JP2013166428A - タイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリアミド系熱可塑性エラストマーで形成された環状のタイヤケース17と、80℃におけるガス透過係数が2.0×10−15cm3・cm/(cm2・s・Pa)以下のガス保持層2Aと、をタイヤ10が有する。
【選択図】図1
Description
例えば、特許文献1及び特許文献2には、熱可塑性の高分子材料を用いて成形された空気入りタイヤが開示されている。
しかし、熱可塑性の高分子材料を用いたタイヤは柔軟性に富むものの、タイヤ中の空気等に対するガス保持特性に関しては未だ改良の余地がある。
また、従来の空気入り加硫タイヤでは、ガス保持特性を向上させるために、IIR系ゴム(イソブテンとイソプレンとのゴム状共重合体(ブチルゴム))をガス保持層として利用している。しかし、IIR系ゴムで形成されたガス保持層は重量があり、軽量化を目的の一つとする高分子材料を用いたタイヤには適していない。また、高分子材料を用いたタイヤにIIR系ゴムで形成されたガス保持層を設ける場合、ガス保持層とタイヤ骨格体とを接着するために加硫接着剤を用いる必要がある。このようにガス保持層の接着に加硫接着剤を用いると、加硫成型時に制約を受けるなど製造工程において制限が多くなってしまう。
前記ガス保持層の4%引張り伸張時の応力は、50MPa以下が好ましく、40MPa以下が更に好ましい。
以下、前記ガス保持層の態様及びこれを構成する材料、並びに、本発明におけるタイヤ骨格体を構成する樹脂材料について説明し、続いて本発明のタイヤの具体的な実施形態について図を用いて説明する。
前記ガス保持層は、80℃におけるガス透過係数(以下、単に「ガス透過係数」と称する。)が2.0×10−15cm3・cm/(cm2・s・Pa)以下の層である。前記ガス等価係数が2.0×10−15cm3・cm/(cm2・s・Pa)より大きいと、タイヤ構成部材として十分な柔軟性を発揮する膜厚でタイヤ骨格体のガス保持特性を十分に向上させることができない。タイヤ骨格体のガス保持特性の観点から、前記ガス保持層のガス透過係数は、1.0×10−15cm3・cm/(cm2・s・Pa)以下が好ましい。また、ガス保持層のガス保持特性が高いと、水分に対するバリア性も高くなるという利点がある。
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体中、エチレンの組成割合が多くビニルアルコールの組成割合が少なくなるとその性状はポリエチレンに近くなる。このため、EVOH自体の柔軟性は向上するものの、融点が下がり、更にガスバリア性が損なわれる。一方、エチレンの組成割外が少なく、ビニルアルコールの組成割合が多くなると柔軟性は損なわれるが、融点が上昇し、ガスバリア性が大きく向上する。これらEVOHの柔軟性及びガスバリア性の両立を考慮すると、EVOH中のエチレン含量は、28〜40モル%程度であることが好ましい。
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体としては、1種を単独で用いても良く、分子量、組成比等の異なるものの2種以上を組み合わせて用いても良い。
前記ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、後述のポリアミド系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを構成するポリアミドを挙げることができる。また、前記ガス保持層に用いられるポリアミド系熱可塑性樹脂としては、ガスバリア性の観点から、ε-カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(ポリアミド6)又はメタキシレンジアミンを構成単位として有するポリアミド(ポリアミドMX)が好ましく、更に耐熱性を考慮すると、ポリアミド6が好ましい。
次に、タイヤ骨格体を形成する樹脂材料について説明する。ここで、「樹脂」とは、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)及び熱硬化性樹脂を含む概念であり、加硫ゴムは含まない。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、エステル樹脂等が挙げられる。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、エステル樹脂等が挙げられる。
また、以下樹脂材料において同種とは、エステル系同士、スチレン系同士などの形態を指す。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとは、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等や、特開2004−346273号公報に記載のポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。
[一般式(1)中、R1は、炭素数2〜20の炭化水素の分子鎖、または、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。]
[一般式(2)中、R2は、炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、または、炭素数3〜20のアルキレン基を表す。]
前記一般式(1)または一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω−アミノカルボン酸やラクタムが挙げられる。また、前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω−アミノカルボン酸やラクタムの重縮合体や、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
