JP2013179728A - 車体制振制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】制動スリップの発生時、車体制振制御の効果を出しながら、制動スリップからの早期復帰を達成すること。
【解決手段】車体制振制御装置は、走行中の入力情報に基づいて推定した車体のバネ上挙動を抑制するように、モータ108に出力する駆動トルク指令値を増減補正する。この車体制振制御装置において、制動中、モータ108により駆動される左右前輪102FR,102FLの制動スリップ量が所定値を超えると、左右前輪102FR,102FLの制動スリップ量が所定値以下のときに出力する駆動トルク指令値に対し、制動側トルクを減少補正した駆動トルク指令値を出力して車体制振制御を実施する駆動トルク補正制限値算出部207を備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、走行中の入力情報に基づいて推定した車体のバネ上挙動を抑制するように、駆動源に出力する駆動トルク指令値を増減補正する車体制振制御装置に関する。
従来、アクセル操作、ステアリング操作およびブレーキ操作を入力値とし、タイヤの振動、サスペンションにおける車体バネ下の振動及び車体バネ上の振動の力学モデルである運動モデルを用いて、制振トルクを算出し、車体の振動を抑制する車両制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−168148号公報
しかしながら、従来の車両制御装置にあっては、制振トルクを算出することだけについて記載されており、制動中に駆動輪の車輪速が低下する制動スリップが発生した時の影響は考慮されておらず、影響に対応するシステム構成にはなっていない。
したがって、例えば、回生協調ブレーキ制御作動による低μ路旋回制動中に、駆動輪が制動スリップした場合、挙動を安定させるため、回生量を減少させて、摩擦ブレーキの割合を増加させることを行っている(超過配分制御)。しかし、この状態のときに、車体制振制御が作動すると、アンダーステア挙動やオーバーステア挙動を助長してしまう、という問題がある。
そこで、一般的には、制動スリップが発生した状態では車体制振制御を停止させて超過配分制御を行ない、挙動の安定を図っている。このため、車体制振制御を停止している期間、車体制振制御の効果であるバネ上振動抑制や操舵の効き感の向上などの効果を出すことができない、という問題がある。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、制動スリップの発生時、車体制振制御の効果を出しながら、制動スリップからの早期復帰を達成することができる車体制振制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の車体制振制御装置は、走行中の入力情報に基づいて推定した車体のバネ上挙動を抑制するように、駆動源に出力する駆動トルク指令値を増減補正するものを前提とする。
この車体制振制御装置において、制動中、前記駆動源により駆動される駆動輪の制動スリップ量が所定値を超えると、前記駆動輪の制動スリップ量が所定値以下のときに出力する駆動トルク指令値に対し、制動側トルクを減少補正した駆動トルク指令値を出力して車体制振制御を実施する制動スリップ対応制御手段を備える。
よって、制動中、駆動源により駆動される駆動輪の制動スリップ量が所定値を超えると、駆動輪の制動スリップ量が所定値以下のときに出力する駆動トルク指令値に対し、制動側トルクを減少補正した駆動トルク指令値を出力して車体制振制御が実施される。
すなわち、駆動輪の制動スリップ量が所定値以下である通常時における車体制振制御の出力に対して、制動側トルクを減少補正することにより、制動スリップ量が増大するのを抑えながら、車体制振制御の実施が維持される。このため、制動スリップの発生時、車体制振制御による荷重安定効果を出すことができる。
そして、車体制振制御による荷重安定効果に伴って、タイヤの路面グリップ限界値が安定するのに加え、制動側トルクの減少補正により、駆動輪による路面グリップが進行することで、駆動輪にて発生していた制動スリップが速やかに収束し、非スリップ状態へと早期に復帰することができる。
この結果、制動スリップの発生時、車体制振制御の効果を出しながら、制動スリップからの早期復帰を達成することができる。
実施例1の車体制振制御装置が適用された電気自動車を示す全体システム構成図である。 実施例1の電気自動車システムにおける制駆動モータコントロールユニット内の制御プログラム構成を示す制御ブロック図である。 実施例1の制駆動モータコントロールユニット内の車体制振制御装置を示す制御ブロック図である。 実施例1の車体振動推定部に有する車両モデルを図式化したものを示す車両モデル図である。 実施例1のレギュレータ部及びチューニング部の内部構成を示すゲインブロック図である。 実施例1のレギュレータ部のレギュレータゲインの機能を示すゲイン機能説明図である。 実施例1の制駆動モータコントロールユニットにおいて実行される車体制振制御処理の流れを示すフローチャートである。 車体制振制御の基本作用の説明図であり、走行状況(a)、車軸トルク特性のタイムチャート(b)、ピッチ角速度特性のタイムチャート(c)を示す。 実施例1の車体制振制御で狙っている効果である「操舵応答の向上」と「荷重変動の抑制」と「ロール速度の抑制」の基本原理を示す原理説明図である。 比較例の装置を搭載した電気自動車での制動スリップ発生時における車輪速(従動輪速、駆動輪速)・合算前の制動トルク・車体制振制御トルク・合算後の制動トルク・ピッチレイトの各特性を示すタイムチャートである。 実施例1の装置を搭載した電気自動車での制動スリップ発生時に車体制振制御トルクのうち制動側トルクをゼロとする場合における車輪速(従動輪速、駆動輪速)・合算前の制動トルク・車体制振制御トルク・合算後の制動トルク・ピッチレイトの各特性を示すタイムチャートである。 実施例1の装置を搭載した電気自動車での制動スリップ発生時に車体制振制御トルクのうち制動側トルクを超過配分リミッタ作動量に応じて減少させる場合における車輪速(従動輪速、駆動輪速)・合算前の制動トルク・車体制振制御ON/OFFフラグ・車体制振制御トルクの各特性を示すタイムチャートである。
