JP2013146911A - 液体噴射ヘッドの製造方法、及び、液体噴射装置の製造方法 - Google Patents

液体噴射ヘッドの製造方法、及び、液体噴射装置の製造方法 Download PDF

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JP2013146911A JP2012008705A JP2012008705A JP2013146911A JP 2013146911 A JP2013146911 A JP 2013146911A JP 2012008705 A JP2012008705 A JP 2012008705A JP 2012008705 A JP2012008705 A JP 2012008705A JP 2013146911 A JP2013146911 A JP 2013146911A
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Abstract

【課題】圧力発生室に対応した領域の振動板のクラックを抑制する液体噴射ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】保護膜80を形成した圧力発生室12及び開口部の内面に内部応力が圧縮応力である圧縮応力層を気相法により形成する圧縮応力層形成工程では、圧力発生室12の幅をw、圧力発生室12の深さをd、圧力発生室12に対応した領域の振動板16に対して厚み方向D3へ加える圧力をP、該圧力Pを加えたときに変形する振動板16の厚み方向D3及び圧力発生室12の幅方向D1に沿った変形断面積をD、圧縮応力層の材料に応じた係数をα、とするとき、気相法により平坦面に形成される圧縮応力層の厚みtfをα×(P/D)×(d/w)以下に設定して、保護膜80を形成した圧力発生室12及び開口部の内面に圧縮応力層を気相法により形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、流路形成基板及び振動板に厚み方向へ貫通した貫通孔が形成された液体噴射
ヘッドの製造方法、及び、液体噴射装置の製造方法に関する。
結晶を歪ませると帯電し、また電界中に置くことにより歪みを生じるという特徴を持つ
圧電材料は、インクジェットプリンター等に用いられる液体噴射ヘッドに広く使用されて
いる。このような液体噴射ヘッドとして、ノズル開口に連通する各圧力発生室が長手方向
を並行させて形成された流路形成基板と、この流路形成基板上に設けられた振動板と、こ
の振動板上に設けられた圧電素子と、流路形成基板の圧電素子が設けられた面に接着され
たリザーバ形成基板とを備えた液体噴射ヘッドが知られている(特許文献1参照)。この
液体噴射ヘッドの圧力発生室に繋がるリザーバは、流路形成基板、振動板及びリザーバ形
成基板を厚み方向へ貫通している。
流路形成基板をウェットエッチングして圧力発生室やリザーバ部等の液体流路を形成す
るとき、エッチング液が圧電素子側に侵入しないようにする必要がある。そこで、液体流
路を形成する前に、リザーバ用に振動板に形成された貫通部にある流路形成基板上に封止
層をスパッタ法等で堆積することがある。
また、液体噴射ヘッドに用いるインクは、アルカリ性であることが多い。流路形成基板
に用いられるシリコン単結晶基板は、アルカリ性の水溶液に対して浸食される可能性があ
る。そこで、振動板及び圧電素子を設けた流路形成基板に形成された圧力発生室及びリザ
ーバ部の内面に五酸化二タンタル(Ta25)等の保護膜をスパッタ法等で堆積すること
がある。ここでも、封止層は保護膜の材料が圧電素子側に侵入しないようにする。
上記封止層上の保護膜を除去するため、流路形成基板全体の保護膜上に内部応力が圧縮
応力である圧縮応力層をスパッタ法等で堆積することがある。封止層上の保護膜は、圧縮
応力層により剥離され易くなっている。この性質を利用してリザーバ部分の圧縮応力層を
保護膜とともに除去し、封止層を除去することにより、厚み方向へ貫通したリザーバを形
成することができる。
特開2008−100416号公報
しかし、圧縮応力層の厚みによっては、圧力発生室に対応した領域の振動板、特に、圧
力発生室の幅方向における振動板の端部にクラックが生じる可能性があり、液体噴射ヘッ
ドの耐久性が低下する可能性がある。なお、このような問題は、保護膜及び圧縮応力層を
形成する種々の方法について同様に存在する。
以上を鑑み、本発明の目的の一つは、圧力発生室に対応した領域の振動板のクラックを
抑制する液体噴射ヘッドの製造方法を提供することにある。
上記目的の一つを達成するため、本発明は、流路形成基板、及び、該流路形成基板上に
設けられた振動板に厚み方向へ貫通した貫通孔が形成された液体噴射ヘッドの製造方法で
あって、
前記振動板の前記貫通孔に対応した貫通部が封止された状態で、ノズル開口に連通する
圧力発生室、及び、前記貫通孔となる開口部を前記流路形成基板に形成する工程と、
前記圧力発生室及び前記開口部の内面に耐液体性を有する保護膜を形成する工程と、
前記保護膜を形成した圧力発生室及び開口部の内面に内部応力が圧縮応力である圧縮応
力層を気相法により形成する圧縮応力層形成工程と、
前記貫通孔に対応した領域の圧縮応力層及び保護膜を除去して前記貫通孔を形成する工
程と、を備え、
前記圧縮応力層形成工程では、前記圧力発生室の幅をw、前記圧力発生室の深さをd、
前記圧力発生室に対応した領域の前記振動板に対して厚み方向へ加える圧力をP、該圧力
Pを加えたときに変形する前記振動板の厚み方向及び幅方向に沿った変形断面積をD、前
記圧縮応力層の材料に応じた係数をα、とするとき、気相法により平坦面に形成される前
記圧縮応力層の厚みtfをα×(P/D)×(d/w)以下に設定して、前記保護膜を形
成した圧力発生室及び開口部の内面に前記圧縮応力層を気相法により形成する態様を有す
る。
また、本発明は、上記液体噴射ヘッドの製造方法を含む液体噴射装置の製造方法の態様
を有する。
圧力発生室の内面に圧縮応力層が気相法により形成されると、圧力発生室の幅方向内側
部分に形成される圧縮応力層は比較的厚くなる一方、圧力発生室の幅方向外側部分に形成
される圧縮応力層は比較的薄くなる。本態様は、気相法により平坦面に形成される圧縮応
