JP2013206585A - 有機膜の形成方法、有機el素子の製造方法、有機el表示パネル、有機el表示装置および有機el発光装置 - Google Patents

有機膜の形成方法、有機el素子の製造方法、有機el表示パネル、有機el表示装置および有機el発光装置 Download PDF

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Abstract

【課題】有機膜材料の塗布膜表面の不純物汚染を、可能な限りなくすことができる有機膜の形成方法等を提供する。
【解決手段】有機発光層16を構成する材料と溶媒とを含む有機発光層材料が塗布された基板11を準備する準備工程と、有機発光層材料塗布後の基板11を真空チャンバー内に載置し、真空チャンバーに接続された真空ポンプにより、当該真空チャンバー内を真空状態に維持する真空工程と、有機発光層材料塗布後の基板11を真空チャンバーから取り出し、有機発光層材料の塗布膜に付着した不純物26を、洗浄溶媒27を用いて除去する洗浄工程と、を含む。
【選択図】図5

Description

本発明は、有機膜の形成方法、有機EL素子の製造方法、有機EL表示パネル、有機EL表示装置および有機EL発光装置に関する。
近年、固体蛍光性物質の電界発光現象を利用した発光素子である有機EL素子の研究・開発が進んでいる。有機EL素子は自発光デバイスであるため、応答速度が速い、視野角が広い、コントラストが高い等の特徴を有する。有機EL素子は陽極および陰極の電極対の間に、キャリア(正孔と電子)の再結合による電界発光現象を行う有機発光層を積層して構成される。
上記有機発光層の成膜方法として塗布成膜法(例えば、特許文献1)が存在し、量産化の点で好ましいとされている。塗布成膜法では、有機発光層を構成する機能性材料と溶媒とを含む有機発光層材料をインクジェット法(液滴吐出法)等で基板に塗布し、有機発光層材料の塗布膜を乾燥させることにより有機発光層を形成する。また、有機発光層材料塗布後の基板は、真空ポンプにより真空状態に維持された真空チャンバー内に載置される。当該真空チャンバー内での載置期間は、塗布膜の乾燥期間や、有機発光層形成後から次工程を行うまでの保管期間等に相当する。
特開2009−267299号公報
有機発光層等の有機膜を構成する機能性材料と溶媒とを含む有機膜材料の塗布膜の表面においては、可能な限り不純物汚染がないようにすることが望ましい。
本発明は、有機膜材料の塗布膜表面の不純物汚染を、可能な限りなくすことができる有機膜の形成方法等の提供を目的とする。
本発明の一態様である有機膜の形成方法は、有機膜を構成する材料と溶媒とを含む有機膜材料が塗布された基板を準備する準備工程と、前記有機膜材料塗布後の基板を真空チャンバー内に載置し、前記真空チャンバーに接続された真空ポンプにより、当該真空チャンバー内を真空状態に維持する真空工程と、前記有機膜材料塗布後の基板を前記真空チャンバーから取り出し、前記有機膜材料の塗布膜に付着した不純物を、洗浄溶媒を用いて除去する洗浄工程と、を含む。
本発明の一態様である有機膜の形成方法によれば、有機膜材料の塗布膜に付着している不純物のうち、少なくとも真空工程を経たことが原因で付着した不純物を洗浄工程において除去することができる。
したがって、本発明の一態様によれば、有機膜材料の塗布膜表面を可能な限り不純物汚染なく維持することができる有機膜の形成方法を提供できる。
実施の態様に係る有機EL表示パネル10の構成を示す部分断面図である。 実施の態様に係る有機EL表示パネル10におけるバンク15の形状を示す模式平面図である。 実施の態様に係る有機EL表示パネル10の製造工程例を示す図である。 実施の態様に係る有機EL表示パネル10の製造工程例を示す図である。 実施の態様に係る有機EL表示パネル10の製造工程例を示す図である。 実施の態様に係る有機EL表示パネル10の製造工程例を示す図である。 実験に用いたメカニカルブースターポンプによる排気時間と真空チャンバー内の圧力との関係を示すグラフである。 真空工程を経ない有機EL素子の発光特性と、真空工程を経た有機EL素子の発光特性を示す図である。 酸化防止剤として用いられるジフェニルアミン系化合物の一例を示す図である。 ジフェニルアミン系化合物を原因とする、有機EL素子における発光強度半減寿命低下のメカニズムの一例を説明するための図である。 真空工程を経た有機発光層表面の付着物の分析結果を示す図である。 真空ポンプによる排気時間と真空チャンバー内の圧力との関係を示すグラフである。 図12に示すグラフにおける時刻A、時刻B、時刻Cにおける真空チャンバーと真空ポンプ内の様子を模式的に示す図である。 洗浄後の有機発光層表面の付着物の分析結果を示す図である。 洗浄時間を20[min]とした実験用有機EL素子の発光特性と、洗浄時間を3[min]とした実験用有機EL素子の発光特性と、洗浄時間を15[sec]とした実験用有機EL素子の発光特性を示す図である。 各実験用有機EL素子の発光写真を示す図である。 本発明の一態様に係る有機EL表示装置等を示す斜視図である。 本発明の一態様に係る有機EL表示装置1000の全体構成を示す図である。 本発明の一態様に係る有機EL発光装置200を示す図である。 フェノール系化合物を原因とする、有機EL素子における発光強度半減寿命低下のメカニズムの一例を説明するための図である。
≪本発明の一態様の概要≫
本発明の一態様に係る有機膜の形成方法は、有機膜を構成する材料と溶媒とを含む有機膜材料が塗布された基板を準備する準備工程と、前記有機膜材料塗布後の基板を真空チャンバー内に載置し、前記真空チャンバーに接続された真空ポンプにより、当該真空チャンバー内を真空状態に維持する真空工程と、前記有機膜材料塗布後の基板を前記真空チャンバーから取り出し、前記有機膜材料の塗布膜に付着した不純物を、洗浄溶媒を用いて除去する洗浄工程と、を含む。
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記洗浄溶媒は極性溶媒であり、前記塗布膜を溶解させることなく前記不純物を前記塗布膜から離間させる。
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記洗浄溶媒は、炭素数が4以下のアルコール系溶媒である。
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記アルコール系溶媒はメタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールのいずれか、またはこれらの混合溶媒である。
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記洗浄溶媒の沸点は前記不純物の沸点よりも低い。
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記洗浄工程において、
前記塗布膜と前記洗浄溶媒とを接触させている時間は3分以上である。
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記真空ポンプには、潤滑成分と当該潤滑成分の酸化を防止する第1酸化防止剤とを含む潤滑剤、および、樹脂材料と当該樹脂材料の酸化を防止する第2酸化防止剤とを含む真空シール材の少なくとも一方が用いられており、前記不純物は、前記第1および前記第2酸化防止剤の少なくとも一方である。
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記第1酸化防止剤は、前記潤滑成分の酸化の進行を停止させる第1連鎖停止剤であり、前記第2酸化防止剤は、前記樹脂材料の酸化の進行を停止させる第2連鎖停止剤である。
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記第1および第2連鎖停止剤はジフェニルアミン系化合物またはフェノール系化合物である。
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記洗浄工程は、さらに、前記不純物の除去に用いた洗浄溶媒を前記塗布膜から物理的に除去する除去工程を含む。
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記洗浄工程後、さらに、前記不純物の除去を終えた塗布膜の上に、真空成膜法に基づき機能膜を形成する機能膜形成工程を含む。
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記不純物は、ジフェニルアミン系化合物またはフェノール系化合物である。
