JP2013158281A - 新規bace1活性測定方法 - Google Patents

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英訓 山川
Motoko Hosono
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Abstract

【課題】
本発明は、pHおよび基質濃度について従来法に比べ、より生体内の環境に近い条件でアッセイ可能とすることにより、阻害剤を正確に評価可能なアッセイを提供すること、を課題とする。
【解決手段】
従来、pH4.5付近であるとされていたBACE1の至適pH活性が、アミロイド前駆体タンパク質を基質として用いた場合はpH5.4〜6.8に変化すること、さらに感度も飛躍的に向上すること、を予想外に見出したことにより、上記課題を解決した。

【選択図】なし

Description

本発明は、BACE1活性を高感度で正確に評価する新規活性測定方法に関する。
アルツハイマー病(AD)は、老人斑、神経原繊維変化、神経細胞脱落そして認知障害によって特徴付けられる進行性の神経変性疾患である。病理学的、生化学的な検討から老人斑の構成分子であるアミロイドβタンパク質(Aβ)がADの原因分子であると考えられている(非特許文献1、2)。Aβは、その前駆タンパク質であるβAPPがβ―セクレターゼ(BACE1)により切断され、その後更にγ‐セクレターゼにより切断されることで産生されるペプチド断片である。したがって、BACE1を阻害してAβの産生を阻害することがAD治療の有効なアプローチであると考えられており、これまでBACE1阻害剤について多数の報告がある。しかしながら、BACE1アッセイで見出された阻害剤のなかには、生体ではBACE1の阻害効果を示さない場合も報告されており(非特許文献3)、BACE1アッセイの問題となっている。
アミロイド前駆体タンパク質部分ペプチドを基質として用いた検討から、BACE1の酵素活性の至適pHはpH4〜5であることが報告されている(非特許文献4)。そして、この至適pHは基質としてアミロイド前駆体タンパク質を用いた場合も同様であると考えられている(特許文献1、非特許文献5、非特許文献6)。例えば、非特許文献6では中性付近のpHではBACE1はアミロイド前駆体タンパク質との結合ができず、pH4.5〜5において、BACE1はアミロイド前駆体タンパク質と結合可能な活性型構造にシフトするというモデルが提唱されている。このため、BACE1のアッセイは基質の種類と関係なく、主にこのpH条件で行われている。
一方、生体内でのBACE1によるアミロイド前駆体タンパク質の切断反応は初期エンドソームで起こっており(非特許文献7)、その初期エンドソーム内のpHは6〜6.5である(非特許文献8)。すなわち、生体内でのBACE1よるアミロイド前駆体タンパク質の分解はpH6〜6.5で行われている。したがって、BACE1アッセイは生体内のpHを反映した条件で行われておらず、これまで初期エンドソーム内の条件に近いpH(例えばpH6.2付近)で、BACE1アッセイを行ったという報告はない。
さらに、アミロイド前駆体タンパク質部分ペプチドを基質として用いたBACE1アッセイは感度が悪い。例えば、過剰な質濃度(5μM)でアッセイが行われている(引用文献6)。しかし、生理的なアミロイド前駆体タンパク質濃度はnMオーダー(例えば過剰発現細胞数十nM程度(非特許文献10))と考えられているが、この程度の濃度でBACE1アッセイを行ったという報告はない。
このように、従来のBACE1のアッセイは生体内の環境を反映していないことから、生体内のpHでアッセイ可能で、感度が高いBACE1のアッセイ系を提供することが望まれていた。
特表2009−541311公報
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本発明は、pHや基質濃度について生体内環境に近い条件を有し、感度が高いBACE1のアッセイ系を構築することにより、阻害剤を正確に評価することが可能なアッセイ方法を提供すること、を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アミロイド前駆体タンパク質を基質として用いた場合、従来pH4.5付近であるとされていたBACE1反応の至適pHが、pH5.4〜6.8に変化し、感度も飛躍的に向上することを予想外に見出した。本発明者らは、この知見に基づいて、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1](1)配列番号1、3もしくは5で表されるアミノ酸配列を含むアミロイド前駆体タンパク質、または配列番号1、3もしくは5で表されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸を有する配列を含み、BACE1により切断される、アミロイド前駆体タンパク質変異体、
を、pH5.4〜6.8の条件下でBACE1と接触させる工程、および
(2)前記アミロイド前駆体タンパク質または前記アミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物の量を測定する工程、
を含むBACE1活性測定方法。
[2]前記アミロイド前駆体タンパク質または前記アミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物が、βCTFまたはsAPPβである、[1]に記載のBACE1活性測定方法。