力層の厚みtfがα×(P/D)×(d/w)以下に設定されているので、保護膜を形成
した圧力発生室の幅方向内側部分に対して気相法により形成される圧縮応力層が厚くなり
すぎない。これにより、圧力発生室の幅方向外側部分における応力が大きくなりすぎず、
振動板のクラックが抑制される。従って、本態様は、圧力発生室に対応した領域の振動板
のクラックを抑制する液体噴射ヘッドの製造方法を提供することができる。
ここで、上記貫通孔には、リザーバ用の貫通孔、位置決め用の貫通孔、チップ分割用の
ブレイクパターン(スクライブパターン)のための貫通孔、等が含まれる。
上記気相法には、スパッタ法、パルスレーザデポジション(PLD)法、有機金属気相
成長(MOCVD)法、等が含まれる。
ところで、前記圧縮応力層形成工程では、前記圧縮応力層の材料に応じた係数をβとす
るとき、前記tfをβ×(w/d)以上、かつ、α×(P/D)×(d/w)以下に設定
して、前記保護膜を形成した圧力発生室及び開口部の内面に前記圧縮応力層を気相法によ
り形成してもよい。気相法により平坦面に形成される圧縮応力層の厚みtfがβ×(w/
d)以上に設定されているので、本態様は、貫通孔に対応した領域の保護膜を圧縮応力層
とともにより確実に除去することができる。
前記保護膜の材料に少なくとも酸化タンタルを用いる態様は、液体による流路形成基板
の浸食を抑制する好適な製造方法を提供することができる。
前記圧縮応力層の材料に少なくともチタンタングステンを用いると、貫通孔に対応した
領域の保護膜を圧縮応力層とともに容易に除去することができる。
前記振動板の貫通部を封止する封止層の材料に前記振動板上の圧電素子から引き出され
るリード電極と同じ材料を少なくとも用いると、リード電極の形成時に封止層も形成する
ことができ、液体噴射ヘッドの製造コストを低減することができる。
前記貫通孔に繋がる連通孔を形成した連通孔形成基板を前記振動板が設けられた流路形
成基板に接合する工程を備える態様は、圧力発生室に対応した領域の振動板のクラックを
抑制する好適な液体噴射ヘッドの製造方法を提供することができる。
圧縮応力層85の厚みtfの設定条件を模式的に例示するため液体噴射ヘッドを破断した端面図。 (a)は気相法により平坦面FL1に形成される圧縮応力層85の厚みtfを模式的に例示するため破断した端面図、(b)は気相法により圧力発生室12の内面に形成される圧縮応力層85を模式的に例示するため破断した端面図。 記録ヘッド(液体噴射ヘッド)1の構成の概略を例示する便宜上の分解斜視図。 (a)は記録ヘッド1の構成の概略を例示する平面図、(b)は(a)のA1−A1の位置で記録ヘッド1の1セグメントを破断した端面図。 (a)〜(d)は記録ヘッド1の製造工程を例示するための端面図。 (a)〜(c)は記録ヘッド1の製造工程を例示するための端面図。 (a)〜(c)は記録ヘッド1の製造工程を例示するための端面図。 (a),(b)は記録ヘッド1の製造工程を例示するための端面図。 (a),(b)は記録ヘッド1の製造工程を例示するための端面図。 記録ヘッド1の位置決め孔付近を破断した端面図。 記録装置(液体噴射装置)200の構成の概略を例示する図。 実施例及び比較例の実験条件及びクラック有無を示す図。
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下に説明する実施形態は、本発明を例
示するものに過ぎない。
(1)液体噴射ヘッドの構成:
図1は、振動板16の厚み方向D3及び幅方向D1に沿った断面で液体噴射ヘッドを破
断した模式的な端面図である。図2(a)は、気相法により平坦面FL1に形成される圧
縮応力層86の厚みtfを模式的に例示するため破断した端面図である。図2(b)は、
気相法により圧力発生室12の内面に形成される圧縮応力層85を模式的に例示するため
破断した端面図である。図3は記録ヘッド(液体噴射ヘッド)1を便宜上、分解した分解
斜視図、図4(a)は記録ヘッド1の構成の概略を例示する平面図、図4(b)は図4(
a)のA1−A1の位置で記録ヘッド1の1セグメントを破断した端面図、である。D1
は圧力発生室12の幅方向、D2は幅方向D1と直交する圧力発生室12の長手方向、を
示している。D3は、流路形成基板10、振動板16、連通孔形成基板50、等の厚み方
向、すなわち、圧力発生室12の深さ方向を示している。分かり易く示すため、幅方向D
1及び厚み方向D3の拡大率は長手方向D2の拡大率よりも大きくされ、各図は整合して
いないことがある。
なお、本明細書で説明する位置関係は、発明を説明するための例示に過ぎず、発明を限
定するものではない。従って、第1電極の上以外の位置、例えば、下、左、右、等に第2
電極が配置されることも、本発明に含まれる。
記録ヘッド1に例示される液体噴射ヘッドは、流路形成基板10、及び、該流路形成基
板10上に設けられた振動板16に厚み方向D3へ貫通した貫通孔7が形成されている。
貫通孔7には、例えば、図4(b)等に示すようなリザーバ9の貫通孔や、図10に示す
ような位置決め孔8の貫通孔や、チップ分割用のブレイクパターンのための貫通孔等があ
る。ブレイクパターンのための貫通孔の断面構造も、図10に示す貫通孔7の断面構造と
同様である。リザーバ9は、流路形成基板10の連通部13a(開口部13の一種)と連
通孔形成基板50の連通孔51aとが振動板16の貫通部17で繋がり、共通の液体室(
例えばインク室)とされている。位置決め孔8は、流路形成基板10の連通部13b(開
口部13の一種)と連通孔形成基板50の連通孔51bとが振動板16の貫通部17で繋
がっている。位置決め孔8は、位置決めピンを貫通させることにより、流路形成基板10
、ノズルプレート70、コンプライアンス基板60の少なくとも一部を互いに位置決めす
るための貫通孔である。流路形成基板10には、ノズル開口71に連通する圧力発生室1
2、開口部13、インク供給口14、等の液体流路が形成されている。この液体流路を流
れる液体による浸食を抑制するため、液体流路(12,13,14)の内面に保護膜80
が形成されている。
図11に示す記録装置200に例示される液体噴射装置は、上述のような液体噴射ヘッ
ドを備える。
記録ヘッド1は、概略、ノズルプレート70、流路形成基板10、振動板16、圧電素
