JP2013199691A - 金属ナノワイヤの製造方法、及び金属ナノワイヤ、並びに、金属ナノワイヤを用いたインク組成物、及び導電性部材、導電性部材を用いたタッチパネル、及び太陽電池 - Google Patents

金属ナノワイヤの製造方法、及び金属ナノワイヤ、並びに、金属ナノワイヤを用いたインク組成物、及び導電性部材、導電性部材を用いたタッチパネル、及び太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】平均短軸径が小さく、単分散性が高く、さらに、その収率が高い、金属ナノワイヤの製造方法、及び金属ナノワイヤ、並びに、金属ナノワイヤを用いたインク組成物、及び導電性部材、導電性部材を用いたタッチパネル、及び太陽電池を提供する。
【解決手段】
金属ナノワイヤの製造方法は、第一の金属イオンを還元して種粒子を合成する工程(A)と、第二の金属イオンを還元してナノワイヤに前記種粒子を成長させる工程(B)と、を少なくとも含む金属ナノワイヤの製造方法であって、前記工程(A)における反応溶液が、15℃〜25℃の純水中での前記第一の金属イオンとの塩の溶解度積pKspが8以上である第一の配位子を、前記第一の金属イオンの総モル数100に対して、モル数0.50以上となる濃度で含有し、前記工程(B)の反応溶液が、15℃〜25℃の純水中での前記第二の金属イオンとの溶解度積pKspが8以上である第二の配位子と、前記種粒子、及び、前記第一の金属イオン1モル当たり、5000モル以下の第二の金属イオンを少なくとも含有することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、短軸が細く、短軸径の単分散性が良好な金属ナノワイヤを高収率で得るための製造方法、形態均一性に優れた金属ナノワイヤ、導電性と透明性に優れた導電性部材、及びその用途に関する。
液晶ディスプレイ・有機EL・タッチパネルなどの表示装置及び集積型太陽電池などに用いる電極用の導電材料としてITOが広く利用されているが、インジウム金属の埋蔵量が少ないこと、長波長領域の透過率が低いことに起因する色味、低抵抗化には高温の熱処理が必要であること、屈曲耐性がないことなどの問題がある。そのような状況下、金属ナノワイヤを用いた導電性部材の検討が報告され(特許文献1)、透明性、低抵抗、使用金属量の低減の面では優れていることからITO代替への期待が高まっている。
金属ナノワイヤは短軸径が大きいほど、表面における電子散乱の効果が相対的に減少するため、体積抵抗率が低くなり、導電性の観点からは有利である。他方では、短軸径が大きいほど、光散乱が強く起こるため、透明性の観点からは不利となる特徴がある。近年、タッチパネルなどのパターニング電極を必要とする装置に金属ナノワイヤを用いた透明電極を用いると、金属ナノワイヤの光散乱によって、導電層のヘイズが高まり、その結果としてパターンの視認性が高まってしまうという、「パターン見え」が問題となることが明らかとなってきた。
そのため、特許文献2に示されているように、金属ナノワイヤの短軸径を、導電性に問題を生じない限りにおいて、できる限り小さくし、かつ、ヘイズの原因となるような太いワイヤを不純物として含まないように、短軸径の単分散性を高めることが重要であると認識され始めてきた。
短軸径が30nmよりも小さな、細い金属ナノワイヤは、例えば、特許文献3に開示されているように、少なくともハロゲン化合物及び還元剤を含む水溶媒中に、金属錯体溶液を添加して150℃以下の温度で加熱する方法で合成できることが知られている。
また、特許文献4は、金属ナノワイヤの長さ及び径といった形状を均一化するためには、種粒子を用いることが有効であることを開示する。種粒子を用いた細い金属ナノワイヤの合成方法としては、非特許文献1、非特許文献2などが知られている。
米国特許出願公開第2007/0074316号明細書 米国特許出願公開第2011/0174190号明細書 特開2010−84173号公報 国際公開第2009/063744号
Chem. Mater., 2002, 14, 4736-4745 Chem. Commun., 2001, 617-618
金属ナノワイヤの製造について、特許文献3の方法では、平均短軸径は小さいものの、透明性を損なう太い金属ナノワイヤが数%含まれてしまう問題点があり、短軸径の単分散化、すなわち小さな金属ナノワイヤだけを合成することが課題であった。
また、特許文献4、及び非特許文献1に開示されている種粒子の合成方法では、難溶性の塩を形成する配位子を使用していないため、種粒子の質が悪く、細くても短軸径が30〜40nm程度の金属ナノワイヤしか合成できなかった。その結果、これらを用いた導電膜のヘイズが増大してしまうという問題を生じる。
非特許文献2の方法では、遠心分離精製で球状粒子から金属ナノワイヤを取り出しており、金属ナノワイヤだけではなく、球状の微粒子が大量に生成してしまい、製造上、収率及び精製負荷の点で大きな問題があった。これは、非特許文献2の合成方法では、種粒子分散液中にワイヤに成長可能な種以外の微粒子が多く含まれてしまうためであると推定される。
以上のように、導電膜のヘイズを改善するために、細い金属ナノワイヤを、単分散かつ高収率に製造する技術の開発が強く望まれていた。しかしながら、平均短軸径が小さく、単分散性が高く、さらに、その収率が高い、金属ナノワイヤの製造方法は明らかになっていなかった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、平均短軸径が小さく、単分散性が高く、さらに、その収率が高い、金属ナノワイヤの製造方法、及び金属ナノワイヤ、並びに、金属ナノワイヤを用いたインク組成物、及び導電性部材、導電性部材を用いたタッチパネル、及び太陽電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、種粒子合成工程と成長工程とを有する金属ナノワイヤの製造方法において、次の知見を得た。
従来、種粒子合成工程では、金属イオンと溶解しにくい塩(溶解度積Kspが10−8以下、すなわち、pKspが8以上(pKsp=−log(Ksp)))を形成する配位子をできる限り添加しないことが普通であった。それに対して、金属イオンと溶解しにくい塩を形成する配位子を所定量添加することで、金属ナノワイヤに成長しうる種粒子をより多く形成できることを見出した。
さらに、成長工程において、種粒子合成工程で得られた種粒子の存在下で、追加の配位子を添加することにより、平均短軸径25nm以下で、かつ、短軸径の単分散性のよい金属ナノワイヤが収率良く得られることを見出した。
本発明は上述の種粒子合成工程、及び成長工程の知見に基づいている。
本発明の一態様による金属ナノワイヤの製造方法は、第一の金属イオンを還元して種粒子を合成する工程(A)と、第二の金属イオンを還元してナノワイヤに前記種粒子を成長させる工程(B)と、を少なくとも含む金属ナノワイヤの製造方法であって、前記工程(A)における反応溶液が、15℃〜25℃の純水中での前記第一の金属イオンとの塩の溶解度積pKspが8以上である第一の配位子を、前記第一の金属イオンの総モル数100に対して、モル数0.50以上となる濃度で含有し、前記工程(B)の反応溶液が、15℃〜25℃の純水中での前記第二の金属イオンとの溶解度積pKspが8以上である第二の配位子と、前記種粒子、及び、前記第一の金属イオン1モル当たり、5000モル以下の第二の金属イオンを少なくとも含有することを特徴とする。
好ましくは、ナノワイヤが25nm以下の平均短軸径を有する。
好ましくは、前記第一の金属イオンが実質的に銀イオンである。
好ましくは、工程(A)で調製された種粒子分散液は、光路長1cmの光学セルで測定した300nm以上800nm以下の波長範囲における最大消光度が1.0となる濃度に希釈または濃縮されたとき、90.0nm以下の半値幅の消光スペクトルを有する。
好ましくは、工程(B)において、第二の金属イオン量は、種粒子分散液中の第一の金属イオン1モル当たり、100モルから1000モルである。
好ましくは、工程(A)において、第一の金属イオンを含有する7より低いpHの金属イオン添加液と、配位子及び還元剤を含有する7よりも高いpHの反応溶液とを混合する工程を含む。
好ましくは、工程(B)において、第二に配位子が、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンより選ばれる少なくとも1種のイオンである。
好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンより選ばれる少なくとも1種のイオンの対イオンの少なくとも一部がアルキルアンモニウムイオンである。
好ましくは、工程(B)において、第二の金属イオンを含有する金属イオン添加液を反応容器へ添加する工程を含み、金属イオン添加液と、金属イオン添加液が添加される反応容器中の溶液との温度差が25℃以上ある。
好ましくは、工程(B)において、第二の金属イオンを含有する金属イオン添加液が7より低いpHを有する。
好ましくは、工程(A)において、溶媒が50質量%以上の水を含有する。
好ましくは、工程(B)において、第二の配位子及び還元剤を含有する溶媒が用いられ、溶媒が、50質量%以上の水を含有する。
好ましくは、工程(A)が第一の反応容器で行われ、工程(B)が第一の反応容器とは別の第二の反応容器で行われる。
好ましくは、第一の金属イオンを含有する金属イオン添加液の酸素濃度が0.5mg/L以上である。
好ましくは、前記第二の金属イオンを含有する前記金属イオン添加液の酸素濃度が0.5mg/L以上である。
本発明の他の態様によると、金属ナノワイヤは上述の金属ナノワイヤの製造方法で製造される。
本発明の他の態様によると、インク組成物は金属ナノワイヤを含有する。
本発明の他の態様によると、導電性部材は金属ナノワイヤを含有する。
本発明の他の態様によると、タッチパネルは導電性部材を含む。
本発明の他の態様によると、太陽電池は導電性部材を含む。
本発明によれば、短軸径が細く、短軸径の単分散性が良好な金属ナノワイヤを、高収率で得られる製造方法を提供できる。この製造方法で製造した金属ナノワイヤによって、金属ナノワイヤを用いた導電性部材のヘイズを低減することが可能となる。
実施例の結果を示す表図。
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。従って、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
(金属ナノワイヤ分散液の製造方法)
本態様による金属ナノワイヤの製造方法は、第一の金属イオンを還元して種粒子を合成する工程(A)と、第二の金属イオンを還元してナノワイヤに前記種粒子を成長させる工程(B)と、を少なくとも含む金属ナノワイヤの製造方法であって、前記工程(A)における反応溶液が、15℃〜25℃の純水中での前記第一の金属イオンとの塩の溶解度積pKspが8以上である第一の配位子を、前記第一の金属イオンの総モル数100に対して、モル数0.50以上となる濃度で含有し、前記工程(B)の反応溶液が、15℃〜25℃の純水中での前記第二の金属イオンとの溶解度積pKspが8以上である第二の配位子と、前記種粒子、及び、前記第一の金属イオン1モル当たり、5000モル以下の第二の金属イオンを少なくとも含有することを特徴とする。
<<工程(A)及び工程(B)>>
本実施形態における金属ナノワイヤの製造方法は、上述したように、種粒子を合成する工程(A)と、種粒子をナノワイヤに成長させる工程(B)との、2つの工程を含んでなる。本明細書では、工程(A)で得られた溶液を種粒子分散液、工程(B)で得られた溶液を金属ナノワイヤ分散液と呼ぶことがある。
本実施形態における工程(A)とは、反応容器内の還元剤によって第一の金属イオンを還元し、種粒子としての金属微粒子を形成するための工程である。一方、本実施形態本における工程(B)とは、工程(A)において形成した金属微粒子の存在下で、還元剤によって第二の金属イオンを還元し、工程(A)において形成した金属微粒子をワイヤ状の形態を有する金属粒子、すなわち金属ナノワイヤに成長させるための工程である。
本実施形態において、工程(A)と工程(B)は、同一の反応容器を連続的に用いる連続プロセスであってもよいし、互いに異なる反応容器を用いるか、工程(A)実施後に反応容器を洗浄してから用いるといった、断続プロセスであってもよい。断続プロセスの場合には、種粒子分散液へ、工程(B)で用いられる原材料を順次添加してもよいし、工程(B)において、反応溶液を調製していく過程の、好適なタイミングに、反応溶液へ、種粒子分散液を添加してもよい。好適なタイミングとは、特に制限はないが、第二の金属イオンが還元剤によって還元される前であることが好ましく、具体的には、第二の金属イオンの添加前、もしくは、還元剤の添加前である。
本実施形態において、工程(A)と工程(B)の区別は、特に、連続プロセスの場合において、次のようになされるものとする。すなわち、還元剤と第一の金属イオン、及び、第一の配位子が反応溶液中で混合され、溶液の着色が認められた後に、少なくとも、第二の金属イオンと第二の配位子とが、反応溶液へ、さらに添加される場合に、該製造工程が、工程(A)と工程(B)を含むものとみなす。この場合、工程(A)とは、還元剤と第一の金属イオン、及び、第一の配位子が反応溶液中で混合され、溶液の着色が認められた時点までを指し、その後の、温度の変更、pHの変更、攪拌速度の変更、薬品の添加などといった工程は、工程(B)に含まれるものとする。断続プロセスにおいては、反応容器の変更前後で工程(A)と工程(B)の区別が可能であり、工程(A)と工程(B)の間に、別途、種粒子分散液の保存安定性向上や、種粒子の収率向上などのために、種粒子分散液の温度の変更、pHの変更、攪拌速度の変更、薬品添加などによる工程(C)を実施してもよい。
断続プロセスでは、工程(B)を1回実施するのに必要な種粒子分散液を、工程(A)で複数回分まとめて調製しておくことができる。それによって、工程(B)で、まったく同一の種粒子を複数回用いることができるために、製造における性能保障が容易となる利点や、金属ナノワイヤの合成スケールを数倍に上げる際に、工程(B)のスケールアップのみで対応可能であるといった利点がある。工程(A)における種粒子の合成は特に、反応容器の材質、反応溶液の温度ムラ、原材料添加速度、攪拌効率などといった反応装置に起因する影響を受けやすいため、工程を分離可能な断続プロセスが好ましい。
