JP2013175293A - 超電導電流リードおよび電流リード装置と超電導マグネット装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、希土類系の高温超電導線材を用いた電流リードに対して長期的信頼性を向上させる構造とした超電導電流リードと超電導電流リード装置および超電導マグネット装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、超電導機器に電力を供給するための電流リードであって、両端側に設けられる電極部材と、これら電極部材を接続するようにこれら電極部材間に配置された支持体と、この支持体の外面に配置されて両端部を各電極部材に接続させた複数のテープ状の希土類系多層薄膜超電導線材とを具備し、前記希土類系多層薄膜超電導線材が、基材と、該基材上に形成された中間層および酸化物超電導層と、これらを覆う金属の安定化層を備え、該安定化層が厚さ80μm未満であることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、超電導機器に電力を供給するための電流リードであって、両端側に設けられる電極部材と、これら電極部材を接続するようにこれら電極部材間に配置された支持体と、この支持体の外面に配置されて両端部を各電極部材に接続させた複数のテープ状の希土類系多層薄膜超電導線材とを具備し、前記希土類系多層薄膜超電導線材が、基材と、該基材上に形成された中間層および酸化物超電導層と、これらを覆う金属の安定化層を備え、該安定化層が厚さ80μm未満であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、超電導マグネットや超電導機器に利用される超電導電流リードおよび電流リード装置と超電導マグネット装置に関する。
超電導応用機器、例えば、超電導マグネットを運転する場合、超電導マグネットを冷却する必要があり、この冷却方法として液体ヘリウムや液体窒素等の冷媒に浸漬する方法(浸漬冷却方式)と、冷凍機や冷媒からの熱伝導を利用する方式(伝導冷却方式)の2つの方式が知られている。
この冷却した超電導マグネットを用いて磁場を発生させるためには、超電導コイルに通電する必要があるが、電源から超電導マグネットに電流を供給するために電流リードが使用されている。
この電流リードは、良導電体で構成され、電気抵抗が小さいCuなどの金属から形成されているが、これらの良導電体は熱伝導率が大きく、外部からの熱侵入量が多くなってしまうことに加え、電流リード自体にジュール発熱が生じるため、ジュール発熱により超電導マグネットの冷却効率が悪化する問題がある。
この冷却した超電導マグネットを用いて磁場を発生させるためには、超電導コイルに通電する必要があるが、電源から超電導マグネットに電流を供給するために電流リードが使用されている。
この電流リードは、良導電体で構成され、電気抵抗が小さいCuなどの金属から形成されているが、これらの良導電体は熱伝導率が大きく、外部からの熱侵入量が多くなってしまうことに加え、電流リード自体にジュール発熱が生じるため、ジュール発熱により超電導マグネットの冷却効率が悪化する問題がある。
冷却効率は、冷却コスト(冷凍機の場合、電気使用量)に直結するため、特に冷凍機を用いた伝導冷却方式の場合、先の良伝導体の代わりに超電導体を用いた電流リードを適用する場合がある。
超電導体として酸化物超電導体を用いる場合、電気抵抗はゼロであるため、理屈上、ジュール発熱を生じることが無く、酸化物超電導層はセラミックスであるがために熱伝導率が悪く、外部からの熱侵入量を抑制することができ、かつ、リード部でのジュール発熱が少ない良好な電流リードを構成することができる。
超電導体として酸化物超電導体を用いる場合、電気抵抗はゼロであるため、理屈上、ジュール発熱を生じることが無く、酸化物超電導層はセラミックスであるがために熱伝導率が悪く、外部からの熱侵入量を抑制することができ、かつ、リード部でのジュール発熱が少ない良好な電流リードを構成することができる。
従来、この種の電流リードとして、酸化物超電導バルク体からなる超電導電流リードが用いられてきたが、酸化物超電導バルク体は比較的機械強度が弱く、脆いという点で使用上制限される場合があった。また、高温超電導体の一種であるBi系酸化物超電導線材を用いた超電導電流リードとして一部製品化されたものも知られている。
しかし、Bi系高温超電導体は、臨界電流−磁場特性の関係から、高温磁場中における臨界電流低下の問題があるため、多くの線材を必要とする問題がある。また、Bi系高温超電導線材は高温超電導層を良伝導体であるAgの被覆層で覆った構造であり、Agの被覆層の面積割合が大きいことから、熱伝導による外部からの熱侵入が多いという問題がある。
しかし、Bi系高温超電導体は、臨界電流−磁場特性の関係から、高温磁場中における臨界電流低下の問題があるため、多くの線材を必要とする問題がある。また、Bi系高温超電導線材は高温超電導層を良伝導体であるAgの被覆層で覆った構造であり、Agの被覆層の面積割合が大きいことから、熱伝導による外部からの熱侵入が多いという問題がある。
Bi系高温超電導体に比べ、臨界温度−磁場特性が良好であるY系高温超電導線材を用いた電流リードの適用例として、偏流を抑え、電流が超電導状態から戻らなくなる状態(クエンチ)を抑制するための電流リードの構造が以下の特許文献1に記載されている。
また、超電導線材への磁場による臨界電流の低下を抑制するために無誘導巻き状態にて構成される電流リードの構造が以下の特許文献2に記載されている。
また、超電導線材への磁場による臨界電流の低下を抑制するために無誘導巻き状態にて構成される電流リードの構造が以下の特許文献2に記載されている。
Bi系高温超電導体に比べ、臨界電流−磁場特性の良好なY系高温超電導線材を用いた電流リードの構造を超電導マグネットに適用する場合、長期間の使用による室温と低温のヒートサイクルに伴う結露や水分によるY系高温超電導線材の劣化の懸念がある。
また、電流リードを超電導機器に適用する場合、電流リードの一端側を高温端側に他端側を低温端側に配置するが、超電導機器の内部側に外部からの熱の侵入が多い場合、超電導機器の冷却効率が低下するので、電流リードであっても、外部から内部側に熱の侵入の少ない構造が望まれる。
また、電流リードを超電導機器に適用する場合、電流リードの一端側を高温端側に他端側を低温端側に配置するが、超電導機器の内部側に外部からの熱の侵入が多い場合、超電導機器の冷却効率が低下するので、電流リードであっても、外部から内部側に熱の侵入の少ない構造が望まれる。
