JP2013182673A - リチウムイオン二次電池用負極剤、リチウムイオン二次電池用負極、およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極剤、リチウムイオン二次電池用負極、およびリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られるリチウムイオン二次電池用負極剤とリチウムイオン二次電池用負極、およびサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池の提供。
【解決手段】本発明のリチウムイオン二次電池用負極剤は、(a1):ポリフッ化ビニリデンおよび(a2):ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコールからなる群より選ばれる1種以上の化合物と、金属酸化物とを含有する。本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、集電体と、該集電体上に設けられた、本発明のリチウムイオン二次電池用負極剤を含有する電極活物質層とを備える。本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と、本発明のリチウムイオン二次電池用負極と、電解液とを備える。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極剤、リチウムイオン二次電池用負極、およびリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、鉛蓄電池、ニッケル水素電池に比べて、エネルギー密度および起電力が高いという特徴を有するため、小型、軽量化が要求される携帯電話やノートパソコン等の電源として広く使用されている。近年では自動車にも適応され、更なる高エネルギー密度化が求められている。
リチウムイオン二次電池用負極は、通常、バインダー(結着剤)、負極活物質、導電助剤を含有する負極剤に溶媒を混ぜて塗布液(負極用スラリー)とし、これを集電体上に塗布・乾燥して電極活物質層を形成することで得られる。
バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)や、ポリアクリル酸(PAA)が用いられている(例えば特許文献1、非特許文献2参照)。また、バインダーとしてスチレン・ブタジエンゴム(SBR)やカルボキシメチルセルロース(CMC)が用いられることもある。
一方、溶媒としては、水やN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の有機溶媒が用いられている。
米国特許第8034485号明細書
J.Electrochem.Soc.2008,155,A812−A816
ところで、リチウムイオン二次電池用負極には、負極活物質として黒鉛等の炭素材料が用いられていた。しかし、黒鉛は理論的なリチウムイオンの吸蔵放出容量が372mAh/gに限られているため、高エネルギー密度化を達成するには、リチウムイオンの吸蔵放出容量がより大きい負極活物質が求められている。
そこで、充放電容量の低い炭素材料に代えて、ケイ素材料を用いる方法が検討されている。しかし、ケイ素材料は充放電による体積変化が大きく、連続充放電を行うことにより電極活物質層が破損し、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が低下するという問題があった。
このような問題に対し、近年では、炭素材料よりも充放電容量が高く、かつケイ素材料よりも体積変化が起こりにくい負極活物質として、酸化鉄(III)などの金属酸化物が用いられている。
しかし、酸化鉄(III)を用いた場合でも、充放電によってある程度の体積変化は起こる。特に、バインダーとしてPVDFを用いた場合は、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が低下することがあった。
一方、特許文献1、非特許文献2に記載のように、バインダーとして分子量が25000以下程度である低分子量のPAAを用いた場合は十分なサイクル特性が得られにくいものの、分子量が10〜25万程度である高分子量のPAAを用いた場合はサイクル特性が向上することが知られている。
しかし、負極剤に溶媒を混ぜて負極用スラリーを調製する際に、溶媒として水を用いると、ケッチェンブラック等の導電助剤の分散性が低下し、導電助剤が均一に分散した電極活物質層が形成されにくくなり、その結果、サイクル特性が低下することがあった。一方、溶媒としてNMP等の有機溶媒を用いれば、導電助剤の分散性は向上するものの、高分子量のPAAの溶解性が低下し、均一な電極活物質層が形成されにくくなり、その結果、サイクル特性が低下することがあった。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られるリチウムイオン二次電池用負極剤とリチウムイオン二次電池用負極、およびサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極剤は、下記(a1)および(a2)と、金属酸化物とを含有することを特徴とする。
(a1):ポリフッ化ビニリデン
(a2):ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコールからなる群より選ばれる1種以上の化合物。