子3、連通孔形成基板50、コンプライアンス基板60、が順に積層された構造とされて
いる。振動板16は、分離されない材料の表面を変性する等して一体に形成されてもよい
し、接合されて積層されてもよい。
流路形成基板10は、膜厚が例えば500〜800μm程度と比較的厚く剛性の高いシ
リコン単結晶基板等から形成することができる。流路形成基板10は、セグメントSG1
間が隔壁11により区画され、セグメントSG1毎の長尺な液体流路(12,14)、各
インク供給口14に繋がる共通の液体流路である連通部13a(開口部13の一種)、等
が形成されている。長尺な圧力発生室12のサイズは、特に限定されないが、例えば、長
手方向D2の長さを500〜2000μm程度、短手方向である幅方向D1の幅wを30
〜70μm程度、とすることができる。インク供給口14は、圧力発生室12よりも細幅
とされている。各液体流路(12,14)は、圧力発生室12の並設方向である幅方向D
1へ並べられている。
液体流路(12,13,14)の内面に設けられた保護膜80には、耐液体性を有する
材料が用いられている。液体噴射ヘッドに用いるインクはアルカリ性であることが多い一
方、流路形成基板10に用いられるシリコン基板はアルカリ性の水溶液に対して浸食され
る可能性がある。従って、耐インク性(耐液体性の一種)を有する材料には、耐アルカリ
性を有する材料が好ましい。このような材料は、五酸化二タンタル(Ta25)といった
酸化タンタル(TaOx)が好ましいものの、酸化タンタル以外の金属酸化物等を用いる
こともできる。
振動板16には、貫通孔7に対応した貫通部17が形成されている。図4(b)等に示
す振動板16は、シリコン基板15上に形成された弾性膜16aと、この弾性膜16a上
に形成された絶縁膜16bとを有している。貫通部17は、弾性膜16aの貫通部17a
と絶縁膜16bの貫通部17bとが繋がっている。弾性膜16aは例えば酸化シリコン(
SiOx)で構成することができ、絶縁膜16bは例えば酸化ジルコニウム(ZrOx)で
構成することができる。振動板16の厚みは、弾性を示す限り特に限定されないが、例え
ば0.5〜2μm程度とすることができる。
圧電素子3は、圧電体層30と、圧電体層30の圧力発生室12側に設けられた下電極
(第1電極)20と、圧電体層30の他方側に設けられた上電極(第2電極)40とを有
している。すなわち、下電極20は、圧電体層30の絶縁膜16b側、すなわち、圧力発
生室12側に設けられている。上電極40は、圧力発生室12の絶縁膜16bとは反対側
、すなわち、圧力発生室12とは反対側に設けられている。また、圧電素子3には、接続
配線66を介して駆動回路65に接続するために引き出されたリード電極45等が設けら
れている。図4(b)に示すリード電極45は、振動板16上に形成された密着層46と
、この密着層46上に形成された金属層47とを有している。金属層47の構成金属には
、Au(金)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、これらの混合物、等
を用いることができる。密着層46には、ニッケルクロム(NixCr1-x;0<x<1)
、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、等を用いることができる。むろ
ん、振動板16と金属層47との密着力が十分であれば、密着層46を省略可能である。
また、これらの層46,47以外の層がリード電極45に設けられてもよい。
一般的には、圧電素子3の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層
30を圧力発生室12毎にパターニングして圧電素子3を構成する。図3等に示す圧電素
子3は、下電極20を共通電極とし、上電極40を個別電極としている。
圧電体層30は、少なくとも圧力発生室12に対応した領域(圧力発生室対応領域R1
)において、本質的に、下電極20の上面に形成されている。圧力発生室対応領域R1の
圧電体層30は、圧力発生室12の幅wよりも狭い幅で形成された狭幅部を有している。
すなわち、圧力発生室の幅方向D1において、圧電体層30の狭幅部の境界位置は、圧力
発生室12の境界位置L4よりも内側とされている。圧電体層30には、例えば、PZT
(チタン酸ジルコン酸鉛、Pb(Zrx,Ti1-x)O3)といった強誘電体、これに酸化
ニオブ、酸化ニッケル、酸化マグネシウム、といった金属酸化物が添加されたもの、(B
i,Ba)(Fe,Ti)O3といった非鉛系ペロブスカイト型酸化物、この酸化物のB
サイトにマンガンといった金属が添加されたもの、等のペロブスカイト構造を有する材料
を用いることができる。
圧電体層30の厚みは、特に限定されないが、例えば0.2〜2μm程度とすることが
できる。
電極(20,40)の構成金属には、Pt(白金)、Au、Ir(イリジウム)、Ti
(チタン)、等の1種以上を用いることができる。構成金属は、酸化物といった化合物の
状態でもよいし、化合していない状態でもよく、合金の状態でもよいし、単独の金属の状
態でもよく、これらの金属を主成分としてモル比で少ない別の金属が含まれてもよい。電
極(20,40)の厚みは、特に限定されないが、例えば10〜200nm程度とするこ
とができる。
圧電素子3の実質的な能動部4は、下電極20と上電極40とで圧電体層30が挟まれ
た領域となる。圧電素子が共通下電極構造である場合、能動部4の能動端は上電極40の
境界位置となる。圧電素子が共通上電極構造である場合、能動部4の能動端は下電極20
の境界位置となる。図1には、能動部4の幅方向能動端4aを示している。能動部4の幅
は、圧力発生室の幅wよりも小さい範囲で特に限定されないが、例えば20〜50μm程
度とすることができる。幅方向能動端4aが圧力発生室12の境界位置L4よりも内側に
あるため、圧力発生室対応領域R1内において能動部4の幅方向外側領域R2は、可撓性
の非能動部となる。この領域R2の幅は、特に限定されないが、例えば10〜20μm程
度とすることができる。
なお、リザーバ9近傍の振動板16上、具体的には絶縁膜16b上に、リード電極45
と同じ材料でリード電極45とは不連続に形成された封止層48が残されている。封止層
