JP2013184862A - アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体及びその製造方法、並びに酸化物イオン伝導体、固体電解質 - Google Patents

アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体及びその製造方法、並びに酸化物イオン伝導体、固体電解質 Download PDF

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Abstract

【課題】結晶軸が一方向に配向し、高いイオン伝導率を有するアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を提供すること、及びそのようなアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を、複雑なプロセスを経ることなく得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】LaSiを主成分とする第1の層と、La[Si1-xGex]O(ただし、xは0.01〜0.333の範囲の数を示す。)を主成分とする第2の層と、LaSiを主成分とする第3の層とを、第1の層/第2の層/第3の層の順に接合してなる接合体を元素拡散が生じる温度で加熱し、加熱後に生成する積層構造のうち最も中間に位置する層以外の層を除去して得られることを特徴とするアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体、及び該アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の製造方法である。
【選択図】図2

Description

本発明は、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体及びその製造方法に関し、詳しくは特定の結晶軸が一方向に配向しているアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体及びその製造方法に関する。さらには、このようなアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を用いた酸化物イオン伝導体及び固体電解質に関する。
一般式がLn9.33+2x(SiO4)6O2+3x(但し、Lnは希土類元素から選択された1種類以上の元素であり、xは-0.10≦x≦0.33の範囲の数である。)で表される、アパタイト型の結晶構造を有する希土類ケイ酸塩は、特許文献1および特許文献2において500〜700℃程度の中温度領域であっても比較的優れた酸化物イオン伝導性を示すことが報告されている。このようなアパタイト型化合物からなる酸化物イオン伝導体を固体電解質型燃料電池の電解質とした場合、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)やSDC(スカンジナドープドセリア)、LSGM(ランタンガレート系酸化物)を電解質とする燃料電池に比べて運転温度を低温にすることができ、加熱に要するエネルギー等を省力化することができるという利点がある。このようなアパタイト型の結晶構造を有する希土類ケイ酸塩からなる酸化物イオン伝導体は、従来、Ln2O3およびSiO2などの酸化物を出発原料に用いて、原料粉末を混合して成形・焼成する方法や、同じくLn2O3およびSiO2などの酸化物を出発原料に用いて、固相反応法によりアパタイト型希土類ケイ酸塩からなる粉末を合成し、次に合成された粉末を成形・焼結する方法により製造するのが一般的であった。
一方、アパタイト型化合物が有する酸化物イオン伝導特性は、特許文献3および非特許文献1において、ベルヌーイ法やチョコラルスキー法等にて作製された単結晶から、c軸に沿う平行方向に延在する箇所と、c軸に対して直交方向に延在する箇所から切り出した試料の酸化物イオン伝導率を比較すると、c軸に沿う平行方向に延在する箇所から切り出した試料の方が優れているという報告があり、酸化物イオン伝導率はc軸方向に沿う平行方向が高い。
特許文献3には、アパタイト型化合物の結晶粉末を溶媒に添加してスラリーとした後、このスラリーを磁場の存在下に配置することにより、スラリー中の結晶が概ね配向するという知見が開示されている。これにより結晶が概ね特定方向に配向した成形体が得られる。このような成形体を焼成することで、アパタイト型化合物(La10Si6027)からなり、かつロットゲーリング法による配向度が42%である、酸化物イオン伝導率に異方性を示す結晶配向セラミックスを得ることができる。
しかし、この特許文献3に開示された結晶配向セラミックスの製造方法では、適切な粘性のスラリーを準備する必要があり、さらにこのスラリーを容器ごと磁場中に静置する必要があるため、製造プロセスが複雑になるという問題があった。
また、特許文献4には、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3012)からなる板状テンプレート粒子からなる粉末にBi2O3とNa2CO3、TiO2を所定の比率で混合し、この混合物を板状粉末が配向するように成形して焼結する方法が開示されている。これによると、チタン酸ビスマス(Bi0.5Na0.5Ti03)からなり、かつロットゲーリング法による配向度が34%である結晶配向セラミックスを得ることができる。
しかし、この特許文献4に開示された方法の場合、高配向度を有する結晶配向セラミックスを得るためには、多量の板状テンプレート粒子を用いる必要がある。つまり、この方法では良好な形状のテンプレート粒子を多量に合成する必要があり、製造プロセスが複雑になるという問題があった。