ここで、(a1):(a2)で表させる質量比が1:1〜1:7であることが好ましい。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、集電体と、該集電体上に設けられた電極活物質層とを備え、前記電極活物質層は、前記リチウムイオン二次電池用負極剤を含有することを特徴とする。
また、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、電解液とを備え、前記負極が前記リチウムイオン二次電池用負極であることを特徴とする。
ここで、前記電解液が、有機酸のリチウム塩およびホウ素化合物を含むことが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極剤とリチウムイオン二次電池用負極によれば、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られる。
また、本発明のリチウムイオン二次電池は、サイクル特性に優れる。
[リチウムイオン二次電池用負極剤]
本発明のリチウムイオン二次電池用負極剤(以下、単に「負極剤」という。)は、バインダーと負極活物質とを含有する。また、導電助剤を含有してもよい。
<バインダー>
本発明の負極剤は、バインダーとして下記(a1)および(a2)を含有する。
(a1):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)
(a2):ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)からなる群より選ばれる1種以上の化合物。
バインダーとして(a1)と(a2)とを併用することで、充放電容量が比較的高い酸化鉄(III)などの金属酸化物を負極活物質として用いても、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られる。
特に、(a2)は主鎖中に酸素原子を有するので、金属酸化物との親和性が高く、金属酸化物がバインダー中に均一に分散しやすくなる。
(a2)としては、少なくともPAAを用いることが好ましい。
PAAの分子量は25000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましい。PAAの分子量が25000以下であれば、NMP等の有機溶媒に対する溶解性が高まる。よって、詳しくは後述するが、リチウムイオン二次電池用負極の製造において、本発明の負極剤に溶媒を混ぜて負極用スラリーを調製する際に、溶媒としてNMP等の有機溶媒を用いることができ、PVDFおよびPAAが溶解し、かつ導電助剤が均一に分散した負極用スラリーが得られる。なお、上述したように低分子量のPAAをバインダーとして用いた場合には十分なサイクル特性が得られにくいことが知られているが、本発明であれば、(a1)であるPVDFと併用することで、サイクル特性の低下を抑制できる。
PAAの分子量の下限値については特に制限されないが、バインダーとして十分に機能させる観点で、300以上であることが好ましい。
なお、分子量が25000を超えるPAAを用いる場合でも、加熱しながら負極用スラリーを調製すれば、PAAを有機溶媒に溶解させることができる。ただし、負極用スラリーが冷えるとPAAが析出するため、集電体上に負極用スラリーを塗布する際にも加熱する必要がある。しかし、例えば200℃を超える高温下で集電体上に負極用スラリーを塗布すると、集電体が酸化されるなどの影響を受けやすくなる。そのため、高温下で集電体上に負極用スラリーを塗布する場合は、アルゴン等の不活性ガスで置換した雰囲気内(例えば、グローブボックスなど)で実施する必要があり、生産性が低下する。
しかし、分子量が25000以下のPAAを用いれば、加熱しなくても有機溶媒に溶解させることができるので、低温下で集電体上に負極用スラリーを塗布できる。よって、生産性を維持できる。
ここで、PAAの分子量とは、質量平均分子量を意味する。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量をポリスチレン換算することで求められる。
(割合)
(a1)と(a2)の質量比((a1):(a2))は、1:1〜1:7であることが好ましく、1:2〜1:5であることがより好ましい。質量比が1:1以上であれば、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られる。特に、質量比が1:2以上であれば、得られるリチウムイオン二次電池のサイクル特性がより向上する。一方、質量比が1:7を超えると、リチウムイオン二次電池の容量維持率が低下する傾向にある。
また、(a1)の含有量は、負極剤に含まれる全てのバインダー100質量%中、10〜50質量%が好ましく、15〜35質量%がより好ましい。
また、(a2)として少なくともPAAを用いる場合、PAAの含有量は、負極剤に含まれる全てのバインダー100質量%中、20〜87.5質量%が好ましく、25〜75質量%がより好ましい。
(他のバインダー)
本発明の負極剤は、バインダーとして上述した(a1)と(a2)のみを含有してもよいし、(a1)と(a2)以外の他のバインダーを含有してもよい。
他のバインダーとしては、例えばスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)などが挙げられる。