本発明は、以上のような従来の背景に鑑みなされたもので、希土類系の高温超電導線材を用いた電流リードに対して長期的信頼性を向上させる構造であり、水分侵入の影響を排除した超電導電流リードと超電導電流リード装置および超電導マグネット装置の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の電流リードは、超電導機器に電流を供給するための電流リードであって、両端側に設けられる電極部材と、これら電極部材を接続するようにこれら電極部材間に配置された支持体と、この支持体の外面に配置されて両端部を各電極部材に接続させた複数のテープ状の希土類系多層薄膜超電導線材とを具備し、前記希土類系多層薄膜超電導線材が、基材と、該基材上に形成された中間層および酸化物超電導層と、これらを覆う金属の安定化層を備え、該安定化層が厚さ80μm未満であることを特徴とする。
希土類系多層薄膜超電導線材の金属の安定化層の厚さが80μm未満であると、Bi系などの他の高温超電導線材の構造に対し、熱の侵入量を低く抑えることができる。このため、電流リードの高温端側から低温端側への熱の伝達量が少なくなり、低温端側に接続される超電導機器に伝わる熱を抑制できる結果として超電導機器の冷却効率が向上する。
希土類系多層薄膜超電導線材として、基材と中間層と酸化物超電導層を覆う安定化層を備えた構造を採用することで、安定化層で覆った酸化物超電導層への水分の侵入を抑制し、水分に起因する劣化の生じ難い希土類系多層薄膜超電導線材を備えた電流リードを提供できる。
希土類系多層薄膜超電導線材の金属の安定化層の厚さが80μm未満であると、Bi系などの他の高温超電導線材の構造に対し、熱の侵入量を低く抑えることができる。このため、電流リードの高温端側から低温端側への熱の伝達量が少なくなり、低温端側に接続される超電導機器に伝わる熱を抑制できる結果として超電導機器の冷却効率が向上する。
希土類系多層薄膜超電導線材として、基材と中間層と酸化物超電導層を覆う安定化層を備えた構造を採用することで、安定化層で覆った酸化物超電導層への水分の侵入を抑制し、水分に起因する劣化の生じ難い希土類系多層薄膜超電導線材を備えた電流リードを提供できる。
本発明の電流リードにおいて、前記支持体上の希土類系多層薄膜超電導線材が樹脂材により密封された構造としてもよい。
希土類系多層薄膜超電導線材を樹脂材により密封した構造を採用すると、内部の多層薄膜超電導線材に水分が侵入するおそれが少なくなり、長期間の使用であっても水分劣化を生じない希土類系多層薄膜超電導線材を備えた電流リードを提供できる。
希土類系多層薄膜超電導線材を樹脂材により密封した構造を採用すると、内部の多層薄膜超電導線材に水分が侵入するおそれが少なくなり、長期間の使用であっても水分劣化を生じない希土類系多層薄膜超電導線材を備えた電流リードを提供できる。
本発明の電流リード装置は、先に記載の電流リードの一方の電極部材の外側に一方の電極端子が前記他方の電極部材の外側に他方の電極端子がそれぞれ接続され、前記一方の電極端子と前記他方の電極端子に装着されて前記電流リードを取り囲む外郭体が取り付けられたことを特徴とする。
電流リードを取り囲む外郭体を備えていることにより希土類系多層薄膜超電導線材を覆ってカバーできるので、希土類系多層薄膜超電導線材を外力から保護できる。また、両電極端子を外郭体で接合した構造とすることができるので、機械強度の高い電流リード装置を提供できる。
電流リードを取り囲む外郭体を備えていることにより希土類系多層薄膜超電導線材を覆ってカバーできるので、希土類系多層薄膜超電導線材を外力から保護できる。また、両電極端子を外郭体で接合した構造とすることができるので、機械強度の高い電流リード装置を提供できる。
本発明の超電導マグネット装置は、減圧可能な外部容器と、その内部側に設けられた低温側シールド容器と、該低温側シールド容器の内部に収容された高温超電導コイルと、前記外部容器に取り付けられた冷凍機と、前記外部容器の内側に設けられて外部電源からの電流を前記高温超電導コイル側に供給するための電流リード装置とを備え、前記電流リード装置が先に記載の電流リード装置であることを特徴とする。
冷凍機により高温超電導コイルを伝導冷却して超電導状態にできる。高温超電導コイルを外部容器と低温側シールド容器で2重に囲み、上述の構成の電流リードを備えるため、外部からの熱の侵入を少なくでき、高温超電導コイルの超電導状態を維持できる温度に保持する上に有利な構造となる。また、電流リード装置として希土類系多層薄膜超電導線材を含む上述の構造としているので、高温超電導コイルに至るまでの電流供給経路において損失の少ない状態で電流を供給できる。
冷凍機により高温超電導コイルを伝導冷却して超電導状態にできる。高温超電導コイルを外部容器と低温側シールド容器で2重に囲み、上述の構成の電流リードを備えるため、外部からの熱の侵入を少なくでき、高温超電導コイルの超電導状態を維持できる温度に保持する上に有利な構造となる。また、電流リード装置として希土類系多層薄膜超電導線材を含む上述の構造としているので、高温超電導コイルに至るまでの電流供給経路において損失の少ない状態で電流を供給できる。
本発明によれば、長期間の使用であっても結露や水分による超電導特性の劣化を防止できる希土類系多層薄膜超電導線材を備えた電流リードを提供できる。
更に、安定化層の厚さを80μm以下にすると、熱の侵入量を低く抑えることができ、電流リードの高温端側から低温端側への熱の伝達量が少なくなり、冷却効率が良好で熱効率の良好な電流リードを提供できる。また、低温端側に接続される超電導機器に伝わる熱を抑制できる結果として冷却効率の良好な超電導機器を提供できる。
更に、安定化層の厚さを80μm以下にすると、熱の侵入量を低く抑えることができ、電流リードの高温端側から低温端側への熱の伝達量が少なくなり、冷却効率が良好で熱効率の良好な電流リードを提供できる。また、低温端側に接続される超電導機器に伝わる熱を抑制できる結果として冷却効率の良好な超電導機器を提供できる。
以下、本発明に係る電流リードについて、図面に基づき説明する。
図1〜図3は本発明に係る電流リードの第1実施形態を示すもので、この第1実施形態の電流リード1は、一端と他端に板状の電極端子7、8を備え、これら電極端子7、8間にこれらを一体に接続するように4角柱状の支持体5が形成され、この支持体5の両面に沿って支持体5の長さ方向に2本の希土類系多層薄膜超電導線材6が取り付けられている。
図1〜図3は本発明に係る電流リードの第1実施形態を示すもので、この第1実施形態の電流リード1は、一端と他端に板状の電極端子7、8を備え、これら電極端子7、8間にこれらを一体に接続するように4角柱状の支持体5が形成され、この支持体5の両面に沿って支持体5の長さ方向に2本の希土類系多層薄膜超電導線材6が取り付けられている。