[3](1)配列番号1、3もしくは5で表されるアミノ酸配列を含むアミロイド前駆体タンパク質、または配列番号1、3もしくは5で表されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸を有する配列を含み、BACE1により切断されるアミロイド前駆体タンパク質変異体、
を、被験物質の存在下、pH5.4〜6.8の条件下でBACE1と接触させる工程、
(2)前記アミロイド前駆体タンパク質または前記アミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物の量を測定する工程、および
(3)前記分解産物を、被験物質の非存在下でのアミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物の量と比較する工程、
を含むBACE1阻害剤のスクリーニング方法。
[4][3]に記載のBACE1阻害剤のスクリーニング方法であって、さらに
(4)被験物質の存在下でのアミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物の量が、被験物質の非存在下でのアミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物の量より減少している場合、被験物質をBACE1阻害剤として選択する工程、
を含むBACE1阻害剤のスクリーニング方法。
[5]前記アミロイド前駆体タンパク質または前記アミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物が、βCTFまたはsAPPβである、[3]または[4]に記載のBACE1阻害剤のスクリーニング方法。
[6]前記pH5.4〜6.8がpH5.6〜6.6である、[1]または[2]記載のBACE1活性測定方法。
[7]前記pH5.4〜6.8がpH5.9〜6.3である、[1]または[2]記載のBACE1活性測定方法。
[8]前記pH5.4〜6.8がpH6.0〜6.2である、[1]または[2]記載のBACE1活性測定方法。
[9]前記pH5.4〜6.8がpH5.6〜6.6である、[3]〜[5]のいずれかに記載のBACE1阻害剤のスクリーニング方法。
[10]前記pH5.4〜6.8がpH5.9〜6.3である、[3]〜[5]のいずれかに記載のBACE1阻害剤のスクリーニング方法。
[11]前記pH5.4〜6.8がpH6.0〜6.2である、[3]〜[5]のいずれかに記載のBACE1阻害剤のスクリーニング方法。
[12][1]〜[11]のいずれかに記載の方法に用いられる、キット。
などを提供する。
本発明は、従来は提供することが困難であった、pHや基質濃度について生体内環境に近い条件を有し、感度が高いBACE1のアッセイ系を構築することにより、阻害剤を正確に評価可能なアッセイ方法を提供する。
図1は、Aβの産生を模式的に示す。即ち、BACE1およびγ−secretaseによりアミロイド前駆体タンパク質が連続切断を受けてAβが産生されることを示す。 図2は、アミロイド前駆体タンパク質ペプチドを基質として用いたBACE1酵素活性のpHによる変化を示す。(a)は全長BACE1を酵素として用いた測定結果、(b)はBACE1細胞外領域を酵素として用いた測定結果を示す。図中、FL−BACE1は全長BACE1、rh−BACE1は、配列番号9で示されるBACE1の細胞外領域、peptideはアミロイド前駆体タンパク質ペプチド(配列番号7で示されるアミロイド前駆体タンパク質ペプチドのC末端に、ビオチンが付加されたもの)、を示す。 図3は、アミロイド前駆体タンパク質を基質として用いたBACE1酵素活性のpHによる変化を示す。(a)は全長BACE1を酵素として用いた測定結果、(b)はBACE1細胞外領域を酵素として用いた測定結果を示す。図中、FL−BACE1は全長BACE1、rh−BACE1は、配列番号9で示されるBACE1の細胞外領域、APPはアミロイド前駆体タンパク質、を示す。 図4は、アミロイド前駆体タンパク質を基質として用いたBACE1酵素活性のpHによる変化を示す。 図5、(a)BACE1阻害剤であるβ−secretase inhibitor IVの構造式、および(b)アミロイド前駆体タンパク質を用いたBACE1アッセイ系におけるβ−secretase inhibitor IVの阻害活性曲線を示す。 図6は、基質として用いたアミロイド前駆体タンパク質あるいはアミロイド前駆体タンパク質ペプチドの濃度と、BACE1によりそれぞれが分解されて生じた分解産物濃度との関係を示す。図中、黒四角(APP)はアミロイド前駆体タンパク質を、白丸(peptide)はアミロイド前駆体タンパク質ペプチド(配列番号7で示されるアミロイド前駆体タンパク質ペプチドのC末端に、ビオチンが付加されたもの)、を示す。
本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、本発明の属する分野の当業者によって通常理解される意味で用いられる。
本明細書において、「アミロイド前駆体タンパク質」とは、Amyloid Precurser Protein (APP)のことであり、老人班の主要構成成分であるアミロイドβペプチド(Aβ)の前駆体をいう。アミロイド前駆体タンパク質には、APP695、APP751、およびAPP770の3つが知られている。本発明におけるアミロイド前駆体タンパク質は特にAPP695が好ましい。
また、APP695、APP751、またはAPP770について、それぞれシグナルペプチド部分(各配列の1〜17位)が欠損したもの(配列番号1、3、または5)は本明細書で規定するアミロイド前駆体タンパク質に含まれる。
