JP2013194580A - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】燃料噴射弁の噴射停止期間において、吸気管内圧力PBが低いと、燃料噴射弁の弁体と噴孔との間の燃料溜りの燃料が気化してベーパが発生して、燃料溜り内の圧力が上昇し、燃料溜り内の圧力が上昇することで、燃料噴射弁の開弁遅れが小さくなる。係る燃料溜りでのベーパ発生による開弁遅れの変化と、燃料圧力と吸気管内圧力との差圧による開弁遅れとに対応する無効噴射パルス幅TSを、燃料圧力と吸気管内圧力とに基づき設定する(ステップS101〜ステップS103)。そして、燃料噴射量に対応する有効噴射パルス幅TIと、無効噴射パルス幅TSとから、最終的な噴射パルス幅TINJを演算する。
【選択図】図2
Description
しかし、従来の無効噴射パルス幅の演算においては、吸気管内の圧力と燃料圧力との差圧が同じであれば、同じ無効噴射パルス幅を設定しており、燃料溜りでのベーパ発生による圧力変化の影響が考慮されていなかった。
このため、燃料溜りでの燃料ベーパの発生によって、無効噴射パルス幅(噴射パルス幅)が適正値からずれて、燃料噴射弁における燃料の計量精度が低下し、排気性状や燃費性能が低下するという問題があった。
図1は、本発明に係る燃料噴射制御装置を含む、車両用エンジンのシステム図である。
図1に示すエンジン(内燃機関)1は、吸気管2の各気筒に接続されるブランチ部それぞれに燃料噴射弁3を備え、燃料噴射弁3は、各気筒の吸気バルブ4に向けて燃料を噴射する。
吸気管2の燃料噴射弁3が配設される部分よりも上流側には、スロットルモータ9で開閉される電子制御スロットル10が配され、この電子制御スロットル10の開度によってエンジン1の吸入空気量を調整する。
燃料供給装置13は、燃料タンク11、燃料ポンプ12、燃料ギャラリー配管14、燃料供給配管15、燃料フィルタ16などを含んで構成される。
燃料ポンプ12は、モータでポンプインペラを回転駆動する電動式流体用ポンプであり、燃料タンク11内に配置される。
尚、チェックバルブ(逆止弁)12a及びリリーフバルブ12bを、燃料ポンプ12から分離して、燃料供給配管15に設けることができる。
燃料供給配管15の途中の燃料タンク11内に位置する部分には、燃料をろ過する燃料フィルタ16を設けてある。
燃料ギャラリー配管14には、各気筒の燃料噴射弁3がそれぞれ接続される。
燃料噴射弁3による燃料噴射、点火プラグ6による点火、電子制御スロットル10の開度などを制御するエンジン制御ユニット(燃料噴射制御装置)として、コンピュータを備えるECM(エンジン・コントロール・モジュール)31を設けてある。
ECM31とFPCM30とは相互に通信可能に構成され、ECM31からFPCM30に向けては、燃料ポンプ12のPWM制御におけるデューティ比及び周波数を指示する信号などが送信され、FPCM30からECM31に向けては、診断情報などが送信される。
尚、ECM31が、FPCM30としての機能を兼ね備えることができる。
各種センサとして、燃料ギャラリー配管14内の燃圧FUPR(kPa)、即ち、燃料ポンプ12による燃料の供給圧を検出する燃圧センサ33、図外のアクセルペダルの踏み込み量ACC(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ34、エンジン1の吸入空気流量QAを検出するエアフローセンサ35、エンジン1の回転速度NEを検出する回転センサ36、エンジン1の冷却水温度TW(エンジン温度)を検出する水温センサ37、エンジン排気中の酸素濃度に応じてエンジン1の燃焼混合気の空燃比を検出する空燃比センサ38、電子制御スロットル10よりも下流側で吸気バルブ4よりも上流側の吸気管2内の圧力(吸気管内圧力)PB(kPa)を検出するブーストセンサ39などを設けてある。
また、ECM31は、エンジン負荷、エンジン回転速度、エンジン温度などのエンジン運転条件に基づき、燃圧FUPRの目標値TGFUPRを設定し、燃圧センサ33の出力に基づき検出した燃圧FUPRが、目標値TGFUPRに近づくように、燃料ポンプ12のPWM制御におけるデューティ比(操作量)を決定する。