前記電極端子7、8は、CuあるいはCu合金などの良伝導性金属材料からなる平板状の端子部材であり、それらの端部中央部には図3に示すように接続用の透孔7a、8aが形成されている。これら電極端子7、8を接続している支持体5は、支持体5を介する熱侵入量をできるだけ少なくするために熱侵入量の少ない、強度の高い金属材料、例えば、ステンレス鋼、ガラスエポキシ樹脂等からなることが好ましい。支持体5の両端部は、溶接一体化、銀ろう付け、あるいは嵌め込み構造などの接合手段により電極端子7、8に接合されている。
支持体5は横断面4角形状に形成され、その両面に平面状の細長い取付面5aが形成され、個々の取付面5aにテープ状の希土類系多層薄膜超電導線材6がその一端6aを一方の電極端子7側に位置させ、その他端6bを他方の電極部材8側に位置させて半田付けされている。また、支持体5に取り付けられた希土類系多層薄膜超電導線材6の周囲は図2に示すように樹脂製の被覆層4により覆われている。
支持体5は横断面4角形状に形成され、その両面に平面状の細長い取付面5aが形成され、個々の取付面5aにテープ状の希土類系多層薄膜超電導線材6がその一端6aを一方の電極端子7側に位置させ、その他端6bを他方の電極部材8側に位置させて半田付けされている。また、支持体5に取り付けられた希土類系多層薄膜超電導線材6の周囲は図2に示すように樹脂製の被覆層4により覆われている。
図1に示す電流リード1に対し図3に示す円筒型の外郭体9が外挿され、ロッド状の電流リード装置10が構成されている。なお、図3は電流リード1から外郭体9を取り外した状態を示す分解図として描いている。
平板状の電極端子7の一端に接続部7Aが形成され、この接続部7Aの先端側に横断面四角形状の支持体5の一端が接合されている。電極端子7は、支持体5に接続する側の板状の接続部7Aと、接続部7Aの他端側に形成された鍔部7Bと、鍔部7Bから延出形成された端子部7Cとからなる。電極端子8も電極端子7と同様に、接続部8Aと鍔部8Bと端子部8Cとからなる。また、鍔部7Bと鍔部8Bの間の部分は筒型の外郭体9に覆われるので、全体としてロッド状の電流リード装置10が構成されている。
前記希土類系多層薄膜超電導線材6は、一例として、図2に断面構造を示すように、テープ状の酸化物超電導積層体11の全周をCuやCu合金などの良導電材料製の金属層(安定化層)12で覆って構成されている。この実施形態の酸化物超電導積層体11は、詳細には、図4に示すようにテープ状の基材13の一面上に、中間層14と酸化物超電導層15と保護層16とをこの順に積層してなる。なお、図4では、酸化物超電導積層体11の全周を取り囲む金属層12を簡略化して記載し、保護層16の上に積層されている金属層12の部分のみ示している。
前記基材13は、可撓性を有する線材とするためにテープ状であることが好ましく、耐熱性の金属からなるものが好ましい。各種耐熱性金属の中でも、ニッケル合金からなることが好ましい。なかでも、市販品であれば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)が好適である。基材13の厚さは、通常は、10〜500μmである。また、基材13として、ニッケル合金に集合組織を導入した配向Ni−W合金テープ基材等を適用することもできる。
前記基材13は、可撓性を有する線材とするためにテープ状であることが好ましく、耐熱性の金属からなるものが好ましい。各種耐熱性金属の中でも、ニッケル合金からなることが好ましい。なかでも、市販品であれば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)が好適である。基材13の厚さは、通常は、10〜500μmである。また、基材13として、ニッケル合金に集合組織を導入した配向Ni−W合金テープ基材等を適用することもできる。
中間層14は、以下に説明する下地層17と配向層18とキャップ層19からなる構造を一例として適用できる。
下地層17を設ける場合は、以下に説明する拡散防止層とベッド層の複層構造あるいは、これらのうちどちらか1層からなる構造とすることができるが、下地層17は必須ではなく、略しても差し支えない。
下地層17として拡散防止層を設ける場合、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化アルミニウム(Al2O3、「アルミナ」とも呼ぶ)、あるいは、GZO(Gd2Zr2O7)等から構成される単層構造あるいは複層構造の層が望ましく、厚さは例えば10〜400nmである。
下地層17としてベッド層を設ける場合、ベッド層は、耐熱性が高く、界面反応性を低減し、その上に配される膜の配向性を得るために用いる。このようなベッド層は、例えば、イットリア(Y2O3)などの希土類酸化物であり、より具体的には、Er2O3、CeO2、Dy2O3、Er2O3、Eu2O3、Ho2O3、La2O3等を例示することができ、これらの材料からなる単層構造あるいは複層構造を採用できる。ベッド層の厚さは例えば10〜100nmである。また、拡散防止層とベッド層の結晶性は特に問われないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すれば良い。
下地層17を設ける場合は、以下に説明する拡散防止層とベッド層の複層構造あるいは、これらのうちどちらか1層からなる構造とすることができるが、下地層17は必須ではなく、略しても差し支えない。
下地層17として拡散防止層を設ける場合、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化アルミニウム(Al2O3、「アルミナ」とも呼ぶ)、あるいは、GZO(Gd2Zr2O7)等から構成される単層構造あるいは複層構造の層が望ましく、厚さは例えば10〜400nmである。
下地層17としてベッド層を設ける場合、ベッド層は、耐熱性が高く、界面反応性を低減し、その上に配される膜の配向性を得るために用いる。このようなベッド層は、例えば、イットリア(Y2O3)などの希土類酸化物であり、より具体的には、Er2O3、CeO2、Dy2O3、Er2O3、Eu2O3、Ho2O3、La2O3等を例示することができ、これらの材料からなる単層構造あるいは複層構造を採用できる。ベッド層の厚さは例えば10〜100nmである。また、拡散防止層とベッド層の結晶性は特に問われないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すれば良い。