本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法は、上面に第1電極が形成されているとともに、当該第1電極の上方に有機発光層を構成する材料と溶媒とを含む有機発光層材料が塗布された基板を準備する準備工程と、前記有機発光層材料塗布後の基板を真空チャンバー内に載置し、前記真空チャンバーに接続された真空ポンプにより、当該真空チャンバー内を真空状態に維持する真空工程と、前記有機発光層材料塗布後の基板を前記真空チャンバーから取り出し、前記有機発光層材料の塗布膜に付着した不純物を、洗浄溶媒を用いて除去する洗浄工程と、前記不純物の除去を終えた塗布膜の上方に第2電極を形成する第2電極形成工程と、を含む。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法の特定の局面では、前記洗浄溶媒は極性溶媒であり、前記塗布膜を溶解させることなく前記不純物を前記塗布膜から離間させる。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法の特定の局面では、前記洗浄溶媒は、炭素数が4以下のアルコール系溶媒である。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法の特定の局面では、前記アルコール系溶媒はメタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールのいずれか、またはこれらの混合溶媒である。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法の特定の局面では、前記洗浄溶媒の沸点は前記不純物の沸点よりも低い。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法の特定の局面では、前記洗浄工程において、前記塗布膜と前記洗浄溶媒とを接触させている時間は3分以上である。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法の特定の局面では、前記真空ポンプには、潤滑成分と当該潤滑成分の酸化を防止する第1酸化防止剤とを含む潤滑剤、および、樹脂材料と当該樹脂材料の酸化を防止する第2酸化防止剤とを含む真空シール材の少なくとも一方が用いられており、前記不純物は、前記第1および前記第2酸化防止剤の少なくとも一方である。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法の特定の局面では、前記第1酸化防止剤は、前記潤滑成分の酸化の進行を停止させる第1連鎖停止剤であり、前記第2酸化防止剤は、前記樹脂材料の酸化の進行を停止させる第2連鎖停止剤である。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法の特定の局面では、前記第1および第2連鎖停止剤はジフェニルアミン系化合物またはフェノール系化合物である。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法の特定の局面では、前記洗浄工程は、さらに、前記不純物の除去に用いた洗浄溶媒を前記塗布膜から物理的に除去する除去工程を含む。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法の特定の局面では、前記洗浄工程後であって前記第2電極形成工程の前に、さらに、前記不純物の除去を終えた塗布膜の上に、真空成膜法に基づき機能膜を形成する機能膜形成工程を含む。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法の特定の局面では、前記機能膜は電子輸送層である。
また、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法の特定の局面では、前記不純物は、ジフェニルアミン系化合物またはフェノール系化合物である。
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法により製造された有機EL素子を用いる。
本発明の一態様に係る有機EL表示装置は、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法により製造された有機EL素子を用いる。
本発明の一態様に係る有機EL発光装置は、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法により製造された有機EL素子を用いる。
≪実施の態様≫
[有機EL表示パネルの構成]
図1は、有機EL表示パネル10の構成を示す部分断面図である。有機EL表示パネル10は、同図上側を表示面とする、いわゆるトップエミッション型の有機EL表示パネルであり、その主な構成として、陽極12、有機発光層16、電子輸送層17、陰極18を備える。有機EL表示パネル10は、赤(R),緑(G),青(B)の何れかの発光色に対応する有機発光層16を有する有機EL素子を1つのサブピクセル100とし、サブピクセル100がマトリクス状に配設されている。
<基板11、陽極12、ITO層13>
基板11は有機EL表示パネル10の基材となる部分であり、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、またはアルミナ等の絶縁性材料で形成することができる。
図示していないが、基板11の表面には有機EL素子を駆動するためのTFT(薄膜トランジスタ)が形成されており、その上方に第1電極としての陽極12が形成されている。陽極12は、例えば、ACL(アルミニウム、コバルト、ランタンの合金)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)等で形成することができる。
ITO(酸化インジウムスズ)層13は、陽極12と正孔注入層14の間に介在し、各層間の接合性を良好にする機能を有する。
<正孔注入層14>
正孔注入層14は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)等の酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)等の導電性ポリマー材料からなる層である。上記のうち、酸化金属からなる正孔注入層14は、正孔を安定的に、または正孔の生成を補助して、有機発光層16に対し正孔を注入する機能を有する。
<バンク15>
正孔注入層14の表面には、有機発光層16の形成領域となる開口部15aを区画するためのバンク15が設けられている。バンク15は一定の台形断面を持つように形成されており、絶縁性の有機材料(例えばアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等)からなる。
図2は、有機EL表示パネル10におけるバンク15を示す模式平面図である。本実施の態様に係る有機EL表示パネル10では、一例としてラインバンク(ライン状のバンク)15を採用している。具体的には、バンク15は、各々がY軸方向に延伸形成され、X軸方向において隣接する各サブピクセル100間を区画している。そして、サブピクセル100は、バンク15により区画された領域ごとに、発光色が異なるように形成されており、例えば、Rのサブピクセル100(R),Gのサブピクセル100(G),Bのサブピクセル100(B)の3つのサブピクセルの組み合わせで1画素(1ピクセル)を構成する。
なお、図1に示す部分断面図は、図2におけるA−A’断面図に相当する。
<有機発光層16>
図1に戻り、バンク15の開口部15aにより区画された正孔注入層14の表面には、R,G,Bのいずれかの発光色に対応する、有機膜としての有機発光層16が形成されている。有機発光層16は、キャリアの再結合による発光を行う部位であり、R,G,Bのいずれかの色に対応する有機材料を含むように構成されている。
有機発光層16として用いることが可能な材料としては、例えば、F8−F6(F8(ポリジオクチルフルオレン)とF6(ポリジヘキシルフルオレン)との共重合体)のほか、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン、特許公開公報(特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質等が挙げられる。
本実施の態様に係る有機発光層16は後述する製造方法に基づいて形成されている。そのため、有機発光層16とその上に形成されている電子輸送層17との間には、製造工程において混入する不純物が少ない。したがって、後述する製造方法を経ない場合と比較して、不純物を原因とする有機発光層16の劣化が少なく、設定値に近い特性が得られるようになっている。これとともに、不純物による、有機発光層16の上に形成されている電子輸送層17へ与える影響も低減することができる。その結果、本実施の態様に係る有機発光層16は発光特性が良好である。
<電子輸送層17>
電子輸送層17は、第2電極としての陰極18から注入された電子を有機発光層16へ輸送する機能を有する。電子輸送層17は電子輸送性を有する材料(電子輸送性材料)で構成されており、このような材料としては、例えば、ニトロ置換フルオレノン誘導体、チオピランジオキサイド誘導体、ジフェキノン誘導体、ペリレンテトラカルボキシル誘導体、アントラキノジメタン誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリノン誘導体、キノリン錯体誘導体(いずれも特開平5−163488号公報に記載)等が挙げられる。
<陰極18>
トップエミッション型有機EL表示パネルを実現するため、本実施の態様において電子輸送層17の上に形成された陰極18は、例えば、ITO、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の光透過性を有する導電性酸化物材料で形成されている。
<封止層19>
陰極18の上に形成された封止層19は、有機EL表示パネル10内に浸入した水分又は酸素から有機発光層16および陰極18を保護するために設けられている。有機EL表示パネル10はトップエミッション型であるため、封止層19には、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)等の光透過性材料が採用されている。
<その他>
特に図示していないが、封止層19の上方には、基板11と対向する封止基板が設けられる。さらに、封止層19と封止基板とでできる空間に、絶縁性材料を充填することとしてもよい。このようにすることで、有機EL表示パネル10内に水分又は酸素が浸入するのを防ぐことができる。有機EL表示パネル10はトップエミッション型であるため、絶縁性材料としては、SiN、SiON等の光透過性材料を選択する必要がある。
