JP2013208106A - 植物繁殖体、及びその栽培方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る植物繁殖体は、モリブデン含有物、及びタングステン含有物からなる群より選択される第一の資材と、pH調整作用によって当該第一の資材から供給される機能性成分の供給を調整する第二の資材とが植物繁殖体の表面又は内部に付与されている。
【選択図】なし
Description
1)モリブデン含有物、及びタングステン含有物からなる群より選択される第一の資材と、pH調整作用によって当該第一の資材から供給される機能性成分の供給を調整する第二の資材(ただし、過酸化カルシウムは除く)と、が植物繁殖体の表面又は内部に付与された、植物繁殖体。
2)上記第二の資材は、室温での水に対する溶解割合が重量比1%以下の微溶性の資材である、1)に記載の植物繁殖体。
3)上記第二の資材が、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、ベントナイト、及びタルクからなる群より選択される少なくとも一種である、2)に記載の植物繁殖体。
4)上記第一の資材は、金属モリブデン、三酸化モリブデン、モリブデン酸とその塩、モリブドリン酸とその塩、モリブドケイ酸とその塩、金属タングステン、三酸化タングステン、タングステン酸とその塩、タングストリン酸とその塩、タングストケイ酸とその塩、からなる群より選択される少なくとも一種である、1)から3)の何れかに記載の植物繁殖体。
5)上記植物繁殖体はイネ科、又はマメ科の植物である、1)〜4)のいずれかに記載の植物繁殖体。
6)植物繁殖体の苗立ちが向上する、1)〜5)のいずれかに記載の植物繁殖体。
7)上記植物繁殖体は種子である、1)〜6)のいずれかに記載の植物繁殖体。
8)上記1)から7)の何れかに記載の植物繁殖体を植え付ける植付工程を包含する、植物繁殖体の栽培方法。
9)上記植付工程以降から苗立ち期の間に、植物体の少なくとも一部が湛水状態となる期間を有する、8)に記載の栽培方法。
10)酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、及び炭酸亜鉛からなる群より選択される少なくとも一種が植物繁殖体の表面又は内部に付与されるとともに、モリブデン含有物、及びタングステン含有物からなる群より選択される資材が植物繁殖体の表面又は内部に付与されていない、植物繁殖体。なお、10)の植物繁殖体において、さらに酸化鉄、望ましくは酸化鉄(III)(Fe2O3)が植物繁殖体の表面又は内部に付与されていることが好ましい場合がある。
(植物繁殖体の概要)
本発明に係る植物繁殖体は、1)モリブデン含有物、及びタングステン含有物からなる群より選択される第一の資材と、2)pHの調整作用によって当該第一の資材から供給される機能性成分の供給を調整する第二の資材(ただし、過酸化カルシウムは除く)と、が植物繁殖体の表面又は内部に付与されたものである。
また、植物繁殖体の表面に付与とは、植物繁殖体の外側に、当該植物繁殖体と一体的に資材が存在している状態を指す。
上記植物繁殖体の種類は特に限定されず、例えば、種子、むかご等の栄養繁殖器官、幼植物(苗)等が挙げられ、中でも種子が好ましい。植物繁殖体は、具体的には、例えば、水稲、オオムギ、コムギ等のイネ科植物の種子;ダイズ、ソラマメ、インゲンマメ等のマメ科植物の種子;アブラナ、チンゲンサイ、コマツナ、ダイコン等のアブラナ科植物の種子;ソバ等のソバ科植物の種子;等が挙げられる。
第一の資材は、モリブデン資材、及びタングステン資材からなる群より選択される少なくとも一種の資材である。モリブデン資材、及びタングステン資材は、オキソアニオンを生成することで、植物の生育環境中における硫化物イオンの生成を抑制する。さらに、これらのオキソアニオンは、植物の生育環境中における腐敗等の微生物の活動を抑制する。したがって、モリブデン資材又はタングステン資材を用いることにより、植物の苗立ち及び生育の低下を抑制することができる。
