JP2013170624A - 電動オイルポンプの制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 電動オイルポンプに対する作動要求に先立って、適切な作動準備と、作動準備完了判定とを行う。
【解決手段】 エンジン1により駆動されて変速装置3の各部にオイルを供給する機械式オイルポンプ7と並列に、変速装置3の少なくとも一部(クラッチ4)にオイルを供給する電動オイルポンプ10が設けられる。電動オイルポンプ10に対する作動要求に先立って、電動オイルポンプ10を極低速の第1の作動準備回転数で回転させ、当該回転数を満たすのを待つ。しかる後、電動オイルポンプ10を比較的高速の第2の作動準備回転数で回転させ、当該回転数を満たした場合に作動準備完了と判定する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、車両用電動オイルポンプの制御装置に関する。
従来の電動オイルポンプとして、車両の動力源である内燃機関により駆動されて車両の変速装置にオイルを供給する機械式オイルポンプと並列に設けられ、適宜の作動要求を受けて、前記変速装置の少なくとも一部(クラッチ)に潤滑・冷却用のオイルを供給するものがある(特許文献1参照)。
特開2007−320353号公報
しかしながら、このように要求に応じて作動する電動オイルポンプにおいては、電動オイルポンプの停止中、電動オイルポンプに支配されるオイル配管内のオイルは、とどまったままとなり、機械式オイルポンプにより頻繁に流動するオイルパン内のオイル温度とは異なる状況となっている場合がある。このため、特に極低温時などは、電動オイルポンプに対する作動要求があったときに、これを作動させようとすると、電動オイルポンプに支配されるオイル配管内のオイルの粘度が高いため、モータが過大な抵抗を受け、作動要求に応えることができない場合があった。
また、電動オイルポンプに対する作動要求に先立って、電動オイルポンプを回転させて性能保証回転数(性能保証流量を満足する回転数)での回転が可能か否か判定することが考えられるが、性能保証回転数は比較的高回転数であるので、極低温時に判定回転数に達するレベルまで回転させることは難しく、電動オイルポンプが作動可能となるまでの時間を短縮することはできない。
本発明は、このような実状に鑑み、電動オイルポンプに対する作動要求に先立って、適切な作動準備と、作動準備完了判定とを行い、その作動準備時間を短縮できるようにすることを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明は、電動オイルポンプに対する作動要求に先立って、電動オイルポンプを第2の作動準備回転数で回転させ、実回転数が第2の作動準備回転数を満たした場合に作動準備完了と判定する作動準備・判定モードと、前記作動準備完了との判定がなされる前であることを少なくとも1つの条件として、電動オイルポンプを前記第2の作動準備回転数より低い第1の作動準備回転数で回転させる低速作動準備モードと、を有する構成とする。
また、前記低速作動準備モードは、当該モードの実行により、少なくとも、実回転数が前記第1の作動準備回転数を満たした場合に、前記作動準備・判定モードへの移行を許可する構成とする。
本発明によれば、電動オイルポンプに対する作動要求に先立って、電動オイルポンプを作動準備完了判定のための第2の作動準備回転数で回転させ、所望の回転が得られた場合に作動準備完了と判定することで、この判定結果を利用して、電動オイルポンプの作動許可を行うことが可能となり、過大な抵抗下での駆動困難を避けた制御とすることができる。
また、作動準備完了との判定前に、電動オイルポンプを前記第2の作動準備回転数より低い第1の作動準備回転数で回転させることにより、電動オイルポンプにより支配されるオイル配管内のオイルを入れ替えて、温度上昇させることができ、これにより作動準備完了判定を早期にクリア可能となり、作動準備時間を短縮し、その後の作動要求に速やかに応えることができる。
また、低速作動準備モードの実行中は、実回転数を監視し、少なくとも、実回転数が第1の作動準備回転数を満たすことを条件として、作動準備・判定モードへ移行するので、低速作動準備モードにて電動オイルポンプが十分に機能していないにもかかわらず作動準備・判定モードに移行して誤判定を生じたりするのを防止でき、作動準備完了判定の信頼性を向上させることができる。
