〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態について、図1を参照して説明する。図1は、第1の実施の形態に係るアンテナ装置の一例を示す図である。尚、図1に示す構成は一例であって、斯かる構成に本開示の範囲が限定されるものではない。図1Aでは、紙面横方向をX軸とし、紙面垂直方向をY軸とし、紙面縦方向をZ軸としている。図1Bは、図1Aに示すIB部を拡大した図である。
図1に示すアンテナ装置2は、接地板4、第1のアンテナ22及び第2のアンテナ42を含んでいる。第1のアンテナ22及び第2のアンテナ42は、接地板4の異なる辺部に配置されている。アンテナ装置2は、接地板4に対して第1のアンテナ22及び第2のアンテナ42を配置して、例えば、ダイバーシティアンテナ装置を構成している。たとえば、アンテナ装置2は、第1のアンテナ22または第2のアンテナ42のいずれかのアンテナに給電し、給電するアンテナを切り替える。
接地板4は、導電材料で構成し、導電性を有する。接地板4は、例えば、銅箔、アルミニウム箔、銀箔等の金属箔で構成する。また、接地板4は、例えば、銅板、アルミニウム板、銀板等の金属板で構成してもよい。接地板4は、例えば平板状であって、矩形状又はほぼ矩形状を有している。接地板4は、第1の辺部12、第2の辺部14、第3の辺部16及び第4の辺部18を有している。第1の辺部12は、第3の辺部16に対向し、第2の辺部14及び第4の辺部18に隣接している。
第1の辺部12には、第1のアンテナ22が配置される。第2の辺部14には第2のアンテナ42が配置される。即ち、第1のアンテナ22及び第2のアンテナ42は、それぞれ角部13を介して直交又はほぼ直交する隣接辺部に配置される。
第1のアンテナ22及び第2のアンテナ42は、電波を送信又は受信し、又は送信及び受信するための素子である。第1のアンテナ22及び第2のアンテナ42は、例えば、銅箔、アルミニウム箔、銀箔等の金属箔で構成する。第1のアンテナ22及び第2のアンテナ42は、例えば、銅板、アルミニウム板、銀板等の金属板で構成してもよい。第1のアンテナ22及び第2のアンテナ42は、例えば平板状を有する。
第1のアンテナ22は第1の線状素子24と第2の線状素子26と短絡素子28とを含んでいる。第1の線状素子24及び短絡素子28は、第1のアンテナ22の基部30を構成している。基部30は、第1の辺部12の近傍であって、第2の辺部14よりの位置に配置される。第1の線状素子24は接地板4の素子対向部32と対向している。短絡素子28は、接地板4に素子接合部34で接合している。素子対向部32及び素子接合部34は、アンテナ22の基部30に対向する対向部36を構成している。なお、「近傍」は、距離が近いことを意味し、接触状態、即ち距離が0である場合も含むものとする。
第1の線状素子24は、第1の辺部12と第2の線状素子26の間に配置され、第1の辺部12に対して垂直方向又はほぼ垂直方向に伸びる。第1の線状素子24は、接地板4の素子対向部32に近接し、第2の線状素子26に接続している。
第2の線状素子26は、第1のアンテナ22の放射素子として機能する。第2の線状素子26は、第1の辺部12に対して平行方向又はほぼ平行方向に伸びる。第2の線状素子26は、第1の線状素子24に接続するとともに、一端部で短絡素子28に接続している。
短絡素子28は、第1のアンテナ22の接地端子の一例であり、第1の辺部12と第2の線状素子26の間に配置され、第1の線状素子24の近傍に配置される。短絡素子28は、第1の辺部12に対して垂直方向又はほぼ垂直方向に伸びる。短絡素子28は、第2の線状素子26に接続し、接地板4に素子接合部34で接続する。この接続により短絡素子28は、第1のアンテナ22を接地板4に短絡させる。短絡素子28の位置を調整することで、インピーダンスの調整を行うことができる。
第1のアンテナ22は、第1の線状素子24と第2の線状素子26と短絡素子28により逆F型アンテナを形成している。第1の線状素子24に給電線が接続され、素子対向部32に接地線が接続されると、第1のアンテナ22がアンテナとして機能する。
第2のアンテナ42は第1の線状素子44と第2の線状素子46と短絡素子48とを含んでいる。第1の線状素子44及び短絡素子48は、第2のアンテナ42の基部50を構成している。基部50は、第2の辺部14の近傍であって、第1の辺部12に近い位置に配置される。第1の線状素子44は接地板4の素子対向部52と対向している。短絡素子48は、接地板4に素子接合部54で接合している。素子対向部52及び素子接合部54は、アンテナ42の基部50に対向する対向部56を構成している。
第1の線状素子44は、第2の辺部14と第2の線状素子46の間に配置され、第2の辺部14に対して垂直方向又はほぼ垂直方向に伸びる。第1の線状素子44は、接地板4の素子対向部52に近接して、第2の線状素子46に接続している。
第2の線状素子46は、第2のアンテナ42の放射素子として機能する。第2の線状素子46は、第2の辺部14に対して平行方向又はほぼ平行方向に伸びる。第2の線状素子46は、第1の線状素子44に接続するとともに、一端部で短絡素子48に接続している。
短絡素子48は、第2のアンテナ42の接地端子の一例であり、第2の辺部14と第2の線状素子46の間に配置され、第1の線状素子44の近傍に配置される。短絡素子48は、第2の辺部14に対して垂直方向又はほぼ垂直方向に伸びる。短絡素子48は、第2の線状素子46に接続し、接地板4に素子接合部54で接続する。この接続により短絡素子48は、第2のアンテナ42を接地板4に短絡させる。短絡素子48の位置を調整することで、インピーダンスの調整を行うことができる。
第2のアンテナ42は、第1の線状素子44と第2の線状素子46と短絡素子48により逆F型アンテナを形成している。第1の線状素子44に給電線が接続され、素子対向部52に接地線が接続されると、第2のアンテナ42がアンテナとして機能する。
接地板4には、スリット62が形成されている。スリット62は、接地板4に対して細長い切れ込みを形成し、非導体部を形成している。スリット62は、素子接合部34に隣接する隣接部において、第1の辺部12に開口部66を形成する。たとえば、スリット62は、第1のアンテナ22の接地端子が接地板4に接合する接合部分に開口部66を形成する。この開口部66は、例えば素子接合部34より第1のアンテナ22側に形成される。スリット62は、開口部66から接地板4の内部側、即ち内方に伸び、スリット62−1を形成する。このスリット62−1は、第1のスリットの一例であり、第1の線状素子24及び短絡素子28と平行な方向又はほぼ平行な方向に伸びている。スリット62は、第1の辺部12から長さW1[mm]の位置で直角に又はほぼ直角に屈曲する。スリット62は、屈曲後、第1の辺部12に対して平行方向に又はほぼ平行方向に伸び、スリット62−2を形成している。即ち、スリット62−2は、第2のスリットの一例であり、第1のアンテナ22が配置されている第1の辺部12および第2の線状素子26に沿って伸びている。スリット62−2は、長さW2[mm]を有する。第1の辺部12周辺の接地板4−1は、スリット62により、2方向が囲まれ、他の接地板4−2から隔てられる。このため、接地板4−1は、スリット62を迂回して、他の接地板4−2に接続している。
対向部36は、スリット62により、第2のアンテナ42の対向部56側の周囲が囲まれている。このため、対向部36と対向部56とは、スリット62を迂回して接続され、第1のアンテナ22と第2のアンテナ42の間の結合が抑制される。第1のアンテナ22又は第2のアンテナ42に給電した場合、給電した側の高周波電流が他方のアンテナに流れることが抑制される。
アンテナ装置2は、例えばX−Y平面が水平面に一致するように配置される。この場合、第1のアンテナ22は、主に垂直偏波を受信するアンテナとなる。また、第2のアンテナ42は、主に水平偏波を受信するアンテナとなる。即ち、アンテナ装置2には、特性の異なる2つのアンテナが配置される。アンテナ装置2では、それぞれのアンテナが偏波の異なる電波を受信する。そこで、アンテナ装置2は、偏波ダイバーシティアンテナ装置を構成する。切替えスイッチなどの切替え手段と組み合わせて、使用するアンテナを切替えることで、アンテナ装置2は、いずれの偏波の電波が到来しても受信可能にできる。
(1) アンテナ装置の電力分布
