JP2013194345A - 炭素繊維束の表面処理方法およびそれを用いて得られる炭素繊維束 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面が均一に酸化処理され、マトリクス樹脂への分散性に優れ、高いコンポジット物性を示す炭素繊維束の表面処理方法およびそれを用いて得られる炭素繊維束を提供することである。
【解決手段】上記課題は、炭素繊維束が、溝の底部が凸状になっている溝付ローラーを通過することを特徴とする炭素繊維束の表面処理方法により解決される。前記溝付ローラーは、溝の幅が溝付ローラーに導入される繊維束の幅の0.5〜2.0倍の幅であり、溝底部の凸部が半径Rの円で構成され、Rが溝の幅の0.7〜5.0倍である溝付ローラーであることが好ましい。また、前記溝付ローラーが、ニップローラーを備えた溝付ローラーであること、繊維束に酸化媒体を付与する機構を備えた溝付ローラーであることも好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、炭素繊維束を均一に表面処理するための炭素繊維束の表面処理方法およびそれを用いて得られる炭素繊維束を提供する。
熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を炭素繊維で補強した炭素繊維複合材料は、引張強度・引張弾性率が高く、耐熱性、疲労特性に優れるなどの優れた特長を有しており、スポーツ・レジャー、航空・宇宙等の分野で幅広く用いられている。
炭素繊維複合材料の強度・弾性率等の機械的特性は、炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性や接着性により大きな影響を受ける。そのため、マトリックス樹脂との親和性を高めることを目的として炭素繊維の表面に含酸素官能基を導入する酸化処理が一般に行われる。
炭素繊維は、その製造工程において1,000〜100,000本程度の束形状に製造される。通常の条件で表面処理した炭素繊維束は、束の外側に位置する繊維の酸化状態に比較して内側に位置する繊維の酸化状態が不十分となり、表面の酸化状態にばらつきがある。表面の酸化処理が均一でない炭素繊維束をマトリックス樹脂に配合した場合には、炭素繊維の表面の官能基が少ない部分とマトリックス樹脂との接着が不十分となり、高いコンポジット物性を示す複合材料が得られない。また、表面の酸化処理が均一でない炭素繊維束はマトリクス樹脂への分散性が低く、複合材料中で繊維同士が接触して存在しやすい。複合材料中での繊維同士の接触が多いと繊維とマトリクス樹脂の接着がさらに不十分となり、高いコンポジット物性を示す複合材料が得られない。
表面処理の不均一性を解決するために、さまざまな検討が行われてきた。例えば、特許文献1には、電解酸化処理方法によって電解酸化処理方法によって炭素繊維束を均一に表面処理する方法が記載されている。この処理方法は、2つの陽極槽の間に陰極槽を配設し、上流側の陽極槽で炭素繊維束に電解液を含浸させた後、陰極槽と下流側の陽極槽の液面に接触させて炭素繊維束を走行させることにより炭素繊維束の表面処理を行うものである。しかし、単に電解浴槽に繊維束を浸漬させるこの方法では、繊維束の内部まで電解液をいきわたらせ、表面処理の不均一性を解決するには不十分であった。
特開2002−38368号公報
本発明の目的は、表面が均一に酸化処理され、マトリクス樹脂への分散性に優れ、高いコンポジット物性を示す炭素繊維束の表面処理方法およびそれを用いて得られる炭素繊維束を提供することにある。
本発明の炭素繊維束の表面処理方法は、炭素繊維束が、溝の底部が凸状になっている溝付ローラーを通過することを特徴とする炭素繊維束の表面処理方法である。本発明において、前記溝付ローラーは、溝の幅が溝付ローラーに導入される繊維束の幅の0.5〜2.0倍の幅であり、溝底部の凸部が半径Rの円で構成され、Rが溝の幅の0.7〜5.0倍である溝付ローラーであることが好ましい。本発明は、前記溝付ローラーが、ニップローラーを備えた溝付ローラー、または、繊維束に電解液を付与する機構を備えた溝付ローラーであることも好ましい。
