蛍光色素や蛍光タンパク等を導入した試料に対して照明光を照射して試料を励起させて、試料から発生する蛍光を検出して観察を行う顕微鏡が従来から用いられている。試料には複数の情報が含まれており、例えば複数の波長情報や複数の偏光情報が含まれている。そこで、試料の蛍光を複数の情報ごとに分離して観察を行う光学的観測装置に関する技術が特許文献1に開示されている。
一方、波長情報ごとに切り替えて観察を行うためにフィルタホイールを用いている技術が非特許文献1に開示されている。図9はフィルタホイールを用いて試料の観察を行う顕微鏡装置の一例を示している。この顕微鏡装置101は、光源装置102と共焦点スキャナ103と顕微鏡104と分光光学系105と第1カメラ106と第2カメラ107とを備えて構成している。
光源装置102は平行光の照明光Lを出射する。この照明光Lは共焦点スキャナ103に入射する。共焦点スキャナ103は集光ディスク111とピンホールディスク112と回転軸113とモータ114とビームスプリッタ115とを備えて構成している。
集光ディスク111には多数の集光レンズが配列され、ピンホールディスク112には多数のピンホールが配列されている。集光レンズおよびピンホールは多条且つ螺旋状に配列されており、同一の配列パターンで配列されている。1つの集光レンズは1つのピンホールに対応して設けられている。集光レンズは照明光を対応するピンホールに集光する。ピンホールは試料Sの焦点の範囲内の照明光および蛍光のみを通過させるための微小開口部である。
集光ディスク111とピンホールディスク112とは回転軸113に一体的に取り付けられている。モータ114は回転軸113を回転させる。これにより、集光ディスク111とピンホールディスク112とは一体的に回転を行う。ビームスプリッタ115は照明光Lと戻り光R(蛍光)とを分離する光学部品であり、ここではダイクロイックミラーを適用する。ビームスプリッタ115の光学特性としては、照明光Lの波長域の光を透過し、蛍光の波長域の光を反射する。
共焦点スキャナ103のピンホールディスク112の各ピンホールを通過した照明光Lは顕微鏡104に入射する。顕微鏡104は結像レンズ121と対物レンズ122とディッシュ123とを備えて構成している。顕微鏡104に入射する照明光Lは集光ディスク111の集光レンズの作用により拡散光となっており、結像レンズ121は照明光Lを平行光にする。
対物レンズ122は平行光となっている照明光Lをディッシュ123に載置されている試料Sに焦点を結ばせる。照明光Lが試料Sで焦点を結ぶことにより、試料Sに導入した蛍光色素や蛍光タンパク等が励起して蛍光を発生する。この蛍光は戻り光Rとなる。
分光光学系105は、リレーレンズ131とミラー移動機構132と第1フィルタホイール133と第1リレーレンズ134と第2フィルタホイール135と第2リレーレンズ136とを備えて構成している。共焦点スキャナ103から戻り光Rは拡散光としてリレーレンズ131に入射する。リレーレンズ131は戻り光Rを平行光にする。
ミラー移動機構132は第1分光ミラー132Aと第2分光ミラー132Bとの2つの分光ミラーを有している。第1分光ミラー132Aおよび第2分光ミラー132Bは戻り光Rを分光する。透過光は第1戻り光R1となり、反射光は第2戻り光R2となる。第1分光ミラー132Aと第2分光ミラー132Bとでは分光特性が異なる。第1分光ミラー132Aはシアン色の波長域の光を透過し、黄色の波長域の光を反射する。第2分光ミラー132Bは緑色の波長域の光を透過し、赤色の波長域の光を反射する。
ミラー移動機構132は、第1分光ミラー132Aおよび第2分光ミラー132Bの戻り光Rの光路に対する挿抜を行う。第1分光ミラー132Aと第2分光ミラー132Bとは一体的に移動を行う。ミラー移動機構132は、戻り光Rの光路に第1分光ミラー132Aと第2分光ミラー132Bとの何れかを配置するか、または第1分光ミラー132Aおよび第2分光ミラー132Bの両者が配置されないように各ミラーを一体的に移動させる。
第1フィルタホイール133はフィルタA、フィルタB、フィルタC、フィルタDの4つのフィルタを有している。フィルタAはシアン色の波長域の光のみを透過させる。フィルタBは黄色の波長域の光のみを透過させる。フィルタCは緑色の波長域の光のみを透過させる。フィルタDは赤色の波長域の光のみを透過させる。
