JP2013154451A - ワイヤーソー用ローラー - Google Patents

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【課題】使用開始時における被加工物のうねり発生を低減することができ、ワイヤーソーの飛び及び寿命低下を抑制することができ、耐久性にも優れたワイヤーソー用ローラーを提供する。
【解決手段】ワイヤーソー用ローラー10においては、円筒体10aの外周に、ワイヤーソーWをガイドするための複数のガイド溝11が周方向に沿って環状に形成され、横断面形状がV字状をなすガイド溝11を構成する二つの内壁面11aのガイド溝11の底部11bより高い領域に、ガイド溝11内に掛けられたワイヤーソーWの外周の一部が嵌入可能な凹溝12がガイド溝11の長手方向に沿って設けられている。一つのガイド溝11内において対向する二つの凹溝12の下方部分の横断面形状はそれぞれ円弧状をなし、二つの凹溝12の横断面形状を形成する円弧12aの中心12cの位置は同一である。
【選択図】図2

Description

本発明は、太陽電池、半導体シリコン、磁性体、サファイアあるいはSiCなどの結晶系材料のスライス加工に使用されるワイヤーソーのガイドに用いられるワイヤーソー用ローラーに関する。
固定砥粒ワイヤーソーを用いた結晶系材料のスライス加工においては、従来、図6に示すようなマルチワイヤーソー装置100が用いられている。マルチワイヤーソー装置100においては、ワイヤーソー101をガイドするための複数のガイド溝102が外周に形成された複数のワイヤーソー用ローラー103が、それぞれの軸心103cが互いに平行をなすように配置され、繰り出しボビン(図示せず)から供給されるワイヤーソー101を各ガイド溝102に掛けて一定張力で平行に張り、複数のワイヤーソー用ローラー103の間で往復運動するワイヤーソー101に被加工物であるインゴット104を押し当ててスライス加工することによってウェーハが作製されている。
図7に示すように、従来のワイヤーソー用ローラー103は、ガイド溝102の横断面形状がV字状であるため、横断面形状が円形状のワイヤーソー101がガイド溝102に掛けられたとき、横断面図で見た状態においては、ワイヤーソー101の外周とガイド溝102の内壁面102aとが点接触している。このため、スライス加工中のワイヤーソー101の振れが大きく、特に、ワイヤーソー用ローラー103が新品である場合、ウェーハに「うねり」が発生する。ここで、「うねり」とは、「JIS B 0601」に基づいて計測したウェーハ表面の輪郭曲線の最大断面高さWt(単位:μm)をいう。
このような「うねり」は、10ショット程度のスライス加工を行うことにより、ワイヤーソー用ローラー103のガイド溝102をワイヤーソー101に馴染ませると、約20μm以下に抑制することができるが、この状態に至るまでに多くの時間とコストを必要とする。
また、図7に示すように、ガイド溝102の横断面形状がV字状である場合、ワイヤーソー101の切れ味が低下したとき、加工中の圧力によりガイド溝102内においてワイヤーソー101が暴れ、これによってウェーハにうねりが発生することがある。
そこで、このような問題を解決するため、断面形状がU字状のガイド溝を備えた「ワイヤーソー用加工用ローラー(例えば、特許文献1参照。)」あるいは断面形状が半円形状の環状溝を備えた「ワイヤーソー用ローラー」が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開平10−44140号公報 特開平01−240264号公報
特許文献1記載の「ワイヤーソー用加工用ローラー」は、ワイヤー飛びを抑制することができる点では優れているが、ワイヤーソーとローラーの溝との接触面積が広いので、摩耗及び熱が発生しやすく、ワイヤーソーの寿命が低下する。また、溝の断面形状がU字状であるため、ワイヤーソーを溝に入れる作業が困難である。
一方、特許文献2記載の「ワイヤーソー用ローラー」は、うねりを抑制することができる点では優れているが、ワイヤーソーと溝との接触面積を確保しようとすると、溝のピッチを小さくすることが困難となる。
本発明が解決しようとする課題は、使用開始時における被加工物のうねり発生を低減することができ、ワイヤーソーの飛び及び寿命低下を抑制することができ、耐久性にも優れたワイヤーソー用ローラーを提供することにある。
