以下、実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この実施の形態で説明する障害情報収集システムを概略的に示している。この障害情報収集システムは、障害情報の収集対象となる制御機器の一例として自動券売機11を想定しており、当該自動券売機11から障害情報を収集するように構成されている。
すなわち、上記した自動券売機11は、例えば鉄道における駅構内等に設置されて、乗車券,指定席券または特別急行券等を販売する装置であり、例えば自動改札機や自動精算機等のような駅務器機で処理される各種の券を、利用者自身が操作することに応じて発券する装置である。
この自動券売機11は、主として、制御処理部12,接客用表示部13,係員用表示部14,運賃記憶部15,データ記憶部16,カード処理部17,紙幣処理部18,コイン処理部19,発券処理部20等の、それぞれが特定の機能を有する各種の処理ユニットを組み合わせることによって構成されている。
このうち、上記制御処理部12は、自動券売機11の各処理ユニットを総括的に制御している。この場合、制御処理部12は、CPU(central processing unit)12a及びメモリ部12bを備え、メモリ部12bに記憶されている種々のプログラムをCPU12aが実行することにより、自動券売機11としての種々の機能を実現させている。
また、この制御処理部12は、現在の時刻を計時するタイマ12cを有している。さらに、この制御処理部12は、自己の動作履歴を示すログ情報を蓄積するログ記憶部12dと、各処理ユニットから書き込みが可能な共通データ記憶部12eとを有している。この共通データ記憶部12eには、詳細は後述するが、障害が発生した時点における各処理ユニットの状態を示す情報や、各処理ユニットが判別した障害元となる処理ユニットを示す情報等が記憶される。
上記接客用表示部13は、利用者に対して種々の案内等を表示する表示装置である。この接客用表示部13は、例えば操作手段としてのタッチパネル13aを内蔵する液晶表示装置等により構成される。この場合、接客用表示部13には、金額ボタン等が表示されている。そして、利用者が金額ボタンの表示部位にタッチすることにより、所望の金額の乗車券を選択することができるようになっている。また、この接客用表示部13は、自己の動作履歴を示すログ情報を蓄積するログ記憶部13bを有している。
上記係員用表示部14は、係員に対して種々の案内等を表示する表示装置である。この係員用表示部14は、例えば操作手段としてのタッチパネル14aを内蔵する液晶表示装置等により構成される。この場合、係員用表示部14には、種々のキースイッチが表示されている。そして、係員がキースイッチの表示部位をタッチすることにより、種々の操作を受け付けることができるようになっている。
上記運賃記憶部15には、運賃データ等が記憶されている。この運賃記憶部15に記憶されている運賃データに基づいて、上記制御処理部12が、発券される各種の券の料金等を算出している。また、この運賃記憶部15は、自己の動作履歴を示すログ情報を蓄積するログ記憶部15aを有している。
上記データ記憶部16には、上記制御処理部12が自動券売機11の各処理ユニットを制御する際に必要となる各種の設定情報及び制御情報等のデータが記憶されている。
上記カード処理部17は、カード入出口17aに接続されている。そして、このカード処理部17は、カード入出口17aに挿入されたカードに対し、情報の読み取り及び書き込み等の処理を行なうように機能するとともに、処理済みのカードをカード入出口17aから排出するように機能する。この場合、カード処理部17は、取り扱うカードの記憶媒体の種類に応じた処理ユニットを有している。
例えば非接触式のIC(integrated circuit)カードを取り扱う場合、カード処理部17には、非接触式のICカードとの通信を行なうためのリーダライタが備えられる。また、情報が磁気記憶される磁気カードを取り扱う場合、カード処理部17には、情報の読み取り及び書き込みを行なうために磁気ヘッド等が備えられる。なお、カード処理部17が取り扱うカードの形態としては、例えば、ストアードフェア(SF)カード、定期券、クレジットカード、または、電子マネーカード等の機能を有する各種のカードが想定される。
上記紙幣処理部18は、紙幣入出口18aに接続されている。そして、この紙幣処理部18は、紙幣入出口18aに挿入された紙幣に対し、その券種の判定や真偽の検査を行ない、検査済み紙幣を貯留部(図示せず)に貯留する等の処理を行なうように機能するとともに、例えば制御処理部12より釣銭として指示された金額の紙幣を貯留部から取り出して、紙幣入出口18aから排出するように機能する。また、この紙幣処理部18は、自己の動作履歴を示すログ情報を蓄積するログ記憶部18bを有している。