フィルタA〜フィルタDは90度の角度をなすように配置されており、第1フィルタホイール133が回転することにより、何れか1つのフィルタが選択的に第1戻り光R1の光路に配置される。第1リレーレンズ134は平行光となっている第1戻り光R1を第1カメラ106の受光領域に結像させる。
第2フィルタホイール135はフィルタBおよびフィルタDの2つのフィルタを有している。フィルタBおよびフィルタDの透過特性は第1フィルタホイール133のフィルタBおよびフィルタDと同じである。フィルタBとフィルタDとは180度の角度なすように配置されており、第2フィルタホイール135が回転することにより、フィルタBまたはフィルタDの何れかが第2戻り光R2の光路に配置される。
第2リレーレンズ136は、フィルタBまたはフィルタDを透過した第2戻り光R2を第2カメラ107の受光領域に結像させる。
以上が構成である。次に、動作について説明する。顕微鏡装置101を用いて試料Sの観察を行う。第1カメラ106と第2カメラ107とは分光された異なる色の試料Sの同時間の像を観察する。図9では、第1カメラ106ではシアン色の試料Sの像を撮像し、第2カメラ107では黄色の試料Sの像を観察する。
このために、ミラー移動機構132は戻り光Rの光路に第1分光ミラー132Aが位置するように移動制御を行う。また、第1フィルタホイール133はフィルタAが第1戻り光R1の光路に配置されるように回転し、第2フィルタホイール135はフィルタBが第2戻り光R2の光路に配置されるように回転する。この状態が図9である。
次に、試料Sの観察について説明する。光源装置102は照明光Lを出射する。照明光Lは集光ディスク111の集光レンズにより集光する。ビームスプリッタ115は照明光Lを透過する特性を有しているため、照明光Lは透過する。そして、ピンホールディスク112のピンホールを通過する。
結像レンズ121に照明光Lが入射されて、平行光になる。そして、対物レンズ122によりディッシュ123に載置されている試料Sに照明光が焦点を結ぶ。これにより、試料Sが蛍光して、戻り光R(つまり、蛍光)を発生する。この戻り光Rは対物レンズ122、結像レンズ121、ピンホールディスク112のピンホールを経て、ビームスプリッタ115に入射される。
ビームスプリッタ115は蛍光を反射する特性を有している。よって、戻り光Rは反射して、リレーレンズ131に入射して、平行光になる。ミラー移動機構132は第1分光ミラー132Aを戻り光Rの光路に配置している。よって、第1分光ミラー132Aにより、戻り光Rはシアン色の第1戻り光R1と黄色の第2戻り光R2とに分光される。第1戻り光R1は透過し、第2戻り光R2は反射する。
第1戻り光R1の光路には、第1フィルタホイール133によりフィルタAが配置されている。フィルタAはシアン色の波長域の光のみを透過する特性を有している。これにより、第1戻り光R1からシアン色以外の波長域の光が除去される。第1戻り光R1は第1リレーレンズ134により第1カメラ106の受光領域に結像される。
第1分光ミラー132Aで反射した第2戻り光R2はフィルタBを通過する。フィルタBは黄色の波長域の光のみを透過する特性を有している。これにより、第2戻り光R2から黄色以外の波長域の光が除去される。第2戻り光R2は第2リレーレンズ136により第2カメラ107の受光領域に結像される。
共焦点スキャナ103は、モータ114が回転力を付与することにより、回転軸113と共に、集光ディスク111とピンホールディスク112とが一体的に回転を行う。これにより、試料Sの所定範囲を走査することができる。この走査により、第1カメラ106の受光領域に第1戻り光R1が走査され、第2カメラ107の受光領域に第2戻り光R2が走査される。
従って、第1カメラ106には試料Sのシアン色の波長域の情報の像が撮像され、第2カメラ107には試料Sの黄色の波長域の情報の像が撮像される。第1戻り光R1および第2戻り光R2は走査されることで、第1カメラ106と第2カメラ107とで同じ試料Sの画像を同時間に異なる色で観察を行うことができる。
図10は、ミラー移動機構132により、第2分光ミラー132Bが戻り光Rの光路に配置された場合を示している。第2分光ミラー132Bは緑色の波長域の光を透過し、赤色の波長域の光を反射する特性を有している。よって、第1戻り光R1は緑色の光となって透過し、第2戻り光R2は赤色の光となって反射する。
