JP2017066024A - 配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法 - Google Patents

配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】クラックの発生を抑制して大面積化を図ることができ、好ましくは複雑でないプロセスでより安価に製造することができる、新たな配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法を提供する。【解決手段】式(1):A2+xTO5+z(式中のAは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素である。式中のTは、Si又はGe又はその両方を含む元素である。式中のxは−1〜1、zは−2〜2である。)で示される複合酸化物結晶体と、前記T元素を含む気体又は固体とを接触させて、大気よりも酸素濃度が低く、かつ1atm以上の雰囲気において、1300〜1800℃で加熱することを特徴とする、配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法を提案する。【選択図】図1

Description

本発明は、固体電解質形燃料電池(SOFC)、イオン電池、空気電池などの電池の固体電解質、さらにはセンサーや触媒、分離膜などとして利用可能な酸化物イオン伝導体として使用することができる配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法に関する。
酸化物イオン伝導体は、燃料電池(SOFC)、イオン電池、空気電池などの電池の固体電解質や、センサーや分離膜など、様々な電気化学デバイスに利用可能な機能性セラミックスとして注目されている材料である。
酸化物イオン伝導体としては、従来から、蛍石型構造を有するZrO2、特にY23を添加した安定化ZrO2が広範囲に使用されているほか、LaGaO3などのペロブスカイト型酸化物などが広く知られていた。
従来から知られていたこの種の酸化物イオン伝導体の多くは、酸素欠陥を導入し、この酸素欠陥を通して酸素イオンが移動する欠陥構造型のものであった。これに対し、最近、格子間酸素が移動する酸化物イオン伝導体として、La10Si627などのアパタイト型複合酸化物からなる酸化物イオン伝導体が報告されている。
アパタイト型複合酸化物からなる酸化物イオン伝導体に関しては、例えば特許文献1(特開2004−244282号公報)には、3価の元素Aと、4価の元素Bと、酸素Oとを構成元素として有し、組成式がA1.5X+12(ただし、8≦X≦10)で表されるとともに、結晶構造がアパタイト型である複合酸化物からなり、かつ酸素イオンの伝導度に異方性を有する酸化物イオン伝導体が開示されている。
アパタイト型複合酸化物からなる酸化物イオン伝導体の中でも、ランタンシリケート系複合酸化物からなる酸化物イオン伝導体は、中温領域で高いイオン伝導性を発揮する固体電解質として知られており、例えば組成式La9.33+xSi626+1.5xなどが注目されている。
ランタンシリケート系複合酸化物は、対称性の低い、つまり異方性の高いアパタイト構造を有し、イオン伝導の活性化エネルギーが低いことから、SOFCの固体電解質とした場合、特に低温作動化に有利であると言われている。
ところで、ランタンシリケート系複合酸化物からなる酸化物イオン伝導体は、そのイオン伝導性に異方性があることから、配向させることによりイオン伝導性をさらに高めることが期待できる。
ランタンシリケート系複合酸化物を一方向に配向させることができる製造方法、すなわち配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法として、フローティングゾーン法(FZ法)等によってアパタイト型ランタンシリケート複合酸化物の単結晶を作製する方法や、La23粉末とSiO2粉末とを混合した後、700〜1200℃で熱処理して複合酸化物の多孔質体を生成し、この多孔質体を粉砕して粉体とした後、該粉体を分散媒と混合してスラリーとし、このスラリーを磁場の存在下で固化させて成形体とした後、これを1400〜1800℃で焼結させることにより、結晶の配向方向を概ね一致させたイオン伝導性配向セラミックスを得る方法などが提案されている。
例えば特許文献2(特許第5651309号公報)には、ランタノイドの酸化物粉末とSi又はGeの少なくとも一方の酸化物粉末とを含む酸化物原料を混合する酸化物原料混合工程と、
混合した前記酸化物原料を加熱溶融させて液体状態とし、これをキャストした後、急冷してガラス状物を得る溶融ガラス化工程と、前記ガラス状物を800〜1400℃で熱処理し、イオン伝導パスがc軸方向に配向したイオン伝導性配向セラミックスを結晶化させる結晶化工程とを有する、ことを特徴とするイオン伝導性配向セラミックスの製造方法が開示されている。
特許文献3(WO2012/015061号公報)には、SiO2を主成分とする第1の層とLa2SiO5を主成分とする第2の層を接触させて接合界面を有する構成とし、これを所定温度で加熱することによって、結晶配向セラミックスを製造する方法であって、前記所定温度が前記第1の層と前記第2の層の間で元素拡散が生じ、アパタイト型の結晶構造を有するランタンケイ酸塩が生成する温度であり、前記生成されたランタンケイ酸塩の結晶が、元の接合界面に対してc軸が垂直方向に沿って配向していることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法が開示されている。
