JP2013161775A - 色素増感型光電変換素子およびそれを用いた色素増感型太陽電池の製造方法 - Google Patents

色素増感型光電変換素子およびそれを用いた色素増感型太陽電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】導電性基板上に、色素増感された多孔質半導体微粒子からなる光電極層を有する色素増感型光電変換素子の多孔質半導体微粒子層への色素吸着工程において、簡便で均一な色素吸着を可能とする色素溶液を提供する。
【解決手段】導電性基板上に、色素増感された多孔質半導体微粒子からなる光電極層、電解液層および対向電極をこの順で有する色素増感型太陽電池であり、増感色素を半導体粒子に吸着する方法において、前記増感色素と少なくとも一種の炭素数6〜12である飽和脂肪族ジカルボン酸を含有する色素溶液を用いて、前記多孔質半導体微粒子に増感色素を吸着する色素増感型光電変換素子の製造方法である。
【選択図】図1

Description

本願発明は、光電変換効率が高く、耐久性に優れる光電変換素子およびそれを用いた色素増感型太陽電池の製造方法であって、増感色素と飽和脂肪族ジカルボン酸化合物を含有した色素溶液を用いて多孔質半導体微粒子に増感色素を担持させる色素増感型光電変換素子およびそれを用いた色素増感型太陽電池の製造方法に関する。
近年、太陽エネルギーを電力に変換する光電変換素子として、固体のpn接合型の光電変換素子およびそれを用いた太陽電池が活発に研究されている。固体接合型太陽電池は、シリコン結晶やアモルファスシリコン薄膜、非シリコン系の化合物半導体の多層薄膜を用いている。しかし、これらの光電変換素子およびそれを用いた太陽電池は、高温もしくは真空下で製造するために、製造コストが高く、エネルギーペイバックタイムが長いという欠点がある。近年そのコストダウンが進められており、市場での展開を目指している。しかし、その基板としてはガラスがメインであり、相当な重量となっており、その改良が望まれている。
これらの従来の太陽電池を置き換える次世代光電変換素子およびその太陽電池として、プラスチック基板からなる色素増感型光電変換素子の開発が期待されており、特許文献1では、色素増感された多孔質半導体微粒子を用いる高効率の光電変換方法が提案されている。色素増感型光電変換素子は、固体接合型光電変換素子における固体(半導体)‐固体(半導体)接合の代りに、固体(半導体)‐液体(電解液)接合を採用する湿式光電変換素子である。色素増感型光電変換素子は、研究レベルではエネルギー変換効率が11%以上という高い値まで達しており、電気エネルギーの供給源として有望となっている。
このプラスチック基板からなる色素増感型光電変換素子は、一般にプラスチック基板を用いた導電性支持体上に、色素増感された多孔質半導体微粒子からなる光電極層、電解液層および対向電極層からなっている。劣悪な環境での耐久性を付与すべくハイバリア性を有する外装材も使われている。このプラスチック基板からなる色素増感型光電変換素子は、光エネルギーを電力に変換する際に高効率が要求されている。しかしながら、変換効率は要求を満たすレベルに達していない。変換効率が要求レベルに達していない原因としては、実際に得られる開放電圧(Voc)が理論値に比べ格段に低いことが挙げられる。これは、増感色素を多孔質半導体微粒子に均一に結合または固着させることで改善することができる。
増感色素を多孔質半導体微粒子に結合する方法として、特許文献2では、多孔質半導体微粒子表面に負電荷または酸基を有する化合物(媒染剤)を結合させ、さらに前記媒染剤に正電荷または塩基性基を有する色素を作用させて、増感色素を媒染させる方法が提案されている。しかし、この方法では媒染剤を新たに合成する必要があり容易ではない。特許文献3では、多孔質半導体微粒子を積層した導電性基板を、長鎖アルキルモノカルボン酸(例えば、ミリスチン酸)を含む色素溶液中に浸漬して光電極層を製作する方法が提案されている。しかし、この方法では、色素溶液中の色素分散性は向上するが、色素を導電性基板側の多孔質半導体微粒子まで十分に浸透させることができないという問題がある。特許文献4では、多孔質半導体微粒子を積層した導電性基板を、ステロイド骨格を有する有機酸を含む色素溶液中に浸漬して光電極層を製作する方法が提案されている。この方法でも、色素溶液中の色素分散性は向上するが、色素を導電性基板側の多孔質半導体微粒子まで十分に浸透させることができないという問題は解決されない。
米国特許4927721号明細書 特開2002‐42908号公報 特開2004‐171969号公報 特開2008‐186669号公報
本願発明の第1の目的は、色素増感型光電変換素子の製造工程の改良に関するもの、特に簡便かつ安定な色素吸着工程を提案することである。本願発明の第2の目的は、色素増感型光電変換素子の製造において、短時間で多孔質半導体微粒子層に十分な増感色素を吸着することのできる色素溶液を提案することである。本願発明の第3の目的は、改良した色素吸着工程を利用した色素増感型光電変換素子およびそれを用いた色素増感型太陽電池を提供することにある。本願発明の第4の目的は、軽量で破損しにくいプラスチック基板からなり、かつ簡便な色素吸着工程を利用して製造した変換効率の高い色素増感型光電変換素子およびそれを用いた色素増感型太陽電池を提供することにある。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。
(態様1) 導電性基板上に、色素増感された多孔質半導体微粒子からなる光電極層、電解液層および対向電極層をこの順で有する色素増感型光電変換素子において、前記増感色素と少なくとも一種の飽和脂肪族ジカルボン酸を含有する色素溶液を用いて前記多孔質半導体微粒子に増感色素を吸着することを特徴とする色素増感型光電変換素子の製造方法である。特定の飽和脂肪族ジカルボン酸を含有する色素溶液を用いることで、増感色素が多孔質半導体微粒子からなる光電極層に均一に分散し浸透することにより色素増感型光電変換素子の光電変換効率が向上するからである。
(態様2) 前記色素溶液中に含まれる飽和脂肪族ジカルボン酸量が、前記増感色素のモル当量に対して1モル当量〜1000モル当量であることを特徴とする前記(態様1)に記載した色素増感型光電変換素子の製造方法である。飽和脂肪族ジカルボン酸量と増感色素の割合を特定の範囲にすることで、色素溶液中の増感色素の分散性が最も高くなるからである。
(態様3) 前記色素溶液中に含まれる前記増感色素の溶液濃度が、0.01mM〜10mMであることを特徴とする前記(態様1)または(態様2)のいずれかに記載した色素増感型光電変換素子の製造方法である。増感色素濃度を多孔質半導体微粒子からなる光電極層への色素吸着に過不足のない範囲にするためである。
(態様4) 前記飽和脂肪族ジカルボン酸が炭素数6〜12の飽和脂肪族ジカルボン酸であることを特徴とする前記(態様1)乃至(態様3)のいずれかに記載した色素増感型光電変換素子の製造方法である。分子量または分子鎖長が特定の範囲の飽和脂肪族ジカルボン酸を選択することで、増感色素が多孔質半導体微粒子からなる光電極層に均一に分散し浸透することにより色素増感型光電変換素子の光電変換効率が向上するからである。
(態様5) 前記色素溶液の温度が0℃〜50℃であることを特徴とする前記(態様1)乃至(態様4)のいずれかに記載した色素増感型光電変換素子の製造方法である。色素溶液の温度を特定の範囲とすることで、増感色素が多孔質半導体微粒子からなる光電極層に均一に分散し浸透することにより色素増感型光電変換素子の光電変換効率が向上するからである。
