JP2013210221A - 廃棄物固化体、及び放射性廃棄物処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本願発明は、重量物によって放射線を遮蔽するという点に着目してなされたものであって、高密度材を含有したうえで固化させるというこれまでにない発想に基づいて行われたものであり、本願発明の固化ブロックは、放射性廃棄物と高密度材を混練して混練物を作り、この混練物を固化することによって得られるものである。
【選択図】図3
Description
(1)高密度材を含んでいるので、この重量物の遮蔽機能によって、内部にある放射性廃棄物から放出される放射線の線量を低減することができる。
(2)放射性廃棄物が高密度材によって置換されるので、処理後に形成される廃棄物固化体(固化ブロックや人工地盤)の放射能濃度を低減することができる。
(3)放射線の線量を低減し、放射能濃度を低減した結果、運搬、保管にあたる作業員の安全性を確保することができる。
(4)放射性廃棄物を内包したうえで固化することにより、放射性物質の溶出を防ぐことができる。
(5)固化した固化ブロックや人工地盤は、高い透水係数(例えば、10−8cm/sオーダー)を具備しているので、雨水等の浸透を防止し、放射性物質の溶出を防ぐことができる。
(6)放射性物質の溶出を防ぐことができることから、極めて安全に放射性廃棄物を保管することができる。
(7)混練物の配合を調整することで、乾燥収縮やブリージングによるひび割れ、あるいは温度ひび割れを防ぐことが可能で、このようなひび割れからの放射性物質の溶出を防ぐことができる。
(8)固化ブロックにすることで、放射性廃棄物の可搬性や収納性が著しく向上する。また、放射性廃棄物の運搬中の飛散を防止することもできる。
(9)固化ブロックの製造は、容易に自動化することができる。この場合、省力化できるうえに、関与する作業員の被ばく安全性が格段に向上する。
本願発明は、放射性物質に高密度材を混入して保管する、という点を技術的特徴の一つとしている。放射線は、高密度材を透過しにくい、つまり高密度材に遮蔽されやすいという性質に着目したわけである。また、放射性物質を安全に管理するために固化することにも着目している。既述のとおり本願出願人は、対象物を固化する技術に関して、これまで数多くの発明を開示しており(以下、この一連の技術を「超流体工法」と呼ぶこととする。)、この超流体工法を利用した放射性物質の固化も(必須ではないが)本願発明の技術的特徴の一つである。したがって、本願発明の個別要素を具体的に説明する前に、まずは、放射線が高密度材に遮蔽されやすいこと、及び放射性物質を固化させる超流体工法について説明する。
放射線は、セシウムなどの放射性物質にある原子核が崩壊して放出されるものである。放射性物質は、その種類によって放出しうる放射線の多寡が異なり、放出しうる放射線の量(以下、単に「線量」という。)の大小を表すのが「放射能」である。なお、放射能の程度を表す指標の一つに「放射能濃度」があり、その物質の単位(体積や重量)当たりの放射能を示す。
超流体工法は、飛灰をセメントに混ぜて流体化させ、その後固化させる工法であり、大別すると、混練物を得る混練工程と、混練物に外部振動を与える振動工程の2つの工程からなる。混練工程では、飛灰と、セメント、水を混ぜ合わせて突き固める。このとき、水セメント比(W/C)は小さくなるよう配合され、例えば最適含水比程度の水量が配合される。少量の水で突き固められることによって得られるのが混練物で、ただ単に湿り気のあるいわばドライな状態となっている。
本願発明の固化ブロックは、放射性廃棄物と高密度材料を撹拌して混ぜ合わせた後、目的とする形状に応じた型枠(容器や袋体)内に混練物を投入し、締め固め、さらに固化させた後に、型枠を外すことで(あるいは容器を含めた状態で)得られる。このとき、セメントなどの固化材と少量(例えば最適含水比程度)の水を混ぜ合わせることもできる。あるいは超流体工法を利用して、放射性廃棄物、高密度材、固化材、及び少量の水を混練し、外部振動を与えて超流体化させ、その後固化させて固化ブロックを得ることもできる。以下、要素ごとに詳述する。