ECM31は、燃料噴射弁3に出力する噴射パルス信号を以下のようにして算出する。
また、燃圧FUPRによる単位時間当たりの噴射量の変化に対応するための補正係数、冷機時に燃料噴射量を増量するための補正係数、空燃比センサ38で検出される空燃比を目標空燃比に近づけるための補正係数などを含む、基本噴射パルス幅TPを補正するための各種補正係数COを算出する。
そして、噴射パルス幅TINJの噴射パルス信号を、噴射タイミングの気筒の燃料噴射弁3に対して出力する。
図2は、ECM31による無効噴射パルス幅TSの設定処理の流れを示すフローチャートであり、このフローチャートに示すルーチンは、一定時間毎に実行されるようになっている。
そして、ステップS103では、予め燃圧FUPR及び吸気管内圧力PBをパラメータとして、基本無効噴射パルス幅BTS(ms)を設定したマップを参照して、そのときの吸気管内圧力PB及び燃圧FUPRに対応する基本無効噴射パルス幅BTSを検索する。
燃料噴射弁3に噴射パルス信号を与えても、燃料噴射弁3は遅れて開弁し、係る開弁遅れが、正味の燃料噴射量を減らすことになる一方、燃料噴射弁3に対する噴射パルス信号の出力を停止しても、燃料噴射弁3は遅れて閉弁し、係る閉弁遅れが、正味の燃料噴射量を増やすことになる。
上記のように、基本無効噴射パルス幅BTS(ms)は、燃料噴射弁3の応答遅れ(開弁遅れ)による燃料噴射量の不足分を補うものであり、燃料噴射弁3の応答遅れ(開弁遅れ)は、燃料噴射弁3の弁体の前後差圧、即ち、燃圧FUPRと吸気管内圧力PBとの差圧によって変化する。
図3は、燃料噴射弁3の噴孔部分の拡大図であり、球状の弁体3aが、漏斗状に形成した弁座3bに着座して閉弁状態となり、図示省略した電磁コイルの磁気吸引力によって弁体3aがリフトし、弁座3bから離れると開弁状態となり、弁体3aと弁座3bとの隙間を燃料が通って、弁体3aと噴孔3cとの間の燃料溜り3dに流入し、噴孔3cから燃料が噴射される。
燃料溜り3dの圧力上昇は、弁体3aの開弁方向に作用し、相対的に弁体3aを閉弁方向に押し付ける力が弱まるから、燃料噴射弁3の開弁遅れが小さくなり、ベーパの発生がない場合に比べて基本無効噴射パルス幅BTSの値をより小さい値にする必要がある。
図4に示した例では、燃料温度(℃)が20℃である場合、吸気管内圧力PBが−60kPaよりも低くなるとベーパが発生し、−60kPaよりも高いと(大気圧に近いと)と燃料が液体状態を保持する。
また、燃料溜り3dでベーパが発生しても、燃圧FUPRが高いと、燃料溜り3dの圧力上昇が開弁遅れに及ぼす影響が小さく、燃圧FUPRが低くなるほど、燃料溜り3dの圧力上昇が開弁遅れを縮小する方向に大きく作用する。
即ち、ステップS103で参照するマップは、燃圧FUPRと吸気管内圧力PBとの差圧が同じでも、燃圧FUPRが低く、かつ、吸気管内圧力PBが低いほど、基本無効噴射パルス幅BTSを低く設定する特性とすることで、差圧による開弁遅れと、燃料溜り3dでのベーパ発生との双方を考慮した特性としてある。
また、マップ検索に代えて、燃圧FUPR、吸気管内圧力PBを変数とする演算式に基づき基本無効噴射パルス幅BTSを求めることができる。
そして、ステップS105では、バッテリ電圧VBに応じて補正値HOSVBTを設定する。
これは、バッテリ電圧VBが低いと、燃料噴射弁3の開弁遅れが大きくなり、燃料噴射量が目減りするためであり、バッテリ電圧VBが低くなるほど開弁遅れがより大きくなるので、バッテリ電圧VBが低くなるほど基本無効噴射パルス幅BTSをより長い時間に補正して、バッテリ電圧VBの低下時に燃料噴射量が目減りすることを抑制する。
ECM31は、ステップS106で算出した無効噴射パルス幅TSを、有効噴射パルス幅TIに加算することで、噴射パルス幅TINJ(TINJ=TI+TS)を設定する。
従って、燃料溜り3dで燃料ベーパが発生しても、燃料噴射弁3の開弁遅れに対応した無効噴射パルス幅TSを設定して、燃料噴射弁3による燃料の計量精度が低下することを抑制でき、エンジン1における空燃比の制御精度を維持できる。