(態様6) 前記多孔質半導体微粒子への増感色素の吸着手段が、前記増感色素と少なくとも一種の飽和脂肪族ジカルボン酸を含有する色素溶液に多孔質半導体微粒子層を形成した導電性基板を浸漬するものであって、前記浸漬時間が0.5分〜60分であることを特徴とする前記(態様1)乃至(態様5)のいずれかに記載した色素増感型光電変換素子の製造方法である。色素溶液中の吸着時間を特定の範囲とすることで、増感色素が多孔質半導体微粒子からなる光電極層に均一に分散し浸透することにより色素増感型光電変換素子の光電変換効率が向上するからである。
本願発明によって、簡便で均一な色素吸着工程を利用して製造した変換効率の高い色素増感型光電変換素子およびそれを用いた色素増感型太陽電池が得られる。
本願発明に従った色素増感型光電変換素子の1例の構造を示す断面図である。
以下に本願発明の詳細について記述するが、本明細書に記載された範囲にのみ限定されるものではなく、その周辺技術や素材についても適用されるものである。
(増感色素)
本願発明で用いる増感色素としては、電気化学の分野で色素分子を用いる光電極の分光増感にこれまで用いられてきた各種の有機系、金属錯体系の増感材料が用いられる。また、光電変換の波長領域をできるだけ広くし、かつ、変換効率を上げるために、二種類以上の色素を混合して用いてもよく、光源の波長域と強度分布に合わせて、混合する色素とその混合割合を選択してもよい。
増感色素は色素担持多孔質酸化チタン層2a〜2dの増感色素は、増感作用を示すものであれば特に制限はないが、有機色素(例、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、キサンテン色素、スクワリリウム色素、ポリメチン色素、クマリン色素、リボフラビン色素、ペリレン色素)および金属錯体色素(例、フタロシアニン錯体、ポルフィリン錯体)を挙げることができる。金属錯体色素を構成する金属の例は、ルテニウムおよびマグネシウムを挙げることができる。そのほか「機能材料」、2003年6月号、第5〜18ページに記載されている合成色素と天然色素や、「ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(J.Chem.Phys.)」、B.第107巻、第597ページ(2003年)に記載されるクマリンを中心とする有機色素を用いることもできる。多孔質酸化チタン層に吸着する酸官能基を有するものが好ましく、具体的にはカルボキシ基、リン酸基などを有するものが好ましく、この中でも特にカルボキシ基を有するものが好ましい。
増感色素の具体例を挙げると、例えば、ローダミンB、ローズベンガル、エオシン、エリスロシンなどのキサンテン系色素、メロシアニン、キノシアニン、クリプトシアニンなどのシアニン系色素、フェノサフラニン、カブリブルー、チオシン、メチレンブルーなどの塩基性染料、クロロフィル、亜鉛ポルフィリン、マグネシウムポルフィリンなどのポルフィリン系化合物が挙げられ、その他のものとしてはアゾ色素、フタロシアニン化合物、クマリン系化合物、ビピリジン錯化合物、アントラキノン系色素、多環キノン系色素などが挙げられる。これらの中でも、リガンド(配位子)がピリジン環またはイミダゾリウム環を含み、Ru、Os、Ir、Pt、Co、FeおよびCuからなる群より選ばれた少なくとも一種類の金属の錯体の色素は量子収率が高く好ましい。特に、シス−ビス(イソチオシアナート)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)またはトリス(イソチオシアナート)−ルテニウム(II)−2,2' :6' ,2" −ターピリジン−4,4' ,4" −トリカルボン酸を基本骨格とする色素分子は吸収波長域が広く好ましい。ただし、増感色素はこれらに限定されるものではない。増感色素としては、典型的には、これらのうちの一種類のものを用いるが、これらの増感色素を二種類以上混合して用いてもよい。これらは、汎用名として知られており、例えばN3、N719、N749、D102、D131、D150、N205、HRS−1、MK−2、などが代表的な増感色素として挙げられる。
(飽和脂肪族ジカルボン酸)
本願発明で用いる飽和脂肪族ジカルボン酸は、炭素数6〜12の飽和脂肪族ジカルボン酸である。具体的には、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸である。炭素数5以下の飽和脂肪族ジカルボン酸の場合は、変換効率向上効果が低いからである。また、炭素数12を超える飽和脂肪族ジカルボン酸の場合は、理由色素溶液中での溶解性が低下するからである。
(色素溶液)
本願発明の色素溶液は、上述した増感色素と上述した飽和脂肪族ジカルボン酸とを混合した状態で溶媒に溶解させて作製することが一般的である。また、増感色素単独あるいは飽和脂肪族ジカルボン酸単独で溶媒に溶解した溶液を作製し、しかる後に増感色素あるいは飽和脂肪族ジカルボン酸を添加して混合溶液を作製することができる。色素溶液に用いる溶媒は、増感色素と飽和脂肪族ジカルボン酸のいずれも溶解することができ、かつ、半導体微粒子を溶解せず半導体微粒子と反応しない溶媒であれば特に制限はない。なお、有機溶媒のみからなる場合は、溶媒に存在している水分及び気体を除去するために、予め脱気及び蒸留精製しておくことが好ましい。溶媒としては、アルコール類、ニトリル類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、アミド類、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、芳香族、ニトロメタン、水などの溶媒が好ましい。
好ましい具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ヘキサン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、ジメチルスルホキシド、プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、などがある。
これらの中でもさらに好ましく用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t-ブタノール、メトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ブトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、トルエン、キシレン、アニソール、を挙げることができる。
特に好ましく用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t-ブタノール、ブトキシエタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピオニトリル、ブチロニトリル、プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、トルエン、を挙げることができる。なお、これらの溶媒は単独でもよいが2種類以上の溶媒を用いた混合溶媒でもよい。