また、本発明は、前記の炭素繊維束の表面処理方法を用いて得られる炭素繊維束も包含する。
本発明の炭素繊維束の表面処理方法を用いると、炭素繊維束が均一に表面処理される。そのため、本発明の炭素繊維束の表面処理方法を用いて得られる炭素繊維束は、内部に存在する繊維と外周部に存在する繊維間での処理斑が極めて少なく、マトリクス樹脂への分散性に優れるため、機械的強度の高い炭素繊維複合材料を得ることができる。
本発明で使用する溝付ローラーの溝の形態の一例を示す図である。
本発明は、連続した炭素繊維単繊維の集合体である炭素繊維束を、表面処理する方法に関するものである。
本発明の炭素繊維束の表面処理方法は、炭素繊維束が、溝の底部が凸状になっている溝付ローラーを通過することを特徴としている。本発明で用いる表面処理の形式としては、特に制限がなく、液相における薬液酸化・電解酸化、気相酸化などの方法を用いることができる。これら表面処理方法の中でも、生産性が高く、処理の均一性が高い、液相における電解酸化処理を用いることが好ましい。
本発明で使用する溝付ローラーは、ローラーの外周面に周方向に独立した複数の溝を有しており、その溝の底部は凸形状をしている。本発明で用いる溝付ローラーの溝の数に制限はなく、表面処理を受ける炭素繊維束の本数に応じて適宜調整すればよい。
本発明で使用する溝付ローラーは、溝の底部の内側が、両端部分より盛り上がった形状(凸状)をしていればよく、凸形状としては、例えば、四角形、台形、三角形、五角形などの多角形状や半円形などの形状を用いることができる。また、1つの溝の底部に複数の凸形状を有していてもよい。なかでも、溝の底部に半円形の凸形状を1つ有する溝付ローラーを用いると、炭素繊維束をより均一に処理できるため好ましい。
溝の底部に半円形の凸形状を1つ有する溝付ローラーを用いた一例について、図面に基づいてより詳細に説明する。本発明の溝付ローラーの溝の形態の一例は、図1に示したようなものである。溝の溝底部の幅をa、溝と溝のピッチをb、深さをHとし、溝底部の凸部頂部の高さをhとして示している。
本発明の溝付ローラーの溝は、被処理物である炭素繊維束を構成する炭素繊維の繊維径やフィラメント数を勘案し、溝内で1つの繊維束が斑なく開繊するよう適宜調節すればよいが、溝底部の凸部頂部の高さhは、0.5〜2.5mm、溝の深さHは2.0〜5.0mm、溝の幅aは2〜20mmであることが好ましい。
溝の幅aは、溝ローラーに導入される繊維束の幅の0.5〜2.0倍の幅であることが繊維束の厚さを均等にするために好ましく、0.9〜1.2倍の幅であることがより好ましい。溝の幅が繊維束の幅の2.0倍を超えると繊維束の両端部に繊維が集中しやすくなり、繊維束の厚みが均一になりにくい傾向がある。一方、溝の幅が繊維束の幅の0.5倍をより小さいと、繊維を端部に分散させる力が働きにくくなり、繊維束の厚みが均一になりにくい傾向がある。
溝底部の凸部は半径Rの円で構成され、Rが溝の幅aの0.7〜5.0倍であることが好ましく、0.7〜2.0倍であることがより好ましい。Rが溝の幅aの0.7倍より小さいと、凸部の傾斜が強く繊維束の両端部に繊維が集中しやすくなり、繊維束の厚みが均一になりにくい傾向がある。一方、Rが溝の幅aの5倍より大きいと、繊維を端部に分散させる力が働きにくくなり、繊維束の厚みが均一になりにくい傾向がある。
溝付ローラーの溝と溝のピッチbは3〜25mmであるのが好ましい。本発明の溝付ローラーに設置される溝数は、ローラーの幅1m当たり50〜400個設置されるのが好ましい。
溝付ローラーの、溝や壁部のコーナー等は、角部が丸面取り(曲面加工)されているものであってよい。また、溝の壁部の垂直からの傾きをθとするとき、θ=15〜30°であるものが好ましい。
本発明で用いる溝付ローラーは、公知の技術で製作加工することができる。ローラーの材質としては、表面処理に使われる電解溶液などの酸化剤、繊維束の張力及びローラー自身の自重に耐える材料である限り特に限定されないが、加工性・耐久性を重視して炭素鋼が好ましい。また、繊維束に与えるダメージを出来る限り軽減するために、平均表面粗さをRaとすると、Ra=5.0nm以下でローラー表面をバフ研磨することが好ましい。更には、摩擦による擦れによって繊維束に与えるダメージを出来る限り軽減するために、ローラー表面をメッキコーティングすることが好ましい。