上記コイン処理部19は、コイン投入口19a及びコイン放出口19bに接続されている。そして、このコイン処理部19は、コイン投入口19aに投入されたコインに対し、その種類の判定や真偽の検査を行ない、検査済みコインを貯留部(図示せず)に貯留する等の処理を行なうように機能するとともに、例えば制御処理部12より釣銭として指示された金額のコインを貯留部から取り出して、コイン放出部19bから放出するように機能する。また、このコイン処理部19は、自己の動作履歴を示すログ情報を蓄積するログ記憶部19cを有している。
上記発券処理部20は、発券口20aに接続されている。そして、この発券処理部20は、例えば制御処理部12より指示された金額に対応する乗車券を作成し、作成した乗車券を発券口20aから排出することにより発券処理を行なっている。また、この発券処理部20は、例えば、券紙挿入部,姿勢制御部,カッター部,印字部,回収部,搬送部,パンチ部,エンコード部,保留部,放出口部(いずれも図示せず)等を有している。これらの構成により、発券処理部20では、ロール紙状の媒体を所定のサイズにカットし、カットした券紙に券面印刷及び磁気による情報記録処理等を施し、乗車券として発券口20aから放出することができる。また、この発券処理部20は、自己の動作履歴を示すログ情報を蓄積するログ記憶部20bを有している。
さらに、上記自動券売機11には、障害が発生した場合に障害情報を収集するための収集用機器21が接続されて、上記障害情報収集システムが構築されている。そして、この収集用機器21には、詳細は後述するが、重要度テーブル21aと障害元特定テーブル21bとが備えられている。
なお、この実施の形態では、説明を分かり易くするために、収集用機器21を自動券売機12と別体の構造としたが、収集用機器21は自動券売機12に内蔵されていても、つまり、障害情報の収集対象となる制御機器と一体的に構成されていても良いことはもちろんである。
図2は、上記した自動券売機11が行なう主要な処理動作の一例をまとめたフローチャートを示している。すなわち、ステップS1で、利用者が接客用表示部13のタッチパネル13aに表示された金額ボタンの表示部位にタッチすると、その操作情報が制御処理部12に供給される。また、ステップS2で、運賃記憶部15に記憶された運賃データが制御処理部12に取り込まれる。
すると、制御処理部12は、ステップS3で、供給された操作情報と運賃データとに基づいて、発券すべき乗車券の料金を算出し、ステップS4で、算出した料金を示す料金情報を接客用表示部13に供給して料金を表示させる。また、制御処理部12は、ステップS5で、紙幣処理部18に上記料金情報を供給するとともに、ステップS6で、コイン処理部19に上記料金情報を供給する。
そして、利用者がお金を投入すると、紙幣処理部18は、ステップS7で、投入された紙幣の判別処理を実行する。また、コイン処理部19は、ステップS8で、投入されたコインの判別処理を実行する。
その後、紙幣処理部18は、ステップS9で、釣銭を排出し、ステップS10で、処理の終了を示す情報を制御処理部12に供給する。また、コイン処理部19は、ステップS11で、釣銭を排出し、ステップS12で、処理の終了を示す情報を制御処理部12に供給する。
これにより、制御処理部12は、ステップS13で、発券処理部20に対して発券を指示し、その発券指示に基づいて発券処理部20が乗車券を発券して、ここに、乗車券の発券処理が完了される。
ここで、上記のような一連の発券処理動作を行なう自動券売機11において、何らかの障害(エラー)が発生した場合を考える。この場合、上記した発券処理に関与する各処理ユニット、つまり、制御処理部12,接客用表示部13,運賃記憶部15,紙幣処理部18,コイン処理部19及び発券処理部20は、それぞれ、制御処理部12の共通データ記憶部12eに対して、障害が発生した時点における自己の状態を示す情報や、自己が判別した障害元となる処理ユニットを示す情報を記憶する。
図3は、上記共通データ記憶部12eに記憶された情報の一例を示している。この共通データ記憶部12eには、障害元となる処理ユニットを判断し、共通データ記憶部12eに記憶させるべく報告した報告元となる各処理ユニット、つまり、制御処理部12,接客用表示部13,運賃記憶部15,紙幣処理部18,コイン処理部19及び発券処理部20にそれぞれ対応して、その状態を示す情報と、それが判断した障害元となる処理ユニットを示す情報とを書き込む欄が設けられている。