このとき、第1フィルタホイール133はフィルタCを第1戻り光R1の光路に配置し、第2フィルタホイール135はフィルタDを第2戻り光R2の光路に配置するように回転を行っている。第1戻り光R1がフィルタCを通過することにより、緑色以外の波長域の光が除去される。第2戻り光R2がフィルタDを通過することにより、赤色以外の波長域の光が除去される。
そして、第1戻り光R1が第1カメラ106の受光領域を走査されることで、第1カメラ106で試料Sの緑色の波長情報の画像が生成される。また、第2戻り光R2が第2カメラ107の受光領域を走査されることで、第2カメラ107で試料Sの赤色の波長情報の画像が生成される。従って、試料Sの緑色の画像と赤色の画像とが同時に観察される。
図11は、ミラー移動機構132により、第1分光ミラー132Aおよび第2分光ミラー132Bが戻り光Rの光路から退避するように移動している状態を示している。この場合には、戻り光Rの光路には分光ミラーが配置されないことから、第2戻り光R2は発生せず、第1戻り光R1(=戻り光R)のみとなる。
このとき、第1フィルタホイール133はフィルタAが第1戻り光R1の光路に配置されるように回転をしている。従って、リレーレンズ131により平行光となった戻り光R(第1戻り光R1)は、シアン色以外の波長域の光が除去される。そして、第1リレーレンズ134により第1カメラ106の受光領域に第1戻り光R1が結像する。
共焦点スキャナ103が走査を行うことで、第1戻り光R1により第1カメラ106は試料Sのシアン色の画像を撮像する。図11では、分光をさせていないため、異なる色の画像を同時観察することはできない。ただし、分光ミラーにより戻り光Rを分光すると、光量損失を生じることにより画像のS/N比の低下を招来する。また、分光させたときには、他の戻り光の光路の情報が混入するため、異なる戻り光の情報同士でのクロストークの問題を生じる。
よって、分光させないことで、異なる色の画像を同時に観察することはできないが、S/N比の高い明るい像を取得することができる。また、クロストークの問題を生じないことから、正確な画像生成を行うことができる。従って、S/N比が多少低下したとしても、試料Sの異なる色の画像を同時観察する場合と、単一の色の画像を高いS/N比で観察する場合とを、任意に切り替えることができる。
前述したように、第1フィルタホイール133は4つのフィルタA〜Dを有している。図12は、フィルタBを第1戻り光R1の光路に配置した状態を示している。これにより、試料Sの黄色の画像を高いS/N比で且つ正確に得ることができる。なお、この黄色の画像は分光させたときに第2カメラ107で得られる画像になる。
また、第1フィルタホイール133がフィルタCを第1戻り光R1の光路に配置することで、試料Sの緑色の画像を高いS/N比で且つ正確に得ることができる。また、第1フィルタホイール133がフィルタDを第1戻り光R1の光路に配置することで、試料Sの赤色の画像を高いS/N比で且つ正確に得ることができる。なお、この赤色の画像は分光させたときの第2カメラ107で得られる画像になる。
従って、分光させずに単一の色の画像を高いS/N比で観察するときでも、4つの色の画像を観察することができる。ただし、分光させていないため、同時に観察することはできないため、フィルタA〜Dを切り替えて観察を行なうことになる。
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は本実施形態の顕微鏡装置1を示している。顕微鏡装置1は、蛍光色素や蛍光タンパク等を導入した観察対象としての試料Sに照明光Lを照射する。これにより、試料Sを励起させて蛍光させる。そして、この蛍光を戻り光Rとしてカメラに結像させることで、試料Sの像を得る。
試料Sには複数の情報が含まれている。この情報としては、波長情報や偏光情報等がある。ここでは、波長情報ごとに試料Sの像を分離して観察を行う例について説明するが、偏光情報ごとに分離して観察を行うものであってもよい。勿論、波長情報や偏光情報以外の情報ごとに分離して観察を行うものであってもよい。
図1に示す顕微鏡装置1は、顕微鏡2と分光光学系3と第1カメラ4と第2カメラ5とを備えて構成している。顕微鏡2は、光源装置10とビームスプリッタ11と対物レンズ12とディッシュ13と結像レンズ14とを備えて構成している。ディッシュ13には観察対象である試料Sが載置されている。
光源装置10は照明光Lを出射する。照明光Lとしてはレーザ光やLED、水銀チップ等を適用することができる。照明光Lは試料Sの蛍光色素や蛍光タンパク等を励起させる波長を持つ。