色素溶液中における増感色素の濃度は、好ましくは0.01mM〜10mMであり、より好ましくは0.05mM〜10mMであり、特により好ましくは0.1mM〜1mMである。また、色素溶液中における本願発明の飽和脂肪族ジカルボン酸の濃度は、好ましくは0.1mM〜100mMであり、より好ましくは0.5mM〜50mMであり、特に好ましくは1.05mM〜50mMである。本願発明の飽和脂肪族ジカルボン酸の添加量は、色素のモル当量に対して1モル当量〜1000モル当量が好ましく、5モル当量〜500モル当量がより好ましく、10モル当量〜100モル当量が特に好ましい。色素のモル当量に対して飽和脂肪族ジカルボン酸の添加量(モル量)が少ないと、変換効率向上の効果が小さく、添加量(モル量)が多いと溶解性が低下して添加物が色素溶液中で析出する。色素の全吸着量は、導電性支持体の単位表面積(1m2)当たり0.01mol〜10molが好ましい。また色素の多孔質半導体微粒子に対する吸着量は、多孔質半導体微粒子1g
当たり0.001mol〜1molの範囲であるのが好ましい。
(増感色素の多孔質半導体微粒子への吸着)
本願発明の増感色素の多孔質半導体微粒子(例えば多孔質酸化チタン微粒子)への吸着方法について説明する。本願発明の吸着方法は、増感色素と少なくとも一種の飽和脂肪族ジカルボン酸を含む色素溶液に多孔質半導体微粒子層を形成した導電性基板を浸漬することにより行うことができる。この基板を、増感色素を含む溶液に浸漬する工程は以下が好ましい。浸漬時の色素溶液の好ましい温度は、0℃〜80℃、更に好ましは0℃〜50℃であり、特に好ましくは5℃〜40℃であり一般的な環境温度である。また、吸着時間は特に制限はないが、好ましく0.1分〜120分であり、より好ましく0.5分〜60分であり、更に好ましくは0.5分〜30分である。
なお、色素溶液で多孔質半導体微粒子に色素を吸着させたあと、色素溶液を除去するために溶媒を用いて洗浄することが好ましく、その際には前述した溶媒が好ましい洗浄溶媒として推奨される。洗浄は、直接色素を吸着した半導体基板に、溶媒を吹き付けるか、洗い流してもよい。また、洗浄溶媒タンクに該基板を投入して、過剰な色素溶液を洗浄処理してもよい。このようにして得られた色素吸着した多孔質半導体微粒子層を形成した光電極基板は、さらに乾燥処理することで所望の色素増感された多孔質半導体微粒子層を有する光電極基板を得ることが出来る。乾燥条件は特に限定されないが、好ましくは30℃〜150℃で0.5分〜30分が好ましく、40℃〜120℃で0.5分〜15分が好ましく、50℃〜100℃で0.5分〜10分が好ましい。
本願発明の吸着方法としては、増感色素と少なくとも一種の飽和脂肪族ジカルボン酸を含む色素溶液を半導体微粒子層にスプレイノズルを用いて散布する方式によっても行うことができる。浸漬法より短時間に色素を吸着することができ、特に炭素数6〜12の飽和脂肪族ジカルボン酸を併用することで、色素吸着が均一化されて光電変換効率が高くなるからである。
(電解液)
本願発明の電解液は、溶質と溶媒を基本としており、その電解液構成分について下記に説明する。本願発明の電解液層を構成する電解液は、ヨウ素とヨウ化物との組み合わせからなる酸化還元対(I-/I3 -)を含まないことを特徴とする。具体的には、基本的に、無機塩とイオン液体であるヨウ化物塩(例えば、イミダゾリウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、4級窒素原子をスピロ原子に持つ化合物の塩)の単一物若しくは混合物または前記イオン液体であるヨウ化物塩の単一物若しくは混合物を溶質とし、グリコールエーテルと5員環環状エーテルの一方または両方を溶媒とするものである。以下、代表的な電解液構成成分について説明する。
(溶質)
本願発明の電解液の溶質としては、下記一般式(1)に示す無機塩と下記一般式(2)に示すイミダゾリウム塩の混合物を用いることができる。
(1)
式(1)において、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムであり、XはCl、Br、Iである。
(2)
式中、R21,R22,R23は水素または炭素原子数1〜8のアルキル基であり、XはCl,Br,Iである。
本願発明に用いる無機塩は、前記一般式(1)に示すアルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アンモニウムハロゲン化物を用いることが好ましい。ハロゲン化物のハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素を用いることが好ましく、臭素、ヨウ素が特に好ましく、ヨウ素が最も好ましい。
本願発明で用いる無機塩の具体例としては、アルカリ金属ハロゲン化物(例、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウムなど)、アルカリ土類金属ハロゲン化物(例、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなど)、アンモニウムハロゲン化物(例、ヨウ化アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化アンモニウムなど)がある。
本願発明のハロゲン化物としては、水への溶解度が90〜220g/100g水(25℃)のハロゲン化物が、下記一般式(3)及び(4)の溶媒への溶解性が優れることから好ましく、中でもヨウ素化合物(例、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化アンモニウムなど)が、光電変換効率が高いことから特に好ましい。
本願発明のハロゲン化物の添加濃度は、0.01〜3.0mol/Lが好ましく、0.05〜2.0mol/Lがさらに好ましい。
本願発明で用いるイオン液体には、室温(25℃)付近において液状となる、いわゆる室温溶融塩を用いることができる。本願発明では、前記一般式(2)アルキルイミダゾリウムのハロゲン化物塩を用いることが好ましく。アルキルイミダゾリウムのヨウ化物塩を用いることが、より好ましい。
本願発明のアルキルイミダゾリウムのヨウ化物塩の具体例は、ジメチルイミダゾリウム、メチルプロピルイミダゾリウム、メチルブチルイミダゾリウム、メチルヘキシルイミダゾリウムのヨウ化物塩が挙げられる。
本願発明に用いるイオン液体の濃度は、0.01〜5.0mol/Lが好ましく、0.05〜2.0mol/Lが、エネルギー変換効率が高い点でより好ましい。
本願発明の電解液の溶質としては、前記一般式(1)に示す無機塩を含まないで、イオン液体であるヨウ化物塩の単一物若しくは混合物を用いることも好ましい。具体的には、テトラアルキルアンモニウムのハロゲン化物塩、前記一般式(2)に示すアルキルイミダゾリウムのハロゲン化物を用いることができる。
(溶媒)
本願発明の電解液の溶媒としては、低粘度でイオン移動度が高いか、高誘電率で有効キャリアー濃度を高めることができるか、あるいはその両方であるために優れたイオン伝導性を発現できるものが好ましい。多孔質半導体微粒子層に色素を吸着して得られる色素増感半導体薄膜層を光電極とするため、多孔質半導体微粒子層への浸透性が光電変換効率を向上するために必要だからである。また、電解液量を保持するために高沸点であること、特に沸点が200℃以上であることが好ましい。さらに、溶質として用いる無機塩とイオン液体であるイミダゾリウム塩との混合物の溶解性の観点から、非プロトン性極性溶媒であることも好ましい。
本願発明の溶媒としては、下記一般式(3)に示すグリコールエーテルが好ましく、エネルギー変換効率が高い点で、ジアルキルグリコールエーテルがより好ましい。
(3)
式(3)において、R31,R32は水素または炭素原子数1〜8のアルキル基であり、nは1〜10の整数である。
