JP2013210221A - 廃棄物固化体、及び放射性廃棄物処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本願発明の課題は、放射性廃棄物の放射能濃度や放射線量を低減することができ、しかも乾燥収縮やブリージングによるひび割れ、温度ひび割れを引き起こすことのない技術を提供することであり、これを具現化する固化ブロック、人工地盤、及び放射性廃棄物処理方法を提供することである。
【解決手段】本願発明は、重量物によって放射線を遮蔽するという点に着目してなされたものであって、高密度材を含有したうえで固化させるというこれまでにない発想に基づいて行われたものであり、本願発明の固化ブロックは、放射性廃棄物と高密度材を混練して混練物を作り、この混練物を固化することによって得られるものである。
【選択図】図3

Description

本願発明は、放射線に汚染された汚染可燃物やその焼却灰、あるいは放射線に汚染された汚染土壌など、これら放射線に汚染された廃棄物(以下、これらを総称して「放射性廃棄物」という。)の処理に関するものであり、より具体的には、放射性廃棄物を処理した結果得られる廃棄物固化体、及び放射性廃棄物の処理方法に関するものである。
我が国は地震が頻発する国として知られ、近年では、東北地方太平洋沖地震をはじめ、兵庫県南部地震、新潟県中越地震など大きな地震が発生し、そのたびに甚大な被害を被ってきた。特に今般の東日本大震災では、津波によって計り知れない被害を受けたうえ、さらに福島原子力発電所の原子炉が破損したことによって放射性物質が大量に漏れ出すという事故が発生した。
放射性物質の漏出によって、地盤、草本類、津波によって発生したがれきなど、多くのものが汚染された。そこで、汚染土壌を排土し、あるいは草本類やがれきを除去する、いわゆる除染が進められている。この除染によりその土地の環境は徐々に改善されていく一方で、排出された放射性廃棄物の処理が大きな問題となっている。
ここでいう放射性廃棄物とは、既述のとおり、放射性物質によって汚染された廃棄物であり、排土によって生じた汚染土壌や、除去された草本類やがれきなどである。また、汚染された草本類や可燃性のがれき(以下、「汚染可燃物」という。)は、減容化や無機化を目的として焼却されることもあるが、焼却の結果生じる焼却灰はより放射能濃度が高くなっており、当然ながら汚染可燃物の焼却灰も放射性廃棄物に含まれる。
放射性廃棄物は放射線を放出するものであり、その保管にあたっては適切な手法が求められる。しかも、今回問題として取り上げられている放射性核種はセシウムであり、その半減期が30年であることを考えると、長期にわたって放射性廃棄物を適切に保管しなければならない。
このような背景の下、人の健康や生活環境に及ぼす影響を速やかに低減することを目的として、「東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」が施行され、この中(第20条)で、放射性廃棄物(特定廃棄物)は環境省令で定める基準に従って保管や処分を行うことが義務付けられている。この省令によれば、放射性廃棄物はその放射能濃度によって保管方法が分けられており、8,000Bq/kg以下の低濃度のもの、8,000Bq/kgを超え10万Bq/kg以下の中濃度のもの、10万Bq/kgを超える高濃度のもの、それぞれ異なる方法で保管されることになる。例えば、放射能濃度が中濃度(8,000Bq/kg超、10万Bq/kg以下)のものは管理型処分場で保管することとしており、放射能濃度が高濃度(10万Bq/kg超)のものは中間貯蔵施設(十分な水密性、強度及び耐久力を有する外周仕切設備を備えた遮断型処分場等)で保管することとしている。
放射性廃棄物を保管する場合、その放射能濃度を低減し、あるいは放出する放射線量を低減したうえで保管する方が好適である。このような処理を実施する手法として、所定の容器内で放射性廃棄物を固化する技術が提案されている。例えば、特許文献1では、放射性廃棄物とセメント系固化材を混合して収納容器内に入れ、目的の強度に達するまで固化し、加熱又は減圧によって内部水分を除去し、最後に収納容器を密閉する処理方法を提案している。なお、加熱又は減圧によって内部水分を除去するのは、長期にわたる保管の間に発生するガスを抑制するためである。