他のバインダーの含有量は、負極剤に含まれる全てのバインダー100質量%中、25質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。他のバインダーの含有量が25質量%以下であれば、本発明の効果(すなわち、サイクル特性の向上効果)が十分に得られる。
<負極活物質>
本発明の負極剤は、負極活物質として金属酸化物を含有する。
金属酸化物としては、例えば酸化鉄(III)、酸化チタン(IV)、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(III)、酸化マンガン(IV)などが挙げられる。これらの中でも、酸化鉄(III)が好ましい。
酸化鉄(III)は、理論的なリチウムイオンの吸蔵放出容量が1000mAh/gであり、黒鉛等の炭素材料に比べて充放電容量が高く、エネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池が得られる。
また、酸化鉄(III)は、ケイ素材料に比べると充放電容量に劣るものの、充放電による体積変化が起こりにくい。よって、バインダーである(a1)および(a2)と併用することで、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られる。
<導電助剤>
負極剤は、導電助剤を含むことが好ましい。導電助剤を含むことにより、負極剤の導電性がより向上する。
導電助剤としては、黒鉛、カーボンブラック(例えばケッチェンブラック、アセチレンブラックなど)、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンなどが挙げられる。これら導電助剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、その組み合わせや比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
<含有量>
バインダーの含有量は、負極剤100質量%中、1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。バインダーの含有量が1質量%以上であれば、バインダー機能を十分に発揮でき、詳しくは後述するが、本発明の負極剤より形成される電極活物質層の集電体に対する結着性を良好に維持できる。加えて、負極の劣化を抑制できる。一方、バインダーの含有量が30質量%以下であれば、負極の薄型化に繋がる。
負極活物質の含有量は、負極剤100質量%中、40〜97質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましい。負極活物質の含有量が40質量%以上であれば、負極の薄型化に繋がる。特に、負極活物質の含有量が60質量%以上であれば、より薄い負極が得られる。一方、負極活物質の含有量が97質量%以下であれば、バインダーや導電助剤の含有量を十分に確保できる。
導電助剤の含有量は、負極剤100質量%中、2〜15質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましい。導電助剤の含有量が2質量%以上であれば、電気伝導性を良好に維持でき、負極の劣化を抑制できる。一方、導電助剤の含有量が15質量%以下であれば、クーロン効率を良好に維持できる。また、後述する負極スラリーを調製したときに、導電助剤の分散性が良好となる。
<作用効果>
以上説明した本発明の負極剤は、バインダーとして(a1)と(a2)を含有し、負極活物質として酸化鉄(III)などの金属酸化物を含有するので、エネルギー密度が高く、しかもサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られる。
特に、(a2)成分として分子量が25000以下のPAAを含有すれば、NMPなどの有機溶媒に対する溶解性が高まるため、加熱しなくても本発明の負極剤を有機溶媒に溶解させて負極用スラリーを調製できる。よって、低温下で集電体上に負極用スラリーを塗布できるので、生産性を維持できる。加えて、導電助剤を含有する場合でも、導電助剤が均一に分散した負極用スラリーが得られる。
[リチウムイオン二次電池用負極]
本発明のリチウムイオン二次電池用負極(以下、単に「負極」という。)は、集電体と、該集電体上に設けられた電極活物質層とを備える。
集電体の材料としては、導電性を有する材料であれば特に制限されないが、例えば銅、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
集電体の厚さは特に制限されないが、10〜20μmであることが好ましい。
電極活物質層は、本発明の負極剤を含有する層である。
電極活物質層の厚さは特に制限されないが、5〜100μmが好ましい。
<リチウムイオン二次電池用負極の製造方法>
本発明の負極は、本発明の負極剤を溶媒に溶解して負極用スラリーを調製し、該負極用スラリーを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥させて、集電体上に電極活物質層を形成させることで得られる。
負極用スラリーに用いられる溶媒としては、バインダーを溶解可能なものが好ましく、NMP、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、メタノールなどの有機溶媒が挙げられる。中でも、NMPが好適である。