前記ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどの炭素数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることができる。また、ジカルボン酸は、HOOC−(R3)m−COOH(R3:炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、m:0または1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタムまたはウデカンラクタムを開環重縮合したポリアミドを好ましく用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを意味する。
[一般式(3)中、xおよびzは、1〜20の整数を表す。yは、4〜50の整数を表す。]
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリスチレンがハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。前記ハードセグメントを形成するポリスチレンとしては、例えば、公知のラジカル重合法、イオン性重合法で得られるものが好適に使用でき、例えば、アニオンリビング重合を持つポリスチレンが挙げられる。
また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、5000〜1000000が好ましく、10000〜800000が更に好ましく、30000〜500000が特に好ましい。更に、前記ハードセグメント(x)およびソフトセグメント(y)との体積比(x:y)は、成形性の観点から、5:95〜80:20が好ましく、10:90〜70:30が更に好ましい。
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン系共重合体[SBS(ポリスチレン−ポリ(ブチレン)ブロック−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン)]、スチレン−イソプレン共重合体[ポリスチレン−ポリイソプレンブロック−ポリスチレン)、スチレン−プロピレン系共重合体[SEP(ポリスチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック)、SEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEB(ポリスチレン(エチレン/ブチレン)ブロック)等が挙げられる。
前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリウレタンが物理的な凝集によって疑似架橋を形成しているハードセグメントを構成し、他のポリマーが非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられ、例えば、下記式Aで表される単位構造を含むソフトセグメントと、下記式Bで表される単位構造を含むハードセグメントとを含む共重合体として表すことができる。
[前記式中、Pは、長鎖脂肪族ポリエーテルまたは長鎖脂肪族ポリエステルを表す。Rは、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素を表す。P’は、短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、または、芳香族炭化水素を表す。]
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
また、前記Rで表される脂環族炭化水素を含むジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネートおよび4,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。更に、前記Rで表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジイソシアネート化合物としては例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートが挙げられる。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
また、前記P’で表される脂環族炭化水素を含む脂環族ジオール化合物としては、例えば、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,3−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、およびシクロヘキサン−1,4−ジメタノール等が挙げられる。
更に、前記P’で表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジオール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、クロロヒドロキノン、ブロモヒドロキノン、メチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、フェノキシヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,4−ジヒドロキシナフタリン、および2,6−ジヒドロキシナフタリン等が挙げられる。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、特開平5−331256に記載の熱可塑性ポリウレタンを用いることができる。