本発明のワイヤーソー用ローラーは、ワイヤーソーをガイドする横断面形状がV字状をなす複数のガイド溝が周方向に沿って環状に形成されたワイヤーソー用ローラーにおいて、前記ガイド溝を構成する二つの内壁面の当該ガイド溝の底部より高い領域に、前記ガイド溝内に掛けられたワイヤーソーの外周の一部が嵌入可能であって横断面形状の少なくとも一部が円弧状をなす凹溝を当該ガイド溝の長手方向に沿って設けたことを特徴とする。
このような構成とすれば、ガイド溝にワイヤーソーが掛けられたとき、ワイヤーソーの外周の一部が凹溝の内壁面に面接触した状態となり安定保持されるので、ワイヤーソーの振れが抑制され、使用開始時における被加工物のうねり発生を低減することができ、ワイヤーソーの飛びも抑制される。また、凹溝の内壁面と接触するのはワイヤーソーの外周の一部であり、その接触面積は比較的狭く、摩擦や発熱が生じ難いので、ワイヤーソーの寿命低下を抑制することができ、ガイド溝や凹溝の摩耗も減少するので、耐久性にも優れている。
ここで、二つの前記凹溝の横断面形状を形成する円弧の中心の位置が同一であることが望ましい。このような構成とすれば、横断面形状が円形状をしたワイヤーソーの外周の一部が二つの凹溝内にそれぞれ嵌入され、据わりが良くなるので、被加工物のうねり発生が低減され、ワイヤーソーの飛び及び寿命低下を抑制する上で有効である。
また、前記ガイド溝を構成する二つの内壁面のなす角度をθ(度)とし、前記凹溝の横断面形状を形成する円弧の曲率半径をR(mm)とし、前記円弧の中心から二つの前記内壁面の仮想交線までの距離をD(mm)としたとき、0 < D ≦ R/sin(θ/2)−0.02 であることが望ましい。
このような構成とすれば、ガイド溝に掛けられたワイヤーソーの外周と凹溝の内壁面との接触面積を適度に確保することができ、ワイヤーソーの据わりが良くなるので、被加工物のうねり発生を低減し、ワイヤーソーの飛びを抑制する上で有効である。
なお、前述した距離Dがr/sin(θ/2)−0.02より大きくなると、ワイヤーソーの外周と凹溝の内壁面との接触面積が小さくなり、据わりが悪くなるので、被加工物のうねりが増加し、ワイヤーソーの飛びが発生し易くなる。
さらに、前記凹溝の横断面形状を形成する円弧の曲率半径Rがワイヤーソーの半径rの1.01〜1.4倍であることが望ましい。
このような構成とすれば、凹溝内におけるワイヤーソーの据わりが良好となるので、加工精度の向上に有効である。なお、前述した曲率半径Rがワイヤーソーの半径rの1.01倍より小さくなると、ワイヤーソーの外周の一部が凹溝内に入り難くなるので、据わりが悪化し、1.4倍より大となると、凹溝内でワイヤーソーが大きく暴れるようになるので、被加工物のうねりが増大する。
本発明により、使用開始時における被加工物のうねり発生を低減することができ、ワイヤーソーの飛び及び寿命低下を抑制することができ、耐久性にも優れたワイヤーソー用ローラーを提供することができる。
本発明の実施形態であるワイヤーソー用ローラーの使用状態を示す一部省略斜視図である。 図1に示すワイヤーソー用ローラーのガイド溝の横断面図である。 図2の一部拡大図である。 距離Dとウェーハのうねりとの関係を示すグラフである。 凹溝の曲率半径Rとウェーハのうねり及びワイヤーソーの摩耗量との関係を示すグラフである。 従来のマルチワイヤーソー装置を示す一部省略斜視図である。 従来のワイヤーソー用ローラーのガイド溝の横断面図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。図1,図2に示すように、本実施形態のワイヤーソー用ローラー10においては、円筒体10aの外周に、ワイヤーソーWをガイドするための複数のガイド溝11が周方向に沿って環状に形成され、横断面形状がV字状をなすガイド溝11を構成する二つの内壁面11aの当該ガイド溝11の底部11bより高い領域にそれぞれ、ガイド溝11内に掛けられたワイヤーソーWの外周の一部が嵌入可能な凹溝12がガイド溝11の長手方向に沿って設けられている。なお、図1においては、見やすくする目的で、ワイヤーソー用ローラー10のガイド溝11の本数を実際より省略しているため、隣り合うガイド溝11の間隔は実際よりも広く表示されている。
図3に示すように、一つのガイド溝11内において対向する二つの凹溝12下方部分(円弧12aの中心12cよりもガイド溝11の底部11b寄りの部分)の横断面形状はそれぞれ円弧状をなし、二つの凹溝12の横断面形状を形成する円弧12aの中心12cの位置は同一である。即ち、二つの凹溝12の横断面形状を形成する円弧12aは同一の仮想円12の一部を構成している。また、二つの凹溝12の上方部分(円弧12aの中心12cよりも円筒体10aの外周寄りの部分)には、互いに平行をなす平面部11dが形成され、それぞれの平面部11dの上方がガイド溝11の内壁面11aに繋がっている。これらの平面部11dは、ガイド溝11の長手方向と平行(円筒体10aの横断面と平行)をなしている。