負極用スラリーは、上述した(a1)と(a2)と金属酸化物と導電助剤と、必要に応じて他のバインダーとを溶媒の存在下で混合することで得られる。このとき、予め(a2)を溶媒の一部に溶解させておき、これに、(a1)と金属酸化物と導電助剤と残りの溶媒とを加えてもよい。
負極用スラリーを集電体上に塗布する方法としては特に制限されず、公知の塗布方法を採用できる。
集電体上の負極用スラリーを乾燥する方法としては、負極用スラリー中の溶媒を除去できれば、公知の乾燥方法を採用できる。
乾燥温度は70〜180℃が好ましい。乾燥温度が70℃以上であれば、短時間で電極活物質層を硬化できる。一方、乾燥温度が180℃以下であれば、集電体が酸化されるなどの影響を防ぐことができ、生産性を維持できる。特に、真空乾燥により負極スラリー中の溶媒を除去する場合、乾燥温度は70〜150℃が好ましく、より低温かつ短時間で乾燥することが可能となる。
集電体上の負極用スラリーを乾燥させた後、必要に応じて電極活物質層をプレスしてもよい。電極活物質層をプレスすることで、電極活物質層の厚さを容易に調節できる。プレス方法としては、ロールプレスや金型プレスなどが挙げられる。
さらに、必要に応じて、得られた負極を任意の寸法に切断してもよい。
<作用効果>
以上説明した本発明の負極は、上述した本発明の負極剤を含有する電極活物質層を備えるので、エネルギー密度が高く、しかもサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池が得られる。
特に、(a2)成分として分子量が25000以下のPAAを含有する負極剤を用いれば、NMPなどの有機溶媒に対する溶解性が高まるため、加熱しなくても本発明の負極剤を有機溶媒に溶解させて負極用スラリーを調製できる。よって、低温下で集電体上に負極用スラリーを塗布して負極を製造できるので、生産性を維持できる。加えて、導電助剤を含有する場合でも、導電助剤が均一に分散した負極用スラリーが得られる。
[リチウムイオン二次電池]
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と本発明の負極と電解液とを備える。また、必要に応じて、正極と負極との間にセパレータが設けられていてもよい。
<正極>
本発明のリチウムイオン二次電池に用いられる正極としては、例えば集電体上に正極活物質やバインダーを含む電極活物質層が形成された公知の正極を使用できる。
正極の集電体の材料としては、導電性を有する材料であれば特に制限されないが、例えばアルミニウム、ニッケル、銅などが挙げられる。
正極の集電体の厚さは特に制限されないが、5〜25μmが好ましい。
正極活物質としては、例えば一般式LiM(ただし、Mは金属であり、xおよびy、は金属Mと酸素Oの組成比である)で表される金属酸リチウム化合物が用いられる。具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)などが挙げられる。なお、Mは複数の金属であってもよく、例えばLiM (ただし、p+q+r=xである)で表される化合物、具体的にはLiNi0.33Mn0.33Co0.33などを正極活物質として用いることもできる。
正極に用いられるバインダーとしては、PVDF、SBRなどが挙げられる。
正極の電極活物質層は、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤を含むことにより、正極の導電性がより向上し、電池性能をより高めることができる。
導電助剤としては、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンが挙げられる。これら導電助剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、その組み合わせや比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
正極の電極活物質層の厚さは特に制限されないが、10〜60μmが好ましい。
<電解液>
本発明のリチウムイオン二次電池に用いられる電解液としては、電解質としてリチウム塩が有機溶媒に溶解した非水系電解液、電解質として有機酸のリチウム塩およびホウ素化合物が有機溶媒に溶解した非水系電解液などが挙げられる。
リチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ素リチウム(LiBF)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドリチウム(LiN(SOCF)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、四フッ化ホウ素リチウム(LiBF)、三フッ化メタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、六フッ化アンチモン酸リチウム(LiSbF)、六フッ化ヒ素酸リチウム(LiAsF)、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C)等が挙げられる。
リチウム塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、その組み合わせや比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