ところで、特許文献1のようにある物質をセメント系固化材で固化する場合、配合によっては種々の問題が生ずることがある。例えば、ワーカビリティ向上のため水の量を増加すると、ブリージングを起こし、これに伴うクラックが発生するという問題が生ずる。また、強度向上のためセメント量を増加すると、水和熱の上昇に伴う内部拘束を招き、いわゆる温度ひび割れが発生するという問題が生ずる。
本願出願人は、これまでにセメント系固化材で対象物を固化する際に生ずる上記問題を解決する好適な技術を提案している。例えば特許文献2は、石炭灰を固化する発明であり、石炭灰コンクリートの製造工程において、石炭灰、セメント、水を配合して混練した後、この混練物の電気抵抗値を測定しながら高周波振動を加えて締固めを行い、電気抵抗値が低下するまでこれを続けることで、圧縮強度の高い石炭灰コンクリートを製造する技術が記載されている。この技術によれば、製造管理が容易で、低コストでしかも高強度の石炭灰コンクリートを製造することができる。
特許文献3では、セメント、石炭灰、水(最適含水比程度)を練り混ぜて混練物を生成し、この混練物を施工現場まで搬送し、搬送された先で、混練物に振動を加えて流動状態にして、所定箇所に打設する方法が提案されている。この技術によれば、混練物はただ単に湿り気のある粉体の状態を保つため、これを扱う搬送手段や練混ぜ手段には、ほとんど混練物が付着しない。その結果、搬送手段や練混ぜ手段の掃除が容易であるとともに、材料を無駄なく使用できる。
また特許文献4では、石炭灰、セメント、水を練り混ぜて混練物を生成し、この混練物についてフロー試験を行い、所定のフロー値を示す水粉体比から最適配合比、特にセメント添加率を求める技術が提案されている。この技術によれば、石炭灰、セメント、水を混練した混練体のフロー試験からセメント添加率ないし最適配合比を求めることができる。
特開平11−128868号公報 特開平09−012348号公報 特開平10−311142号公報 特開平10−323820号公報
しかしながら、特許文献1をはじめとする従来の手法では、所定の収納容器を必要とするため、容器にかかる費用や容器密封に手間がかかるなどコスト高となる傾向にあった。さらに、収納容器の厚みや材質によっては、内部から放出される放射線を十分遮蔽することができず、安全な管理という目的を十分に果たすことができなかった。
また、特許文献2〜4は、おもに石炭灰を固化させることを目的としており、そもそも放射能濃度の低減や、放射線量の低減を目的とした技術ではない。従って、特許文献1と同様、放射能濃度の高い放射性廃棄物を安全に保管するという目的を果たすことはできなかった。
本願発明の課題は、放射性廃棄物の放射能濃度や放射線量を低減することができ、しかも乾燥収縮やブリージングによるひび割れ、あるいは温度ひび割れを引き起こすことのない技術を提供することであり、これを具現化する廃棄物固化体、及び放射性廃棄物処理方法を提供することである。
本願発明は、重量物によって放射線を遮蔽するという点に着目してなされたものであり、高密度材を含有したうえで固化させるというこれまでにない発想に基づいて行われたものである。
本願発明の廃棄物固化体は、放射性廃棄物と高密度材を混練して混練物を作り、この混練物を固化することによって得られるものである。
本願発明の廃棄物固化体は、混練物が、放射性廃棄物と高密度材に加えて固化材と水を含んだものとすることもできる。この場合、混練物のうち水の占める重量を、放射性廃棄物における最適含水比に基づいて定められた重量とすることもできる。
本願発明の廃棄物固化体は、外部振動を加えることによって混練物を流体化し、流体化した混練物を固化して得られたものとすることもできる。
本願発明の廃棄物固化体は、高密度材が、金属スラグ、鉄鉱石、鉄、鉛、及びこれらを組み合わせた混合物からなる群より選択したものとすることもできる。
本願発明の放射性廃棄物処理方法は、混練工程と固化工程を備えた方法である。混練工程では、放射性廃棄物と高密度材を混練することで混練物が得られ、固化工程では、混練物を固化させることで廃棄物固化体が得られる。
