JP2013136802A - 焼入れ方法および焼入れ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】焼入れ深さを確保しつつエネルギービームの出力を抑制する。
【解決手段】回転する軸部材は、レーザ光(エネルギービーム)の照射によって加熱された後に、レーザ光の照射停止に伴って急冷される。急冷直前における軸部材は、軸部材の外周部の周方向の各部位のうち、最も高温となる部位の温度は変態点Ac3を上回り、かつ最も低温となる部位の温度は変態点Ac3を下回るとともに変態点Tmsを上回る加熱状態となる。このように、急冷直前において最も低温となる部位の温度が変態点Ac3を下回ることを許容することにより、軸部材の回転速度を引き下げることができるため、深く焼入れを行うことが可能となる。これにより、焼入れ深さを確保しつつエネルギービームの出力を抑制することができるため、焼入れコストを抑制することが可能となる。
【選択図】図3

Description

本発明は、軸部材に焼入れを行う焼入れ方法および焼入れ装置に関する。
一般的に、クランクシャフト、カムシャフト、回転軸等の軸部材には、疲労強度や耐摩耗性を向上させる観点から表面に焼入れが施される。この焼入れ方法として、焼入れ箇所にエネルギービームとしてのレーザ光を照射するレーザ焼入れが開発されている(例えば、特許文献1参照)。照射されたレーザ光は、ワークの表面近傍に吸収されてワーク表面を急速に加熱する。また、ワーク表面に比べてワーク中心部は低温であることから、ワーク中心部がヒートシンクとして機能しており、ワーク表面の自己冷却によって焼入れが施されている。
特開2004−84931号公報
ところで、特許文献1に記載されるように、軸部材に対して焼入れを実施する際には、ワーク表面を均一に加熱して焼入れのムラを解消するため、レーザ光を照射する際に軸部材を高速回転させている。しかしながら、軸部材を高速回転させながらワーク表面を加熱し、必要な焼入れ深さでワーク表面全体をオーステナイト状態にするためには、レーザ出力を大幅に引き上げることが必要であった。このレーザ出力の引き上げは、設備コストを増大させる主要な要因となるため、必要な焼入れ深さを確保しつつレーザ出力を抑制することが所望されている。
本発明の目的は、焼入れ深さを確保しつつエネルギービームの出力を抑制することにある。
本発明の焼入れ方法は、回転する軸部材にエネルギービームを照射し、前記軸部材の外周部に焼入れを行う焼入れ方法であって、エネルギービームによって加熱される前記外周部の周方向の各部位のうち、最も高温となる部位の温度がオーステナイト化温度を上回り、かつ最も低温となる部位の温度が前記オーステナイト化温度を下回るとともにマルテンサイト変態開始温度を上回る加熱状態から、エネルギービームの照射を停止して前記軸部材を冷却することを特徴とする。
本発明の焼入れ装置は、軸部材を回転させる回転機構と、回転する前記軸部材の外周部にエネルギービームを照射する照射器とを備え、前記軸部材の前記外周部に焼入れを行う焼入れ装置であって、前記照射器の作動状態を制御する制御手段を有し、前記制御手段は、エネルギービームによって加熱される前記外周部の周方向の各部位のうち、最も高温となる部位の温度がオーステナイト化温度を上回り、かつ最も低温となる部位の温度が前記オーステナイト化温度を下回るとともにマルテンサイト変態開始温度を上回る加熱状態から、エネルギービームの照射を停止させて前記軸部材を冷却することを特徴とする。
本発明によれば、エネルギービームによって加熱される外周部の周方向の各部位のうち、最も高温となる部位の温度がオーステナイト化温度を上回り、かつ最も低温となる部位の温度がオーステナイト化温度を下回るとともにマルテンサイト変態開始温度を上回る加熱状態から、エネルギービームの照射を停止して軸部材を冷却している。このように、冷却直前において最も低温となる部位の温度がオーステナイト化温度を下回ることを許容することにより、軸部材の回転速度を引き下げることができるため、深く焼入れを行うことが可能となる。これにより、焼入れ深さを確保しつつエネルギービームの出力を抑制することができるため、焼入れコストを抑制することが可能となる。しかも、冷却直前において最も低温となる部位の温度がマルテンサイト変態開始温度を上回ることから、オーステナイト組織を維持することができ、良好な焼入れ品質を得ることが可能となる。
本発明の一実施の形態である焼入れ装置を示す概略図である。 レーザ光の照射によるクランクピンの加熱状態を示すイメージ図である。 クランクピンの外周部の部位における加熱工程と冷却工程との温度変化を示す線図である。 クランクピンの外周部の部位における加熱工程と冷却工程との温度変化を示す線図である。 レーザ光の照射が停止される時点のクランクピンの加熱状態を示すイメージ図である。 (a)〜(e)は加熱工程終盤におけるクランクピンの加熱状態を示すイメージ図である。 クランクピンを高速回転させた場合の温度変化を示す線図である。 (a)および(b)はクランクピンの深さ方向の加熱状態を示すイメージ図である。 (a)および(b)はクランクピンの外周面の温度分布を示す線図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である焼入れ装置10を示す概略図である。