JP2013146856A - ナノ材料を分離する方法および分散ナノ材料溶液 - Google Patents

ナノ材料を分離する方法および分散ナノ材料溶液 Download PDF

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Abstract

【課題】ナノ材料に対する損傷を発生させることなく、また、界面活性剤、表面改質剤、化学的官能化、またはプロトン化を使用することなく、ナノ材料を効率的に分散させた分散ナノ材料を提供する。
【手段】約0.1mgml−1以上の濃度の個々の帯電したナノ材料および溶媒を含む分散ナノ材料の溶液が提供される。
【選択図】図1

Description

本発明はナノ材料、特に、ナノチューブを分散および分離する方法に関する。特に、本発明はナノ材料が電気化学的工程を使用して分散および分離され得る方法を提供する。
カーボンナノチューブは重要な材料系であり、既知の材料の中で最も高い熱伝導度、最も高い機械的強度、最大の電流密度耐性、および様々の重要な(光)エレクトロニクス特性を含む独特な性質を提供している。ナノチューブは基礎科学的関心に加えて、Baughman,R.H.,A.A.Zakhidov,and W.A.de Heer,Science,2002.297(5582):p.787−792に記述されているように、高性能の複合材料から透明導電体、太陽電池、およびナノエレクトロニクスに至るまで、膨大な分野への応用が提案されている。しかし、ナノチューブの可能性が最大限に活用される前に、克服すべき重大な障壁が幾つか存在している。
カーボンナノチューブは2つの群に細分できる。すなわち、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWNT)およびマルチウォールカーボンナノチューブ(MWNT)である。SWNTは筒状の純粋な炭素の分子で、単一の「巻き上げられた」グラフェンシートと考えることができる。SWNTは典型的には直径が約1〜1.5nmで、その性質は直径およびグラフェンシートから巻き上げられた角度(カイラル角)に依存している。マルチウォールカーボンナノチューブは複数のSWNTの同心円層からなる。
ナノチューブの定義は、例えば、欠陥の存在(間隙、七員環などの他の環、およびハイブリッド形成を経る変化)、エンドヘドラル材料(中空の芯への他の物質の充填)、化学的官能化、二量化(もしくは多量化)、およびより複雑な形態を含む、当業者が熟知している幾つかの変異体もしくは誘導体を含むように拡大することができる。
結晶を成長させたままの状態では、ナノチューブ材料は不均一系で、両方の不純物を含み、本質的には異なるナノチューブ種の混合物である。カーボンナノチューブの電気的および光学的な性質は、直径およびヘリシティ(グラフェンの格子とナノチューブの軸との間の角度)に依存する。この点において、SWNTに関連して、それぞれの種は(m,n)指標によって標識することができる。典型的なSWNT試料においては、Meyyappan,M.,2005:CRC Pressに記述されているように、およそ3分の1は金属性であり、3分の2は半導電性である。2つ以上の型を有する材料の合成は進歩している一方で、現在まで、純粋な合成方法は知られていない。
この材料の将来性において、2つの異なるSWNT型を分離できることの重要性を過小評価すべきではない。例えば、良好な電界効果トランジスターを生産するためには半導体チューブのみを使用しなければならず、また、もし低抵抗材料、例えば透明フィルムが製造される際には、金属性ナノチューブのみが存在しなければならない(Kim,WJ.et al.Chemistry of Materials, 2007.19(7):p.1571−1576)。
したがって、カーボンナノチューブの光エレクトロニクス的な性質の可能性が最大限に活用される前に、電子特性による安価で拡張性があるナノチューブ分離方法が求められることは明らかである。それに加えて、ほとんどのナノチューブ試料には金属触媒、触媒担体、もしくは他の種類の非晶質、ナノ粒子、または黒鉛状炭素が混入している。純粋なナノチューブを得るために材料を処理することは困難であり、典型的には、時間を要し、ナノチューブ本来の性質を損ない、そしてしばしば有効性が限られている複数の酸化、超音波処理、洗浄、および濾過ステップが関与する。
分離および精製の難しさは、ナノチューブは一般的な溶媒系に対して極めて溶解性、もしくは分散性が低いという、より幅広い問題に特に関連している。例えば均一なナノチューブコーティングの堆積、電極集合体の形成、および高性能な複合体の製造などの特定の応用方法にナノチューブを取り入れるためには、ナノチューブの良好な分散/溶解が非常に望ましい。
低粘性溶液中での分散は、典型的には、ナノチューブの凝集体、およびSWCNTの束ですら分離する高強度の超音波を使用して達成される。しかし、この技術は損傷を起こす可能性もある。純粋な個々のナノチューブの安定した分散は、少数の溶媒(例えばNMP、DMAなど)中の、極めて低い濃度(<0.01mg/ml、およそ<0.001wt%)でのみ知られている(Giordani,S.,et al,Physica Status Solidi B−Basic Solid State Physics,2006.243(13):p.3058−3062)。