特許文献4(特開2013−184862号公報)には、LaSiを主成分とする第1の層と、La[Si1-xGex]O(ただし、xは0.01〜0.333の範囲の数を示す。)を主成分とする第2の層と、LaSiを主成分とする第3の層とを、第1の層/第2の層/第3の層の順に接合してなる接合体を元素拡散が生じる温度で加熱し、加熱後に生成する積層構造のうち最も中間に位置する層以外の層を除去してアパタイト型シリコゲルマン酸ランタン多結晶体を得る方法が開示されている。
特許文献5(特開2014−148443号公報)には、LaSiOを主成分とする第1の層と、LaSiを主成分とする第2の層と、LaSiOを主成分とする第3の層とを、「第1の層/第2の層/第3の層」の順に接合して接合体を得る工程と、前記接合体を元素拡散が生じる温度で加熱する工程と、加熱後に生成する「未反応の第1の層/アパタイト型ケイ酸ランタン多結晶体の層/未反応の第3の層」から成る積層構造のうち、最も中間に位置する層以外の層を除去する工程と、を含むことを特徴とするアパタイト型ケイ酸ランタン多結晶体の製造方法が開示されている。
特開2004−244282号公報 特許第5651309号公報 WO2012/015061号公報 特開2013−184862号公報 特開2014−148443号公報
前述のように、配向性アパタイト型複合酸化物は、中温領域で高いイオン伝導性を発揮することができるばかりか、そのイオン伝導性に異方性があることから、一方向に配向させることによりイオン伝導性をさらに高めることができる。
しかしながら、従来知られていた配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法では、製造過程で結晶内にクラックなどが発生してしまうため、大型の結晶を作ることが困難であったり、焼結体のスラリー化や磁場を与えるプロセスなど、製造プロセスが複雑であるために製造コストが高くなったりするなどの問題を抱えていた。
そこで本発明は、クラックの発生を抑制して大面積化を図ることができ、好ましくは複雑でないプロセスでより安価に製造することができる、新たな配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法を提供せんとするものである。
本発明は、このような新たな配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法として、式(1):A2+xTO5+z(式中のAは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素である。式中のTは、Si又はGe又はその両方を含む元素である。式中のxは−1〜1、zは−2〜2である。)で示される複合酸化物結晶体と、前記T元素を含む気体又は固体とを接触乃至近接させて、大気よりも酸素濃度が低く、かつ1atm以上の雰囲気において、1300〜1800℃で加熱することを特徴とする、配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法を提案する。
本発明はまた、式(1):A2+xTO5+z(式中のAは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素である。式中のTは、Si又はGe又はその両方を含む元素である。式中のxは−1〜1、zは−2〜2である。)で示される複合酸化物結晶体の表面に、該複合酸化物結晶体の構成元素を含む液相層を形成し、該液相層に、前記T元素を含む気体又は固体を接触乃至近接させると共に、大気よりも酸素濃度が低く、かつ1atm以上の雰囲気において、1300〜1800℃で加熱することを特徴とする、配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法を提案する。
本発明が提案する配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法によれば、アパタイト型複合酸化物を一方向すなわちc軸方向に配向させることができるばかりか、イオン伝導性を高めることができる。しかも、配向結晶を容易に且つ安価に製造することができる。また、結晶を一方向に配向させることができると共に、クラックなどの発生を抑制することから、配向性アパタイト型酸化物イオン伝導体の大面積化を図ることができる。
よって、本発明が提案する製造方法によって得られた配向性アパタイト型複合酸化物は、固体電解質や分離膜、透過膜などとして、特に燃料電池(SOFC)、イオン電池、空気電池、酸素センサー、酸素濃縮器、酸素供給装置などの用途に好適に用いることができる。
本発明の一例に係る製造方法において、加熱アパタイト配向工程の一例を示した概略構成図である。 本発明の一例に係る製造方法において、加熱アパタイト配向工程の他例を示した概略構成図である。
次に、実施の形態例に基づいて本発明について説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
<本製造方法>
本発明の実施形態の一例に係る配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法(「本製造方法」と称する)は、前駆体としての複合酸化物結晶体(「前駆体複合酸化物結晶体」と称する)と、Si又はGe又はその両方(これらをまとめて「T元素」と称する)を含む気体又は固体とを接触乃至近接させた状態において、所定の雰囲気において所定の温度で加熱して、前駆体複合酸化物結晶体をアパタイト結晶構造とする共に一方向に配向させる工程(「加熱アパタイト配向工程」と称する)を備えた、配向性アパタイト型複合酸化物(「本配向性アパタイト型複合酸化物」と称する)の製造方法である。
この際、T元素は、後述するように前駆体複合酸化物結晶体の構成元素の一つである。
なお、本製造方法は、加熱アパタイト配向工程を備えていれば、他の工程を備えていてもよい。
<前駆体複合酸化物結晶体>