また、正孔注入層14と有機発光層16との間に、正孔注入層14から有機発光層16への正孔の輸送を促進させる機能を有する正孔輸送層を、さらに形成することとしてもよい。正孔輸送層として用いることが可能な材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ブタジエン化合物、ポリスチレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンジン誘導体が挙げられる(いずれも特開平5−163488号公報に記載)。
さらに、電子輸送層17と陰極18の間に、陰極18から電子輸送層17への電子注入を促進させる機能を有する電子注入層を形成することとしてもよい。電子注入層として用いることが可能な材料としては、例えば、バリウム、フタロシアニン、フッ化リチウム等が挙げられる。
[有機EL表示パネルの製造方法]
図3〜6は、実施の態様に係る有機EL表示パネル10の製造工程例を示す図である。これらの図を参照しながら、有機EL表示パネル10の製造方法について説明する。
<準備工程>
はじめに、上面に陽極12が形成されているとともに、陽極12の上方に有機発光層16を構成する材料と溶媒とを含む有機発光層材料が塗布された基板11を準備する準備工程を行う。図3(a)〜図4(a)は準備工程に相当する。
まず、図3(a)に示すように、基板11をスパッタ成膜装置の成膜容器内に載置する。そして成膜容器内に所定のスパッタガスを導入し、反応性スパッタ法、真空蒸着法等に基づき陽極12を成膜する。
引き続き上記の成膜容器内で、図3(b)に示すようにスパッタ法に基づき陽極12上にITO層13を形成する。次に、ITO層13の各表面を含む基板11の表面に対し、スパッタリング法等を用い金属膜を製膜する。その後、形成された金属膜を酸化することにより、正孔注入層14が形成される。
次に、図3(c)に示すようにバンク15を形成する。バンク材料として、例えば感光性のレジスト材料、好ましくはフッ素系材料を含有するフォトレジスト材料を用意する。このバンク材料を正孔注入層14上に一様に塗布し、プリベークした後、開口部15aを形成できるようなパターンを有するマスクを重ねる。そして、マスクの上から感光させた後、未硬化の余分なバンク材料を現像液で洗い出す。最後に純水で洗浄することでバンク15が完成する。
なお、バンク15を形成する工程の後であって有機発光層16を形成する工程の前に、必要に応じて正孔輸送層を形成する。正孔輸送層は、例えば、この後に述べる有機発光層16と同様に、塗布成膜法により形成することができる。
そして、図4(a)に示すように、バンク15の開口部15a(図3(c))に対し、インクジェット法に基づき、有機発光層を構成する材料および溶媒を含んでなる有機発光層材料16aを滴下する。以上で、上面に陽極12が形成されているとともに、陽極12の上方に有機発光層16を構成する材料と溶媒とを含む有機発光層材料が塗布された基板11を準備できた。なお、有機発光層材料16aの滴下方法はインクジェット法に限定されず、例えば、グラビア印刷法、ディスペンサー法、ノズルコート法、凹版印刷、凸版印刷等であってもよい。
ここで、「陽極の上方に有機発光層を構成する材料と溶媒とを含む有機発光層材料が塗布された基板」には、陽極の上に直接的に有機発光層材料が塗布されている基板だけでなく、陽極の上に間接的に有機発光層材料が塗布されている基板も含むこととする。すなわち、陽極と塗布された有機発光層材料の間に他の層を含んでいることとしてもよい。本実施の態様の準備工程において準備した基板は、陽極12と有機発光層材料16aと間に、ITO層13および正孔注入層14を含んでいる。
<乾燥工程>
真空工程としての乾燥工程(図4(b))では、有機発光層材料16a塗布後の基板11を真空チャンバー内に載置し、真空チャンバーに接続された真空ポンプにより、真空チャンバー内を真空状態に維持する。真空ポンプとしては、例えば、メカニカルブースターポンプ、ロータリーポンプ、ダイアフラムポンプ等の機械式の真空ポンプを用いることができる。これらの中でも、特に、いわゆるポンプ油を使用しないドライポンプを用いることがより望ましい。ドライポンプは、例えば半導体薄膜製造等のように、真空チャンバー内をクリーンに保つ必要がある場合に使用される。なお、これら真空ポンプには、通常、潤滑剤や真空シール材が用いられている。
ここで、「真空チャンバー内を真空状態に維持する」とは、真空チャンバー内が完全に真空となるように維持する場合だけでなく、真空チャンバー内が真空と見なせる状態に維持する場合も含まれる。「真空チャンバー内が真空と見なせる状態」とは、真空チャンバーの内圧が、例えば約1[Pa]以下である状態をいう。
この乾燥工程により、基板11上方に形成されている有機発光層材料16aの塗布膜を乾燥させる。塗布膜が乾燥すると、有機発光層16が形成される(図4(b))。
<洗浄工程>
洗浄工程は、本発明者が鋭意検討の結果得た知見に基づき、従来の有機EL素子の製造方法に追加して行うものである。得た知見の詳細は後の[各種実験と考察]で述べるが、図4(c)に示すように、乾燥工程(図4(b))を経ることにより、有機発光層材料16aの塗布膜に、乾燥工程で用いた真空ポンプ由来の不純物26が付着するおそれがあることが判明した。ここで、不純物26が付着する対象である「有機発光層材料16aの塗布膜」としては、乾燥工程を経ることで成膜された有機発光層16、または、乾燥途中の有機発光層材料16aの塗布膜が考えられる。本実施の態様においては、「有機発光層材料16aの塗布膜」が、乾燥工程を経ることにより形成された有機発光層16であるとして説明する。
そこで、本洗浄工程では、有機発光層材料16a塗布後の基板11、すなわち有機発光層16成膜後の基板11を真空チャンバーから取り出し、図5(a)に示すように、真空ポンプから真空チャンバーへ飛散し有機発光層16に付着した不純物26を、洗浄溶媒27を用いて除去する。
洗浄溶媒27は、不純物26に対する相互作用が、有機発光層16よりも高いものである必要がある。つまり、有機発光層16の不純物26に対する相互作用よりも、洗浄溶媒27の不純物26に対する相互作用の方が強い。本実施の態様においては洗浄溶媒27として、炭素数4以下のアルコール系溶媒、例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールまたはこれらの混合溶媒等を用いている。有機発光層16と洗浄溶媒27とを接触させる方法は、特に限定されるものではないが、例えばバンク15により区画された領域に洗浄溶媒27を滴下する方法等が考えられる。
有機発光層16と洗浄溶媒27とを接触させることで、不純物26は有機発光層16から離間される。そして、離間された不純物26は洗浄溶媒27中に溶解または分散する(図5(b))。有機発光層16と洗浄溶媒27とを接触させている時間は3[min]以上が望ましい。有機発光層16と洗浄溶媒27とを接触させている時間の上限は特に限定されないが、有機EL素子の製造効率に鑑みて30[min]以下が望ましい。
次に、不純物26の除去に用いた洗浄溶媒27を有機発光層16から物理的に除去する除去工程を行う。真空ポンプ由来の不純物26が塗布膜へ付着するのを防ぐため、洗浄溶媒27の除去は真空工程(図4(b))によらずに行う。真空工程によらない洗浄溶媒27の物理的な除去方法としては、例えば、不純物26の除去を終えた基板11を載置台上に載置し、載置台を回転させることで生じた遠心力により除去する方法(スピンコーターによる除去)、不純物26の除去を終えた基板11を傾ける方法、不純物26の除去を終えた基板11に風を当てることで生じた風圧により除去する方法等が挙げられる。
以上、図5(a)〜(b)に示す洗浄工程を経ることで、有機発光層16に付着していた不純物26が除去される。これにより、図5(c)に示すように、有機発光層材料16aの塗布膜としての有機発光層16の表面には、少なくとも真空ポンプ由来の不純物26は付着していない状態となる。したがって、少なくとも、真空ポンプ由来の不純物26が付着した有機発光層16の上面に他の層(本実施に態様においては電子輸送層である。)が積層されることはない。
なお、有機発光層16については、その表面に不純物26が付着したままで放置されたとしても、通電が行われない限りは有機発光層16に悪影響は非常に小さいと考えられる。この理由として、有機発光層16の表面近傍では、単に不純物26が物理的に吸着しているだけで、有機発光層16を構成する材料と不純物との反応は起こっていないと考えられること等が挙げられる。
<電子輸送層形成工程>
図6(a)は、機能膜形成工程としての電子輸送層形成工程を示しており、本工程は洗浄工程後であって陰極18を形成する工程の前に行われる。電子輸送層形成工程では、不純物の除去を終えた塗布膜としての有機発光層16の上に、真空成膜法に基づき機能膜としての電子輸送層17を形成する。具体的には、例えば真空蒸着法やスパッタ法等の真空成膜法に基づき、有機発光層16の上面に電子輸送層17を構成する材料を成膜することにより、電子輸送層17を形成する。
ここで、洗浄溶媒27は、真空成膜法に基づく真空成膜工程における真空状態下で除去可能な程度の、低い沸点を有することがより望ましい。洗浄溶媒27を真空成膜工程における真空下にさらすことにより、除去工程において洗浄溶媒27を除去し切れなかった場合であっても、不純物26の除去を終えた基板が真空成膜装置内に載置されることで、この残留した洗浄溶媒27をほぼ完全に除去することが可能である。また、電子輸送層形成工程においては、成膜容器内の圧力に占める電子輸送性材料の蒸気圧の割合はかなり高く、不純物の蒸気圧の割合は略0[%]である。したがって、真空成膜装置が備える真空ポンプ由来の不純物が有機発光層16の表面に付着するおそれはない。さらに、真空成膜工程においては、機械式ポンプではなく、例えばクライオポンプ等の非機械式ポンプを使用することが望ましい。このようにすることで、真空ポンプ由来の不純物がそもそも成膜容器へ拡散することを防止できる。