換言すれば、噴射停止期間は燃料ベーパの発生期間であり、吸気管内圧力PBの条件が同じでも、ベーパの発生期間が長くなるほど、燃料噴射弁3の開弁時におけるベーパ量が増えて燃料溜り3dの圧力がより高くなり、燃料噴射弁3の開弁遅れがより小さくなる。
図6のフローチャートは、噴射停止時間(ms)を計測するためのルーチンであり、このルーチンは、一定時間毎に実行される。尚、図6のフローチャートに示すルーチンでは、特定の1気筒の燃料噴射弁3について噴射停止時間(ms)を計測する。
ステップS202では、噴射停止フラグfFIOFFが前回までの0から、今回1に切り替わったか否かを判断することで、燃料噴射弁3の噴射終了タイミングであるか否かを判断する。
一方、噴射停止フラグfFIOFFが0から1への切り替わりタイミングでない場合には、ステップS203を迂回してステップS204へ進む。
そして、噴射停止フラグfFIOFFが1であって、燃料噴射弁3による燃料噴射が停止している状態である場合には、ステップS205へ進み、噴射停止時間FIOFTMを本ルーチンの実行周期毎に1だけカウントアップする。
これにより、噴射停止時間FIOFTMは、図8に示すように、燃料噴射弁3の噴射終了タイミング(時刻t1)で0にリセットされた後、燃料噴射弁3による燃料噴射が停止している間(時刻t1〜t2の間)でカウントアップされ、時刻t2で燃料噴射弁3による燃料噴射が開始されると、その後は噴射開始時点(時刻t2)での値を保持し、次の噴射終了タイミング(時刻t3)で0にリセットされることを繰り返し、噴射停止時間FIOFTMは、直近に燃料噴射弁3による噴射が停止されていた時間を示す。
図7のフローチャートにおいて、ステップS211〜ステップS212では、吸気管内圧力PB及び燃圧FUPRの検出を行う。
尚、ステップS213で読み込む噴射停止時間FIOFTMは、カウントアップ途中の値ではなく、直近の噴射状態でホールドされていた値、即ち、直近の噴射停止期間の長さを示す値とする。
具体的には、吸気管内圧力PB及び燃圧FUPRをパラメータとして基本無効噴射パルス幅BTSを記憶するマップを参照し、基本無効噴射パルス幅BTSを検索するが、このマップは、前述のステップS103で参照するマップと同様に、燃圧FUPRと吸気管内圧力PBとの差圧による開弁遅れを基本としつつ、燃料溜りの圧力変化による開弁遅れの変化も考慮した特性に設定してあり、更に、係るマップを、異なる噴射停止時間FIOFTM毎に複数備えている。
そこで、異なる噴射停止時間FIOFTM毎に複数用意された基本無効噴射パルス幅BTSのマップにおいて、同じ燃圧FUPRと吸気管内圧力PBとの組み合わせに対して記憶されている基本無効噴射パルス幅BTSは、より長い噴射停止時間FIOFTMに対応するマップほど、より短い時間に設定されるようにしてある。
尚、吸気管内圧力PBと燃圧FUPRとの差圧に基づき設定した基本無効噴射パルス幅BTSを、吸気管内圧力PB、燃圧FUPR及び噴射停止時間FIOFTMに基づき検出される、燃料溜り3dでのベーパ発生による開弁遅れの変化分に基づいて修正することができ、また、マップを用いず、吸気管内圧力PB、燃圧FUPR及び噴射停止時間FIOFTMを変数とする演算式に基づいて基本無効噴射パルス幅BTSを算出することができる。
そして、ステップS217では、基本無効噴射パルス幅BTSと補正値HOSVBTとを乗算して、最終的な無効噴射パルス幅TS(TS=BTS×HOSVBT)を設定する。
そこで、吸気管内圧力PB及び燃圧FUPRに対応して基本無効噴射パルス幅BTSを記憶したマップに代えて、噴射停止期間内における吸気管内圧力PBの瞬時値の積算値及び燃圧FUPRに対応して基本無効噴射パルス幅BTSを記憶したマップを用い、前記積算値及び燃圧FUPRに基づいてマップを参照するようにすることで、吸気脈動によるベーパ発生量の変動を考慮して基本無効噴射パルス幅BTSを設定することができる。
図9のフローチャートは、吸気管内圧力PBの積算値PBIを算出するルーチンを示し、このルーチンは一定時間毎に実行される。
そして、ステップS303では、噴射停止フラグfFIOFFが前回までの0から、今回1に切り替わったか否かを判断することで、燃料噴射弁3の噴射終了タイミングであるか否かを判断する。
