JP2013204145A - 曲げ加工性、衝撃特性および引張特性に優れた鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】所定の成分組成を満たし、かつ、所定の式(1)で定義される溶接割れ感受性組成PCMが0.20%以下であり、かつ、鋼の全組織に占めるアシキュラフェライトの分率:70面積%以上、全組織の平均結晶粒径(円相当直径):7μm以下、およびMAの分率:0.5面積%以下を満たし、更に、鋼板表面部のビッカース硬さの最高値が220以下であることを特徴とする曲げ加工性、衝撃特性および引張特性に優れた鋼板。
【選択図】図1
Description
C:0.02〜0.05%(「質量%」の意味。化学成分について以下同じ)、
Si:0.10〜0.40%、
Mn:1.85〜2.50%、
P:0.012%以下(0%を含まない)、
S:0.005%以下(0%を含まない)、
Nb:0.020〜0.050%、
Ti:0.005〜0.020%、
N:0.0020〜0.0060%、および
Al:0.010〜0.060%
を満たし、残部が鉄および不可避不純物からなり、かつ、
下記式(1)で定義される溶接割れ感受性組成PCMが0.20%以下であり、かつ、
鋼の全組織に占めるアシキュラフェライトの分率:70面積%以上、
全組織の平均結晶粒径(円相当直径):7μm以下、および
MA(Martensite−Austenite Constituent)の分率:0.5面積%以下を満たし、更に、鋼板表面部のビッカース硬さの最高値が220以下であるところに特徴を有する。
[式(1)において、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bは、各元素の鋼中含有量(質量%)を示す。]
上記鋼板は、更に他の元素として、Cu:0.50%以下(0%を含まない)およびNi:0.50%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上の元素を含有していてもよい。
Cは、鋼板の強度を高める効果がある。C含有量が0.02%未満であると、アシキュラフェライト組織が十分得られず、必要な母材強度を確保することが困難になるため、本発明では0.02%以上とした。好ましくは0.03%以上である。
Siは、脱酸材として有効な元素である。また、アシキュラフェライト組織を確保して母材強度の向上に有効な元素でもある。こうした強化機構を発揮させるには、Siを0.10%以上含有させることが必要である。好ましくは0.15%以上である。しかしながら、Si含有量が過剰になると、母材靭性と曲げ加工後の靭性(衝撃特性)が劣化し易い。またSi含有量が過剰になると、HAZ靭性と溶接性の劣化を招きやすくなるので、0.40%以下とする。好ましい上限は0.35%である。
Mnは、オーステナイトを安定化させ、変態温度を低温化させることによって、焼入れ性を向上させて強度向上に有効であるとともに、低温変態による結晶粒微細化効果により衝撃特性の確保に有効な元素である。加えて、本発明におけるアシキュラフェライト組織の確保を、Cu、Niといった元素の添加よりも安価に達成することが可能となる。こうした効果を発揮させるには、Mnを1.85%以上含有させる必要がある。好ましくは1.90%以上である。しかしながらMnを過剰に含有させると、HAZ靭性が劣化するので、Mn含有量の上限を2.50%とする。好ましい上限は2.40%である。
不可避的不純物であるPは、衝撃特性とHAZ靭性に悪影響を及ぼす元素であるから、P含有量を0.012%以下に抑制する必要がある。好ましくは0.010%以下である。
Sは、MnSを形成して衝撃特性(母材靭性、曲げ加工後の靭性)とHAZ靭性を劣化させるので、できるだけ少ない方が好ましい。こうした観点から、S含有量は0.005%以下とする必要がある。好ましくは0.003%以下である。
Nbは、オーステナイトの低温度域で未再結晶域を形成するのに有効な元素であり、この低温の未再結晶域で圧延することにより、母材の組織微細化および高靭性化を図ることができる。また、後述する本発明の加速冷却プロセス後の析出強化を実現して母材の高強度化にも有効な元素である。更に本発明においてNbは、上述の通り「低Cかつ高Mnとすると共に、Nbを所定量添加し、かつ製造工程において、Nbが固溶する温度まで加熱し、オーステナイト未再結晶域で適切な圧下を加えることによって、アシキュラフェライト組織を得る」ために必要不可欠な元素である。加えて、上記固溶Nbは、鋼の連続冷却変態においてフェライト変態を遅らせる(フェライトノーズを長時間側にする)効果があり、ポリゴナルフェライトの生成を抑制し、母材の高強度化に寄与する。これらの効果を発揮させるには、Nbを0.020%以上含有させる必要がある。好ましくは0.030%以上である。しかしながら、Nb含有量が過剰になると、HAZ靭性が劣化するので、0.050%以下とする必要がある。好ましい上限は0.040%である。