以下、本発明の車体制振制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
実施例1における構成を、「全体システム構成」、「制駆動モータコントロールユニットの内部構成」、「車体制振制御装置の入力変換部構成」、「車体制振制御装置の車体振動推定部構成」、「車体制振制御装置のトルク指令値算出部構成」に分けて説明する。
[全体システム構成]
図1は、実施例1の車体制振制御装置が適用された電気自動車を示す全体システム構成図である。以下、図1に基づき、全体システム構成を説明する。
ここで、「車体制振制御」とは、車両の駆動源(実施例1ではモータ108)に出力する制駆動トルクを車体の振動に合わせて適切に制御することにより、車体振動を抑制する機能を持つ制御をいう。実施例1の車体制振制御においては、操舵時のヨー応答向上効果、操舵時のリニアリティ向上効果、ロール挙動の抑制効果も併せて得られる。
実施例1の車体制振制御装置が適用された電気自動車は、図1に示すように、前輪駆動車であり、制駆動モータコントロールユニット101(以下、「制駆動モータECU101」という。)と、回生協調ブレーキコントロールユニット112(以下、「回生協調ブレーキECU112」という。)と、モータ108と、を備えている。
前記制駆動モータECU101は、モータ108の制駆動トルク制御を行う。この制駆動モータECU101には、左右前輪102FR,102FL(駆動輪)と左右後輪102RR,102RL(従動輪)に接続された車輪速センサ103FR,103FL,103RR,103RLからの信号と、ステアリングホイール110に接続された操舵角センサ111からの信号と、が入力される。さらに、回生協調ブレーキECU112からの信号と、アクセルペダルへのドライバ操作量を検出するアクセル開度センサ105からの信号と、が入力される。これらの入力信号に応じてモータ108を制駆動するトルク指令値を算出し、トルク指令値をインバータ106へ送る。なお、インバータ106は、入力されるトルク指令値が駆動側の力行時、バッテリ107からの直流をモータ108への三相交流に変換し、入力されるトルク指令値が制動側の回生時、モータ108からの三相交流をバッテリ107への直流に変換する。
前記回生協調ブレーキECU112は、制動時、摩擦トルク分と回生トルク分の総和により要求制動トルクを調整する回生協調ブレーキ制御手段である。ここで、回生協調ブレーキECU112は、ブレーキペダルへのドライバ操作量を検出するブレーキストロークセンサ104からの信号を入力し、ペダル操作量により要求制動トルクを設定する。また、トルク分担は、回生トルク分として車速やバッテリSOCなどで決まる最大限トルクを確保し、要求制動トルクから回生トルク分を差し引いた残りを摩擦トルク分とする。
この回生協調ブレーキECU112は、モータ108により駆動される左右前輪102FR,102FLの制動スリップ量が超過配分閾値を超えると、車両挙動を安定させるため、回生トルク分を減少させて摩擦トルク分の割合を増加させる超過配分リミッタの作動による超過配分制御を行う。そして、超過配分リミッタ作動フラグと超過配分リミッタ作動量を、制駆動モータECU101に出力する。
前記モータ108は、制駆動モータECU101からのトルク指令値に応じた制駆動トルクを発生し、発生した制駆動トルクは、デフ付き変速機109を介して左右前輪102FR,102FLへと伝達され、車両を制駆動する。
[制駆動モータコントロールユニットの内部構成]
車体制振制御装置は、制駆動モータECU101内に制御プログラムの形で構成されていて、制駆動モータECU101内部の制御プログラムをあらわすブロック構成を図2に示す。以下、図2に基づき、制駆動モータECU101の内部構成を説明する。
前記制駆動モータECU101は、図2に示すように、ドライバ要求トルク演算部201と、トルク指令値演算部202と、車体制振制御装置203と、駆動トルク補正制限値算出部207と、を備えている。
前記ドライバ要求トルク演算部201は、ブレーキストロークセンサ104からのドライバによるブレーキ操作量情報と、アクセル開度センサ105からのドライバによるアクセル操作量情報を入力し、ドライバ要求トルクを演算する。
前記トルク指令値演算部202は、ドライバ要求トルク演算部201からのドライバ要求トルクに、駆動トルク補正制限値算出部207からの駆動トルク補正制限値を加算したトルク指令値と、車載の他システム(例えば、VDCやTCS等)からのトルク要求を入力する。そして、これらの入力情報に基づき、インバータ106への制駆動トルク指令値を算出する。
前記車体制振制御装置203は、入力変換部204と、車体振動推定部205と、トルク指令値算出部206と、の3部構成となっている。入力変換部204は、ドライバ要求トルク、車輪速、操舵角を入力し、これらの入力情報を、駆動トルクと路面からの上下力と旋回抵抗力に変換する。車体振動推定部205は、入力変換部204からの駆動トルクと上下力と旋回抵抗力を車両モデルに入力することにより、トルク入力によるバネ上挙動と、外乱によるバネ上挙動と、操舵によるバネ上挙動と、を推定する。トルク指令値算出部206は、車体振動推定部205により推定されたバネ上挙動に基づき、バネ上挙動を抑制するように駆動トルク補正値を算出する。