第二の資材は、そのpH調整作用を以って、第一の資材から供給される機能成分の供給を調整(好ましくは促進)する資材である。また、第二の資材は、第一の資材から供給される機能成分を安定化する。第一の資材は液体(水)の存在下で機能成分であるオキソアニオンを生成する。オキソアニオンの生成は環境におけるpHにも依存し、pHが高くなるに従いその供給量が増える傾向にある。また、そのオキソアニオンはアニオンであるので、対となるカチオンの存在によって安定して存在しうる。第二の資材は、第一の資材から機能成分たるオキソアニオンを安定的に供給させるため、一例において、第二の資材の非存在下における土壌のみの作用以上にpHを上昇させるか、pHを降下させない。言い換えれば、第二の資材は、一例において、土壌又は土壌代替物中において、これら(特に土壌)のpH緩衝力が作用して示される植物繁殖体の周囲環境のpHをより上昇させるか、pHを降下させないで、第一の資材からのオキソアニオンの供給を促進する資材である。
本発明に係る植物繁殖体は、上記第一及び第二の資材以外に、必要に応じて、鉄資材又は粘土等の資材を含んでいてもよい。鉄資材の種類は特に限定されないが、具体的には、例えば、還元鉄(Fe)、酸化鉄(III)(Fe2O3)、酸化鉄(II,III)(Fe3O4)、酸化鉄(II)(FeO)等が挙げられ、これらの組成物であっても良い。
第一及び第二の資材が付与された植物繁殖体の製造方法は特に限定されず、第一及び第二の資材を適切な方法で植物繁殖体に付与すればよい。当該植物繁殖体が被覆種子の場合、具体的には、例えば、1)固形状(粉末状を含む)の第一及び第二の資材を十分に混ぜ合わせて、そこに種子等の植物繁殖体を加えて、適量の液体(水等)を噴霧器等を用いて添加しながら塑性状の被覆層を植物繁殖体の表面に形成する方法、2)固形状の第一及び第二の資材、並びに液体を混合して懸濁状態にして攪拌をし、そこに種子等の植物繁殖体を加えて、さらに液体以外の資材を追加で添加(例えば、第一及び第二の資材の追加投入)して相対的に水分含量を減らし、塑性状の被覆層を形成する方法、3)種子等の植物繁殖体を加え懸濁状態にして攪拌するまでは2)と同様にし、次いで、熱、通風、及び/又は放置(保管又は運搬等の他の作業と兼ねて、時間の経過に伴い、徐々に水分含量が低下する工程も放置の範疇に包含される)等で水分を減らし、塑性状の被覆層を形成する方法、4)種子等の植物繁殖体を加え懸濁状態にして攪拌するまでは2)と同様にし、次いで、植物繁殖体を液体から取り出して、塑性状の被覆層を植物繁殖体の表面に形成する方法、5)植物繁殖体の表面又は内部(植物繁殖体に吸水させておく等)に液体を予め付与しておき、次いで固形状の第一及び第二の資材をまぶして、塑性状の被覆層を植物繁殖体の表面に形成する方法、等が挙げられる。ただし、植物繁殖体は最初から第一及び第二の資材等と混合しても構わないし、植物繁殖体を予め十分湿らせてから、第一及び第二の資材等と混合しても構わない。これらを混合するタイミングは同時でもよく、又は適宜順番を変えても構わない。
本発明は、得られた植物繁殖体を植え付けて植物を栽培する方法も提供する。すなわち、本発明に係る植物繁殖体は、植え付けられ(植付工程)た後に、利用可能な大きさの植物体となるまで栽培される。
以下、本発明に係る植物繁殖体の一形態である被覆種子のより具体的な構成例を示す。
第一の資材:モリブドリン酸カリウム、モリブドリン酸アンモニウム、及び三酸化モリブデンからなる群より選択される少なくとも一種類。モリブドリン酸カリウムが望ましい。粉状。風乾種子1kgあたりモリブデン元素で0.05mol以上で0.5mol以下の範囲内で用いる。0.1mol以上で0.2mol以下の範囲内が望ましい。
