以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る田植機の田植機の苗載台分割構造を、田植機の一例である乗用田植機に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態で例示する乗用田植機は、走行車体1の後部にリンク機構2を油圧式の昇降シリンダ3の作動で上下揺動するように連結し、このリンク機構2の後端下部に8条用の苗植付装置4をローリング可能に連結して8条植え用に構成している。
走行車体1は、車体フレーム5の前部に搭載したエンジン6からの動力を、主変速装置として備えた静油圧式無段変速装置(図示せず)、及び、トランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)7に副変速装置として内蔵したギア式変速装置(図示せず)、などを介して左右の前輪8及び左右の後輪9に伝達する4輪駆動型に構成している。エンジン6の後方には、前輪操舵用のステアリングホイール10及び運転座席11などを配備して搭乗運転部12を形成している。走行車体1における前部の左右両横側方箇所には、4枚の予備苗を上下方向に所定間隔をあけて載置する予備苗載装置13を立設している。
図1〜5に示すように、苗植付装置4は、リンク機構2に連結する動力分配ケース14、8条分のマット状苗を載置することが可能な状態に8条分の苗載面15aを区画形成した苗載台15、苗載台15を一定ストロークで左右方向に往復移動させる横送り機構16、苗載台15が左右のストローク端に達するごとに苗載台上の各マット状苗を苗載台15の下端に向けて所定ピッチで縦送りする苗縦送り機構17、苗載台15に載置した各マット状苗の下端から所定量ずつの苗を切り取って圃場の泥土部に植え付けることが可能な状態に左右方向に一定間隔をあけて配置した8基のロータリ式の植付機構18、及び、走行車体1の走行に伴って圃場を滑走することにより苗植え付け予定箇所などの圃場泥面を整地する5つの整地フロート19、などを植付フレーム(支持フレーム)20に装備して最大8条の苗の植え付けを行えるように構成している。
動力分配ケース14には、T/Mケース7が出力する植え付け作業用の動力を受け取って、横送り機構16、苗縦送り機構17、及び、各植付機構18に分配供給する動力分配機構(図示せず)を内蔵している。
植付フレーム20は、苗植付装置4の前下部に左右向きに配備した角パイプ状の主支持部材21、苗載台15の上部側を左右方向に往復移動可能な状態で支持するように主支持部材21に前傾姿勢で立設した門型の苗載台支持フレーム(上部側支持部材)22、及び、左右方向に一定間隔をあけた状態で主支持部材21から後方に向けて延出した支持部材兼用の4つの植付伝動ケース23、などから構成している。
図1〜10、図13〜16、図19及び図23に示すように、苗載台15と植付フレーム20との間には、苗植え付け作業時に、苗載面15aと交差する方向への苗載台15の変位を阻止した状態で苗載台15を左右方向に移動案内する上側ガイド機構24と下側ガイド機構25とを備えている。
上側ガイド機構24は、苗載台15における背面の上部側に苗載台15の左右両端部にわたる左右向き姿勢で固定した断面形状が下向きU字状の上側被支持部材(係合部材)26、苗載台支持フレーム22の上端部に左右方向に所定間隔をあけた状態で苗載台15の下部側部分に沿う前傾姿勢で配備した6本の支軸27、及び、各支軸27の上端部に相対回転可能に外嵌装備した6個の上側回転体28、などを備えている。そして、上側被支持部材26の左右両端にわたる状態で上側被支持部材26に備えた係合溝26aに各上側回転体28が係入するように各上側回転体28に対して上側被支持部材26を上方から外嵌することにより、各上側回転体28が上側被支持部材26の苗載面15aと交差する方向への変位を阻止しながら左右方向への移動を許容する状態が得られるようにしている。これにより、上側ガイド機構24を、苗植え付け作業時に苗載面15aと交差する方向への苗載台15の変位を阻止しながら苗載台15を左右方向に移動案内する状態に構成している。
