JP2013204293A - 防滑性床材 - Google Patents

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Abstract

【課題】防滑性床材に設けた滑り防止用の凸条部が、周期性を有する方向が存在するが故に生じる防滑性能の異方性を改善する。
【解決手段】防滑性床材10は基材1の防滑面に、凸条部3と凸条部で周囲を取り囲まれる凹陥部4とからなる網状凹凸部2を有する。凸条部の平面視形状であり凹陥部に対応する多数の閉領域Aを画成する凸条パターン3Pが、二つの分岐点Bの間を延びて閉領域を画成する多数の境界線分Lから構成され、(a)一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが3.0≦N<4.0、(b)閉領域の形状が、五角形、六角形及び七角形から選ばれた2種以上の多角形を含んでなり六角形の閉領域が最多、(c)同一辺数の多角形の形状は一定でない、の3条件を満たす。さらに、(d)閉領域の配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んでなるパターンである。の条件も満たすのが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、人の体重が加わる面を有する内装及び外装の各種床材、例えば、建築物の床、エスカレータや階段の踏板、建築現場の足場などにおいて、表面に防滑性能を有する防滑性床材に関する。
居室、廊下、浴室、厨房、玄関等の室内の床、或いは、エスカレータや階段の踏板、建築現場の足場などの床材の表面には、人が滑って転倒するのを防止する為に、凹状の溝が形成されていることがある(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
図15の斜視図で示す防滑性床材20は、基材21の防滑面として網状凹凸部22を有し、この網状凹凸部22は縦横に走る滑り防止用の凸条部23と、この凸条部23によって周囲を取り囲まれる凹陥部24とから構成されている。前記凸条部23につして、防滑面をその法線方向から、つまり上から観察したときの平面視形状である、凸条パターン21Pは、図16(A)の様な平行線群からなるストライプ状、図16(B)の様な図15でも例示した正方格子状、図16(C)の様な三角格子状、図16(D)の様な六角格子状、など、各種知られている。
特開昭61−235389号公報 特許第2599501号公報 特許第2680372号公報 特開平4−80404号公報
しかしながら、上記従来の防滑性床材20は、網状凹凸部22における凸条部23及び凹陥部24の配置を特定する凸条パターン21Pが、特定の方向に一定の周期性を有する。このため、必然的に防滑性能に異方性が生じる。つまり、防滑性能に滑り易い方向と、この滑り易い方向よりも滑り難い方向とが存在することになる。
図17の斜視図は、防滑性能の異方性を説明する図である。同図の防滑性床材20は防滑面として、図16(B)で例示したような格子状に、互い直交する方向d1と方向d2とに一定の間隔で配列された要素からなる凸条部232と、この凸条部3で周囲を囲繞された凹陥部24からなる網状凹凸部22を有する。こうした凸条部32に一定の周期性を有する場合、防滑性が、凸条部32乃至は凹陥部24の配列方向である方向d1と方向d2とに対しては同じであったとしても、これらの方向と傾斜した方向、例えば図面で方向d3に対しては異なり、滑り易くなることがある。つまり、方向d1と方向d2とは難滑方向となり、方向d3は易滑方向となる。したがって、こうした異方性の網状凹凸部22を有する従来の防滑性床材20では、易滑方向に向かって足底から力が掛かると、滑って転倒し易いという欠点があった。
また、滑りを防ぐ為に表面を粗面化した場合には、この粗面部が最も磨耗しやすく、磨耗時の外観も損なわれる欠点があった。
すなわち、本発明の課題は、防滑性床材の防滑面に設けた滑り防止用の溝が、繰返周期を有する方向が存在するが故に生じる防滑性能の異方性を、改善することである。
そこで、本発明では、次の様な構成の防滑性床材とした。
(1)基材の防滑面に網状凹凸部を有し、この網状凹凸部が凸条部とこの凸条部で周囲を囲繞される凹陥部とから構成される防滑性床材において、
前記凸条部を防滑面の法線方向からみたときの平面視形状であり前記凹陥部に対応する多数の閉領域を画成する凸条パターンが、二つの分岐点の間を延びて前記閉領域を画成する多数の境界線分から構成され、
(a)一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0である。
(b)前記閉領域の形状が、五角形、六角形及び七角形から選ばれた2種以上の多角形を含んでなり、前記凸条パターン中に含まれる閉領域の数は六角形の閉領域が最多である。
(c)前記凸条パターンを構成する多角形は同一辺数の多角形の形状は一定でない。
の3条件を満たす、防滑性床材。
(2)前記凸条パターンは、更に、
(d)前記閉領域の配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んでなるパターンである。
の条件を満たす、前記(1)の防滑性床材。
(3)前記基材の前記網状凹凸部の面とは反対側の面に、支持体が積層されてなる、上記(1)または(2)の防滑性床材。
本発明の防滑性床材によれば、防滑面である網状凹凸部が有する凸条部が呈する凸条パターンが、周期性がない特定のパターンとなるために、凸条パターンが周期的パターンであるが故に生じる防滑性能の異方性を、改善することができる。
本発明による防滑性床材の一実施形態を説明する斜視図。 凸条部(A)〜(D)と凹陥部(E)の断面形状を例示する断面図。 凸条パターンの一例を示す平面図。 凸条パターンで画成される閉領域に、周期性を有する方向が存在しないことを説明する平面図。 凸条パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。 凸条パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。 凸条パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。 決定された母点群の分散の程度を絶対座標系と相対座標系で説明する図。 決定された母点からボロノイ図を作成して凸条パターンを決定する方法を示す図。 防滑性床材の形状例を示す平面図(A)と、斜視図(B)。 本発明による防滑性床材の別の実施形態を例示する断面図。 網状凹凸部の凹条形状を作製する方法の一例を示す説明図。 型面に於ける凹条形状と網状凹凸面に於ける凸条部の形状を示す断面図。 凸条パターンが防滑性床材の寸法の1/3以上の大きさの単位パターン領域として繰り返された一例を示す平面図。 網状凹凸部を有する従来の防滑性床材の一例を示す斜視図。 従来の網状凹凸部の凹凸パターンを例示する平面図。 従来の凹凸パターンが周期的であるが故に防滑性に異方性が生じることを説明する斜視図。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、説明上の都合に応じて適宜、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
