JP2013189350A - 防汚用の非晶質炭素膜を備える構造体及び防汚用の非晶質炭素膜の形成方法 - Google Patents

防汚用の非晶質炭素膜を備える構造体及び防汚用の非晶質炭素膜の形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】平滑性及び耐摩耗性に優れ、細菌やタンパク質等を主成分とする汚れの付着を防止できる防汚用表面を有する構造体を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る構造体は,日本工業規格JIS-B0601に準じて測定される表面粗さが1μm以下となるように平滑化されたステンレス鋼等の基材12と,前記基材の表面に形成された防汚用の非晶質炭素膜14と,を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は,防汚用の非晶質炭素膜を備える構造体に関し,特に生体の吸着を抑制する非晶質炭素膜を備える構造体に関する。
食品加工設備に用いられるサニタリー配管や半導体製造に用いられるクリーンパイプは,その内表面を高度に平滑化することにより,細菌や埃などが内表面へ付着することを防止している。例えば,食品工業用ステンレス鋼配管を規格化した日本工業規格JIS-G3447においては,ステンレス鋼配管の表面粗さを1μm以下とすることが定められている(同じ内容が国際標準化機構のISO2037においても定められている)。かかる表面粗さを実現するために,ステンレス鋼等の基材に対してバフ研磨などの機械研磨や電解研磨等の化学研磨を施す手法や,基材表面に湿式のメッキ処理を行う手法が知られている。例えば,特開平09-003655号公報においては,半導体製造装置用配管の内表面の平滑化のために,当該内表面に機械研磨を施すことが述べられている。
特開平09-003655号公報
しかしながら,機戒研磨,化学研磨,又は湿式メッキ処理等により平滑化された基材の表面は摩擦等によって粗面化されやすく,その結果,その粗面化された部分に汚れが付着しやすくなる。そこで,平滑化された表面が摩擦等により粗面化しないようにする必要がある。このように,平滑性のみならず耐摩耗性にも優れた表面を有する防汚用の構造体が求められている。そこで,本発明の実施形態は,かかる平滑性及び耐摩耗性に優れた表面を有する構造体を提供する。
本発明者は,平滑化されたステンレス鋼等の基材表面に非晶質炭素膜を形成することにより,細菌等のタンパク質を主成分とする汚れの当該基材表面への付着を抑制できることを発見した。従来,非晶質炭素膜等の炭素材料は,高い生体親和性を有すると考えられていた。例えば,特表2007-508816号公報は,培養表面を非晶質炭素膜で被膜することにより,神経細胞が当該培養表面に付着しやすくなることを開示している。また,特開2002-86178号公報は,炭素材料が生物親和性に優れていること,特に,炭素繊維に含酸素基を導入することにより当該炭素繊維への好炭素菌の固着性を向上できることが開示されている。
このように,炭素材料は,高い生体親和性を有すると考えられていたため,高い清浄性が要求される部材,例えば食品工業用の配管や半導体製造用のクリーンパイプ等への応用は検討されていなかった。しかしながら,本発明者は,(1)非晶質炭素膜においては,その主要な構成要素である炭素のダングリングボンドが水素で終端されているため,表面活性が著しく低いこと,(2)非晶質炭素膜の分子構造が細菌を付着させにくいヘキサンなどの油や人工高分子材料に似ていること,(3)非晶質炭素膜の等電点が,汚れの原因となるタンパク質の多くと同様に酸性領域にあること,及び(4)非晶質炭素膜は硬度が高く耐摩耗性に優れていること,に着目して様々な研究・実験を行った結果,基材表面に非晶質炭素膜を形成することにより,細菌やタンパク質等を主成分とする汚れの当該基材表面への付着を抑制できるという知見を得て,本発明を為すに至った。
