JP2013208166A - 医療用チューブ - Google Patents

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Abstract

【課題】高い柔軟性と耐熱性を有し、かつキンク性に優れたプロピレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる医療用チューブを提供する。
【解決手段】(A)(B)の合計100重量部基準で、下記を満たすプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)10〜85重量部と、熱可塑性エラストマー(B)15〜90重量部を含有し、
熱可塑性エラストマー(B)は、(B1)(B2)の合計100重量部基準で、スチレン−ブタジエン系重合体(B1)15〜100重量部とエチレン/α−オレフィン共重合体(B2)0〜85重量部を含有するプロピレン系熱可塑性エラストマー組成物からなることを特徴とする医療用チューブ。
・メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独又はエチレン含量が7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を30〜95重量%、第2工程で成分(A)よりも3〜20重量%多いエチレン含量のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を70〜5重量%逐次重合する
・MFRが0.5〜100g/10分
・融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃
・Mw/Mnが1.5〜4
・tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する
【選択図】なし

Description

本発明は、プロピレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる医療用チューブに関し、高い柔軟性、透明性と耐熱性を兼ね備え、かつ耐キンク性のある医療用チューブに関する。
輸液セットのチューブや各種のカテーテル等に適用される医療用チューブには、柔軟性、透明性、耐キンク性、耐熱性等が要求される。又、医療現場では医療用チューブを種々のパーツに挿入、装着して用いられことが多いことから、容易にパーツに挿入、装着出来ることも要求される。
従来、医療用軟質チューブには、特許文献1に示されているような塩化ビニル樹脂からなるチューブが用いられてきた。塩化ビニル樹脂には、優れた耐薬品性、柔軟性、透明性等を有することに加え、安価で成形加工性にも優れる。しかしながら、塩化ビニル樹脂には、ジオクチルフタレート等の可塑剤が多量に添加されており、内容液への可塑剤の溶出という問題が安全性の面から指摘されている。また、焼却の際、充分な酸素を供給し、かつ850〜900℃程度の高温で燃やすと、ダイオキシン等の有毒物質を発生しなくなるとされているが、現実には、高温に耐え得る焼却炉の不足、焼却能力不足等の理由から、ダイオキシンや他の有毒塩素系物質による環境汚染の問題がしばしば生じている。
そこで、近年、医療用チューブの材料として塩化ビニル樹脂以外の樹脂が開発され、このような非塩化ビニル樹脂を用いた医療用チューブが、例えば、特許文献2〜5が提案されている。
しかしながら、汎用の非塩化ビニル系樹脂は、単独では医療用チューブに必要とされる全ての特性、即ち柔軟性、透明性、耐キンク性、耐熱性、挿入性等の特性を得ることが困難である。例えば、ホモ、ランダムあるいはブロックタイプの汎用のプロピレン系樹脂は耐熱性に優れるが、耐キンク性や柔軟性に劣る。
さらに特許文献3のような特定のスチレン系エラストマーとポリエチレンとのブレンド樹脂からなる医療用チューブは、スチレン系エラストマーの比率が低いと柔軟性が低く、耐キンク性に劣り、逆にスチレン系エラストマーの比率が高いと、べたつきがひどく、チューブの内面同士が密着して閉塞し易くなるため、医療用チューブとしての使用には適していない。また特許文献2のような特定のスチレン系エラストマーとポリプロピレンとのブレンド樹脂からなる医療用チューブは、スチレン系エラストマーの比率が低いと、耐熱性は向上するが、柔軟性が低く、耐キンク性に劣り、逆にスチレン系エラストマーの比率が高いと、耐熱性が低く、成形加工性あるいは経済性の点で問題がある。
さらに、塩化ビニル製医療用チューブでは、エチレンオキサイドガス(EOG)による滅菌が行われてきているが、EOG残留の問題があり、最近ではオートクレーブ滅菌に耐えうる高度な耐熱性が要求されている。
特開2003−70902号公報 特開2001−1432号公報 特開2002−143293号公報 特公平2−31990号公報 特開平8−131537号公報
本発明の目的は、上記課題を解決し、高い柔軟性、透明性、耐キンク性を兼ね備え、さらに121℃のオートクレーブ滅菌処理に対する耐熱性にも優れた医療用チューブを提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のプロピレン−エチレンブロック共重合体を用いることにより、スチレン−ブタジエン系重合体を併用した場合、柔軟性、透明性と耐キンク性、さらには耐熱性に優れた医療用チューブを得られることを見出した。
本発明は以下の医療用チューブを提供する。
[1](A)(B)の合計100重量部基準で、下記(i)〜(v)を満たすプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)10〜85重量部と、熱可塑性エラストマー(B)15〜90重量部を含有し、
熱可塑性エラストマー(B)は、(B1)(B2)の合計100重量部基準で、スチレン−ブタジエン系重合体(B1)10〜100重量部とエチレン/α−オレフィン共重合体(B2)0〜90重量部を含有するプロピレン系熱可塑性エラストマー組成物からなることを特徴とする医療用チューブ。
(i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独又はエチレン含量が7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(a)を30〜95重量%、第2工程で成分(a)よりも3〜20重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(b)を70〜5重量%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
(ii)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が、0.5〜100g/10分の範囲にある。
(iii)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が、110〜150℃の範囲にある。
(iv)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が、1.5〜4の範囲にある。
(v)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
[2]エチレン/α−オレフィン共重合体(B2)の密度が0.860〜0.910g/cmの範囲にある上記[1]に記載の医療用チューブ。
[3]プロピレン系熱可塑性エラストマー組成物は、さらに、融解ピーク温度が140〜170℃の、プロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体を、前記(A)(B)の合計100重量部に対して、5〜20重量部を含有する請求項1または2に記載の医療用チューブ。
本発明のプロピレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる医療用チューブは、高い柔軟性と透明性を有し、かつ高い耐熱性を有するものであり、熱滅菌が必要な医療用途に極めて好適である。
TREFによる成分(a)および(b)の溶出量及び溶出量積算を示す図である。 実施例の製造例1で使用した重合装置のフローシート図である。
本発明の医療用チューブは、上記(i)〜(v)を満たすプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)を含有するプロピレン系熱可塑性エラストマー組成物からなり、(A)(B)の合計100重量部基準で、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)10〜85重量部と、熱可塑性エラストマー(B)15〜90重量部を含有し、熱可塑性エラストマー(B)は、(B1)(B2)の合計100重量部基準で、スチレン−ブタジエン系重合体(B1)10〜100重量部とエチレン/α−オレフィン共重合体(B2)0〜90重量部を含有することを特徴とし、また、好ましくは、プロピレン系熱可塑性エラストマー組成物は、さらに、融解ピーク温度が140〜170℃の、プロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体を、前記(A)(B)の合計100重量部に対して、5〜20重量部を含有することを特徴とする。
以下、医療用チューブに用いるプロピレン系熱可塑性エラストマー組成物を構成する成分、樹脂組成物の製造方法、医療用チューブについて詳細に説明する。
1.プロピレン−エチレンブロック共重合体
本発明で用いるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は下記の(i)〜(v)の特性を有する。
(i)メタロセン系触媒を用いて、第1重合工程でプロピレン単独又はエチレン含量7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(a)を30〜95重量%、第2重合工程で成分(a)よりも3〜20重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(b)を70〜5重量%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