なお、各処理ユニットは、それぞれ、自己に対応する欄に対しての書き込みのみが許可されており、自己以外の他の処理ユニットに対応する欄への書き込みは不許可とされている。ただし、各処理ユニットは、自己以外の他の処理ユニットに対応する欄に書き込まれた情報を閲覧することは許可されており、障害元となる処理ユニットを特定するための判断材料とすることができる。
上記共通データ記憶部12eに書き込まれている内容を具体的に説明すると、まず、制御処理部12においては、状態の欄に「(正常)稼働中」と書き込まれており、正常に動作していることが記されているとともに、障害元処理ユニットの欄に「なし」と書き込まれており、障害元となる処理ユニットが存在しないことが記されている。
また、接客用表示部13においては、状態の欄に「(異常)料金表示異常」と書き込まれており、料金表示ができないことが記されているとともに、障害元処理ユニットの欄に運賃記憶部15を示す番号「(3)」が書き込まれており、障害元となる処理ユニットが運賃記憶部15であることが記されている。
さらに、運賃記憶部15においては、状態の欄に「(異常)運賃データ送信異常」と書き込まれており、運賃データの送信ができないことが記されているとともに、障害元処理ユニットの欄に接客用表示部13を示す番号「(2)」が書き込まれており、障害元となる処理ユニットが接客用表示部13であることが記されている。
また、紙幣処理部18においては、状態の欄に「(異常)紙幣処理異常」と書き込まれており、紙幣判別等の処理ができないことが記されているとともに、障害元処理ユニットの欄に運賃記憶部15を示す番号「(3)」が書き込まれており、障害元となる処理ユニットが運賃記憶部15であることが記されている。
さらに、コイン処理部19においては、状態の欄に「(異常)コイン処理異常」と書き込まれており、コイン判別等の処理ができないことが記されているとともに、障害元処理ユニットの欄に紙幣処理部18を示す番号「(4)」が書き込まれており、障害元となる処理ユニットが紙幣処理部18であることが記されている。
また、発券処理部20においては、状態の欄に「(異常)発券処理異常」と書き込まれており、発券処理ができないことが記されているとともに、障害元処理ユニットの欄には運賃記憶部15を示す番号「(3)」が書き込まれており、障害元となる処理ユニットが運賃記憶部15であることが記されている。
このように、自動券売機11に障害が発生した場合に、各処理ユニットが、自己の状態を示す情報と、自己が判断した障害元となる処理ユニットを示す情報とを共通データ記憶部12eにそれぞれ書き込んだ状態で、上記収集用機器21による障害情報の収集が開始される。
図4は、この収集用機器21が障害情報を収集する処理動作の一例をまとめたフローチャートを示している。すなわち、処理が開始(ステップS4a)されると、収集用機器21は、ステップS4bで、共通データ記憶部12eを有する処理ユニット、つまり、この実施の形態の場合には制御処理部12にアクセスし、ステップS4cで、その共通データ記憶部12eに記憶されている情報を取得する。
そして、収集用機器21は、ステップS4dで、共通データ記憶部12eから取得した情報に基づいて、障害の発生原因として最も高い可能性を有する1つの処理ユニットを特定する。この特定方法としては、詳細は後述するが、共通データ記憶部12eに障害元として記憶された種々の処理ユニットそれぞれに対して、障害元となる処理ユニットを判断した処理ユニット毎に予め設定した重要度(重み付け)を付加し、重要度の合計が最も大きい処理ユニットを選択することで行なわれる。
その後、収集用機器21は、ステップS4eで、障害元として特定された処理ユニットにアクセスし、ステップS4fで、その特定された処理ユニットが有するログ記憶部に記憶されているログ情報を取得して、処理を終了(ステップS4g)する。
これにより、収集用機器21は、障害元として特定された1つの処理ユニットからログ情報を収集し、その中から障害の原因を解析するための障害情報を得ることができる。このため、全ての処理ユニットに蓄積されているログ情報を収集する処理に比して、障害情報の収集処理を容易化して迅速に行なうことができるようになる。
次に、上記ステップS4dで、収集用機器21が、共通データ記憶部12eから取得した情報に基づいて、障害の発生原因として最も高い可能性を有する1つの処理ユニットを特定する手法の一例について説明する。この場合、収集用機器21は、自己が記憶する重要度テーブル21aを利用して作成した障害元特定テーブル21bに基づいて処理ユニットを特定している。