前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとして、具体的には、芳香族ジオールと芳香族ジイソシアネートとからなるハードセグメントと、ポリ炭酸エステルからなるソフトセグメントの組合せが好ましく、トリレンジイソシアネート(TDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、TDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、TDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、MDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、MDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体が好ましく、TDI/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエステルポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体が更に好ましい。
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリオレフィンが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、前記ポリオレフィン、他のポリオレフィン、ポリビニル化合物)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。前記ハードセグメントを形成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン−α−オレフィンランダム共重合体、オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、例えば、プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、1−ブテン−4−メチル−ペンテン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
また、エチレンとプロピレンといったように2種以上のポリオレフィン樹脂を組み合わせて使用してもよい。また、前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー中のポリオレフィン含率は、50質量%以上100質量%以下が好ましい。
更に、前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品のプライムポリマー製の「プライムTPO」シリーズ(例えば、E−2900H、F−3900H、E−2900、F−3900、J−5900、E−2910、F−3910、J−5910、E−2710、F−3710、J−5910、E−2740、F−3740、R110MP、R110E、T310E、M142E等)等も用いることができる。
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリエステルが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリエステルまたはポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。
前記ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、プリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
前記脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体等が挙げられる。
前記脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。
これらの脂肪族ポリエーテルおよび脂肪族ポリエステルのなかでも、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性の観点から、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが好ましい。
前記「熱可塑性エラストマーを酸変性してなるもの」とは、熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させることをいう。例えば、酸性基を有する不飽和化合物として、不飽和カルボン酸(一般的には、無水マレイン酸)を用いるとき、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、不飽和カルボン酸の不飽和結合部位を結合(例えば、グラフト重合)させることが挙げられる。
前記樹脂材料の融点としては、通常100℃〜350℃程度であるが、タイヤの生産性の観点から100〜250℃程度が好ましく、100℃〜200℃が更に好ましい。
また、タイヤの耐久性や生産性を向上させることができる。前記樹脂材料には、所望に応じて、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ)、老化防止剤、オイル、可塑剤、発色剤、耐候剤等の各種添加剤を含有(ブレンド)させてもよい。
以下に、図面に従って本発明のタイヤの第1の実施形態に係るタイヤを説明する。
本実施形態のタイヤ10について説明する。本実施形態においては、タイヤケース10の径方向最内側にポリアミド系熱可塑性樹脂(ポリアミド6)によって構成されたガス保持層が設けられている。図1(A)は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。図1(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。図1に示すように、本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