本発明の一実施形態に係る構造体は,日本工業規格JIS-B0601に準じて測定される表面粗さが1μm以下となるように平滑化された表面を有する基材と,前記基材の表面に形成された防汚用の非晶質炭素膜と,を備える。
本発明の他の実施形態に係る構造体は,平滑化された基材と,前記基材の表面に形成され,等電点が酸性領域にある非晶質炭素膜と,を備える。
本発明の一実施形態に係る防汚用の非晶質炭素膜の形成方法は,基材を準備する工程と,前記基材を,日本工業規格JIS-B0601に準じて測定される表面粗さが1μm以下となるように平滑化する工程と,前記基材の表面に防汚用の非晶質炭素膜を形成する工程と,を備える。
本発明の他の実施形態に係る防汚用の非晶質炭素膜の形成方法は,基材を準備する工程と,前記基材を平滑化する工程と,前記基材の表面に等電点が酸性領域にある非晶質炭素膜を形成する工程と,を備える。
本発明の実施形態によれば,平滑性及び耐摩耗性に優れた表面を有する構造体が提供される。
本発明の一実施形態に係る構造体を模式的に示す断面図
本発明の様々な実施形態について添付図面を参照して説明する。図1に示すように,本発明の一実施形態に係る構造体10は,基材12と,非晶質炭素膜14とを備える。図1は,本発明の一実施形態に係る構造体10の構成を模式的に示すものであり,その寸法は必ずしも正確に図示されていない点に留意されたい。
この構造体10は,例えば,食品加工用のサニタリー配管や切断装置,半導体製造に用いられるクリーンパイプやクリーンルームの内装材,まな板・食器・テーブルクロス等の調理器具,もしくはエアーコンディショナーのフィルタ等の任意の部材又はその部材の一部として用いられる。構造体10は後述のように優れた防汚性を有するため,高い衛生度や清浄性が求められる装置や部材,又は,タンパク質等の汚れが付着しやすい環境で用いられる装置や部材として用いることができる。本明細書で述べる構造体10の用途は一例に過ぎず,構造体10は本明細書に明示されていない様々な用途に用いることができる。
基材12は,例えばSUS304等のステンレス鋼,SKD等のベアリング工具鋼,タングステンカーバイド等の超硬合金,鉄鋼,チタン,マグネシウム・アルミニウム・錫・真鍮等の軟質金属又はこれらの合金,金・銀・銅・白金等の貴金属又はこれらの合金,アルミナ・ジルコニア・チタニア等の金属酸化物,タイル等の陶磁器,土器,ポリエステル・ポリプロピレン・ポリエチレン・ポリ塩化ビニル・アクリル等の樹脂,ウルテム材等のエンジニアリングプラスチック,FRP,炭素繊維材料,紙(セルロース)・絹・綿・羊毛又はこれらの混紡材料,攪拌用具やパテ塗り用具に用いられるゴム材料,木材,コルク,シリコンやゲルマニウム等の半導体材料,及び/又はガラス等から成るが,基材12の材質はここで例示するものに限られない。また,これらの素材の表面に,ポリイミド,ポリイミドアミド,シリコン等の樹脂皮膜を形成した基材12を用いることもできる。基材12の表面12aは,細菌や埃等の吸着を防止するために,構造体10の用途に応じた表面粗さを有するように平滑化処理される。例えば,基材12がステンレス鋼から成る場合には,その表面12aは,バフ研磨などの機械研磨,電解研磨等の電気化学的研磨などの常法を用いて,所望の表面粗さとなるように研磨される。上述のように,サニタリー配管用のステンレス鋼の表面粗さは,日本工業規格JIS-G3447において1μm以下と定められている。そこで,一実施形態に係る基材12は,その表面12aの表面粗さが1μm以下となるように平滑化されてもよい。本明細書において,この表面粗さは,例えば,日本工業規格JIS-B0601に準じて測定される算術平均粗さRaを意味する。基材12がサニタリー配管やクリーンパイプの構造として用いられる場合には,表面12aは,1μm以下の極めて低い表面粗さとなるように平滑化することが必要とされるが,基材12が例えば家庭用の調理器具やエアーコンディショナーのフィルタとして用いられる場合には,比較的粗く形成することができる(例えば,表面粗さが10μm程度)。