次にアンテナ装置2の電力分布について図2Aおよび図2Bを参照する。図2Aは、接地板にスリットを設けたアンテナ装置の電流分布の一例を示す図である。図2Bは接地板にスリットを設けていないアンテナ装置の電流分布の一例を示す図である。なお、図2A及び図2Bに示す電流分布は、自由空間中にアンテナ装置を配置し、第1のアンテナ22、1022に給電した場合の電流分布であって、接地板及びアンテナ上の電流分布を表している。この電流分布は、シミュレーション解析により得られる。なお、斯かる電流分布は一例であって、斯かる電流分布に本開示が限定されるものではない。
図2Aに示すアンテナ装置2は、図1に示すアンテナ装置2と同様の形状を有するアンテナ装置である。アンテナ装置2のパラメータは以下のとおりである。
接地板の縦寸法 GH: 70[mm]
接地板の横寸法 GW: 70[mm]
金属の厚さ: 0.4[mm]
スリットの幅 : 1[mm]
スリットの長さ: 0.16λ
λは、送信または受信する電波の波長を表している。この解析では、解析周波数として1[GHz]の電波を用いている。この場合、0.16波長(0.16λ)は、約48[mm]となる。
第1のアンテナ22及び第2のアンテナ42の長さは、解析周波数の電波を受信する長さに設定している。第1のアンテナ22及び第2のアンテナ42は逆F型アンテナである。そこでアンテナ長は、基本的には4分の1波長に設定される。第1のアンテナ22は、スリット62が第1のアンテナの素子22側に配置されたことにより、第2のアンテナ42より短くなっている。即ち、第1のアンテナ22の基部30に隣接してスリット62を配置したことにより、アンテナ線長の短縮が図られている。
図2Bに示すアンテナ装置1002では、接地板1004にスリットを設けていない。アンテナ装置1002では、接地板1004に対して、第1のアンテナ1022及び第2のアンテナ1042を配置している。第1のアンテナ1022及び第2のアンテナ1042の長さは、解析周波数の電波を受信する長さに設定している。アンテナ長は、基本的には4分の1波長に設定される。第1のアンテナ1022の線長は、接地板1004にスリットがないので、第1のアンテナ22に比べ長くなっている。
図2Aに示す電流分布は、第1のアンテナ22の給電位置FPに給電した場合の電流分布である。この場合、垂直偏波を所望の偏波として受信し、水平偏波は不要な偏波となる。給電された第1のアンテナ22及びスリット62において、電流分布が高くなっている。一方、第2のアンテナ42は、第1のアンテナ22に対し、電流分布が低くなっている。即ち、給電されていないアンテナに流れる電流が少なくなり、不要な偏波の電波の放射が抑制されている。
図2Bに示す電流分布は、第1のアンテナ1022の給電位置FPに給電した場合の電流分布である。給電された第1のアンテナ1022及び給電されていない第2のアンテナ1042において、電流分布が高くなっている。
スリットがない場合、給電されていないアンテナに電流が流れ、不要な偏波の方向にも感度が高くなっている。第1のアンテナ1022及び第2のアンテナ1042の相関が高くなっている。一方、スリット62がある場合、給電されていない側のアンテナへの電流が抑制されている。第1のアンテナ22及び第2のアンテナ42の相関が低くなっている。
スリット62は、他方のアンテナへの電流の流れを抑制している。若しくは、スリット62がアンテナ装置2で生じたエネルギーを消費している。このようなスリット62の配置により、他方のアンテナに流れる電流が減らされている。
(2) 相関係数
次に、相関係数に関し、図3を参照する。図3は、相関係数の算出における座標系の一例を示す図である。図3では、XYZ座標系における、θ及びφを表している。空間上の点Pにおけるθは、Z軸と線OPとのなす角度である。また、点PをX−Y平面に投影した点を点P’として、点Pにおけるφは、X軸と線OP’とのなす角度である。なお、点OはXYZ座標系における原点(0,0,0)を表す。
相関係数は、2つの変量又は現象の間の関係の程度を表す係数であり、ダイバーシティアンテナを構成する各アンテナの関係の程度を表すのに用いられる。相関係数は、値が低い程、関係の程度が小さくなる。即ち、相関係数が小さい程、ダイバーシティの効果が大きくなる。相関係数は、例えば式1により計算される。
図3に示すアンテナ装置2の相関係数を計算する。アンテナ装置2は、接地板4及びアンテナ22、42がX−Z平面に配置され、平板状を有している。このアンテナ装置2のX−Y平面の全方位(360[度])の平均の相関係数を求める場合、式1の各パラメータは以下のようになる。
N:相関係数を計算する面数を表す。相関係数の計算は、例えば、X−Y平面及びY−Z平面の2平面を使用して計算する。2平面を使用して計算する場合、N=2となる。
M:各平面内の測定点数を表す。相関係数の計算は、例えば、角度のステップを5度刻みとして1回転(360[度])について計算する。この5[度]刻みとして1回転について計算する場合、M=72となる。
E1θ(θ,φ):第1のアンテナにおける電界のθ成分
E1φ(θ,φ):第1のアンテナにおける電界のφ成分
E2θ(θ,φ):第2のアンテナにおける電界のθ成分
E2φ(θ,φ):第2のアンテナにおける電界のφ成分
E*:Eの複素共役を表す。
(θ,φ):球座標における角度を表している。例えば、Y−Z平面を使用して計算する場合、φ=90[度]であり、θが例えば0[度]から360[度]まで変化する。
(3) スリット長と相関係数との関係
次に、スリットの長さ(スリット長)に関し、図4、図5及び図6を参照する。図4Aは、距離W1が2.5[mm]のアンテナ装置の一例を示す図である。図4Bは、図4Aのアンテナ装置のスリット長と相関係数との関係の一例を示す図である。図5Aは、距離W1が5[mm]のアンテナ装置の一例を示す図である。図5Bは、図5Aのアンテナ装置のスリット長と相関係数との関係の一例を示す図である。図6Aは、距離W1が5[mm]の他のアンテナ装置の一例を示す図である。図6Bは、図6Aのアンテナ装置のスリット長と相関係数との関係の一例を示す図である。図4B、図5B及び図6Bに示すグラフにおいて、縦軸は相関係数(Correlation Coefficient)であり、横軸はスリット長である。スリット長は、スリットの規格化波長(Normalized Wavelength of slit)として表されている。スリット長Wは、図1に示すように、スリット62−1の長さ(W1)及びスリット62−2の長さ(W2)を合計した長さである。即ち、スリット長Wは、W=W1+W2である。
図4Aに示すアンテナ装置2では、図1に示すアンテナ装置2において、距離W1が2.5[mm]である。アンテナ装置2のその他のパラメータは以下の通りである。
接地板の縦寸法 GH: 70[mm]
接地板の横寸法 GW: 70[mm]
金属の厚さ :0.4[mm]
スリットの幅 : 1[mm]
第1のアンテナ22及び第2のアンテナ42の長さは、解析周波数の電波を受信するように調整している。
なお、長さの単位(メートル[m])は、規格化波長に置き換え可能である。解析周波数が1[GHz]である場合、0.1波長(0.1λ)は、約30[mm]となる。
相関係数には、シミュレーションによる解析装置が用いられる。解析条件は、以下の値に設定した。
解析周波数: 1[GHz]
媒質: 真空中と仮定して解析
図4Bに示す解析結果では、スリット長が0.138λから0.187λの範囲で相関係数が0.1以下であり、アンテナの相関が低くなっている。スリット長が0.148λから0.182λの範囲で相関係数が0.05以下であり、相関が更に低くなっている。
図5Aに示すアンテナ装置2では、図1に示すアンテナ装置2において、距離W1が5[mm]である。アンテナ装置2のその他のパラメータは図4Aに示すアンテナ装置と同じである。また、相関係数の解析条件は、図4Aに示すアンテナ装置2の解析条件と同じである。
第1のアンテナ22及び第2のアンテナ42の長さは、解析周波数の電波を受信するように調整している。
図5Bに示す解析結果では、スリット長が0.135λから0.188λの範囲で相関係数が0.1以下であり、アンテナの相関が低くなっている。スリット長が0.146λから0.184λの範囲で相関係数が0.05以下であり、相関が更に低くなっている。更に、スリット長が0.16λから0.18λの範囲で相関係数が最も低くなっている。
図6Aに示すアンテナ装置2は、図1に示すアンテナ装置2において、距離W1を5[mm]にした例である。また、第2のアンテナ42の基部50は、角部13から離間距離EDほど離間した位置に配置している。このアンテナ装置2では、ED=0.05λとしている。アンテナ装置2のその他のパラメータは図4Aに示すアンテナ装置と同じである。また、相関係数の解析条件は、図4Aに示すアンテナ装置2の解析条件と同じである。
第1のアンテナ22及び第2のアンテナ42の長さは、解析周波数の電波を受信するように調整されている。
