JP2013203897A - パイプ及び継手用ポリエチレン並びにその成形体 - Google Patents

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知己 平本
Maki Fukuda
真樹 福田
Kazuhiro Yamamoto
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Abstract

【課題】 特にパイプ及び継手用途において、結晶化時間が短く、成形性に優れ、射出成形法及び押出成形法の両方法において、ハイサイクルでの成形が可能であり、寸法安定性、耐傷付性に優れるうえに、長期耐久性が極めて高いパイプ及び継手用ポリエチレン並びにその成形体の提供。
【解決手段】 下記の特性(i)〜(v)を満足することを特徴とするパイプ及び継手用ポリエチレンによる。
特性(i):HLMFRが7〜15g/10分である。
特性(ii):密度が0.945〜0.954g/cmである。
特性(iii):フルノッチクリープ試験(80℃、5MPaで測定)における破断時間が500時間以上である。
特性(iv):示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間が180秒以下である。
特性(v):曲げ弾性率(23℃)が950MPa以上である。
【選択図】なし

Description

本発明はパイプ及び継手用ポリエチレン並びにその成形体に関し、さらに詳しくは、特にパイプ及び継手用途において、結晶化時間が短く、成形性に優れ、射出成形法及び押出成形法の両方法において、ハイサイクルでの成形が可能であり、寸法安定性、耐傷付性、均質性に優れるうえに、長期耐久性が極めて高いパイプ及び継手用ポリエチレン並びにその成形体に関する。
ポリエチレン樹脂は、成形加工性や各種物性に優れ経済性や環境問題適応性が高いので、非常に広い技術分野における資材として重用され広汎な用途に利用されている。その用途の一分野としてパイプ分野があり、地震時における耐久性の実績を基に、ガスパイプ、配水パイプなどへの利用が増大している。
現在ガスパイプや配水パイプなどに使われる樹脂は、ISO 9080およびISO 12162で規定されているPE80(MRS:Minimum Required Strength=8MPa)やPE100(MRS=10MPa)といった優れた長期耐久性を満足する必要がある。また、ISO 1167に記載されているような極めて高性能の熱間内圧パイプクリープ性能を有する必要がある。かかる性能を発揮するためには、流動性を上げると耐久性が劣る傾向があったため、生産性を犠牲にしても、流動性またはメルトフローレート(以下、「MFR」ともいう。)の低いポリエチレンを使用せざるを得なかった。
また、最近はパイプ敷設の施工法の変化により、成形パイプの表面に傷がついても長期耐久性にも優れる、すなわち、ISO 13479に規定されているノッチ入りパイプ試験のような低速亀裂進展性(Slow Crack Growth=SCG)にも優れるポリエチレン樹脂が求められるようになってきた。
これらパイプ用ポリチレン樹脂は、主に、フィリップス触媒やチーグラー触媒の存在下で多段重合によりエチレンとα−オレフィンとの共重合で製造されているが、フィリップス触媒によるポリエチレン樹脂は、一般に長鎖分岐があるため長期耐久性に難点があり、PE100を満足する高耐久性の配水パイプ用ポリエチレン樹脂は専ら後者のチーグラー触媒により製造されている。
チーグラー触媒を用いた多段重合によるエチレンとα−オレフィンとの共重合で得られるパイプ用ポリエチレン樹脂は数多くの先行技術があるが、PE100の規格を満足し、かつSCG、剛性、流動性、均質性などに優れるポリエチレン樹脂の製造は難しいものの、以下のとおり、各種の提案がなされている。
チーグラー触媒を用いて製造することができるパイプ用ポリエチレン樹脂の改良提案として、例えば、製造の間にパイプの開裂、又は、たるみの問題の危険性のない、同時に、パイプ用品質基準、例えば、内圧への長期耐性、高度の応力亀裂抵抗、低温ノッチ付衝撃強さ及び急速亀裂成長への高度の耐性に十分合致する機械的性能と製品の均質性を有する大口径厚肉パイプの製造に使用可能な、十分高い溶融強度を有するポリエチレン成形コンパウンドを提供することを目的として、コモノマーとして4〜10個の範囲の全炭素原子数を有する1−オレフィンと、エチレンとのコポリマーであり、第1エチレンポリマー(A)の質量に対して0.2〜5質量%の割合のコモノマーと、広いバイモーダル分子質量分布とを有する第1エチレンポリマー(A)55〜75質量%と、エチレン構成単位と、4〜10個の範囲の炭素原子数を有する1−オレフィンとで製造されたコポリマーであり、第1エチレンポリマー(A)とは異なるバイモーダル分子質量分布を有する第2エチレンポリマー(B)25〜45重量%とから製造される高分子成形コンパウンドが提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1記載のコンパウンドであっても、より高い長期耐久性または流動性の要求を満たすものではなかった。さらに、結晶化時間短縮、ハイサイクル、寸法安定性向上を可能にする結晶化時間については、記載が無くあきらかでない。
また、メタロセン触媒の存在下で製造されたパイプ用ポリエチレン樹脂も提案されている。
例えば、改善されたポリエチレンパイプ樹脂を提供することを目的として、実質的にメタロセン触媒により製造された、35〜49重量%の高分子量の第1ポリエチレン画分および51〜65重量%の低分子量の第2ポリエチレン画分を含んで成るポリエチレン樹脂であって、第1ポリエチレン画分が最高0.928g/cmの密度および0.6g/10分未満のHLMIを有する線状低密度ポリエチレンを含んで成り、そして第2ポリエチレン画分が少なくとも0.969g/cmの密度および100g/10分より高いMIを有する高密度ポリエチレンを含んで成り、そしてポリエチレン樹脂が0.951g/cmより高い密度および1〜100g/10分のHLMIを有する、ポリエチレンパイプ樹脂が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献2記載のポリエチレン樹脂であっても、より高い長期耐久性または流動性の要求を満たすものではなかった。さらに、結晶化時間短縮、ハイサイクル、寸法安定性向上を可能にする結晶化時間については、記載が無くあきらかでない。
また、本出願人は、成形加工性および剛性とSCGの機械的物性のバランスに優れ、しかも均質性に優れるパイプ用ポリエチレン樹脂を、先に提案した(特許文献3参照)。
すなわち、パイプ、特に配水用パイプ分野において、PE100を満足するだけでなく、特にSCGに優れ、流動性、均質性等も十分なポリエチレン樹脂およびその製造方法、並びにその樹脂を用いたパイプ・継手を提供することを目的として、(a)高荷重メルトフローレート(HLMFR、HLa)が5〜20g/10分、(b)密度(Da)が0.945〜0.965g/cm、(c)α−オレフィン含有量(Ca)が0.05〜1.5mol%、(d)ノッチ入りLander法−ESCRによる破壊時間(T)とHLaとCaが特定の式を満足する、との要件を満足するパイプ用ポリエチレン樹脂を提案した。
該ポリエチレン樹脂は、好ましくはチーグラー触媒を用いたポリエチレン樹脂であって、HLMFR、密度やα−オレフィン含有量を規定し、ノッチ入りLander法−ESCRにより特定される構成を有し、さらに好ましくはこの樹脂において特定のα−オレフィン共重合体を組み合わせ、特定の多段重合法によることをも特徴とするものであり、特にパイプ成形品においてPE100を満足するとともに、非常に優れたSCGを可能とするものである。
しかしながら、さらに高い性能、利用分野の拡大または生産性の要求のために、耐久性、結晶化時間短縮及び均質性において、より一層の向上が望まれている。
以上の様に、パイプ及び継手用ポリエチレン樹脂組成物並びにその成形体においては、結晶化時間が短く成形性に優れる上に、パイプ用品質基準の極めて高い水準をさらに超える長期耐久性をもち、同時に製品外観が良好となるものは得られていないのが現状であった。
特表2004−510023号公報 特表2004−512410号公報 特開2007−002235号公報
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点に鑑み、特にパイプ及び継手用途において、結晶化時間が短く、射出成形法及び押出成形法の両方法において、ハイサイクルでの成形が可能であり、寸法安定性、耐傷付性、均質性に優れるうえに、長期耐久性が極めて高いパイプ及び継手用ポリエチレン並びにその成形体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定性状のポリエチレン、好ましくは、チーグラー系触媒で重合されたエチレン系重合体組成物である、特定性状のエチレン系重合体(I)に、メタロセン系触媒で重合された、特定性状のエチレン系重合体(II)を特定量配合することにより、特にパイプ及び継手用途において、結晶化時間が短く、射出成形法及び押出成形法の両方法において、ハイサイクルでの成形が可能であり、寸法安定性、耐傷付性、均質性に優れるうえに、長期耐久性が極めて高いパイプ及び継手用ポリエチレン並びにその成形体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の特性(i)〜(v)を満足することを特徴とするパイプ及び継手用ポリエチレンが提供される。
特性(i):温度190℃、荷重21.6Kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が7〜15g/10分である。
特性(ii):密度が0.945〜0.954g/cmである。
特性(iii):フルノッチクリープ試験(80℃、5MPaで測定)における破断時間が500時間以上である。
特性(iv):示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間が180秒以下である。
特性(v):曲げ弾性率(23℃)が950MPa以上である。
また、本発明の第2の発明によれば、上記第1の発明において、エチレン重合体(I)50〜60重量%に対し、HLMFRが0.05〜0.5g/10分であり、密度が0.915〜0.930g/cmであり、HLMFR(単位:g/10分)とゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定される重量平均分子量(Mw)が下記(1)の関係を満たすエチレン系重合体(II)40〜50重量%を含有してなることを特徴とするパイプ及び継手用ポリエチレンが提供される。
log[HLMFR]≦−3.85log[Mw/10000]+6.0 (1)
また、本発明の第3の発明によれば、上記第2の発明において、エチレン系重合体(I)50〜55重量%に対し、エチレン系重合体(II)45〜50重量%を含有してなることを特徴とするパイプ及び継手用ポリエチレンが提供される。
本発明の第4の発明によれば、上記第2または3の発明において、エチレン系重合体(I)は、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレート(MFR)が50〜200g/10分であり、密度が0.955〜0.975g/cmであることを特徴とするパイプ及び継手用ポリエチレンが提供される。
本発明の第5の発明によれば、上記第2または3の発明において、エチレン系重合体(I)は、MFRが80〜150g/10分であり、密度が0.966〜0.973g/cmであることを特徴とするパイプ及び継手用ポリエチレンが提供される。
本発明の第6の発明によれば、上記第2〜5のいずれかの発明において、エチレン系重合体(I)は、チーグラー系触媒を用いて重合されたエチレン系重合体組成物であることを特徴とするパイプ及び継手用ポリエチレンが提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、上記第2〜6のいずれかの発明において、エチレン系重合体(II)は、HLMFRが0.05〜0.5g/10分であり、密度が0.915〜0.930g/cmであることを特徴とするパイプ及び継手用ポリエチレンが提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、上記第2〜7のいずれかの発明において、エチレン系重合体(II)は、シクロペンタジエニル環及び複素環式芳香族基を有するメタロセン触媒を用いて重合されることを特徴とするパイプ及び継手用ポリエチレンが提供される。