ステップS304では、吸気管内圧力PBの積算値PBIを0にクリアする。
一方、ステップS303で燃料噴射弁3の噴射終了タイミングでないと判断した場合には、ステップS304を迂回してステップS305へ進む。
そして、噴射停止フラグfFIOFFが1であって、燃料噴射弁3の噴射停止期間である場合には、ステップS306へ進み、噴射停止フラグfFIOFFが0であって、燃料噴射弁3が噴射中である場合には、ステップS306を迂回して本ルーチンを終了させる。
ここで、積算値PBIは、燃料噴射弁3の噴射終了タイミングで0にクリアされ、その後の噴射停止期間で更新され、燃料噴射弁3の噴射中に更新が停止されるから、噴射中における積算値PBIは、直前の噴射停止期間(噴射終了タイミングから噴射開始タイミングまでの間)における吸気管内圧力PBの瞬時値の積算結果を示すことになる。
尚、吸気管内圧力PBは、0を大気圧として、負圧の大きさをマイナスで示すから、積算値PBIの絶対値が大きいということは、噴射停止期間で平均的に負圧の大きな状態であったことを表す。
ステップS311では、図9のフローチャートに示すルーチンに従って最近に算出された、噴射停止期間における吸気管内圧力PBの積算値PBIを読み込む。
ステップS312では、燃圧FUPRを検出する。
ステップS313で参照するマップは、燃圧FUPRと積算値PBIとから判断される差圧と、積算値PBIから判断されるベーパの発生量とによって変化する開弁遅れに対応する基本無効噴射パルス幅BTSを記憶するマップである。
ステップS314では、そのときのバッテリ電圧VBを検出し、ステップS315では、ステップS105と同様に、ステップS314で検出したバッテリ電圧VBに基づいて補正値HOSVBTを設定する。
ECM31は、ステップS316で算出した無効噴射パルス幅TSを、有効噴射パルス幅TIに加算することで、噴射パルス幅TINJ(TINJ=TI+TS)を設定する。
換言すれば、吸気管内圧力PBの積算値PBIは、図11において斜線で塗りつぶした領域の面積に相当し、噴射停止時間が長くなれば大きくなり、また、吸気管内圧力PBが平均的により低くなることによっても大きくなるから、この積算値PBIに基づいて無効噴射パルス幅TSを設定すれば、時間経過によるベーパの増分と、吸気管内圧力PBによるベーパ発生量との双方を考慮して、無効噴射パルス幅TSを設定することになる。
従って、吸気管内圧力PBと燃圧FUPRとをパラメータとして基本無効噴射パルス幅BTSを記憶するマップは、適合させた燃料温度と同じ温度条件である場合には、高い精度で基本無効噴射パルス幅BTSを設定できるが、燃料の温度が変化すると、基本無効噴射パルス幅BTSが最適値からずれることになる。
図12のフローチャートは、燃料温度を考慮して無効噴射パルス幅TSを設定するルーチンを示し、このルーチンは一定時間毎に実行される。
ステップS403における燃料温度FPTEMPの検出は、燃料ギャラリー配管14などに設けた温度センサの出力に基づいて行える他、エンジン1の負荷を示す基本噴射パルス幅TPやエンジン回転速度などのエンジン運転条件に基づいて燃料温度FPTEMPを推定することができる。
具体的には、吸気管内圧力PB及び燃圧FUPRをパラメータとして基本無効噴射パルス幅BTSを記憶するマップを参照し、基本無効噴射パルス幅BTSを検索するが、このマップは、燃圧FUPRと吸気管内圧力PBとの差圧による開弁遅れを基本としつつ、燃料溜りの圧力変化による開弁遅れの変化も考慮した特性に設定してあり、更に、係るマップを、異なる燃料温度FPTEMP毎に複数備えている。
従って、異なる燃料温度FPTEMP毎のマップにおいて、同じ燃圧FUPRと吸気管内圧力PBとの組み合わせに対して記憶されている基本無効噴射パルス幅BTSは、より温度が高い燃料温度FPTEMPに対応するマップほど、より短い時間に設定されるようにしてある。
そして、ステップS407では、ステップS404で求めた基本無効噴射パルス幅BTSに、ステップS406で設定した補正値HOSVBTを乗算して、最終的な無効噴射パルス幅TS(TS=BTS×HOSVBT)を設定する。