第2のアンテナ42が角部13から離間距離EDほど離れたことにより、図6Bに示す解析結果では、図4B及び図5Bの解析結果に比べ、相関係数が低くなっている。図6Bに示す解析結果では、スリット長が0.1λから0.2λにおいて、相関係数が0.12以下となり、アンテナ間の相関が低くなっている。また、スリット長が0.16λから0.18λにおいて、相関係数が最も低くなっている。
図4B、図5B、図6Bに示す解析結果から、2本のスリットの長さを合計した長さ、即ちスリット長が0.1〜0.2波長の範囲内に、相関係数を低くすることができる組み合わせが存在する。たとえば、スリット長が0.16〜0.18波長の範囲であれば、W1が2.5[mm]及び5[mm]のいずれであっても相関係数が低くなる。スリット長が0.16〜0.18波長の範囲であれば、離間距離EDを大きくしても相関係数が低くなる。
(4) アンテナの離間距離と相関係数との関係
次に、アンテナの離間距離と相関係数との関係に関し、図7を参照する。図7Aは、スリットがないアンテナ装置の一例を示す図である。図7Bは、図7Aに示すアンテナ装置の離間距離と相関係数との関係の一例を示す図である。図7Bに示すグラフにおいて、縦軸は相関係数(Correlation Coefficient)であり、横軸は離間距離である。離間距離は、距離の規格化波長(Normalized Wavelength of Distance)として表されている。
図7Aに示すアンテナ装置1002は、スリットが設けられていないアンテナ装置である。第1のアンテナ1022及び第2のアンテナ1042の長さは、解析周波数の電波を受信するように調整されている。接地板1004の縦寸法GHは、第2のアンテナ1042の先端部が、接地板1004の第3の辺部1016の延長線上から突出しないように調整されている。なお、離間距離EDは、角部1013と、対向部1056の角部1013側端部との間の距離である。アンテナ装置1002では、対向部1036が、角部1013の近傍に設けられている。よって、離間距離EDは、アンテナの間隔を表している。アンテナ装置1002のその他のパラメータは図4Aに示すアンテナ装置2と同じである。また、相関係数の解析条件は、図4Aに示すアンテナ装置2の解析条件と同じである。
図7Bに示す解析結果から、相関係数を0.1以下にするには、離間距離を0.09λ以上にする必要がある。相関係数を0.05以下にするには、離間距離を0.19λ以上にする必要がある。離間距離EDを大きくする場合に比べ、スリットを設ける方が相関係数の低下量を大きくすることができる。また、離間距離EDが例えば0.05λ等、比較的に離れた場合であっても、スリットを設けることで、相関係数を更に低下させることができる。
上記した第1の実施の形態について、特徴事項、利点又は変形例等を列挙する。
(1) 以上述べたように、アンテナ装置2は、2つの逆F型アンテナを備えている。スリット62は、一方の逆F型アンテナの根元部分、たとえば一方のアンテナの接地端子が接地板4に接合する接合部から、そのアンテナの接地端子と平行な方向に伸びるスリット62−1を備えている。逆F型アンテナの根元は、例えば対向部36に隣接する隣接部を指す。また、逆F型アンテナの根元として、対向部36にスリットを配置してもよい。スリット62は、第1の辺部12に対して垂直方向に切り欠いたスリット62−1と、接地板4の第1の辺部12と平行又はほぼ平行に伸びるスリット62−2を備えている。スリット62−1は、一方の逆Fアンテナの放射素子として機能する第2のアンテナに対しても平行又はほぼ平行に伸びている。
(2) アンテナ装置2は、一方のアンテナの根元にスリットを備えることで、各アンテナ間の結合を大幅に低減させる。すなわち、アンテナ装置2の相関係数が低い値になる。これにより、アンテナ装置2は、非給電側のアンテナに電流が流れることを抑圧する。即ち、ダイバーシティの効果が高められる。異なる偏波を受信するアンテナを配置すると、偏波ダイバーシティの効果が高められる。
(3) 第1の実施の形態では、開口部66を素子接合部34に近い第2のアンテナ42側に形成し、スリット62が対向部36の全域を囲うようにしたが、本開示のアンテナ装置は、斯かる構成に限定されない。例えば、素子対向部32と素子接合部34との間に開口部66を形成してスリット62が素子対向部32を囲うようにしてもよい。この場合、スリット62は、対向部36の一部を囲ったとしても、各アンテナ間の結合を低減させる。スリットの配置を変更すると、アンテナのインピーダンス特性が変化する。そこで、スリットは、インピーダンス特性の調整手段として用いることができる。アンテナ装置2は、スリットの配置の調整により、インピーダンス特性の調整の自由度を高めることができる。
(4) このように、スリットを設けることにより、アンテナ同士の結合を抑えることができ、小型ながらも相関係数の低い偏波ダイバーシティアンテナを提供することが可能となる。
(5) 第1の実施の形態では、逆F型アンテナを用いたが、接地板と組み合わせて用いる他のアンテナであってもよい。たとえば、アンテナ装置2は、逆L型アンテナ又はモノポールアンテナを備えてもよい。アンテナ装置2は、逆F型アンテナ、逆L型アンテナ及びモノポールアンテナなどの不平衡給電型のアンテナから選択される異なるタイプのアンテナを組み合わせて配置してもよい。不平衡給電型のアンテナを用いる場合、ダイポールアンテナ等の平衡給電型のアンテナを用いたアンテナ装置に比べ、アンテナ装置2が小型になる。
(6) 第1の実施の形態では、第1、第2のアンテナ22、42と接地板4でアンテナ装置2を構成したが、本開示のアンテナ装置は斯かる構成に限定されない。例えば、誘電体基板上に第1、第2のアンテナ22、42と接地板4を配置して、誘電体を含むアンテナ装置2を構成してもよい。誘電体基板としては例えばFR4(Flame Retardant Type 4)基板を用いることができる。FR4基板は、ガラス繊維の布にエポキシ樹脂を含浸させた後、熱硬化させることにより得られる。誘電体基板は、例えば、誘電率(εr)が4.4であり誘電正接(tanδ)が0.02である。また、誘電体基板の厚さは、例えば、0.8[mm]である。
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態について、図8を参照して説明する。図8は、第2の実施の形態に係るアンテナ装置の一例を示す図である。尚、図8に示す構成は一例であって、斯かる構成に本開示の範囲が限定されるものではない。図8では、紙面横方向をX軸とし、紙面垂直方向をY軸とし、紙面縦方向をZ軸としている。図8Bは、図8Aに示すVIIIB部を拡大した図である。
図8に示すアンテナ装置102は、縦寸法がSH、横寸法がSWの誘電体基板106を備え、第1のアンテナ22と、第2のアンテナ42と、接地板4とが誘電体基板106上に配置されている。
誘電体基板106は、誘電性の基板であり、例えば既述のFR4基板が用いられる。誘電体基板106は、導体層を介在させて複数の絶縁層を積層させた構造にしてもよい。この絶縁層は、例えばガラス繊維の布にエポキシ樹脂を含浸させた材料である。導体層は例えば銅箔、アルミニウム箔、銀箔等の金属箔である。誘電体基板106は、パターニングされた導体層を配置すれば、内部に回路を形成することができる。たとえば、誘電体基板106上に電子部品を配置して、電子部品を誘電体基板106内の回路で配線することができる。アンテナ装置102では、スリット62が接地板4の周囲に配置される。このため、まとまった接地板4の領域が確保でき、電子部品の配置性が優れる。誘電体基板106は、例えば、誘電率(εr)が4.4であり、誘電正接(tanδ)が0.02であり、厚さが、0.8[mm]である。誘電体基板106を用いると、電子部品を基板表面上に配置可能になる。また、誘電体基板106を介して第1のアンテナ22、第2のアンテナ42及び接地板4を無線通信装置等の電子機器に接続できる。第1、第2のアンテナ22、42及び接地板4を電子機器に容易に実装できる。
アンテナ22、42及び接地板4は、例えば、誘電体基板106の一方の表面に配置する。また、アンテナ22、42を誘電体基板106の一方の表面に配置し、接地板4を誘電体基板106の一方の表面及びこの表面に対向する表面の両面に配置してもよい。接地板4を両方の表面に配置すると、接地板4をほぼ倍の面積に拡張することができる。
