JP2013159063A - インクジェット記録ヘッド - Google Patents

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Abstract

【課題】複雑な回路や制御システムを必要とすることなく、破壊した電気熱変換素子に対する駆動信号の供給を自動的にカットするフェイルセーフ機能をもつインクジェット記録ヘッドを提供すること。
【解決手段】複数のヒータ111のそれぞれに対応するようにタンタル保護膜の複数の部分309Aを個別に形成し、その部分309Aを介して、その部分309Aに対応するヒータ111の駆動信号の配線を形成する。
【選択図】図6

Description

本発明は、電気熱変換素子(ヒータ)によってインクを発泡させたときの発泡エネルギーを利用して、インクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドに関するものである。
インクジェット記録ヘッドとしては、インクを吐出するための吐出エネルギー発生素子として電気熱変換素子(ヒータ)を用いたものがある。このような記録ヘッドは、半導体ウェハー上に形成されたヒータによりインクを瞬間的に加熱して、インクに膜沸騰を生じさせ、そのときの発泡エネルギーを利用して、ノズル先端の吐出口からインクを吐出する構成となっている。このようなインクの吐出方式は、バブルジェット方式とも称されている。
このような記録ヘッドにおいて、インクの吐出不良の主な原因としては、ノズル内におけるゴミなどの異物詰まりやヒータ破壊などが考えられる。ゴミ詰まりは、ノズルにおけるインクの吐出状態を良好に維持するための回復処理によって解消できるものの、破壊されたヒータは回復できない。
ヒータの発熱により発泡したインクが消泡するときには、その消泡力がヒータ上の1点に集中するキャビテーションにより、ヒータの物理的破壊を招くおそれがある。そのため、ヒータの上面には、タンタルなどの熱に強く、程良い衝撃吸収性、硬度、およびインクの化学耐性を持った金属が保護膜(タンタル保護膜)として形成されている。仮に、タンタル保護膜の熱による表面酸化が進み、それが破壊されて絶縁層からヒータに達する穴が形成された場合には、ヒータが破壊されて、インクを発泡させることができなくなる。この場合には、タンタル保護膜とヒータが直接あるいはインクを介して接触して、それらが電気的短絡(タンタルリーク)する。
タンタル保護膜は、生成の過程上エッチングで形成されて、その面積によるコスト差が生じないため、それはヒータ形成されるヒータボード上の全面にパターンニングされる。通常、タンタル保護膜は電気的に未接続である。タンタル保護膜をヒータボード上の全面にベタなパターンとして形成した場合、複数ヒータがタンタルリークしたときに、それらに対応する複数のリーク部の電圧の差異によってタンタル保護膜に電流が流れるおそれがある。その電流は、タンタル保護膜とヒータとの間に位置する保護膜にダメージを与えるおそれがある。そのため、タンタル保護膜のパターンは、ヒータボード上における個々のヒータ、および回路形成部の上部において分けられている。このように、タンタル保護膜のパターンを複数に分けた場合、1つのヒータにおけるタンタルリークが他のヒータに拡大することは防げるものの、破壊されたヒータを駆動可能な状態のままにしておくと新たな不具合を引き起こすおそれがある。したがって、ヒータの破壊を検知して、そのヒータに対する駆動信号の供給をカットして、他のヒータを保護することが必要となる。
特許文献1には、記録ヘッドにおけるインク流路内のインクに接する電極と、タンタル保護層が消耗したときにインクに接する電極と、を設けて、タンタルリークが発生した際にインクを通して流れるリーク電流を測定回路によって測定する構成が記載されている。その測定回路の測定結果に基づいて、ヒータの状態を検知することができる。
また特許文献2には、ヒータを駆動するスイッチ回路とヒータとの接続点の電圧を検出することにより、インクの発泡の確認する構成が記載されている。この構成によって、ヒータの破壊によるインクの不吐出を検知することもできる。
特開2000−280477号公報 特開2005−305966号公報
