以下、適宜図面を参照しながら、本発明の非水電解質二次電池を詳細に説明する。なお、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、各図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。
本発明の電池の種類は、特に制限されないが、上記非水電解質二次電池を形態・構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など、従来公知のいずれの形態・構造にも適用し得るものである。また、非水電解質二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、上述した非双極型(内部並列接続タイプ)電池および双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得るものである。双極型電池では、通常の電池に比べて単電池の電圧が高く、容量、出力特性に優れた電池を構成できる。また、積層型(扁平型)電池構造を採用することで簡単な熱圧着などのシール技術により長期信頼性を確保でき、コスト面や作業性の点では有利である。
<電池の構成>
[非双極型非水電解質二次電池]
図1に、扁平型(積層型)の非双極型非水電解質二次電池の断面概略図を示す。図1に示す扁平型(積層型)の非水電解質二次電池1(積層型電池1)では、電池外装材12に高分子−金属を複合したラミネートフィルムを用いる。そして、その周辺部の全部を熱融着にて接合する。そして、非水電解質二次電池1では、正極(正極板)、電解質層15、負極(負極板)を有する単電池層が複数積層されている。正極には、第1集電体(以下、「正極集電体」とも称する)13の両面(発電要素の最下層および最上層用は片面)に、正極活物質層14が形成される。負極には、第2集電体(以下、「負極集電体」とも称する)16の両面(発電要素の最下層および最上層用は片面)に負極活物質層17が形成される。
本願の非水電解質二次電池1において、前記正極活物質層14および前記負極活物質層17の少なくとも一方は、電気化学反応に有効な電極反応部(図示せず)と、非イオン透過性樹脂を浸透させて形成される樹脂浸透部(図示せず)と、からなる。そして、本願の非水電解質二次電池1において、前記樹脂浸透部は、前記正極活物質層14または前記負極活物質層17の面方向において、前記電極反応部の外周に配置される。さらには、本願の非水電解質二次電池1において、前記正極活物質層14における電極反応部の外周縁辺が、前記負極活物質層17における電極反応部の外周縁辺に対して一致または内方に位置してなる。
非水電解質二次電池1は、これらが積層した発電要素18を収納し密封した構成を有している。また、上記の各電極(正極及び負極)と導通される正極(端子)リード19および負極(端子)リード10が、各電極板の第1集電体13及び第2集電体16に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられる。このように、上記熱融着部に挟まれて上記の電池外装材12の外部に露出される構造を有している。
[双極型非水電解質二次電池]
図2に、双極型非水電解質二次電池(単に、双極型電池とも称する。)の断面概略図を示す。
図2に示す双極型電池2は、実際に充放電反応が進行する略矩形の電池要素21が、外装であるラミネートシート29の内部に封止された構造を有する。
図2に示すように、本実施形態の双極型電池2の電池要素21は、正極活物質層22と、負極活物質層23とが集電体(第1集電体と第2集電体とが同じもので1枚となっている)24のそれぞれの面に形成された双極型電極(図示せず)を複数個有する。各双極型電極は、電解質層25を介して積層されて電池要素21を形成する。この際、一の双極型電極の正極活物質層22と前記一の双極型電極に隣接する他の双極型電極の負極活物質層23とが電解質層25を介して向き合うように、各双極型電極および電解質層25が積層されている。
そして、隣接する正極活物質層22、電解質層25および負極活物質層23は、一つの単電池層26を構成する。したがって、双極型電池2は、単電池層26が積層されてなる構成を有するともいえる。また、単電池層26の外周には、隣接する集電体24間を絶縁するための絶縁層27が設けられている。なお、電池要素21の最外層に位置する集電体(最外層集電体)(24a、24b)には、片面のみに、正極活物質層22(正極側最外層集電体24a)または負極活物質層23(負極側最外層集電体24b)のいずれか一方が形成されている。
この最外層集電体24aおよび24bのさらに外側に集電板24a’、24b’が設けられている。これらは集電板24a’、24b’はそれぞれ延長されて負極タブ28bおよび正極タブ28aとなっている。また、集電板24a’、24b’は、集電体より厚く形成することで、積層された複数の単電池層26からの電流を取り出しやすくなるようにしている。
そして、これらの正極タブ28aおよび負極タブ28bが外部に導出するように、発電要素21が、ラミネートシート29からなる外装材内に封止されている。
なお、集電板に代えて、最外層集電体24aおよび24bを、そのまま正極タブ28aおよび負極タブ28bに電気的に接続してもよい。この際、最外層集電体(24a、24b)とタブ(28a、28b)との間を正極端子リード、負極端子リードを介して電気的に接続してもよい。また、集電板に代えて、最外層集電体24aおよび24bを厚くして、そのままラミネートシート29の外に延長して負極タブ28bおよび正極タブ28aとしてもよい。また、最外層集電体24aおよび24bと集電板24a’、24b’の間に電極活物質層があってもよい。すなわち、片面にのみ電極活物質を設けた最外層専用の集電体24a’、24b’とするのではなく、両面に電極活物質がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよいのである。
本願の双極型電池2は、前記正極活物質層22および前記負極活物質層23の少なくとも一方は、電気化学反応に有効な電極反応部(図示せず)と、非イオン透過性樹脂を浸透させて形成される樹脂浸透部(図示せず)と、からなる。そして、本願の双極型電池2において、前記樹脂浸透部は、前記正極活物質層22または前記負極活物質層23の面方向において、前記電極反応部の外周に配置される。
さらには、本願の双極型電池2において、前記正極活物質層22における電極反応部の外周縁辺が、前記負極活物質層23における電極反応部の外周縁辺に対して一致または内方に位置してなる。この双極型電池2の基本構成は、複数積層した単電池層(単セル)が直列に接続された構成ともいえるものである。
なお、非水電解質二次電池としては、特に好ましくは、リチウムイオン二次電池である。また、本明細書中、「非水電解質二次電池」を単に「電池」と称することもある。
上記の通り、反応の局在化(電流密度の集中)によりデンドライトが発生する問題を解決するため手段として、特許文献1に記載の技術が開示されている。他にも、デンドライトが発生する問題を解決するためには、例えば、正極の周囲を電解液に不溶性で、かつ電気絶縁性の物質でシールすることも考えられる。しかしながら、充填容量が小さくなる課題や、正極板の周縁部の密着強度が必ずしも十分とは言えず、充放電サイクル中の正極合剤の脱落による内部短絡が発生する可能性もある。
さらには、非水電解液二次電池において、セパレータの負極周辺部に対向する部分における微孔を塞ぐことも考えられる。しかしながら、負極と正極の対向する面積が、セパレータの塞がれていない面積で決定されてしまうため、設計容量と実際の容量が異なるという問題点がある。特に、負極、セパレータ、正極を積層した後に、セパレータ周縁部のみ熱融着プロセスで微孔を塞ぐ際には、電極端部で負極と正極の短絡が生じる可能性がある。
上記のような問題点を解決すべく、本発明は、第一集電体の少なくとも一方の表面に形成された正極活物質層と、第二集電体の少なくとも他方の表面に形成された負極活物質層と、が電解質層を挟んで積層されてなる単電池層を複数積層されてなる発電要素を含む非水電解質二次電池であって、前記正極活物質層および前記負極活物質層の少なくとも一方は、電気化学反応に有効な電極反応部と、非イオン透過性樹脂を浸透させて形成される樹脂浸透部と、からなり、前記樹脂浸透部は、前記正極活物質層または前記負極活物質層の面方向において、前記電極反応部の外周に配置され、前記正極活物質層における電極反応部の外周縁辺が、前記負極活物質層における電極反応部の外周縁辺に対して一致または内方に位置する、非水電解質二次電池を提供する。
さらには、一般的に電池は、充電時、正極の方が負極に比べて電位が高く、正極に用いられる集電体が溶解したり、電解質に酸化反応が起きたりするため、電位の低い負極で還元反応が起きてしまう。このように負極は一般的に劣化しやすく、負極に腐食が起こると、たとえ電池の設計段階で正極と負極との大きさを等しくしても、正極・負極の位置関係(厳密に言えば、正極活物質層と負極活物質層の位置関係)が変わる。つまり、負極の方が正極に比べて小さくなる方向に傾くため、結果としてデンドライトが生ずることになる。
本発明によれば、正極活物質層と負極活物質層の大きさを、電池の設計段階で等しく作製しても、非イオン透過性樹脂を浸透させ、樹脂浸透部(電気化学反応に有効ではない部分)を形成させることにより、電気化学反応に有効な部分の形成を制御することができる。そのため、容易にデンドライトの発生を抑制/防止することができる。
以上の通り、本願の非水電解質二次電池は、前記正極活物質層および前記負極活物質層の少なくとも一方は、電気化学反応に有効な電極反応部と、非イオン透過性樹脂を浸透させて形成される樹脂浸透部と、からなる。
本願の非水電解質二次電池においては、前記樹脂浸透部が、前記正極活物質層または前記負極活物質層(以下、単に「活物質層」とも称する)の面方向において、前記電極反応部の外周に配置される。そして、本願の非水電解質二次電池においては、前記正極活物質層における電極反応部(以下、「正極反応部」とも称する)の外周縁辺が、前記負極活物質層における電極反応部(以下、「負極反応部」とも称する)の外周縁辺に対して一致または内方に位置する。かような非水電解質二次電池の構造に由来し、デンドライトを抑制/防止することができる。
続いて、正極反応部の外周縁辺と、負極反応部の外周縁辺と、の位置関係(一致または内方)の理解をより容易にするために、図3を用いて説明する。
図3は、正極反応部を投影したときを模式的に表した斜視図である。図3が示すように、正極反応部に仮想の光を垂直に照射すると、負極反応部の面上に、正極反応部の外周縁辺が投影されるのが分かる。「前記正極活物質層における電極反応部の外周縁辺が、前記負極活物質層における電極反応部の外周縁辺に対して一致または内方に位置する」とは、分かりやすく言い換えると、以下である。すなわち、「この投影された正極反応部の外周縁辺が、負極反応部の外周縁辺と一致する、または、負極反応部の外周縁辺よりも内方に位置する」という意味である。
つまり、本発明の非水電解質二次電池においては、他方の電極に向かい合う各電極の反応部の外周縁辺(エッジ)が、所定の位置関係になるように形成されてなる。
このように、正極活物質層における電気化学反応に有効な部分を、負極活物質層における電気化学反応に有効な部分より小さくすることで、有意にデンドライトを抑制/防止することができる。