また、本実施形態では、タイヤケース半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤケース半体17Aと他方のタイヤケース半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤケース半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットもある。
(タイヤケース成形工程)
まず、薄い金属の支持リングに支持されたタイヤケース半体同士を互いに向かい合わせる。次いで、タイヤケース半体の突き当て部分の外周面と接するように図を省略する接合金型を設置する。ここで、前記接合金型はタイヤケース半体Aの接合部(突き当て部分)周辺を所定の圧力で押圧するように構成されている。次いで、タイヤケース半体の接合部周辺を、タイヤケースを構成する熱可塑性樹脂材料の融点以上で押圧する。タイヤケース半体の接合部が接合金型によって加熱・加圧されると、前記接合部が溶融しタイヤケース半体同士が融着しこれら部材が一体となってタイヤケース17が形成される。尚、本実施形態においては接合金型を用いてタイヤケース半体の接合部を加熱したが、本発明はこれに限定されず、例えば、別に設けた高周波加熱機等によって前記接合部を加熱したり、予め熱風、赤外線の照射等によって軟化または溶融させ、接合金型によって加圧してタイヤケース半体を接合させてもよい。
次に、補強コード巻回工程について図4を用いて説明する。図4は、コード加熱装置、およびローラ類を用いてタイヤケースのクラウン部に補強コードを埋設する動作を説明するための説明図である。図4において、コード供給装置56は、補強コード26を巻き付けたリール58と、リール58のコード搬送方向下流側に配置されたコード加熱装置59と、補強コード26の搬送方向下流側に配置された第1のローラ60と、第1のローラ60をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第1のシリンダ装置62と、第1のローラ60の補強コード26の搬送方向下流側に配置される第2のローラ64と、および第2のローラ64をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第2のシリンダ装置66と、を備えている。第2のローラ64は、金属製の冷却用ローラとして利用することができる。また、本実施形態において、第1のローラ60または第2のローラ64の表面は、溶融または軟化したポリアミド系熱可塑性エラストマーの付着を抑制するためにフッ素樹脂(本実施形態では、テフロン(登録商標))でコーティングされている。なお、本実施形態では、コード供給装置56は、第1のローラ60または第2のローラ64の2つのローラを有する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、何れか一方のローラのみ(即ち、ローラ1個)を有している構成でもよい。
次に、タイヤケース17を、図示を省略するブロー成型装置に設置する。次いで、溶融したポリアミド6をダイスから押出し、タイヤケース17の径方向内側の全面にポリアミド6の層が形成されるようにブロー成形を行う。この際、溶融したポリアミド6の押出量は、上述のガス保持層2Aの膜厚100μmとなるように決定される。これによってタイヤケース17の径方向内側にガス保持層2Aが形成される。尚、前記ブロー成形は公知の方法に準じて行うことができる。
本実施形態のタイヤ10は、タイヤケース17Aの径方向内側にガス透過係数は2.0×10−15cm3・cm/(cm2・s・Pa)のガス保持層2Aが形成されているため、タイヤ10のガス保持特性を向上させることができる。このため、本実施形態のタイヤ10はリム20に組み込んだ際、タイヤ10内部に充填されるガスの保持特性が高い。
このように補強コード層28が、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含んで構成されていると、補強コード26をクッションゴムで固定する場合と比してタイヤケース17と補強コード層28との硬さの差を小さくできるため、更に補強コード26をタイヤケース17に密着・固定することができる。これにより、上述のエア入りを効果的に防止することができ、走行時に補強コード部材が動くのを効果的に抑制することができる。
更に、補強コード26がスチールコードの場合に、タイヤ処分時に補強コード26を加熱によってポリアミド系熱可塑性エラストマーから容易に分離・回収が可能であるため、タイヤ10のリサイクル性の点で有利である。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは加硫ゴムに比して損失係数(Tanδ)が低いため、補強コード層28がポリアミド系熱可塑性エラストマーを多く含んでいると、タイヤの転がり性を向上させることができる。更には、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは加硫ゴムに比して、面内せん断剛性が大きく、タイヤ走行時の操安性や耐摩耗性にも優れるといった利点がある。
さらに、ビード部12には、金属材料からなる環状のビードコア18が埋設されていることから、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リム20に対してタイヤケース17、すなわちタイヤ10が強固に保持される。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
次に、図面に従って本発明のタイヤの製造方法及びタイヤの第2実施形態について説明する。本実施形態においては、タイヤケース10の径方向最内側から2番目の層に、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)によって構成されたガス保持層が設けられている。本実施形態のタイヤは、上述の第1実施形態と同様に、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。このため、以下の図において、前記第1実施形態と同様の構成については同様の番号が付される。また、図5(A)におけるM領域の拡大図(図6)に示されるように、ガス保持層2Aが設けられている。図6は、本実施形態のガス保持層を説明するための拡大図である。
