JP2013181550A - ディスクブレーキ - Google Patents

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聖子 坪田
Yoichi Kumemura
洋一 久米村
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Abstract

【課題】良好なペダルフィーリングを得るディスクブレーキを提供する。
【解決手段】シリンダボア10の内周面に凹部30(液量補償室)が設けられ、該凹部30は、第1シール部材48による小径受圧面積でピストン12が移動する際、第2シール部材49と第3シール部材50とで画成される第3液圧室43に凹部30内の液量を補給し、第3シール部材50による大径受圧面積でピストン12がインナブレーキパッド2を押圧する際に、シリンダボア10との連通が遮断される構成である。これにより、インナブレーキパッド2を押圧する際の液量を凹部30内から供給することができるので、無効液量を抑制することができ、良好なペダルフィーリングを得ることができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、車両の制動に用いられるディスクブレーキに関するものである。
キャリパのシリンダボア内に摺動自在に設けられるピストンを備え、シリンダボア内に液圧を付与することによりこのピストンによって摩擦バッドをディスクロータへ押圧するディスクブレーキが種々提案されている。このようなディスクブレーキにおいては、経年的に、制動解除後に摩擦ブレーキパッドがディスクロータに接触したままとなる、いわゆる、引き摺りが発生してしまうものがある。
上記の引き摺りの発生を低減するため、特許文献1には、キャリパのシリンダボアに摺動自在に嵌合される大径ピストンと、該大径ピストンの小径シリンダに摺動自在に嵌合される小径ピストンとを備え、シリンダボア内に作動油の液圧を付与することにより、小径ピストン及び大径ピストンを順次ブレーキパッド側に移動させて、最終的に大径ピストンが小径ピストンを介してブレーキパッドを強く押圧してブレーキを作動させるディスクブレーキが開示されている(特許文献1参照)。
実開平7−28241号公報
しかしながら、特許文献1に係るディスクブレーキでは、ディスクロータにブレーキパッドを当接させるまでに作動液をシリンダボア内に供給して、小径ピストンを移動させた後に大径ピストンを移動させる際の液量をマスタシリンダから供給する必要がある。このため、ブレーキペダルの操作時に、制動に寄与しない無効液量が多くなり、良好なペダルフィーリングが得られないという問題がある。
本発明は、良好なペダルフィーリングを得ることができるディスクブレーキを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段として、本発明は、キャリパのシリンダボア内に摺動可能に設けられ、少なくとも前記シリンダボアの底壁部側に筒状部が形成されたピストンを有し、前記シリンダボア内に作動液が供給されることにより前記ピストンが摩擦ブレーキバッドをディスクロータへ押圧するディスクブレーキにおいて、前記ピストンの筒状部には、内周側および外周側にブレーキ液を密封するシールが設けられ、前記ピストンは、前記作動液の供給により前記シリンダボアへ液圧が付与され始めたときに、前記内周側シールによる小径受圧面積で液圧を受けて前記ディスクロータ側に移動し、前記ディスクロータに前記摩擦ブレーキパッドが当接した後に前記外周側シールによる大径受圧面積で液圧を受けて前記摩擦ブレーキパッドを前記ディスクロータへ押圧するようになっており、前記キャリパには、前記シリンダボアに連通する液量補償室が設けられ、該液量補償室は、前記内周側シールによる小径受圧面積で液圧を受けて前記ピストンが移動する際に、前記内周側シールと前記外周側シールとで画成される室に作動液を供給し、前記外周側シールによる大径受圧面積で液圧を受けて前記ピストンが前記摩擦ブレーキパッドを押圧する際に、前記室との連通が遮断されることを特徴とする。
本発明のディスクブレーキによれば、良好なペダルフィーリングを得ることができる。
本実施形態に係るディスクブレーキを示す一部断面図である。 図1の要部拡大図である。 制動時の作用を段階的に示した図である。 制動解除時の作用を段階的に示した図である。 制動解除時の作用を段階的に示した図である。
以下、実施の形態を図1〜図5に基づいて詳細に説明する。