下側ガイド機構25は、苗載台15における背面の下部側に苗載台15の左右両端部にわたる左右向き姿勢で固定したアルミ押出材からなる下側被支持部材(係合部材)29、及び、下側被支持部材29の下方からの受け止め支持が可能な左右向き姿勢で所定の植付伝動ケース23に支持させたアルミ押出材からなる支持部材30、などを備えている。支持部材30は、苗載台15に載置したマット状苗の受け止め支持に使用する第1支持部30a、及び、下側被支持部材29の受け止め支持に使用する第2支持部30b、などを備えている。第1支持部30aは、左右方向に植付機構18の配置間隔と同じ一定間隔をあけた所定位置に、各植付機構18による苗の取り出しを可能にする8つの苗取出口30cを形成している。第2支持部30bは、苗載面15aと直交する支軸31を支点にして左右方向に回転する7個の移動用回転体32を、左右方向に所定間隔をあけて並ぶように配置した状態で装備している。そして、これらの移動用回転体32を介して下側被支持部材29を左右方向に移動可能に支持するように構成している。又、下側被支持部材29の下面側には、各移動用回転体32に対する下側被支持部材29の左右方向への移動を許容し、かつ、各移動用回転体32の回転軸心に沿う方向(苗載面15aと交差する方向)への変位を阻止する状態に各移動用回転体32に上方から係合する第1係合溝29aを形成している。これらにより、下側ガイド機構25を、苗植え付け作業時に苗載面15aと交差する方向への苗載台15の変位を阻止しながら苗載台15を左右方向に円滑に移動案内する状態に構成している。そして、第1係合溝29aにより、下側被支持部材29と各移動用回転体32との移動用回転体32の回転軸心に沿う方向への変位を阻止する変位阻止手段33を構成している。
図1〜12に示すように、苗載台15は、6条分の苗載面15aを区画形成した右側の主苗載部15Aと、2条分の苗載面15aを区画形成した左側の分割苗載部15Bとに左右に分割可能な2分割構造に構成している。そして、主苗載部15Aと分割苗載部15Bとを、主苗載部15Aに対する分割苗載部15Bの左右方向への摺動変位と上下方向への揺動変位とを許容する状態に連結機構34を介して連結することにより、主苗載部15Aと分割苗載部15Bとを左右に連接した作業状態と、作業状態よりも苗載台15の左右幅を狭くした収納状態とに切り換え可能な分割収納式に構成している。
図1、図2及び図4〜12に示すように、連結機構34は、左右向き姿勢で主苗載部15Aの左端部から左外方に延出する状態に主苗載部15Aに固定した断面形状がコの字状の固定部材35と、固定部材35に左右方向への摺動が可能は状態で内嵌する左右向き姿勢で断面形状がコの字状の可動部材36とを備えている。固定部材35は、その延出端部である左端部に苗載台15の下部側部分に沿う前傾姿勢の支軸37を装備している。可動部材36は、固定部材35との連結側である右側部分に左右向きの長孔36aを形成している。又、その左端部に、苗載台15の下部側部分に沿う前傾姿勢の支軸38を介して分割苗載部15Bを枢支連結している。そして、固定部材35に装備する支軸37を、可動部材36に形成した上下の長孔36aに挿通して固定部材35に固定することにより、固定部材35に対する可動部材36の左右摺動と支軸37を支点にした起伏揺動とが可能な状態に固定部材35と可動部材36とを連結している。
これにより、連結機構34は、その固定部材35に対する可動部材36の左右摺動によって分割苗載部15Bを左右方向に摺動変位させ、かつ、固定部材35に対する可動部材36の支軸37を支点にした起伏揺動によって分割苗載部15Bを上下方向に揺動変位させるように構成している。そして、この構成から、苗載台15の収納状態では、分割苗載部15Bが主苗載部15Aと平行な姿勢で主苗載部15Aの苗載面15aの上方に重なるように主苗載部側に寄せ上げられて所定の収納位置に位置する状態となり、これにより、作業状態よりも苗載台15の左右幅を狭くすることができる。
連結機構34には、分割苗載部15Bを所定の収納位置に位置させるための分割苗載部15Bの適正揺動支点位置P1と適正揺動操作位置P2とを設定している。適正揺動支点位置P1は、主苗載部15Aの分割端よりも機体横外側の位置に設定してあり、この位置に連結機構34の支軸37を配備している。適正揺動操作位置P2は、支軸37との当接により可動部材36の左外方への摺動を制限する当接部aである可動部材36の各長孔36aの右端部aが支軸37に当接したときに得られる分割苗載部15Bの左摺動限界位置に設定している。
つまり、主苗載部15Aに連接する分割苗載部15Bを、可動部材36の各長孔36aの右端部aが支軸37に当接する適正揺動操作位置P2まで左外方に摺動変位させた後、適正揺動支点位置P1に位置する支軸37を支点にして上方に揺動変位させることにより、分割苗載部15Bを所定の収納位置に位置させることができるように構成している。