(骨格形成工程)
まず、上述の第1実施形態と同様にして、タイヤケース半体17Aを形成し、これを接合金型によって加熱・押圧し、タイヤケース17を形成する。
本実施形態におけるタイヤの製造装置は、上述の第1実施形態と同様であり、上述の第1実施形態の図4に示すコード供給装置56において、リール58にコード部材26Aを被覆用樹脂材料27(本実施形態では熱可塑性材料)で被覆した断面形状が略台形状の被覆コード部材26Bを巻き付けたものが用いられる。
次に、図示を省略するブラスト装置にて、タイヤケース17の外周面17Sに向け、タイヤケース17側を回転させながら、外周面17Sへ投射材を高速度で射出する。射出された投射材は、外周面17Sに衝突し、この外周面17Sに算術平均粗さRaが0.05mm以上となる微細な粗化凹凸96を形成する。
このようにして、タイヤケース17の外周面17Sに微細な粗化凹凸96が形成されることで、外周面17Sが親水性となり、後述する接合剤の濡れ性が向上する。
次に、粗化処理を行なったタイヤケース17の外周面17Sに接合剤を塗布する。
なお、接合剤としては、トリアジンチオール系接着剤、塩化ゴム系接着剤、フェノール系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤、ゴム系接着剤など、特に制限はないが、クッションゴム29が加硫できる温度(90℃〜140℃)で反応することが好ましい。
次に生タイヤケースを加硫缶やモールドに収容して加硫する。このとき、粗化処理によってタイヤケース17の外周面17Sに形成された粗化凹凸96に未加硫のクッションゴム29が流れ込む。そして、加硫が完了すると、粗化凹凸96に流れ込んだクッションゴム29により、アンカー効果が発揮されて、タイヤケース17とクッションゴム29との接合強度が向上する。すなわち、クッションゴム29を介してタイヤケース17とトレッド30との接合強度が向上する。
次に、タイヤケース17を、図示を省略するブロー成型装置に設置する。次いで、溶融したEVOHをダイスから押出し、タイヤケース17の径方向内側の全面にEVOHの層が形成されるようにブロー成形を行う。この際、溶融したEVOHの押出量は、上述のガス保持層2Bの膜厚100μmとなるように決定される。ガス保持層2Bを形成した後、更に、溶融したポリアミド系熱可塑性エラストマー(上述の宇部興産(株)製「UBESTA XPA9055X1」)を押出し、ブロー成型によってEVOH層表面にポリアミド系熱可塑性エラストマーからなる層を形成する。これによってタイヤケース17の径方向内側から2層目にEVOHからなるガス保持層2Bが形成されたタイヤケース17が形成される。尚、前記ブロー成形は公知の方法に準じて行うことができる。
本実施形態のタイヤ200は、タイヤケース17Aの径方向内側から2層目にガス透過係数は1.00×10−17cm3・cm/(cm2・s・Pa)のガス保持層2Bが形成されているため、タイヤ10のガス保持特性を向上させることができる。このため、本実施形態のタイヤ200はリム20に組み込んだ際、タイヤ200内部に充填されるガスの保持特性が高い。
また、本実施形態では、ガス保持層2Aがポリアミド系熱可塑性樹脂であるEVOHで形成されているため、ガス保持層2Aの形成によってもタイヤ200の重量の増加が抑制されており、ポリアミド系熱可塑性エラストマーで形成されているタイヤケース17との接着性(熱融着性)も高い。また、ガス保持層2Aの4%引張り伸張時の応力が52MPaであるため、タイヤ200への衝撃等に対するガス保持層2Aの耐久性が高い。
更に、本実施形態のタイヤ200では、タイヤケース17がポリアミド系熱可塑性エラストマーによって形成されているため、耐熱性、引張弾性率、引張強度及び破断ひずみに優れ、さらに従来のゴム製のタイヤに比して構造が簡易であるため重量が軽い。このため、本実施形態のタイヤ200は、耐摩擦性および耐久性が高い。さらに、タイヤケース17を構成するポリアミド系熱可塑性エラストマーは、融点が154℃であるためタイヤケース片17Aの接合を例えば、210℃程度で十分に行うことができるため、エネルギー消費を抑制でき加熱にかかるコストを抑制することができる。また、ポリアミドラストマーは被覆コード部材26Bに対する接着性が高い。
更に、補強コード26Aがスチールコードの場合に、タイヤ処分時に被覆コード部材26Bからコード部材26Aを加熱によって容易に分離・回収が可能であるため、タイヤ200のリサイクル性の点で有利である。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは加硫ゴムに比して損失係数(Tanδ)が低いため、補強コード層28がポリアミド系熱可塑性エラストマーを多く含んでいると、タイヤの転がり性を向上させることができる。更には、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは加硫ゴムに比して、面内せん断剛性が大きく、タイヤ走行時の操安性や耐摩耗性にも優れるといった利点がある。
また、タイヤケース17は、タイヤケースのクラウン部に巻回され且つ接合された被覆コード部材を被覆用熱可塑性材料で覆うようにして補強コード層を形成してもよい。この場合、溶融または軟化状態の被覆用熱可塑性材料を補強コード層28の上に吐出して被覆層を形成することができる。また、押出機を用いずに、溶着シートを加熱し溶融または軟化状態にして、補強コード層28の表面(外周面)に貼り付けて被覆層を形成してもよい。
また、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱硬化性樹脂とし、被覆コード部材26Bを加熱せずに接着剤などを用いてクラウン部16の外周面に接着する構成としてもよい。