本発明の炭素繊維束の表面処理方法において、処理される炭素繊維束は、溝の底部が凸状の溝付ローラーを通過する。炭素繊維束は溝付ローラーの1つの溝に対して1つの繊維束が配置されることが好ましい。炭素繊維束が溝付ローラーを通過する際には、炭素繊維束に好ましくは1〜30mN/tex、より好ましくは5〜20mN/texの張力を付与する。繊維束に付与される張力は前後のローラーの回転速度差により調節できる。
通常、繊維束を連続的に製造する場合、繊維束の緩みに因るトラブルを防止するため、繊維束に一定の張力が付与されている。張力のかかった繊維束は集束する傾向があるため、繊維束の中央部分に繊維が集まりやすく、繊維束の中央部分は、繊維束の厚みが増す。そのため、表面処理を行う際に繊維束の中央部分には、電解液や薬液、酸化性気体など酸化処理のための媒体が浸透しにくく、酸化処理が行われにくくなっていた。一方で、繊維束の外側では、酸化媒体が浸透しやすく、酸化処理が起こりやすい。このため、繊維束の内部と外部で表面処理の斑が起こっていた。たとえ、開繊処理などにより、繊維束を薄く広げる処理を行ったとしても、もともと存在する繊維束の中央部分と端部での相対的な厚みの差は、解消されない。
しかし、本発明では、溝付ローラーの溝の底部が凸状であるため、張力によってローラーに押し付けられるようにして走行している炭素繊維束は、溝付ローラーの付近で、繊維束の中央部分に集中していた繊維が両端部に分散する。その結果、繊維束の幅は変わらないものの、繊維束の厚みは均一になる。そのため、本発明の表面処理方法を用いると、酸化媒体が繊維束中央部分においても端部と同程度に内部まで浸透するため、結果として繊維束の内部と外部での表面処理の斑が低減される。溝付ローラーが繊維束の厚みを均一にする効果は、繊維束が連続しているため溝付ローラーを通過する前の繊維束にも十分に及ぶが、溝付ローラーを通過した後の繊維束に対する方がより顕著に現れる。
本発明で用いる溝付ローラーは表面処理装置の処理槽の前後または処理槽中に1つ以上設置されていればよいが、処理槽の前または処理槽中に1つ以上設置されていることが好ましい。また、処理槽の前または処理槽中に加えて、処理槽の後にも1つ以上設置すると、均等な繊維束の厚みが維持されやすくなるためより好ましい。
本発明で用いる溝付ローラーは、ニップローラーを備えていても良い。溝付ローラーがニップローラーを備えていると、ニップローラーにより繊維束がさらに溝付ローラーに押さえつけられるため、より繊維束の厚みが均一になりやすく好ましい。
また、本発明で用いる溝付ローラーは、シャワーを設置するもしくは浴槽の中に設置する等の手法によって、繊維束に電解液や薬液など液体の酸化媒体を付与する機構を備えていても良い。溝付ローラー部分において酸化媒体が付与されると、中央部分の繊維がより分散された状態で繊維束が酸化媒体に触れるため、酸化媒体が繊維束の内部にまで浸透しやすい。予め酸化媒体が繊維束の内部まで浸透された状態で、繊維束が表面処理装置に導入されると繊維束の内部と外部での表面処理の斑がより低減されるため好ましい。
本発明で表面処理する炭素繊維束としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維束の他、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系など、何れの炭素繊維束も使用することができる。
炭素繊維は、通常、直径4〜8μmの炭素繊維の単繊維が1000〜100000本程度集合した束形状に製造される。このような炭素繊維の単繊維の集合体を本発明では炭素繊維束と呼称する。本発明の処理装置では、上記繊維径、フィラメント数に限定されず、いかなる繊維径、フィラメント数の炭素繊維束でも処理することができる。
本発明で用いる表面処理装置としては、特に制限がなく、液相における薬液酸化・電解酸化、気相酸化などの方法で炭素繊維束を処理する装置を用いることができる。これら表面処理装置の中でも、生産性が高く、処理の均一性が高い、液相における電解酸化処理装置を用いることが好ましい。