本願発明の放射性廃棄物処理方法は、混練工程で、放射性廃棄物、高密度材、固化材、及び水を混練して混練物を得ることもできる。この場合、混練物のうち水の占める重量を、放射性廃棄物における最適含水比に基づいて定められた重量とすることもできる。
本願発明の放射性廃棄物処理方法は、さらに振動工程を備えた方法とすることもできる。振動工程では、外部振動を加えることによって混練物を流体化させ、このときの固化工程では、流体化した混練物を固化させることで廃棄物固化体が得られる。
本願発明の放射性廃棄物処理方法は、高密度材が、金属スラグ、鉄鉱石、鉄、鉛、及びこれらを組み合わせた混合物からなる群より選択したものとすることもできる。
本願発明の廃棄物固化体、及び放射性廃棄物処理方法には、次のような効果がある。
(1)高密度材を含んでいるので、この重量物の遮蔽機能によって、内部にある放射性廃棄物から放出される放射線の線量を低減することができる。
(2)放射性廃棄物が高密度材によって置換されるので、処理後に形成される廃棄物固化体(固化ブロックや人工地盤)の放射能濃度を低減することができる。
(3)放射線の線量を低減し、放射能濃度を低減した結果、運搬、保管にあたる作業員の安全性を確保することができる。
(4)放射性廃棄物を内包したうえで固化することにより、放射性物質の溶出を防ぐことができる。
(5)固化した固化ブロックや人工地盤は、高い透水係数(例えば、10−8cm/sオーダー)を具備しているので、雨水等の浸透を防止し、放射性物質の溶出を防ぐことができる。
(6)放射性物質の溶出を防ぐことができることから、極めて安全に放射性廃棄物を保管することができる。
(7)混練物の配合を調整することで、乾燥収縮やブリージングによるひび割れ、あるいは温度ひび割れを防ぐことが可能で、このようなひび割れからの放射性物質の溶出を防ぐことができる。
(8)固化ブロックにすることで、放射性廃棄物の可搬性や収納性が著しく向上する。また、放射性廃棄物の運搬中の飛散を防止することもできる。
(9)固化ブロックの製造は、容易に自動化することができる。この場合、省力化できるうえに、関与する作業員の被ばく安全性が格段に向上する。
廃棄物が焼却により減容化する様子を示す説明図。 (a)は型枠を振動させる外部振動を示す説明図、(b)は袋体に詰めた状態で振動テーブルを振動させる外部振動を示す説明図、(c)は地盤を型枠代わりとして重機に取り付けた振動板等で上部から高周波振動を加える外部振動を示す説明図。 (a)実験の結果得られた「銅スラグの容積置換率」と「汚染土壌と銅スラグの混合物の放射能濃度」の関係を示すグラフ、(b)は「銅スラグの容積置換率」と「単位重量当たりの汚染土壌の放射能濃度」の関係を示すグラフ、(c)は「銅スラグの容積置換率」と「汚染土壌と銅スラグの混合物の放射線量」の関係を示すグラフ。 固化ブロックを製造する施設を示すモデル図。
本願発明の廃棄物固化体、及び放射性廃棄物処理方法の実施形態の一例を図に基づいて説明する。
(全体概要)
本願発明は、放射性物質に高密度材を混入して保管する、という点を技術的特徴の一つとしている。放射線は、高密度材を透過しにくい、つまり高密度材に遮蔽されやすいという性質に着目したわけである。また、放射性物質を安全に管理するために固化することにも着目している。既述のとおり本願出願人は、対象物を固化する技術に関して、これまで数多くの発明を開示しており(以下、この一連の技術を「超流体工法」と呼ぶこととする。)、この超流体工法を利用した放射性物質の固化も(必須ではないが)本願発明の技術的特徴の一つである。したがって、本願発明の個別要素を具体的に説明する前に、まずは、放射線が高密度材に遮蔽されやすいこと、及び放射性物質を固化させる超流体工法について説明する。
1.高密度材による放射線の遮蔽
放射線は、セシウムなどの放射性物質にある原子核が崩壊して放出されるものである。放射性物質は、その種類によって放出しうる放射線の多寡が異なり、放出しうる放射線の量(以下、単に「線量」という。)の大小を表すのが「放射能」である。なお、放射能の程度を表す指標の一つに「放射能濃度」があり、その物質の単位(体積や重量)当たりの放射能を示す。