本製造方法における「前駆体複合酸化物結晶体」は、式(1):A2+xTO5+z(式中のAは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素である。式中のTは、Si又はGe又はその両方を含む元素である。式中のxは−1〜1、zは−2〜2である。)で示される複合酸化物結晶体である。
前駆体複合酸化物結晶体は、配向体であっても、無配向体であってもよい。
また、当該前駆体複合酸化物結晶体は、例えば焼結体であっても、成形体であっても、場合によっては膜体であってもよい。
式(1)中のxは、最終的に製造できる配向性アパタイト型複合酸化物の配向度及び酸素イオン伝導性を高める観点から、−1〜1であるのが好ましく、中でも−0.4以上或いは0.7以下、その中でも0以上或いは0.6以下であるのが好ましい。
式(1)中のzは、前駆体結晶格子における電気的中性を保ち、且つ化学的に結晶構造を保持し得る観点から、−2〜2であるのが好ましく、中でも−0.6以上或いは1以下、その中でも0以上或いは0.7以下であるのが好ましい。
前駆体複合酸化物結晶体の具体的組成例としては、例えばLa2SiO5、NdSiO、LaNdSiO、LaGeOなどを挙げることができる。中でも、イオン伝導性を高いものとする観点から、La2SiO5を好ましい組成として挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
前駆体複合酸化物結晶体の相対密度は95%以上であるのが好ましい。
前駆体複合酸化物結晶体の相対密度が低過ぎると、製造物に配向性を付与することが難しくなるばかりか、製造物である配向性アパタイト型複合酸化物の密度も低くなってしまうため、前駆体複合酸化物結晶体の相対密度は95%以上であるのが好ましい。
よって、かかる観点から、前駆体複合酸化物結晶体の相対密度は95%以上であるのが好ましく、中でも98%以上、その中でも99%以上であるのがさらに好ましい。
(前駆体複合酸化物結晶体の製法)
当該前駆体複合酸化物結晶体は、例えば、目的とするA元素及びT元素を含む化合物を原料としたゾルゲル法や水熱合成法等の湿式合成法で得られる化合物であってもよいし、固体合成によってA元素及びT元素を含む化合物を焼結して得られる化合物であってもよいし、また、スパッタリング等で成膜されたものであってもよい。
また、前駆体複合酸化物結晶体の焼結体としては、例えば、固相法で二種以上の酸化物を混合、加熱して得られた複合酸化物焼結体であっても、該焼結体を粉砕して得られた粉体を加圧成形してなる圧粉成形体であっても、さらに該圧粉成形体を加熱焼結して得られた焼結体(「複合酸化物圧粉成形焼結体」と称する)として調製されたものであってもよい。
この際、上記のように前駆体複合酸化物結晶体の相対密度を95%以上に調製する方法としては、常圧焼結法、加熱加圧法(ホットプレス)その他の緻密焼結体を作製する一般的な方法を採用すればよい。
中でも、配向性アパタイト型複合酸化物の相対密度を高める観点から言えば、前記複合酸化物圧粉成形焼結体であるのが好ましく、その中でも特に、冷間等方圧加圧(CIP)によって加圧成形してなる圧粉成形体を加熱焼結して得られた圧粉成形焼結体であるのが好ましく、該圧粉成形焼結体の表面を研磨して得られたものがさらに好ましい。
なお、前駆体複合酸化物結晶体の調製方法としては、大気中で1100℃〜1700℃で加熱して焼結させるのが好ましく、その中でも、大気中で原料となるAとTを含む化合物の混合物を1200℃〜1700℃で加熱した後、再度圧粉成形体として大気中で1300℃〜1700℃で加熱して焼結させるのがさらに好ましい。このように2度焼成する際の各焼成の役割としては、一度目の焼成は主に複合酸化物を合成する役割があり、2度目の焼成は主に焼結させる役割がある。
<加熱アパタイト配向工程>
加熱アパタイト配向工程では、前駆体複合酸化物結晶体と、T元素を含む気体又は固体とを接触乃至近接させた状態で、所定の雰囲気において所定の温度で加熱することにより、前駆体複合酸化物結晶体をアパタイト型結晶構造に変化させると共に、c軸方向に配向させて配向性アパタイト型複合酸化物を作製することができる。
ここで、「前駆体複合酸化物結晶体と、T元素を含む気体又は固体とを接触乃至近接させる」手段としては、例えば、前駆体複合酸化物結晶体を、T元素を含む粉末中に埋め込む方法や、T元素を含む気体を前駆体複合酸化物結晶体に供給する方法や、T元素を含む気体を多く含む環境下に前駆体複合酸化物結晶体を置く方法などを挙げることができる。
例えば、前駆体複合酸化物結晶体を、T元素を含む粉末中に埋め込んだ状態で加熱すると、T元素を含む粉末が気化してT元素を含んだガスを生じ、前駆体複合酸化物結晶体の表面がT元素を含んだガスと接触乃至近接した状態で加熱されると、当該前駆体複合酸化物結晶体表面はT元素を多く含むことになり、前駆体複合酸化物結晶体に比べて融点が下がるため、前駆体複合酸化物結晶体表面にはT元素を多く含む液相が形成されることになる。そして、この前駆体複合酸化物結晶体表面の液相成分が、前駆体複合酸化物結晶体と次々と反応し、この反応が前駆体複合酸化物結晶体表面から中心部に向って進んで結晶成長していくことで、前駆体複合酸化物結晶体がアパタイト型結晶構造に変化すると共に、c軸方向に配向するようになる。
より具体的な一例を挙げると、図1に示すように、例えば、前駆体としてのLaSiO焼結体を、無水ケイ酸などのSiO粉末中に埋め込んだ状態で加熱する。すると、SiO粉末が気化してSiO(ガス)が発生し、LaSiO焼結体表面はSiOが接触乃至近接した状態で加熱されることになる。そうすると、LaSiO焼結体表面はSiOリッチとなって融点が下がるため、La/Siモル比が2であるLaSiO焼結体表面にはSiOリッチな液相が生成する。そして、この液相成分がLaSiO焼結体と次々と反応し、この反応がLaSiO焼結体表面から中心部に向って結晶成長していくことで、アパタイト型六方晶構造を有するLa(9.33+x)Si(26+3x)結晶が生成する。この際、VLS(Vapor−Liquid−Solid)結晶成長メカニズム或いはこれに類するメカニズムにより、上記のように、反応がLaSiO焼結体表面から中心部に向って六方晶のc軸方向に結晶成長していくことで、c軸配向するようになる。