接地板4は、例えば、銅箔、アルミニウム箔、銀箔等の金属箔であって、誘電体基板106の表面に固着している。接地板4は、第1の辺部12から、第1のアンテナ22の第1の線状素子24に向けて延設する延接導体132を有している。この延接導体132は、素子対向部32の一例であり、素子接合部34とともに対向部136を構成する。接地板4は、第2の辺部14から、第2のアンテナ42の第1の線状素子44に向けて延設する延接導体152を有している。この延接導体152は、素子対向部52の一例であり、素子接合部54とともに対向部156を構成する。接地板4のその他の構成は、第1の実施の形態の接地板4と同様であるのでその説明を省略する。
第1のアンテナ22は、例えば、銅箔、アルミニウム箔、銀箔等の金属箔であって、誘電体基板106の表面に固着している。第1の線状素子24は、延接導体132と第2の線状素子26の間に配置され、第1の辺部12に対して垂直方向又はほぼ垂直方向に伸びる。第1のアンテナ22のその他の構成は第1の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
第2のアンテナ42は、銅箔、アルミニウム箔、銀箔等の金属箔であって、誘電体基板106の表面に固着している。第1の線状素子44は、延接導体152と第2の線状素子46の間に配置され、第2の辺部14に対して垂直方向又はほぼ垂直方向に伸びる。第2の線状素子46は、素子の中間部において蛇行部172を有している。蛇行部172では、線状素子が屈曲して蛇行している。素子の蛇行は、中間部に限らず、第2の線状素子46の端部又は端部近傍であってもよい。線状素子を蛇行させると、第2の線状素子46の道のり、即ち線状素子に沿った距離、を第2の線状素子46の直線距離よりも長くすることができる。即ち、同じ周波数の電波を受信するアンテナにおいて、線状素子を蛇行させたアンテナは、線状素子を蛇行させないアンテナよりも直線距離が短くなる。第2のアンテナ42のその他の構成は第1の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
次に、アンテナ装置102の指向性および相関係数に関し、図9及び図10を参照する。図9は、第1のアンテナに給電した時のX−Y平面における指向性の一例を示す図である。図10は、第2のアンテナに給電した時のX−Y平面における指向性の一例を示す図である。なお、指向性を表す図に関し、角度(Angle)0[度](紙面上方向)はφ(Phi)=0[度]であり、X軸の正方向の利得(Gain)を示す。角度90[度](紙面右方向)はφ=90[度]であり、Y軸の正方向の利得を示す。角度−90[度](紙面左方向)はφ=270[度]であり、Y軸の負方向の利得を示す。角度−180[度](紙面下方向)はφ=180[度]であり、X軸の負方向の利得を示す。尚、利得は、振幅(Magnitude)による利得で表され、その単位はdBである。また、太い実線で表された利得は、垂直偏波の利得(Gain Theta)を表し、細い実線で表された利得は、水平偏波の利得(Gain Phi)を表している。垂直偏波の利得には、2つの印m1、m2が付されている。m1は、Phiが270.0000[度]、Angleが−90.0000[度]の方向に付されている。m2は、Phiが90.0000[度]、Angleが90.0000[度]の方向に付されている。水平偏波の利得には、1つの印m3が付されている。m3は、Phiが270.0000[度]、Angleが−90.0000[度]の方向に付されている。
図9A及び図10Aに示す指向性パターンは、図8に示すアンテナ装置102について、シミュレーションにより解析した結果である。解析に際し、誘電体基板106は、FR4基板とした。アンテナ装置102のパラメータは以下とおりである。
接地板の縦寸法 GH: 70[mm]
接地板の横寸法 GW: 70[mm]
誘電体基板の誘電率 εr: 4.4
誘電体基板の誘電正接 tanδ: 0.02
誘電体基板の厚さ h: 0.8[mm]
内層金属箔の厚さ t: 0.035[mm]
解析条件は、以下のとおりである。
解析周波数: 1[GHz]
媒質: 真空中と仮定して解析
図9Aに示す指向性パターンでは、水平偏波に比べて垂直偏波の利得が高くなっている。たとえば、図9Bに示すデータでは、マークm3における水平偏波の振幅が−11.8576[dB]である。一方、マークm1における垂直偏波の振幅が1.1902[dB]であり、マークm2における垂直偏波の振幅が1.2035[dB]である。
図10Aに示す指向性パターンでは、垂直偏波に比べて水平偏波の利得が高くなっている。たとえば、図10Bに示すデータでは、マークm1における垂直偏波の振幅が−10.2973[dB]であり、マークm2における垂直偏波の振幅が−10.2851[dB]である。一方、マークm3における水平偏波の振幅が1.4102[dB]である。
図8に示すアンテナ装置102の相関係数は、既述の式1を用いて計算したところ、0.16であった。
比較のため、スリットを設けていないアンテナ装置の指向性パターン及び相関係数について図11、12、13を参照する。
図12及び図13に示す指向性は、図11に示すアンテナ装置1102について、シミュレーションにより解析した結果である。アンテナ装置1102は、スリットを配置せず、アンテナ1122、1142の長さを調整した以外は図8に示すアンテナ装置102と同様であるのでその説明を省略する。
図12Aに示す指向性パターンでは、スリットがある場合に比べ、水平偏波と垂直偏波の利得の差が小さくなっている。たとえば、図12Bに示すデータでは、マークm3における水平偏波の振幅が−0.9905[dB]である。一方、マークm1における垂直偏波の振幅が−2.7978[dB]であり、マークm2における垂直偏波の振幅が−2.7820[dB]である。
図13Aに示す指向性パターンでは、スリットがある場合に比べ、水平偏波と垂直偏波の利得の差が小さくなっている。たとえば、図13Bに示すデータでは、マークm1における垂直偏波の振幅が−0.2947[dB]であり、マークm2における垂直偏波の振幅が−0.2824[dB]である。一方、マークm3における水平偏波の振幅が−4.7253[dB]である。
図11に示すアンテナ装置1102の相関係数は、既述の式1を用いて計算したところ、0.23であった。
図9及び図10に示す解析結果から、スリットを設けた場合、第1のアンテナ22は垂直偏波が強く放射され、第2のアンテナ42は水平偏波が強く放射される。一方、図12及び図13に示す解析結果から、スリットを設けない場合、第1のアンテナ1122及び第2のアンテナ1142の両方から、垂直偏波及び水平偏波の両方が強く放射されている。この解析結果は、スリットを設けない場合、アンテナ同士の結合が強いことを示している。例えば、第1のアンテナ1122に給電すると、第2のアンテナ1142にも高周波電流が流れてしまうことを示している。この解析結果は、第2のアンテナ1142から不要な偏波成分が放射されることに起因する。また、スリットを設けないアンテナ装置の相関係数は、スリットを設けたアンテナ装置の相関係数に比べ高くなっている。
即ち、接地板4にスリットを設けたアンテナ装置102は、第1のアンテナ22に給電する時は、水平面内において垂直偏波が強くなる。第2のアンテナ42に給電する時は、水平面内において水平偏波が強くなる。また、アンテナ装置102では、相関係数が低下する。スリットを設けたアンテナ装置102は、スリットを設けないアンテナ装置1102に比べ、偏波ダイバーシティの効果が高くなっている。
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態について、図14ないし図19を参照して説明する。図14は第3の実施の形態に係るアンテナ装置の底面図である。図15はアンテナ装置の正面図である。図16はアンテナ装置の背面図である。尚、図14では、紙面横方向をX軸とし、紙面縦方向をY軸とし、紙面垂直方向をZ軸としている。図15及び図16では、紙面横方向をX軸とし、紙面垂直方向をY軸とし、紙面縦方向をZ軸としている。
第1および第2の実施の形態では、第1のアンテナ22および第2のアンテナ42が、接地端子の一例としてそれぞれ短絡素子28、48を備えていたが、接地端子は短絡素子28、48に限定されない。たとえば、第3の実施の形態では、第1のアンテナ222は、第1の線状素子224と第2の線状素子226とを備え、接地板204は、第1のアンテナ222の第1の線状素子224に向けて延設する延接導体236を備えている。この第3の実施の形態では、たとえば第2の線状素子226を放射素子として機能させ、第1の線状素子224または延接導体236またはその両方を接地端子として機能させる。
