JP2013174455A - 地震動の予測システム - Google Patents

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Abstract

【課題】震源地の遠近に拘わらず、地震発生時直後に当該地震のS波によって特定の構造物に作用する揺れの大きさを高い精度で予測することが可能になる地震動の予測システムを提供する。
【解決手段】解析装置が、構造物に設置された地震計から段階的に出力される地震動レベルとその時間差から地震動レベルの勾配を算出し、当該勾配を予め設定されたP波による勾配の範囲およびS波による勾配の範囲と比較して、P波による勾配の範囲内と判断された場合に、P波の予測式を用いて上記揺れの大きさを予測し、S波による勾配の範囲内と判断された場合に、緊急地震速報の情報から構造物へのP波到達時刻およびP波の継続時間を算出し、P波の継続時間内の地震動レベルによる場合にはP波の予測式を用いて、P波の継続時間以降の地震動レベルによる場合にはS波の予測式を用いて、それぞれ揺れの大きさを予測する。
【選択図】図3

Description

本発明は、地震が発生した際に、その主要動(S波)が到達する前に、当該地震によって特定の構造物等に生じる揺れの大きさを予測するための地震動の予測システムに関するものである。
近年、地震発生時に発せられる気象庁の緊急地震速報によって、地震発生後数秒程度で、発生した地震のマグニチュードや震源位置等に関する情報を受け取ることができる。このため、上記緊急地震速報の情報を利用することにより、地震発生から地震動の主要動(S波)が到達するまでに数秒〜数十秒の余裕がある震源から数十Km以上離れた地点においては、事前に上記S波に起因する揺れの大きさを予測することにより、地震被害の発生を未然に防止することが可能になっている。
ところが、2011年3月11日に発生した東海地方太平洋沖地震では、震源域が広範囲に渡ったため、図5に示すように、上記緊急地震速報に基づく地震動強さの予測と、実際の地震動強さとの間の誤差が大きいという問題が明らかとなった。
一方、かねてより上記緊急地震速報を利用した地震動の予測にあっては、震源から離れた地点の建物に対しては、相応の防災対策を採ることが可能であるものの、建物から比較的短距離の地点で発生した地震や、当該建物に近い地点において発生した直下地震に対しては情報が間に合わず、所望とする防災効果を奏することができないという問題点が指摘されていた。
そこで、本出願人は、先に下記特許文献1において、地震発生時に、揺れの大きさを予測する地点に地震計を設置して地震動レベルを検出し、検出された地震動レベルおよびその前段階における地震動レベルの差と、これら地震動レベルの出力時の時間差とから上記地震動レベルの勾配を算出し、当該勾配を予め設定されたP波による勾配の範囲およびS波による勾配の範囲と比較して、該当する地震動レベルがP波によるものか、あるいはS波によるものかを判定し、各々の予測式を用いて当該地点における揺れの大きさ(加速度、速度、変位量、SI値あるいは計測震度)を予測する地震動の予測システムを提案した。
このような地震動の予測システムによれば、予測地点に設置した汎用の地震計と、負荷の小さい解析装置といった簡易なシステムによって、予測地点から比較的短距離の地点で発生した地震や、当該地点に近い場所で発生した直下地震に対しても、地震時に上記予測地点の構造物に作用するS波による揺れの大きさを、地震発生時の初期段階において予測することができるという効果が得られる。
特開2010−164325号公報 糸井達哉他:緊急地震速報と現地地震計の初期微動情報を併用した地震防災システムの開発と性能評価,日本建築学会技術報告集 第16巻 第33号
しかしながら、逆に震源地が予測地点の遠方にある場合には、当該予測地点においては、S波であっても、その到達初期においては地震動レベルの変化の勾配が緩やかであるために、上記地震動の予測システムにおいては、これをP波と見なしてしまい、この結果図6に示すように、予測値を過大に評価してしまう可能性がある。
そこで、上記特許文献1の発明者等は、上記非特許文献1において、上記地震動の予測システムの対象を地震動レベルの変化の勾配が急峻な直下地震に限定するとともに、この際に、予め上記地震計が地震動の初動レベルを検知した後の数秒間の所定時間(例えば、2.5秒)を設定しておき、当該所定時間までに検知された地震動レベルの変化の勾配の最大値を、P波による地震動レベルの勾配の最大値とみなすことの適用性を確認している。