なお、電子輸送層17を形成する工程の後であって陰極18を形成する工程の前に、必要に応じて電子注入層を形成する。電子注入層は、例えば、真空蒸着法やスパッタ法等の真空成膜法に基づき、電子注入性を有する材料を成膜することにより形成可能である。
<陰極形成工程>
図6(b)に示すように、陰極形成工程では、不純物の除去を終えた塗布膜としての有機発光層16の上方に、真空蒸着法、スパッタ法等の真空成膜法基づき、ITO、IZO等を成膜することにより陰極18を形成する。
ここで、「不純物の除去を終えた塗布膜の上方に陰極を形成する」には、不純物の除去を終えた塗布膜の上に直接的に陰極を形成する場合だけでなく、不純物の除去を終えた塗布膜の上に間接的に陰極を形成する場合も含むこととする。すなわち、洗浄工程後から陰極形成工程の間に別の層を形成する工程を含んでいてもよい。洗浄工程後から陰極形成工程の間に別の層を形成する工程を含む場合には、陰極形成後の有機EL素子半製品において、不純物の除去を終えた塗布膜と陰極との間に他の層を含むことになる。本実施の態様における有機EL素子半製品においては、不純物の除去を終えた塗布膜としての有機発光層16と陰極18との間に電子輸送層17を含んでいる。そのため、電子輸送層17の上面に陰極18を形成することとしている。
陰極形成工程を終えたら、図6(c)に示すように、蒸着法、スパッタ法等に基づき、陰極18の上に封止層19を形成する。そして、封止層19の上方に封止基板を対向配置させ、必要に応じて封止層19と封止基板とで形成される空間に絶縁性材料を充填する。
以上の工程を経ることで、有機EL表示パネル10が完成する。
[各種実験と考察]
<真空工程の有無による発光特性の違い>
本発明者は、有機発光層材料塗布後に真空工程を行うか否かで有機EL素子の発光特性に違いが現れるかを検証した。実験用の有機EL素子として、真空工程を経ない有機EL素子と、真空工程を経る有機EL素子の2種を準備した。
真空工程を経ない有機EL素子は、以下のようにして形成した。まず、上述した製造方法に基づき、基板上に陽極、正孔注入層、正孔輸送層を順に積層した。次に、正孔輸送層の上面に有機発光層材料を塗布し、加熱を行って有機発光層材料を乾燥させることで有機発光層を成膜した。続いて、有機発光層が成膜された基板を、グローブボックスに20[min]載置した。そして、有機発光層の上に電子輸送層、陰極、封止層を順に積層することにより、真空工程を経ない有機EL素子が完成する。
真空工程を経る有機EL素子は、以下のようにして形成した。まず、真空工程を経ない有機EL素子と同様に、基板上に陽極、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層を順に積層した。次に、有機発光層が成膜された基板を、真空ポンプに接続された真空チャンバー内に載置した。そして、真空ポンプを起動させて真空チャンバー内を真空状態にし、20[min]放置した。そして、有機発光層の上に電子輸送層、陰極、封止層を順に積層することにより、真空工程を経る有機EL素子が完成する。真空ポンプとしては、メカニカルブースターポンプを用いた。
図7は、実験に用いたメカニカルブースターポンプによる排気時間と真空チャンバー内の圧力との関係を示すグラフである。本実験においては、図7に示すような排気プロファイルを有するポンプを用いて実験を行った。横軸が真空ポンプによる排気時間を、縦軸が真空チャンバー内の圧力をそれぞれ示している。
真空工程を経ない有機EL素子、真空工程を経る有機EL素子ともに、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、陰極および封止層には、公知の材料を用いた。有機発光層としてはF8−F6を用いた。
なお、真空工程を経ない有機EL素子の製造においては、当然のことながら、有機発光層材料を乾燥させるための真空工程を行うことができない。そこで、有機発光層を構成する材料を溶解させるための溶媒として、真空工程による乾燥が不要な低沸点溶媒であるキシレンを用いた。ただし、キシレンを溶媒として用いた場合、インクジェット法による塗布を行うことができない。つまり、キシレンはあくまで実験用に用いたに過ぎないものである。そのため、実験用有機EL素子の製造においては、有機発光層材料の乾燥は加熱により行った。また、実験用有機EL素子との比較が行えるよう、真空工程を経る有機EL素子についても同様とした。
図8は、真空工程を経ない有機EL素子の発光特性と、真空工程を経た有機EL素子の発光特性を示す図である。図8は、実験用の有機EL素子を発光させた場合の、発光時間と発光強度の関係を示すグラフであり、横軸は発光時間[hr]を、縦軸は発光強度をそれぞれ示している。発光強度は、発光開始直後を1としたときの相対値で示している。また、真空工程を経ない有機EL素子の発光特性(図8において「真空工程無」)を実線で、真空工程を経る有機EL素子の発光特性(図8において「真空工程有」)を二点鎖線でそれぞれ示している。
真空工程を経ない有機EL素子と比較して、真空工程を経る有機EL素子は、時間経過に伴う発光強度低下量が大きいことが見てとれる。換言すると、有機発光層材料塗布後に真空工程を経ない有機EL素子よりも、真空工程を経る有機EL素子の方が発光強度半減寿命(発光強度が半減するまでに要する時間)が短いことがわかる。
両実験用有機EL素子の違いは、有機発光層成膜後の基板が置かれる環境のみである。つまり、グローブボックス内に保管するか、真空ポンプに接続された真空チャンバー内に保管するかの違いにより、発光強度半減寿命に大きな差が生じたことになる。そこで、本発明者は、機械式の真空ポンプに用いられている潤滑剤の含有成分、もしくは、真空シール材等の含有成分が、不純物として有機発光層に何らかの悪影響を与えているのではないかと考えた。以下、「機械式の真空ポンプに用いられている潤滑剤の含有成分、もしくは、真空シール材等の含有成分」を、単に「潤滑剤等の含有成分」と記載する。
真空工程を経る実験用の有機EL素子における電子輸送層は、真空成膜法に基づき形成されている。この真空成膜工程を経てもなお発光特性に悪影響が生じていることからすると、不純物は真空成膜時の高真空下でも揮発しないような、比較的沸点の高いものであると推定された。そのため、本発明者は、潤滑剤等の含有成分が不純物ではないかと考えたのである。
潤滑剤は、通常、潤滑成分(例えば、潤滑油である。)と、潤滑成分の酸化を防止するための酸化防止剤を含んでいる。また、真空シール材にも、当該真空シール材を構成する樹脂材料の酸化を防止する目的で酸化防止剤が含まれている。酸化防止剤は、潤滑成分の酸化または樹脂材料の酸化が原因の所謂スラッジやワニスの発生を抑制するものであり、例えば、連鎖停止剤、過酸化物分解剤、金属不活性化剤等の種類が知られている。
この中でも、本発明者は、ジフェニルアミン系化合物やフェノール系化合物等で構成され、潤滑成分の酸化の進行を停止させる連鎖停止剤に注目した。一般にラジカルは不安定である。しかしながら、ジフェニルアミン系化合物やフェノール系化合物が水素ラジカルを失って形成されるラジカル状態は、そのラジカル部分に隣接する芳香環による共鳴安定化が起こるため、比較的安定であると考えられる。そのため、酸化により生じる反応性の高い過酸化物や、ラジカル種へ水素ラジカルを供与して、自身がラジカル状態になるといった反応が進行する。ジフェニルアミン系化合物やフェノール系化合物のラジカル状態は比較的安定であるものの、酸化により生じる過酸化物と反応する程度の反応性は有する。ラジカル状態のジフェニルアミン系化合物やフェノール系化合物は、上記の過酸化物と反応することでラジカル反応を停止させる性質を有するため、この性質が利用され、酸化の進行を停止させる連鎖停止剤として用いられている。
<発光強度半減寿命低下のメカニズム>
以下、ジフェニルアミン系化合物を主に取り上げて説明する。
図9は、酸化防止剤として用いられるジフェニルアミン系化合物の一例を示す図である。図9(a)、(b)、(c)に、ジフェニルアミン系化合物の一例である化合物A、化合物B、化合物Cの化学式をそれぞれ示している。以降の図において、化合物A、化合物B、化合物Cに代表されるジフェニルアミン系化合物を、総じて図9(d)で示す化学式で表すこととする。また、ジフェニルアミン系化合物を単に「DPA」と記載する。
図10は、ジフェニルアミン系化合物を原因とする、有機EL素子における発光強度半減寿命低下のメカニズムの一例を説明するための図である。説明の都合上、有機発光層16と電子輸送層17との界面領域28を誇張して示している。
まず、式(1)に示すように、有機EL素子駆動中においては、電子輸送層17を構成する電子輸送性材料Xは、ラジカルアニオン(ポーラロン)状態となることで電子の輸送を行う(図10における「ラジカルアニオン状態の電子輸送性材料X」)。そのため、このラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xをキャリアと考えることができる。そして、界面領域28において、DPAはラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xに水素ラジカルを供与することで、自身がラジカルアニオン状態となる(図10における「ラジカルアニオン状態のDPA」)。このような反応が進行する理由として、ラジカルアニオン状態のDPAは、負電荷が2つのベンゼン環において非局在化するため安定に存在し得るからであると考えた。つまり、ラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xよりも、ラジカルアニオン状態のDPAの方がさらに安定な化学種となり得るからであると考えた。その場合、ラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xは、DPAから放出された水素ラジカルと結合するといった反応も進行し得る(図10における「XH」)。