(ii)メルトフローレート(MFR:230℃ 2.16kg荷重)が0.5〜100g/10分の範囲にある。
(iii)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃の範囲にある。
(iv)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.0の範囲にある。
(v)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
前記(i)〜(v)の特性を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、第1重合工程で、プロピレン単独又はエチレン含量7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(a)を30〜95重量%重合した後、第2重合工程で、第1重合工程よりも3〜20重量%多いエチレン量を含むプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(b)を70〜5重量%逐次重合することで得られる。
なお、ここでいうプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)とは、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(a)(以下、成分(a)ともいう。)と、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(b)(以下、成分(b)ともいう。)を逐次重合することより得られる、通称でのブロック共重合体であり、必ずしも成分(a)と成分(b)とが完全にブロック状に結合されたものでなくてもよい。
(1−1)成分(a)中のエチレン含量:[E]
第1重合工程で製造される成分(a)は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)のべたつきを抑制し、耐熱性を発現するために、融点が比較的高く、結晶性を有する、プロピレン単独重合体、もしくはエチレン含量が7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体であり、本明細書においては「プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(a)」にはプロピレン単独重合体も含む表現として用いることとする。エチレン含量が7重量%を超えると融点が低くなりすぎ、製品の耐熱性を悪化させる恐れがある。エチレン含量は5重量%以下が好ましく、3重量%以下が更に好ましい。なお、ペレットがべたつくと、ペレットを袋に入れて保管する際に、ペレット同士がくっついてしまうことがある。成分(a)はプロピレンの単独重合体であってもよいので、エチレン含量[E]の下限値は0である。
(1−2)成分(b)中のエチレン含量:[E]
第2重合工程で製造される成分(b)は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)中でゴム弾性成分の役割を有し、耐衝撃性を付与するために重要な成分である。
成分(b)のエチレン含量の範囲は、成分(a)のエチレン含量との差[E]−[E]、(以下、[E]gapともいう。)によって定義される。ゴム成分として耐衝撃性を付与する効果を十分に発揮するために、[E]−[E]は3〜20重量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは6〜18重量%、特に好ましくは8〜16重量%である。
[E]gapを、3重量%以上とすることで、耐衝撃性の効果を十分に付与することができる。また、20重量%以下であることにより、第1重合工程で製造される成分(a)との相溶性が得られ、プロピレン系樹脂組成物(A)の透明性の観点で好ましい。
(1−3)成分(a)の割合:W(a)および成分(b)の割合:W(b)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を構成する成分(a)の割合であるW(a)および成分(b)の割合であるW(b)の含有量比は、W(a)が30〜95重量%でありW(b)が70〜5重量%の範囲にある必要がある。
W(a)の割合が30重量%未満であると、製品のべたつき発生、かつ耐熱性が低下する。他方、W(a)の割合が95重量%を越えるとエチレンープロピレンブロック共重合体のゴム弾性が不十分となり耐衝撃性が不十分となる。好ましくは、W(a)の割合が40〜90重量%、更に好ましくは50〜80重量%の範囲であると良い。即ち、W(b)の割合は好ましくは60〜10重量%、更に好ましくは50〜20重量%である。
(1−4)[E]と[E]及び各成分量W(a)とW(b)の特定
成分(a)、(b)の各エチレン含量及び量は、製造時の物質収支(マテリアルバランス)によって特定することも可能であるが、例えば、以下の分析を用いることによって、より正確にこれらを特定することができる。
(1−4−1)温度昇温溶離分別(TREF)による各成分量W(a)とW(b)の特定
プロピレン−エチレンランダム共重合体の結晶性分布をTREFにより評価する手法は、当該業者によく知られるものであり、例えば、次の文献などで詳細な測定法が示されている。
Appl.Polym.Symp.;45,1−24(1990)
Polym.Sci.;98,1−47(1990)
Polymer;36,8,1639−1654(1995)
本発明におけるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、成分(a)と成分(b)との各々の結晶性には大きな違いがあり、また、メタロセン触媒を用いて製造されることで各々の分子量分布が狭くなっていることから双方の中間的な成分は極めて少なく、双方をTREFにより精度良く判別することが可能である。
具体的な方法を図1のTREFによる溶出量及び溶出量積算を示す図を用いて説明する。TREF溶出曲線(温度に対する溶出量のプロット)において、成分(a)と成分(b)とはこれらの結晶性の違いにより、成分(a)と成分(b)の各々のTREF溶出温度T(a)とT(b)にその溶出温度のピークを示し、その差は十分大きいため、中間の温度T(c)(={T(a)+T(b)}/2)においてほぼ分離が可能である。
また、TREF測定温度の下限は、本明細書の実施例における測定に用いた装置では−15℃であるが、成分(b)の結晶性が非常に低いあるいは非晶性成分の場合には本測定方法において、測定温度範囲内にピークを示さない場合がある。(この場合には、測定温度下限(すなわち−15℃)において溶媒に溶解した成分(b)の濃度は検出される。)
このとき、T(b)は測定温度下限以下に存在するものと考えられるが、その値を測定することが出来ないため、このような場合にはT(b)を測定温度下限である−15℃と定義する。
ここで、T(c)までに溶出する成分の積算量をW(b)重量%、T(c)以上で溶出する部分の積算量をW(a)重量%と定義すると、W(b)は結晶性が低いあるいは非晶性の成分(b)の量とほとんど対応しており、T(c)以上で溶出する成分の積算量W(a)は結晶性が比較的高い成分(a)の量とほぼ対応している。TREFによって得られる溶出量曲線と、そこから求められる上記の各種の温度や量の算出の方法は図1に例示するように行う。
(1−4−2)TREF測定方法
本願発明においては、TREFの測定は具体的には以下のように測定を行う。
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
(1−4−3)各成分中のエチレン含量[E]と[E]の特定
(イ)成分(a)と成分(b)の分離
先のTREF測定により求めたT(c)を基に、分取型分別装置を用い昇温カラム分別法により、T(c)にける可溶成分(b)とT(c)における不溶成分(a)とに分別し、NMRにより各成分のエチレン含量を求める。
昇温カラム分別法とは、例えば、Macromolecules、21 314〜319(1988)に開示されたような測定方法をいう。具体的には、本明細書の実施例においては以下の方法を用いた。
(ロ)分別条件
直径4.3mm、高さ150mmの円筒状カラムにガラスビーズ担体(80〜100メッシュ)を充填し、140℃に保持する。次に、140℃で溶解したサンプルのo−ジクロロベンゼン溶液(5mg/mL)200mLを前記カラムに導入する。その後、該カラムの温度を0℃まで10℃/時間の降温速度で冷却する。0℃で1時間保持後、10℃/時間の昇温速度でカラム温度をT(c)まで加熱し、1時間保持する。なお、一連の操作を通じてのカラムの温度制御精度は±1℃とする。
次いで、カラム温度をT(c)に保持したまま、T(c)のo−ジクロロベンゼンを20mL/分の流速で800mL流すことにより、カラム内に存在するT(c)で可溶な成分を溶出させ回収する。
次いで10℃/分の昇温速度で当該カラム温度を140℃まで上げ、140℃で1時間保持後、140℃の溶媒(o−ジクロロベンゼン)を1mL/分の溶媒流速で800mL流すことにより、T(c)で不溶な成分を溶出させ回収する。
分別によって得られたポリマーを含む溶液は、エバポレーターを用いて20mLまで濃縮された後、5倍量のメタノール中に析出される。析出ポリマーをろ過して回収後、真空乾燥器により一晩乾燥する。
(ハ)13C−NMRによるエチレン含量の測定
上記分別により得られた成分(a)と(b)それぞれについてのエチレン含有量はプロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。なお、実施例で使用した機器は炭素核共鳴周波数100MHz以上の機器であり、以下に記載の機器と同等のものを用いてもよい。
機種:日本電子(株)製 GSX−400
溶媒:o−ジクロロベンゼン/重ベンゼン=4/1(体積比)
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えばMacromolecules,17 1950 (1984)等を参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は下記表1の通りである。表−1中Sαα等の記号はCarmanら(Macromolecules,10 536(1977))の記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