図14に示すアンテナ装置202は、Z軸の負方向からZ軸の正方向を視た図である。アンテナ装置202は、縦寸法がSH、横寸法がSWの誘電体基板106を備えている。誘電体基板は、第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。第1のアンテナ222と、第2のアンテナ242と、第1の接地板204は、誘電体基板106の第1の表面、例えば正面側の表面に配置されている。第2の接地板205は、誘電体基板106の他方の表面、例えば背面側の表面に配置されている。この他方の表面には、ストリップ導体276と、接続コネクタ292、294が配置される。
誘電体基板106の第1の表面について図15を参照する。接地板204、第1のアンテナ222及び第2のアンテナ242は、例えば、銅箔、アルミニウム箔、銀箔等の金属箔で構成され、誘電体基板106の表面に固着している。接地板204は、例えば平板状であって、矩形状又はほぼ矩形状を有している。接地板204は、第1の辺部212、第2の辺部214、第3の辺部216及び第4の辺部218を有している。第1の辺部212は、第3の辺部216に対向し、第2の辺部214及び第4の辺部218に隣接している。第2の辺部214は、中間部において、後退部215を有している。
第1の辺部212には、第1のアンテナ222が配置される。第2の辺部214には第2のアンテナ242が配置される。第1のアンテナ222の基部として、第1の線状素子224は、第1の辺部212の近傍であって、第4の辺部218よりの位置に配置される。第2のアンテナ242の基部250は、第2の辺部214に設け、第2の辺部212に近い位置に配置される。接地板204は、第1の辺部212から、第1のアンテナ222の第1の線状素子224に向けて延設する延接導体236を有している。この延接導体236は、対向部36の一例である。なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、第1の辺部12をX軸に平行にし、この辺部に第1のアンテナ22を配置した。第2の辺部14をZ軸に平行にし、この辺部に第2のアンテナ42を配置した。この実施の形態では、第1の辺部212をZ軸に平行にし、この辺部に第1のアンテナ222を配置している。第2の辺部214をX軸に平行にし、この辺部に第2のアンテナ242を配置している。
第1の接地板204には、スリット262が形成されている。スリット262は、接地板204に対して細長い切れ込みを形成して、非導体部を形成している。スリット262は、延接導体236に隣接する隣接部において、第1の辺部212に開口部266を形成する。たとえば、スリット262は、第1のアンテナ222の接地端子が接地板204に接合する接合部分に開口部266を形成する。この開口部266は、例えば延接導体236に近い第4の辺部218側に形成される。スリット262は、開口部266から接地板204の内部側、即ち内方に伸び、スリット262−1を形成する。このスリット262−1は、第1の線状素子224と平行な方向又はほぼ平行な方向に伸びている。スリット262は、第1の辺部212から長さW1[mm]の位置で直角に、又はほぼ直角に屈曲する。スリット262は、屈曲後、第1の辺部212に対して平行方向に又はほぼ平行方向に伸び、スリット262−2を形成している。即ち、スリット262−2は、第1のアンテナ222が配置されている第1の辺部212に沿って伸びている。スリット262−2は、長さW2[mm]を有する。第1の辺部212周辺の接地板204−1は、スリット262により、2方向が囲まれ、他の接地板204−2から隔てられる。
延接導体236は、スリット262により、周囲が囲まれている。このため、延接導体236と対向部256とは、幅方向の長さがW1に制限されている接地板204−1を介して接続される。このような接続により、第1のアンテナ222と第2のアンテナ242の間の結合が抑制される。第1のアンテナ222又は第2のアンテナ242に給電した場合、給電した側の高周波電流が他方のアンテナに流れることが抑制される。
接地板204の周囲には、複数の貫通孔が形成されている。貫通孔は、図14に示す第2の接地板205に到達している。貫通孔の内表面には、銅膜、アルミニウム膜、銀膜等の金属膜が形成されている。貫通孔及び金属膜により、ビアホール290−1、290−2、・・・290−N、即ちビアホール290が形成されている。このビアホール290は、接地板204−2と第2の接地板205とを金属膜により電気的に接続している。
第1のアンテナ222は第1の線状素子224と第2の線状素子226とを含んでいる。第1の線状素子224は、第1のアンテナ222の基部を構成する。
第1の線状素子224は、延接導体236と第2の線状素子226の間に配置され、第1の辺部212に対して垂直方向又はほぼ垂直方向に伸びる。第1の線状素子224は延接導体236に近接して配置されている。第1の線状素子224は、第1のアンテナ222の給電部を構成する。第1の線状素子224には、給電線が接続される。第1の線状素子224は、第2の線状素子226に接続している。
第2の線状素子226は、第1のアンテナ222の放射素子として機能する。第2の線状素子226は、第1の辺部212に対して平行方向又はほぼ平行方向に伸びる。第2の線状素子226は、その一端部で第1の線状素子224に接続している。
第1のアンテナ222は、第1の線状素子224と第2の線状素子226により逆L型アンテナを形成している。第1の線状素子224の延接導体236側の端部に伝送線路を接続することで、第1のアンテナ222で電波の送受信が可能になる。
第2のアンテナ242は第1の線状素子244と第2の線状素子246と短絡素子248とを含んでいる。第1の線状素子244と短絡素子248は、第2のアンテナ242の基部250を構成している。
第1の線状素子244は、第2の辺部214と第2の線状素子246の間に配置され、第2の辺部214に対して垂直方向又はほぼ垂直方向に伸びる。第1の線状素子244は、素子対向部252に近接して配置されている。第1の線状素子244は、第2のアンテナ242の給電部を構成する。第1の線状素子244には、給電線が接続される。第1の線状素子244は、短絡素子248に向けて折れ曲がり、短絡素子248に接続している。
第2の線状素子246は、第2のアンテナ242の放射素子として機能する。第2の線状素子246は、第2の辺部214に対して平行方向又はほぼ平行方向に伸びる。第2の線状素子246は、素子の中間部において蛇行部274を有している。この蛇行部274では、線状素子が屈曲して蛇行している。素子の蛇行は、中間部に限らず、第2の線状素子246の端部又は端部近傍であってもよい。第2の線状素子246は、一端部で短絡素子248に接続している。
短絡素子248は、第2のアンテナ242の接地端子の一例であり、第2の辺部214と第2の線状素子246の間に配置され、第1の線状素子244の近傍に配置される。短絡素子248は、第2の辺部214に対して垂直方向又はほぼ垂直方向に伸びる。短絡素子248は第2の線状素子246と接地板204の素子接合部254に接続し、第2の線状素子246と接地板204とを接続する。短絡素子248は、第2のアンテナ242を接地板204に短絡させる。第2のアンテナ242は、第1の線状素子244と第2の線状素子246と短絡素子248により逆F型アンテナを形成している。なお、接地板204において、素子対向部252と、素子接合部254とによりアンテナ242の基部250に対向する対向部256が形成される。
誘電体基板106の第2の表面について図16を参照する。誘電体基板106の第2の表面には、第2の接地板205及びストリップ導体276が配置される。第2の接地板205は、第1の辺部282と、第2の辺部284と、第3の辺部286と、第4の辺部288とを有する。第1の辺部282は、第1の辺部212よりも誘電体基板106の内方側に形成される(図17B)。第2の辺部284と、第3の辺部286と、第4の辺部288は、図15に示される第2の辺部214と、第3の辺部216と、第4の辺部218にそれぞれ対応する位置に形成される。第2の接地板205の周囲には、ビアホール290が形成されている。
接続コネクタ292、294は、同軸ケーブル等の伝送線路に接続するための接続コネクタであって、第1の辺部282と第2の辺部284が交わる角部283の近傍に配置される。RF(Radio Frequency)回路が例えば、接続コネクタ292、294の近傍領域298に配置される。RF回路を接続コネクタ292、294の近傍に配置することで、RF回路と接続コネクタ292、294とを接続する伝送線路を短くすることができる。伝送線路が短くなると、伝送線路の位置変化によるアンテナ特性への影響を抑制することができる。