先ず、本発明による防滑性床材を、図1の斜視図で示す一実施形態例を参照して説明する。同図に示す本発明の防滑性床材10は、基材1の防滑面の部分に網状凹凸部2を有し、この網状凹凸部2は凸条部3とこの凸条部3によって周囲を囲繞(いにょう)される凹陥部4とから構成されている。
前記基材1は、従来の防滑性床材と同様に、金属、樹脂、コンクリート、石材等からなる。
前記凸条部3の断面形状は、適宜な形状で良く、例えば、図2(A)の四角形状、図2(B)の三角形状、図2(C)の台形形状、図2(D)の半円状形状、などである。
前記凸条部3は、従来の周期的パターンとは異なった本発明特有の平面視パターンを呈する。すなわち、凸条部3は、網状凹凸部2となった防滑面に垂直な法線nの方向から見たときの平面視形状が、本発明特有の凸条パターン3Pとなっている。この凸条パターン3Pは、凹陥部4に対応する多数の閉領域Aを画成する。この凸条パターン3Pは、二つの分岐点Bの間を延びて閉領域Aを画成する多数の境界線分Lから構成される。
しかも、この凸条パターン3Pは、次の(a)、(b)及び(c)の3条件を満すパターンとなっている。
(a)一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0である。
(b)前記閉領域Aの形状が、五角形、六角形及び七角形から選ばれた2種以上の多角形を含んでなり、前記凸条パターン3P中に含まれる閉領域の数は六角形の閉領域が最多である。
(c)前記凸条パターン3Pを構成する多角形は同一辺数の多角形の形状は一定でない。
さらに、本実施形態においては、この凸条パターン3Pは、次の(d)の条件も満すパターンとなっている。
(d)前記閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んでなるパターンである。
本実施形態では、このような凸条パターン3Pとすることにより、凸条パターン3Pが、従来のような周期的パターンではなくなる為に、周期的パターンであるが故に生じていた防滑性能の異方性を改善することができる。
以下、本発明に特徴的な凸条パターン3Pについて先ず詳細に説明し、その後で、各構成要素及びその材料、形成法などについて説明する。
〔凸条パターン3Pとこれにより画成される閉領域A〕
凸条パターン3Pは、凸条部3を、凸条部3を有する網状凹凸部2の面、すなわち防滑面の法線nに平行な方向から観察した場合における平面視形状である。
凸条パターン3Pについて、図1、図3および図9を主として参照しながら説明する。
本発明において、防滑面の法線nとは、厳密には防滑面が凸条部3及び凹陥部4を有する網状凹凸部2の面であるため、防滑面を全体的かつ大局的に捉えたときの網状凹凸部2の包絡面に対する法線nの意味である。また、防滑面の包絡面は、通常は平面であることが多いが、防滑性床材10の用途によっては、防滑面の一部又は全部が、湾曲面である等、非平面であることもある。こうした非平面の防滑面においては、防滑面の法線nとは、注目する部分の防滑面における法線nを意味する。
凸条パターン3Pは、図3に示す如く、二つの分岐点Bの間を延びて閉領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成され、少なくとも以下の3条件を満たす。
(a)一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0、つまり、3.0以上で4.0未満である。
(b)前記閉領域Aの形状は、各閉領域Aの周囲を囲繞する境界線分Lの数が5、6、及び7である閉領域Aの形状から選ばれた2種以上の形状を含んでなり、且つ、前記凸条パターン3P中に含まれる閉領域Aは、各閉領域Aの周囲を囲繞する境界線分Lの数が6である閉領域Aが最多となっている。
尚、ここで周囲を囲繞する境界線分Lの数とは、閉領域Aが多角形である場合は、その多角形の角数(或いは辺数)と一致する。即ち、各閉領域Aを構成する境界線分Lが全て直線のみからなる場合は、上記条件(b)は、前記閉領域Aの形状は、五角形、六角形及び七角形から選ばれた2種以上の多角形を含んでなることを意味する。また、境界線分Lの数が6である閉領域Aは、六角形となる。
ちなみに、図3で例示する凸条パターン3Pについて、合計4631個の閉領域A(多角形)について計測したところ、
3角形 0個
4角形 79個
5角形 1141個
6角形 2382個
7角形 927個
8角形 94個
9角形 8個
10角形以上 0個
であり、六角形の閉領域Aの数が最多であった。
(c)周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の閉領域Aの形状は一定でないパターンとなっている。即ち、凸条パターン3Pを構成する閉領域Aはすべて同一形状では無く、少なくとも一部は他と異なる形状のものを含む。各閉領域Aを構成する境界線分Lが全て直線のみからなる場合は、この条件は、凸条パターン3Pを構成する多角形は同一の辺数の多角形の形状は一定でないことを意味する。
尚、特に本実施形態に於いては、以上に加えて更に、凸条パターン3Pは、閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないパターンとなっており、
(d)前記閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んでなるパターンである。
の条件も満たす。
尚、閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないことを、閉領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しない配列、とも言う。