Tiは、Nと窒化物(TiN)を形成して熱間圧延前の加熱時におけるオーステナイト粒(γ粒)の粗大化を防止し、得られる組織を微細化することによって、高降伏強度の確保、および衝撃特性とHAZ靭性の向上に寄与する元素である。更に、Nを固定して固溶Nbを確保することによって、オーステナイト未再結晶域を確保し、かつ、製造工程において本発明の加速冷却プロセス後に析出強化させて、降伏強度を高めるのにも有効な元素である。これらの効果を発揮させるには、Tiを0.005%以上含有させる必要がある。好ましくは0.010%以上である。しかしながら、Ti含有量が過剰になると、TiNの他にTiCが析出し、衝撃特性とHAZ靭性が劣化する。よってTi含有量は0.020%以下とする。好ましくは0.018%以下である。
Nは、TiとともにTiNを生成し、熱間圧延前の加熱時および溶接時におけるγ粒の粗大化を防止し、衝撃特性やHAZ靭性を向上させるのに有効な元素である。N含有量が0.0020%未満であると、TiNが不足し、上記γ粒が粗大になり、衝撃特性やHAZ靭性が劣化する。よって本発明では、N量を0.0020%以上とする必要がある。好ましくは0.0025%以上である。一方、N含有量が過剰になり、0.0060%を超えると、衝撃特性とHAZ靭性がかえって劣化する。よって本発明では、N量の上限を0.0060%とする。好ましい上限は0.0055%である。
Alは、脱酸に必要な元素であるため、0.010%以上含有させる。好ましくは0.020%以上であり、より好ましくは0.030%以上である。一方、Alを過剰に含有させると、アルミナ系の粗大な介在物を形成し衝撃特性が低下するので、0.060%以下とする。好ましくは0.050%以下である。
CuとNiは、いずれも溶接性、HAZ靭性に大きな悪影響を及ぼすことなく、母材の強度、靭性を向上させるのに有効な元素である。これらの効果を発揮させるには、CuとNiをそれぞれ0.10%以上(より好ましくは0.15%以上)含有させることが好ましい。本発明では、安価なMnの添加量を確保することによって、高価なCu、Niの添加量を極力低減することを目的としている。よって、これらの元素の含有量上限は、冶金的には制約されないが、原料コストを低減する観点から、それぞれ0.50%以下とすることが好ましい。より好ましくはそれぞれ0.45%以下である。
Caは、MnSを球状化して耐溶接割れ性に対する無害化に有効に作用する元素である。こうした効果を発揮させるには、Caを0.0005%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.0010%以上である。しかしながら、Ca含有量が過剰になると、介在物を粗大化させ、母材靭性を劣化させる。よってCa含有量の上限を0.0050%とすることが好ましい。より好ましい上限は0.0040%である。
PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B ・・・ (1)
[式(1)において、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bは、各元素の鋼中含有量(質量%)を示す。]
PCMは溶接割れ感受性組成と呼ばれ、板厚が例えば100mmと厚肉で拘束度が大きい鋼板においても、溶接割れを安定して抑制するには、0.20%以下とする必要がある。PCMは好ましくは0.19%以下である。
本発明では、母材の引張特性と母材靭性を確保するために、成分組成の適正化(低C+高Mn+Nb、Ti添加)と加熱・圧延条件の適正化に加えて、本発明の加速冷却プロセスを採用することにより、鋼の変態強化とNbの析出強化を活用している。しかし、鋼の変態組織の中で最も高温で変態開始し、拡散変態が主で、軟質なポリゴナルフェライトが多くなると、引張特性、特に、降伏強度500MPa以上を満足することが困難になる。よって、ポリゴナルフェライトよりも低温で変態する組織であって、引張特性と衝撃特性の確保に有効なアシキュラフェライトを主体組織とすることが必要である。