本発明の第9の発明によれば、上記第2〜7のいずれかの発明において、エチレン系重合体(II)は、シクロペンタジエニル環及びフルオレニル環を有するメタロセン触媒を用いて重合されることを特徴とするパイプ及び継手用ポリエチレンが提供される。
本発明の第10の発明によれば、上記第1〜9のいずれかの発明のパイプ及び継手用ポリエチレンを用いてなることを特徴とする成形体が提供される。
本発明の第11の発明によれば、上記第10の発明において、パイプまたは継手であることを特徴とする成形体が提供される。
本発明のパイプ及び継手用ポリエチレン並びにその成形体は、ガスパイプ、配水パイプ及びそれらの継手に好適であり、特に、水道配水用ポリエチレン管及びその継手に好適であり、パイプ用品質基準、例えば、内圧への長期耐性、高度の応力亀裂抵抗、低温ノッチ付衝撃強さ及び急速亀裂成長への高度の耐性に十分合致し、特に、長期耐久性が従来のPE100材料に比べ大幅に向上し、かつ、結晶化速度が速いため高速成形が可能であるという効果を奏する。したがって、従来のPE100を上回る性能を有するとともに、射出成形及び押出成形の両方の成形法において、優れた生産性を発揮し、かつ各成分の配合比率、分子量、分子量分布を制御することにより、高分子量成分の凝集(高分子ゲル)を抑制するため、高分子量ゲルによる外観不良が無いという効果がある。
なお、上記「長期耐久性」とは、耐環境応力亀裂特性、パイプの熱間内圧クリープ特性または耐低速亀裂伸展特性等が優れることをいい、本発明のパイプ及び継手用ポリエチレン樹脂組成物は、特に、フルノッチクリープ試験(full notch creep test:FNCT)による値が高く、耐環境応力亀裂特性に極めて優れるという効果がある。
成形性について、具体的には、射出成形においては、結晶化時間が短いことにより、成形品取り出しの時間が短縮し、ハイサイクルを可能にし生産性が向上する上に、厚い製品であっても、後収縮が生じにくく、寸法安定性が良いという効果がある。さらに、押出成形においては、結晶化速度が速いことにより冷却時間が短くなり、製造サイクルアップを可能にし、同時に溶融状態で押し出されたパイプの結晶化速度が速いため、成形時に発生するパイプ表面傷への耐性が向上しパイプ表面外観が良好となるという効果がある。
また、ブツ状に発生し外観不良の原因となる高分子ゲルについても、ポリエチレンを構成する各成分が均一に混ざりあうことにより高分子量成分の凝集が抑制されパイプ表面外観が良好となるという効果がある。
さらに、本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンを用いた成形品は、パイプ用品質基準を上回る性能を有し、特に、低速亀裂成長であるFNCTによる値が高く、極めて長期耐久性が高い上に、高速成形化が可能であり、経済的に有利な水道配水用パイプ及び継手等として好適に用いることができる。
本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンは、特定の物性の要件を満足することを特徴とするものであり、好ましくは特定性状のエチレン系重合体(I)に、メタロセン系触媒で重合された、特定性状のエチレン系重合体(II)を特定量配合してなることを特徴とするものである。
以下、本発明を、項目毎に、詳細に説明する。
1.パイプ及び継手用ポリエチレンの特性
本発明のポリエチレンは、下記の特性(i)〜(v)を満足することを特徴とする。
特性(i):温度190℃、荷重21.6Kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が7〜15g/10分である。
特性(ii):密度が0.945〜0.954g/cmである。
特性(iii):フルノッチクリープ試験(80℃、5MPaで測定)における破断時間が500時間以上である。
特性(iv):示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間が180秒以下である。
特性(v):曲げ弾性率(23℃)が950MPa以上である。
本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンにおいて、特性(i)の温度190℃、荷重21.6Kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)は、7〜15g/10分であり、好ましくは8〜13g/10分であり、更に好ましくは9〜12g/10分である。
HLMFRは、本範囲より低い場合には、分子量が増大し、流動性の低下により成形性が確保できなくなるおそれがある。また、本範囲より高い場合には、長期耐久性、特にFNCTを指標とするSCGが低下するおそれがある。
また、本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンにおいて、特性(ii)の密度は、0.945〜0.954g/cmである。本密度が0.945g/cm未満であれば、曲げ弾性率が低下し、結果として材料の剛性が不足し耐圧性が低下するおそれがある。一方、密度が0.954g/cmを超えると、長期耐久性、特にFNCTを指標とするSCGが低下するおそれがある。
本明細書において、MFR及びHLMFRは、JIS K6922−2:1997に準じて測定される値である。
MFR及びHLMFRは、ポリエチレンの製造において、エチレン重合温度や連鎖移動剤の使用等により調整することができ、所望のものを得ることができる。即ち、例えば、エチレンとα−オレフィンとの重合温度を上げることにより、分子量を下げた結果として、MFR及びHLMFRを大きくすることができ、重合温度を下げることにより、分子量を上げた結果として、MFR及びHLMFRを小さくすることができる。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応において、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を増加させることにより、分子量を下げた結果として、MFR及びHLMFRを大きくすることができ、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を減少させることにより、分子量を上げた結果として、MFR及びHLMFRを小さくすることができる。
また、本明細書において、ポリエチレン、エチレン系重合体(I)およびエチレン系重合体(II)等の密度は、JIS K6922−1,2:1997に準じて、測定される値である。
密度は、例えば、エチレンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることにより、所望のものを得ることができる。
また、本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンにおいて、特性(iii)のフルノッチクリープ試験(FNCT、80℃、5MPaで測定)における破断時間は、500時間以上である。好ましくは、600時間以上であり、より好ましくは、700時間以上である。
上記時間が500時間未満であると、成形品に傷・石の接触等の応力集中が発生した場合における耐久性が劣るおそれがあるため好ましくない。
本明細書において、FNCT(80℃、5MPaで測定)における破断時間は、JIS K6774(1995)「ガス用ポリエチレン管」の付属書1の全周ノッチ式引張クリープ試験に準拠し、80℃、5MPaで測定を行った値である。試験片は、JIS K6922−2(1997)「プラスチック−ポリエチレン(PE)成形用及び押出用材料−第2部:試験片の作り方及び諸性質の求め方」の表2の条件で作成した厚さ6mmで圧縮成形シートから切出し、全周にノッチを入れたもの(試験片厚み 6mm ノッチ深さ 1mm 全周)を使用する。
試験溶液は水ではなく、アルキル硫酸ナトリウム1%水溶液を用いる。
FNCT(80℃、5MPaで測定)における破断時間は、概ね、例えば、ポリエチレンを構成するエチレン系重合体(II)の密度を小さくすること及びHLMFRを小さくすることにより、大きくすることができる。
また、本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンにおいて、特性(iv)の示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間は、180秒以下である。本値が180秒を超えると、結晶化時間が長くなり、成形速度が遅延となり、成形サイクルが長くなるおそれがある。
本値は、ポリエチレンの密度、分子量等にて調節が可能である。例えば、ポリチレンがエチレン系重合体(I)およびエチレン系重合体(II)からなる場合、エチレン系重合体(II)の密度、分子量及び配合量にて調節が可能である。
本発明の範囲外にて、例えば、ポリチレンがエチレン系重合体(I)およびエチレン系重合体(II)からなる場合、エチレン系重合体(II)のHLMFRが高い、密度が低い、配合量が少ない場合には、ポリエチレンの示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間が180秒を超える。なお、本発明の範囲外にて、同様に、例えば、ポリチレンがエチレン系重合体(I)およびエチレン系重合体(II)からなる場合、エチレン系重合体(II)のHLMFRが低い、密度が高い、配合量が多い場合には、剛性、成形性、長期耐久性、その他の要件を満たせないおそれがある。
なお、本明細書において、特性(iv)の示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間は、例えば、パーキンエルマー社製DSC−7等の示差走査熱量計(DSC)にて、試料を190℃にて5分放置後、120℃/分の速度にて121.5℃まで冷却し、保持とし、121.5℃の等温下にて結晶化が終了した時点にてピークトップを検出し、測定した値である。
本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンにおいて、特性(v)の曲げ弾性率は、950MPa以上である。曲げ弾性率が950MPa未満では、曲げ弾性率が低下し、結果として材料の剛性不足となり、耐圧性が低下するおそれがある。曲げ弾性率の上限値は、特に限定されないが、通常は1300MPa以下である。
ここで、曲げ弾性率は、JIS K6922−2に準拠して圧縮成形で作成した厚さ4mm成形シートより10mm×80×4mmtの試験片を切出し、測定される値である。
曲げ弾性率は、ポリエチレンの密度を増減させることにより、調節することができ、密度を増加させると、曲げ弾性率を上げることができる。
本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンは、上記特性を満たすものであるため、特に、パイプ及び継手用途に好適である。
例えば、水道配水用ポリエチレン管及びその継手用途の場合、各種規格等の要請により、ポリエチレン管(パイプ)及び継手の材料として同一のものを使用することが望まれている。本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンは、上記特性により、パイプ用品質基準、例えば、内圧がかかった状態での長期耐久性、ノッチ形状等による応力集中下でのSCGへの高度の耐性に十分合致し、それらを従来のPE100材料に比べ大幅に向上した性能を有するものとなり、パイプ及び継手に必要な耐久性等の物性を有する上に、結晶化時間が短いため、射出成形及び押出成形の両方の成形法において、優れた生産性を発揮するものとなる。
具体的には、射出成形においては、流動性が高く結晶化時間が短いことにより、成形品取り出しの時間が短縮し、ハイサイクルを可能にし生産性が向上する上に、厚い製品であっても、後収縮が生じにくく、寸法安定性が良いという効果がある。さらに、押出成形においては、結晶化速度が速いことにより冷却時間が短くなり製造サイクルアップを可能にし、同時に溶融状態で押し出されたパイプ製品の結晶化速度が速いため、成形時に発生するパイプ表面傷への耐性が向上しパイプ表面外観が良好となるという効果がある。また、ブツ状に発生し外観不良の原因となる高分子ゲルについても、ポリエチレンを構成する各成分が均一に混ざりあうことにより高分子量成分の凝集が抑制されパイプ表面外観が良好となるという効果がある。
すなわち、本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンは、結晶化時間が短いという上記特性を併せ持つことにより、特に、射出成形及び押出成形の両者において経済的に有効な点を兼ね備えた、パイプ及び継手用に好適な樹脂組成物となったものである。