再凝集を防ぐために、露出したナノチューブ表面に吸着できるまたは鎖の切断によりグラフトされ得る重合体または界面活性剤(Shaffer,M.et al,Editor S Advani.2006,World Scientific,p.1−59)が通常は溶液に添加される。ポリスチレン(PS)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、およびポリプロピレン(PP)に基づく有機系もまた探索されているが、ポリ(ヒドロキシアミノエーテル)(PHAE)、ポリビニルアルコール(PVA)、およびPVA/ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)などの水に溶けた両親媒性高分子は特に効果的であることが証明されている。様々な界面活性剤が使用されており、SDS、SDBS、および胆汁酸塩が最も汎用されている。
これらの非共有結合性の戦略は、低濃度では適度に効果的であるが、いずれも強度の超音波処理が求められ、本質的に試料を汚染する。典型的には個々のナノチューブに加えて、もしくはその代わりにナノチューブの束が残り、これは超遠心でしか取り除くことができない。
重合体または帯電した官能基のいずれかを伴う直接的な共有結合性の化学的官能化もまた使用されるが、特にナノチューブ本来の性質を損なう。
個々のナノチューブの溶解に最も有望な方法は、超酸中でのプロトン化(Ramesh,S.,et al.,Journal of Physical Chemistry B,2004.108(26):p.8794−8798)、またはDMF中でのナトリウムナフタレニドを使用した還元(Penicaud,A.,et al.,Journal of the American Chemical Society, 2005.127(1):p.8−9)のいずれかによる、攻撃的な酸化還元条件下でナノチューブを化学的に荷電することに依存している。
現時点では、それぞれの電子的な性質によるナノチューブの分離に使用される、幾つかの異なる技術が様々な成功の度合いで存在する。いずれの方法も、必須条件として、超音波処理および超遠心による個々のナノチューブ(通常はSWNT)懸濁液の調製が求められる。誘電泳動は、それぞれの異なる分極率に基づいて金属性および半導体のSWNTを分離する(Krupke,R.ら,Science,2003.301(5631):p.344−347)。この方法は、80%の富化を得たのみであり、マイクロ電極のコストの高さ、試料のサイズが極めて小さいこと、および良好な品質での最初の溶液調製に関連する問題ゆえに限定的であることが報告されている。
直径および電子型の両方により少量のカーボンナノチューブを選別するために、浮遊密度における差異を使用した密度勾配超遠心を使用することができる(Arnold,M.S.ら,Nature Nanotechnology,2006.1(1):p.60−65)。しかし、複数サイクルの超遠心が必要であり、コストが高いという性質のためにこの方法の実用化の妨げになっている。
より簡易な方法は、分散および遠心分離の組み合わせに基づいており、一般的にはアミン溶液が関与するが(Maeda,Y.ら,Journal of the American Chemical Society,2005.127(29):p.10287−10290)、完全な分離というよりは、単に中程度の富化を得ている。
陰イオン交換クロマトグラフィーがDNA中に包含されたSWNTの分離に使用されている(Zheng,M.and E.D.Semke,Journal of the American Chemical Society,2007.129(19):p.6084以降)。この技術は分離されたチューブを少量製造するには適しているが、この手法は包含工程で使用されるDNAおよび陰イオン交換クロマトグラフィーのコストが高いために大幅に制限される。多くの潜在用途に対してDNAを完全に除去する必要があることも追加の欠点の1つとして挙げられる。
SWNTを分離するために、種々の化学的な技術もまた開発されている。Peng,X.ら,Nature Nanotechnology,2007.2(6):p.361−365では、異なるヘリシティのSWNTを分離するためのジポルフィリンまたは「ナノピンセット」の使用を記述している。Kim,W.J.ら、Chemistry of Materials,2007.19(7):p.1571−1576では、金属性のナノチューブを選択的に官能化し、その後電気泳動的な手段でこれらを分離し得るためのジアゾニウム塩の使用を記述している。Banerjee,S.ら、Nano Letters,2004.4(8):p.1445−1450に記述されているように、オゾン分解もまた直径によるナノチューブの分離に使用し得る。Wunderlich,D.ら、Journal of Materials Chemistry,2008では、金属性のチューブを選択的に官能化する液体アンモニア中でのアルキル化を記述している。
これらの技術の幾つかは他よりも効率的ではあるものの、すべての技術でバッチ操作を含み、極めて量が少なく、また官能化によりナノチューブの構造を本質的に損なう。
したがって、ナノ材料の分離に対して、連続した様式で実施することができ、上で確認された欠点によって損なわれない、簡易で効率的な方法に対する必要性が存在することは明らかである。