ビームスプリッタ11は光の波長ごとに透過と反射とを分ける光学部品である。ビームスプリッタ11としてはダイクロイックミラー等を適用することができる。ビームスプリッタ11は照明光Lの波長域の光を反射し、試料Sの蛍光の波長域の光を透過する特性を有している。このため、照明光Lはビームスプリッタ11で反射する。
反射した照明光Lは対物レンズ12を透過して、ディッシュ13に載置された試料Sに照射される。照射された照明光Lにより試料Sが励起して蛍光を発する。この蛍光を戻り光Rとする。戻り光Rは対物レンズ12を経て、ビームスプリッタ11に入射する。
ビームスプリッタ11は蛍光の波長域の光を透過するため、戻り光Rは透過して、結像レンズ14に入射する。結像レンズ14に入射する戻り光Rは平行光になっているが、結像レンズ14はこれを収束光に変換する。以上が顕微鏡2の構成である。
次に、分光光学系3について説明する。分光光学系3は戻り光Rを情報ごとに分光する光学系である。ただし、分光を行わない場合もある。ここでは、波長情報ごとに分光を行う。この分光光学系3は、反射ミラー21とリレーレンズ22とミラー移動機構23と第1リレーレンズ24と第2リレーレンズ25とフィルタ交換機構26とを備えて構成している。
反射ミラー21は結像レンズ14からの戻り光Rを90度の角度で反射する。リレーレンズ22に入射する戻り光Rは拡散光になっているため、リレーレンズ22はこれを平行光にする。なお、リレーレンズ22と第1リレーレンズ24とにより、およびリレーレンズ22と第2リレーレンズ25とにより無限遠補正光学系を構成する。
ミラー移動機構23は第1分光ミラー23Aと第2分光ミラー23Bとの2つの分光ミラーを有する分光部移動機構である。ミラー移動機構23において、第1分光ミラー23Aと第2分光ミラー23Bとは直列に配列している。そして、ミラー移動機構23は第1分光ミラー23Aと第2分光ミラー23Bとを一体的に移動させる。移動方向は第1分光ミラー23Aと第2分光ミラー23Bとの配列方向になる。ミラー移動機構23は適宜の移動手段を用いることができ、例えばアクチュエータにより移動させてもよいし、ボールネジ等により移動させるものであってもよい。
図1では、ミラー移動機構23は2つの分光ミラーを有しているが、3つ以上の分光ミラーを有していてもよい。ただし、各分光ミラーはそれぞれ異なる特性(分光特性)を有しているものとする。従って、第1分光ミラー23Aと第2分光ミラー23Bとは異なる分光特性を有している。なお、ここでは波長情報ごとに分光しているが、偏光情報ごとに分光する場合には、偏光成分ごとに透過と反射とを分ける偏光ビームスプリッタが用いられる。
第1分光ミラー23Aおよび第2分光ミラー23B分光ミラーは、試料Sに含まれる情報ごとの観察を行うときに、戻り光Rを情報ごとに分光させる分光部である。前述したように、本実施形態では、波長情報ごとに分離して観察を行う。ここでは、第1分光ミラー23Aはシアン色の波長域の光を透過し、黄色の波長域の光を反射する特性を有しているものとする。また、第2分光ミラー23Bは緑色の波長域の光を透過し、赤色の波長域の光を反射する特性を有しているものとする。勿論、第1分光ミラー23Aおよび第2分光ミラー23Bの分光特性は任意に設定することができる。
図1では、ミラー移動機構23は第1分光ミラー23Aが戻り光Rの光路に位置するように移動している。従って、戻り光Rは第1分光ミラー23Aにより、シアン色の波長域の光(第1戻り光R1)を透過し、黄色の波長域の光(第2戻り光R2)を反射する。
第1戻り光R1の光路にはフィルタAが配置されている。フィルタAはシアン色の波長域の光のみを通過させるフィルタである。第1戻り光R1は第1分光ミラー23Aによりシアン色の波長域の光を透過させているが、第1戻り光R1にはシアン色の波長域以外の光が混在している。
そこで、第1戻り光R1がフィルタAを通過させることで、シアン色の波長域以外の光を除去する。これにより、フィルタAを通過した後の第1戻り光R1は純粋なシアン色の波長域の光となっている。この第1戻り光R1は第1リレーレンズ24に入射する。
第1リレーレンズ24に入射する第1戻り光R1は平行光になっている。第1リレーレンズ24は第1戻り光R1の像を第1カメラ4の受光領域に結像させる。これにより、試料Sのうちシアン色の波長情報の像が、撮像部としての第1カメラ4で撮像される。