Figure 2013208166
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、およびEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules,15 1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の[1]〜[6]の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) [1]
[PPE]=k×I(Tβδ) [2]
[EPE]=k×I(Tδδ) [3]
[PEP]=k×I(Sββ) [4]
[PEE]=k×I(Sβδ) [5]
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} [6]
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。従って、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1[7]である。
また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えばI(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
上記[1]〜[7]の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、本発明に使用することのできるプロピレンランダム共重合体には少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/または1,3−結合)が含まれ、それにより、以下の微小なピークを生じる。
Figure 2013208166
正確なエチレン含有量を求めるにはこれら異種結合に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離・同定が困難であり、また異種結合量が少量であることから、本願発明のエチレン含有量は実質的に異種結合を含まないチーグラー触媒で製造された共重合体の解析と同じく[1]〜[7]の関係式を用いて求めることとする。
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行うことができる。
エチレン含有量(重量%)=
(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここでXはモル%表示でのエチレン含有量である。
また、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)全体のエチレン含量[E]は、上記より測定された成分(a)と(b)それぞれのエチレン含量[E]と[E]及びTREFより算出される各成分の重量比率W(a)とW(b)重量%から以下の式により算出される。
[E]={[E]×W(a)+[E]×W(b)/100 (重量%)
(1−5)メルトフローレート(MFR)
本発明で使用するプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は、0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、より好ましくは2〜35g/10分である。MFRが0.5g/10分未満では成形が困難となり、100g/10分を超えると耐衝撃性が期待できなくなる。
メルトフローレート(MFR)は、プロピレン−エチレンブロック共重合の重合条件である温度や圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する水素添加量の制御により、容易に調整を行なうことができる。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠し、温度230℃、2.16kg荷重で測定する値である。
(1−6)融解ピーク温度(Tm)
本発明で使用されるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の示差走査熱量計(DSC)により測定された融解ピーク温度(Tm)は、110〜150℃の範囲であり、120〜140℃であるのが好ましい。Tmが110℃未満のものは溶融されたプロピレン系樹脂組成物(A)の冷却固化速度が遅く、成形性を悪化させる恐れがあり、150℃を超えると耐衝撃性が悪くなる恐れがある。Tmを調整するには重合反応系へ供給するα−オレフィンの量を制御することにより容易に調整することができる。
ここで、Tmの具体的測定は、示差走査熱量計(DSC)を用い、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、更に10℃/分の昇温速度で融解させたときに描かれる曲線のピーク位置を、融解ピーク温度Tm(℃)とする。
(1−7)分子量分布(Mw/Mn)
本発明で使用されるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)のゲルパーミエーション(GPC)法により測定された分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜4.0の範囲であり、1.8以上3.0未満であるのが好ましい。Mw/Mnが1.5未満のものは現在の重合技術では工業的規模で製造することが難しいため、実用的ではなく、4.0を超えると製品(ペレット)がべたつく恐れがある。
プロピレン−エチレンブロック共重合の分子量分布を調整する方法は、狭くする場合は、後述のメタロセン系触媒を用いたり、プロピレン−エチレンブロック共重合を重合後、有機過酸化物を使用し溶融混練することにより調整することができる。広くする場合は、2種以上のメタロセン触媒成分を併用させた触媒系や2種以上のメタロセン錯体を併用した触媒系を用いて重合することにより調整することができる。
ここで、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)で求められ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定して得られるものとする。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380,F288,F128,F80,F40,F20,F10,F4,F1,A5000,A2500,A1000
各々が0.5mg/mlとなるようにo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2ml注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する、粘度式の[η]=K×Mα は以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4 α=0.7
PP:K=1.03×10−4 α=0.78
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:WATERS社製 GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製 MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料はo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)を用いて1mg/mlの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
(1−8)tanδ曲線のピークによる規定
本発明においては、相溶性を良好に保ち、透明性に維持するために、使用するプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を構成する成分(a)と成分(b)とが相分離していないことが必要である。相分離の条件は、エチレン含量のみならず、分子量や組成によっても影響を受けるため、上記のエチレン含量の条件に加えて、以下に詳述するように固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することが好ましい。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)が相分離構造を取る場合には、成分(a)に含まれる非晶部のガラス転移温度と成分(b)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは複数となる。逆に相溶性である場合には、両成分は分子のオーダーで混合しており、両成分のガラス転移温度の中間的な温度に単一のピークを有する。すなわち、相分離構造を取っているかどうかは、固体粘弾性測定における温度−tanδ曲線において判別可能であり、プロピレンーエチレンブロック共重合体(A)の透明性を維持するためには、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することが必要である。
固体粘弾性測定は、具体的には、短冊状の試料片に特定周波数の正弦歪みを与え、発生する応力を検知することで行う。ここでは、周波数は1Hzを用い測定温度は−60℃から段階状に昇温し、サンプルが融解して測定不能になるまで行う。また、歪みの大きさは0.1〜0.5%程度が推奨される。得られた応力から、公知の方法によって貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”を求め、これの比で定義される損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)を温度に対してプロットすると0℃以下の温度領域で鋭い単一のピークを示す。一般に0℃以下でのtanδ曲線のピークは非晶部のガラス転移を観測するものであり、ここでは本ピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)として定義する。