前記駆動トルク補正制限値算出部207は、超過配分リミッタ作動フラグと超過配分リミッタ作動量と操舵角を入力する。そして、超過配分リミッタ作動フラグが1(超過配分制御有り)のときに、駆動トルク補正値(=車体制振制御トルク)の制動側トルクに制限をかけて駆動トルク補正制限値を算出する。なお、超過配分リミッタ作動フラグが0(超過配分制御無し)のときには、車体制振制御装置203からの駆動トルク補正値を、そのまま駆動トルク補正制限値とする。
具体的には、超過配分リミッタが作動している状態における車両は、グリップ限界での走行状態にあり、それ以上に制動側トルクが付加されると車両挙動を乱す状態にある。そのため、駆動トルク補正値(=車体制振制御トルク)の制動側トルクを0、もしくは、超過配分リミッタ作動量に応じて減少して駆動トルク補正制限値とする。また、操舵角から車両が旋回状態にあると判断される場合は、より制動側トルクの減少量を直進状態よりも大きくする。
[車体制振制御装置の入力変換部構成]
図3は、車体制振制御装置203の内部を詳細にあらわしたブロック構成を示す。以下、図3に基づき、3部構成の車体制振制御装置203のうち、入力変換部204の構成を説明する。
前記入力変換部204は、車両からのセンシング情報を、後段の車体振動推定部205で用いる車両モデル307への入力形式(具体的には、車体に加わるトルクまたは力の次元)に変換を行う。この入力変換部204は、図3に示すように、駆動トルク変換部301と、サスストローク算出部302と、上下力変換部303と、車体速度推定部304と、旋回挙動推定部305と、旋回抵抗力推定部306と、を有する。
前記駆動トルク変換部301では、ドライバ要求トルクに減速ギア比を積算してモータ端トルクから駆動軸端トルクTwに変換する。減速ギア比としては、デフ付き変速機109の総ギア比を用いる。
前記サスストローク算出部302では、車輪速に基づいてサスペンションのストローク速度及びストローク量を算出する。サスペンションがストロークする際、タイヤは前後方向にも変位をもち、この関係性は車両のサスペンションのジオメトリによって決まる。この関係性を線形近似し、前後変位に対する上下変位の係数を前輪と後輪でそれぞれKgeoF,KgeoRとすると、前後輪の上下変位Zf,Zrはタイヤの前後位置xtf,xtrに対して次式の関係となる。
Zf=KgeoF・xtf
Zr=KgeoR・xtr
上式を微分すると、タイヤの前後速度と上下速度の式となるため、この関係を用いてサスペンションのストローク速度とストローク量を算出する。
前記上下力変換部303では、サスストローク算出部302で算出したサスペンションのストローク速度とストローク量に対し、ばね係数と減衰係数をそれぞれ積算し、その和をとることで、前後輪上下力Ff,Frに変換する。
前記車体速度推定部304では、車輪速情報のうち、従動輪102RR,102RLの車輪速度平均値を車体速度Vとして出力する。
前記旋回挙動推定部305では、車体速度推定部304からの車体速度Vと、操舵角センサ111からの操舵角を入力し、操舵角によりタイヤ転舵角δを算出し、周知の旋回2輪モデルの式を用いて、ヨーレイトγと車体横滑り角βvを算出する。
前記旋回抵抗力推定部306では、旋回挙動推定部305で算出したヨーレイトγと車体横滑り角βv及びタイヤ転舵角δに基づいて、タイヤ横滑り角である前後輪スリップ角βf,βrを算出する(下記の式)。そして、前後輪スリップ角βf,βrとコーナリングパワーCpf,Cprの積によりコーナリングフォースFyf,Fyr(タイヤ横力)を算出する。さらに、前後輪スリップ角βf,βrとコーナリングフォースFyf,Fyrとコーナリングパワー変化率の積により前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcrを算出する。
なお、前後輪スリップ角βf,βrは、次式で計算できる。
βf=βv+lf・γ/V−δ
βr=βv−lr・γ/V
但し、lf及びlrは、車体重心から前後車軸までの距離である。
[車体制振制御装置の車体振動推定部構成]
図3は、車体制振制御装置203の内部を詳細にあらわしたブロック構成を示す。以下、図3及び図4に基づき、3部構成の車体制振制御装置203のうち、車体振動推定部205の構成を説明する。
前記車体振動推定部205は、図4に示すように、車両モデル307を有する。この車両モデル307は、本システムが搭載される車両(車体、前輪サスペンション、後輪サスペンション等)をモデル化した上下運動方程式やピッチング運動方程式によりあらわしている。そして、入力変換部204での処理により算出した駆動軸端トルクTw、前後輪上下力Ff,Fr、前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcrを、車両モデル307に入力することで、バネ上挙動のうち制御対象とする状態量を算出する。
前記車体振動推定部205にて算出されるバネ上挙動の状態量は、
・トルク入力によるバネ上挙動
バウンス速度・バウンス量・ピッチ速度・ピッチ角度
・外乱(車輪速)によるバネ上挙動
バウンス速度・バウンス量・ピッチ速度・ピッチ角度
・操舵によるバネ上挙動
バウンス速度・バウンス量・ピッチ速度・ピッチ角度
である(図5参照)。
[車体制振制御装置のトルク指令値算出部構成]
図3は、車体制振制御装置203の内部を詳細にあらわしたブロック構成を示す。以下、図3、図5及び図6に基づき、3部構成の車体制振制御装置203のうち、トルク指令値算出部206の構成を説明する。
前記トルク指令値算出部206は、図3に示すように、レギュレータ部308,309,310と、チューニング部311,312,313と、モータトルク変換部314と、を備えている。
前記レギュレータ部308,309,310は、車体振動推定部205で算出された制御対象とする状態量に対し、レギュレータ処理を行う。このレギュレータ部308,309,310には、制御対象である「トルク入力によるバネ上挙動を表す各状態量」と「外乱によるバネ上挙動を表す各状態量」と「操舵によるバネ上挙動を表す各状態量」のそれぞれに対し、レギュレータゲインを有する。