一方、本発明者等は、特許文献5及び非特許文献4において、高い酸化物イオン伝導率を有するアパタイト型ケイ酸ランタンの製造方法として、La2SiO5を主成分とする第1の層とLa2Si2O7を主成分とする第2の層を接触させて接合界面を有する構成とし、これをアパタイト型の結晶構造を有するランタンケイ酸塩が生成する温度で加熱することによって、第1の層と第2の層の間で元素拡散が生じさせ、元の接合界面に対してc軸が垂直方向に沿って配向しているランタンケイ酸塩を製造する方法を提案した。この方法により、配向度が従来のものと比較して高く、酸化物イオン伝導率が高いランタンケイ酸塩を得ることができる。
このようなアパタイト型ケイ酸ランタンは、高い酸化物イオン伝導率を有することから、固体電解質として有用であるが、固体電解質としては酸化物イオン伝導率のさらなる向上が望まれており、改良の余地が残されていた。
一方、非特許文献5には、アパタイト型ケイ酸ランタンにゲルマニウムをドーピングすることで、酸化物イオン伝導率を向上させることについて提案されている。しかし、非特許文献5に記載のゲルマニウムをドーピングしてなるアパタイト型ケイ酸ランタンは、一定以上の酸化物イオン伝導率を有するものの、結晶の配向度については考慮されていなかった。
また、アパタイトケイ酸ランタンにゲルマニウムをドープする方法として、例えば、LaSiO/(LaSiO+GeO)/LaSiから成る拡散対を用いる方法が考えられる。しかし、この拡散対を実際に加熱すると、LaSiOとGeOとが直ちに反応してアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体が生成するものの、結晶の配向化は起こらず、酸化物イオン伝導率のさらなる向上は見込めない。
特開平8−208333号公報 特開平11−130595号公報 特開2004−244282号公報 特開平10−139552号公報 国際公開第2012/015061号
M. Higuchi, Y. Masubuchi, S. Nakayama, S. Kikkawa, K. Kodaira, K., Solid State Ionics 174, 73-80 (2004). T. Iwata, E. Bechade, K. Fukuda, O. Masson, I. Julien, E. Champion, P. Thomas, J. Am. Ceram. Soc. 91, 3714-3720 (2008). R. Ali, M. Yashima, Y. Matsushita, H. Yoshioka, F. Izumi, J.Solid State Chem. 182, 2846-2851 (2009). K. Fukuda, T. Asaka, R. Hamaguchi, T. Suzuki, H. Oka, A. Berghout, E. Bechade, O. Masson, I. Julien, E. Champion, and P. Thomas, Chem. Mater., 23, 5474-5483 (2011). J.E.H. Sansom, A. Najib, P.R. Slater, Solid State Ionics, 175, 353-355 (2004).
本発明は、結晶軸が一方向に配向し、高い酸化物イオン伝導率を有するアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を提供すること、及びそのようなアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を、複雑なプロセスを経ることなく得ることができる製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、高い酸化物イオン伝導率を有する酸化物イオン伝導体、固体電解質を提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明は以下の通りである。
(1)LaSiを主成分とする第1の層と、La[Si1-xGex]O(ただし、xは0.01〜0.333の範囲の数を示す。)を主成分とする第2の層と、LaSiを主成分とする第3の層とを、第1の層/第2の層/第3の層の順に接合してなる接合体を元素拡散が生じる温度で加熱し、加熱後に生成する積層構造のうち最も中間に位置する層以外の層を除去して得られることを特徴とするアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体。
(2)前記(1)に記載のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を用いてなる酸化物イオン伝導体。
(3)前記(1)に記載のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を用いてなる固体電解質。
(4)LaSiを主成分とする第1の層と、La[Si1-xGex]O(ただし、xは0.01〜0.333の範囲の数を示す。)を主成分とする第2の層と、LaSiを主成分とする第3の層とを、第1の層/第2の層/第3の層の順に接合して接合体を得る工程と、前記接合体を元素拡散が生じる温度で加熱する工程と、加熱後に生成する積層構造のうち最も中間に位置する層以外の層を除去する工程と、を含むことを特徴とするアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の製造方法。
(5)前記第2の層の厚みを、製造しようとするアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の厚みの少なくとも2倍の厚みに設定し、かつ前記第1の層の厚み及び前記第3の層の厚みをそれぞれ前記第2の層の厚みの0.409〜4.09倍に設定する前記(4)に記載のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の製造方法。