図5は、上記収集用機器21が記憶する重要度テーブル21aの一例を示している。この重要度テーブル21aは、障害元となる処理ユニットを判断し、共通データ記憶部12eに記憶させるべく報告した報告元となる各処理ユニット、つまり、制御処理部12,接客用表示部13,運賃記憶部15,紙幣処理部18,コイン処理部19及び発券処理部20にそれぞれ対応して、予め設定された重要度が記述されている。
すなわち、制御処理部12に対しては重要度が「10」、接客用表示部13に対しては重要度が「6」、運賃記憶部15に対しては重要度が「8」、紙幣処理部18に対しては重要度が「9」、コイン処理部19に対しては重要度が「1」、発券処理部20に対しては重要度が「5」に設定されている。
図6(a)〜(b)は、収集用機器21が、上記共通データ記憶部12e及び重要度テーブル21aの情報に基づいて、障害元特定テーブル21bを作成する処理動作の一例を示している。まず、障害元特定テーブル21bには、図6(a)に示すように、障害元となり得る各処理ユニット、つまり、制御処理部12,接客用表示部13,運賃記憶部15,紙幣処理部18,コイン処理部19及び発券処理部20が登録されており、その登録された各処理ユニットにそれぞれ対応して、ポイントが記述されるようになっている。なお、初期状態では、図6(a)に示すように、障害元となる各処理ユニットに対するポイントは、「0」となっている。
このような状態で障害が発生し、先に図3に示したように、各処理ユニットが共通データ記憶部12eに対して、自己の状態を示す情報や障害元となる処理ユニットを示す情報を記憶すると、収集用機器21は、共通データ記憶部12eの中から、初期値である番号「(1)」で示される報告元となる処理ユニット、つまり、制御処理部12が特定した障害元となる処理ユニットを示す情報を読み込むように動作する。この場合、制御処理部12は、正常に稼働中しており、障害元となる処理ユニットを示していないので、障害元特定テーブル21bの各ポイント欄の内容は、図6(a)に示したままとなる。
その後、収集用機器21は、共通データ記憶部12eの中から、次の番号「(2)」で示される処理ユニット、つまり、接客用表示部13が特定した障害元となる処理ユニットを示す情報を読み込むように動作する。この場合、接客用表示部13は、障害元となる処理ユニットとして番号「(3)」、つまり、運賃記憶部15を特定している。
このため、収集用機器21は、図6(b)に示すように、障害元特定テーブル21bの中の運賃記憶部15を示す番号「(3)」に対応するポイントの欄に、重要度テーブル21aから読み取った接客用表示部13の重要度「6」を記述する。すなわち、障害元特定テーブル21bにおいては、共通データ記憶部12eに障害元として記憶された処理ユニット(この場合、運賃記憶部15)に対して、その障害元となる処理ユニットを判断した処理ユニット(この場合、接客用表示部13)に予め設定された重要度(この場合6)が付加されることになる。
その後、収集用機器21は、共通データ記憶部12eの中から、次の番号「(3)」で示される処理ユニット、つまり、運賃記憶部15が特定した障害元となる処理ユニットを示す情報を読み込むように動作する。この場合、運賃記憶部15は、障害元となる処理ユニットとして番号「(2)」、つまり、接客用表示部13を特定している。
このため、収集用機器21は、図6(c)に示すように、障害元特定テーブル21bの中の接客用表示部13を示す番号「(2)」に対応するポイントの欄に、重要度テーブル21aから読み取った運賃記憶部15の重要度「8」を記述する。
その後、収集用機器21は、共通データ記憶部12eの中から、次の番号「(4)」で示される処理ユニット、つまり、紙幣処理部18が特定した障害元となる処理ユニットを示す情報を読み込むように動作する。この場合、紙幣処理部18は、障害元となる処理ユニットとして番号「(3)」、つまり、運賃記憶部15を特定している。
このため、収集用機器21は、図6(d)に示すように、障害元特定テーブル21bの中の運賃記憶部15を示す番号「(3)」に対応するポイントの欄に、重要度テーブル21aから読み取った紙幣処理部18の重要度「9」を記述する。この場合、障害元特定テーブル21bの中の運賃記憶部15を示す番号「(3)」に対応するポイントの欄は、先に記述された接客用表示部13の重要度「6」に、紙幣処理部18の重要度「9」が加算されて「15」となる。
以下、同様に、収集用機器21は、共通データ記憶部12eに報告元として記述されている各処理ユニットに番号順に順次アクセスし、障害元となる処理ユニットが記述されている場合には、その障害元処理ユニットに対応する障害元特定テーブル21bのポイントの欄に、当該障害元処理ユニットを特定した処理ユニットに設定されている重要度を付加する、という処理動作を繰り返し実行する。