Baughman,R.H.,A.A.Zakhidov,and W.A.de Heer,Science,2002.297(5582):p.787−792 Meyyappan,M.,2005:CRC Press Kim,WJ.et al.Chemistry of Materials, 2007.19(7):p.1571−1576 Giordani,S.,et al,Physica Status Solidi B−Basic Solid State Physics,2006.243(13):p.3058−3062) Shaffer,M.et al,Editor S Advani.2006,World Scientific,p.1−59 Ramesh,S.,et al.,Journal of Physical Chemistry B,2004.108(26):p.8794−8798 Penicaud,A.,et al.,Journal of the American Chemical Society,2005.127(1):p.8−9 Krupke,R.ら,Science,2003.301(5631):p.344−347 Arnold,M.S.ら,Nature Nanotechnology,2006.1(1):p.60−65 Maeda,Y.ら,Journal of the American Chemical Society,2005.127(29):p.10287−10290 Zheng,M.and E.D.Semke,Journal of the American Chemical Society,2007.129(19):p.6084以降 Peng,X.ら,Nature Nanotechnology,2007.2(6):p.361−365 Banerjee,S.ら、Nano Letters,2004.4(8):p.1445−1450 Wunderlich,D.ら、Journal of Materials Chemistry,2008
この点において、本発明者らは驚くべきことにナノ材料、とりわけナノチューブの効率的な溶解および分離が電気化学的工程の使用により達成可能なことを見出した。
これまでに、最も一般的なナノチューブの電気化学的な使用は、キャパシタおよび燃料電池などの電子化学機器中の不活性電極、もしくはマイクロ電極としての使用であった。これらの状況では、ナノチューブの酸化還元特性は無視される。Kavan,L.ら,Journal of Physical Chemistry B,2001.105(44):p.10764−10771に記述されているように、固体担体に付加したナノチューブの酸化還元的な電気化学はこれまでに研究されているが、溶解もしくは分離を目的とした研究は行われていない。その一方で、原子種に対する酸化還元による精製は良く知られており、大規模な工業プロセス中、例えば、Pletcher,D.and D.Walsh,Industrial Electrochemistry.1993:Blackie Academic and Professionalに記述されているような、銅の精製などで使用されている。分散されたナノ材料の精製に対する酸化還元的な電気化学の応用は驚くべき発展である。
第1の態様において、本発明は電気化学的工程を含むナノ材料を分散する方法を提供する。有利なことに、このような工程が使用されると、ナノ材料に対する損傷を発生させることなく、ナノ材料を効率的に分散することが可能であることが見出された。特に、本発明は拡張性があり、安価で連続法の可能性を有する大量のナノ材料を分離する方法を提供する。
さらに、電気化学的工程が実施される条件を制御することにより、ナノ材料を選択的に分散することが可能となる。例えば、ナノ材料がナノチューブを含む場合には、電気化学的工程が実施される条件を制御することにより、異なる性質を有するナノチューブを選択的に分散することが可能となる。この点において、ナノチューブを、例えば半導体のナノチューブを金属製のナノチューブから分離することなどのそれぞれの電子特性に基づいて、サイズにより、またはヘリシティにより、分離することが可能となる。
さらなる態様において、本発明は約0.1mgml−1以上の濃度の個々のナノ材料および溶媒を含む、分散されたナノ材料の溶液を提供する。さらなる操作のためには、高濃度の分散された個々のナノ材料が望ましい。本発明に先だっては、追加の界面活性剤、表面改質剤、化学的官能化、もしくはプロトン化を使用する必要性なしに、このような高濃度でナノ材料を含む溶液を得ることはこれまで不可能であった。
一実施形態において、本発明は約0.1mgml−1以上の濃度の個々の帯電したナノチューブおよび溶媒を含む、分散されたナノチューブの溶液を提供する。
さらなる態様において、本発明は作用電極、複数の対電極および電解質を含み、この作用電極がナノ材料を含む電気化学セルを提供する。使用に当たって、好ましくは、これらの複数の対電極の各々と作用電極との間の電位が異なる。
図1Aおよび1Bは、本発明の方法において使用され得る2種類の異なる電気化学セル配置の模式図である。 図2は、本発明の方法を適用する前、および後のCoMoCAT SWNTのラマンスペクトルを表す。
本発明の方法において、ナノ材料は電気化学的工程で分散される。
本明細書で用いられる「ナノ材料」という用語は、少なくとも1つの寸法が約0.1μm以下の形態学的特徴を有する材料を指す。したがって、この用語はナノチューブ、ナノファイバー、およびナノ粒子を包含する。
幾つかの実施形態において、ナノ材料はナノチューブ、ナノファイバー、および/またはナノ粒子の集合である。本発明の方法は、このような集合体の分散であることが許される。
「ナノ粒子」という用語は、分散された結晶構造を有し、粒子本来の原子構造を損なうことなく全体として電気化学的に酸化もしくは還元され得る粒子を指して用いられる。適切なナノ粒子の例は、貴金属原子、例えば白金または金などからなるナノ粒子を含む。