この樹脂浸透部は、前記正極活物質層および前記負極活物質層の少なくともいずれか一方に形成されればよいが、より好ましくは、少なくとも正極活物質層に形成され、さらに好ましくは正極活物質層にのみ形成される。
下記に各構成要素につき以下にまとめて説明するが、上記説明した特徴以外は、当該分野において通常の知識を有するものであれば従来公知の知見を適宜参照し、または、組み合わせて適用することができる。
<正極・負極>
正極・負極を合わせて、電池用電極とも称する。正極とは、第1集電体(正極集電体)と、該集電体上に形成されてなる正極活物質層とから構成される。負極とは、第2集電体(負極集電体)と、該集電体上に形成されてなる負極活物質層とから構成される。
[集電体]
本発明で用いることのできる集電体(単に、「集電体」と称するときは、第1集電体および第2集電体の少なくとも一方である。)としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを利用することができる。例えば、アルミニウム箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、SUSとアルミニウムのクラッド材あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく使える。また、金属表面に、アルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい(複合集電体)。
複合集電体を用いる場合、第1集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、SUS、チタンなどの導電性金属を用いることができるが、アルミニウムが特に好ましい。一方、第2集電体の材料としては、例えば、銅、ニッケル、銀、SUSなどの導電性金属を用いることができるが、SUS及びニッケル等が特に好ましい。また、複合集電体においては、第1集電体と第2集電体とは、互いに直接あるいは第三の材料からなる導電性を有する中間層を介して電気的に接続していれば良い。また、第1集電体と、第2集電体とを1つの集電体として、双極型非水電解質二次電池に供してもよい。
集電体の厚さは、特に限定されないが、好ましくは10〜20μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。
集電体の形状にも特に制限はないが、好ましくは、正方形や長方形のような矩形である。
[正極活物質層・負極活物質層]
正極活物質層は、正極活物質を含む。この他にも、他の正極材料としては、導電助剤、バインダ、電解液(電解質支持塩および可塑剤)、高分子ゲルないし固体電解質(イオン導電性ポリマー、電解液など)などの電解質が挙げられる。また、ホストポリマーが含まれる場合、前記ポリマーを重合させるための重合開始剤をさらに含んでもよい。
正極活物質層の厚みにも特に制限はないが、好ましくは1μm〜300μm、より好ましくは5μm〜200μm、さらに好ましくは10μm〜150μmである。正極活物質層の厚さを制御する方法としては、特に制限されないが、ドクターブレード法などが挙げられる。また、正極活物質層の厚さを定量的に求める方法としては、種々の方法が考えられるが、例えば、マイクロメーターで測定や、放射線を用いた膜厚測定などをして、求めることができる。
また、正極活物質層の形状にも特に制限はなく、集電体の形状に合わせて適宜設計されるが、好ましくは正方形や長方形のような矩形である。
負極活物質層は、負極活物質を含む。この他にも、他の負極材料としては、上記正極材料として説明されたものが含まれてもよい。
以下、正極活物質と負極活物質とを、総称して「活物質」とも称する。
そして、前記正極活物質層および前記負極活物質層の少なくともいずれか一方の外周部には、非イオン透過性樹脂が浸透した、樹脂浸透部が形成されてなる。なお、正極活物質層に浸透する非イオン透過性樹脂を、便宜上「第1非イオン透過性樹脂」と称し、負極活物質層に浸透する非イオン透過性樹脂を、便宜上「第2非イオン透過性樹脂」と称することもある。なお、単に「非イオン透過性樹脂」と称する場合、それは、第1非イオン透過性樹脂、第2非イオン透過性樹脂の少なくとも1つのことである。
負極活物質層の厚みにも特に制限はないが、好ましくは1μm〜300μm、より好ましくは5μm〜200μm、さらに好ましくは10μm〜150μmである。負極活物質層の厚さを制御する方法としては、特に制限されないが、正極活物質層を制御する方法が同様に妥当する。
負極活物質層の形状にも特に制限はなく、集電体の形状に合わせて適宜設計されるが、好ましくは正方形や長方形のような矩形である。
(電極反応部・樹脂浸透部)
前記正極活物質層および前記負極活物質層の少なくとも一方は、電気化学反応に有効な電極反応部と、非イオン透過性樹脂を浸透させて形成される樹脂浸透部と、からなる。前記樹脂浸透部は、好ましくは少なくとも正極活物質層に形成され、さらに好ましくは正極活物質層にのみ形成される。
ここで、「電気化学反応に有効な電極反応部」とは、非イオン透過性樹脂が浸透していない、つまり、樹脂浸透部が形成されていない活物質層と同じイオン伝導性を有している部分を言う。
一方で、「非イオン透過性樹脂を浸透させて形成される樹脂浸透部」とは、活物質層において、非イオン透過性樹脂が形成されている部分を言う。かような樹脂浸透部は、活物質層のうち電気化学反応に有効ではない部分として機能する。つまり、「樹脂浸透部」とは、活物質層において、樹脂浸透部が形成されていない活物質層のイオン伝導率よりも低い部分をいう。「樹脂浸透部」のイオン伝導率は、樹脂浸透部が形成されていない活物質層のイオン伝導率よりも低ければ足りるが、好ましくは樹脂浸透部が形成されていない活物質層のイオン伝導率の0.01〜0.5倍、より好ましくは0.05〜0.1倍である。
まとめると、活物質層において、「非イオン透過性樹脂を浸透させて形成される樹脂浸透部」以外の部分が、「電気化学反応に有効な電極反応部」として機能する。換言すると、電極反応部と、樹脂浸透部との境界が、電極反応部の外周縁辺とも言える。
なお、イオン伝導率を求める方法は、特に制限されないが、ブロッキング電極法が挙げられる。
非イオン透過性樹脂は、絶縁性を有する樹脂であれば特に制限されない。熱硬化性樹脂であっても、熱可塑性樹脂であってもよい。
非イオン透過性樹脂の具体例としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性を持つ付加縮合系プラスチック樹脂;ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリアミド、シリコーン樹脂等の重縮合系プラスチック;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアクリルアミド(PAA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)等のアクリル系プラスチックからなる群から選択される少なくとも1種の耐溶剤性を有する材料が好ましく例示できる。
樹脂浸透部は、前記正極活物質層または前記負極活物質層の面方向において、前記電極反応部の外周に配置(形成)される。
ここで、「電極反応部の外周に配置される」とは、活物質層全体を基準とした際に、活物質層の外周縁辺から内方に向かって、活物質中に非イオン透過性樹脂が形成されていることをいう。非イオン透過性樹脂が形成される部分に特に制限はなく、少しでも活物質層の外周縁辺から内方に向かって、非イオン透過性樹脂が形成されていればよい。ただ、一例を示すと、非イオン透過性樹脂は、活物質層の外周縁辺から、より好ましくは活物質層の厚さの0.1〜100倍、さらに好ましくは0.5〜10倍、特に好ましくは1〜5倍の長さで内方に向かって形成される。
樹脂浸透部が、前記電極反応部の外周に配置されているか否かを調べる方法としては、例えば、固体NMR、FT−IRのような方法を用いて、樹脂の構造解析、有機官能基解析を行うことが挙げられる。
(正極反応部と負極反応部との位置関係)
前記正極活物質層における電極反応部の外周縁辺が、前記負極活物質層における電極反応部の外周縁辺に対して一致または内方に位置する。
本発明の非水電解質二次電池においては、正極活物質層、負極活物質層の大きさには特に制限はない。なお、好ましくは正極活物質層の外周縁辺が、前記負極活物質層における電極反応部の外周縁辺に対して一致または内方に位置するとよい。
(正極活物質)
本発明のリチウムイオン二次電池正極を構成する正極活物質に用いることのできる組成(材質)としては、特に制限されるものではないが、好ましくは下記化学式(1)に示すリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物である。
上記式において、0<a≦1.2、0.3≦b≦0.9、0≦c≦0.6、0.25≦d≦0.6、0≦e≦0.3、1.5≦f≦2.2、0≦g≦0.5である。MはAlまたは、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Gaからなる群から選択される少なくとも1種類であり、Xは、F、Cl、Sの少なくとも一種類である。これら正極活物質の組成は、ICP、原子吸光法、蛍光X線法、キレート滴定、パーティクルアナライザーにより測定できる。
具体的に、例えば、リチウム−マンガン複合酸化物、リチウム−ニッケル複合酸化物、リチウム−コバルト複合酸化物、リチウム−鉄複合酸化物、リチウム−ニッケル−コバルト複合酸化物、リチウム−マンガン−コバルト複合酸化物、リチウム−ニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物、リチウム−金属リン酸化合物、リチウム−マンガンリン酸化物、リチウム−ニッケルリン酸化物、リチウム−コバルトリン酸化物、リチウム−鉄リン酸化物、およびリチウム−遷移金属硫酸化合物などが例示される。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。
正極活物質の平均粒子径は好ましくは、0.05〜20μmで、より好ましくは0.1〜10μmであり、さらに好ましくは、0.1〜5μmである。
正極活物質のBET比表面積は、好ましくは、0.5〜10m2/g、より好ましくは1〜5m2/gであり、さらに好ましくは、2〜3m2/gである。
(負極活物質)
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質の種類以外は、上記で説明した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
負極材料活物質としては、従来公知の溶液系のリチウムイオン電池でも使用される負極活物質を用いることができる。具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、アモルファスカーボン、コークスおよびメソフェーズピッチ系炭素繊維、グラファイト、非晶質炭素であるハードカーボンなどの炭素材料から選ばれてなる少なくとも1種を主材料とする負極活物質を用いることが望ましいが、特に限定されない。この他にも金属酸化物(特に遷移金属酸化物、具体的にはチタン酸化物)、金属(特に遷移金属、具体的にはチタン)とリチウムとの複合酸化物、シリカ系などを用いることもできる。
負極活物質の平均粒子径は好ましくは、0.05〜20μmで、より好ましくは0.1〜10μmであり、さらに好ましくは、0.1〜5μmである。