細菌が付着しているステンレス鋼の表面粗さを1μm以下とすることにより,当該ステンレス鋼を洗浄した場合のステンレス鋼表面への細菌の残存率が大幅に改善されることが報告されている(例えば,矢野啓子「カンジタ眼内炎」近代出版『臨床と微生物』2001年28巻2号,201〜206頁参照)。また,大腸菌に対する二酸化塩素の殺菌効果は,大腸菌が付着する表面に窪みや突起が存在する場合に劣化することが報告されている。このように,基材12の表面12aを平滑化することにより,表面12aに付着する細菌に対する洗浄効果及び殺菌効果が改善される(例えば,Kirschke,D.L.et
al.,”Pseudomonas aeruginosa and Serratia marcescens contamination associated with a manufacturing defect in bronchoscopes," New Engl, J,Med.,348,2003,pp,214-220参照)。
非晶質炭素膜14は,基材12の平滑化された表面12a上に形成される。非晶質炭素膜は,例えば,炭素及び水素を主成分とする硬質膜であり,当業者に明らかな様々な方法に従って形成される。例えば,非晶質炭素膜14は,2極スパッタリング法,3極スパッタリング法,4極スパッタリング法,マグネトロンスパッタリング法,対抗ターゲット式スパッタリング法などの様々なプラズマスパッタリング法,イオンビームスパッタリング法,ECRスパッタリング法などの様々なイオンビームスパッタリング法,直流(DC)プラズマCVD法,低周波プラズマCVD法,高周波(RF)プラズマCVD法,パルス波プラズマCVD法,マイクロ波プラズマCVD法,大気圧プラズマ法(例えば誘電体バリア放電方式),準大気圧プラズマ法などの様々なプラズマCVD法,直流印加式(DC)イオンプレーティング法,活性化反応蒸着法(ARE方式),ホロカソード放電法(HCD法),高周波励起法(RF法)などのプラズマを利用する様々なイオンプレーティング法,イオンクラスタービーム蒸着法(ICB法),イオンビームエピタキシー法(IBE法),イオンビーム蒸着法(IBD法),イオンビームアシスト蒸着法(IBAD法),イオン蒸着薄膜形成法(IVD法)などのイオンビームを利用する様々なイオンプレーティング法,又はこれらの組み合わせなどの様々な公知のドライプロセスにより形成される。例えば,固形のSiターゲット,Tiターゲット,炭素ターゲットなどを用いる物理蒸着法(PVD法)であれば,真空雰囲気にて所定のガス圧・流量のスパッタガス(例えば,アルゴンガス)及び,アセチレンなどの炭化水素系原料ガス,必要に応じて水素を含むガスが導入された成膜装置に基体を設置し,Siターゲット,Tiターゲット,炭素ターゲットなどをスパッタリングすることで,当該基体上に本発明の実施形態に係る構造体を形成することができる。このスパッタガスに酸素(O),窒素(N)又はそれらの混合ガスを混合することで,反応性スパッタリング法により,ケイ素,チタンと酸素又は窒素との生成物(例えば,SiO,SiN,TiO,TiNなど)から成る非晶質炭素膜を形成してもよい。ガスを原料とする化学蒸着法(プラズマCVD法)を用いる場合は,ワークを配置して真空減圧したプラズマCVD装置にトリメチルシラン,テトラメチルシラン,テトラエトキシシラン(TEOS)などのSiを含む炭化水素系の原料ガス,又は,チタンクロライド(TiCl),チタンアイオダイド(TiI),チタンイソプロポキシドTi(i−OCなどのTiを含む原料ガスにアセチレンなどの炭化水素系のガスを混合使用することにより,Si又はTiを含む非晶質炭素膜層を形成することができる。また,基体上に形成されたケイ素,チタン,のうち少なくとも1つの元素を含む非晶質炭素膜に,酸素プラズマ,窒素プラズマ,又は大気等の酸素又は窒素の少なくとも一方を含むガスのプラズマを照射することにより,この非晶質炭素膜に酸素又は窒素の双方又は一方を含有させることもできる。
