JP5983000B2 - 車体制振制御装置 - Google Patents
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Description
この車体制振制御装置において、
前記入力変換部は、サスペンション・ジオメトリに基づくホイールセンターの前後方向変位に対する上下方向変位の関係特性を線形近似したタイヤ変位線形特性を用い、車輪速変動に基づいて外乱入力を推定する外乱入力推定部を備える。
前記外乱入力推定部は、前記タイヤ変位線形特性によるサスペンションジオメトリゲインと前記車輪速変動により推定されるタイヤの前後位置とから前後輪の上下変位を求め、前記前後輪の上下変位に基づきサスペンションストローク速度とサスペンションストローク量を算出し、前記サスペンションストローク速度と前記サスペンションストローク量を上下力に変換することで、外乱入力である前輪上下力と後輪上下力を推定する。
前記外乱入力推定部に、静止状態にて輪荷重の移動により車体姿勢が変化する路面の走行時、車体姿勢の変化に伴いホイールセンター位置が上下方向に変位する場合、前記タイヤ変位線形特性の傾き係数であるサスペンションジオメトリゲインを、線形近似性を高める方向に補正するサスペンションジオメトリゲイン補正処理部を設ける。
前記サスペンションジオメトリゲイン補正処理部は、勾配路静止状態でのタイヤ変位線形特性の釣り合い位置が、平坦路静止状態でのタイヤ変位線形特性のゼロ点位置になるように、勾配路静止状態でのタイヤ変位線形特性を移動させ、移動後のタイヤ変位線形特性のゼロ点における傾き角度になるように前後輪のサスペンションジオメトリゲインを補正する。
ここで、「サスペンション・ジオメトリ」とは、車両の各輪を車体に支持するサスペンションの動きを決めるため設計されたアーム長さや取り付け位置などの幾何学的な形状や相対位置のことをいう。
これに対し、サスペンションジオメトリゲイン補正処理部において、静止状態にて輪荷重の移動により車体姿勢が変化する路面の走行時、車体姿勢の変化に伴いホイールセンター位置が上下方向に変位する場合、タイヤ変位線形特性の傾き係数であるサスペンションジオメトリゲインが、線形近似性を高める方向に補正される。
したがって、タイヤ変位線形特性を用いる外乱入力推定部において、車体姿勢が変化するにもかかわらず、車輪速変動に基づく外乱入力の推定精度が確保される。このように、静止状態で車体姿勢が変化する走行シーンにおいて、車体姿勢の変化に応じて線形近似性を高める方向にサスペンションジオメトリゲインを補正することで、ホイールセンター位置の上下変位にかかわらず、外乱入力による車体振動の抑制を確保することができる。
実施例1における構成を、「全体システム構成」、「エンジンコントロールモジュールの内部構成」、「車体制振制御装置の入力変換部構成」、「車体制振制御装置の車体振動推定部構成」、「車体制振制御装置のトルク指令値算出部構成」に分けて説明する。なお、以下の説明において、「サスペンションジオメトリゲイン」を「サスジオゲイン」と省略した記述にする。
図1は、実施例1の車体制振制御装置が適用されたエンジン車を示す全体システム構成図である。以下、図1に基づき、全体システム構成を説明する。
ここで、「車体制振制御」とは、車両のアクチュエータ(実施例1では「エンジン106」)による駆動トルクを車体の振動に合わせて適切に制御することにより、車体振動を抑制する機能を持つ制御をいう。実施例1の車体制振制御においては、操舵時のヨー応答向上効果、操舵時のリニアリティ向上効果、ロール挙動の抑制効果も併せて得られる。
車体制振制御装置は、ECM101内に制御プログラムの形で構成されていて、ECM101内部の制御プログラムをあらわすブロック構成を図2に示す。以下、図2に基づき、ECM101の内部構成を説明する。
図3は、車体制振制御装置203の内部を詳細にあらわしたブロック構成を示す。以下、図3〜図10に基づき、3部構成の車体制振制御装置203のうち、入力変換部204の構成を説明する。