また、APP695、APP751、またはAPP770について、シグナルペプチド部分が欠損していないもの(配列番号2、4、または6)も本明細書で規定するアミロイド前駆体タンパク質に含まれる。つまりシグナルペプチドを有しないものおよびシグナルペプチドを有するものいずれも本発明書の「アミロイド前駆体タンパク質」に含まれる。
アミロイド前駆体タンパク質であればこれらに限られず、ヒト以外にもマウスおよびラットのものも利用することができる。本発明のアミロイド前駆体タンパク質はヒト、サル、イヌ、ウサギ、ラット、マウス、その他の動物の脳から抽出することができる。大腸菌や細胞(HEK細胞、COS−1細胞、又はCHO細胞等)で発現させた組換え体も利用できる。合成品でもよい。
本明細書において、「アミロイド前駆体タンパク質変異体」には、配列番号1、3、または5で表される配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸を有する配列を含み、BACE1により切断される、アミロイド前駆体タンパク質を含む。また配列番号2、4、または6で示される配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸を有する配列を含み、BACE1により切断される、アミロイド前駆体タンパク質も「アミロイド前駆体タンパク質変異体」に含まれる。つまり、これらのシグナルペプチドを有しないものおよびシグナルペプチドを有するものも、本発明書の「アミロイド前駆体タンパク質変異体」に含まれる。
また、これらのアミロイド前駆体タンパク質変異体としては、例えばスウェーデン変異を有するものであってもよい。スウェーデン変異を有するアミロイド前駆体タンパク質変異体とは、配列番号2の595位のLysがAsnに、そして596位のMetがLeuにそれぞれ置換した変異体をいう。
本明細書において、「BACE1」とは、アミロイド前駆体タンパク質をβ部位で切断する酵素をいう。例えばBACE1はAPP695のβ部位(配列番号2の596番目と597番目の間)を切断する。本発明におけるBACE1はアミロイド前駆体タンパク質をβ部位で切断する活性がある配列番号9記載の配列(より好ましくは配列番号10記載の配列)を含んでいるタンパク質であればよく、全長でもよい。また、アミロイド前駆体タンパク質をβ部位で切断する活性があれば、配列番号9(より好ましくは配列番号10)記載の配列において、1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたBACE1改変体であってもよい。代表的なBACE1としては、Homo sapiens Beta−site APP−cleaving enzyme 1(GenBank databases, NCBI. ACCESSION No.NP_036236)などを挙げることができるが、各種バリアントであってもよく(例えば、isoform A:NP_036236、isoform B:NP_620428、isoform C:NP_620427、isoform D:NP_620429、isoform E:NP_001193977、isoform F:NP_001193978)、これらに限定されない。
また、ヒト以外にもマウスおよびラットのものも利用することができる。本発明におけるBACE1の例としては、ヒト、サル、イヌ、ウサギ、ラット、マウス、その他の動物の脳から抽出できる。大腸菌や細胞(CHO、HEK等)で発現させた組換え体も利用できる。合成品でもよい。
本明細書において、「sAPPβ」とは、上記アミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体がBACE1によってβ部位で切断されて生じる2つの断片のうち、N末側の断片のことをいう。
本明細書において、「βCTF」とは、上記アミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体がBACE1によってβ部位で切断されて生じる2つの断片のうち、C末側の断片のことをいう。
本明細書において、「ネオエピトープ」とは、あるペプチドが切断されて新たに生じるエピトープのことをいう。例えば、本明細書で定義したアミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体が、BACE1により切断されて新たに生じたsAPPβのC末端、βCTFのN末端のエピトープのことをいう。
本明細書において、切断された基質(例えば、βCTFやsAPPβ)の「量」とは、対象となる物質の物理量を直接示す尺度(例えば、モル数、重量等)をいう。切断された基質の量は物理化学的手法により直接量を測定してもよいし、免疫学的手法を用いて間接的に量を測定してもよい。あるいは量が不明であっても、存在量を反映する指標(物理化学的手法または免疫学的手法以外の指標で表示されうる)で表示することによってスクリーニングを実施することができる。
本明細書において、「被験物質」とはスクリーニングの対象となりうる任意の物質をいう。 例えば、低分子化合物(コンビナトリアルケミストリーで合成されたものも含む)、有機化合物、ポリペプチド、タンパク質、糖、核酸、脂質、及び/又はこれらの複合体が挙げられる。しかしこれらに限定されるものではない。