(2)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の製造方法
(2−1)メタロセン系触媒
本発明に用いるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を製造する方法は、メタロセン系触媒の使用を必須とするものである。
プロピレン−エチレンランダム共重合体において分子量及び結晶性分布が広いとベタツキやブリードアウトが悪化することは当該業者に広く知られるところであるが、本願発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)においても、ベタツキ及びブリードアウトを抑制するために、分子量及び結晶性分布が狭くなるメタロセン系触媒を用いて重合されることが必要である。
メタロセン系触媒の種類は、本願発明の性能を有する共重合体を生成できる限りは、特に限定はされるものではないが、本願発明の要件を満たすために、例えば、下記に示すような成分(ア)、(イ)、及び必要に応じて使用する成分(ウ)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
成分(ア):下記の式で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
成分(イ):下記(イ−1)〜(イ−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(イ−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体、
(イ−2)成分(ア)と反応して成分(ア)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体
(イ−3)固体酸微粒子
(イ−4)イオン交換性層状珪酸塩、
成分(ウ):有機アルミニウム化合物。
(2−2)成分(ア)
成分(ア)としては、下記式で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Q(C4−a )(C4−b )MeXY
[ここで、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を示し、Meはチタン、ジルコニウム、ハフニウムから選ばれる金属原子を示し、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示し、XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。R、Rは水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基を示す。a及びbは置換基の数である。]
詳しくは、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を表し、例えば、2価の炭化水素基、シリレン基ないしオリゴシリレン基、炭化水素基を置換基として有するシリレン基あるいはオリゴシリレン基、又は炭化水素基を置換基として有するゲルミレン基などが例示される。この中でも好ましいものは2価の炭化水素基と炭化水素基を置換基として有するシリレン基である。
X及びYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示し、このうちで好ましいものとしては、水素、塩素、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基などを例示することができる。X及びYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。
とRは、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基を表す。炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基などが例示される。また、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基などを典型的な例として例示できる。これらの中で、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。ところで、隣接したRとRは、結合して環を形成してもよく、この環上に炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。
Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれる金属原子であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムである。
以上において記載した成分(ア)の中で、本願発明に用いられるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の製造に好ましいものは、炭化水素置換基を有するシリレン基、ゲルミレン基あるいはアルキレン基で架橋された置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換フルオレニル基、置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物であり、特に好ましくは、炭化水素置換基を有するシリレン基、あるいはゲルミレン基で架橋された2,4−位置換インデニル基、2,4−位置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物である。
非限定的な具体例としては、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−イソプロピル−4−(3,5−ジイソプロピルフェニル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−プロピル−4−フェナントリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−イソプロピル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロビフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−t−ブチル−3−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリドなどがあげられる。これらの具体例の化合物のシリレン基をゲルミレン基に、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も好適な化合物として例示される。なお、触媒成分は本願発明の重要要素ではないので、煩雑な列記を避け、代表的な例示に限定しているが、これにより本願発明の有効範囲が制限されることが無いのは自明のことである。
(2−3)成分(イ)
成分(イ)としては、上述した成分(イ−1)〜成分(イ−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報、特開2003−105015号公報などに詳細な例示がある。
ここで、成分(イ−1)、成分(イ−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、さらには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
また、成分(イ)の非限定的な具体例としては、成分(イ−1)として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルなどが担持された微粒子状担体を、成分(イ−2)として、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが担持された微粒子状担体を、成分(イ−3)として、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウムなどを、成分(イ−4)として、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などが挙げられる。これらは、混合層を形成しているものでもよい。
上記成分(イ)の中で特に好ましいものは、成分(イ−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
(2−4)成分(ウ)
必要に応じて成分(ウ)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、
式 AlRaP3−a
(式中、Rは、炭素数1から20の炭化水素基、Pは水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数)で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
(2−5)触媒の形成
成分(ア)と成分(イ)および必要に応じて成分(ウ)を接触させて触媒とする。その接触方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。
1)成分(ア)と成分(イ)を接触させる。
2)成分(ア)と成分(イ)を接触させた後に成分(ウ)を添加する。
3)成分(ア)と成分(ウ)を接触させた後に成分(イ)を添加する。
4)成分(イ)と成分(ウ)を接触させた後に成分(ア)を添加する。
その他、三成分を同時に接触させてもよい。
本願発明で使用する成分(ア)と(イ)及び(ウ)の使用量は任意である。例えば、成分(イ)に対する成分(ア)の使用量は、成分(イ)1gに対して、好ましくは0.1μmol〜1,000μmol、特に好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。成分(イ)に対する成分(ウ)の使用量は、成分(イ)1gに対し、好ましくは遷移金属の量が0.001〜100μmol、特に好ましくは0.005〜50μmolの範囲である。したがって、成分(ア)に対する成分(ウ)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは10−5〜50、特に好ましくは10−4〜5の範囲内である。