配向層18は、その上方に形成する酸化物超電導層15の結晶配向性を制御するバッファー層として機能し、酸化物超電導層15と格子整合性の良い金属酸化物からなることが好ましい。配向層18の好ましい材質として具体的には、Gd2Zr2O7、MgO、ZrO2−Y2O3(YSZ)、SrTiO3、CeO2、Y2O3、Al2O3、Gd2O3、Zr2O3、Ho2O3、Nd2O3等の金属酸化物を例示できる。配向層18は、単層でも良いし、複層構造でも良い。
配向層18は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザー蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法(以下、IBAD法と略記する。)等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);有機金属塗布熱分解法(MOD法);溶射等、酸化物薄膜を形成する公知の方法で積層できる。これらの方法の中でも特に、IBAD法で形成された前記金属酸化物層は、結晶配向性が高く、その上のキャップ層19と酸化物超電導層15の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。IBAD法とは、蒸着時に、結晶の蒸着面に対して所定の角度でイオンビームを照射することにより、結晶軸を配向させる方法である。通常は、イオンビームとして、アルゴン(Ar)イオンビームを使用する。例えば、Gd2Zr2O7、MgO又はZrO2−Y2O3(YSZ)からなる配向層は、IBAD法における配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
配向層18は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザー蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法(以下、IBAD法と略記する。)等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);有機金属塗布熱分解法(MOD法);溶射等、酸化物薄膜を形成する公知の方法で積層できる。これらの方法の中でも特に、IBAD法で形成された前記金属酸化物層は、結晶配向性が高く、その上のキャップ層19と酸化物超電導層15の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。IBAD法とは、蒸着時に、結晶の蒸着面に対して所定の角度でイオンビームを照射することにより、結晶軸を配向させる方法である。通常は、イオンビームとして、アルゴン(Ar)イオンビームを使用する。例えば、Gd2Zr2O7、MgO又はZrO2−Y2O3(YSZ)からなる配向層は、IBAD法における配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
キャップ層19は、前記配向層18の表面に対してエピタキシャル成長し、その後、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成されたものが好ましい。このようなキャップ19層は、前記配向層18よりも高い面内配向度が得られる可能性がある。
キャップ層19の材質は、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO2、Y2O3、Al2O3、Gd2O3、Zr2O3、Ho2O3、Nd2O3等が例示できる。キャップ層19の材質がCeO2である場合、キャップ層19は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
キャップ層19は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができる。PLD法によるCeO2層の成膜条件としては、基材温度約500〜1000℃、約0.6〜100Paの酸素ガス雰囲気中で成膜することができる。CeO2のキャップ層19の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましい。但し、厚すぎると結晶配向性が悪くなるので、50〜5000nmの範囲とすることができる。
キャップ層19の材質は、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO2、Y2O3、Al2O3、Gd2O3、Zr2O3、Ho2O3、Nd2O3等が例示できる。キャップ層19の材質がCeO2である場合、キャップ層19は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
キャップ層19は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができる。PLD法によるCeO2層の成膜条件としては、基材温度約500〜1000℃、約0.6〜100Paの酸素ガス雰囲気中で成膜することができる。CeO2のキャップ層19の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましい。但し、厚すぎると結晶配向性が悪くなるので、50〜5000nmの範囲とすることができる。
酸化物超電導層15は通常知られている組成の希土類系高温酸化物超電導体からなる薄膜を広く適用することができ、REBa2Cu3Oy(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のもの、具体的には、Y123(YBa2Cu3Oy)又はGd123(GdBa2Cu3Oy)を例示することができる。酸化物超電導層15の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
酸化物超電導層15の作製方法は、真空蒸着法、レーザ蒸着法、化学気相成長法(CVD法)、有機金属熱塗布分解法(MOD法)等を用いることができる。なかでもレーザ蒸着法が好ましい。
酸化物超電導層15の作製方法は、真空蒸着法、レーザ蒸着法、化学気相成長法(CVD法)、有機金属熱塗布分解法(MOD法)等を用いることができる。なかでもレーザ蒸着法が好ましい。
酸化物超電導層15の上面を覆うように形成されている保護層16は、AgまたはAg合金からなり、DCスパッタ装置やRFスパッタ装置などの成膜装置により成膜されており、その厚さが1〜30μm程度とされている。なお、本実施形態の保護層16は、成膜装置により酸化物超電導層5の上面側に主に形成されているが、成膜装置のチャンバの内部でテープ状の基材13を走行させながら成膜されているので、基材13の両側面と基材13の裏面に対し保護層16の成膜粒子が回り込むことでこれらの面にも保護層16の構成元素粒子が若干堆積されている。
