JP2013213888A - プラスチック光ファイバーの製造方法 - Google Patents

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【課題】光信号の伝達性、小曲げ性能、及び、径精度に優れる溶融押出成形法によるプラスチック光ファイバーの製造方法を提供する。
【解決手段】 2台以上の溶融押出機1,11と2層以上の多層ダイ12及び多層用紡糸ノズル15を用いて、コア部及びクラッド部を形成する溶融押出法において、コア部、クラッド部及び補強層からなり、紡糸ノズル15から吐出される多層溶融プラスチックを鉛直下方向に下記の条件下で引き取ってプラスチック光ファイバーを製造することを特徴とする。
紡糸ノズル16の口径をA(mm)、プラスチック光ファイバーFの外径をB(mm)、紡糸ノズル16の出口から引取ローラー16aまでの長さをC(mm)として、
a.8≦A/B≦25
b.C×B+62×A−725×A≦ 2400
c.700≦C
【選択図】 図1

Description

本発明は、通信用途などに用いられるプラスチック光ファイバーの製造方法に関し、より詳細には、溶融押出成形により得られ、この製造過程において主には光学的な信号伝達損失の悪化が少なく、曲げ強度が高く、かつ径精度の高いプラスチック光ファイバーに好適な製造方法に関する。
これまでの代表的なプラスチック光ファイバーの製造技術には、1.押出方式、2.界面ゲル重合法によるプリフォームを溶融引き落としする方法等が提案されている。
光ファイバー用途においては、光の伝達性に優れたプラスチック光ファイバーが求められている。
そこで、特許文献1には、溶融押出成形するとともに、ロッド状のプラスチック原料を少しずつ溶融して送り出すことを可能とした押出原料供給装置を使用することで、従来困難であった光信号の伝達損失悪化が極めて少なく、押出成形法本来の生産性を併せ持つ光伝送体(プラスチック光ファイバーなど)の製造方法が提案されている。
国際公開WO2010/109938号
上記従来の製造方法において、光信号の伝達損失の問題と生産性の問題に対して、いかにこれらを両立させるかが最大の課題になっている。具体的には、配線部材としては小曲げや接続損失の低減、言い換えると高い径精度が必要となっている。また、光伝達性、小曲げ性能、径精度は、プラスチック光ファイバーの成形条件が不適切であるとそれぞれ個別に悪化する。
本発明の目的は、光信号の伝達性、小曲げ性能、及び、径精度に優れる溶融押出成形法によるプラスチック光ファイバーの製造方法を提供することにある。
この発明によるプラスチック光ファイバーの製造方法は、2台以上の溶融押出機と2層以上の多層ダイ及び多層用紡糸ノズルを用いて、コア部及びクラッド部を形成する溶融押出法において、紡糸ノズルから吐出される多層溶融プラスチックを鉛直下方向に下記の条件下で引き取ってプラスチック光ファイバーを製造することを特徴とするものである。
紡糸ノズルの口径をA(mm)、プラスチック光ファイバーの外径をB(mm)、紡糸ノズルの出口から引取ローラーまでの長さをC(mm)として、
a.8≦A/B≦25
b.C×B+62×A−725×A≦ 2400
c.700≦C
A/Bが8未満では、プラスチック光ファイバーの小曲げ時の損失悪化が大きい。A/Bは、より好ましくは10以上とされる。A/Bが25を超えると、伝送損失が大きくなる。A/Bは、より好ましくは20以下とされる。
C×B+62×A−725×Aが2400を超えると、ファイバー外径変動が大きくなる。ファイバー外径変動が大きいと、コネクタ接続時の心ずれが大きくなり、結合損失が大きくなる場合がある。
Cが700mm未満では、伝送損失が大きくなる。冷却が不十分な状態で引き取られることによると考えらえる。Cの上限は特にないが、4000mm以下が作業スペースの都合上好ましい。
この発明のプラスチック光ファイバーの製造方法において、具体的には、コア部及びクラッド部を構成する重合体等を、それぞれ加熱溶融させ、個々の流路から多層ダイ及び多層用紡糸ノズルへ注入する。このダイ及びノズルでコア部を押出成形すると同時に、その外周に1層又は2層以上の同心円状のクラッド部を押出し、溶着一体化させ、ノズルより吐出させ所定の条件下で引き取ることでプラスチック光ファイバーを形成する。引取ローラーは公知の引取ローラーが使用でき、ベルト式ローラー、ゴム式ローラーが挙げられる。