なお、上記反応では、前駆体複合酸化物結晶体を、T元素を含む粉末中に埋め込んだ状態で加熱し、T元素を含む粉末が気化してT元素を含んだガスを生じさせ、前駆体複合酸化物結晶体の表面をT元素を含んだガスと接触乃至近接した状態で加熱している。
前駆体複合酸化物結晶体の表面をT元素を含んだガスと接触乃至近接した状態で加熱することができればよいから、例えば図2に示すように、前駆体複合酸化物結晶体と、T元素を含む粉末乃至固体とを密閉空間において加熱し、T元素を含む粉末乃至固体を気化させて、前駆体複合酸化物結晶体の表面をT元素を含んだガスと接触乃至近接した状態で加熱するようにしてもよいし、又は、前駆体複合酸化物結晶体の表面にT元素を含んだガスを供給させて接触乃至近接した状態で加熱するようにしてもよい。
上記のようなメカニズムを考慮すると、前駆体複合酸化物結晶体表面に液相を形成すれば、T元素を含む固体(粉体を含む)又はガスを該液相に接触させることで、該液相を介してT元素を焼結体内に供給することができる。そして、該液相と前駆体複合酸化物結晶体とが反応して、アパタイト結晶構造に変化すると共に、c軸方向に配向するようになる。
この際、前駆体複合酸化物結晶体表面に液相を形成する方法としては、上記のように、前駆体複合酸化物結晶体を、T元素を含む粉末中に埋め込んだ状態で加熱するなどして、T元素を含んだガスを前駆体複合酸化物結晶体に接触させることにより、前駆体複合酸化物結晶体の表面をT元素を多く含む組成として融点を下げて液相を形成するようにしてもよいし、また、MgやAlなどの不純物を表面に添加することで、該表面の融点を下げて、前駆体複合酸化物結晶体表面に液相を形成することもできる。その他の方法により焼結体表面に液相を形成することも可能である。
(処理雰囲気)
加熱アパタイト配向工程において、前駆体複合酸化物結晶体を加熱する際の加熱雰囲気としては、大気の酸素濃度(典型的には20.3%)よりも酸素濃度が低く、かつ1atm以上の雰囲気であるのが好ましい。
大気よりも酸素濃度が低い雰囲気としては、例えば窒素、アルゴンなどの不活性ガス、その他の低酸素ガス雰囲気でもよい。または、不活性ガスと低酸素ガスの混合ガスでもよい。好ましくは窒素ガスである。
雰囲気の酸素濃度としては、1×10−6(0.0001%)〜10%が好ましく、中でも1%以下、その中でも0.1%以下であるのが特に好ましい。
ちなみに、大気雰囲気では、配向結晶成長速度が小さくなる傾向があるので好ましくない。
高温・低酸素濃度の1atm以上環境下では、T元素を含む気体(例えばSiO)のガス分圧が高くなり、当該T元素を含む気体が前駆体複合酸化物結晶体(例えばLaSiO焼結体)中に拡散し易くなる。また、雰囲気ガス圧を高くすることで、前駆体複合酸化物結晶体からT元素を含む気体(例えばSiO)への分解による内部気孔形成を抑制し、相対密度が高い配向体バルクが形成できる。例えば、窒素雰囲気において加圧条件すなわち1atmより高い気圧雰囲気とすることにより、配向体内部の気孔は小さくなり、量を減らすことができる。
よって、加熱アパタイト配向工程における処理雰囲気は、1atm以上の雰囲気であるのが好ましく、中でも2atm以上、特に3atm以上であるのが好ましい。一方、チャンバー装置の簡素化および高温焼成時(例えば1600℃以上)における窒化ケイ素の生成を抑えるという観点からは、5atm以下であることが好ましい。
加圧なし雰囲気では、配向結晶体内に気孔が多く残存することになるため、好ましくない。
(加熱温度)
T元素を含む気体(例えばSiO)が共存する環境下で高温加熱することにより、T元素(例えばSiO)が前駆体複合酸化物結晶体(例えばLaSiO焼結体)中に拡散し易くなる。
かかる観点から、T元素がSiの場合、加熱温度は、1400℃以上であるのが好ましく、中でも1500℃以上或いは1700℃以下、中でも1600℃以上或いは1700℃以下、その中でも1670℃以下であるのが特に好ましい。1400℃以上であれば、アパタイト型結晶が焼結体表面から生成し始めるが、c軸方向に配向した多結晶体は表面のみである。また、1700℃以上では、SiOリッチ相の融点(1675℃)を超えるため、SiO埋め込み粉末側に焼結体が溶融する可能性がある。
<本配向性アパタイト型複合酸化物>
本製造方法によれば、式(2):A9.33+y626.00+3y(式中のAは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素である。式中のTは、Si又はGe又はその両方を含む元素である。式中のyは−1〜1である。)で示される配向性アパタイト型複合酸化物を製造することができる。
なお、配向性アパタイト型複合酸化物の“配向性”とは、配向軸を有しているという意味であり、一軸配向及び二軸配向を包含する。本アパタイト型複合酸化物においてはc軸配向性を有しているのが好ましい。
式(2)において、Aとして挙げられた、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Be、Mg、Ca、Sr及びBaは、正の電荷を有するイオンとなり、アパタイト型六方晶構造を構成し得るランタノイド又はアルカリ土類金属であるという共通点を有する元素である。これらの中でも、酸素イオン伝導度をより高めることができる観点から、La、Nd、Ba、Sr、Ca及びCeからなる群のうちの一種又は二種以上の元素との組み合わせであるのが好ましく、中でも、La又はNdのうちの一種、或いは、LaとNd、Ba、Sr、Ca及びCeからなる群のうちの一種又は二種以上の元素との組み合わせであるのが好ましい。