<<金属イオン>>
第一の金属イオンとは、工程(A)において、還元剤によって還元され、金属微粒子を形成する金属イオンであり、金、銀、銅、白金、パラジウム、イリジウムの群より選ばれる少なくとも1種の金属イオンである。これらの中でも、銀を主成分とする金属イオンであることが好ましく、実質的に銀イオンであることがより好ましい。ここで、「実質的に」とは、不可避的に混入する銀以外の金属原子を許容することを意味する。工程(A)においては、第一の金属イオン以外にも、後述する触媒金属、その他の金属、または、それらのイオンが反応溶液に含まれていてもよい。
第二の金属イオンとは、工程(B)において、還元剤によって還元され、金属ナノワイヤを形成する金属イオンであり、少なくとも銀イオンを含み、さらに、長周期律表(IUPAC1991)の第4周期、第5周期、及び、第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンを含んでいてもよい。銀イオンを主成分とする第二の金属イオンとしては、第2〜14族から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンと銀イオンであることが好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族から選ばれる少なくとも1種の金属のイオンと銀イオンであることがより好ましく、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウムから選ばれる少なくとも1種の金属のイオンと銀イオンであることがさらに好ましく、金、白金、パラジウム、イリジウムから選ばれる少なくとも1種の金属のイオンと銀イオンであることがいっそう好ましく、実質的に銀イオンであることが特に好ましい。ここで、「実質的に」とは、不可避的に混入する銀以外の金属原子を許容することを意味する。
第一の金属イオンと第二の金属イオンは、互いに異なる金属イオンであってもよいし、同種の金属イオンであってもよい。さらに、第一の金属イオンを含む添加溶液と第二の金属イオンを含む添加溶液は、1つの溶液から分けて使用することもできる。
第一の金属とは、第一の金属イオンが還元された金属であることを意味し、同様に、第二の金属とは、第二の金属イオンが還元された金属であることを意味する。
工程(A)、及び、または、工程(B)において、金属イオンを反応液中へ導入するための、金属イオン添加溶液は、溶媒もしくは金属イオン添加溶液そのものが脱気処理をされていないことが好ましく、具体的には、添加溶液が調製される温度において、酸素を0.5mg/L以上含有していることが好ましく、3mg/L以上がより好ましく、6mg/L以上がさらに好ましい。酸素濃度が0.5mg/L未満であると、反応溶液への添加前などの意図しないタイミングで金属イオンの還元反応が起こり、金属ナノワイヤの収率を低下させることや、ワイヤ形状以外の形状を有する金属微粒子(ノイズ粒子と呼ぶことがある)を発生させてしまうことがある。
工程(A)、及び、または、工程(B)における金属イオン添加溶液は、反応溶液の温度よりも低いことが好ましく、具体的には、温度差(金属イオン添加溶液が反応溶液へ添加される直前の、反応溶液の温度から金属イオン添加溶液の温度を減じた差)が、25℃以上であることが好ましく、45℃以上がより好ましく、65℃以上がさらに好ましい。温度差が25℃未満であると、金属イオン添加液が添加された瞬間の、反応液中の金属イオンが局所的に濃い部分で意図せずに還元反応が起こり、金属ナノワイヤの収率を低下させることや、ノイズ粒子を発生させてしまうことがある。
工程(A)、及び、または、工程(B)における金属イオン添加溶液は、pHが7よりも低いことが好ましく、5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく、2以下が特に好ましい。pHが7以上であると、反応溶液への添加前などの意図しないタイミングで金属イオンの還元反応が起こることや、金属イオン添加液が添加された瞬間の、反応液中の金属イオンが局所的に濃い部分で意図せずに還元反応が起こることがあり、結果として、金属ナノワイヤの収率を低下させることや、ノイズ粒子を発生させてしまうことがある。
工程(A)においては、前記pHが7よりも低い金属イオン添加溶液を、後述する配位子及び還元剤を含有する7よりも高いpHの反応溶液と混合する工程を含むことが好ましく、配位子及び還元剤を含有する反応溶液のpHは、9以上がより好ましく、10以上12以下がさらに好ましい。配位子及び還元剤を含有する反応溶液のpHが7よりも低いと、速やかな還元が起こらずに、金属ナノワイヤの核となりうる種粒子の収率が低下することがあり、その種粒子を用いた金属ナノワイヤへの成長反応において、収率低下や、短軸径の単分散性の低下、短軸径の増大などの問題を起こすことがある。
工程(A)、及び、または、工程(B)における金属イオン添加液は、適当な送液装置等を用いて、必要に応じて送液量を制御し、反応溶液の液面上または液中に滴下または噴射、あるいは注入することによって、反応溶液へ添加される。工程(A)と工程(B)の添加方法は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。工程(A)における第一の金属イオンの添加液は、高攪拌の反応溶液へ、速やかに全量添加されることが好ましい。また、工程(A)における第一の金属イオンの添加液の添加方法は、液中添加であることが好ましい。
<<還元剤>>
本実施形態に用いられる還元剤としては、対象となる金属イオンを還元できる化合物であれば特に制限はなく、一般的な化学還元剤から少なくとも1種を選んで用いることができ、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素金属塩;水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウム、水素化アルミニウムセシウム、水素化アルミニウムベリリウム、水素化アルミニウムマグネシウム、水素化アルミニウムカルシウム等の水素化アルミニウム塩;亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシルアミン、クエン酸またはその塩、コハク酸またはその塩、アスコルビン酸またはその塩等;ジエチルアミノエタノール、エタノールアミン、プロパノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミン;プロピルアミン、ブチルアミン、ジプロピレンアミン、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、ピロリジン、Nメチルピロリジン、モルホリン等のヘテロ環式アミン;アニリン、N−メチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン;ベンジルアミン、キシレンジアミン、N−メチルベンジルアミン等のアラルキルアミン;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどの多価アルコール、グルタチオン、有機酸類(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等)、還元糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラフィノース、スタキオース等)、糖アルコール類(ソルビトール等)などが挙げられる。これらの中でも、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、多価アルコール類が特に好ましい。なお、還元剤種によっては機能として分散剤としても働く場合や、溶媒として働く場合があり、同様に好ましく用いることができる。
還元剤は、工程(A)と工程(B)において共通のものを用いてもよいし、別種のものを用いてもよく、工程(B)において、さらに還元剤を追加することもできる。
反応溶液中の還元雰囲気は、還元剤の種類、還元剤の濃度、反応溶液のpH、反応溶液の温度等によって、調整可能であり、工程(B)における還元雰囲気は、工程(A)における還元雰囲気よりも低い(還元反応を起こしにくい)ことが好ましい。還元雰囲気の比較は、相対的な比較ができれば必ずしも定量的である必要はなく、種々の方法を用いることができるが、例えば、酸化還元電位計や酸化還元指示薬などを用いることができる他、金属イオンの消費速度を実測することによっても比較することができる。工程(B)における還元雰囲気が、工程(A)における還元雰囲気よりも高いと、金属ナノワイヤの短軸方向の成長が促進され、太い金属ナノワイヤが得られることや、ノイズ粒子を発生してしまうことがある。
<<溶媒>>
本実施形態における溶媒としては、親水性溶媒が好ましく、例えば、水、アルコール類、多価アルコール類、エーテル類、ケトン類などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。 アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどが挙げられる。多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。エーテル類としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。なかでも、溶媒は、水を0.1質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がいっそう好ましく、95質量%以上が特に好ましい。含水率が0.1%未満の溶媒を用いると、金属イオンの安定性が悪く、反応溶液への添加前などの意図しないタイミングで金属イオンの還元反応が起こり、金属ナノワイヤの収率を低下させることや、ノイズ粒子を発生させてしまうことがある。
加熱する場合、その加熱温度は、用いる溶媒の沸点を超えない限りにおいて、250℃以下が好ましく、20℃以上200℃以下がより好ましく、30℃以上180℃以下がさらに好ましく、40℃以上170℃以下が特に好ましく、50℃以上100℃以下が最も好ましい。なお、上記沸点とは、溶媒の蒸気圧が反応容器内の気相の圧力と等しくなる温度のことを意味する。上記温度を20℃以上とすることで、金属ナノワイヤの形成が促進され、製造にかかる工程時間を短縮できるため好ましい。また、250℃以下とすることで、金属ナノワイヤの短軸長さ及び長軸長さの単分散性が向上し、透明性、及び、導電性の観点から好適である。なお、必要に応じて、各工程中に温度を変更してもよく、途中での温度変更は種粒子の収率やノイズ粒子発生の抑制、選択成長の促進による単分散性向上の効果があることがある。
溶媒は、工程(A)と工程(B)において共通のものを用いてもよいし、別種のものを用いてもよく、工程(B)において、さらに溶媒を追加することもできる。
<<配位子>>
<第一の配位子>
本実施形態で得られる金属ナノワイヤは、ある異方性(3次元方向の成長速度差)を持って種粒子に金属原子が堆積することにより、ワイヤ形状が達成される。化学還元法によって合成された銀ナノワイヤのほとんどは、初期核が双晶10面体粒子(角が丸まり球状に見える場合もある)であって、銀ナノワイヤは双晶断面を有することが報告されている(Acc. Chem. Res. 2007, 40, 1067-1076, J. Crystal Growth, 2006, 276, 606-612)。前述したように、これまでも、銀ナノワイヤの成長反応と種粒子(双晶10面体粒子)の合成反応を分離して、より形状が揃った銀ナノワイヤを高収率に得ようとする研究が進められているが、従来法では、種粒子を金や白金で作成するJ. Phys. Chem. C, 2010, 114, 12529-12534やChem. Mater. 2002, 14, 4736-4745などの場合を除けば、通常、銀イオンと強い塩を形成する配位子は添加しないことが普通であった(例えばAcs Nano, 2009, 3, 1, 21-26やUS2011−0174190)。これは、Nano Lett, 2004, 9, 1733-1739で10面体粒子が球状粒子よりも酸化エッチングに弱いことが報告されたことや、J. Mater. Chem., 1996, 6 (4), 573-577及び J. Mater. Chem., 1997, 7 (2), 293-299に10面体粒子の合成方法(配位子を含有しない)が報告されていたために、金属ナノワイヤの種粒子として機能する10面体粒子を安定に得るためには、塩化物イオン等の共雑イオンが含まれていない方がよいと思われていたためと思われる。そのような状況の中、本発明者らが見出したのは、種粒子の合成段階に、金属イオンと溶けにくい塩を形成する配位子が、少量存在していた方が、むしろ、平均短軸径が小さく、かつ短軸径の単分散性のよい金属ナノワイヤを得るのに適した種粒子が得られるということである。これは、該配位子が存在しない場合には、添加された金属イオンが反応液中で同時に還元を受けるために、ごく小さな微粒子(粒径がおよそ1〜5nm)を大量に発生させ、その後、それらの熟成があまり進むことなく種粒子形成が終了しているのに対して、該配位子存在下では、添加された金属イオンと配位子が塩を形成することによって、添加初期に還元反応を受けずに系中に金属イオンがストックされ、還元で金属イオンが消費されるに従って、金属イオン濃度を低く保ちながら徐々に塩から金属イオンが溶け出す反応が起きることによって、双晶10面体粒子に均一成長しやすいものと推定される。
なお、金や白金を用いる種粒子合成は、本発明において例示する塩化物イオンを種粒子合成中に含んでいる。これは、比較的安定に利用可能なこれらの金属のイオンの塩が塩化金酸や塩化白金酸、塩化白金などであることが主な理由と推定されるが、これらの塩の溶解度は高いため、還元される金属イオンと溶けにくい塩を形成する配位子を少量添加して種粒子合成を行う本発明とは、根本的に異なるものである。実際に、J. Phys. Chem. C, 2010, 114, 12529-12534やChem. Mater. 2002, 14, 4736-4745などに示される金属ナノワイヤは、短軸径が太いものや、金属ナノワイヤ以外の微粒子を多く含むものであり、前記課題を解決することはできないものである。