放射性物質から放射された放射線は、人体を含む「物体」に衝突するとその物質内にある原子や分子の電子を弾き飛ばして電離(イオン化)させる。このとき、放射線に備わるエネルギーが費やされ、すべてのエネルギーが消費されると放射線は衝突した物体に留まり、エネルギーが残っていればその物体を通過する。つまり、同じエネルギーを持つ放射能であれば、多くの電子を有する物体ほど留まりやすく、逆に電子が少ない物体ほど透過しやすい。ここで、物質の質量は原子中にある陽子と中性子の数に比例し、陽子の数と電子の数が等しいことを考えれば、物質の質量が大きいほど放射線を留めやすい、すなわち遮蔽しやすいこととなる。
同じ体積であれば当然ながら密度の高い物体ほど重く、放射線に対して遮蔽する力が高い。故に、放射性物質に高密度材を混入して保管することとしたわけである。また、放射性物質に高密度材を混入するということは、放射性物質の一部が高密度材に置換されるということであるが、この点も本願発明の効果を考えるうえでは見逃せない。なぜなら、放射性物質と高密度材の混合物は、置換された結果、同量の放射性物質(単体)に比べると放射能濃度が著しく低下しており、運搬や保管に当たる際の安全性が格段に向上するからである。
2.超流体工法
超流体工法は、飛灰をセメントに混ぜて流体化させ、その後固化させる工法であり、大別すると、混練物を得る混練工程と、混練物に外部振動を与える振動工程の2つの工程からなる。混練工程では、飛灰と、セメント、水を混ぜ合わせて突き固める。このとき、水セメント比(W/C)は小さくなるよう配合され、例えば最適含水比程度の水量が配合される。少量の水で突き固められることによって得られるのが混練物で、ただ単に湿り気のあるいわばドライな状態となっている。
振動工程では、混練物に対して外部振動を与え、ドライな状態から流体状(超流体状態)に変える。石炭灰のように球形の粒子を比較的多く含むものは、振動が与えられるとその中に含まれる球形粒子のベアリング効果によって粒子間が分離しやすく、その結果有効応力を失い間隙水圧のみとなって液状化現象を起こす。混練物が液状化したものが超流体であり、プリン状に変化する。この超流体は、液状化により粒子配置が一様かつ密実となっており、これが固化したときにはひび割れが少なく、高強度なものが得られる。
以下、本願発明の廃棄物固化体、放射性廃棄物処理方法の順で、実施形態の例について具体的に説明する。なお、廃棄物固化体に関しては、その具体例として固化ブロックと人工地盤について説明する。さらに、固化ブロック、人工地盤、放射性廃棄物処理方法に共通する内容については、固化ブロックの例で説明することとし、人工地盤、放射性廃棄物処理方法に関しては、それぞれ特有の内容について説明することとする。
(固化ブロック)
本願発明の固化ブロックは、放射性廃棄物と高密度材料を撹拌して混ぜ合わせた後、目的とする形状に応じた型枠(容器や袋体)内に混練物を投入し、締め固め、さらに固化させた後に、型枠を外すことで(あるいは容器を含めた状態で)得られる。このとき、セメントなどの固化材と少量(例えば最適含水比程度)の水を混ぜ合わせることもできる。あるいは超流体工法を利用して、放射性廃棄物、高密度材、固化材、及び少量の水を混練し、外部振動を与えて超流体化させ、その後固化させて固化ブロックを得ることもできる。以下、要素ごとに詳述する。
1.放射性廃棄物
既に説明したとおり、ここでいう放射性廃棄物とは、放射線に汚染された廃棄物全般を指し、排土によって生じた汚染土壌、除去された草本類やがれきなどが例示される。また、図1に示すように、廃棄物の減容化のために焼却されることもあるが、焼却によって生じた焼却灰も放射性廃棄物である。
2.高密度材
高密度材は、固化ブロックに含まれる放射性物質(放射性廃棄物)から放出される放射線を遮蔽するものであり、密度の高い(比重の大きい)物質が選ばれる。社会通念上、密度が高いとされる物質が高密度材であり、特に物質の種類が特定されるものではないが、次に例示する物質が高密度材として好ましく用いられる。
まず、金属スラグが高密度材の例として挙げられる。スラグは、製鉄等の過程で大量に発生するものであるが、その多くは産業廃棄物として処分されるため、スラグの利用は経済的、社会的な課題となっている。鉄鋼スラグ、銅スラグ、ニッケルスラグ、アルミニウムスラグといった金属スラグは、多くの金属酸化物を含むことが知られており、密度の高い物質である。したがって金属スラグは、放射線の遮蔽効果が高い高密度材の好例といえる。