前記駆動トルク変換部301では、ドライバ要求トルク演算部201からのドライバ要求トルクにギア比を積算してエンジン端トルクから駆動軸端トルクTwに変換する。ここで、ギア比は、車輪速(駆動輪の左右平均回転数)とエンジン回転数の比より算出する。このギア比は、MT変速機107とディファレンシャルギア109を合わせた総ギア比となる。
前記ハイパスフィルタ316では、車輪速センサ103FR,103FL,103RR,103RLからの車輪速信号のうち、低次の定常成分を除去する。このハイパスフィルタ316としては、安定性が高く、かつ、演算負荷が低い低次フィルタが使用される。
Zf=KgeoF・xtf …(1)
Zr=KgeoR・xtr …(2)
ここで、タイヤの前後位置xtf,xtrは、車輪速変動をあらわす車輪速微分値により推定される。例えば、路面外乱である凹凸路の走行時において、タイヤが凸部へ乗り上げると車輪速が減速し、タイヤは車体に対し車両後方向に変位する。一方、タイヤが凸部へ乗り超えると車輪速が加速し、タイヤは車体に対し車両前方向に変位する。よって、車輪速微分値の正負によりタイヤの加減速を判別すると、車輪速微分値の絶対値の大きさによりタイヤの前後位置xtf,xtrを推定できる。
よって、サスジオゲインKgeoF,KgeoRとタイヤの前後位置xtf,xtrが決まると、両者を掛け合わせる上記(1),(2)式により、前後輪の上下変位Zf,Zrが求められる。
そして、上記(1),(2)式を時間微分すると、タイヤの前後速度とタイヤの上下速度の式となるため、この関係を用いてサスペンションストローク速度とサスペンションストローク量を算出する。
SLP=[{Tw−Rw(Fa+Fr)}/MvRw]−s・V …(3)
但し、Tw:駆動軸端トルク、Rw:タイヤ動半径、Fa:空気抵抗、Fr:転がり抵抗、Mv:車重、s:ラプラス演算子、V:車体速である。
なお、空気抵抗Faと転がり抵抗Frは、下記の式(4),(5)で計算することができる。
Fa=μa・sv・V2 …(4)
Fr=μr・Mv・g …(5)
但し、μa:空気抵抗係数、sv:前面投影面積、μr:転がり抵抗係数、g:重力加速度である。
ステップS302では、ステップS301での勾配推定値SLPの算出に続き、勾配推定値SLPが正の閾値αを超えるか否かを判断し、SLP>αであると判断されると、ステップS303へ進み、勾配フラグfSLP=1(上り勾配)と判定してエンドへ進む。
ステップS304では、ステップS302でのSLP≦αであるとの判断に続き、勾配推定値SLPが負の閾値−αを下回っているか否かを判断し、SLP<−αであると判断されると、ステップS305へ進み、勾配フラグfSLP=2(下り勾配)と判定してエンドへ進む。
ステップS306では、ステップS304でのSLP≧−αであるとの判断に続き、勾配フラグfSLP=0(平坦路)と判定してエンドへ進む。
すなわち、図9に示すように、ステップS401において、アクセル開度速度|ΔACC|が、加速判定閾値ACC0未満の状態が所定時間Ta継続しているか否かを判断する。また、次のステップS402において、ブレーキ操作速度|ΔBRK|が、減速判定閾値BRK0未満の状態が所定時間Tb継続しているか否かを判断する。そして、ステップS401の非加速条件とステップS402の非減速条件が共に成立しているとき、ステップS403へ進み、定常フラグfACC=1(定常走行)と判定してエンドへ進む。一方、ステップS401の非加速条件とステップS402の非減速条件の一方が不成立のとき、ステップS404へ進み、定常フラグfACC=0(非定常走行)と判定してエンドへ進む。
前記車体速度推定部304では、車輪速情報のうち、従動輪102FR,102FLの車輪速度平均値を車体速度V(=車速V)として出力する。
前輪タイヤスリップ角βfと後輪タイヤスリップ角βrは、
βf=βv+lf・γ/V−δ
βr=βv−lr・γ/V
の式により計算される。但し、lf及びlrは、車体重心から前後車軸までの距離である。
そして、前後輪のタイヤスリップ角βf,βrと前後輪のコーナリングパワーCpf,Cprの積により、前後輪のタイヤ横力Fyf,Fyrを算出する。さらに、前後輪のタイヤスリップ角βf,βrと前後輪のタイヤ横力Fyf,Fyrの積により、前輪旋回抵抗力Fcfと後輪旋回抵抗力Fcrを算出する。