このAg粒子の回り込み堆積が生じている場合、ニッケル合金からなるハステロイ製の基材13の裏面側と側面側に金属のめっき層が密着する。なお、Ag粒子の回り込みによる堆積が無い場合はニッケル合金からなるハステロイ製の基材13にめっき層が満足に密着されなくなるおそれがある。
このAg粒子の回り込み堆積が生じている場合、ニッケル合金からなるハステロイ製の基材13の裏面側と側面側に金属のめっき層が密着する。なお、Ag粒子の回り込みによる堆積が無い場合はニッケル合金からなるハステロイ製の基材13にめっき層が満足に密着されなくなるおそれがある。
前記酸化物超電導積層体1の外周に被覆されている金属層12は、一例として良導電性の金属材料からなり、酸化物超電導層15が超電導状態から常電導状態に転移した時に、保護層16とともに、電流を転流するバイパスとして機能する。金属層12を構成する材料としては、良導電性を有するものであればよく、特に限定されないが、銅、黄銅(Cu−Zn合金)、Cu−Ni合金等の銅合金、Al等の比較的安価な材質からなるものを用いることが好ましく、中でも高い導電性を有し、安価であることがらCuからなることが好ましい。外周に被覆される金属層12は、めっきあるいは金属テープを半田で貼り合わせて全周を覆うなどの方法で形成できるが、これらに限定されず、前記酸化物超電導積層体1の一部又は全周が被覆されていればよい。
これらの中でも金属層12の77Kにおける電気抵抗率は1×10−8[Ω・m]以下であり、77Kにおける熱伝導率が500W/m・K以下の材料、例えば、Cu、Cu合金、Ni、Ni合金であることが好ましい。また、金属層12の厚さは80μm未満であることが好ましく、20μm以上の厚さを有することが好ましい。
金属層12は、ある程度の厚さがないと、ピンホールの問題を生じ、水分の侵入により超電導特性劣化のおそれを生じる。金属層12の厚さは1μm以上であれば加工可能だが、20μmは必要である。
これらの中でも金属層12の77Kにおける電気抵抗率は1×10−8[Ω・m]以下であり、77Kにおける熱伝導率が500W/m・K以下の材料、例えば、Cu、Cu合金、Ni、Ni合金であることが好ましい。また、金属層12の厚さは80μm未満であることが好ましく、20μm以上の厚さを有することが好ましい。
金属層12は、ある程度の厚さがないと、ピンホールの問題を生じ、水分の侵入により超電導特性劣化のおそれを生じる。金属層12の厚さは1μm以上であれば加工可能だが、20μmは必要である。
以上説明のように構成された希土類系多層薄膜超電導線材6は、保護層16を支持体5の取付面5a側に向け、保護層16の外側の金属層12を取付面5aに沿わせて支持体6に固定されている。換言すると希土類系多層薄膜超電導線材6は保護層16を支持体5側に向け、基材13を支持体5から離れた側に位置させて支持体5の取付面5aに沿わせられている。また、テープ状の希土類系多層薄膜超電導線材6はその長さ方向両端側を4角形状の支持体5の長さ方向両端部から電極端子2側あるいは電極端子3側に所定の長さ突出させて半田付けにより固定され、更に被覆層4により覆われている。
本実施形態において希土類系多層薄膜超電導線材6を電極端子7、8に固定する材料は半田を用いることができるが、低融点金属層として、融点100〜300℃の金属、例えば、Sn、Sn合金、インジウム等からなるものを適用しても良い。半田を用いる場合、Sn−Pb系、Pb−Sn−Sb系、Sn−Pb−Bi系、Bi−Sn系、Sn−Cu系、Sn−Pb−Cu系、Sn−Ag系などのいずれの半田を用いても良い。
本実施形態の希土類系多層薄膜超電導線材6は、支持体5の取付面5aに沿わせた状態でエポキシ樹脂などの絶縁性の被覆層4により気密状態に覆われている。即ち、希土類系多層薄膜超電導線材6の両側面と上面が被覆層4により覆われている。被覆層4は希土類系多層薄膜超電導線材6を覆うことで希土類系多層薄膜超電導線材6の内部側に水分が侵入することを防止する。この被覆層4の線膨張係数は希土類系多層薄膜超電導線材6の全体の線膨張係数よりも大きくされている。例えば、上述した一般的な積層構造の希土類系多層薄膜超電導線材6の線膨張係数が11〜17×10−6であるので、被覆層4の線膨張係数を20×10−6以上とすることができる。
なお、希土類系多層薄膜超電導線材6において占有断面積の大きい基材13は、Ni合金あるいはステンレス鋼など、熱伝導率が10W/m・K以下(40K)である比較的熱伝導率の高くない材料で形成されている。このため、希土類系多層薄膜超電導線材6は仮に通電中に超電導状態から常電導状態にクエンチした際、電極部材2、3間の支持体5に電気が流れ、例えば、100mV以上の電圧が発生するようになっている。
このように支持体5に100mV以上の電圧が発生すると、一般に多用されているクエンチ検出器が希土類系多層薄膜超電導線材6のクエンチ状態を検知できる電圧となるのでクエンチ時に電流を遮断する場合に有利となる。また、電流は支持体5を流れることで寸断されることがないので、コイル等への損傷も防止できる。
なお、希土類系多層薄膜超電導線材6において占有断面積の大きい基材13は、Ni合金あるいはステンレス鋼など、熱伝導率が10W/m・K以下(40K)である比較的熱伝導率の高くない材料で形成されている。このため、希土類系多層薄膜超電導線材6は仮に通電中に超電導状態から常電導状態にクエンチした際、電極部材2、3間の支持体5に電気が流れ、例えば、100mV以上の電圧が発生するようになっている。
このように支持体5に100mV以上の電圧が発生すると、一般に多用されているクエンチ検出器が希土類系多層薄膜超電導線材6のクエンチ状態を検知できる電圧となるのでクエンチ時に電流を遮断する場合に有利となる。また、電流は支持体5を流れることで寸断されることがないので、コイル等への損傷も防止できる。
以上説明した構造の電流リード装置10は、例えば、図5に示す超電導マグネット装置(超電導機器)20に適用される。