本発明のプラスチック光ファイバーの製造方法では、クラッド部として光学的なクラッド層と、その外側に機械的、及び熱的な補強層(以下、「オーバークラッド層」と記すことがある)を同時、または逐次押出することが好ましい。オーバークラッド材は、ポリカーボネートを主成分とするプラスチックで形成されているものが好ましい。オーバークラッド材は、機械強度特性に優れ、且つ光学的クラッド層と十分な密着性が得られるものであれば、どのようなもので形成してもよいが、特に、光学的クラッド層の外周をポリカーボネートで被覆することにより、透明性、耐熱性を維持しながら可撓性に優れたプラスチック光ファイバーとして使用することができる。オーバークラッド材による被覆層の厚みは、特に限定されないが、50μm以上500μm以下が適している。この範囲とすることにより、可撓性に優れ、且つ柔軟性等のプラスチック光ファイバーに必要な物性を満足できる。
プラスチック光ファイバーの製造で使用されるプラスチックの種類は、透明性が高く光伝送に用いることができるものであれば限定されない。例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの重合体、スチレン系モノマーの重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとして、メタクリル酸メチル、メタクリル酸トリクロロエチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル等;スチレン系モノマーとして、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられ、これらの共重合体でも構わない。その他共重合成分として、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等のビニルエステル類;N―n−ブチルマレイミド、N―tert−ブチルマレイミド、N―イソプロピルマレイミド、N―シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類等が例示される。その他、ポリカーボネート系プラスチック、シクロオレフィン系プラスチック、非晶フッ素系プラスチックなどを用いることもできる。
本発明の光ファイバーのコア部及び光学的クラッド層を構成する重合体は、当該分野で公知の方法によって製造することができる。例えば、重合体を構成するモノマーの混合物を、溶液重合、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合等に付す方法などが挙げられる。なかでも、異物、不純物の混入を防ぐという観点から、塊状重合法が好ましい。
光ファイバーは、通常、マルチモード光ファイバーと、シングルモード光ファイバーとに分類され、さらにマルチモード光ファイバーは、ステップインデックス(SI)型と屈折率分布を有するグレーデッドインデックス(GI)型に分類されるが、本発明のプラスチック光ファイバーの製造方法は、GI型(中心から半径方向外側に向かって屈折率の大きさに分布を有するコアを備えたタイプの)光ファイバーの製造により有利である。ここで、屈折率分布とは、ファイバーの中心から半径方向に向かって屈折率が放物線に近い曲線で又は一定幅で段階的に変化することを意味する。なかでも、中心から半径方向に向かって屈折率が低下しているものが好ましい。このような屈折率分布をもたせることにより、通信速度を向上させることができる。
本発明のプラスチック光ファイバーにおいて、コア部はドーパントを含んでなることが好ましい。ドーパントを含有させることにより、プラスチック光ファイバーにおけるコア部の屈折率を変化させ、屈折率分布をもたせることができる。特に、屈折率分布をもたせるために、コア部においてドーパントの濃度分布を調整することが有効である。なお、クラッド部には、ドーパントが含有されていてもよい。
ドーパントは、コア部及び/又はクラッド部の主たる構成成分である重合体と相溶性があり、これら重合体の屈折率よりも高い又は低い屈折率をもつ化合物であることが適している。相溶性の良好な化合物を用いることにより、コア部の濁りを生じさせず、散乱損失を極力抑え、通信できる距離を増大させることができる。
高い屈折率をもつ化合物をドーパントとする場合は、中心から半径方向に向かってドーパント濃度が低下するように濃度分布を調整することにより、中心から半径方向に向かって屈折率が低下する屈折率分布をもたせることができる。
低い屈折率をもつ化合物をドーパントとする場合は、中心から半径方向に向かってドーパント濃度が上昇するように濃度分布を調整することにより、中心から半径方向に向かって屈折率が低下する屈折率分布をもたせることができる。