また,非晶質炭素膜14には,適宜,酸素,窒素,ケイ素,SiO,TiOのうち少なくとも1つの元素を含有させることができる。本明細書においては,このような添加物を含む非晶質炭素膜14についても,文脈上別に解すべき場合を除き,単に非晶質炭素膜(14)と呼ぶことがある。非晶質炭素膜14は,基材12の上に直接形成されてもよいし,シリコンを含む非晶質炭素膜の中間層を基材12上に形成し,この中間層の上に形成されてもよい。この中間層は,トリメチルシラン等の原料ガスを用いてプラズマCVD法により形成することができる。非晶質炭素膜14は,プラズマCVD法により,非常に薄く且つ平滑に形成することができるので,非晶質炭素膜14の表面14aは,平滑化処理された基材12表面と同程度の表面粗さを有する。例えば,プラズマCVD法により形成される非晶質炭素膜14の表面粗さRaは,鏡面に加工されたSi(100)上に形成する場合で0.1nm程度の粗さに形成できるため,構造体10の表面14aが粗面化しないように非晶質炭素膜14を形成することができる。他の実施形態に係る非晶質炭素膜14は,用途によっては,100nm以上の厚さを有するように形成してもよい。これにより,基材12の表面12aに若干の凹凸が存在しても,非晶質炭素膜14を連続的に形成することができ,非晶質炭素膜14の未形成部分への汚れの付着を防止することができる。
本発明の一実施形態においては,基材12の表面12aにレベリング性の高いメッキ皮膜(不図示)を形成し,このメッキ皮膜の上に非晶質炭素膜14を形成してもよい。このメッキ皮膜としては,例えば,無電解Niメッキ,電解Niメッキ,電解Cuメッキ,無電解Cuメッキ,電解クロムメッキ,電解,又は無電解のAuメッキ,Agメッキ,Roメッキ等の貴金属メッキを用いることができる。これらのメッキ層の下地には,亜鉛置換層,Pd置換層などを適宜形成することができる。また,これらのメッキ層を複数層堆積させて多層メッキを形成してもよく,電解Ni−COメッキなどの複合合金メッキを形成してもよい。プラズマプロセスにて形成される非晶質炭素膜は,電界作用を利用して基材上に堆積するため,基材表面の凹凸に対してレベリング性が無く,むしろ,基材の凹凸を強調する傾向がある。つまり,プラズマプロセスによって形成される非晶質炭素膜は,基材の凸部により厚く堆積し,基材の凹部により薄く堆積する傾向がある。,機械研磨等の研磨処理やメッキ処理によって基材12の表面12aを平滑にしておくことにより,よって,非晶質炭素膜14を基材12上に直接形成したのでは構造体10の表面(非晶質炭素膜14の表面)14aに求められる表面粗さを実現できない場合には,基材12の表面12aに中間層としてメッキ皮膜を形成し,このメッキ皮膜の上に非晶質炭素膜14を形成することで,構造体10の表面14aをより平滑化できる。
一実施形態にかかる非晶質炭素膜14は,その等電点が基材12の等電点よりも小さくなるように形成される。基材12が金属又は合金から成る場合には,その等電点は通常8以上のアルカリ性領域にある。例えば衛生器具や容器,装置などに常用されるステンレス鋼(例えばSUS316L)の等電点は,アセトン洗浄・エタノール洗浄を行った無処理のもので約pH9.8前後,アセトン洗浄・エタノール洗浄を施した後,150℃で4時間加熱処理を施したもので約pH9.0前後である。よって,基材12が金属又は合金から成る場合には,非晶質炭素膜14の等電点は,例えば中性条件で使用する場合には7未満とする。非晶質炭素膜14の等電点は,原料ガスの配合や,非晶質炭素膜14に含まれる添加物の種類などに応じて,適宜調整可能である。例えば,等電点を酸性領域に移動させる場合には,等電点が低いSiOやTiOを非晶質炭素膜14に含ませればよい。例えば,SiOの等電点は約pH2.5〜4であり,酸化チタン(TiOルチル型)でpH:3〜4である。