48は、流路形成基板をエッチングして圧力発生室やリザーバ部等の液体流路を形成する
とき、エッチング液等が圧電素子側に侵入しないようにし、図9(a),(b)に示すよ
うに液体流路形成後に貫通孔7に対応した領域R3が除去される。貫通孔7の周囲に封止
層48が残されていることにより、貫通孔周囲の振動板16が補強されている。
振動板16や圧電素子3やリード電極45等を積層した流路形成基板10には、例えば
接着剤55によって連通孔形成基板50が接合されている。この連通孔形成基板50を厚
み方向へ貫通した連通孔51aは、連通部13aとともにリザーバ9を構成する。圧電素
子3に対向する領域に形成された圧電素子保持部52は、圧電素子3の運動を阻害しない
程度の空間を有する。連通孔形成基板50には、例えば、シリコン単結晶基板、ガラス、
セラミックス材料、等を用いることができる。連通孔形成基板50の厚みは、特に限定さ
れないが、例えば300〜500μm程度とすることができる。
連通孔形成基板50上には、コンプライアンス基板60及び駆動回路65が固定されて
いる。
コンプライアンス基板60に設けられた封止膜61は、例えば厚み4〜8μm程度のポ
リフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)といった剛性が低く可撓性を有する材料
等が用いられ、連通孔51の一方の面を封止する。また、コンプライアンス基板60に設
けられた固定板62は、例えば厚み20〜40μm程度のステンレス鋼(SUS)といっ
た金属等の硬質の材料が用いられ、リザーバ9に対向する領域が開口部63とされている
駆動回路65は、接続配線66を介してリード電極45と電気的に接続され、並設され
た圧電素子3を駆動する。駆動回路65には、回路基板、半導体集積回路(IC)、等を
用いることができる。接続配線66には、ボンディングワイヤといった導電性ワイヤ等を
用いることができる。
ノズルプレート70には、各圧力発生室12のインク供給口14とは反対側の端部近傍
に連通するノズル開口71が穿設されている。従って、圧力発生室12は、液体を吐出す
るノズル開口71に連通している。ノズルプレート70は、ガラスセラミックス、シリコ
ン単結晶基板、ステンレス鋼、等を用いることができ、流路形成基板10の開口面側に固
着されている。ノズルプレート70の厚みは、特に限定されないが、例えば0.01〜1
mm程度とすることができる。
ところで、図7(b)に示すように流路形成基板10をウェットエッチングして圧力発
生室12や連通部13a等の液体流路を形成するとき、エッチング液が圧電素子3側に侵
入しないようにする必要がある。そこで、液体流路(12,13,14)を形成する前に
、振動板16の貫通部17にある流路形成基板10上に封止層48を形成している。図4
(b)や図10に示す封止層48は、流路形成基板10上に形成された密着層46と、こ
の密着層46上に形成された金属層47とを有している。封止層の金属層47の構成金属
には、Au(金)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、これらの混合物
、等の比較的導電性の高い材料を用いることができる。封止層の密着層46には、ニッケ
ルクロム、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、等を用いることができ
る。むろん、流路形成基板10と金属層47との密着力が十分であれば、密着層46を省
略可能である。また、これらの層46,47以外の層が封止層48に設けられてもよい。
さらに、封止層48は、リード電極45に無い層が設けられてもよいし、リード電極45
とは異なる層とされてもよい。
封止層48の材料に振動板16上の圧電素子3から引き出されるリード電極46と同じ
材料を少なくとも用いると、リード電極45の形成時に封止層48も形成することができ
、液体噴射ヘッドの製造コストを低減することができる。
また、シリコン基板15は、アルカリ性のインク等に対して浸食される可能性がある。
このため、図8(a)に示すように、液体流路(12,13,14)の内面に耐液体性を
有する保護膜80を形成している。保護膜80の材料は、五酸化二タンタル(Ta25
といった酸化タンタル(TaOx)を少なくとも含む耐アルカリ性を有する材料が好まし
い。保護膜80の厚みは、特に限定されないが、例えば30〜60nm程度とすることが
できる。保護膜の材料に少なくとも酸化タンタルを用いる製造方法は、液体による流路形
成基板の浸食を抑制するのに好適である。
図4(b)に示すようなリザーバ9や図10に示すような位置決め孔8といった貫通孔
7を形成するためには、封止層48上の保護膜80を除去する必要がある。そこで、図8
(b)に示すように、流路形成基板10全体の保護膜80上に内部応力が圧縮応力である
圧縮応力層85を気相法により形成している。封止層48上の保護膜80は、圧縮応力層
85により剥離され易くなっている。この性質を利用して貫通孔7に対応した領域R3の
圧縮応力層85を保護膜80とともに除去し、封止層48を除去することにより、厚み方
向D3へ貫通した貫通孔7を形成している。圧縮応力層85の材料は、チタンタングステ
ン(Tix1-x;0<x<1)を少なくとも含む材料が好ましい。圧縮応力層の材料に少
なくともチタンタングステンを用いる製造方法によると、貫通孔に対応した領域の保護膜
を圧縮応力層とともに容易に除去することができる。
図2(a)に端面図を示すように、スパッタ法等の気相法により平坦面FL1上に圧縮
応力層86を形成する場合、圧縮応力層86の厚みtfは、概略、成膜レート(速度)及
び成膜時間で決まる一様な厚みと仮定することができる。しかし、圧力発生室12等の凹
凸面に対して気相法により圧縮応力層85を形成する場合、一様な厚みとはならない。
図2(b)に端面図を示すように、気相法により圧力発生室対応領域R1のうち幅方向
内側部分P1に形成される圧縮応力層85は、比較的厚くなる。一方、気相法により圧力
発生室対応領域R1のうち幅方向外側部分P2に形成される圧縮応力層85は、比較的薄
くなる。従って、幅方向内側部分P1の圧縮応力層85が厚すぎると、弱い幅方向外側部
分P2の振動板16に応力が集中し、この部分P2の振動板端部16cにクラックが生じ