負極活物質のBET比表面積は、好ましくは、0.5〜10m2/g、より好ましくは1〜5m2/gであり、さらに好ましくは、2〜3m2/gである。
活物質層には、必要であれば、その他の物質が含まれてもよい。例えば導電助剤、バインダ、支持塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が含まれうる。また、イオン伝導性ポリマーが含まれる場合には、前記ポリマーを重合させるための重合開始剤が含まれてもよい。
[活物質層の外方の構造]
本発明の非水電解質二次電池においては、正極活物質層および/または前記負極活物質層の外方の構造にも特に制限はないが、前記非イオン透過性樹脂からなる接着層(以下、単に「接着層」とも称する)が、活物質層の外方に配置されると好ましい。正極活物質層および/または前記負極活物質層の外方がかような構造であると、機械的特性(例えば、繰返しの応力−ひずみ特性など)を向上させるという点で有用である。特に、電池を積層した場合の応力に強くなるという効果がある。さらには、電池を積層した場合に、電極同士のズレが生じにくいという効果もある。
また、本発明の非水電解質二次電池において、前記接着層は、前記第1集電体または前記第2集電体と接し、前記接着層と前記電解質層との間に、前記正極活物質層または前記負極活物質層の厚さを保持する基材層(以下、単に「基材層」とも称する)が備えられると好ましい。
なお、この場合、これら接着層や基材層は、図4(a)〜図9のように活物質層の外周縁辺と接するように形成されていてもよい。また、図10〜図14のように前記基材層と、前記正極活物質層および/または前記負極活物質層の外周縁辺と、の間に、前記非イオン透過性樹脂が満たされてなってもよい。なお、図4(a)〜図14については、後に詳説する。
さらには、電池における接着層および基材層の総厚みが、活物質層よりも若干厚めであるとよい。その場合、電池は、耐久性、積層性を含む機械的強度を向上させる効果がある。ここで「若干厚め」とは、接着層および基材層の総厚みが、活物質層の、好ましくは1.01〜1.2倍、より好ましくは1.05〜1.1倍程度に設定する。このようにすることで、電池の積層で生じる応力に起因する電極の劣化を防ぐことができる。
(基材)
本明細書中において、「基材層」を非イオン透過性樹脂を保持する部材として着目する際に、それを「基材」と称することもある。
基材の具体例としては、特に制限はないが、例えば、フッ素系樹脂、オレフィン系樹脂などが挙げられる。より具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリプロピレン(PP)等の融点・軟化点が比較的高い樹脂群から選択される樹脂であることが好ましい。基材としては、正極(負極)合剤に用いられうるバインダ(上記にて説明済み)と同一の樹脂であっても異なる樹脂であってもよい。
基材の形状にも特に制限はない。ただ、基材上に非イオン透過性樹脂が保持されてなるものを活物質層の外方に配置することが好ましいため、この活物質層を取り囲める形状であることが好ましい。例えば、活物質層が正方形や長方形のような矩形である場合、基材は、枠形状であることが好ましい。
基材の厚みにも特に制限はない。ただし、後述もするが、活物質層の厚さとの関係で適宜調節すればよい。一例を挙げると、好ましくは1〜300μm、より好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは10〜150μmである。
なお、下記においても説明するが、正極側に用いられる基材を便宜上、「正極基材」、負極側に用いられる基材を「負極基材」とも称する。
(導電助剤)
本発明で用いることのできる導電助剤としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを利用することができる。
導電助剤とは、導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維、黒鉛などの炭素材料が挙げられる。また、金属粉も導電助剤として好適に用いられうる。
(バインダ)
バインダとは、活物質層において、複数の塊状の多孔質体を結着させる役割を果たすために配合される添加物をいう。バインダの具体的な例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド、ユリア樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂、ブチルゴム、スチレン系ゴムなどのゴム系材料が好ましく挙げられる。
(支持塩)
支持塩(リチウム塩)としては、Li(C2F5SO2)2N、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3等が挙げられる。
(イオン伝導性ポリマー)
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。ここで、前記ポリマーは、本発明の電極が採用される電池の電解質層において用いられるイオン伝導性ポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
(重合開始剤)
重合開始剤は、イオン伝導性ポリマーの架橋性基に作用して、架橋反応を進行させるために配合される。開始剤として作用させるための外的要因に応じて、光重合開始剤、熱重合開始剤などに分類される。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や、光重合開始剤であるベンジルジメチルケタール(BDK)等が挙げられる。
活物質層に含まれうる、成分の配合比は、特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
<電解質層>
本発明では、電解質層に用いられる電解質は、液状、ゲル状、固体状等、Liイオン伝導性があれば特に限定されない。その使用目的に応じて、(a)電解液を染み込ませたセパレータ、(b)高分子ゲル電解質、(c)高分子固体電解質のいずれにも適用し得るものである。
(a)電解液を染み込ませたセパレータ
セパレータに染み込ませることのできる電解液としては、高分子ゲル電解質に含まれる電解液(電解質塩および可塑剤)と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。電解液の好適な1例を示せば、電解質として、LiClO4、LiAsF6、LiPF5、LiBOB、LiCF3SO3およびLi(CF3SO2)2の少なくとも1種類を用い、溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランおよびγ−ブチルラクトンよりなるエーテル類から少なくとも1種類を用い、前記電解質を前記溶媒に溶解させることにより、電解質の濃度が0.5〜2モル/リットルに調整されているものであるが、本発明はこれらに何ら制限されるべきものではない。
(b)高分子ゲル電解質及び(c)高分子固体電解質
高分子ゲル電解質および高分子固体電解質としては、高分子ゲル電解質および高分子固体電解質と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
なお、上記(a)〜(c)の電解質層は、1つの電池の中で併用してもよい。
また、高分子電解質は、高分子ゲル電解質層、正極活物質層、負極活物質層に含まれ得るが、同一の高分子電解質を使用してもよく、層によって異なる高分子電解質を用いてもよい。
ところで、現在好ましく使用される高分子ゲル電解質用のホストポリマーは、PEO、PPOのようなポリエーテル系高分子である。このため、高温条件下における正極側での耐酸化性が弱い。従って、酸化還元電位の高い正極材料を使用する場合には、負極(活物質層)の容量が、高分子ゲル電解質層を介して対向する正極(活物質層)の容量より少ないことが好ましい。負極(活物質層)の容量が対向する正極(活物質層)の容量より少ないと、充電末期に正極電位が上がり過ぎることを防止できる。なお、正極(活物質層)および負極(活物質層)の容量は、正極(活物質層)および負極(活物質層)を製造する際の理論容量として、製造条件から求めることができる。完成品の容量を測定装置で直接測定してもよい。ただし、負極(活物質層)の容量を対向する正極(活物質層)の容量と比べて少ないと、負極電位が下がりすぎて電池の耐久性が損なわれる恐れがあるので充放電電圧に注意する必要がある。例えば、一のセル(単電池層)の平均充電電圧を使用する正極活物質の酸化還元電位に対して適切な値に設定して、耐久性が低下しないように注意する。
電池を構成する電解質層の厚さは、特に限定するものではない。しかしながら、コンパクトな電池を得るためには、電解質としての機能が確保できる範囲で極力薄くすることが好まく、電解質層の厚さは5〜200μmであることが望ましい。
(セパレータ)
上記セパレータとしては、絶縁性の多孔体、繊維等であれば、有機材料、無機材料、特に限定されるべきものではなく、従来公知のものを用いることができる。例えば、上記電解液を吸収保持するポリマーからなる多孔性シート(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレータなど)、不織布セパレータなどを用いることができる。有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質を持つ上記ポリオレフィン系微多孔質セパレータは、電解質(電解液)との反応性を低く抑えることができるという優れた効果を有するものである。
上記ポリオレフィン系微多孔質セパレータなどの多孔性シートの材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PP/PE/PPの3層構造をした構造、ポリイミドなどが挙げられる。
不織布セパレータの材質としては、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを用いることができる。使用目的(電解質層に要求される機械強度など)に応じて、単独または混合して用いる。
また、不織布の嵩密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性を得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。すなわち、あまり不織布の嵩密度が大きすぎると、電解質層中の非電解質材料が占める割合が大きくなりすぎ、電解質層におけるイオン伝導度などを損なうおそれがあるためである。
上記セパレータ(ポリオレフィン系微多孔質セパレータなど)の空孔率は20〜50質量%であることが望ましい。セパレータの空孔率が、上記範囲にあることで電解質(電解液)の抵抗による出力低下の防止と、微粒がセパレータの空孔(微細孔)を貫くことによる短絡の防止という理由から出力と信頼性の両方を確保するという効果がある。ここでセパレータの空孔率とは、原材料レジンの密度と最終製品のセパレータの密度から体積比として求められる値である。
また不織布セパレータの空孔率は50〜90質量%であることが好ましい。空孔率が50質量%未満では、電解質の保持性が悪化し、90%質量超では強度が不足する虞れがある。