図3および図9に示すように、凸条パターン3Pのライン部Ltは、多数の分岐点Bを含んでいる。凸条パターン3Pのライン部Ltは、両端において分岐点Bを形成する多数の境界線分Lから構成されている。すなわち、凸条パターン3Pのライン部Ltは、二つの分岐点Bの間を延びる多数の境界線分Lから構成されている。そして、分岐点Bにおいて、境界線分Lが接続されていくことにより、閉領域Aが画成されている。言葉を換えて言うと、境界線分Lで囲繞され、区画されて1つの閉領域としての閉領域Aが画成されている。
なお、図3および図9に示すように、ライン部Ltが境界線分Lのみから構成されているため、閉領域Aの内部に延び入って行き止まりとなるライン部Ltは存在しない。
凸条パターン3Pは、閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んでなるパターンとなって、防滑性能の異方性を改善する効果が充分に発現される為には、その全領域が、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の閉領域Aの形状は一定でないようにすることが好ましい。好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の閉領域Aの50%以上が互いにその形状が異なるようにする。より好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の閉領域Aを凸条パターン3Pの全域に亙って、全て互いにその形状が異なるようにする。尚、こうした凸条パターン3Pに含まれる閉領域Aは、その周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の閉領域Aについては、その形状が一定でないことに加えて、更にその面積も一定でないことが、より好ましい。これは、言い換えると、凸条パターン3Pに含まれる閉領域Aのうち、周囲を囲繞する境界線分数が同一となる閉領域Aの形状、又は形状及び面積がすべて同一ではなく、少なくとも一部は他と異なるものになると言うことを意味する。
なお、以上に於いて、2つの閉領域A同士が互いに合同な図形であって且つその向きが異なる場合も、その2つの閉領域Aの形状は互いに異なると見做す。
防滑性能の異方性を確実に解消する為には、凸条パターン3Pの全領域がこのような領域のみから構成されていることが好ましい。本実施形態はこの様な構成からなる。本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、単に凸条パターン3Pのパターンを不規則化するのではなく、凸条パターン3Pの閉領域Aが、閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在せず、また周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の閉領域Aの面積及び形状は一定でないように凸条パターン3Pのパターンを画成することにより、凸条パターンが周期的パターンである構成の従来の防滑性床材20で生じる防滑性能の異方性を、極めて効果的に改善することが出来ると判明した。
[繰返周期の不存在]
図4は、凸条パターン3Pで画成される多数の閉領域Aが、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の閉領域Aの面積及び形状は一定でない。そして、閉領域Aが、一定の周期で配置されている領域が存在せず、繰返周期が存在しない、言い換えると、閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しない、ことを説明するXY平面に平行な板面に於ける平面図である。この板面の面内において、同図では、任意の位置で任意の方向を向く一本の仮想的な直線diが選ばれている。
この一本の直線diが、ライン部Ltの境界線分Lと交差し交差点が形成される。この交差点を、図面では図面左下から順に、交差点c1,c2,c3,・・・・・,c9として図示してある。隣接する交差点、例えば、交差点c1と交差点c2との距離が、前記或る一つの閉領域Aの直線di上での寸法t1である。次に、寸法t1の閉領域Aに対して直線di上で隣接する別の閉領域Aについても、同様に、直線di上での寸法t2が定まる。そして、任意位置で任意方向の直線diについて、直線diと交差する境界線分Lとから、任意位置で任意方向の直線diと遭遇する多数の閉領域Aについて、該直線di上における寸法として、t1,t2,t3,・・・・・・,t8が定まる。そして、t1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びには、周期性が存在しない。
図4では、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8は、判り易い様に図面下方に、直線diと共に凸条パターン3Pとは分離して描いてある。
この直線diを図4で図示のものから任意の位置で任意の角度回転させて別の方向について各閉領域Aの寸法t1,t2,・・を求めると、やはり図4の場合と同様、直線di方向に対して繰返し周期性は見られない。
すなわち、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びの様に、境界線分Lで画成された閉領域Aには繰返周期を持つ方向が存在しない。
言い換えると、閉領域Aの配置において、任意位置を通る任意方向の仮想的線分di上での閉領域Aの寸法tiの並びの数列が非周期関数となる。すなわち、t(i)=t(i+M)となるMが存在しない(i,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
このように、閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないことを、閉領域Aが一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない、と表現する。