本実施形態に係るディスクブレーキ1を図1及び図2に基づいて説明する。本実施形態に係るディスクブレーキ1は、キャリパ浮動型として構成されている。本ディスクブレーキ1は、車両の回転部に取り付けられたディスクロータDを挟んで両側に配置された一対のインナブレーキパッド2及びアウタブレーキパッド3と、該インナブレーキパッド2及びアウタブレーキパッド3をディスクロータDに押圧するためのキャリパ4と、車両のナックル等の非回転部に固定されたキャリア5とを備えている。一対のインナ及びアウタブレーキパッド2、3とキャリパ4とは、キャリア5にディスクロータDの軸方向へ移動可能に支持されている。
図1及び図2に示すように、キャリパ4の主体であるキャリパ本体6は、車両内側の摩擦ブレーキパッドであるインナブレーキパッド2に対向する基端側に配置されるシリンダ部7と、車両外側の摩擦ブレーキパッドであるアウタブレーキパッド3に対向する先端側に配置される爪部8とを有している。シリンダ部7には、インナブレーキパッド2側を開口部7aと成すシリンダボア10が形成されている。シリンダボア10の底壁部10aには、その中央から円柱状の突設部15が軸方向に向かって突設されている。該突設部15の内部に軸方向に沿って主流路16が設けられている。この主流路16に、マスタシリンダや液圧制御ユニットなどの図示しない液圧源が連通している。
シリンダ部7に設けた突設部15の外周面には、その基部寄りに第2シール部材用環状溝22が形成される。シリンダ部7の突設部15には、第2シール部材用環状溝22の底壁部と主流路16とを連通するように径方向に延びる第2流路46が形成される。該第2流路46は、第2シール部材用環状溝22の底壁部においてシリンダボア10の底壁部10a側の端部に形成される。この結果、第2流路46は、第2シール部材用環状溝22内に配置される第2シール部材49が液圧によりインナブレーキパッド2側に付勢された際、主流路16(第1液圧室41)と後述する第3液圧室43とを連通するようになる。また、シリンダ部7の突設部15の外周面には、第2シール部材用環状溝22よりもインナブレーキパッド2側の位置に、ピストン12の第1筒状部33の内周面に設けたピストン側環状溝28と対向するシリンダ側環状溝27が形成される。
さらに、シリンダボア10の内周面には、突設部15に設けたシリンダ側環状溝27と軸方向で略同じ位置に第3シール部材用環状溝23が形成される。シリンダボア10の内周面において、第3シール部材用環状溝23からインナブレーキパッド2側の位置には、ディスクロータDの軸方向断面が円形となった液量補償室としての凹部30が形成される。凹部30には、凹部30内を画成し、シリンダボア10の径方向に摺動自在な円板状の液圧補給部材31が設けられる。液圧補給部材31は、その外周にシール部材31Aが設けられ、凹部30の底壁部30Aに対向する面にスプリング32の一端が連結される。このスプリング32は、他端が底壁部30Aに係止され、液圧補給部材31を凹部30の底壁部30A側に付勢する引っ張りばねとなっている。このため、液圧補給部材31は、スプリング32が自然長状態となっている時に凹部30の底壁部30Aに近接した位置に配置されるようになっている。凹部30の底壁部30Aには、凹部30をキャリパ本体6に連通する大気連通孔30Bが形成される。このため、凹部30は、液圧補給部材31を境に、シリンダボア10側が液室となり、底壁部30A側が気室となっている。
シリンダボア10内には、インナブレーキパッド2に対向するようにピストン12が摺動自在に設けられている。ピストン12は、シリンダボア10の底壁部10a側に位置する第1筒状部33と、該第1筒状部33と共通の外周面を有し、インナブレーキパッド2側に位置する第2筒状部34と、第1筒状部33の底壁部及び第2筒状部34の底壁部を一体的に接続する接続壁部35とを有して軸方向断面H字状に形成される。第1筒状部33は、第2筒状部34よりも深く形成され、その内径が第2筒状部34の内径よりも小径に形成される。そして、第1筒状部33は、シリンダボア10内の突設部15周りの環状空間36に摺動自在に配置される。シリンダボア10の内周面でインナブレーキパッド2に近接する部位と、ピストン12の第2筒状部34の外周面でインナブレーキパッド2に近接する部位との間には、ピストンシール38が配置される。これにより、シリンダボア10の底壁部10aとピストン12との間には、ピストンシール38より画成された液圧室40が設けられる。該液圧室40に液圧源からシリンダ部7の突設部15に設けた主流路16を介して液圧が供給される。
