硬化状態)となる。しかしながら、液体状態の樹脂は未硬化であるため、再度加熱すると、微粒子状態の樹脂の分子間に入り込んだ液体状態の樹脂が流動可能な状態となり粘度が低下して軟化状態となる。そして、さらに加熱を続けると、液体状態の樹脂が硬化して硬化状態(第2の硬化状態)となる。
固定樹脂22aとして、たとえばBステージ化可能な樹脂や膨潤タイプの樹脂を用いた場合には、未硬化の固定樹脂22aが、第1の硬化状態および軟化状態を経た後に、第2の硬化状態とすることができる。
また、固定樹脂22aは、裏面電極型太陽電池セル8の電極(n型用電極6、p型用電極7)と周縁部31との間に、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との位置合わせを行なうための位置合わせパターンを形成するように設置されることが好ましい。この場合には、後述する裏面電極型太陽電池セル8と配線シートとを重ね合わせる工程において、固定樹脂22aの位置合わせパターンに基づいて裏面電極型太陽電池セル8と配線シートとを位置合わせすることができるため、裏面電極型太陽電池セル8の電極や後述する接合部材に基づいて位置合わせする場合と比較して、隣り合って配置されている配線(n型用配線、p型用配線)間に固定樹脂をより精度良く設置することができる。そのため、接合部材が配線間に流れ出すことによる電気的な短絡を固定樹脂によって有効に防ぐことができるため、裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線シートの配線との電気的な接続の安定性を向上することができる傾向にある。
図6に、裏面電極型太陽電池セル8の電極と周縁部31との間に、固定樹脂22aの位置合わせパターンの一例として、固定樹脂22aが設けられていない非設置領域を設けた構成の裏面電極型太陽電池セル8の裏面の一例の模式的な拡大平面図を示す。
図6に示すように、裏面電極型太陽電池セル8の電極(n型用電極6、p型用電極7)と周縁部31との間には、固定樹脂22aが設けられていない非設置領域41a,41bが互いに距離を空けて配置されている。非設置領域41a,41bの内側には、それぞれ、円形状の表面を有するn型用電極6aおよびトラック状の表面を有するp型用電極7aが配置されている。n型用電極6aはn型用電極6の延長線上に設けられており、p型用電極7aはp型用電極6の延長線上に設けられている。
なお、固定樹脂22aの位置合わせパターンは、上記の固定樹脂22aが設けられていない非設置領域に限られず、固定樹脂22aの他の部分と区別可能なパターンであればよく、たとえば、固定樹脂22aの端部を凹状若しくは凸状に形成した構成としてもよく、非設置領域内に他の形状の固定樹脂22aを設けた構成としてもよい。
また、n型用電極6aおよびp型用電極7aは、固定樹脂22aを裏面電極型太陽電池セル8の電極間に設置する際に、固定樹脂22aと電極との位置合わせに用いられる。ここで、n型用電極6aおよびp型用電極7aは、必ずしも非設置領域41a,41bの内側に設けられる必要はないが、非設置領域41a,41bの内側に設けることによって、配線シートとの位置合わせ用の固定樹脂22aのパターンと、固定樹脂22aとの位置合わせ用のn型用電極6aおよびp型用電極7aのパターンとを裏面電極型太陽電池セル8の裏面の別々の領域に設ける必要がない。これにより、裏面電極型太陽電池セル8の裏面における電極形成領域を広げることができるため、より多くの電流をより効率的に取り出すことができる。
n型用電極6aおよびp型用電極7aは、固定樹脂22aを裏面電極型太陽電池セル8の電極間に設置する際に認識できればよいため、固定樹脂22aを裏面電極型太陽電池セル8に設置した後には固定樹脂22aで覆われていてもよい。また、n型用電極6aおよびp型用電極7aは、固定樹脂22aの内側に設けなくてもよく、固定樹脂22aの外側に設けてもよく、固定樹脂22aと一部が重なる形状または全部が重なる形状であってもよい。
n型用電極6aおよびp型用電極7aは本実施の形態の形状に限られるものではなく、固定樹脂22aの設置箇所の位置合わせに適した様々な形状を用いることができる。また、n型用電極6aおよびp型用電極7aは、同一形状であってもよく、異なる形状であってもよいが、裏面電極型太陽電池セル8の電極間に設置される固定樹脂22aの形状が回転対称形状でない場合、または固定樹脂22aの設置工程において裏面電極型太陽電池セル8の向きを一方向に揃えたい場合には、n型用電極6aとp型用電極7aとを異なる形状とすることが好ましい。これにより、裏面電極型太陽電池セル8に固定樹脂22aを設置する工程において、裏面電極型太陽電池セル8と固定樹脂22aとの向きが誤った状態で固定樹脂22aを設置してしまうことを防ぐことができる。
<固定樹脂を第1の硬化状態とする工程>
次に、図1(c)の模式的断面図に示すように、未硬化の固定樹脂22aを硬化して第1の硬化状態の固定樹脂22bとされる。
ここで、未硬化の固定樹脂22aは、たとえば、加熱および/または紫外線などの光の照射などによって硬化して第1の硬化状態となる。これにより、未硬化の固定樹脂22aの状態と比べて、粘着力および流動性が低下した第1の硬化状態の固定樹脂22bを得ることができる。