第二の資材:酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ベントナイト、及びタルクからなる群より選択される少なくとも一種類。酸化マグネシウムが望ましく、高温加熱で生成された重質又は電融と形容される酸化マグネシウムがより望ましい。粉状。酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、又は酸化亜鉛は、第一資材に含まれるモリブデン元素と当量となる金属元素を含む相当量の0.5倍からその50倍までの範囲(ただし、畑作物や水稲乾田直播など積極的に湛水しない場合は、第一資材に含まれるモリブデン元素と当量となる金属元素を含む相当量の0.5倍からその2倍までの範囲。)。ベントナイト又はタルクについては、風乾種子重の0.1から2倍重までの範囲。
必要に応じて添加する資材:重量を増すために、酸化鉄及び粘土からなる群より選択される少なくとも一種類。粉状。風乾種子重の0.1から2倍重までの範囲。添加しない場合もある。
結合剤(バインダー):重合度1500以上で3500以下の範囲内で、ケン化度は90モル%以上で98モル%以下の範囲内のポリビニルアルコール粉末。第一の資材、第二の資材、及び必要に応じて添加する資材の合計重量の1%重から3%重までの範囲。
種子の種類は限定されない。第一の資材、第二の資材、必要に応じて添加する資材、及びPVAとが混合された組成物により、種子の外表面の被覆が行われる。
第一の資材:三酸化モリブデン。風乾種子1kgあたりモリブデン元素で0.01mol以上で0.2mol以下の範囲内、あるいは0.01mol以上で0.1mol以下の範囲内で用いる。
第二の資材:酸化マグネシウム、および水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種類。酸化マグネシウムが望ましく、高温加熱で生成された重質又は電融と形容される酸化マグネシウムがより望ましい。粉状。風乾種子1kgあたり金属マグネシウムとして1mol以上で5mol以下の範囲内で用いる。
必要に応じて添加する資材:重量や親水性を増すため、酸化鉄。望ましくは酸化鉄(III)(Fe2O3)。還元鉄を被覆し、被覆後に酸化されて酸化鉄となるものも範疇に含まれる。粉状。粒径10μm以下の酸化鉄が好ましく、粒径1μm以下の酸化鉄がより好ましく、粒径0.1以上1μm以下の酸化鉄がさらに好ましい。風乾種子重の0.05から0.5倍重までの範囲で用いる。必要に応じて添加しなくてもよい。
結合剤(バインダー):重合度1500以上で3500以下の範囲内で、ケン化度は90モル%以上で98モル%以下の範囲内のポリビニルアルコール粉末。第一の資材、第二の資材、及び必要に応じて添加する資材の合計重量の0.1%重から2%重までの範囲。
種子の種類は限定されない。第一の資材、第二の資材、必要に応じて添加する資材、及びPVAが混合された組成物により、種子の外表面の被覆が行われる。
第一の資材:使用しない。または、三酸化モリブデンを0から0.01molの範囲内で用いる。
第二の資材:酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、および炭酸亜鉛からなる群より選択される少なくとも一種。より好ましくは、酸化マグネシウム、および水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種類。中でも酸化マグネシウムが望ましく、高温加熱で生成された重質又は電融と形容される酸化マグネシウムがより望ましい。粉状。風乾種子1kgあたり金属原子(Mg、Ca、またはZn)として1mol以上で5mol以下の範囲内で用いる。
必要に応じて添加する資材:重量や親水性を増すため、酸化鉄。望ましくは酸化鉄(III)(Fe2O3)。還元鉄を被覆し、被覆後に酸化されて酸化鉄となるものも範疇に含まれる。粉状。粒径10μm以下の酸化鉄が好ましく、粒径1μm以下の酸化鉄がより好ましく、粒径0.1以上1μm以下の酸化鉄がさらに好ましい。風乾種子重の0.05から0.5倍重までの範囲で用いる。必要に応じて添加しなくてもよい。