図5に示す超電導マグネット装置20は、真空容器などの減圧可能な外部容器21と、その内側に設置された内部容器(低温側シールド容器)22と、該内部容器22に収容された高温超電導コイル23と、前記外部容器21の上部を閉じるフランジ部25および内部容器22の上部を閉じるフランジ部26を貫通して設けられた冷凍機27を主体として構成されている。冷凍機27は第1ステージ27Aと第2ステージ27Bとからなる2段構造とされ、第2ステージ27Bが内部容器22の内側にまで延出されている。この第2ステージ27Bの先端部27bに伝熱部材28を介し高温超電導コイル23が接続されていて、冷凍機27からの伝導冷却により高温超電導コイル23を臨界温度以下に冷却できるように構成されている。高温超電導コイル23は図示略のボビンに酸化物超電導線材を樹脂等の含浸材で固めた構造が一般的である。
図5に示す超電導マグネット装置20は、真空容器などの減圧可能な外部容器21と、その内側に設置された内部容器(低温側シールド容器)22と、該内部容器22に収容された高温超電導コイル23と、前記外部容器21の上部を閉じるフランジ部25および内部容器22の上部を閉じるフランジ部26を貫通して設けられた冷凍機27を主体として構成されている。冷凍機27は第1ステージ27Aと第2ステージ27Bとからなる2段構造とされ、第2ステージ27Bが内部容器22の内側にまで延出されている。この第2ステージ27Bの先端部27bに伝熱部材28を介し高温超電導コイル23が接続されていて、冷凍機27からの伝導冷却により高温超電導コイル23を臨界温度以下に冷却できるように構成されている。高温超電導コイル23は図示略のボビンに酸化物超電導線材を樹脂等の含浸材で固めた構造が一般的である。
前記フランジ部25の表面に電流供給用の外部接続端子29、30が形成され、これらの外部接続端子29、30がフランジ部25を貫通するように延出されて外部容器21の内部側に引き込まれ、この引込部分にフランジ部25とフランジ部26とに接続するように上下に電流リード10、10が組み込まれている。前記外部接続端子29、30に電流リード装置10、10の上端側が接続され、電流リード装置10、10の下端側はそれぞれ高温超電導コイル23を構成する図示略の酸化物超電導線材に接続されている。
外部容器21は、図示略の真空ポンプに接続されていて、内部を目的の真空度に減圧できるように構成されている。また、外部接続端子29、30は外部の図示略の電源に電流リード線を介し接続されており、この電源から高温超電導コイル23に通電し、所望の磁場を発生できるようになっている。
外部容器21は、図示略の真空ポンプに接続されていて、内部を目的の真空度に減圧できるように構成されている。また、外部接続端子29、30は外部の図示略の電源に電流リード線を介し接続されており、この電源から高温超電導コイル23に通電し、所望の磁場を発生できるようになっている。
図5に示す超電導マグネット装置20は、図示略の真空ポンプにより外部容器21の内部を減圧して真空状態とし、冷凍機27を作動させて伝導冷却により高温超電導コイル23を臨界温度以下に冷却した後、外部電源から接続端子29、30を介し高温超電導コイル23に通電することで使用する。なお、冷凍機27の能力にもよるが、冷凍機27は高温超電導コイル23を4.2K、20Kあるいは40Kなどのように希土類系酸化物超電導体が超電導状態となる液体窒素温度(77K)よりも低温側まで冷却する能力を有するので、外部容器21の内側に設けられている電流リード1も臨界温度以下(77K以下が好ましい。)に冷却される。
印加した電流は接続端子29、30から電流リード装置10の電流リード1を介して高温超電導コイル23の酸化物超電導線材に流れる。電流リード1において、電極端子7を仮に接続端子側に近い高温側の端子として設置すると、電流は電極端子7から希土類系多層薄膜超電導線材6に流れ、電極端子8側に流れて高温超電導コイル23の酸化物超電導線材に達する。ここで、電流リード1も臨界温度以下に冷却されているので、希土類系多層薄膜超電導線材6に設けられている酸化物超電導層15は抵抗が0となるため、電極部材2から半田層と金属層12と保護層16を介し各酸化物超電導層15に電流が流れ、電極部材3側に通電し、高温超電導コイル23に通電できる。高温超電導コイル23に通電されると高温超電導コイル23が磁場を発生させるので、超電導マグネット装置20は目的の磁場を発生できる。
なお、図1〜図3に示す第1実施形態では、支持体5を横断面4角形状とした例について説明したが、支持体5の断面形状は問わない。また、希土類系多層薄膜超電導線材6の本数も任意の数で良い。支持体5に取り付ける希土類系多層薄膜超電導線材6の本数は電流リード装置10に流そうとする電流の大小に応じ適宜必要な本数を選択して採用すれば良い。
更に、気密性を向上させるために希土類系多層薄膜超電導線材6の周面を覆う金属層12に代えて圧延銅テープや銅合金を半田やスズにより貼り合わせた構造とすることもできる。
例えば、希土類系多層薄膜超電導線材の第2の構造例として、図6(a)に示すように、基材33の上に中間層34と酸化物超電導層35と保護層36を積層してなる超電導積層体37の上に、Cuの圧延テープ材38を貼り付け、更にその全周を金属層39で覆った構造の希土類系多層薄膜超電導線材40を用いることができる。
また、希土類系多層薄膜超電導線材の第3の構造例として、図6(b)に示すように、基材43の上に中間層44と酸化物超電導層45と保護層46を積層してなる超電導積層体47の全周を金属層48で覆い、その上に、Cuの圧延テープ材49を貼り付け、更にその全周を金属層50で覆った構造の希土類系多層薄膜超電導線材51を用いることもできる。更に、図6(c)に示すように、超電導積層体47の全周を金属層48で覆ったものを2枚向き合わせて積層し、この積層体の全周を金属層52で覆った構造の希土類系多層薄膜超電導線材53を用いることもできる。
以上説明のように、本発明の電流リード1に適用する希土類系多層薄膜超電導線材の構造については種々変更が可能であり、図1、図6に示す構造の他、一般に知られている公知の希土類系酸化物超電導線材の種々の構造を採用可能である。
例えば、希土類系多層薄膜超電導線材の第2の構造例として、図6(a)に示すように、基材33の上に中間層34と酸化物超電導層35と保護層36を積層してなる超電導積層体37の上に、Cuの圧延テープ材38を貼り付け、更にその全周を金属層39で覆った構造の希土類系多層薄膜超電導線材40を用いることができる。
また、希土類系多層薄膜超電導線材の第3の構造例として、図6(b)に示すように、基材43の上に中間層44と酸化物超電導層45と保護層46を積層してなる超電導積層体47の全周を金属層48で覆い、その上に、Cuの圧延テープ材49を貼り付け、更にその全周を金属層50で覆った構造の希土類系多層薄膜超電導線材51を用いることもできる。更に、図6(c)に示すように、超電導積層体47の全周を金属層48で覆ったものを2枚向き合わせて積層し、この積層体の全周を金属層52で覆った構造の希土類系多層薄膜超電導線材53を用いることもできる。