本明細書において、「阻害」とは、酵素活性を低減、または消滅させることをいう。阻害の形式は、基質(アミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体)との競合阻害、非競合阻害、その他の様式であってもよい。「阻害剤」とは、BACE1についていうとき、酵素活性を低減または消失させる物質をいい、阻害薬、阻害物質ともいう。阻害剤は、酵素及び基質に結合して酵素阻害を示しても良く、酵素のみに結合または基質のみに結合して酵素活性を阻害してもよい。
本明細書において、「スクリーニング」とは、種々のアッセイ(評価)系を用いて被検物質を評価し、多くの被験物質群(例えば低分子などを含むライブラリー)の中から特定の性質を持つ物質(例えば、医薬品として有効な化合物)を選択することをいう。スクリーニングの際は、標的となる物質の物理化学的性質(例えば質量)を指標にしてもよく、標的となる物質に何らかの標識を付してもよく、標的被験物質に特異的な手段(例えば抗体など)を用いてもよい。スクリーニングの例としては、イムノアッセイが挙げられるが、これに限られるものではない。
本明細書において、「標識」とは、化合物や分子そのものを同定するなどのために、化合物の一部を改変して目印をつけることをいう。標識物質の標識には、放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、酵素、ビオチンが用いられるが、これらに限定されるものではない。上記放射性同位元素としては、例えば3H,14C,32P,33P,35S,125Iなどが、上記蛍光物質としては、例えばフルオレスカミン、フルオレッセインイソチオシアネートなどが、上記発光物質としては、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン、シュウ酸エステルなどが、上記酵素としては、βガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)などが、それぞれ挙げられる。
本明細書において、「イムノアッセイ」とは、抗体を用いた免疫学的測定法のことをいう。また、「ELISA」とは、イムノアッセイの一形態である酵素免疫測定(定量)法のことをいう。ELISAにはサンドイッチ法、競合法、直接吸着法などの方法あるが、それらに限定されない。
本明細書において、「キット」とはBACE1阻害剤の探索のためのキットをいう。例えば、本発明にかかるキットは、BACE1酵素、アミロイド前駆体タンパク質、バッファー、および検出抗体を含む。しかし、キットの構成内容はこれに限られない。
(好ましい実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はこれらに限定されないことが理解される。当業者はいかなる公知の他の方法も利用可能であり、例えば以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解される。
(BACE1活性測定方法)
一つの局面において、本発明は、BACE1活性測定方法を提供する。
一つの好ましい実施形態として、このスクリーニング方法は、(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むアミロイド前駆体タンパク質、または配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸を有する配列を含み、BACE1により切断される、アミロイド前駆体タンパク質変異体、
を、pH5.4〜6.8の条件下でBACE1と接触させる工程、および(2)前記アミロイド前駆体タンパク質または前記アミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物の量を測定する工程、を含む。
一般的に、BACE1活性を測定する場合は、ペプチド基質を用いてpH4.5付近の条件で反応を行う。これまでアミロイド前駆体タンパク質を用いてpH5.4〜6.8の条件下でBACE1活性を測定されたという報告はない。ペプチド基質ではなくアミロイド前駆体タンパク質を用いて、このpHでアッセイできたことは驚くべきことである。本発明の活性測定系は基質とpH条件について、従来法に比べより自然に近い条件で活性を評価できると考えられる。
一つの好ましい実施形態として、本発明のBACE1活性測定方法にはAPP695そのもの、およびシグナルペプチドが切断されたもの、いずれも本発明のBACE1活性測定方法に利用しうる。またAPP751、APP770、およびこれらのシグナルペプチドが切断されたものも、APP695と同様に本発明のBACE1活性測定方法に基質として利用しうる。
一つの好ましい実施形態として、本発明のBACE1活性測定方法において、アミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体の分解産物が、βCTFまたはsAPPβであるBACE1測定方法が挙げられる。この場合、βCTFまたはsAPPβはイムノアッセイにて定量することができる。例えば、βCTFの定量には、市販の82E1抗体(IBL)などをイムノアッセイに用いることもできるが、これに限られない。
一つの好ましい実施形態として、本発明のBACE1活性測定方法において、pHが5.4〜6.8の条件下で行うことができる。また、好ましくはpHが5.6〜6.6、さらに好ましくはpHが5.9〜6.3、よりさらに好ましくはpHが6.0〜6.2の条件下、で本発明のBACE1活性測定を行いうる。
一つの局面において、本発明のBACE1阻害剤のスクリーニング方法を提供する。