本発明の一実施形態を示す車両用変速装置におけるオイル供給システムの概略図 電動オイルポンプ及びそのオイル配管の配置例を示す概略図 電動オイルポンプを構成するモータ及びインバータの回路構成図 第1実施形態での電動オイルポンプの作動準備ルーチンのフローチャート 第1実施形態での作動準備時のポンプ回転数等の挙動を示す図 第2実施形態での電動オイルポンプの作動準備ルーチンのフローチャート 第2実施形態での作動準備時のポンプ回転数等の挙動を示す図 第3実施形態での電動オイルポンプの作動準備ルーチンのフローチャート 第3実施形態での作動準備時のポンプ回転数等の挙動を示す図 第4実施形態での電動オイルポンプの作動準備ルーチンのフローチャート 第4実施形態での作動準備時のポンプ回転数等の挙動を示す図 ポンプ電流の特性図
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す車両用変速装置におけるオイル供給システムの概略図である。
本車両の動力源であるエンジン(内燃機関)1は、アイドルストップ機能付きであり、所定のアイドルストップ条件にてエンジン1への燃料供給を停止することによりエンジン1を自動停止し、その後、アイドルストップ解除条件の成立によりエンジン1への燃料供給を再開してエンジン1を再始動させる。
このエンジン1の出力軸は、トルクコンバータ2を介して、変速装置3に接続されている。
変速装置3は、クラッチ4と無段変速機5とを含んで構成される。
クラッチ4は、湿式多板クラッチにより構成され、作動油の油圧制御によって締結・解放が制御される。
尚、ここでいうクラッチ4は、詳しくは、前後進切換機構における摩擦係合要素である。前後進切換機構は、例えば、エンジン出力軸と連結したリングギア、ピニオン及びピニオンキャリア、変速機入力軸と連結したサンギアからなる遊星歯車機構と、変速機ケースをピニオンキャリアに固定する後退ブレーキと、変速機入力軸とピニオンキャリアを連結する前進クラッチと、を含んで構成され、車両の前進と後退とを切換える。この場合、前後進切換機構における摩擦係合要素である前進クラッチ及び後退ブレーキが、クラッチ4に相当する。
無段変速機5は、プライマリプーリ5a及びセカンダリプーリ5bと、これらプーリ間に巻き掛けたベルト5cとを含み、プライマリプーリ5aの回転は、ベルト5cを介して、セカンダリプーリ5bへ伝達され、セカンダリプーリ5bの回転は、駆動車輪(図示せず)へ伝達される。
この無段変速機5においては、プライマリプーリ5aの可動円錐板、及び、セカンダリプーリ5bの可動円錐板を、それぞれの作動油の油圧制御によって軸方向に移動させて、各プーリ5a、5bとベルト5cとの接触位置半径を変えることにより、プライマリプーリ5aとセカンダリプーリ5bのプーリ比(回転比)を変化させて、変速比を無段階に変化させることができる。
変速装置3のケース底部のオイルパン6にはオイルが貯留されており、このオイルが機械式オイルポンプ7により吸入加圧され、調圧機構8を介して、クラッチ4及びプーリ5a、5bの各油圧アクチュエータに作動油として供給される。
機械式オイルポンプ7は、変速装置3のケース内に設けられて変速装置3の入力軸により駆動される。従って、機械式オイルポンプ7は実質的には動力源であるエンジン1により駆動される。
調圧機構8は、供給各部(クラッチ4及びプーリ5a、5b)ごとに、リリーフ機能を有する電磁弁を備え、マイクロコンピュータを含んで構成される制御ユニット(C/U)20の制御下で、機械式オイルポンプ7の吐出圧を供給各部の目標圧に調圧して、供給各部に供給する。これにより、車両の前後進の切換えと変速比の制御とがなされる。
機械式オイルポンプ7は、調圧機構8を介してクラッチ4及びプーリ5a、5bに作動油としてオイルを供給する他、変速装置3の各部に潤滑及び冷却用のオイルを供給する。供給されたオイルはオイルパン6に戻されて循環される。
一方、動力源であるエンジン1により駆動される機械式オイルポンプ7とは並列に、電動オイルポンプ10が設けられる。
電動オイルポンプ10は、エンジン1の停止中、従って機械式オイルポンプ7の停止中に、クラッチ4での摩擦熱の発生を軽減すべく、クラッチ4に冷却用のオイルを供給するために設けられる。
図2には電動オイルポンプ及びそのオイル配管の配置例を示してあり、以下、図1及び図2を参照して説明する。
電動オイルポンプ10は、ポンプ部(10)と、これを駆動するモータMと、制御ユニット20の制御下でモータMをPWM制御するインバータINVとを含んで構成される。
そして、この電動オイルポンプ10は、変速装置3のケース外に設けられ、ケース底部のオイルパン6から吸入配管11を介してオイルを吸入し、吐出配管12を介してケース内のクラッチ4に冷却用のオイルを供給する。このため、吐出配管12は、変速装置3のケース回り、すなわちクラッチ4のハウジング4H回りを引き回されて、ハウジング4Hに形成されたオイル入口13に接続される。