図3は、車体制振制御装置203の内部を詳細にあらわしたブロック構成を示す。以下、図3及び図11に基づき、3部構成の車体制振制御装置203のうち、車体振動推定部205の構成を説明する。
図3は、車体制振制御装置203の内部を詳細にあらわしたブロック構成を示す。以下、図3、図12及び図13に基づき、3部構成の車体制振制御装置203のうち、トルク指令値算出部206の構成を説明する。
前記第1レギュレータ部308は、制御対象である「トルク入力によるばね上挙動」に対し、ばね上挙動を最小に抑えるレギュレータゲインF1,F2を与える。この第1レギュレータ部308は、「トルク入力によるばね上挙動」に対して、図12に示すように、Trq-dZvゲインF1(バウンス速度ゲイン)と、Trq-dSpゲインF2(ピッチ速度ゲイン)と、を与える。これらのレギュレータゲインF1,F2は、図13に示すように、荷重の安定化に寄与するもので、Trq-dZvゲインF1はバウンス速度を抑制し、Trq-dSpゲインF2はピッチ速度を抑制する。
前記リミット処理部311は、加算器320からの補正トルク値に対して、駆動系共振対策として、補正トルク値の絶対値の最大値制限処理を行い、ドライバが前後G変動として感じない範囲のトルクに制限する。
実施例1の車体制振制御装置における作用を、「車体制振制御の基本作用」、「車体制振制御処理作用」、「車体制振制御で性能向上を狙うシーンと効果」、「車体制振制御ロジックと車体制振制御効果」、「路面勾配によるサスジオゲイン補正作用」に分けて説明する。
駆動トルクによる車体制振制御において、具体的にどのようなメカニズムにより車体のばね上挙動がコントロールされるかを理解しておくことが必要である。以下、図14に基づき、これを反映する車体制振制御の基本作用を説明する。
そこで、具体的な走行状況として、図14(a)に示すように、停車から発進加速した後、定速状態に入り、その後、減速して停車する場合を例にとる。
実施例1のエンジンコントロールモジュール101にて実行される車体制振制御処理の流れを示すのが図15のフローチャートであり、以下、図15に基づき、車体制振制御処理作用を説明する。
上記ステップS1401からステップS1422へと進む車体制振制御処理は、所定の制御周期毎に繰り返される。
上記の車体制振制御処理により、実施例1の車体制振制御により性能向上を狙うシーンと効果について、図16に基づき説明する。
(a)車線変更時やS字路等のシーンで、穏やかなロールとリニアリティの良さにより、安定感のあるリニアな旋回性能を得ること。
(b)高速巡航時等のシーンで、修正操舵の少なさやピッチダンピングの良さにより、車両の安定した巡航性能を得ること。
にある。
上記車体制振制御で性能向上を狙うシーンと効果を達成する実施例1の車体制振制御ロジックと車体制振制御効果を、図17及び図18に基づき説明する。
したがって、操舵時には、補正トルク値Cにより、前輪荷重が増加するよう積極的にノーズダウン挙動を助長することでヨー応答を向上させ、同時に補正トルク値A,Bにより余計な振動成分は抑制することでリニアリティが確保される。すなわち、ロールレイトを抑制するという本制御が狙いとする効果(a)が、補正トルク値A,Bに補正トルク値Cが加わることで実現される。
したがって、操舵を伴わない直線路の巡航時には、トルク変動と路面外乱によるピッチ挙動やバウンス挙動や前後荷重変化を推定し、補正トルク値A,Bにより、推定したピッチ挙動やバウンス挙動や前後荷重変化とは逆位相の駆動トルクが与えられることで、ピッチ挙動やバウンス挙動(上下挙動)や前後荷重変化が抑制される。すなわち、車両の安定した巡航性能を得るという本制御が狙いとする効果(b)が、補正トルク値A,Bにより実現される。
このため、時刻t1までの直進走行域では、図18の矢印Eに示すように、制御無しに比べ、ピッチレイトが抑制され、車両の安定した走行性能により、乗心地の向上が実現されていることが分かる。