本発明では、曲げ加工後の優れた靭性を確保するために、母材の靭性(特には低温靭性)を高める(vTrs≦−85℃)ことが必要である。そのためには、上述の通り鋼組織をアシキュラフェライト主体とするとともに、全組織の平均結晶粒径を円相当直径で7μm以下とする必要がある。上記平均結晶粒径が7μmを超えると、アシキュラフェライト主体の組織であっても、母材の低温靭性を確保することが困難となる。また、組織が粗大になると、組織微細化による降伏強度の上昇効果が小さくなり、降伏強度500MPa以上を満足することが困難になる。全組織の平均結晶粒径は好ましくは6μm以下である。
本発明では、高い引張強度を確保すると共に、高降伏強度を達成することを特徴としており、そのためには、MAの分率を0.5面積%以下とする必要がある。MAの分率が0.5面積%を超えると、硬質なMAによる降伏比低減効果により、降伏強度が低下してしまい、高降伏強度を達成できなくなる。MAの分率は、好ましくは0.3面積%以下である。
更に本発明では、曲げ加工性に優れた高張力鋼板とするために、鋼板表面部の硬さを低減する必要がある。詳細には、鋼板表面部(後述する実施例に示す通り、鋼板表面から1mm深さの位置)のビッカース硬さの最高値を220以下に抑える必要がある。上記ビッカース硬さの最高値が220を超えると、曲げ内半径が2.5tといったような厳しい冷間曲げ加工を行う場合に、鋼板表面部に割れが生じる恐れがある。上記ビッカース硬さの最高値は、より好ましくは215以下である。
この加熱温度は、熱間圧延前の組織制御に大きく影響する。規定量のNbを含有させても、加熱温度が1050℃未満であると、Nbの固溶が不十分となり、固溶Nbによる再結晶抑制効果が小さくなり、組織微細化の効果が小さくなる。加えて、固溶Nbが少ないと、加速冷却中の連続冷却変態時のフェライト変態を遅らせてポリゴナルフェライトの生成を抑制する効果や、本発明の加速冷却プロセスでの、加速冷却途中停止後の析出強化といった効果が小さくなり、優れた引張特性を確保することが困難になる。よって本発明では、加熱温度を1050℃以上とした。好ましくは1080℃以上である。一方、加熱温度が1200℃を超えると、オーステナイト(γ)粒径の粗大化により、衝撃特性が劣化し、また所望の降伏強度を確保できない。よって本発明では、加熱温度の上限を1200℃とする。より好ましくは1180℃以下である。
表面温度が900〜1050℃の温度域は、固溶Nb量が十分確保できている状態でも熱間圧延時にオーステナイトが再結晶する温度域である。優れた母材靭性(および曲げ加工後の靭性)と所望の降伏強度を確保するには、この温度域での累積圧下率を30%以上とし、オーステナイト粒を繰り返し再結晶させて微細化する必要がある。該累積圧下率が30%未満であると、上記加熱直後のオーステナイト粒を微細化することができず、結果として最終組織が粗大になり、上記特性の確保が困難となる。この温度域での好ましい累積圧下率は40%以上である。
表面温度が750〜850℃の温度域は、固溶Nb量が十分確保できている状態であれば熱間圧延時にオーステナイトが再結晶しない、いわゆる未再結晶域である。優れた衝撃特性と所望の降伏強度を確保するには、上記再結晶温度域の熱間圧延でオーステナイト粒を繰り返し再結晶により微細化した上で、更に、この未再結晶域で累積圧下率を30%以上確保することが必要である。これによりオーステナイトに歪を蓄積させ、熱間圧延後の加速冷却工程での変態核を増加させることができ、変態後の最終組織を微細化することができる。この温度域での累積圧下率が30%未満であると、変態核が不足し、最終組織が粗大になり、上記特性の確保が困難となる。この温度域での好ましい累積圧下率は40%以上である。
表面温度がAr3点を下回ると、軟質なポリゴナルフェライトが生成し、母材強度の低下を招く。よって加速冷却は、Ar3以上の温度から開始することが必要である。加速冷却の冷却開始温度は、好ましくは(Ar3点+20℃)以上の温度である。尚、加速冷却の冷却開始温度の上限は、800℃程度である。
Ar3(℃)=910−310×C−80×Mn−20×Cu−15×Cr−55×Ni−80×Mo ・・・ (2)
[式(2)において、C、Mn、Cu、Cr、Ni、Moは、各元素の鋼中含有量(質量%)を示す。]
アシキュラフェライトを十分確保して、高い引張特性を確保するには、加速冷却の平均冷却速度を4℃/s以上とする必要がある。この平均冷却速度が4℃/sを下回る、たとえば、空冷のような遅い冷却速度の場合、アシキュラフェライト分率が減少し、ポリゴナルフェライトが増加してしまうため、母材強度が確保できなくなる。加速冷却の平均冷却速度は、好ましくは8℃/s以上である。一方、上記平均冷却速度が100℃/sを超えると、表面部は剪断変態によりマルテンサイトが主体となり、表面硬さが大きくなってしまう。よって、上記平均冷却速度の上限を100℃/sとした。好ましくは80℃/s以下である。