図1〜10に示すように、主苗載部15Aの分割端には、その上部側に位置する第1接続部材41、上下中間部に位置する第2接続部材42、下部側の表面側に位置する第3接続部材43、及び、下部側の裏面側に位置する第4接続部材44を備えている。分割苗載部15Bの分割端には、その上部側に位置する第1接続部材45、上下中間部に位置する第2接続部材46、下部側の表面側に位置する第3接続部材47、及び、下部側の裏面側に位置する第4接続部材48を備えている。
主苗載部15Aの第1接続部材41と第2接続部材42と第4接続部材44には、位置決め孔41a,42a,44aを形成している。分割苗載部15Bの第1接続部材45と第2接続部材46と第4接続部材48には、右方に突出する位置決めピン45a,46a,48aを備えている。そして、主苗載部15Aの各位置決め孔41a,42a,44aに分割苗載部15Bの対応する位置決めピン45a,46a,48aを挿通することにより、分割苗載部15Bを、主苗載部15Aと左右に連接する状態となる所定の作業位置に位置決めすることができる。
苗載台15には、その作業状態において主苗載部15Aの第1接続部材41と分割苗載部15Bの第1接続部材45とを連結する第1ロック機構51、主苗載部15Aの第2接続部材42と分割苗載部15Bの第2接続部材46とを連結する第2ロック機構52、主苗載部15Aの第3接続部材43と分割苗載部15Bの第3接続部材47とを連結する第3ロック機構53、及び、主苗載部15Aの第4接続部材44と分割苗載部15Bの第4接続部材48とを連結する第4ロック機構54を備えている。
第1ロック機構51は、主苗載部15Aの第1接続部材41に備えた溶接ナット55に、分割苗載部15Bの第1接続部材45に備えたハンドル付きの長尺ボルト56を螺合して、主苗載部15Aの第1接続部材41に分割苗載部15Bの第1接続部材45を接合保持した状態をロック状態とする螺合式に構成している。
第2ロック機構52は、主苗載部15Aの第2接続部材42に備えた被挟持部位42Aと、分割苗載部15Bの第2接続部材46に備えた被挟持部位46Aとを、主苗載部15Aの第2接続部材42に上下揺動可能に備えた断面U字状の板バネからなるロック具57により挟持して、主苗載部15Aの第2接続部材42に分割苗載部15Bの第2接続部材46を接合保持した状態をロック状態とする挟持式に構成している。
第3ロック機構53は、主苗載部15Aの第3接続部材43に備えた被挟持部位43Aと、分割苗載部15Bの第3接続部材47に備えた被挟持部位47Aとを、主苗載部15Aの第3接続部材43に上下揺動可能に備えた断面U字状の板バネからなるロック具58により挟持して、主苗載部15Aの第3接続部材43に分割苗載部15Bの第3接続部材47を接合保持した状態をロック状態とする挟持式に構成している。
第4ロック機構54は、主苗載部15Aの第4接続部材44に備えた溶接ナット59に、分割苗載部15Bの第4接続部材48に備えたハンドル付きの長尺ボルト60を螺合して、主苗載部15Aの第4接続部材44に分割苗載部15Bの第4接続部材48を接合保持した状態をロック状態とする螺合式に構成している。
図1〜10、図17及び図18に示すように、主苗載部15Aにおける表面側の左端部には、分割苗載部15Bの上部側を所定の収納位置にて受け止め支持する上側支持フレーム61と、分割苗載部15Bの下部側を所定の収納位置にて受け止め支持する下側支持フレーム62とを立設している。下側支持フレーム62には、分割苗載部15Bを所定の収納位置にて固定保持するロック機構63を備えている。ロック機構63は、分割苗載部15Bを所定の収納位置に係合保持するロック位置と、分割苗載部15Bの所定の収納位置からの変位を許容するロック解除位置とにわたって揺動操作可能な門型の係合部材64、係合部材64との当接により係合部材64の揺動範囲をロック位置とロック解除位置との間に制限するコの字状の当接部材65、及び、係合部材64のロック位置とロック解除位置との切り換え保持が可能となる状態に係合部材64と当接部材65とに掛け渡したトグルバネ66、などにより構成している。そして、この構成では、当接部材65がバネ受け部材を兼ねることにより、部品点数の削減及び構成の簡素化などを図ることができる。