次に、第1のアンテナへの給電に関し、図17を参照する。図17Aは図15に示すアンテナ装置のA−A線端面の一例を示す図である。図17Bは図15に示すアンテナ装置のB−B線端面の一例を示す図である。図17Cは図15に示すアンテナ装置のC−C線端面の一例を示す図である。
図15の誘電体基板106の第1の表面には、接地板204−1が配置されている。一方、図16に示す誘電体基板106の第2の表面には、接地板204−1に対応する位置に、ストリップ導体276が配置されている。誘電体106の第2の表面には、誘電体基板106を介してストリップ導体276を接地板204−1に対向させることで、マイクロストリップ線路が形成されている。マイクロストリップ線路は、給電線を構成し、伝送線路として機能する。
図17Aに示す端面では、ストリップ導体276の先端部は、第1の線状素子224の端部に誘電体基板106を介して重ねられている。ストリップ導体276の先端部と第1の線状素子224の端部との間には、ビアホール297−1、297−2が形成される。このビアホール297−1、297−2により、第1の線状素子224はストリップ導体276に接続される。接地板204−1は、第1のアンテナ222の接地板として機能するほか、マイクロストリップ線路の接地導体として機能する。
図17Bに示す端面には、マイクロストリップ線路の中間部が図示されている。このマイクロストリップ線路の中間部では、誘電体基板106を介してストリップ導体276を接地板204−1に対向させることで、マイクロストリップ線路が形成されている。
図17Cに示す端面には、接続コネクタ292が配置されている。この接続コネクタには、ストリップ導体276が接続されている。また、接地板204は、ビアホール290を介して接地板205に接続され、この接地板205が接続コネクタ292に接続されている。同軸ケーブル等の伝送線路を接続コネクタ292に接続すると、第1のアンテナ222への給電が可能になる。
次に、第2のアンテナへの給電に関し、図18を参照する。図18は図15に示すアンテナ装置のD−D線端面の一例を示す図である。
図18に示す端面には、接続コネクタ294が配置されている。この接続コネクタ294は、第1の線状素子244の端部又は端部近傍に対向する位置に配置されている。接続コネクタ294は、ビアホール296−1、296−2を介して第1の線状素子244の端部に接続している。伝送線路の接続により、伝送線路の一方の線路、例えば、同軸ケーブルの内部導体が第1の線状素子244の端部に接続される。接続コネクタ294は、第2の接地板205に接続している。伝送線路の接続により、伝送線路の他方の線路、例えば、同軸ケーブルの外部導体が、接地板204、205に接続される。
次に、アンテナ装置の指向性および相関係数に関し、図19、図20及び図21を参照する。図19は、アンテナ装置の一例を示す図である。図20は、第1のアンテナ222に給電した時のX−Y平面における指向性の一例を示す図である。図21は、第2のアンテナ242に給電した時のX−Y平面における指向性の一例を示す図である。
図20及び図21に示す指向性は、図19に示すアンテナ装置202について、シミュレーションにより解析した結果である。図19に示すアンテ装置202は、図15に示すアンテナ装置202をモデル化したアンテナ装置である。解析に際し、誘電体基板106は、FR4基板とした。各パラメータは以下とおりである。
接地板の縦寸法 GH: 52[mm]
接地板の横寸法 GW: 63[mm]
誘電体基板の誘電率 εr: 4.4
誘電体基板の誘電正接 tanδ: 0.02
誘電体基板の厚さ h: 0.8[mm]
内層金属箔の厚さ t: 0.035[mm]
スリット262−2と第1の辺部212との距離 W1: 7[mm]
スリット262−2の長さ W2: 35.5[mm]
スリット262−1の長さ W3: 8[mm]
スリットの幅 :1[mm]
解析条件は、以下の値に設定した。
解析周波数: 1[GHz]
図20Aに示す指向性パターンでは、垂直偏波に比べて水平偏波の利得が高くなっている。たとえば、図20Bに示すデータでは、マークm1における垂直偏波の振幅が−7.2630であり、マークm2における垂直偏波の振幅が−7.3060である。一方、マークm3における水平偏波の振幅が0.9841である。
図21Aに示す指向性パターンでは、水平偏波に比べて垂直偏波の利得が高くなっている。たとえば、図21Bに示すデータでは、マークm3における水平偏波の振幅が−9.2515である。一方、マークm1における垂直偏波の振幅が1.0185であり、マークm2における垂直偏波の振幅が1.0849である。
図19に示すアンテナ装置202の相関係数は、既述の式1を用いて計算したところ、0.01であった。
比較のため、スリットを設けていないアンテナ装置1202の指向性及び相関係数について図22、図23及び図24を参照する。
図23A及び図24Aに示す指向性パターンは、図22に示すアンテナ装置1202について、シミュレーションにより解析した結果である。アンテナ装置1202は、スリットを設けておらず、アンテナ長の調整のため、第1のアンテナ装置1222に蛇行部1227を配置した以外は図19に示すアンテナ装置202と同様である。
図23Aに示す指向性パターンでは、スリットがある場合に比べ、水平偏波と垂直偏波の利得の差が小さくなっている。たとえば、図23Bに示すデータでは、マークm1における垂直偏波の振幅が−0.8145であり、マークm2における垂直偏波の振幅が−0.6445である。一方、マークm3における水平偏波の振幅が−3.2571である。
図24Aに示す指向性パターンでは、スリットがある場合に比べ、水平偏波と垂直偏波の利得の差が小さくなっている。たとえば、図24Bにデータでは、マークm3における水平偏波の振幅が−2.9788である。一方、マークm1における垂直偏波の振幅が−2.0906であり、マークm2における垂直偏波の振幅が−2.2728である。
図22に示すアンテナ装置1202の相関係数は、既述の式1を用いて計算したところ、0.45であった。
図20及び図21に示す解析結果から、スリットを設けた場合、第1のアンテナ222からは水平偏波が強く放射され、第2のアンテナ242からは垂直偏波が強く放射されている。一方、図23及び図24に示す解析結果から、スリットを設けない場合、第1のアンテナ1222及び第2のアンテナ1242の両方から、垂直偏波及び水平偏波の両方が強く放射されている。アンテナ装置1202では、延接導体1236と対向部1256との間が離れているものの、アンテナ間の結合が高くなっている。これは、第1のアンテナ1222の先端部が第2のアンテナ1242側に延伸し、この先端部が、接地板1204と電磁的な結合を生じた結果、アンテナ同士が結合していると考えられる。即ち、第2のアンテナ1242の先端部に対向している接地板の位置が対向部1256に接近したことでアンテナ同士が結合している。このような結合を生じる場合であっても、図19のようなスリット262を設けることで、第1のアンテナ222又は第2のアンテナ242の何れのアンテナに給電した場合であっても相関係数を低下させることができる。
接地板204にスリットを設けたアンテナ装置202は、第1のアンテナ222に給電時は、水平面内において水平偏波が強くなる。第2のアンテナ242に給電時、水平面内において垂直偏波が強くなる。また、アンテナ装置202は、相関係数が低下する。スリットを設けたアンテナ装置202は、スリットを設けないアンテナ装置1202に比べ、偏波ダイバーシティの効果が高くなっている。
以上述べたように、アンテナ装置202では、第1のアンテナがたとえば、逆L型アンテナになっている。スリット62は、この逆L型アンテナの根元部分、たとえばアンテナの接地端子が接地板204に接合する接合部から、そのアンテナの接地端子と平行な方向に伸びるスリット62−1を備えている。このように、スリットを設けたとしても、アンテナ同士の結合を抑えることができ、小型ながらも相関係数の低い偏波ダイバーシティアンテナを提供することが可能となる。
〔第4の実施の形態〕
第4の実施の形態について、図25を参照して説明する。図25は第4の実施の形態に係るアンテナ装置の一例を示す図である。尚、図25では、紙面横方向をX軸とし、紙面垂直方向をY軸とし、紙面縦方向をZ軸としている。第4の実施の形態では、スリット362がスリット363の先端側から第2のアンテナ342の放射素子に平行な方向に延伸している。また、スリット363がスリット362の先端側から第1のアンテナ322の放射素子に平行な方向に延伸している。