また、第1の硬化状態の固定樹脂22bは、常温(約25℃)における未硬化状態と比べて粘度が高く、形状保持性(外力を加えない限り変形しない性質)を有しており、かつ接着性の低い状態(固定樹脂22bの表面に裏面電極型太陽電池セル8や配線シートを接触させても裏面電極型太陽電池セル8や配線シートに固定樹脂22bが付着しない程度の接着性を有する状態)であることが好ましい。さらには、後述する裏面電極型太陽電池セル8と配線シートとを重ね合わせる工程において、裏面電極型太陽電池セル8と配線シートとを重ね合わせた後においても、裏面電極型太陽電池セル8と配線シートとを容易に取り外しできる傾向にある。そのため、裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線シートの配線との位置合わせを容易かつ高精度に行なうことができる傾向にある。
未硬化状態の固定樹脂22aを第1の硬化状態の第1の固定樹脂22bとする手段が加熱による場合は、第1の硬化状態の第1の固定樹脂22bとなる温度は、後述する第1の硬化状態の第1の固定樹脂22bが軟化する温度および軟化状態の第1の固定樹脂が第2の硬化状態となる温度よりも低いことが好ましい。これにより、未硬化状態の固定樹脂22aを第1の硬化状態の第1の固定樹脂22bとする工程における加熱温度を制御した場合には、未硬化状態の固定樹脂22aが軟化状態や第2の硬化状態まで進行してしまうことを防止することができる。
<配線シートを用意する工程>
次に、図1(d)の模式的断面図に示すように、絶縁性基材11と、絶縁性基材11の一方の表面に設けられたn型用配線12およびp型用配線13とを含む配線シート10を用意する。
図7に、図1(d)に示す配線シートを配線の設置側から見た模式的な平面図を示す。図7に示すように、配線シート10は、絶縁性基材11の表面上に、n型用配線12、n型用配線12a、p型用配線13、p型用配線13aおよび接続用配線14を含む配線16を有している。
ここで、n型用配線12、n型用配線12a、p型用配線13、p型用配線13aおよび接続用配線14はそれぞれ導電性であり、n型用配線12およびp型用配線13はそれぞれ複数の長方形が長方形の長手方向に直交する方向に配列された形状を含む櫛形状とされている。一方、接続用配線14は帯状とされている。また、配線16の終端にそれぞれ位置しているn型用配線12aおよびp型用配線13a以外の隣り合うn型用配線12とp型用配線13とは接続用配線14によって電気的に接続されている。
配線シート10においては、櫛形状のn型用配線12の櫛歯(長方形)に相当する部分と櫛形状のp型用配線13の櫛歯(長方形)に相当する部分とが1本ずつ交互に噛み合わさるようにn型用配線12およびp型用配線13がそれぞれ配置されている。その結果、櫛形状のn型用配線12の櫛歯に相当する部分と櫛形状のp型用配線13の櫛歯に相当する部分とはそれぞれ1本ずつ交互に所定の間隔を空けて配置されることになる。
図8に、図7のVIII−VIIIに沿った模式的な断面図を示す。図8に示すように、配線シート10においては、絶縁性基材11の一方の表面上にのみn型用配線12およびp型用配線13が設置されている。
絶縁性基材11の材質としては、電気絶縁性の材質であれば特に限定なく用いることができ、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene naphthalate)、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylene sulfide)、ポリビニルフルオライド(PVF:Polyvinyl fluoride)およびポリイミド(Polyimide)からなる群から選択された少なくとも1種の樹脂を含む材質を用いることができる。
絶縁性基材11の厚さは特に限定されず、たとえば25μm以上150μm以下とすることができる。
絶縁性基材11は、1層のみからなる単層構造であってもよく、2層以上からなる複数層構造であってもよい。
配線16の材質としては、導電性の材質のものであれば特に限定なく用いることができ、たとえば、銅、アルミニウムおよび銀からなる群から選択された少なくとも1種を含む金属などを用いることができる。
配線16の厚さも特に限定されず、たとえば10μm以上50μm以下とすることができる。
配線16の形状も上述した形状に限定されず、適宜設定することができるものであることは言うまでもない。
配線16の少なくとも一部の表面には、たとえば、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、錫(Sn)、SnPb半田、およびITO(Indium Tin Oxide)からなる群から選択された少なくとも1種を設置してもよい。この場合には、配線シート10の配線16と後述する裏面電極型太陽電池セル8の電極との電気的接続を良好なものとし、配線16の耐候性を向上させることができる傾向にある。
配線16の少なくとも一部の表面には、たとえば防錆処理や黒化処理などの表面処理を施してもよい。
配線16も、1層のみからなる単層構造であってもよく、2層以上からなる複数層構造であってもよい。
以下に、図1(d)、図7および図8に示される構成の配線シート10の製造方法の一例について説明する。