式(1)に基づいて説明したように、真空工程を経ることで発光輝度の低下が大きくなる要因の1つとして、キャリアであるラジカルアニオン状態の電子輸送性材料XがDPAにより消失することにより、有機発光層16に注入される電子が減少することが考えられる。
次に、式(2)に示すように、界面領域28において、ラジカルアニオン状態のDPAは、有機発光層16を構成する材料Yと反応することも想定される。この反応により、有機発光層16を構成する材料Yとは異なる生成物Zを与える。これは、有機発光層16が劣化することに相当する。このように、DPAと有機発光層16を構成する材料Yが反応してしまうことも、発光輝度の低下の一因であると考えられる。
以上説明したようなメカニズムが想定されることからも、潤滑剤等に含まれる酸化防止剤、特に連鎖停止剤が発光強度半減寿命低下に大きく影響していると考えた。
<真空工程を経た有機発光層表面の付着物の分析>
次に、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を用い、真空工程を経た有機発光層の表面に付着している物質を分析した。真空工程を経た有機発光層をヘリウム雰囲気下で昇温加熱し、加熱された有機発光層から放出されるガス(アウトガス)を液体窒素で捕集し、GC−MSで分析した。GC−MS分析は、アジレント・テクノロジー社製の6890GCを用い、イオン化はEI法(電子イオン化法)により行った。カラムはアジレント・テクノロジー社製のDB5msを使用し、40度から300度まで昇温した。
図11は、真空工程を経た有機発光層表面の付着物の分析結果を示す図である。縦軸は検出強度(トータルイオンカレントであり、検出された分子数に相当する。)、横軸は保持時間[min]をそれぞれ示しており、図11では、保持時間15〜20[min]におけるガスクロマトグラフを示している。保持時間16〜19[min]付近に、化合物A、化合物B、化合物Cのピークが検出された。純粋な化合物A、化合物B、化合物CについてもGC−MS分析を行い、保持時間およびマススペクトルが図11に示す結果と一致していることを確認した。
GC−MS分析の結果より、本発明者は、真空ポンプに用いられている潤滑剤等に酸化防止剤として含まれているジフェニルアミン系化合物が、発光強度半減寿命低下の原因であることを突き止めた。そして、ジフェニルアミン系化合物が次項で説明するメカニズムにより、真空ポンプから真空チャンバーへ飛散するのではないかと考えた。
なお、不純物の検出にあたっては、真空チャンバーへの収容対象が有機膜であることが必要であると判明した。このことについて説明する。
まず、本発明者は、真空チャンバーにメカニカルブースターポンプを接続した上で、真空チャンバー内が大気圧である状態の真空チャンバー内の気体を捕集し、GC−MS分析を行った。しかし、この方法では不純物を検出することはできなかったため、本発明者は真空チャンバー内を減圧しなかったことに問題があると考えた。そのため、ガラス基板およびシリコンウエハーを真空チャンバー内に載置した上で、メカニカルブースターポンプで真空チャンバー内を減圧し真空チャンバー内の気体を捕集したが、この場合でも不純物を検出することはできなかった。
これらの結果より、不純物が付着する対象は、有機発光層等の有機膜であることが必要なのではないかと本発明者は考えた。そこで、有機発光層材料を塗布した基板を真空チャンバー内に載置した上で、メカニカルブースターポンプで真空チャンバー内を減圧し、上述した方法に基づきGC−MS分析を行った。その結果、図11に示すスペクトルのように、不純物のピークを検出することができた。
以上説明したように、ガラス基板等に対して真空工程を行った場合には不純物の検出ができなかったことから、真空工程を経ることによる不純物の付着は、真空工程を行う対象が無機材料ではなく有機膜材料の塗布膜であるが故に発生し得るものであると、本発明者は考えた。つまり、潤滑剤等の含有成分といった不純物による汚染は、有機膜材料の塗布膜に特徴的なものであると考えた。この考えを基に本発明者は、有機膜材料の塗布膜に対して洗浄工程を行うことで、有機膜材料の塗布膜に付着している不純物を除去するという発明をするに至ったのである。
<真空ポンプから真空チャンバーへの不純物飛散のメカニズム>
図12は、真空ポンプによる排気時間と真空チャンバー内の圧力との関係を示すグラフである。横軸が排気時間であり、縦軸が真空チャンバー内の圧力である。また、縦軸において、下方にいくほど真空度が高いことを示している。
時刻Aは、真空ポンプの起動時点に相当する。また、時刻Bは、真空チャンバー内の減圧が進行している最中である。時刻Cにおいては、真空ポンプの性能限界まで真空チャンバー内が減圧されており、平衡状態に達している。時刻A、時刻B、時刻Cの各々における真空チャンバーと真空ポンプ内の様子を、図13を用いて説明する。
図13は、図12に示すグラフにおける時刻A、時刻B、時刻Cにおける真空チャンバーと真空ポンプ内の様子を模式的に示す図である。
図13に示すように、真空チャンバー29は、排気管31を介して真空ポンプに接続されている。真空チャンバー29内の気体は、真空ポンプ30により、排気管31、32を通って外部へ排出される。また、各図において、真空ポンプ30に用いられている潤滑剤等に含まれている酸化防止剤(連鎖停止剤)を、不純物26で示している。
図13(a)は真空ポンプ30の起動時点である。減圧を開始すると、図13(b)において破線の矢印で示すように、真空チャンバー29内の気体は、排気管31から真空ポンプ30および排気管32を介して外部へ排出される。このように、真空チャンバー29から排気管31、真空ポンプ30および排気管32へと向かう気流が発生する。このため、減圧期間(時刻B)においては、不純物26が真空チャンバー29へ飛散することはないと考えられる。
しかしながら、時刻Cにおいては、真空ポンプ30の性能限界まで真空チャンバー29内が減圧されている。そのため、真空チャンバー29と真空ポンプ30との間の気流は平衡状態にある。また、真空チャンバー29および真空ポンプ30における真空度が高くなることで、不純物26の平均自由行程も長くなる。このため、図13(c)に示すように、真空ポンプ30から真空チャンバー29への不純物26の飛散が起こり、有機発光層形成後の有機EL素子半製品33に不純物26が付着するのではないかと考えた。そして、真空チャンバー29および真空ポンプ30における真空度の上昇により、真空チャンバー29および真空ポンプ30内の圧力に占める不純物26の蒸気圧の割合が上昇するが、このことによっても不純物の飛散が促進される。さらに、不純物26が真空チャンバー29へ飛散している状態では、真空チャンバー29内の真空度が高くなることで不純物26の平均自由行程も長くなるため、真空ポンプ30からの飛散そのものも促進される結果、有機発光層と不純物26の衝突確率がより高くなると考えられる。
<洗浄溶媒の選定>
有機発光層から不純物を除去する方法としては、有機溶媒による洗浄が効果的であると考えた。この理由としては、有機溶媒には、低沸点から高沸点のものまで、また、低極性から高極性のものまで多種のものが存在することが挙げられる。そのため、後述する洗浄溶媒に必要な条件を満たす溶媒を、適切に選択することが可能である。
また、有機溶媒による洗浄以外の方法としては、UV洗浄、オゾン洗浄、有機発光層表面を切削する方法等が考えられる。しかしながら、UV洗浄およびオゾン洗浄では、有機発光層を構成する材料が有機物質であるために当該材料を構成する分子の劣化を伴い、妥当ではないと考えられる。また、有機発光層はその膜厚が約数十[nm]の薄膜であるため、表面を切削する方法では切削が困難である。さらに、有機発光層の膜厚バラツキは輝度ムラ等の発光特性劣化として現れるため、表面を全体に亘って均一に切削することが必要となるが、現行の技術では実現が困難である。
本発明者は、不純物の洗浄に用いる洗浄溶媒の選定を行った。洗浄溶媒の性質としては、上述したように、(1)不純物(ジフェニルアミン系化合物またはフェノール系化合物)に対する相互作用が、有機発光層よりも高いものであることが必要である。この点に加え、(2)有機発光層材料の塗布膜(有機発光層を構成する材料)を溶解せず、(3)不純物の沸点より低い沸点を有し、(4)電子輸送層形成工程で用いる真空成膜法における真空下で除去可能な程度の、低い沸点を有することが望ましい。
(2)の性質を有することで、洗浄工程において有機発光層を構成する材料が洗浄溶媒に流出することを防ぐことが可能である。そのため、有機発光層を構成する材料の溶出により、発光特性が損なわれるということがない。特に、有機発光層のような非常に薄い膜厚に対して洗浄工程を行う場合については、本性質は重要である。
また、上述したように、不純物の沸点は比較的高く、例えば、ジフェニルアミンでは約302[℃]である。したがって、(3)の性質を有することで、有機発光層材料の塗布膜上に、不純物に代わって洗浄溶媒が残留した場合であっても、不純物を除去する場合と比較して、容易に洗浄溶媒を除去することが可能となる。さらに、(4)の性質を有することで、電子輸送層を形成する工程の中で、除去工程で除去し切れなかった洗浄溶媒を完全に除去することが可能となる。
有機発光層を構成する材料の多くは極性の高い有機溶媒に溶解しにくいことも踏まえ、本発明者は、洗浄溶媒として炭素数が4以下のアルコール系溶媒が適用可能ではないかと考えた。炭素数が4以下のアルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールのいずれか、またはこれらの混合溶媒がある。そこで、本発明者は、イソプロピルアルコールを用い、洗浄効果を確認する実験を行った。