しかしながら、特許文献1に記載の構成においては、ヒータボードに測定電極を搭載することが必要となる。さらに、記録ヘッドを搭載する記録装置本体側に対して、電流測定回路、破壊したヒータに対する駆動信号の供給をカットする回路、および、その回路を制御するためのメモリなどを含む複雑な制御システムなどを備えることが必要となる。また、特許文献2に記載の構成においても電圧検出回路を含む制御システムが必要となる。
本発明の目的は、複雑な回路や制御システムを必要とすることなく、破壊した電気熱変換素子に対する駆動信号の供給を自動的にカットするフェイルセーフ機能をもつインクジェット記録ヘッドを提供することにある。
本発明のインクジェット記録ヘッドは、インクが供給される複数のノズルと、前記複数のノズル毎に備えられた複数の電気熱変換素子と、を含み、前記複数の電気熱変換素子を個別の駆動信号に基づいて発熱させて、当該電気熱変換素子に対応する前記ノズル内のインクを発泡させることにより、当該電気熱変換素子に対応する前記ノズルからインクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドにおいて、前記複数の電気熱変換素子の上部のそれぞれに、導電性の耐キャビテーション膜を個別に形成し、前記複数の電気熱変換素子毎の前記耐キャビテーション膜を介して、当該耐キャビテーション膜に対応する前記電気熱変換素子の前記駆動信号を伝達する配線を形成することを特徴とする。
本発明によれば、複数の電気熱変換素子のそれぞれに対応するように複数の耐キャビテーション膜を個別に形成し、その耐キャビテーション膜を介して、その耐キャビテーション膜に対応する電気熱変換素子の駆動信号の配線を形成する。このように駆動信号の配線を変更する簡易な構成により、耐キャビテーション膜の破壊されたときには、それに対応する電気熱変換素子の駆動信号の供給を自動的にカットすることができる。この結果、フェイルセーフ機能を発揮して、破壊された電気熱変換素子に駆動電流を供給した場合に生じる新たな不具合の発生を防止することができる。
(a)は、本発明のインクジェット記録ヘッドの基本構成を説明するための分解斜視図、(b)は、(a)のIb部分の拡大平面図、(c)は、(b)のIc部分の拡大斜視図である。 (a)から(e)は、図1の記録ヘッドによるインクの吐出動作の説明図である。 (a)は、図1の記録ヘッドにおけるノズルヒータ形成部の拡大断面図、(b)は、(a)におけるタンタル保護膜が破損したときの断面図、(c)は、(a)におけるタンタル保護膜に穴が開いたときの断面図である。 図1の記録ヘッドにおけるヒータの駆動回路の基本構成の説明図である。 (a)は、図1(b)のヒータボードの拡大平面図、(b)は、本発明の一実施形態におけるタンタル保護膜の形成パターンの説明図、(c)は、タンタル保護膜の形成パターンの比較例の説明図である。 本発明の一実施形態におけるヒータの駆動回路の説明図である。 本発明の一実施形態におけるノズルヒータ形成部の概略斜視図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1から図5は、本発明の基本構成の説明図であり、図6および図7は、本願発明の特徴的な構成の説明図である。
まず、図1(a),(b),(c)を用いて、インクジェット記録ヘッドの基本構成について説明する。
本例の記録ヘッドは、いわゆるフルラインタイプの記録装置などに用いられる長尺の記録ヘッドであり、図1(a)のように、インク供給ボックス101、電気基板102、およびセラミック板103がネジ止めされた構成となっている。セラミック板103の上にはヒータボード104と電気基板102が配置され、その電気基板102の端子とヒータボード104の端子部は、金ワイヤー105によってワイヤーボンディング接続されている。ヒータボード104は半導体ウェハーより形成されており、Si基板上に各種回路が構成される。ヒータボード104は、図1(b)のように、ワイヤーボンディング端子部106、論理回路形成部107、およびノズルヒータ形成部108を含む。本例のような長尺の記録ヘッドにおいては、複数のセルに分けられた回路が配列されたものもある。ヒータボード104のノズルヒータ形成部108には、吐出エネルギー発生素子としての電気熱変換素子(ヒータ)111の両サイドにノズル壁109が形成されている。ノズル壁109の上面に、インク流路110Aが形成された天板110をフィルムによって接着することにより、先端の吐出口からインクを吐出するためのノズルが形成される。ノズルは、図1(c)中の左右方向のノズル列に沿って複数形成されている。