「ナノファイバー」という用語は、約0.1μm以下の直径を有する繊維を指して用いられる。
幾つかの実施形態において、ナノ材料はナノチューブもしくはナノファイバーを含む。好ましくは、ナノ材料はナノチューブを含む。好ましくは、ナノ材料はカーボンナノチューブを含む。
一実施形態において、カーボンナノチューブはカーボンナノチューブの電気伝導度を調節するためにホウ素および/または窒素を加えてもよい。典型的には、ドーパントの濃度は約1原子%であろうが、著しく高く、もしくは低くてもよい。
本発明の方法において使用されるナノチューブはSWNTもしくはMWNTであってよく、好ましくはSWNTである。好ましくは、ナノチューブはカーボンナノチューブである。ナノチューブは様々な直径を有してよい。典型的には、SWNTにおいては、ナノチューブは約0.4から約3nmの範囲の直径を有するであろう。ナノチューブがMWNTである場合、直径は好ましくは約1.4から約100nmの範囲であろう。好ましくは、カーボンナノチューブはSWNTである。適切なナノチューブは、例えば、SWeNT、Carbon Nanotechnologies,Inc.、Carbolex,Inc.およびThomas Swan Ltdから商業的に入手できる。
本明細書中に記載される以下の詳細はナノチューブに重点を置いているが、酸化還元電位はサイズもしくは組成により制御することができ、選択的な分離が求められる他のナノ材料にも本発明の方法は適用される。本来の導電率が低い酸化還元的に活性な粒子は、多孔質の伝導性骨格上に支持されることが必要なことがありえる。
本明細書で用いられる「電気化学的工程」という用語は、電子伝導体(電極)とイオン導電体(電解質)との界面上で化学反応が起こる過程、および電極と電解質との間における帯電した種の移動を含む過程を指す。
一実施形態において、本発明の方法は作用電極と対電極との間に電位をかけることを含み、ここで作用電極はナノチューブなどのナノ材料を含み、作用電極および対電極は、さらに電解質を含む電気化学セルの一部を構成する。
本明細書で用いられる「作用電極」という用語は、関心を持つ電気化学的過程がその界面上で起こる電極を指す。
本発明の方法において使用される作用電極はナノ材料を含む。一実施形態において、作用電極は実質上ナノ材料のみを含む、すなわち、電極は材質的に電極の挙動に影響する他の要素を含まない。この純度は幾つかの理由で有利である。第1に、容易に制御することができる単一の簡易な工程を通じて大量のナノ材料の分散を可能にする。第2に、求められる作用電極の溶解の必要とされる程度で限界が定められるため、工程の終点に対する監視がわかりやすくなる。第3に、この系は望まない付加的な汚染なしで維持される。
ナノ材料を含む電極は当技術分野において公知である。例えば、「バッキーペーパー」もしくは他のフィルム状のカーボンナノチューブ電極は、J.Phys Chem B,108(52)19960−19966,2004に記述されているように、電気化学セル中の不活性電極としてこれまでに使用されている。「バッキーペーパー」は米国マサチューセッツ州のNanolab,Inc.,より商業的に入手することができる。ナノ材料を含む電極は当業者が熟知している従来の技術により製造することができる。例えば、Wang et al.,Composites Part A:Applied Science and manufacturing,(35) 10,1225−1232(2004)に記述されているように、このような電極はナノ材料を含む溶液の濾過/分散により製造することができる。
本発明の電気化学的技術の基本的原理は、ナノ材料が十分に高く帯電して自然に溶解するまで、ナノ材料を含む作用電極と対電極の間に相対的に高い電位をかけることである。この工程は、ナノ材料から電子を除去する(酸化)ために大きな正電圧を使用し、正に帯電したナノ材料の溶液をもたらすか、または、ナノ材料に電子を付加する(還元)ために大きな負電圧を使用し、負に帯電したナノ材料溶液を提供するかのどちらかであってよい。
作用電極がナノチューブを含む場合、好ましくは、ナノチューブが還元されるように大きな負電位が適用される。要求される電位がより簡単に標準的な溶媒の電位窓内に入ることができ、結果として得られるカーボンナノチューブイオンがより容易に溶媒和されるので、還元が好ましい。ナノチューブが還元される場合は、作用電極は陰極であり、対電極は陽極である。
上で示されたように、本発明の方法において、作用電極と対電極との間により大きな電位が適用される。作用電極と対電極との間に適用される電位はナノ材料のイオン化エネルギーに応じて調節することができる。負電位が適用される場合、好ましくは、適用される電位は、標準水素電極と相対的に測定して約−0.6V以上の負電位、約−0.8V以上の負電位、好ましくは約−1.0V以上の負電位、好ましくは約−1.5V以上の負電位、好ましくは約−2.0V以上の負電位、好ましくは約−2.5V以上の負電位である。好ましくは適用される電位は、標準水素電極と相対的に測定して約−1から約−2Vの範囲である。
正電位が適用される場合、好ましくは適用される電位は、標準水素電極と相対的に測定して約1.0V以上、好ましくは約1.1V以上、好ましくは約1.2V以上、好ましくは約1.3V以上、好ましくは約1.5V以上である。好ましくは適用される電圧は標準水素電極と相対的に測定して約3V以下、約2.5V以下、約2.0V以下である。
定常電流はナノ材料の溶解速度と相関しており、適用される電位と同様に、電解質の組成および作用電極の表面積を調節することにより最大化することができる。