(6)前記第1の層と前記第3の層とを同じ厚みに設定する前記(5)に記載のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の製造方法。
本発明によれば、結晶軸が一方向に配向し、高い酸化物イオン伝導率を有するアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を提供すること、及びそのようなアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を、複雑なプロセスを経ることなく得ることができる製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、高い酸化物イオン伝導率を有する酸化物イオン伝導体、固体電解質を提供することができる。
実施例1において作製したアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の断面において、CuKα1線(45 kV×40 mA)を入射光とする高分解能X線粉末回折装置を用いて、15.0°から90.0°の2θ範囲における回折X線のプロフィル強度の測定結果を示すグラフである。 実施例1で得られた拡散対試料(接合体)の対角位の偏光顕微鏡写真であり、矢印Pはポーラライザーの振動方向を示し、矢印Aはアナライザーの振動方向を示す。 実施例1で得られた拡散対試料(接合体)の消光位の偏光顕微鏡写真であり、矢印Pはポーラライザーの振動方向を表し、矢印Aはアナライザーの振動方向を示す。 実施例2で得られた拡散対試料(接合体)の対角位の偏光顕微鏡写真であり、矢印Pはポーラライザーの振動方向を示し、矢印Aはアナライザーの振動方向を示す。 実施例2で得られた拡散対試料(接合体)の消光位の偏光顕微鏡写真であり、矢印Pはポーラライザーの振動方向を示し、矢印Aはアナライザーの振動方向を示す。 比較例1で得られた拡散対試料(接合体)の偏光顕微鏡写真であり、矢印Pはポーラライザーの振動方向を示し、矢印Aはアナライザーの振動方向を示す。 比較例1で得られた拡散対試料(接合体)の偏光顕微鏡写真であり、矢印Pはポーラライザーの振動方向を示し、矢印Aはアナライザーの振動方向を示す。
<アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体>
本発明のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体は、LaSiを主成分とする第1の層と、La[Si1-xGex]O(ただし、xは0.01〜0.333の範囲の数を示す。)を主成分とする第2の層と、LaSiを主成分とする第3の層とを、第1の層/第2の層/第3の層の順に接合してなる接合体を元素拡散が生じる温度で加熱し、加熱後に生成する積層構造のうち最も中間に位置する層以外の層を除去して得られることを特徴としている。
また、本発明のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の製造方法は、LaSiを主成分とする第1の層と、La[Si1-xGex]O(ただし、xは0.01〜0.333の範囲の数を示す。)を主成分とする第2の層と、LaSiを主成分とする第3の層とを、第1の層/第2の層/第3の層の順に接合して接合体を得る工程と、前記接合体を元素拡散が生じる温度で加熱する工程と、加熱後に生成する積層構造のうち最も中間に位置する層以外の層を除去する工程と、を含むことを特徴としている。
本発明において、前記接合体は、第2の層を、第1の層及び第3の層で挟んだ構造、いわばサンドイッチ構造である。そして、前記接合体中の第1の層及び第3の層においては、いずれの層も主成分はLaSiで同じであり、第2の層の主成分は、第1の層及び第3の層とは異なり、La[Si1-xGex]O(ただし、xは0.01〜0.333の範囲の数を示す。)である。つまり、第2の層の主成分は、予めLaSiOにゲルマニウムをドープした化合物La[Si,Ge]Oであるか、または主成分がLaSiOの粉末と、主成分がLaGeOの粉末の機械的な混合物であって、その平均化学組成がLa[Si1-xGex]O(ただし、xは0.01〜0.333の範囲の数を示す。)の混合粉末などである。
本発明においては、第1の層と、第2の層と、第3の層とを、第1の層/第2の層/第3の層の順に接合してなる接合体を、元素拡散が生じる温度で加熱することでアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を生成する。より具体的には、上記接合体を元素拡散が生じる温度で加熱すると、第1の層と第2の層との接合界面近傍、及び第2の層と第3の層との接合界面近傍にアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体が生成し、さらに元素拡散が進行すると、第1の層と第2の層との接合界面、及び第2の層と第3の層との接合界面の間の領域がアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体となる。つまり、加熱後に生成する積層構造のうち最も中間に位置する層がアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の層となる。この方法によると、第1の層と第2の層との接合界面、及び第2の層と第3の層との接合界面の間の領域(加熱後に生成する積層構造のうち最も中間に位置する層)において、アパタイト型ケイ酸ランタンにゲルマニウムがドーピングされた結晶構造であり、かつ元の接合界面に対してc軸が垂直方向に沿って配向した結晶構造を有する新たな物質たるアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体が得られる。