<洗浄効果の確認実験>
まず、上述した2つの実験用有機EL素子と同様に、基板上に陽極、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層を順に積層した。次に、有機発光層が成膜された基板を真空ポンプに接続された真空チャンバー内に載置した上で、真空ポンプを起動させて真空チャンバー内を真空状態にし、20[min]放置した。そして、基板を真空チャンバーから取り出し、有機発光層の表面にイソプロピルアルコールを滴下し、3[min]放置した。その後、洗浄後のイソプロピルアルコールをスピンコーターで除去した。洗浄を終えた有機発光層をヘリウム雰囲気下で昇温加熱し、有機発光層からのアウトガスを液体窒素で捕集し、GC−MSで分析した。
図14は、洗浄後の有機発光層表面の付着物の分析結果を示す図である。縦軸は検出強度、横軸は保持時間[min]をそれぞれ示しており、図14では、保持時間15〜20[min]におけるガスクロマトグラフを示している。太線で示す「洗浄後」のスペクトルは、イソプロピルアルコールによる洗浄を行った有機発光層表面の付着物の分析結果である。比較のため、図11に示したスペクトルを「洗浄前」とし併せて示している。
図14に示す結果から見てとれるように、洗浄前と比較して、洗浄後のスペクトルでは化合物A、化合物B、化合物C全ての検出強度が大幅に低下している。このことより、洗浄を行うことで、有機発光層の表面から不純物を除去することが可能であることが示された。
さらに、洗浄に用いたイソプロピルアルコールをワイパーに吸着させ、当該ワイパーにUVランプを照射したが、PL発光は観察されなかった。すなわち、有機発光層がイソプロピルアルコールに流出しておらず、イソプロピルアルコールは不純物のみを溶解または分散させていることを確認した。また、段差計にて、洗浄前と洗浄後で有機発光層の膜厚に変化がないことも確認している。これらの結果から、イソプロピルアルコールによる洗浄工程において、有機発光層が溶出していないことは明白である。
<洗浄時間の検討>
次に、不純物の除去に必要な時間、洗浄工程において塗布膜と洗浄溶媒とを接触させている時間の検討を行った。
まず、洗浄効果の確認実験で用いた実験用有機EL素子と同様に、基板上に陽極、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層を順に積層し、真空チャンバー内に20[min]放置した。次に、真空チャンバーから基板を取り出し、有機発光層の表面にイソプロピルアルコールを滴下し、20[min]、3[min]または15[sec]放置した。その後、洗浄後のイソプロピルアルコールを除去し、洗浄後の有機発光層上に電子輸送層、陰極、封止層を順に積層することで、洗浄時間の異なる2つの実験用有機EL素子を形成した。そして、両実験用有機EL素子の発光特性を比較した。
図15は、洗浄時間を20[min]とした実験用有機EL素子の発光特性と、洗浄時間を3[min]とした実験用有機EL素子の発光特性と、洗浄時間を15[sec]とした実験用有機EL素子の発光特性を示す図である。横軸は発光時間[hr]を、縦軸は発光強度をそれぞれ示している。発光強度は、図8と同様に、発光開始直後を1としたときの相対値で示している。洗浄時間を20[min]とした実験用有機EL素子の発光特性(図15において「洗浄(20min)」)を二点鎖線で、洗浄時間を3[min]とした実験用有機EL素子の発光特性(図15において「洗浄(3min)」)を破線で、洗浄時間を15[sec]とした実験用有機EL素子の発光特性(図15において「洗浄(15sec)」)を一点鎖線でそれぞれ示している。また、比較のため、図8での「真空工程無」のグラフを「Ref」として実線で、図8での「真空工程有」のグラフを「洗浄なし」として太線で示している。
図15に示すように、15[sec]間の洗浄を行うことで、洗浄を行わない場合と比較して発光強度半減寿命低下がわずかに改善された。一方、3[min]間の洗浄を行うことで、発光強度半減寿命低下が大幅に改善されることがわかった。また、20[min]間の洗浄を行うことで、3[min]間の洗浄の場合よりもさらに発光強度半減寿命低下が改善された。発光特性の面からも洗浄工程が有効であることが示された。
<発光写真>
図16は、各実験用有機EL素子の発光写真を示す図であり、発光開始直後に撮影した発光写真である。左から順に、真空工程および洗浄を行わなかった有機EL素子(図15における「Ref」)の発光写真、真空工程は行ったが洗浄は行わなかった有機EL素子(図15における「洗浄なし」)の発光写真、真空工程を行ったのち3[min]の洗浄を行った有機EL素子(図15における「洗浄(3min)」)の発光写真、真空工程を行ったのち15[sec]の洗浄を行った有機EL素子(図15における「洗浄(15sec)」)の発光写真を示している。
図16に示すように、3[min]の洗浄を行った場合と真空工程および洗浄を行わなかった場合とで、発光写真に変化は見られなかった。したがって、洗浄を行ったとしても発光画像に異常は発生しないことが示された。さらに、洗浄後の発光画像では、同一電圧を印加した場合、洗浄前のものと比較して、輝度が回復していることが視覚的に確認できた。
[有機EL表示装置]
図17は、本発明の一態様に係る有機EL表示装置等を示す斜視図である。図17に示すように、有機EL表示装置1000は有機ELディスプレイであり、上述した有機EL表示パネル10を備える。
図18は、本発明の一態様に係る有機EL表示装置1000の全体構成を示す図である。図18に示すように、有機EL表示装置1000は、有機EL表示パネル10と、これに接続された駆動制御部20とを備える。駆動制御部20は、4つの駆動回路21〜24と制御回路25とから構成されている。なお、実際の有機EL表示装置1000では、有機EL表示パネル10に対する駆動制御部20の配置や接続関係については、これに限られない。
有機EL表示装置1000が備える有機EL表示パネル10を構成する有機EL素子においては、上述した洗浄工程を経て形成された有機発光層を備えている。したがって、有機発光層の発光特性が良好であるため、有機EL表示装置1000は画質に優れる。
[有機EL発光装置]
図19は、本発明の一態様に係る有機EL発光装置200を示す図であって、図19(a)は縦断面図、図19(b)は横断面図である。図19に示すように、有機EL発光装置200は、本発明の一態様に係る製造方法により形成された複数の有機EL素子210と、有機EL素子210が上面に実装されたベース220と、ベース220にそれら有機EL素子210を挟むようにして取り付けられた一対の反射部材230と、から構成されている。各有機EL素子210は、ベース220上に形成された導電パターン(不図示)に電気的に接続されており、前記導電パターンにより供給された駆動電力によって発光する。各有機EL素子210から出射された光の一部は、反射部材230によって配光が制御される。
有機EL発光装置200が備える有機EL素子210においては、上述した洗浄工程を経て形成された有機発光層を備えている。したがって、有機EL発光装置200は発光特性が良好である。
[真空ポンプ由来不純物の検出方法]
上述したように、真空ポンプ由来の不純物を検出するには、真空チャンバーへの収容対象が有機膜であることが必要であると判明した。本項では、真空ポンプ由来の不純物を検出する検出器として有機膜を用いた、不純物検出方法について説明する。
まず、真空チャンバー内に検出器としての有機膜を載置するともに、真空チャンバー内を真空状態にする。これにより、真空ポンプ由来の不純物が真空ポンプから真空チャンバーへ飛散する環境となる。次に、真空ポンプから真空チャンバーへ飛散した不純物を有機膜に付着させる。最後に、不純物を付着させた有機膜の表面近傍における当該不純物を分析する。不純物を付着させた有機膜の表面近傍の付着物を分析する方法としては、例えば、(1)有機膜をヘリウム雰囲気下で昇温加熱し、加熱された有機膜から放出されるアウトガスを液体窒素で捕集し分析する方法、(2)有機膜表面を溶媒で洗い、洗浄後の溶媒を分析する方法、および(3)有機膜を溶媒に溶解させ、溶解後の溶媒を分析する方法等が考えられる。
この不純物検出方法は、有機膜が不純物に対する吸着性が高いことを利用したものである。したがって、真空ポンプから真空チャンバーへの飛散量が微量である不純物であっても検出することが可能である。また、本検出方法は、真空ポンプに用いられている潤滑剤等だけでなく、環境に存在する不純物の検出に広く適用することができる。
[変形例・その他]
以上、実施の態様について説明したが、本発明は上記の実施の態様に限られない。例えば、以下のような変形例等が考えられる。
(1)上記の実施の態様において説明した有機EL表示パネルの製造方法は、単なる一例である。例えば、真空成膜法を用いて成膜すると説明した層を、塗布成膜法によって形成することとしてもよいし、逆に、塗布成膜法を用いて成膜すると説明した層を、真空成膜法によって形成することとしてもよい。
(2)上記の実施の態様においては、有機膜が有機発光層であるとして説明したが、本発明はこれに限定されない。有機EL素子を構成する各層のうち、塗布成膜法により形成される層は全て本発明における有機膜に相当し、上記の洗浄工程を行うことができる。塗布成膜法により形成される各層について洗浄工程を行うことで、有機EL素子の発光強度半減寿命を長くし、発光特性を向上させることが可能である。