作用電極と対電極との間に電位が適用される時間は、作用電極の消耗によらない限り特に限定されず、作用電極は補充されてもよい。一実施形態において、電位は約1から約16時間の範囲で適用することができる。
作用電極の寸法は特に限定されない。幾つかの実施形態において、作用電極は約0.2から約1.0cmの表面積を有してもよい。ほかの実施形態において、特にこの方法が工業規模で実施される場合は、表面積は著しく大きくてもよい。
電解質は帯電したナノ材料を安定させるものである。電解質は適切な塩を溶媒に添加することにより、電気化学セルの系内で生成することができる。テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸塩および過塩素酸リチウムを含む、乾燥した有機電解質系に対して使用される、標準的で幅広く安定な塩を使用することができる。
当業者は適切な溶媒について熟知しているであろう。特に、極性の非プロトン性乾燥溶媒が好ましい。帯電したナノ材料に対して適切な溶媒は、これらに限るものではないが、乾燥(無水分)および無酸素のジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)およびN−メチルピロリドン(NMP)を含む。
あるいは、例えば、系外での直接的反応または系内でのアルカリ金属の付加のいずれかにより調製されるナノチューブのアルカリ金属塩などのナノチューブに基づく電解質など、ナノ材料に基づく電解質を使用できる。
一実施形態において、ナノチューブに基づく電解質は、商業的に入手できるナノチューブと、金属およびアミン溶媒を含む電子液体とを接触させることにより、系外で調製することもできる。
本明細書で用いられる「電子液体」という用語は、アルカリ土類金属またはアルカリ金属などの金属、例えばナトリウムが化学反応を起こさずに極性溶媒、すなわち典型例としてアンモニア中に溶解した時に生成する液体を記述する。この過程は溶媒中に電子を放出し、高度に還元的な溶液を生成する。理論に拘束されることは望まないが、これらの溶液は、2つの要因に基づいてナノチューブを溶解する。第1に、炭素種の電子はこれらが負に帯電した陰イオンを生成することを意味する。第2に、これらの負に帯電した陰イオンは静電反発力により安定して分散する。
使用される金属は、アミン中に溶解して電子液体を生成する金属である。当業者は適当な金属を熟知しているであろう。好ましくは、金属はアルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選択される。好ましくは、金属はアルカリ金属であり、特に、リチウム、ナトリウム、またはカリウムである。好ましくは、金属はナトリウムである。
溶液中に含まれる金属の量を注意深く制御することは有利である。電子液体中に過剰に存在する金属は選択的な帯電の可能性を失わせ(飽和させる)、炭素種間の静電反発力を遮蔽することにより、ナノチューブに基づく電解質を生成するためのナノチューブの分散を妨げる。したがって、電子液体が接触するカーボンナノチューブ中の炭素原子に対する電子液体中の金属原子の比率が約1:4以下、好ましくは約1:6以下、好ましくは約1:8以下、好ましくは約1:10以下、好ましくは約1:15以下、好ましくは約1:20以下となるように金属が存在することが好ましい。幾つかの実施形態においては、電子液体が接触するカーボンナノチューブ中の炭素原子に対する電子液体中の金属原子の比率が約1:3から約1:10、約1:3から約1:8、約1:3から約1:6、約1:3から約1:5、好ましくは約1:4の範囲となるように金属が存在する。ナノチューブ中の炭素原子の数は、当業者が熟知している簡単な計算により決定することができる。
電子液体は、金属をアミン溶媒に溶解することにより生成される。幾つかの実施形態において、アミン溶媒はCからC12アミン、CからC10アミン、CからCアミン、CからCアミン、CからCアミンであってよい。アミン溶媒は、好ましくはアンモニア、メチルアミン、もしくはエチルアミンから選択される。好ましくは、アミン溶媒はアンモニアである。一実施形態において、金属はナトリウムでありアミン溶媒はアンモニアである。
すべての材料が乾燥し、無酸素なことを確実にすることにより、空気と水分を系から除外することが好ましい。原理的には、低濃度の混入物は電気化学反応により除外することができるが、事前に混入物を取り除くことが好ましい。
本発明の方法において、作用電極と対電極との間に電位を適用することによりナノ材料が作用電極から溶出する。電気化学セルは複数の対電極を含んでもよい。本発明の方法において使用される対電極は特に限定されるものではないが、使用される条件の下で電気化学的に不活性であることが好ましい。この点において、適当な対電極について当業者は熟知しているであろう。適当な対電極の例はガラス状炭素、グラファイト、白金、およびナノチューブペーパーを含む。
一実施形態において、電気化学セルは参照電極または擬似参照電極をさらに含んでもよい。特に小規模な実験において、最大限の制御が可能となるので、この追加は有利である。本発明の方法において使用される溶媒/電解質系において、最も一般的に設計された、水系用のまたは水系を含む標準参照電極は必ずしも容易に入手できるものではないので、白金ワイヤーなどの擬似参照電極を使用することができる。Ag/AgNOなどの幾つかの参照電極系もまた入手できる。