様々な汚れの原因のうち,タンパク質などの生体分子を主成分とするもの例えば細菌や毛髪は,弱酸性領域に等電点を有することが通常であるため,pH7付近の中性条件下で,その表面のカルボキシル基やリン酸基などが解離し負に帯電しているので,アルカリ性領域に等電点を有し中性条件下で正に帯電する基材12に吸着されやすい。このように,基材12が中性条件下に存在する場合には,基材12は正に帯電する一方,タンパク質等の生体分子を主成分とする物質は負に帯電するので,この物質が基材12に吸着されて汚れの原因となる。本発明の実施形態においては,非晶質炭素膜14の等電点を基材12の等電点よりも小さくすることにより,基材12とタンパク質等の生体分子を主成分とする物質の極性の違いを緩和し,その結果,汚れの吸着を抑制することができる。
本発明の一実施形態においては,非晶質炭素膜14に酸素プラズマや窒素プラズマを照射することにより,非晶質炭素膜14の表層に,カルボキシル基(−COOH),水酸基(−OH)等の官能基を形成することができる。これらの官能基のHイオンがアルカリ液中に存在する水酸化物イオン(OH)に奪われると,非晶質炭素膜14の表層に負にイオン化した−COO基や−O基が生成されるので,非晶質炭素膜14の表層を負に帯電させることができる。このように,非晶質炭素膜14の表層ににカルボキシル基(−COOH)や水酸基(−OH)を形成することにより,非晶質炭素膜14をさらに負に帯電させて,正に帯電した汚れの付着をさらに抑制することができる。
また,本発明の一実施形態においては,外界の水分や酸化雰囲気に接することで水酸基を自然形成するケイ素(Si),チタン(Ti),及び/又は,二酸化ケイ素・酸化チタン等の金属酸化物などの非晶質炭素膜14よりもさらに等電点の低い物質を非晶質炭素膜14に導入することができる。非晶質炭素膜14にSiを含有させるには,非晶質炭素膜14の成膜プロセスにおいて,トリメチルシランなどのSiを含む炭化水素系の原料ガスに用いればよい。,,非晶質炭素膜14にTi−OHを含有させるには,例えば,チタンイソプロポキシドTi(i−OCなどのTiを含む原料ガスにアセチレンなどの炭化水素系のガスを混合使用すればよい。Si及び/又はTiを含む非晶質炭素膜14に酸素プラズマを照射することで,大量の酸素を非晶質炭素膜14に含有させることができ,非晶質炭素膜14の表面14aに酸素プラズマ未照射の場合よりも多くの官能基(―OH)を形成することができる。このようにして添加されたケイ素(Si−OH),チタン(Ti−OH),又はケイ素やチタンの金属酸化物は,非晶質炭素膜14よりも等電点が低いため,これらの添加物によって非晶質炭素膜14の表層をさらに負に帯電させ,正に帯電した汚れの付着をさらに抑制することができる。
他の実施形態にかかる非晶質炭素膜14は,その等電点が6以下の酸性領域にあるように形成される。これにより,基材12を中性条件下で使用する場合には,基材12とタンパク質を主成分とする物質とがいずれも負に帯電するため,互いに電気的に反発する。この反発力により,タンパク質を主成分とする物質の基材12への吸着を抑制することができる。
また,非晶質炭素膜14は,高硬度で耐摩耗性に優れているため,平滑化された基材12の表面12aの粗面化を防止できる。その結果,粗面化に起因する構造体10への汚れの吸着を抑制できる。このように,非晶質炭素膜14により,構造体10の平滑性を維持するとともに,細菌やタンパク質を主成分とする物質を反発することで,構造体10の防汚性を改善することができ,特に細菌やタンパク質を主成分とする物質に対する防汚性を大きく改善できる。
また,本発明の一実施形態においては,非晶質炭素膜14が形成された構造体10に対してUV照射やオゾン洗浄を行うことにより,さらに殺菌や滅菌を行うことができる。非晶質炭素膜14にSi又はSiOを含有させることにより,構造体10はUV照射やオゾン洗浄などによる酸化に対して強い耐性を備えるようになる。