以上説明のように、本発明の電流リード1に適用する希土類系多層薄膜超電導線材の構造については種々変更が可能であり、図1、図6に示す構造の他、一般に知られている公知の希土類系酸化物超電導線材の種々の構造を採用可能である。
次に、本発明に係る希土類系多層薄膜超電導線材を電流リードに用いた構造と、一般に知られているAgシースタイプのBi系酸化物超電導線材を電流リードに用いた構造における簡略化した相対比較とした熱伝導解析試算モデルについて説明する。以下の説明では、基本的な構造を設定した後、1次元熱伝達モデルにおける試算結果について比較する。この試算結果は、仮定の上での単純化モデルにおける試算ではあるが、希土類系多層薄膜超電導線材に極めて類似しているBi系酸化物超電導線材を用いた電流リードとの相対比較の上で可能な手段と考えられる。このため、実用構造のBi系高温超電導線材と希土類系多層薄膜超電導線材との熱伝導状態を表現できると考えられる。
<試算条件>
熱伝導解析を行うにあたり、図7に示すような微小体積モデルを採用する。定常状態(時間積分項=0)、熱伝達率kや電気抵抗は温度に無関係で一定とする。伝導冷却のみを想定し、冷媒冷却は無いこととした。各部品間の熱接触比は0と設定し、外部容器側の電流リードの高温端を77K、内部容器の内側の電流リードの低温端は4.2Kと設定した。この試算モデルの部品構成は、上下の端子が銅製であり、ステンレス鋼の4角形状の支持体を用い、希土類系多層薄膜超電導線材は基材をハステロイ製、安定化層をCu製とし、外郭体をGFRP製のカバーとし、ステンレス鋼の支持体と希土類系多層薄膜超電導線材とGFRP製の外郭体は等価回路を構成すると仮定した。
熱伝導解析を行うにあたり、図7に示すような微小体積モデルを採用する。定常状態(時間積分項=0)、熱伝達率kや電気抵抗は温度に無関係で一定とする。伝導冷却のみを想定し、冷媒冷却は無いこととした。各部品間の熱接触比は0と設定し、外部容器側の電流リードの高温端を77K、内部容器の内側の電流リードの低温端は4.2Kと設定した。この試算モデルの部品構成は、上下の端子が銅製であり、ステンレス鋼の4角形状の支持体を用い、希土類系多層薄膜超電導線材は基材をハステロイ製、安定化層をCu製とし、外郭体をGFRP製のカバーとし、ステンレス鋼の支持体と希土類系多層薄膜超電導線材とGFRP製の外郭体は等価回路を構成すると仮定した。
希土類系多層薄膜超電導線材は以下の積層構造を採用した場合を想定した。ハステロイC276(米国ヘインズ社商品名)からなる幅10mm、厚さ0.1mmのテープ状の基材を用い、このテープ状基材の表面にAl2O3からなる厚さ100nmの拡散防止層と、Y2O3からなる厚さ30nmのベッド層と、イオンビームアシスト蒸着法による厚さ10nmのMgOの配向層と、CeO2の厚さ500nmのキャップ層と、GdBa2Cu3O7−xの厚さ約2μmの酸化物超電導層と、厚さ10μmのAgの保護層を形成した酸化物超電導積層体を想定した。この酸化物超電導積層体は酸素アニールを500℃で行い、酸素アニール後、全体に30μm厚のCuメッキを施して希土類系多層薄膜超電導線材とすることができる。
電流リードに通電すると、電流リードの支持体、ハステロイ製の基材、安定化層は抵抗を有するために若干発熱する。
その状態の導体熱伝導の微小体積モデルを図7に示すが、熱侵入量Qc=k・S・θ/L+Qj/2の関係式が成立し、ジュール熱Qj=ρ・I2・L/Sの関係が成立する。
(ただし、k:熱伝導率[W/(m・K)]、S:断面積[m2]、ρ:電気抵抗率[Ωm]、I:電流[A]、L:長さ[m])
図7に示す微小体積モデルを等価回路に示すと、図8の等価回路となり、この等価回路を図1に示す構造で希土類系多層薄膜超電導線材を取り付けた構造に適用すると、図9に示す等価回路となる。
ここで、熱抵抗:R=L/kS[K/W]、電気抵抗:r=ρL/S[Ω]、とし、各種パラメータは、以下に示すように文献(Y.Iwasa, Case Studies in Superconducting Magnets, 2nd ed. Springer, 2009)から引用した。
その状態の導体熱伝導の微小体積モデルを図7に示すが、熱侵入量Qc=k・S・θ/L+Qj/2の関係式が成立し、ジュール熱Qj=ρ・I2・L/Sの関係が成立する。
(ただし、k:熱伝導率[W/(m・K)]、S:断面積[m2]、ρ:電気抵抗率[Ωm]、I:電流[A]、L:長さ[m])
図7に示す微小体積モデルを等価回路に示すと、図8の等価回路となり、この等価回路を図1に示す構造で希土類系多層薄膜超電導線材を取り付けた構造に適用すると、図9に示す等価回路となる。
ここで、熱抵抗:R=L/kS[K/W]、電気抵抗:r=ρL/S[Ω]、とし、各種パラメータは、以下に示すように文献(Y.Iwasa, Case Studies in Superconducting Magnets, 2nd ed. Springer, 2009)から引用した。
<Y系電流リードパラメータ>
・銅(無酸素銅)の電気抵抗率ρ
高温側 2.0E-09 [Ω・m] (77K)
低温側 5.0E-10 [Ω・m] (RRR=30、5K)(RRR:残留抵抗比)
・熱伝導率k
銅(高温側) 500 [W/(m/K)] (77K)
ハステロイ 5 [W/(m/K)] (40K)(超電導線材の基材)
ステンレス鋼 5 [W/(m/K)] (40K)(支持体)
GFRP 0.25 [W/(m/K)] (40K)
銅(低温側) 200 [W/(m/K)] (RRR=30、5K)
・GFRPカバーは線材(10mm幅×2本)、ステンレス鋼製の支持体と並列
線材銅断面積 4.00 E-07 [m2]、長さL=0.145 [m]
線材ハステロイ部分断面積 2.00 E-06 [m2]、長さL=0.145 [m]
ステンレス鋼支持体断面積 3.00 E-05 [m2]、長さL=0.145 [m]
(2mm厚×15mm幅(穴あき部考慮なし))
GFRP断面積 1.07 E-04 [m2]、長さL=0.245 [m]
・熱抵抗R
線材 銅部分 熱抵抗 R 725 [K/W]
線材 ハステロイ部分 熱抵抗 R 14500 [K/W]
ステンレス鋼製支持体 熱抵抗 R 967 [K/W]
GFRP製外郭体 熱抵抗 R 9175 [K/W]
・はんだ接続抵抗 線材−銅端子間
高温側 1.00E-07 [Ω・m] (77K)
低温側 1.00E-08 [Ω・m] (4K)
・銅(無酸素銅)の電気抵抗率ρ
高温側 2.0E-09 [Ω・m] (77K)