ハウジング4H内にはオイル入口13からハウジング中央部へオイルを導くオイル通路(図示せず)が設けられ、ハウジング中央部に供給されたオイルは遠心力で各部へ供給される。
図3には電動オイルポンプ10を構成するモータM及びインバータINVの回路構成を示している。
モータMとしては、3相ブラシレスモータを用いる。これは、回転軸に取付けられ複数の永久磁石が埋め込まれた内側のロータと、3相(U相、V相、W相)コイルを巻回してなる外側のステータとから構成され、ステータ側のコイルに供給する電流による磁界でロータを回転させる。図3ではモータMを簡略化してU相、V相、W相のコイルで示している。
インバータINVは、PWM制御(擬似的に正弦波を得るために一定周期でパルス幅を変調した電圧を発生させる制御)により、電源電圧(直流電圧)を交流電圧に変換してモータMに供給するもので、電源VB側と接地GND側との間に、並列に、U相アームと、V相アームと、W相アームとを備える。
U相アームは、直列に、2つのスイッチング素子Q1、Q2を備える。V相アームも、直列に、2つのスイッチング素子Q3、Q4を備える。W相アームもまた、直列に、2つのスイッチング素子Q5、Q6を備える。
U、V、W各相アームの中間点は、モータMの各一端においてスター結線されたU、V、W各相コイルの他端に接続される。すなわち、U相アームのスイッチング素子Q1、Q2の中間点がU相コイルに接続され、V相アームのスイッチング素子Q3、Q4の中間点がV相コイルに接続され、W相アームのスイッチング素子Q5、Q6の中間点がW相コイルに接続される。
従って、制御ユニット20により、U、V、W各相への正弦波電圧に合わせて、各相アームの電源VB側のスイッチング素子のON期間と接地GND側のスイッチング素子のON期間との比率を制御することにより、擬似的な交流電圧を得て、モータMを駆動することができる。
尚、制御ユニット20には、モータMの駆動制御のため、U、V、W各相アームの接地GND側の共通ライン上に設けた電流検出用抵抗(抵抗値R)21の両端の電位差ΔVが検出器22を介して入力され、これに基づいてポンプ電流Ip=ΔV/Rが検出されるようになっている。また、U、V、W各相アームの中間点の電位Vu、Vv、Vwも検出・入力されるようになっている。
上記のような車両用変速装置のオイル供給システムでは、エンジン1の運転中は機械式オイルポンプ7により変速装置3の各部にオイルを供給しているが、必要により、電動オイルポンプ10に対して作動要求が発せられ、電動オイルポンプ10によりクラッチ4に冷却用のオイルを供給して、クラッチ4の発熱を防止している。
前記電動オイルポンプ10に対する作動要求は、
(1)アイドルストップ条件にてエンジン1が停止し、これに伴って機械式オイルポンプ7が停止した場合、
(2)機械式オイルポンプ7の運転・停止にかかわらず、車両の発進時などにクラッチ4を操作する場合(特にクラッチ4を滑らせながら締結する場合)、すなわち、クラッチ4の冷却要求が高い場合
などに発せられる。
この電動オイルポンプ10には、性能保証油温(例えば−25℃)があり、これ以上の油温で性能が保証されている。従って、性能保証油温未満では、電動オイルポンプ10に対し作動要求が発せられないように、アイドルストップ又は車両の発進を禁止するのが望ましい。
油温の検出手段としては、通常、オイルパン6内に油温センサ30(図1参照)を設けている。
しかし、電動オイルポンプ10により支配されるオイル配管(吸入配管11及び吐出配管12)内の油温は、オイルパン6内の油温とは大きく異なる場合がある。
これは、電動オイルポンプ10は、その停止中、電動オイルポンプ10に支配されるオイル配管11、12内のオイルはとどまったままとなり、機械式オイルポンプ7により頻繁に流動するオイルパン6内の油温とは異なる状況となるからである。
しかも、本実施形態での電動オイルポンプ10は変速装置3のケース外に配置され、電動オイルポンプ10により支配されるオイル配管11、12も変速装置3のケース外を引き回されているため、エンジン1及び変速装置3の暖機の進行により、変速装置3のケース内が暖まったとしても、電動オイルポンプ10及びそのオイル配管11、12は外気に曝されたままであり、冬期の寒冷地では極低温の環境下に置かれたままとなる。
従って、冬期の寒冷地での始動後の暖機中に、最初のポンプ作動要求が発せられたときには、電動オイルポンプ10に支配されるオイル配管11、12内のオイルの粘度が高いため、モータMが過大な負荷を受け、作動要求に応えることができない場合がある。
そこで、電動オイルポンプ10に対し作動要求が発せられたときに、通常回転数での確実な作動を保証するために、作動要求に先立って、電動オイルポンプ10の作動準備を行うようにする。
