JP2013193930A - 硫酸ニッケル水溶液の精製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】硫酸ニッケル水溶液中から、ニッケルのロスを抑制しながら、1価イオンなどの軽元素からなる不純物を安定的に除去することができる硫酸ニッケル水溶液の精製方法を提供する。
【解決手段】1価の陽イオン及び陰イオンからなる複数の不純物イオンをそれぞれ1g/L以下の含有量で含む硫酸ニッケル水溶液のpHを2.5以下に調整して維持し、その硫酸ニッケル水溶液を1価選択性を有する陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜を用いた電気透析法により電気透析する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、硫酸ニッケル水溶液の精製方法に関する。
ニッケル化合物である硫酸ニッケルは、主に鍍金産業に使用されている。また、近年では、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの2次電池の原料としても使用されており産業上の重要性が高まっている。
硫酸ニッケル製造には、主として、硫化沈澱法、酸化中和法、溶媒抽出法などの湿式精錬技術が採用されており、これらの方法では、所定の工程においてニッケルと不純物との分離が実施されている。特に、溶媒抽出法では、コバルトなどの金属イオン以外にも、ナトリウムイオン(Na)、アンモニウムイオン(NH )、塩化物イオン(Cl)、硝酸イオン(NO )などの1価イオンもある程度分離されて精製が進められる。
しかしながら、硫酸ニッケルの原料としては、他のニッケル湿式製錬工程から発生した中間物や銅精錬所から発生する粗硫酸ニッケル、鍍金工場から発生する廃液中和澱物など多岐に渡る。そのため、不純物としてナトリウム、アンモニア、塩素、硝酸などが問題となり、原料調合を実施してインプット負荷を調整しながら生産を行っているのが現状である。特に、鍍金では、微量不純物が皮膜特性に影響を与えるため、製品中の不純物を低濃度にまで下げる必要がある。
近年、効率的な硫酸ニッケル浄液方法として、例えば特許文献1に示すように溶媒抽出法を用いたプロセスが導入されている。しかしながら、依然として上述した不純物が大きな問題として存在する。このため、溶媒抽出法により浄液処理を行うとともに、別途、例えば特許文献2に開示されているような硫酸ニッケル水溶液中のアンモニアを分解除去する方法や、特許文献3の開示されているような塩素イオンを除去して低減させる方法を用いた処理が必要となる。
ここで、図1に、硫酸ニッケル水溶液の浄液プロセスの流れの一例を示す。図1に示すように、浄液プロセスでは、硫化処理や酸化処理を行う浄液工程や溶媒抽出工程などにより主に重金属を分離していくが、これらの工程では軽元素について分離することは困難となる。不純物の中でも、塩素やアンモニアについては溶解工程や溶媒抽出工程にてある程度の除去は可能であるものの、その負荷量が増加すると分離能力は十分ではなくなる。
このように、硫酸ニッケル水溶液の浄液プロセスにおいては、そのニッケル濃度や負荷量にかかわらず、ニッケルロスを抑制しながら不純物である軽元素及びそれらが形成するイオンを安定的に除去することができる方法が求められている。
特開平10−310434号公報 特開2004−277225号公報 特開2005−047776号公報
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、硫酸ニッケル水溶液中から、ニッケルのロスを抑制しながら、1価イオンなどの軽元素からなる不純物を安定的に除去することができる硫酸ニッケル水溶液の精製方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討を重ね、液中のイオンの選択分離が可能な電気透析技術に着目し、この電気透析技術を硫酸ニッケル水溶液の精製処理に応用することにより、不純物イオンを含む硫酸ニッケル水溶液から不純物を安定的に除去できることを見出した。
すなわち、本発明に係る硫酸ニッケル水溶液の精製方法は、1価の陽イオン及び陰イオンからなる複数の不純物イオンをそれぞれ1g/L以下の含有量で含む硫酸ニッケル水溶液のpHを2.5以下に調整して維持し、該硫酸ニッケル水溶液を1価選択性を有する陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜を用いた電気透析法により電気透析することを特徴とする。