しかしながら、上記非特許文献1に開示されている方法によっては、上述した東北地方太平洋沖地震のように、初動の継続時間が長い地震に対しては、数秒間の所定時間における地震動レベルの情報のみでは足りず、しかも当該所定時間経過後は、P波をS波と見なしてしまうために、図5に従来法として示すように、最終的には揺れの大きさを予測することができるものの、当該予測が得られた後の余裕時間が、防災のためには十分ではないという問題点があった。
この発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、震源地が近い地震のみならず、遠い地震に対しても、地震発生時直後に、当該地震のS波によって特定の構造物に作用する揺れの大きさを従来よりも高い精度で予測することが可能になる地震動の予測システムを提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、地震発生時に、当該地震のS波による揺れの大きさを予測する構造物またはその地盤の地震動レベルを検出するとともに、検出された上記地震動レベルが予め複数段階に設定された地震動レベルを超えた際に、各々の上記段階において上記地震動レベルを出力する地震計と、上記地震の震源地の情報を含む緊急地震速報を受信する受信手段と、上記地震計から逐次入力される各段階において出力された上記地震動レベルおよび上記緊急地震速報の情報に基づいて、上記揺れの大きさを予測する解析装置とを備えてなり、上記解析装置は、予め統計的もしくは解析的に求めておいたP波の地震動レベルに基づく上記揺れの大きさの予測式およびS波の地震動レベルに基づく上記揺れの大きさの予測式が設定されているとともに、入力された上記地震動レベルおよびその前段階における上記地震動レベルの差と、当該地震動レベルの出力時の時刻およびその前段階における上記地震動レベルの出力時の時刻の差から上記地震動レベルの勾配を算出し、当該勾配を予め設定されたP波による勾配の範囲およびS波による勾配の範囲と比較して、P波による勾配の範囲内と判断された場合に、上記P波の予測式を用いて上記揺れの大きさを予測するとともに、S波による勾配の範囲内と判断された場合に、上記緊急地震速報の情報が入力された後においては、当該情報から上記構造物へのP波到達時刻およびP波の継続時間を算出し、上記勾配がP波の継続時間内の上記地震動レベルによる場合には、上記P波の予測式を用いて上記揺れの大きさを予測し、P波の継続時間以降の上記地震動レベルによる場合には、上記S波の予測式を用いて上記揺れの大きさを予測することを特徴とするものである。
ここで、解析装置において、算出された勾配から最終的なS波による地震の揺れの大きさを解析するための予測式としては、過去の多数の地震から統計的に得られている予測式を用いることができる。
また、解析による予測式を用いる場合には、P波から揺れの大きさを予測する予測式として、例えば、Wu,Y.-M. and Kanamori, H. (2005):Rapid Assessment of Damage Potential of Earthquakes in Taiwan from the Beginning of P Waves,Bulletin of the Seismological Society of America, Volume 95, Number 3,pp. 1181-1185に開示されている予測式を応用することができる。また、P波からマグニチュードや震源までの距離を予測する予測式として、例えば特許文献416033の予測手法を応用することができる。
他方、S波から揺れの大きさを予測する予測式としては、例えば、童華南・山崎文雄(1996):地震動強さ指標と新しい気象庁震度との対応関係,生産研究,48巻11号,pp.547-550に開示されている予測式を応用することができる。また、S波からマグニチュードや震源までの距離を予測する予測式としては、例えば気象庁地震火山部(2008):緊急地震速報の概要や処理手法に関する技術的参考資料、平成20年7月29日、の予測手法を応用することができる。