さらに、本実施形態による凸条パターン3Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている。このように一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている場合、凸条パターン3Pの配列パターンを、図16(B)に示された正方格子パターン(N=4.0)から大きく異なるパターンとすることができる。また、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている場合には、図16(D)に示されたハニカム配列(N=3.0)からも大きく異なるパターンとすることができる。そして、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nを3.0≦N<4.0とした上で、閉領域Aの配列を不規則化して、閉領域Aの配置に周期性を有する方向が安定して存在しないようにすることが可能となり、その結果、防滑性能の異方性を極めて効果的に改善することが可能となることが、確認された。
なお、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nは、厳密には、凸条パターン3P内に含まれる全ての分岐点Bについて、延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出することになる。ただし、実際的には、ライン部Ltによって画成された一つ当たりの閉領域Aの大きさ等を考慮した上で、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、後述の寸法例で閉領域Aが形成されている凸条パターン3Pにおいては、50mm×50mmの部分)に含まれる分岐点Bについて延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出し、算出された値を当該凸条パターン3Pについての一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nとして取り扱うようにしてもよい。
実際に、図3に示された溝1gの凸条パターン3Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている。一例を挙げると、図3の凸条パターン3Pの場合、合計387個の分岐点Bについて計測したところ、境界線分Lが3本の分岐点Bが373個、境界線分Lが4本の分岐点Bが14個であり(分岐する境界線分Lの数が5個以上の分岐点は0個)、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数(平均分岐数)は3.04個であった。
[凸条パターン3Pのパターン形状の作成方法]
ここで、本発明固有の上記凸条パターン3Pのパターンを作成する方法の一例を以下に説明する。
ここで説明する方法は、母点を決定する工程と、決定された母点からボロノイ図を作成する工程と、ボロノイ図における一つのボロノイ境界によって結ばれる二つのボロノイ点の間を延びる境界線分Lの経路を決定する工程と、決定された経路の太さを決定して各境界線分Lを画定して凸条パターン3P(ライン部Lt)のパターンを決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。なお、上述した図3に示されたパターンは、実際に以下に説明する方法で決定されたパターンである。
まず、母点を決定する工程について説明する。最初に、図5に示すように、絶対座標系O−X−Y(この座標系O−X−Yは普通の2次元平面であるが、後述の相対座標と区別する為、頭に「絶対」を付記する)の任意の位置に一つ目の母点(以下、「第1の母点」と呼ぶ)BP1を配置する。次に、図6に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れた任意の位置に第2の母点BP2を配置する。言い換えると、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径rの円の円周(以下、「第1の円周」と呼ぶ)上の任意の位置に、第2の母点BP2を配置する。次に、図7に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つ第2の母点BP2から距離r以上離れた任意の位置に、第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点BP2,BP3から距離r以上離れた任意の位置に、第4の母点を配置する。
このようにして、次の母点を配置することができなくなるまで、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、第2の母点BP2を基準にしてこの作業を続けていく。すなわち、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を配置する。第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更して、同様の手順で母点を形成していく。
以上の手順で、凸条パターン3Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。凸条パターン3Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。ここまでの処理により、2次元平面(XY平面)に於いて不規則的に配置された母点群が、凸条パターン3Pが形成されるべき領域内に一様に分散した状態となる。
このような工程で2次元平面(XY平面)内に分布された母点群BP1、BP2、・・、BP6(図8(A)参照)について、個々の母点間の距離は一定では無く分布を有する。但し、任意の隣接する2母点間の距離Rの分布は完全なランダム分布(一様分布)でも無く、平均値RAVGを挾んで上限値RMAXと下限値RMINとの間の範囲ΔR=RMAX−RMINの中で分布している。なお、ここで、隣接する2母点であるが、母点群BP1、BP2、・・からボロノイ図を作成した後、2つのボロノイ領域XAが隣接していた場合に(図9参照)、その2つのボロノイ領域XAの母点同士が隣接していると定義する。
なお、図8(A)に於いて、これら母点群から得られるボロノイ境界(図9参照)を参考までに破線で図示してある。
即ち、ここで説明した母点群について、各母点を原点とする座標系(相対座標系o−x−yと呼称し、一方、現実の2次元平面を規定する座標系を絶対座標系O−X−Yと呼称する)上に、原点に置いた母点と隣接する全母点をプロットした図8(B)、図8(C)、・・等のグラフを全母点について求める。そして、これら全部の相対座標系上の隣接母点群のグラフを、各相対座標系の原点oを重ね合わせて表示すると、図8(D)の如きグラフが得られる。この相対座標系上での隣接母点群の分布パターンは、母点群を構成する任意の隣接する2母点間の距離が0から無限大迄の一様分布では無く、原点oからの距離がRAVG−ΔRからRAVG+ΔR迄の有限の範囲(半径RMINからRMAX迄のドーナツ形領域)内に分布していることを意味する。