従って、(1)アパタイト型ケイ酸ランタンにゲルマニウムをドーピングしたことと、(2)結晶軸が一方向に配向していることとが相まって、上記(1)のみの結晶構造又は上記(2)のみの配向多結晶体と比較して、酸化物イオン伝導率が高いアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体が得られる。このようにして得られるアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の組成式は、La9.33[Si6−4.67xGe4.67x]O26が得られると推察される。これは、La[Si1-xGe]Oと、LaSiのSiO成分が、次の式の通りに反応して生成すると考えられるからである。
14La[Si1−xGe]O+4SiO→3La9.33[Si6−4.67xGe4.67x]O26
なお、以上のようにして得られるアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体は、ラマン分光法やX線回折法により固溶体であることを確認することができ、本発明者は実際に固溶体であることを確認している。
また、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体は、加熱後に生成する積層構造のうち最も中間に位置する層に生成するため、それ以外の層を除去することでアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体のみを得ることができる。さらに、このようにして得られるアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の層の中心には、この層を二分する面状の結晶粒界(Grain/grain interfacial contact boundary)が存在するため(図3及び5において横向き矢印で示す。)、結晶粒界がないものを得るにはその部分を除去する必要がある。すなわち、得られたアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の層を、結晶粒界を境に2つに切断し、切断面を研磨又は研削などして除去することで、結晶粒界がないアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体が得られる。
上記のように生成したアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の層に隣接する上下の層は、ゲルマニウムを含まないアパタイト型ケイ酸ランタンの層となる(図2〜7参照)。このようなアパタイト型ケイ酸ランタンの層が生成するのは、第1の層又は第3の層のLaSiからのSiOの離脱により生成・成長するものと考えられるが、第1の層又は第3の層のLaSiと、第2の層のLa[Si1−xGe]Oから離脱したLaとの反応により生成・成長する可能性もある。
一方、本発明においては、上述の通り、3層構成のサンドイッチ構造の接合体を加熱してアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を生成しているが、La[Si,Ge]O及びLaSiの2層の接合体を加熱した場合であっても同様にアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体が生成することが理論的には考えられる。
しかし、2層(La[Si,Ge]O/LaSi)の接合体を単純に加熱(例えば1600℃)したのでは、加熱中にLa[Si,Ge]O層からGeO成分が空気中に揮発して散逸することが想定され、良好な「配向したアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体から成る生成層」は形成されないと推察される。
これに対して、本発明に係る3層のサンドイッチ構造の接合体を加熱した場合には、GeO成分の揮発がLa[Si,Ge]Oの層を両側から挟む二つのLaSi層によって阻害され、配向したアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の生成反応が良好に進行する。
なお、2層構成であっても、加熱時にGeO成分の揮発を阻むことができれば良好なアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の生成が可能と考えられる。従って、GeO成分の揮発を阻む手段を講ずることにより、2層構成としてアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を得ることも可能である。
本発明において、第1の層はLaSiを主成分とする層であり、第2の層はLa[Si1-xGex]O(ただし、xは0.01〜0.333の範囲の数を示す。)を主成分とする層である。
ここで、主成分とは、それぞれの層において、LaSi又はLa[Si1-xGex]Oを90質量%以上含有することを意味する。
また、上記La[Si1-xGex]O中、xは0.01〜0.333の範囲の数を示すが、0.01未満では、ドーピングするゲルマニウムが不足して高いイオン伝導率が得られず、xが0.333を超えると、配向度が不十分となってしまう。xは0.167±0.15の範囲が好ましく、0.167±0.10の範囲がより好ましい。ここで、「0.167±Nの範囲」とは、(0.167−N)以上(0.167+N)以下の範囲をいう。
なお、第2の層におけるSiとGeとの比率は、原料となる、Siを含む試薬及びGeを含む試薬の比率を適宜調整することで上記範囲内とすることができる。例えば、[Si0.833Ge0.167]とするには、Siを含む試薬におけるSiと、Geを含む試薬におけるGeとの比が5:1となるように各試薬を用いればよい。