一方、第1分光ミラー23Aで反射した第2戻り光R2の光路にはフィルタBが配置されている。フィルタBは黄色の波長域の光のみを通過させるフィルタである。第2戻り光R2にも黄色の波長域以外の光が混在している。そこで、第2戻り光R2がフィルタBを通過することにより、第2戻り光R2は純粋な黄色の波長域の光となる。
この第2戻り光R2は平行光として第2リレーレンズ25に入射する。第2リレーレンズ25は第2戻り光R2の像を第2カメラ5の受光領域に結像させる。これにより、試料Sのうち黄色の波長情報の像が、撮像部としての第2カメラ5で撮像される。
フィルタ交換機構26は複数のフィルタを有しており、各フィルタを回転可能にする機構である。ここでは4つのフィルタA、フィルタB、フィルタCおよびフィルタDを有している。勿論、フィルタの数は複数であれば4つ以外であってもよい。
フィルタ交換機構26は4つのフィルタA〜Dをそれぞれ90度の角度をなすように配置している。ここでは、フィルタA、フィルタC、フィルタB、フィルタDの順番で90度の角度をなすように配列されている。従って、フィルタAとフィルタBとは180度の角度をなし、フィルタCとフィルタDとは180度の角度をなす。
そして、4つのフィルタA〜Dのうち2つのフィルタが第1戻り光R1の光路と第2戻り光R2の光路とに配置可能に構成されている。ここでは、フィルタAとフィルタBとが同時に2つの光路に配置され、90度回転することで、フィルタCとフィルタDとが同時に2つの光路に配置される。フィルタ交換機構26の回転は任意の回転駆動手段により回転することができる。例えば、回転モータ等により回転を行う。
図1では、フィルタ交換機構26はフィルタAが第1戻り光R1の光路に配置され、フィルタBが第2戻り光R2の光路に配置されるようにしている。そして、フィルタ交換機構26が90度回転するごとに、フィルタA〜Dの位置は90度ずつ回転を行う。これにより、別のフィルタを第1戻り光R1の光路および第2戻り光R2の光路に配置することができる。
以上が構成である。次に、動作について説明する。まず、ミラー移動機構23は第1分光ミラー23Aが戻り光Rの光路に位置するように移動する。また、フィルタ交換機構26はフィルタAが第1戻り光R1の光路に位置し、フィルタBが第2戻り光R2の光路に位置するように配置する。
光源装置10は照明光Lを出射する。照明光Lはビームスプリッタ11で反射して、対物レンズ12によりディッシュ13に載置された試料Sに照射される。これにより、試料Sが励起されて蛍光(戻り光R)を発生する。戻り光Rは対物レンズ12を経て、ビームスプリッタ11を透過する。そして、結像レンズ14の作用により、収束光となり、反射ミラー21で反射をする。
拡散光となっている戻り光Rはリレーレンズ22で平行光となり、第1分光ミラー23Aに入射する。この第1分光ミラー23Aの作用により、戻り光Rはシアン色の波長域の第1戻り光R1と黄色の波長域の第2戻り光R2とに分光される。第1戻り光R1は透過し、第2戻り光R2は反射する。
第1戻り光R1はフィルタAにより、シアン色の波長域以外の光が除去される。この第1戻り光R1は第1リレーレンズ24により第1カメラ4の受光領域に結像される。一方、第2戻り光R2はフィルタBにより、黄色の波長域以外の光が除去される。この第2戻り光R2は第2リレーレンズ25により第2カメラ5の受光領域に結像される。
これにより、第1カメラ4で試料Sのシアン色の像を観察でき、第2カメラ5で試料Sの黄色の像を観察できる。このとき、第1カメラ4に結像される第1戻り光R1のタイミングと第2カメラ5に結像される第2戻り光R2のタイミングとは同時(またはほぼ同時)である。これにより、試料Sに含まれる異なる波長情報の像を同時間で観察することができる。
次に、図2を参照して、ミラー移動機構23が移動をして、戻り光Rの光路に第2分光ミラー23Bを配置した場合について説明する。前述したように、第2分光ミラー23Bは戻り光Rを分光して、緑色の波長域の光を第1戻り光R1として透過し、赤色の波長域の光を第2戻り光R2Rとして反射する。
このときには、フィルタ交換機構26は90度回転して、第1戻り光R1の光路にフィルタCが配置され、第2戻り光R2の光路にフィルタDが配置されるようにしている。フィルタCは緑色の波長域の光のみを通過させるフィルタであり、フィルタCを通過した第1戻り光R1は緑色の波長域以外の光が除去された純粋な緑色の波長域の光となっている。第2分光ミラー23Bを透過した第1戻り光R1には緑色以外の波長域の光が混在するため、フィルタCはこれを除去する。