低温側 5.0E-10 [Ω・m] (RRR=30、5K)(RRR:残留抵抗比)
・熱伝導率k
銅(高温側) 500 [W/(m/K)] (77K)
ハステロイ 5 [W/(m/K)] (40K)(超電導線材の基材)
ステンレス鋼 5 [W/(m/K)] (40K)(支持体)
GFRP 0.25 [W/(m/K)] (40K)
銅(低温側) 200 [W/(m/K)] (RRR=30、5K)
・GFRPカバーは線材(10mm幅×2本)、ステンレス鋼製の支持体と並列
線材銅断面積 4.00 E-07 [m2]、長さL=0.145 [m]
線材ハステロイ部分断面積 2.00 E-06 [m2]、長さL=0.145 [m]
ステンレス鋼支持体断面積 3.00 E-05 [m2]、長さL=0.145 [m]
(2mm厚×15mm幅(穴あき部考慮なし))
GFRP断面積 1.07 E-04 [m2]、長さL=0.245 [m]
・熱抵抗R
線材 銅部分 熱抵抗 R 725 [K/W]
線材 ハステロイ部分 熱抵抗 R 14500 [K/W]
ステンレス鋼製支持体 熱抵抗 R 967 [K/W]
GFRP製外郭体 熱抵抗 R 9175 [K/W]
・はんだ接続抵抗 線材−銅端子間
高温側 1.00E-07 [Ω・m] (77K)
低温側 1.00E-08 [Ω・m] (4K)
<Bi系電流リード設定パラメータ>
・Ag熱伝導率 k 1500 [W(m・K)] (40K)
・Ag断面積 5.76E-0.6 [m2]、 長さ L=0.228 [m]
(4mm幅 2枚並列×6本=12本、銀比1.5)
・GFRP断面積 2.84E-0.4 [m2]、 長さ L=0.245 [m]
(充実構造(ただし、線材内部面積を除く))
・銀熱抵抗 R 79 [K/W]
GFRP 熱抵抗 3456 [K/W]
・Ag熱伝導率 k 1500 [W(m・K)] (40K)
・Ag断面積 5.76E-0.6 [m2]、 長さ L=0.228 [m]
(4mm幅 2枚並列×6本=12本、銀比1.5)
・GFRP断面積 2.84E-0.4 [m2]、 長さ L=0.245 [m]
(充実構造(ただし、線材内部面積を除く))
・銀熱抵抗 R 79 [K/W]
GFRP 熱抵抗 3456 [K/W]
以上のパラメータに基づき、希土類系多層薄膜超電導線材を備えた電流リードとBi系酸化物超電導線材を備えた電流リードの低温端側における熱侵入量の対比計算を行った。
希土類系多層薄膜超電導線材において前述のようにハステロイ製の基材を0.1mm厚、銅メッキによる安定化銅層、線材幅10mmとした超電導線材を用いて図7〜図9に示すモデル構造を実現し、高温端77K、低温端4.2Kとした。Bi系超電導線材(銀比1.5、0.23mm、4.4mm幅、77K、自己磁場における臨界電流1000Aを満たす条件として12本使用)を電流リードに用いた構造の場合の熱侵入量試算値を1.0として、その値との対比を行った。希土類系多層薄膜超電導線材を用いた電流リードにおいて、銅めっき厚と熱侵入量相対値の計算結果を表1に示す。
希土類系多層薄膜超電導線材において前述のようにハステロイ製の基材を0.1mm厚、銅メッキによる安定化銅層、線材幅10mmとした超電導線材を用いて図7〜図9に示すモデル構造を実現し、高温端77K、低温端4.2Kとした。Bi系超電導線材(銀比1.5、0.23mm、4.4mm幅、77K、自己磁場における臨界電流1000Aを満たす条件として12本使用)を電流リードに用いた構造の場合の熱侵入量試算値を1.0として、その値との対比を行った。希土類系多層薄膜超電導線材を用いた電流リードにおいて、銅めっき厚と熱侵入量相対値の計算結果を表1に示す。
表1に示す結果から、Bi系酸化物超電導線材を用いる電流リードの構造と対比すると、低温端側での熱侵入量を少なくするためには、安定化銅の厚さを80μm未満とすることが有利であると考えられる。安定化銅の厚さが少ないほど、電流リードの低温端側での熱侵入量を小さくできることが分かる。
なお、支持体をステンレス鋼製とし、外郭体をGFRP製の2mm厚としたが、外郭体はステンレス鋼製としても表1に示す結果は変わらない。
なお、支持体をステンレス鋼製とし、外郭体をGFRP製の2mm厚としたが、外郭体はステンレス鋼製としても表1に示す結果は変わらない。
1…電極リード、2、3…電極部材、4…被覆層、5…支持体、5a…取付面、5b…端部、6…希土類系酸化物超電導線材、7、8…電極端子、9…外郭体、10…電流リード装置、11…酸化物超電導積層体、12…金属層(安定化層)、13…基材、14…中間層、15…酸化物超電導層、16…保護層、17…下地層、18…配向層、19…キャップ層、20…超電導マグネット装置(超電導機器)、21…外部容器、22…内部容器(低温側シールド容器)、23…高温超電導コイル、27…冷凍機、28…伝熱体、29、30…外部接続端子、33、43…基材、34、44…中間層、35、45…酸化物超電導層、36、46…保護層、37、47…超電導積層体、38、49…圧延テープ、40、51…希土類酸化物超電導線材。
Claims (4)
- 超電導機器に電力を供給するための電流リードであって、両端側に設けられる電極部材と、これら電極部材を接続するようにこれら電極部材間に配置された支持体と、この支持体の外面に配置されて両端部を各電極部材に接続させた複数のテープ状の希土類系多層薄膜超電導線材とを具備し、前記希土類系多層薄膜超電導線材が、基材と、該基材上に形成された中間層および酸化物超電導層と、これらを覆う金属の安定化層を備え、該安定化層が厚さ80μm未満であることを特徴とする超電導電流リード。
- 前記支持体上の希土類系多層薄膜超電導線材が樹脂材により密封されたことを特徴とする請求項1に記載の超電導電流リード。
- 請求項1または請求項2に記載の超電導電流リードの一方の電極部材の外側に一方の電極端子が前記他方の電極部材の外側に他方の電極端子がそれぞれ接続され、前記一方の電極端子と前記他方の電極端子に装着されて前記超電導電流リードを取り囲む外郭体が取り付けられたことを特徴とする超電導電流リード装置。
- 減圧可能な外部容器と、その内部側に設けられた低温側シールド容器と、該低温側シールド容器の内部に収容された高温超電導コイルと、前記外部容器に取り付けられた冷凍機と、前記外部容器の内側に設けられて外部電源からの電力を前記高温超電導コイル側に供給するための超電導電流リード装置とを備え、前記超電導電流リード装置が請求項3に記載の超電導電流リード装置であることを特徴とする超電導マグネット装置。
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