JP2013141769A - 銀製品、楽器、食器および装身具 - Google Patents

銀製品、楽器、食器および装身具 Download PDF

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Abstract

【課題】実用に耐え得るセラミックスコーティングが施され、耐硫化変色性に優れた銀製品を提供する。
【解決手段】本発明による銀製品100は、少なくとも表面に銀層10aまたは銀合金層を有する基材10と、銀層10aまたは銀合金層を覆う窒化酸化シリコン層20と、銀層10aまたは銀合金層と窒化酸化シリコン層20との間に設けられたシリコン層30とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、銀製品に関し、特に、楽器や食器、装身具などに用いられる銀製品に関する。
銀および銀合金は、その美しい白い光沢によって高級感を醸し出すので、楽器や食器、装身具などの様々な製品の材料に用いられる。ところが、銀や銀合金は、空気中に硫黄化合物が含まれていると、表面に硫化物(Ag2S)が形成されて黒ずんでしまう。このような変色(黒変)を防止する手法として、表面にごく薄くロジウムめっきを施す手法が知られている。また、ロジウムめっきを施す代わりに、クリア塗装を施すことも行われている。
しかしながら、ロジウムは希少金属であるので、ロジウムめっきは高価である。また、クリア塗装によって形成される塗膜は、その硬度が低いので、傷が付きやすく、耐摩耗性に劣る。また、楽器の材料として銀や銀合金を用いる場合、その表面に形成された塗膜は、音の響きを悪くする緩衝材として働くので、楽器の音質に悪影響を与えてしまう。さらに、クリア塗装は、有機溶剤を用いるので、環境負荷の点からも好ましくない。
本願発明者は、特許文献1に、内燃機関用排気管が高温の排気ガスによって変色することを防止するための技術を提案している。この技術では、ステンレス鋼やチタン、チタン合金などから形成された金属管の表面に、蒸着法を用いてセラミックス膜が形成される。
特開2006−52727号公報
本願発明者は、上述したような銀や銀合金の変色を防止するために、特許文献1のセラミックスコーティング技術を銀製品に転用することを検討した。銀製品の表面に緻密なセラミックス膜を形成することにより、表面における銀の硫化反応を防ぎ、変色を防止することができると期待されたからである。
しかしながら、本願発明者が実際に種々の試作を行ったところ、銀および銀合金の表面に対してはセラミックス膜の密着性が低いことがわかった。そのため、銀製品の表面にそのままセラミックスコーティングを施しても、セラミックス膜の剥離が生じてしまうことがあり、実用には耐えない。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、実用に耐え得るセラミックスコーティングが施され、耐硫化変色性に優れた銀製品を提供することにある。
本発明による銀製品は、少なくとも表面に銀層または銀合金層を有する基材と、前記銀層または銀合金層を覆う窒化酸化シリコン層と、前記銀層または銀合金層と前記窒化酸化シリコン層との間に設けられたシリコン層と、を備える。
ある好適な実施形態において、前記シリコン層は、非晶質である。
ある好適な実施形態において、前記シリコン層は、5nm以上50nm以下の厚さを有する。
ある好適な実施形態において、前記窒化酸化シリコン層は、5nm以上200nm以下の厚さを有する。
ある好適な実施形態において、前記窒化酸化シリコン層は、Si3xy(0.2≦x≦1.0、3.0≦y≦4.0)と表される窒化酸化シリコンから形成されている。
本発明による楽器は、上記の構成を有する銀製品を含む。
本発明による食器は、上記の構成を有する銀製品を含む。
本発明による装身具は、上記の構成を有する銀製品を含む。
以下、本発明の作用を説明する。