さらに、本発明において予測に用いる地震動のレベルとしては、地震動の加速度、速度、変位量、SI値もしくは計測震度のいずれか、あるいはこれらの組合せを用いることが可能である。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記解析装置は、上記地震計から最初の上記地震動レベルが入力された後の所定時間が設定され、上記緊急地震速報の受信前に当該所定時間を経過した場合に、当該経過後上記緊急地震速報を受信するまでの間、上記勾配の比較に依らずに、上記S波の予測式を用いて上記揺れの大きさを予測することを特徴とするものである。
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記解析装置は、上記構造物に設置された機器類の振動許容値に基づく揺れの大きさが設定されているとともに、上記予測された上記揺れの大きさが、上記揺れの大きさの設定値を超えた際に、警報信号または上記機器類の作動を制御する信号を出力することを特徴とするものである。
請求項1〜3のいずれかに記載の発明においては、地震発生時に、予測地点における地震動レベルが大きくなるのに伴って、地震計が、予め設定された複数段階において検出した地震動レベルを順次出力する。すると、解析装置において、前後の段階における地震動レベルの差とその出力時の時刻の差から当該地震動レベルの勾配を算出して、当該勾配が、予め設定されたP波による勾配の範囲内であるか、S波による勾配の範囲内であるか判断する。
そして、当該地震動レベルの勾配がP波による勾配の範囲内と判断された場合には、上記P波の予測式を用いて上記揺れの大きさを予測する。
これに対して、S波による勾配の範囲内と判断された場合に、緊急地震速報の情報が入力されていない場合には、S波の予測式を用いて上記揺れの大きさを予測することにより、上記構造物に近い地点において発生した直下地震に対しても、構造物に生じる揺れの大きさを早期に予測することができる。
他方、S波による勾配の範囲内と判断された場合であっても、緊急地震速報の情報が得られている場合には、先ず当該緊急地震速報の震源位置に係る情報から上記構造物へのP波到達時刻およびP波の継続時間を算出し、上記地震動レベルの勾配がP波の継続時間内のものである場合には、P波の予測式を用いて上記揺れの大きさを予測し、P波の継続時間以降のものである場合には、S波の予測式を用いて上記揺れの大きさを予測する。
ちなみに、一般的に緊急地震速報におけるマグニチュード等の初期情報は、最終的に観測された実際の値と大きな誤差を生じることが多いものの、震源位置の情報は誤差が小さく、しかも当該震源位置から予測すべき構造物の位置までのP波およびS波の到達時間は、比較的高い精度で算出することが可能である。
このため、上記緊急地震速報の特に震源位置に係る情報を利用することにより、地震動レベルの変化の勾配が緩な状態が継続している場合においても、これがP波によるものか、あるいは震源地が上記構造物の遠方であってS波の到達初期によるものかを的確に判断して、最終的な構造物の揺れの大きさを予測することができる。
したがって、請求項1〜3のいずれかに記載の発明によれば、震源地が近い地震のみならず、遠い地震に対しても、地震発生時直後に、当該地震のS波によって特定の構造物に作用する揺れの大きさを従来よりも高い精度で予測することができる。
この際に、震源地が予測地点の遠方にある場合に、緊急地震速報を受信するまでの間が長いと、S波の到達初期における緩やかな地震動レベルの勾配を、P波と見なして予測値を過大に評価してしまう可能性がある。
この点、請求項2に記載の発明によれば、地震計から最初の地震動レベルが入力された後の所定時間を設定しておき、緊急地震速報の受信前に当該所定時間を経過した場合には、緊急地震速報を受信するまでの間、上記勾配の比較に依らずにS波の予測式を用いて上記揺れの大きさを予測しているために、このような弊害が生じることを未然に防止して予測精度を高めることができる。
また、請求項3に記載の発明のように、解析装置に、予め構造物に設置された機器類の振動許容値を設定しておき、当該解析装置によって予測された地震の揺れの大きさが上記振動許容値を超えた際に、警報信号を出力したり、あるいは上記機器類の作動を制御する信号を出力したりするように構成すれば、半導体製造工場などの多数の振動を嫌う製造機器類が設置された構造物に対しても、地震に対して安定的な操業を確保することができて好適である。