前記レギュレータ部308には、「トルク入力によるバネ上挙動を表す各状態量」に対して、図5に示すように、レギュレータゲインとして、Trq-dZvゲイン(バウンス速度ゲイン)と、Trq-dSpゲイン(ピッチ速度ゲイン)と、を設定する。前記レギュレータ部309には、「外乱によるバネ上挙動を表す各状態量」に対して、図5に示すように、レギュレータゲインとして、Ws-SFゲイン(前後バランスゲイン)と、Ws-dSFゲイン(前後バランス変化速度ゲイン)と、Ws-dZvゲイン(バウンス速度ゲイン)と、Ws-dSpゲイン(ピッチ速度ゲイン)と、を設定する。前記レギュレータ部310には、「操舵によるバネ上挙動を表す各状態量」に対して、図5に示すように、レギュレータゲインとして、Str-dWfゲイン(前輪荷重変化速度ゲイン)と、Str-dWrゲイン(後輪荷重変化速度ゲイン)と、を設定する。
前記各ゲインが持つ機能を説明すると、図6に示すように、レギュレータ部308,309の各レギュレータゲインは、荷重の安定化に寄与し、レギュレータ部310の各レギュレータゲインは、荷重の付加に寄与する。そして、Trq-dZvゲインは、バウンス速度を抑制し、Trq-dSpゲインは、ピッチ速度を抑制する。Ws-SFゲインは、前後荷重変化を抑制し、Ws-dSFゲインは、前後荷重変化速度を抑制し、Ws-dZvゲインは、バウンス速度を抑制し、Ws-dSpゲインは、ピッチ速度を抑制する。さらに、Str-dWfゲインは、前輪荷重を上乗せし、Str-dWrゲインは、後輪荷重変動を抑制する。
そして、各状態量に対しレギュレータゲインを積算した値を、車両の駆動トルクから差し引けば、各状態量は平衡状態(ここでは、振動が止まる方向)に働く。したがって、各状態量に負のレギュレータゲインを積算した値を駆動トルク補正値とし、これを駆動トルク指令値に加算することになる。
前記チューニング部311,312,313は、レギュレータ処理後の値に対し、さらに、重み付けを行うためのチューニング処理を行う。このチューニング部311,312,313には、各レギュレータゲインのそれぞれに対して、チューニングゲインK1〜K8が設定されている。
すなわち、図5に示すように、Trq-dZvゲインに対してチューニングゲインK1を設定する。Trq-dSpゲインに対してチューニングゲインK2を設定する。Ws-SFゲインに対してチューニングゲインK3を設定する。Ws-dSFゲインに対してチューニングゲインK4を設定する。Ws-dZvゲインに対してチューニングゲインK5を設定する。Ws-dSpゲインに対してチューニングゲインK6を設定する。Str-dWfゲインに対してチューニングゲインK7を設定する。Str-dWrゲインに対してチューニングゲインK8を設定する。
これは、レギュレータゲインで補正すると、駆動トルクを変動させるため、レギュレータゲインで補正したものをそのままトルク指令値にした場合、前後G変動が違和感を生じることがあるし、また、狙いとする操舵応答向上やロール挙動の積極的な制御を実現することができないことがある。
そこで、チューニングゲインK1〜K6は、振動を抑制する正方向の値で、かつ、違和感を与えない前後G変動範囲に含まれる値に設定する。チューニングゲインK7,K8は、振動を助長する負方向で、かつ、違和感を与えない前後G変動範囲に含まれる値に設定する。これらのチューニングゲインK1〜K8を積算した値の和を、車両駆動軸に付与することにより、前後輪荷重を安定化させてタイヤの性能を十分に発揮させることが可能となり、また、操舵時には、前輪に荷重を上乗せし、操舵応答の向上、穏やかなロール挙動を実現できるようになる。
なお、チューニングゲインK1〜K8は、重み付けの調整代であるため、適用車両に応じて初期設定値を変更することで、車種への対応性を持たせることができる。さらに、チューニングゲインK1〜K8を走行中に変更可能にしておくと、走行状況やドライバ操作状況などに応じ、適切にチューニングゲインK1〜K8を調整することで、走行状況などによって特に実現したい制御効果を強調することもできる。
前記モータトルク変換部314は、チューニングゲインK1〜K8を積算した値の和により算出された駆動トルク補正値(駆動軸端トルク)を、減速ギア比を用いてモータ軸端トルクに変換し、これを最終の駆動トルク補正値として出力する。
次に、作用を説明する。
実施例1の車体制振制御装置における作用を、「車体制振制御処理作用」、「超過配分制御非介入時の車体制振制御作用」、「超過配分制御介入時の車体制振制御作用」に分けて説明する。
[車体制振制御処理作用]
図7は、実施例1の制駆動モータコントロールユニット101にて実行される車体制振制御処理を示すフローチャートである。以下、図7の各ステップについて説明する。なお、この車体制振制御処理は、所定の制御周期毎に実行される。
まず、車体制振制御装置203において、以下に説明するステップS401〜ステップS417へと進むことにより、駆動トルク補正値算出処理が実行される。
車体制振制御処理を開始すると、ステップS401では、ドライバ要求トルク演算部201にてドライバ要求トルクが演算される。次のステップS402では、駆動トルク変換部301にてドライバ要求トルクに減速ギア比を積算してモータ端トルクから駆動軸端トルクTwに単位変換される。次のステップS403では、車輪速センサ103FR,103FL,103RR,103RLにより車輪速が検出される。次のステップS404では、サスストローク算出部302にて車輪速に基づいてサスペンションのストローク速度とストローク量が算出される。次のステップS405では、上下力変換部303にてサスペンションのストローク速度とストローク量が前後輪上下力Ff,Frに変換される。次のステップS406では、操舵角センサ111により操舵角が検出される。次のステップS407では、車体速度推定部304にて車体速度Vが算出される。次のステップS408では、旋回挙動推定部305にてヨーレイトγと車体横滑り角βvが算出される。次のステップS409では、旋回抵抗力推定部306にて前後輪スリップ角βf,βr(タイヤ横滑り角)が算出される。次のステップS410では、旋回抵抗力推定部306にてコーナリングフォースFyf,Fyr(タイヤ横力)が算出される。次のステップS411では、旋回抵抗力推定部306にて前後輪旋回抵抗力Fcf,Fcrが算出される。以上の処理は、入力変換部204までの間になされる。