本発明による銀製品は、基材の表面に位置する銀層(または銀合金層)を覆う窒化酸化シリコン層と、銀層(または銀合金層)と窒化酸化シリコン層との間に設けられたシリコン層とを備える。銀層(または銀合金層)が緻密なセラミックス膜である窒化酸化シリコン層で覆われていることにより、銀の硫化反応を防ぐことができ、基材の変色(黒変)を防止することができる。また、窒化酸化シリコン層は高い硬度を有するので、耐摩耗性、耐傷付き性が向上する。なお、銀は化学的に不活性な金属であるので、窒化酸化シリコン層自体の銀層(または銀合金層)に対する密着性は低い。しかしながら、窒化酸化シリコン層と銀層(または銀合金層)との間に、銀よりも活性が高く、且つ、窒化酸化シリコン層との親和性が高いシリコン層を介在させることにより、密着性を改善することができる。このように、シリコン層と窒化酸化シリコン層の複層構造を採用することにより、実用に耐え得るセラミックスコーティングが施され、耐硫化変色性に優れた銀製品を得ることができる。
シリコン層は、非晶質(アモルファス)であることが好ましい。シリコン層が非晶質であると(つまりアモルファスシリコンから形成されていると)、シリコン層が結晶質である(つまり結晶シリコンから形成されている)場合に比べて密着性を改善する効果が高い。
シリコン層は、5nm以上50nm以下の厚さを有することが好ましい。厚さが5nm未満であると、シリコン層が成膜されていない部分が存在することがあり、その場合、銀層(または銀合金層)が窒化酸化シリコン層に直に接する領域が生じてしまう。また、厚さが50nmを超えると、シリコン層の内部応力が大きくなってしまう。そのため、シリコン層にクラックが入りやすくなったり、シリコン層が衝撃に弱い膜となったりする。
窒化酸化シリコン層は、5nm以上200nm以下の厚さを有することが好ましい。厚さが5nm未満であると、窒化酸化シリコン層が成膜されていない部分が存在することがあり、その場合、ピンホール状に変色が生じる可能性がある。また、厚さが200nmを超えると、窒化酸化シリコン層の内部応力が大きくなってしまう。そのため、窒化酸化シリコン層にクラックが入りやすくなったり、窒化酸化シリコン層が衝撃に弱い膜となったりする。さらに、成膜時間が非常に長くなるので、生産性が低下する。
耐硫化変色性および耐食性をいっそう向上させる観点からは、窒化酸化シリコン層は、化学量論的組成の窒化シリコン(Si34)よりもわずかに多く酸素を含むことが好ましい。具体的には、窒化酸化シリコン層は、Si3xy(0.2≦x≦1.0、3.0≦y≦4.0)と表される窒化酸化シリコンから形成されていることが好ましい。
本発明による銀製品は、耐硫化変色性に優れているので、楽器に好適に用いられる。本発明による銀製品を含む楽器は、硫化反応による表面の変色(黒変)が防止されるので、美しい銀白色を保つことができる。また、傷が付きにくい。さらに、窒化酸化シリコン層は、クリア塗装によって形成される塗膜に比べ、非常に硬く、また、厚さも小さくできる。そのため、本発明による銀製品の窒化酸化シリコン層は、楽器の音質に悪影響を与えることがない。つまり、窒化酸化シリコン膜は、楽器の音質をほとんど変えないか、あるいは、むしろより澄んだ(クリアな)音を出すことを可能にする。そのため、楽器本来の音を奏でるという機能の点からも、従来にない付加価値を付与することができる。
また、本発明による銀製品は、食器にも好適に用いられる。本発明による銀製品を含む食器は、硫化反応による表面の変色(黒変)が防止されるので、美しい銀白色を保つことができる。また、傷が付きにくい。本発明による銀製品を含む食器は、硫黄分を含む食材や酸性の強い食材に接触しても変色や腐食が生じないので、盛り付けられた料理の美しさを損ねることがなく、また、食品や料理を長時間保持しておくための容器としても好適に用いられる。
あるいは、本発明による銀製品は、装身具にも好適に用いられる。本発明による銀製品を含む装身具は、硫化反応による表面の変色(黒変)が防止されるので、美しい銀白色を保つことができる。また、傷が付きにくい。さらに、本発明による銀製品を含む装身具は、金属アレルギーを起こしにくい。
本発明によると、実用に耐え得るセラミックスコーティングが施され、耐硫化変色性に優れた銀製品を提供することができる。
本発明の好適な実施形態における銀製品100を模式的に示す断面図である。 本発明の好適な実施形態における他の銀製品100Aを模式的に示す断面図である。 スパッタリング法を用いてシリコン層および窒化酸化シリコン層を形成する場合の成膜時間(分)と膜厚(nm)との関係の例を示すグラフである。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1に、本実施形態における銀製品100の断面構造を示す。銀製品100は、図1に示すように、基材10と、窒化酸化シリコン層20と、シリコン層30とを備える。