次に、鉄鉱石、あるいは鉄や鉛、銅といった金属そのものが、高密度材の例として挙げられる。鉄鉱石や金属は密度が高いうえに、比較的イオン化しやすく、この点で放射線のエネルギーを奪いやすい、すなわち放射線を遮蔽しやすい物質といえる。したがって鉄鉱石や金属は、放射線の遮蔽効果が高い高密度材の好例である。
また、本願発明に用いる高密度材は、1種類の物質で選択することもできるが、2種類以上の物質を組み合わせたものとすることもできる。例えば、銅スラグのみを用いて高密度材としたり、鉄鋼スラグと鉛を組み合わせて高密度材としたり、その他種々の組み合わせを高密度材として選択することができる。
3.混練物
既述のとおり、放射性廃棄物と高密度材を所定の機械もしくは人力で、混練(撹拌〜混ぜ合わせ)して得られるのが混練物である。あるいは、セメントなどの固化材と少量の水を混ぜ合わせて混練物を形成することもできる。この混練物を締め固めて固化させるが、この場合の締固めの手法としては、高周波振動によって締め固めたり、棒状のものを用いて突き固めたり、上部から打撃振動を加えて締め固めたり、種々の手法を採用することができる。
超流体工法を採用する場合、混練物配合は水セメント比を小さく設定することが望ましい。これは混練物を十分に締め固めるためである。締固めの程度を表すには、乾燥単位体積重量(乾燥密度)が用いられており、この値が大きいほど強度が増大し、透水係数は小さくなり、すなわち締固めの程度が向上する。同じ締固め条件でも、含有する水量によって得られる乾燥単位体積重量は異なり、最も大きな乾燥単位体積重量を与える含水比は最適含水比と呼ばれている。したがって超流体工法を採用する場合、配合する水量は、最適含水比とすることが望ましい。
最適含水比はある一点の値であるが、もちろんその周辺の値であれば本願発明にとって十分な締固めとなる。例えば、最適含水比〜最適含水比+数十%程度であれば適当な締固めが期待でき、さらに最適含水比〜最適含水比+20%程度として締固めを行えば適切な締固めが期待できてより望ましい。とくに最適含水比以上,最適含水比+5%以下とすれば、最適含水比の場合と同程度の締固めが得られることを本願出願人は確認している。そのほか盛土工における土の締固めでは、現場での乾燥密度を最大乾燥密度で除した「締固め度」という概念で品質管理されており、締固め度が85%以上であれば基準を満たすというケースもある。このことから本願発明の場合も、締固め後の乾燥単位体積重量が最大乾燥単位体積重量の85%以上となるように、混練物の配合水量を設定することもできる。いずれにしろ、超流体工法を採用する場合の配合水量は、最適含水比に基づいて定められた量とすることが望ましい。
4.固化材
固化材は、より強固に固化させるために用いられるもので、セメントや、生石灰、石膏などが代表的なものである。固化材で固化させることによって、得られる固化ブロックはより強度が高いものとなり、より透水係数が低いものとなる。ここで用いるセメントは、ポルトランドセメントをはじめ、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、アルミナセメント、他のセメント系固化材など、種々のものを採用することができる。
5.外部振動
超流体工法を利用して固化ブロックを得る場合、混練物に外部振動を与えて超流体化させるのは既述のとおりである。ここで「外部」としたのは、混練物の内部で振動を与えるものではないという意味である。一般にコンクリートの場合、その内部に振動機(いわゆるバイブレータ)を挿入して振動するが、ここでは外側から振動を与える。図2は、外部振動の様々な手法を示す説明図であり、(a)は型枠1を振動させる外部振動を示し、(b)は袋体2に詰めた状態で振動テーブル3を振動させる外部振動を示し、(c)は地盤4を型枠代わり(側枠)として重機5に取り付けた振動板等で上部から高周波振動を加える外部振動を示している。このような外部振動を与えることによって、石炭灰の例で前述したような効果が生じ、混練物が流体化する。
6.放射線の遮蔽効果