上記セパレータへの電解液の含浸量は、セパレータの保液能力範囲まで含浸させればよいが、当該保液能力範囲を超えて含浸させてもよい。これは、電解質シール部に樹脂を注入して電解質層からの電解液の染み出しを防止できるため、該電解質層に保液できる範囲であれば含浸可能である。該電解液は、真空注液法などにより注液した後、完全にシールすることができるなど、従来公知の方法でセパレータに電解液を含浸させることができる。
<非水電解質二次電池の製造方法>
本発明は、デンドライトが有意に防止され、機械的強度を向上した非水電解質二次電池を提供することを目的とする。そこで、ここでは、かような非水電解質二次電池を製造する方法につき説明を行う。
特許文献1に記載の技術では、上記述べたような機械的強度に問題があるだけでなく、正極と負極を、セパレータを介して積層して電極群を作製する際に、正極および負極をセパレータの中央に正確に配置させなければならなかった。かような技術であると、電池作製を効率的に行なうことが困難である。
本発明の非水電解質二次電池の製造方法によると、正極と負極とをセパレータの中央に正確に配置させる必要がないため、電池作製を効率的に行なうことができる。
すなわち、本願発明に係る非水電解質二次電池の製造方法は、第一集電体の表面に形成された正極活物質層と、第二集電体の表面に形成された負極活物質層と、が電解質層を挟んで複数積層されてなる発電要素を含む非水電解質二次電池の製造方法であって、前記第一集電体の表面であって前記正極活物質層の外周に、前記正極活物質層の厚さより厚い第一非イオン透過性樹脂部材を形成し、および/または、前記第二集電体の表面であって前記負極活物質層の外周に、前記負極活物質層の厚さより厚い第二非イオン透過性樹脂部材を形成して単電池層を作製する第1工程と、前記第1工程後に前記単電池層を積層方向にプレスし、前記正極活物質層における電極反応部の外周縁辺を、前記負極活物質層における電極反応部の外周縁辺に対して一致または内方に位置させる第2工程と、を含む、非水電解質二次電池の製造方法である。
以下、第一非イオン透過性樹脂部材または第二非イオン透過性樹脂部材を、単に「非イオン透過性樹脂部材」とも称するのは上述の通りである。また、非イオン透過性樹脂部材は、接着層のみからなってもよいが、好ましくは、基材層と、接着層と、を含む。
本発明の製造方法においては、活物質層の少なくとも一方に、電極反応部と、樹脂浸透部と、を形成する。好ましくは、少なくとも電極反応部と、樹脂浸透部と、を正極側に形成する。さらに好ましくは、正極側にのみ形成する。
上記の通り、本発明の製造方法においては、前記第一集電体の表面であって前記正極活物質層の外周に、前記正極活物質層の厚さより厚い第一非イオン透過性樹脂部材を形成し、および/または、前記第二集電体の表面であって前記負極活物質層の外周に、前記負極活物質層の厚さより厚い第二非イオン透過性樹脂部材を形成して単電池層を作製する第1工程と、前記第1工程後に前記単電池層を積層方向にプレスし、前記正極活物質層における電極反応部の外周縁辺を、前記負極活物質層における電極反応部の外周縁辺に対して一致または内方に位置させる第2工程と、を含む。
かかる2つの工程を含むことで、製造される非水電解質二次電池は、有意にデンドライトを抑制/防止される。
上記の特徴的な工程を含む以外は、従来公知の知見が適宜組み合わされて参照されうる。
本発明の非水電解質二次電池の製造方法を、下記に説明する。
<第1工程>
第1工程は、前記第一集電体の表面であって前記正極活物質層の外周に、前記正極活物質層の厚さより厚い第一非イオン透過性樹脂部材を形成し、および/または、前記第二集電体の表面であって前記負極活物質層の外周に、前記負極活物質層の厚さより厚い第二非イオン透過性樹脂部材を形成して単電池層を作製する。
第1工程の前提として、集電体(第一集電体、第二集電体)の表面に形成された活物質層(正極活物質層、負極活物質層)を準備する必要がある。その準備の方法については、従来公知の知見が適宜参照されうる。念のため、以下に簡単に説明するが、下記方法に制限されないのは言うまでもない。
まず、活物質および導電助剤を溶媒に添加することにより、活物質スラリーを調製する(活物質スラリー調製工程)。この活物質スラリーを集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより塗膜を形成する(塗膜形成工程)。前記塗膜形成工程を経て作製された電極を集電体の厚み方向にプレスする(プレス工程)。なお、活物質スラリーにイオン伝導性ポリマーが添加され、当該イオン伝導性ポリマーを架橋させる目的で重合開始剤がさらに添加される場合には、塗膜形成工程における乾燥と同時に、または当該乾燥の前もしくは後に、重合処理を施してもよい。
[活物質スラリー調製工程]
本工程においては、所望の活物質、所望の導電助剤、および必要に応じて他の成分(例えば、バインダ、イオン伝導性ポリマー、支持塩(リチウム塩)、重合開始剤など)を、溶媒中で混合して、活物質スラリーを調製する。この活物質スラリー調製工程は、従来公知の知見を適宜参照し、あるいは組み合わせて行うことができる。この活物質スラリー中に配合される各成分の具体的な形態については、上記の本発明の電極の構成の欄において説明した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
また、溶媒の種類や混合手段は特に制限されず、電極製造について従来公知の知見が適宜参照されうる。溶媒の一例を挙げると、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、などが用いられうる。バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を採用する場合には、NMPを溶媒として用いるとよい。
[塗膜形成工程]
続いて、集電体を準備し、上記で調製した活物質スラリーを当該集電体の表面に塗布し、乾燥させる。これにより、集電体の表面に活物質スラリーからなる塗膜が形成される。この塗膜は、後述するプレス工程を経て、活物質層となる。準備する集電体の具体的な形態については、上記の本発明の電極の構成の欄において説明した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。活物質スラリーを塗布するための塗布手段も特に限定されないが、例えば、コンマコーター、ダイコーターなどの一般的に用いられている手段が採用されうる。塗膜は、製造される電極における集電体と活物質層との所望の配置形態に応じて、形成される。なお、製造される電極が双極型電極の場合、集電体の一方の面には正極活物質を含む塗膜が形成され、他方の面には負極活物質を含む塗膜が形成される。これに対し、双極型でない電極を製造する場合には、正極活物質または負極活物質のいずれか一方を含む塗膜が1枚の集電体の両面に形成される。
その後、集電体の表面に形成された塗膜を乾燥させる。これにより、塗膜中の溶媒が除去される。塗膜を乾燥させるための乾燥手段も特に制限されず、電極製造について従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、加熱処理が例示される。乾燥条件(乾燥時間、乾燥温度など)は、活物質スラリーの塗布量やスラリーの溶媒の揮発速度に応じて適宜設定されうる。なお、塗膜が重合開始剤を含む場合には、さらに重合工程を行うことで、塗膜中のイオン伝導性ポリマーが架橋性基によって架橋される。重合工程における重合処理も特に制限されることはなく、従来公知の知見を適宜参照すればよい。例えば、塗膜が熱重合開始剤(AIBNなど)を含む場合には、塗膜に熱処理を施す。また、塗膜が光重合開始剤(BDKなど)を含む場合には、紫外光などの光を照射する。なお、熱重合のための熱処理は、上記の乾燥工程と同時に行われてもよいし、当該乾燥工程の前または後に行われてもよい。
[集電体の表面であって、活物質層の外周に、活物質層の厚さより厚い非イオン透過性樹脂部材を形成する工程]
本工程は、本発明の製造方法における特徴的な工程である。集電体の表面であって、活物質層の外周に活物質層の厚さより厚い非イオン透過性樹脂部材を形成する工程は、より具体的には、以下である。すなわち、前記第一集電体の表面であって前記正極活物質層の外周に、前記正極活物質層の厚さより厚い第一非イオン透過性樹脂部材を形成し、および/または、前記第二集電体の表面であって前記負極活物質層の外周に、前記負極活物質層の厚さより厚い第二非イオン透過性樹脂部材を形成する工程である。
非イオン透過性樹脂部材は、上記の通り、接着層のみからなってもよいが、好ましくは、基材層と、接着層と、を含む。この非イオン透過性樹脂部材を、活物質層の厚さより厚くし、集電体の表面であって、活物質層の外周に形成する。非イオン透過性樹脂部材が基材層と、接着層とを含む場合、好ましくは、前記接着層が集電体側になるように非イオン透過性樹脂部材を配置する。以下、非イオン透過性樹脂部材が、基材層上に接着層が形成されてなる形態を中心に説明するが、上記の通り、非イオン透過性樹脂部材が接着層のみからなってもよい。
ここで、基材層は、前記正極活物質層または前記負極活物質層の厚さを保持する(接着層と電解質層との間隔を保持する)役割のみならず、非イオン透過性樹脂からなる接着層を、活物質層の外方に配置するための支持体のような役割をも担うことができる。
非イオン透過性樹脂部が、基材層と、接着層とを含む場合、基材層上全体に接着層を形成する形態のみならず、基材層上の一部に接着層を、形成する形態も含む。
ここで「一部」とは、特に制限はないが、後述の第2工程において、正極反応部の外周縁辺を、負極反応部の外周縁辺に対して一致または内方に位置させる量に十分であればよい。つまり、非イオン透過性樹脂を基材上に保持する量も、正極反応部の外周縁辺を前記負極反応部の外周縁辺と一致または内方に位置できる(つまり、正極反応部と、負極反応部との位置関係が許容される)ための量であれば、特に制限はない。非イオン透過性樹脂を浸透させる場合、接着層の厚さが、活物質層の厚さと等しくてもよい。この際、「等しい」とは「実質的に等しい」との概念を含むことはいうまでもない。また、本明細書中「同じ量」と規定した場合も同様に「実質的に」を含む。
基材層と、接着層とを含む(例えば、基材層上に接着層が形成されてなる)非イオン透過性樹脂部材を、集電体の表面であって、活物質層の外周に形成する際の、具体的な位置についても制限はない。ただし、(i)〜(iii)のいずれかの工程を含むと好ましい。
(i)接着層と、基材層と、を、活物質層の外周縁辺に接するように配置した、非イオン透過性樹脂部材を形成する。
(i)は、例えば、後に詳説する図4(a)、図6〜9(正極側・負極側)、図5(正極側)などで表される。第1工程においては、集電体の表面であって活物質層の外周に、活物質層の厚さより厚い非イオン透過性樹脂部材を形成する。(i)では、非イオン透過性樹脂部材を、該非イオン透過性樹脂部材を構成する接着層と、基材層とが活物質層の外周縁辺に接するように配置する。なお、図4(a)の変形例としての図4(b)で表すように、接着層が活物質層の外周縁辺に接するが、基材層上の一部(例えば、基材層上の半分の領域)に接着層を形成する形態でもよい。
(ii)接着層を、活物質層の外周縁辺と離間して、かつ基材層を活物質層の外周縁辺に接するように配置した、非イオン透過性樹脂部材を形成する。
(ii)は、例えば、後に詳説する図5(負極側)などで表される。上記の通り、第1工程においては、集電体の表面であって、活物質層の外周に、活物質層の厚さより厚い非イオン透過性樹脂部材を形成する。(ii)では、非イオン透過性樹脂部材を、該非イオン透過性樹脂部材を構成する接着層が活物質層の外周縁辺と離間するように、かつ、該非イオン透過性樹脂部材を構成する基材層が活物質層の外周縁辺に接するように配置する。