上記本制御が狙いとする効果(b)を、路面勾配に関係なく実現するには、静止状態での車両姿勢を変化させる原因の一つとなる路面勾配によるサスペンション・ジオメトリの変化影響を把握し、路面勾配にかかわらず精度良く前輪上下力Ffと後輪上下力Frを算出する工夫が必要である。以下、図19〜図22に基づき、これを反映する路面勾配によるサスジオゲイン補正作用を説明する。
例えば、上り坂で輪荷重の移動により静止状態の車体姿勢が変化し、後輪タイヤのホイールセンター位置が上方向(バウンド方向)に変位した場合、上り坂静止状態での釣り合いの位置L(図20)が、タイヤ変位非線形特性のゼロ点位置になるように、図21の矢印Mに示すように特性を移動させる。そして、移動後のタイヤ変位非線形特性のゼロ点における傾き角度になるように前後輪のサスジオゲインKgeoF,KgeoRを補正することで、図22に示すように、サスジオゲインKgeoF,KgeoRの真値と実施例1の乖離幅が、サスジオゲインを固定値で与える比較例に比べて小さく抑えられ、勾配路でのタイヤ変位線形特性の線形近似性が高められる。
このため、タイヤ変位線形特性を用いる外乱入力推定部のサスストローク算出部302及び上下力変換部303において、勾配路走行シーンにおいて車体姿勢が変化するにもかかわらず、車輪速変動に基づく外乱入力である前後輪上下力Ff,Frの推定精度が確保される。
この結果、静止状態で車体姿勢が変化する勾配路走行シーンにおいて、車体姿勢の変化に応じて線形近似性を高める方向にサスジオゲインKgeoF,KgeoRを補正することで、勾配路によるホイールセンター位置の上下変位にかかわらず、外乱入力による車体振動の抑制が確保される。
すなわち、勾配判定部321aでは、勾配推定値SLPが正の閾値αを超えると、図8のフローチャートにおいて、ステップS301→ステップS302→ステップS303へと進み、上り勾配(勾配フラグfSLP=1)と判定される。また、勾配推定値SLPが負の閾値−αを下回ると、図8のフローチャートにおいて、ステップS301→ステップS302→ステップS304→ステップS305へと進み、下り勾配(勾配フラグfSLP=2)と判定される。さらに、勾配推定値SLPが負の閾値−α以上で正の閾値α以下のときは、図8のフローチャートにおいて、ステップS301→ステップS302→ステップS304→ステップS306へと進み、平坦路(勾配フラグfSLP=0)と判定される。
そして、サスジオゲイン補正値算出部321cでは、平坦路から勾配路への移行と判定されると、図10のフローチャートにおいて、ステップS501→ステップS502→ステップS503→ステップS504へと進み、ステップS504では、平坦路のサスジオゲインから勾配路のサスジオゲインに変更される。また、勾配路から平坦路への移行と判定されると、図10のフローチャートにおいて、ステップS501→ステップS505→ステップS506→ステップS507へと進み、ステップS507では、勾配路のサスジオゲインから平坦路のサスジオゲインに変更される。
このように、路面勾配を3つのパターンに分けて判定し、勾配判定結果に基づきサスジオゲインKgeoF,KgeoRの変更処理を行うようにしたことで、路面勾配に応じたサスジオゲインKgeoF,KgeoRの変更が、簡単、かつ、的確に行われる。
すなわち、一般的に加速度や減速度が発生しているときは、勾配推定精度が落ちるため、誤った勾配推定値によってサスジオゲインを変更してしまうと、逆にドライバに違和感を与えてしまう可能性がある。
そこで、図9のフローチャートにおいて、アクセル開度速度|ΔACC|とブレーキ操作速度|ΔBRK|に基づき、定常状態(一定速走行)を判断する。そして、図10のフローチャートにおいて、ステップS503、或いは、ステップS506でfACC=1(定常走行)であると判断されたときにのみ、ステップS503→ステップS504、或いは、ステップS506→ステップS507へ進み、サスジオゲインKgeoF,KgeoRを変更する。
したがって、非定常状態で路面勾配が変化する走行中において、定常状態と判定されるまでサスジオゲインKgeoF,KgeoRの変更を待機することで、誤った勾配推定値SLPによってサスジオゲインKgeoF,KgeoRを変更してしまうことによりドライバに与える違和感が防止される。