(3)本発明において、ITO層、正孔注入層、正孔輸送層、バンクおよび封止層は必須の構成要件ではない。これらの構成を有しない有機EL素子に対しても、本発明を適用することが可能である。逆に、他の構成要素、例えば、正孔阻止層等をさらに含むこととしてもよい。これに対応して、準備工程で準備する基板においても、必ずしもITO層、正孔注入層、正孔輸送層、バンクが形成されている必要はない。さらに、封止層を有しない有機EL素子を形成する場合には勿論、封止層を形成する工程を省略できる。
(4)上記の実施の態様においては、有機EL素子における有機発光層を製造する工程を主に取り上げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、有機TFTや太陽電池等、塗布成膜法により成膜される有機膜を有する素子の製造方法にも適用することも可能である。すなわち、本発明は、基板上に有機材料を含んでなる有機膜を形成する場合に広く適用することが可能である。以下、基板上に有機材料を含んでなる有機膜を形成する場合について、簡単に説明する。
まず、有機膜を構成する材料と溶媒とを含む有機膜材料が塗布された基板を準備する準備工程を行う。次に、有機膜材料を乾燥させるために、有機膜材料塗布後の基板を真空チャンバー内に載置し、真空チャンバーに接続された真空ポンプにより、当該真空チャンバー内を真空状態に維持する真空工程を行う。この真空工程により、有機膜材料の塗布膜には不純物(潤滑剤等に含まれる酸化防止剤としての連鎖停止剤)が付着する。この不純物を有機膜材料の塗布膜から除去するために洗浄工程を行う。洗浄工程では、有機膜材料塗布後の基板を真空チャンバーから取り出し、真空ポンプから真空チャンバーへ飛散し有機膜材料の塗布膜に付着した不純物を、洗浄溶媒を用いて除去する。
(5)上記の実施の態様において、有機発光層については、その表面に不純物が付着したままで放置されたとしても、通電が行われない限りは有機発光層に悪影響は小さいと考えられると述べた。しかしながら、このことはあくまで有機発光層に関してのことである。有機発光層以外の他の有機膜においては、通電が行われなくても、不純物が付着しただけで有機膜が劣化するということはあり得る。ただし、このような有機膜の場合には、有機膜材料の塗布膜上での反応が進行する前に不純物除去を行う必要がある。そのため、真空工程に要する時間の短縮、および、真空工程後の速やかな洗浄工程の実施が必要となる。
(6)洗浄工程における除去工程後であって機能膜形成工程の前に、不純物の除去に用いた洗浄溶媒を除去するための焼成工程を行うこととしてもよい。焼成にかける温度は、有機発光層の劣化が生じないような温度である必要がある。このため、焼成工程を行う場合は、洗浄溶媒は有機発光層の劣化が生じないような温度よりも低い沸点を有するものを選択することがより望ましい。
(7)有機発光層材料の塗布膜の乾燥は、真空工程のみで完了させることとよいし、焼成のみで完了させることとしてもよいし、真空工程に加えて焼成を行うことで完了させることとしてもよい。真空工程に加えて焼成を行う場合、焼成を行うタイミングは真空工程後であれば洗浄工程の前後を問わない。洗浄工程の後に焼成を行う場合は、当該焼成が変形例(6)に記載の焼成工程を兼ねることができる。
(8)上記の実施の態様においては、「有機発光層材料の塗布膜」が、乾燥工程を経ることにより形成された有機発光層であるとして説明した。しかしながら、上述したように、乾燥途中の有機発光層材料の塗布膜に対しても不純物は付着し得る。すなわち、「有機発光層材料の塗布膜」には、有機発光層材料の乾燥が完了することにより完成された有機発光層、および乾燥途中の有機発光層材料の塗布膜が含まれる。「有機膜材料の塗布膜」についても同様である。
(9)上記の実施の態様においては、有機発光層材料を乾燥させるための乾燥工程が真空工程であるとして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、有機発光層完成後から次の工程を行うまでの間、有機EL素子半製品を真空状態で保管する場合には、この保管工程も真空工程に相当し、不純物汚染が起こり得る。すなわち、「有機発光層材料塗布後の基板」には、有機発光層材料塗布直後から塗布膜が完全に乾燥するまでの状態の基板のほか、塗布膜の乾燥が終了し有機発光層が完成した状態の基板も含まれる。「有機膜材料塗布後の基板」についても同様である。保管工程において不純物汚染があった場合にも、本発明に係る洗浄方法を適用することが可能である。
なお、乾燥工程における真空チャンバー内には、「有機発光層材料塗布直後から塗布膜が完全に乾燥するまでの状態の基板」が収容される。一方、保管工程における真空チャンバー内には、「塗布膜の乾燥が終了し有機発光層が完成した状態の基板」が収容される。
さらに、乾燥工程および保管工程に限られず、有機発光層材料塗布後から有機発光層の上面に位置する層を形成する工程の前に行われる工程であって、有機発光層材料塗布後の基板が真空状態に置かれる工程が真空工程となる。
(10)実施の態様においては、ジフェニルアミン系化合物を主に取り上げて説明したが、フェノール系化合物でも図10と同様の説明が可能である。フェノールを例に挙げ、図20を用いて簡単に説明する。
図20は、フェノール系化合物を原因とする、有機EL素子における発光強度半減寿命低下のメカニズムの一例を説明するための図である。式(3)に示すように、界面領域28において、フェノールはラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xに水素ラジカルを供与することで、自身がラジカルアニオン状態となる。ラジカルアニオン状態のフェノールは、DPAと同様に、負電荷がベンゼン環において非局在化し、安定に存在し得るため、本反応が進行すると考えられる。また、式(4)に示すように、界面領域28において、ラジカルアニオン状態のフェノールは、有機発光層を構成する材料Yと反応することで生成物Zを与える。このように、キャリアであるラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xの消失、および有機発光層の劣化が進行する。
(11)図10および図20に示した発光強度半減寿命低下のメカニズムは、電子輸送層と陰極の間に、電子注入層が介挿されていない場合に想定されるメカニズムである。ここでは、電子注入層が介挿されている場合のメカニズムについて簡単に述べる。
電子注入層が存在しない場合には、ラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xに水素ラジカルを供与するのは、ジフェニルアミン系化合物またはフェノール系化合物であった。一方、電子注入層が存在しない場合に、ラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xに水素ラジカルを供与するのは、電子注入層から電子を供与された有機発光層を構成する材料Y、もしくは、製造工程中において有機EL素子に混入した微量の水分や残留溶媒等であると考えられる。水素ラジカルの供与の結果、電子注入層から電子を供与された有機発光層を構成する材料Y、水分および残留溶媒等がラジカルアニオン状態になると考えられる。
(12)図10および図20に示した発光強度半減寿命低下のメカニズムは単なる一例である。これらの図に示したものとは異なるメカニズムで発光強度半減寿命低下が起こっている可能性もある。
(13)本発明における「機能膜」は、洗浄工程より後に形成され、かつ、真空成膜法に基づき成膜される層に相当する。上記の実施の態様で挙げたものの中では電子輸送層、電子注入層、陰極が該当する。
(14)「ジフェニルアミン系化合物」とは、ジフェニルアミン骨格を有する化合物を指す。ジフェニルアミン骨格を有する化合物には、ジフェニルアミンやこの誘導体等が含まれる。また、図9(d)においては、置換基が1つであるジフェニルアミン系化合物を図示しているが、本発明においては置換基の個数は特に限定されない。また、置換基の位置も図9(d)に示したものに限定されない。
同様に、「フェノール系化合物」とは、フェノール骨格を有する化合物を指し、図20に示したものに限定されない。フェノール骨格を有する化合物には、フェノールやこの誘導体等が含まれる。
(15)上記の実施の態様においては、真空工程を経たことが原因で付着した不純物として、真空ポンプ由来の不純物を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。また、真空ポンプ由来の不純物として、潤滑剤に添加されている酸化防止剤または真空シール材に添加されている酸化防止剤、特に連鎖停止剤を取り上げて説明したが、他の種類の酸化防止剤でも問題が発生し得る。また、酸化防止剤以外で潤滑剤および真空シール材に添加されている物質でも問題が発生し得る。さらに、潤滑剤および真空シール材以外で真空ポンプに使用等されているものでも逆拡散は起こり得る。すなわち、本発明は、真空工程を経ることで付着した不純物除去に広く適用できるものである。
(16)本発明における「有機発光層材料が塗布された基板を準備する」には、洗浄工程を行う事業者自身が、基板上に有機発光層材料を塗布することにより有機発光層材料が塗布された基板を準備する場合のほか、例えば、洗浄工程を行う事業者が、有機発光層材料が塗布された基板を他の事業者から購入するような場合も含まれる。「有機膜材料が塗布された基板を準備する」についても同様である。
(17)上記の実施の態様においては、正孔注入層が基板の上方を覆うように全面に形成されている例を示したが、本発明はこれに限定されない。正孔注入層がITO層上のみに形成されていることとしてもよい。また、ITO層の側面および上面のみを覆うように形成されていることとしてもよい。
(18)陽極を銀(Ag)系材料で形成する場合には、上記の実施の態様のようにITO層をその上に形成することが望ましい。陽極をアルミニウム系材料で形成する場合には、ITO層を無くして陽極を単層構造にすることも可能である。