結合剤(バインダー):重合度1500以上で3500以下の範囲内で、ケン化度は90モル%以上で98モル%以下の範囲内のポリビニルアルコール粉末。第二の資材、必要に応じて添加する第一の資材、及び必要に応じて添加する酸化鉄の合計重量の0.1%重から2%重までの範囲。
種子の種類は限定されない。第二の資材、必要に応じて添加する第一の資材、必要に応じて添加する酸化鉄、及びPVAが混合された組成物により、種子の表面被覆が行われる。
構成例3の被覆種子において、植物の苗立ち向上に寄与する活性成分は、第一の資材として三酸化モリブデンを用いる場合は第一の資材と第二の資材とであり、第一の資材を用いない場合は第二の資材である。この被覆種子は、第一の資材と第二の資材以外に、植物の苗立ち向上に寄与する活性成分を含んでいなくてもよい。
また、構成例3の被覆種子は、第二の資材とPVAとのみによって被覆されていてもよく、さらに必要に応じて、第一の資材(三酸化モリブデン)および酸化鉄からなる群から選択される一方または両方のみをさらに含んでいてもよい。
構成例3の被覆種子の特に具体的な一例は、酸化鉄とPVAと苦土(酸化マグネシウム)とによって種子が被覆されているものである。
<試験1a〜1e>
0.2molMo/kg(風乾種子。以下、同様。)相当量のモリブドリン酸カリウム(日本新金属(株)製。以下、MoPKと表記。)と、表1に示すmolMg/kg相当量の酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製、試薬特級、重質。以下、MgOと表記。)をよく混合し、この混合物重量の1%(試験1cと1dと1eでは2%)重のPVA粉末(日本酢ビ・ポバール(株)製、JM−17S。以下、PVAと表記。以後の試験の被覆において、PVAについて個別に記載しない場合、PVAを同様に混合物重量の2%重を混合した。)をさらに混合し、水を霧吹きでかけて風乾水稲種子(品種:にこまる)に被覆し、できた被覆種子を風乾した。
試験1a〜eと同様に、0.2molMo/kg相当量のMoPKと、0又は0.2molMg/kgのMgOをよく混合し、被覆種子を作成した(PVAは混合物重量の2%重)。試験1a〜eと同様に、福岡県筑後市の水田土壌を容器に詰めた。ただし、溶液を加えず、土壌表面を平らに静置し、作成した種子を土壌表面に8粒ずつ並べ、板で押さえつけた。試験1a〜eと同様に、20℃の恒温器内にいれ、種子に触れない程度に水をかけて土壌を湿らせた。この条件は、種子にとって空気と水分が適度に利用できる畑条件である。播種後11日目に第2葉を展開した個体数を調査した。
実施例1の試験1aと同様にして、硫酸アンモニウムと糖とを水田湿潤土壌に混合した試験用の土壌を調整した。水稲種子(品種:にこまる)を蒸留水に10℃で5日間ほど、その後30℃で6時間ほど浸漬した。この状態で水稲種子は発芽していなかった。0.1molMo/kg(風乾種子)相当量のモリブドリン酸カリウムに、このモリブドリン酸カリウムの2%重に相当するPVAと、図1に示すmolMg/kg相当量の酸化マグネシウム(タテホ化学工業(株)製、電融マグネシア96、高温加熱でつくられた電融酸化マグネシウム)と、この酸化マグネシウムの1%重に相当するPVAとを混合し、水を霧吹きでかけて水稲種子の表層に被覆し、できた被覆種子を風乾した。
実施例1−1と同様にして、硫酸アンモニウムと糖とを水田湿潤土壌に混合した試験用の土壌を調整した。実施例1−1と同様にして、水稲種子を、発芽しない程度に蒸留水に浸漬した。0.2molMo/kg(風乾種子)相当量のモリブドリン酸カリウムに、風乾種子重の0.1倍重の酸化鉄粉末(森下弁柄工業(株)製、品名:No.1094、酸化鉄(III)、99重量%、平均粒径 0.57μm)をよく混合し、この混合物の2%重のPVA粉をさらに加えてよく混合し、最終的に得られた混合物を、実施例1−1と同様にして水稲種子に被覆した。さらに、図2に示すmolMg/kg相当量の酸化マグネシウム(タテホ化学工業(株)製、電融マグネシア96)と、酸化マグネシウムの1%重に相当するPVAとを混合し、実施例1−1と同様にして、水稲種子にさらに被覆し、できた被覆種子を風乾した。すなわち、得られた被覆種子は、モリブドリン酸カリウムおよび酸化鉄を含む内層と、酸化マグネシウムを含む外層とを有する。