また、図3に示すように、一つのガイド溝11を構成する二つの内壁面11aのなす角度をθ(度)とし、凹溝12の横断面形状を形成する円弧12aの曲率半径をR(mm)とし、円弧12aの中心12cから二つの内壁面11aの仮想交線11cまでの距離をD(mm)としたとき、
0 < D ≦ R/sin(θ/2)−0.02
となるように設定している。さらに、図3に示すように、凹溝12の横断面形状を形成する円弧12aの曲率半径Rが、ガイド溝11に掛けられたワイヤーソーWの半径rの1.01〜1.4倍としている。また、図2,図3に示すように、ワイヤーソーWが凹溝12に掛けられた状態にあるとき、ワイヤーソーWの下面側とガイド溝11の底部11bとの間には、常に空隙部11dが形成される。従って、切断加工中、空隙部11dに切削液が溜まり、冷却作用を生じるので、ワイヤーソーWの寿命向上に有効である。
ワイヤーソーWの半径r、ガイド溝11のピッチP(図2参照)及びガイド溝11を形成する内壁面11aのなす角度θについては具体的に限定するものではないが、一般に、ワイヤーソーWの半径rが80μm〜250μmである場合、ガイド溝11のピッチPは0.2mm〜1.0mmの範囲が好適であり、ガイド溝11を形成する内壁面11aのなす角度θは30度〜90度の範囲が好適である。
なお、ガイド溝11に掛けられたワイヤーソーWの一部がガイド溝11から突出するほど、ワイヤーソーWの半径rが大きい場合、切削作業中にワイヤーソーWがガイド溝11から外れ易くなるので、ガイド溝11を形成する内壁面11aのなす角度θはワイヤーソーWがガイド溝11から突出しないように設定することが望ましい。一方、ガイド溝11を形成する内壁面11aのなす角度θがワイヤーソーWの半径rに比べて小さ過ぎると、ガイド溝11の深さを大きくする必要があるため、ガイド溝11の再整形が困難となり、円筒体11aの再利用回数が減少する。よって、ガイド溝11を形成する内壁面11aのなす角度θは30度〜90度に設定されている。
前述したように、本実施形態のワイヤーソー用ローラー10においては、ガイド溝11を構成する二つの内壁面11aの、ガイド溝11aの底部11bより高い領域に、ガイド溝11内に掛けられたワイヤーソーWの外周の一部が嵌入可能であって横断面形状の少なくとも一部が円弧状をなす凹溝12を当該ガイド溝11の長手方向に沿って設けている。
このため、ガイド溝11にワイヤーソーWが掛けられたとき、ワイヤーソーWの外周の一部が凹溝12の内壁面12fに面接触した状態となり安定保持され、ワイヤーソーWの振れが抑制され、使用開始時における被加工物のうねり発生を低減することができ、ワイヤーソーWの飛びも抑制される。また、凹溝12の内壁面12fと接触するのはワイヤーソーWの外周の一部であり、その接触面積は比較的狭く、摩擦や発熱が生じ難いので、ワイヤーソーWの寿命低下を抑制することができ、ガイド溝11や凹溝12の摩耗も減少するので、耐久性にも優れている。
また、二つの凹溝12の横断面形状を形成する円弧12aの中心12cの位置が同一であることにより、横断面形状が円形状をしたワイヤーソーWの外周の一部が二つの凹溝12内にそれぞれ嵌入され、据わりが良くなるので、被加工物のうねり発生が低減され、ワイヤーソーWの飛び及び寿命低下を抑制する上で有効である。
さらに、ガイド溝11を構成する二つの内壁面11aのなす角度θ(度)と、凹溝12の横断面形状を形成する円弧12aの曲率半径R(mm)と、円弧12aの中心12cから二つの内壁面11aの仮想交線11cまでの距離D(mm)と、が関係式 0 < D ≦ R/sin(θ/2)−0.02 を満たすように設定されている。
これにより、ガイド溝11に掛けられたワイヤーソーWの外周と凹溝12の内壁面12fとの接触面積を適度に確保することができ、ワイヤーソーWの据わりが良くなるので、被加工物のうねり発生を低減し、ワイヤーソーWの飛びを抑制する上で有効である。
一方、凹溝12の横断面形状を形成する円弧12aの曲率半径RをワイヤーソーWの半径rの1.01〜1.4倍としたことにより、凹溝12内におけるワイヤーソーWの据わりが良好となるので、加工精度の向上に有効である。