まず、たとえばPENフィルムなどの絶縁性基材11を用意し、その絶縁性基材11の一方の表面の全面にたとえば金属箔または金属プレートなどの導電性部材を貼り合わせる。たとえば所定の幅にカットされた絶縁性基材のロールを引き出し、絶縁性基材の一方の表面に接着剤を塗布し、絶縁性基材の幅よりやや小さくカットされた金属箔のロールを重ね合わせて加圧・加熱することで貼り合わせることができる。
次に、絶縁性基材11の表面に貼り合わされた導電性部材の一部をフォトエッチングなどにより除去して導電性部材をパターンニングすることによって、絶縁性基材11の表面上にパターンニングされた導電性部材からなるn型用配線12、p型用配線13および接続用配線14などを含む配線16を形成する。
以上により、図1(d)、図7および図8に示される構成の配線シート10を作製することができる。
<接合部材を設置する工程>
次に、図1(e)の模式的断面図に示すように、配線シート10のn型用配線12およびp型用配線13のそれぞれの表面上にスクリーン印刷法により導電性物質を含む接合部材21を設置する。
接合部材21としては、たとえば半田樹脂を用いることができる。半田樹脂は、導電性物質と、絶縁性樹脂と、を含み、絶縁性樹脂中に導電性物質の粒子が分散した構成を有している。
半田樹脂の導電性物質としては、たとえばSn−Bi半田などの半田を用いることができる。半田樹脂の絶縁性樹脂としては、たとえばエポキシ樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂からなる群から選択された少なくとも1種を樹脂成分として含む熱硬化型および/または光硬化型の絶縁性樹脂などを用いることができる。
<太陽電池セルと配線シートとを重ね合わせる工程>
次に、図1(f)の模式的断面図に示すように、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10とを重ね合わせる。
裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との重ね合わせは、たとえば、裏面電極型太陽電池セル8のn型用電極6およびp型用電極7がそれぞれ配線シート10の絶縁性基材11上に設けられたn型用配線12およびp型用配線13と接合部材21を介して対向するようにして行なわれる。
図9に、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10とを重ね合わせた後の一例の模式的な平面図を示す。図9に示すように、裏面電極型太陽電池セル8の電極設置側の表面である裏面と、配線シート10の配線設置側の表面と、が向かい合うようにして裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10とが重ね合わされる。ここでは、1枚の配線シート10上に16枚の裏面電極型太陽電池セル8を重ね合わせているが、この構成に限定されないことは言うまでもなく、たとえば1枚の配線シート10上に1枚の裏面電極型太陽電池セル8を重ね合わせた構成としてもよい。
また、裏面電極型太陽電池セル8の電極と周縁部との間に位置合わせパターンを有する固定樹脂22aが設けられた場合には、固定樹脂22aの位置合わせパターンに対応する位置合わせパターンが設けられた配線シート10を用いることが好ましい。
たとえば図6に示す非設置領域41a,41bが設けられた裏面電極型太陽電池セル8を用いた場合には、たとえば図10の模式的拡大平面図に示すような非設置領域41a,41bに対応する位置合わせパターンの一例として開口部51が設けられた配線シート10を用いることが好ましい。なお、図10は、絶縁性基材11側から見たときの配線シート10の模式的な拡大平面図であり、配線シート10に設けられた開口部51は、絶縁性基材11を通した目視、若しくは赤外線などの特定の波長の光の使用などによって認識可能となっている。
ここで、開口部51は、たとえば、配線シート10の配線が設けられていない領域(すなわち、絶縁性基材11の表面が露出している領域)であり、図10に示す例では、n型用配線12の延長線上にn型用配線12の先端から離れた位置に設けられている。
図6に示す裏面電極型太陽電池セル8と、図10に示す配線シート10とを重ね合わせる工程においては、たとえば図11の模式的拡大断面図に示すように、開口部51から非設置領域41aが見えるように、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との位置合わせが行なわれる。
また、配線シート10の向きと裏面電極型太陽電池セル8の向きとが決まっている場合には、固定樹脂22bの非設置領域41aと非設置領域41bとを異なる形状としてもよい。これにより、配線シート10に設けられた開口部51を通して固定樹脂22bの非設置領域41aまたは非設置領域41bの形状を確認することができるため、裏面電極型太陽電池セル8の向きが誤った状態で裏面電極型太陽電池セル8と配線基板10との位置合わせが行なわれることを防ぐことができる。なお、図6の例のように、n型用電極6aおよびp型用電極7aが固定樹脂22aが設置されていても認識可能である場合には、n型用電極6aの表面形状とp型用電極7aの表面形状とを異なる形状として、配線シート10に設けられた開口部51を通してn型用電極6aの表面形状およびp型用電極7aの表面形状を確認することによっても、上記と同様の効果を得ることができる。