本実施形態における第一の配位子は、15〜30℃の純水中での第一の金属イオンとの塩の溶解度積pKspが8以上であることを特徴とする、分子もしくはイオンである。第一の金属イオンが複数種の金属イオンから構成される場合には、第一の配位子とpKsp8以上となる塩を形成するのは、第一の金属イオンを構成する金属イオンのうちの、少なくとも一種あればよく、第一の配位子とpKsp8以上となる塩を形成する金属イオンが主成分であることが好ましい。第一の金属イオンの少なくとも一つが銀イオンである場合、第一の配位子としては、例えば、Cl、Br、I、CN、SCN、SeCN、SO 2−、S2−、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、モノチオグリコール、5−メチルベンゾトリアゾール、5,6−ジメチルベンゾトリアゾール、5−ブロモベンゾトリアゾール、5−クロロベンゾトリアゾール、5−ニトロベンゾトリアゾール、4−ニトロ−6−クロロベンゾトリアゾール、5−ニトロ−6−クロロベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラアザインデン、2−メチルベンジミダゾール、5−ニトロベンジミダゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、2−メルカプトベンジミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾキサゾール、2−メルカプトチアゾリン、2−メルカプト−4−メチル−6,6’−ジメチルピリミジン、1−エチル−2−メルカプト−5−アミノ−1,3,4−トリアゾール、1−エチル−5−メルカプト−1,2,3,4−トリアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−アミノ−1,3,4−チアジアゾールなどがあり、これらの中でも、還元されて生じた金属微粒子への吸着が弱いものや、吸着により金属微粒子の表面反応を抑制(保護)しづらい小さな分子またはイオンであることが好ましく、Cl、Br、Iが好ましく用いられ、Cl、Brがより好ましい。Cl、Br、Iには、後述する好ましい分散剤であるアルキルアンモニウムの対イオンとして一般的である点からも好ましく用いることができる。以上に例示した配位子に限定されず、第一の配位子は複数種を組み合わせて用いることができる。
第一の配位子は少なくとも工程(A)において、第一の金属イオンと第一の配位子を含む反応溶液へ還元剤が添加されるか、還元剤を含む反応溶液へ第一の金属イオンと第一の配位子を含む溶液が添加されるか、還元剤と第一の配位子を含む反応溶液へ第一の金属イオンの添加溶液が添加されるか、もしくは、第一の金属イオンを含む反応溶液へ還元剤と第一の配位子を含む溶液へ添加されるかによって、用いられることが好ましい。第一の金属イオンと還元剤が混合された後では、第一の配位子の機能が発現しないことがあり、その結果、金属ナノワイヤの種として機能する微粒子の割合が少なくなり、それを用いて製造した金属ナノワイヤの平均短軸径が大きくなることや、金属ナノワイヤの短軸径の変動係数が大きくなることがあり、さらに、その金属ナノワイヤを用いて製造された導電性部材のヘイズが高くなることがある。
工程(A)で用いられる第一の配位子の合計モル数は、工程(A)で用いられる第一の金属イオンの総モル数100に対して、0.5以上であり、0.5以上500以下が好ましく、1.0以上200以下がより好ましく、5.0以上100以下がさらに好ましく、20以上80以下がいっそう好ましい。第一の配位子の合計モル数が、工程(A)で用いられる第一の金属イオンの総モル数100に対して0.5未満であると第一の配位子の機能が発現しない。また、第一の配位子のモル数が、工程(A)で用いられる第一の金属イオンの総モル数100に対して500より多いと、金属イオンと還元剤が混合された直後に形成する金属微粒子の個数が減少するためか、種粒子の大きさが大きくなり、それを用いて製造した金属ナノワイヤの平均短軸径が大きくなることがあり、さらに、その金属ナノワイヤを用いて製造された導電性部材のヘイズが高くなることがある。
第一の配位子は、第一の配位子と工程(A)で用いられる第一の金属イオンとが形成する塩の溶解度積pKspが8以上であり、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。pKspが30より大きいと、難溶性の塩が溶解されずに残ることがあるためか、金属ナノワイヤの種として機能する微粒子の割合が少なくなり、それを用いて製造した金属ナノワイヤの平均短軸径が大きくなることや、金属ナノワイヤの短軸径の変動係数が大きくなることがあり、さらに、その金属ナノワイヤを用いて製造された導電性部材のヘイズが高くなることがある。pKspが8未満であると、金属イオンとの塩の形成による還元反応からの保護(系中へのストック)が不十分となるためか、金属ナノワイヤの種として機能する微粒子の割合が少なくなり、それを用いて製造した金属ナノワイヤの平均短軸径が大きくなることや、金属ナノワイヤの短軸径の変動係数が大きくなることがあり、さらに、その金属ナノワイヤを用いて製造された導電性部材のヘイズが高くなることがある。
<第二の配位子>
本実施形態における第二の配位子とは、工程(B)において用いられる、銀イオンと錯形成可能な分子またはイオンであって、15〜30℃の純水中での銀イオンとの溶解度積pKspが8以上であることを特徴とする。第二の配位子は、15〜30℃の純水中での銀イオンとの塩の溶解度積pKspが8以上30以下が好ましく、9以上15以下がより好ましい。pKspが30より大きいと、難溶性の塩が溶解せずに反応完了に多大な時間がかかるために製造上の問題となることや、配位子と未反応の銀イオンとの塩の粗大粒子が残留し、導電膜の異物欠陥となることがある。そのような配位子としては、第一の金属イオンの少なくとも一つが銀イオンである場合に第一の配位子として例示した分子またはイオンが、同様に、第二の配位子の例として挙げられ、Cl、Br、I、CN、SCN、SeCN、SO 2−、S2−、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、モノチオグリコール、5−メチルベンゾトリアゾール、5,6−ジメチルベンゾトリアゾール、5−ブロモベンゾトリアゾール、5−クロロベンゾトリアゾール、5−ニトロベンゾトリアゾール、4−ニトロ−6−クロロベンゾトリアゾール、5−ニトロ−6−クロロベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラアザインデン、2−メチルベンジミダゾール、5−ニトロベンジミダゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール、2−メルカプトベンジミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾキサゾール、2−メルカプトチアゾリン、2−メルカプト−4−メチル−6,6’−ジメチルピリミジン、1−エチル−2−メルカプト−5−アミノ−1,3,4−トリアゾール、1−エチル−5−メルカプト−1,2,3,4−トリアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−アミノ−1,3,4−チアジアゾールなどがあり、これらの中でも、還元されて生じた金属微粒子への吸着が弱いものや、吸着により金属微粒子の表面反応を抑制(保護)しづらい小さな分子またはイオンであることが好ましく、Cl、Br、Iが好ましく用いられ、Cl、Brがより好ましい。Cl、Br、Iには、後述する好ましい分散剤であるアルキルアンモニウムの対イオンとして一般的である点からも好ましく用いることができる。以上に例示した配位子に限定されず、第二の配位子は複数種を組み合わせて用いることができる。15〜30℃の純水中での銀イオンとの溶解度積pKspが8未満であると、第二の金属イオンの液中濃度が高くなり、ワイヤ形状以外の形状の微粒子を生じることがあり、金属ナノワイヤの収率が落ちることがある。
工程(B)に用いる配位子の量としては、第一の配位子よりも多く、第二の金属イオンの全モル数100に対して、500以下が好ましく、150以下がより好ましい。量が500より多いと、金属ナノワイヤの全表面に該配位子が吸着してしまうためか、得られる金属ナノワイヤの平均短軸径が大きくなることや、金属ナノワイヤの短軸径の変動係数が大きくなることがあり、さらに、その金属ナノワイヤを用いて製造された導電性部材のヘイズが高くなることがある。工程(B)において、第二の金属イオンが還元されて消費された分を補うように、反応液へ少量ずつ第二の金属イオンを添加する場合には、第二の配位子の好ましい量はさらに限定的になるが、還元反応の早さに依存する。
第二の配位子は、反応溶液へ添加する前に第二の金属イオン溶液へ添加しておいてもよく、第二の金属イオン溶液が添加される前に反応溶液へ添加しておいてもよい。系中に第二の配位子が添加される前に、反応溶液中で第二の金属イオンと還元剤が混合されてしまうと、ワイヤ形状以外の形状の微粒子を生じることがあり、金属ナノワイヤの収率が落ちることがある。
<<その他の添加剤>>
本実施形態の工程(A)、及び、または、工程(B)は、反応溶液が、前述の金属イオン、還元剤、溶媒、配位子以外にも、凝集防止、腐食防止、形態制御、反応制御等の目的で、添加剤として種々の薬品を含むことができる。添加剤は、同時に複数の機能を有するものもあり、好ましく用いることができる。
<分散剤>
本実施形態の工程(A)、及び、工程(B)は分散剤を添加して行うことが好ましい。分散剤を添加する段階は、粒子調製する前に添加し、分散ポリマー存在下で工程(A)または工程(B)を実施してもよいし、粒子調整後に分散状態の制御のために添加しても構わない。
分散剤としては、例えばアミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、スルフィド基含有化合物、ジスルフィド基含有化合物、アミド基含有化合物、ホスフィン基含有化合物、スルホン酸基含有化合物、アミノ酸またはその誘導体、ペプチド化合物、多糖類、多糖類由来の天然高分子、合成高分子、またはこれらに由来するゲル等の高分子類、両親媒性化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
高分子類としては、例えば保護コロイド性のあるポリマーでゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプルピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体、などが挙げられる。分散剤として用いる高分子類はGPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が、3,000以上300,000以下であることが好ましく、5,000以上100,000以下であることがより好ましい。
両親媒性化合物としては、各種一官能性または多官能性界面活性剤(アニオン性、カチオン性、ノニオン性いずれも可)、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコールモノラウレート、アルキルアンモニウム及びその塩などが挙げられる。これらの中でも特に、アルキルアンモニウム塩は、前述の配位子の供給源としても用いることができるため、好ましく用いることができる。アルキルアンモニウム及びアルキルアンモニウム塩としては、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムアイオダイド、ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムアイオダイド、ステアリルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムアイオダイド、デシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムアイオダイド、ジメチルジステアリルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルジステアリルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムアイオダイド、ジラウリルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムアイオダイド、ジメチルジパルミチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロミド、ジメチルジパルミチルアンモニウムクロリド、ジメチルジパルミチルアンモニウムアイオダイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリエチルアンモニウムクロリド、メチルトリエチルアンモニウムブロミド、メチルトリエチルアンモニウムアイオダイド、ジメチルジエチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルジエチルアンモニウムブロミド、ジメチルジエチルアンモニウムクロリド、ジメチルジエチルアンモニウムアイオダイド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムブロミド、エチルトリメチルアンモニウムクロリド、エチルトリメチルアンモニウムアイオダイド、ヘキサデシルジメチルアミン、ヘキサデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルジメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルジメチルアンモニウムアイオダイド、ドデシルジメチルアミン、ドデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ドデシルジメチルアンモニウムブロミド、ドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ドデシルジメチルアンモニウムアイオダイド、ステアリルジメチルアミン、ステアリルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ステアリルジメチルアンモニウムブロミド、ステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルアンモニウムアイオダイド、デシルジメチルアミン、デシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、デシルジメチルアンモニウムブロミド、デシルジメチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルアンモニウムアイオダイドなどが挙げられる。