また、ピストン12の第1筒状部33の内周面で接続壁部35寄りには、第1シール部材用環状溝21が形成される。第1シール部材用環状溝21の底壁部には、径方向に延び第1筒状部33の外周面に開口される第1流路25が形成される。第1流路25は、第1シール部材用環状溝21の底壁部において、シリンダボア10の底壁部10a側の端部に形成される。この結果、第1流路25は、第1シール部材用環状溝21内に配置された第1シール部材48が液圧によりインナブレーキパッド2側に付勢された際、後述する第2液圧室42と第4液圧室44とを連通するようになる。第1筒状部33の内周面で第1シール部材用環状溝21よりもシリンダボア10の底壁部10a側の位置には、シリンダ部7の突設部15の外周面に設けたシリンダ側環状溝27と対向するピストン側環状溝28が形成される。なお、突設部15に設けたシリンダ側環状溝27の深さと、第1筒状部33に設けたピストン側環状溝28の深さとは略同じに形成される。
内周側シールとしての第1及び第2シール部材48、49は、共に断面C字状のカップシールとなっており、その背面側に弾性変形可能な突起部51がそれぞれ形成されている。第1シール部材48の外径は、ピストン12の第1筒状部33に設けた第1シール部材用環状溝21の底壁部の内径に一致している。また、第2シール部材49の内径は、シリンダ部7の突設部15に設けた第2シール部材用環状溝22の底壁部の外径に一致している。第1シール部材48は、第2シール部材49よりも大径となっている。また、外周側シールとしての第3シール部材50は断面C字状のカップシールとなっている。第3シール部材50の外径はシリンダボア10の内周面に設けた第3シール部材用環状溝23の底壁部の内径に一致している。第3シール部材50は、第1及び第2シール部材48、49よりも大径となっている。
そして、第1シール部材48は、ピストン12の第1筒状部33の内周面に設けた第1シール部材用環状溝21に、第1シール部材48の開放部位がシリンダボア10の底壁部10a側を向くように配置される。また、第2シール部材49は、シリンダ部7の突設部15の外周面に設けた第2シール部材用環状溝22に、第2シール部材49の開放部位がシリンダボア10の底壁部10a側を向くように配置される。さらに、第3シール部材50は、シリンダボア10の内周面の第3シール部材用環状溝23に、第3シール部材50の開放部位がシリンダボア10の底壁部10a側を向くように配置される。そして、このように各シール部材が配置された状態で、シリンダボア10内の突設部15周りの環状空間36にピストン12の第1筒状部33が挿入された状態で、シリンダボア10内にピストン12が配置されている。
このようにピストン12が配置されると、第1シール部材48は、ピストン12の第1筒状部33の内周面に設けた第1シール部材用環状溝21の底壁部とシリンダ部7の突設部15の外周面とに接触した状態となる。また、第2シール部材49は、突設部15の外周面に設けた第2シール部材用環状溝22の底壁部とピストン12の第1筒状部33の内周面とに接触した状態となる。さらに、第3シール部材50は、シリンダボア10の内周面に設けた第3シール部材用環状溝23の底壁部とピストン12の外周面とに接触した状態となる。
この結果、シリンダボア10の底壁部10aとピストン12との間に設けられた液圧室40は、突設部15に設けた主流路16から第1シール部材48に至る範囲に設けられる第1液圧室41と、第1シール部材48から環状空間55を経て第2シール部材49に至る範囲に設けられた第2液圧室42と、第2シール部材49から第3シール部材50に至る範囲に設けられた第3液圧室43と、第3シール部材50からピストンシール38に至る範囲に設けられる第4液圧室44と、該第4液圧室44と連通可能な、シリンダボア10の内周面に設けた凹部30とから構成される。なお、第2液圧室42は、突設部15に設けたシリンダ側環状溝27と、第1筒状部33に設けたピストン側環状溝28とが協働で設けられる環状空間55を含むために、第1、第3及び第4液圧室41、43、44よりもその体積が大きく設定されている。
また、第1シール部材48は、開放部位がシリンダボア10の底壁部10aを向くように第1シール部材用環状溝21に配置されているので、隣接する第1液圧室41と第2液圧室42との液圧差により、第1液圧室41から第2液圧室42への作動液の移動は許容するが、第2液圧室42から第1液圧室41への作動液の移動は許容しない構成となる。同様に、第2シール部材49は、隣接する第2液圧室42と第3液圧室43との液圧差により、第2液圧室42から第3液圧室43への作動液の移動は許容するが、第3液圧室43から第2液圧室42への作動液の移動は許容しない構成となる。同様に、第3シール部材50は、隣接する第3液圧室43と第4液圧室44との液圧差により、第4液圧室44から第3液圧室43への作動液の移動は許容するが、第3液圧室43から第4液圧室44への作動液の移動は許容しない構成となる。