(19)上記の実施の態様においては、複数の有機EL素子をサブピクセルとして基板上に集積する構成の有機EL表示パネルについて説明したが、この例に限定されず、有機EL素子を単一で用いることも可能である。有機EL素子を単一で用いるものとしては、例えば、照明装置等が挙げられる。
(20)上記の実施の態様においては、有機EL表示パネルをR,G,Bを発光色とするフルカラー表示のパネルであるとしたが、本発明はこれに限定されない。有機EL表示パネルを、R、G、B、白色およびその他単色の有機EL素子が複数配列されてなる表示パネルとしてもよい。さらに、いずれか1色のみの有機EL素子を有する単色表示の有機EL表示パネルとしてもよい。
(21)上記の実施の態様では、バンク材料として、有機材料が用いられていたが、無機材料も用いることができる。この場合、バンク材料層の形成は、有機材料を用いる場合と同様、例えば塗布成膜法等により行うことができる。さらに、上記の有機EL表示パネルでは、複数のライン状のバンクを並設し、有機発光層をストライプ状に区画するラインバンク方式を採用しているが、本発明はこれに限られない。例えば、バンクを井桁状(格子状)に形成し、バンクによって各サブピクセルの周囲を囲繞する、いわゆるピクセルバンク方式であってもよい。
(22)上記の実施の態様においては、トップエミッション型有機EL表示パネルの製造方法を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。基板11(図1)側を表示面とするいわゆるボトムエミッション型有機EL表示パネルの製造方法においても、本発明を適用することが可能である。さらに、陽極の材料を陰極と同じく透明導電性材料とすることで、陽極側および陰極側の両方から光を取り出す両面発光方式の有機EL表示パネルの製造方法にも適用することが可能である。
(23)上記の実施の態様においては、第1電極が陽極、第2電極が陰極である有機EL素子について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1電極が陰極、第2電極が陽極である有機EL素子であってもよい。
(24)上記の実施の態様で使用している、材料、数値等は好ましい例を例示しているだけであり、この態様に限定されることはない。また、本発明の技術的思想の範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。さらに、各図面における部材の縮尺は実際のものとは異なる。なお、数値範囲を示す際に用いる符号「〜」は、その両端の数値を含む。
本発明は、例えば、家庭用もしくは公共施設、あるいは業務用の各種ディスプレイ、テレビジョン装置、携帯型電子機器用ディスプレイ等に用いられる有機EL素子の製造方法等に好適に利用可能である。
10 有機EL表示パネル
11 基板
12 陽極
13 ITO層
14 正孔注入層
15 バンク
15a 開口部
16 有機発光層
16a 有機発光層材料
17 電子輸送層
18 陰極
19 封止層
20 駆動制御部
21〜24 駆動回路
25 制御回路
26 不純物
27 洗浄溶媒
28 有機発光層と電子輸送層との界面領域
29 真空チャンバー
30 真空ポンプ
31 排気管
32 排気管
33 有機EL素子半製品
100 サブピクセル
200 有機EL発光装置
210 有機EL素子
220 ベース
230 反射部材
1000 有機EL表示装置

Claims (28)

  1. 有機膜を構成する材料と溶媒とを含む有機膜材料が塗布された基板を準備する準備工程と、
    前記有機膜材料塗布後の基板を真空チャンバー内に載置し、前記真空チャンバーに接続された真空ポンプにより、当該真空チャンバー内を真空状態に維持する真空工程と、
    前記有機膜材料塗布後の基板を前記真空チャンバーから取り出し、前記有機膜材料の塗布膜に付着した不純物を、洗浄溶媒を用いて除去する洗浄工程と、を含む、
    有機膜の形成方法。
  2. 前記洗浄溶媒は極性溶媒であり、前記塗布膜を溶解させることなく前記不純物を前記塗布膜から離間させる、
    請求項1に記載の有機膜の形成方法。
  3. 前記洗浄溶媒は、炭素数が4以下のアルコール系溶媒である
    請求項2に記載の有機膜の形成方法。
  4. 前記アルコール系溶媒はメタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールのいずれか、またはこれらの混合溶媒である、
    請求項3に記載の有機膜の形成方法。
  5. 前記洗浄溶媒の沸点は前記不純物の沸点よりも低い、
    請求項1に記載の有機膜の形成方法。
  6. 前記洗浄工程において、
    前記塗布膜と前記洗浄溶媒とを接触させている時間は3分以上である、
    請求項1に記載の有機膜の形成方法。
  7. 前記真空ポンプには、潤滑成分と当該潤滑成分の酸化を防止する第1酸化防止剤とを含む潤滑剤、および、樹脂材料と当該樹脂材料の酸化を防止する第2酸化防止剤とを含む真空シール材の少なくとも一方が用いられており、
    前記不純物は、前記第1および前記第2酸化防止剤の少なくとも一方である、
    請求項1に記載の有機膜の形成方法。
  8. 前記第1酸化防止剤は、前記潤滑成分の酸化の進行を停止させる第1連鎖停止剤であり、
    前記第2酸化防止剤は、前記樹脂材料の酸化の進行を停止させる第2連鎖停止剤である、
    請求項7に記載の有機膜の形成方法。
  9. 前記第1および第2連鎖停止剤はジフェニルアミン系化合物またはフェノール系化合物である、
    請求項8に記載の有機膜の形成方法。
  10. 前記洗浄工程は、さらに、前記不純物の除去に用いた洗浄溶媒を前記塗布膜から物理的に除去する除去工程を含む、
    請求項1に記載の有機膜の形成方法。
  11. 前記洗浄工程後、さらに、
    前記不純物の除去を終えた塗布膜の上に、真空成膜法に基づき機能膜を形成する機能膜形成工程を含む、
    請求項1に記載の有機膜の形成方法。
  12. 前記不純物は、ジフェニルアミン系化合物またはフェノール系化合物である、
    請求項1に記載の有機膜の形成方法。
  13. 上面に第1電極が形成されているとともに、当該第1電極の上方に有機発光層を構成する材料と溶媒とを含む有機発光層材料が塗布された基板を準備する準備工程と、
    前記有機発光層材料塗布後の基板を真空チャンバー内に載置し、前記真空チャンバーに接続された真空ポンプにより、当該真空チャンバー内を真空状態に維持する真空工程と、
    前記有機発光層材料塗布後の基板を前記真空チャンバーから取り出し、前記有機発光層材料の塗布膜に付着した不純物を、洗浄溶媒を用いて除去する洗浄工程と、
    前記不純物の除去を終えた塗布膜の上方に第2電極を形成する第2電極形成工程と、を含む、
    有機EL素子の製造方法。
  14. 前記洗浄溶媒は極性溶媒であり、前記塗布膜を溶解させることなく前記不純物を前記塗布膜から離間させる、
    請求項13に記載の有機EL素子の製造方法。
  15. 前記洗浄溶媒は、炭素数が4以下のアルコール系溶媒である
    請求項14に記載の有機EL素子の製造方法。
  16. 前記アルコール系溶媒はメタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールのいずれか、またはこれらの混合溶媒である、
    請求項15に記載の有機EL素子の製造方法。
  17. 前記洗浄溶媒の沸点は前記不純物の沸点よりも低い、
    請求項13に記載の有機EL素子の製造方法。
  18. 前記洗浄工程において、
    前記塗布膜と前記洗浄溶媒とを接触させている時間は3分以上である、
    請求項13に記載の有機EL素子の製造方法。
  19. 前記真空ポンプには、潤滑成分と当該潤滑成分の酸化を防止する第1酸化防止剤とを含む潤滑剤、および、樹脂材料と当該樹脂材料の酸化を防止する第2酸化防止剤とを含む真空シール材の少なくとも一方が用いられており、
    前記不純物は、前記第1および前記第2酸化防止剤の少なくとも一方である、
    請求項13に記載の有機EL素子の製造方法。
  20. 前記第1酸化防止剤は、前記潤滑成分の酸化の進行を停止させる第1連鎖停止剤であり、
    前記第2酸化防止剤は、前記樹脂材料の酸化の進行を停止させる第2連鎖停止剤である、
    請求項19に記載の有機EL素子の製造方法。
  21. 前記第1および第2連鎖停止剤はジフェニルアミン系化合物またはフェノール系化合物である、
    請求項20に記載の有機EL素子の製造方法。
  22. 前記洗浄工程は、さらに、前記不純物の除去に用いた洗浄溶媒を前記塗布膜から物理的に除去する除去工程を含む、
    請求項13に記載の有機EL素子の製造方法。
  23. 前記洗浄工程後であって前記第2電極形成工程の前に、さらに、
    前記不純物の除去を終えた塗布膜の上に、真空成膜法に基づき機能膜を形成する機能膜形成工程を含む、
    請求項13に記載の有機EL素子の製造方法。
  24. 前記機能膜は電子輸送層である、
    請求項23に記載の有機EL素子の製造方法。
  25. 前記不純物は、ジフェニルアミン系化合物またはフェノール系化合物である、
    請求項13に記載の有機EL素子の製造方法。
  26. 請求項13に記載の有機EL素子の製造方法により製造された有機EL素子を用いた、
    有機EL表示パネル。
  27. 請求項13に記載の有機EL素子の製造方法により製造された有機EL素子を用いた、
    有機EL表示装置。
  28. 請求項13に記載の有機EL素子の製造方法により製造された有機EL素子を用いた、
    有機EL発光装置。
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