一つの好ましい実施形態として、本発明のBACE1阻害剤のスクリーニング方法は、(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むアミロイド前駆体タンパク質、または
配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸を有する配列を含み、BACE1により切断されるアミロイド前駆体タンパク質変異体を、被験物質の存在下、pH5.4〜6.8の条件下でBACE1と接触させる工程、(2)前記アミロイド前駆体タンパク質または前記アミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物の量を測定する工程、および(3)前記分解産物を、被験物質の非存在下でのアミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物の量と比較する工程、を含みうる。
一つの好ましい実施形態として、被験物質の存在下でのアミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体の分解産物の量と、被験物質の非存在下でのアミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体の分解産物の量を比較し、被験物質の存在下でのアミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体の分解産物の量の方が減少している場合、該被験物質をBACE1阻害剤として選択することができる。
一つの好ましい実施形態として、本発明のBACE1阻害剤のスクリーニング方法において、アミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体の分解産物が、βCTFまたはsAPPβであるBACE1測定方法が挙げられる。この場合、βCTFまたはsAPPβはイムノアッセイにて定量することができる。例えば、βCTFの定量には、市販の82E1抗体(IBL)などをイムノアッセイに用いることもできるが、これに限られない。
一つの好ましい実施形態として、本発明のBACE1阻害剤のスクリーニング方法において、pHが5.4〜6.8の条件下で行うことができる。また、好ましくはpHが5.6〜6.6、さらに好ましくはpHが5.9〜6.3、よりさらに好ましくはpHが6.0〜6.2の条件下、でBACE1阻害剤のスクリーニング方法を行いうる。
従来法に比べ、細胞内条件に近いことから、本発明のBACE1阻害剤のスクリーニング方法を用いて阻害剤を選択すれば、酵素反応系のみならず、培養細胞系、または動物やヒト中でもBACE1を阻害し、Aβ産生を抑制する化合物が得られると期待できる。このような化合物はアルツハイマー病、軽度認知症(Mild cognitive impairment、MCI)などの治療薬となりうる。
本スクリーニング方法を用いて見出すことができるBACE1阻害剤の例としては、実施例として後述される”β−secretase Inhibitor IV”などが挙げられるが、これに限定されない。スクリーニングの対象となる被験物質はどのような物質を用いても良いが、1つの実施形態として、被験物質とあわせて、公知のBACE1特異的阻害剤を阻害の陽性対照として用いることが好ましい。難溶性の被験物質を溶媒(DMSO等)に溶解させてスクリーニングに用いる場合は、被験物質を含まない溶媒のみを陰性対象とすることが好ましい。
BACE1活性は当該分野において、公知または本明細書において説明する任意の手法によって測定することができる。例えば、BACE1の活性は、特定条件下でのアミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体が切断されて生じる断片(sAPPβおよび/またはβCTF)の量で測定することができる。該スクリーニング方法において、該被験物質の非存在下でのsAPPβおよび/またはβCTFの量より、該被験物質の存在下でのsAPPβおよび/またはβCTFの量が少ない場合は、該被検物質をBACE1阻害剤として選択できる。
sAPPβおよび/またはβCTFの検出には、物理的手段、化学的手段を用いてもよいが、抗体による検出が好ましい。例えば、βCTFのN末端(ネオエピトープ)を特異的に認識する抗体および/またはsAPPβのC末端(ネオエピトープ)を特異的に認識する抗体を用いることができる。
本発明のスクリーニング方法で、阻害剤の阻害活性は様々な指標で表すことができる。例えば、阻害活性を、被験物質の非存在下の切断断片(sAPPβおよび/またはβCTF)の産生量と、被験物質の存在下の切断断片(sAPPβおよび/またはβCTF)の産生量との比率(%など)で表すこともできる。例えば、被験物質の存在下の切断断片が被験物質の非存在下の切断断片の産生量に比べて80%、好ましくは70%、より好ましくは50%である場合、被験物質を阻害剤として選択することができる。また基質濃度に依存しない阻害活性の指標として阻害定数(Ki)を用いて、被験物質の阻害活性を表すこともできる。
抗体を用いた、アミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物の量の測定の好ましい例としては、ELISA(enzyme−linked immunosorbent assay)が用いられる。ELISAには、競合法、直接結合法、サンドイッチ法があるが、サンドイッチ法が望ましい。βCTFのN末端を特異的に認識する抗体および/またはsAPPβのC末端を特異的に認識する抗体をキャプチャー抗体として使用する場合は、2次抗体は放射能またはHRPを初めとする酵素等で標識されていることが望ましい。HRPとあわせて発色基質を用いることで機器により容易に測定することができる。定義にあるように、標識の種類はこれらに限定されない。1次抗体および2次抗体がモノクローナル抗体であることが好ましい。