本発明の一実施形態において、作用電極および対電極は適切な電気化学的薄膜またはセパレータで結合された分離された区画中に配置される。適切な電気化学的薄膜およびセパレータは、例えばフッ素化した高分子膜、およびガラスまたはその他の不活性な繊維マットなどの多孔質を含む。このような配置において、電解質塩または対電極材料は、作用電極におけるナノ材料の還元(または酸化)とのバランスをとるために、対電極において酸化される(または還元される)。帯電し、分散されたナノ材料の溶液は作用電極の区画から収集することができる。この工程が連続的に実施される場合、電解質または対電極材料のさらなる追加が必要となることもある。
別の実施形態において、作用電極および対電極は単一の区画に含まれる。この配置内で、ナノ材料は作用電極から溶出し、それに続いて(複数の)対電極上に堆積する。この工程は作用電極中に供給されているナノ材料を使いきるまで、または作用電極中に供給されているナノ材料の選択された画分を使い切るまで継続することができる。作用電極から溶出するナノ材料の割合は、作用電極の重量を電気化学的反応の進行として監視すること、または電気化学セルを通過する全電荷を時間に対する積算電流により計測することで測定できる。堆積したナノ材料は、例えば、粉体を製造する機械的な方法、もしくは、分散液を製造するためのさらなる電気化学的処理により、対電極から収集できる。
好ましくは、本発明の方法において使用される電気化学セルは作用電極および(複数の)対電極が同一の区画内に含まれるように配置される。
上で記したように、ナノチューブなどのナノ材料は不均一系であり、Okazaki,K.et al.Physical Review B,2003,68(3)に記述されているように、様々な成分は異なる酸化還元電位を有する。したがって、本発明の方法において、作用電極の電位を選択することにより、ナノチューブを含む材料の異なる画分が溶解し得る。そこで、本発明はナノ材料、特に、ナノチューブを含む材料の分離および精製に対する機構を提供する。この選択性は2つの方式のうちの1つにて達成され得る。一実施形態において、分離および精製はナノ材料を含む作用電極の溶解を制御することにより達成され得る。これは作用電極と対電極との間に適用される電位を制御することにより達成することができる。例えば、ナノ粒子化した炭素は最初に帯電して溶出し得るので、富化された(精製された)ナノチューブ作用電極が残る。同様に、金属性または直径に依存した半導体のナノチューブを別々に溶解することができ、場合により、一連の工程において漸進的に強度を増して電位を適用して行う。分離が作用電極の溶解を制御することにより達成される場合、好ましくは作用電極と対電極との間に適用される電位は、作用電極のナノ材料の少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%が溶解するために十分な電位である。この実施形態において、得られる製品は、ナノ材料を含む作用電極の溶解を制御するために作用電極と対電極との間に適用される電位を調節することにより、サイズ、ヘリシティおよび/または電子特性に基づいて場合により分離された、分散された個々の帯電したナノ材料の溶液である。
別の実施形態において、ナノ材料の分離および精製は、溶解したナノ材料の対電極上への堆積を制御することにより達成することができる。この実施形態において、好ましくは、作用電極と対電極との間に、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、約100%の作用電極のナノ材料が溶解するために十分に大きな電位が適用される。電気化学セルは、作用電極およびそれぞれ追随する対電極間の電位が異なるように複数の対電極を含んでもよい。帯電した種の異なる酸化還元電位は、異なる対電極における帯電種の選択的な堆積を起こし、作用電極を構成するナノ材料の分離および精製を可能にする。溶解した種が最小から最大の電位の大きさで順次移動するように、対電極は作用電極からの距離として順々に空間的に配置されることが好ましい。この配置は、堆積に必要な電位に到達したときに、各対電極に純粋な種が堆積することを可能にする。
したがって、拡張性があり、安価で、連続法の可能性を有する大量のナノ材料を分離する方法を本発明は提供する。本発明の方法により製造される精製されたナノ材料は、太陽電池、トランジスター、およびセンサーなどの分野ですぐに応用できる。特に、この分散されたナノ材料は、コーティング剤の調製、複合体、および帯電したナノチューブに対して開発された反応を使用して化学的な手法により官能化したナノチューブの合成を含む、多様な目的で使用することができる。
本発明の方法を使用することにより、分散された、個々の帯電したナノ材料の溶液を得ることが可能となる。
作用電極がナノチューブを含む場合、本発明の方法の製品は、分散された、個々の帯電したナノチューブの溶液であり得る。当業者は個別化された(束を形成していない)ナノチューブの存在を確認するために使用し得る技術を熟知しているであろう。適切な技術の例は、J.A.Fagan et al.J Phys Chem B.,(2006),110,23801に記述されているように、小角中性子散乱(SANS)である。
SANSは溶液中のSWNTの構造を調べるための強力な技術である。より詳細には、SANSはSWNTが分離した種または束または凝集体のいずれの形で存在するかを測定するために使用することができる。SANSは溶液中の大きな粒子(1から1000nmの範囲)の構造に関する情報を提供する。SANS強度I(Q)はQ−Dに比例し、ここでDはチューブのフラクタル次元である。そこで、予測SANSは完全に分散された棒状物体(すなわち、D−1の挙動)にパターン化する。さもなければ、SWNTの非単分散、すなわち、棒状物体の凝集体もしくはネットワークからなる非単分散は、より大きなフラクタル次元、典型的には2から4を示す。