(iii)接着層と、基材層と、を活物質層の外周縁辺と離間して配置した、非イオン透過性樹脂部材を形成する。
(iii)は、例えば、後に詳説する図10〜14(正極側・負極側)などで表される。上記の通り、第1工程においては、集電体の表面であって、活物質層の外周に、活物質層の厚さより厚い非イオン透過性樹脂部材を形成する。(iii)では、非イオン透過性樹脂部材を、該非イオン透過性樹脂部材を構成する接着層と、基材層とが活物質層の外周縁辺と離間するように配置する。
上記第1工程を経ることによって単電池層が作製され、後述する第2工程における「電極反応部(正極反応部)の外周縁辺を、前記負極活物質層における電極反応部(負極反応部)の外周縁辺に対して一致または内方に位置させる」準備が整うことになる。
<第2工程>
本発明の製造方法においては、前記第1工程後に、第2工程を含む。第2工程は、前記単電池層を積層方向にプレスし、前記正極活物質層における電極反応部(正極反応部)の外周縁辺を、前記負極活物質層における電極反応部(負極反応部)の外周縁辺に対して一致または内方に位置させる。
[単電池層を積層方向にプレスし、正極反応部の外周縁辺を、負極反応部の外周縁辺に対して一致または内方に位置させる]
正極および上記負極を、電解質を正極と負極両方にあわせて塗布した後、必要に応じセパレータを間に挟んで向かい合わせて張り合わる。このようにして単電池層を作製する。
プレスは、従来公知の方法を適宜参照し、あるいは組み合わせて行うことができ例えば、ホットプレス機やカレンダーロールプレス機などが挙げられる。
このように単電池層を積層方向にプレスすることによって、非イオン透過性樹脂をクリープさせる。そのクリープした非イオン透過性樹脂を活物質層に浸透させ、樹脂浸透部を形成し、正極反応部・負極反応部を所望の位置関係に設定する。
この所望の位置関係にせしめるためには、「正極および/または負極反応部の大きさ」や「活物質層の大きさ」を適宜調整すればよい。
「活物質層の大きさ」は、集電体に塗布する活物質の面積を適宜調節することで設定することができる。
「樹脂浸透部の大きさ」は、活物質層の厚さよりも非イオン透過性樹脂部材の厚さを厚くし(非イオン透過性樹脂部材の厚さは、接着層を構成する非イオン透過性樹脂の量や基材層の厚み等を調節することにより調節できる)、プレス条件、加熱条件等を適宜調節することで設定することができる。以下に、具体例を挙げて説明する。
例えば、大きな樹脂浸透部を形成したい場合には、より多くの非イオン透過性樹脂(例えば、厚みの大きな非イオン透過性樹脂)を使用して、樹脂浸透部を形成すればよい。小さな樹脂浸透部を形成したい場合には、より少ない非イオン透過性樹脂(例えば、厚みの小さな非イオン透過性樹脂)を使用して、樹脂浸透部を形成すればよい。より少ない量で大きな樹脂浸透部を形成したい場合には、有意に厚い基材層上に形成されてなる有意に少ない量の非イオン透過性樹脂で構成される接着層を含む非イオン透過性樹脂部材を、活物質層の外方に配置して単電池層を作製する。そして、それをプレスすることによって、活物質層に非イオン透過性樹脂を浸透させ、樹脂浸透部を形成すればよい。
ここで、非イオン透過性樹脂の量は、ガラス転移点(ホットプレス温度)、圧力(荷重による非イオン透過性樹脂のクリープ)にもより、一義的に決めることはできなが、例えば、以下を参考にできる。
すなわち、接着層が集電体側になるように非イオン透過性樹脂部材を活物質層の外周縁辺に接するように配置する場合、基材上に保持された非イオン透過性樹脂の厚さのクリープ減少を予め見積もり、基材の厚さをその分、厚くすればよい。一方、間隙を設けて(つまり、離間して)配置する場合、該間隙をクリープしてきた非イオン透過性樹脂で埋めることが望ましい。よって、活物質層の外周縁辺に接するように配置する場合と比較して、基材層上に保持された非イオン透過性樹脂の厚さを大きくすることが好ましい。このような調節も当業者であれば容易に可能である。非イオン透過性樹脂の厚みも、当業者であれば容易に本発明の特徴を逸脱しない範囲で適宜選択できる。ただ、活物質層の外周縁辺に接するように配置する場合、活物質層の厚さ比で、基材上に保持された非イオン透過性樹脂の厚さの好ましい比率は、50%〜400%、より好ましくは70%〜300%、さらに好ましくは100%〜200%である。一方、間隙を設けて配置する場合、(活物質層の厚さ+間隙の長さ)比で、基材上に保持された非イオン透過性樹脂の厚さの好ましい比率は50%〜400%、より好ましくは70%〜300%、さらに好ましくは100%〜200%である。なお、この比率は、あくまで目安に過ぎず、当業者であれば、これまでの説明を参考に樹脂浸透部の大きさを調節しうることは言うまでもない。
なお、非イオン透過性樹脂が熱硬化性樹脂であれば、プレスすることにより非イオン透過性樹脂を活物質層に浸透させ、その後に加熱をして当該非イオン透過性樹脂を硬化すればよい。一方で、非イオン透過性樹脂が熱可塑性樹脂であれば、予め加熱をして非イオン透過性樹脂を軟化させ、その後にプレスすることにより非イオン透過性樹脂を活物質層に浸透させればよい。
なお、プレスまたは、必要に応じ加熱をする際は、例えば、スクレーパーや金型、樹脂型等を用いて、基材に保持された非イオン透過性樹脂が外方に流れ出さないように、堰き止めながらプレスおよび/または加熱を行えばよい。
また、プレスの工程は、正極と、負極とを電解質層を介して積層して単電池層を作製しそれを、積層方向にプレスする。この際、適宜加熱を行ってもよい。
なお、電池の設計上は、前記樹脂浸透部を形成するための非イオン透過性樹脂を保持していた基材を有する非イオン透過性樹脂部材を、活物質層の厚さよりも若干厚めに設定するとよい。それは、以下の理由による。すなわち、電極を積層してプレスをする際に、電極にかかる応力は外方に向かって厳しくなる。よって、製造される電池における非イオン透過性樹脂部材が、活物質層の厚さよりも若干厚めになるように設計して電池を作製することにより、耐久性を向上させる効果がある。つまり、電池の積層で生じる応力に起因する電極の劣化を向上させることができる。なお、ここで「若干厚め」とは、例えば、以下の通りである。すなわち、製造される電池の非イオン透過性樹脂部材の厚さが、活物質層の、好ましくは1.01〜1.2倍、より好ましくは1.05〜1.1倍程度に設定する。
かかる第2工程を経ることで、本発明の非水電解質二次電池を製造することができる。
以下、本発明に係る非水電解質二次電池を製造する方法を、図面を用いながら、さらに具体的な形態を挙げながら詳説する。ただし、以下に記載の具体的な形態に限定されず、当業者であれば従来公知の知見を適宜参照しあるいは組み合わせて変形することが可能である。
(図4(a)について)
図4(a)Aおよび図4(a)Bは、それぞれ、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態を製造する前と後の形態を模式的に表す断面図である。「後の形態」の形態である図4(a)Bに表される非水電解質二次電池を製造するためには、例えば、図4(a)Aに表される製造方法が考えられる。
(1)電極を積層した場合に、積層する方向に見て、正極活物質層14の外周縁辺が、負極活物質層17の外周縁辺と一致するように、集電体(13,16)上に活物質スラリーを塗膜する。
(2)続いて、第1非イオン透過性樹脂40aを保持してなる枠状の正極基材30a(第1非イオン透過性樹脂部材50a)を、正極活物質層14に接するように配置する。この際、第1非イオン透過性樹脂40a(接着層400)と、正極基材30a(基材層)とが正極活物質層14(活物質層)の外周縁辺に接するように、第1非イオン透過性樹脂部材50aを配置する。第2非イオン透過性樹脂40bを保持してなる枠状の負極基材30b(第2非イオン透過性樹脂部材50b)を、負極活物質層17に接するように配置する。この際、第2非イオン透過性樹脂40b(接着層400)と、負極基材30b(基材層)とが負極活物質層17(活物質層)の外周縁辺に接するように、第2非イオン透過性樹脂部材50b配置する。
なお、この際、正極基材30aの厚みと、負極基材30bの厚みとが、実質的に同一であるものを用いる。
また、この際、第1非イオン透過性樹脂40aと第2非イオン透過性樹脂40bとは同じ種類の非イオン透過性樹脂である。
そして、第1非イオン透過性樹脂部材50aの厚さは、正極活物質層14の厚さよりも有意に厚く、また、第2非イオン透過性樹脂部材50bの厚さは、負極活物質層17の厚さと実質的に同一である。この際、第1非イオン透過性樹脂40aの量を、第2非イオン透過性樹脂40bの量よりも多く設定する。この形態では、第1非イオン透過性樹脂40aの厚さを、第2非イオン透過性樹脂40bの厚さよりも厚めに設定する。これにより、正極活物質層14の外周に多くの非イオン性樹脂が浸透し、正極反応部が、負極反応部と比較して小さくなることになる。
上記正極および上記負極を、電解質を正極と負極両方にあわせて塗布した後、必要に応じセパレータを間に挟んで向かい合わせて張り合わせ単電池層を作製する。
(3)前記単電池層をプレスし、必要に応じて加熱する。
以上の工程を含むことにより、図4(a)Bに表される非水電解質二次電池を製造することができる。
つまり、図4(a)Bに表される製造される非水電解質二次電池においては、正極活物質層14は、電極反応部70(正極反応部)と、非イオン透過性樹脂40を浸透させて形成される樹脂浸透部60と、からなり、負極活物質層17は、電極反応部70(負極反応部)からなる。そして、図4(a)Bに表される製造される非水電解質二次電池において、樹脂浸透部60は、正極活物質層14の面方向において、前記電極反応部70の外周に配置される。さらに、図4(a)Bに表される製造される非水電解質二次電池において、前記正極活物質層17における電極反応部70(正極反応部)の外周縁辺が、前記負極活物質層17における電極反応部70(負極反応部)の外周縁辺に対して内方に位置する。なお、下記においては、製造される非水電解質二次電池の構造がこれと同様である場合、その説明は省略する。
(図4(b)について)
図4(b)は、図4(a)の変形例である。
図4(b)のように、第1非イオン透過性樹脂40a(接着層400)と、正極基材30a(基材層)とが正極活物質層14(活物質層)の外周縁辺に接するように、第1非イオン透過性樹脂部材50aを配置する。ただ、第1非イオン透過性樹脂40a(接着層400)が、正極基材30aの全体に亘って形成されていなくともよい。
(図5について)
図5Aおよび図5Bは、それぞれ、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態を製造する前と後の形態を模式的に表す断面図である。「後の形態」の形態である図5Bに表される非水電解質二次電池を製造するためには、例えば、図5Aに表される製造方法が考えられる。
(1)上記図4(a)(1)で説明したのと同様である。
(2)続いて、第1非イオン透過性樹脂40aを保持してなる枠状の正極基材30a(第1非イオン透過性樹脂部材50a)を、正極活物質層14に接するように配置する。この際、第1非イオン透過性樹脂40a(接着層400)と、正極基材30a(基材層)とを、正極活物質層14(活物質層)の外周縁辺に接するように、第1非イオン透過性樹脂部材50aを接着層400が集電体側になるように配置する。なお、「第1非イオン透過性樹脂部材50aを接着層400が集電体側になるように」とは下記のいずれの実施形態でも同様なので、以下では省略する。