先ず、低速作動準備モードとして、電動オイルポンプ10を極低速の第1の作動準備回転数で回転させる。すなわち、電動オイルポンプ10を過大な負荷とならないように極低速で時間をかけて回転させ、オイルパン6内の比較的温かいオイルをオイル配管11、12内に流して、オイル配管11、12内のオイルを入れ替え、オイル配管11、12内の油温を上昇させる。
かかる低速作動・準備モードは、電動オイルポンプ10の実回転数が第1の作動準備回転数を満たすことを条件として終了し、次の作動準備・判定モードへの移行を許可する。
次の作動準備・判定モードでは、オイルの入れ替えによる作動準備が完了したことを判定するため、電動オイルポンプ10を比較的高速の第2の作動準備回転数で回転させ、実回転数が第2の作動準備回転数を満たした場合に作動準備完了と判定する。そして、作動準備完了判定後に電動オイルポンプ10の作動を許可するようにする。
尚、低速作動準備モードと作動・準備判定モードとは、基本的には、(1)低速作動準備モード、(2)作動準備・判定モードの順とし、作動準備完了との判定が得られなかった場合は、これらを(1)、(2)の順で繰り返すが、冷機状態でない場合(暖機完了状態の場合)は、最初に比較的高速の作動準備・判定モードを実施し、作動準備完了との判定が得られなかった場合に、低速作動準備モードを実施し、その後に再度、作動準備・判定モードを実施するようにしてもよい。
次に制御ユニット20により実行される電動オイルポンプ10の作動準備ルーチンについてフローチャートにより説明する。
図4は第1実施形態での電動オイルポンプ10の作動準備ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは、電源投入直後に実行され、その後も所定時間ごとに実行される。但し、時間割込みとする他、初期油温に対して現油温が高くなっている場合(油温上昇の確認後)に実行するようにしてもよい(後述する第2〜第4実施形態のフローチャートについても同様)。また、図5は第1実施形態での作動準備時のポンプ回転数等の挙動を示しており、併せて参照する。
S101では、所定の作動準備開始条件が成立しているか否かを判定する。ここでいう作動準備開始条件とは、基本的には、電源投入直後で電動オイルポンプ10の作動準備が完了していない場合(作動準備完了フラグ=0の場合)である。他には、作動準備完了フラグ=1ではあるが、前回の作動準備完了後、電動オイルポンプ10に対する作動要求がないまま所定時間以上経過、又は、前回の電動オイルポンプ10に対する作動要求後、所定時間以上経過し、かつ、外気温センサにより検出される外気温が所定値以下の場合なども該当する。
このような作動準備開始条件が成立した場合は、必要により作動準備完了フラグをリセットしてから、作動準備のため、S104へ進む。作動準備開始条件が成立しない場合は、処理を終了する。尚、S102は省略可能な処理ため点線で記してあり、後述する。
S104では、低速作動準備モード(図5には低速モードと略記)を開始すべく、電動オイルポンプ10の目標回転数を第1の作動準備回転数(作動準備回転数1)に設定して、回転指令1を与える。第1の作動準備回転数は、後述する第2の作動準備回転数(性能保証流量を満足する回転数以上に設定される)より十分に低い回転数で、例えば500rpmである。
S105では、実回転数≧所定回転数1が成立したか否かを判定する。ここでの所定回転数1は、第1の作動準備回転数と同じ又はこれに近い回転数である。この判定で、実回転数<所定回転数1の間は、回転指令1を継続し、実回転数≧所定回転数1が成立した場合(すなわち、第1の作動準備回転数を満たした場合)は、その成立時点でS107へ進む。
S107では、S111〜S113の作動準備・判定モード(図5には判定モードと略記)を未経験か否かを判定する。フローチャートでは省略したが、S111の実行により経験フラグをセットするようにし、このフラグの値によって判定すればよい。判定モードを未経験の場合は、直ちにS111へ移行する。判定モードを経験済みの場合(前回失敗した場合)は、S109へ進む。
S109では、回転指令1から所定時間(例えば15秒)経過したか否かを判定し、所定時間経過した時点で、S111へ移行する。
S111では、作動準備・判定モードを開始すべく、電動オイルポンプ10の目標回転数を第2の作動準備回転数(作動準備回転数2)に設定して、回転指令2を与える。第2の作動準備回転数は、性能保証流量を満足する回転数以上に設定され、第1の作動準備回転数より十分に高い回転数で、例えば1200rpmである。