本発明に係る地震動の予測システムの一実施形態を示す概略構成図である。 図1の地震計および解析装置を示す概略構成図である。 図1のシステムを用いた地震動の予測ステップを示すフローチャートである。 地震動を予測するための予測式を示すグラフである。 地震動発生からの地震動レベルの変化と、本提案法、従来法および緊急地震速報を利用した各々の予測の変化を時間の経過とともに示すグラフである。 特許文献1の予測方法を用いた場合の予測値を過大評価する可能性を示すグラフである。
図1〜図4は、本発明に係る地震動の予測システムの一実施形態を示すものである。
図1において、図中符号1は、このシステムが設置されている半導体製造工場等の建物(構造物)であり、この建物1内には、振動を嫌う多くの設備機器(図では、そのうちの1機のみを示している。)2が設置されている。
そして、この建物1に近接した敷地上もしくは建物1内には、各々当該箇所における地震動のレベルを検知するための地震計3が取り付けられている。これらの地震計3には、予め数〜10段階の接点レベル(a、b、c、…)が設定されており、各々の接点レベルを超えた際に、超えたレベルの接点を出力するようになっている。
なお、地震計3によって検出および出力される地震動のレベルとしては、地震動の加速度、速度、変位量、SI値もしくは計測震度、またはこれらの組合せを適用することが可能であるが、本実施形態においては、その一例として、地震動による揺れの3成分合成加速度を用いて、当該地震動による建物1の位置Pにおける揺れの速度を予測する場合について説明する。
また、この建物1内には、地震発生時に気象庁から発せられる緊急地震速報の受信装置4が設置されている。
そして、この建物1内には、地震計3からの出力信号が入力されるとともに、受信装置4において受信した緊急地震速報の情報のうちの少なくとも震源位置に関する情報が入力される解析装置5が設置されている。
この解析装置5は、図2に示すように、地震計3からの接点出力および検出時刻が入力される接点入力部6と、この接点入力部6に入力された上記接点出力および検出時刻から、到来するS波による最終的な建物1の揺れの大きさを演算して予測する演算部7と、この演算部7において算出された予測値により、必要に応じて警報信号および上記設備機器2の作動を停止あるいは減速等させる信号を出力するデータ送信部8とから概略構成されたものである。
そして、地震計3と接点入力部6とが、接点用配線9によって接続されるとともに、受信装置4と演算部7とが通信線10によって接続され、データ送信部8と設備機器2とが、設備機器制御用配線11によって接続されている。
ここで、地震計3には、予め最も小さな接点出力レベルとして、地震動の開始と判断される加速度a(数cm/s2)が設定されており、当該加速度aを検出した際に、この加速度aを接点入力部6へと出力するようになっている。なお、地震計3に設定されている数〜10段階の接点出力の加速度(a、b、c、…)のうち、上記加速度a以降の1以上の次段階における接点出力の加速度(b、c、…)は、P波において検出される加速度の値に設定されている。
また、解析装置5の接点入力部6には、上記加速度aが出力された後に、地震動のレベルがさらに高くなって次段階の接点レベルを超えると、地震計3から順次当該レベルの加速度(b、c、…)の接点出力が入力されるようになっている。
これに対して、解析装置5の演算部7には、接点入力部6に入力された各々の接点レベルの加速度(a、b、c、…)、および地震計3において各々の接点出力がなされた際の検出時刻(ta、tb、tc、…)から、下式に基づいて、各々の時間差Δijおよび加速度の勾配gijを算出する演算回路が組まれている。
Δij=tj−ti
ij=(j−i)/(tj−ti)、(i、j=a、b、c、…)
さらに、演算部7には、予め過去の地震における観測記録に基づいて、地震動がP波によるものである時の加速度の勾配の範囲(1)、およびS波によるものである時の加速度の勾配の範囲(2)が設定されている。加えて、この演算部7には、過去の地震の観測記録に基づいて統計的に求めておいた、図4(a)に示すような、P波時の加速度xによって最終的な地震による揺れの大きさ(速度)ymaxを算出する予測式f(x)と、図4(b)に示すような、S波時の加速度xによって最終的な地震による揺れの大きさ(速度)ymaxを算出する予測式g(x)が組み込まれている。