ここで、図4,図5などに基づいて、本発明の実施例について説明する。外径が120μmの芯線の外周に、粒径が10〜25μmの砥粒を固定させることによって製作した、外径(2r)が150μmのワイヤーソーWを使用し、ワーク(被切削物)であるシリコンインゴットの切断加工を行った。
本実施例において使用したワイヤーソー用ローラー10の外径は198mm、その外周に形成されているガイド溝11のピッチPは0.36mmであり、1本のガイド溝11を形成する一対の内壁面11aのなす角度θは40度である。
このような条件下において、凹溝12の横断面形状を形成する円弧12aの曲率半径R(mm)をワイヤーソーWの半径r(mm)×1.01倍に固定し、表1に示すように、円弧12aの中心12cから二つの内壁面11aの仮想交線11cまでの距離D(mm)を変化させ、距離Dと、スライス加工されたシリコンウェーハの表面に生じる「うねり(μm)」と、の関係を調べたところ、図4に示すような結果が得られた。
Figure 2013154451
図4に示す結果を見ると、参考例6においては、シリコンウェーハの表面に100μmのうねりが測定されたが、実施例1〜5においては、うねりが20μm以下となっていることが分かる。これらの結果は、距離Dが、0 ≦ D ≦ R/sin(θ/2)−0.02の範囲内にあるとき、うねりが減少することを示している。
次に、凹溝12の横断面形状を形成する円弧12aの中心12cから二つの内壁面11aの仮想交線11cまでの距離D(mm)を0.2mmに固定し、表2に示すように、凹溝12の円弧12aの曲率半径R(mm)を変化させ、スライス加工されたシリコンウェーハの表面に生じる「うねり(μm)」と、の関係を調べたところ、図5に示すような結果が得られた。
Figure 2013154451
図5に示す結果を見ると、参考例7におけるワイヤーソーの磨耗量は、実施例8〜13におけるワイヤーソーの摩耗量よりも5倍程度大きいことが分かり、参考例7はワイヤーソーの寿命を短くしていることが判明した。また、実施例12,13においては、スライス加工されたシリコンウェーハの表面のうねりの増加が測定され、曲率半径Rを実施例11の条件(0.225mm)以下にしたとき、シリコンウェーハの表面のうねりが減少することが判明した。従って、ワイヤーソーの寿命を保ち、シリコンウェーハの表面のうねりを減少させることができる曲率半径Rの範囲は、ワイヤーソーの半径rの1.01〜1.4倍であることが分かる。
なお、前述した実施形態及び実施例は本発明を例示するものであり、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されない。
本発明のワイヤーソー用ローラーは、太陽電池、半導体シリコン、磁性体、サファイアあるいはSiCなどの結晶系材料のスライス加工を行う産業分野において広く利用することができる。
10 ワイヤーソー用ローラー
10a 円筒体
11 ガイド溝
11a,12f 内壁面
11b 底部
11c 仮想交線
11d 空隙部
12 凹溝
12a 円弧
12b 仮想円
12c 中心
12d 平面部
θ ガイド溝を構成する二つの内壁面のなす角度
r ワイヤーソーの半径
D 円弧の中心から二つの内壁面の仮想交線までの距離
Q 内壁面のなす角度
R 円弧の曲率半径
W ワイヤーソー

Claims (4)

  1. ワイヤーソーをガイドする横断面形状がV字状をなす複数のガイド溝が周方向に沿って環状に形成されたワイヤーソー用ローラーにおいて、前記ガイド溝を構成する二つの内壁面の当該ガイド溝の底部より高い領域に、前記ガイド溝内に掛けられたワイヤーソーの外周の一部が嵌入可能であって横断面形状の少なくとも一部が円弧状をなす凹溝を当該ガイド溝の長手方向に沿って設けたことを特徴とするワイヤーソー用ローラー。
  2. 二つの前記凹溝の横断面形状を形成する円弧の中心の位置が同一である請求項1記載のワイヤーソー用ローラー。
  3. 前記ガイド溝を構成する二つの内壁面のなす角度をθ(度)とし、前記凹溝の横断面形状を形成する円弧の曲率半径をR(mm)とし、前記円弧の中心から二つの前記内壁面の仮想交線までの距離をD(mm)としたとき、
    0 < D ≦ R/sin(θ/2)−0.02
    である請求項2記載のワイヤーソー用ローラー。
  4. 前記凹溝の横断面形状を形成する円弧の曲率半径Rがワイヤーソーの半径rの1.01〜1.4倍である請求項1〜3のいずれかに記載のワイヤーソー用ローラー。
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