本発明においては、まず、以上の第1の層と、第2の層と、第3の層とを、第1の層/第2の層/第3の層の順に接合して接合体を得る。次いで、その接合体を元素拡散が生じる温度で加熱して、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を生成するのであるが、加熱温度及び加熱時間と、生成されるアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の層の厚みとの相関関係を考慮して、加熱温度等を適宜設定することが好ましい。具体的には、一定の厚みのアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を得るには、高温では加熱時間は短時間でよいのに対し、低温では加熱時間を長時間とする必要があるという関係にあるため、それらの関係を考慮して加熱温度等を設定することが好ましい。
具体的には、前記加熱温度は1300〜1700℃が好ましく、1500〜1600℃がより好ましく、前記加熱時間は、5〜200時間が好ましく、25〜50時間がより好ましい。また、加熱雰囲気は、大気中又は酸素雰囲気とすることが好ましい。このような条件が好ましい理由は、アパタイト構造層(アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の層)が形成し、且つ、アパタイト結晶中のGeO成分が加熱中に揮発し、La[Si,Ge]Oが一部生成してイオン導電性が低下しないようにするためである。
ここで、GeO成分が加熱中に揮発した場合の挙動について説明する。まず、単独のGeO(固相)は高温下で加熱すると、先ず液相になり、その後GeO(気相)+1/2O(気相)に分解して空気中に揮発する。これと同様な揮発現象は「アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体中に存在するGeO成分についても起こる」ことを本発明者は確認しており、すなわちアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を例えば1600℃程度の高温下で長時間(数時間程度)加熱すると、この化合物中のGeO成分が空気中に揮発して「アパタイト型シリコゲルマン酸ランタンとLa[Si,Ge]Oの混合物」に変化することとなる。
本発明において、第1の層〜第3の層の厚みは、特に制限はなく、所望の厚みのアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を得るために適宜設定すればよいが、第2の層の厚みを、製造しようとするアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の厚みの少なくとも2倍の厚みに設定し、かつ前記第1の層の厚み及び前記第3の層の厚みをそれぞれ前記第2の層の厚みの0.409〜4.09倍に設定することが好ましい。
例えば、10μm〜1mmの厚みのアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を得るには、第1の層の厚みは8μm〜1mm(詳細には、8.18μm〜0.818mm)とし、第2の層の厚みは20μm〜2mmとし、第3の層の厚みは8μm〜1mm(詳細には、8.18μm〜0.818mm)とすればよい。このような厚みに設定するのは以下の理由による。(1)第2の層は、既述のような結晶粒界の除去を考慮すると2倍の厚みが必要であるため、20μm〜2mmとなる。(2)その厚みの第2の層(La[Si1-xGex]O層)と反応してアパタイトを生成するLaSi層の厚みは、La[Si1-xGex]O層の0.818倍以上の厚みが必要であるため、LaSi層は16.36μm〜1.636mmの厚みが必要である。(3)LaSi層は、第1の層及び第3の層とに跨っているため、第1の層及び第3の層の各層は上記厚みの1/2(すなわち、第2の層の厚みの0.409倍)の8.18μm〜0.818mmの厚みとなる。
一方、第1の層〜第3の層とを接合した接合体の厚み(つまり、第1の層〜第3の層の合計厚み)は、例えば、36.36μm〜3.636mmとすることができる。
また、第1の層と第3の層は同じ厚みとすることが好ましい。さらには、(第1の層+第3の層)≧(第2の層×0.818)であることが好ましい。
本発明のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体は、結晶軸が一方向に配向していることから、その方向に沿う方向のイオン伝導率が高く、イオン伝導体として有用である。
具体例を示すと、本発明のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体(第2の層の化学組成はLa[Si0.833Ge0.167]Oなので、これから化学組成はLa9.33[Si5.22Ge0.78]O26であると推察される)のイオン伝導率を測定したところ、400℃で2.0×10−3(S/cm)であり、700℃で6.92×10−2(S/cm)であったのに対し、本発明の範囲外のLa9.33[SiGe]O26のイオン伝導率は、文献値で800℃では0.01(S/cm)である(前記非特許文献5参照)。すなわち、本発明の結晶配向セラミックスの700℃におけるイオン伝導率は、文献値の800℃におけるイオン伝導率よりも約7倍も大きい値を示した。