分散剤として使用可能な構造については、例えば「顔料の事典」(伊藤征司郎編、株式会社朝倉書院発行、2000年)の記載を参照できる。
<腐食防止剤>
金属ナノワイヤが酸素や硫化水素等(空気中から金属ナノワイヤ分散液に溶け込むこともある)によって腐食されることを防ぐために、腐食防止剤を含有させておくことが好ましい。このような腐食防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばチオール類、アゾール類などがあり、ベンゾチアゾール、トリトリアゾール、トリアゾール、1-(4-tert-ブチルベンジル)-1H-ベンゾトリアゾール、2−アミノピリミジン、5,6−ジメチルベンジミダゾール、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾール、2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトベンゾキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンジミダゾール、アルキルジチオチアジアゾール(アルキル:C6〜C24の飽和炭化水素)、アルキルチオール(アルキル:C6〜C24の飽和炭化水素)などが好適に用いることができる。その他には、還元剤も酸素等による酸化の犠牲剤として機能することがあり、腐食防止剤として同様に好ましく用いることができる。
添加する工程としては、工程(B)の終了後であることが好ましい。腐食防止剤は、金属微粒子の表面に強く吸着するためか、工程(B)の終了以前に添加すると、種粒子の生成、及び、または、金属ナノワイヤの成長が阻害され、金属ナノワイヤの収率が著しく低下することや、太い金属ナノワイヤが得られることや、ノイズ粒子を発生してしまうことがある。腐食防止剤は、目的の形状で反応を停止するための反応停止剤として機能することもあり、同様に好ましく用いることができる。
金属腐食防止剤を含有させることで、防錆効果を発揮させることができ、導電性部材の経時による導電性及び透明性の低下を抑制することができる。金属腐食防止剤は感光性層形成用組成物中に、適した溶媒で溶解した状態、または粉末で添加するか、後述する導電性部材形成用の塗布液を用いて導電性部材を作製後に、これを金属腐食防止剤浴に浸すことで付与することができる。
金属腐食防止剤を添加する場合は、金属ナノワイヤに対して0.5質量%〜10質量%含有させることが好ましい。
<pH緩衝剤>
pH緩衝剤としては、目的pHの範囲内におけるpHの変化を抑制できれば特に制限はないが、アミノ基含有化合物(タウリン、アスパラギン酸、ヒドロキシプロリン、トレオニン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、α―アミノ酪酸、β―アミノ酪酸、バリン、システイン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、β―アラニン、アンモニア、オルチニン、リシン、トリプトファン、ヒスチジン、アルギニンなど)、カルボン酸(クエン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、酢酸など)、無機酸(リン酸、ホウ酸など)、炭酸などの他、それらの塩が例として挙げられる。pH緩衝剤は、2つ以上を組み合わせて使用することも可能である。なお、pH緩衝剤種によっては機能として分散剤としても働く場合があり、同様に好ましく用いることができる。
反応中のpHの変動を抑制するためにpH緩衝剤を用いることが好ましいが、pHを監視しながら塩基性薬品によってpHを目的範囲内に保ちさえすれば、特にpH緩衝剤を用いることが必須ではない。
<触媒金属>
本実施形態の工程(A)、及び、工程(B)の少なくともいずれかは、その工程中に反応溶液が、金属微粒子または金属ナノワイヤを構成しない金属イオンまたは金属、すなわち、第一の金属イオン及び第二の金属イオン以外のものを触媒金属として含有していてもよく、長周期律表(IUPAC1991)の第4周期または第5周期に属し、かつ、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族(パラジウムを除く)、第11族(銀を除く)、第12族、第13族のいずれかに属する金属または金属イオンが好ましく、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウムのいずれかの金属または金属イオンがより好ましく、鉄、ニッケル、コバルト、銅のいずれかの金属または金属イオンがさらに好ましい。
これらの金属または金属イオンは、金属微粒子または金属ナノワイヤが還元反応によって生成する過程で、粒子表面のエッチング反応を促進または抑制する制御剤として働き、金属微粒子または金属ナノワイヤの収率を高める効果があることがある。
<<反応容器>>
本実施形態の工程(A)、及び、または工程(B)に用いられる反応容器は、一般的な容器を特に制限なく用いることができるが、少なくとも反応溶液と接触する部分の表面が、疎水的であることが好ましく、具体的には、ASTM/JIS R 3257に定める純水に対する接触角が、40°以上であることが好ましく、60°以上がより好ましく、90°以上がさらに好ましく、120°以上がいっそう好ましく、150°以上が特に好ましい。反応容器の反応溶液と接触する部分の表面の純水接触角が60°未満であると、還元された金属イオンが反応容器表面に析出することがあり、洗浄作業にかかる負荷が大きくなることや、種粒子、及び、または、金属ナノワイヤの収率が低下してしまうことがある。
<<種粒子>>
本実施形態の工程(A)で製造される種粒子分散液は、添加薬品及び副生成物による光吸収と、金属微粒子の表面プラズモン及び光散乱とに起因する透過光の減衰を示す。消光スペクトルは、一般的な、溶液の吸収スペクトルを測定できる装置(紫外可視分光光度計など)を用いて測定可能であり、金属微粒子に起因する消光スペクトルだけを測定するためには、例えば、金属イオン源のみを抜いて工程(A)を実施した溶液をリファレンス溶液として用いるとよい。消光スペクトルの測定にあたっては、種粒子分散液及びリファレンス溶液を適宜希釈して測定することができる。希釈溶媒は、種粒子分散液と同じ溶媒が好ましく、前述の分散剤が含まれていてもよい。
本実施形態で製造され、用いられる種粒子分散液としては、第一の金属イオンが実質的に銀であることが好ましく、第一の金属イオンが実質的に銀である場合には、光路長1cmの光学セルで測定した金属微粒子に起因する消光スペクトル(測定波長間隔0.1nm)の300.0nm〜800.0nmにおける最大消光度(消光度をE、透過率をTとすると、T=10−E×100[%]の関係にある)が1.0となる濃度に希釈または濃縮した際に、消光度が0.5となる波長のうち、最大消光度を示す波長よりも短波長で最大の波長と、最大消光度を示す波長よりも長波長で最小の波長の波長間隔を半値幅と定義すると、半値幅が90.0nm以下であることが好ましく、75.0nm以下であることがより好ましく、60.0nm以下であることがさらに好ましい。半値幅が90.0nmより大きいと、種粒子のサイズが不揃いで、それを用いて製造した金属ナノワイヤの平均短軸径が大きくなることや、金属ナノワイヤの短軸径の変動係数が大きくなることがあり、さらにその金属ナノワイヤを用いて製造された導電性部材のヘイズが高くなることがある。また、光路長1cmの光学セルで測定した金属微粒子に起因する消光スペクトルの300.0nm〜800.0nmにおける最大消光度が1.0となる濃度に希釈または濃縮した際に、最大消光度を示す波長は、380.0nm以上420.0nm以下であることが好ましく、390.0nm以上410.0nm以下がより好ましく、395.0nm以上、405.0nm以下がさらに好ましい。
工程(B)で用いられる種粒子分散液の量は、第一の金属イオン量1モルに対して、第2の金属イオン量が50モルから5000モルとなる量であることが好ましく、100モルから1000モルがより好ましく、100モルから500モルがさらに好ましい。種粒子分散液の量が、第一の金属イオン量1モルに対して、第二の金属イオン量が50モル未満となる量であると、製造した金属ナノワイヤのアスペクト比が十分大きくならないことがあり、さらにその金属ナノワイヤを用いて製造された導電性部材の導電性が低くなることがある。種粒子分散液の量が、第一の金属イオン量1モルに対して、第二の金属イオン量が5000モルより多くなる量であると、種粒子の数が不足するためか、製造した金属ナノワイヤの平均短軸径が大きくなることや、金属ナノワイヤの短軸径の変動係数が大きくなることがあり、さらにその金属ナノワイヤを用いて製造された導電性部材のヘイズが高くなることがある。
本実施形態で製造され、用いられる種粒子としては、平均粒径(直径)が5nm以上20nm以下であることが好ましく、8nm以上15nm以下であることがより好ましく、10nm以上13nm以下であることがさらに好ましい。金属微粒子には、金属ナノワイヤの種として機能するものと、機能しないものがあり、平均粒径が5nm未満であると、金属ナノワイヤの種として機能する微粒子の割合が少なくなることがあり、それを用いて製造した金属ナノワイヤの平均短軸径が大きくなることや、金属ナノワイヤの短軸径の変動係数が大きくなり、さらにその金属ナノワイヤを用いて製造された導電性部材のヘイズが高くなることがある。平均粒径が20nmよりも大きいと、それを用いて製造した金属ナノワイヤの平均短軸径が大きくなり、さらにその金属ナノワイヤを用いて製造された導電性部材のヘイズが高くなることがある。ここで、種粒子の平均粒径としては、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、TEM像を観察することにより求めることができ、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用いて、ランダムに選択した300個の金属微粒子について、直径を測定し、その平均値から平均粒径を求めることができる。
<種粒子分散液の精製、濃縮、溶媒変更>
本実施形態における種粒子分散液は、必要に応じて、適宜、精製や濃縮、溶媒変更を行うことができる。精製や溶媒の変更が必要となる例としては、工程(A)で使用した試薬または溶媒が、工程(B)における金属ナノワイヤの成長を阻害してしまう場合や、工程(A)で使用した試薬または溶媒が、金属ナノワイヤの分散性を阻害し凝集させてしまう場合などがある。精製や溶媒の変更にあたっては、分散剤を追加添加してもよく、さらに、添加する分散剤種を変更してもよい。濃縮が必要となる例としては、種粒子分散液の保管スペースをできる限り小さくしたい場合などがある。種粒子分散液の精製及び濃縮の方法としては、特に制限はなく、遠心分離等による種粒子の沈降とそれに引き続く上澄みの除去、限外ろ過によるろ液の除去、その他、透析、ゲルろ過などを用いることができる。また、不要分を取り除くために、適宜、不要分の溶出を促進する薬剤を添加して脱塩処理を行うことも可能である。このような不要分の溶出を促進する薬剤としては、例えば、塩化銀等のハロゲン化銀に対するアンモニア、各種金属イオンに対するキレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなど)が挙げられる。これらの精製工程において、ろ液を除き濃縮された種粒子分散液へ、変更したい溶媒を添加することで種粒子分散液の溶媒組成を変更することができ、さらに精製と溶媒添加を繰り返すことで、溶媒比率を高めて目的溶媒へ置換することが可能である。
<<金属ナノワイヤ>>
本実施形態で製造される、金属ナノワイヤは、透明な導電性部材を形成しやすいという観点から、平均短軸径が25nm以下であって、平均長軸長が1μm〜100μmのものが好ましい。
製造時の扱い易さから、金属ナノワイヤの平均短軸径(平均直径)は、5nm以上が好ましく、10nm以上25nm以下であることがより好ましく、15nm以上20nm以下であることがさらに好ましい。平均短軸径を5nm以上とすることにより、耐酸化性が良好で、対候性に優れる導電性部材が得られるため好ましい。平均短軸径が25nmよりも大きいと、金属ナノワイヤ起因の光散乱が起こりやすく、得られる導電性部材のヘイズが高くなることがある。
金属ナノワイヤの平均長軸長としては、1μm〜40μmであることが好ましく、3μm〜35μmがより好ましく、5μm〜30μmがさらに好ましく、5μm〜15μmがいっそう好ましい。金属ナノワイヤの平均長軸長を40μm以下とすることにより、金属ナノワイヤの凝集物が生じることなく合成することが容易となり、平均長軸長を1μm以上とすることで、十分な導電性を得ることが容易となる。
本実施形態においては、短軸径が25nmより大きい金属ナノワイヤが含まれる本数の割合が25%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。さらに、短軸径が35nmより大きい金属ナノワイヤが含まれる本数の割合が10%以下であることが好ましく、5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましい。短軸径の標準偏差を平均短軸径で除して得られる短軸径の変動係数は、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。