なお、配線シート10の開口部51は、非設置領域41a,41bに対応した形状に限定されないことは言うまでもなく、たとえば、固定樹脂22aの位置合わせパターンによって、裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線シート10の配線との位置合わせを適切に行なうことができる様々なパターンを用いることができる。
<導電性物質を溶融する工程、固定樹脂を硬化させる工程>
次に、上記のようにして重ね合わせた裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10とを加圧しながら、接合部材21の導電性物質を加熱することによって、導電性物質を溶融する。
ここで、接合部材21中の導電性物質は、加熱されることによって溶融し、図1(g)の模式的断面図に示すように、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との間の加圧によって裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線シート10の配線との間で変形する。
また、第1の硬化状態の固定樹脂22bも、図1(g)に示すように、このときの加熱および/または紫外線などの光の照射によって、粘度が低下して軟化し、軟化状態の固定樹脂22cになる。
接合部材21の導電性物質の溶融開始温度は、第1の硬化状態の固定樹脂22bの軟化開始温度よりも高いことが好ましい。接合部材21の導電性物質の溶融開始温度が第1の硬化状態の固定樹脂22bの軟化開始温度よりも高い場合には、接合部材21が加熱されて接合部材21中の導電性物質が溶融し始めたときでも、軟化状態の固定樹脂22cが配線シート10の配線間および裏面電極型太陽電池セル8の電極間に既に入り込んでいるため、隣りの配線および電極に向かって流出しない。そのため、隣り合う電極間および配線間が接合部材21の導電性物質で短絡するのを有効に防止することができる。
軟化状態の固定樹脂22cが配線シート10の配線間に入り込むことによって配線シート10の表面のより広い領域に軟化状態の固定樹脂22cを接触させることができ、その後、軟化状態の固定樹脂22cが硬化して第2の硬化状態の固定樹脂22dとなることによって、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10とを強固に接合することができる。
さらに、本実施の形態の方法によれば、電極間または配線間の狭い領域に電極または配線に重ならないように粘着性のテープを貼り付ける工程が必要ないため、生産性にも優れている。
その後、図1(h)の模式的断面図に示すように、軟化状態の固定樹脂22cがさらに加熱および/または紫外線などの光の照射によって粘度が上昇して再度硬化し、第2の硬化状態の固定樹脂22dになる。第2の硬化状態の固定樹脂22dは、樹脂の架橋反応によって硬化したものであるため、第2の硬化状態の固定樹脂22dは再度軟化することなく状態が安定する。
ここで、第2の硬化状態の固定樹脂22dは、第1の硬化状態の固定樹脂22bの粘度が一旦低下して軟化状態の固定樹脂22cとなった後に、粘度が再度上昇して接着可能となる状態であることが好ましい。この場合には、第1の硬化状態および/または軟化状態で裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との位置関係を調整した後に第2の硬化状態とすることによって、所望の位置関係で裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10とを接着することができる傾向にある。これにより、生産性、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との機械的な接続の安定性、および裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線シート10の配線との電気的な接続の安定性を向上することができる傾向が大きくなる。
図12に、固定樹脂にBステージ化可能な樹脂を用い、接合部材21の導電性物質に半田を用いたときの経過時間に対する加熱温度の変化と、固定樹脂の粘度変化との関係を示す。まず、図12の横軸の加熱開始から加熱温度を上昇させていくにつれて、第1の硬化状態の固定樹脂22bの粘度が低下していき、軟化状態の固定樹脂22cとなる。
そして、加熱温度が半田の融点以上の温度となったときに、接合部材21の半田は溶融して流動する。このとき、第1の硬化状態の固定樹脂22bの粘度が低下して軟化状態の固定樹脂22cとなっていない場合には、固定樹脂の粘度が高く、配線シート10の隣り合う配線間に固定樹脂が十分に入り込めないため、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との間に空間が残りやすくなる。
しかしながら、固定樹脂として、たとえばBステージ化可能な樹脂や膨潤タイプの樹脂のような、未硬化の固定樹脂の粘度が上昇して第1の硬化状態となった後に粘度が低下して軟化状態となり、その後、再度粘度が上昇して第2の硬化状態となる樹脂を用いた場合には、接合部材21の半田が溶融して流動する前に、接合部材21の設置箇所を除いた裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との間のできるだけ広い空間を埋めるように、軟化状態の固定樹脂22cを充填することができる。