ここで、本発明のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体のイオン伝導率は以下のようにして得た。まず、未反応の層、すなわちアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体以外の層を研削(サンドペーパー#200)除去し、さらに、元の接合界面を除去できるまで厚み0.36mmまで研削(サンドペーパー#200、サンドペーパー#1200)を進めた。このサンプルを約3mm×約3mmの試験片(厚み0.36mm)に成形した後、スパッタリングにより試験片の表裏面に白金薄膜(厚み:0.4μm)を形成した。次いで、形成した白金薄膜を電極として、交流インピーダンス法により電極間のバルク抵抗を測定し、そのバルク抵抗と試験片のサイズとからイオン伝導率を算出した。なお、上記白金薄膜は、白金ペーストを焼き付けることによっても形成することができる。
測定条件・使用機材は以下の通りである。
[測定条件・使用機材]
・測定周波数:4Hz〜1MHz
・測定温度:室温〜700℃
・炉内雰囲気:大気
・パソコンソフトウエア:Scribner Associates, Inc.製、ZPlot
・周波数応答アナライザー:日置電機(株)製、3532-80型
・加熱炉:(株)いすゞ製作所製 開閉式管状炉
本発明において、前記接合界面近傍に生成したアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体以外の物質は不要であるから、その物質を除去する工程を設けることが好ましい。
除去する手段としては、特に制限はなく、例えば、研磨、研削などの機械的手段や、エッチングなどの化学的手段、熱膨張率差による剥離が挙げられる。
一方、任意のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体が本発明の範囲内にあるか否かは、例えば、以下のようにして確認することができる。すなわち、本発明のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体は、その化学組成が使用する第2の層の化学組成から推察できることから、結晶軸が一方向に配向したアパタイト構造のものであって、化学組成が第2の層の化学組成に由来するものであれば本発明の範囲内であると考えられる。例えば、第2の層としてLa[Si0.833Ge0.167]Oを用いた場合には、主に、化学組成がLa9.33[Si5.22Ge0.78]O26のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体が得られると推察されることから、その化学組成であって、かつ結晶軸が一方向に配向したアパタイト構造であれば本発明の範囲内と考えられる。
<酸化物イオン伝導体>
本発明の酸化物イオン伝導体は、既述の本発明のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を用いてなることを特徴としている。
既述の通り、本発明のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体は、結晶軸が一方向に配向していることから、その方向に沿って高い酸化物イオン伝導率が得られる。従って、高い酸化物イオン伝導率が要求される種々のものに適用することができる。
<固体電解質>
本発明の固体電解質は、既述の本発明のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を用いてなることを特徴としている。
上述の通り、本発明のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体は、高い酸化物イオン伝導率を有することから、固体電解質型燃料電池向けの固体電解質として好適に使用することができる。つまり、固体電解質型燃料電池は、固体電解質の両側に電極を取り付け、一方の電極に燃料ガスを供給し、他方の電極に酸化剤(空気、酸素等)を供給して、650〜1000℃で動作する燃料電池であるが、本発明の固体電解質は700℃において6.92×10−2S/cmという高いイオン伝導率を示すため特に有用である。
本発明の固体電解質は、板状体とすることが好ましい。すなわち、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体からなる板状体であって、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体のc軸が板状体の主面に対して概ね垂直方向に沿って配向した結晶構造を有して成る板状体である。アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を板状体とする理由は、固体電解質として好適な形状だからである。
本発明の固体電解質としてのアパタイトシリコゲルマン酸ランタン多結晶体の結晶配向度は49%以上であることが望ましい。この理由は、酸素イオンの移動方向であるc軸への配向度が大きくなると構造体全体の酸素イオン伝導率が向上するためである。
板状体たる固体電解質の主面は平面もしくは曲面のいずれであってもよいが、主面の法線方向とc軸の配向方向とが一致していることが望ましい。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
第1の層としてLaSiを、第2の層としてLa[Si0.833Ge0.167]Oを、第3の層としてLaSiを、第1の層/第2の層/第3の層の順に接合してなる接合体を電気炉中にて1600℃で50時間加熱した後、電気炉の電源をオフにして室温まで約3時間かけて冷却した。上記の熱処理した接合体(拡散対試料)の一つを、元の接合界面に対して平行方向に、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体が露出するようにダイヤモンドカッターで切り出し、その断面をダイヤモンドペースを用いて鏡面研磨して研磨片を作製した。研磨面に露出したアパタイト型ケイ酸ランタン多結晶体の結晶学的な方位を調査する目的で、CuKα1線(45 kV×40mA)を入射光とする高分解能X線粉末回折装置を用いて、15.0°から90.0°の2θ範囲における回折X線のプロフィル強度を測定した(図1に示す。)。X線粉末回折パターンには回折面指数が002および004、006の反射が顕著に観測されることから、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体は、元の接合界面に垂直な方向に沿ってc軸が配向していることが確かめられた。