本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)で使用される触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。予備重合温度と時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(イ)に対し、好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行うことも可能である。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
(2−6)重合方法
(2−6−1)逐次重合
本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を製造するに際しては、成分(a)と成分(b)を逐次重合することが必要である。
プロピレン−エチレン共重合体が単にプロピレンにエチレンを共重合させたランダム共重合体のときには、エチレン含量が少ない場合には柔軟性・耐衝撃性と透明性が十分でなく、柔軟性・耐衝撃性と透明性を向上させるためにエチレン含量を増加させると耐熱性が悪化し、これらの全てを満たすことは困難である。
そこで、本発明においてプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、第1重合工程と第2重合工程でエチレン含量が異なる成分を逐次重合したブロック共重合体であることが透明性と柔軟性・耐衝撃性、耐熱性全てをバランスさせるために必要である。また、成分(b)として分子量が低く単独ではべたつきやすい共重合体を用いる場合があるので、反応器への付着等の問題を防止するために、成分(a)を重合した後で成分(b)を重合する方法を用いることが必要である。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。
バッチ法の場合には時間と共に重合条件を変化させることにより単一の反応器を用いて成分(a)と成分(b)を個別に重合することが可能である。本願発明の効果を阻害しない限り、複数の反応器を並列に接続して用いてもよい。
連続法の場合には成分(a)と成分(b)を個別に重合する必要から2個以上の反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要があるが、本願発明の効果を阻害しない限り成分(a)と成分(b)のそれぞれについて複数の反応器を直列及び/又は並列に接続して用いてもよい。
(2−6−2)重合プロセス
重合プロセスは、スラリー法、バルク法、気相法など任意の重合方法を用いることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。
成分(b)は炭化水素等の有機溶媒や液化プロピレンに溶けやすいため、成分(b)の製造に際しては気相法を用いることが望ましい。
成分(a)の製造に対してはどのプロセスを用いても特に問題はないが、比較的結晶性の低い成分(a)を製造する場合には、付着等の問題を避けるために気相法を用いることが望ましい。
従って、連続法を用いて、まず成分(a)をバルク法もしくは気相法にて重合し、引き続き成分(b)を気相法にて重合することが最も望ましい。
(2−6−3)その他の重合条件
重合温度は通常用いられている温度範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、より好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、大気圧に対する相対圧力で、0MPaより大きく200MPaまで、より好ましくは0.1MPa〜50MPaの範囲を用いることができる。この際窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。
第1重合工程で成分(a)、第二重合工程で成分(b)の逐次重合を行う場合、第二重量重合工程にて系中に重合抑制剤を添加することが望ましい。プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を製造する場合には、第二重合工程のエチレン−プロピレンランダム共重合を行う反応器に重合抑制剤を添加すると、得られるパウダーの粒子性状(流動性など)やゲルなどの製品品質を改良することができる。この手法については各種技術検討がなされており、一例として特公昭63−54296号、特開平7−25960号、特開2003−2939号などを例示することができる。本発明にも当該手法を適用することが望ましい。
(3)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の構成要素の制御方法
本願発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の各要素は以下のように制御され、本発明に好ましい構成要件を満たすよう製造することができる。
(3−1)成分(a)
成分(a)については、エチレン含量[E]とTREFによる溶出温度T(a)を制御することが好ましい。
本発明では、[E]を所定の範囲に制御するためには、第1重合工程における重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比を、適宜調整すればよい。供給比率と得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含量の関係は、用いるメタロセン触媒の種類によって異なるが、供給比率の調整により必要とするエチレン含量[E]を有する成分(a)を製造することができる。
例えば、[E]を7重量%未満に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.3以下の範囲、好ましくは0.2以下の範囲とすればよい。
このとき、成分(a)は分子量分布が狭く、成分(a)のTREFによる溶出温度T(a)は[E]の増加に伴い低下する。
(3−2)成分(b)
成分(b)については、エチレン含量[E]とTREFによる溶出温度T(b)と[η]cxsを制御することが好ましい。
本願発明では、[E]を所定の範囲に制御するためには、[E]と同様に、第二工程におけるプロピレンに対するエチレンの供給量比を制御すればよい。例えば、[E]を3〜27重量%に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.005〜6の範囲、好ましくは0.01〜3の範囲とすればよい。
このとき、成分(b)もエチレン含量の増加に伴い若干結晶性分布の増加が見られるものの、成分(a)と同様に、T(b)は[E]の増加に伴い低下する。
(3−3)W(a)とW(b)
成分(a)の量W(a)と成分(b)の量W(b)は、成分(a)を製造する第1重合工程の製造量と成分(b)の製造量の比を変化させることにより制御することができる。例えば、W(a)を増やしてW(b)を減らすためには、第1重合工程の製造量を維持したまま第二工程の製造量を減らせばよく、それは、第二重合工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたり、重合抑制剤の量を増やしたりすることにより容易に制御することができる。その逆も又同様である。
実際に条件を設定する際には、活性減衰を考慮する必要がある。すなわち、本願発明にて実施するエチレン含有量[E]及び[E]の範囲においては、一般にエチレン含有量を高くするためにプロピレンに対するエチレン供給量比を高くすると重合活性が高くなり、同時に活性減衰が大きくなる傾向にある。したがって、第二重合工程の活性を維持するために第1重合工程の重合活性を抑制する必要があり、具体的には、第1重合工程にてエチレン含有量[E]aを下げ、生産量W(a)を下げ、必要に応じて、重合温度を下げる及び/又は重合時間(滞留時間)を短くする、あるいは第二重合工程にてエチレン含有量[E]を上げ、生産量W(b)を上げ、必要に応じて、重合温度を上げる及び/又は重合時間(滞留時間)を長くするような方法で条件を設定すればよい。
(3−4)ガラス転移温度Tg
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において求められるtanδ曲線がピークを示す温度であるガラス転移温度Tgが、0℃以下で単一のピークを持つ。Tgが単一のピークを持つためには、成分(a)中のエチレン含有量[E]と成分(B)中のエチレン含有量[E]の差の[E]gap(=[E]−[E])を20重量%以下、好ましくは16重量%以下にし、実際の測定においてTgが単一のピークとなる範囲まで[E]gapを小さくすればよい。
成分(a)中のエチレン含有量[E]に応じて、成分(b)中のエチレン含量[E]を適正範囲に入るよう、成分(b)の重合時のプロピレンに対するエチレンの供給重量比を設定することで、所定の[E]gapを有するプロピレン−エチレンブロック共重合体を得ることができる。
また、本発明に用いられるような相分離構造を取らないプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)のTgは、成分(a)中のエチレン含有量[E]と成分(b)中のエチレン含有量[E]、及び両成分の量比の影響を受ける。本発明においては、成分(b)の量は5〜70重量%であるが、この範囲においてTgは成分(b)中のエチレン含有量[E]の影響をより強く受ける。
すなわち、Tgは非晶部のガラス転移を反映するものであるが、本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)において、成分(a)は結晶性を持ち比較的非晶部が少ないのに対し、成分(b)は低結晶性あるいは非晶性であり、そのほとんどが非晶部であるためである。したがって、Tgの値は、ほぼ[E]によって制御され、[E]の制御法は前述したとおりである。