このような溶媒の具体例としては、グリコール類(例、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、モノアルキルグリコールエーテル類(例、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテルなど)、ジアルキルグリコールエーテル類(例、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテルなど)がある。これらのグリコールエーテル類は、2種以上併用してもよい。
本願発明の溶媒としては、前記一般式(4)に示す5員環環状エーテルを用いることが好ましい。5員環環状エステル(γ−ラクトン)の具体例としては、γ−ブチロラクトンが含まれる。
(4)
式(4)において、R41,R42及びR43は、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数が1〜20のアルキル基である。
(酸化還元対)
本願発明の電解液では、三ヨウ素化物イオン(I )濃度が0mol/L(イオン液体中の不純物として混入する場合を除き、含まれない。
本願発明の電解液では、電解液中の微量ヨウ素化合物イオン(I )を除去するため、電解液中に還元剤を微量添加してもよい。還元剤としては、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の無機化合物、チオサリチル酸、アスコルビン酸、ハイドロキノン、フェニドン、硫酸パラメチルアミノフェノール等の有機化合物がある。
(その他の電解液成分)
電解液は、さらに他の成分を含むことができる。他の成分の例には、下記一般式(5)で表わされるベンゾイミダゾール化合物のほか、(イソ)チオシアン酸イオン、後述する一般式(6)で表わされるグアニジウムイオンが含まれる。特にベンゾイミダゾール化合物は、変換効率がさらに向上するため、併用することが好ましい。
(5)
式(5)において、R51は炭素原子数1〜20の脂肪族基であり、R52は水素原子または炭素原子数1〜6の脂肪族基である。
電解液中に前記一般式(5)で表わされるベンゾイミダゾール化合物を添加する場合、電解液中のベンゾイミダゾール化合物の濃度は0.01〜1Mが好ましく、0.02〜0.8Mがさらに好ましく、0.05〜0.6Mが最も好ましい。
ベンゾイミダゾール化合物の具体例としては、N−メチルベンゾイミダゾール、N−エチルベンゾイミダゾール、1,2−ジメチルベンゾイミダゾール、N−ブチルベンゾイミダゾール、N−ヘキシルベンゾイミダゾール、N−ペンチルベンゾイミダゾール、N−イソプロピルベンゾイミダゾール、N−イソブチルベンゾイミダゾール、N−ベンジルベンゾイミダゾール、N−(2−メトキシエチル)ベンゾイミダゾール、N−(3−メチルブチル)ベンゾイミダゾール、1−ブチル−2−メチルベンゾイミダゾール、N−(2−エトキシエチル)ベンゾイミダゾール、N−(2−イソプロポキシエチル)ベンゾイミダゾールなどがある。
電解液中にチオシアン酸イオン(S-−C≡N)またはイソチオシアン酸イオン(N-=C=S)を添加する場合、電解液中のチオシアン酸イオンおよびイソチオシアン酸イオンの合計の濃度は0.01〜1Mが好ましく、0.02〜0.5Mがさらに好ましく、0.05〜0.2Mが最も好ましい。
電解液の調製において、イソチオシアン酸イオンは塩として添加することが好ましい。塩の対イオンは、後述するグアニジウムイオンが好ましい。
電解液中に下記一般式(6)で表わされるグアニジウムイオンを添加する場合、電解液中のグアニジウムイオンの濃度は0.01〜1Mが好ましく、0.02〜0.5Mがさらに好ましく、0.05〜0.2Mが最も好ましい。
(6)
式(6)において、R61、R62およびR63は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数が1〜20の脂肪族基である。
脂肪族基の炭素原子数は、1〜12が好ましく、1〜6がさらに好ましく、1〜3が最も好ましい。脂肪族基よりも水素原子の方が好ましい。すなわち、無置換のグアニジウムイオンが最も好ましい。
電解液の調製において、グアニジウムイオンは塩として添加することが好ましい。塩の対イオンは、ヨウ化物イオンまたはイソチオシアン酸イオンが好ましく、イソチオシアン酸イオンがさらに好ましい。
電解液中には必要に応じて、他のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤を添加してもよい。
電解液層は色素の酸化体に電子を補充する機能を有する電解液からなる層である。光電極層は、その多孔構造中の空孔が電解液により充填されていることが好ましい。具体的に、光電極層が有する空孔が電解液によって充填されている割合は、20体積%以上が好ましく、50体積%以上がさらに好ましい。電解液層の厚さは、例えば、光電極層と対向電極層との間に設けるスペーサーの大きさによって調整できる。電解液が光電極の外側で単独で存在する部分の厚さは、1μm〜50μmが好ましく、1μm〜30μmがより好ましく、1μm〜20μmがさらに好ましく、1μm〜15μmが最も好ましい。
電解液層の光透過率は、測定波長400nmにおいて、電解液層の厚さが30μmである場合に換算して(30μmの光路長において)70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが最も好ましい。光透過率は、350nm〜900nmの波長領域全体において、上記の透過率を有することが好ましい。本願発明の電解液層を形成するには、キャスト法、バー塗布法、スプレイ塗布法、浸漬法等により光電極層上に電解液を塗布する方法や、光電極と対向電極を有するセルを作製しその隙間に電解液を注入する方法などが挙げられる。
塗布法によって電解液層を形成する場合、溶融塩等を含む電解液に塗布性改良剤(レベリング剤等)等の添加剤を添加して、これをスピンコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法、スプレイノズルを使用するスプレイ塗布法、多層同時塗布方法等の方法により塗布し、その後必要に応じて加熱すればよい。加熱する場合の加熱温度は色素の耐熱温度等により適当に選択すればよいが、通常10℃〜150℃であるのが好ましく、10℃〜100℃であるのが更に好ましい。加熱時間は加熱温度等にもよるが、5分〜72時間程度が好ましい。
好ましい態様によれば、光電極層中の空隙を完全に埋める量より多い電解質液を塗布するので、図1に示すように得られる電解液層は光電極層の透明導電層との境界から対向電極層の透明導電層との境界までの間に存在する。ここで、電解液層の厚さ(半導体粒子層を含まない)は0.001μm〜200μmであるのが好ましく、0.1μm〜100μmであるのが更に好ましく、0.1〜50μmであるのが特に好ましい。なお、電解液層の厚さ(実質的に電解液を含む層の厚さ)は0.1μm〜300μmであるのが好ましく、1μm〜130μmであるのが更に好ましく、2μm〜75μmであるのが特に好ましい。
(色素増感型光電変換素子の構造)
図1は、本願発明の色素増感型光電変換素子の構造例を示す断面図である。色素増感型光電変換素子は、光電極層1、電解液層2および対向電極層3をこの順で有する積層構造からなる。本願発明において、電解液層2は、溶媒中に電解質が溶解している電解液からなる。光電極層1は、光電極基板と色素増感多孔質半導体粒子層からなる。光電極基板は、透明基板11と透明導電層12とからなり、色素増感多孔質半導体粒子層は色素14により増感された半導体粒子13からなる。図1に示す色素増感型光電変換素子では、色素増感多孔質半導体層の多孔膜内(空孔)が、電解液層2を構成している電解液により充填されている。対向電極層3は、透明基板31と透明導電層32とからなる。