また、ドーパントを配合する際に、二種類以上の屈折率の異なる化合物を配合してもよい。この二種類以上の化合物の中に、コア部及び/又はクラッド部の主たる構成成分である重合体の屈折率と比較して、高屈折率の化合物及び低屈折率の化合物が含まれることが好ましい。このような高屈折率の化合物及び低屈折率の化合物を併用することにより、高屈折率の化合物のみ又は低屈折率の化合物のみを配合した場合と比較して、これと同じ屈折率差を得るために配合させるドーパントの添加量を相対的に少なくすることができる。このため、ガラス転移点が相対的に高くなり、これによって得られる光ファイバーの耐熱性を向上させることができる。
なお、光ファイバーにおいてGI型の屈折率分布、特に、少なくともコア部に屈折率分布をつけるには、2台以上の溶融押出機と2層以上の多層ダイ及び多層用紡糸ノズルを用いて、コア部及びクラッド部を形成した後、引続いて設けられた熱処理ゾーンで、予めコア部に配合されたドーパントを周辺部方向に及び/または予めクラッドに配合されたドーパントを中心部に向かって拡散させ、ドーパントの濃度分布を付与する溶融押出ドーパント拡散法、2台以上の溶融押出機にそれぞれドーパント量を変えた重合体等を導入して、多層構造でコア部および/またはクラッド部を押出成形する方法等が例示される。
SI型及びマルチステップ型の屈折率分布をつける場合には、ドーパントを含まないコア部及びクラッド部を構成する重合体等を、2台以上の溶融押出機と2層以上の多層ダイ及び多層用紡糸ノズルを用いて溶融押出することが適している。
本発明によれば、ノズルから吐出される溶融プラスチックのドロー比、自重、冷却時間の最適なバランスが保たれ、光信号の伝達性、小曲げ性能、及び、径精度に優れるプラスチック光ファイバーを製造することが可能となる。
図1は、この発明によるプラスチック光ファイバーの製造方法を実施する装置を模式的に示す図である。 図2は、図1のプラスチック光ファイバーの製造装置で使用されている溶融押出機の1例を示す縦断面図である。
以下、本発明のプラスチック光ファイバーの製造方法の実施態様を詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
図1に、溶融押出法を使用してプラスチック光ファイバーを製造する装置を示している。同図において、プラスチック光ファイバー製造装置は、2台以上の溶融押出機(コア部を溶融押出するコア部溶融押出機(1)及びクラッド部を溶融押出するクラッド部溶融押出機(11))と、コア部溶融押出機(1)から押し出されたコア部にクラッド部溶融押出機(11)から押し出されたクラッド部を積層するための多層ダイ(12)と、補強層を押し出す補強層押出機(13)と、補強層押出機(13)から押し出された補強層をクラッド部のさらに外層に積層するための多層ダイ(14)と、コア部、クラッド部及び補強層からなる多層溶融プラスチックを吐出する多層用紡糸ノズル(15)と、多層溶融プラスチックを鉛直下方向に引き取るための引取ローラー(16a)を有する巻取機(16)とを備えている。
コア部溶融押出機(1)(クラッド部溶融押出機(11)も同じ構成)は、図2に示すように、ホッパー(2)と、ホッパー(2)に設けられてその内周(3a)によって原料ロッドRを案内するプラスチック原料収納部(3)と、頂壁(6)を貫通してプラスチック原料収納部(3)の上端部内にガスを導入する加圧ガス導入管(5a)を有するガス加圧手段(5)と、プラスチック原料収納部(3)の下端部外周に設けられた冷却手段(7)と、プラスチック原料収納部(3)の下流側に設けられて原料ロッドRの下端部分を加熱溶融させる加熱溶融部(4)と、加熱溶融部(4)を加熱する加熱手段(8)とを備えている。
加熱溶融部(4)の内周は、プラスチック原料収納部(3)の下端内径と内径が等しい円筒部(4a)と、円筒部(4a)の下端に連なる逆円錐部(4b)と、下方に行くに連れて径が小さくなっている逆円錐部(4b)の下端部に設けられた溶融プラスチック排出口(4c)とからなり、ガス加圧手段(5)によるガス圧で溶融樹脂Mを順次金型(13)へ供給するようになっている。
実施例1
精製したメタクリル酸トリクロロエチル及びN−シクロヘキシルマレイミドとドーパントとしてDPS(ジフェニルスルフィド)を重量比で95:5:10の割合で混合し、さらに重合開始剤として過酸化ベンゾイル及び連鎖移動剤としてn−ブチルメルカプタンを添加し、塊状重合法によりコア部材用プラスチック原料を作製した。
精製したメタクリル酸メチルに重合開始剤として過酸化ベンゾイル及び連鎖移動剤としてn−ブチルメルカプタンを添加し、塊状重合法により光学的クラッド層用プラスチック原料を作製した。
得られた、コア部材用プラスチック原料と光学的クラッド層(クラッド部)用プラスチック原料を、別々の溶融押出機(1)(11)とそれらに連結された2層金型(多層ダイ)(12)とを用いて、コア部、光学的クラッド層の積層複層状を形成し、さらに加熱流路に一定時間通すことで、コア部に含有されるドーパントをクラッド部へ拡散させた。