2.熱可塑性エラストマー(B)
本発明で用いられる熱可塑性エラストマー(B)は、(B1)及び(B2)の合計100重量部基準で、スチレン−ブタジエン系重合体(B1)10〜100重量部、エチレン/α―オレフィン共重合体(B2)0〜90重量部を含有する。
(1)スチレン−ブタジエン系重合体(B1)
スチレン−ブタジエン系重合体(B1)は、スチレンに由来する構成単位と、ブタジエンに由来する構成単位とを含む共重合体エラストマーである。また、ブタジエンが水素添加された水添タイプであることも好ましい。また、スチレン−ブタジエン系重合体(B1)は、ソフトセグメントとハードセグメントとからなるブロック共重合体であってもよい。
スチレン−ブタジエン系重合体(B1)のMFRは、好ましくは0.1〜100g/10分であり、より好ましくは下限値が1g/10分、さらに好ましくは5g/10分である。下限値を下回るとエラストマーの分散性が低下するために溶着が不十分となりやすい。上限値はより好ましくは50g/10分、更に好ましくは30g/10分である。上限値を超えると機械的強度が低下する不都合が生じやすい。
なお、MFRは、JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定する値である。
スチレン−ブタジエン系重合体(B1)の具体例としては、スチレン−エチレン・ブタジエン共重合体(SEB)、スチレン−エチレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体(SBBS)、部分水添スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体等を挙げることができ、この中でも好ましいものは、SEBS、あるいはSBBSである。スチレン系エラストマー(B1)は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(2)エチレン/α―オレフィン共重合体(B2)
本発明で用いられるエチレン/α―オレフィン共重合体(B2)は、密度0.860〜0.910g/cmの範囲であることが好ましく、0.870〜0.90g/cmであることがより好ましい。上記の範囲を超えると、透明性が低下するおそれがある。
なお、密度は、JIS K7112に準拠し、23℃で測定した値である。
エチレン・α−オレフィン共重合体(B2)に用いられるα−オレフィンとしては、好ましくは炭素数3〜18のα−オレフィンである。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。また、α−オレフィンとしては、1種または2種以上の組み合わせでもよい。
かかるエチレン・α−オレフィン共重合体としては、市販のポリエチレン樹脂、エチレン系エラストマー、プロピレン系ゴム、エチレン系ゴムを例示でき、特に透明性低下の少ないメタロセン系超低密度ポリエチレンが好適である。
3.プロピレン系単独重合体もしくはプロピレン−エチレン共重合体
本発明で用いるプロピレン系熱可塑性エラストマー組成物は、さらに、融解ピーク温度が140〜170℃の、プロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体を含有することが好ましく、その含有量は前記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)及び熱可塑性エラストマー(B)の合計100重量部に対して、5〜20重量部であることが好ましい。
プロピレン単独重合体もしくはプロピレン−エチレン共重合体の融解ピーク温度は140℃〜170℃の範囲であり、145℃〜160℃であることがより好ましい。上記の範囲を外れると柔軟性と耐熱性のバランスが低下する恐れがある。
4.プロピレン系熱可塑性エラストマー組成物の製造方法
上記した各重合体を含有するプロピレン系熱可塑性エラストマー組成物の製造方法としては、特に限定されず、例えば、上記のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)、場合により、上記プロピレン単独重合体又はプロピレン−エチレン共重合体を、場合によっては添加剤とともに、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等の通常用いられる手段に投入して混合した後、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ロール等で180〜280℃の温度範囲で溶融混練することにより製造することができる。さらには、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)、熱可塑性エラストマー(B)、場合によりプロピレン単独重合体又はプロピレン−エチレン共重合体のそれぞれに対して必要な添加剤等を加えてドライブレンドとメルトブレンドとを個別に行った後、各重合体をドライブレンドすることにより得ることもできる。
混練する順序は、特に限定されないが、一度に混練する方が分散性の理由により、好ましい。
(1)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)の割合
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)の配合量は、(A)(B)の合計100重量部基準で、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)10〜85重量部、熱可塑性エラストマー(B)15〜90重量部であり、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、好ましくは10〜60重量部である。また、融解ピーク温度が140℃〜170℃のプロピレン系重合体を配合する場合は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)及び熱可塑性エラストマー(B)の合計100重量部に対して、5〜20重量部である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の含有量が少なすぎると、ベたつきが強くなるため、チューブの内面同士が接着し易く、さらに摩擦磨耗が弱くなるため、医療用チューブとしての使用には適していない。85重量部より多くなると、柔軟性等が不足し、耐キンク性に劣る懸念がある。
(2)添加剤
本発明に用いるプロピレン系熱可塑性エラストマー組成物には、プロピレン系重合体の安定剤などとして使用されている各種酸化防止剤、造核剤、中和剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を配合することができる。
具体的には、酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ジ−ステアリル−ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト等のリン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系酸化防止剤、ジ−ステアリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ラウリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート等のチオ系酸化防止剤等が挙げられる。
造核剤の具体例としては、公知の造核剤が使用できる。例えばソルビトール系透明化核剤、アミド系造核剤、有機リン酸塩系透明化核剤および芳香族リン酸エステル類、タルクなど既知の造核剤を使用する事ができる。
中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの金属脂肪酸塩、ハイドロタルサイト(商品名:協和化学工業(株)の下記一般式(1)で表されるマグネシウムアルミニウム複合水酸化物塩)、ミズカラック(下記一般式(2)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩)などが挙げられる。
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO・・・・(1)
[式中、xは、0<x≦0.5であり、mは3以下の数である。]
[AlLi(OH)X・mHO ・・・・(2)
[式中、Xは、無機または有機のアニオンであり、nはアニオン(X)の価数であり、mは3以下である。]
滑剤の具体例としては、既知の滑剤が挙げられるが、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸ブチル、シリコーンオイル等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
光安定剤としては、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジル)エタノール縮合物、ポリ{[6−〔(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル]〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等の光安定剤を挙げることができる。
さらに、下記式(3)や下記一般式(4)で表されるアミン系酸化防止剤、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジ−メチル−フェニル)−3H−ベンゾフラン−2−ワン等のラクトン系酸化防止剤、下記一般式(5)等のビタミンE系酸化防止剤を挙げることができる。
Figure 2013208166
Figure 2013208166
[式中のRとRは、炭素数14〜22のアルキル基を示す。]
Figure 2013208166
さらに、その他に、帯電防止剤、脂肪酸金属塩等の分散剤、ポリエチレン、オレフィン系エラストマー等を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