さらに、本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンを用いた成形品は、パイプ用品質基準において従来製品を上回る性能を有することから、ポリエチレン製パイプ及び継手として好適である。
本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンは、本発明のポリエチレンを調整しやすく、好ましいパイプ及び継手用ポリエチレンとなることから、エチレン系重合体(I)に、メタロセン系触媒で重合された、特定性状のエチレン系重合体(II)を特定量配合してなることが好ましい。さらには、特定性状のエチレン系重合体(I)に、メタロセン系触媒で重合された、特定性状のエチレン系重合体(II)を特定量配合してなることが好ましい。
この場合、本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンは、上記の特性に加え、さらに、以下の特性(vi)を満足することが好ましい。
特性(vi):エチレン系重合体(I)におけるMFRとGPCにて測定されるMw/Mn(I)、エチレン系重合体(II)におけるHLMFRとGPCにて測定されるMw/Mn(II)、全量に対するエチレン系重合体(II)の含有率(重量%)αが下記(A)の関係を満たす。
(Mw/Mn(I)×(Mw/Mn(II)×1/log(MFR(I))×−1/log(HLMFR(II))×(1+α/(1−α))>500 (A)
特性(vi)に記載の式(A)は、エチレン系重合体(I)とエチレン系重合体(II)との混ざりやすさ(均質性)を示す関係式である。(A)において、各成分の分子量分布を広く、各成分のMFRまたはHLMFRの値を近づけ、各成分の割合が1:1に近づけることにより値は大きくなり、その値が500を超えると高分子ゲルの発生が少なくなり好ましい。500以下では、高分子量成分が均一に混ざらないため、高分子ゲルとなり外観不良となるおそれがある。
ここで均質性の評価はJIS K6922−2に準拠して圧縮成形で作成した厚さ0.4mm成形シートより5mm×5×0.4mmtの試験片を切出し、これを170℃の環境下で中心3mm×3×0.4mmt部が6mm×6まで2軸延伸されたシートサンプルを作成し、該シートサンプル上のブツの状態で判断することが出来る。
2.エチレン系重合体(I)
本発明において、エチレン系重合体(I)は、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレート(MFR)が50〜200g/10分であり、密度が0.955〜0.975g/cmであることが好ましい。さらに好ましくは、エチレン系重合体(I)は、MFRが80〜150g/10分であり、密度が0.966〜0.973g/cmである。
エチレン系重合体(I)のMFRは、好ましくは、50〜200g/10分であり、より好ましくは、80〜150g/10分である。該MFRが50g/10分未満では、分子量が増大し流動性が低下し成形性が確保できなくなる。一方、該MFRが200g/10分を超えると、耐衝撃性が低下したりSCGが低下するおそれがある。
また、エチレン系重合体(I)の密度は、0.955〜0.975g/cmであることが好ましく、より好ましくは、0.966〜0.973g/cmである。該密度が0.955g/cm未満であれば、最終ポリエチレンにおいて、耐圧性が低下するおそれがある。一方、該密度が0.975g/cmを超えると、ポリエチレンの製造が困難となるとともに、製造できたとしても最終ポリエチレンにおいて、耐衝撃性が著しく低下するおそれがある。
ここで、MFR及び密度は、各々前述した測定方法により測定される値である。
また、MFRは、主に製造時の水素量により調整され、密度は、主として製造時のα−オレフィンの量により調整することができる。
エチレン系重合体(I)の重合触媒は特に限定しないが、MFRと密度のバランスから好ましくはチーグラー系触媒が用いられる。好ましい触媒の例としては、Ti及び/又はVの化合物と周期表第1族〜第3族元素の有機金属化合物からなる固体チーグラー触媒である。
固体チーグラー触媒として、チタン(Ti)及び/又はバナジウム(V)並びにマグネシウム(Mg)を含有する固体触媒が挙げられ、これらの成分と共に用いることのできる有機金属化合物として、有機アルミニウム化合物、中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましいものとして挙げられる。重合反応中における有機アルミニウム化合物の使用量は、特に制限されないが、用いる場合には、通常遷移金属化合物1モルに対して、0.05〜1000モルの範囲が好ましい。
チーグラー触媒の例として、例えば、特開昭63−202602号公報の実施例1等に記載の「触媒」を使用し、重合方法として、特開2004−123995号公報の実施例1等に記載の「原料の配合比や条件」を参酌することにより、本発明におけるエチレン系重合体(I)を製造することができる。
本発明において、エチレン系重合体(I)の種類としては、エチレンの単独重合体及び/又はエチレンとα−オレフィンとの共重合体であることが好ましく、すなわち、エチレン系重合体であることが好ましい。
エチレン系重合体(I)としては、エチレンの単独重合、又はエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等との共重合により得られる。また、改質を目的とする場合のジエンとの共重合も可能である。このとき使用されるジエン化合物の例としては、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。
なお、重合の際のコモノマー含有率は、任意に選択することができるが、例えば、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合の場合には、エチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量は、0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%である。
エチレン系重合体(I)は、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法などの製造プロセスにより製造することができ、好ましくはスラリー重合法が望ましい。該エチレン系重合体の重合条件のうち、重合温度としては、0〜300℃の範囲から選択することができる。スラリー重合においては、生成ポリマーの融点より低い温度で重合を行う。重合圧力は、大気圧〜約10MPaの範囲から選択することができる。実質的に酸素、水等を断った状態で、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下でエチレン及びα−オレフィンのスラリー重合を行うことにより製造することができる。
スラリー重合において重合器に供給される水素は、連鎖移動剤として消費され、生成するエチレン系重合体の平均分子量を決定するほか、一部は溶媒に溶解して重合器から排出される。溶媒中への水素の溶解度は小さく、重合器内に大量の気相部が存在しない限り、触媒の重合活性点付近の水素濃度は低い。そのため、水素供給量を変化させれば、触媒の重合活性点における水素濃度が速やかに変化し、生成するエチレン系重合体の分子量は、短時間の間に水素供給量に追随して変化する。従って、短い周期で水素供給量を変化させれば、より均質な製品を製造することができる。このような理由から、重合法としてスラリー重合法を採用することが好ましい。また、水素供給量の変化の態様は、連続的に変化させるよりも不連続的に変化させる方が、分子量分布を広げる効果が得られるので好ましい。
本発明に係るエチレン系重合体(I)においては、上記の通り、水素供給量を変化させることは重要であるが、その他の重合条件、例えば重合温度、触媒供給量、エチレンなどのオレフィンの供給量、1−ヘキセンなどのコモノマーの供給量、溶媒の供給量等を、適宜に水素の変化と同時に又は別個に変化させることも、重要である。
エチレン系重合体(I)は、複数の成分により構成することが可能である。該ポリエチレン(I)は、1種類の触媒を用いて多段重合反応器にて順次連続的に重合された重合体でもよく、複数種類の触媒を用いて単段又は多段重合反応器にて製造された重合体でもよいし、1種類又は複数種類の触媒を用いて重合された重合体を混合したものでもよい。
直列に接続した複数の反応器で順次連続して重合するいわゆる多段重合方法を用いる場合は、所定の条件を満たす限り、始めの重合域(第1段目の反応器)において高分子量成分を製造する製造条件を採用して重合し、得られた重合体を次の反応域(第2段目の反応器)に移送し、第2段目の反応器において低分子量成分を製造する順序でも、逆に、始めの重合域(第1段目の反応器)において低分子量成分を製造する製造条件を採用して重合し、得られた重合体を次の反応域(第2段目の反応器)に移送し、第2段目の反応器において高分子量成分を製造する順序のどちらでも良い。
具体的な好ましい重合方法は、以下の方法である。即ち、チタン系遷移金属化合物及び有機アルミニウム化合物を含むチーグラー触媒及び二器の反応器を使用し、第1段目の反応器にエチレン及びα−オレフィンを導入し、低密度の高分子量成分の重合体を製造し、第1段目の反応器から抜き出された重合体を第2段目の反応器に移送し、第2段目の反応器にエチレン及び水素を導入し、高密度の低分子量成分の重合体を製造する方法である。
なお、多段重合の場合、第2段目以降の重合域で生成するエチレン系重合体の量とその性状については、各段における重合体生成量(未反応ガス分析等により把握できる)を求め、各段の後でそれぞれ抜出した重合体の物性を測定し、加成性に基づいて各段で生成した重合体の物性を求めることができる。
3.エチレン系重合体(II)
本発明のポリエチレンは、エチレン系重合体(I)50〜60重量%に対して、Ti、Zr、またはHfを含有するメタロセン系触媒を用いて重合されたエチレン系重合体(II)を40〜50重量%含有させたものであることが好ましい。
エチレン系重合体(II)のMFRは、0.05g/10分以上、0.5g/10分以下、好ましくは0.05〜0.35g/10分、更に好ましくは0.1〜0.2g/10分の範囲である。このMFRが0.05g/10分未満であれば、最終のポリエチレンにおいて、MFRが規定の範囲内を達成できず、流動性が低下し、かつ、エチレン系重合体(I)との混ざりも悪くなり均一性に劣る。一方、このMFRが0.5g/10分を超えた場合には、最終ポリエチレンにおいて、長期耐久性、特にFNCTを指標とするSCGが低下し、かつ、結晶化速度も低下し、DSCで測定できる121.5℃での等温結晶化時間が180秒を超え、その結果、成形サイクルが低下するおそれがある。
エチレン系重合体(II)の密度は、0.915〜0.930g/cmであり、好ましくは0.920〜0.925g/cm、更に好ましくは0.920〜0.922g/cmである。密度が0.915g/cm未満であれば、最終ポリエチレンにおける密度範囲を達成できず曲げ弾性率が低下し、結果として材料の剛性不足となり、耐圧性が低下するおそれがある。一方、密度が0.930g/cmを超えた場合には、最終ポリエチレンの長期耐久性、特にFNCTを指標とするSCGが低下するおそれがある。
本関係を満たすエチレン系重合体(II)は長鎖分岐構造を有しており、エチレン系重合体(I)とともに使用することにより、結晶化速度を極めて有効に速くすることができ、いわゆる結晶核剤を添加したと同様な効果を発揮し、結晶化時間を短くすることができ、パイプ及び継手用ポリエチレンとしての高速成形ハイサイクル化を達成でき、かつ、耐久性も向上させることができる。
エチレン系重合体(II)は、好ましくは、温度190℃、荷重21.6Kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)(単位:g/10分)とゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定される重量平均分子量(Mw)が下記(1)の関係を満たす。
log[HLMFR]≦−3.85log[Mw/10000]+6.0 (1)
従来のエチレン系重合体においては、結晶化速度を上げるために、結晶核剤として働く物質を添加する等の方法が試みられているが、このような従来技術の状況を踏まえて、成形加工性と機械強度などの物性を共に充分に向上させるポリエチレンを検討した結果として、本発明に係るエチレン系重合体(II)をエチレン系重合体組成物(I)とともに使用することにより、優れた機械強度などの物性を維持しつつ、結晶化速度を充分に向上させることができ、成形速度の向上を図ることができるものであると考えられる。