有機酸のリチウム塩としては、カルボン酸リチウム塩、スルホン酸リチウム塩等が挙げられる。これらの中でも、有機酸のリチウム塩としては、カルボン酸のリチウム塩が好ましい。カルボン酸のリチウム塩が好ましい理由は、カルボン酸のリチウム塩は、カルボキシル基の電荷が比較的局在化しているため、後述するホウ素化合物と組み合わせた場合、ホウ素化合物と相互作用しやすく、有機酸のリチウム塩をより分散または溶解させることができるからであると推察される。
なお、有機酸のリチウム塩において、リチウム塩を構成する酸基の数は、特に限定されない。
カルボン酸のリチウム塩は、脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸および芳香族カルボン酸のいずれのリチウム塩でもよく、1価カルボン酸および多価カルボン酸のいずれのリチウム塩でもよい。
カルボン酸のリチウム塩としては、具体的に、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、プロピオン酸リチウム、酪酸リチウム、イソ酪酸リチウム、吉草酸リチウム、イソ吉草酸リチウム、カプロン酸リチウム、エナント酸リチウム、カプリル酸リチウム、ペラルゴン酸リチウム、カプリン酸リチウム、ラウリン酸リチウム、ミリスチン酸リチウム、ペンタデシル酸リチウム、パルミチン酸リチウム、オレイン酸リチウム、リノール酸リチウム、シュウ酸リチウム、乳酸リチウム、酒石酸リチウム、マレイン酸リチウム、フマル酸リチウム、マロン酸リチウム、コハク酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウム、グルタル酸リチウム、アジピン酸リチウム、フタル酸リチウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
有機酸のリチウム塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、その組み合わせや比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
ホウ素化合物は、後述する電解液中の有機酸のリチウム塩において、リチウムイオンのアニオン部からの解離を促進し、有機溶媒への溶解性を向上させる機能を有していると推測される。
ホウ素化合物としては、三フッ化ホウ素等のハロゲン化ホウ素;三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体(BFO(CH)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BFO(C)、三フッ化ホウ素ジn−ブチルエーテル錯体(BFO(C)、三フッ化ホウ素ジtert−ブチルエーテル錯体(BFO((CHC))、三フッ化ホウ素tert−ブチルメチルエーテル錯体(BFO((CHC)(CH))、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体(BFOC)等のハロゲン化ホウ素アルキルエーテル錯体;三フッ化ホウ素メタノール錯体(BFHOCH)、三フッ化ホウ素プロパノール錯体(BFHOC)、三フッ化ホウ素フェノール錯体(BFHOC)等のハロゲン化ホウ素アルコール錯体;三フッ化ホウ素ピペリジニウム等のハロゲン化ホウ素塩;2,4,6−トリメトキシボロキシン等の2,4,6−トリアルコキシボロキシン;ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリ−n−プロピル、ホウ酸トリ−n−ブチル、ホウ酸トリ−n−ペンチル、ホウ酸トリ−n−ヘキシル、ホウ酸トリ−n−ヘプチル、ホウ酸トリ−n−オクチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリオクタデシル等のホウ酸トリアルキル;ホウ酸トリフェニル等のホウ酸トリアリール;トリス(トリメチルシリル)ボラート等のトリス(トリアルキルシリル)ボラートなどが挙げられる。
ホウ素化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、その組み合わせや比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
これらの中でも、ホウ素化合物としては、ハロゲン化ホウ素、ハロゲン化ホウ素アルキルエーテル錯体、およびハロゲン化ホウ素アルコール錯体からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
ホウ素化合物が、上記の物質からなる群から選択される1種以上であることが好ましい理由は、ハロゲン化ホウ素およびその錯体は、ハロゲン原子の電子吸引性により強いルイス酸として働き、有機酸のリチウム塩をより分散または溶解させることができるからである。
有機溶媒としては特に限定されないが、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ビニレンカーボネート等の炭酸エステル化合物;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン化合物;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル等のカルボン酸エステル化合物;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物;アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等のニトリル化合物;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等のスルホン化合物などが挙げられる。