本実施形態に用いうる金属ナノワイヤのアスペクト比としては、10以上であることが好ましく、10,000以下であることが好ましい。ここで、アスペクト比とは、平均長軸長/平均短軸長の比を意味する。金属ナノワイヤのアスペクト比としては、10以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50以上がより好ましく、100以上がさらに好ましく、500以上がいっそう好ましく、1,000以上5,000以下が特に好ましい。アスペクト比を10以上とすることにより、金属ナノワイヤ同士が接触したネットワークが容易に形成され、高い導電性を有する導電性部材が容易に得られる。また、アスペクト比を5,000以下とすることにより、例えば基材上に導電性部材を塗布により設ける際の塗布液において、金属ナノワイヤ同士が絡まって凝集してしまう恐れのない、安定な塗布液が得られるので、製造が容易となる。
ここで、前記金属ナノワイヤの平均短軸径、及び、または、平均長軸長は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)と光学顕微鏡を用い、TEM像や光学顕微鏡像を観察することにより求めることができ、例えば、金属ナノワイヤの平均短軸径及び平均長軸長は、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、ランダムに選択した300個の金属ナノワイヤについて、各々短軸長と長軸長を測定し、その平均値から金属ナノワイヤの平均短軸長と平均長軸長を求めることができる。膜の厚さが金属ナノワイヤの平均短軸長よりも大きく、明らかに金属ナノワイヤが撮像面と垂直方向に長さ成分を多く有する場合には、膜を適当な溶媒に溶かし、薄く成膜しなおすことにより、金属ナノワイヤの長さを評価することができる。
金属ナノワイヤの形状としては、例えば円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状など任意の形状をとることができるが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状や断面が5角形以上の多角形であって鋭角的な角が存在しない断面形状であるものが好ましい。金属ナノワイヤの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤ水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより検知することができる。
<金属ナノワイヤ分散液の精製>
金属ナノワイヤ分散液に、金属ナノワイヤを合成するために必要な薬品、及び、反応の副生成物が含有されていると、分散液中で金属ナノワイヤ生成の逆反応(酸化溶解)が起こることや、該金属ナノワイヤ分散液を用いて導電性部材を作製した際に、導通不良、ヘイズ増大、透過率低下、金属ナノワイヤの耐久性低下、などの種々の問題を発生することがあるため、金属ナノワイヤ以外の有機物及び無機イオン等の不要分を取り除く脱塩処理を行うことが好ましい。
金属ナノワイヤ以外の有機物及び無機イオン等の不要分を取り除く脱塩処理の方法としては、特に制限はなく、遠心分離等による金属ナノワイヤの沈降とそれに引き続く上澄みの除去、限外ろ過によるろ液の除去、その他、透析、ゲルろ過などを用いることができる。また、不要分を取り除くために、適宜、不要分の溶出を促進する薬剤を添加して脱塩処理を行うことも可能である。このような不要分の溶出を促進する薬剤としては、例えば、塩化銀等のハロゲン化銀に対するアンモニア、各種金属イオンに対するキレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなど)が挙げられる。
脱塩処理は、金属ナノワイヤ分散液の導電率が10mS/m以下とすることが好ましく、5mS/m以下がより好ましく、1mS/m以下がより好ましい。導電率が10mS/mよりも大きいと、不要分の除去が不十分であることがあり、前述のように分散液中で金属ナノワイヤ生成の逆反応(酸化溶解)が起こることや、該金属ナノワイヤ分散液を用いて導電性部材を作製した際に、導通不良、ヘイズ増大、透過率低下、金属ナノワイヤの耐久性低下、などの種々の問題を発生することがある。
脱塩処理工程の初め、または、途中、または、終了後に、分散剤や還元剤、腐食防止剤などの添加剤を添加してもよい。
精製された金属ナノワイヤ分散液の、金属濃度0.0023質量%に希釈して測定した消光スペクトル(測定波長間隔0.1nm)において、350.0nmから800.0nmの波長範囲で最大消光度を示す波長は、355.0以上375.0nm以下が好ましく、360.0nm以上372.0nm以下がより好ましく、365.0nm以上370.0nm以下がさらに好ましい。なお、最大消光度を示す波長が2つ以上ある場合は、最も波長の長いものを、最大消光度を示す波長として採用する。最大消光度を示す波長が355.0nm以上とすると、短軸径が5nmよりも太い金属ナノワイヤが多く含まれるためか、耐酸化性が良好で、対候性に優れる導電性部材が得られるため好ましい。最大消光度を示す波長が375.0nmより大きいと、短軸径が25nmよりも大きい金属ナノワイヤが多く含まれるためか、金属ナノワイヤ起因の光散乱が起こりやすく、得られる導電性部材のヘイズが高くなることがある。なお、金属ナノワイヤ分散液中の金属濃度は、例えば、精製した金属ナノワイヤ分散液に王水を必要量添加して、金属ナノワイヤを酸化溶解させ、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)を用いて、含有金属濃度を定量することができる。その他には、秤量した試料溶液を絶乾させ、乾固成分の重量を測定して溶液中固形分濃度を定量し、さらに、乾固成分の熱重量分析によって、少なくとも700℃で5分間かけて有機成分を分解揮発させることにより、残留成分を乾固成分中の金属量として定量でき、求めた試料溶液中固形分濃度と固形分中金属濃度の値から、試料溶液中金属濃度を求めることができる。
<インク組成物>
金属ナノワイヤ分散液は、インクジェットプリンター用水性インク及びディスペンサー用水性インク等のインク組成物にも好ましく用いることができる。前記インク組成物は、金属ナノワイヤ、溶媒の他に、分散剤、増粘剤、界面活性剤(両親媒性化合物)、腐食防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。分散剤及び界面活性剤、腐食防止剤は、金属ナノワイヤ分散液の製造法のその他の添加剤に記載のものを同様に好ましく用いることができる。インクジェットプリンターによる画像形成用途においては、金属ナノワイヤ分散液を塗設する基板としては、例えば紙、コート紙、表面に親水性ポリマーなどを塗設したPETフイルムなどが挙げられる。
金属ナノワイヤ分散液を用いた導電性部材は、上述の金属ナノワイヤ分散液により形成される導電性部材を有する。導電性部材は、金属ナノワイヤ分散液を、基板上へ塗設し、乾燥することにより、導電層を形成して製造される。
<導電性部材>
以下、導電性部材の製造方法の説明を通じて、導電性部材を詳細に説明する。
金属ナノワイヤ分散液を塗設する基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、透明導電体用基板には、以下のものが挙げられる。これらの中でも、製造適性、軽量性、可撓性、光学性(偏光性)などの点からポリマーフイルムが好ましく、PET、TAC、PENフィルムが特に好ましい。
(1)石英ガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、サファイア等のガラス。
(2)ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、PET、TAC、PEN、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ナイロン、スチレン系樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂。
(3)エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂。
基板材料としては、必要に応じて併用してもよい。用途に応じてこれらの基板材料から適宜選択して、フィルム状等の可撓性基板、または剛性のある基板とすることができる。
基板の形状としては、円盤状、カード状、シート状等のいずれの形状であってもよい。また、三次元的に積層されたものでもよい。さらに基板のプリント配線を行う箇所にアスペクト比1以上の細孔、細溝を有していてもよく、これらの中に、インクジェットプリンターまたはディスペンサーにより本実施形態の水性分散物を吐出することもできる。
基板の表面に親水化処理を施すことが好ましい。また、基板表面に親水性ポリマーを塗設したものが好ましい。これらにより水性分散物の基板への塗布性、及び、または、密着性が向上する。
親水化処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば薬品処理、機械的粗面化処理、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理などが挙げられる。これらの親水化処理により表面の表面張力を30dyne/cm以上にすることが好ましい。
基板表面に塗設する親水性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ガゼイン、寒天、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストラン、などが挙げられる。
親水性ポリマー層の層厚(乾燥時)は、0.001μm〜100μmが好ましく、0.01μm〜20μmがより好ましい。
親水性ポリマー層には、硬膜剤を添加して膜強度を高めることが好ましい。硬膜剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド等のアルデヒド化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン化合物;ジビニルスルホン等のビニルスルホン化合物;2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等のトリアジン化合物;米国特許第3,103,437号明細書等に記載のイソシアネート化合物、などが挙げられる。
親水性ポリマー層の形成は、最初に、上記化合物を水などの適当な溶媒に溶解または分散させることにより塗布液を調製し、次に、スピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート、バーコート、ダイコート等の塗布法を利用して、塗布液を親水化処理した基板表面に塗布することにより、行われる。
さらに、基板と上記親水性ポリマー層の間に、更なる密着性の改善など必要により下引き層を導入してもよい。乾燥温度は120℃以下が好ましく、30℃〜100℃がより好ましく、40℃〜80℃がさらに好ましい。
本実施の形態においては、導電性部材を形成後に、腐食防止剤浴に通すことも好ましく行うことができ、これにより、さらに優れた腐食防止効果を得ることができる。
前記導電層の形成には、前記金属ナノワイヤとともに、マトリクスとして、例えば、(1)バインダー及び光重合性組成物を少なくとも含有する感光性組成物、(2)ゾルゲル硬化物を少なくとも含有する組成物を用いることができる。
ここで、「マトリクス」とは、金属ナノワイヤを含んで層を形成する物質の総称である。マトリクスを含むことにより、導電層における金属ナノワイヤの分散が安定に維持される上、基材表面に導電層を、接着層を介することなく形成した場合においても基材と導電層または光散乱性層との強固な接着が確保される。本実施形態の導電層は、マトリクスを特に制限なく用いることができるが、後述の特定アルコキシド化合物を加水分解及び重縮合して得られるゾルゲル硬化物をマトリクスとして用いることが、耐摩耗性、耐熱性及び耐湿熱性に優れる点から特に好ましい。
その他マトリクスとしては、前述の金属ナノワイヤの製造の際に使用された分散剤としての高分子化合物を、マトリクスを構成する成分の少なくとも一部として使用することが可能である。
前記導電層の形成には、前記金属ナノワイヤとともに、マトリクス成分としてゾルゲル硬化物を少なくとも含有する組成物を用いることができる。
<ゾルゲル硬化物>
上記ゾルゲル硬化物は、Si、Ti、ZrおよびAlからなる群から選ばれた元素のアルコキシド化合物(以下、「特定アルコキシド化合物」ともいう。)を加水分解及び重縮合し、更に所望により加熱、乾燥して得られるものである。
〔特定アルコキシド化合物〕
特定アルコキシド化合物は、下記一般式(I)で示される化合物であることが、入手が容易である点で好ましい。
M1(OR1)aR24−a (I)
(一般式(I)中、M1はSi、TiおよびZrから選択される元素を示し、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を示し、aは2〜4の整数を示す。)
一般式(I)におけるR1およびR2の各炭化水素基としては、好ましくはアルキル基又はアリール基が挙げられる。
アルキル基を示す場合の炭素数は好ましくは1〜18、より好ましくは1〜8であり、さらにより好ましくは1〜4である。また、アリール基を示す場合は、フェニル基が好ましい。
アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、メルカプト基などが挙げられる。
なお、一般式(I)で示される化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
一般式(I)で示される化合物の具体例としては、例えば、特開2010−064474号公報などに記載されている。