以上の様にして、各母点間の距離を設定することによって、該母点群から以下に説明する方法で得られるボロノイ領域XA、更には、これから得られる閉領域Aの大きさ(乃至は閉領域Aの面積)の分布についても、一様分布(完全ランダム)では無く、有限の範囲内に分布したものとなる。
なお、図8(D)からわかる様に、任意の1母点BPから見た他の母点BPの方位(角度)分布は等方的(乃至は略等方的)である。このことが、こうした母点(群)BPから生成される凸条パターン3Pに於ける閉領域Aの方位(角度)分布が等方的(乃至は略等方的)となることに対応する。
この様に構成することにより、閉領域Aの面分布がより均一化し、防滑性能の異方性がより一層効果的に改善する。
また、防滑性能の強弱レベルを面内においてより均一化させる為には、閉領域Aの大きさDの分布を、
AVG−3σ≦D≦DAVG+3σ
としたときに(但し、DAVGは大きさDの平均値、σは大きさDの分布の標準偏差)、
3σ=0.1DAVG〜0.5DAVG
とするのが好ましい。
閉領域Aの大きさDは、全ての閉領域Aについて、以下の定義とする。
(1)或る一つの閉領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描ける場合は、この閉領域Aの外接円直径を以って、大きさDとする。
(2)或る一つの閉領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描けない場合は、この閉領域Aに属する2分岐点B間の距離の最大値(多角形の場合は最長の対角線長)を以って、大きさDとする。
なお、以上の母点を決定する工程において、距離rの大きさを変化させることにより、一つあたりの閉領域Aの大きさDを調節することができる。具体的には、距離rの大きさを小さくすることにより、一つあたりの閉領域Aの大きさDを小さくすることができ、逆に距離rの大きさを大きくすることにより、一つあたりの閉領域Aの大きさDを大きくすることができる。
次に、図9に示すように、配置された母点を基準にして、ボロノイ図を作成する。図9に示すように、ボロノイ図とは、隣接する2つの母点BP、BP間に垂直二等分線を引き、その各二等分線同士の交点で囲まれた線分で構成される図である。ここで、垂直二等分線からなる線分をボロノイ境界XBと呼び、ボロノイ境界XBの端部をなすボロノイ境界XB同士の交点をボロノイ点XPと呼び、ボロノイ境界XBに囲まれた領域をボロノイ領域XAと呼ぶ。
図9のように作成されたボロノイ図において、各ボロノイ点XPが、凸条パターン3Pの分岐点Bをなすようにする。そして、一つのボロノイ境界XBの端部をなす二つのボロノイ点XPの間に、一つの境界線分Lを設ける。この際、境界線分Lは、図9に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定してもよいし、あるいは、他の境界線分Lと接触しない範囲で二つのボロノイ点XPの間を種々の経路(例えば、円(弧)、楕円(弧)、抛物線、双曲線、正弦曲線、双曲線正弦曲線、楕円函数曲線、ベッセル関数曲線等の曲線状、折れ線状等の経路)で延びるようにしてもよい。なお、境界線分Lは、図9に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定した場合、各ボロノイ境界XBが、境界線分Lを構成するようになる。
各境界線分Lの経路を決定した後、各境界線分Lの線幅(太さ)を決定する。境界線分Lの線幅は、作成された凸条パターン3Pを呈する凸条部3の幅W3である。この幅W3とは、後述図13(B)で説明するように、注目する部分において凸条部3の延在方向に直交しなお且つ網状凹凸部2の包絡面の法線nに平行な面(これを主切断面とも言う)に於ける、凸条部3の頂上部3tpから底部3bに至る部分における最大の幅である。凸条パターン3Pは凸条部3を上からみた平面視形状であるので、例えば、凸条部3が図13(B)の様な台形形状の場合は、その最大の幅は底部3btの幅Wbであり、幅Wbが幅W3に該当する。
この幅W3は、防滑性能の強弱レベル、凸条部3の機械的強度、歩行感触などを勘案して、決定される。
以上のようにして、凸条パターン3Pのパターン形状を決定することができる。
以上のような本実施形態によれば、防滑性床材10の防滑面の網状凹凸部2における凸条部3が呈する平面視形状である凸条パターン3Pが、凹陥部4に対応する多数の閉領域Aを画成し、また、二つの分岐点Bの間を延びて閉領域Aを画成する多数の境界線分Lから構成され、しかも、(a)一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0である。(b)前記閉領域Aの形状が、五角形、六角形及び七角形から選ばれた2種以上の多角形を含んでなり、前記凸条パターン3P中に含まれる閉領域Aの数は六角形の閉領域Aが最多である。(c)凸条パターン3Pを構成する多角形は同一辺数の多角形の形状は一定でない。(d)閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んでなるパターンである。と言う4条件を満たすようになっている。
この結果、従来の防滑性床材において、凸条パターンが周期的パターンであるが故に生じる防滑性能の異方性を、防滑性能の強弱レベルの面内不均一性の発生を抑制しつつ、効果的に改善することができる。
次に、溝形状、各構成要素の材料、形成法などについて説明する。
〔凸条部3の断面形状〕
凸条部3は、床材として人の体重を第1に受ける部分となる。
凸条部3の主切断面における断面形状は、上述図2を参照して概説したように特に限定はない。例えば、図2(A)の直角四角形状、図2(B)の底辺を凹陥部4の底面4bと同一水準とする三角形状、図2(C)の上底に対して寸法の大きい下底を凹陥部4の底面4bと同一水準とする台形形状、図2(D)の切片を凹陥部4の底面4bと同一水準とする半円状形状、などである。前記半円状の円状とは、凹陥部4の面と同一水準の切片以外が、凸条部3の内部から外側に向かって凸形状をした、円、楕円などの曲線のみからなる形状であり、放物線、双曲線、カージオイド、サイクロイド等の曲線なども含む。即ち、ここで言う半円状の円とは必ずしも真円のみには限定されない。