有機溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、その組み合わせや比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
これらの中でも、有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびスルホランからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
有機溶媒は、酸化還元電位、誘電率、粘度のバランスを考慮して、上記の物の中から適宜選択される。
電解液の濃度は特に制限されず、電解質の種類に応じて適宜調節すればよいが、通常は、配合されたリチウム原子(Li)の濃度が、好ましくは0.05〜10モル/L、より好ましくは0.1〜5モル/Lとなるように、電解質の配合量を調節するのが好ましい。
電解液としては、電解質の溶解性が良好で、長期間に亘ってその析出が抑制され、リチウムイオン二次電池の容量維持率が向上する点で、有機酸のリチウム塩およびホウ素化合物が有機溶媒に溶解した非水系電解液が好ましい。
<セパレータ>
セパレータの材質は特に限定されないが、微多孔性の高分子膜、不織布、ガラスファイバー等が挙げられる。
<リチウムイオン二次電池の製造方法>
本発明のリチウムイオン二次電池は、公知の方法に従って、例えば、グローブボックス内または乾燥空気雰囲気下で、本発明の負極、および前記正極および電解液を使用して製造すればよい。
このようにして得られる本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されず、円筒型、角型、コイン型、シート型等、種々のものに調節できる。
<作用効果>
以上説明した本発明のリチウムイオン二次電池は、上述した本発明の負極剤を含有する電極活物質層が集電体上に形成された本発明の負極を備えているので、エネルギー密度が高く、しかも放電容量を高く維持でき、サイクル特性に優れる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例および比較例において使用した化学物質を以下に示す。
・PVDF:ポリフッ化ビニリデン(アルドリッチ社製)
・PAA:ポリアクリル酸(質量平均分子量5000、和光純薬工業社製)
・Fe:酸化鉄(III)(アルドリッチ社製)
・ケッチェンブラック:ライオン社製
・NMP:N−メチル−2−ピロリドン(アルドリッチ社製)
・LiPF:六フッ化リン酸リチウム(キシダ化学社製)
・シュウ酸リチウム:アルドリッチ社製
・BFO(C:三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(アルドリッチ社製)
・EC:エチレンカーボネート(キシダ化学社製)
・DMC:ジメチルカーボネート(キシダ化学社製)
[実施例1]
<負極用スラリーの調製>
0.20gのPAAを濃度が10質量%になるようにNMPに溶解し、透明なPAA溶液を得た。
得られたPAA溶液と、1.55gのFeと、0.15gのケッチェンブラックと、0.1gのPVDFとを容器に計り取り、得られる負極用スラリーの固形分濃度が20質量%になるようにNMPをさらに加え、自転・公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−250」)を用いて3分間混合した。その後、ホモジナイザー(東京理化器械社製、「VCX−130PB」)を用いて5分間分散させた。ついで、自転・公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−250」)を用いて1分間攪拌し、さらに1分間脱泡し、負極用スラリーを得た。
なお、PVDFとPAAの質量比(PVDF:PAA)は1:2である。また、PVDF、PAA、Fe、ケッチェンブラックの合計100質量%中の負極活物質(Fe)の含有量は77.5質量%、バインダー(PVDF、PAA)の含有量は15.0質量%、導電助剤(ケッチェンブラック)の含有量は7.5質量%である。
<負極の作製>
得られた負極用スラリーを乾燥後の厚さが125μmになるように、集電体(銅箔、厚さ18μm)上にミニコーター(宝仙社製、「MC20」)を用いて塗布し、50℃のオーブンで2時間乾燥させ、さらに真空乾燥機で24時間真空乾燥させた。ついで、ロールプレス機(テスター産業社製)にて、1500Nでプレスした後、グローブボックスの乾燥炉内で、100℃で6時間乾燥させ、集電体上に電極活物質層が形成された負極を得た。
<リチウムイオン二次電池用の非水電解液の調製>
(非水電解液1の調製)
電解質としてシュウ酸リチウム(0.153g)およびBFO(C(0.426g)と、有機溶媒としてECおよびDMCの混合溶媒(EC:DMC=30:70(体積比))(2.42g)とをサンプル瓶に量り取り、シュウ酸リチウム中のリチウム原子の濃度が1.0mol/kgとなるように混合することにより非水電解液1を得た。
(非水電解液2の調製)
電解質としてLiPF(0.455g)と、有機溶媒としてECおよびDMCの混合溶媒(EC:DMC=30:70(体積比))(2.545g)とをサンプル瓶に量り取り、LiPF中のリチウム原子の濃度が1.0mol/kgとなるように混合することにより非水電解液2を得た。