図25に示すアンテナ装置302は、縦寸法がSH、横寸法がSWの誘電体基板106を備えている。誘電体基板は、第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。第1のアンテナ322と、第2のアンテナ342と、接地板304とが誘電体基板106上に配置されている。アンテナ322、342及び接地板304は、例えば、銅箔、アルミニウム箔、銀箔等の金属箔であって、誘電体基板106の表面に固着している。
接地板304は、第1の辺部312、第2の辺部314、第3の辺部316及び第4の辺部318を有している。第1の辺部312及び第2の辺部314は、隣接し、直交又はほぼ直交している。
第1の辺部312には、第1のアンテナ322が配置される。第2の辺部314には第2のアンテナ342が配置される。第1のアンテナ322の基部330は、第1の辺部312の近傍であって、第4の辺部318よりの位置に配置される。第2のアンテナ342の基部350は、第2の辺部314の近傍であって、第3の辺部316に近い位置に配置される。
接地板304は、第1の辺部312から、第1のアンテナ322の第1の線状素子324に向けて延設する延接導体332を有している。この延接導体332は、素子対向部32の一例である。接地板304は、第2の辺部314から、第2のアンテナ342の第1の線状素子344に向けて延設する延接導体352を有している。この延接導体352は、素子対向部52の一例である。
接地板304には、2本のスリット362、363が形成されている。スリット362、363は、接地板304に対して細長い切れ込みを形成して、非導体部を形成している。
スリット362は、延接導体332及び素子接合部334に隣接する隣接部において、第1の辺部312に開口部366を形成する。たとえば、スリット362は、第1のアンテナ322の接地端子が接地板304に接合する接合部分に開口部366を形成する。スリット362は、開口部366から接地板304の内部側、即ち内方に直線状に伸びる。スリット362は、第1の辺部312に対して垂直又はほぼ垂直に伸びる。即ち、スリット362は、第1の辺部312に隣接する第4の辺部318に対し平行又はほぼ平行に、第4の辺部318に沿って伸びる。スリット362の長さW11は、例えば39[mm]である。長さW11(39[mm])を周波数1[GHz]として規格化波長で表すと、0.13波長(0.13λ)となる。
接地板304−1は、スリット362と、第1の辺部312と、第4の辺部318により、3方向が囲まれ、接地板304−2から隔てられている。このため、接地板304−1は、スリット362を迂回して、接地板304−2に接続している。すなわち、素子接合部334は、スリット362により囲まれている。
スリット363は、延接導体352及び素子接合部354に隣接する隣接部において、第2の辺部314に開口部367を形成する。たとえば、スリット363は、第2のアンテナ342の接地端子が接地板304に接合する接合部分に開口部367を形成する。この開口部367は、例えば、延接導体352と素子接合部354の間に形成される。スリット363は、開口部367から接地板304の内部側に直線状に伸びる。スリット363は、第2の辺部314に対して垂直又はほぼ垂直に伸びる。即ち、スリット363は、第2の辺部314に隣接する第3の辺部316に対し平行又はほぼ平行に、第3の辺部316に沿って伸びる。スリット363の長さW12は、例えば39[mm]である。
接地板304−3は、スリット363と、第2の辺部314と、第3の辺部316により、3方向が囲まれ、接地板304−2から隔てられている。このため、接地板304−3は、スリット363を迂回して、接地板304−2に接続している。すなわち、素子接合部354は、スリット363により囲まれている。
接地板304のその他の構成は、第2の実施の形態の接地板と同様であるのでその説明を省略する。
第1のアンテナ322は第1の線状素子324と第2の線状素子326と、短絡素子328を含んでいる。第1の線状素子324及び短絡素子328の少なくとも一方は、接地端子を構成する。第1の線状素子324及び短絡素子328は、第1のアンテナ322の基部330を構成する。
第1の線状素子324は、延接導体332、即ち素子対向部と第2の線状素子326の間に配置され、第1の辺部312に対して垂直方向又はほぼ垂直方向に伸びる。第1の線状素子324は、延接導体332に近接して配置されている。第1の線状素子324は、第1のアンテナ322の給電部を構成する。第1の線状素子324は、第2の線状素子326に接続している。
第2の線状素子326は、第1のアンテナ322の放射素子として機能する。第2の線状素子326は、第1の辺部312に対して平行方向又はほぼ平行方向に伸びる。第2の線状素子326は、第1の線状素子324に接続するとともに、一端部で短絡素子328に接続している。
短絡素子328は、第1の辺部312と第2の線状素子326の間に配置され、第1の線状素子324の近傍に配置される。短絡素子328は、第1の辺部312に対して垂直方向又はほぼ垂直方向に伸びる。短絡素子328は第2の線状素子326と接地板304の素子接合部334とに接続し、第2の線状素子326と接地板304とを接続する。短絡素子328は、第1のアンテナ322を接地板304に短絡させる。
第1のアンテナ322は、第1の線状素子324と、第2の線状素子326と、短絡素子328により逆F型アンテナを形成している。
第2のアンテナ342は第1の線状素子344と第2の線状素子346と、短絡素子348を含んでいる。第1の線状素子344及び短絡素子348の少なくとも一方は、接地端子を構成する。第1の線状素子344及び短絡素子348は、第2のアンテナ342の基部350を構成する。
第1の線状素子344は、延接導体352、即ち素子対向部と第2の線状素子346の間に配置され、第2の辺部314に対して垂直方向又はほぼ垂直方向に伸びる。第1の線状素子344は、延接導体352に近接して配置されている。第1の線状素子344は、第2のアンテナ342の給電部を構成する。第1の線状素子344は、第2の線状素子346に接続している。
第2の線状素子346は、第2のアンテナ342の放射素子として機能する。第2の線状素子346は、第2の辺部314に対して平行方向又はほぼ平行方向に伸びる。第2の線状素子346は、素子の中間部において蛇行部374を有している。蛇行部374では、線状素子が屈曲して蛇行している。素子の蛇行は、中間部に限らず、第2の線状素子346の端部又は端部近傍であってもよい。第2の線状素子346は、第1の線状素子344に接続するとともに、一端部で短絡素子348に接続している。
短絡素子348は、第2の辺部314と第2の線状素子346の間に配置され、第1の線状素子344に近くに配置される。短絡素子348は、第2の辺部314に対して垂直方向又はほぼ垂直方向に伸びる。短絡素子348は第2の線状素子346と、接地板304の素子接合部354に接続し、第2の線状素子346と接地板304とを接続する。短絡素子348は、第1のアンテナ342を接地板304に短絡させる。
第2のアンテナ342は、第1の線状素子344と、第2の線状素子346と、短絡素子348により逆F型アンテナを形成している。
第1のアンテナ322の先端部及び第2のアンテナ342の先端部には板状の誘電体392、394が配置されている。この誘電体392、394の誘電率(εr)は、例えば3である。誘電体392、394をアンテナ322、342に重ねて誘電体基板106上に配置する。第1、第2のアンテナ322、342は、誘電体392、394を第1、第2のアンテナ322、342上に配置すると、誘電体の波長短縮効果により第1、第2のアンテナ322、342で受信する電波の周波数を低くすることができる。即ち、誘電体392、394を用いてアンテナ長を短くすることでできる。
その他の構成は、第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
次に、アンテナ装置の指向性および相関係数に関し、図26及び図27を参照する。図26は、第1のアンテナ322に給電した時のX−Y平面における指向性の一例を示す図である。図27は、第2のアンテナ342に給電した時のX−Y平面における指向性の一例を示す図である。
図26及び図27に示す指向性は、図25に示すアンテナ装置302について、シミュレーションにより解析した結果である。解析に際し、誘電体基板106は、FR4基板とした。各パラメータは以下とおりである。
接地板の縦寸法 GH: 53[mm]
接地板の横寸法 GW: 67[mm]
誘電体基板の誘電率 εr: 4.4
誘電体基板の誘電正接 tanδ: 0.02
誘電体基板の厚さ h: 0.8[mm]