また,本発明の一実施形態においては,非晶質炭素膜14にSiO2を含有させることにより,又は,非晶質炭素膜14に酸素プラズマ及び/又は窒素プラズマを照射することにより,非晶質炭素膜14の濡れ性を改善することができる。これにより,構造体10の表面14aをより容易に水洗洗浄できる。また,二酸化塩素等の殺菌剤が,表面14aに濡れ広がり易くなり,殺菌剤を用いた殺菌処理をより容易に行うことができるようになる。
また,本発明の一実施形態においては,非晶質炭素膜14をポリマー状に形成することで,その延伸性を向上させることができる。
実施例1
表面粗さRa0.077μmのステンレス鋼(SUS304)から成る30mmx7mm,厚さ0.1mmの基材を準備した。この基材をイソプロピルアルコール(IPA)を満たしたステンレスバット中で15分間超音波洗浄した。次に,この洗浄後のステンレス鋼基材を,高圧DCパルスプラズマCVD装置の反応容器の試料台に投入し,反応容器を1x10-3Paまで真空減圧した。次いで,流量30SCCMのトリメチルシランをガス圧が2Paとなるように調整して反応容器内に導入し,-4.5kVの電圧を印可して,シリコンを含む非晶質炭素膜(中間層)を基材上に5分間形成した。次に,この中間層の上に,ガス流量40SCCMのアセチレンを原料ガスにとして使用し,-5kVの電圧を印可して,パルス周波数10kHz,パルス幅10μs,ガス圧2Paの条件で,非晶質炭素膜を15分間成膜した。次に,試料を裏返して試料台に再度設置し,先ほどと同じ工程で,試料の裏面にも非晶質炭素膜を形成した。このようにして実施例1の試料が得られた。
実施例2
実施例1と同様に,ステンレス鋼(SUS304)から成る30mmx7mm,厚さ0.1mmの基材を準備した。この基材をイソプロピルアルコール(IPA)を満たしたステンレスバット中で15分間超音波洗浄した。次に,この洗浄後のステンレス鋼基材を,高圧DCパルスプラズマCVD装置の反応容器の試料台に投入し,反応容器を1x10-3Paまで真空減圧した。次いで,流量30SCCMのトリメチルシランをガス圧が2Paとなるように調整して反応容器内に導入し,-4.5kVの電圧を印可して,シリコンを含む非晶質炭素膜(中間層)を基材上に5分間形成した。次に,この中間層の上に,ガス流量40SCCMのアセチレンを原料ガスにとして使用し,-5kVの電圧を印可して,パルス周波数10kHz,パルス幅10μs,ガス圧2Paの条件で,非晶質炭素膜を15分間成膜した。次に,ガス流量30SCCMの窒素ガスをガス圧が1.5Paとなるように調整して反応容器内に導入し,-4kVの電圧を印可して,窒素プラズマを試料に5分間照射し,試料表面の非晶質炭素膜に窒素を含有させた。次に,試料を裏返して試料台に再度設置し,先ほどと同じ工程により,試料の裏面にも窒素を含有する非晶質炭素膜を形成した。このようにして実施例2の試料が得られた。
比較例
実施例1,2と同様に,ステンレス鋼(SUS304)から成る30mmx7mm,厚さ0.1mmの基材を準備した。この未処理のステンレス鋼を比較例とした。
微生物付着試験
次に,上述のようにして得られた実施例1,2及び比較例について,各試料表面への大腸菌の付着試験を行った。まず,大腸菌(Escherichia coli NBRC3301(K12))を,PY液体培地(Polypepton 10g,Yeast
extract 2g,MgSO4・7H2O 1g,D.W.1L,pH7.0)にて30℃で培養した。次に,集菌した大腸菌の菌体を生理食塩水(Saline)にけん濁し,このけん濁液を希釈したものと,実施例1,2及び比較例の試料とをそれぞれ2mlマイクロチューブに入れ,室温にて2時間緩速撹拌しながらインキュベートした。このようにして,実施例1,2及び比較例の試料のそれぞれの表面に大腸菌を付着させた。