加速冷却プロセスにおいて、変態強化および析出強化により高強度化を図るには、450〜600℃といった比較的高い温度域で加速冷却を停止する必要がある。450℃を下回ると変態強化は得られるが、途中停止による焼戻し効果が小さくなり、表面硬さの増大を招くとともに、MAが残存して降伏強度の低下を招く。よって、加速冷却の停止温度を450℃以上とした。好ましくは470℃以上である。一方、600℃を上回ると、十分な変態強化が得られず、ポリゴナルフェライト主体組織となり、十分な母材強度を得ることが困難となる。よって、加速冷却の停止温度を600℃以下とした。好ましくは570℃以下である。
〔アシキュラフェライト分率の測定〕
アシキュラフェライト分率は下記のようにして測定した。
(1)圧延方向に平行でかつ鋼板表面に対して垂直な、鋼板表裏面を含む板厚断面を、観察できるよう上記鋼板からサンプルを採取する。
(2)湿式エメリー研磨紙(#150〜#1000)での研磨、またはそれと同等の機能を有する研磨方法(ダイヤモンドスラリー等の研磨剤を用いた研磨等)により、観察面の鏡面仕上を行う。
(3)研磨されたサンプルを、3%ナイタール溶液を用いて腐食し、結晶粒界を現出させる。
(4)t(板厚)/4部位において、現出させた組織を400倍の倍率で写真撮影する(本実施例では6cm×8cmの写真として撮影)。次に、撮影した写真にて、旧オーステナイト粒界にポリゴナルフェライトが生成しているものを判別し、黒く塗りつぶす。
(5)画像解析装置において、写真毎に黒色以外の面積率を算出し、さらに、後述するMAの分率を差し引いたものを、アシキュラフェライト分率とした。尚、表4および表5には、上記黒く塗りつぶしたポリゴナルフェライト、ならびに、ベイナイトおよび/またはマルテンサイトの分率についても参考までに示している。
全組織の平均結晶粒径(円相当直径)を下記の要領で測定した。
(1)圧延方向と平行な方向に切断した、板厚の表裏面部を含むサンプルを準備する。
(2)#150〜#1000までの湿式エメリー研磨紙あるいはそれと同等の機能を有する研磨方法を用いて研磨紙、ダイヤモンドスラリーなどの研磨剤を用いて鏡面仕上を施す。
(3)TexSEM Laboratories社製のEBSP(Electron Back Scattering Pattern)装置を使用し、板厚方向のt/4部において測定範囲:200×200μm、0.5μmピッチで、結晶方位差が15°以上の境界を結晶粒界として大傾角粒のサイズを測定する。この時、測定方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデックスが0.1よりも小さい測定点は解析対象から除外する。
(4)このようにして求められる大角粒界で囲まれるサイズの平均値を算出して、本発明における「全組織の平均結晶粒径」とする。尚、大角粒界で囲まれるサイズが1.0μm以下のものについては、測定ノイズと判断し、平均値計算の対象から除外する。
MAの分率は下記のとおり測定した。
(1)圧延方向に平行でかつ鋼板表面に対して垂直な、鋼板表裏面を含む板厚断面を、観察できるよう上記鋼板からサンプルを採取する。
(2)湿式エメリー研磨紙(#150〜#1000)での研磨、またはそれと同等の機能を有する研磨方法(ダイヤモンドスラリー等の研磨剤を用いた研磨等)により、観察面の鏡面仕上を行う。
(3)研磨されたサンプルを、レペラ溶液を用いて腐食し、MAを現出させる。MA現出部分は、光学顕微鏡写真上では白く着色されている。尚、マルテンサイトは、この腐食では白くならないため、マルテンサイトとMAを区別できる。
(4)t(板厚)/4部位において、現出させた組織を1000倍の倍率で写真撮影する(本実施例では6cm×8cmの写真として撮影)。次に、前記写真を画像解析装置に取り込む(前記写真の領域は、1000倍の場合、60μm×80μmに相当する)。画像解析装置への取り込みは、領域の合計が0.4mm×0.4mm以上となるよう取り込む(即ち、1000倍の場合は上記写真を少なくとも35枚取り込む)。
(5)画像解析装置において、写真毎にMAの面積率を算出し、全ての写真の平均値をMAの面積率とする。
表面のビッカース硬さの最高値(表面硬さ)は下記のとおり測定した。
(1)圧延方向に平行でかつ鋼板表面に対して垂直な、鋼板表裏面を含む板厚断面を、観察できるよう上記鋼板からサンプルを採取する。