図2、図5〜10及び図13〜16に示すように、下側ガイド機構25において、各移動用回転体32は、支持部材30の第2支持部30bにおける各移動用回転体32の配置箇所に配備した第1支持具67及び第2支持具68を介して支持部材30の第2支持部30bに装備している。各第1支持具67及び第2支持具68は、対応する移動用回転体32が入り込む凹部67A,68Aを備え、第1支持具67に溶接した移動用回転体支持用の支軸31を介して、対応する第1支持具67と第2支持具68とを嵌合状態で連結することにより、対応する移動用回転体32の下部側を下方から覆う状態となるカバー69を構成するように形成している。これにより、植え付け作業時に撥ね上がった圃場の泥土が各移動用回転体32に付着することを防止している。
各第1支持具67及び第2支持具68は、支持部材30に対する下方からのボルト連結によって支持部材30の第2支持部30bに共締め連結している。つまり、作業空間を確保し難い支持部材30の上方側ではなく、作業空間を確保し難い支持部材30の下方側を利用して、支持部材30に対する下方からのボルト連結によって支持部材30の第2支持部30bに各第1支持具67及び第2支持具68を固定するようにしているのであり、これにより、支持部材30の第2支持部30bに対する各移動用回転体32及び各支持部材67,68の組み付け性、及び、移動用回転体32などに対するメンテナンス性を向上させることができる。又、支持部材30の第2支持部30bに対応する第1支持具67と第2支持具68とを共締め連結することにより、連結部品の削減及び連結構造の簡素化を図ることができる。
支持部材30の第2支持部30bにおける各移動用回転体32の配置箇所には、対応する移動用回転体32の上端部を露出させる矩形状の開口30dを形成している。そして、各開口30dから露出する各移動用回転体32の上端部に、下側被支持部材29の第1係合溝29aを係合させている。
支持部材30の第2支持部30bにおいて、各開口30dの左右に位置して各開口30dの左右の側縁を形成する各側縁形成箇所30eは、各開口30dから上端部が露出する移動用回転体32の外周面に付着した異物を掻き落とすスクレーパSとして機能するように移動用回転体32の上端部に近接させている。これにより、植え付け作業時に撥ね上がって各移動用回転体32に付着した圃場の泥土などの異物を掻き落とすことができ、各移動用回転体32に付着した泥土などの異物によって、各移動用回転体32の回転によって苗載台15が左右方向に往復移動する際の円滑性が損なわれることを防止することができる。
ちなみに、図14及び図15に示すように、各第1支持具67の上端部において、各第1支持具67が支持する移動用回転体32に向けて延出する左右一対の延出部67BをスクレーパSとして機能させるように構成してもよい。
図5〜10に示すように、各移動用回転体32及び各支持部材67,68の配置間隔は、全ての支持部材67,68が支持部材30の第2支持部30bに形成した各苗取出口30cと重なり合わないように、又、苗載台15が一定ストロークで左右方向に往復移動する間、全ての移動用回転体32が下側被支持部材29を下方から受け止め支持する状態が得られるように設定している。これにより、各苗取出口30cから苗を切り出す各植付機構18が各支持部材67,68に干渉することを回避することができる。又、植え付け作業時には、苗載台15が一定ストロークで左右方向に往復移動するにもかかわらず、苗載台15の下部側を、全ての移動用回転体32による支持状態で安定性良く支持することができる。
又、収納状態では、左端部の移動用回転体32が露出する状態となるように設定している。これは、収納状態では苗載台15を左右方向に移動させないことから苗載台15の安定性を優先させる必要がないことを考慮して、収納状態では左端部の移動用回転体32が露出する状態になるように、移動用回転体32の配置間隔をできるだけ広げた状態で各移動用回転体32を配備するようにしているのであり、これにより、植え付け作業時において、一定ストロークで左右方向に往復移動する苗載台15の下部側を、各移動用回転体32によって安定性良く支持することができる。
図5〜10及び図13〜16に示すように、各移動用回転体32は、苗載台15の苗縦送り方向での荷重を受け止め支持するように苗載台15の下部側に沿う姿勢で対応する第1支持具67及び第2支持具68に支持させている。つまり、各移動用回転体32により、苗載台15の苗縦送り方向での荷重を受け止めながら、苗載台15を安定性良く一定ストロークで左右方向に往復移動する状態に支持することができる。