本発明によれば、硫酸ニッケル水溶液中から、ニッケルのロスを抑制しながら、1価イオンの形態の不純物を安定的に除去することができる。これにより、高品位な硫酸ニッケル結晶を安定して得ることができる。
硫酸ニッケル水溶液の浄液プロセスの流れの一例を示す工程図である。 電気透析槽におけるイオン交換膜の配置構成と電気透析処理による不純物イオンの流れの一例を示す図である。
以下、本発明に係る硫酸ニッケル水溶液の精製方法の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という。)について、詳細に説明する。
本実施の形態に係る硫酸ニッケル水溶液の精製方法は、1価イオンの形態の微量不純物を含有する硫酸ニッケル水溶液を対象とし、その水溶液のpHを2.5以下に調整して維持し、硫酸ニッケル水溶液を1価選択性を有する陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜を用いた電気透析法により電気透析することを特徴とする。
この精製方法は、1価の陽イオン及び陰イオンからなる複数の不純物イオンをそれぞれ1g/L以下の微量の割合で含有する硫酸ニッケル水溶液を対象とする。微量不純物としては、例えばアンモニウムイオン(NH )、ナトリウムイオン(Na)、塩化物イオン(Cl)、硝酸イオン(NO )を、それぞれ1g/L以下の割合で含む。
また、硫酸ニッケル水溶液のニッケル濃度としては、例えば80〜130g/Lである。この硫酸ニッケル水溶液は、硫酸ニッケルの精製プロセスにおける浄液工程から発生する純液や晶析工程から発生して再び繰り返される晶析母液を使用することができる。特に、晶析工程から発生する晶析母液は、不純物を比較的高い濃度で含有することから、本実施の形態に係る硫酸ニッケル水溶液の精製方法を適用することによって、効率的に不純物を除去することができ、その有効性が高い。
本実施の形態に係る硫酸ニッケルの精製方法では、先ず、硫酸ニッケル水溶液のpHを2.5以下に調整し維持しながら電気透析を行う。また、より好ましくは、pH1.5以上2.5以下の範囲に調整して維持する。
このように、硫酸ニッケル水溶液のpHを2.5以下、より好ましくは1.5以上2.5以下の範囲に調整することによって、電気透析処理によってニッケルロスを抑制ながら、水溶液中の不純物イオン、特に水溶液中に比較的高濃度に含有される塩化物イオンを効果的に除去することができる。
このことは、以下のメカニズムによる。すなわち、硫酸ニッケル中のpHを2.5以下に調整することにより、水溶液中にプロトン(H)が補加されることになる。すると、この補加されたHが水溶液中に含まれる塩化物イオン(Cl)と対になることができ、これによって効果的に塩化物イオンを除去することができる。また、1価の陽イオンであるHが補加されることによって、2価のニッケルイオンの移動を阻害することが可能となり、これによってニッケルイオン(Ni2+)の精製水側(廃液側)への移動(リーク)を抑制してニッケルロスを低減させることができる。
製造工程で発生する硫酸ニッケル水溶液のpHは、通常4.0〜5.0の範囲にあるが、pHが2.5よりも大きい場合には、後述する電気透析処理において1価の陽イオンがすべて移動した後でも比較的濃度の高い塩化物イオンの濃度が低下しきらない。また、水溶液中のニッケル濃度が高い場合、陽イオン側、すなわち廃液側にニッケルが移動を始めてニッケルロス量が多くなる。
一方で、pHを下げ過ぎた場合には、不純物イオンの除去率は維持できるものの、処理後のpHも低いままとなってしまい、電気透析に要する電流も大きくなるため電力コストが増加してしまう。したがって、pH調整の下限値としては、pH1.5以上に調整することが好ましい。
水溶液中のpHの調整は、硫酸を用いて行う。塩酸などの他の酸でも調整することは可能であるが、不純物イオン(Cl、NO など)が増加することになるため好ましくない。
なお、硫酸ニッケル水溶液のpH調整は、電気透析処理に先立って行う態様について説明したが、後述の電気透析処理開始後の初期段階において行うようにしてもよく、そして電気透析処理中においては定期的にpH調整を行ってそのpHを維持する。
本実施の形態に係る硫酸ニッケル水溶液の精製方法では、上述のように、pHを2.5以下に調整し維持した硫酸ニッケル水溶液に対して電気透析する。この電気透析は、1価選択性を有する陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜を用いる。
陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜としては、一般的なイオン交換樹脂である、スチレン・ジビニルベンゼン系共重合物などにイオン交換基(スルホン酸塩、アミノ化合物)を導入し、補強材としてポリ塩化ビニル、ポリオレフィンなどを用いたものを使用することができる。本実施の形態においては、そのイオン交換樹脂として、陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜は、1価のイオン並びに分画分子〜分子量100程度の低分子量のイオンに対して選択性を持った樹脂を使用する(例えば、アストム社製AC−110型など)。
より具体的に、硫酸ニッケル水溶液に対する電気透析方法の原理・条件について説明する。図2に、電気透析槽におけるイオン交換膜の配置構成と不純物イオンの流れの一例を示す。図2に示すように、電気透析槽10には、正極11と負極12との間に、陽イオン交換膜(K)と陰イオン交換膜(A)を交互に配置し、AとKで囲まれた空間(サンプル室)13a,13bに硫酸ニッケル水溶液を循環させる。一方、その硫酸ニッケル水溶液が循環する空間13a,13bの隣の空間(塩回収室)14a,14b,14cには、塩回収用の精製水を循環させる。また、電極11,12を設置させた空間15a,15b(電極室)には、亜硫酸ナトリウム水溶液などの電極液を循環させて両極間に電圧を印加する。なお、図2中の※1〜※3は、電極液の循環の流れを示すものであり、数字の順番に循環し、電気透析槽を※3から出た電極液は再び※1から繰り返し流入される。
陽イオン交換膜(K)と陰イオン交換膜(A)の対の数としては、特に限定されるものではなく、処理する硫酸ニッケル水溶液の量や電気透析槽の容積などに応じて、適宜設定することができる。
電極11,12の間に交互に配置させた陽イオン交換膜(K)と陰イオン交換膜(A)は、上述のように1価のイオン及び低分子量のイオンを選択的に通過させる性質をもつ。そのため、硫酸ニッケル水溶液中の不純物イオンであるH、NH 、Na、Cl、NO などが、空間14a,14b,14cに循環させた精製水側(廃液側)に優先的に移動することになる。したがって、これらの不純物イオンが移動してきた精製水を回収することにより、硫酸ニッケル水溶液から不純物イオンを効果的に除去することができる。
このとき、上述したように硫酸ニッケル水溶液のpHを2.5以下に調整していることにより、不純物イオンを効果的に精製水側に移動させることができ、含有濃度の高い塩化物イオン(Cl)などの回収漏れを防止することができる。また、このようにpHを2.5以下に調整していることによって、ニッケルイオン(Ni2+)が精製水側に移動してしまうことを防止することができる。
電気透析処理において電極11,12に印加する初期の電圧値としては、特に限定されないが、例えば10V程度とする。電気透析処理の実施中においては、水溶液中の不純物イオンが精製水側に移動した分だけ電流が流れるため、電極11,12に印加する電圧はその電流値を見ながら調整すればよい。
また、電気透析の処理時間としては、特に限定されないが、いたずらに処理時間を増加することはニッケルのロスにつながる。すなわち、処理時間を長ければ長いほどニッケルイオンが精製水側に移動しやすくなる。ここで、図2に示したように、電気透析を行うことによって、硫酸ニッケル水溶液中にHが陽イオン交換膜(K)を通過して精製水側に移動する。したがって、不純物イオンが精製水側に移動して除去されるに従って、硫酸ニッケル水溶液中のpHは上昇することになる。また、上述のように、それらの不純物イオンが精製水側に移動した分だけ電流が流れるようになるため、不純物イオンが精製水側に移動して除去されるに従って、電流値が低下することになる。
そこで、電気透析処理の終点(反応の終点)は、硫酸ニッケル水溶液の中のpH上昇又は電流値の低下に基づいて判断する。具体的には、硫酸ニッケル水溶液中のpHを測定し、pHが4.0より大きくなったときに、電極11,12への電圧の印加を停止して電気透析を終了させる。または、電気透析処理に伴う電流値の変化を測定し、その電極間の電流密度値が1.5A/m未満となったときに、電極11,12への電圧の印加を停止して電気透析を終了させる。このように、硫酸ニッケル水溶液のpHの上昇又は電流値の低下に基づいて電気透析の処理終点を判断することによって、ニッケルが精製水側に移動してニッケルロスが増加することをより効果的に防止することができる。
以上のように、本実施の形態に係る硫酸ニッケル水溶液の精製方法は、硫酸ニッケル液のpHを予め2.5以下に調整し、pHを調整した硫酸ニッケル水溶液に対して電気透析処理を施す。これにより、その硫酸ニッケル水溶液中の1価の不純物イオンを効果的にかつ効率的に除去することができ、高品位な硫酸ニッケル水溶液並びに硫酸ニッケル結晶を安定的に生産することができる。