本願発明において、透明導電層(12および32)は、電圧損失が少ない金属により形成できる。金属を用いて透明導電層(12および32)を形成する場合、金属メッシュや格子状構造からなる層を形成すればよい。電解液層2および透明導電層(12および32)の透明性を高くすることができる。このため、本願発明の色素増感型光電変換素子では、光電極層1側から入射する光41と対向電極層3側から入射する光42の双方を利用して、高い光電変換効率で電流5を発電することができる。以下、光電極層、電解液層、そして対向電極層の順序で説明する。
(光電極層を形成する透明導電性基板)
本願発明の光電極層は、プラスチック光電極基板と色素増感多孔質半導体微粒子層からなる。プラスチック光電極基板は、プラスチック基板上に透明導電層を有する。プラスチック基板材料としては、無着色で透明性が高く、耐熱性が高く、耐薬品性ならびにガス遮断性に優れ、かつ低コストの材料が好ましく選ばれる。この観点から、好ましい材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)、シクロオレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)などが用いられる。これらのなかでも化学的安定性とコストの点で特に好ましいものは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー(COP)であり、もっとも好ましいものはポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー(COP)である。
プラスチックフィルム基板の耐熱性は、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上、及び、線熱膨張係数が40ppm/℃以下の少なくともいずれかの物性を満たすことが好ましい。なお、プラスチックフィルムのTg及び線膨張係数は、JIS K 7121に記載のプラスチックの転移温度測定方法、及び、JIS K 7197に記載のプラスチックの熱機械分析による線膨張率試験方法により測定する。プラスチックフィルムのTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。このような耐熱性に優れる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)、ポリイミド等が挙げられ(括弧内はTgを示す)、これらは本発明における基材として好適である。なかでも、特に透明性が求められる用途には、脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
本願発明の透明導電層としては、金属(例、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、チタン)、炭素、導電性金属酸化物(例、酸化スズ、酸化亜鉛)または複合金属酸化物(例、インジウム‐スズ酸化物、インジウム−亜鉛酸化物)から形成できる。この中で高い光学的透明性をもつ点で導電性金属酸化物が好ましく、インジウム‐スズ複合酸化物(ITO)、酸化亜鉛、インジウム‐亜鉛酸化物(IZO)が特に好ましい。最も好ましいものは、耐熱性と化学安定性に優れる、インジウム‐スズ複合酸化物(ITO)やインジウム‐亜鉛酸化物(IZO)である。
透明導電層の表面抵抗値は100Ω/□以下が好ましく、50Ω/□以下がより好ましく、30Ω/□以下がさらに好ましく、10Ω/□以下がさらにまた好ましく、5Ω/□以下が最も好ましい。透明基板上に透明電極層を設けた光電極基板の光透過率(測定波長:500nm)は、60%以上が好ましく、75%以上であることがさらに好ましく、80%以上が最も好ましい。
低い表面抵抗値を達成するためには、金属を用いることも好ましいが、透明でないという問題は金属メッシュ構造からなる透明導電性層を形成することにより解決できる。その際にはこの導電層には集電のための補助リードをパターニングなどにより配置させることができ、低抵抗の金属材料(例、銅、銀、アルミニウム、白金、金、チタン、ニッケル)によって形成される。補助リードを含めた表面の抵抗値は好ましくは1Ω/□以下に制御することが好ましい。このような補助リードのパターンは透明基板に蒸着、スパッタリングなどにより形成し、さらにその上に酸化スズ、ITO膜、IZO膜などからなる透明導電層を設けることも好ましい。
(光電極層を形成する多孔質半導体微粒子層)
本願発明の多孔質半導体微粒子層は、ナノサイズの細孔が内部に網目状に形成されたいわゆるメソポーラスな半導体膜からなっている。多孔質半導体微粒子層を形成する半導体微粒子としては、金属の酸化物及び金属カルコゲニドを使用することができる。金属酸化物及び金属カルコゲニドを構成する金属元素としては、例えば、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、カドミウム、亜鉛、鉛、アンチモン、ビスマス、カドミウム、鉛などが挙げられる。
半導体材料は、n型の無機半導体が好ましい。例えば、TiO、TiSrO、ZnO、Nb、SnO、WO、Si、CdS、CdSe、V2O5、ZnS、ZnSe、SnSe、KTaO、FeS、PbSを含む。TiO、ZnO、SnO、WO、Nbが好ましく、チタン酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物およびこれらの複合体がさらに好ましく、二酸化チタンが最も好ましい。これらの半導体粒子の一次粒子は、平均粒径が2nm〜80nmであることが好ましく、10nm〜60nmがさらに好ましく、2nm〜30nmが最も好ましい。
本願発明の光電変換素子において、上記の半導体粒子によって作られる多孔質半導体微粒子層は、色素によって増感されているので色素を多孔質半導体微粒子の表面に吸着分子として持っている。本願発明における多孔質半導体微粒子層において、層内を空孔が占める体積分率で示される空孔率は、50%〜85%であることが好ましく、65%〜85%であることがさらに好ましい。
多孔質半導体微粒子層は、2種類以上の微粒子群を含むことができる。2種以上の微粒子群は、例えば、粒径分布が異なるものであることができる。粒径分布が異なる2種類以上の微粒子群を含む場合、最も小さい粒子群の平均サイズは20nm以下が好ましい。この超微粒子に対して、光散乱により光吸収を高める目的で、平均粒径が200nmを越える大きな粒子を、質量割合として5質量%〜30質量%の割合で添加することが好ましい。
光電極層は、透明導電性基板(透明電極および透明導電層)および色素増感多孔質半導体粒子層からなり、透明導電層は実質的に無機酸化物または金属のみから構成され、色素増感多孔質半導体粒子層は、実質的に半導体と色素のみから構成されていることが好ましい。具体的には、透明電極層および色素増感多孔質半導体層から、無機酸化物、半導体および色素を除いた固形分の質量が、透明導電層および色素増感多孔質半導体粒子層の全質量に占める割合は、3%未満が好ましく、1%未満がさらに好ましい。