ヒータ111をパルス駆動することにより、インク流路110Aおよびノズル内のインクの内、ヒータ111の周辺のインクが急激に加熱されて膜沸騰し、そのときの発泡により、ヒータ111とノズル先端の吐出口との間に位置するインクが吐出口から吐出される。このようにインクを吐出可能な記録ヘッドは、ノズル列と交差する方向に沿って記録媒体と相対移動しつつインクを吐出することにより、記録媒体上に画像を記録する。
図2は、インクの吐出動作の説明図である。
ヒータ111の発熱により、ノズルN内に満たされたインクは、ヒータ111の表面全体から膜沸騰する(図2(a))。その膜沸騰により生じたヒータ111上の気泡は、やがて1つにまとまり(図2(b))、さらに、その気泡が成長することにより、ヒータ111とノズル先端の吐出口との間のインクは、押し出されるようにして吐出口からインク滴として吐出される(図2(c))。ヒータ111の駆動パルスが止まって、気泡が急激に消泡し始める際、それはヒータ111上の局所的な1点において消泡する(図2(d),(e))。気泡が完全に消えるときには、そのヒータ111上の局所的な1点に対してインクが激しく衝突する。この衝突が繰り返されることによって、ヒータ111はダメージ(キャビテーションによるダメージ)を受ける。
図3(a)は、ヒータボード104におけるノズルヒータ形成部108付近の断面図である。Si基板301上には、SiO2層302とBPSG膜303が形成されており、さらにヒータ111が形成される。ヒータ111は、図3(a)中の点線で囲まれた部分であり、TaSiN層306によって形成されている。ヒータ111は、AlCu層307とAlSi層304によって形成されるヒータ駆動用の電源パターンに接続されている。その電源パターンは、SiO層305の絶縁層を通るスルーホール310を介して立体配線されている。
ヒータ111上には、それを物理的衝撃から保護するためのSiN保護層308、さらに、導電性の耐キャビテーション膜としてのTa層(タンタル層;タンタル保護膜)309が形成されている。インクと直接に接する部分の材質として、高温、化学、酸化、キャビテーション衝撃に対する耐性の優れたタンタルが適している。タンタルは、融点が3000℃以上あり、耐酸性が強く、硬度、および適度な衝撃吸収性がある金属である。また、タンタルは、銅、銀、およびアルミニウムに比べて導電率は低いものの、金属の中では比較的に電気を流しやすい物質である。タンタル保護膜309は、その膜厚を厚くするほど、耐キャビテーション性を発揮してヒータ111の寿命を延ばすことができるものの、ヒータ111からインクへの熱伝導性が悪くなるため、適度な膜厚に設定される。
図3(b)は、キャビテーション衝撃の繰り返しによって、タンタル保護膜309に穴が開いた状態を示す。タンタル保護膜309が破壊された場合には、図4(c)のように、SiN保護層308とヒータ111がすぐに破壊されることになる。その際、穴の開いたタンタル保護膜309とヒータ111にインクが染み込んでいくことにより、電気的にレアショート状態となってタンタルリークが発生する。
図4は、ヒータ111の駆動回路の説明図である。
ヒータ111は記録ヘッドに多数形成されており、例えば、記録解像度が1200dpiの記録ヘッドにおいては、ヒータ111が1インチ当たり1200個の配列されている。図の点線で囲まれたヒータ別駆動部401はヒータ111の数分備えられており、それぞれのヒータ別駆動部401に対しては、後述する時分割信号1,2,3、PHX信号、およびHENB信号(ヒートイネーブル信号)の信号線が並列に接続されている。