S112では、回転指令2から所定時間2内に、実回転数≧所定回転数2が成立したか否かを判定する。ここでの所定回転数2は、第2の作動準備回転数と同じ又はこれに近い、性能保証流量を満足する回転数である。この判定で、所定時間2内に実回転数≧所定回転数2が成立した場合は、その成立時点でS113へ進み、所定時間2経過しても実回転数≧所定回転数2が成立しない場合は、その経過時点でS104へ戻る。
S113では、実回転数≧所定回転数2の成立後、この状態を、所定時間3継続したか否かを判定する。この判定で、実回転数≧所定回転数2を所定時間3継続した場合は、その継続時点でS114へ進み、実回転数≧所定回転数2を継続できなかった場合は、所定回転数2を割り込んだ時点でS104へ戻る。
このように、第2の作動準備回転数での回転指令2の後、S112、S113にて、所定時間2内に実回転数が第2の作動準備回転数近傍の所定回転数2に達し、実回転数≧所定回転数2の状態を所定時間3継続した場合は、第2の作動準備回転数を満たしているとみなして、S114、S115へ進む。
S114では、作動準備作業の終了のため、目標回転数を0にして、停止指令を与える。
S115では、作動準備完了と判定し、作動準備完了フラグを1にセットする。この作動準備完了フラグのセットにより、電動オイルポンプ10の通常作動が許可される。これにより、アイドルストップ又は車両の発進も許可される。
一方、S112の判定で、所定時間2経過しても実回転数≧所定回転数2が成立しない場合、又は、S113での判定で、実回転数≧所定回転数2を所定時間3継続できなかった場合は、S104へ戻る。すなわち、低速側の第1の作動準備回転数での低速作動準備モード(S104、S105)を再トライする。そして、しかる後に、高速側の第2の作動準備回転数での作動準備・判定モード(S111〜S113)を再トライする。
S102の処理について説明する。
S102では、作動準備開始条件成立(S101)の後、冷機状態(暖機完了前)か否かを判定する。これはオイルパン6内の油温センサ30により検出される油温を所定値と比較することにより行う。この判定で、冷機状態の場合は、S104へ進み、冷機状態でない場合は、S111へ進む。これは、冷機状態の場合は、(1)低速作動準備モード(S104〜S109)、(2)作動準備・判定モード(S111〜S113)の順で行わせ、冷機状態でない場合は、作動準備・判定モード(S111〜S113)を先行させるためである。
本実施形態によれば、電動オイルポンプ10に対する作動要求に先立って、電動オイルポンプ10を第2の作動準備回転数で回転させ、実回転数が第2の作動準備回転数を満たした場合に作動準備完了と判定する作動準備・判定モード(作動準備・判定手段)と、前記作動準備完了との判定がなされる前であることを少なくとも1つの条件として、電動オイルポンプ10を前記第2の作動準備回転数より低い第1の作動準備回転数で回転させる低速作動準備モード(低速作動準備手段)と、を備える構成により、次の(1)、(2)のような効果が得られる。
(1)電動オイルポンプ10に対する作動要求に先立って、電動オイルポンプ10を作動準備完了判定のための第2の作動準備回転数で回転させ、所望の回転が得られた場合に作動準備完了と判定することで、この判定結果を利用して、電動オイルポンプ10の作動許可、ひいてはアイドルストップ又は車両の発進の実施許可を行うことなどが可能となり、過大な抵抗下での駆動困難を避けた制御とすることができる。
(2)作動準備完了との判定前に、電動オイルポンプ10を前記第2の作動準備回転数より低い第1の作動準備回転数で回転させることにより、電動オイルポンプ10により支配されるオイル配管11、12内のオイルを入れ替えて、温度上昇させることができ、これにより作動準備完了判定を早期にクリア可能となり、作動準備時間を短縮し、その後の作動要求に速やかに応えることができる。
また、本実施形態によれば、低速作動準備モードでは、当該モードの実行により、少なくとも、実回転数が第1の作動準備回転数を満たした場合に、作動準備・判定モードへの移行を許可する構成としたことにより、次のような効果が得られる。
低速作動準備モードの実行中は、電動オイルポンプ10の実回転数を監視し、少なくとも、実回転数が第1の作動準備回転数を満たすことを条件として、作動準備・判定モードへ移行するので、低速作動準備モードにて電動オイルポンプ10が十分に機能していないにもかかわらず作動準備・判定モードに移行して誤判定を生じたりするのを防止でき、作動準備完了判定の信頼性を向上させることができる。