また、式(2)におけるTとしては、Siのほか、Siと同様に作用する元素として、Siに近いイオン半径を有する第14族元素、例えばGeを挙げることができる。よって、当該Tの具体例としては、Si又はGe又はこれらの両方を含む元素であればよい。
式(2)において、yは、酸素イオン伝導性を高めることができる観点から、−1〜1であるのが好ましく、中でも0.00以上或いは0.70以下、その中でも0.45以上或いは0.65以下であるのが好ましい。
以下、本製造方法による製造物としての本アパタイト型複合酸化物の好ましい態様について説明する。
本アパタイト型複合酸化物は、c軸に配向したアパタイト型結晶構造を有し、ロットゲーリング法で測定した配向度、すなわちロットゲーリング配向度を0.80以上とすることができ、その中でも0.90以上とすることができる。
本アパタイト型複合酸化物のロットゲーリング配向度を0.80以上とするためには、A2+xTO5+zで示される前駆体を単一相且つ高密度(相対密度98%以上)に調製するのが好ましい。ただし、かかる方法に限定するものではない。
本アパタイト型複合酸化物は、相対密度を90%以上、特に92%以上とすることができる。
本アパタイト型複合酸化物の相対密度を90%以上にするためには、例えば前駆体複合酸化物結晶体の相対密度を95%以上にしたり、アニール温度を1700℃以下にしたり、アニール時の雰囲気ガス圧力を1atmよりも高くしたりするなどすればよい。
本アパタイト型複合酸化物は、500℃での酸素イオン導電率が1×10−3S/cm以上とすることができ、その中でも特に1×10−2S/cm以上とすることができる。
本アパタイト型複合酸化物の500℃での酸素イオン伝導率を1×10−3S/cm以上とするためには、ロットゲーリング配向度を0.80以上とするのが好ましい。ただし、かかる方法に限定するものではない。
本アパタイト型複合酸化物は、気孔率を10%以下、中でも8%以下とすることができる。
本アパタイト型複合酸化物の気孔率を10%以下とするためには、特に前駆体複合酸化物結晶体の相対密度を95%以上にすればよい。ただし、かかる方法に限定するものではない。
本製造方法によれば、結晶が一方向に配向したアパタイト型構造を有する酸化物イオン伝導体を得ることができるばかりか、結晶内のクラックなどの発生を抑制することができるから、より大面積の配向性アパタイト型酸化物イオン伝導体を製造することができる。
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
<実施例1>
(前駆体複合酸化物結晶体の水熱合成)
La(NO3)3・6H2O45gを水20mLに溶解させてLa(NO3)3酸性水溶液(La(NO3)3濃度52%、pH0.8)と、SiO23.1gをNH3水40mLに溶解させてSiO2塩基性水溶液(SiO2濃度7%、pH14)とをそれぞれ調製した。
前記La(NO3)3酸性水溶液とSiO2塩基性水溶液とをpH10となるように混合してLa−Si白色懸濁液とした後、このLa−Si白色懸濁液を密閉容器に入れて、密閉容器内において大気雰囲気下180℃(加熱乾燥器雰囲気の温度)を108時間保持するように加熱した後、セルロース濾紙で濾過し、150℃に加熱して乾燥させて非晶質前駆体を得た。次に、この非晶質前駆体を白金坩堝に入れて、大気雰囲気下1600℃(電気炉内雰囲気の温度)を5時間保持するように加熱(仮焼)して予備焼成物を得た。次いで、この予備焼成物をエタノール中に加えて遊星ボ−ルミルで粉砕し、予備焼成体粉末を得た。
次に、この予備焼成体粉末を、20mmφの成形器に入れて一方向から加圧して一軸成形してペレットを成形し、このペレット状成形体を大気中、1500℃で10時間加熱してペレット状焼結体を得、得られたペレット状焼結体の表面をダイヤモンド砥石で研磨して、16mmφ×0.8mm(厚さ)の前駆体複合酸化物結晶体(ペレット)を得た。
こうして得られた前駆体複合酸化物結晶体の粉末X線回折と化学分析の結果から、La2SiO5の構造であることが確認された。また、前駆体複合酸化物結晶体の相対密度は98.6%であった。
(加熱アパタイト配向工程:埋め焼き)
図1に示すように、アルミナ坩堝(大きさ46mmφ×36)内に該坩堝の3分の2を満たすほどSiO粉末を充填し、前記前駆体複合酸化物結晶体(ペレット)の全周面がSiO粉末と接触するように、前記SiO粉末内に前記前駆体複合酸化物結晶体(ペレット)を埋め込んだ。その状態で、密閉可能な電気炉に入れて、炉内に窒素ガスを送り込んで雰囲気の圧力を3atmまで高めた状態で、1600℃(アルミナ坩堝温度)で50時間加熱し、アパタイト型複合酸化物焼結体(ペレット)を得た。そして、得られたアパタイト型複合酸化物焼結体(ペレット)の表面を1200番の耐水研磨紙で研磨して、アパタイト型複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<実施例2>
(前駆体複合酸化物結晶体のゾルゲル合成)
La(NO3)3・6H2O45gを水20mLに溶解させてLa(NO3)3酸性水溶液(La(NO3)3濃度52%、pH0.8)と、SiO23.1gをNH3水40mLに溶解させてSiO2塩基性水溶液(SiO2濃度7%、pH14)とをそれぞれ調製した。
前記La(NO3)3酸性水溶液とSiO2塩基性水溶液とクエン酸を粘性透明液体となるように混合して加水分解反応させてLa−Siゾルを得た。次に、このLa−Siゾルを加熱して縮重合反応させてLa−Siゲルとし、さらに大気雰囲気下600℃で5時間加熱して非晶質前駆体を得た。次に、この非晶質前駆体を白金坩堝に入れて、大気雰囲気下1600℃(電気炉内雰囲気の温度)を5時間保持するように加熱(仮焼)して予備焼結体を得た。次いで、この予備焼成物をエタノール中に加えて遊星ボ−ルミルで粉砕し、予備焼成体粉末を得た。