記録データは、DCLK信号(データクロック信号)のタイミングに合わせて、IDATA信号により記録装置本体からシリアルデータとして送られてくる。記録データは、シフトレジスタ(Data S/R)403によりパラレルデータに変換され、データラッチ回路(Data Latch)404に、ノズル列に対応する1記録ライン分の記録データがデータラッチ信号(DLT信号)によってセットされる。一方、ヒータを駆動するパルス信号としてのHENB信号は、記録装置本体から送られからAND回路405に入力されて、ヒータ111毎の記録データと論理積がとられる。記録データがベタ画像に対応する100%の記録デューティのときに、全てのヒータ111を同時に駆動した場合には、記録ヘッドの消費電力の増大、および全ノズル内にインクを同時に供給するための高いリフィル性能が求められることになる。そのため、全てのヒータ111を複数のブロックに分けて、それらのブロックの駆動時期をずらす(ブロック駆動)。本例の場合は、AND回路406に入力される時分割信号1,2,3によって、全てのヒータ111を特定のブロックに分けて、それらを順番に時分割駆動する。このようなブロック駆動により、1記録ラインの直線性は若干悪化するものの、インクの吐出周波数と記録速度の関係によって、その影響を小さく抑えることができる。HENB信号は、時分割の回数分(分割したブロック数分)のパルス信号を繰り返し出力する。また、記録データの有無に拘わらず、OR回路407に、全てのヒータ111を駆動するためのPHX信号を入力する。
図4のヒータ111に対応する記録データが入力され、かつ、そのヒータ111の駆動タイミングとなったときは、そのヒータ111に対応するLDMOSトランジスタ402を駆動される。そのトランジスタ402は、ヒータボード104内の論理回路形成部107に形成されている。本例の場合は、AND回路406の5Vの出力信号によってトランジスタ402がONとなることにより、ヒータ駆動電源からの24Vの駆動電圧がヒータ111に印加されて、そのヒータ111が駆動される。
図5は、タンタル保護膜309の形成パターンの説明図である。
前述したように、ヒータボード104のノズルヒータ形成部108にはヒータ111が形成されている(図5(a))。ヒータ111の形成位置、形状、およびシート抵抗値などは、ノズルの設計と相俟って、インクの吐出量や吐出速度などを決定する。このような記録ヘッドにおいて、タンタル保護膜309は、本来、ヒータ111上にだけ形成すればよい。しかしタンタル保護膜309は、記録ヘッドの製造の過程においてエッチングにより半導体ウェハー全面に生成され、レアメタルであるタンタルの使用量は変わらないため、表面保護を兼ねて、それをヒータボード104の全面にパターニングすることが望ましい。
図5(b)のタンタル保護膜309は、ノズルの上部に位置する部分309Aがノズル毎に対応する複数の部分に分けて形成され、他の部分309Bは分けずに形成されている。前者の部分309Aはノズルヒータ形成部108に位置し、後者の部分309Bは論理回路形成部107に位置する。図5(c)の比較例としてのタンタル保護膜309は、図5(b)の部分309A,309Bがいずれも連続する一様なパターンを成すように形成されている。図5(c)のように、ヒータボード104の全面に一様なパターンを成すようにタンタル保護膜309を形成した構成において、2つ以上のヒータ111に対応する2箇所以上の部分309Aにタンタルリークが生じた場合を想定する。この場合には、それらのリーク箇所の電位差によってタンタル保護膜309に電流が流れる。それらの電位差が大きい場合には、それらのリーク箇所の間に位置するタンタル保護膜309の部分の表面の酸化が進み、その部分の耐キャビテーション性が損なわれるおそれがある。つまり、タンタルリークが生じたノズルの影響が他のノズルにまで及ぶことにより、結果的にヒータ111の寿命が短くなるおそれがある。一方、図5(b)のように、部分309Aのタンタル保護膜309がノズル毎に隔てられて個別に形成されている場合には、タンタルリークが生じたノズルの影響が他のノズルにまで及ぶことはない。しかし、タンタルリークすなわち破壊されたヒータ111に駆動パルスを与え続けた場合、タンタルリークの状態によっては、破壊されたヒータ111に染み込んだインクによって、そのヒータ111の抵抗値は、それを短絡したときと近い値となるおそれがある。この場合には、トランジスタ402のONによって大きなヒータ駆動電流が流れて、その周辺のヒータ111やヒータボード104の部分に悪影響を及ぼすおそれがある。
図6は、本発明の特徴的な構成部分の説明図である。