例えば、油温−40℃の条件では、電動オイルポンプ10が十分に回転していないにもかかわらず、所定時間回転指令を与えた時点で、高回転の作動準備・判定モードへ移行すると、電動オイルポンプ10がオイルを吸入せずに空回りして、誤判定を生じる。かかる誤判定により作動準備完了とすると、目標流量に対し流量不足となる。この点、低速作動準備モードにて第1の作動準備回転数を満たしていることを確認してから、高回転の作動準備・判定モードへ移行することで、誤判定を極力防止できる。
特に、基本的態様として、低速作動準備モード、作動準備・判定モードの順とし、作動準備完了との判定が得られなかった場合は、これらを順に繰り返す手法とすることにより、次のような効果が得られる。
最初に低速作動準備モードを実施することにより、極低速の第1の作動準備回転数にて電動オイルポンプ10が回転し、電動オイルポンプ10に支配されるオイル配管11、12内に、オイルパン6内の比較的暖かなオイルが供給され、オイル配管11、12内にとどまっていたオイルが押し出されることで、オイルが入れ替えられる。
このとき、電動オイルポンプ10は極低速で時間をかけて回転させるため、モータMの負荷が過大となることはない。また、極低温の始動直後に作動準備を行うとしても、極低速回転で電力消費は少なくて済む。
そして、オイルの入れ替えによりオイル配管11、12内の油温が上昇し、粘性が低下することで、高速回転が可能となり、モータの脱調も低減できる。従って、作動準備・判定モードの実施が容易となり、作動準備完了判定を早期にクリアできるようになる。
そして、作動準備完了と判定した後に、電動オイルポンプ10の通常回転数での作動を許可することで、作動準備完了前にアイドルストップ制御に関連して電動オイルポンプ10に対する作動要求が発せられるのを回避できる。
また、変速装置3の冷機状態(あるいは暖機完了状態)を検出する手段(油温センサ30)を利用し、冷機状態では、低速作動準備モード、作動準備・判定モードの順とし、作動準備完了との判定が得られなかった場合は、これらを順に繰り返すが、冷機状態でない場合は、最初に比較的高速の作動準備・判定モードを実施し、作動準備完了との判定が得られなかった場合に、低速作動準備モードを実施し、その後に再度、作動準備・判定モードを実施する手法とすることにより、冷機状態でない場合(暖機完了状態の場合)に作動準備時間を確実に短縮することができる。その一方、冷機状態の場合は、オイル粘度が高く、ポンプ負荷が大きくなり、作動準備・判定モードでの第2の作動準備回転数(判定回転数)を維持できないことが予想されるため、低速作動準備モードを先行させることで、判定のやり直しによる作動準備時間の長期化を防止できる。
図6は第2実施形態での電動オイルポンプ10の作動準備ルーチンのフローチャートである。本ルーチンも、電源投入直後に実行され、その後も所定時間ごとに実行される。また、図7は第2実施形態での作動準備時のポンプ回転数等の挙動を示しており、併せて参照する。
図6のフローチャートについては、図4のフローチャートと同内容のステップには同一符号を付して、異なる点を説明する。異なる点は、低速作動準備モード(S104〜S109)であり、特にS106の処理が追加されている。
S104では、低速作動準備モードを開始すべく、電動オイルポンプ10の目標回転数を第1の作動準備回転数(作動準備回転数1)に設定して、回転指令1を与える。
S105では、実回転数≧所定回転数1が成立したか否かを判定する。この判定で、実回転数<所定回転数1の間は、回転指令1を継続し、実回転数≧所定回転数1が成立した場合(すなわち、第1の作動準備回転数を満たしている場合)は、その成立時点でS106へ進む。
S106では、電動オイルポンプ10の実電流を検出し、電流が所定のしきい値以下になったか否かを判定する。この判定で、実電流>しきい値の間は、回転指令1を継続し、実電流≦しきい値が成立した場合は、その成立時点でS107へ進む。
すなわち、第1の作動準備回転数での回転指令1の後、実回転数が第2の作動準備回転数を満たし、かつ電動オイルポンプ10の電流が所定のしきい値以下に低下した場合に、S107へ進む。
S107では、作動準備・判定モードを未経験か否かを判定する。判定モードを未経験の場合は、直ちにS111(作動準備・判定モード)へ移行する。判定モードを経験済みの場合は、S109へ進む。
S109では、回転指令1から所定時間(例えば15秒)経過したか否かを判定し、所定時間経過した時点で、S111(作動準備・判定モード)へ移行する。
特に本実施形態によれば、低速作動準備モードでは、当該モードの実行により、電動オイルポンプ10の実回転数が第1の作動準備回転数を満たし、かつ、電動オイルポンプ10の実電流が所定のしきい値以下に低下した場合に、作動準備・判定モードへの移行を許可する構成としたことにより、次のような効果が得られる。