る可能性がある。本製造方法は、気相法により平坦面FL1に圧縮応力層86を形成する
と仮定したときの圧縮応力層86の厚みtf(tf>0)を制限して圧力発生室12等の凹
凸面に圧縮応力層85を形成することにより、圧力発生室対応領域R1の振動板16のク
ラックを抑制する。
図1に端面図を示すように、気相法により平坦面FL1に圧縮応力層86を形成すると
仮定したときの設定厚みtf[m]の上限tmax[m](tmax>0)は、
max=α×(1/ΔC)×(d/w)
=α×(P/D)×(d/w) …(1)
としている。ただし、圧力発生室12の幅をw[m](w>0)、圧力発生室12の深さ
をd[m](d>0)、圧力発生室対応領域R1の振動板16に対して厚み方向D3へ加
える圧力をP[N/m2](P>0)、この圧力Pを加えたときに変形する振動板16の
厚み方向D3及び幅方向D1に沿った変形断面積をD[m2](D>0)、振動板16の
やわらかさを表す指標である振動板コンプライアンスΔC=D/P[m4/N](ΔC>
0)、圧縮応力層85の材料に応じた係数をα[m5/N](α>0)、としている。こ
こで、厚み方向D3及び幅方向D1に沿った断面は、圧力発生室12の長手方向D2に対
する垂直断面である。変形断面積Dは、概略、圧力Pを加える前の圧力発生室12の内面
の断面位置と、圧力Pを加えた後の圧力発生室12の内面の断面位置と、で囲まれた面積
となる。図1では保護膜80の露出面を基準に変形断面積Dを表しているが、この変形断
面積Dは、振動板16の保護膜80との境界面を基準とした変形断面積と等価である。指
標ΔCは、実際に液体噴射ヘッドサンプルを使用して求めてもよいし、数値シミュレーシ
ョンを行って求めてもよい。例えば、振動板に積層される材料を含めた各層の厚み、幅、
ヤング率、等の定数を用いて数値シミュレーションをすることにより、圧力発生室対応領
域の振動板に対して厚み方向へ圧力Pを加えたときの変形断面積Dを算出することができ
る。
保護膜の材料に五酸化二タンタルといった酸化タンタルを用い、圧縮応力層の材料にチ
タンタングステンを用いる場合、実験を行ったところ、α=4.0×10-14[m5/N]
が好ましいことが分かった。
幅方向外側部分P2の振動板16のクラックは、圧力発生室の幅w、深さd、振動板の
やわらかさを表す指標ΔC=D/Pなどの単体の指標では、圧力発生室対応領域の振動板
のクラックを抑制できないが、上記式(1)に従ってtmaxを設定厚みの上限にすること
により、封止層上の保護膜の除去を確実にして圧力発生室対応領域の振動板のクラックを
抑制することができる。
図12に試験結果を例示するように、設定厚みtfが上限tmaxを超えると圧力発生室対
応領域の振動板にクラックが発生する一方、設定厚みtfが上限tmax以下であれば圧力発
生室対応領域の振動板にクラックは見られない。振動板16のクラックが抑制されるのは
、tf≦上限tmaxに設定することにより保護膜80を形成した圧力発生室12の幅方向内
側部分P1に対して気相法により形成される圧縮応力層85が厚くなりすぎず、幅方向外
側部分P2の振動板端部16cに過大な応力がかからないためと推測される。従って、本
製造方法は、圧力発生室対応領域の振動板のクラックを抑制することができる。
また、気相法により平坦面FL1に圧縮応力層86を形成すると仮定したときの設定厚
みtfの下限tmin[m](tmin>0)は、
min=β×(w/d) …(2)
としている。ただし、tmin<tmaxとなる圧縮応力層85の材料に応じた係数をβ(β>
0)としている。保護膜の材料に五酸化二タンタルといった酸化タンタルを用い、圧縮応
力層の材料にチタンタングステンを用いる場合、実験を行ったところ、β=2.6×10
-7[m]が好ましいことが分かった。設定厚みtfを下限tmin以上にすると、貫通孔に対
応した領域R3の圧縮応力層85が厚くなり、圧縮応力層85とともに保護膜80をより
確実に除去することができる。
(2)液体噴射ヘッドの製造方法の例:
次に、図5〜9を参照して、記録ヘッドの製造方法を例示する。図5〜9は、圧力発生
室の長手方向D2に沿った垂直断面図である。まず、流路形成基板10用のシリコンウェ
ハを例えば1100℃程度の拡散炉で熱酸化する等によって、図5(a)に示するように
、シリコン基板15の表面に対して弾性膜16aを一体に形成する。弾性膜16aは、二
酸化シリコン(SiO2)等で構成することができ、例えば厚み0.8〜1.5μm程度
とすることができる。次いで、図5(b)に示すように、弾性膜16a上に絶縁膜16b
を形成する。例えば、スパッタ法等によりジルコニウム(Zr)層を弾性膜16a上に形
成した後にジルコニウム層を例えば500〜1200℃程度の拡散炉で熱酸化することに
より、酸化ジルコニウム層を絶縁膜16bとして形成することができる。絶縁膜16bの
厚みは、例えば0.3〜0.5μm程度とすることができる。以上が、振動板形成工程S
1である。
次いで、スパッタ法等によって振動板16上に下電極20を形成する。図5(c)に示
す例では、下電極20を形成した後にパターニングしている。なお、上述した酸化ジルコ
ニウム層の代わりに、又は、酸化ジルコニウム層に加えて、窒化チタンアルミ(TiAl
N)膜、Ir膜、酸化イリジウム(IrO)膜、等の層を密着層又は拡散防止層として振
動板16上に形成したうえで、当該層上に下電極20を形成してもよい。
次いで、スピンコート法といった液相法等によって少なくとも下電極20上に圧電体層
30を形成し、スパッタ法等によって少なくとも圧電体層30上に上電極40を形成する
。図5(d)に示す例では、上電極40を形成した後に圧電体層30及び上電極40をパ
ターニングしている。これにより、圧電体層30及び電極(20,40)を有する圧電素
子3が形成され、この圧電素子3及び振動板16を備えた圧電アクチュエーター2が形成
される。以上が、圧電素子形成工程S2である。
圧電体層30を形成する場合、例えば、上述したPZTを構成する金属の有機物を分散
媒に分散した前駆体溶液を用い、塗布工程、乾燥工程、脱脂工程、及び、焼成工程を経て
結晶化させることにより、圧電体層30が形成される。前記塗布工程では、下電極20を
形成した絶縁膜16bの上側に前記前駆体溶液を例えばスピンコート法により塗布する。