本願出願人は、放射性物質に高密度材を混入したものは、放射能濃度を低下させ、放射線を遮蔽させる効果があることを、実験によって確認している。図3は、放射性廃棄物として汚染土壌、高密度材として銅スラグを用いた実験によって得られた結果であり、(a)は「銅スラグの容積置換率」と「混合物(汚染土壌と銅スラグ)の放射能濃度」の関係を示すグラフ、(b)は「銅スラグの容積置換率」と「単位重量当たりの汚染土壌の放射能濃度」の関係を示すグラフ、(c)は「銅スラグの容積置換率」と「混合物の放射線量」の関係を示すグラフである。
図3(a)〜(c)からもわかるように、銅スラグの汚染土壌に対する容積の置換率が増加するに伴い、混合物からの放射能濃度が低下し(図(a))、放射線量が低下している(図(c))。例えば、置換率が23%で放射能濃度はおよそ50%低下し、放射線量は20%程度の低下がみられた。また、混合物内に含まれる汚染土壌に着目すると、単位重量当たりの放射能濃度も、置換率増加に伴い低減することが確認できた(図(b))。このように、高密度材料である銅スラグを放射性廃棄物の周辺に配したことによって、放射能濃度の低下、及び放射線の遮蔽という効果を奏する。
(人工地盤)
つぎに、本願発明の人工地盤について説明する。人工地盤は、放射性廃棄物に高密度材を投入し撹拌して混合した混練物を所定位置に敷き均し、締め固めた後に固化させて得られる。固化ブロックとは異なり、型枠や所定の容器を必要としない。なお、高密度材とともに固化材と少量の水を混ぜ合わせることができることや、超流体工法の利用が可能であって配合水量を最適含水比に基づいて定めることができることは、固化ブロックの場合と同様である。以下、固化ブロックの場合とは異なる点について詳述する。
人工地盤に用いる混練物、及び混練物に使用する放射性廃棄物、高密度材、固化材は、固化ブロックで説明したものと同様である。固化ブロックと異なる点は、外部振動を与える工程において現れる。人工地盤では地山を型枠代わり(側枠)とすることはあるものの、いわゆる製品としての型枠や容器、袋体を使用することがない。これは人工地盤が、地盤改良や構造物のための基礎地盤形成として利用され、あるいは中間貯蔵施設などにおいて敷均されるなど、比較的広い範囲で形成されることに起因している。したがって外部振動を与える際には、図2(c)に示すように、混練物の上部から重機5等によって高周波振動を加える手法が採られる。また、混練物を形成する工程においても、重機等によって撹拌する手法を採用することができる。
(放射性廃棄物処理方法)
本願発明の放射性廃棄物処理方法について説明する。放射性廃棄物処理方法は、本願発明の固化ブロックや人工地盤(廃棄物固化体)を作成する方法であり、混練工程と固化工程を備えている。また、超流体工法を利用する場合、振動工程も備えることとなる。以下、工程ごとに詳述する。
1.混練工程
混練工程は、放射性廃棄物と高密度材を、撹拌して混ぜ合わせることで、混練物を得るものである。撹拌する際は、ミキサー等の攪拌機を使用するか、重機等を利用するかは、廃棄物固化体の規模によって適宜選択することができる。当該工程において、放射性廃棄物と高密度材に加え、固化材と少量の水を混ぜ合わせることができることは、これまでも説明したとおりである。
2.固化工程
混練工程は、混練物を固化させることによって廃棄物固化体を得るものである。なお、超流体工法を利用する場合、この中に振動工程が含まれる。締固めする際は、高周波振動によって締め固めるか、棒状のものを用いて突き固めるか、あるいは重機に取り付けた振動板等で上部から高周波振動を加えるかは、廃棄物固化体の規模によって適宜選択することができる。
3.振動工程
振動工程は、外部振動を与えることによって混練物を流体化させるものである。固化ブロックでも説明したように、混練物の内部からではなく、型枠、容器や袋体、あるいは混練物の上部から外部振動を与える。その手段としては、型枠を振動させるバイブレーター、容器や袋体を載せて振動させる振動テーブル、重機等に取り付ける振動板、など従来からある種々のものを採用することができる。
4.製造施設
図4は、固化ブロックを製造する施設を示すモデル図である。この図に示すような製造施設によって、固化ブロックを略自動製造することもできる。以下、この製造施設での工程を説明する。なおこの製造施設はあくまで一例であり、本願発明の固化ブロックの製造施設が以下の説明に限定されるものではない。