各第2支持具68には、下側被支持部材29の上部側に左右向きに形成した第2係合溝29bに、苗縦送り方向と反対の方向への苗載台15の移動を規制する状態に係入する回転体からなる規制具70を、第1連結部材71を介して支持させている。又、第2係合溝29bに、苗載台15の苗載面15aと交差する方向の荷重を受け止める状態に係入する回転体からなる受具72を、第2連結部材73を介して支持させている。
上記の構成により、苗載台15が左右方向に円滑に往復移動する状態を維持しながら、植え付け作業時の振動などに起因した苗載台15の浮き上がりを防止することができ、各移動用回転体32による苗載台15の支持を、より安定性良くより確実に行うことができる。
又、苗載台15が左右方向に円滑に往復移動する状態を維持しながら、苗を縦送り可能に載置するために前傾姿勢で装備する苗載台15の支持を、各移動用回転体32と受具72とによってより安定した状態で支持することができる。
更に、移動用回転体32の支持部材である第2支持具68を、規制具70及び受具72を支持する支持具に使用することができ、これにより、規制具専用の支持具及び受具専用の支持具を備える場合に比較して部品点数の削減を図ることができる。
図13及び図15に示すように、支持部材30の第1支持部30aにおいて、マット状苗の床土が接触する箇所には、耐摩耗性の高いステンレス製の保護板74を装備するための凹部30fを形成している。保護板74は、第1支持部30aの各苗取出口形成箇所に苗取出ガイド(図示せず)を取り付ける皿小ネジ75などを利用して、苗取出ガイドとともに第1支持部30aに取り付けている。保護板74の各皿子ネジ挿通部74aは、皿子ネジ75の頭部を埋没させる埋没空間を確保するために下窄まり状で下方に突出形成している。第1支持部30aの凹部30fには、対応する保護板74の皿子ネジ挿通部74aを埋没させる埋没空間を確保するために下窄まり状で下方に突出形成した複数の皿子ネジ挿通部位30gを備えている。
上記の構成により、保護板取り付け用の専用のネジなどを備える場合に比較して部品点数の削減や取り付け構造の簡素化を図りながら、植え付け作業時における苗載台15の左右方向への往復移動に伴う保護板74に対するマット状苗の左右摺動に皿子ネジ75が支障を来たすことのない状態で、支持部材30の第1支持部30aに保護板74を簡単に取り付けることができる。そして、この取り付けによって、植え付け作業時における苗載台15の左右方向への往復移動に伴って支持部材30の第1支持部30aにマット状苗の床土が摺接することに起因した第1支持部30aの摩耗を防止することができる。
図3、図5〜9、図19及び図20に示すように、下側ガイド機構25の支持部材30は、苗載台15の収納状態への切り換えによって狭くなる苗載台15の左右幅に応じて、支持部材30の両端部を機体内側に折り畳み収納可能に構成している。具体的には、支持部材30は、収納状態に切り換えた苗載台15の左右幅と略同じ長さで左右中央に位置する固定部30Aと左右両端の可動部30Bとを備えている。そして、固定部30Aの左右両端部に左右の可動部30Bを、固定部30Aに対する各可動部30Bの左右方向への摺動変位と上下方向への揺動変位とを許容する状態に接続機構76を介して接続することにより、固定部30Aと左右の可動部30Bとを左右に連接した作業状態と、苗載台15と同様に作業状態よりも左右幅を狭くした収納状態とに切り換え可能に構成している。
各接続機構76は、固定部30Aに固定した第1屈曲板77と可動部30Bに固定した第2屈曲板78とを、第1屈曲板77に備えた溶接ナット79、第2屈曲板78に形成した左右向きの長孔78a、及び、ノブ付きボルト80を利用した連結構造により、収納状態では、左右の可動部30Bが苗載台15の裏面側に苗縦送り機構17などに干渉しない前上がりの機体内向き姿勢で位置するように構成している。
図1〜9に示すように、苗載台15の作業状態と収納状態との切り換えは、苗載台15を左側のストローク端に位置させた状態で行い、収納状態では、分割苗載部15Bの分割端に位置する苗載面15aが主苗載部15Aの分割端に位置する苗載面15aの上方に重なる状態で位置するように構成している。そのため、収納状態では、苗載台15の左右幅を、作業状態よりも約1面分の苗載面15aの左右幅を減少させた状態にすることができる。
図4〜10に示すように、苗載台15に装備する上側ガイド機構24の上側被支持部材26及び下側ガイド機構25の下側被支持部材29は、苗載台15と同様に、主苗載部15Aに装備する主被支持部26A,29Aと分割苗載部15Aに装備する分割被支持部26B,29Bとに分割可能な2分割構造に構成している。