好ましくは、前記の(1)の関係を満足するエチレン系重合体(II)、好ましくは以下の(2)の関係を、更に好ましくは以下の(3)の関係を満足するエチレン系重合体(II)により、本発明の著しい効果を発揮し、好ましいパイプ及び継手用ポリエチレンとなるものである。
log[HLMFR]≦−3.85log[Mw/10000]+5.9 (2)
log[HLMFR]≦−3.85log[Mw/10000]+5.8 (3)
ここで、上記の式(1)の技術的意味は、重量平均分子量との見合いで流動性が低め、即ちHLMFRが小さめであることを示しており、これは、このエチレン系重合体(II)が長鎖分岐を有すること、しかも所定のMwに対して特定HLMFRを示す長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体であることを示している。
式(1)〜(3)において、切片(式(1)であれば“6.0”)の値は長鎖分岐構造の発達を示す指標となり、切片が小さい場合において上記の重量平均分子量とHLMFRの関係式が成立するということは、より発達した長鎖分岐構造を有していることを示す。 長鎖分岐構造の発達が不十分な場合、結晶核材効果が弱くなり結晶化速度が充分に向上しない場合がある。
本発明の属する技術分野において、長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体を測定する方法は、各種の方法が知られており、例えば、伸長粘度測定において粘度の立ち上がりが見られる高分子も長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体に含まれる。そして、長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体の中で、本発明の式を満足するものは、特定の長鎖分岐構造を有するものとして、好適である。
本発明の属する技術分野において、長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体を測定する方法は、各種の方法が知られており、例えば、伸長粘度測定において粘度の立ち上がりが見られる高分子は長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体に含まれる。
成形速度を律する長鎖分岐構造は、具体的には、例えば星形分岐高分子や櫛形分岐高分子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明に係る長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体(II)は、例えば、10000炭素連鎖当たり1本程度の長鎖分岐が存在する重合体を挙げることができ、これは、例えば13C−NMR測定により確認することができる。長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体は、重合触媒として、フィリップス触媒等のクロム触媒や、シングルサイト触媒としてのメタロセン触媒を使用して、重合することにより製造することができる。
また、長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体(II)としては、エチレンへの連鎖移動によって末端ビニル基を有するポリエチレン(マクロモノマー)を生成させ、マクロモノマーとエチレンの共重合を経て、長鎖分岐構造を有する重合体を得ることができる。
メタロセン触媒の中では、特定構造のメタロセン錯体を有する触媒が好ましく、特にシクロペンタジエニル環及び複素環式芳香族基を有するメタロセン触媒又はシクロペンタジエニル環及びフルオレニル環を有するメタロセン触媒が好ましい。
エチレン系重合体(II)の配合量は、エチレン系重合体(I)50〜60重量%に対し、40〜50重量%、好ましくはエチレン系重合体(I)55〜60重量%に対し、40〜45重量%である。エチレン系重合体(II)の配合量が40重量%未満であれば、本発明のポリエチレンの長期耐久性、特にFNCTを指標とするSCGが低下するおそれがある。一方、50重量%を超えれば、本発明のポリエチレンのMFR、密度が低下し、流動性、剛性、耐圧性が低下する重合体となるおそれがある。
エチレン系重合体(II)は、Ti、ZrまたはHfを含有するメタロセン系触媒で重合される。メタロセン系触媒としては、メタロセン触媒と呼ばれる、シクロペンタジエン骨格を有する配位子が遷移金属に配位してなる錯体と助触媒とを組み合わせたものが例示される。具体的なメタロセン触媒としては、Ti、Zr、Hfなどを含む遷移金属に、メチルシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、インデン等のシクロペンタジエン骨格を有する配位子が配位してなる錯体触媒と、助触媒として、アルミノキサン等の周期表第1族〜第3族元素の有機金属化合物とを、組み合わせたものや、これらの錯体触媒をシリカ等の担体に担持させた担持型のものが挙げられる。
本発明で用いられるメタロセン触媒は、以下の成分(A)及び成分(B)を含むものであり、必要に応じて成分(C)と組み合わせてなる触媒である。
成分(A):メタロセン錯体
成分(B):成分(A)と反応して、カチオン性メタロセン化合物を形成する化合物
成分(C):微粒子担体
(1)成分(A)
成分(A)は、第4族遷移金属のメタロセン化合物が用いられる。具体的には、下記一般式(I)〜(VI)で表される化合物が使用される。
(C5−a )(C5−b )MXY (I)
Q(C4−c )(C4−d )MXY (II)
Q’(C4−e )ZMXY (III)
(C5−f )ZMXY (IV)
(C5−f )MXYW (V)
Q”(C5−g )(C5−h )MXY (VI)
ここで、Qは、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を示し、Q’は、共役五員環配位子とZ基を架橋する結合性基を示し、Q”は、RとRを架橋する結合性基を示し、Mは、Ti、ZrまたはHfを示し、X、Y及びWは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基又は炭素数1〜20の珪素含有炭化水素基を示し、Zは、酸素、イオウを含む配位子、炭素数1〜40の珪素含有炭化水素基、炭素数1〜40の窒素含有炭化水素基又は炭素数1〜40のリン含有炭化水素基を示す。
〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、酸素含有炭化水素基、硫黄含有炭化水素基、珪素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基又はホウ素含有炭化水素基を示す。また、隣接する2個のR、2個のR、2個のR、2個のR、又は2個のRが、それぞれ結合して炭素数4〜10個の環を形成していてもよい。また、a、b、c、d、e、f及びhは、それぞれ0≦a≦5、0≦b≦5、0≦c≦4、0≦d≦4、0≦e≦4、0≦f≦5、0≦g≦5、0≦h≦5、を満足する整数である。
2個の共役五員環配位子の間を架橋する結合性基Q、共役五員環配位子とZ基とを架橋する結合性基Q’、及び、RとRを架橋するQ”は、具体的には、下記のようなものが挙げられる。
すなわち、メチレン基、エチレン基のようなアルキレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、フェニルメチリデン基、ジフェニルメチリデン基のようなアルキリデン基、ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジプロピルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルエチルシリレン基、メチルフェニルシリレン基、メチル−t−ブチルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基のような珪素含有架橋基、ゲルマニウム含有架橋基、アルキルフォスフィン、アミン等である。これらのうち、アルキレン基、アルキリデン基、珪素含有架橋基、及びゲルマニウム含有架橋基が特に好ましく用いられる。
上述の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)で表される具体的なZr錯体を下記に例示するが、ZrをHf又はTiに置き換えた化合物も、同様に使用可能である。
また、一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)で示される成分(A)は、同一の一般式で示される化合物、又は異なる一般式で示される化合物の二種以上の混合物として用いることができる。
一般式(I)の化合物:
ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4,5ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビスフルオレニルジルコニウムジクロリド、ビス(4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4H−アズレニル)シクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド。
ビス(2−フリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−フリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−フリル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド。
一般式(II)の化合物:
ジメチルシリレンビス(1,1’−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレンビス[1,1’−(2−メチル−4,5ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−メチル−4−ヒドロアズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−[2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル]}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−エチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレンビス[1,1’−(2−メチル−4−ヒドロアズレニル)]ジルコニウムジクロリド。
ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−フリルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−[2−(2−フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−{2−[2−(5−トリメチルシリル)フリル]−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−[2−(2−フリル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−[2−(2−フリル)−4−フェニル−インデニル]}ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)[9−(2,7−t−ブチル)フルオレニル]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)[9−(2,7−t−ブチル)フルオレニル]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)[9−(2,7−t−ブチル)フルオレニル]ジルコニウムジクロリド。
一般式(III)の化合物:
(第3級ブチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロライド、(メチルアミド)−(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル−ジルコニウムジクロライド、(エチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)−メチレンジルコニウムジクロライド、(第3級ブチルアミド)ジメチル−(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジクロライド、(第3級ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジベンジル、(ベンジルアミド)ジメチル(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジクロライド、(フエニルホスフイド)ジメチル(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジベンジル。
一般式(IV)の化合物:
(シクロペンタジエニル)(フェノキシ)ジルコニウムジクロリド、(2,3−ジメチルシクロペンタジエニル)(フェノキシ)ジルコニウムジクロリド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(フェノキシ)ジルコニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)ジルコニウムジクロリド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(2,6−ジ−i−プロピルフェノキシ)ジルコニウムジクロリド。
一般式(V)の化合物:
(シクロペンタジエニル)ジルコニウムトリクロリド、(2,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムトリクロリド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムトリクロリド、(シクロペンタジエニル)ジルコニウムトリイソプロポキシド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムトリイソプロポキシド。
一般式(VI)の化合物:
エチレンビス(7,7’−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{7,7’−(1−メチル−3−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{7,7’−[1−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[7,7’−(1−エチル−3−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{7,7’−[1−イソプロピル−3−(4−クロロフェニル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド。
なお、これらの具体例の化合物のシリレン基を、ゲルミレン基に置き換えた化合物も、好適な化合物として例示される。
以上において記載した遷移金属化合物成分(A)の中で、エチレン系重合体(II)を製造するための好ましいメタロセン錯体としては、一般式(I)または一般式(II)で表されるメタロセン錯体が好ましく、さらには、高分子量のポリマーを生成可能であり、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合において共重合性に優れるという観点から、一般式(II)で表されるメタロセン錯体が好ましい。高分子量体を製造可能ということは、後述するような種々のポリマーの分子量の調整手法により、様々な分子量のポリマーの設計が行えるという利点がある。
さらに、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)とGPCにて測定できるMwが式(1)の関係を満たすための一つの方法は、エチレン重合体中に長鎖分岐を導入することであるが、高分子量でかつ長鎖分岐を有するポリエチレンを製造可能という観点から、一般式(II)で表されるメタロセン錯体の中でも、以下の2つの化合物群が好ましい。
好ましい態様として、第一の化合物群は、R〜Rとして、化合物内に少なくとも一つ、複素環式芳香族基を含有している架橋メタロセン錯体である。好ましい複素環式芳香族基としては、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基よりなる群が挙げられる。これらの置換基は、さらに珪素含有基等の置換基を有していてもよい。フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基よりなる群から選択される置換基の中で、フリル基、ベンゾフリル基がさらに好ましい。さらには、これらの置換基が、置換シクロペンタジエニル基または置換インデニル基の2位に導入されていることが好ましく、少なくとも1つ、他に縮環構造を有しない置換シクロペンタジエニル基を有している化合物であることが特に好ましい。
第二の化合物群は、置換シクロペンタジエニル基と置換フルオレニル基を組み合わせた架橋メタロセン錯体である。
これらのメタロセン錯体は、後述するような担持触媒として用いることが好ましい。第一の化合物群においては、フリル基はチエニル基に含有されるいわゆるヘテロ原子と担体上の固体酸などの相互作用により、活性点構造に不均一性が生じ、長鎖分岐が生成しやすくなったものと考えている。また、第二の化合物群においても、担持触媒にすることで、活性点まわりの空間が変化するため、長鎖分岐が生成しやすくなったものと考えている。
(2)成分(B)
本発明に係るエチレン系重合体(II)の製造方法は、オレフィン重合用触媒の必須成分として、上記成分(A)以外に、成分(A)のメタロセン化合物(以下、「成分(A)」または単に「A」と記すこともある。)と反応してカチオン性メタロセン化合物を形成する化合物(成分(B)、以下、単に「B」と記すこともある。)、必要に応じて微粒子担体(成分(C)、以下、単に「C」と記すこともある。)を含むことに、特徴がある。
メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を形成する化合物(B)の一つとして、有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。
上記有機アルミニウムオキシ化合物は、分子中に、Al−O−Al結合を有し、その結合数は通常1〜100、好ましくは1〜50個の範囲にある。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、通常、有機アルミニウム化合物と水とを反応させて得られる生成物である。
有機アルミニウムと水との反応は、通常、不活性炭化水素(溶媒)中で行われる。不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素が使用できるが、脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素を使用することが好ましい。
有機アルミニウムオキシ化合物の調製に用いる有機アルミニウム化合物は、下記一般式(4)で表される化合物がいずれも使用可能であるが、好ましくはトリアルキルアルミニウムが使用される。
AlX 3−t (4)
(式中、Rは、炭素数1〜18、好ましくは1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基を示し、Xは、水素原子又はハロゲン原子を示し、tは、1≦t≦3の整数を示す。)
トリアルキルアルミニウムのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のいずれでも差し支えないが、メチル基であることが特に好ましい。
上記有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は、0.25/1〜1.2/1、特に、0.5/1〜1/1であることが好ましく、反応温度は、通常−70〜100℃、好ましくは−20〜20℃の範囲にある。反応時間は、通常5分〜24時間、好ましくは10分〜5時間の範囲で選ばれる。反応に要する水として、単なる水のみならず、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物等に含まれる結晶水や反応系中に水が生成しうる成分も利用することもできる。
なお、上記した有機アルミニウムオキシ化合物のうち、アルキルアルミニウムと水とを反応させて得られるものは、通常、アルミノキサンと呼ばれ、特にメチルアルミノキサン(実質的にメチルアルミノキサン(MAO)からなるものを含む)は、有機アルミニウムオキシ化合物として、好適である。
もちろん、有機アルミニウムオキシ化合物として、上記した各有機アルミニウムオキシ化合物の2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、前記有機アルミニウムオキシ化合物を前述の不活性炭化水素溶媒に溶液または分散させた溶液としたものを用いても良い。
また、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を形成する化合物(B)の他の具体例として、ボラン化合物やボレート化合物が挙げられる。
上記ボラン化合物をより具体的に表すと、トリフェニルボラン、トリ(o−トリル)ボラン、トリ(p−トリル)ボラン、トリ(m−トリル)ボラン、トリ(o−フルオロフェニル)ボラン、トリス(p−フルオロフェニル)ボラン、トリス(m−フルオロフェニル)ボラン、トリス(2,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5―ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランなどが挙げられる。
これらの中でも、トリス(3,5―ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランがより好ましく、さらに好ましくはトリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボランが好ましい化合物として例示される。
また、ボレート化合物を具体的に表すと、第1の例は、次の一般式(5)で示される化合物である。
[L−H][BR (5)
式(5)中、Lは、中性ルイス塩基であり、Hは、水素原子であり、[L−H]は、アンモニウム、アニリニウム、ホスフォニウム等のブレンステッド酸である。
アンモニウムとしては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウムなどのトリアルキル置換アンモニウム、ジ(n−プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウムなどのジアルキルアンモニウムを例示できる。
また、アニリニウムとしては、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムなどのN,N−ジアルキルアニリニウムが例示できる。
さらに、ホスフォニウムとしては、トリフェニルホスフォニウム、トリブチルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスフォニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスフォニウムなどのトリアリールホスフォニウム、トリアルキルホスフォニウムが挙げられる。
また、式(5)中、RおよびRは、6〜20、好ましくは6〜16の炭素原子を含む、同じか又は異なる芳香族又は置換芳香族炭化水素基で、架橋基によって互いに連結されていてもよく、置換芳香族炭化水素基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等に代表されるアルキル基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンが好ましい。
さらに、X及びXは、ハイドライド基、ハライド基、1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、1個以上の水素原子がハロゲン原子によって置換された1〜20の炭素原子を含む置換炭化水素基である。
上記一般式(5)で表される化合物の具体例としては、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどを例示することができる。
これらの中でも、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレートが好ましい。
また、ボレート化合物の第2の例は、次の一般式(6)で表される。
[L[BR (6)