実施例1の試験1bと同様に、硫酸アンモニウムと糖と酸を加えて湛水土壌を調整した。被覆種子は、MoPKの代わりに、三酸化モリブデン(和光純薬工業(株)製。以下、MoOと表記。)を用いた以外は試験1bと同様に作成し(PVAは混合物重量の1%重)、無処理の種子とともに苗立ち割合を調べた。
実施例1の試験1aと同様に、硫酸アンモニウムと糖を加えて湛水土壌を調整した。被覆種子は、MoPKの代わりに、モリブドリン酸アンモニウム(和光純薬工業(株)製。以下、MoPNHと表記。)を用いた以外は試験1aと同様に作成し(PVAは混合物重量の1%重)、無処理の種子とともに苗立ち割合を調べた。
実施例1の試験1aと同様に、硫酸アンモニウムと糖を加えて湛水土壌を調整した。被覆種子は、MgOの代わりに、水酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製。以下、Mg(OH)2と表記。)を用いた以外は試験1aと同様に作成し(PVAは混合物重量の1%重)、無処理の種子とともに苗立ち割合を調べた。
糖を加えない以外は、実施例1の試験1aの条件(硫安を添加)で湛水土壌を調整した。被覆種子は、MgOの代わりに、酸化亜鉛(和光純薬工業(株)製、試薬特級。以下、ZnOと表記。)を用いた以外は試験1aと同様に作成し(PVAは混合物重量の1%重)、無処理の種子とともに苗立ち割合を調べた。
<試験6a>
実施例1の試験1aと同様に、硫酸アンモニウムと糖を加えて湛水土壌を調整した。種子は、無処理の場合と、MgOを除いてMoPKのみとした以外は試験1aと同様にした場合と、MgOに代えて、0.5mol(金属元素)/kg相当の、Mg(OH)2、炭酸カルシウム(和光純薬工業(株)製、試薬特級。以下、CaCO3と表記。)、ZnO、炭酸マグネシウム(和光純薬工業(株)製、塩基性、重質。以下、MgCO3と表記。)を用いた以外は試験1aと同様にした場合(MoPKと各資材との組合せ)とを準備し(PVAは混合物重量の1%重)、苗立ち割合を調べた。
実施例1の試験1dで用いた不良土に、実施例5と同様に硫酸アンモニウムを添加して湛水土壌を調整した。種子は、試験6aと同様に、無処理の場合と、MoPKのみの場合と、MoPKに加えて2mol(金属元素)/kg相当の、MgCO3、MgO、Mg(OH)2、CaCO3、酸化カルシウム(和光純薬工業(株)製。以下、CaOと表記。)を併用した場合とを作成し(PVAは混合物重量の2%重)、苗立ち割合を調べた。
実施例1の試験1dで用いた不良土に、試験6bのように硫安を添加し、さらに試験1bの様に酸を添加して(ただし糖は添加しなかった)湛水土壌を調整した。種子は、試験6bの各処理と同様にしたもの(ただし、MoPKのみの場合は無し)に加え、MoPKに2molCa/kg相当の水酸化カルシウム(和光純薬工業(株)製、試薬特級。以下、Ca(OH)2と表記。)を併用したものも作成し(PVAは混合物重量の2%重)、苗立ち割合を調べた。
糖を入れない点以外は、実施例1の試験1bと同様の条件で湛水土壌を調整した。被覆種子は、試験6cと同様に、MoPKのみとした場合と、MoPKに加えて、種子重の2倍重のベントナイト((株)ホージュン製、榛名)、又はタルク(滑石)5銘柄(A:富士タルク工業(株)製、PK−50、B:同、NK−48、C:竹原化学工業(株)、Tタルク、D:日本タルク(株)、SW、E:(株)福岡タルク工業所、CX−A)のいずれかを併用した場合とを作成し(PVAは混合物重量の2%重)、同様に苗立ち割合を調べた。