(2)湿式エメリー研磨紙(#150〜#1000)での研磨、またはそれと同等の機能を有する研磨方法(ダイヤモンドスラリー等の研磨剤を用いた研磨等)により、観察面の鏡面仕上を行う。
(3)研磨されたサンプルにて、表面下1mm部で水平方向に1mmピッチで10点、98Nの荷重にてビッカース硬さの測定を行い、この10点のビッカース硬さのうち、最も高いものを、鋼板表面部のビッカース硬さの最高値とした。そして、この最高値が220以下の場合を、表面硬さが低く、曲げ加工性に優れていると評価した。
t(板厚)/4の部位から圧延直角方向にJISZ 2201の4号試験片を採取して、JISZ 2241の要領で引張試験を行い、降伏強度、引張強度を測定した。そして、降伏強度が500MPa以上、かつ引張強度が570MPa以上のものを、引張特性が優れていると評価した。
t(板厚)/4の部位から圧延直角方向にJISZ 2242のVノッチ試験片を採取して、JISZ 2242の要領でシャルピー衝撃試験を行い、vTrsを求めた。なお、vTrsを求める際には、各試験温度で3本ずつ実施した。そして、vTrsが−85℃以下のものを衝撃特性が優れている、具体的には母材靭性に優れていると共に、曲げ加工後の曲げ部の靭性にも優れていると評価した。
再現熱サイクル試験機により、溶接入熱15kJ/mmを想定した熱サイクルを付与し、JISZ 2242のVノッチ試験片を採取して、JISZ 2242の要領でシャルピー衝撃試験を行って、HAZ靭性を評価した。試験温度は−20℃で行い、3本の平均値を求めた。そして該平均値が100J以上の場合をHAZ靭性が優れていると評価した。
割れ防止温度の評価については、被覆アーク溶接にてJISZ 3158の要領で、予熱温度を5℃、25℃、50℃、75℃として溶接を実施し、割れ防止温度を測定した。割れ防止温度が5℃のものを、溶接性が優れているものと評価した。
Claims (4)
- C:0.02〜0.05%(「質量%」の意味。化学成分について以下同じ)、
Si:0.10〜0.40%、
Mn:1.85〜2.50%、
P:0.012%以下(0%を含まない)、
S:0.005%以下(0%を含まない)、
Nb:0.020〜0.050%、
Ti:0.005〜0.020%、
N:0.0020〜0.0060%、および
Al:0.010〜0.060%
を満たし、残部が鉄および不可避不純物からなり、かつ、
下記式(1)で定義される溶接割れ感受性組成PCMが0.20%以下であり、かつ、
鋼の全組織に占めるアシキュラフェライトの分率:70面積%以上、
全組織の平均結晶粒径(円相当直径):7μm以下、および
MA(Martensite−Austenite Constituent)の分率:0.5面積%以下を満たし、
更に、鋼板表面部のビッカース硬さの最高値が220以下であることを特徴とする曲げ加工性、衝撃特性および引張特性に優れた鋼板。
PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B ・・・ (1)
[式(1)において、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bは、各元素の鋼中含有量(質量%)を示す。] - 更に他の元素として、Cu:0.50%以下(0%を含まない)およびNi:0.50%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上の元素を含有する請求項1に記載の鋼板。
- 更に他の元素として、Ca:0.0005〜0.0050%を含有する請求項1または2に記載の鋼板。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板を製造する方法であって、
請求項1〜3のいずれかに記載の成分組成を有する鋼片を、1050〜1200℃に加熱し、次いで、表面温度が900〜1050℃の温度域で累積圧下率が30%以上、かつ、表面温度が750〜850℃の温度域で累積圧下率が30%以上となるように熱間圧延を行った後、表面温度がAr3以上の温度から、4〜100℃/sの平均冷却速度で450〜600℃の温度域まで冷却し、その後空冷することを特徴とする曲げ加工性、衝撃特性および引張特性に優れた鋼板の製造方法。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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