そして、全ての報告元処理ユニットに対する処理動作が終了した時点で、収集用機器21は、障害元特定テーブル21b上で最もポイントの値が大きい処理ユニットを、最も障害の発生原因の可能性の高い処理ユニットとして特定し、その処理ユニットからログ情報を収集して障害の原因を解析するための障害情報を得るようにしている。
図7は、収集用機器21が、上記共通データ記憶部12e及び重要度テーブル21aの情報に基づいて障害元特定テーブル21bを作成し、障害の発生原因として最も可能性の高い1つの処理ユニットを特定する処理動作の一例をまとめたフローチャートを示している。
すなわち、処理が開始(ステップS7a)されると、収集用機器21は、ステップS7bで、共通データ記憶部12eの報告元となる処理ユニットを示す番号を初期値である「(1)」に設定し、ステップS7cで、その番号「(1)」で示される処理ユニット、つまり、制御処理部12に対応する障害元処理ユニットを示す欄の情報を読み込むように動作する。
その後、収集用機器21は、ステップS7dで、読み込んだ情報で示される障害元処理ユニットが、障害元特定テーブル21bに障害元処理ユニットとして登録されているか否かを判別する。そして、登録されていると判断された場合(YES)、収集用機器21は、ステップS7eで、障害元特定テーブル21bの内容を更新する。この更新処理は、先に述べたように、登録済みと判断された障害元処理ユニットに対応する障害元特定テーブル21bのポイント欄に、当該障害元処理ユニットを特定した処理ユニットに設定されている重要度を付加することである。
そして、このステップS7eの後、または、上記ステップS7dで登録されていないと判断された場合(NO)、収集用機器21は、ステップS7fで、共通データ記憶部12eの報告元となる処理ユニットを示す番号を+1し、ステップS7gで、共通データ記憶部12eに記述されている報告元処理ユニットの中で、対応する障害元処理ユニットを示す欄の情報がまだ読み取られていない、未処理の処理ユニットが存在するか否かを判別し、存在すると判断された場合(YES)、ステップS7cの処理に戻される。
また、上記ステップS7gで未処理の処理ユニットが存在しないと判断された場合(NO)、収集用機器21は、ステップS7hで、障害元特定テーブル21b上で最もポイントの値が大きい処理ユニットを、最も障害の発生原因の可能性の高い処理ユニットとして特定し、処理を終了(ステップS7i)する。
図8は、上記ステップS7eで、共通データ記憶部12eから読み取った障害元処理ユニットを示す欄の情報に基づいて、障害元特定テーブル21bの内容を更新する処理動作の一例をまとめたフローチャートを示している。すなわち、処理が開始(ステップS8a)されると、収集用機器21は、ステップS8bで、重要度テーブル21aから報告元処理ユニットに設定された重要度を読み取り、ステップS8cで、読み取った重要度を障害元特定テーブル21bの対応する障害元処理ユニットのポイントの欄に加算して、処理を終了(ステップS8d)する。
上記した実施の形態によれば、障害が発生した場合に、各処理ユニットが制御処理部12の共通データ記憶部12eに自己の状態と障害元処理ユニットを示す情報とを書き込むようにし、収集用機器21が共通データ記憶部12eの内容から障害発生原因として最も可能性の高い1つの処理ユニットを特定し、その特定された処理ユニットからログ情報を収集して障害情報を得るようにしている。
このため、収集用機器21は、制御処理部12の共通データ記憶部12eと、障害発生原因として特定された処理ユニットとの、2つの処理ユニットにアクセスして情報を取得すればよいことになり、全ての処理ユニットから情報を収集する処理に比して、障害情報の収集処理を容易化して迅速に行なうことができる。また、通信するデータ量を最小限に抑え、機器の負担を軽減することができる。
さらに、上記した実施の形態によれば、各処理ユニットそれぞれに予め重要度を設定しておき、各処理ユニットが判断した障害元となる処理ユニットに対して、それを判断した処理ユニットに設定された重要度を付加し、最もポイントが大きい処理ユニットを、最も障害の発生原因の可能性の高い処理ユニットとして特定するようにしている。
すなわち、障害元となる処理ユニットを判断する処理ユニットに重要度を設定し、その処理ユニットが障害元と判断した処理ユニットに自己の重要度を付加することにより、障害元と判断された処理ユニットにその報告元となる処理ユニットの重要度に応じた重み付けを与えるようにしている。