一般式(I)で示される化合物を加水分解及び重縮合し、更に所望により加熱、乾燥し成膜すると、下記一般式(II)で表される結合を含む三次元架橋結合を含んで構成されるマトリクスとなる。
−M1−O−M1− (II)
(M1はSi、TiおよびZrから選択される元素を示す。)
本実施形態において前記ゾルゲル硬化物を導電層のマトリクスとして用いる場合、前述の金属ナノワイヤに対する特定アルコキシド化合物の比率、即ち、特定アルコキシド化合物/金属ナノワイヤの質量比が0.25/1〜30/1の範囲で使用される。上記質量比が0.25/1よりも小さい場合には、透明性が劣ると同時に、耐摩耗性、耐熱性、耐湿熱性および耐屈曲性のうちの少なくとも一つが劣った導電層となってしまい、他方、上記質量比が30/1よりも大きい場合には、導電性および耐屈曲性の劣る導電層となってしまう。
上記質量比は、より好ましくは0.5/1〜20/1の範囲、更に好ましくは1/1〜15/1、最も好ましくは2/1〜8/1の範囲が高い導電性と高い透明性(全光透過率及びヘイズ)を有すると共に、耐摩耗性、耐熱性および耐湿熱性に優れ、かつ耐屈曲性に優れる導電材料を安定的に得ることができるので、好ましい。
ゾルゲル反応を促進させるために、酸性触媒または塩基性触媒を併用することが反応効率を高められるため好ましい。
〔触媒〕
触媒としては、前述の特定アルコキシド化合物の加水分解および重縮合の反応を促進させるものであれば使用することができる。
このような触媒としては、酸、あるいは塩基性化合物が含まれ、そのまま用いるか、又は、水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、これらを包括してそれぞれ酸性触媒、塩基性触媒とも称する)で使用される。
酸、あるいは塩基性化合物を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。ここで、触媒を構成する酸或いは塩基性化合物の濃度が高い場合は、加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高過ぎる塩基性触媒を用いると、沈殿物が生成して導電層に欠陥となって現れる場合があるので、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には、導電層中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで示される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
金属錯体からなるルイス酸触媒もまた好ましく使用できる。特に好ましい触媒は、金属錯体触媒であり、周期律表の2A、3B、4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg、Ca、St、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素、Ti、Zrなどの4A族元素及びV、Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシー4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
好ましい配位子はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。
金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.andTec.16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以
下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液の経時安定性、並びに導電層の皮膜面質および高耐久性に優れるものを得られる。
上記の金属錯体触媒は、市販品として容易に入手でき、また公知の合成方法、例えば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
本実施形態に係る触媒は、前記ゾルゲル塗布液中に、その不揮発性成分に対して、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは5〜25質量%の範囲で使用される。触媒は、単独で用いても二種以上を組み合わせて使用してもよい。
〔溶剤〕
上記のゾルゲル塗布液には、基板上に均一な塗布液膜の形成性を確保するために、所望により、有機溶剤を含有させてもよい。
このような有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、ゾルゲル塗布液の総質量に対して50質量%以下の範囲が好ましく、更に30質量%以下の範囲がより好ましい。
基板上に形成されたゾルゲル塗布液の塗布液膜中においては、特定アルコキシド化合物の加水分解及び縮合の反応が起こるが、その反応を促進させるために、上記塗布液膜を加熱、乾燥することが好ましい。ゾルゲル反応を促進させるための加熱温度は、30℃〜200℃の範囲が適しており、50℃〜180℃の範囲がより好ましい。加熱、乾燥時間は10秒間〜300分間が好ましく、1分間〜120分間がより好ましい。
前記導電性部材の導電層の表面抵抗は、1Ω/□〜1,000Ω/□であることが好ましく、1Ω/□〜200Ω/□であることがより好ましい。
前記表面抵抗は、例えば表面抵抗計(三菱化学株式会社製、Loresta−GP MCP−T600)により、測定することができる。
本実施形態の導電性部材の導電層の厚さは、0.01μm〜2μmが好ましく、0.02μm〜1μmがさらに好ましく、0.03μm〜0.8μmがより好まく、0.05μm〜0.5μmがさらにより好ましい。膜厚を0.01μm以上2μm以下とすることで、十分な耐久性、膜強度が得られる。特に、0.05μm〜0.5μmの範囲とすれば、製造上の許容範囲が確保されるので好ましい。
前記導電層には、遊離のイオンは及的に少ないことが望ましく、特にアルカリ金属イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲンイオンは、導電層中の金属ナノワイヤや導電性部材を適用する周辺部材の金属配線の腐食を誘発したり、エレクトロケミカルマイグレーション等の電子配線にとって深刻な問題を引き起こすことがあるため、混入防止、除去等の対策を施すことが望まれる。これらのイオンは、導電層の重量に対して、それぞれ2000ppm以下であることが好ましく、それぞれ1000ppm以下がより好ましく、100ppm以下がさらに好ましい。これらの無機イオンは、導電層形成前に基材を純水等でよく洗浄することや、導電層を形成するインク組成物またはその原料を各種精製方法によって洗浄することによって取り除くことができる。各種精製方法としては、例えば、限外ろ過、遠心分離、電気透析、デカンテーションなどが挙げられる。
<パターニング>
本発明の導電性部材は、例えば下記パターニング方法によって、導電性層と非導電性層とにパターニングが可能である。
(1)予め非パターン化導電性層を形成しておき、この非パターン化導電性層の所望の領域に含まれる金属ナノワイヤに炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等の高エネルギーのレーザー光線を照射して、金属ナノワイヤの一部を断線または消失させて当該所望の領域を非導電性領域とするパターニング方法。この方法は、例えば、特開2010−4496号公報に記載されている。
(2)予め形成した非パターン化導電性層上に溶解液をパターン状に印刷することで当該所望の領域を非導電性領域とするパターニング方法。前記金属ナノワイヤを溶解する溶解液のパターン状の印刷方法としては、溶解液をパターン状に印刷できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷などを用いることができる。前記インクジェット印刷としては、例えばピエゾ方式及びサーマル方式のいずれも使用可能である。
(3)予め形成した非パターン化導電性層上にフォトレジスト層を設け、このフォトレジスト層に所望のパターン露光及び現像を行って、当該パターン状のレジストを形成したのちに、金属ナノワイヤをエッチング可能なエッチング液で処理するウェットプロセスか、または反応性イオンエッチングのようなドライプロセスにより、レジストで保護されていない領域の導電性層中の金属ナノワイヤをエッチング除去するパターニング方法。この方法は、例えば特表2010−507199号公報(特に、段落0212〜0217)に記載されている。
上記パターン露光に用いる光源は、フォトレジスト組成物の感光波長域との関連で選定されるが、一般的にはg線、h線、i線、j線等の紫外線が好ましく用いられる。また、紫外線LEDを用いてもよい。
パターン露光の方法にも特に制限はなく、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービーム等による走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光などの露光方式を用いることができる。
前記金属ナノワイヤを溶解する溶解液としては、金属ナノワイヤに応じて適宜選択することができる。例えば金属ナノワイヤが銀ナノワイヤの場合には、所謂写真科学業界において、主にハロゲン化銀カラー感光材料の印画紙の漂白、定着工程に使用される漂白定着液、強酸、酸化剤、過酸化水素などが挙げられる。これらの中でも、漂白定着液、希硝酸、過酸化水素が特に好ましい。なお、前記金属ナノワイヤを溶解する溶解液による金属ナノワイヤの溶解は、溶解液を付与した部分の金属ナノワイヤを完全に溶解しなくてもよく、導電性が消失していれば一部が残存していてもよい。
前記希硝酸の濃度は、1質量%〜20質量%であることが好ましい。
前記過酸化水素の濃度は、3質量%〜30質量%であることが好ましい。
前記漂白定着液としては、例えば特開平2−207250号公報の第26頁右下欄1行目〜34頁右上欄9行目、及び特開平4−97355号公報の第5頁左上欄17行目〜18頁右下欄20行目に記載の処理素材や処理方法が好ましく適用できる。
漂白定着時間は、180秒間以下が好ましく、120秒間以下1秒間以上がより好ましく、90秒間以下5秒間以上がさらに好ましい。また、水洗または安定化時間は、180秒間以下が好ましく、120秒間以下1秒間以上がより好ましい。
前記漂白定着液としては、写真用漂白定着液であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、富士フイルム株式会社製CP−48S、CP−49E(カラーペーパー用漂白定着剤)、コダック社製エクタカラーRA漂白定着液、大日本印刷株式会社製漂白定着液D−J2P−02−P2、D−30P2R−01、D−22P2R−01などが挙げられる。これらの中でも、CP−48S、CP−49Eが特に好ましい。
前記金属ナノワイヤを溶解する溶解液の粘度は、25℃で、5mPa・s〜300,000mPa・sであることが好ましく、10mPa・s〜150,000mPa・sであることがより好ましい。前記粘度を、5mPa・sとすることで、溶解液の拡散を所望の範囲に制御することが容易となって、導電性領域と非導電性領域との境界が明瞭なパターニングが確保され、他方、300,000mPa・s以下とすることで、溶解液の印刷を負荷なく行うことが確保されると共に、金属ナノワイヤの溶解に要する処理時間を所望の時間内で完了させることができる。
前記金属ナノワイヤを溶解する溶解液のパターン状の付与としては、溶解液をパターン状に付与できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばスクリーン印刷、インクジェット印刷、予めレジスト剤などによりエッチングマスクを形成しておきその上に溶解液をコーター塗布、ローラー塗布、ディッピング塗布、スプレー塗布する方法、などが挙げられる。これらの中でも、スクリーン印刷、インクジェット印刷、コーター塗布、ディップ(浸漬)塗布が特に好ましい。
前記インクジェット印刷としては、例えばピエゾ方式及びサーマル方式のいずれも使用可能である。
前記パターンの種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、文字、記号、模様、図形、配線パターン、などが挙げられる。
前記パターンの大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ナノサイズからミリサイズのいずれの大きさであっても構わない。
[金属ナノワイヤまたは導電性部材の応用方法]
本実施形態で製造される金属ナノワイヤ及びそれを用いた導電性部材は特に制限なく、種々の用途に用いることができるが、ヘイズが低いため、例えば、タッチパネルや、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレー、有機ELディスプレイ、電子ペーパーなどの表示装置や、有機EL照明、無機EL照明、太陽電池、電磁波遮蔽フイルムなどの導電性部材、とりわけ、透明導電部材として好ましく用いることができる。以下に、タッチパネルと太陽電池について記載するが、これらに限定されるものではない。
<<タッチパネル>>
本実施形態に係る導電性部材は、例えば、表面型静電容量方式タッチパネル、投射型静電容量方式タッチパネル、抵抗膜式タッチパネルなどに適用される。ここで、タッチパネルとは、いわゆるタッチセンサ及びタッチパッドを含むものとする。
タッチパネルにおけるタッチパネルセンサー電極部の層構成が、2枚の透明電極を貼合する貼合方式、1枚の基材の両面に透明電極を具備する方式、片面ジャンパーあるいはスルーホール方式あるいは片面積層方式のいずれかであることが好ましい。
表面型静電容量方式タッチパネルについては、例えば特表2007−533044号公報に記載されている。
<<太陽電池>>
本実施形態に係る導電性部材は、集積型太陽電池(以下、太陽電池デバイスと称することもある)における透明電極として有用である。