前記乾燥工程では、塗布膜を、例えば、170〜180℃程度に加熱し8〜30分程度保
持して乾燥する。前記脱脂工程では、乾燥後の膜を、例えば、300〜400℃程度に加
熱し10〜30分程度保持して脱脂する。前記焼成工程では、脱脂後の膜を、例えば、5
50〜800℃程度に加熱し5〜30分間程度焼成してペロブスカイト型酸化物を形成さ
せ、圧電体層30を形成する。圧電体層30を厚くするため、塗布工程と乾燥工程と脱脂
工程と焼成工程の組合せを複数回行ってもよい。なお、液相法以外にも、MOD(Metal-
Organic Decomposition)法やスパッタ法等で圧電体層30を形成してもよい。
次いで、図5(d)に示すように、振動板16をパターニングして、貫通孔7が形成さ
れる領域R3の振動板16に貫通部17を形成する。例えば、絶縁膜16bをエッチング
して貫通部17bを形成し、さらに弾性膜16aをエッチングして貫通部17aを形成す
る。図5(d)に示す貫通部17bは貫通部17aよりも開口面積が大きくされているが
、両貫通部17a,17bは同じ大きさで形成されてもよい。以上が、貫通部形成工程S
3である。
次いで、図6(a)に示すように、基板上にリード電極45及び封止層48を同時に形
成する(封止層形成工程S4)。例えば、圧電素子3を設けた基板の全面に亘ってニッケ
ルクロム等の密着層46をスパッタ法等により形成し、この密着層46上に金等の金属層
47をスパッタ法等により形成し、レジスト等からなるマスクパターンを介してパターニ
ングすればよい。すると、貫通孔7に対応した領域R3にリード電極45とは不連続の封
止層48を残し、振動板16の貫通部17を封止することができる。この封止層形成工程
S4により、リード電極45と同時に隔離層である封止層48を形成することができ、製
造工程を簡略化してコストを低減することができる。むろん、リード電極45の形成とは
別に封止層48を形成してもよい。
なお、電極(20,40)や密着層46や金属層47は、DC(直流)マグネトロンス
パッタリング法といったスパッタ法等によって形成することができる。各層の厚みは、ス
パッタ装置の印加電圧やスパッタ処理時間を変えることにより調整することができる。
次いで、図6(b)に示すように、圧電素子保持部52等を予め形成した連通孔形成基
板50を基板上に例えば接着剤55によって接合する(連通孔形成基板接合工程S5)。
次いで、図6(c)の破線で示すように、弾性膜16aを形成したシリコン基板15を
例えば60〜80μm程度にする。例えば、当該シリコン基板15において圧電素子3と
は反対側をある程度の厚さとなるまで研磨した後、さらにフッ硝酸によってウェットエッ
チングすることにより所定の厚みにする。次いで、図7(a)に示すように、当該シリコ
ン基板15において圧力発生室12側となる面にマスク膜18を形成し、所定形状にパタ
ーニングする。マスク膜18には、窒化シリコン(SiN)等を用いることができる。次
いで、KOH水溶液等のアルカリ溶液を用いてシリコン基板15を異方性エッチング(ウ
ェットエッチング)する。これにより、図7(b)に示す液体流路(12,13b,14
)や、図10に示す連通部13b等が同時に形成される。このとき、振動板の貫通部17
が封止層48で封止された状態であるので、貫通部17から圧電素子3側にエッチング液
が流れ込まない。これにより、圧電素子3や連通孔形成基板50に意図しないエッチング
が行われたり、連通孔形成基板50の表面に設けられている配線が断線したりする不具合
を抑制することができる。以上が、圧力発生室12及び開口部13を形成する流路形成工
程S6である。
なお、液体流路(12,13,14)は、圧電素子3の形成前に形成されてもよい。
次いで、圧力発生室12や開口部13等の内面に耐液体性を有する保護膜80を形成す
る。封止層48の密着層46に保護膜80を積層しても貫通孔に対応した領域R3の保護
膜80を除去して貫通孔7を形成することができる。必要に応じて、図7(c)に示すよ
うに、貫通孔7内の封止層48の一部、具体的には、開口部13側に露出している密着層
46と、この密着層46が拡散している金属層47の一部とを、開口部13側からウェッ
トエッチング(ライトエッチング)することにより除去してもよい。これにより、後の工
程で形成される保護膜80と封止層48との密着力が弱められ、封止層48上の保護膜8
0が剥離し易くなる。
図8(a)に示す例では、流路形成基板10からマスク膜18を除去し、液体流路(1
2,13a,14)や連通部13bの内面を含む圧力発生室側の全面に亘って酸化タンタ
ル等の耐アルカリ性を有する保護膜80をスパッタ法等によって形成している。振動板の
貫通部17が封止層48によって封止されているため、流路形成基板10の圧電素子3側
に保護膜80が形成されない。従って、リード電極45や連通孔形成基板50の配線の接
続不良等が抑制される。以上が、保護膜形成工程S7である。
次いで、図8(b)に示すように、保護膜80を形成した圧力発生室12や開口部13
等の内面に内部応力が圧縮応力である圧縮応力層85を形成する。図1を参照して説明し
たように、気相法により平坦面FL1に形成される圧縮応力層85の厚みtfを上記式(
1)のtmax=α×(1/ΔC)×(d/w)=α×(P/D)×(d/w)以下に設定
し、保護膜80を形成した圧力発生室12及び開口部13等の内面に圧縮応力層85を気
相法により形成する。好ましくは、厚みtfを上記式(2)のtmin=β×(w/d)以上
に設定する。圧縮応力層の材料にチタンタングステンを用いる場合、例えば、α=4.0
×10-14[m5/N]、β=2.6×10-7[m]として、液体流路(12,13a,1
4)や連通部13bの内面を含む圧力発生室側の全面に亘って圧縮応力層85をスパッタ
法により形成する。以上が、圧縮応力層形成工程S8である。
高応力材料の圧縮応力層85を保護膜80上に形成すると、圧縮応力層85の応力によ
って封止層48上に形成された保護膜80が剥がれ始める。この圧縮応力層85をウェッ
トエッチングにより除去すると、図9(a)に示すように、封止層48上の保護膜80を
圧縮応力層85と共に除去することができる。さらに、図9(b)に示すように、封止層