内層金属箔の厚さ t: 0.035[mm]
スリット362の長さ W11: 39[mm]
スリット363の長さ W12: 39[mm]
スリットの幅 :1[mm]
解析条件は、以下の値に設定した。
解析周波数: 1[GHz]
図26Aに示す指向性パターンでは、水平偏波に比べて垂直偏波の利得が高くなっている。たとえば、図26Bに示すデータでは、マークm3における水平偏波の振幅が−21.5728である。一方、マークm1における垂直偏波の振幅が0.5923であり、マークm2における垂直偏波の振幅が0.5526である。
図27Aに示す指向性パターンでは、垂直偏波に比べて水平偏波の利得が高くなっている。たとえば、図27Bに示すデータでは、マークm1における垂直偏波の振幅が−16.2955であり、マークm2における垂直偏波の振幅が−16.2908である。一方、マークm3における水平偏波の振幅が0.9617である。
図25に示すアンテナ装置302の相関係数は、既述の式1を用いて計算したところ、0.01であった。
比較のため、スリットを設けていないアンテナ装置の指向性及び相関係数について図28、29、30を参照する。
図29A及び図30Aに示す指向性パターンは、図28に示すアンテナ装置1302について、シミュレーションにより解析した結果である。解析に際し、スリットを配置せず、アンテナ1322、1342の長さを調整した以外は図25に示すアンテナ装置302と同様であるのでその説明を省略する。
図29Aに示す指向性パターンでは、スリットがある場合に比べ、水平偏波と垂直偏波の利得の差が小さくなっている。たとえば、図29Bに示すデータでは、マークm3における水平偏波の振幅が−2.6329である。一方、マークm1における垂直偏波の振幅が−0.1043であり、マークm2における垂直偏波の振幅が−0.1043である。
図30Aに示す指向性パターンでは、スリットがある場合に比べ、水平偏波と垂直偏波の利得の差が小さくなっている。たとえば、図30Bに示すデータでは、マークm1における垂直偏波の振幅が−1.1779であり、マークm2における垂直偏波の振幅が−1.2191である。一方、マークm3における水平偏波の振幅が−1.0947である。
図28に示すアンテナ装置1302の相関係数は、既述の式1を用いて計算したところ、0.93であった。
図26及び図27に示す解析結果から、スリットを設けた場合、第1のアンテナ322からは垂直偏波が強く放射され、第2のアンテナ342からは水平偏波が強く放射されている。一方、図29及び図30に示す解析結果から、スリットを設けない場合、第1のアンテナ1322及び第2のアンテナ1342の両方から、垂直偏波及び水平偏波の両方が強く放射されている。
接地板304にスリットを設けたアンテナ装置302は、第1のアンテナ322に給電時は、水平面内において水平偏波が強くなる。第2のアンテナ342に給電時は、水平面内において垂直偏波が強くなる。また、アンテナ装置302は、第1のアンテナ322又は第2のアンテナ342の何れのアンテナに給電した場合であっても相関係数が低下する。スリットを設けたアンテナ装置302は、スリットを設けないアンテナ装置1302に比べ、偏波ダイバーシティの効果が高くなっている。
〔他の実施の形態〕
他の実施の形態について、図31を参照して説明する。図31は他の実施の形態に係る電子装置の一例を示す図である。
図31に示す電子装置500は、無線通信機能を有し、筐体501の内部にアンテナ装置502を備えている。アンテナ装置502は、既述のアンテナ装置2、102、202、302等のアンテナ装置である。アンテナ装置502の接地板504、アンテナ522、542は、電子装置500の前側の表面に平行又はほぼ平行に配置する。また、アンテナ装置502は、例えば、電子装置500の前面側に配置する。電子装置500の前面側に配置することで、電波がより受信しやすくなり、また、送信しやすくなる。電子装置500は、例えばスマートネットワークを構成する電子装置500として用いることができる。電子装置500がセンサを構成し、感知した情報や収集した情報をアンテナ装置502から送信する。外部の電子装置からアンテナ装置502を介して情報を取得する。本開示のアンテナ装置2、102、202、302等を用いることで、外部の電子装置との間の通信品質を向上させることができる。また、本開示のアンテナ装置2、102、202、302は、例えば不平衡型のアンテナを用いている。このため、アンテナ装置の大きさが小型にできる。また、例えば、アンテナ装置2、102、202、302は、平面形状に構成することができる。電子装置500の限られた領域にアンテナ装置502を配置することができる。もしくは、電子装置500が大型になるのを抑制することができる。
以上説明した実施の形態について、その特徴事項や変形例を以下に列挙する。
(1) 上記の実施の形態では、矩形形状又はほぼ矩形形状の接地板を用いたが、斯かる構成に限定されない。たとえば、矩形形状の接地板の一辺又は複数辺に後退部を設けて五つ以上の角部を有する形状にしてもよい。また、矩形形状の接地板の一つ又は複数の角部を切り落として五つ以上の角部を有する形状にしてもよい。尚、これらの形状の変形の度合いが小さく、外観的に矩形を想起する形状であれば、「ほぼ矩形形状」とみなせる。これらの形状の変形の度合いが大きい場合であっても、スリットにより相関係数を低くすることができる。
(2) 上記の実施の形態では、逆F型アンテナ、又は逆L型アンテナを用いたが、例えば、図32に示すアンテナ装置602のようにしてもよい。即ち、第1のアンテナ622において、短絡素子628が第1の線状素子624と対向部636と短絡させるようにしてもよい。このような構成であっても短絡素子628により、第1のアンテナ622のインピーダンスを調整することがきる。
(3) 第4の実施の形態では、第1のアンテナ322に対応してスリット362を配置し、第2のアンテナ342に対応してスリット363を配置した。スリット362、363は直線状に伸びるスリットにした。斯かる実施の形態に対し、例えば、図33に示すアンテナ装置702では、アンテナ722、742の位置を変更し、アンテナ722、742が延伸する方向を変更するなど、様々な変形が可能である。また、接地板704に形成されるスリット762、763を屈曲させ、各スリットに対応するアンテナに沿って伸びるようにするなど、様々な変形が可能である。第4の実施の形態に限らず、他の実施の形態についてもこれらの変形は可能である。
(4) 上記の実施の形態では、1か所で屈曲するスリット又は直線状のスリットを用いたが斯かるスリットに限定されない。スリットの端部が、既述の対向部又は対向部の隣接部に配置され、スリットが対向部の一部又は全域を囲うように配置されていればよい。例えば、スリットを2か所以上で屈曲させてもよく、湾曲部を形成してもよい。このような構成であってもスリットによりアンテナの結合を抑制することができる。
(5) 上記の実施の形態では、開口部から伸びるスリットを、開口部が形成された辺部に対して垂直に又はほぼ垂直に伸ばしたが斯かる方向に限定されない。たとえば、開口部が形成された辺部に対して傾斜方向に伸ばしてもよい。このような構成であってもスリットによりアンテナの結合を抑制することができる。
(6) 上記の実施の形態では、アンテナ装置に関する寸法について具体的に例示した。これらの寸法は、例示であり、斯かる寸法に本開示が限定されるものではない。
(7) 上記の実施の形態では、電子装置としてスマートネットワークを構成する電子装置を例示したが、斯かる例示に限定するものではない。例えば、電子装置は、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末(PDA: Personal digital assistant)等のモバイル端末、PC(Personal computer)及びカメラやビデオカメラ等にしてもよい。
(8) 上記の実施の形態では、例えば、スリットを隣接部に配置した。この隣接部は、必ずしも素子対向部、素子接合部又は対向部に直接接触していなくてもよい。例えば、接地板を介して接しており、隣り合う程度に距離が近くてもよい、例えば、素子対向部、素子接合部又は対向部の幅程度離れていてもよい。
以上説明したように、本開示のアンテナ装置及び電子装置の実施の態様について説明したが、本開示は上記記載に限定されるものではない。「特許請求の範囲」に記載され、又は「発明を実施するための形態」に開示された内容の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論である。斯かる変形や変更が本開示の範囲に含まれることは言うまでもない。