集積型太陽電池としては、特に制限はなく、太陽電池デバイスとして一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、単結晶シリコン系太陽電池デバイス、多結晶シリコン系太陽電池デバイス、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池デバイス、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、色素増感型太陽電池デバイス、有機太陽電池デバイスなどが挙げられる。これらの中でも、本実施形態においては、太陽電池デバイスが、タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、及び銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイスであることが好ましい。
タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイスの場合、アモルファスシリコン、微結晶シリコン薄膜層、また、これらにGeを含んだ薄膜、さらに、これらの2層以上のタンデム構造が光電変換層として用いられる。成膜はプラズマCVD等を用いる。
本実施形態に係る導電性部材は、全ての太陽電池デバイスに関して適用できる。導電性部材は、太陽電池デバイスのどの部分に含まれてもよいが、光電変換層に隣接して導電性部材が配置されていることがいることが好ましい。光電変換層との位置関係に関しては下記の構成が好ましいが、これに限定されるものではない。また、下記に記した構成は太陽電池デバイスを構成する全ての部分を記載しておらず、導電性部材の位置関係が分かる範囲の記載としている。ここで、[ ]で括られた構成が、本実施形態に係る導電性部材に相当する。
(A)[基材−導電性部材]−光電変換層
(B)[基材−導電性部材]−光電変換層−[導電性部材−基材]
(C)基板−電極−光電変換層−[導電性部材−基材]
(D)裏面電極−光電変換層−[導電性部材−基材]
このような太陽電池の詳細については、例えば特開2010−87105号公報に記載されている。
以下、本発明の実施例を挙げ、本発明を、より詳細に説明する。但し、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
<<種粒子合成工程(A)>>
調製例1
―種粒子分散液(1)の調製―
ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド90mg、ステアリルトリメチルアンモニウムヒドロキシド10%水溶液3.2g、グルコース2.0gを蒸留水120.0gに溶解させ、反応溶液(1)とした。さらに、硝酸銀粉末70mgを蒸留水2.0gに溶解させ、硝酸銀水溶液(1)とした。反応溶液(1)を25℃に保ち、激しく攪拌しながら、25℃の硝酸銀水溶液(1)を添加した。硝酸銀水溶液(1)の添加後から180分間、激しい攪拌をし、種粒子分散液(1)とした。
調製例2
―種粒子分散液(2)の調製―
硝酸銀粉末70mgを蒸留水2.0gに溶解させ、さらに、硝酸1N水溶液30mgを添加、混合し、硝酸銀水溶液(2)とした。調製例1において硝酸銀水溶液(1)の代わりに硝酸銀水溶液(2)を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、種粒子分散液(2)を得た。
調製例3
―種粒子分散液(3)の調製―
セチルトリメチルアンモニウムクロリド81.5mg、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド10%水溶液2.91g、グルコース2.0gを蒸留水120.0gに溶解させ、反応溶液(3)とした。調製例1において反応溶液(1)の代わりに反応溶液(3)を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、種粒子分散液(3)を得た。
調製例4
―種粒子分散液(4)の調製―
ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド20mg、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド10%水溶液4.0g、グルコース2.0gを蒸留水120.0gに溶解させ、反応溶液(4)とした。調製例1において反応溶液(1)の代わりに反応溶液(4)を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、種粒子分散液(4)を得た。
調製例5
―種粒子分散液(5)の調製―
チオシアン酸ナトリウム10mg、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド10%水溶液4.0g、グルコース2.0gを蒸留水120.0gに溶解させ、反応溶液(5)とした。調製例1において反応溶液(1)の代わりに反応溶液(5)を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、種粒子分散液(5)を得た。
調製例6
―種粒子分散液(6)の調製―
亜硫酸水素ナトリウム80mg、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド10%水溶液6.0g、グルコース2.0gを蒸留水120.0gに溶解させ、反応溶液(6)とした。調製例1において反応溶液(1)の代わりに反応溶液(6)を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、種粒子分散液(6)を得た。
調製例7
―種粒子分散液(7)の調製―
塩酸1N水溶液0.25g、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド10%水溶液3.7g、グルコース2.0gを蒸留水120.0gに溶解させ、反応溶液(7)とした。調製例1において反応溶液(1)の代わりに反応溶液(7)を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、種粒子分散液(7)を得た。
調製例8
―種粒子分散液(8)の調製―
調製例1においてグルコース2.0gの代わりにマルトース2.0gを用いたこと以外は、調製例1と同様にして、種粒子分散液(8)を得た。
調製例9
―種粒子分散液(9)の調製―
プロピレングリコール445gにポリビニルピロリドン(K30)7.2gとテトラブチルアンモニウムクロリド28.5mgを添加しこの液を反応溶液(9)とした。さらに、硝酸銀粉末40mgをプロピレングリコール1.0gに溶解した液を硝酸銀溶液(9)とした。反応溶液(9)を、90℃に昇温し、激しく攪拌している反応溶液(9)へ25℃の硝酸銀溶液(9)を添加して、加熱攪拌を10分間行い、種粒子分散液(9)を得た。
調製例10
―種粒子分散液(10)の調製―
セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド10%水溶液4.00g、グルコース2.0gを蒸留水120.0gに溶解させ、反応溶液(10)とした。調製例1において反応溶液(1)の代わりに反応溶液(10)を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、種粒子分散液(10)を得た。
調製例11
―種粒子分散液(11)の調製―
ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド800mg、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド10%水溶液4.0g、グルコース2.0gを蒸留水120.0gに溶解させ、反応溶液(11)とした。調製例1において反応溶液(1)の代わりに反応溶液(11)を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、種粒子分散液(11)を得た。
調製例12
―種粒子分散液(12)の調製―
調製例(10)において、テトラブチルアンモニウムクロリド28.5mgを添加しなかったこと以外は、製例(10)と同様にして、種粒子分散液(12)を得た。
調製例13
―種粒子分散液(13)の調製―
チオシアン酸ナトリウム15mg、ステアリルトリメチルアンモニウムヒドロキシド10%水溶液6.0g、グルコース4.0gを蒸留水120.0gに溶解させ、反応溶液(13)とした。さらに、硝酸パラジウム2水和物粉末170mgを蒸留水2.0gに溶解させ、硝酸銀水溶液(13)とした。反応溶液(13)を25℃に保ち、激しく攪拌しながら、25℃の硝酸銀水溶液(13)を添加した。硝酸銀水溶液(13)の添加後から180分間、激しい攪拌をし、種粒子分散液(13)とした。
調製例14
―種粒子分散液(14)の調製―
硫酸1.0N水溶液0.25g、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド10%水溶液6.0g、グルコース2.0gを蒸留水120.0gに溶解させ、反応溶液(14)とした。調製例1において反応溶液(1)の代わりに反応溶液(14)を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、種粒子分散液(14)を得た。
調製例15
―種粒子分散液(15)の調製―
ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド1.7mg、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド10%水溶液4.0g、グルコース2.0gを蒸留水120.0gに溶解させ、反応溶液(15)とした。調製例1において反応溶液(1)の代わりに反応溶液(15)を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、種粒子分散液(15)を得た。
<<成長工程(B)>>
調製例16
―金属ナノワイヤ分散液(16)の調製―
硝酸銀粉末42.0gを蒸留水958gに溶解し、添加液(16A)とした。さらに、25%アンモニア水75gを蒸留水925gと混合し、添加液(16B)とした。
次に、以下のようにして、金属ナノワイヤ分散液(16)を調製した。ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド1.30gと臭化ナトリウム33.1gとグルコース1,000g、硝酸1N水溶液115.0gを80℃の蒸留水12.7kgに溶解させた。この液を80℃に保ち、500rpmで攪拌しながら、工程(A)で調製された種粒子分散液を添加速度250cc/分、添加液(16A)を500cc/分、添加液(16B)を500cc/分で順次添加した。攪拌速度を200rpmとし、80℃で加熱をした。攪拌速度を200rpmにしてから100分間、加熱攪拌を続けた後に、25℃に冷却した。攪拌速度を500rpmに変更し、ポリビニルピロリドン(K30)400gを蒸留水1.6kgに溶解して調製した添加液を500cc/分で添加し、得られた液を、激しく攪拌している1−プロパノールに、混合比率が体積比1対1となるように一気に添加した。攪拌を3分間行い、金属ナノワイヤ分散液(16)を得た。
調製例17:pH緩衝剤(グリシン)
―金属ナノワイヤ分散液(17)の調製―
硝酸銀粉末42.0gを蒸留水958gに溶解し、添加液(17A)とした。さらに、水酸化ナトリウム0.47mol/L水溶液を添加液(17B)とした。
次に、以下のようにして、金属ナノワイヤ分散液(17)を調製した。ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド1.30gと臭化ナトリウム33.1gとグルコース1,000g、グリシン71.3g、硝酸1N水溶液115.0gを80℃の蒸留水24.7kgに溶解させた。この液を80℃に保ち、500rpmで攪拌しながら、工程(A)で調製された種粒子分散液を添加速度250cc/分、添加液(17A)を500cc/分、添加液(17B)を500cc/分で順次添加した。攪拌速度を200rpmとし、80℃で加熱をした。攪拌速度を200rpmにしてから100分間、加熱攪拌を続けた後に、25℃に冷却した。攪拌速度を500rpmに変更し、ポリビニルピロリドン(K30)400gを蒸留水1.6kgに溶解して調製した添加液を500cc/分で添加し、得られた液を、激しく攪拌している1−プロパノールに、混合比率が体積比1対1となるように一気に添加した。攪拌を3分間行い、金属ナノワイヤ分散液(17)を得た。
調製例18
―金属ナノワイヤ分散液(18)の調製―
硝酸銀粉末5.5gをプロピレングリコール34.5gに溶解した液を硝酸銀溶液(18)とした。工程(A)で調製された種粒子分散液を90℃に保ちながら、窒素ガスを容器の気相部分に10分間通気した。次に、攪拌速度500rpmで攪拌し、テトラブチルアンモニウムクロリド1.2gをプロピレングリコール10gに溶解した液を添加した。さらに、25℃の硝酸銀溶液(18)を添加速度5cc/分で20g添加した。攪拌速度を100rpmに落とし、窒素ガスの通気を止めて、加熱攪拌を15時間行った。90℃に保ち、攪拌速度100rpmで攪拌しているこの液へ、25℃の硝酸銀溶液(18)を添加速度0.05cc/分にて20g添加し、添加終了後から2時間、加熱攪拌を続けた。攪拌を500rpmに変更し、蒸留水100gを添加した後に、25℃まで冷却して金属ナノワイヤ分散液(18)を得た。
調製例19
―金属ナノワイヤ分散液(19)の調製―
調製例16においてステアリルトリメチルアンモニウムブロミドと臭化ナトリウムを添加しなかったこと以外は、調製例16と同様にして、合成を行ったところ、金属ナノワイヤは得られなかった。
<<精製>>
得られた金属ナノワイヤ分散液を、分画分子量15万の限外濾過モジュールを用いて、次のとおりにクロスフロー方式での限外濾過精製を実施した。金属ナノワイヤ分散液を4倍に濃縮した後、蒸留水とn−プロパノールの混合液(体積比=1:1)の添加と濃縮を繰り返し、最終的に濃縮液の電導度が0.5mS/mになるまで精製を行った。なお、精製中は、濾過フィルターに固形分が堆積して濾過効率が低下することを防ぐため、5分間隔でフィルターの逆洗浄を実施しながら分散液の精製を行った。精製した液を回収し、蒸留水とn−プロパノールの混合液(体積比=1:1)を金属濃度0.45%になるように添加し、精製後金属ナノワイヤ分散液とした。