その後、接合部材21の半田の融点を超える温度で加熱温度を一定に保持することによって、半田が溶融した状態で軟化状態の固定樹脂22cを硬化して第2の硬化状態の固定樹脂22dとする。ここで、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との間の広い空間には軟化状態の固定樹脂22cが充填されているため、軟化状態の固定樹脂22cが硬化して第2の硬化状態の固定樹脂22dとなった後には、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との接合強度を高くすることができ、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との機械的な接続の安定性を高くすることができる。
そして、加熱温度を接合部材21の半田の融点未満の温度に低下させることによって、接合部材21の半田を固化して裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線シート10の配線との電気的な接続が行なわれる。このとき、第2の硬化状態の固定樹脂22dは、加熱温度の低下によっては硬度がほとんど変化しないため、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との接合強度が保持される。
なお、図12に示す経過時間に対する加熱温度の変化を変更した場合には、固定樹脂の軟化温度、硬化開始時間、硬化完了時間および導電性物質の溶融性等に影響を与えるため、本工程に適合する材料設計と、その材料設計に適した加熱温度の変化と、を組み合わせることが好ましい。
たとえば、固定樹脂は、接合部材21の導電性物質が溶融状態となる前に加圧による変形が可能な程度に軟化していることが好ましい。この場合には、固定樹脂を配線シート10の配線間に充填した後に接合部材21の導電性物質を溶融状態とすることができるため、接合部材21の導電性物質の配線シート10の配線間への流入を有効に防止することができる。
また、軟化状態の固定樹脂22cが再度硬化して第2の硬化状態の固定樹脂22dとなる前に接合部材21の導電性物質が溶融状態となることが好ましい。接合部材21の導電性物質の溶融によって裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との間の高さが減少し、その減少とともに軟化状態の固定樹脂22cが配線シート10の配線間に流入していく。そのため、第2の硬化状態の固定樹脂22dの形成後に接合部材21の導電性物質が溶融した場合には、軟化状態の固定樹脂22cが配線シート10の配線間に十分に充填されていない状態で接合部材21の導電性物質が溶融状態で配線シート10の配線間に流入するおそれがある。また、導電性物質は溶融して電極と配線との間に濡れ広がるが、軟化状態の固定樹脂22cが第2の硬化状態の固定樹脂22dとなると裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との間の高さが固定されてしまうため、濡れ広がった導電性物質が電極と配線との間に十分に充填できないおそれがある。
また、第2の硬化状態の固定樹脂22dが形成されるまで接合部材21の導電性物質が溶融状態となる温度を保持することが好ましい。この場合には、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10とが第2の硬化状態の固定樹脂22dによって機械的に接続された後に接合部材21の導電性物質が固化するため、裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線シート10の配線との電気的な接続の安定性を向上することができる。
このように、固定樹脂の軟化および硬化のタイミングと、接合部材の導電性物質の溶融のタイミングとを調節することによって、隣り合う電極間および/または配線間の導電性物質による短絡の発生を抑えて裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線シート10の配線とを電気的に接続することができるとともに、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10とを第2の硬化状態の固定樹脂22dで機械的に接続することができる。
第1の硬化状態の固定樹脂22bを軟化して軟化状態の固定樹脂22cを形成する工程と、接合部材21の導電性物質を溶融する工程と、軟化状態の固定樹脂22cを硬化して第2の硬化状態の固定樹脂22dを形成する工程とが加熱によって行なわれる場合には、第1の硬化状態の固定樹脂22bを軟化する温度は、軟化状態の固定樹脂22cを硬化して第2の硬化状態とする温度よりも低いことが好ましい。このように加熱温度を制御することで固定樹脂を確実に第1の硬化状態、軟化状態および第2の硬化状態の順に状態を遷移させることができる。これにより、第1の硬化状態の固定樹脂22bを軟化して軟化状態の固定樹脂22cを形成する工程と、接合部材21の導電性物質を溶融する工程と、軟化状態の固定樹脂22cを硬化して第2の硬化状態の固定樹脂22dを形成する工程と、を、たとえば上述のように、1回の加熱工程で行なうことができる。この場合には、生産性がさらに優れる傾向にある。