式(6)中、Lは、カルボカチオン、メチルカチオン、エチルカチオン、プロピルカチオン、イソプロピルカチオン、ブチルカチオン、イソブチルカチオン、tert−ブチルカチオン、ペンチルカチオン、トロピニウムカチオン、ベンジルカチオン、トリチルカチオン、ナトリウムカチオン、プロトン等が挙げられる。また、R、R、X及びXは、前記一般式(5)における定義と同じである。
上記化合物の具体例としては、トリチルテトラフェニルボレート、トリチルテトラ(o−トリル)ボレート、トリチルテトラ(p−トリル)ボレート、トリチルテトラ(m−トリル)ボレート、トリチルテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラフェニルボレート、トロピニウムテトラ(o−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaBPh、NaB(o−CH−Ph)、NaB(p−CH−Ph)、NaB(m−CH−Ph)、NaB(o−F−Ph)、NaB(p−F−Ph)、NaB(m−F−Ph)、NaB(3,5−F−Ph)、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、NaB(3,5−(CF−Ph)、NaB(C10、HBPh・2ジエチルエーテル、HB(3,5−F−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C ・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルを例示することができる。
これらの中でも、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、NaB(3,5−(CF−Ph)、NaB(C10、HB(C ・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルが好ましい。
さらに好ましくは、これらの中でもトリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、HB(C ・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルが挙げられる。
(3)成分(C)
成分(C)である微粒子担体としては、無機物担体、粒子状ポリマー担体またはこれらの混合物が挙げられる。無機物担体は、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩、炭素質物、またはこれらの混合物が使用可能である。
無機物担体に用いることができる好適な金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
また、金属酸化物としては、周期表1〜14族の元素の単独酸化物または複合酸化物が挙げられ、例えば、SiO、Al、MgO、CaO、B、TiO、ZrO、Fe、Al・MgO、Al・CaO、Al・SiO、Al・MgO・CaO、Al・MgO・SiO、Al・CuO、Al・Fe、Al・NiO、SiO・MgOなどの天然または合成の各種単独酸化物または複合酸化物を例示することができる。
ここで、上記の式は、分子式ではなく、組成のみを表すものであって、本発明において用いられる複合酸化物の構造および成分比率は特に限定されるものではない。
また、本発明において用いる金属酸化物は、少量の水分を吸収していても差し支えなく、少量の不純物を含有していても差し支えない。
金属塩化物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物が好ましく、具体的にはMgCl、CaClなどが特に好適である。
金属炭酸塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましく、具体的には、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。
炭素質物としては、例えば、カーボンブラック、活性炭などが挙げられる。
以上の無機物担体は、いずれも本発明に好適に用いることができるが、特に金属酸化物、シリカ、アルミナなどの使用が好ましい。
これら無機物担体は、通常、200〜800℃、好ましくは400〜600℃で空気中または窒素、アルゴン等の不活性ガス中で焼成して、表面水酸基の量を0.8〜1.5mmol/gに調節して用いるのが好ましい。
これら無機物担体の性状としては、特に制限はないが、通常、平均粒径は5〜200μm、好ましくは10〜150μm、平均細孔径は20〜1000Å、好ましくは50〜500Å、比表面積は150〜1000m/g、好ましくは200〜700m/g、細孔容積は0.3〜2.5cm/g、好ましくは0.5〜2.0cm/g、見掛比重は0.10〜0.50g/cmを有する無機物担体を用いるのが好ましい。
上記した無機物担体は、もちろんそのまま用いることもできるが、予備処理としてこれらの担体をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物に接触させた後、用いることができる。
本発明に係るメタロセン系触媒は、メタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)、及び必要に応じて微粒子担体(C)からなる触媒を得る際の各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法が任意に採用可能である。
(I)メタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)とを接触させた後、微粒子担体(C)を接触させる。
(II)メタロセン化合物(A)と、微粒子担体(C)とを接触させた後、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)を接触させる。
(III)メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と、微粒子担体(C)とを接触させた後、メタロセン化合物(A)を接触させる。
これらの接触方法の中で(I)と(III)が好ましく、さらに(I)が最も好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6〜12)、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5〜12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下または非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
この接触は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−50℃〜100℃、さらに好ましくは0℃〜50℃の温度にて、5分〜50時間、好ましくは30分〜24時間、さらに好ましくは30分〜12時間で行うことが望ましい。
また、メタロセン化合物(A)、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と微粒子担体(C)の接触に際しては、上記した通り、ある種の成分が可溶ないしは難溶な芳香族炭化水素溶媒と、ある種の成分が不溶ないしは難溶な脂肪族または脂環族炭化水素溶媒とがいずれも使用可能である。
各成分同士の接触反応を段階的に行う場合にあっては、前段で用いた溶媒などを除去することなく、これをそのまま後段の接触反応の溶媒に用いてもよい。また、可溶性溶媒を使用した前段の接触反応後、ある種の成分が不溶もしくは難溶な液状不活性炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素あるいは芳香族炭化水素)を添加して、所望生成物を固形物として回収した後に、あるいは一旦可溶性溶媒の一部または全部を、乾燥等の手段により除去して所望生成物を固形物として取り出した後に、この所望生成物の後段の接触反応を、上記した不活性炭化水素溶媒のいずれかを使用して実施することもできる。本発明では、各成分の接触反応を複数回行うことを妨げない。
本発明において、メタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と、微粒子担体(C)の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)として、有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、メタロセン化合物(A)中の遷移金属(M)に対する有機アルミニウムオキシ化合物のアルミニウムの原子比(Al/M)は、通常、1〜100,000、好ましくは5〜1000、さらに好ましくは50〜200の範囲が望ましく、また、ボラン化合物やボレート化合物を用いる場合、メタロセン化合物中の遷移金属(M)に対する、ホウ素の原子比(B/M)は、通常、0.01〜100、好ましくは0.1〜50、さらに好ましくは0.2〜10の範囲で選択することが望ましい。
さらに、カチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)として、有機アルミニウムオキシ化合物と、ボラン化合物、ボレート化合物との混合物を用いる場合にあっては、混合物における各化合物について、遷移金属(M)に対して上記と同様な使用割合で選択することが望ましい。
微粒子担体(C)の使用量は、メタロセン化合物(A)中の遷移金属0.0001〜5ミリモル当たり、好ましくは0.001〜0.5ミリモル当たり、さらに好ましくは0.01〜0.1ミリモル当たり、1gである。
メタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と、微粒子担体(C)とを、前記接触方法(I)〜(III)のいずれかで相互に接触させ、しかる後、溶媒を除去することで、オレフィン重合用触媒を固体触媒として得ることができる。溶媒の除去は、常圧下または減圧下、0〜200℃、好ましくは20〜150℃で1分〜50時間、好ましくは10分〜10時間で行うことが望ましい。
なお、メタロセン系触媒は、以下の方法によっても得ることができる。
(IV)メタロセン化合物(A)と微粒子担体(C)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物またはこれらの混合物と接触させる。
(V)有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物またはこれらの混合物と微粒子担体(C)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下でメタロセン化合物(A)と接触させる。
上記(IV)、(V)の接触方法の場合も、成分比、接触条件および溶媒除去条件は、前記と同様の条件が使用できる。
また、本発明に係るエチレン系重合体(II)の製造方法の必須成分であるメタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と微粒子担体(C)とを兼ねる成分として、層状珪酸塩を用いることもできる。
層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物である。
大部分の層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、層状珪酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
一般に、天然品は、非イオン交換性(非膨潤性)であることが多く、その場合は好ましいイオン交換性(ないし膨潤性)を有するものとするために、イオン交換性(ないし膨潤性)を付与するための処理を行うことが好ましい。そのような処理のうちで特に好ましいものとしては、次のような化学処理が挙げられる。
ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と層状珪酸塩の結晶構造、化学組成に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。
具体的には、(イ)塩酸、硫酸等を用いて行う酸処理、(ロ)NaOH、KOH、NH等を用いて行うアルカリ処理、(ハ)周期表第2族から第14族から選ばれた少なくとも1種の原子を含む陽イオンとハロゲン原子または無機酸由来の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンからなる塩類を用いた塩類処理、(ニ)アルコール、炭化水素化合物、ホルムアミド、アニリン等の有機物処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせてもよい。