また、抗体を用いたアミロイド前駆体タンパク質断片の検出法は競合法、直接吸着法やイムノメトリック法、ネフロメトリー法であってもよい。競合法では、まずマイクロプレート等に抗体を固相化する。被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原(F)と抗体と結合した標識抗原(R)とを分離する(R/F分離)。Rおよび/またはFの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。直接吸着法では、まず抗原をマイクロプレート等に固相化する。抗原に1次抗体を反応させ、さらに1次抗体に対する標識した2次抗体を反応させる。この標識量を測定し、抗原量を定量する。イムノメトリック法では、例えば被検液中の抗原を固相化抗原と一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後、固相と液相を分離し、固相または液相の標識量を測定して、被検液中の抗原量を定量する。または被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、反応液を固相化抗原に加え、未反応の標識化抗体を固相に結合させた後、固相と液相を分離、固相または液相の標識量を測定して、被検液中の抗原量を定量する。ネフロメトリー法では、ゲル内または溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。
本発明の好ましい実施形態の一つとして、BACE1阻害剤のスクリーニング方法を応用した、一度に大量のアッセイが可能なハイスループットスクリーニング(HTS)が挙げられる。一つの化合物について、様々な濃度での阻害活性が測定でき、効率よくBACE1阻害剤を選択することが出来る。例えば、96ウェル、384ウェル、1536ウェルプレート、またはそれ以上のウェルプレートに、マニュアル操作またはロボットを用いてBACE1、アミロイド前駆体タンパク質、バッファーおよび阻害剤を添加し、大量にアッセイすることができる。この条件に限られない。
本発明はまた、本発明のスクリーニング方法を実施するのに好適なスクリーニング用キ
ットを提供する。該キットは、例えば、BACE1、アミロイド前駆体タンパク質、およびバッファーを構成として含む。検出用抗体を含んでも良い。
該キットは、さらに酵素活性の測定や化合物と酵素または基質との結合試験に必要な試薬類もしくは器具類(例えば、SPR用センサーチップ、質量分析用プロテインチップ等)を含んでもよい。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、本実施例において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、免疫学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものである。例えば、遺伝子工学的手法として、特に断らない限り、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd(Cold Spring Harbor)に記載されている方法を用いた。本明細書において関連する部分が参考として援用される。
ペプチド基質を用いたBACE1酵素活性のpH依存的変化の測定
従来から一般的に使用されるアミロイド前駆体タンパク質ペプチドを用いて、全長BACE1や細胞外領域BACE1の至適pHを検討した。
・全長BACE1の調製
全長BACE1の調製のために、まずBACE1安定発現
HEK293細胞を構築した。具体的には、ヒトBACE1(GenBank databases, NCBI. ACCESSION No.NP_036236)発現プラスミドを標準的な方法を用いて構築し、そのプラスミドを
FuGENE HD (Roche)を用いてHEK293細胞にトランスフェクションした。その後、BACE1発現細胞をネオマイシン薬剤耐性を指標に選抜し、安定発現細胞を得た。BACE1の発現はウエスタンブロットにより確認した。BACE1安定発現
HEK293細胞を15cm dishで80%confluentとなるように培養後、細胞をPBSに懸濁し、懸濁液から細胞を遠心分離し、−80℃で保存した。15cm dish1/2枚分の細胞に対し、PBSを500μL添加した。ダウンスホモジナイザータイトで10ストローク ホモジナイズした。そのホモジネートを1% TritonX−100含有PBSで40倍希釈した。
・細胞外領域BACE1の調製
細胞外領域BACE1として、市販のrhBACE1(R&D)を用い、同様の反応を行なった。
・ペプチド基質の調製
アミロイド前駆体タンパク質ペプチドは、American peptide社でカスタムメイドのペプチドを使用した。配列は以下の通り;SEVNL/DAEFRHDSGYEK(配列番号7)−biotin。アミロイド前駆体タンパク質のBACE1切断部位からN末端側の5アミノ酸の配列、C末端側の12アミノ酸の配列を含むペプチドを用いた。
・反応用プレートの調製