実施例5と同様に硫酸アンモニウムを添加し、湛水土壌を作成した。種子は、MoPKを用いず、0〜12.4molMg/kg相当量のMgO、又は0〜10molZn/kg相当量のZnOを種子に被覆した(PVAは混合物重量の1%重)点以外は試験1aと同様にして作成した。そして、この被覆種子を、作成した湛水土壌に播種して、同様に苗立ち割合を調べた。さらに、土壌の調整は同様で、10mol(金属元素)/kg相当量の、ZnO、MgCO3、MgO、Mg(OH)2、CaO、Ca(OH)2を被覆した種子も作成し(PVAは混合物重量の2%重)、同様に播種後、1日のうち半日だけ人工灯(照度は約0.4mmol/m2/s)を点灯するように設定した20℃の恒温器内に静置して、同様に苗立ち割合を調べた。
硫化物イオンが生成しにくい穏やかな条件となるよう、硫酸アンモニウムの量を0.1molN/m2に減らした点以外は、実施例7と同様にして湛水土壌を調整した。図3に示すmolMg/kg相当量の酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製、試薬特級、重質)にその1%重のPVAを混合して得た混合物を、実施例7と同様にして水稲種子に被覆し、得られた被覆種子を湛水土壌に播種した。実施例1と同様にして、蛍光灯を用いた、20℃での苗立ち割合の平均と標準誤差とを求めた。
実施例7−1と同様にして、湛水土壌を調整した。風乾種子重の0.1倍重の酸化鉄粉末(森下弁柄工業(株)製、品名:No.1094)と、図4に示すmolMg/kg相当量の酸化マグネシウム(タテホ化学工業(株)製、電融マグネシア96)とを混合し、得られた混合物の1%重のPVAをさらに混合して被覆用の混合物を得た。実施例7−1と同様にして、被覆用の混合物を水稲種子に被覆し、得られた被覆種子を湛水土壌に播種した。実施例7−1と同様にして、20℃での苗立ち割合の平均と標準誤差とを求めた。
実施例7−2と同様にして、湛水土壌を調整した。風乾種子重の0.1倍重の酸化鉄粉末(森下弁柄工業(株)製、品名:No.1094)と、図5に示すmolMg/kg相当量の水酸化マグネシウム(和光純薬工業(株)製)とを混合し、得られた混合物の1%重のPVAをさらに混合して被覆用の混合物を得た。実施例7−2と同様にして、被覆用の混合物を水稲種子に被覆し、得られた被覆種子を湛水土壌に播種した。実施例7−2と同様にして、20℃での苗立ち割合の平均と標準誤差とを求めた。
実施例7−3と同様にして、湛水土壌を調整した。実施例6と同じ、酸化亜鉛(ZnO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)のいずれか一種類を2mol(金属元素)/kgと、風乾種子重の0.1倍重の酸化鉄粉末(森下弁柄工業(株)製、品名:No.1094)とを混合し、この混合物重量の1%重のPVAをさらに混合して、被覆用の混合物を得た。実施例7−3と同様にして、被覆用の混合物を水稲種子に被覆し、得られた被覆種子を湛水土壌に播種した。実施例7−3と同様にして、20℃での苗立ち割合の平均と標準誤差とを求めた。なお、酸化鉄粉末とPVAのみで水稲種子を被覆した場合も調べた。
<試験8a>
実施例5と同様に硫酸アンモニウムを添加し、湛水土壌を作成した。ただし、この試験では乾土の約0.6倍重に相当する硫酸アンモニウム水溶液を添加した。添加された溶質の量は試験5と同じで、水面が土壌表面と近くなるよう、水量のみを減らした。
試験8aと同様に、硫酸アンモニウムを添加し、湛水土壌を作成した。無処理の場合と、0.2molMo/kgのMoPKのみの場合と、MoPKに加えて0.1mol/kg相当の、MgCO3、MgO、Mg(OH)2、CaCO3を混合した点以外は、試験8aと同様に、小麦種子に被覆し(PVAは混合物重量の2%重)、湛水土壌における苗立ち割合を調べた。