次に,大腸菌を付着させた実施例1,2及び比較例の試料をそれぞれバッファー洗浄した。この洗浄後の実施例1,2及び比較例の試料の表面に存在している大腸菌の菌数を,生物発光法(ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応系)を用いて測定した。具体的には,実施例1,2及び比較例の試料それぞれの表面に付着している大腸菌の細胞からATPを抽出し,抽出したATPを生物発光試薬(キッコーマン株式会社製
ルシフェールHSセット(型番60315))と反応させ,この反応により生ずる光の発光量をマイクロプレートリーダー(Wallac社製 1420 ARVOsx マルチレベルカウンタ)を用いて測定し,この発光量からATPの発光強度を求めた。そして,平板培養コロニーカウント法を用いて作成したATPの発光強度と生菌数との対応を示す検量線に基づいて,測定したATP量から大腸菌の生菌数を推定した。
このようにして推定された大腸菌の菌数は,実施例1が171677個,実施例2が132390個,比較例が648043個であった。このように,本発明の実施例の表面に存在する大腸菌の菌数は,比較例の表面に存在する大腸菌の菌数と比較して大幅に少ないことが確認された。
次に,実施例1,2及び比較例について,試料表面への脱窒菌の付着試験を行った。まず,脱窒菌(Pseudomonas stutzeri NBRC14165)を,PY液体培地にて30℃で培養した。次に,集菌した脱窒菌の菌体をPY液体培地にけん濁し,このけん濁液を希釈したものと,実施例1,2及び比較例の試料とをそれぞれ2mlマイクロチューブに入れ,室温にて2時間緩速撹拌しながらインキュベートした。このようにして,実施例1,2及び比較例の試料のそれぞれの表面に脱窒菌を付着させた。
次に,脱窒菌を付着させた実施例1,2及び比較例の試料をそれぞれバッファー洗浄した。この洗浄後の実施例1,2及び比較例の試料の表面に存在している脱窒菌の菌数を,上述の大腸菌の例と同様に,生物発光法(ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応系)を用いて測定した。このようにして推定された脱窒菌の菌数は,実施例1が47255個,実施例2が50498個,比較例が195705個であった。このように,本発明の実施例の表面に存在する脱窒菌の菌数は,比較例の表面に存在する脱窒菌の菌数と比較して大幅に少ないことが確認された。
10:構造体
12:基材
14:非晶質炭素膜

Claims (8)

  1. 日本工業規格JIS-B0601に準じて測定される表面粗さが1μm以下となるように平滑化された基材と,
    前記基材の表面に形成された防汚用の非晶質炭素膜と,
    を備える構造体。
  2. 前記非晶質炭素膜の等電点が前記基材の等電点よりも低い請求項1に記載の構造体。
  3. 前記非晶質炭素膜の等電点が酸性領域にある請求項1又は2のいずれか1項に記載の構造体。
  4. 前記基材がステンレス鋼から成る請求項1から3のいずれか1項に記載の構造体。
  5. 前記非晶質炭素膜が,Si,Ti,SiO,又はTiOの少なくとも1つを含む請求項1から4のいずれか1項に記載の構造体。
  6. 表面が平滑化された基材と,
    前記基材の表面に形成され,等電点が酸性領域にある非晶質炭素膜と,
    を備える構造体。
  7. 基材を準備する工程と,
    前記基材を,日本工業規格JIS-B0601に準じて測定される表面粗さが1μm以下となるように平滑化する工程と,
    前記基材の表面に防汚用の非晶質炭素膜を形成する工程と,
    を備える防汚用の非晶質炭素膜の形成方法。
  8. 基材を準備する工程と,
    前記基材を平滑化する工程と,
    前記基材の表面に等電点が酸性領域にある非晶質炭素膜を形成する工程と,
    を備える防汚用の非晶質炭素膜の形成方法。
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