以下に本発明についての実施例を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ニッケルイオン濃度が88g/L、ナトリウムイオン濃度が0.12g/L、塩化物イオン濃度が0.41g/Lである硫酸ニッケル水溶液(サンプル液)に、硫酸を添加してpHを2.2に調整し、電気透析にかけて不純物除去を行った。
電気透析機器としてはアストム社製マイクロアシライザーS3を使用し、イオン交換膜カートリッジとしてはアストム社製AC−110−550を使用した。このカートリッジには、1価選択性の陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜が交互に10対設けられている。
電気透析においては、硫酸ニッケル水溶液1000mLをサンプル室と容器とで循環させ、塩回収室に精製水500mLを、電極室には5%硫酸ソーダ溶液500mLを循環させ、両極間に約10Vの電圧を印加した。この電気透析処理を60分間実施した。
下記表1に、60分間電気透析を行った試験結果を示す。
Figure 2013193930
表1に示すように、電気透析後の硫酸ニッケル水溶液(終液)中の不純物は、塩化物イオン濃度も含めて全て0.1g/L以下となり、効果的に除去することができた。また、硫酸ニッケル水溶液中のニッケルのロス量についても1%未満とあり、ニッケルロス量も効果的に低減させることができた。
(比較例1)
ニッケルイオン濃度が93g/L、ナトリウムイオン濃度が0.16g/L、塩化物イオン濃度が0.41g/L、アンモニウムイオン濃度が0.01g/L、硝酸イオン濃度が0.08g/Lであり、pH4.4の硫酸ニッケル水溶液(サンプル液)に対して電気透析を行った。このとき、pH調整は行わずに電気透析処理を行った。なお、電気透析機器及び条件は、実施例1と同様にして行った。
下記表2に、60分間電気透析を行った試験結果を示す。
Figure 2013193930
表2に示すように、電気透析後の硫酸ニッケル水溶液(終液)中の不純物のほとんどは、ほぼ0.1g/L以下となり有効に除去することができたものの、不純物の塩化物イオンの除去率は44%となって十分に除去できていないことが分かる。
また、電気透析運転開始から20分が経過したころから塩回収液(精製水)側が着色し、ニッケルが移動してきたことが確認された。
これらの結果は、硫酸ニッケル水溶液中でイオン交換膜を透過しやすい1価の陽イオン濃度が低下したため、対となる陰イオンも移動できなくなり、その結果として塩化物イオンが除去できなくなったと推定される。また、1価の陽イオンがなくなったことで、2価イオンではあるが濃度の高いニッケルイオンが移動を始めたと推測することができる。なお、ニッケルロス率は4%と非常に高かった。
10 電気透析槽、11 正極、12 負極、13a,13b サンプル室(硫酸ニッケル水溶液を循環させる空間)、14a,14b,14c 塩回収室(精製水を循環させる空間)、15a,15b 電極室(電極液を循環させる空間)

Claims (6)

  1. 1価の陽イオン及び陰イオンからなる複数の不純物イオンをそれぞれ1g/L以下の含有量で含む硫酸ニッケル水溶液のpHを2.5以下に調整して維持し、該硫酸ニッケル水溶液を1価選択性を有する陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜を用いた電気透析法により電気透析することを特徴とする硫酸ニッケル水溶液の精製方法。
  2. 上記硫酸ニッケル水溶液のpHを1.5以上2.5以下に調整することを特徴とする請求項1記載の硫酸ニッケル水溶液の精製方法。
  3. 上記硫酸ニッケル水溶液のpHが4.0より大きくなった時点で、電気透析を終了することを特徴とする請求項1又は2記載の硫酸ニッケル水溶液の精製方法。
  4. 電極間に流れる電流密度値が1.5A/m未満となった時点で、電気透析を終了することを特徴とする請求項1又は2記載の硫酸ニッケル水溶液の精製方法。
  5. 上記不純物イオンとして、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、塩化物イオン、硝酸イオンを含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の硫酸ニッケル水溶液の精製方法。
  6. ニッケル濃度が80〜130g/Lであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の硫酸ニッケル水溶液の精製方法。
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