前記層状珪酸塩は、全ての工程の前、間、後のいずれの時点においても、粉砕、造粒、分粒、分別等によって、粒子性状を制御することができる。その方法は、合目的的な任意のものであり得る。特に、造粒法について示せば、例えば、噴霧造粒法、転動造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、ブリケッティング法、コンパクティング法、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法および液中造粒法等が挙げられる。特に好ましい造粒法は、上記の内、噴霧造粒法、転動造粒法および圧縮造粒法である。
上記した層状珪酸塩は、もちろんそのまま用いることもできるが、これらの層状珪酸塩をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物と組み合わせて用いることができる。
本発明に係るメタロセン系触媒において、メタロセン化合物(A)を、層状珪酸塩に担持するには、メタロセン化合物(A)と層状珪酸塩を相互に接触させる、あるいはメタロセン化合物(A)、有機アルミニウム化合物、層状珪酸塩を相互に接触させてもよい。
各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法が任意に採用可能である。
(VI)メタロセン化合物(A)と有機アルミニウム化合物を接触させた後、層状珪酸塩担体と接触させる。
(VII)メタロセン化合物(A)と層状珪酸塩担体を接触させた後、有機アルミニウム化合物と接触させる。
(VIII)有機アルミニウム化合物と層状珪酸塩担体を接触させた後、メタロセン化合物(A)と接触させる。
これらの接触方法の中で(VI)と(VIII)が好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6〜12)、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5〜12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下または非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
メタロセン化合物(A)と、有機アルミニウム化合物、層状珪酸塩担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
メタロセン化合物(A)の担持量は、層状珪酸塩担体1gあたり、0.0001〜5ミリモル、好ましくは0.001〜0.5ミリモル、さらに好ましくは0.01〜0.1ミリモルである。
また、有機アルミニウム化合物を用いる場合のAl担持量は、0.01〜100モル、好ましくは0.1〜50モル、さらに好ましくは0.2〜10モルの範囲であることが望ましい。
担持および溶媒除去の方法は、前記の無機物担体と同様の条件が使用できる。
触媒成分(B)と成分(C)とを兼ねる成分として、層状珪酸塩を用いると、重合活性が高く、長鎖分岐を有するエチレン系重合体の生産性が向上する。
こうして得られるオレフィン重合用触媒は、必要に応じてモノマーの予備重合を行った後に使用しても差し支えない。
メタロセン系触媒の製造例として、例えば、公知刊行物である特表2002−535339号公報や特開2004−189869号公報に記載の「触媒」および「原料の配合比や条件」を参酌することにより、製造することができる。また、重合体のインデックスは、各種重合条件により制御することができ、例えば、特開平2−269705号公報や特開平3−21607号公報記載の方法により制御することができる。
エチレン系重合体(II)は、エチレンの単独重合、又はエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等との共重合により得られる。また、改質を目的とする場合のジエンとの共重合も可能である。このとき使用されるジエン化合物の例としては、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。なお、重合の際のコモノマー含有率は、任意に選択することができるが、例えば、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合の場合には、エチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量は、0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%である。
生成重合体の分子量は、重合温度、触媒のモル比等の重合条件を変えることによってもある程度調節可能であるが、重合反応系に水素を添加することで、より効果的に分子量調節を行うことができる。
また、重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても何ら支障なく実施することができる。
なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
水素濃度、モノマー量、重合圧力、重合温度等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式にも、支障なく適用することができる。
エチレン系重合体(II)は、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法などの製造プロセスにより製造することができ、好ましくはスラリー重合法が望ましい。エチレン系重合体(II)の重合条件のうち重合温度としては、0〜200℃の範囲から選択することができる。スラリー重合においては、生成ポリマーの融点より低い温度で重合を行う。重合圧力は、大気圧〜約10MPaの範囲から選択することができる。実質的に酸素、水等を断った状態で、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下でエチレン及びα−オレフィンのスラリー重合を行うことにより製造することができる。
エチレン系重合体(II)は、所定の範囲を満たせば、単一の重合器、直列もしくは並列に接続した複数の反応器で順次連続して重合、及び複数のエチレン重合体を別々に重合した後に混合したものでもよい。
エチレン系重合体(I)及びエチレン系重合体(II)に使用されるエチレンは、通常の化石原料由来の原油から製造されるエチレンであってもよいし、植物由来のエチレンであってもよい。植物由来のエチレン及びポリエチレンとしては、例えば、特表2010−511634号公報に記載のエチレンやそのポリマーが挙げられる。植物由来のエチレンやそのポリマーは、カーボンニュートラル(化石原料を使わず大気中の二酸化炭素の増加につながらない)の性質を持ち、環境に配慮した製品の提供が可能である。
上記のパイプ及び継手用ポリエチレンは、常法に従い、ペレタイザーやホモジナイザー等による機械的な溶融混合によりペレット化した後、各種成形機により成形を行って所望の成形品とすることができる。
また、上記の方法により得られるパイプ及び継手用ポリエチレンには、常法に従い、他のオレフィン系重合体やゴム等のほか、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、着色顔料、架橋剤、発泡剤、無機又は有機充填剤、難燃剤等の公知の添加剤を配合することができる。
添加剤として、例えば、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を1種又は2種以上、適宜併用することができる。充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、金属粉(アルミニウム、銅、鉄、鉛など)、珪石、珪藻土、アルミナ、石膏、マイカ、クレー、アスベスト、グラファイト、カーボンブラック、酸化チタン等が使用可能であり、なかでも炭酸カルシウム、タルク及びマイカ等を用いるのが好ましい。いずれの場合でも、上記ポリエチレン樹脂組成物に、必要に応じ各種添加剤を配合し、混練押出機、バンバリーミキサー等にて混練し、成形用材料とすることができる。
本発明において、パイプ及び継手用ポリエチレンの結晶化速度を更に促進するために、核剤を用いることも、有効な手法である。
該核剤としては、一般に知られているものを使用することができ、一般的な有機系又は無機系の造核剤を用いることができる。例えば、ジベンジリデンソルビトールもしくはその誘導体、有機リン酸化合物もしくはその金属塩、芳香族スルホン酸塩もしくはその金属塩、有機カルボン酸もしくはその金属塩、ロジン酸部分金属塩、タルク等の無機微粒子、イミド類、アミド類、キナクリドンキノン類、またはこれらの混合物が挙げられる。
中でもジベンジリデンソルビトール誘導体、有機リン酸金属塩、有機カルボン酸金属塩等は、透明性に優れるなど好適である。
ジベンジリデンソルビトール誘導体の具体例としては、1,3:2,4−ビス(o−3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−2,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−4−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−4−クロロベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ジベンジリデンソルビトールが挙げられ、安息香酸金属塩の具体例としては、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸)アルミニウム等が挙げられる。
本発明のポリエチレンに核剤を配合する場合、核剤の配合量は、ポリエチレン100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜3重量部、更に好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは0.01〜0.5重量部である。核剤が0.01重量部未満では、高速成形性の改良効果が十分でなく、一方、5重量部を超えると、核剤が凝集してブツになり易いといった問題が生じる。
4.成形体
本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンを原料として、主に射出成形法、押出成形法等により成形され、各種成形品が得られる。
本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンは、上記特性を満足するものであるので、パイプ用品質基準、例えば、内圧がかかった状態での長期耐性、ノッチ形状等による応力集中下でのSCGへの高度の耐性に十分合致し、それらを従来のPE100材料に比べ大幅に向上した性能を有し、しかも、これらを成形サイクルをハイサイクル化することにより、高い生産性にて製造することができ、かつ、パイプ外観も良好となるので、性能が優れる上に製造オフ品の低減も見込めるためコスト的に有利な成形体である。
従って、本発明の成形体は、特に、このような特性を必要とする、水道配水用ポリエチレン管及び継手に好適に用いることができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。
1.測定方法
実施例で用いた測定方法は以下の通りである。
(1)温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(HLMFR):
JIS K6922−2:1997に準拠して測定した。
(2)温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR):
JIS K6922−2:1997に準拠して測定した。
(3)密度:
JIS K6922−1,2:1997に準拠して測定した。
(4)フルノッチクリープ試験(80℃、5MPaで測定)における破断時間:
JIS K6774(1995)付属書1の全周ノッチ式引張クリープ試験に準拠し、80℃、5MPaで測定を行った。試験片は、JIS K6922−2(1997)表2の条件で作成した厚さ6mmで圧縮成形シートから切出し、全周にノッチを入れたもの(試験片厚み6mm、ノッチ深さ1mm、全周)を使用した。サンプルを浸漬する試験溶液はアルキル硫酸ナトリウム1%水溶液を用いた。
(5)結晶化時間(示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間):