基材(銀製品本体)10は、その表面に銀層10aを有する。基材10は、さらに、銀層10aよりも内部に位置する内部層10bを有する。基材10の大きさや形状に特に制限はない。
内部層10bは、銀とは異なる材料から形成されている。内部層10bの材料としては、種々の金属や合金が用いられる。銀製品100が楽器に用いられる場合、内部層10bは、例えば、白銅や洋白などから形成されている。白銅は、銅を主成分とし、ニッケルを10%〜30%程度含む合金である。洋白は、銅を50%〜70%、ニッケルを5%〜30%、亜鉛を10%〜30%含む合金である。
銀層10aは、典型的にはめっきにより形成されている。銀層10aがめっきにより形成される場合、銀層10aは、光沢剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
窒化酸化シリコン層20は、銀層10aを覆っている。つまり、窒化酸化シリコン層20は、銀層10aよりも外側に設けられている。また、窒化酸化シリコン層20は、シリコン層30よりも外側に設けられており、銀製品100の最表面に位置している。
シリコン層30は、銀層10aと窒化酸化シリコン層20との間に設けられている。本実施形態におけるシリコン層30は、非晶質である。つまり、シリコン層30は、アモルファスシリコンから形成されている。また、本実施形態では、シリコン層30上に直接窒化酸化シリコン層20が形成されている。
窒化酸化シリコン層20およびシリコン層30は、後述するようにスパッタリング法やイオンプレーティング法などの蒸着法により好適に形成される。勿論、窒化酸化シリコン層20およびシリコン層30の形成方法は蒸着法に限定されるものではない。
上述したように、本実施形態における銀製品100は、基材10の表面に位置する銀層10aを覆う窒化酸化シリコン層20と、銀層10aと窒化酸化シリコン層20との間に設けられたシリコン層30とを備える。銀層10aが緻密なセラミックス膜である窒化酸化シリコン層20で覆われていることにより、銀の硫化反応を防ぐことができ、基材10の変色(黒変)を防止することができる。また、窒化酸化シリコン層20は高い硬度(典型的にはビッカース硬さ(HV)1200以上)を有するので、耐摩耗性、耐傷付き性が向上する。
なお、銀は化学的に不活性な金属であるので、窒化酸化シリコン層20自体の銀層10aに対する密着性は低い。しかしながら、本実施形態における銀製品100では、窒化酸化シリコン層20と銀層10aとの間に、シリコン層30が介在しており、これにより、窒化酸化シリコン層20の密着性が改善される。シリコン層30により密着性が改善される理由は、シリコン層30は、銀よりも活性が高く、且つ、窒化酸化シリコン層20との親和性が高いためであると考えられる。このように、シリコン層30と窒化酸化シリコン層20の複層構造を採用する(窒化酸化シリコン層20と銀層10aとの間にシリコン層30を介在させる)ことにより、実用に耐え得るセラミックスコーティングが施され、耐硫化変色性に優れた銀製品100が得られる。
また、本実施形態における銀製品100では、シリコン層30および窒化酸化シリコン層20の厚さと屈折率とを調整することにより、干渉を利用して金、ピンク、青などの様々な色を発現させることができる。そのため、これまで一般的ではなかった色の銀製品100を得ることもでき、銀製品100に新たな付加価値を付与することができる。さらに、無色を実現することもでき、その場合、基材10表面の色、つまり、銀層10aの色がそのまま銀製品100の色となる。従来、耐硫化変色性に優れた組成の銀合金が提案されてはいたが、そのような銀合金は、添加元素の影響で銀本来の色調が損なわれたり、高価な添加元素を多量に要したりする。これに対し、本発明によれば、銀本来の色調を損なうことなく、優れた耐硫化変色性を実現することができる。
シリコン層30は、本実施形態のように、非晶質(アモルファス)であることが好ましい。シリコン層30が非晶質であると(つまりアモルファスシリコンから形成されていると)、シリコン層30が結晶質である(つまり結晶シリコンから形成されている)場合に比べて密着性を改善する効果が高い。非晶質のシリコン層30は、未結合手(ダングリングボンド)を有し、ダングリングボンド上の電子は不安定であるので、化学的に活性となる。そのため、銀層10aの表面に非晶質のシリコン層30が成膜されると、銀と結合することで安定化する。