そして、この演算部7においては、算出された加速度の勾配gijを予め設定されたP波による勾配の範囲およびS波による勾配の範囲と比較し、P波による勾配の範囲内と判断された場合に、上記予測式f(x)を用いてその時の接点レベル(=加速度x)から建物1における地震の揺れの大きさ(速度)ymaxを予測するようになっている。
これに対して、S波による勾配の範囲内と判断された場合に、受信装置4からの緊急地震速報の情報が通信線10を介して入力されていない場合には、S波の予測式g(x)を用いてその時の接点レベル(=加速度x)から建物1地震の揺れの大きさ(速度)ymaxを予測し、上記緊急地震速報の情報が入力された後においては、当該情報の震源位置の情報から、P波およびS波の予測式f(x)、g(x)のいずれを用いて上記揺れの大きさを予測するかを決定する。
すなわち、上記緊急地震速報の震源位置に係る情報から、先ず建物1へのP波到達時刻およびS波の到達時刻を算出し、これらP波およびS波の到達時刻の差から、P波の継続時間を算出する。そして、ひとまずS波による勾配の範囲内と判断された上記勾配が、P波の継続時間内の地震動レベルによる場合には、上記P波の予測式f(x)を用いて揺れの大きさを予測する。また、上記勾配が、P波の継続時間以降の地震動レベルによる場合には、上記S波の予測式g(x)を用いて揺れの大きさを予測するようになっている。
さらに、この解析装置5においては、演算部7またはデータ送信部8には、設備機器2における振動許容値(許容速度)が入力されており、上記予測式f(x)、g(x)によって算出された揺れの大きさymaxが、上記振動許容値を超えた際に、警報信号および設備機器2を停止させたり、あるいは減速させたりするための制御信号が、設備機器制御用配線11を介して出力されるようになっている。
次に、図3に基づいて、上記構成からなる地震動の予測システムの作用について説明する。
先ず、地震が発生して、建物1内またはその敷地上の地震計3が、予め設定された地震動の開始と判断される加速度aを検知すると、当該加速度aが解析装置5の接点入力部6へと出力される。
次いで、地震動のレベルがさらに高くなって次段階の接点レベルを超えると、当該接点レベルの加速度bが、上記接点入力部6に入力されるとともに、さらに演算部7において、地震計3が上記加速度aを出力した地震の開始時刻taおよび次段階の加速度bを出力した時刻tbが参照されて、その時間差Δab=tb−taおよび上記加速度の勾配gab=(b−a)/(tb−ta)が算出される。
そして、この演算部7において、上記勾配gabがP波による範囲(1)内であるかが判断され、当該範囲(1)内である場合には、予測式ymax=f(x)によって、P波時の加速度bによって最終的な地震による揺れの大きさ(速度)ymaxが算出される。
そして、以上の判断が、以降の接点レベル(c、…)を超えた場合にも、同様に各々の接点出力時の加速度およびその前段階における接点出力時の加速度の差(j−i)と、その時刻およびその前段階における時刻との差(tj−ti)から地震動レベルの勾配gijが算出され、同様に上記勾配gijがP波による範囲(1)内である場合には、予測式ymax=f(x)によって、P波時の加速度jによって最終的な地震による揺れの大きさ(速度)ymaxが算出される。
次いで、地震動のレベルが一層高くなって、上記勾配gijが上記範囲(1)を超えてS波による範囲(2)内であると判断された場合には、演算部7に受信装置4から当該地震に関する緊急地震速報の情報が入力されているか否かを確認する。そして、この時点で、未だ緊急地震速報の情報が入力されていない場合には、ひとまずS波の予測式ymax=g(x)によって、S波時の加速度jに基づき、最終的な地震による揺れの大きさ(速度)ymaxが算出される。
また、受信装置4が緊急地震速報を受信して、その情報が演算部7に入力されている場合には、先ず当該緊急地震速報の震源位置に係る情報から、上述したように建物1へのP波到達時刻およびP波の継続時間を算出し、上記勾配gijがP波の継続時間内に検知されたものである場合には、ymax=f(x)を用いてP波時の加速度jにより最終的な地震による揺れの大きさ(速度)ymaxが算出される。
これに対して、上記勾配gijがP波の継続時間以降に検知されたものである場合には、S波の予測式ymax=g(x)を用いてS波時の加速度jにより最終的な地震による揺れの大きさ(速度)ymaxが算出される。