電解表面処理装置としては、例えば電極に直接炭素繊維束を触れさせ通電させる接触式電解処理装置や、電解液を介して炭素繊維束に通電させる非接触式の電解処理装置をあげることができる。接触式の表面処理装置を使用する場合、溝付ローラーを電極ローラーとして使用することもできる。
電解酸化処理装置で用いる電解液としては、硫酸、硝酸、塩酸等の無機酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機水酸化物、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩類などの電解質水溶液を挙げることができる。電解液の温度は10〜80℃が好ましく、20〜50℃とすることがさらに好ましい。
電解酸化処理において炭素繊維束に通電する電気量は、電解液に使用する電解質の種類や炭素繊維の弾性率等の条件に応じて表面酸素濃度比O/C、Ipa値から適宜決定すればよい。例えば、電解液に硫酸アンモニウム水溶液を用いて弾性率235GPaの電解酸化処理を行う場合には、炭素繊維束に通電する電気量を3〜8.5C/gとすることが好ましく、4〜7C/gとすることがより好ましい。
炭素繊維束の表面処理を行う際の、炭素繊維束の酸化度合いの指標としては、X線光電子分光法(ESCA)を用いて測定できる炭素繊維束の表面酸素濃度比(O/C)を用いるのが良い。O/Cは、炭素繊維表面に存在する酸素含有官能基の量を表している。
表面処理後の炭素繊維束を熱硬化性樹脂に配合して複合材料とする場合には、O/Cが、0.05〜0.25となるように表面処理することが好ましく、0.1〜0.2となるように表面処理することがより好ましい。O/Cが0.05より低いと表面処理効果が十分ではなく、マトリックス樹脂との接着性が低下してしまい、複合材料は安定した機械的特性が得られない。一方、O/Cが0.25より高いと炭素繊維の表面が過度に酸化され、繊維自体が脆弱になるため安定した機械的特性が得られない。
本発明の炭素繊維束の表面処理方法を用いると、表面処理後の炭素繊維束のO/Cのバラツキを、10%以下にすることができる。O/Cのバラツキは少ないほどマトリックス樹脂に配合したときに機械的強度が高い複合材料とすることができる。
また、表面処理による、炭素繊維束の酸化度合いの指標として、サイクリックボルタンメトリー法により測定される炭素繊維表面特性Ipaの値を用いることもできる。Ipaは炭素繊維表面の官能基量と表面積に比例する値であり、炭素繊維表面の活性化度を表している。
表面処理後の炭素繊維束の炭素繊維表面特性Ipaの値は0.16〜0.25であることが好ましく、0.16〜0.22であることがより好ましい。Ipaが0.16より低いと表面処理効果が十分ではなく、マトリックス樹脂との接着性が低下してしまい、複合材料は安定した機械的特性が得られない。一方、Ipaが0.25より高いと炭素繊維の表面が過度に酸化され、繊維自体が脆弱になるため安定した機械的特性が得られない。
本発明の炭素繊維束の表面処理方法を用いることで、炭素繊維束のIpaのバラツキを6%以下にすることができる。Ipaのバラツキを6%以下とすることで、炭素繊維とマトリックス樹脂との十分な接着性が得られ、優れた機械的特性を有する複合材料が得られる。Ipaのバラツキは少ないほどマトリックス樹脂に配合したときに機械的強度が高い複合材料とすることができる。
そして、本発明のもう一つの態様である炭素繊維束は、上述の炭素繊維束の表面処理方法を用いて得られる炭素繊維束である。本発明の炭素繊維束は、内部に存在する繊維と外周部に存在する繊維間での処理斑が極めて少なく、マトリクス樹脂への分散性に優れ、機械的強度の高い炭素繊維複合材料を得ることができる。
本発明の炭素繊維束を用い、マトリックス樹脂と組み合わせ、例えば、オートクレーブ成形、プレス成形、樹脂トランスファー成形、フィラメントワインディング成形など、公知の手段・方法により複合材料を得ることが出来る。
炭素繊維束は、通常、シート状の強化繊維材料として用いられる。シート状の材料とは、繊維材料を一方向にシート状に引き揃えたもの、繊維材料を織編物や不織布等の布帛に成形したもの、多軸織物等が挙げられる。