本発明の方法が使用される場合、驚くべき高い濃度でナノ材料、特にナノチューブを得ることが可能であることが見出されている。より詳細には、本発明以前には、到達する熱平衡のために、表面改質剤、化学的官能化、もしくはプロトン化が存在しない溶液中で得られ得る個々のナノチューブの最も高い濃度は0.01mgml−1と考えられていた。しかし、本発明者らは約0.01mgml−1を超える濃度を達成している。幾つかの実施形態において、個々のナノチューブの濃度は約0.1mgml−1以上、約0.5mgml−1以上、約1mgml−1以上、約5mgml−1以上、約10mgml−1以上、約50mgml−1以上、約100mgml−1以上である。
本発明に関係するさらなる利点は、電気化学的工程が実施される条件を制御することにより選択性が達成されることである。より詳細には、この方法の本質は、金属性のカーボンナノチューブが半導体のナノチューブに優先して帯電することにある。この効果は型、直径、およびヘリシティに依存するSWNTの可変的な電子親和力による。
溶液中に存在するナノチューブの型はラマン散乱の技術により測定することができる(Desselhausら Physics Reports(2005),40A)。ラマン散乱はチューブの混合物からなる試料中に存在する特定の型のSWNTを測定する強力な技術である。ラマン散乱は、試料の振電モード(フォノン)からのエネルギー喪失または獲得を伴う中間電子を経る非弾性光散乱過程である。この手法では極めて少ない光子のみが散乱されるため(10個中1個)、典型的にはラマン分光法は単色光の高強度ビームに対するレーザーを使用する。
SWNTは巻き上げられたグラファイトのシートで、その管状の本質により、それらの電子はチューブの半径方向に封じ込められている。この量子化は電子密度(eDOS)においてファン・ホーヴェ特異点と呼ばれる大きなスパイクにつながる。もし入射光がそれらのスパイク間の差異に一致すると、ラマン散乱は共鳴する。すると任意の与えられた波長におけるラマンスペクトルは、eDOS中の波長に一致した遷移を有する特定のチューブに偏る。どのチューブが入射光と共鳴するかを予測するために、片浦プロットがしばしば使用される。このグラフは、異なるSWNTの遷移を直径の関数として計算した結果をプロットしたものである。
400cm−1未満では、SWNTのラマンスペクトルはラディアルブリージングモード(Radial Breathing Modes)(RBM)に偏る。フォノンのエネルギーはSWNTの直径に反比例する。チューブの混合物試料のラマンスペクトルは、入射光と共鳴するSWNTに由来するすべてのRBMからのピークの合計を示すであろう。したがって、レーザーの波長を知ることで、どのチューブが与えられた試料中に存在するかを片浦プロットから読み取ることができる。もしSWNTの試料があり、その試料を化学的に加工してから、そのラマンスペクトルを未加工のチューブのラマンスペクトルと比較すると、RBMにおける相対的な総数の増加もしくは減少は、試料中の特定の型のSWNTの相対的な増加もしくは減少について強固な証拠を提供する。さらに、プロットから読み取れるように、金属性および半導体のチューブからの遷移は、典型的には与えられたエネルギーに対して良好に分離される。したがって、典型的には、スペクトルは金属性および半導体のSWNTに対応する適度に明確なピーク部位を含む。この手法では、ラマン分光法は電子特性に基づくSWNTの分離度を決定する強力な技術である(Dresselhaus M.S.ら、Physics Reports(2005)40)。
個々のナノ材料、好ましくはナノチューブの分散を製造後、例えば電子特性、サイズおよび/またはヘリシティに基づいてナノ材料をさらに分離するための、1つ以上のさらなる工程が実施されてもよい。
一実施形態において、分散された(複数の)材料は、O、HO、I、プロトン性有機溶媒およびアルコール(または他のプロトン種)を含むがこれらに限定されない適切な消去剤を使用した漸進的な電荷の消去によりさらに分離されてもよい。消去剤が添加されると、最高エネルギーの電子を有する種が最初に堆積されるであろう。適切な化学量論的量を加えることにより、所望の分画を分離することができる。例えば、全電荷のうち事前に算出した量を中和した後に沈殿する分画を収集することができる。
あるいは、または化学的な消去に加えて、電気化学的な方法を使用することができる。この場合、ナノチューブの分散中に設置された電極(電圧をかけなければ不活性)に低い電圧をかけることにより、ナノチューブに基づく陰イオン上の付加電荷は除去される。電極の電位を制御することにより、異なる電子親和力のナノチューブを酸化させ、電極上に沈殿させることができる。作用電極の(一連の)電極は固定した(複数の)電位で保持され、定電位状態にある。また、対電極は、好ましくは離れた場所で、アルカリ金属イオンが還元され、そして収集されるイオン的に結合した区画で提供することができる。参照電極は作用電極における電位を正確に制御するために使用することができる。
代わりに、または付加的なステップにおいて、最高に/最小に帯電した種が最初に堆積するようにしながら、漸進的に溶媒(電解質)を除去することができる。これら2つの機構により、例えば、一方でナノチューブの長さ、他方でナノチューブの電子特性(半導体のバンドギャップ)による分離が可能になる。