さらに、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱硬化性樹脂とし、タイヤケース17を熱可塑性材料で形成する構成としてもよい。この場合には、被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に接着剤などを用いて接着してもよく、タイヤケース17の被覆コード部材26Bが配設される部位を加熱して溶融又は軟化状態にして被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に溶着してもよい。
またさらに、被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27を熱可塑性材料とし、タイヤケース17を熱可塑性材料で形成する構成としてもよい。この場合には、被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に接着剤などを用いて接着してもよく、タイヤケース17の被覆コード部材26Bが配設される部位を加熱して溶融又は軟化状態としつつ、被覆用樹脂材料27を加熱し溶融又は軟化状態にして被覆コード部材26Bをクラウン部16の外周面に溶着してもよい。なお、タイヤケース17及び被覆コード部材26Bの両者を加熱して溶融又は軟化状態にした場合、両者が良く混ざり合うため接合強度が向上する。また、タイヤケース17を形成する樹脂材料、及び被覆コード部材26Bを形成する被覆用樹脂材料27をともに熱可塑性材料とする場合には、同種の熱可塑性材料、特に同一の熱可塑性材料とすることが好ましい。
また、さらに粗化処理を行ったタイヤケース17の外周面17Sにコロナ処理やプラズマ処理等を用い、外周面17Sの表面を活性化し、親水性を高めた後に接着剤を塗布してもよい。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
まず、上述の第1及び第2実施形態に従って、下記表1に示す実施例及び比較例のタイヤを作製した。得られた各実施例のタイヤは、最内層又は第2層にガス保持層を有する。また、比較例1のタイヤにはガス保持層を設けなかった。得られた各タイヤについて内圧保持特性(ガス保持特性)を下記に従って測定した。
また、ガス保持層のガス透過係数は、各材料につき、GTEテック社製のガス透過度測定装置「GTR−30X」を用い、セル温度:80℃、絶対差圧力:0.30Paの条件で測定した。更に、ガス保持層の引張弾性率は、JIS K 6404−3に準拠した引張試験を行い、歪0〜4%の線形弾性範囲の応力歪曲線の傾きから弾性率を測定した。この際、樹脂サンプルとして、膜厚300μmを用いた。
成型タイヤをリム組みし、内圧0.3MPaとなるようにタイヤ内に空気を充満させた。得られたタイヤを、40℃/50%RHの環境下に保持した状態で恒温恒湿槽に3ヶ月放置した。1ヶ月経過毎に内圧を測定して、月単位の圧力低下率を測定した。得られた結果から、月平均の圧力低下率を算出し、下記の基準に従ってタイヤの内圧保持特性を評価した。
(基準)
◎:圧力低下率が、0.002MPa/月以下であった。
○:圧力低下率が、0.002MPa/月より大きく、0.005以下MPa/月以下であった。
△:圧力低下率が、0.005MPa/月より大きく、0.009MPa/月以下であった。
×:圧力低下率が、0.009MPa/月より大きかった。
・ポリアミド6: 宇部興産社製「UBEナイロン 1022B」
(融点220℃、ガラス転移点48℃)
・ポリアミドMX: 三菱ガス化学社製「MXナイロン−S S6011」
(融点237℃、ガラス転移点85℃)
・EVOH−A: クラレ社製「エバール L−101」
(エチレン含量27mol%、融点191℃、ガラス転移点72℃)
・EVOH−B: クラレ社製「エバール E−105」
(エチレン含量44mol%、融点165℃、ガラス転移点55℃)
・PA1:ポリアミド系熱可塑性エラストマー(宇部興産(株)製「UBESTA XPA9055X1」、融点162℃)
・ガス透過係数(単位):cm3・cm/(cm2・s・Pa)
・引張弾性率(単位):MPa
10,200 タイヤ
12 ビード部
16 クラウン部(外周部)
18 ビードコア
20 リム
21 ビードシート
22 リムフランジ
17 タイヤケース(タイヤ骨格体)
24 シール層(シール部)
26 補強コード(補強コード部材)
26A コード部材(補強コード部材)
28 補強コード層
30 トレッド
D 補強コードの直径(補強コード部材の直径)
L 補強コードの埋設量(補強コード部材の埋設量)
Claims (6)
- 少なくとも樹脂材料で形成され且つ積層構造を有する環状のタイヤ骨格体を有し、
前記タイヤ骨格体は、80℃におけるガス透過係数が2.0×10−15cm3・cm/(cm2・s・Pa)以下のガス保持層を少なくとも一層含むタイヤ。 - 前記ガス保持層は、熱可塑性樹脂を含む請求項1に記載のタイヤ。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド系熱可塑性樹脂又はエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)である請求項2に記載のタイヤ。
- 前記ガス保持層の4%引張り伸張時の応力が70MPa以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ。
- 前記タイヤ骨格体を形成する前記樹脂材料が、熱可塑性樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ。
- 前記熱可塑性樹脂が、熱可塑性エラストマーである請求項5に記載のタイヤ。
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