本発明に用いるプロピレン系熱可塑性エラストマー組成物は、この組成物の特性を最大限維持しながら、他の特性または機能を付与する為に、それ以外の重合体、共重合体、エラストマーを任意にブレンドすることができる。具体的には、エチレン−アクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリロニトリル共重合体、天然ゴム、ジエン系ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、多糖類、天然樹脂などの、各種樹脂を該プロピレン系熱可塑性エラストマー組成物100重量部に対して、1〜30重量部程度任意にブレンドすることが可能である。
同様に、フィラーとして、アルミナ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ、石膏、タルク、マイカ、カオリン、クレー、酸化チタン、アルミナのような各種無機質フィラーを、該プロピレン系熱可塑性エラストマー組成物100重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは、1〜10重量部を任意に添加することもできる。
5.医療用チューブ
本発明の医療用チューブは、上記した各樹脂をそれぞれ溶融混合し、押出成形、射出成形等、公知の成形方法に従って成形することができる。あるいは各種樹脂ペレットを直接単軸押出成形機などでドライブレンドしたものをチューブ状に押出成形してよい。
医療用チューブの内径、外径、長さなどに制限はなく、使用に応じて適宜選択すればよい。また、これらのチューブは単層ばかりでなく、各種樹脂との多層構造においても広く使用することができるが、多層の場合は本発明のプロピレン系熱可塑性組成物を中間層に用いることが好ましい。
本発明の医療用チューブは、輸液セットのチューブや延長チューブ、薬剤投与チューブ、血液回路用チューブ、翼付静脈針用チューブ、さらには、吸引用カテーテル、排液用カテーテル、経腸栄養カテーテル、胃管カテーテル、薬液投与カテーテル等としても最適に使用できる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの記載により何ら限定されるものではない。
なお、各実施例及び比較例において、用いた物性測定は以下の方法で行い、プロピレン−エチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン系重合体、エチレン/α―オレフィン共重合体および融解ピーク温度が140℃〜170℃ポリプロピレンとしては以下のものを使用した。
1.測定法
(1)TREF
TREF測定方法は前述した通りであり、装置と条件は以下の通りである。
[装置]
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ × 150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー製デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm
窓形状2φ×4mm長丸 合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
[測定条件]
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
(2)シートの作製
スクリュウ口径30mmの押出機にドライブレンドした樹脂組成物のペレットを直接投入し、樹脂温度200℃にて加熱溶融可塑化してT型ダイスより押出したシートを、表面温度が20℃に制御された鏡面仕上げの金属製キャストロ−ルにて挟み、冷却固化させながら1m/minの速度で連続的に引き取り、幅100mm、厚さ1.0mmのシートを得た。
(3)チューブの作製
ドライブレンドした樹脂組成物のペレットを直接単軸押出機(プラ技研社製)に投入し、外径5mm、肉厚1.0mmの医療用チューブを作製した。
(4)固体粘弾性測定
成形シートから10mm×18mm×2mmtの短冊状に切り出したものを試験片として用いた。装置はレオメトリック・サイエンティフィック社製のARESを用いた。周波数は1Hzである。測定温度は−60℃から段階状に昇温し、試料が融解して測定不能になるまで測定を行った。歪みは0.1〜0.5%の範囲で行った。
(5)各成分量の算出
TREFを用いて、前述した方法によって算出した。
(6)エチレン含有量の算出
13C−NMRにより組成を検定したエチレン・プロピレンランダムコポリマーを基準物質として733cm−1の特性吸収体を用いる赤外分光法により、ランダムコポリマー中のエチレン含量を測定した。試験片は、ペレットをプレス成形により約500ミクロンの厚さのフィルムとしたものを用いた。
(7)tanδ曲線のピーク
固有粘弾性測定により測定した。
(8)MFR
JIS K7210に準拠して温度230℃、荷重21.2Nにて測定した。ただし、ポリエチレン系重合体に関しては測定温度を190℃とした。
(9)融解ピーク温度
DSC試験機としてセイコーインスツルメント社製RDC220Uを用い、サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度を測定した。
(10)分子量分布
前述の方法で測定した。
(11)密度
JIS K7112−1980「プラスチックの密度と比重の測定方法」に準拠して、密度勾配管法にて測定した。
(12)柔軟性
JIS K7113「プラスチックの引張り試験方法」に準拠して、チャック間距離100mm、引張り速度1mm/minで引張り試験を実施し、柔軟性と目安となる引張弾性率を求めた。但し、試験片は厚さ1mmの成形シートをJIS2号型ダンベルで打ち抜いたものを使用した。柔軟性は30MPa以下のものを◎、30〜60MPaの範囲にあるものを○、60〜100MPaの範囲にあるものを△、100MPaを超えるものを×とした。
(13)透明性
作製した厚さ1mmのシートをJIS K7105に準拠して内部へイズ値測定した。
内部ヘイズ値が10以下のものを○、10〜40の範囲にあるものを△、40を超えるものを×とした。
(14)耐熱性
固体粘弾性を測定し、121℃の貯蔵弾性率が600KPa以上のものを◎、400〜600KPaの範囲にあるものを○、300〜400KPaの範囲にあるものを△、300KPa以下のものは、121℃耐熱滅菌後、樹脂が溶融し形態を保持出来ない恐れがあるため、医療用チューブの使用には適さないと考え×とした。
(15)キンク性
長さ20cmのチューブを屈曲させてキンクが生じる最小湾曲半径を観察した。耐キンク性は、最小湾曲半径が2.5cm以下のものを○、2.5〜3,0cmの範囲にあるものを△、3.0cm以上のものを×とした。
2.使用材料
(1)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)
・プロピレン−エチレンブロック共重合体(PP−1):
下記の製造例PP−1により、本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(PP−1)を得た。
(製造例PP−1:プロピレン−エチレンブロック共重合体(PP−1)の製造)
・触媒の製造
・・珪酸塩の化学処理:
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製商品名「ベンクレイSL」、平均粒径50μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。
・・触媒の調製:
内容積3リットルの撹拌翼のついたガラス製反応器に上記で得た乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で撹拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0lに調製した。次に、調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。並行して、〔(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕(合成は特開平10−226712号公報の実施例に従って実施した。)2180mg(3mmol)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を33.1ml加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間撹拌した。
・・予備重合:
続いて、窒素で十分置換を行った内容積10リットルの撹拌式オートクレーブに、ノルマルヘプタン2.1リットルを導入し、40℃に保持した。そこに先に調製した珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄み約3リットルをデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5.6リットル添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5.6リットル除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。
最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23ミリモル/L、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液17.0ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレンが2.1gを含む予備重合触媒が得られた。
・重合
・・第1重合工程
図2に示すフローシートの重合装置を用いた。