すなわち、平坦路でのサスジオゲインと勾配路でのサスジオゲインとの間でサスジオゲインKgeoF,KgeoRを変更するとき、例えば、急にサスジオゲインKgeoF,KgeoRの値を変更すると、トータルの補正トルク値が急変することがあり、車両挙動が不安定になってしまう可能性がある。
そこで、図10のフローチャートにおいて、ステップS504、或いは、ステップS507へ進むと、変更後のサスジオゲインを目標値とし、変更前のサスジオゲインから時間の経過と共に徐々に変化するゲイン補正値を算出する。
したがって、平坦路でのサスジオゲインと勾配路でのサスジオゲインとの間でサスジオゲインKgeoF,KgeoRを変更する走行シーンにおいて、時間の経過と共に徐々に変化するゲイン補正値を算出することで、車両挙動の安定性が確保される。
実施例1の車体制振制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
前記入力変換部204は、サスペンション・ジオメトリに基づくホイールセンターの前後方向変位に対する上下方向変位の関係特性を線形近似したタイヤ変位線形特性を用い、車輪速変動に基づいて外乱入力を推定する外乱入力推定部(サスストローク算出部302、上下力変換部303)を備え、
前記外乱入力推定部(サスストローク算出部302、上下力変換部303)に、静止状態での車体姿勢の変化に伴いホイールセンター位置が上下方向に変位する場合、前記タイヤ変位線形特性の傾き係数であるサスジオゲインKgeoF,KgeoRを、線形近似性を高める方向に補正するサスジオゲイン補正処理部321を設けた(図3)。
このため、静止状態で車体姿勢が変化する走行シーンにおいて、ホイールセンター位置の上下変位にかかわらず、外乱入力による車体振動の抑制を確保することができる。
このため、(1)の効果に加え、上り勾配路や下り勾配路での勾配走行シーンにおいて、外乱入力による車体振動の抑制を確保することができる。
前記サスジオゲイン補正値算出部321cは、平坦路から勾配路への移行と判定されると、平坦路のサスジオゲインから勾配路のサスジオゲインに変更し、勾配路から平坦路への移行と判定されると、勾配路のサスジオゲインから平坦路のサスジオゲインに変更する(図7,図8)。
このため、(2)の効果に加え、路面勾配を3つのパターンに分けて判定し、勾配判定結果に基づきサスジオゲインKgeoF,KgeoRの変更処理を行うようにしたことで、路面勾配に応じたサスジオゲインKgeoF,KgeoRの変更を、簡単、かつ、的確に行うことができる。
前記サスジオゲイン補正値算出部321cは、平坦路から勾配路への移行、或いは、勾配路から平坦路への移行と判定されたとき、定常状態と判定されるまでサスジオゲインKgeoF,KgeoRの変更を待機する(図7,図9)。
このため、(2)又は(3)の効果に加え、非定常状態での走行中において、定常状態と判定されるまでサスジオゲインKgeoF,KgeoRの変更を待機することで、誤った勾配推定値SLPによってサスジオゲインKgeoF,KgeoRを変更してしまうことによりドライバに与える違和感を防止することができる。
このため、(2)〜(4)の効果に加え、平坦路のサスジオゲインと勾配路のサスジオゲインとの間でサスジオゲインKgeoF,KgeoRを変更する走行シーンにおいて、時間の経過と共に徐々に変化するゲイン補正値を算出することで、車両挙動の安定性を確保することができる。
図23は、実施例2のサスジオゲイン補正処理部321の勾配推定値算出部321a'(勾配推定部)における勾配推定値SLPの算出処理構成を示すフローチャートである。
前記勾配推定値算出部321a'での勾配推定値SLPの算出処理は、実施例1における図8のフローチャートのステップS301と同様の処理により勾配推定値SLPが算出される。