既に説明したとおり、ここでいう放射性廃棄物とは、放射線に汚染された廃棄物全般を指し、排土によって生じた汚染土壌、除去された草本類やがれきなどが例示される。また、図1に示すように、廃棄物の減容化のために焼却されることもあるが、焼却によって生じた焼却灰も放射性廃棄物である。
高密度材は、固化ブロックに含まれる放射性物質(放射性廃棄物)から放出される放射線を遮蔽するものであり、密度の高い(比重の大きい)物質が選ばれる。社会通念上、密度が高いとされる物質が高密度材であり、特に物質の種類が特定されるものではないが、次に例示する物質が高密度材として好ましく用いられる。
既述のとおり、放射性廃棄物と高密度材を所定の機械もしくは人力で、混練(撹拌〜混ぜ合わせ)して得られるのが混練物である。あるいは、セメントなどの固化材と少量の水を混ぜ合わせて混練物を形成することもできる。この混練物を締め固めて固化させるが、この場合の締固めの手法としては、高周波振動によって締め固めたり、棒状のものを用いて突き固めたり、上部から打撃振動を加えて締め固めたり、種々の手法を採用することができる。
固化材は、より強固に固化させるために用いられるもので、セメントや、生石灰、石膏などが代表的なものである。固化材で固化させることによって、得られる固化ブロックはより強度が高いものとなり、より透水係数が低いものとなる。ここで用いるセメントは、ポルトランドセメントをはじめ、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、アルミナセメント、他のセメント系固化材など、種々のものを採用することができる。
超流体工法を利用して固化ブロックを得る場合、混練物に外部振動を与えて超流体化させるのは既述のとおりである。ここで「外部」としたのは、混練物の内部で振動を与えるものではないという意味である。一般にコンクリートの場合、その内部に振動機(いわゆるバイブレータ)を挿入して振動するが、ここでは外側から振動を与える。図2は、外部振動の様々な手法を示す説明図であり、(a)は型枠1を振動させる外部振動を示し、(b)は袋体2に詰めた状態で振動テーブル3を振動させる外部振動を示し、(c)は地盤4を型枠代わり(側枠)として重機5に取り付けた振動板等で上部から高周波振動を加える外部振動を示している。このような外部振動を与えることによって、石炭灰の例で前述したような効果が生じ、混練物が流体化する。
本願出願人は、放射性物質に高密度材を混入したものは、放射能濃度を低下させ、放射線を遮蔽させる効果があることを、実験によって確認している。図3は、放射性廃棄物として汚染土壌、高密度材として銅スラグを用いた実験によって得られた結果であり、(a)は「銅スラグの容積置換率」と「混合物(汚染土壌と銅スラグ)の放射能濃度」の関係を示すグラフ、(b)は「銅スラグの容積置換率」と「単位重量当たりの汚染土壌の放射能濃度」の関係を示すグラフ、(c)は「銅スラグの容積置換率」と「混合物の放射線量」の関係を示すグラフである。
つぎに、本願発明の人工地盤について説明する。人工地盤は、放射性廃棄物に高密度材を投入し撹拌して混合した混練物を所定位置に敷き均し、締め固めた後に固化させて得られる。固化ブロックとは異なり、型枠や所定の容器を必要としない。なお、高密度材とともに固化材と少量の水を混ぜ合わせることができることや、超流体工法の利用が可能であって配合水量を最適含水比に基づいて定めることができることは、固化ブロックの場合と同様である。以下、固化ブロックの場合とは異なる点について詳述する。
本願発明の放射性廃棄物処理方法について説明する。放射性廃棄物処理方法は、本願発明の固化ブロックや人工地盤(廃棄物固化体)を作成する方法であり、混練工程と固化工程を備えている。また、超流体工法を利用する場合、振動工程も備えることとなる。以下、工程ごとに詳述する。