光電極のプラスチック基板を用いて光電極の半導体膜を作製するに際しては、該基板の耐熱性の範囲内である低温条件下(例、200℃以下、好ましくは150℃以下)で半導体膜を形成する低温製膜技術により作製できる。このような低温製膜は、例えば、プレス法、水熱分解法、泳動電着法、バインダーフリーコーティング法、スプレイ塗布法により行うことができる。ここでバインダーフリーコーティング法とは、バインダー材料を用いないか用いとも極微量である量であり、粒子分散液をコーティングして作製する方法である。
(対向電極層)
対向電極層は光電変換素子を光化学電池としたときに正極として作用するものである。対向電極層は、透明基板および透明導電層からなることが好ましい。透明基板および透明導電層の詳細は、光電極層の透明基板および透明導電層と同様である。対向電極の触媒層は、触媒作用を有する貴金属粒子が好ましい。対向電極の導電性膜上に触媒層を付与することで好ましい触媒層付きの対向電極が作製できる。貴金属粒子としては、触媒作用のあるものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは比較的高い触媒作用を有する金属白金、金属パラジウム及び金属ルテニウムの少なくとも一種類から構成することが好ましい。触媒層の付与方法は特に限定されないが、例えばこれらの金属を蒸着法あるいはスパッタ法で付与してもよく、また該金属微粒子を溶媒に分散させて得られる分散液を、塗布あるいは噴霧などで対向電極も導電性層の上に設置してもよい。分散法で設置する場日は、その分散液に更にバインダーを含有させてもよく、導電性高分子が好ましく用いられる。該導電性高分子としては、導電性を有し、前記貴金属粒子を分散させることができるものであれば特に限定されないが、導電性の高い方が好ましい。
このような高導電性高分子としては、例えばPoly(thiophene−2,5−diyl)、Poly(3−butylthiophene−2,5−diyl),
Poly(3−hexylthiophene−2,5−diyl),poly(2,3−dihydrothieno−[3,4−b]−1,4−dioxin)等のポリチオフェン、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、Poly(p−xylenetetrahydrothiophenium
choride),Poly[(2−methoxy−5−(2’ethylhexyloxy))−1,4−phenylenvinylene],Pory[(2−methoxy−5−(3’,7’−dimethyloctyloxy)−1,4−phenylenevinylene)],Poly[2−2’,5’−bis(2’’−ethylhexyloxy)phenyl]−1,4−phenylenevinylene]等のポリフェニレンビニレン類等が使用出来る。これらの中でも特に好ましい導電性高分子は、Poly(2,3−dihydrothieno−[3,4−b]−1,4−dioxin)/Poly(styrenesulfonate)
(PEDOT/PSS)である。
また、触媒層は、導電層への密着性を向上させる観点から、他のバインダーを含むことができる。前記バインダーは有機樹脂であっても良いし、無機物であっても良い。有機樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロースおよび誘導体、ブチラール樹脂、アルキド樹脂、塩ビ樹脂等の熱硬化性あるいは熱可塑性有機高分子化合物、紫外線(UV)硬化性有機高分子化合物、電子線(EB)硬化性有機高分子化合物、ポリシロキサン等の無機高分子化合物等を、単独もしくは複合して用いることができる。
前記無機物としては、シリカゾル、MO・nSiO(M:Li、Na、K)等のケイ酸塩、リン酸塩、珪素酸化物やジルコニウム酸化物やチタン酸化物やアルミニウム酸化物粒子コロイド、珪素やジルコニウムやチタンやアルミニウムの金属アルコキシドやこれらの部分加水分解縮重合物、溶融フリット、水ガラス等を単独または複合して用いることが出来る。
また、上述したバインダーの他に、触媒層の膜付着強度、導電性などの一層の向上を目的として、必要に応じ、例えばケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、チタン、イットリウム、亜鉛、マグネシウム、インジウム、錫、アンチモン、ガリウム、ルテニウムなどの酸化物または複合酸化物の粒子、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、及び錫ドープ酸化インジウム等の導電性酸化物粒子を含むこともできる。なお、触媒層の厚さは好ましくは100nm〜1μm、より好ましくは50nm〜5μmであり、特に好ましくは30nm〜5μmである。
(その他の層)
電極として作用する光電極層及び対向電極層の一方又は両方に、保護層、反射防止層等の機能性層を設けてもよい。このような機能性層を多層に形成する場合、同時多層塗布法や逐次塗布法が利用できる。本願発明のフィルム型光電池には、上記の基本的層構成に加えて所望に応じさらに各種の層を設けることができる。例えば導電性プラスチック支持体と多孔質半導体層の間に緻密な半導体の薄膜層を下塗り層として設けることができる。下塗り層として好ましいのは金属酸化物であり、たとえばTiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5などである。下塗り層は、例えばElectrochim.Acta 40、643‐652(1995)に記載されているスプレーパイロリシス法の他、スパッタ法などにより塗設することができる。下塗り層の好ましい膜厚は5〜100nmである。
また、光電極として作用する多孔質光電極と対向電極の一方又は両方の外側表面、導電層と基板の間又は基板の中間に、保護層、反射防止層、ガスバリアー層などの機能性層を設けてもよい。これらの機能性層は、その材質に応じて塗布法、蒸着法、貼り付け法などによって形成することができる。
本願発明のフィルム型光電池の全体の厚さは、機械的フレキシブル性と性能安定性を保証する目的から、150μm〜500μm、好ましくは250μm〜450μmが好ましい。本願発明の多層構成のフィルム型光電池には所望に応じ、短絡防止のためのセパレータを含ませることも推奨される。セパレータを形成する材料は電気的に絶縁性の材料であり、その形体はフィルム形体、粒子形体、電解質層と一体化した形体のいずれであってもよいが、フィルム型のセパレータを用いることが好ましい。
フィルム形体で用いる場合、フィルムは電解液を透過する多孔質の膜、例えば樹脂フィルム、不織布、紙などの有機材料が用いられる。また、このような多孔質フィルムは表面を親水化処理してできる親水性のフィルムを用いることもできる。このフィルムの厚みは80μm以下であることが必要であり、その空孔率が50%〜85%のものを用いることが必要である。
粒子形体で用いる場合は、粒子としては各種の無機材料、有機材料を用いることができる。無機材料としては、シリカ、アルミナ、フッ素系樹脂など、有機材料としてはナイロン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミドなどのビーズが好ましく、更にはビーズがその成分として架橋基を有する成分が含有されていることが好ましく、電解液による膨潤が防止できる。これらの粒子の平均粒径は、10μm〜50μmが好ましく15μm〜30μmがさらに好ましい。セパレータが電解質と一体化する場合は、例えば、ポリマーなどによってゲル化した電解液、電解液中の化合物の架橋反応によって電解液を架橋して粘度を高めた電解液などが用いられる。これらのいわゆる擬固体化された電解液も広義のセパレータに含まれる。