<リチウムイオン二次電池の作製>
(リチウムイオン二次電池1の作製)
先に作製した負極、および市販の正極(宝仙社製)を直径16mmの円盤状に打ち抜いた。
別途、セパレータとしてガラスファイバーを直径17mmの円盤状に打ち抜いた。
打ち抜いた正極、セパレータおよび負極をこの順にSUS製の電池容器(CR2032)内で積層し、電解液として先に調製した非水電解液1をセパレータ、負極および正極に含浸させ、さらに負極上に、SUS製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)を載せ、蓋をすることによりコイン型のリチウムイオン二次電池1を作製した。
(リチウムイオン二次電池2の作製)
電解液として非水電解液1の代わりに非水電解液2を用いた以外は、リチウムイオン二次電池1と同様にしてリチウムイオン二次電池2を作製した。
<サイクル特性の評価>
得られたリチウムイオン二次電池1、2について、25℃において0.2Cの定電流定電圧充電を、上限電圧4.2Vとして電流値が0.1Cに収束するまで行った後、0.2Cの定電流放電を1.5Vまで行った。その後、充放電電流を1Cとして同様の方法で、充放電サイクルを繰り返し行い、50サイクルでの容量維持率(50サイクル目の放電容量(mAh)/1サイクル目の放電容量(mAh)×100)を算出した。結果を表1に示す。
[実施例2]
PVDFおよびPAAの配合量をそれぞれ0.15gに変更した以外は、実施例1と同様にして負極用スラリーを調製し、負極およびリチウムイオン二次電池1、2を作製し、サイクル特性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
PVDFの配合量を0.20g、PAAの配合量を0.10gに変更した以外は、実施例1と同様にして負極用スラリーを調製し、負極およびリチウムイオン二次電池1、2を作製し、サイクル特性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
PVDFの配合量を0.05g、PAAの配合量を0.25gに変更した以外は、実施例1と同様にして負極用スラリーを調製し、負極およびリチウムイオン二次電池1、2を作製し、サイクル特性の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
PVDFを用いず、PAAの配合量を0.30gに変更した以外は、実施例1と同様にして負極用スラリーを調製し、負極およびリチウムイオン二次電池1、2を作製し、サイクル特性の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
PAAを用いず、PVDFの配合量を0.30gに変更した以外は、実施例1と同様にして負極用スラリーを調製し、負極およびリチウムイオン二次電池1、2を作製し、サイクル特性の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2013182673
表1から明らかなように、バインダーとしてPVDFとPAAを含有する負極用スラリーを用いて得られた実施例1〜4のリチウムイオン二次電池1、2は、いずれも容量維持率が高く、優れたサイクル特性を有していた。
特に、電解質として有機酸のリチウム塩とホウ素化合物が有機溶媒に溶解した非水電解液1を用いて作製したリチウムイオン二次電池1は、リチウムイオン二次電池2よりも高い容量維持率を示した。
また、実施例1〜4を比較すると、PVDFとPAAの質量比(PVDF:PAA)が1:1以上である実施例1、2、4の場合は、質量比が1:0.5である実施例3に比べて、容量維持率が高かった。特に、質量比が1:2以上である実施例1、4は、容量維持率がさらに高かった。
一方、バインダーとしてPAAのみを含有し、PVDFを含有しない負極用スラリーを用いて得られた比較例1、2のリチウムイオン二次電池1、2は、実施例1〜4に比べて容量維持率が低かった。

Claims (5)

  1. 下記(a1)および(a2)と、金属酸化物とを含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極剤。
    (a1):ポリフッ化ビニリデン
    (a2):ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコールからなる群より選ばれる1種以上の化合物。
  2. (a1):(a2)で表させる質量比が1:1〜1:7であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極剤。
  3. 集電体と、該集電体上に設けられた電極活物質層とを備え、
    前記電極活物質層は、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極剤を含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
  4. 正極と、負極と、電解液とを備え、
    前記負極が請求項3に記載のリチウムイオン二次電池用負極であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  5. 前記電解液が、有機酸のリチウム塩およびホウ素化合物を含むことを特徴とする請求項4に記載のリチウムイオン二次電池。
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