フィルタDは赤色の波長域の光のみを通過させるフィルタであり、フィルタDを通過した第2戻り光R2は赤色の波長域以外の光が除去された純粋な赤色の波長域の光となっている。第2分光ミラー23Bにおいても、第2戻り光R2に赤色以外の波長域の光が混在するため、フィルタDはこれを除去する。
これにより、第1カメラ4には試料Sの緑色の波長域の像が結像し、第2カメラ5には試料Sの赤色の波長域の像が結像する。従って、第1カメラ4と第2カメラ5とで同時に緑色と赤色との異なる波長情報の像を同時間に観察することができる。
次に、図3を参照して、ミラー移動機構23が第1分光ミラー23Aおよび第2分光ミラー23Bを戻り光Rの光路から退避させた場合について説明する。なお、図3において、フィルタAが第1戻り光R1の光路に配置されるようにしている。この場合には、リレーレンズ22により平行光にされた戻り光は分光されない。
従って、戻り光Rは第1戻り光R1としてフィルタAを通過する。フィルタAはシアン色の波長域の光のみを通過させる。これにより、第1カメラ4にはシアン色の波長域の像が結像される。この第1カメラ4に結像した第1戻り光R1の像に基づいて、試料Sのシアン色の像を観察することができる。
図3の場合は、戻り光Rは分光されない。従って、分光ミラーの作用を受けることがない。戻り光Rは分光ミラーの作用を受けると、光量損失を発生することからS/N比が低下し、像の明るさが低下する。また、分光ミラーで分光をする場合には、フィルタを介在させたとしても、分光された他の光路の成分(第2戻り光R2)を完全に除去することはできない。従って、分光された他の光路の像情報がクロストークする。これにより、第1カメラ4および第2カメラ5に結像される像の正確性が低下する。
このため、戻り光Rを分光させないで、単一の波長情報の像のみを観察する。これにより、S/N比を向上させた明るい正確な像を観察することができる。ただし、この場合には、分光していないため、観察可能な像は1つになる。つまり、単一の波長情報の像を観察することはできるが、複数の波長情報を同時間に観察することはできない。
この点、図1および図2に示したように、第1分光ミラー23Aまたは第2分光ミラー23Bを戻り光Rの光路に配置することで、異なる波長情報の像を同時間に観察することができる。ただし、この場合には、分光をしているため、S/N比が低下し、像の明るさが低下する。また、クロストークの問題も生じる。
従って、ミラー移動機構23を制御して、複数の波長情報の像の同時観察と単一の波長情報の像の観察とを切り替え可能に構成する。これにより、所望の観察を切り替えて行うことができる。
ところで、単一の波長情報の像の観察を行う場合において、第1分光ミラー23Aおよび第2分光ミラー23Bで分光させたときに得られる異なる波長情報の像を観察可能にする。つまり、シアン色、黄色、緑色、赤色の4つの波長情報の像を単一の波長情報の像として観察可能にする。このために、フィルタ交換機構26はフィルタA〜Dを第1戻り光R1の光路に配置可能に構成している。
図4は図3の状態から、フィルタ交換機構26を180度回転させて、フィルタBを第1戻り光R1の光路に配置した状態を示している。このフィルタBはもともと第2戻り光R2の光路に配置させて、第1分光ミラー23Aにより反射された第2戻り光R2に対してフィルタリング作用を与えるものである。
フィルタ交換機構26が180度回転することにより、フィルタBは第1戻り光R1の光路に配置することが可能になる。フィルタBを戻り光Rが通過することにより、黄色の波長域の光のみが通過するため、第1カメラ4には黄色の波長域の像が結像する。これにより、試料Sの黄色の波長情報の像の観察を行うことができる。
図4の状態からさらにフィルタ交換機構26が90度回転することで、フィルタCが第1戻り光R1の光路に配置される。これにより、第1カメラ4には緑色の波長域の像が結像するため、試料Sの緑色の波長情報の像の観察を行うことができる。
また、その状態からさらにフィルタ交換機構26が180度回転することで、フィルタDが第1戻り光R1の光路に配置される。これにより、第1カメラ4には赤色の波長域の像が結像するため、試料Sの赤色の波長情報の像の観察を行うことができる。なお、このフィルタDはもともと第2戻り光R2の光路に配置させて、第2分光ミラー23Bにより反射された第戻り光R2に対してフィルタリング作用を与えるものである。