(モジュール)
本願発明の色素増感型光電変換素子は、更に色素増感太陽電池に組み上げるためには、モジュール化する必要があり、以下に簡単に記述する。一般的には下記が本構成の代表となる。
(集電線)
光電極の透明導電膜に集電線を配備し、区分された光電極透明導電膜上に増感色素を吸着した光電極基板と、対向極の導電膜からなる集電線を配備した対向電極とを、集電線上の透明導電膜上に設けられたシール部により接着させてセル部を設け、そのセル部に電解質層を封入したプラスチック基板からなる色素増感太陽電池モジュールが好ましい。
光電極および対向電極の集電線は、銀、銅、アルミニウム、タングステン、ニッケル、クロムのうちから選ばれた少なくとも1つ以上の金属あるいはこれらの合金からなることが好ましい。集電線が透明基板上に格子状に形成され形状でも好ましい。集電線の形成法としては、スパッタ法、蒸着法、メッキ法あるいはスクリーン印刷法などが用いられる。
(モジュール化)
また集電線で区分された透明導電膜上に半導体微粒子膜を形成しその上に色素を吸着させて光電極を作製する工程と、基板上に導電膜を形成し対向電極を作製する工程と、集電線上の透明導電膜上にシール部を形成し光電極と対向電極を接着してセル部を形成する工程と、そのセル部に電解質を封入する工程からなる色素増感太陽電池モジュールの作製することが好ましい。なおセル部に電解質を封入する工程を予め実施し、しかる後に集電線上の透明導電膜上にシール部を形成し光電極と対向電極を接着してセル部を形成する工程を実施してもよい。集電線で集められた発電電力は、リード線に接合して所望とする電気機器類に接続して、発電源として利用するものである。この時、各単位セルのみの利用のみでもよく、2個以上のセルをリード線で結合してモジュール化することが更に好ましい。その際に、各セルを直列、並列でも良く、更には直列と並列を組み合わせてもよい。
(外装、バリアー包装体)
更に本発明では、その基板が水蒸気やガスに対してその透過性を低減するように設計されているが、過酷な環境条件により出力の劣化が見られる可能性があり、特に高温度で高湿度での環境条件で耐久性付与が重要である。これらの改良方法としては、基板にガスや水蒸気に対するバリアー特性を有する基板にするか、あるいはバリアー性のある包装体で、本発明の色素増感型光電変換素子を包み込むことで達成できる。以下に、本発明で好ましく用いられるバリアフィルム、特に水蒸気バリアー性について以下に記述する。
前述したように、発明の色素増感型光電変換素子は、基板の外部にガスや水蒸気に対するバリアー性を有する層を有することも好ましい。さらに、水蒸気バリアー性のある包装材料で包装あるいは包み込まれていても好ましい。その際に、本発明の色素増感型光電変換素子とハイバリア包装材料に間に空間があってもよく、また接着剤で色素増感型光電変換素子を接着させてもよい。更には、水蒸気やガスを通しにくい液体や固体(例えば、液状またはゲル状のパラフィン、シリコン、リン酸エステル、脂肪族エステルなど)を用いて、色素増感型光電変換素子を包装材料に包装してもよい。
本願発明で好ましく用いられるバリアー性のある基板あるいは包装材料の好ましい水蒸気透過度は、40℃、相対湿度90%(90%RH)の環境下で0.1g/m/日低下であり、より好ましくは0.01g/m/日以下であり、更に好ましくは0.0005g/m/日以下であり、特に好ましくは0.00001g/m/日以下である。また、環境温度が60℃、90%RHでのより過酷な場合でも、バリアー性のある基板あるいは包装材料の水蒸気透過度は、より好ましくは0.01g/m/日以下であり、更に好ましくは0.0005g/m/日以下であり、特に好ましくは0.00001g/m/日以下である。またバリアー性のある基板あるいは包装材料の酸素透過率は25℃、0%RHの環境下において、好ましくは約0.001g/m/日以下であり、より好ましくは0.00001g/m/日が好ましい。
これらの本願発明の色素増感型太陽電池用バリアー性のある基板あるいは包装材料に、水蒸気やガスに対するバイア性付与は、特に限定されないが、太陽電池に必要な光量を妨げないことが必要であるために透過性のあるバリアー性のある基板あるいは包装材料であり、その透過率は好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。上記の特性を有するバリアー性のある基板あるいは包装材料は、その構成や材料において特に限定されることはなく、該特性を有するものであれば特に限定されない。
本願発明の好ましいバリアフィルムのある基板あるいは包装材料は、プラスチック支持体上に水蒸気やガスの透過性が低いバリアー層を設置したフィルムであることが好ましい。ガスバリアフィルムの例としては、酸化ケイ素や酸化アルミニウムを蒸着したもの(特公昭53−12953、特開昭58−217344)、有機無機ハイブリッドコーティング層を有するもの(特開2000−323273、特開2004−25732)、無機層状化合物を有するもの(特開2001−205743)、無機材料を積層したもの(特開2003−206361、特開2006−263989)、有機層と無機層を交互に積層したもの(特開2007−30387、米国特許6413645、Affinitoら著
Thin Solid Films 1996年 290−291頁)、有機層と無機層を連続的に積層したもの(米国特許2004−46497)などが挙げられる。
以下、実施例及び比較例により本願発明を詳しく説明する。ただし、本願発明は、実施例に限定されるものではない。
<実施例1―1>
(1)多孔質半導体基板の作製
透明導電膜として、インジウム−スズ酸化物(ITO)をスパッタ処理したポリエチレンナフタレートフィルム(ITO−PENフィルム、フィルム厚み200μm、ITO厚み200nm、シート抵抗15Ω/sq)(基板101)を幅10cm、長さ20cmにカットし、メタノールでITO面を洗浄後、ITO面を表にして、平滑なガラス台の上に真空ポンプを使って固定した。
バインダーフリーの酸化チタンペースト(PECC−C01−06、ペクセル・テクノロジーズ(株)製)をベーカー式アプリケーターを用いて、塗布厚み150μmとなるように塗布した。塗布層を常温で10分間乾燥させた後、150℃の恒温層中でさらに5分間加熱乾燥して、酸化チタン半導体微粒子膜基板を作製した。その後該光電極基板を放冷後室温(25℃)として、幅1.2cm、長さ2.0cmのサイズにカットした。さらに、カットした該基板の短辺(1.2cmの辺)の一方から、3mm内側より、酸化チタン膜を直径6mmの円となるように爪楊枝を用いて不要な酸化チタン層を除去して、多孔質半導体基板(基板101)を作製した。
(2)光電極の作製
基板101を、再度110℃にて10分間加熱乾燥した後、増感色素A(0.1mM)、アジピン酸(5mM)を含有した色素溶液(溶媒:エタノール)に浸漬した。このとき、充分な色素吸着を行うため、色素溶液は、電極1枚当たり、2mL以上を目安とした。色素吸着を終了した後に、色素溶媒(エタノール単独)50mLに酸化チタン電極基板を浸漬して洗浄した。洗浄後、この基板を、80℃、5分間暗所下で乾燥させ、光電極(光電極101)を作製した。 色素浸透性は、色むら、濃さを基板側からの目視により判断した。酸化チタンの白色が残らず、色むらがない場合を○、酸化チタンの白色が残り、色むらがある場合を×とした。
(3)電解液の調製