なお、ここで、断面形状とは、網状凹凸部2の包絡面に垂直な面であって、凸条部3が走る延在方向に直交する面に於ける断面形状(主切断面形状)のことである。
凸条部3の高さH、及びW3は10〜5000μm程度である。凸条部3の幅W3とは、図13(B)で説明すると、凸条部3の頂上部3tpから底部3bに至る部分における最大の幅である。
幅W3とは、後述図13(B)で説明するように、注目する部分において凸条部3の延在方向に直交しなお且つ網状凹凸部2の包絡面の法線nに平行な面(これを主切断面とも言う)に於ける凸条部3の頂上部3tpから底部3bに至る部分における幅のなかで最大の幅である。同図では、底部3btに於ける幅Wbが該当する。
凸条部3の頂上部3tpから底部3bに至る部分における最小の幅は、0以上であり。W3以下である。図2(B)の三角形状、或いは図2(D)の半円状形状の場合は、最小幅は頂上部3tpの幅Wtであり、このWtゼロである。
頂上部3tbの幅Wtと底部側の幅Wbとの関係は、Wt>wb、Wt=Wb、Wt<Wbの何れも可能であるが、図12の如くの成形型で賦形する製法を採用する場合の離型性の点からは、Wt<Wbとすることが好ましい。
最大の幅である幅W3、及び最小の幅は、防滑性能の強弱レベル、凸条部3の機械的強度、歩行感触などを勘案して、決定される。
凸条部3における頂上部3tbの表面は粗面化して、粗面によって防滑性を向上させてもよい。
〔凹陥部4〕
凹陥部4は、網状凹凸部2において、前記した凸条パターン3Pで画成される閉領域Aに対応する部分である。凹陥部4は、凹陥部4の深さを一定とした場合、凹陥部4の大きさが大きくなるほど、凸条部3の次に靴底が接触する可能性が増す部分であり、凸条部3の次に床材として人の体重を受け得る部分となる。
[凹陥部4の断面形状]
凹陥部4の断面形状のうち、底面4bを除いた部分である斜面は、前記凸条部3の斜面でもある。よって、凹陥部4を示す図2(E)と凸条部3を示す図2(C)との様に、この部分では、凹陥部4の断面形状と凸条部3の断面形状とは相補的である。
凹陥部4の底面4bは、凹陥部4がその深さに対して比較的広い場合に凹陥部4が人の体重を第2に受ける部分となる。このため、凹陥部4の底面4btは、通常、防滑面とするる網状凹凸部2の包絡面に平行な平面となる。
凹陥部4の幅W4は10〜10000μm程度である。凹陥部4の幅W4とは、図2(E)で示すとおり、凸条部3の頂上部3tpと同一水準に於ける幅である。幅W4は、閉領域Aの大きさDに対応する寸法要素であるが、切断面に応じて異なる値となる。
凹陥部4の深さは、凸条部3の高さHに等しい。
凹陥部4の底面4bはは粗面化して、粗面によって防滑性を向上させてもよい。
また、凹陥部4の底面4bには、防滑性床材10の下部への水抜き穴をあけて効果的な排水もできる様にしてもよい。
〔凸条部3及び凹陥部4からなる網状凹凸部2の形成方法〕
凸条部3及び凹陥部4からなる網状凹凸部2の形成方法は、特に限定されない。例えば、特許第2980682号公報で開示されている様な従来公知の防滑性床材における溝形成法を、網状凹凸部2を構成する材料に応じて適宜採用すれば良い。例えば、網状凹凸部2を構成する基材1が金属である場合には、エッチング法を採用することができる。或いは、網状凹凸部2を構成する基材1が樹脂である場合には、フォトポリマー法(2P法)を採用することができる。後述図12を参照する実施例ではフォトポリマー法で形成する。
〔基材1〕
凹陥部4及び凸条部3からなる網状凹凸部2を有する基材1を構成する材料は、特に限定はない。従来公知の防滑性床材における各種材料を適宜採用することができる。
基材1には、金属材料、樹脂材料、非金属無機材料などを用いることができる。前記金属材料としては、鉄(純鉄)、或いは炭素鋼、ステレンレス鋼などの鉄合金、アルミニウム、銅、チタン等を用いることができる。前記樹脂材料としては、熱可塑性樹脂、或いは熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂の硬化物、ゴムなどを用いることができる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオフレィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂などを用いることができ、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等を用いることができ、電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート(含むメタクリレート)、エポキシなどのモノマー又はプレポリマーを1種以上含み、紫外線、電子線などの電離放射線照射により重合乃至は架橋し得る樹脂組成物を用いることができる。前記ゴムとしては、天然ゴム、合成ゴム、再生ゴムなどを用いることができる。前記非金属無機材料としては、陶磁器、ガラスなどのセラミックス、コンクリート、石材などを用いることができる。
[防滑性床材10の全体形状]
防滑性床材10の全体形状は、用途に応じた形状となり特に限定はない。例えば、図10(A)で示すような長方形や正方形などの板状乃至はシート状、図10(B)で示すようなロールに巻き取り可能な可撓性を有する帯状である。
防滑性床材10の寸法は、図10(A)の様な板状乃至はシート状の場合では、縦及び横は、例えば、50〜500mm程度、厚みは、例えば、5〜100mm程度とすることができる。また、図10(B)の様な帯状の場合は、幅が例えば500〜1800mm、厚みは、例えば、0.1〜5mm程度とすることができる。
〔変形形態〕
本発明の防滑性床材10は、上記した形態以外のその他の形態をとり得る。ここでは、その一部を説明する。
[防滑性床材10の層構成]
防滑性床材10は、図1で示した上述実施形態のように、防滑面とする網状凹凸部2を構成する基材1のみからなる単層構成でも良いが、他の層を積層した複層構成とすることもできる。
図11で示す別の実施形態例は、基材1の網状凹凸部2の面とは反対側の面に、支持体5が積層された、2層構成(積層構成)の例である。
支持体5は、基材1それ自身では機械的強度が不足する場合、或いは、フォトポリマー法による基材1の形成のように、網状凹凸部2を有する基材1の形成を容易にする場合などの為に、設けられる。支持体5によって、基材1は専ら防滑性能を主体に設計し、支持体5は専ら防滑性床材10の全体としての機械的強度、外形形状などを主体に設計することができる。
(支持体5)