<<導電性部材の形成>>
工程(A)、工程(B)及び精製工程を経て得られた精製後金属ナノワイヤ分散液と、下記ゾルゲル塗布液とを、質量比でAg:テトラエトキシシラン(TEOS):=1:7.2となるよう混合し、PET基板上に銀量が0.017g/mとなるようにバーコートし、120℃で3分乾燥し、試料(1)〜(19)を作製した。
(ゾルゲル塗布液)
下記組成のゾルゲル塗布液を60℃で1時間撹拌して均一になったことを確認し、ゾルゲル塗布液とした。
<ゾルゲル塗布液>
・テトラエトキシシラン 5.0部
(KBE−04、信越化学工業(株)製)
・1%酢酸水溶液 10.5部
・蒸留水 4.0部
<<評価>>
試料(1)〜(19)について、後述の方法で平均短軸径[nm]、短軸径変動係数[%]、収率[%]を評価した。試料(1)〜(19)の製造条件、評価結果を表1(図1)に示す。
<金属ナノワイヤの平均短軸径(直径)>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用いて拡大観察される金属ナノワイヤから、ランダムに選択した300個の金属ナノワイヤの短軸径を測定し、その平均値から金属ナノワイヤの平均短軸径を求めた。
<種粒子分散液の消光スペクトルの半値幅>
紫外可視分光光度計(日本分光社製 V660)を用いて、光路長1cmの石英セルで、測定波長間隔0.1nmにて、消光スペクトルを測定した。リファレンス溶液には金属イオンを添加しないで工程(A)を実施して作成した溶液をそれぞれ用いた。工程(A)の反応溶媒と同じ溶媒で試料及びリファレンス溶液を同倍率に希釈して、複数回、消光スペクトルを測定して、300nm〜800nmの領域の最大消光度が1.0となる濃度の希釈倍率を求めた。300nm〜800nmの領域の最大消光度が1.0となる濃度の希釈倍率で測定した消光スペクトルにおいて、消光度が0.485から0.515の範囲である波長領域のうち、最大消光度を示す波長よりも短波長側で最大の波長領域と、最大消光度を示す波長よりも長波長側で最小の波長領域の、それぞれの波長領域において、最も0.5に近い消光度を示す波長をそれぞれ、短波長側半値波長、長波長側半値波長とした。半値幅を、(長波長側半値波長)−(短波長側半値波長)=(半値幅)として求めた。
<金属ナノワイヤの短軸径(直径)の変動係数>
上記電子顕微鏡(TEM)像からランダムに選択した300個のナノワイヤの短軸径を測定し、その300個についての標準偏差と平均値を計算することにより、求めた。
<収率>
金属ナノワイヤの収率は、精製工程で得られたろ液中の金属量を測定し、次の式から求めた。
(収率[%])= 100−{(ろ液中金属濃度)×(ろ液体積)}/{(精製工程前の金属ナノワイヤ分散液中金属濃度)×(精製工程前の金属ナノワイヤ分散液量)}×100
金属ナノワイヤ分散液中の金属濃度は、試料10.0gに富士フイルム株式会社製CP−49E(カラーペーパー用漂白定着剤)90.0gを添加し、5分間超音波を照射して金属ナノワイヤ溶解させ、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS−8000)を用いて測定した。また、ろ液の金属濃度は、精製工程で回収したろ液を全て混合し、ろ液91.0gに富士フイルム株式会社製CP−49E(カラーペーパー用漂白定着剤)9.0gを添加し、5分間超音波を照射して金属微粒子を溶解させ、ICP発光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS−8000)を用いて測定した。
<表面抵抗値>
導電性部材の導電性領域の表面抵抗を、三菱化学株式会社製Loresta−GP MCP−T600を用いて測定した。
<光学特性(ヘイズ)>
パターン化導電性部材のヘイズ(%)を、ガードナー社製のヘイズガードプラスを用いて測定した。
<総合評価>
評価の基準としては平均短軸径<25nm、変動係数<30%、収率>95%、表面抵抗<200Ω/□、ヘイズ<2.5%を合格基準とした。
表1(図1)の結果から試料1〜10、12、16、19は、平均短軸径[nm]、短軸径変動係数[%]、収率[%]、表面抵抗[Ω/□]、ヘイズ[%]の各項目において、満足する結果を得た。試料16について、種粒子は形成された第一の金属イオン(Pd)の特性上、明確な半値幅の測定ができなかった。一方、試料11、13では工程Aにおいて配位子を含んでいないので、平均短軸径[nm]、短軸径変動係数[%]、収率[%]、ヘイズ[%]の項目において、満足を得ることができなかった。試料14、15では工程Bにおいて第二の金属のモル数/第一の金属のモル数が大きい(用いる種粒子の量が少ない)ために平均短軸径[nm]、短軸径変動係数[%]、収率[%]、ヘイズ[%]の項目において、満足を得ることができなかった。
試料17では工程(B)において、配位子を含んでいないので、ワイヤが生成しなかった。試料18では工程(A)において、配位子の溶解度積pKspが8未満であったので、平均短軸径[nm]、短軸径変動係数[%]、収率[%]、ヘイズ[%]の項目において、満足を得ることができなかった。また、試料1〜10、12の種粒子分散液の消光スペクトルの半値幅と金属ナノワイヤの平均短軸径の関係の比較から、前記半値幅は、75nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましいことが判る。
(その他)
調製例1で得られた種粒子分散液(1)を密閉容器に入れ、庫内温度5〜10℃の冷蔵庫中、3ヶ月間静置保管した。
第二の金属モル数/第一の金属モル数が360となる量の上記3ヶ月間保管した種粒子分散液(1)を、調製例13に従って成長させたところ、平均短軸径18.1nm、短軸変動係数21%、収率99%の金属ナノワイヤが得られ、工程(A)で合成した種粒子を保管して用いることに問題なきことを確認した。
<タッチパネルの作製>
試料(1)を用いて、以下の方法によりパターニング処理を行った。スクリーン印刷は、ミノグループ社製WHT−3型とスキージNo.4イエローを使用した。パターニングを形成するための銀ナノワイヤの溶解液はCP−48S−A液と、CP−48S−B液(いずれも、富士フイルム社製)と、純水とを1:1:1となるように混合し、ヒドロキシエチルセルロースで増粘させて形成し、スクリーン印刷用インクとした。スクリーン印刷用メッシュパターンを使用して試料(1)に前記スクリーン印刷用インクをパターン印刷した。パターン印刷後、15秒間静置した後に、純水(シャワー圧0.04MPa)でリンスした。エアスプレーにて水滴を飛ばし、50℃で1分間、乾燥させた。得られたパターニングされた導電性部材1を用いて『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日発行、株式会社テクノタイムズ)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004年12月発行)、「FPD International 2009 Forum T−11講演テキストブック」、「Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292」等に記載の方法により、タッチパネルを作製した。なお、スクリーン印刷用メッシュパターンのパターン形状も、タッチパネルの作製に用いた前記参考文献に従った。
作製したタッチパネルを使用した場合、低いヘイズのために導電層と非導電層の区別がつきづらく、かつ低い抵抗のために素手、手袋を嵌めた手、指示具のうち少なくとも一つによる文字等の入力または画面操作に対し応答性に優れるタッチパネルを製作できることが分かった。
<太陽電池の作製>
−アモルファス太陽電池(スーパーストレート型)の作製−
ガラス基板上に、試料(1)と同様にして導電性層を形成し、透明導電膜を形成した。その上部にプラズマCVD法により膜厚約14nmのp型、膜厚約350nmのi型、膜厚約33nmのn型アモルファスシリコンを形成し、裏面反射電極としてガリウム添加酸化亜鉛層20nm、銀層200nmを形成し、光電変換素子(集積型太陽電池)を作製した。
−CIGS太陽電池(サブストレート型)の作製−
ソーダライムガラス基板上に、直流マグネトロンスパッタ法により膜厚500nm程度のモリブデン電極、真空蒸着法により膜厚約2.6μmのカルコパイライト系半導体材料であるCu(In0.6Ga0.4)Se薄膜、溶液析出法により膜厚約48nmの硫化カドミニウム薄膜、を形成した。
その上に試料(1)の導電性層と同じ導電性層を形成し、ガラス基板上に透明導電膜を形成し、光電変換素子(CIGS太陽電池)を作製した。
<太陽電池特性(変換効率)の評価>
アモルファス太陽電池、及びCIGS太陽電池について、AM1.5、100mW/cmの疑似太陽光を照射することで効率)を測定した。その結果、いずれ素子も5.6%の変換効率を示した。この結果から、本実施の形態の導電性部材を用いることで、いずれの集積型太陽電池方式においても高い変換効率が得られることが分かった。

Claims (20)

  1. 第一の金属イオンを還元して種粒子を合成する工程(A)と、第二の金属イオンを還元してナノワイヤに前記種粒子を成長させる工程(B)と、を少なくとも含む金属ナノワイヤの製造方法であって、
    前記工程(A)における反応溶液が、15℃〜25℃の純水中での前記第一の金属イオンとの塩の溶解度積pKspが8以上である第一の配位子を、前記第一の金属イオンの総モル数100に対して、モル数0.50以上となる濃度で含有し、前記工程(B)の反応溶液が、15℃〜25℃の純水中での前記第二の金属イオンとの溶解度積pKspが8以上である第二の配位子と、前記種粒子、及び、前記第一の金属イオン1モル当たり、5000モル以下の第二の金属イオンを少なくとも含有することを特徴とする金属ナノワイヤの製造方法。
  2. 前記ナノワイヤが25nm以下の平均短軸径を有する請求項1記載の金属ナノワイヤの製造方法。
  3. 前記第一の金属イオンが実質的に銀イオンである請求項1または2に記載の金属ナノワイヤの製造方法。
  4. 前記工程(A)で調製された前記種粒子分散液は、光路長1cmの光学セルで測定した300nm以上800nm以下の波長範囲における最大消光度が1.0となる濃度に希釈または濃縮されたとき、90.0nm以下の半値幅の消光スペクトルを有する請求項3に記載の金属ナノワイヤの製造方法。
  5. 前記工程(B)において、前記第二の金属イオン量は、前記種粒子分散液中の前記第一の金属イオン1モル当たり、100モルから1000モルである請求項1から4のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤの製造方法。
  6. 前記工程(A)において、前記第一の金属イオンを含有する7より低いpHの金属イオン添加液と、還元剤及び前記配位子を含有する7よりも高いpHの反応溶液とを混合する工程を含む請求項1から5のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤの製造方法。
  7. 前記工程(B)において、前記第二の配位子が、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンより選ばれる少なくとも1種のイオンである請求項1から6のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤの製造方法。
  8. 前記塩化物イオン、前記臭化物イオン、前記ヨウ化物イオンより選ばれる少なくとも1種のイオンの対イオンの少なくとも一部がアルキルアンモニウムイオンである請求項7に記載の金属ナノワイヤの製造方法。
  9. 前記工程(B)において、前記第二の金属イオンを含有する金属イオン添加液を反応容器へ添加する工程を含み、前記金属イオン添加液と、前記金属イオン添加液が添加される反応容器中の溶液との温度差が25℃以上ある請求項1から8のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤの製造方法。
  10. 前記工程(B)において、前記第二の金属イオンを含有する前記金属イオン添加液が7より低いpHを有する請求項9に記載の金属ナノワイヤの製造方法。
  11. 前記工程(A)において、前記反応溶液に用いられる溶媒が50質量%以上の水を含有する請求項1から10のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤの製造方法。
  12. 前記工程(B)において、前記第二の配位子及び還元剤を含有する反応溶液が用いられ、前記反応溶液に用いられる溶媒が、50質量%以上の水を含有する請求項1から11のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤの製造方法。
  13. 前記工程(A)が第一の反応容器で行われ、前記工程(B)が前記第一の反応容器とは別の第二の反応容器で行われる、請求項1から12のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤの製造方法。
  14. 前記第一の金属イオンを含有する前記金属イオン添加液の酸素濃度が0.5mg/L以上である請求項1から13のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤの製造方法。
  15. 前記第二の金属イオンを含有する前記金属イオン添加液の酸素濃度が0.5mg/L以上である請求項1から14のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤの製造方法。
  16. 請求項1から15のいずれか1項に記載の金属ナノワイヤの製造方法で製造された金属ナノワイヤ。
  17. 請求項16に記載の金属ナノワイヤを含有するインク組成物。
  18. 請求項17に記載の金属ナノワイヤを含有する導電性部材。
  19. 請求項18に記載の導電性部材を含むタッチパネル。
  20. 請求項18に記載の導電性部材を含む太陽電池。
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