次のステップS412では、車体振動推定部205にて車体のバネ上挙動を表す状態量が算出される。次のステップS413では、レギュレータ部308とチューニング部311にてドライバトルクによる振動を抑制する制御指令値Aが算出される。次のステップS414では、レギュレータ部309とチューニング部312にて外乱による振動を抑制する制御指令値Bが算出される。次のステップS415では、レギュレータ部310とチューニング部313にて操舵による前後荷重変動を増幅する制御指令値Cが算出される。次のステップS416では、制御指令値Aと制御指令値Bと制御指令値Cの和による駆動トルク補正値が出力される。次のステップS417では、モータトルク変換部314にて駆動軸端の駆動トルク補正値がモータ端の駆動トルク補正値に単位変換され、駆動トルク補正値(=車体制振制御トルク)として出力される。
次に、駆動トルク補正制限値算出部207において、以下に説明するステップS418〜ステップS422により、超過配分制御非介入あるいは超過配分制御介入による駆動トルク補正制限値の算出処理が実行される。
ステップS418では、ステップS417での単位変換に続き、超過配分リミッタ作動フラグが1か否かを判断する。YES(超過配分リミッタ作動フラグ=1)の場合はステップS419以降へ進み、NO(超過配分リミッタ作動フラグ=0)の場合はエンドへ進む。エンドへ進むと、ステップS417で算出された駆動トルク補正値が、そのまま車体制振制御トルクとされる。
ステップS419では、ステップS418での超過配分リミッタ作動フラグ=1であるとの判断に続き、超過配分リミッタ作動量が閾値以上であるか否かを判断する。YES(超過配分リミッタ作動量≧閾値)の場合はステップS422へ進み、NO(超過配分リミッタ作動量<閾値)の場合はステップS420へ進む。ここで、超過配分リミッタ作動量の閾値は、制動スリップの速やかな抑制を要求する値に決める。
ステップS420では、ステップS419での超過配分リミッタ作動量<閾値であるとの判断に続き、操舵角センサ111からの操舵量情報に基づき、旋回制動中であるか否かを判断する。YES(旋回制動中)の場合はステップS422へ進み、NO(直進制動中)の場合はステップS421へ進む。
ステップS421では、ステップS420での直進制動中であるとの判断に続き、ステップS417で算出された駆動トルク補正値の制動側トルクの減少量を、超過配分リミッタ作動量が大きいほど大きな量として算出した駆動トルク補正制限値を出力し、エンドへ進む。
ステップS422では、ステップS419での超過配分リミッタ作動量≧閾値であるとの判断、あるいは、ステップS420での旋回制動中であるとの判断に続き、ステップS417で算出された駆動トルク補正値の制動側トルクをゼロとし、駆動側トルクのみとして算出した駆動トルク補正制限値を出力し、エンドへ進む。
[超過配分制御非介入時の車体制振制御作用]
非制動による走行中、あるいは、制動走行中であっても超過配分リミッタが非作動である超過配分制御非介入時には、モータ108に対する制駆動トルクによる通常の車体制振制御が実行される。以下、図8及び図9に基づき、これを反映する超過配分制御非介入時の車体制振制御作用を説明する。
超過配分制御非介入時には、図7のフローチャートにおいて、ステップS417からステップS418→エンドへと進み、ステップS417で算出された駆動トルク補正値が、そのまま車体制振制御トルクとされる。
この車体制振制御トルクによる車体制振制御は、トルク変動や外乱による車体挙動の変化速度を、モータトルクの補正で抑制し、荷重の安定化と旋回性能の向上を狙う制御である。そこで、具体的な走行状況として、図8(a)に示すように、停車から発進加速した後、定速状態に入り、その後、減速して停車する場合を例にとる。
停車から発進加速すると、駆動トルクが急増することで、後輪の輪荷重が増加し、前輪の輪荷重が減少するという荷重移動が生じ、車体挙動としては、車体前方側が持ち上がるノーズアップとなる。このとき、図8(a),(b)に示すように、駆動輪である前輪への駆動トルクをダウンさせると、減速時のように車体前方側が沈み込むノーズダウンの挙動を発生させ、荷重移動によるノーズアップと、トルクダウンによるノーズダウンが相殺し、車体挙動が安定する。
発進後、定速状態に入る定常状態では、車体挙動が安定しているため、駆動トルクを補正する制御は行わない。その後、ブレーキ操作等を行って減速停車する場合には、駆動トルクが急減することで、後輪の輪荷重が減少し、前輪の輪荷重が増加するという荷重移動が生じ、車体挙動としては、車体前方側が沈み込むノーズダウンとなる。このとき、図8(a),(b)に示すように、駆動輪である前輪への駆動トルクをアップさせると、加速時のように車体前方側が持ち上がるノーズアップの挙動を発生させ、荷重移動によるノーズダウンと、トルクアップによるノーズアップが相殺し、車体挙動が安定する。
したがって、車体のピッチ角速度の変化をみると、図8(c)に示すように、制振なしの場合に比べ、制振ありの場合が車体のピッチ角速度が小さく抑えられる。
次に、車体制振制御で性能向上を狙うシーンとその効果は、
(a)車線変更時やS字路等のシーンで、穏やかなロールとリニアリティの良さにより、安定感のあるリニアな旋回性能を得ること。
(b)高速巡航時等のシーンで、修正操舵の少なさやピッチダンピングの良さにより、車両の安定した巡航性能を得ること。