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が用いられる。熱硬化性マトリックス樹脂の具体例として、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂の予備重合樹脂、ビスマレイミド樹脂、アセチレン末端を有するポリイミド樹脂及びポリイソイミド樹脂、ナジック酸末端を有するポリイミド樹脂等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上の混合物として用いることもできる。中でも、耐熱性、弾性率、耐薬品性に優れたエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂が、特に好ましい。これらの熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤以外に、通常用いられる着色剤や各種添加剤等が含まれていてもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
複合材料中に占める樹脂組成物の含有率は、10〜90質量%、好ましくは20〜60質量%、更に好ましくは25〜45質量%である。
本発明の炭素繊維束は、マトリクス樹脂に対する分散性に優れるため、上記のようにして得られた複合材料では、複合材料中での炭素繊維同士の接触が少ないため、機械物性に優れ、そのばらつきも小さい。そのため、スポーツ用途、レジャー用途、一般産業用途、航空・宇宙用途、自動車用途などに広く利用できる。
複合材料中での炭素繊維の分散性は、複合材料中での炭素繊維同士の接触の程度を評価する後述の炭素繊維の分散度合いの測定により評価することが出来る。炭素繊維の分散度合いは30%以下であることが好ましい。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。
各実施例及び比較例における繊維の物性についての評価は、以下の方法により実施した。
(1)炭素繊維物性
<ストランド引張強度>
JIS R−7608に準じてエポキシ樹脂含浸繊維束の引張強度を測定した。ストランド引張強度としては、4900MPa以上が好ましい。
(2)炭素繊維の表面状態の評価
<表面官能基量O/C>
炭素繊維束の表面酸素濃度(O/C)は、次の手順に従ってXPS(ESCA)によって求めることができる。測定には、JEOL社製ESCA JPS−9000MXを使用した。炭素繊維束をカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べた後、光電子脱出角度を90度に設定し、X線源としてMgKαを用い、試料チャンバー内を1×10−6Paの真空度に保った。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eVに合わせる。O1sピーク面積は、528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、C1sピーク面積は、282〜292eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。炭素繊維表面の表面酸素濃度O/Cは、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比で計算して求められる。
表面官能基量のばらつきは、長手方向に50cmごとに10点測定したCV値を尺度とした。CV値としては、10%以下が好ましい。
<サイクリックボルタンメトリー法による炭素繊維表面特性Ipaの測定方法>
燐酸を用いて電気伝導度90mS/cmの燐酸水溶液を作製した。参照電極としてAg/AgCl電極、対極として十分な表面積を有する白金電極、作動電極として炭素繊維束を使用した。
電位操作範囲は−0.2V〜0.8Vとし、電位操作速度は、5mV/secとした。3回以上掃引させ、電位―電流曲線を描いた。電位―電流曲線が安定した段階で、Ag/AgCl電極に対して、+0.4Vでの電位を標準にとって電流値を読み取った。
次式に従い、炭素繊維表面特性Ipaを算出した。