図12にポンプ電流(電動オイルポンプのモータ電流)の特性を示すように、ポンプ電流は、ポンプ回転数の増大に伴って大となるが、油温の上昇に伴って負荷が低減されることから小さくなる。従って、ポンプ回転数が一定(例えば第1の作動準備回転数)であれば、油温の上昇に伴って負荷が小さくなり、ポンプ電流は低下する。従って、ポンプ電流が所定のしきい値以下に低下することで、電動オイルポンプ10が高回転の作動準備・判定モードをクリアする余力があるとみなすことができる。
このように、電動オイルポンプ10の回転数を監視するだけでなく、電流を監視して、余力があるか否かをチェックし、余力がある状態で、高回転での作動準備・判定モードへの移行を許可することにより、作動準備完了判定の信頼性を向上させることができる。
また、ポンプ電流=しきい値のときは、油温=所定値になったときであるので、目標とする温度(例えば性能保証油温の−25℃)に対応するようにポンプ電流のしきい値を定めておけば、ポンプ電流の検出によって目標温度となったことを的確に検出することができる。
このようにポンプ電流に基づいて、電動オイルポンプ10に支配されるオイル配管11、12内の温度上昇、言い換えればオイルの入れ替わりを検出して、作動準備を終了させるため、作動準備(時間)を過不足なく実施することが可能となり、消費電力の無駄排除、発熱抑制を図ることができる。
言い換えれば、オイルの温度(粘性)に依存するポンプ負荷に対応してポンプ電流が変化することから、目標回転数でのポンプ電流よりオイル温度の上昇を検知して作動準備完了判定を行うことにより、オイル配管内に油温センサを追加することなく、的確な作動準備完了判定を行うことができる。
尚、単にポンプ電流≦しきい値の判定をするのではなく、ポンプ電流>しきい値を経験したことを確認してから、ポンプ電流≦しきい値の判定を行うようにすると更によい。
また、ポンプ電流としては、図3に示されるように、U、W、V各相アームの接地GND側の共通ライン上の電流を検出する他、U、W、V各相の相電流を直接検出するようにしてもよい。
図8は第3実施形態での電動オイルポンプ10の作動準備ルーチンのフローチャートである。本ルーチンも、電源投入直後に実行され、その後も所定時間ごとに実行される。また、図9は第3実施形態での作動準備時のポンプ回転数等の挙動を示しており、併せて参照する。
図8のフローチャートについては、図4のフローチャートと同内容のステップには同一符号を付して、異なる点を説明する。異なる点は、図4のフローチャートに対し、S103の処理とS110の処理が追加されている。
すなわち、低速作動準備モード(S104〜S109)の処理に先立って、S103の処理が追加され、S103では、電流制限値を小側に切り替える。
また、作動準備・判定モード(S111〜S113)の処理に先立って、S110の処理が追加され、S110では、電流制限値を元の大側に復帰させる。
電動オイルポンプ10の制御においては、実回転数と目標回転数とを比較して、これらが一致するように、電流をフィードバック制御しているが、この電流に対し、予め制限値を設けて、電流を制限している。
このような前提の下に、本実施形態では、前記制限値を可変設定可能として、前記制限値を、低速作動準備モード中に、作動準備・判定モード中と比較して、より小側に設定するようにしている。
本実施形態によれば、電動オイルポンプ10の電流を所定の制限値以下に制限するポンプ電流制限手段を有し、その制限値を低速作動準備モード中に作動準備・判定モードと比較して、より小さな値に設定することにより、低速作動準備モード中の発熱を低減でき、耐熱性を向上させることができる。すなわち、低速作動準備モード中に電流を制限しない場合は、このモード中に温度限界に達して、より高回転側での作動準備・判定モードの実施が困難となる恐れがある。そこで、低速作動準備モード中は電流を制限して発熱を抑制し、作動準備・判定モードの実施が困難となるのを防止する。
図10は第4実施形態での電動オイルポンプ10の作動準備ルーチンのフローチャートである。本ルーチンも、電源投入直後に実行され、その後も所定時間ごとに実行される。また、図11は第4実施形態での作動準備時のポンプ回転数等の挙動を示しており、併せて参照する。
図10のフローチャートについては、図6のフローチャートと同内容のステップには同一符号を付して、異なる点を説明する。異なる点は、図6のフローチャートに対し、S103の処理とS110の処理が追加されている。
すなわち、低速作動準備モード(S104〜S109)の処理に先立って、S103の処理が追加され、S103では、電流制限値を小側に切り替える。
また、作動準備・判定モード(S111〜S113)の処理に先立って、S110の処理が追加され、S110では、電流制限値を元の大側に復帰させる。