次に、本実施形態に係るディスクブレーキ1の作用を説明する。
まず、運転者によりブレーキペダル(図示しない)が踏み込まれると、ブレーキペダルの踏力に応じた液圧がマスタシリンダから液圧回路(ともに図示しない)を介してキャリパ本体6のシリンダ部7の主流路16を経由して液圧室40に供給される。これにより、ピストン12がピストンシール38を弾性変形させながら非制動時の原位置から前進(図1において右方向に移動)してインナブレーキパッド2をディスクロータDに押し付ける。そして、キャリパ本体6は、ピストン12の押付力の反力によりキャリア5に対して図1において左方向に移動して、爪部8によりアウタブレーキパッド3をディスクロータDに押し付ける。この結果、ディスクロータDが一対のインナ及びアウタブレーキパッド2、3により挟みつけられて車両の制動力が発生することになる。
このような制動時の作用の詳細をシリンダボア10の底壁部10aとピストン12との間に設けた第1〜第4液圧室41〜44内の液圧変動に基づいて説明する。
まず、図3(a)に初期状態を示すが、該初期状態では、シリンダボア10の内周面に設けた凹部30内の液圧補給部材31はスプリング32の付勢力により凹部30の底壁部に近接した状態であり、凹部30内と第4液圧室44とが連通した状態となる。また、初期状態では、第1〜第4液圧室41〜44の液圧は、第1液圧室41=第2液圧室42=第3液圧室43=第4液圧室44(凹部30内を含む)=0となっている。
次に、シリンダ部7の突設部15に設けた主流路16(第1液圧室41)に微小の作動液が供給されると、第1〜第4液圧室41〜44の液圧は、第4液圧室44<第3液圧室43<第2液圧室42=0<第1液圧室41となる。これにより、図3(b)に示すように、第1シール部材48が第1シール部材用環状溝21内においてシリンダボア10の底壁部10a側に付勢されて第1流路25が第1シール部材48により遮断される。このとき、ピストン12は、第1シール部材48の比較的小さな受圧面積でマスタシリンダからの液圧を受けるので、インナブレーキパッド2側に移動し、ブレーキパッド2、3をディスクロータDに当接させる。ここで、ブレーキパッド2、3がディスクロータDに当接するまでに必要となる作動液の液量は、第1シール部材48の比較的小さな受圧面積とピストン12の移動量の積算値に対応した液量となる。したがって、ピストン12の外周範囲が受圧面積となっている場合に比べて、少ない液量でブレーキパッド2、3をディスクロータDに当接させることが可能となっている。このため、ブレーキパッド2、3をディスクロータDに当接させるまでのピストン12の移動量を大きく設定することができる。したがって、このように設定した場合には、非制動時のブレーキパッド2、3とディスクロータDとの隙間、いわゆる、パッドクリアランスを大きくすることができ、ブレーキペダル操作初期の操作量を増やすことなく、ディスクブレーキの引き摺りの発生を低減することが可能となる。
同時に、第3液圧室43は、ピストン12のインナブレーキパッド2側への移動により容積が増加して負圧となる。その結果、第3液圧室43<第4液圧室44の液圧差が生じるため、この液圧差によって第3シール部材50のリップ部が倒れて(第3シール部材50とピストン12の外周面との間に隙間が生じて)第4液圧室44と第3液圧室43とを連通する。このとき、上記液圧差を解消するために、液圧補給部材31がスプリング32の付勢力に抗して凹部30内をピストン12の外周面に近接するように移動し、凹部30内の作動液(液量)が第4液圧室44に補給される。したがって、液量補償室となる凹部30内の作動液が第4液圧室44を介して第3液圧室43へ供給されることになる。