次に、この予備焼成体粉末を、20mmφの成形器に入れて一方向から加圧して一軸成形してペレットを成形した。次いで、このペレット状成形体を大気中、1500℃で10時間加熱してペレット状焼結体を得、得られたペレット状焼結体の表面をダイヤモンド砥石で研磨して、16mmφ×0.8mm(厚さ)の前駆体複合酸化物結晶体(ペレット)を得た。
こうして得られた前駆体複合酸化物結晶体の粉末X線回折と化学分析の結果から、La2SiO5の構造であることが確認された。また、前駆体複合酸化物結晶体の相対密度は99.5%であった。
(加熱アパタイト配向工程:埋め焼き)
こうして得られた前記前駆体複合酸化物結晶体(ペレット)を、加熱温度を1670℃に変更した以外、実施例1と同様にSiO粉末内に埋め込んで加熱して、研磨して、アパタイト型複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<実施例3>
実施例1と同様にして作製した前駆体複合酸化物結晶体(但し、相対密度は98.9%)に対して、炉内に窒素ガスを送り込んで雰囲気の圧力を2atmまで高めた状態で加熱した以外、実施例1と同様に加熱アパタイト配向工程を実施してアパタイト型複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<実施例4>
実施例2と同様に作製した前駆体複合酸化物結晶体(但し、相対密度は99.9%)に対して、炉内に窒素ガスを送り込んで雰囲気の圧力を1atmにして加熱した以外、実施例1と同様に加熱アパタイト配向工程を実施してアパタイト型複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<実施例5>
実施例1と同様の水熱合成で作製した前駆体複合酸化物結晶体(相対密度は98.6%)に対して、炉内にアルゴンガスを送り込んで雰囲気の圧力を3atmまで高めた状態で加熱した以外、実施例1と同様に加熱アパタイト配向工程を実施してアパタイト型複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<実施例6>
実施例1と同様の水熱合成で作製した前駆体複合酸化物結晶体(相対密度は98.9%)を用いて、次のように加熱アパタイト配向工程を実施してアパタイト型複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
(加熱アパタイト配向工程:粉末ベッド)
図2に示すように、アルミナ坩堝(大きさ46mmφ×36)内に該坩堝の3分の1を満たすほどSiO粉末を充填し、SiO粉末表面上に前記前駆体複合酸化物結晶体(ペレット)を立てるように配置し、その状態で、密閉可能な電気炉に入れて、炉内に窒素ガスを送り込んで雰囲気の圧力を3atmまで高めた状態で、1600℃(アルミナ坩堝温度)で50時間加熱し、アパタイト型複合酸化物焼結体(ペレット)を得た。そして、得られたアパタイト型複合酸化物焼結体(ペレット)の表面を1200番の耐水研磨紙で研磨して、アパタイト型複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<実施例7>
実施例2と同様のゾルゲル合成で作製した前駆体複合酸化物結晶体(相対密度は99.8%)を、加熱温度を1620℃とし、炉内に窒素ガスを送り込んで雰囲気の圧力を1atmにして加熱した以外、実施例1と同様に加熱アパタイト配向工程を実施してアパタイト型複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<実施例8>
(前駆体複合酸化物結晶体の固相合成)
La23とSiO2とをモル比で1:1になるように配合し、エタノールを加えてボ−ルミルで混合した後、この混合物を乾燥させ、乳鉢で粉砕し、白金坩堝を使用して大気雰囲気下1600℃で3時間焼成した。次いで、この焼成物にエタノールを加えて遊星ボ−ルミルで粉砕し、予備焼成体粉末を得た。
次に、この予備焼成体粉末を、20mmφの成形器に入れて一方向から加圧して一軸成形してペレットを成形した。次いで、このペレット状成形体を大気中、1600℃で10時間加熱してペレット状焼結体を得、得られたペレット状焼結体の表面をダイヤモンド砥石で研磨して、16mmφ×0.8mm(厚さ)の前駆体複合酸化物結晶体(ペレット)を得た。
こうして得られた前駆体複合酸化物結晶体の粉末X線回折と化学分析の結果から、La2SiO5の構造であることが確認された。また、前駆体複合酸化物結晶体の相対密度は98.6%であった。
(加熱アパタイト配向工程:埋め焼き)
こうして得られた前記前駆体複合酸化物結晶体(ペレット)を、実施例1と同様にSiO粉末内に埋め込んで加熱して、研磨して、アパタイト型複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<実施例9>
(前駆体複合酸化物結晶体の水熱合成)
仮焼温度を1500℃に変更した以外、実施例1と同様に予備焼成体粉末を作成した。 次に、この予備焼成体粉末を、20mmφの成形器に入れて、一方向から一軸成形してペレットを成形し、このペレット状成形体を真空中、1400℃で25MPaのホットプレスで2時間加圧してペレット状焼結体を得、得られたペレット状焼結体の表面をダイヤモンド砥石で研磨して、20mmφ×0.8mm(厚さ)の前駆体複合酸化物結晶体(ペレット)を得た。
こうして得られた前駆体複合酸化物結晶体の粉末X線回折と化学分析の結果から、La2SiO5の構造であることが確認された。また、前駆体複合酸化物結晶体の相対密度は99.9%であった。
(加熱アパタイト配向工程:埋め焼き)