である。
(a)を達成するには、「操舵応答の向上」と「ロール速度の抑制」が必要であるし、(b)を達成するには、「荷重変動の抑制」が必要である。以下、図9に基づき、車体制振制御により、これらの効果を実現できる理由を説明する。
「操舵応答の向上」は、図9に示すように、操舵時、減速=トルクダウンを行うと、前輪荷重が増加し、前輪タイヤのコーナリングパワーCpが増大し、タイヤ横力が増大することで、操舵応答が向上する。すなわち、コーナリングパワーCpは、輪荷重が大きいほど大きくなるという荷重依存特性を用い、操舵時に輪荷重を増加させることで、「操舵応答の向上」が実現される。
「荷重変動の抑制」は、図9に示すように、例えば、ノーズアップ挙動が発生した場合には、減速=トルクダウンを行うと、車体振動と逆位相の運動(ノーズダウン)が発生し、荷重変動の相殺により、荷重変動が抑制される。一方、ノーズダウン挙動が発生した場合には、加速=トルクアップを行うと、車体振動と逆位相の運動(ノーズアップ)が発生し、荷重変動の相殺により、荷重変動が抑制される。この荷重変動の抑制は、ドライバ入力により振動(荷重変動)が発生した場合も、路面外乱により振動(荷重変動)が発生した場合も同様である。すなわち、トルク変動と路面外乱によるピッチ挙動を推定すると、推定したピッチ挙動とは逆位相の駆動トルクで、「荷重変動の抑制」が実現される。
「ロール速度の抑制」は、上記の「操舵応答の向上」と「荷重変動の抑制」によりヨーレイトのリニアリティが向上する。したがって、ヨーレイトに比例して穏やかな横G変化となり、ロールレイトのピーク値が小さくなって、ロール速度が抑制される。すなわち、「操舵応答の向上」と「荷重変動の抑制」が組み合わされて、「ロール速度の抑制」が実現される。
以上のように、超過配分制御非介入時には、車体の振動要因を、操舵によるものと、それ以外によるものとに分離して車体制振制御を実施する。
したがって、操舵時には、前輪荷重が増加するよう積極的にノーズダウン挙動を助長することでヨー応答を向上させ、同時に余計な振動成分は抑制することでリニアリティを確保する。そして、これらの制御を同時に行うことで横Gの急変が抑えられるため、ロールレイトの抑制できるという本制御が狙いとする効果(a)を実現できる。
一方、直線路の巡航時には、トルク変動と路面外乱によるピッチ挙動を推定し、推定したピッチ挙動とは逆位相の駆動トルクを与えることで、荷重変動が抑制され、車両の安定した巡航性能を得るという本制御が狙いとする効果(b)を実現できる。
[超過配分制御介入時の車体制振制御作用]
回生協調ブレーキでの超過配分制御介入時、上記車体制振制御をそのまま実施すると、制御干渉により車両挙動の悪化を招くことがある。一方、回生協調ブレーキでの超過配分制御介入時、上記車体制振制御を停止すると、狙いとする車体制振制御効果が実現できない。よって、回生協調ブレーキでの超過配分制御介入時に車体制振制御の実施を継続するためには工夫が必要である。以下、図10〜図13に基づき、これを反映する超過配分制御介入時の車体制振制御作用を説明する。
まず、回生協調ブレーキでの超過配分制御介入時、上記車体制振制御をそのまま実施すると、超過配分制御での挙動を安定させるための制動トルクに、車体制振制御での制動側トルクが加わる制御干渉により、制動トルクが過大になってしまうことがあり、旋回制動時においては、アンダーステア挙動やオーバーステア挙動を助長してしまう。
そのため、一般的には、超過配分制御が介入するような制動スリップが発生した状態では、車体制振制御を停止させ、超過配分制御のみにより、挙動の安定を図っている。このように、超過配分制御介入時に車体制振制御を停止させるものを比較例とする。この比較例の装置を搭載した電気自動車での制動スリップ発生時における作用を、図10に示すタイムチャートにより説明する。
図10において、時刻t0は制動トルク発生時刻であり、時刻t1はスリップ発生時刻であり、時刻t2は超過配分リミッタ作動時刻であり、時刻t3はスリップ終了時刻である。
この比較例において、時刻t0から時刻t1までは、回生協調ブレーキ制御により、制動トルク(=要求制動トルク)が、摩擦トルク分と回生トルク分にて分担される。そして、時刻t1で制動スリップが発生すると、車体制振制御において、駆動側トルクを付加する制御を行い、車両挙動の安定を図ろうとする。
しかし、超過配分制御が介入する時刻t2になると、車体制振制御を停止し、回生トルク分を減少して摩擦トルク分の割合を増加させる超過配分制御のみが実行され、時刻t3にて制動スリップが終了する。
この比較例の場合、時刻t2〜時刻t3は、車体制振制御が停止されることで、ピッチレイト特性に示すように、車体のピッチ変動が大きくなり、車体制振制御効果であるバネ上振動抑制や操舵の効き感向上の効果を出すことができない。
これに対し、実施例1において、超過配分制御介入時であって、超過配分リミッタ作動量が閾値以上であるときには、図7のフローチャートにおいて、ステップS417からステップS418→ステップS419→ステップS422→エンドへと進む。また、超過配分制御介入時であって、超過配分リミッタ作動量が閾値未満であるが、旋回制動中であるときには、図7のフローチャートにおいて、ステップS417からステップS418→ステップS419→ステップS420→ステップS422→エンドへと進む。そして、何れの場合も、ステップS422では、ステップS417で算出された駆動トルク補正値の制動側トルクがゼロとされ、駆動側トルクのみとして算出した駆動トルク補正制限値が出力される。
このとき作用を、図11に示すタイムチャートにより説明する。
時刻t1で制動スリップが発生すると駆動側トルクを付加する車体制振制御が開始され、時刻t2以降においても、車体制振制御トルクのうち、制動側トルクをカットし(制動側トルク=0)、駆動側トルクのみを残す車体制振制御が維持される。