次に、ブレーキペダルの操作に伴い主流路16(第1液圧室41)へさらに作動液が供給されて、その液圧が上昇すると、第1〜第4液圧室41〜44の液圧は、第4液圧室44<0<第3液圧室43≦第2液圧室42≦第1液圧室41となる。これにより、図3(c)に示すように、第1液圧室41と第2液圧室42との液圧差によって第1シール部材48のリップ部が倒れて(第1シール部材48と突設部15の外周面との間に隙間が生じて)第1液圧室41と第2液圧室42とが連通し第2液圧室42の液圧が上昇する。また、第2液圧室42の液圧上昇により、第2シール部材49が第2シール部材用環状溝22内でシリンダボア10の底壁部10a側に付勢されて第2流路46が第2シール部材49により遮断される。これと共に、第2液圧室43と第3液圧室43との液圧差によって第2シール部材49のリップ部が倒れて(第2シール部材49とピストン12の第1筒状部33の内周面との間に隙間が生じて)第2液圧室42と第3液圧室43とが連通し、第2液圧室42の作動液が第3液圧室43へ供給される。その後、第3液圧室43の液圧上昇により第3液圧室43と第4液圧室44との液圧差が生じ、第3シール部材50が閉じて(第3シール部材50とピストン12の外周面とが接触して)、第3液圧室43と第4液圧室44とが遮断される。
このため、ピストン12は、第3シール部材50の比較的大きな受圧面積、すなわち、ピストン12の外周範囲が受圧面積でマスタシリンダからの液圧を受けてブレーキパッド2、3をディスクロータDに押圧するようになる。ここで、上記のようにピストン12が第3シール部材50の比較的大きな受圧面積で液圧を受ける際に、第3液圧室43内の作動液は、ブレーキペダルの操作時にマスタシリンダ等から供給されるものではなく、液量補償室である凹部30の作動液を使用している。このため、ブレーキペダルの操作時に、マスタシリンダから供給する作動液のうちの制動に寄与しない無効液量を低減することができ、運転者に良好なペダルフィーリングを与えることができる。
一方、運転者がブレーキペダルを解放すると、マスタシリンダからの液圧の供給が途絶えて液圧室40内の液圧が低下していく。これにより、ピストン12は、ピストンシール38の弾性変形の復元力によって制動力が解除された後、原位置まで後退する。
このような制動解除時の作用の詳細をシリンダボア10の底壁部10aとピストン12との間に設けた第1〜第4液圧室41〜44内の液圧変動に基づいて説明する。
まず、図3(c)の状態から第1液圧室41への液圧供給が途絶えると、第1〜第4液圧室41〜44の液圧は、第4液圧室44<0<第1液圧室41=第3液圧室43≦第2液圧室42となる。これにより、図4(a)に示すように、第1液圧室41と第2液圧室42との液圧差によって第1シール部材48が閉じられ(第1シール部材48と突設部15の外周面とが接触して)るとともに、第2シール部材49も閉じる(第2シール部材49とピストン12の第1筒状部33の内周面とが接触する)。
その結果、第1〜第4液圧室41〜44の液圧は、第4液圧室44<0<第1液圧室41<第3液圧室43≦第2液圧室42となり、第1液圧室41と第2液圧室42との液圧差(第1液圧室41<第2液圧室42)が大きくなる。これにより、図4(b)に示すように、上記液圧差によって第1シール部材48が第1シール部材用環状溝21内においてインナブレーキパッド2側に付勢されて第1シール部材48の突起部51が圧縮変形して、第1流路25が開放される。この第1流路25の開放によって、第2液圧室42と第4液圧室44とが連通し、第2液圧室42の作動液が第4液圧室44に供給される。そして、第2液圧室42の作動液を受け入れるため、凹部30では、第2液圧室42の液圧力に押圧されるとともにスプリング32の付勢力により液圧補給部材31が凹部30の底壁部30A側に引き張られ、液量補償質としての凹部30内の容積が増大する。したがって、第4液圧室44を介して凹部30内に作動液が補給される。
そして、第1〜第4液圧室41〜44の液圧は、0<第1液圧室41<第4液圧室44=第2液圧室42<第3液圧室43となり、第2液圧室42と第3液圧室43との液圧差(第2液圧室42<第3液圧室43)が大きくなる。このことにより、図5(c)に示すように、上記液圧差によって第2シール部材49が第2シール部材用環状溝22内においてインナブレーキパッド2側に付勢されて第2シール部材49の突起部51が圧縮変形して、第2流路46が開放される。第2流路46の開放によって第1液圧室41(主流路16)と第3液圧室43とが連通し、第3液圧室43の作動液が主流路16に戻され始める。
その結果、第1〜第4液圧室41〜44の液圧は、0<第1液圧室41=第3液圧室43<第4液圧室44=第2液圧室42となり、第3液圧室43と第4液圧室44との液圧差(第3液圧室43<第4液圧室44)が大きくなる。これにより、図5(d)に示すように、上記液圧差により第3シール部材50が開き(第3シール部材50とピストン12の外周面との間に隙間が生じ)、第4液圧室44の作動液が第3液圧室43へ供給され、大気圧よりも高い第4液圧室44及び第2液圧室42の液圧が解放される。このとき、スプリング32の付勢力により液圧補給部材31は、が凹部30の底壁部30A側に引き込まれており、凹部30の容積は変化しない。