支持体5には、前記基材1として例示した物の中から選択して用いることができる。さらに、支持体5には、木材、繊維、不織布などを用いることができる。例えば、木材としては、杉、檜、松、ラワン、チーク、樫などからなる単板、合板、集成材、パーティクルボード、中質繊維板(MDF)などを用いることができる。繊維及び不織布としては、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等からなる合成繊維、綿、絹、麻などからなる天然繊維を用いたものを用いることができる。
[単位パターン領域Sとしての繰返し]
上述した実施形態では、防滑性床材10の防滑面とする網状凹凸部2の全領域において、凸条部3が呈する凸条パターン3Pによって画成される閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないようになっている例を説明した。しかしながら、図14の様に、その内部に於いて凸条パターン3Pの全領域が、単位パターン領域Sを複数集合して凸条パターン3Pの全領域が構成されるようにして、且つ各単位パターン領域S内に於いては、複数の閉領域Aが、その配置に周期性を有する方向が存在しないパターンで配置されている領域からなるようにしてもよい。
すなわち、この形態に於いては、凸条パターン3Pの全領域中に、局所的に見たときに、同一パターンで閉領域群が配置されてなる単位パターン領域Sを2箇所以上含むようになる。この場合、特定方向について、一定周期で4箇所以上の繰返しが無ければ、単位パターン領域S同士の繋ぎ目は実質上目立ち難く、外観上の見栄えの点で無視し得る。もちろん、単位パターン領域S中で防滑性能の異方性は改善されている。この例において、一つの単位パターン領域S内における凸条パターン3Pのパターンは、例えば、図5〜図9を参照しながら説明したパターン作成方法と同様にして作成することができる。
特に、防滑面とする網状凹凸部2が大面積となる防滑性床材10に対しては、凸条パターン3Pが、複数の単位パターン領域Sの配列から構成されていて、且つ各々の単位パターン領域S内に於いては互いに同一のパターンで閉領域Aが配置されている構成とした複数の単位パターン領域Sを含む形態とした方が、凸条パターン3Pのパターン作成を格段に容易化することが可能となる点において好ましい。
なお、特に一種類の単位パターン領域Sを図14に示す様に縦横に複数配置する例においては、特定方向(図面縦方向と横方向の2方向)で単位パターン領域Sとしての繰返しが存在する。図14の実施形態に於いては、横方向に繰返周期SP2、縦方向に繰返周期SP1を以って単位パターン領域Sが繰り返される。この条件下では、特定方向に於ける単位パターン領域Sの寸法をLsとし、該特定方向に延びる任意の仮想的な直線dj上において単位パターン領域Sが寸法Ls内に閉領域AをM個有するとき、直線dj上の或る閉領域Aに注目すると、直線dj上では閉領域Aの個数がM個分だけ離れた位置には、全く同じ寸法tj及び形状の閉領域Aが常に存在するという規則性を有する。すなわち、閉領域Aの直線dj上での寸法tjについて、直線dj上で順番に数えてk番目の寸法tj(k)と、そこから更にM番目の(k+M)番目の寸法tj(k+M)とが同じとなる、tj(k)=tj(k+M)の関係が成立する(k,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
しかし、この規則性は、単位パターン領域Sとしての繰返周期(前記で言えば寸法Lsがその繰返周期に該当する)に基づくものであり、閉領域Aとしての繰返周期(周期性)ではなく、各単位パターン領域S内に於いて閉領域Aがその配置に周期性を上記特定方向に持つことではない。
又、各単位パターン領域S内に於いては、閉領域A(凸条部3)の配置が特定方向に周期性を持たない為、本発明の奏すべき防滑性能の異方性の改善効果は、支障なく奏される。
図14に示された例では、防滑面とする網状凹凸部2が、同一の形状を有した六つの単位パターン領域Sに分割され、各単位パターン領域S内で、網状凹凸部2に存在する凸条部3が呈する凸条パターン3Pが同一に構成されている。そして、六つの単位パターン領域Sは、図14の縦方向(図の上下方向)に繰返周期SP1で三つの領域が並ぶとともに、図14の横方向に繰返周期SP2で二つの領域が並ぶように配列されている。
[意匠性の付与]
更に必要に応じて、本発明の防滑性床材10には美的外観を呈する為に、或いは各種情報表示機能を付与させる為に、各種の意匠性付与を行うことが出来る。
こうした意匠性付与の具体例としては、下記の如きものを本発明の奏すべき効果である防滑性能の異方性改善効果を実質上阻害しない範囲内で、適用すれば良い。
(1)着色;基材1又は支持体5中への染料、顔料等の着色剤を添加したり、或いは基材1又は支持体5の表面(網状凹凸部2側)、裏面(網状凹凸部2とは反対面側)、表裏両面の何れかの面に公知の印刷法、塗装法にて、着色塗膜を形成することにより、防滑床材10に所望の色彩を付与する。
(2)模様の形成;基材1又は支持体5の表面(網状凹凸部2側)、裏面(網状凹凸部2とは反対面側)、表裏両面の何れかの面に、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷等の印刷法にて、着色インキを用いて、所望の模様を付与する。模様としては、柾目柄、板目柄等の木板の表面外観からなる木目模様、大理石、花崗岩等の石板の表面外観からなる石目模様、布、織物等の纖維製品の表面外観からなる布目模様、文字、記号、幾何学図形等が挙げられる。
(3)金属層の形成;基材1又は支持体5の表面、裏面、表裏両面の何れかの面に、真空蒸着、スパッタリング、無電解メッキ等の手法によって、金、銀、銅、クロム、アルミニウム、ニッケル、真鍮等の金属の層を形成することによって、金属外観を付与する。
〔用途〕
本発明による防滑性床材10は、人の体重が加わる面を有する各種床材、例えば、居室、厨房、浴室、廊下、玄関、土間、ベランダ等の建築物の内外の床、車両、船舶、航空機等の乗り物の床、エスカレータや動く歩道などの人員搬送用コンベアにおける踏板や乗降口の床板、階段の踏板、人体の静電気除去用の導電性マット、鉄道、バス等の交通手段の駅のプラットフォームの床や階段又はエスカレータの踏み板、道路の路面や階段の水平面、建築現場の足場、プールサイドの床、マンホールの蓋等に適用できる。或いは、物品を置く棚や床などに、物品の防滑の為に適用しても良い。
次に、本発明の防滑性床材10の代表的実施形態について更に具体的に説明する。
[実施例1]