そして、前述したように、苗載台15の作業状態と収納状態との切り換えは、苗載台15を左側のストローク端に位置させた状態で行い、又、分割苗載部15Bの揺動変位は、分割苗載部15Bを適正揺動操作位置P2に摺動変位させた後に行うように構成している。
そのため、上側被支持部材26及び下側被支持部材29の各分割被支持部26B,29Bは、苗載台15を左側のストローク端に位置させて分割苗載部15Bを適正揺動操作位置P2に摺動変位させた状態において、苗載面15aと交差する方向で上側回転体28又は移動用回転体32と対向する箇所に、上側回転体28又は移動用回転体32の苗載面15aと交差する方向への相対変位を許容する切欠部26b,29cを形成している。そして、これらの切欠部26b,29cにより、苗載台15の作業状態と収納状態との切り換え時に分割苗載部15Bの苗載面15と交差する方向への変位を許容する変位許容部81を構成している。
ちなみに、この苗載台15の分割構造において、苗載台15の収納状態は、主苗載台15Aに分割苗載台15Bを上側支持フレーム61と下側支持フレーム62とを介して載置固定するだけであることから、苗載台15の収納状態での横送り機構16による横送りが許容されている。そのため、誤操作などによって苗載台15の収納状態での横送り機構16による横送りが行われたとしても、その横送りによる苗載台15などの破損を回避することができる。
図1〜9に示すように、苗縦送り機構17は、各苗載面15aに備えたベルト式の縦送り部82、隣接する2つの縦送り部82を連動連結する4本の連動軸83、各連動軸83を駆動する駆動軸84、及び、駆動軸84から各連動軸83への伝動を個々に断続する4つの縦送りクラッチ85、などを備えて構成している。
苗縦送り機構17において、主苗載部15Aに配備する3つの連動軸83及び駆動軸84は、駆動軸84に各連動軸83を相対回転可能に外嵌した2重軸構造で、対応する連動軸83と駆動軸84との間に介装した縦送りクラッチ85の断続操作によって駆動軸84から各連動軸83への伝動を個々に断続することができるように構成している。分割苗載部15Aに配備する連動軸83は、苗載台15の作業状態において駆動軸84と同心上で左右に隣接し、それらの間に介装した縦送りクラッチ85の断続操作によって駆動軸84から連動軸83への伝動を断続するように構成している。そして、この分割苗載部15Aの連動軸83に対する縦送りクラッチ85は、苗載台15を作業状態から収納状態に切り換えるときに、苗縦送り機構17の主苗載部側と分割苗載部側との分割を可能にする分割機構を兼ねるように構成している。又、この縦送りクラッチ85の操作部85A、この縦送りクラッチ85に対する操作具としての操作レバー86、及び、操作レバー86を操作部85Aに操作可能に連係する連係ワイヤ87や操作アーム88などを備えた操作系89を、他の縦送りクラッチ85に対する操作レバー86及び操作系89と同様に主苗載部15Aに配備している。
これにより、専用の分割機構を装備する場合に比較して、部品点数の削減及び苗縦送り機構17の分割に関する構造の簡素化などを図ることができる。又、専用の分割機構を装備する場合には、分割苗載部15Aの連動軸83に対する縦送りクラッチ85の全体、及び、この縦送りクラッチ85に対する操作系89を分割苗載部側に配備しなければならないことから、苗載台15の収納状態への切り換えを可能にするために、連係ワイヤ87の長さを長くする、あるいは、連係ワイヤ87の配索に工夫を凝らす、といった対策を講じる必要があるが、上記の構成では、このような対策を不要にすることができる。
図1〜4、図9、図10、図21及び図22に示すように、植付フレーム20における主支持部材21の左右両端部には、下側ガイド機構25を保護する左右の保護部材90の取り付けを可能にする平面視L字状の取付板91を装備している。各保護部材90は、横向きのJ字状に形成した保護パイプ90Aと、保護パイプ90Aの屈曲箇所に近い側の端部に溶接した連結板90Bとを備えている。各連結板90Bには、取付板91への取り付け用として第1〜3の取付孔90a〜90cを形成している。各取付板91は、前後に面する保護部材取付部91Aを備え、この保護部材取付部91Aに、保護部材90の第1取付孔90aに対応する第1取付孔91aと、保護部材90の第2取付孔90b及び第3取付孔90cに対応する第2取付孔91bとを形成している。