なお、シリコン層30は、成膜装置内に存在する残留ガスの成分(具体的には酸素および窒素)を含むことがある。ただし、酸素および窒素の含有量が多いと、膜質が不安定になるので、シリコン層30の酸素含有量および窒素含有量の合計は、5wt%以下であることが好ましい。
また、シリコン層30は、5nm以上50nm以下の厚さを有することが好ましい。厚さが5nm未満であると、シリコン層30が成膜されていない部分が存在することがあり、その場合、銀層10aが窒化酸化シリコン層20に直に接する領域が生じてしまう。また、厚さが50nmを超えると、シリコン層30の内部応力が大きくなってしまう。そのため、シリコン層30にクラックが入りやすくなったり、シリコン層30が衝撃に弱い膜となったりする。
窒化酸化シリコン層20は、5nm以上200nm以下の厚さを有することが好ましい。厚さが5nm未満であると、窒化酸化シリコン層20が成膜されていない部分が存在することがあり、その場合、ピンホール状に変色が生じる可能性がある。また、厚さが200nmを超えると、窒化酸化シリコン層20の内部応力が大きくなってしまう。そのため、窒化酸化シリコン層20にクラックが入りやすくなったり、窒化酸化シリコン層20が衝撃に弱い膜となったりする。さらに、成膜時間が非常に長くなるので、生産性が低下する。
窒化酸化シリコン層20は、耐硫化変色性および耐食性をいっそう向上させる観点からは、化学量論的組成の窒化シリコン(Si34)よりもわずかに多く酸素を含むことが好ましい。具体的には、窒化酸化シリコン層20は、Si3xy(0.2≦x≦1.0、3.0≦y≦4.0)と表される窒化酸化シリコンから形成されていることが好ましい。
なお、本実施形態では、銀層10aを有する基材10を例示したが、基材10は、銀層10aの代わりに、銀合金から形成された銀合金層を有していてもよい。その場合でも、窒化酸化シリコン層20と銀合金層との間にシリコン層30が介在していることにより、窒化酸化シリコン層20の密着性が改善される。銀合金の組成に特に限定はなく、銀合金層の材料としては、公知の種々の組成の銀合金を用いることができる。十分な硬さを実現する観点からは、銀合金層の銀含有量は92.5wt%以下であることが好ましい。
また、本実施形態では、銀層10aと内部層10bとを有する基材10を例示したが、基材10は、その内部まで銀から形成されていてもよい。図2に、そのような基材10を備える銀製品100Aを示す。銀製品100Aの基材10は、銀層10aのみを有する。つまり、基材10は、表面だけでなく、その全体が銀層10aから構成されている。このような銀製品100Aにおいても、窒化酸化シリコン層20と銀層10aとの間に設けられたシリコン層30により、密着性改善の効果が得られる。なお、銀製品100Aの基材10も、銀層10aに代えて銀合金層を有していてもよい。
このように、基材10は、少なくとも表面に銀層10aまたは銀合金層を有していればよい。本願明細書における「銀製品」は、基材10がその表面にのみめっきにより形成された銀層10a(あるいは銀合金層)を有する「銀めっき製品」であってもよいし、基材10全体が銀層10a(あるいは銀合金層)から構成された「銀無垢製品」であってもよい。
次に、本実施形態における銀製品100および100Aの製造方法を説明する。
まず、少なくとも表面に銀層10a(あるいは銀合金層)を有する基材10を用意する。基材10は、図1に示すように銀層10aと内部層10bとを有するものであってもよいし、図2に示すように銀層10aのみを有するものであってもよい。図1に示す基材10の銀層10aは、例えばめっきにより好適に形成される。なお、貴金属表面へのめっきやコーティングを行う際には、専用の前処理剤を用いることが一般的である。しかし、本実施形態における方法では、基材10の表面に対しては、アルカリ脱脂を行う程度で十分である。