Ipa[μA/cm]=電流値[μA]/{試料長[cm]×(4π・繊維束の重量[g/cm]・フィラメント数/繊維の密度[g/cm])1/2
<炭素繊維表面特性Ipaのバラツキ>
炭素繊維表面特性Ipaを求めるために、炭素繊維束を4本に分繊し、それぞれについてIpaを測定した。分繊した各炭素繊維束のIpa測定値から、Ipaのバラツキとして、その標準偏差の平均値に対する割合、即ちCV値を求めた。Ipaのばらつきとしては、CV値が5%以下であることが好ましい。
(3)コンポジット物性
炭素繊維束を一方向に引き揃えて並べ、炭素繊維シート(目付け190g/m)を得た。液状ビスフェノール型エポキシ樹脂“JER828”(三菱化学社製)と、芳香族アミン系硬化剤である4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化社製)を混練し、プリプレグ用エポキシ樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物を離型紙上に塗布し樹脂フィルムを作製した。次に前記炭素繊維シートに樹脂フィルムを炭素繊維シートの両面から重ね、90℃で含浸させ、一方向プリプレグ(樹脂含有率33質量%)を作製した。
<0°引張強度(0TS)>
作製した一方向プリプレグを、成型後の厚みが1mmになるように繊維方向を揃えて積層した後、180℃で硬化させ、炭素繊維の体積含有率が60%であるコンポジットを得た。これをASTM D 303に準拠し、室温で引張試験を行った。このときの強度を0°引張強度(0TS)とした。0TSは2700MPa以上が好ましい。
<コンポジット内の炭素繊維分散度合い>
0度引張強度の試験片と同様にしてコンポジットを作成する。得られたコンポジットの繊維方向に直行する厚み方向の断面を切り出し、鏡面研磨し、試験片を得た。得られた試験片の鏡面研磨した断面を光学顕微鏡(KEYENCE社製VHX-500)を用いて500倍の倍率で観察した。得られた顕微鏡画像の炭素繊維層の厚み方向の中心から上下それぞれ40%以内の範囲にある繊維層内部に存在する繊維をランダムに200本選出し、選出した炭素繊維に対して接触している他の炭素繊維の本数を数える。
5本以上の炭素繊維と接触している炭素繊維の本数の、測定した炭素繊維全体の本数に対する割合を分散度合い(%)として算出した。1つの試験片に対して、観察断面中の異なる位置を5箇所観察し、それぞれ分散度合いを算出し、その平均値を用いて評価した。分散度合いの値が低い方が高い分散性を示している。
[実施例1]
前駆体繊維束であるアクリル繊維束を、空気中250℃で、繊維比重1.35になるまで耐炎化処理を行い、次いで窒素ガス雰囲気下、最高温度650℃で予備炭素化させた。その後、窒素雰囲気下1300℃で炭素化させて未表面処理炭素繊維束(総繊度:1600tex、フィラメント数:24000、弾性率:235GPa)を製造した。
得られた未表面処理炭素繊維束を20本並走させ、底部に凸構造を有する図1記載の溝付ローラーを表面処理装置の50cm手前に設置して、1本の繊維束が1つの溝に配置されるようにして、13mN/texの張力をかけながら、非接触式の電解表面処理装置に導入した。溝付ローラーに導入された時の1本の炭素繊維束の幅は、4.5mmであり、溝付ローラー出側の炭素繊維束の幅は、4.6mmであった。用いた溝付ローラーの溝底部の幅aは5.0mm、溝ピッチbは5.0mm、溝深さHは3.0mm、凸頂部の高さhは1.0mm、凸部の半径Rは3.6mm、溝の壁部の傾きθは15°であった。電解液として10%硫酸アンモニウム水溶液を使用し、炭素繊維束1gに対して6クーロンの電気量で電解酸化処理を行った。その後、サイジング工程を経て得られた炭素繊維束の物性とコンポジット物性を表1に示す。
得られた炭素繊維束は表面状態のバラツキが小さく、表面が均一に酸化処理された炭素繊維束であった。また、同時に処理を行った20本の繊維束の表面状態のばらつきも小さいものであった。そのため優れたコンポジット物性を示し、分散度合いも良好であった。
[実施例2]