パーキンエルマー社製DSC−7にて、試料を190℃にて5分放置後、120℃/分の速度にて121.5℃まで冷却し、保持とした。121.5℃の等温下にて結晶化が終了した時点にてピークトップを検出し、測定した。
(6)曲げ弾性率:
試験片は、JIS K6922−2(1997)表2の条件で作成した厚さ4mmで圧縮成形シートから切出し、JIS K6922−2(1997)に準拠して測定した。
(7)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量の測定(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn):
下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
装置:WATERS社製150C
カラム:昭和電工社製AD80M/Sを3本
測定温度:140℃
濃度:1mg/1ml
溶媒:o−ジクロロベンゼン
なお、分子量の計算及びカラムの較正は、以下の方法に準拠して行なった。
GPCクロマトデータは、1点/秒の頻度でコンピュータに取り込み、森定雄著・共立出版社発行の「サイズ排除クロマトグラフィー」第4章の記載に従ってデータ処理を行ない、Mw、Mn値を計算した。
カラムの較正は、昭和電工社製単分散ポリスチレン(S−7300、S−3900、S−1950、S―1460、S−1010、S−565、S−152、S−66.0、S−28.5、S−5.05)、n−エイコサン及びn−テトラコンタンの各0.2mg/ml溶液を用いて、一連の単分散ポリスチレンの測定を行い、それらの溶出ピーク時間と分子量の対数の関係を4次多項式でフィットしたものを較正曲線とした。
なお、ポリスチレンの分子量(MPS)は、次式を用いてポリエチレンの分子量(MPE)に換算した。MPE=0.468×MPS
(8)均質性評価 :JIS K6922−2に準拠して圧縮成形で作成した厚さ0.4mm成形シートより50mm×50×0.4mmtの試験片を切出し、170℃の環境下でサンプルの4辺を1mmチャックし、中心30mm×30×0.4mmt部が60mm×60まで2軸延伸されたシートサンプル上のブツの状態を判断した。
全くブツが無いものを◎、少量のブツが存在するものを○、実際パイプで外観不良となるレベルであるブツが全体的に存在するものを×とした。
(9)総合評価:
外径32mmφ、肉厚3mmtのパイプを成形温度200℃、冷却温度約20℃、エアギャップ30mmにて成形してその適性総合評価し、以下の基準にて判定した。
○:成形性・外観良好、不良項目なし
×:不良項目あり
2.使用した材料
(1)エチレン系重合体(I):(E1)
<チーグラー触媒の製造>
市販のマグネシウムエチラート20g、粒状の三塩化アルミニウム1.64g(12.3mmol)及びジフェニルジエトキシシラン2.40g(8.81mmol)を共粉砕して得られた共粉砕生成物10.0gに40mlのヘプタンと10.0g(52.7mmol)の四塩化チタンを室温で滴下し、90℃まで昇温し、90分間撹拌を続けた。室温でヘキサンによる洗浄を行うことにより固体触媒15.6gを得た。
<重合>
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム1.0mmol(0.50mol/Lヘキサン溶液)とイソブタン1.0L、仕込み、内温を90℃まで昇温した。ここへ、更に水素を仕込んだ後、固体触媒20mgをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を保持しながら、オートクレーブ気相部の水素濃度を測定し、適宜、水素を追添し1時間重合を継続した。こうしてエチレン系重合体(I)であるポリマー(E1)185gを得た。(E1)の物性値は、表1に記載した。
(2)エチレン系重合体(II)
(i)(E2)〜(E7)
<メタロセン系触媒による重合体の製造>
特表2002−535339号公報の実施例3に記載のメタロセン系触媒、ジメチルシリレンビス{1,1’−[2−(2−フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]}ジルコニウムジクロリドを用いて、常法に従い、以下の方法により、成分(c)のエチレン系重合体(II)を製造した。
<担持触媒の調製>
トルエン13.4mlにメチルアルモキサンのトルエン溶液(Albemarle社製、Al濃度 2.93mol/L)8.5mlとジメチルシリレンビス{1,1’−[2−(2−フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]}ジルコニウムジクロリド 70.6mgを添加し、遮光下、室温で30分間撹拌した。
次いで、予め窒素雰囲気下、400℃、8時間焼成したSiO(GRACE社製、948)5.0gをトルエン溶液に添加し、40℃、1時間撹拌した。その後、40℃を維持して真空乾燥を行い、固体触媒を得た。得られた固体触媒は、ヘキサンでスラリー化してエチレン重合に用いた。
<エチレンの重合>
窒素置換した内容積1.5Lのオートクレーブにトリエチルアルミニウムのヘキサン希釈液(Al濃度0.1mol/L)4mlを添加し、イソブタン800ml導入した。オートクレーブの内温を80℃に昇温し、エチレン分圧が1.4MPaとなるようにエチレンを導入した。固体触媒のヘキサンスラリー(20mg/ml)7mlをオートクレーブに導入し重合を開始した。重合中は、80℃、エチレン分圧一定を維持した。また、重合中の水素濃度を一定に保つために、オートクレーブ気相部の水素濃度を測定し、適宜、1−ヘキセン、水素を追添しながら重合を継続した。1時間後、オートクレーブの内圧とイソブタンをパージすることにより反応を停止した。
その結果、エチレン系重合体(II)であるポリマー(E2)75gを回収した。
同様にして、エチレン分圧、水素濃度、1−ヘキセン量を調整することにより、(E3)〜(E7)のポリマーを製造した。
(ii)(E8)〜(E10)
エチレン共重合体(II)として、チーグラー触媒により製造された(E8)〜(E10)を使用した。
3.実施例及び比較例
[実施例1]
<ポリエチレン樹脂組成物の製造>
上記エチレン系重合体(I)である(E1)及びエチレン系重合体(II)である(E2)を表1に示す割合で溶融混合し、ポリエチレンを製造した。
当該樹脂組成物の物性及び評価結果を表1に示した。得られたポリエチレンは、流動性、曲げ弾性率、長期耐久性などの機械物性に優れ、なおかつ結晶化時間が短く、成形ハイサイクル性、均質性に優れていた。
[実施例2〜7]
表1に示す組成物となるよう条件設定し、上記エチレン系重合体(I)である(E1)及びエチレン系重合体(II)である(E3)〜(E7)をそれぞれ表1に示す割合で溶融混合し、実施例1と同様にポリエチレンを製造した。得られたポリエチレンの評価結果を表1に示した。
[比較例1〜4]
比較例1〜3は、エチレン系重合体(II)がチーグラー触媒により製造された(E8)〜(E10)であり、表1に示すポリエチレンとなるよう条件設定した以外は、実施例1と同様に行った。
比較例4は、エチレン系重合体(II)として(E5)を使用し、その割合を変更し、表1に示すポリエチレンとなるよう条件設定した以外は、実施例1と同様に行った。
Figure 2013203897
[評価]
以上のとおり、表1に示す結果から、実施例1〜7と比較例1〜4とを対比すると、本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンの特定要件を満たさないポリエチレンは、成形性、耐久性のバランスが実施例1〜7のポリエチレンに対して見劣りしている。
これらの比較例に比べて、本発明によるパイプ及び継手用ポリエチレン及びその成形体は、実施例1〜7に示すとおり、成形性、耐久性のバランスが良好であることが確認された。
本発明のパイプ及び継手用ポリエチレン並びにその成形体は、ガスパイプ、配水パイプ及びそれらの継手に好適であり、特に、水道配水用ポリエチレン管及びその継手に好適であり、パイプ用品質基準、例えば、内圧への長期耐性、高度の応力亀裂抵抗、低温ノッチ付衝撃強さ及び急速亀裂成長への高度の耐性に十分合致し、特に長期耐久性が従来のPE100材料に比べ大幅に向上し、かつ、結晶化速度が速いため高速成形が可能であるという効果を奏し、射出成形及び押出成形の両方の成形法において、優れた生産性を発揮し、パイプ表面傷、ブツ等が少ないという優れた外観を有し製品オフ率の低減が可能である。
すなわち、本発明のパイプ及び継手用ポリエチレンを用いた成形品は、パイプ用品質基準に十分合致する性能を有する上に、特に、低速亀裂成長であるFNCTによる値が高く、長期耐久性においては上記基準を大幅に上回る性能を有する上に、寸法安定性が優れ、製品外観が向上した成形品であり性能が優れ、ハイサイクル化が可能であり、ポリエチレン管及び継手の用途拡大に寄与することができると共に、生産性、コスト的に有利であるため、産業上大いに有用である。

Claims (11)

  1. 下記の特性(i)〜(v)を満足することを特徴とするパイプ及び継手用ポリエチレン。
    特性(i):温度190℃、荷重21.6Kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が7〜15g/10分である。
    特性(ii):密度が0.945〜0.954g/cmである。
    特性(iii):フルノッチクリープ試験(80℃、5MPaで測定)における破断時間が500時間以上である。
    特性(iv):示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間が180秒以下である。
    特性(v):曲げ弾性率(23℃)が950MPa以上である。
  2. エチレン系重合体(I)50〜60重量%に対し、HLMFRが0.05〜0.5g/10分であり、密度が0.915〜0.930g/cmであり、HLMFR(単位:g/10分)とゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定される重量平均分子量(Mw)が下記(1)の関係を満たすエチレン系重合体(II)40〜50重量%を含有してなることを特徴とする請求項1に記載のパイプ及び継手用ポリエチレン。
    log[HLMFR]≦−3.85log[Mw/10000]+6.0 (1)
  3. エチレン系重合体(I)50〜55重量%に対し、エチレン系重合体(II)45〜50重量%を含有してなることを特徴とする請求項2に記載のパイプ及び継手用ポリエチレン。
  4. エチレン系重合体(I)は、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレート(MFR)が50〜200g/10分であり、密度が0.955〜0.975g/cmであることを特徴とする請求項2または3に記載のパイプ及び継手用ポリエチレン。
  5. エチレン系重合体(I)は、MFRが80〜150g/10分であり、密度が0.966〜0.973g/cmであることを特徴とする請求項2または3に記載のパイプ及び継手用ポリエチレン。
  6. エチレン系重合体(I)は、チーグラー系触媒を用いて重合されたエチレン系重合体組成物であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のパイプ及び継手用ポリエチレン。
  7. エチレン系重合体(II)は、HLMFRが0.05〜0.5g/10分であり、密度が0.915〜0.930g/cmであることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載のパイプ及び継手用ポリエチレン。
  8. エチレン系重合体(II)は、シクロペンタジエニル環及び複素環式芳香族基を有するメタロセン触媒を用いて重合されることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載のパイプ及び継手用ポリエチレン。
  9. エチレン系重合体(II)は、シクロペンタジエニル環及びフルオレニル環を有するメタロセン触媒を用いて重合されることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載のパイプ及び継手用ポリエチレン。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のパイプ及び継手用ポリエチレンを用いてなることを特徴とする成形体。
  11. パイプまたは継手であることを特徴とする請求項10に記載の成形体。
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