これにより、障害元特定テーブル21b上では、同じ障害元処理ユニットに対しても、それを判断した報告元処理ユニットに応じて異なるポイントが付加されるため、例えば、複数の処理ユニットが障害元と判断した処理ユニットのポイントよりも、1つの処理ユニットが障害元と判断した処理ユニットのポイントの方が大きくなるというような事態も生じるので、単に障害元と判断した処理ユニットの数だけで、最も障害の発生原因の可能性の高い処理ユニットが特定されてしまうようなことが防止される。
このため、障害情報の収集対象となる制御機器としての自動券売機11に対して、障害発生時に、実際の稼働状況に細かく対応した信頼性の高い状態で、障害の発生原因である可能性が最も高い障害元処理ユニットの特定を行なうことができるようになる。
図9は、上記した実施の形態の変形例を示している。図9において、図1と同一部分に同一符号を付して説明すると、収集用機器21は、重要度テーブル21aに代えて重要度テーブル作成部21cを備えている。この重要度テーブル作成部21cは、自動券売機11が備える制御処理部12の共通データ記憶部12eに記憶された情報に基づいて、各処理ユニットに対する重要度を作成している。そして、この共通データ記憶部12eには、各処理ユニットが自己に障害の発生した日時を記述することができるようになっている。
すなわち、図10は、上記共通データ記憶部12eに記憶された情報の一例を示している。図10において、図3に示した共通データ記憶部12eと異なる部分は、障害元となる処理ユニットを報告した報告元となる各処理ユニット、つまり、制御処理部12,接客用表示部13,運賃記憶部15,紙幣処理部18,コイン処理部19及び発券処理部20にそれぞれ対応して、それに障害が発生した日時を示す情報を書き込む欄が設けられている点である。
そして、自動券売機11に障害が発生して、各処理ユニットが、自己の状態,障害発生日時及び障害元処理ユニット等を示す各種の情報を共通データ記憶部12eにそれぞれ書き込むと、上記収集用機器21による障害情報の収集が開始される。この場合、収集用機器21では、まず、重要度テーブル作成部21cが、制御処理部12の共通データ記憶部12eに記憶された障害発生日時を示す情報を読み取り、その読み取った情報に基づいて重要度テーブルを作成する。
この重要度テーブル作成部21cにおける重要度テーブルの作成処理としては、まず、共通データ記憶部12eに記憶されている障害発生日時のうち、最も古い日時を示している報告元の処理ユニットに対して、予め設定された最大の値(例えば10)を重要度として設定する。
その後、その次に古い障害発生日時を示している報告元の処理ユニットに対して、予め設定された次に大きい値(例えば9)を重要度として設定し、以後、同様な処理を繰り返し実行することにより重要度テーブルを作成する。
このようにして、重要度テーブル作成部21cにより重要度テーブルが作成されると、以後は、先に述べたように、収集用機器21が、共通データ記憶部12eに報告元として記述されている各処理ユニットに番号順に順次アクセスし、障害元となる処理ユニットが記述されている場合には、その障害元処理ユニットに対応する障害元特定テーブル21bのポイントの欄に、当該障害元処理ユニットを特定した処理ユニットに設定されている重要度を付加する、という処理動作を繰り返し実行する。
そして、全ての報告元処理ユニットに対する処理動作が終了した時点で、収集用機器21は、障害元特定テーブル21b上で最もポイントの値が大きい処理ユニットを、最も障害の発生原因の可能性の高い処理ユニットとして特定し、その処理ユニットからログ情報を収集して障害の原因を解析するための障害情報を得ることになる。
上記した変形例によれば、自動券売機11の障害発生時に、各処理ユニットが報告した障害発生日時に基づいて適応的に重要度テーブルを作成するようにしたので、障害情報の収集対象となる制御機器としての自動券売機11に対して、障害発生時に、実際の稼働状況により細かく対応した信頼性の高い状態で、障害の発生原因である可能性が最も高い障害元処理ユニットの特定を行なうことができるようになる。
また、上記した実施の形態では、保守対象となる制御機器として自動券売機11を例に説明したが、これに限らず、保守対象となる制御機器としては、例えば、複写機のような事務機器や、飲料,食品,煙草等の自動販売機等々、複数の処理ユニットを組み合わせて構成されるものであれば、広く適用することができる。
なお、この発明は上記した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を種々変形して具体化することができる。また、上記した実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良いものである。さらに、異なる実施の形態に係る構成要素を適宜組み合わせても良いものである。