48を開口部13側からウェットエッチングして貫通させ、貫通孔7を形成する。このウ
ェットエッチングは、貫通部17aを有する弾性膜16aをマスクとして行うことができ
る。以上が、貫通孔形成工程S9である。
次いで、流路形成基板10及び連通孔形成基板50の周縁部の不要部分を例えばダイシ
ングにより切断して除去する。次いで、図4(b)に示されるように、ノズル開口71を
予め形成したノズルプレート70をシリコン基板15の圧力発生室12側の面に接合する
。流路形成基板10の開口面側に対するノズルプレート70の固着には、接着剤、熱溶着
フィルム、等を用いることができる。
次いで、封止膜61と固定板62を積層したコンプライアンス基板60を連通孔形成基
板50上に接合し、所定のチップサイズに分割する。また、連通孔形成基板50上には、
駆動回路65が固定される。
以上により、記録ヘッド1が製造される。
本記録ヘッド1は、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインク
を取り込み、リザーバ9からノズル開口71に至るまで内部をインクで満たす。駆動回路
65からの記録信号に従い、圧力発生室12毎に下電極20と上電極40との間に電圧を
印加すると、圧電体層30、下電極20及び振動板16の変形によりノズル開口71から
インク滴が吐出する。
図2(b)に示したように、圧力発生室対応領域R1のうち、幅方向内側部分P1に対
して気相法により形成される圧縮応力層85は比較的厚くなる一方、幅方向外側部分P2
に対して気相法により形成される圧縮応力層85は比較的薄くなる。本製造方法は、気相
法により平坦面FL1に形成される圧縮応力層86の厚みtfが上記式(1)のtmax以下
に設定されているので、保護膜80を形成した圧力発生室12の幅方向内側部分P1に対
して気相法により形成される圧縮応力層85が厚くなりすぎない。これにより、圧力発生
室12の幅方向外側部分P2の振動板端部16cにおける応力が大きくなりすぎず、圧力
発生室対応領域R1の振動板16のクラックが抑制され、液体噴射ヘッドの耐久性が向上
する。
また、tfをtmin以上に設定すると、貫通孔に対応した領域R3の圧縮応力層85が厚
くなり、圧縮応力層85とともに保護膜80がより確実に除去される。
(3)液体噴射装置:
図11は、上述した記録ヘッド1を有するインクジェット式の記録装置(液体噴射装置
)200の外観を示している。記録ヘッド1を記録ヘッドユニット211,212に組み
込むと、耐久性を向上させた記録装置200を製造することができる。図11に示す記録
装置200は、記録ヘッドユニット211,212のそれぞれに、記録ヘッド1が設けら
れ、外部インク供給手段であるインクカートリッジ221,222が着脱可能に設けられ
ている。記録ヘッドユニット211,212を搭載したキャリッジ203は、装置本体2
04に取り付けられたキャリッジ軸205に沿って往復移動可能に設けられている。駆動
モーター206の駆動力が図示しない複数の歯車及びタイミングベルト207を介してキ
ャリッジ203に伝達されると、キャリッジ203がキャリッジ軸205に沿って移動す
る。図示しない給紙ローラー等により給紙される記録シート290は、プラテン208上
に搬送され、インクカートリッジ221,222から供給され記録ヘッド1から吐出する
インクにより印刷がなされる。
(4)実施例:
以下、実施例を示すが、本発明は以下の例により限定されるものではない。
[各液体噴射ヘッドサンプルの作製]
上述した製造方法に従って、シリコン基板15上に、貫通部17aを有する二酸化シリ
コンの弾性膜16a、貫通部17bを有する酸化ジルコニウムの絶縁膜16b、共通上電
極構造の圧電素子3、リード電極45、及び、封止層48を形成した。この基板上に連通
孔形成基板50を接合し、圧力発生室12や開口部13等を形成し、圧力発生室12や開
口部13等の内面に保護膜80と圧縮応力層85をそれぞれスパッタ法により形成した。
ここで、実施例1〜7及び比較例1のそれぞれについて、図12に示される圧力発生室1
2の幅w、圧力発生室12の深さd、w/d、振動板16のやわらかさを表す指標ΔC、
及び、設定厚みtfとした。α=4.0×10-14[m5/N]から求められる設定厚み上
限tmax、及び、β=2.6×10-7[m]から求められる設定厚み下限tminも、図12
に示している。図12に示すように、実施例1〜7の設定厚みtfはtmin<tf<tmax
あり、比較例1の設定厚みtfはtf>tmaxである。
各条件で圧縮応力層85を形成した後、貫通孔に対応した領域R3の圧縮応力層85と
保護膜80を除去して貫通孔7を形成し、ノズルプレート70とコンプライアンス基板6
0をそれぞれ接合し、所定のチップサイズに分割して液体噴射ヘッドサンプルを作製した
[評価結果]
図12には、各液体噴射ヘッドサンプルについて圧力発生室対応領域R1の振動板16
にクラックが発生したか否かの評価結果も示している。図12に示すように、tf>tmax
である比較例1のサンプルは、クラックの発生が見られた。一方、tmin<tf<tmax
ある実施例1〜7のサンプルは、貫通孔に対応した領域の保護膜が圧縮応力層とともに除
去され、クラックの発生が見られなかった。このことから、係数α,βの設定は適切であ
る。
以上より、気相法により平坦面に形成される圧縮応力層の厚みtfをtmax以下に設定し
て圧力発生室及び開口部の内面の保護膜に圧縮応力層を気相法により形成することにより
、圧力発生室対応領域の振動板のクラックが抑制されることが確認された。
(5)応用、その他:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
上述した製造工程の順序は、適宜、変更可能である。例えば、振動板形成工程S1で振
動板16を形成した後、先に貫通部17を形成し、この貫通部17に封止層48を形成し
てから圧電素子3を形成してもよい。
上述した実施形態では圧力発生室毎に個別の圧電体を設けているが、複数の圧力発生室
に共通の圧電体を設け圧力発生室毎に個別電極を設けることも可能である。
上述した実施形態では流路形成基板にリザーバの一部を形成しているが、流路形成基板
とは別の部材にリザーバを形成することも可能である。