次に、シリコン層30を、基材10の銀層10a上に形成する。既に述べた理由から、シリコン層30の厚さは、5nm以上50nm以下であることが好ましい。シリコン層30の形成方法としては、蒸着法が好適に用いられる。蒸着法は、化学的蒸着(CVD)法と物理的蒸着(PVD)法とに大別されるが、いずれを用いてもよい。物理的蒸着法の一種であるスパッタリング法およびイオンプレーティング法により形成される膜は緻密度が高いので、シリコン層30は、スパッタリング法またはイオンプレーティング法により形成されることが好ましい。
スパッタリング法によりシリコン層30を形成する場合、成膜装置として、DCスパッタリング装置、RFスパッタリング装置、マグネトロンスパッタリング装置、イオンビームスパッタリング装置などの種々のスパッタリング装置を用いることができる。また、スパッタリング法を用いる場合、基材10の表面にプラズマ粒子を衝突させ、基材10の表面をエッチングすることができる(「逆スパッタ」あるいは「イオンボンバード」と呼ばれる)。これを利用して、基材10の表面に形成されている自然酸化膜や付着している有機物を除去し、基材10表面を清浄化することができる。
続いて、窒化酸化シリコン層20をシリコン層30上に形成する。既に述べた理由から、窒化酸化シリコン層20の厚さは、5nm以上200nm以下であることが好ましい。窒化酸化シリコン層20の形成方法としては、シリコン層30の形成方法と同様、蒸着法が好適に用いられる。また、窒化酸化シリコン層20は、シリコン層30と同じ理由により、スパッタリング法またはイオンプレーティング法により形成されることが好ましい。
スパッタリング法を用いる場合、シリコン層30と窒化酸化シリコン層20とを、同一のターゲット(シリコンターゲット)を用いて形成することができる。具体的には、成膜装置のチャンバ内に基材10を配置した後、チャンバ内を高真空状態(具体的には1×10-3Pa以下)にし、この状態でチャンバ内にアルゴンガスを導入しながらスパッタリングを行うことによってまずシリコン層30を形成する。その後、さらに酸素ガスおよび窒素ガスも導入しながらスパッタリングを行うことによって窒化酸化シリコン層20を形成する。このようにして、シリコン層30および窒化酸化シリコン層20を形成することができる。
なお、シリコン層30を形成しながら(成膜しながら)徐々に酸素ガスや窒素ガスを導入していくと、シリコン層30と所望の窒化酸化シリコン層20との間に、厚さ方向に沿って酸素含有率および窒素含有率が徐々に変化する窒化酸化シリコンの組成傾斜膜が中間層として形成されてしまう。この場合、酸素含有率と窒素含有率との比率によっては膜自体が不安定な状態となるので、組成傾斜膜内で剥離したり、ガスバリア性を損ねたりすることがある。そのため、シリコン層30を形成しながら連続的に酸素ガスや窒素ガスを導入するのではなく、シリコン層30を形成した後、いったんスパッタリングを完全に止めてからあらためてガスを導入して再度スパッタリングを開始することが好ましい。このように、シリコン層30と窒化酸化シリコン層20との間には、組成傾斜膜が存在しないことが好ましい。
また、シリコン層30を形成する前に、基材10の表面に逆スパッタを行ってもよい。なお、イオンプレーティング法を用いる場合にも、シリコン層30と窒化酸化シリコン層20とを連続して形成することができる。
図3に、スパッタリング法を用いる場合の成膜時間(分)と膜厚(nm)との関係の例を示す。図3から、例えば、厚さの合計が40nmとなるようにシリコン層30および窒化酸化シリコン層20を形成するのに要する時間は約5分であることがわかる。
このようにして、基材10上にシリコン層30および窒化酸化シリコン層20が設けられた銀製品100(あるいは100A)を製造することができる。
ここで、本実施形態における銀製品100を実際に試作し、窒化酸化シリコン膜20の密着性や耐摩耗性等を評価した結果を説明する。
銀製品100の実施例1〜5を以下のようにして作製した。
まず、純銀から形成された基材10を用意した。基材10は、長さ10cm、幅5cmの板状である。基材10の表面には、アルカリ脱脂処理を施した。
次に、基材10をスパッタリング装置(具体的にはアルバック社製反応性スパッタリング装置SPV1600)のチャンバ内に配置し、所定の真空度に到達するまで排気を行った。その後、チャンバ内にアルゴンを導入して逆スパッタを行い、基材10表面の自然酸化膜や有機物を除去した。
続いて、純度99.99%のシリコンをターゲットとし、チャンバ内へのアルゴンの導入を続けながら、2kWのパワーを投入してスパッタリングを行って基材10の表面に厚さ10nmのシリコン層30を形成した。