混練工程は、放射性廃棄物と高密度材を、撹拌して混ぜ合わせることで、混練物を得るものである。撹拌する際は、ミキサー等の攪拌機を使用するか、重機等を利用するかは、廃棄物固化体の規模によって適宜選択することができる。当該工程において、放射性廃棄物と高密度材に加え、固化材と少量の水を混ぜ合わせることができることは、これまでも説明したとおりである。
混練工程は、混練物を固化させることによって廃棄物固化体を得るものである。なお、超流体工法を利用する場合、この中に振動工程が含まれる。締固めする際は、高周波振動によって締め固めるか、棒状のものを用いて突き固めるか、あるいは重機に取り付けた振動板等で上部から高周波振動を加えるかは、廃棄物固化体の規模によって適宜選択することができる。
振動工程は、外部振動を与えることによって混練物を流体化させるものである。固化ブロックでも説明したように、混練物の内部からではなく、型枠、容器や袋体、あるいは混練物の上部から外部振動を与える。その手段としては、型枠を振動させるバイブレーター、容器や袋体を載せて振動させる振動テーブル、重機等に取り付ける振動板、など従来からある種々のものを採用することができる。
図4は、固化ブロックを製造する施設を示すモデル図である。この図に示すような製造施設によって、固化ブロックを略自動製造することもできる。以下、この製造施設での工程を説明する。なおこの製造施設はあくまで一例であり、本願発明の固化ブロックの製造施設が以下の説明に限定されるものではない。
2 袋体
3 振動テーブル
4 地盤
5 重機
6 主灰サイロ
7 飛灰サイロ
8 セメントサイロ
9 貯水槽
10 銅スラグサイロ
11 ミキサー
12 型枠
13 (製造施設の)振動テーブル
14 輸送車
Claims (10)
- 放射性廃棄物を含有する廃棄物固化体であって、
前記放射性廃棄物と高密度材を含み、
前記放射性廃棄物、及び前記高密度材が混練された混練物が、固化することによって得られる、ことを特徴とする廃棄物固化体。 - 前記混練物が、さらに固化材と水を含む、ことを特徴とする請求項1記載の廃棄物固化体。
- 前記混練物のうち前記水の占める重量が、前記放射性廃棄物における最適含水比に基づいて定められた重量である、ことを特徴とする請求項2記載の廃棄物固化体。
- 前記混練物に外部振動を加えることによって該混練物を流体化し、該流体化した混練物が固化することによって得られる、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の廃棄物固化体。
- 前記高密度材が、金属スラグ、鉄鉱石、鉄、鉛、及びこれらを組み合わせた混合物からなる群より選択されるものである、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の廃棄物固化体。
- 放射性廃棄物の放射能濃度又は放射線量を低減する放射性廃棄物処理方法において、
前記放射性廃棄物と高密度材を混練して混練物を得る混練工程と、
前記混練物を固化させることで廃棄物固化体を得る固化工程と、を備えたことを特徴とする放射性廃棄物処理方法。 - 前記混練工程では、前記放射性廃棄物と、前記高密度材と、固化材と、水と、を混練して前記混練物を得る、ことを特徴とする請求項6記載の放射性廃棄物処理方法。
- 前記混練物のうち前記水の占める重量を、前記放射性廃棄物における最適含水比に基づいて定められた重量とする、ことを特徴とする請求項7記載の放射性廃棄物処理方法。
- 前記混練物に外部振動を加えることによって該混練物を流体化させる振動工程を備え、
前記固化工程では、前記流体化した混練物を固化させることで前記廃棄物固化体を得る、ことを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の放射性廃棄物処理方法。 - 前記高密度材を、金属スラグ、鉄鉱石、鉄、鉛、及びこれらを組み合わせた混合物からなる群より選択されるものとする、ことを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の放射性廃棄物処理方法。
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