ヒータ111に対応するトランジスタ402の駆動信号線は、そのヒータ111に対応するタンタル保護膜309の部分309Aを介して配線する。つまり、トランジスタ402は、それに対応するタンタル保護膜309の部分309Aを通して入力される5Vの駆動信号によって、スイッチ動作することになる。また、本例においては、ヒータ111およびタンタル保護膜309の部分309Aがノズルヒータ形成部108に形成されており、一方、駆動パルス信号の入力部およびトランジスタ402が論理回路形成部107に構成されている。したがって本例の場合は、トランジスタ402の駆動信号をタンタル保護膜309の部分309Aを通して入力するためには、その駆動信号を伝達する配線パターンが迂回するように形成される。
このように、トランジスタ402の駆動信号線に、それに対応するタンタル保護膜309の部分309Aを介在させることにより、その部分309Aがタンタルリークによって断線したときには、自動的にトランジスタ402の駆動信号線が断線する。この結果、きわめて簡易な構成によって、ヒータ111の自動的なフェイルセーフが可能となる。
図7は、ノズルヒータ形成部108の概略斜視図である。図7において、ノズル壁109および天板110の図示は省略されており、また、タンタル保護膜309の部分309Aおよびヒータ111に対する配線は簡略化されている。実際には、タンタル保護膜309の部分309Aは、ノズルヒータ形成部108から論理回路形成部107に向かって延在している。また、部分309Aの一端側とAND回路406とを接続する配線408、および部分309Aの他端側とトランジスタ402とを接続する配線409も同様に、ノズルヒータ形成部108から延在している。また、ヒータ111の一端側に導通するAlCu層307を24Vの入力端子に接続する配線410、およびヒータ111の他端側に導通するAlSi層304をトランジスタ402に接続する配線410も同様に、ノズルヒータ形成部108から延在している。ノズルヒータ形成部108には、配線408と、タンタル保護膜309の部分309Aの一端側と、を接続するための配線パターン412が形成されている。
キャビテーション衝撃の繰り返しによって、タンタル保護膜309の部分309Aに亀裂が入って、その部分309Aが物理的に断線したときには、トランジスタ402の駆動回路が遮断される。したがって、その部分309Aに対応するヒータ111の通電を阻止するためのフェイルセーフが自動的に機能する。トランジスタ402がOFFとなっていれば、破壊されたタンタル保護膜309の部分309Aやヒータ111がインクと接しても問題はない。
また、図7中の左側のタンタル保護膜309の部分309Aのように、それを断線させない不完全な亀裂が生じた場合には、トランジスタ402の駆動回路は遮断されず、それは駆動されることになる。しかし、この場合には、下記の理由(A),(B)によりフェイルセーフが可能となる。
(A)タンタル保護膜309の部分309Aに不完全な亀裂が生じたまま記録動作を実行して、ヒータ111の通電を繰り返すことにより、キャビテーション衝撃が繰り返されて、やがて部分309Aの亀裂が大きくなって、それが断線する。
(B)VH電源24Vが印加されるヒータ111と、5Vが印加されるタンタル保護膜309の部分309Aと、の間にレアショートの状態となり、部分309Aあるいは配線パターン412等、駆動信号の配線を形成するパターン細線部が断線する。つまり、駆動信号の配線パターンが高電圧の入力により破壊(焼損)されて断線する。
このように、タンタル保護膜309の部分309Aを経由するようにヒータ111の駆動信号用の配線を形成することにより、その部分309Aが破壊したときに、駆動信号の供給を自動的に停止させるフェイルセーフ機能を発揮することができる。
(他の実施形態)
上述した実施形態においては、駆動信号に応じてヒータ111に駆動電圧を印加するスイッチ部として、LDMOSトランジスタを用いた。しかし、そのスイッチ部の構成は任意であり、例えば、NPNバイポーラトランジスタ、MOSトランジスタ、オフセットMOSトランジスタ、およびVDMOSトランジスタを用いることもできる。本発明の記録ヘッドは、電気熱変換素子毎の駆動信号の配線中に、その電気熱変換素子に対応する導電性の耐キャビテーション膜を介在させる構成であればよい。