攪拌羽根を有する横型重合器1(L/D=3.7、内容積100L)に、あらかじめ35kgのシーズポリマーを導入後、窒素ガスを3時間流通させた。その後、プロピレン、エチレンおよび水素を導入しながら65℃まで昇温した。反応器の圧力を2.2MPaGとし、ガス中のエチレン/プロピレン(モル比)=0.06、水素/プロピレン(モル比)=0.0002となるように条件調整をした後、上記予備重合触媒を0.9g/hr(予備重合されたポリマーも含んだ量)、有機アルミ化合物としてトリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr一定となるように供給した。反応温度65℃、反応圧力2.2MPaG、上記のエチレン/プロピレン、水素/プロピレンの条件を維持するようにして、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の製造を実施した。
反応熱は、配管3から供給される原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは、配管4を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器1に還流した。本重合で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)は、重合体の保有レベルが反応容積の65容積%となる様に配管5を通して重合器1から間欠的に抜き出し第2重合工程の重合器10に供給した。このとき、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の生産量は7kg/hrであった。配管5からプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の一部を抜き出して分析用サンプルとした。
・・第2重合工程
攪拌羽根を有する横型重合器10(L/D=3.7、内容積100L)に第1重合工程からのプロピレン−エチレンランダム共重合体を間欠的に供給し、プロピレンとエチレンの共重合を行った。反応条件は攪拌速度18rpm、反応温度70℃、反応圧力2.1MPaGであり、ガスのエチレン/プロピレン(モル比)=0.43、水素/プロピレン+エチレン(モル比)=0.0003となるように調整した。プロピレン−エチレンランダム共重合体(B)の重合量を調整するための重合活性抑制剤として酸素ガスを配管7より供給した。
反応熱は配管6から供給される原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは配管8を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器10に還流した。第2重合工程で生成されたプロピレン系ブロック共重合体(PP−1)は、重合体の保有レベルが反応容積の50容積%となる様に配管9を通して重合器10から間欠的に抜き出した。
・プロピレン−エチレンブロック共重合体(PP−1)の分析結果
上記で得られたプロピレン系ブロック共重合体(PP−1)のMFRは6g/10分、Tmは130℃、成分(A)の含有量は56重量%、成分(B)の含有量は44重量%、成分(A)のMFRは6g/10分、エチレン含量は2.2重量%、成分(B)中のエチレン含有量は11重量%であった。
製造条件とPP−1の分析結果を、まとめて下記表3に示す。
Figure 2013208166
PP−1以外の樹脂として以下のものを使用した。
(PP−2)プロピレン単独重合体:
ノバテックFL4(日本ポリプロ(株)製)
使用触媒:チーグラー・ナッタ触媒
MFR:5g/10分
(PP−3)プロピレン−エチレンランダム共重合体:
ノバテックMG3F(日本ポリプロ(株)製)
使用触媒:チーグラー・ナッタ触媒
MFR:8g/10分、エチレン含量=3.5重量%
熱可塑性エラストマー(B)には下記のものを使用した。
(TPE−1)スチレン−ブタジエン系重合体
Kraton G1645M(Kraton Polymer社製、商品名)
MFR:2〜4.5g/10分
(PE−1)メタロセン系エチレン/α−オレフィン共重合体
カーネル KM340T(日本ポリエチレン社製、商品名)
MFR:2.2g/10分、密度:0.880g/cm
(PE−2)メタロセン系エチレン/α−オレフィン共重合体
カーネル KF271(日本ポリエチレン社製、商品名)
MFR:2.4g/10分、密度:0.913g/cm
(TPO−1)エチレン−オクテン共重合体
エンゲージ 8842(デュポン・ダウケミカル社製、商品名)
MFR:2.2g/10分、密度:0.857g/cm
(実施例1〜7、比較例1〜3)
プロピレン−エチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン系重合体及びエチレン/α−オレフィン共重合体を表4に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、50ミリ径の単軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度200℃でダイから押し出しペレット化した。得られたペレットをスクリュウ口径30mmの押出機に前記ペレットを投入し、樹脂温度200℃にて加熱溶融可塑化してT型ダイスより押出したシートを、表面温度が20℃に制御された鏡面仕上げの金属製キャストロ−ルにて挟み、冷却固化させながら1m/minの速度で連続的に引き取り、幅100mm、厚さ1.0mmのシートを得た。シートから切り出した試験片を用い、物性を測定した。
ドライブレンドした上記の樹脂組成物のペレットを直接単軸押出機(プラ技研製)に投入し、外径5mm、肉厚1.0mmの医療用チューブを作製し、耐キンク性を評価した。
結果を表4に示す。
Figure 2013208166
表4より明らかなように、実施例では特定のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)を特定の割合でブレンドすることで高い柔軟性と耐熱性が得られており、かつ耐キンク性も抑制されている。
これに対して、プロピレン−エチレンブロック共重合体とスチレン−ブタジエン系重合体を配合比率が範囲外にある比較例1〜2では、耐熱性と柔軟性のバランスに劣り、スチレン−ブタジエン系重合体とエチレン/α−オレフィン共重合体の配合比率が範囲外にある比較例3では、耐熱性が不足しており医療用チューブに不適である。
(実施例4〜11)
プロピレン−エチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン系重合体、エチレン/α−オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体及びプロピレン−エチレンランダム共重合体を表5に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、50ミリ径の単軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度200℃でダイから押し出しペレット化した。得られたペレットをスクリュウ口径30mmの押出機に前記ペレットを投入し、樹脂温度200℃にて加熱溶融可塑化してT型ダイスより押出したシートを、表面温度が20℃に制御された鏡面仕上げの金属製キャストロ−ルにて挟み、冷却固化させながら1m/minの速度で連続的に引き取り、幅100mm、厚さ1.0mmのシートを得た。シートから切り出した試験片を用い、物性を測定した。
ドライブレンドした上記の樹脂組成物のペレットを直接単軸押出機(プラ技研社製)に投入し、外径5mm、肉厚1.0mmの医療用チューブを作製し、耐キンク性を評価した。
結果を表5に示す。
Figure 2013208166
表5より明らかなように、実施例8〜11は、プロピレン単独重合体もしくはプロピレン−エチレン共重合体を配合することにより、耐熱性が向上しており、これらの中でも実施例8は、柔軟性、透明性、耐熱性及び耐キンク性のバランスが特に優れたものであった。
本発明のプロピレン系熱可塑性エラストマー組成物からなる医療用チューブは、柔軟性、透明性及び耐熱性に優れ、熱滅菌される用途に極めて有用である。

Claims (3)

  1. (A)(B)の合計100重量部基準で、下記(i)〜(v)を満たすプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)10〜85重量部と、熱可塑性エラストマー(B)15〜90重量部を含有し、
    熱可塑性エラストマー(B)は、(B1)(B2)の合計100重量部基準で、スチレン−ブタジエン系重合体(B1)10〜100重量部とエチレン/α−オレフィン共重合体(B2)0〜90重量部を含有するプロピレン系熱可塑性エラストマー組成物からなることを特徴とする医療用チューブ。
    (i)メタロセン系触媒を用いて、第1工程でプロピレン単独又はエチレン含量が7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(a)を30〜95重量%、第2工程で成分(a)よりも3〜20重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(b)を70〜5重量%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
    (ii)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が、0.5〜100g/10分の範囲にある。
    (iii)DSC法により測定された融解ピーク温度(Tm)が、110〜150℃の範囲にある。
    (iv)GPC法により測定された分子量分布(Mw/Mn)が、1.5〜4の範囲にある。
    (v)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
  2. エチレン/α−オレフィン共重合体(B2)の密度が0.860〜0.910g/cmの範囲にある請求項1に記載の医療用チューブ。
  3. プロピレン系熱可塑性エラストマー組成物は、さらに、融解ピーク温度が140〜170℃の、プロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体を、前記(A)(B)の合計100重量部に対して、5〜20重量部を含有する請求項1または2に記載の医療用チューブ。
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