保護部材90は、その第1取付孔90aと取付板91の第1取付孔91aとを利用して取付板91にボルト連結し、この連結に使用した前後向きのボルト92を支点にして揺動変位させることにより、保護パイプ90Aが下側ガイド機構25の横外側に張り出して下側ガイド機構25を保護する状態となる保護位置と、保護パイプ90Aが機体内側に下向き姿勢で収納されてスタンドとしての使用が可能となる収納位置とに切り換えることができる。そして、保護位置では、保護部材90の第2取付孔90bが取付板91の第2取付孔91bに連通するようになっており、連通するこれらの取付孔90b,91bを利用して取付板91にボルト連結することにより、保護位置に固定保持することができる。又、収納位置では、保護部材90の第3取付孔90cが取付板91の第2取付孔91bに連通するようになっており、連通するこれらの取付孔90c,91bを利用して取付板91にボルト連結することにより、収納位置に固定保持することができる。
つまり、苗載台15の作業状態では、保護部材90を保護位置に固定保持することにより、保護部材90によって下側ガイド機構25を保護することができる。そして、苗載台15の収納状態では、保護部材90を収納位置に固定保持することにより、苗載台15の左右幅とともに保護部材90の左右幅を減少させることができ、しかも、保護部材90を苗載台15のスタンドとして使用することが可能になり、トラックによる輸送や納屋への収納などの面において有利にすることができる。
ちなみに、保護部材90の左右幅を減少させる必要のない6条植え用以下の苗植付装置4においては、図23に示すように、左右の各取付板91において、左右に面する保護部材取付部91Bに、保護部材90の第1取付孔90aに対応する第1取付孔91aと、保護部材90の第2取付孔90b及び第3取付孔90cに対応する第2取付孔91bとを形成し、保護部材90の第1取付孔90aと取付板91の第1取付孔91aとを利用して保護部材90と取付板91とをボルト連結する際に使用した左右向きのボルト93を支点にして、保護部材90を、下側ガイド機構25を保護する保護位置と、スタンドとして使用することが可能な収納位置とに切り換え可能に構成してもよい。
図1、図2、図10及び図21に示すように、苗植付装置4の左右両側部には、植え付け作業時に次回の走行基準線を圃場の泥面に形成する線引きマーカ94を装備している。各線引きマーカ94は、植付フレーム20における主支持部材21の左右両端部に備えたマーカ支持部材95に、前後向きの支軸96を介して、苗植付装置4の横外方に張り出して圃場の泥面に走行基準線を形成する作用位置と、苗植付装置4に近接した状態で起立する収納位置とにわたる揺動操作が可能な状態で連結している。又、線引きマーカ94の揺動支点部を形成する連係アーム94Aとマーカ支持部材95とに掛け渡した引っ張りバネ97によって作用位置に揺動付勢している。各連係アーム94Aの上端部には、苗植付装置4の非作業位置への上昇揺動に連動した各線引きマーカ94の引っ張りバネ97の揺動付勢に抗した収納位置への引き上げ操作が可能となるようにレリーズワイヤ98を介してリンク機構2に連係している。
各マーカ支持部材95には、各連係アーム94Aの上端部に備えたローラ99との係合により、対応する線引きマーカ94を作用位置と収納位置との間の待機位置に保持するフック状の保持具100を上下揺動可能に装備している。又、保持具100を下方に揺動付勢する捻りバネ101、及び、保持具100との当接により捻りバネ101の揺動付勢による保持具100の下方への揺動をローラ99に対する係合位置に制限する当接部95aを備えている。各保持具100の遊端部には、線引きマーカ94が待機位置に向けて引き上げ操作される際に、ローラ99との摺接による、捻りバネ101の揺動付勢に抗した保持具100の係合位置から上方への揺動操作を可能にするカム部100aを備えている。又、手動による捻りバネ101の揺動付勢に抗した保持具100の係合位置から上方の係合解除位置への揺動操作が可能となるようにレリーズワイヤ102を介して解除操作具(図示せず)に連係している。
各ローラ99は、強度、弾性率、耐衝撃性に優れたポリアセタールを採用した樹脂製であり、これにより、ローラ99の耐久性を確保しながら、鉄製のローラを採用した場合に生じる錆付きに起因したローラの固着によって、手動でローラに対する保持具100の係合を解除する際の操作が重くなる不都合の発生を回避することができる。