本発明は、インクの吐出エネルギー発生素子として、電気熱変換素子(ヒータ)を用いる種々の構成の記録ヘッドに対して広く適用することができ、上述したようなフルラインタイプのインクジェット記録装置に用いられる長尺な記録ヘッドのみに限定されない。例えば、記録ヘッドの主走査方向の移動と、その主走査方向と交差する副走査方向における記録媒体の搬送と、を繰り返すことによって画像を記録するシリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置における記録ヘッドに対しても本願発明は適用可能である。
104 ヒータボード
111 ヒータ(電気熱変換素子)
202 インク
309 タンタル保護膜(耐キャビテーション膜)
402 トランジスタ(スイッチ部)
N ノズル

Claims (6)

  1. インクが供給される複数のノズルと、前記複数のノズル毎に備えられた複数の電気熱変換素子と、を含み、前記複数の電気熱変換素子を個別の駆動信号に基づいて発熱させて、当該電気熱変換素子に対応する前記ノズル内のインクを発泡させることにより、当該電気熱変換素子に対応する前記ノズルからインクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドにおいて、
    前記複数の電気熱変換素子の上部のそれぞれに、導電性の耐キャビテーション膜を個別に形成し、
    前記複数の電気熱変換素子毎の前記耐キャビテーション膜を介して、当該耐キャビテーション膜に対応する前記電気熱変換素子の前記駆動信号を伝達する配線を形成することを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
  2. 前記複数の電気熱変換素子はヒータボードに形成され、
    前記複数の電気熱変換素子の上部のそれぞれに、前記耐キャビテーション膜としてのタンタル層が個別にパターニングされていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
  3. 前記耐キャビテーション膜の破壊により、当該耐キャビテーション膜によって形成される前記配線が断線することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッド。
  4. 前記耐キャビテーション膜の破壊により、当該耐キャビテーション膜と、当該耐キャビテーション膜に対応する前記電気熱変換素子と、の間がインクを介して電気的にショートすることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッド。
  5. 前記複数の電気熱変換素子毎の前記駆動信号に基づいてスイッチ動作することにより、当該駆動信号に対応する前記電気熱変換素子に駆動電圧を印加する複数のスイッチ部を備え、
    前記複数の電気熱変換素子、前記複数の耐キャビテーション膜、および前記複数のスイッチ部は、ヒータボードに形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド。
  6. 前記スイッチ部は、NPNバイポーラトランジスタ、MOSトランジスタ、オフセットMOSトランジスタ、LDMOSトランジスタ、およびVDMOSトランジスタのいずれかであることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録ヘッド。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015223709A (ja) * 2014-05-26 2015-12-14 キヤノン株式会社 液体吐出ヘッド
JP2016097603A (ja) * 2014-11-21 2016-05-30 キヤノン株式会社 記録ヘッド基板、記録ヘッド及び記録装置
JP2018001748A (ja) * 2016-06-23 2018-01-11 キヤノン株式会社 液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置

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