なお、第1の硬化状態、軟化状態および第2の硬化状態は、熱エネルギおよび/または光エネルギなどのエネルギを供給したときの時間の経過に対する粘度変化を調査することにより確認することができる。また、第1の硬化状態、軟化状態および第2の硬化状態は、それぞれ、固定樹脂の特性、組成や状態を分析することによっても確認することができる。たとえば、固定樹脂がBステージ化可能な樹脂である場合には、固定樹脂の粘度、溶媒の含有量および樹脂の架橋率などを測定することによっても確認することができる。
図13に、固定樹脂にBステージ化可能な樹脂を用い、接合部材に半田を用いて作製された配線シート付き太陽電池セルの一例の模式的な拡大断面図を示す。ここで、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10とは、第2の硬化状態の固定樹脂22dによって機械的に接続されている。また、裏面電極型太陽電池セル8のn型用電極6およびp型用電極7はそれぞれ配線シート10のn型用配線12およびp型用配線13と導電性物質23により電気的に接続されている。
ここで、裏面電極型太陽電池セル8の基板1の裏面と、配線シート10の絶縁性基材11の表面との間の高さTは、n型用配線12およびp型用配線13の厚さがそれぞれたとえば35μm程度である場合には、たとえば50μm以上60μm以下程度とされる。
また、隣り合うn型用配線12とp型用配線13との間の距離Pは、たとえば200μm程度とされる。なお、距離Pが5mm以下である場合、特に1mm以下である場合には、半田による配線間の短絡が発生しやすくなる。そのため、このような場合には、本発明の裏面電極型太陽電池セル8の電極と配線シート10の配線との電気的な接続の安定性を向上できるという効果が有効に作用する。
さらに、n型用配線12およびp型用配線13のそれぞれの幅Wは、たとえば550μm程度とされる。
<封止材中に封止する工程>
上記のようにして作製された配線シート付き太陽電池セルの裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10とは、たとえば図14の模式的断面図に示すように、表面保護材17と裏面保護材19との間の封止材18中に封止されることにより太陽電池モジュールが作製される。
封止材18中に封止する工程は、たとえば、ガラスなどの表面保護材17に備えられたエチレンビニルアセテート(EVA)などの封止材18と、ポリエステルフィルムなどの裏面保護材19に備えられたEVAなどの封止材18との間に配線シート付き太陽電池セルを挟み込み、表面保護材17と裏面保護材19との間を加圧しながら加熱することによりこれらの封止材18を一体化して行なうことができる。
上記においては、第1の硬化状態の固定樹脂22bを加熱することによって固定樹脂22bを軟化する工程と、接合部材21を加熱することによって接合部材21中の導電性物質を溶融する工程と、軟化した固定樹脂22cを加熱することによって硬化して固定樹脂22cを第2の硬化状態とする工程とを経た後の配線シート付き太陽電池セルを封止材18中に封止する場合について説明したが、封止材18中に封止する工程において、これらの工程を行なって配線シート付き太陽電池セルを封止材18中に封止して太陽電池モジュールを作製することが好ましい。この場合には、太陽電池モジュールの生産性をさらに優れたものとすることができる。すなわち、これらの工程を行なう前の重ね合わせた裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10とを表面保護材17に備えられた封止材18と、裏面保護材19に備えられた封止材18との間に挟み込み、表面保護材17と裏面保護材19との間を加圧しながら加熱および/または紫外線などの光の照射を行なう。これによって、固定樹脂が第1の硬化状態、軟化状態および第2の硬化状態を経て硬化して配線シート付き太陽電池セルが作製されるとともに、その配線シート付き太陽電池セルが封止材18中に封止された太陽電池モジュールが作製される。
また、この封止工程は真空引きされた雰囲気中で行なうことが好ましい。これにより、封止材18に気泡が発生したり、封止材18と配線シート付き太陽電池セルとの間に空隙が発生することを抑制することができる。さらに、真空引きされた雰囲気中で行なう封止工程に、第1の硬化状態の固定樹脂22bを加熱することによって固定樹脂22bを軟化する工程と、接合部材21を加熱することによって接合部材21中の導電性物質を溶融する工程と、軟化した固定樹脂22cを加熱することによって硬化して固定樹脂22cを第2の硬化状態とする工程と、を含ませることによって、裏面電極型太陽電池セル8と配線シート10との間も脱気することができるため、固定樹脂22d、導電性物質および接合部材21に気泡や空隙が発生するのを抑制することができ、信頼性の高い太陽電池モジュールを作製することができる。