ここで、無効噴射パルス幅TSは、吸気管内圧力PB及び燃料温度FPTEMPによって変化するベーパ発生量、換言すれば、燃料溜り3dでの圧力上昇に応じて変更されると共に、そのときの燃圧FUPRによって変化するベーパ発生の影響度合いに応じて変更されるので、吸気管内圧力PBの変化及び燃料温度FPTEMPの変化、更に、燃圧FUPRの違いに対して適切な無効噴射パルス幅TSを設定できる。
ここで、燃焼ガスの吸気管2内への吹き返し量は、吸気バルブ4の開弁時期IVOが上死点TDCから進角するほど、換言すれば、ピストンの上昇中における吸気バルブ4の開弁期間が長いほど多くなる。
図13のフローチャートは、燃焼ガスの吸気管2内への吹き返しを考慮して無効噴射パルス幅TSを設定するルーチンを示し、このルーチンは一定時間毎に実行される。
次のステップS503では、吸気バルブ4の開弁時期IVO(上死点TDCからの進角角度)、及び、エンジン回転速度NEから、吹き返し時間FGRFTMを算出する。
即ち、開弁時期IVOから求めた開弁時期IVOから上死点TDCまでのクランク角度(上死点TDC前に吸気バルブ4が開弁している角度)を、そのときのエンジン回転速度NE(rpm)に基づき時間(ms)に換算し、この開弁時期IVOから上死点TDCまでの時間を、吹き返し時間FGRFTMにセットする。
具体的には、吸気管内圧力PB及び燃圧FUPRをパラメータとして基本無効噴射パルス幅BTSを記憶するマップを参照し、基本無効噴射パルス幅BTSを検索するが、このマップは、燃圧FUPRと吸気管内圧力PBとの差圧による開弁遅れを基本としつつ、燃料溜りの圧力変化による開弁遅れの変化も考慮した特性に設定してあり、更に、係るマップを、異なる吹き返し時間FGRFTM毎に複数備えている。
従って、異なる吹き返し時間FGRFTM毎のマップにおいて、同じ燃圧FUPRと吸気管内圧力PBとの組み合わせに対して記憶されている基本無効噴射パルス幅BTSは、より長い吹き返し時間FGRFTMに対応するマップほど、より短い時間に設定されるようにしてある。
また、マップを用いず、吸気管内圧力PB、燃圧FUPR及び吹き返し時間FGRFTMを変数とする演算式に従って基本無効噴射パルス幅BTSを算出することができる。
そして、ステップS507では、ステップS504で求めた基本無効噴射パルス幅BTSに、ステップS506で設定した補正値HOSVBTを乗算して、最終的な無効噴射パルス幅TS(TS=BTS×HOSVBT)を設定する。
ここで、無効噴射パルス幅TSは、吸気管内圧力PB及び吹き返し時間FGRFTMによって変化するベーパ発生量、換言すれば、燃料溜り3dでの圧力上昇に応じて変更されると共に、そのときの燃圧FUPRによって変化するベーパ発生の影響度合いに応じて変更されるので、吸気管内圧力PBの変化及び吹き返し時間FGRFTMの変化、更に、燃圧FUPRの違いに対して適切な無効噴射パルス幅TSを設定できる。
例えば、吸気管内圧力PB及び燃圧FUPRをパラメータとするマップから検索した基本無効噴射パルス幅BTSを、噴射停止時間、燃料温度、吹き返し時間のうちの複数の組み合わせに応じて補正することができる。
また、吸気バルブ4の最大リフト量を可変する可変リフト機構を備えるエンジンでは、最大リフト量の変化によっても、燃料ガスの吹き返し量が変化し、燃料溜り3dにおける燃料温度が変化する場合があるので、最大リフト量に応じて無効噴射パルス幅TSを補正することで、実際の開弁遅れに対応した無効噴射パルス幅TSを設定できる。
また、ベーパ発生を考慮して無効噴射パルス幅TSを設定した結果としての空燃比が、目標空燃比からずれている場合に、無効噴射パルス幅TSを修正することができる。
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
前記燃料噴射弁の弁体と噴孔との間の燃料溜りでの燃料の気化状態を検出し、前記気化状態に応じて前記噴射パルス信号のパルス幅を補正する、内燃機関の燃料噴射制御装置。
上記発明によると、燃料溜りでの燃料の気化状態によって、燃料溜りの圧力が変化し、燃料噴射弁の開弁遅れが変化することに対応して、噴射パルス信号のパルス幅を変更でき、前記気化状態が変動しても実際の開弁遅れに対応するパルス幅に設定できる。