すなわち、通常時における車体制振制御の出力に対して、制動側トルクをゼロとする減少補正を行うことで、制動スリップ量が増大するのを確実に抑えながら、車体制振制御の実施が維持される。このため、制動スリップの発生時、車体制振制御による荷重安定効果を出すことができ、図11のピッチレイト特性に示すように、ピッチ変動の幅が比較例(図10)に比べて小さく抑えられる。
そして、車体制振制御による荷重安定効果に伴って、タイヤの路面グリップ限界値が安定する。これに加え、回生協調ブレーキ側での超過配分制御による制動トルク低減と、車体制振制御側での制動側トルクのゼロ補正により、左右前輪102FR,102FLによる路面グリップが進行する。この結果、左右前輪102FR,102FLにて発生していた制動スリップが速やかに収束し、時刻t3'(<比較例の時刻t3)にて非スリップ状態へと早期に復帰することができる。
さらに、制動スリップの時刻t3'での早期収束に伴って、図11のピッチレイト特性に示すように、ピッチ変動継続時間が時刻t1〜時刻t3'までとなり、比較例の時刻t1〜時刻t3に比べ、ピッチ変動が早期に収束する。加えて、図11の制動トルク特性に示すように、制動スリップが速やかに収束した分、超過配分制御での回生トルク分の減少量が小さくなり、その結果、回生量の増加が図られることになる。
一方、実施例1において、超過配分制御介入時であって、超過配分リミッタ作動量が閾値未満であり、かつ、直進制動中であるときには、図7のフローチャートにおいて、ステップS417からステップS418→ステップS419→ステップS420→ステップS421→エンドへと進む。そして、ステップS421では、ステップS417で算出された駆動トルク補正値の制動側トルクの減少量を、超過配分リミッタ作動量が大きいほど大きな量とし、制動側トルクの減少量を用いて算出した駆動トルク補正制限値が出力される。
このとき作用を、図12に示すタイムチャートにより説明する。
時刻t1で制動スリップが発生すると駆動側トルクを付加する車体制振制御が開始され、時刻t2以降においても、車体制振制御トルクのうち、制動側トルクを超過配分リミッタ作動量に応じて減少させることで、残った駆動側トルクと一部の制動側トルクによる車体制振制御が維持される。
すなわち、通常時における車体制振制御の出力に対して、制動側トルクの減少補正を行うことで、駆動輪の路面グリップ限界を超過する制動トルクを出力することなく、車体制振制御の実施が維持される。このため、制動スリップの発生時、車体制振制御による荷重安定効果を出すことができる。この車体制振制御による荷重安定効果は、制動側トルクをゼロ補正する場合に比べて高くなり、通常時の車体制振制御による荷重安定効果に近くなる。その理由は、制動側トルクの超過配分リミッタ作動量に応じた減少補正により、駆動輪の路面グリップ限界までトルクを使用することができることによる。
そして、車体制振制御による荷重安定効果に伴って、タイヤの路面グリップ限界値が安定する。これに加え、回生協調ブレーキ側での超過配分制御による制動トルク低減と、車体制振制御側での制動側トルクの減少補正により、左右前輪102FR,102FLによる路面グリップが進行する。この結果、左右前輪102FR,102FLにて発生していた制動スリップが速やかに収束し、時刻t3"(<比較例の時刻t3)にて非スリップ状態へと早期に復帰することができる。
さらに、制動スリップの時刻t3"での早期収束に伴って、図12の制動トルク特性に示すように、超過配分制御での回生トルク分の減少量が小さくなり、その結果、回生量の増加が図られることになる。
次に、効果を説明する。
実施例1の車体制振制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 走行中の入力情報に基づいて推定した車体のバネ上挙動を抑制するように、駆動源(モータ108)に出力する駆動トルク指令値を増減補正する車体制振制御装置において、
制動中、前記駆動源(モータ108)により駆動される駆動輪(左右前輪102FR,102FL)の制動スリップ量が所定値を超えると、前記駆動輪(左右前輪102FR,102FL)の制動スリップ量が所定値以下のときに出力する駆動トルク指令値に対し、制動側トルクを減少補正した駆動トルク指令値を出力して車体制振制御を実施する制動スリップ対応制御手段(駆動トルク補正制限値算出部207)を備える(図2)。
このため、制動スリップの発生時、車体制振制御の効果を出しながら、制動スリップからの早期復帰を達成することができる。
(2) 前記駆動源にモータ108を有し、制動時、摩擦トルク分と回生トルク分の総和により要求制動トルクを調整し、前記モータ108により駆動される駆動輪(左右前輪102FR,102FL)の制動スリップ量が超過配分閾値を超えると、回生トルク分を減少させて摩擦トルク分の割合を増加させる超過配分リミッタの作動による超過配分制御を行う回生協調ブレーキ制御手段(回生協調ブレーキECU112)を備え(図1)、
前記制動スリップ対応制御手段(駆動トルク補正制限値算出部207)は、前記超過配分リミッタが作動介入すると、駆動トルク指令値のうち制動側トルクの減少補正を行う(図2)。
このため、(1)の効果に加え、回生協調ブレーキの超過配分制御介入のタイミングにて車体制振制御の出力に制限をかけることによって、回生協調ブレーキによる挙動安定制御の効果を阻害することなく、車体制振制御の効果が出せる時間を確保することができる。加えて、回生協調ブレーキの超過配分制御介入時間が短縮することで、超過配分制御介入時において車体制振制御を停止する場合に比べ、エネルギー回生量を増加させることができる。
(3) 前記制動スリップ対応制御手段(駆動トルク補正制限値算出部207)は、前記超過配分リミッタが作動介入すると、駆動トルク指令値のうち駆動側トルクのみを出力し、制動側トルクの出力を止める(図7のステップS422)。