全長BACE1は抗体固相プレートを用いて96wellプレート上に精製・固相し、このプレート上で酵素反応を行なった。50mM Tris pH8溶液で、抗BACE1抗体(MAB5308、Millipore)を1μg/mLになるように希釈した。その溶液を100μL/wellとなるようにMaxisorp 96wellプレートに添加し、室温2時間もしくは4℃終夜インキュベートした。その後、上清を捨て、0.5% BSA含有TBST(0.05% Tween20含有TBS)を300μL/wellずつ添加し、室温2時間もしくは4℃終夜インキュベートした。上清を捨て、上記BACE1含有溶液を100μL/wellずつ添加し、4℃終夜静置し、BACE1を固相した。各wellを3回以上PBSもしくはPBSTで洗浄した後に、酵素反応液、基質及び化合物を添加した。
・BACE1酵素反応
酵素反応液組成は以下の通りである。50mM citrate−phosphate buffer(pH 4.6〜7.0)、300mM NaCl、0.05% TritonX−100。Complete (protease inhibitor cocktail, Roche)、10μM DAPT。
上記の酵素反応液97μLに対して、基質2μL、化合物1μLを添加後、37℃で2時間緩やかに振とうし、酵素反応を行った。上記の反応液中のrhBACE1の最終濃度12.5ng/mL、ペプチド基質の最終濃度1μMである。
・切断断片の定量
ペプチド基質の切断断片は、抗β切断ネオエピトープ抗体である82E1(IBL)を用いて定量した。82E1を50mM Tris−HCl pH8.0で1μg/mLに希釈した。100μL/wellずつmaxisorp 96well white plateに添加し、室温2時間もしくは4℃終夜静置した。上清を捨て、 0.5% BSA含有TBST(0.05% Tween20含有TBS)を300μL/wellずつ添加し、室温2時間もしくは4℃終夜インキュベートした。上清を捨て、サンプルを各ウェルに添加した。標準物質としては、DAEFRHDSGYEK(配列番号8)−biotin (American peptide)を用いた。サンプル及び標準物質の希釈には、1%BSA含有TBSTを用いた。サンプル及び標準物質を添加後、4℃で終夜静置した。その後、TBST等で各ウェルを4回洗浄後、1%BSA含有TBSTで10000倍希釈したHRP conjugated Neutravidin(ThermoScientific) 100μL/wellずつ添加し室温で1時間静置した。その後、各wellをTBST等で4回洗浄後、supersignal pico (ThermoScientific)を45μLずつ添加し化学発光をARVO (PerkinElmer)を用いて測定した。
得られた結果を図2に示す。(a)全長BACE1(FL−BACE1)、(b)細胞外領域BACE1(rhBACE1)のいずれを用いても、pH4.6の条件で最も高い酵素活性を示した。この結果は、従来の報告と一致する(非特許文献3)。
アミロイド前駆体タンパク質を基質としたときのBACE1酵素活性のpH依存性の検討
生体内で実在する形の基質つまりアミロイド前駆体タンパク質の切断反応の至適pHを、全長BACE1と細胞外領域BACE1を用いて比較検討した。
アミロイド前駆体タンパク質の調製のために、まずアミロイド前駆体タンパク質swe安定発現SH−SY5Y細胞を構築した。具体的には、野生型APP695の配列(GenBank databases, NCBI. ACCESSION No.NP_958817)にswedish変異を導入した発現プラスミドを標準的な方法を用いて構築した。そのプラスミドを
lipofectamine2000 (invitogen)を用いてヒト神経芽細胞SH−SY5Y細胞にトランスフェクションした。その後、APPswe発現細胞をハイグロマイシン薬剤耐性を指標に選抜し、安定発現細胞を得た。APP695の発現はウエスタンブロットにより確認した。
このアミロイド前駆体タンパク質swe安定発現SH−SY5Y細胞を10cm dishで80%confluentとなるように培養後した。細胞をPBSに懸濁し、懸濁液から細胞を遠心分離し、−80℃で保存した。10cm dish1枚分の細胞に対し、1%TritonX−100含有PBSを100μL添加し、30分間 4℃で転倒混和後、16000×g 4℃ 10分遠心した。その上清に対し、20μL heparin beadsを添加し4℃で終夜転倒混和した。heparin beadsをPBSで3回洗浄後、溶出液20mM phosphate buffer 1.5M NaCl pH7.4 200μLをビーズに添加し30分間 4℃で転倒混和した。その後、スピンカラムを用いてビーズのみを除去し、溶出液を得た。その溶出液を、脱塩カラム(Zeba spin column 7kMWCO,ThermofisherScientific)を用いて脱塩し、基質溶液とした。
全長BACE1,細胞外領域BACE1、酵素反応液の調製法および反応条件は全て実施例1と同じである。
切断断片の定量には、IBL社βCTF ELISAを用いた。酵素反応液の一部を用い、キット添付の操作手順書に従い定量を実施した。
得られた結果を図3に示す。(a)全長BACE1(FL−BACE1)、(b)細胞外領域BACE1(rhBACE1)のいずれを用いても、予想外にもpH6.2の条件で最も高い酵素活性を示した。実施例1の結果と合わせて考えると、生体内における全長BACE1によるアミロイド前駆体タンパク質切断反応の至適pHは6.2付近であること、この反応の至適pHは酵素の構造や長さの違いよりも基質のそれに大きく依存することが示された。
全長BACE1によるアミロイド前駆体タンパク質切断反応のpH依存性の詳細な検討