福岡県筑後市の水田において、2011年10月19日に、慣行の麦栽培に従って、小麦(品種:チクゴイズミ)と大麦(品種:ニシノチカラ)を機械播種した。種子は、無処理と、0.5molMo/kgのMoOに加えて1molZn/kg相当のZnOを混合して、試験8aと同様に被覆したもの(PVAは混合物重量の1%重)を用いた。播種後、表土を鎮圧し、土壌中に波板を打ち込んで区画を分けて、播種後湛水1日後に排水する区(湛水1日と表記)と、播種後湛水3日後に排水する区(湛水3日と表記)を設けた。11月8日(湛水1日)と11月14日(湛水3日)に本葉抽出個体を数え、播種種子数に対する割合を苗立ち割合として求めた。各条件で3m×48箇所の調査に基づき、平均と標準誤差を求めた。
試験8aと同様に、硫酸アンモニウムを添加し、湛水土壌を作成した。土壌表面は代かき状態となり、畑作物の苗立ちには大変厳しい条件となった。無処理と0.2molMo/kgのMoPKのみの場合と、MoPKに加えて0.1又は0.2molMg/kg相当のMgOを混合して、試験8aと同様に、大豆種子(フクユタカ)に被覆し(PVAは混合物重量の3%重)、同様に湛水土壌に播種して3日後の落水した場合の苗立ち割合を調べた。
0.2molMo/kgのモリブデン資材(MoO、MoPNH、MoPK)と、0〜10mol/kgの各種資材(名称は、表10a中にモリブデン資材の下に記載。電融MgOは、高温加熱してつくられた電融酸化マグネシウム(タテホ化学工業(株)製、電融マグネシア96)。)を混合し、風乾種子約2g相当の被覆した種子を10mlの水に入れて1日経過した後に、水溶液のpHを計測した。また、MoPKに加えて、ベントナイト又はタルクを併用して被覆した試験6dの種子についても同様に水に付けて、水溶液のpHを計測した。
Claims (10)
- モリブデン含有物、及びタングステン含有物からなる群より選択される第一の資材と、
pH調整作用によって当該第一の資材から供給される機能性成分の供給を調整する第二の資材(ただし、過酸化カルシウムは除く)と、が植物繁殖体の表面又は内部に付与された、植物繁殖体。 - 上記第二の資材は、室温での水に対する溶解割合が重量比1%以下の微溶性の資材である、請求項1に記載の植物繁殖体。
- 上記第二の資材が、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、ベントナイト、及びタルクからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項2に記載の植物繁殖体。
- 上記第一の資材は、金属モリブデン、三酸化モリブデン、モリブデン酸とその塩、モリブドリン酸とその塩、モリブドケイ酸とその塩、金属タングステン、三酸化タングステン、タングステン酸とその塩、タングストリン酸とその塩、タングストケイ酸とその塩、からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1から3の何れか一項に記載の植物繁殖体。
- 上記植物繁殖体はイネ科、又はマメ科の植物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物繁殖体。
- 植物繁殖体の苗立ちが向上する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の植物繁殖体。
- 上記植物繁殖体は種子である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の植物繁殖体。
- 請求項1から7の何れか一項に記載の植物繁殖体を植え付ける植付工程を包含する、植物繁殖体の栽培方法。
- 上記植付工程以降から苗立ち期の間に、植物体の少なくとも一部が湛水状態となる期間を有する、請求項8に記載の栽培方法。
- 酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、及び炭酸亜鉛からなる群より選択される少なくとも一種が植物繁殖体の表面又は内部に付与されるとともに、モリブデン含有物、及びタングステン含有物からなる群より選択される資材が植物繁殖体の表面又は内部に付与されていない、植物繁殖体。
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