この多結晶体の配向度は、下記式(1)に示すロットゲーリングの式から算出することができる。
式(1)において、ρ0は、配向していないアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体において、回折X線の2θ範囲が15.0°から90.0°の間に出現した全回折反射の強度の合計と、回折面指数が002および004、006の回折反射の強度の合計を用いて、式(2)によって求められる。
ただし、式(2)のΣI0(hkl)は2θ範囲が15.0°から90.0°の間に出現した全回折反射の強度の合計を表し、式(2)のΣI0(00l)は回折面指数が002および004、006の回折反射の強度の合計を表す。
一方、式(1)中のρは、配向したアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体において、回折X線の2θ範囲が15.0°から90.0°の間に出現した全回折反射の強度の合計と、回折面指数が002および004、006の回折反射の強度の合計を用いて、式(3)によって求められる。
ただし、式(3)のΣI(hkl) は2θ範囲が15.0°から90.0°の間に出現した全回折反射の強度の合計を表し、式(3)のΣ(00l)は回折面指数が002および004、006の回折反射の強度の合計を表す。以上の式(1)〜式(3)を用いて、この多結晶体の配向度を求めると79%となり、極めて高い配向度である。
上記の熱処理した拡散対試料の一つを、元の接合面に対して垂直方向にダイヤモンドカッターで切り出し、その断面をダイヤモンドペーストを用いて鏡面研磨して研磨片を作製した。上記研磨片の研磨面を、エポキシ樹脂を用いてスライドガラスに貼り付け、さらに余分な部分をダイヤモンドカッターを用いて切り取った後、エメリーペーパーとダイヤモンドペーストで研磨して薄片を作製した。偏光顕微鏡を用いて直交ポーラーで微細組織を観察したところ、図2に示すように、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の柱状結晶のほぼ全てが対角位にあることが観察された。また、元の接合界面のLa[Si0.833Ge0.167]O側には、高さ約360μm×幅約45μmの大きさのアパタイト型シリコゲルマン酸ランタンの柱状結晶がその界面に垂直に結晶成長して集合している様子が観察され、また、元の接合界面のLaSi側には、高さ約270μm×幅約45μmの大きさのアパタイト型ケイ酸ランタンの柱状結晶がその界面に垂直に結晶成長して集合している様子が観察された。これらのアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン及びアパタイト型ケイ酸ランタンの柱状結晶は、全体で厚さ約1265μmに達していた。アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の柱状結晶の集合体について、直交ポーラーで消光の様子を観察したところ、図3に示すように、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の柱状結晶のほぼ全てが消光位にあることが観察された。また、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の柱状結晶全体がほぼ同時に直消光することが確認できた。したがって、拡散対の元の接合界面近傍に生成したアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体は、個々の結晶粒子のc軸方向がほぼ一致していることが確かめられた。
[実施例2]
第1の層としてLaSiを、第2の層としてLa[Si0.667Ge0.333]Oを、第3の層としてLaSiを、第1の層/第2の層/第3の層の順に接合してなる接合体を電気炉中にて1600℃で50時間加熱した後、電気炉の電源をオフにして室温まで約3時間かけて冷却した。上記の熱処理した接合体(拡散対試料)の一つを、元の接合面に対して垂直方向にダイヤモンドカッターで切り出し、その断面をダイヤモンドペーストを用いて鏡面研磨して研磨片を作製した。上記研磨片の研磨面を、エポキシ樹脂を用いてスライドガラスに貼り付け、さらに余分な部分をダイヤモンドカッターを用いて切り取った後、エメリーペーパーとダイヤモンドペーストで研磨して薄片を作製した。偏光顕微鏡を用いて直交ポーラーで微細組織を観察したところ、図4に示すように、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の柱状結晶のほぼ全てが対角位にあることが観察された。また、元の接合界面のLa[Si0.667Ge0.333]O側には、高さ約325μm×幅約45μmの大きさのアパタイト型シリコゲルマン酸ランタンの柱状結晶がその界面に垂直に結晶成長して集合している様子が観察され、また、元の接合界面のLaSi側には、高さ約250μm×幅約45μmの大きさのアパタイト型ケイ酸ランタンの柱状結晶がその界面に垂直に結晶成長して集合している様子が観察された。これらのアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン及びアパタイト型ケイ酸ランタンの柱状結晶は、全体で厚さ約1140μmに達していた。アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の柱状結晶の集合体について、直交ポーラーで消光の様子を観察したところ、図5に示すように、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の柱状結晶のほぼ全てが消光位にあることが観察された。また、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の柱状結晶全体がほぼ同時に直消光することが確認できた。したがって、拡散対の元の接合界面近傍に生成したアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体は、個々の結晶粒子のc軸方向がほぼ一致していることが確かめられた。
また、実施例1と同様にして配向度を求めたところ79%であった。
[比較例1]
第1の層としてLaSiを、第2の層としてLa[Si0.580Ge0.420]Oを、第3の層としてLaSiを、第1の層/第2の層/第3の層の順に接合してなる接合体を電気炉中にて1600℃で25時間加熱した後、電気炉の電源をオフにして室温まで約3時間かけて冷却した。上記の熱処理した接合体(拡散対試料)の一つを、元の接合面に対して垂直方向にダイヤモンドカッターで切り出し、その断面をダイヤモンドペーストを用いて鏡面研磨して研磨片を作製した。上記研磨片の研磨面を、エポキシ樹脂を用いてスライドガラスに貼り付け、さらに余分な部分をダイヤモンドカッターを用いて切り取った後、エメリーペーパーとダイヤモンドペーストで研磨して薄片を作製した。偏光顕微鏡を用いて直交ポーラーで微細組織や消光の様子を観察したところ、図6においては、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の短柱状結晶の多くは対角位にあるが、消光位にある短柱状結晶も観察された。また、図7においては、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の柱状結晶の多くは消光位にあるが、対角位にある短柱状結晶も観察された。つまり、元の接合界面のLa[Si0.580Ge0.420]O側には、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタンの短柱状結晶がランダムに集合している箇所と、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタンの短柱状結晶がその界面にほぼ垂直に結晶成長して集合している箇所の両方が観察された。すなわち、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の配向は十分でないことを確認することができた。
また、実施例1と同様にしてアパタイト型シリコゲルマン酸ランタンの短柱状結晶がランダムに集合している箇所の配向度を求めたところ、35%であり、アパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の配向は十分でない。
以上の実施例・比較例より、本発明のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体は配向度が高いことが確認された。つまり、酸化物イオン伝導率も高いと言うことができる。

Claims (6)

  1. LaSiを主成分とする第1の層と、La[Si1-xGex]O(ただし、xは0.01〜0.333の範囲の数を示す。)を主成分とする第2の層と、LaSiを主成分とする第3の層とを、第1の層/第2の層/第3の層の順に接合してなる接合体を元素拡散が生じる温度で加熱し、加熱後に生成する積層構造のうち最も中間に位置する層以外の層を除去して得られることを特徴とするアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体。
  2. 請求項1に記載のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を用いてなる酸化物イオン伝導体。
  3. 請求項1に記載のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を用いてなる固体電解質。
  4. LaSiを主成分とする第1の層と、La[Si1-xGex]O(ただし、xは0.01〜0.333の範囲の数を示す。)を主成分とする第2の層と、LaSiを主成分とする第3の層とを、第1の層/第2の層/第3の層の順に接合して接合体を得る工程と、前記接合体を元素拡散が生じる温度で加熱する工程と、加熱後に生成する積層構造のうち最も中間に位置する層以外の層を除去する工程と、を含むことを特徴とするアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の製造方法。
  5. 前記第2の層の厚みを、製造しようとするアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の厚みの少なくとも2倍の厚みに設定し、かつ前記第1の層の厚み及び前記第3の層の厚みをそれぞれ前記第2の層の厚みの0.409〜4.09倍に設定する請求項4に記載のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の製造方法。
  6. 前記第1の層と前記第3の層とを同じ厚みに設定する請求項5に記載のアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体の製造方法。
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