図1記載の溝付ローラーを下側のローラーとする1組のニップローラーを用いて、16mN/texの張力をかけながら電解表面処理装置に未表面処理炭素繊維束を導入した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。溝付ローラーに導入された時の炭素繊維束の幅は、4.5mmであり、溝付ローラー出側の炭素繊維束の幅は、4.8mmであった。得られた炭素繊維束の物性とコンポジット物性を表1に示す。
ニップローラーにより繊維束厚みがより均一になったため、得られた炭素繊維束は表面状態のバラツキがとても小さく、表面が均一に酸化処理された炭素繊維束であった。そのため優れたコンポジット物性を示し、分散度合いも良好であった。
[実施例3]
溝付ローラーの上部にシャワーを設置し、繊維束に表面処理層で電解液として使用しているものと同じ10%硫酸アンモニウム水溶液を付与した後、14mN/texの張力をかけながら電解表面処理装置に未表面処理炭素繊維束を導入した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。溝付ローラーに導入された時の炭素繊維束の幅は、4.5mmであり、溝付ローラー出側の炭素繊維束の幅は、4.7mmであった。得られた炭素繊維束の物性とコンポジット物性を表1に示す。
電解液を溝付ローラー上で予め含浸させたことにより表面処理の均一性が増し、得られた炭素繊維束は表面状態のバラツキがとても小さく、表面が均一に酸化処理された炭素繊維束であった。そのため優れたコンポジット物性を示し、分散度合いも良好であった。
[比較例1]
溝付ローラーを平ローラーとし、13mN/texの張力をかけながら電解表面処理装置に未表面処理炭素繊維束を導入した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。平ローラーに導入された時の炭素繊維束の幅は、4.5mmであり、ローラー出側の炭素繊維束の幅は、5.5mmであった。得られた炭素繊維束の物性とコンポジット物性を表1に示す。
溝付ローラーを使用していない比較例1では、平ローラーにより繊維束が開繊されたにもかかわらず、得られた炭素繊維束の表面状態のバラツキは実施例1と比較して大きく、表面が均一に酸化処理されていない炭素繊維束であった。そのためコンポジット物性が低く、分散度合いも優れなかった。
[比較例2]
底部に凸構造を持たない(凸頂部の高さhが0mmの)溝付ローラーを用い、13mN/texの張力をかけながら電解表面処理装置に未表面処理炭素繊維束を導入した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。溝付ローラーに導入された時の炭素繊維束の幅は、4.5mmであり、溝付ローラー出側の炭素繊維束の幅は、4.6mmであった。得られた炭素繊維束の物性とコンポジット物性を表1に示す。
底部に凸構造を持たない溝付ローラーを使用した比較例2では、被処理繊維束に厚み斑があったため、得られた炭素繊維束の表面状態のバラツキは実施例1と比較して大きく、表面が均一に酸化処理されていない炭素繊維束であった。そのためコンポジット物性が低く、分散度合いも優れなかった。
Figure 2013194345

Claims (5)

  1. 炭素繊維束が、溝の底部が凸状になっている溝付ローラーを通過することを特徴とする炭素繊維束の表面処理方法。
  2. 前記溝付ローラーが、溝の幅が溝付ローラーに導入される繊維束の幅の0.5〜2.0倍の幅であり、溝底部の凸部が半径Rの円で構成され、Rが溝の幅の0.7〜5.0倍である溝付ローラーである請求項1に記載の炭素繊維束の表面処理方法。
  3. 前記溝付ローラーが、ニップローラーを備えた溝付ローラーである請求項1または2に記載の炭素繊維束の表面処理方法。
  4. 前記溝付ローラーが、繊維束に酸化媒体を付与する機構を備えた溝付ローラーである請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素繊維束の表面処理方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭素繊維束の表面処理方法を用いて得られる炭素繊維束。
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