そして、上記算出によって予測される最終的な地震による揺れの大きさ(速度)ymaxが、設備機器2における振動許容値(許容速度)を超えた場合には、データ送信部8から設備機器制御用配線11を介して警報信号および設備機器2の制御信号が出力される。
以上説明したように、上記地震動の予測システムにおいては、震源地が近い地震のみならず、例えば図5に示すように、遠い地震に対しても、上述した従来法や緊急地震速報から直接予測した場合と比較して、より地震発生時の早期に、当該地震のS波によって特定の建物1に作用する揺れの大きさを高い精度で予測することができる。
なお、上記実施の形態においては、地震計3において検知する地震動のレベルとして、加速度を用い、最終的な建物1の揺れの速度を予測する場合についてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上記地震動のレベルとして、当該地震動の速度、変位量、SI値もしくは計測震度を用い、建物1に作用する揺れの加速度や変位量等を予測する場合にも、同様に適用することが可能である。
また、上記実施の形態においては、地震計3の接点出力を利用して、当該接点出力に予め数〜10段階の接点レベル(a、b、c、…)を設定し、各々の接点レベルを超えた際に、超えたレベルの接点を出力する場合についてのみ例示したが、これに限るものではなく、RS232やRS422によるシリアル通信やBCD出力もしくはLANによるネットワーク伝送等を用いて、地震計3が予め設定された複数段階のレベルの地震動を検出した際に、各々のレベルを出力するように構成することも可能である。
1 建物(構造物)
2 設備機器
3 地震計
4 緊急地震速報の受信装置
5 解析装置
7 演算部

Claims (3)

  1. 地震発生時に、当該地震のS波による揺れの大きさを予測する構造物またはその地盤の地震動レベルを検出するとともに、検出された上記地震動レベルが予め複数段階に設定された地震動レベルを超えた際に、各々の上記段階において上記地震動レベルを出力する地震計と、上記地震の震源地の情報を含む緊急地震速報を受信する受信手段と、上記地震計から逐次入力される各段階において出力された上記地震動レベルおよび上記緊急地震速報の情報に基づいて、上記揺れの大きさを予測する解析装置とを備えてなり、
    上記解析装置は、予め統計的もしくは解析的に求めておいたP波の地震動レベルに基づく上記揺れの大きさの予測式およびS波の地震動レベルに基づく上記揺れの大きさの予測式が設定されているとともに、入力された上記地震動レベルおよびその前段階における上記地震動レベルの差と、当該地震動レベルの出力時の時刻およびその前段階における上記地震動レベルの出力時の時刻の差から上記地震動レベルの勾配を算出し、当該勾配を予め設定されたP波による勾配の範囲およびS波による勾配の範囲と比較して、
    P波による勾配の範囲内と判断された場合に、上記P波の予測式を用いて上記揺れの大きさを予測するとともに、
    S波による勾配の範囲内と判断された場合に、上記緊急地震速報の情報が入力された後においては、当該情報から上記構造物へのP波到達時刻およびP波の継続時間を算出し、上記勾配がP波の継続時間内の上記地震動レベルによる場合には、上記P波の予測式を用いて上記揺れの大きさを予測し、P波の継続時間以降の上記地震動レベルによる場合には、上記S波の予測式を用いて上記揺れの大きさを予測することを特徴とする地震動の予測システム。
  2. 上記解析装置は、上記地震計から最初の上記地震動レベルが入力された後の所定時間が設定され、上記緊急地震速報の受信前に当該所定時間を経過した場合に、当該経過後上記緊急地震速報を受信するまでの間、上記勾配の比較に依らずに、上記S波の予測式を用いて上記揺れの大きさを予測することを特徴とする請求項1に記載の地震動の予測システム。
  3. 上記解析装置は、上記構造物に設置された機器類の振動許容値に基づく揺れの大きさが設定されているとともに、上記予測された上記揺れの大きさが、上記揺れの大きさの設定値を超えた際に、警報信号または上記機器類の作動を制御する信号を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の地震動の予測システム。
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