こうして得られた前記前駆体複合酸化物結晶体(ペレット)を、実施例1と同様にSiO粉末内に埋め込んで加熱して、研磨して、アパタイト型複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<実施例10>
実施例2と同様のゾルゲル合成で作製した前駆体複合酸化物結晶体(相対密度は99.4%)に対して、加熱温度を1700℃とした以外、実施例1と同様に加熱アパタイト配向工程を実施してアパタイト型複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<比較例1>
実施例1と同様の水熱合成で作製した前駆体複合酸化物結晶体(相対密度は99.7%)を用いて、加熱温度を1630℃とし、炉内を大気中1atmの雰囲気として加熱した以外、実施例1と同様に加熱アパタイト配向工程を実施して複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<比較例2>
実施例4において、炉内に窒素ガスを送り込んで雰囲気の圧力を1atmにした状態で、1250℃(アルミナ坩堝温度)で50時間加熱した以外、実施例4と同様に加熱アパタイト配向工程を実施して複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<比較例3>
実施例1と同様の水熱合成で作製した前駆体複合酸化物結晶体(相対密度は99.5%)を、炉内を大気中1atmとして、1600℃(アルミナ坩堝温度)での加熱時間を150時間とした以外、実施例1と同様に加熱アパタイト配向工程を実施して複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<比較例4>
実施例2と同様のゾルゲル合成で作製した前駆体複合酸化物結晶体(相対密度は99.4%)を、炉内を大気中1atmとして、加熱温度1700℃で加熱した以外、実施例1と同様に加熱アパタイト配向工程を実施して複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<比較例5>
La(NO3)3・6H2O21gを水20mLに溶解させてLa(NO3)3酸性水溶液(La(NO3)3濃度38%、pH0.8)と、SiO22gをNH3水40mLに溶解させてSiO2塩基性水溶液(SiO2濃度5%、pH14)とをそれぞれ調製した。
前記La(NO3)3酸性水溶液とSiO2塩基性水溶液とをpH10となるように混合してLa−Si白色懸濁液とした後、このLa−Si白色懸濁液を密閉容器に入れて、密閉容器内において大気雰囲気下180℃(加熱乾燥器雰囲気の温度)を108時間保持するように加熱した後、セルロース濾紙で濾過し、150℃に加熱して乾燥させて非晶質前駆体を得た。
次に、この非晶質前駆体を白金坩堝に入れて、大気雰囲気下1400℃(電気炉内雰囲気の温度)を5時間保持するように加熱(仮焼)して予備焼成物を得た。次いで、この予備焼成物をエタノール中に加えて遊星ボ−ルミルで粉砕し、予備焼成体粉末を得た。
次に、この予備焼成体粉末を、20mmφの成形器に入れて一方向から加圧して一軸成形してペレットを成形し、このペレット状成形体を大気中、1600℃で10時間加熱してペレット状焼結体を得、得られたペレット状焼結体の表面をダイヤモンド砥石で研磨して、16mmφ×0.8mm(厚さ)の前駆体複合酸化物結晶体(ペレット)を得た。
こうして得られた前駆体複合酸化物結晶体の粉末X線回折と化学分析の結果から、アパタイト構造(La9.33Si626)であることが確認された。また、前駆体複合酸化物結晶体の相対密度は94.2%であった。
こうして得られた前駆体複合酸化物結晶体(ペレット)を、炉内に窒素を送り込んで窒素雰囲気1atmとして、1600℃を50時間保持するように加熱し、複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<比較例6>
実施例2と同様のゾルゲル合成で作製した前駆体複合酸化物結晶体(相対密度は99.3%)を、炉内に窒素を送り込んで窒素雰囲気1atmとして、1600℃を50時間保持するように加熱し、複合酸化物焼結体(サンプル)を得た。
<加熱工程における酸素濃度測定>
上記実施例及び比較例における酸素濃度は、加熱工程後、雰囲気圧力1atmとしてジルコニア式酸素濃度計により測定した。これらの結果を表1に示す。
<XRDによる固定相の確認>
得られたアパタイト型焼結体について、ダイヤモンド砥石で研削した面に対してバルクの状態でX線回折を測定し、固定相を確認した。
<配向度の測定方法>
下記式を用い、ロットゲーリング法で配向度を算出した。アパタイト型焼結体バルクX線回折で得られた全ピーク強度の総和と(002)及び(004)に帰属される両ピーク強度の和の比ρを用いて、下記数式(1)から配向度fを算出した。
f=(ρ-ρ0)/(1-ρ0) (1)
ここで、 ρ0:アパタイト構造結晶の理論値
ρ0=ΣI(00l)/ΣI(hkl)
ρ:配向アパタイト焼結体での測定値
ρ=ΣI(00l)/ΣI(hkl)
<酸素イオン伝導率の測定>
アパタイト型焼結体(サンプル)の両面にスパッタリング法を用いて150nm厚の白金膜を製膜して電極を形成した後、加熱炉中で温度を変化させ、インピーダンス測定装置にて周波数0.1Hz〜32MHzで複素インピーダンス解析を行なった。各アパタイト型焼結体(サンプル)について、全抵抗成分(粒内抵抗+粒界抵抗)から酸素イオン伝導率(S/cm)を求めて、400℃及び500℃の酸素イオン伝導率を下記表1に示した。
<総合評価>
クラック発生の有無及び上記で測定した物性値を総合して、次のような基準で総合評価した。
◎(very good):伝導率1.0×10−2以上、配向度90以上であり、且つクラック無しの場合。
○(good):伝導率1.0×10−4以上、配向度60以上であり、且つクラック無しの場合。