全長BACE1によるアミロイド前駆体タンパク質切断反応の至適pHをより詳細に解析するために、反応液のpHを0.2または0.3おきに変化させたときの酵素活性変化を測定した。
実施例2と同様の方法で各pHの反応液を用いたときの酵素活性を定量した。その結果を図4に示す。pH6.1付近で酵素活性が最大であり、pH5.1〜6.8までの条件で酵素活性が認められた。
全長BACE1によるアミロイド前駆体タンパク質切断反応に対するBACE1阻害剤の阻害活性
本発明で確立されたアッセイ系において、生体の環境でも阻害活性を有するBACE1阻害剤である−secretase Inhibitor IV(非特許文献3、CAS number 797035−11−1)の活性を検討した。
図5(a)に示す化合物を反応液に添加したときの、アミロイド前駆体タンパク質に対する全長BACE1の酵素活性を実施例2、3と同様の方法で測定した。その結果を図5(b)に示す。β−secretase Inhibitor IVの用量依存的に酵素活性が阻害されることが示された。このことから、アミロイド前駆体タンパク質と全長BACE1を用いたアッセイ系を用いて化合物の阻害活性評価を行うことが可能であることが示された。
全長BACE1によるアミロイド前駆体タンパク質とペプチドの切断効率比較
アミロイド前駆体タンパク質とアミロイド前駆体タンパク質ペプチドをそれぞれ基質として用いた場合(1〜15nMの濃度範囲内)の、全長BACE1活性を比較した。反応時間を1時間に、ペプチド基質を用いた場合はpH4.1に,アミロイド前駆体タンパク質を基質として用いた場合はpH6.2で反応を行い、その他の条件は実施例2、3と同様の方法で切断効率を測定した。その結果を図6に示す。ペプチド基質切断効率と比較して、アミロイド前駆体タンパク質切断効率の方が顕著に高いことが示された。
このことから、従来法においては生体内に比べ高濃度のペプチド基質を用いる必要があるが、本発明のアミロイド前駆体タンパク質を用いたアッセイ方法は、低濃度基質で高活性を示すといえる。従って、従来法に比べ、本発明のアッセイ方法は、pHのみならず基質濃度についても、より生理的条件に近い条件でアッセイできることが示された。
本発明は、BACE1阻害剤を高感度で正確に評価するアッセイ方法を提供する。このような方法は、医薬品・製薬産業において有用である。たとえば、BACE1が関与する疾患であるアルツハイマー病の治療薬の探索に利用できる。
配列番号1:シグナルペプチドを有しないAPP695のアミノ酸配列を示す。
配列番号2:APP695のアミノ酸配列を示す。
配列番号3:シグナルペプチドを有しないAPP751のアミノ酸配列を示す。
配列番号4:APP751のアミノ酸配列を示す。
配列番号5:シグナルペプチドを有しないAPP770のアミノ酸配列を示す。
配列番号6:APP770のアミノ酸配列を示す。
配列番号7:ペプチド基質のアミノ酸配列を示す
配列番号8:βCTFのN末端部分のアミノ酸配列を示す。
配列番号9:BACE1の22−460位のアミノ酸配列を示す。
配列番号10:BACE1の46−458位のアミノ酸配列を示す。

Claims (4)

  1. (1)配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むアミロイド前駆体タンパク質、または
    配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸を有する配列を含み、BACE1により切断される、アミロイド前駆体タンパク質変異体、
    を、pH5.4〜6.8の条件下でBACE1と接触させる工程、および
    (2)前記アミロイド前駆体タンパク質または前記アミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物の量を測定する工程、
    を含むBACE1活性測定方法。
  2. 前記アミロイド前駆体タンパク質または前記アミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物が、βCTFまたはsAPPβである、請求項1に記載のBACE1活性測定方法。
  3. (1)配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むアミロイド前駆体タンパク質、または
    配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸を有する配列を含み、BACE1により切断されるアミロイド前駆体タンパク質変異体、
    を、被験物質の存在下、pH5.4〜6.8の条件下でBACE1と接触させる工程、
    (2)前記アミロイド前駆体タンパク質または前記アミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物の量を測定する工程、および
    (3)前記分解産物を、被験物質の非存在下でのアミロイド前駆体タンパク質またはアミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物の量と比較する工程、
    を含むBACE1阻害剤のスクリーニング方法。
  4. 前記アミロイド前駆体タンパク質または前記アミロイド前駆体タンパク質変異体、の分解産物が、βCTFまたはsAPPβである、請求項3に記載のBACE1阻害剤のスクリーニング方法。
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