凸条パターン3Pとしては、図5〜図9を参照して説明した前記[凸条パターン3Pのパターン形状の作成方法]に準拠して作製した図3と同様のパターンを作成する。
支持体5には、帯状で厚み100μmの塩化ビニル樹脂(可塑剤としてジオクチルフタレートを樹脂100質量部に対して23質量部添加)のフィルムを用いた。
基材1には、電離放射線硬化性樹脂を用いた。この電離放射線硬化性樹脂は、ウレタンアクリレートプレポリマー20質量部、ヘキサンジオールジアクリレート30質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート30質量部を含む樹脂組成物である。
前記支持体5の片面に、前記樹脂組成物の硬化物からなり、前記凸条パターン3Pを呈する凸条部3と凹陥部4とから構成される網状凹凸部2を防滑面として有する硬化時の厚み30μmの基材1を形成して、防滑性床材10を作製した。
支持体5の片面に、所定パターンの凸条部3及び凹陥部4とからなる網状凹凸部2を有する基材1を形成する方法は、図12に示す様な、円筒状の円筒成形型Mを用いる製造形態でフォトポリマー法により行う。
図12の円筒成形型Mの型面には、図13(A)に示すような凹条3rを形成してある。この凹条3rは、図13(B)のような、これから形成する所定の凸条部3の凹状形状とは逆凹凸形状となっている。この凹条3rは、前記した凸条パターン3Pを用いて作製される。すなわち、円筒成形型Mは炭素鋼の中空円筒からなる鉄芯の表面にメッキにより銅層を被覆し、この銅層の表面にフォトエッチング方により凹条3rを形成してなる。
このような円筒成形型Mに対して、図12に示すように、先ず、前記フィルムからなる帯状(ウェブ状)の支持体5を巻取(図示せず)から繰り出して、この支持体5の片面に基材1を形成する。基材1を形成する為の前記樹脂組成物からなる塗工液は、回転している円筒成形型Mの型面にダイヘッド31により塗布する。次いで、塗工液32が塗布され回転している円筒成形型Mに対して、帯状の支持体5を押圧ローラ33により押圧し接触させ、塗布された塗工液32の一部を型面の凹部内部に充填させる。次に、円周方向に2機設置した電離放射線照射装置34a,34bにより、回転している円筒成形型M上で塗工液32に、電離放射線として電子線を175kV、3Mradの条件で順次照射して、塗布された塗工液32を硬化させると共に支持体5に密着積層した基材1とする。次いで、剥離ローラ35で円筒成形型Mから、基材1とこれに密着積層した支持体5とを一体として剥離することで、支持体5と基材1との2層構成で、所定パターンの凸条部3と凹陥部4からなる網状凹凸部2を有する基材1が、支持体5上に積層された、帯状の防滑性床材10が作製される。
こうして、図3に示す凸条パターン3Pを呈する凸条部3が、型面上で図13(A)に示す断面が台形形状の凹条3rから、基材1に図13(B)に示す断面が台形形状の凸条部3として形成される。
寸法は、凸条パターン3Pに於いて境界線分Lの幅は、型面上において凹条3rの(底部の)幅とし、基材1の網状凹凸部2に於いて凸条部3の頂上部3tpの幅Wtに該当する。この凸条部3の幅Wtは300μmであり、凹陥部4の平面をなす底面4btと同水準に於ける、凸条部3の底部3btに於ける幅Wbが500μmである。
型面上において凹条3rの深さVは、基材1において凸条部3の高さHであり、この深さVは27μmである。
凸条パターン3Pにおいて、凹陥部4に対応する閉領域Aの大きさとしての最大対角線長D(或る閉領域A内に於ける二つの分岐点B間の最大距離)の平均値DAVGは5mmである。閉領域Aは型面上に於いては凸部であり網状凹凸部2に於いては凹陥部4に該当する。
以上の様にして、図11の如き、支持体5上に所定パターンの凸条部3及び凹陥部4からなる網状凹凸部2を防滑面として有する基材1が形成された防滑性床材10を作製した。
[比較例1]
実施例1に於いて、凸条パターン3Pとして、閉領域Aの大きさとしての最大対角線長Dが2mmの正方形からなる正方格子とした以外は、実施例1と同様にして図15の様な防滑性床材20を作製した。正方格子は全て同じ寸法であるので、最大対角線長Dの平均DAVGも2mmである。
[比較評価]
実施例1および比較例1の防滑性床材を、次の様にして比較評価した。
防滑性床材をコンクリート製の平滑な床面上にウレタン樹脂の接着剤を介して貼着した。そして、両方の防滑性床材上を、同一人物が同一の靴を履いて様々な方向に歩行した。これを、人物および靴を替えて、合計5名が試みた。歩行時の滑り性を官能的に相対評価したところ、全員5名とも一致した評価となった。
結果は、実施例1の防滑性床材は、全方向とも滑り易さの差は無く、特に滑り易い方向は無かった。一方、比較例1の防滑性床材は、溝の格子対角線方向に歩いた場合、溝方向に歩いた場合に比べて、滑り易かった。
1 基材
2 網状凹凸部
3 凸条部
3P 凸条パターン
4 凹陥部
5 支持体
10 防滑性床材
20 従来の防滑性床材
21 基材
22 網状凹凸部
23 凸条部
24 凹陥部
A 閉領域
B 分岐点
BP,BP1,BP2,・・・ 母点
L 境界線分
Lt ライン部(境界線分の集合)
M 円筒成形型
S 単位パターン領域

Claims (3)

  1. 基材の防滑面に網状凹凸部を有し、この網状凹凸部が凸条部とこの凸条部で周囲を囲繞される凹陥部とから構成される防滑性床材において、
    前記凸条部を防滑面の法線方向からみたときの平面視形状であり前記凹陥部に対応する多数の閉領域を画成する凸条パターンが、二つの分岐点の間を延びて前記閉領域を画成する多数の境界線分から構成され、
    (a)一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0である。
    (b)前記閉領域の形状が、五角形、六角形及び七角形から選ばれた2種以上の多角形を含んでなり、前記凸条パターン中に含まれる閉領域の数は六角形の閉領域が最多である。
    (c)前記凸条パターンを構成する多角形は同一辺数の多角形の形状は一定でない。
    の3条件を満たす、防滑性床材。
  2. 前記凸条パターンは、更に、
    (d)前記閉領域の配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んでなるパターンである、請求項1に記載の防滑性床材。
  3. 前記基材の前記網状凹凸部の面とは反対側の面に、支持体が積層されてなる、請求項1または2に記載の防滑性床材。
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