最終的に、第1〜第4液圧室41〜44の液圧は、第1液圧室41=第2液圧室42=第3液圧室43=第4液圧室44(凹部30内を含む)=0となって制動力が解除され、図3(a)に示すように、ピストン12は、ピストンシール38の弾性によってシリンダボア10内の原位置まで後退する。
以上説明したように、本実施形態に係るディスクブレーキ1では、ピストン12は、作動液の供給によりシリンダボア10へ液圧が付与され始めたときに、第1シール部材(内周側シール)による小径受圧面積で液圧を受けてディスクロータD側に移動し、ディスクロータDにブレーキパッド2,3が当接した後に第3シール部材(外周側シール)による大径受圧面積で液圧を受けてブレーキパッド2,3をディスクロータDへ押圧するようになっている。これにより、ブレーキパッド2、3をディスクロータDに当接させるまでのピストン12の移動量を大きく設定することができる。したがって、このように設定した場合には、非制動時のブレーキパッド2、3とディスクロータDとの隙間、いわゆる、パッドクリアランスを大きくすることができ、ブレーキペダル操作初期の操作量を増やすことなく、ディスクブレーキの引き摺りの発生を低減することが可能となる。
また、キャリパ本体6(キャリパ)には、シリンダボア10の内周面に連通する凹部30(液量補償室)が設けられ、該凹部30は、第1シール部材(内周側シール)48による小径受圧面積で液圧を受けてピストン12が移動する際に、第1シール部材48と第3シール部材(外周側シール)50とで画成される第2及び第3液圧室42、43、詳しくは、第2シール部材49と第3シール部材50とで画成される第3液圧室43に凹部30内の作動液を供給し、第3シール部材50による大径受圧面積で液圧を受けてピストン12がインナブレーキパッド2を押圧する際に、第3液圧室43との連通が遮断されるように構成される。すなわち、ピストン12がインナブレーキパッド2を押圧する際の作動液を液量補償室である凹部30から供給するようになっている。このため、ブレーキペダルの操作時に、マスタシリンダから供給する作動液のうちの制動に寄与しない無効液量を低減することができ、運転者に良好なペダルフィーリングを与えることができる。
1 ディスクブレーキ,2 インナブレーキパッド(摩擦ブレーキパッド),3 アウタブレーキパッド(摩擦ブレーキパッド),4 キャリパ,5 キャリア,6 キャリパ本体,7 シリンダ部,10 シリンダボア,10a 底壁部,12 ピストン,15 突設部,16 主流路,21 第1シール部材用環状溝,22 第2シール部材用環状溝,23 第3シール部材用環状溝,30 凹部(液量補償室),31 液圧補給部材,32 スプリング,33 第1筒状部,34 第2筒状部,35 接続壁部,38 ピストンシール,40 液圧室,41 第1液圧室,42 第2液圧室,43 第3液圧室,44 第4液圧室,48 第1シール部材(内周側シール),49 第2シール部材,50 第3シール部材(外周側シール)

Claims (1)

  1. キャリパのシリンダボア内に摺動可能に設けられ、少なくとも前記シリンダボアの底壁部側に筒状部が形成されたピストンを有し、前記シリンダボア内に作動液が供給されることにより前記ピストンが摩擦ブレーキバッドをディスクロータへ押圧するディスクブレーキにおいて、
    前記ピストンの筒状部には、内周側および外周側にブレーキ液を密封するシールが設けられ、
    前記ピストンは、前記作動液の供給により前記シリンダボアへ液圧が付与され始めたときに、前記内周側シールによる小径受圧面積で液圧を受けて前記ディスクロータ側に移動し、前記ディスクロータに前記摩擦ブレーキパッドが当接した後に前記外周側シールによる大径受圧面積で液圧を受けて前記摩擦ブレーキパッドを前記ディスクロータへ押圧するようになっており、
    前記キャリパには、前記シリンダボアに連通する液量補償室が設けられ、該液量補償室は、前記内周側シールによる小径受圧面積で液圧を受けて前記ピストンが移動する際に、前記内周側シールと前記外周側シールとで画成される室に作動液を供給し、前記外周側シールによる大径受圧面積で液圧を受けて前記ピストンが前記摩擦ブレーキパッドを押圧する際に、前記室との連通が遮断されることを特徴とするディスクブレーキ。
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