従って、戻り光Rを分光させないで、単一の波長情報の像を観察する場合でも、フィルタ交換機構26が90度ずつ回転可能に構成することで、フィルタA〜Dを第1戻り光R1の光路に配置することが可能になる。これにより、分光させたときと同じ種類の波長情報の像の観察を行うことができる。ただし、分光をさせていないため、同時に観察を行うことはできない。
フィルタ交換機構26は第1戻り光R1の光路に配置されるフィルタと第2戻り光R2の光路(他の光路)に配置されるフィルタとを交換可能にしている。これにより、フィルタA〜Dの4つのフィルタを用いて、異なる波長情報の同時観察と単一の波長情報の像の観察とを実現することができる。
これは、フィルタ交換機構26が1つの戻り光の光路と他の戻り光の光路とでフィルタを交換することにより可能になる。従って、第1戻り光R1の光路と第2戻り光R2の光路とでそれぞれ専用のフィルタを設けることなく、異なる光路に配置されるフィルタを共用することができる。
これにより、分光光学系3に設けるフィルタの数を削減することができる。例えば、前述した背景技術では6つのフィルタが必要であり、そのうち2つのフィルタは同一のフィルタであり重複していたが、本実施形態では4つのフィルタを使用しており、同一のフィルタを使用していない。これにより、フィルタの使用数を低減することができる。
また、第1戻り光R1および第2戻り光R2の両者の光路にそれぞれフィルタを交換する機構を設けることなく、1つのフィルタ交換機構26によりフィルタの交換を行っている。これにより、第1戻り光R1の光路と第2戻り光R2の光路とのそれぞれにフィルタホイールを設ける必要がなくなる。
フィルタホイールやフィルタ交換機構26は回転力を付与する回転駆動手段を設ける必要があり、例えば回転駆動手段としては回転モータ等を適用できる。本実施形態では、1つのフィルタ交換機構26を設けているため、回転駆動手段は1つだけを設ければよい。従って、回転駆動手段およびフィルタ交換機構26の数を少なくすることができることから、分光光学系3の構成を簡単且つ小型にすることができる。
以上において、ミラー移動機構23は第1分光ミラー23Aと第2分光ミラー23Bとを有していたが、1つの分光ミラー(第1分光ミラー23A)のみを有するものであってもよい。図5は第1分光ミラー23Aが戻り光Rの光路に挿入されている状態を示しており、図6は第1分光ミラー23Aが戻り光Rの光路から抜去(退避)されている状態を示している。
図5の場合では、シアン色の波長域の像を第1カメラ4で撮像し、黄色の波長域の像を第2カメラ5で撮像する。つまり、2色の波長域の像の同時観察を行うことができる。一方、ミラー移動機構23により第1分光ミラー23Aを退避した場合には、シアン色の波長域の像を第1カメラ4で撮像する。つまり、シアン色の単一の波長情報の像の観察をすることができる。
第1分光ミラー23Aを戻り光Rの光路から退避した状態で、フィルタ交換機構26が、第1戻り光R1の光路に配置するフィルタをフィルタAからフィルタBに交換したときには、図6のようになる。これにより、黄色の波長域の像が第1カメラ4で撮像される。つまり、黄色の単一の波長情報の像の観察をすることができる。
このとき、フィルタBは第2戻り光R2の光路に配置されるフィルタであり、これを第1戻り光R1の光路に配置可能に交換することで、フィルタの使用数を低減することができる。この点、第1戻り光R1の光路にフィルタAとフィルタBとを交換可能にし、第2戻り光R2の光路にフィルタBを配置した場合には、3つのフィルタが使用される。
これに対して、フィルタ交換機構26を用いて、フィルタAとフィルタBとを交換可能にすることで、使用するフィルタの数を2つに低減することができる。これは、フィルタBを第1戻り光R1と第2戻り光R2との両者に設けることなく、共用することで、重複するフィルタを削減しているためである。
なお、このときのフィルタ交換機構26はフィルタAとフィルタBとを180度の角度を形成するように配置し、180度の回転を行うように制御する。
前述したように、ミラー移動機構23が備えるそれぞれ特性の異なる分光ミラーの数は3つ以上であってもよい。ミラー移動機構23が備える分光ミラーの数をN(Nは自然数)個であるとした場合、必要なフィルタの数は2×N個になる。つまり、分光ミラーは戻り光Rを第1戻り光R1と第2戻り光R2との2つに分光するため、フィルタの数は2×N個になる。