場合により、炭素種を化学的に修飾するために、これに限定されるものではないがRIを含む消去剤を使用することができ、ここでRは炭化水素基である。個々のナノチューブの分散においてこの反応を実施することにより、ナノチューブ表面にわたって理想的には均一な官能化が達成される(典型的な官能化はナノチューブの束の表面上のみで起こる)。
場合により、(事前に分離された)炭素種の溶液は、炭素種を結晶化するために(消去もしくは溶媒の除去により)ゆっくりと不安定化させることができる。
場合により、ナノ材料がナノチューブを含む場合、部分的に選別された、個々の分散されたナノチューブは、乾燥環境下でのクロマトグラフィーによりサイズに応じてさらに分離することができる。
場合により、帯電したナノチューブは、さらなる処理のために、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)およびN−メチルピロリドン(NMP)などの他の乾燥した有機溶媒に移送することができる。
本発明は以下の図面および実施例を参照することによってさらに記述されるが、これらは本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
図1Aにおいて、ナノ材料を含む作用電極(2)および参照電極(4)は1つの区画(8)に位置し、一方で対電極(6)は分離された区画(10)に位置し、これは第1の区画に電気化学的薄膜(12)により連結されている。作用電極と対電極との間に電位をかけると、ナノ材料(14)が電解質(16)中に分散する。
図1Bにおいて、作用電極(18)および一連の対電極(20)は同一の区画(22)内に配置されている。作用電極と対電極との間に電位をかけると、ナノ材料が対電極上に堆積する。
本実施例において、バッキーペーパーの作用電極、高配向熱分解グラファイトの対電極、白金の擬似参照電極、および電解質としてN,N−ジメチルメタンアミド中のテトラフェニルホウ酸ナトリウムを含む電気化学セルが使用された。電気化学セルは負電位に保持されて、SWNTの還元を起こし、相互に反発させて、それらを結びつけているファン・デル・ワールス力を超えさせ、その結果として、個々のナノチューブとしてバッキーペーパーを離れて電解質中に分散させた。その後、還元されたナノチューブは薄いカーボンナノチューブフィルムとして対電極上に堆積した。
電気化学セルは以下のように準備され、稼働された。10mgのテトラフェニルホウ酸ナトリウムを、ガラスコーティングされた6mmのマグネチックスターラーバーを入れた清浄で乾燥した25mlの3つ口丸底フラスコに加えた。標準的なシュレンク管技術を使用して、フラスコと内容物を高温のヒートガンで加熱しながら3回のポンプ導入によりフラスコ内を窒素雰囲気下にした。フラスコを冷却後、事前に乾燥したN,N−ジメチルメタンアミド7mlを窒素下でフラスコ内に移送し、溶液を2分間攪拌した。
ジクロロベンゼン中で超音波処理してナノチューブを分散させた後、減圧下で0.2μmPTFRメンブランフィルターを通して濾過する方法で事前に作成した一片の6cm×8cmのバッキーペーパーを、一片の白金ワイヤーに取り付けた。
セル内を窒素で陽圧に維持しつつ、このバッキーペーパー製の作用電極をヒートガンで乾燥させながらスバシール(subaseal)を経由して反応容器中に挿入した。バッキーペーパーが部分的に電解質中に浸るが、電解質が白金ワイヤーに直接触れることがないように、作用電極を下げた。
白金ワイヤーに取り付けた5mm×9mmの高配向熱分解グラファイトからなる対電極を第2のサバシールに挿入した。そして参照電極として動作する一片の白金ワイヤーを隣接して挿入した。両方の電極をヒートガンで加熱し、フラスコの未使用の側面挿入口に挿入した。その後、両方の電極を電解質に浸した。それから、短絡接触を防止するために、すべての電極をポテンシオスタットの対応する電極クランプに取り付けた。完全なセルは図1Aに模式的に図示されている。
攪拌しながら、セルを−2Vで30分間保持した。この間に、バッキーペーパーの作用電極から電解質中へのナノチューブの流出が見られ、灰色の溶液が生成した。いくらかのナノチューブは対電極上に堆積し、その他は溶液中にとどまっていた。
どの種類のナノチューブが初期に還元され、引き続いて堆積するかという容易性は、それぞれの電子特性に依存する。図2で図示されるように、ラマン分光法を使用して、予想されたように、金属性のチューブが最も容易に還元され、溶液から最初に堆積されることが示された。理論に拘束されることは望まないが、1つの解釈としては、この挙動は、それ自体は金属性のチューブに対してエネルギーが低いと見られる、フェルミ準位に近似した非占有の分子状態を取り得るかに関連している。

Claims (6)

  1. 約0.1mgml−1以上の濃度の個々の帯電したナノ材料および溶媒を含む分散ナノ材料の溶液。
  2. 前記ナノ材料がナノチューブを含み、前記溶液が約0.01mgml−1を超える濃度の個々の帯電したナノチューブおよび溶媒を含む、請求項2に記載の溶液。
  3. 前記溶液が個々の帯電したナノチューブを約0.1mgml−1以上の濃度で含む、請求項2に記載の溶液。
  4. 前記ナノチューブがカーボンナノチューブである、請求項2または3に記載の溶液。
  5. 前記ナノチューブがシングルウォールナノチューブである、請求項4に記載の溶液。
  6. 前記溶媒がNMPまたはDMFである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶液。
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