第2非イオン透過性樹脂40bを保持してなる枠状の負極基材30b(第2非イオン透過性樹脂部材50b)を、負極活物質層17に接するように配置する。この際、第2非イオン透過性樹脂40b(接着層400)が負極活物質層17(活物質層)の外周縁辺と離間して、かつ、負極基材30b(基材層)が負極活物質層17(活物質層)の外周縁辺に接するように、第2非イオン透過性樹脂部材50bを接着層400が集電体側になるように配置する。なお、「第2非イオン透過性樹脂部材50bを接着層400が集電体側になるように」とは下記のいずれの実施形態でも同様なので、以下では省略する。
なお、この際、正極基材30aの厚みと、負極基材30bの厚みとが、同一であるものを用いる。
また、この際、第1非イオン透過性樹脂40aと第2非イオン透過性樹脂40bとは同じ種類の非イオン透過性樹脂である。
そして、第1非イオン透過性樹脂部材50aの厚さは、正極活物質層14の厚さよりも有意に厚く、また、第2非イオン透過性樹脂部材50bの厚さも、負極活物質層17の厚さよりも厚い。この際、第1非イオン透過性樹脂40aの量を、第2非イオン透過性樹脂40bの量よりも多く設定する。この形態では、第1非イオン透過性樹脂40aの厚さと、第2非イオン透過性樹脂40bの厚さとは、実質的に同一にするが、第1非イオン透過性樹脂40aを基材30上に保持する面積を大きく設定する。
これにより、正極活物質層14の外周に多くの非イオン性樹脂が浸透し、正極反応部が、負極反応部と比較して小さくなることになる。
上記正極および上記負極を、電解質を正極と負極両方にあわせて塗布した後、必要に応じセパレータを間に挟んで向かい合わせて張り合わせ単電池層を作製する。
(3)前記単電池層をプレスし、必要に応じて加熱する。
以上の工程を含むことにより、図4(a)Bに表される非水電解質二次電池を製造することができる。
(図6について)
図6Aおよび図6Bは、それぞれ、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態を製造する前と後の形態を模式的に表す断面図である。「後の形態」の形態である図6Bに表される非水電解質二次電池を製造するためには、例えば、図6Aに表される製造方法が考えられる。
(1)上記図4(a)(1)で説明したのと同様である。
(2)続いて、第1非イオン透過性樹脂40aを保持してなる枠状の正極基材30a(第1非イオン透過性樹脂部材50a)を、正極活物質層14に接するように配置する。この際、第1非イオン透過性樹脂40a(接着層400)と、正極基材30a(基材層)とが正極活物質層14(活物質層)の外周縁辺に接するように、第1非イオン透過性樹脂部材50aを配置する。また、第2非イオン透過性樹脂40bを保持してなる枠状の負極基材30b(第2非イオン透過性樹脂部材50b)を、負極活物質層17に接するように配置する。この際、第2非イオン透過性樹脂40b(接着層400)と、負極基材30b(基材層)とが負極活物質層17(活物質層)の外周縁辺に接するように、第2非イオン透過性樹脂部材50bを配置する。
なお、この際、正極基材30aの厚みと、負極基材30bの厚みとが、同一であるものを用いる。
また、この際、第1非イオン透過性樹脂40aと第2非イオン透過性樹脂40bとは異なる種類の非イオン透過性樹脂である。具体的には、第1非イオン透過性樹脂40aのガラス転移点が、第2非イオン透過性樹脂40bのガラス転移点よりも低いものを用いる。以下、相対的に、ガラス転移点が高いものを「高ガラス転移点」、ガラス転移点が低いものを「低ガラス転移点」とも称する。
そして、第1非イオン透過性樹脂部材50aの厚さは、正極活物質層14の厚さよりも有意に厚く、また、第2非イオン透過性樹脂部材50bの厚さは、負極活物質層17の厚さと実質的に同一である。この際、第1非イオン透過性樹脂40aの量と、第2非イオン透過性樹脂40bの量とは、実質的に同一である。
この形態では、第1非イオン透過性樹脂40aと第2非イオン透過性樹脂40bとは異なる種類の非イオン透過性樹脂である。これにより、正極活物質層14の外周に多くの非イオン性樹脂が浸透し、正極反応部が、負極反応部と比較して小さくなることになる。
上記正極および上記負極を、電解質を正極と負極両方にあわせて塗布した後、必要に応じセパレータを間に挟んで向かい合わせて張り合わせ単電池層を作製する。
(3)前記単電池層をプレスし、加熱する。
この場合、低ガラス転移点を有する第1非イオン透過性樹脂40ay(熱可塑性樹脂)が、高ガラス転移点を有する第2非イオン透過性樹脂40bx(熱可塑性樹脂)によりも先に軟化する。その結果、低ガラス転移点を有する第1非イオン透過性樹脂40ayが、正極活物質層14に浸透する。そうして、樹脂浸透部60が形成される。
以上の工程を含むことにより、図6Bに表される非水電解質二次電池を製造することができる。
なお、電池アセンブリとして、熱負荷がかかったときに、熱物性が近い材料のほうが劣化を防ぐという観点で好ましい(同じ熱膨張率であれば機械的な劣化が少ない)。よって、両ガラス転移点の差(ΔT)は、好ましくは100℃〜200℃、より好ましくは20℃〜100℃、さらに好ましくは20℃〜50℃である。
(図7について)
図7Aおよび図7Bは、それぞれ、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態を製造する前と後の形態を模式的に表す断面図である。「後の形態」の形態である図7Bに表される非水電解質二次電池を製造するためには、例えば、図7Aに表される製造方法が考えられる。
(1)上記図4(a)(1)で説明したのと同様である。
(2)続いて、第1非イオン透過性樹脂40aを保持してなる枠状の正極基材30a(第1非イオン透過性樹脂部材50a)を、正極活物質層14に接するように配置する。この際、第1非イオン透過性樹脂部材50aが、枠状の正極基材30a上に高ガラス転移点を有する第1非イオン透過性樹脂40axが形成され、その内側に低ガラス転移点を有する第1非イオン透過性樹脂40ayが形成されてなる構造を有するように作製する。そして、低ガラス転移点を有する第1非イオン透過性樹脂40ay(接着層400)と、正極基材30a(基材層)とが正極活物質層14(活物質層)の外周縁辺に接するように、第1非イオン透過性樹脂部材50aを配置する。第2非イオン透過性樹脂40bを保持してなる枠状の負極基材30b(第2非イオン透過性樹脂部材50b)を、負極活物質層17に接するように配置する。この際、第2非イオン透過性樹脂40b(接着層400)と、負極基材30b(基材層)とが負極活物質層17(活物質層)の外周縁辺に接するように、第2非イオン透過性樹脂部材50bを配置する。
なお、この際、正極基材30aの厚みと、負極基材30bの厚みとが、同一であるものを用いる。
そして、第1非イオン透過性樹脂部材50aの厚さは、正極活物質層14の厚さよりも有意に厚く、また、第2非イオン透過性樹脂部材50bの厚さは、負極活物質層17の厚さと実質的に同一である。この際、第1非イオン透過性樹脂40aの量を、第2非イオン透過性樹脂40bの量よりも多く設定する。なお、高ガラス転移点を有する第1非イオン透過性樹脂40axの量と、高ガラス転移点を有する第2非イオン透過性樹脂40bxの量とを実質的に同一に設定する。この形態では、第1非イオン透過性樹脂40aの厚さを、第2非イオン透過性樹脂40bの厚さよりも厚めに設定する。これにより、正極活物質層14の外周に多くの非イオン性樹脂が浸透し、正極反応部が、負極反応部と比較して小さくなることになる。
上記正極および上記負極を、電解質を正極と負極両方にあわせて塗布した後、必要に応じセパレータを間に挟んで向かい合わせて張り合わせ単電池層を作製する。
(3)前記単電池層をプレスし、加熱する。
この場合、低ガラス転移点を有する第1非イオン透過性樹脂40ay(熱可塑性樹脂)が、高ガラス転移点を有する第2非イオン透過性樹脂40bx(熱可塑性樹脂)によりも先に軟化する。その結果、低ガラス転移点を有する第1非イオン透過性樹脂40ayが、正極活物質層14に浸透する。そうして、樹脂浸透部60が形成される。
以上の工程を含むことにより、図7Bに表される非水電解質二次電池を製造することができる。
(図8について)
図8Aおよび図8Bは、それぞれ、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態を製造する前と後の形態を模式的に表す断面図である。「後の形態」の形態である図8Bに表される非水電解質二次電池を製造するためには、例えば、図8Aに表される製造方法が考えられる。
(1)上記図4(a)(1)で説明したのと同様である。
(2)続いて、第1非イオン透過性樹脂40aを保持してなる枠状の正極基材30a(第1非イオン透過性樹脂部材50a)を、正極活物質層14に接するように配置する。この際、第1非イオン透過性樹脂40a(接着層400)と、正極基材30a(基材層)とが正極活物質層14(活物質層)の外周縁辺に接するように、第1非イオン透過性樹脂部材50aを配置する。第2非イオン透過性樹脂40bを保持してなる枠状の負極基材30b(第2非イオン透過性樹脂部材50b)を、負極活物質層17に接するように配置する。この際、第2非イオン透過性樹脂40b(接着層400)と、負極基材30b(基材層)とが負極活物質層17(活物質層)の外周縁辺に接するように、第2非イオン透過性樹脂部材50b配置する。
なお、この際、正極基材30aの厚みが、負極基材30bの厚みよりも、厚いものを用いる。
また、この際、第1非イオン透過性樹脂40aと第2非イオン透過性樹脂40bとは同じ種類の非イオン透過性樹脂である。
そして、第1非イオン透過性樹脂部材50aの厚さは、正極活物質層14の厚さよりも有意に厚く、また、第2非イオン透過性樹脂部材50bの厚さは、負極活物質層17の厚さと実質的に同一である。この際、第1非イオン透過性樹脂40aの量と、第2非イオン透過性樹脂40bの量とは、実質的に同量である。この形態では、第1非イオン透過性樹脂40aの厚さと、第2非イオン透過性樹脂40bの厚さとが実質的に同一になるように設定する。これにより、正極活物質層14の外周に多くの非イオン性樹脂が浸透し、正極反応部が、負極反応部と比較して小さくなることになる。
上記正極および上記負極を、電解質を正極と負極両方にあわせて塗布した後、必要に応じセパレータを間に挟んで向かい合わせて張り合わせ単電池層を作製する。
(3)前記単電池層をプレスし、加熱する。
この際の加熱は、第1集電体13側に付与される温度が、第2集電体16側に付与される温度よりも高くなるように設定する。
この場合、低ガラス転移点を有する第1非イオン透過性樹脂40ay(熱可塑性樹脂)が、高ガラス転移点を有する第2非イオン透過性樹脂40bx(熱可塑性樹脂)によりも先に軟化する。その結果、低ガラス転移点を有する第1非イオン透過性樹脂40ayが、正極活物質層14に浸透する。そうして、樹脂浸透部60が形成される。
以上の工程を含むことにより、図6Bに表される非水電解質二次電池を製造することができる。
(図9について)
図9Aおよび図9Bは、それぞれ、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態を製造する前と後の形態を模式的に表す断面図である。「後の形態」の形態である図9Bに表される非水電解質二次電池を製造するためには、例えば、図9Aに表される製造方法が考えられる。