このため、(2)の効果に加え、超過配分制御介入時、路面グリップ限界での挙動安定に影響を及ぼす車体制振制御の制動側のトルクのみ出力を止めることによって、駆動側トルク分の車体制振制御効果を出すことができる。
(4) 前記制動スリップ対応制御手段(駆動トルク補正制限値算出部207)は、前記超過配分リミッタが作動介入すると、超過配分リミッタ作動量に応じて、駆動トルク指令値のうち制動側トルクの減少補正を行う(図7のステップS421)。
このため、(2)又は(3)の効果に加え、超過配分制御介入時、超過配分リミッタ作動量に応じて、制動側トルクを減少させ、路面グリップ限界までトルクを使用することで、通常時に近い車体制振制御効果を出すことができる。
(5) 前記制動スリップ対応制御手段(駆動トルク補正制限値算出部207)は、旋回制動中、前記駆動源(モータ108)により駆動される駆動輪(左右前輪102FR,102FL)の制動スリップ量が所定値を超えると、直進制動中よりも大きな割合で制動側トルクを減少補正する(図7のステップS420〜ステップS422)。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、旋回制動中においては、直進制動中よりも大きな割合で制動側トルクを減少させることにより、直進制動状態であるか、旋回制動状態であるかにかかわらず、路面グリップ限界の超過を防止することができる。
なぜなら、旋回制動中においては、横力が必要になるため、直進制動中よりも制動による路面グリップ限界が低下することによる。
以上、本発明の車体制振制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、制動スリップ対応制御手段(駆動トルク補正制限値算出部207)として、回生協調ブレーキの超過配分制御介入のタイミングにて車体制振制御の出力に制限をかけて車体制振制御を実施する例を示した。しかし、制動スリップ対応制御手段としては、回生協調ブレーキの超過配分制御介入とは無関係に、制動スリップが発生したときに、車体制振制御の出力に制限をかけて車体制振制御を実施する例としても良い。
実施例1では、車体制振制御装置として、バネ上振動抑制効果と操舵の効き感向上効果を出す例を示した。しかし、車体制振制御装置としては、例えば、少なくともバネ上のピッチ挙動の抑制効果を出すものであれば良い。
実施例1では、本発明の車体制振制御装置を、前輪駆動の電気自動車に適用する例を示した。しかし、本発明の車体制振制御装置は、後輪駆動や4輪駆動の電気自動車やハイブリッド車などに対しても適用することができる。さらに、回生ブレーキを使わないエンジン車に対しても適用することができる。
101 制駆動モータコントロールユニット
102FR,102FL 左右前輪(従動輪)
102RR,102RL 左右後輪(駆動輪)
103FR,103FL,103RR,103RL 車輪速センサ
104 ブレーキストロークセンサ
105 アクセル開度センサ
106 インバータ
107 バッテリ
108 モータ(駆動源)
109 デフ付き変速機
110 ステアリングホイール
111 操舵角センサ
112 回生協調ブレーキコントロールユニット
201 ドライバ要求トルク演算部
202 トルク指令値演算部
203 車体制振制御装置
204 入力変換部
205 車体振動推定部
206 トルク指令値算出部
207 駆動トルク補正制限値算出部(制動スリップ対応制御手段)
301 駆動トルク変換部
302 サスストローク算出部
303 上下力変換部
304 車体速度推定部
305 旋回挙動推定部
306 旋回抵抗力推定部
307 車両モデル
308,309,310 レギュレータ部
311,312,313 チューニング部
314 モータトルク変換部

Claims (5)

  1. 走行中の入力情報に基づいて推定した車体のバネ上挙動を抑制するように、駆動源に出力する駆動トルク指令値を増減補正する車体制振制御装置において、
    制動中、前記駆動源により駆動される駆動輪の制動スリップ量が所定値を超えると、前記駆動輪の制動スリップ量が所定値以下のときに出力する駆動トルク指令値に対し、制動側トルクを減少補正した駆動トルク指令値を出力して車体制振制御を実施する制動スリップ対応制御手段を備える
    ことを特徴とする車体制振制御装置。
  2. 請求項1に記載された車体制振制御装置において、
    前記駆動源にモータを有し、制動時、摩擦トルク分と回生トルク分の総和により要求制動トルクを調整し、前記モータにより駆動される駆動輪の制動スリップ量が超過配分閾値を超えると、回生トルク分を減少させて摩擦トルク分の割合を増加させる超過配分リミッタの作動による超過配分制御を行う回生協調ブレーキ制御手段を備え、
    前記制動スリップ対応制御手段は、前記超過配分リミッタが作動介入すると、駆動トルク指令値のうち制動側トルクの減少補正を行う
    ことを特徴とする車体制振制御装置。
  3. 請求項2に記載された車体制振制御装置において、
    前記制動スリップ対応制御手段は、前記超過配分リミッタが作動介入すると、駆動トルク指令値のうち駆動側トルクのみを出力し、制動側トルクの出力を止める
    ことを特徴とする車体制振制御装置。
  4. 請求項2又は3に記載された車体制振制御装置において、
    前記制動スリップ対応制御手段は、前記超過配分リミッタが作動介入すると、超過配分リミッタ作動量に応じて、駆動トルク指令値のうち制動側トルクの減少補正を行う
    ことを特徴とする車体制振制御装置。
  5. 請求項1から4までの何れか1項に記載された車体制振制御装置において、
    前記制動スリップ対応制御手段は、旋回制動中、前記駆動源により駆動される駆動輪の制動スリップ量が所定値を超えると、直進制動中よりも大きな割合で制動側トルクを減少補正する
    ことを特徴とする車体制振制御装置。
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