その後、いったんスパッタリングを停止した後にチャンバ内へのアルゴン、酸素および窒素の導入を開始し、再度スパッタリングを行ってシリコン層30上に厚さ10nmの窒化酸化シリコン層20を形成した。
このようにして、銀製品100の実施例1が得られた。また、実施例1と同様にして、厚さ10nmのシリコン層30および厚さ20nmの窒化酸化シリコン層20を備える実施例2と、厚さ10nmのシリコン層30および厚さ30nmの窒化酸化シリコン層20を備える実施例3と、厚さ5nmのシリコン層30および厚さ10nmの窒化酸化シリコン層20を備える実施例4と、厚さ5nmのシリコン層30および厚さ20nmの窒化酸化シリコン層20を備える実施例5を作製した。さらに、シリコン層30を備えていない点以外は実施例1、2および3と同じ構造を有する比較例1、2および3(つまり基材上に窒化酸化シリコン層が直接形成された銀製品)を作製した。
上述の実施例1〜5および比較例1〜3のそれぞれについて、窒化酸化シリコン層の密着性および耐摩耗性を評価した。密着性の評価は、銀製品の表面に1mm間隔の碁盤目状の切り込みを入れ、セロファンテープを表面に貼り付けてから剥がし、窒化酸化シリコン層の剥離が生じたか否かを観察することにより行った。耐摩耗性の評価は、銀製品の表面を、研磨剤を付けた布で一定荷重(具体的には1kg)を印加しながら20000回(20000往復)擦る往復動摩擦試験により行った。また、実施例1〜5および比較例1〜3のそれぞれについて、耐加熱変色性および耐腐食性も評価した。耐加熱変色性の評価は、銀製品を500℃の大気炉中で24時間加熱して色の変化を観察する加熱変色試験により行った。耐腐食性の評価は、銀製品の表面に金属エッチング液(酸性およびアルカリ性の両方)を滴下する腐食試験により行った。各評価の結果を表1に示す。
Figure 2013141769
表1からわかるように、密着性に関し、実施例1〜5では、窒化酸化シリコン層の剥離が生じなかった。これに対し、比較例1〜3では、窒化酸化シリコン層の剥離が生じた。
また、耐摩耗性に関し、比較例1〜3では、摩擦試験中に窒化酸化シリコン層の部分的な剥離が生じ、基材が露出した部分で変色が生じた。また、剥離が生じないまでも窒化酸化シリコン層が浮き出す部分が存在し、その部分では、摩擦熱による硫化や酸化が促進され、やはり変色が生じた。これに対し、実施例1〜5ではそのような変色は生じなかった。
さらに、耐加熱変色性および耐腐食性に関しても、比較例1〜3では、窒化酸化シリコン層の密着が十分でない部分で変色や腐食が生じた。これに対し、実施例1〜5では、そのような変色および腐食が生じなかった。
これらの評価結果からもわかるように、本実施形態における銀製品100の実施例1〜5は、窒化酸化シリコン層の密着性、耐摩耗性、耐加熱変色性および耐腐食性のいずれにおいても優れていた。
上述したように、本発明によれば、実用に耐え得るセラミックスコーティングが施され、耐硫化変色性に優れた銀製品が得られる。本発明による銀製品は、耐硫化変色性に優れているので、楽器に好適に用いられる。例えば、フルートやホルンの管体として、本発明による銀製品を用いることができる。あるいは、ピッコロやオーボエのような木管楽器の部品として本発明による銀製品を用いることもできるし、トランペットやトロンボーンのような金管楽器のマウスピースとして本発明による銀製品を用いることもできる。
本発明による銀製品を含む楽器は、硫化反応による表面の変色(黒変)が防止されるので、美しい銀白色を保つことができる。また、傷が付きにくい。さらに、窒化酸化シリコン層は、クリア塗装によって形成される塗膜に比べ、非常に硬く、また、厚さも小さくできる。そのため、本発明による銀製品の窒化酸化シリコン層は、楽器の音質に悪影響を与えることがない。つまり、窒化酸化シリコン膜は、楽器の音質をほとんど変えないか、あるいは、むしろより澄んだ(クリアな)音を出すことを可能にする。そのため、楽器本来の音を奏でるという機能の点からも、従来にない付加価値を付与することができる。