なお、上記において、第2の硬化状態の固定樹脂22dは白色であることが好ましい。第2の硬化状態の固定樹脂22dが白色である場合には、固定樹脂22dに対する光の反射率が高くなり、裏面電極型太陽電池セル8を透過してきた光をこれらの樹脂で効率的に反射して裏面電極型太陽電池セル8に光が再度照射されることで光損失を低減させることができることから、配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの変換効率を向上させることができる傾向にある。本明細書において、「白色」とは、波長360〜830nmの光に対する反射率が50%以上であることをいう。なお、第2の硬化状態の固定樹脂22dが白色である場合に、第2の硬化状態の固定樹脂22dの波長360〜830nmの光に対する反射率は100%近い方が好ましい。
また、本発明における裏面電極型太陽電池セルの概念には、上述した基板の一方の表面側(裏面側)のみにn型用電極およびp型用電極の双方が形成された構成のものだけでなく、MWT(Metal Wrap Through)セル(基板に設けられた貫通孔に電極の一部を配置した構成の太陽電池セル)などのいわゆるバックコンタクト型太陽電池セル(太陽電池セルの受光面側と反対側の裏面側から電流を取り出す構造の太陽電池セル)のすべてが含まれる。
<作用・効果>
以上のように、本実施の形態によれば、裏面電極型太陽電池セルの電極間に固定樹脂を設置し、配線シートの配線上に導電性物質を含む接合部材を設置している。
これにより、本実施の形態においては、たとえば図18(b)に記載されているようにスクリーンにスキージ強く押し付ける必要がないことから、スクリーンの耐久性の低下および裏面電極型太陽電池セルの割れの発生を抑えることができる。
また、スクリーン印刷法では、印刷サイズが大きいほど印刷の精度が低下するため、固定樹脂および接合部材をそれぞれスクリーン印刷法で印刷する場合には、大面積で印刷する配線シート側の印刷精度の方が低くなる。固定樹脂による隣接する電極間および配線間の短絡防止と、接合部材による電極と配線との接続とを比較したとき、固定樹脂の印刷ズレによる短絡の発生は1箇所でも致命的となる。したがって、本実施の形態のように、裏面電極型太陽電池セルに固定樹脂を設置し、配線シートに接合部材を設置したときには、裏面電極型太陽電池セルと配線シートとの接合体からなる配線シート付き太陽電池セルの不良の発生を低減することができる。
また、固定樹脂および接合部材をスクリーン印刷法で印刷する場合には、固定樹脂と接合部材とをそれぞれ裏面電極型太陽電池セルと配線シートとに分けて印刷することによって、固定樹脂および接合部材の印刷条件(スクリーンの近接または当接・印刷速度・スキージの押圧など)を個別に最適化することができる。そのため、固定樹脂および接合部材のスクリーンの設計自由度が向上するとともに、固定樹脂および接合部材のスクリーン印刷法による印刷を高精度で行なうことができる。
また、固定樹脂および接合部材の両方を裏面電極型太陽電池セルまたは配線シートのいずれか一方に設置する場合には、固定樹脂または接合部材を設置した後、その乾燥を待ってから接合部材または固定樹脂を設置しなければならなかったが、固定樹脂と接合部材とをそれぞれ裏面電極型太陽電池セルと配線シートとに分けて印刷することによって、上記の乾燥工程を省略することができるため、工程時間を短縮することができる。
また、本実施の形態において、固定樹脂および接合部材のそれぞれの設置を並行して実施することによって、さらに工程時間を短縮することができる。
<実施例>
まず、n型シリコン基板の裏面のn型不純物拡散領域上に形成された帯状のn型用電極と、p型不純物拡散領域上に形成された帯状のp型用電極とが1本ずつ交互に配置された裏面電極型太陽電池セルを作製した。ここで、n型用電極およびp型用電極はそれぞれAg電極であって、隣り合うn型用電極とp型用電極との間のピッチは750μmとした。また、n型用電極およびp型用電極のそれぞれの幅は50μm〜150μmとし、n型用電極およびp型用電極のそれぞれの高さは3μm〜13μmとした。
次に、裏面電極型太陽電池セルの裏面の隣り合うn型用電極とp型用電極との間に未硬化の固定樹脂(サンワ化学工業(株)製SPSR−900G)を所定のパターンの開口部を有するスクリーンを用いたスクリーン印刷法により設置した。ここで、固定樹脂はエポキシ系のBステージ化可能な樹脂であり、第1の硬化状態の樹脂の粘着性が低く、真空引き中において温度が60℃以下では第1の硬化状態から軟化せず、80℃〜100℃以上で軟化し、130℃以上で硬化が開始する樹脂を選定した。図15に、固定樹脂を設置した後の裏面電極型太陽電池セルの裏面の拡大写真を示す。図15に示すように、裏面電極型太陽電池セルの裏面においては、電極と周縁部との間に固定樹脂の位置合わせパターン(本実施例においては図15の点線で囲まれた領域に示されるように固定樹脂を菱形状に抜いたパターン)が2つ形成された。
次に、裏面電極型太陽電池セルの隣り合うn型用電極とp型用電極との間の未硬化の固定樹脂を80℃のオーブンに入れて10分間加熱し、当該固定樹脂を硬化して第1の硬化状態とし、第1の硬化状態の固定樹脂の裏面電極型太陽電池セル側の幅が400μm、裏面電極型太陽電池セルとは反対側の幅が100μm、高さが概ね50μmとなるようにした。
次に、PENからなる絶縁性基材上に銅配線からなるn型用配線およびp型用配線がそれぞれ形成された配線シートを作製した。図16に、配線シートの配線の設置側の表面の拡大写真を示す。本実施例においては、図16に示すように、配線シートには、固定樹脂の位置合わせパターンに対応する位置に、配線が設けられずにPENからなる絶縁性基材の表面が露出した位置合わせパターン(図16の点線で囲まれた領域)が設けられた。