(1)電極を積層した場合に、積層する方向に見て、正極活物質層14および負極活物質層17を、正極活物質層14の外周縁辺が、負極活物質層17の外周縁辺の外方に位置するように、集電体(13,16)上に活物質スラリーを塗膜する。
(2)続いて、第1非イオン透過性樹脂40aを保持してなる枠状の正極基材30a(第1非イオン透過性樹脂部材50a)を、正極活物質層14に接するように配置する。この際、第1非イオン透過性樹脂40a(接着層400)と、正極基材30a(基材層)とが正極活物質層14(活物質層)の外周縁辺に接するように、第1非イオン透過性樹脂部材50aを配置する。第2非イオン透過性樹脂40bを保持してなる枠状の負極基材30b(第2非イオン透過性樹脂部材50b)を、負極活物質層17に接するように配置する。この際、第2非イオン透過性樹脂40b(接着層400)と、負極基材30b(基材層)とが負極活物質層17(活物質層)の外周縁辺に接するように、第2非イオン透過性樹脂部材50b配置する。
なお、この際、正極基材30aの厚みと、負極基材30bの厚みとが、実質的に同一であるものを用いる。
また、この際、第1非イオン透過性樹脂40aと第2非イオン透過性樹脂40bとは同じ種類の非イオン透過性樹脂である。
そして、第1非イオン透過性樹脂部材50aの厚さは、正極活物質層14の厚さよりも有意に厚く、また、第2非イオン透過性樹脂部材50bの厚さは、負極活物質層17の厚さと実質的に同一である。この際、第1非イオン透過性樹脂40aの量を、第2非イオン透過性樹脂40bの量よりも多く設定する。この形態では、第1非イオン透過性樹脂40aの厚さを、第2非イオン透過性樹脂40bの厚さよりも厚めに設定する。これにより、正極活物質層14の外周に多くの非イオン性樹脂が浸透し、正極反応部が、負極反応部と比較して小さくなることになる。
上記正極および上記負極を、電解質を正極と負極両方にあわせて塗布した後、必要に応じセパレータを間に挟んで向かい合わせて張り合わせ単電池層を作製する。
(3)前記単電池層をプレスし、必要に応じて加熱する。
以上の工程を含むことにより、図4(a)Bに表される非水電解質二次電池を製造することができる。
以上の工程を含むことにより、図9Bに表される非水電解質二次電池を製造することができる。つまり、図9Bに表される製造される非水電解質二次電池においては、正極活物質層14は、電極反応部70(正極反応部)と、非イオン透過性樹脂40を浸透させて形成される樹脂浸透部60と、からなり、負極活物質層17は、電極反応部70(負極反応部)からなる。そして、図9Bに表される製造される非水電解質二次電池において、樹脂浸透部60は、正極活物質層14の面方向において、前記電極反応部70の外周に配置される。さらに、図9Bに表される製造される非水電解質二次電池において、前記正極活物質層17における電極反応部70(正極反応部)の外周縁辺が、前記負極活物質層17における電極反応部70(負極反応部)の外周縁辺に対して一致する。なお、下記においては、製造される非水電解質二次電池の構造がこれと同様である場合、その説明は省略する。
なお、図9は、それぞれの活物質層(14、16)の大きさが異なる場合についての形態である。このような場合、第1非イオン透過性樹脂40aの量を、第2非イオン透過性樹脂40bの量よりも多く設定する以外の方法によっても、正極反応部・負極反応部を本発明にて許容される位置関係に設定できるのはいうまでもない(例えば、図5〜8)。
(図10について)
図10Aおよび図10Bは、それぞれ、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態を製造する前と後の形態を模式的に表す断面図である。「後の形態」の形態である図10Bに表される非水電解質二次電池を製造するためには、例えば、図10Aに表される製造方法が考えられる。つまりは、本実施形態は、図4(a)(図5)に相当するものであって、上記説明の、図4(a)(図5)の(2)において、非イオン透過性樹脂部材50を、活物質層の外周縁辺との間に間隙を設けて配置する以外は、図4(a)(図5)において説明した方法と同様の方法によって行うことができる。
より具体的には、非イオン透過性樹脂40を保持してなる枠状の基材30(非イオン透過性樹脂部材50)を、正極活物質層14と離間するように配置する。つまり、非イオン透過性樹脂40(接着層400)と、基材30(基材層)とが活物質層(14、17)(活物質層)の外周縁辺と離間するように、非イオン透過性樹脂部材50を配置する。なお、非イオン透過性樹脂40は、第1非イオン透過性樹脂40aおよび第2非イオン透過性樹脂40bを含み、基材30は、正極基材30aおよび負極基材30bを含み、活物質層が正極活物質層14および負極活物質層17を含む概念であることは上記した通りである。
以上の工程を含むことにより、図10Bに表される非水電解質二次電池を製造することができる。つまり、非イオン透過性樹脂部材50が、前記正極活物質層14および前記負極活物質層17の外周縁辺との間に間隙が設けられて位置し、前記間隙に非イオン透過性樹脂40が満たされてなる非水電解質二次電池を製造することができる。
(図11について)
図11Aおよび図11Bは、それぞれ、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態を製造する前と後の形態を模式的に表す断面図である。「後の形態」の形態である図11Bに表される非水電解質二次電池を製造するためには、例えば、図11Aに表される製造方法が考えられる。つまりは、本実施形態は、図6に相当するものであって、上記説明の、図6の(2)において、非イオン透過性樹脂部材50を、活物質層の外周縁辺との間に間隙を設けて配置する以外は、図6において説明した方法と同様の方法によって行うことができる。
より具体的には、非イオン透過性樹脂40を保持してなる枠状の基材30(非イオン透過性樹脂部材50)を、活物質層(14、17)と離間するように配置する。つまり、非イオン透過性樹脂40(接着層400)と、基材30(基材層)とが活物質層(14、17)(活物質層)の外周縁辺と離間するように、非イオン透過性樹脂部材50を配置する。
以上の工程を含むことにより、図11Bに表される非水電解質二次電池を製造することができる。つまり、非イオン透過性樹脂部材50が、前記正極活物質層14および前記負極活物質層17の外周縁辺との間に間隙が設けられて位置し、前記間隙に非イオン透過性樹脂40が満たされてなる非水電解質二次電池を製造することができる。
(図12について)
図12Aおよび図12Bは、それぞれ、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態を製造する前と後の形態を模式的に表す断面図である。「後の形態」の形態である図12Bに表される非水電解質二次電池を製造するためには、例えば、図12Aに表される製造方法が考えられる。つまりは、本実施形態は、図7に相当するものであって、上記説明の、図7の(2)において、非イオン透過性樹脂部材50を、活物質層の外周縁辺との間に間隙を設けて配置する以外は、図7において説明した方法と同様の方法によって行うことができる。
より具体的には、非イオン透過性樹脂40(接着層400)と、正極基材30(基材層)とが活物質層(14、17)(活物質層)の外周縁辺に離間するように、非イオン透過性樹脂部材50を配置する。つまり、非イオン透過性樹脂40(接着層400)と、基材30(基材層)とが活物質層(14、17)(活物質層)の外周縁辺と離間するように、非イオン透過性樹脂部材50を配置する。
以上の工程を含むことにより、図12Bに表される非水電解質二次電池を製造することができる。つまり、非イオン透過性樹脂部材50が、前記正極活物質層14および前記負極活物質層17の外周縁辺との間に間隙が設けられて位置し、前記間隙に非イオン透過性樹脂40が満たされてなる非水電解質二次電池を製造することができる。
(図13について)
図13Aおよび図13Bは、それぞれ、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態を製造する前と後の形態を模式的に表す断面図である。「後の形態」の形態である図13Bに表される非水電解質二次電池を製造するためには、例えば、図13Aに表される製造方法が考えられる。つまりは、本実施形態は、図8に相当するものであって、上記説明の、図8の(2)において、非イオン透過性樹脂部材50を、活物質層の外周縁辺との間に間隙を設けて配置する以外は、図8において説明した方法と同様の方法によって行うことができる。
より具体的には、非イオン透過性樹脂40を保持してなる枠状の基材30(非イオン透過性樹脂部材50)を、活物質層(14、17)に離間するように配置する。つまり、非イオン透過性樹脂40(接着層400)と、基材30(基材層)とが活物質層(14、17)(活物質層)の外周縁辺と離間するように、非イオン透過性樹脂部材50を配置する。
以上の工程を含むことにより、図13Bに表される非水電解質二次電池を製造することができる。つまり、非イオン透過性樹脂部材50が、前記正極活物質層14および前記負極活物質層17の外周縁辺との間に間隙が設けられて位置し、前記間隙に非イオン透過性樹脂40が満たされてなる非水電解質二次電池を製造することができる。
(図14について)
図14Aおよび図14Bは、それぞれ、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態を製造する前と後の形態を模式的に表す断面図である。「後の形態」の形態である図14Bに表される非水電解質二次電池を製造するためには、例えば、図14Aに表される製造方法が考えられる。つまりは、本実施形態は、図9に相当するものであって、上記説明の、図9の(2)において、非イオン透過性樹脂部材50を、活物質層の外周縁辺との間に間隙を設けて配置する以外は、図9において説明した方法と同様の方法によって行うことができる。
より具体的には、非イオン透過性樹脂40を保持してなる枠状の基材30(非イオン透過性樹脂部材50)を、活物質層(14、17)に接するように配置する。つまり、非イオン透過性樹脂40(接着層400)と、基材30(基材層)とが活物質層(14、17)(活物質層)の外周縁辺と離間するように、非イオン透過性樹脂部材50を配置する。
以上の工程を含むことにより、図14Bに表される非水電解質二次電池を製造することができる。つまり、非イオン透過性樹脂部材50が、前記正極活物質層14および前記負極活物質層17の外周縁辺との間に間隙が設けられて位置し、前記間隙に非イオン透過性樹脂40が満たされてなる非水電解質二次電池を製造することができる。
<絶縁層>
絶縁層は、主に双極型電池の場合に用いられる。この絶縁層は、電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こるのを防止する目的で、各電極の周囲に形成されてなるものである。本発明では、必要に応じて、電極の周囲に絶縁層を設けてもよい。これは、車両駆動用ないし補助用電源として利用するような場合には、電解液による短絡(液絡)を完全に防止する必要がある。さらに、電池への振動や衝撃が長期にわたり負荷される。そのため、電池寿命の長期化の観点からは、絶縁層を設置することがより長期間の信頼性、安全性を確保する上で望ましく、高品質の大容量電源を提供できる点で望ましいためである。