ここで、実際に管楽器の部品として本発明による銀製品を用い、プロの音楽家による官能評価を行った結果を説明する。官能評価に際しては、基材の表面に、スパッタリングによってシリコン層および窒化酸化シリコン層を形成して実施例6〜8を作製した。シリコン層の厚さは、実施例6〜8のいずれについても5nmである。また、窒化酸化シリコン層の厚さは、実施例6については20nm、実施例7については50nm、実施例8については150nmである。また、基材の表面に、PVD法によって厚さ1000nmの窒化チタン層、厚さ1000nmの炭化チタン層、厚さ1000nmの窒化アルミニウム層を形成してそれぞれ比較例4、5および6とした。さらに、基材の表面にCVD法によって厚さ500nmの酸化シリコン層を形成して比較例7とした。官能評価の結果を表2に示す。
Figure 2013141769
表2からわかるように、比較例4〜7では、音質に変化があり、管楽器の出す音が硬い音あるいはやや硬い音になった。これに対し、実施例6〜8では、音質に変化がなく、管楽器の出す音は乾いた音のままであった。
また、本発明による銀製品は、スプーン、フォーク、ナイフ、皿などの食器にも好適に用いられる。本発明による銀製品を含む食器(典型的には食器全体が銀製品である)は、硫化反応による表面の変色(黒変)が防止されるので、美しい銀白色を保つことができる。また、傷が付きにくい。本発明による銀製品を含む食器は、硫黄分を含む食材や酸性の強い食材に接触しても変色や腐食が生じないので、盛り付けられた料理の美しさを損ねることがなく、また、食品や料理を長時間保持しておくための容器としても好適に用いられる。
あるいは、本発明による銀製品は、指輪やネックレス、ペンダント、イヤリングなどの装身具にも好適に用いられる。本発明による銀製品を含む装身具は、硫化反応による表面の変色(黒変)が防止されるので、美しい銀白色を保つことができる。また、傷が付きにくい。さらに、本発明による銀製品を含む装身具は、金属アレルギーを起こしにくい。
また、本発明による銀製品は、歯科治療用の銀歯としても用いることができる。銀歯の材料の銀合金としては、例えば、JIS T 6108-2005で規定される第1種および第2種の歯科鋳造用銀合金が用いられる。第1種の歯科鋳造用銀合金は、60wt%以上の銀および5wt%未満のインジウムを含み、白金族元素を含まない(金も含まない)。第2種の歯科鋳造用銀合金は、60wt%以上の銀および5wt%以上のインジウムを含み、さらに10wt%以下の白金属元素を含む(金は含まない)。銀歯の材料の銀合金としては、あるいは、JIS T 6106-1991で規定される歯科鋳造用金銀パラジウム合金が用いられる。歯科鋳造用金銀パラジウム合金は、40wt%以上の銀、20wt%以上のパラジウム、12wt%以上の金および10〜18wt%以上の銅を含む。本発明による銀製品である銀歯は、口腔内で長期間使用されても表面の変色(黒変)が生じにくいので、耐久性に優れる。
本発明は、銀製品(銀めっき製品および銀無垢製品の両方を含む)に広く用いられる。本発明による銀製品は、耐硫化変色性に優れるので、楽器や食器、装身具などの様々な品物に好適に用いられる。
10 基材
10a 銀層
10b 内部層
20 窒化酸化シリコン層
30 シリコン層
100、100A 銀製品

Claims (8)

  1. 少なくとも表面に銀層または銀合金層を有する基材と、
    前記銀層または銀合金層を覆う窒化酸化シリコン層と、
    前記銀層または銀合金層と前記窒化酸化シリコン層との間に設けられたシリコン層と、を備えた銀製品。
  2. 前記シリコン層は、非晶質である請求項1に記載の銀製品。
  3. 前記シリコン層は、5nm以上50nm以下の厚さを有する請求項1または2に記載の銀製品。
  4. 前記窒化酸化シリコン層は、5nm以上200nm以下の厚さを有する請求項1から3のいずれかに記載の銀製品。
  5. 前記窒化酸化シリコン層は、Si3xy(0.2≦x≦1.0、3.0≦y≦4.0)と表される窒化酸化シリコンから形成されている請求項1から4のいずれかに記載の銀製品。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の銀製品を含む楽器。
  7. 請求項1から5のいずれかに記載の銀製品を含む食器。
  8. 請求項1から5のいずれかに記載の銀製品を含む装身具。
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