各マーカ支持部材95の連係アーム94Aは、その揺動支点からレリーズワイヤ98との連係点までの距離L1を長くすることにより、苗植付装置4の非作業位置への上昇揺動に連動して線引きマーカ94が作用位置から収納位置に引き上げ操作される際の連係アーム94Aの操作ストロークL2が長くなるように構成している。これにより、苗植付装置4の上昇揺動に連動して線引きマーカ94が引き上げ操作される際の操作速度を遅くすることができる。又、その操作速度が遅くなることにより、レリーズワイヤ98におけるアウタワイヤ98Aとインナワイヤ98Bとの間での引っ掛かりを抑制することができる。その結果、線引きマーカ94の引き上げ速度が速いことに起因した線引きマーカ94による泥撥ねや、アウタワイヤ98Aとインナワイヤ98Bとの間の引っ掛かりが開放された直後の急激な線引きマーカ94の引き上げに起因した線引きマーカ94による泥撥ねを防止することができる。
図1、図2、図4、図10及び図24〜26に示すように、この乗用田植機は、左右の後輪9の内側への補助車輪103の装着が可能となるように構成している。そのため、植付フレーム20の主支持部材21における左右の補助車輪103の後方箇所には、補助車輪103の轍を均す補助整地板104の取り付けを可能にする取付板105を装備している。各取付板105には、補助整地板取り付け用の3つの取付孔105aを形成している。
各補助整地板104は、補助整地板104を支持する支持部材106に左右向きの支軸107を介して揺動可能に装備している。各支持部材106には、取付板105の各取付孔105aに対応する溶接ナット108を備えている。
上記の構成から、各補助整地板104は、取付板105の各取付孔105aと支持部材106の各溶接ナット108とを利用して、取付板105に支持部材106をボルト連結することにより、主支持部材21における左右の補助車輪103の後方箇所に補助車輪103の轍を均すことが可能な状態で組み付けることができる。
そして、上記の構成では、補助整地板104と支持部材106とをユニット化していることから、各支持部材106を植付フレーム20の主支持部材21に標準装備する場合に比較して、左右の補助車輪103を装備しない標準仕様における部品点数及びコストの削減を図ることができる。
図2、図10及び図27に示すように、苗植付装置4には、各整地フロート19の下降揺動を制限する連係ロッド109を備えている。各連係ロッド109は、各整地フロート19への泥の撥ね上がりを防止するために植付フレーム20の主支持部材21に装備した各泥除けカバー110に当接する第1当接部109aと、各整地フロート19の先端部に当接する第2当接部109bとを備えるコの字状に屈曲形成している。そして、第1当接部109aを、対応する泥除けカバー110に形成した係合孔110aに挿通し、第2当接部109bを、対応する整地フロート19の先端部に形成した係合孔19aに挿通することにより、対応する整地フロート19の下降揺動を制限する状態に組み付けることができる。
このように、各整地フロート19の下降揺動の制限をコの字状の連係ロッド109で行うことにより、整地フロート19の下降揺動を制限する上での部品点数の削減及び構造の簡素化を図ることができる。
尚、各連係ロッド109の組み付けは、各整地フロート19を植付フレーム20に組み付ける前に行うことにより、整地フロート19及び泥除けカバー110の係合孔19a,110aに対する連係ロッド109の各当接部109a,109bの挿通を簡単に行うことができ、その後、整地フロート19を植付フレーム20に組み付けることにより、整地フロート19及び泥除けカバー110の係合孔19a,110aからの連係ロッド109の各当接部109a,109bの抜け出しを阻止することができる。
〔別実施形態〕
〔1〕苗載台15としては、3分割に分割可能に構成したものであってもよい。又、主苗載部15Aに対する分割苗載部15Bの揺動変位のみで作業状態と収納状態との切り換えを行うように構成したものであってもよい。
〔2〕ガイド機構24,25としては、複数の回転体28,32を苗載台15に備え、係合部材26,29を支持フレーム20に備えたものであってもよい。
〔3〕変位許容部81としては、係合部材26,29を主苗載部15Aと分割苗載部15Bとに分割装備する場合には、分割苗載部15Bに装備する係合部材26B,29Bの左右幅の全体において回転体28,32と係合溝26a,29aとの苗載面15aと交差する方向への相対変位を許容する状態に形成したものであってもよい。
〔4〕分割苗載部15B、又は、支持フレーム20において分割苗載部15Bに対応する箇所に回転体28,32を配備しないことにより、変位許容部81を構成してもよい。