前記ゲイン補正値算出部321c'は、勾配推定値SLPに対する前輪サスジオゲインKgeoFの関係をあらわすマップとして、図24(a)に示すように、前輪タイヤ変位非線形特性(図5)の前後変位の各点における傾き(微分値)を繋いで連続させた特性として設定されている。また、勾配推定値SLPに対する後輪サスジオゲインKgeoRの関係をあらわすマップとして、図24(b)に示すように、後輪タイヤ変位非線形特性(図6)の前後変位の各点における傾き(微分値)を繋いで連続させた特性として設定されている。そして、勾配推定値SLPと、図24(a),(b)に示す前後輪のサスジオゲインマップを用いて、前後輪のサスジオゲインKgeoF,KgeoRを補正する。
なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、図示を省略する。
実施例2では、勾配推定部を、勾配推定値SLPを算出する勾配推定値算出部321a'とし、ゲイン補正値算出部321d'は、算出された勾配推定値SLPに応じて下り勾配から上り勾配までの間で連続的に変化する前後輪のサスジオゲインKgeoF,KgeoRを算出する構成を採用している。
すなわち、平坦路のサスジオゲインと勾配路のサスジオゲインとの間で急に値を変更すると、トータルの補正トルク値が急変することになり、車両挙動が不安定になってしまう可能性がある。
そこで、図23のフローチャートにおいて、勾配推定値SLPが算出されると、図24(a),(b)に示すマップを用い、連続的に変化する前輪サスジオゲインKgeoFと後輪サスジオゲインKgeoRが算出される。
したがって、平坦路を含む路面勾配の変化に対しサスジオゲインを変更する走行シーンにおいて、勾配推定値SLPの大きさに応じて連続的に変化する前後輪のサスジオゲインKgeoF,KgeoRを算出することで、車両挙動の安定性が確保される。加えて、タイヤ変位非線形特性に合わせた連続的な変化により前後輪のサスジオゲインKgeoF,KgeoRを補正することで、実施例1の段階的な線形近似に比べ、勾配路でのタイヤ変位線形特性の線形近似性がより高められる。
なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
実施例2の車体制振制御装置にあっては、下記の効果を得ることができる。
前記ゲイン補正値算出部321c'は、算出された勾配推定値SLPに応じて下り勾配から上り勾配まで連続的に変化するサスジオゲイン補正値を算出する(図23、図24)。
このため、(2)の効果に加え、平坦路を含む路面勾配の変化に対し前後輪のサスジオゲインKgeoF,KgeoRを変更する走行シーンにおいて、勾配推定値SLPの大きさに応じて連続的に変化する前後輪のサスジオゲインKgeoF,KgeoRを算出することで、車両挙動の安定性を確保することができると共に、勾配路でのタイヤ変位線形特性の線形近似性を実施例1より高めることができる。
102FR,102FL 左右前輪(従動輪)
102RR,102RL 左右後輪(駆動輪)
103FR,103FL,103RR,103RL 車輪速センサ
104 ブレーキストロークセンサ
105 アクセル開度センサ
106 エンジン
107 MT変速機
108 シャフト
109 ディファレンシャルギア
110 ステアリングホイール
111 操舵角センサ
201 ドライバ要求トルク演算部
202 トルク指令値演算部
203 車体制振制御装置
204 入力変換部
205 車体振動推定部
206 トルク指令値算出部
301 駆動トルク変換部
302 サスストローク算出部(外乱入力推定部)
303 上下力変換部(外乱入力推定部)
304 車体速度推定部
305 旋回挙動推定部
306 旋回抵抗力算出部
307 車両モデル
308 第1レギュレータ部
309 第2レギュレータ部
310 第3レギュレータ部
311 リミット処理部
312 バンドパスフィルタ
313 非線形ゲイン増幅部
314 リミット処理部
315 エンジントルク変換部
316 ハイパスフィルタ
317 第1チューニングゲイン設定部
318 第2チューニングゲイン設定部
319 第3チューニングゲイン設定部
320 加算器
321 サスジオゲイン補正処理部
321a 勾配判定部(勾配推定部)
321a' 勾配推定値算出部(勾配推定部)
321b 定常状態判定部
321c、321c' サスジオゲイン補正値算出部
Claims (5)