上述した実施形態では圧電素子の上側を圧電素子保持部で覆っているが、圧電素子の上
側を大気に開放することも可能である。
流体噴射ヘッドから吐出される液体は、液体噴射ヘッドから吐出可能な材料であればよ
く、染料等が溶媒に溶解した溶液、顔料や金属粒子といった固形粒子が分散媒に分散した
ゾル、等の流体が含まれる。このような流体には、インク、液晶、等が含まれる。液体噴
射ヘッドは、プリンターといった画像記録装置の他、液晶ディスプレー等のカラーフィル
タの製造装置、有機ELディスプレー等の電極の製造装置、バイオチップ製造装置、等に
搭載可能である。
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、圧力発生室に対応した領域
の振動板のクラックを抑制する液体噴射ヘッドの製造方法等の技術を提供することができ
る。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わ
せを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各
構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明
は、これらの構成等も含まれる。
1…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、2…圧電アクチュエーター、3…圧電素子、4…能
動部、7…貫通孔、8…位置決め孔、9…リザーバ、10…流路形成基板、11…隔壁、
12…圧力発生室、13…開口部、13a,13b…連通部、14…インク供給口、15
…シリコン基板、16…振動板、16a…弾性膜、16b…絶縁膜、16c…幅方向の端
部、17,17a,17b…貫通部、45…リード電極、46…密着層、47…金属層、
48…封止層、50…連通孔形成基板、51…連通孔、60…コンプライアンス基板、6
5…駆動回路、70…ノズルプレート、71…ノズル開口、80…保護膜、85,86…
圧縮応力層、200…記録装置(液体噴射装置)、D1…圧力発生室の幅方向、D2…圧
力発生室の長手方向、D3…厚み方向、FL1…平坦面、P1…幅方向内側部分、P2…
幅方向外側部分、R1…圧力発生室対応領域、R2…幅方向外側領域、R3…貫通孔に対
応した領域、S1…振動板形成工程、S2…圧電素子形成工程、S3…貫通部形成工程、
S4…封止層形成工程、S5…連通孔形成基板接合工程、S6…流路形成工程、S7…保
護膜形成工程、S8…圧縮応力層形成工程、S9…貫通孔形成工程。

Claims (8)

  1. 流路形成基板、及び、該流路形成基板上に設けられた振動板に厚み方向へ貫通した貫通
    孔が形成された液体噴射ヘッドの製造方法であって、
    前記振動板の前記貫通孔に対応した貫通部が封止された状態で、ノズル開口に連通する
    圧力発生室、及び、前記貫通孔となる開口部を前記流路形成基板に形成する工程と、
    前記圧力発生室及び前記開口部の内面に耐液体性を有する保護膜を形成する工程と、
    前記保護膜を形成した圧力発生室及び開口部の内面に内部応力が圧縮応力である圧縮応
    力層を気相法により形成する圧縮応力層形成工程と、
    前記貫通孔に対応した領域の圧縮応力層及び保護膜を除去して前記貫通孔を形成する工
    程と、を備え、
    前記圧縮応力層形成工程では、前記圧力発生室の幅をw、前記圧力発生室の深さをd、
    前記圧力発生室に対応した領域の前記振動板に対して厚み方向へ加える圧力をP、該圧力
    Pを加えたときに変形する前記振動板の厚み方向及び幅方向に沿った変形断面積をD、前
    記圧縮応力層の材料に応じた係数をα、とするとき、気相法により平坦面に形成される前
    記圧縮応力層の厚みtfをα×(P/D)×(d/w)以下に設定して、前記保護膜を形
    成した圧力発生室及び開口部の内面に前記圧縮応力層を気相法により形成する、液体噴射
    ヘッドの製造方法。
  2. 前記圧縮応力層形成工程では、前記圧縮応力層の材料に応じた係数をβとするとき、前
    記tfをβ×(w/d)以上、かつ、α×(P/D)×(d/w)以下に設定して、前記
    保護膜を形成した圧力発生室及び開口部の内面に前記圧縮応力層を気相法により形成する
    、請求項1に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
  3. 前記保護膜の材料に少なくとも酸化タンタルを用いた、請求項1又は請求項2に記載の
    液体噴射ヘッドの製造方法。
  4. 前記圧縮応力層の材料に少なくともチタンタングステンを用いた、請求項1〜請求項3
    のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
  5. 前記振動板の貫通部を封止する封止層の材料に前記振動板上の圧電素子から引き出され
    るリード電極と同じ材料を少なくとも用いた、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載
    の液体噴射ヘッドの製造方法。
  6. 前記貫通孔に繋がる連通孔を形成した連通孔形成基板を前記振動板が設けられた流路形
    成基板に接合する工程を備える、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の液体噴射ヘ
    ッドの製造方法。
  7. 前記保護膜の材料に酸化タンタルを用い、前記圧縮応力層の材料にチタンタングステン
    を用い、前記係数αをα=4.0×10-14[m5/N]とし、前記係数βをβ=2.6×
    10-7[m]とする、請求項2に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法により液体噴射
    ヘッドを形成する工程を備えた、液体噴射装置の製造方法。
JP2012008705A 2012-01-19 2012-01-19 液体噴射ヘッドの製造方法、及び、液体噴射装置の製造方法 Withdrawn JP2013146911A (ja)

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