すなわち、本実施形態は、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせたものであり、これらの実施形態と同様の効果が得られる。尚、図11から解るように、電流制限値>しきい値とすることは言うまでもない。
次に本作動準備制御の実施条件などに関し更に言及する。
電動オイルポンプの作動準備のための駆動要求時ないし駆動中に電源電圧が所定値未満となった場合は、駆動を停止又は抑制する。この際、バッテリの特性上、外気温等が低温な場合は、電源電圧に対する閾値を高めてもよい。
すなわち、本システムの電源は、通常エンジン始動用と共用であり、次回始動が困難となることが予想される場合は、駆動を停止する。特にアイドルストップ中であれば、通常はその後に再始動されるが、この再始動が困難となるからである。ここで、エンジン回転中はオルタネータより電力供給され、バッテリの状態(低温始動で放電がかなり深い場合など)はわかりにくいことが多く、アイドルストップ後の電圧状態で判断すると適切に行いやすい。
電動オイルポンプの供給先の要求が高い、例えば緊急を要する場合は、ポンプの動作許可条件にかかわらず、又は緩和して駆動する。この際は、仕事量関係(電流対供給量等)の異常判断は緩和するか、停止する。
すなわち、極低温下で牽引状態で登坂発進するといったような高負荷発進の場合、外気温、油温等が低くとも、発進クラッチが危険な温度状態となる場合があり、この際は条件にかかわらず、又は緩和して駆動を行う。この際、高粘度オイルや各部フリクション等で通常の仕事量関係の診断は異常値となる可能性が高いため、診断を緩和(判定用の閾値を変えるなど)、又は診断を停止する。
尚、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
例えば、図示の実施形態では、電動オイルポンプ10は、変速装置3のうちクラッチ4に冷却用のオイルを供給する構成としたが、これに限るものではなく、変速装置3の少なくとも一部に、作動油圧としてあるいは潤滑・冷却用として、オイルを供給する構成としてもよい。
また、図示の実施形態では、機械式オイルポンプ7と電動オイルポンプ10の吐出側の配管は、完全に別経路としたが、チェック弁などにより逆流を防止しつつ、合流させるようにしてもよい。但し、この場合は、電動オイルポンプ10の吐出圧がチェック弁などの開弁圧を上回るように回転数を設定するなどする必要がある。
1 エンジン
2 トルクコンバータ
3 変速装置
4 クラッチ
4H ハウジング
5 無段変速機
5a プライマリプーリ
5b セカンダリプーリ
5c ベルト
6 オイルパン
7 機械式オイルポンプ
8 調圧機構
10 電動オイルポンプ(M:モータ、INV:インバータ)
11 吸入配管
12 吐出配管
13 オイル入口
20 制御ユニット
21 電流検出用抵抗
22 検出器
30 油温センサ

Claims (3)

  1. 車両の動力源である内燃機関により駆動されて車両の変速装置にオイルを供給する機械式オイルポンプと並列に設けられ、前記変速装置の少なくとも一部にオイルを供給する電動オイルポンプの制御装置であって、
    前記電動オイルポンプに対する作動要求に先立って、前記電動オイルポンプを第2の作動準備回転数で回転させ、実回転数が第2の作動準備回転数を満たした場合に作動準備完了と判定する作動準備・判定モードと、
    前記作動準備完了との判定がなされる前であることを少なくとも1つの条件として、前記電動オイルポンプを前記第2の作動準備回転数より低い第1の作動準備回転数で回転させる低速作動準備モードと、を有し、
    前記低速作動準備モードは、当該モードの実行により、少なくとも、実回転数が前記第1の作動準備回転数を満たした場合に、前記作動準備・判定モードへの移行を許可する構成としたことを特徴とする、電動オイルポンプの制御装置。
  2. 前記低速作動準備モードは、当該モードの実行により、実回転数が前記第1の作動準備回転数を満たし、かつ、前記電動オイルポンプの実電流が所定のしきい値以下に低下した場合に、前記作動準備・判定モードへの移行を許可する構成としたことを特徴とする、請求項1記載の電動オイルポンプの制御装置。
  3. 前記電動オイルポンプの電流を所定の制限値以下に制限するポンプ電流制限手段を有し、前記制限値は、前記低速作動準備モード中に、前記作動準備・判定モード中と比較して、より小さな値に設定されることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の電動オイルポンプの制御装置。
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