この場合において、フィルタ交換機構26は2×N個のフィルタを(180/N)度の角度ずつで配列する。そして、(180/N)度ずつ回転させることで、同時に2つのフィルタを第1戻り光R1の光路と第2戻り光R2の光路とに配置することが可能になる。そして、フィルタ交換機構26が備える2×N個のフィルタに重複したフィルタは存在しない。従って、Nの数が多くなるほど、多数の波長情報の像を得ることができると共に、フィルタ数の削減効果は大きくなる。
また、図1等に示すように、フィルタ交換機構26は傘型の形状をしており、回転部分にフィルタを配列する。勿論、フィルタ交換機構26は傘型以外の形状を採用してもよい。例えば、円錐形状等を採用してもよい。要は、複数のフィルタを回転可能に構成しているものであればよい。
また、ミラー移動機構23は分光ミラーの配列方向に移動することにより、戻り光Rの光路に任意の分光ミラーを配置し、または退避させる。図2に示すように、フィルタ交換機構26はミラー移動機構23の移動方向に設置されているような場合には、ミラー移動機構23とフィルタ交換機構26とが干渉しないように、フィルタ交換機構26を構成する。図中では、フィルタ交換機構26に凹部を形成して、干渉を防止している。
また、ミラー移動機構23は図1の紙面に直交する方向に移動するように構成してもよい。つまり、図1の紙面に直交する方向に移動して、複数の分光ミラーを切り替え、または退避するようにしてもよい。この場合には、フィルタ交換機構26との干渉のおそれはなくなる。
また、図1乃至図6の構成では、落射照明による蛍光観察を行っている例を示したが、以下の変形例1および変形例2のように顕微鏡装置1に共焦点スキャナを用いて蛍光観察を行ってもよい。
変形例1について説明する。図7に示すように、変形例1は共焦点スキャナ30を設けている。試料Sの所定範囲の像の観察を行うために、共焦点スキャナ30は照明光Lを走査させる。この共焦点スキャナ30は、ピンホールディスク31とモータ32と回転軸33とを備えて構成している。なお、図1乃至図6に示した構成とは光源装置10およびビームスプリッタ11の位置が異なるが、分光光学系3の構成は同じである。
ピンホールディスク31は多数のピンホールを螺旋状且つ多条に形成している。ピンホールは微小開口部であり、照明光Lおよび戻り光Rのうち試料Sの焦点の範囲内の光のみを通過させる。これにより、光軸方向に分解能の高い共焦点画像を生成することができる。
モータ32はピンホールディスク31に回転力を付与するための手段であり、回転軸33が連結されている。この回転軸33をピンホールディスク31に取り付けることで、モータ32の回転力でピンホールディスク31は回転する。モータ32と回転軸33とにより回転部を構成する。
モータ32がピンホールディスク31を回転させる。これにより、照明光Lは試料Sの所定範囲を走査する。第1分光ミラー23Aまたは第2分光ミラー23Bが光路上に配置されている場合には、第1カメラ4の受光領域に第1戻り光R1が走査され、且つ第2カメラ5の受光領域に第2戻り光R2が走査される。一方、第1分光ミラー23Aおよび第2分光ミラー23Bが光路上から退避している場合には、戻り光Rが第1カメラ4の受光領域を走査される。
これにより、異なる波長情報の像を同時観察するときには、第1カメラ4および第2カメラ5の受光領域に走査された第1戻り光R1および第2戻り光R2に基づいて、試料Sの所定領域のシアン色の画像と黄色の画像との異なる波長情報の画像を生成することができる。モータ32がピンホールディスク31を高速回転させることで、高速に画像生成を行うことができる。且つ、ピンホールディスク31を用いているため、光軸方向に分解能の高い共焦点画像を得ることができる。
次に、変形例2について説明する。図8は変形例2の顕微鏡装置1を示している。変形例2の共焦点スキャナ30は変形例1の共焦点スキャナ30に対して集光ディスク34を追加している。この集光ディスク34は回転軸33に取り付けられている。
集光ディスク34は多数の集光レンズ(マイクロレンズ)を多条且つ螺旋状に配列している。そして、集光レンズの配列パターンはピンホールディスク31のピンホールの配列パターンと同一である。よって、1つのピンホールに対応して1つの集光ディスクが設けられる。
集光レンズは照明光Lを対応するピンホールに集光させるレンズである。従って、照明光Lはピンホールに集光されるため、照明光Lの利用効率が向上する。これにより、S/N比の高い共焦点画像を得ることができる。