上記発明によると、燃料溜りでの燃料の気化状態が、吸気管内圧力、燃料温度、燃料噴射弁が噴射を停止している時間、吸気管内への燃焼ガスの吹き返し量に応じて変化する場合に、これらの状態量の変化による気化状態の変化に応じて、噴射パルス信号のパルス幅を補正することができる。
上記発明によると、吸気管内圧力の脈動によって、燃料溜りでの燃料ベーパの発生量が変動する場合に、ベーパの積算量に応じて噴射パルス信号のパルス幅を補正することができる。
上記発明によると、燃料溜りでの燃料ベーパの発生量が多いほど、燃料溜りの圧力が高くなり、この圧力が弁体の開弁方向に作用することで、燃料噴射弁の開弁遅れが減少するので、この開弁遅れの減少分だけパルス幅を減少補正する。
前記燃料溜りでの燃料ベーパの発生量が多いほど、前記無効噴射パルス幅をより短く変更する、請求項(ニ)記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
上記発明によると、燃料溜りで燃料ベーパが発生することで、開弁遅れが減少するので、その分だけ無効噴射パルス幅を短く変更する。
前記吸気管内の圧力が低いほど、前記噴射パルス信号のパルス幅を、無効噴射時間の減少分だけ短く補正する、内燃機関の燃料噴射制御装置。
上記発明によると、吸気管内の圧力が低下すると、燃料噴射弁の弁体と噴孔との間の燃料溜りで燃料ベーパが発生し、燃料ベーパが発生することで燃料溜りの圧力が高まり、この圧力が、弁体を開弁させる方向に作用して開弁遅れを減少させるので、開弁遅れの減少分だけパルス幅を短くする。
前記吸気管内の圧力が低いほど、かつ、燃料の温度が高いほど、前記噴射パルス信号のパルス幅を、無効噴射時間の減少分だけ短く補正する、内燃機関の燃料噴射制御装置。
上記発明によると、吸気管内の圧力が低く、燃料温度が高いほど、燃料噴射弁の弁体と噴孔との間の燃料溜りで燃料ベーパが発生し易くなり、燃料ベーパが発生することで燃料溜りの圧力が高まり、この圧力が、弁体を開弁させる方向に作用して開弁遅れを減少させるので、開弁遅れの減少分だけパルス幅を短くする。
前記吸気管内の圧力が低いほど、かつ、前記燃料噴射弁の噴射停止時間が長いほど、前記噴射パルス信号のパルス幅を、無効噴射時間の減少分だけ短く補正する、内燃機関の燃料噴射制御装置。
上記発明によると、吸気管内の圧力が低いほど燃料噴射弁の弁体と噴孔との間の燃料溜りで燃料ベーパが発生し易くなり、かつ、噴射停止時間が長いほど、燃料溜りの燃料ベーパ量が増えて燃料溜りの圧力が高まり、この圧力が、弁体を開弁させる方向に作用して開弁遅れを減少させるので、開弁遅れの減少分だけパルス幅を短くする。
Claims (3)
- 内燃機関の吸気管内に燃料を噴射する燃料噴射弁に対して噴射パルス信号を出力する内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記燃料噴射弁の弁体と噴孔との間の燃料溜りでの燃料の気化状態と、機関運転状態に応じた燃料噴射量とに基づき、前記噴射パルス信号のパルス幅を設定する、内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記燃料溜りでの燃料の気化によって、前記燃料噴射弁の開弁遅れが減少することを少なくとも含む噴射特性が、前記燃料噴射弁に対する燃料の供給圧と、前記吸気管内の圧力とをパラメータとして設定され、前記噴射特性を参照した結果と、前記燃料噴射量とに基づき、前記噴射パルス信号のパルス幅を設定する、請求項1記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記噴射特性及び前記燃料噴射弁の噴射停止時間に基づき無効噴射パルス幅を設定し、前記燃料噴射量に応じた有効噴射パルス幅と前記無効噴射パルス幅とから、前記噴射パルス信号のパルス幅を設定する、請求項2記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
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