汚染可燃物が焼却プラントで焼却され、主灰は主灰サイロ6、飛灰は飛灰サイロ7にそれぞれ格納される。固化ブロックの製造が始まると、セメントサイロ8、貯水槽9、銅スラグサイロ10から、それぞれ必要な量のセメント、水、銅スラグが取り出される。また、主灰サイロ6からは主灰が、飛灰サイロ7からは飛灰が取り出される。このとき、あらかじめ設定した配合に従って計量装置が計量し、所定量がミキサー11に投入される。
ミキサー11では十分撹拌され、混練物が形成される。ミキサー11を経た混練物は、型枠12にまで運ばれ投入された後、振動テーブル13の上で外部振動が与えられ、超流体となりその後固化する。固化したブロックは、小運搬用の輸送車14によって所定位置まで運ばれ、型枠12を脱型後、そこで安全に管理される。
本願発明の廃棄物固化体、及び放射性廃棄物処理方法は、除染後に排出される放射性廃棄物に利用する場合に限らず、原子力発電所で適切に使用した後に処分される材料や部品に対して利用することもできる。本願発明は、いままさに喫緊の課題となっている放射性廃棄物の処理に対して好適な解決策を提供することを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明である。
1 型枠
2 袋体
3 振動テーブル
4 地盤
5 重機
6 主灰サイロ
7 飛灰サイロ
8 セメントサイロ
9 貯水槽
10 銅スラグサイロ
11 ミキサー
12 型枠
13 (製造施設の)振動テーブル
14 輸送車

Claims (10)

  1. 放射性廃棄物を含有する廃棄物固化体であって、
    前記放射性廃棄物と高密度材を含み、
    前記放射性廃棄物、及び前記高密度材が混練された混練物が、固化することによって得られる、ことを特徴とする廃棄物固化体。
  2. 前記混練物が、さらに固化材と水を含む、ことを特徴とする請求項1記載の廃棄物固化体。
  3. 前記混練物のうち前記水の占める重量が、前記放射性廃棄物における最適含水比に基づいて定められた重量である、ことを特徴とする請求項2記載の廃棄物固化体。
  4. 前記混練物に外部振動を加えることによって該混練物を流体化し、該流体化した混練物が固化することによって得られる、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の廃棄物固化体。
  5. 前記高密度材が、金属スラグ、鉄鉱石、鉄、鉛、及びこれらを組み合わせた混合物からなる群より選択されるものである、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の廃棄物固化体。
  6. 放射性廃棄物の放射能濃度又は放射線量を低減する放射性廃棄物処理方法において、
    前記放射性廃棄物と高密度材を混練して混練物を得る混練工程と、
    前記混練物を固化させることで廃棄物固化体を得る固化工程と、を備えたことを特徴とする放射性廃棄物処理方法。
  7. 前記混練工程では、前記放射性廃棄物と、前記高密度材と、固化材と、水と、を混練して前記混練物を得る、ことを特徴とする請求項6記載の放射性廃棄物処理方法。
  8. 前記混練物のうち前記水の占める重量を、前記放射性廃棄物における最適含水比に基づいて定められた重量とする、ことを特徴とする請求項7記載の放射性廃棄物処理方法。
  9. 前記混練物に外部振動を加えることによって該混練物を流体化させる振動工程を備え、
    前記固化工程では、前記流体化した混練物を固化させることで前記廃棄物固化体を得る、ことを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の放射性廃棄物処理方法。
  10. 前記高密度材を、金属スラグ、鉄鉱石、鉄、鉛、及びこれらを組み合わせた混合物からなる群より選択されるものとする、ことを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の放射性廃棄物処理方法。
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