△(usual):伝導率1.0×10−5以上であり、且つクラック無しの場合。
×(poor):伝導率1.0×10−5未満、または、クラック有りの場合。
Figure 2017066024
(考察)
実施例1〜10によれば、c軸に配向したアパタイト型結晶構造を有し、結晶配向度のロットゲーリング配向度が0.80以上で、相対密度が90%以上であり、500℃での酸素イオン導電率が1×10−3S/cm以上である配向性アパタイト型複合酸化物を作製できることが分かった。
すなわち、低酸素ガス加圧雰囲気内に、LaSiO焼結体とSi成分を置き、1300〜1800℃で加熱処理することで、Si成分を気化させて気相化して、LaSiO焼結体と反応させることで、上記のような配向性アパタイト型複合酸化物を製造することができる。すなわち、気相のSi成分とLaSiOとの反応において、LaSiO焼結体表面にSiOリッチな液相成分が形成され、VLS結晶成長メカニズムにより、当該液相成分とLaSiO焼結体との反応がLaSiO焼結体表面から中心部に向って六方晶のc軸方向に結晶成長していくことで、c軸に配向した配向性アパタイト型複合酸化物を作製できることが分かった。
また、上記実施例によれば、LaSiO焼結体内部まで均質なアパタイト型配向結晶を生成できるため、高温焼成の冷却時に熱膨張差による亀裂が生じ難く、相対密度90%以上の強固なランタンシリケート構造体を得ることができる。
また、ロットゲーリング法での配向度は0.80以上が得られ、これにより、高い酸素イオン伝導性が得られる。これにより、SOFCにおける固体電解質支持体や、酸素センサーとしての用途が得られる。
なお、上記実施例は、式(1):A2+xTO5+zにおいて、式中の「A」がLaであり、「T」がSiである場合についての実施例であるが、式中の「A」がLa以外の元素であっても、Laに近いイオン半径と価数を有する元素、例えばCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Be、Mg、Ca、Sr及びBaであれば、Laと同様にアパタイト型六方晶構造をとることができ、Laと同様に機能すると考えられる。また、式中の「T」がSi以外の元素であっても、Siに近いイオン半径を有する第14族元素、例えばGeであれば、Siと同様に、前駆体複合酸化物結晶体中に入って最終的にアパタイト型結晶に変換する機能を有するものと考えることができる。
上記のような実施例及び発明者がこれまで行ってきた試験結果から、式(1):A2+xTO5+z(式中のAは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素である。式中のTは、Si又はGe又はその両方を含む元素である。式中のxは−1〜1、zは−2〜2である。)で示される複合酸化物結晶体と、前記T元素を含む気体又は固体とを接触させて、大気よりも酸素濃度が低く、かつ1atm以上の雰囲気において、1300〜1800℃で加熱することで、アパタイト型六方晶構造を有し、かつc軸方向に配向した配向性アパタイト型複合酸化物を作製することができ、この際、クラックなどの発生を抑制することができるからより大型のものを作製することができることが分かった。
1 T元素を含む粉末(例えばSiO粉末)
2 複合酸化物結晶体(例えばLaSiO焼結体)
3 T元素を含んだガス及び不活性ガス(例えば窒素ガス)
10 坩堝
20 蓋体

Claims (5)

  1. 式(1):A2+xTO5+z(式中のAは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素である。式中のTは、Si又はGe又はその両方を含む元素である。式中のxは−1〜1、zは−2〜2である。)で示される複合酸化物結晶体と、前記T元素を含む気体又は固体とを接触乃至近接させて、大気よりも酸素濃度が低く、かつ1atm以上の雰囲気において、1300〜1800℃で加熱することを特徴とする、配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法。
  2. 上記複合酸化物結晶体を、前記T元素を含む粉末中に埋め込んだ状態で加熱することで、前記複合酸化物結晶体と前記T元素を含む気体又は固体とを接触乃至近接させることを特徴とする請求項1に記載の配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法。
  3. 式(1):A2+xTO5+z(式中のAは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素である。式中のTは、Si又はGe又はその両方を含む元素である。式中のxは−1〜1、zは−2〜2である。)で示される複合酸化物結晶体の表面に、該複合酸化物結晶体の構成元素を含む液相層を形成し、該液相層に、前記T元素を含む気体又は固体を接触乃至近接させると共に、大気よりも酸素濃度が低く、かつ1atm以上の雰囲気において、1300〜1800℃で加熱することを特徴とする、配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法。
  4. 上記複合酸化物結晶体と、前記T元素を含むガス雰囲気とを接触乃至近接させて加熱することで、前記複合酸化物結晶体の表面に、前記複合酸化物結晶体の構成元素を含む液相層を形成することを特徴とする請求項3に記載の配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法。
  5. 上記複合酸化物結晶体の相対密度が95%以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の配向性アパタイト型複合酸化物の製造方法。
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