さらに、もう一台の押出成形機(13)によりオーバークラッド材(補強層)であるLEXAN HFD1810[製品名、SABIC Innovative Plastics社製、ポリカーボネート]を溶融し、2層金型(多層ダイ)(14)を用いて、上記のコア部、クラッド部溶融物の通る流路と合流させることで最外周へ被覆させた。紡糸ノズル(15)より吐出される溶融プラスチックを表1に示した条件下で引き取り、プラスチック光ファイバーを得た。得られたプラスチック光ファイバーについて、以下の測定及び試験を行った。
損失測定:カットバック法を用いて680nmでの伝送損失を測定した。
巻き付け試験:直径10mmのロッドに光ファイバーを5回巻き付け、100時間保持した後、解除後の伝送損失増加(巻き付け前に対する解除後の損失増加)をJIS 6823に準拠して測定した。
また、プラスチック光ファイバー径は、インラインでキーエンス製寸法測定器LS−7030を用いて計測し、径変動を標準偏差/平均値で評価した。
これらの結果を表1に示す。
実施例2〜13及び比較例1〜6
表1に示すように、引取条件を変更した以外は実施例1と同様にプラスチック光ファイバーを作製し、評価した。
これらの結果を表1に示す。
Figure 2013213888
上記の表1に示す結果から以下のことが分かる。
1.例えば比較例6と実施例10とを比較することで、紡糸ノズル(15)の出口から引取ローラー(16a)までの長さCに関し、これを600とすると、伝送損失が大きくなり(229dB/km程度)、これを750とすると、伝送損失が小さくなり(190dB/km程度)、伝送損失を210dB/km程度よりも小さくするのであれば、700≦Cとすることが適切であることが分かる。
2.比較例1及び2と実施例1,2及び4などとを比較することにより、ノズル口径A/ファイバー径Bを25より大きくすると(例えば28.0,28.6など)、伝送損失が大きくなり(300dB/km程度)、A/Bを25以下(例えば24.5程度)すると、伝送損失が210dB/km程度よりも小さくなることが分かる。また、A/Bを20以下とすると、伝送損失が203dB/km程度以下になることが分かる。
3.比較例4と実施例8などとを比較することにより、A/Bを8より小さくすると(例えば7.0程度)、曲げ性能が悪くなり(巻付試験の損失が1dBより大)、A/Bを8より大きく(例えば9.0程度)すると、曲げ性能が良くなる(巻付試験の損失が0.4dB以下)ことが分かる。また、A/Bを10以上とすると、曲げ性能がさらに良くなる(巻付試験の損失が0.2dB以下)ことが分かる。
4.比較例3及び5から、A/Bを上記の好ましい範囲に入るようにしただけでは、径変動が大きくなるという問題を防ぐことができないことが分かる。C×B+62×A−725×Aは、径変動の推定指数となっており、これらの比較例から、この指数が2700を超えると、径変動が大きくなる(0.8%より大)ことが分かる。そして、C×B+62×A−725×Aを2400以下とすることで、径変動を所定値未満(0.3%未満)にできることが分かる。
以上のことから、紡糸ノズル(15)の口径をA(mm)、プラスチック光ファイバーの外径をB(mm)、紡糸ノズル(15)の出口から引取ローラー(16a)までの長さをC(mm)として、
a.8(より好ましくは10)≦A/B≦25(より好ましくは20)
b.C×B+62×A−725×A≦ 2400
c.700≦C
とすることにより、光信号の伝達性、小曲げ性能、及び、径精度に優れる溶融押出成形法によるプラスチック光ファイバーの製造方法を得ることができる。

Claims (2)

  1. コア部を溶融押出するコア部溶融押出機と、クラッド部を溶融押出するクラッド部溶融押出機と、コア部にクラッド部を積層する多層ダイと、多層ダイ内の多層溶融プラスチックを吐出する多層用紡糸ノズルと、多層溶融プラスチックを巻き取る引取ローラーとを用いてプラスチック光ファイバーを製造する方法において、紡糸ノズルから吐出される多層溶融プラスチックを鉛直下方向に下記の条件下で引き取ってプラスチック光ファイバーを製造することを特徴とするプラスチック光ファイバーの製造方法。
    紡糸ノズルの口径をA(mm)、プラスチック光ファイバーの外径をB(mm)、紡糸ノズルの出口から引取ローラーまでの長さをC(mm)として、
    a.8≦A/B≦25
    b.C×B+62×A−725×A≦ 2400
    c.700≦C
  2. クラッド部として光学的なクラッド層と、その外側に機械的、及び熱的な補強層を同時、または逐次押出することを特徴とする請求項1に記載のプラスチック光ファイバーの製造方法。
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