N−メチルベンズイミダゾール0.066g、ヨウ化テトラブチルアンモニウム0.738g、1,3−ブチルメチルイミダゾリウムヨウ化物0.532g、グアニジンチオシアネート0.058gを、5mLのメスフラスコに入れ、プロピレンカーボネートを全量で5mLになるように加えた。超音波洗浄機による振動により1時間撹拌したのち、24時間以上暗所に静置して、ヨウ素を含まない電解液(電解液101)を調製した。
(4)対向電極の作製
インジウム−スズ酸化物(ITO)をスパッタ処理したポリエチレンナフタレートフィルム(ITO−PENフィルム、フィルム厚み200μm、ITO厚み200nm、シート抵抗15Ω/sq)に塩化白金酸の水溶液をスプレイで塗布した。乾燥後、150℃で20分間熱分解処理を行い、平均厚みが約5nmの白金膜を形成して対向電極(対向電極101)を作製した。得られた対向電極は、光透過率が73%で、サイズを幅1.5cm、長さ2.5cmに裁断した。
(5)色素増感型光電変換素子の作製
サーリンフィルム(厚さ25μm、デュポン社製)を、14mm四方に切り取り、さらに中心部を直径9mmにくり抜き、スペーサーフィルムを作製した。光電極101、対向電極101を、スペーサーフィルムを挟んで導電面が内側になるように対向させて貼り合せ、110℃に加熱したホットプレートの上で1分間熱圧着させた。放冷後、対向電極に開けた電解液注液用の一方の穴から、電解液101を注液した。電解液注液用の穴は、サーリンフィルムを用いて、110℃でカバーガラスを接着させることで封じた。カバーガラスの上から110度に加温した半田ごてにより熱を加えることによって、カバーガラスを接着した。作製した色素増感変換素子の電極の端子には、集電効率を高めるために、導電アルミテープ(No.5805、スリオンテック社製)を貼って色素増感太陽電池素子(素子101)を作製した。
(6)光電変換素子の評価(変換効率)
光源として、150Wキセノンランプ光源にAM1.5Gフィルタを装着した擬似太陽光照射装置(PEC−L11型、ペクセル・テクノロジーズ(株)製)光源を用いた。光量は、1sun(AM1.5G、100mWcm-2(JIS−C−8912のクラスA))に調整した。作製した色素増感型太陽電池をソースメータ(2400型ソースメータ、Keithley社製)に接続した。電流電圧特性は、1sunの光照射下、バイアス電圧を、0Vから0.9Vまで、0.01V単位で変化させながら出力電流を測定した。出力電流の測定は、各電圧ステップにおいて、電圧を変化後、0.05秒後から0.15秒後の値を積算することで行った。バイアス電圧を、逆方向に0.9V〜0Vまでステップさせる測定も行い、順方向と逆方向の測定の平均値を、光電流とした。これによりエネルギー変換効率(変換効率)を求めた。
<実施例1−2〜1−4>
飽和脂肪族ジカルボン酸として、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸を用いた点を除き、実施例1−1と同様にした。
<実施例1−5〜1−10>
飽和脂肪族ジカルボン酸(セバシン酸)の濃度をそれぞれ、0.5mM、2.5mM、10mM、25mM、50mM、100mMとした点を除き、実施例1−3と同様にした。
<実施例1−11、1−12>
増感色素として、色素Bを用いた点を除き、それぞれ実施例1−1、1−3と同様とした。
<比較例1−1>
飽和脂肪族ジカルボン酸を添加しなかった点を除き、実施例1−1と同様とした。
<比較例1−2〜1−6>
飽和脂肪族ジカルボン酸として、それぞれ、モノカルボン酸(ラウリン酸、ミリスチン酸)、トリカルボン酸(クエン酸)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸)、ステロイド骨格を有するカルボン酸(デオキシコール酸)を用いた点を除き、実施例1−1と同様とした。
<実施例2−1、比較例2−1>
増感色素として、色素Cを用いた点を除き、実施例1−3と同様とした。また、比較例2−1は、飽和脂肪族ジカルボン酸(セバシン酸)5mMを添加しない点を除き、実施例2−1と同様とした。
<実施例3−1、比較例3−1>
実施例3−1は、増感色素として色素Dを用い、飽和脂肪族ジカルボン酸(スベリン酸)10mM、色素溶液の溶媒をトルエンとした点除き、実施例1−1と同様とした。また、比較例3−1は、飽和脂肪族ジカルボン酸(スベリン酸)10mMを添加しない点を除き、実施例3−1と同様とした。
<実施例4−1、比較例4−1>
実施例4−1は、増感色素として色素Eを用い、飽和脂肪族ジカルボン酸(ドデカン二酸)25mM、色素溶液の溶媒をアセトニトリルとした点除き、実施例1−1と同様とした。また、比較例4−1は、飽和脂肪族ジカルボン酸(ドデカン二酸)25mMを添加しない点を除き、実施例4−1と同様とした。
以下、実施例及び比較例により作製した色素増感型光電変換素子の色素溶液組成、色素浸透性、光電変換効率を表1に示す。
また、実施例及び比較例に用いた色素を以下に示す。
(結果)
本発明の飽和脂肪族ジカルボン酸を使用していない比較例である試料13〜18は、変換効率の向上が見られないことがわかる。
増感色素の種類が異なっても飽和脂肪族ジカルボン酸を併用すれば変換効率が向上することがわかる(試料19〜24)。
本願発明に従う色素増感型光電変換素子では、電解液へのヨウ素添加をしなくても、太陽光エネルギー変換の効率に優れ、耐久性に優れ、低コストでかつ環境循環性に優れ、環境負荷の低い色素増感型光電池が得られる。

光電極層
11 透明基板
12 透明電極層
13 半導体粒子
14 増感色素
2 電解液層
3 対向電極層
31 透明基板
32 透明導電層
41 光電極層側の入射光
42 対向電極側の入射光
5 電流


Claims (6)

  1. 導電性基板上に、色素増感された多孔質半導体微粒子からなる光電極層、電解液層および対向電極層をこの順で有する色素増感型光電変換素子において、増感色素と少なくとも一種の飽和脂肪族ジカルボン酸を含有する色素溶液を用いて、前記多孔質半導体微粒子に前記増感色素を吸着することを特徴とする色素増感型光電変換素子の製造方法。
  2. 前記色素溶液中に含まれる前記飽和脂肪族ジカルボン酸量が、前記増感色素のモル当量に対して1モル当量〜1000モル当量であることを特徴とする請求項1に記載した色素増感型光電変換素子の製造方法。
  3. 前記色素溶液中に含まれる前記増感色素の溶液濃度が、0.01mM〜10mMであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載した色素増感型光電変換素子の製造方法。
  4. 前記飽和脂肪族ジカルボン酸が炭素数6〜12の飽和脂肪族ジカルボン酸であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載した色素増感型光電変換素子の製造方法。
  5. 前記色素溶液の温度が0℃〜50℃であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載した色素増感型光電変換素子の製造方法。
  6. 前記多孔質半導体微粒子への前記増感色素の吸着手段が、前記増感色素と少なくとも一種の飽和脂肪族ジカルボン酸を含有する色素溶液に多孔質半導体微粒子層を形成した導電性基板を浸漬するものであって、前記浸漬時間が0.5分〜60分であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載した色素増感型光電変換素子の製造方法。

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