次に、配線シートのn型用配線上およびp型用配線上にそれぞれ半田樹脂(タムラ化研(株)製のTCAP−5401−27)を所定のパターンの開口部を有するスクリーンを用いたスクリーン印刷法により設置した。ここで使用した半田樹脂は、Sn−Bi系の半田粒子(導電性物質)がエポキシ系の絶縁性樹脂(絶縁性樹脂)中に分散した半田樹脂で、幅が150μm、高さが概ね30μmとなるように設置した。なお、配線シートに固定樹脂がなく、スクリーンと配線シートとを密着させることができるため、半田樹脂をスクリーン印刷により簡便に設置することができた。
次に、裏面電極型太陽電池セルの裏面のn型用電極およびp型用電極のそれぞれが配線シートのn型用配線およびp型用配線に対向するように、配線シート上に裏面電極型太陽電池セルを重ね合わせた。そして、裏面電極型太陽電池セルと配線シートとを重ね合わせる工程においては、裏面電極型太陽電池セルの固定樹脂の位置合わせパターンと、配線シートの位置合わせパターンとが重なるように位置合わせが行なわれた。
その後、重ね合わせた裏面電極型太陽電池セルと配線シートとを裏面電極型太陽電池セル側を下側として真空ラミネータに投入して、図17に示す温度プロファイルにより加熱および加圧することによって配線シート付き太陽電池を封止材中に封止して太陽電池モジュールを作製した。なお、図17に示す温度プロファイルは、熱電対1〜6を用いて測定された。
より具体的には、図17に示すように、重ね合わせた裏面電極型太陽電池セルと配線シートとをEVAからなる封止材の間にセットした後に加熱を開始するとともに真空引きを180秒間実施し、その後加圧を開始して温度を上昇させた。そして、図17に示すように温度を上昇させながら加圧を600秒間実施することにより配線シート付き太陽電池セルが封止材中に封止された太陽電池モジュールを作製した。
また、固定樹脂は、加熱開始から約240秒の時点までは第1の硬化状態であったが、240秒を超えた時点から軟化して軟化状態となった。そして、その軟化状態は加熱開始から約300秒を超える時点まで続き、その後再度硬化して第2の硬化状態となった。これにより、裏面電極型太陽電池セルと配線シートとが機械的に接続された。
なお、半田樹脂中の半田粒子は、固定樹脂が第1の硬化状態から軟化状態になるまでの間に溶融し、第2の硬化状態後の冷却により固化して、裏面電極型太陽電池セルの裏面のn型用電極およびp型用電極のそれぞれが配線シートのn型用配線およびp型用配線と電気的に接続された。
上記のようにして製造した実施例の配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの製造方法においては、スクリーンの破損率(100×スクリーンの破損枚数(枚)/裏面電極型太陽電池セルの全枚数(枚))は、3ppmであった。
また、実施例の配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの製造方法においては、裏面電極型太陽電池セルの破損率(100×裏面電極型太陽電池セルの破損枚数(枚)/裏面電極型太陽電池セルの全枚数(枚))は、30ppmであった。
<比較例>
裏面電極型太陽電池セルの裏面の隣り合うn型用電極とp型用電極との間に未硬化の固定樹脂をスクリーン印刷法により設置した後に、n型用電極およびp型用電極のそれぞれの表面上に半田樹脂をスクリーン印刷法により設置し、その後、半田樹脂が設置されていない配線シートと、固定樹脂および半田樹脂の双方が設置された裏面電極型太陽電池セルとを重ね合わせたこと以外は、実施例と同様にして、比較例の配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールを製造した。
上記のようにして製造した比較例の配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの製造方法においては、スクリーンの破損率(100×スクリーンの破損枚数(枚)/裏面電極型太陽電池セルの全枚数(枚))は、30ppmであった。
また、比較例の配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの製造方法においては、裏面電極型太陽電池セルの破損率(100×裏面電極型太陽電池セルの破損枚数(枚)/裏面電極型太陽電池セルの全枚数(枚))は、300ppmであった。
<評価>
上記の結果から明らかなように、実施例の配線シート付き太陽電池セルおよび太陽電池モジュールの製造方法においては、比較例と比べて、スクリーンの破損率および裏面電極型太陽電池セルの破損率を低減することができた。それゆえ、実施例においては、比較例と比べて、スクリーンの耐久性の低下および太陽電池セルの割れの発生を抑えることができることが確認された。
これは、実施例においては、固定樹脂を裏面電極型太陽電池セル側にスクリーン印刷法により設置し、半田樹脂を配線シート側にスクリーン印刷法により設置したため、比較例のように、スクリーンにスキージ強く押し付ける必要がなかったためと考えられる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。