該絶縁層としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよい。例えば、エポキシ樹脂、ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミドなどが使用できるが、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
図15は、本発明に用いられうる絶縁層27が形成されてなる非水電解質二次電池の断面図を模式的に表したものである。
図15Aは、図4(a)〜図14で説明した非水電解質二次電池において、電極の周囲に絶縁層27を設けた形態を表す図であり、絶縁層27を固定するために、絶縁層27の表面に接着層400が設けられている。図15Bは、上記で説明した基材層30と、絶縁層27と、を一体型として用いた形態である。図15Cは、セパレータ(図示せず)に電解質15を含浸した場合において、そのセパレータに接着層400を埋め込んだ形態である。
このように、絶縁層27をどのように設置するかは、様々な形態が想定され、図15に示したものに限らず、従来公知の知見を適宜参照し、あるいは組み合わせて適用することができる。
<正極および負極リード>
正極および負極リードに関しては、双極型に限らず、従来公知の非双極型リチウムイオン電池で用いられるリードと同様のものを用いることができる。なお、電池外装材(電池ケース)から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆しておくのが好ましい。
<電池外装材(電池ケース)>
双極型に限らず、リチウムイオン電池では、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電池本体である電池非イオン透過性樹脂部材ないし電池巻回体全体を電池外装材ないし電池ケースに収容するのが望ましい。軽量化の観点からは、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属(合金を含む)の両面をポリプロピレンフィルム等の絶縁体(好ましく耐熱性の絶縁体)で被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルムなど、従来公知の電池外装材を用いるとよい。そして、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、電池非イオン透過性樹脂部材を収納し密封した構成とするのが好ましい。この場合、上記正極および負極リードは、上記熱融着部に挟まれて上記電池外装材の外部に露出される構造とすればよい。また熱伝導性に優れた高分子−金属複合ラミネートフィルムなどを用いることが、自動車の熱源から効率よく熱を伝え、電池内部を電池動作温度まですばやく加熱することができる点で好ましい。高分子−金属複合ラミネートフィルムとしては、特に制限されるべきものではなく、高分子フィルム間に金属フィルムを配置し全体を積層一体化してなる従来公知のものを使用することができる。具体例としては、例えば、高分子フィルムからなる外装保護層(ラミネート最外層)、金属フィルム層、高分子フィルムからなる熱融着層(ラミネート最内層)のように配置し全体を積層一体化してなるものが挙げられる。詳しくは、外装材に用いられる高分子−金属複合ラミネートフィルムは、上記金属フィルムの両面に、高分子フィルムとして、まず耐熱絶縁樹脂フィルムを形成し、少なくとも片面側の耐熱絶縁樹脂フィルム上に熱融着絶縁性フィルムが積層されたものである。かかるラミネートフィルムは、適当な方法にて熱融着させることにより、熱融着絶縁性フィルム部分が融着して接合し熱融着部が形成される。上記金属フィルムとしては、アルミニウムフィルム等が例示できる。また、非イオン透過性樹脂40フィルムとしては、ポリエチレンテトラフタレートフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ナイロンフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ポリエチレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)、ポリプロピレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)が例示できる。ただし、本発明の外装材は、これらに制限されるべきものではない。こうしたラミネートフィルムでは、超音波溶着等により熱融着絶縁性フィルムを利用して1対ないし1枚(袋状)のラミネートフィルムの熱融着による接合を、容易かつ確実に行うことができる。なお、電池の長期信頼性を最大限高めるためには、ラミネートシートの構成要素である金属フィルム同士を直接接合してもよい。金属フィルム間にある熱融着性樹脂を除去もしくは破壊して金属フィルム同士を接合するには超音波溶着を用いることができる。
<リチウムイオン電池の外観構成>
図16は、本発明に係るリチウムイオン電池の代表的な実施形態である積層型の扁平な(非双極型の)リチウムイオン二次電池(扁平型電池)の外観を表した斜視図である。
図16に示すように、積層型の扁平なリチウムイオン二次電池8では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ81、負極タブ82が引き出されている。発電要素(電池要素)83は、リチウムイオン二次電池8の電池外装材84によって包まれる。その周囲は熱融着されており、発電要素(電池要素)83は、正極タブ81及び負極タブ82を外部に引き出した状態で密封されている。
なお、本発明のリチウムイオン電池は、上記の通り、図16に示すような積層型の扁平な形状のものに制限されるものではなく、巻回型のリチウムイオン電池では、円筒型形状のものであってもよい。こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよい。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。
また、図16に示すタブ81、82の取り出しに関しても、特に制限されるものではなく、正極タブ81と負極タブ82とを同じ辺から引き出すようにしてもよい。正極タブ81と負極タブ82をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図16に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
本発明に係るリチウムイオン二次電池の用途としては、以下が挙げられる。例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)や燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高エネルギー密度、高出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。この場合には、本発明のリチウムイオン二次電池を複数個接続して構成した組電池とすることが望ましい。すなわち、本実施形態においては、本発明に係るリチウムイオン二次を、複数個、並列接続または直列接続または並列−直列接続または直列−並列接続の少なくとも一つを用いて組電池(車両用サブモジュール)とすることができる。これにより、種々の車両用ごとの容量・電圧の要望を基本の電池の組み合わせで対応が可能になる。その結果、必要エネルギー、出力の設計選択性を容易にすることが可能になる。そのため種々の車両用ごとに異なる電池を設計、生産する必要がなく、基本となる電池の大量生産が可能となり、量産化によるコスト削減が可能となる。以下に、当該組電池(車両用サブモジュール)の代表的な実施形態につき、図面を用いて簡単に説明する。
本発明の組電池は、本発明のリチウムイオン電池を複数個接続して構成したものである。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。なお、本発明の組電池では、本発明の非双極型リチウムイオン電池と双極型リチウムイオン電池を用いて、これらを直列に、並列に、または直列と並列とに、複数個組み合わせて、組電池を構成することもできる。
図17は、本発明に係る組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図17Aは組電池の平面図であり、図17Bは組電池の正面図であり、図17Cは組電池の側面図である。
図17に示すように、本発明に係る組電池9は、本発明のリチウムイオン電池が複数、直列に又は並列に接続して装脱着可能な小型の組電池91を形成している。この装脱着可能な小型の組電池91をさらに複数、直列に又は並列に接続している。これにより、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池9を形成することもできる。図17Aは、組電池の平面図、図17Aは正面図、図17Cは側面図を示している。作製した装脱着可能な小型の組電池91は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池91は接続治具92を用いて複数段積層される。何個の非双極型ないし双極型のリチウムイオン電池を接続して組電池91を作製するか、また、何段の組電池91を積層して組電池9を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
本発明の非水電解質二次電池を用いたリチウムイオン二次電池またはそれらを複数個組み合わせてなる組電池を、車両に用いることにより上記に記載の効果を奏する車両となる。
車両としては、特に制限されないが、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)が挙げられる。また、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
図18は、本発明の組電池を搭載した車両の概念図である。
図18に示したように、組電池100を電気自動車200のような車両に搭載するには、電気自動車200の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池100を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池100を用いた電気自動車200は高い耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。本発明の組電池を搭載した車両としては、図18に示すような電気自動車のほか、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車などに幅広く適用できるものである。
以上、本発明の実施形態につき、その効果を以下に纏める。
・デンドライトを有意に防止し、かつ、電池の機械的強度を向上することができる。
・充填容量を保持し、正極板の周縁部の密着強度も十分に保持し、充放電サイクル中の正極合剤の脱落等を有意に防止する。
・設計容量と実際の容量が同じである。
・正極活物質層と負極活物質層の大きさを、電池の設計段階で等しく作製することができる。
・正極と負極とをセパレータごしに、中央に正確に配置させる必要がなく電池作製を効率的に行なうことができる。