- 走行中に取得される車両からのセンシング情報を車輪入力に変換する入力変換部と、前記車輪入力と車両モデルを用いて車体のばね上挙動を推定する車体振動推定部と、前記ばね上挙動の推定結果に基づき駆動トルクの補正を行うトルク指令値算出部と、を備えた車体制振制御装置において、
前記入力変換部は、サスペンション・ジオメトリに基づくホイールセンターの前後方向変位に対する上下方向変位の関係特性を線形近似したタイヤ変位線形特性を用い、車輪速変動に基づいて外乱入力を推定する外乱入力推定部を備え、
前記外乱入力推定部は、前記タイヤ変位線形特性によるサスペンションジオメトリゲインと前記車輪速変動により推定されるタイヤの前後位置とから前後輪の上下変位を求め、前記前後輪の上下変位に基づきサスペンションストローク速度とサスペンションストローク量を算出し、前記サスペンションストローク速度と前記サスペンションストローク量を上下力に変換することで、外乱入力である前輪上下力と後輪上下力を推定し、
前記外乱入力推定部に、静止状態にて輪荷重の移動により車体姿勢が変化する路面の走行時、車体姿勢の変化に伴いホイールセンター位置が上下方向に変位する場合、前記タイヤ変位線形特性の傾き係数であるサスペンションジオメトリゲインを、線形近似性を高める方向に補正するサスペンションジオメトリゲイン補正処理部を設け、
前記サスペンションジオメトリゲイン補正処理部は、勾配路静止状態でのタイヤ変位線形特性の釣り合い位置が、平坦路静止状態でのタイヤ変位線形特性のゼロ点位置になるように、勾配路静止状態でのタイヤ変位線形特性を移動させ、移動後のタイヤ変位線形特性のゼロ点における傾き角度になるように前後輪のサスペンションジオメトリゲインを補正する
ことを特徴とする車体制振制御装置。 - 請求項1に記載された車体制振制御装置において、
前記サスペンションジオメトリゲイン補正処理部は、路面勾配を推定する勾配推定部と、勾配推定結果に基づきサスペンションジオメトリゲイン補正値を算出するサスペンションジオメトリゲイン補正値算出部と、を有し、
前記勾配推定部を、勾配推定値が正の閾値を超えると上り勾配と判定し、勾配推定値が負の閾値を下回ると下り勾配と判定し、負の閾値以上で正の閾値以下のときは平坦路と判定する勾配判定部とし、
前記サスペンションジオメトリゲイン補正値算出部は、平坦路から勾配路への移行と判定されると、平坦路のサスペンションジオメトリゲインから勾配路のサスペンションジオメトリゲインに変更し、勾配路から平坦路への移行と判定されると、勾配路のサスペンションジオメトリゲインから平坦路のサスペンションジオメトリゲインに変更する
ことを特徴とする車体制振制御装置。 - 請求項2に記載された車体制振制御装置において、
一定速走行している定常状態であるか否かを判定する定常状態判定部を備え、
前記サスペンションジオメトリゲイン補正値算出部は、平坦路から勾配路への移行、或いは、勾配路から平坦路への移行と判定されたとき、定常状態と判定されるまでサスペンションジオメトリゲインの変更を待機する
ことを特徴とする車体制振制御装置。 - 請求項2または請求項3に記載された車体制振制御装置において、
前記サスペンションジオメトリゲイン補正値算出部は、平坦路のサスペンションジオメトリゲインと勾配路のサスペンションジオメトリゲインとの間でサスペンションジオメトリゲインを変更するとき、時間の経過と共に徐々に変化するサスペンションジオメトリゲイン補正値を算出する
ことを特徴とする車体制振制御装置。 - 請求項1に記載された車体制振制御装置において、
前記サスペンションジオメトリゲイン補正処理部は、路面勾配を推定する勾配推定部と、勾配推定結果に基づきサスペンションジオメトリゲイン補正値を算出するサスペンションジオメトリゲイン補正値算出部と、を有し、
前記勾配推定部を、勾配推定値を算出する勾配推定値算出部とし、
前記サスペンションジオメトリゲイン補正値算出部は、算出された勾配推定値に応じて下り勾配から上り勾配まで連続的に変化するサスペンションジオメトリゲイン補正値を算出する
ことを特徴とする車体制振制御装置。
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