この焼入れ装置10を用いて本発明の一実施の形態である焼入れ方法が実施される。図1に示すように、焼入れ装置10は、軸部材であるクランクシャフト11を回転させる回転機構部(回転機構)12を有している。回転機構部12はベース部材13を備えており、ベース部材13の両端部には一対の支持板14,15が固定されている。一方の支持板14には回転プレート16が回転自在に取り付けられており、他方の支持板15には電動モータ18によって駆動される回転プレート17が回転自在に取り付けられている。これら回転プレート16,17によってクランクシャフト11の両端部が支持されており、電動モータ18によってクランクシャフト11を回転させることが可能となっている。また、回転プレート16,17に対してクランクシャフト11を複数の位置で固定することが可能となっており、クランクシャフト11の焼入れ部位に応じた固定位置の変更が可能となっている。
クランクシャフト11は、軸中心に配置される複数のクランクジャーナル20と、軸中心から偏心する複数のクランクピン21,22と、クランクジャーナル20とクランクピン21,22とを連結する複数のクランクアーム23とを備えている。クランクシャフト11のクランクピン21,22には、図示しないコネクティングロッドの大端部が回転自在に組み付けられるため、クランクピン21,22の疲労強度や耐摩耗性を向上させる観点から、軸部材を構成するクランクピン21,22の外周部には所定の深さで焼入れが施される。また、クランクシャフト11のクランクジャーナル20は、図示しないシリンダブロックのジャーナルボアに回転自在に支持されるため、同様に、クランクジャーナル20の疲労強度や耐摩耗性を向上させる観点から、軸部材を構成するクランクジャーナル20の外周部には所定の深さで焼入れが施される。なお、図示する場合には、クランクシャフト11のクランクピン21に焼入れを行うため、回転プレート16,17の回転中心とクランクピン21の軸中心とが一致するように、クランクシャフト11の両端部は回転プレート16,17の回転中心から外れた位置に固定されている。すなわち、図示する回転機構部12を用いてクランクシャフト11を回転させることにより、クランクピン21を中心に回転させることが可能となっている。
図1に示すように、焼入れ装置10は、クランクシャフト11に向けてエネルギービームであるレーザ光Lを照射するレーザ照射部(照射器)24を備えている。レーザ照射部24は、レーザ光Lを発振するレーザ発振器25と、これに光ファイバー26を介して接続されるレンズユニット27とを有している。レーザ発振器25から発振されたレーザ光Lは、光ファイバー26を介してレンズユニット27に案内され、レンズユニット27からクランクシャフト11の焼入れ部位に連続的に照射される。また、レンズユニット27はスライダ機構28に装着されており、焼入れ部位に合わせて水平方向に移動させることが可能となっている。なお、エネルギービームとしては、COレーザ、YAGレーザ、半導体レーザ等のレーザ光Lに限られることはなく、エネルギービームとして電子ビームを採用しても良い。
なお、図1に示す場合には、レーザ照射部24が、レーザ発振器25、光ファイバー26およびレンズユニット27によって構成されているが、これに限られることはない。例えば、半導体レーザを用いる場合には、レーザ発振器等が一体となるレーザヘッド(ダイレクト半導体レーザ:DDL)を用いてレーザ照射部を構成することが可能である。また、図示する回転機構部12を用いた場合には、クランクピン21を中心にクランクシャフト11を回転させているが、これに限られることはない。例えば、クランクジャーナル20を中心にクランクシャフト11を回転させるとともに、公転するクランクピン21にレンズユニット27を追従させながらレーザ光Lを照射しても良い。この場合には、マシニングセンタ等を用いてレンズユニット27を駆動することにより、クランクピン21にレンズユニット27を追従させることが可能となる。
また、焼入れ装置10の回転機構部12やレーザ照射部24等の作動状態を制御するため、焼入れ装置10には制御ユニット(制御手段)29が設けられている。クランクシャフト11に焼入れを施す際には、制御ユニット29から電動モータ18に対して制御信号が出力され、回転機構部12は予め設定された回転速度でクランクシャフト11を回転させる。そして、制御ユニット29からレーザ発振器25に対して制御信号が出力され、レーザ照射部24は位置決めされたレンズユニット27から、予め設定されたレーザ出力と照射時間でレーザ光Lを照射することになる。なお、制御ユニット29は、制御信号等を演算するCPU、制御プログラム、演算式およびデータ等を格納するROM、一時的にデータを格納するRAM等によって構成されている。
続いて、レーザ光Lの照射によるクランクピン21の加熱について説明し、その後のクランクピン21の自己冷却による焼入れについて説明する。図2はレーザ光Lの照射によるクランクピン21の加熱状態を示すイメージ図である。なお、図2に示すクランクピン21の断面形状は、図1のA−A線に沿って示したクランクピン21の断面形状である。また、図2には徐々に加熱されるクランクピン21が白抜きの矢印の順に示されている。図2に示すように、矢印X1方向に回転するクランクピン21には上方からレーザ光Lが照射されている。図2に薄墨で示すように、クランクピン21の外周部の各部位は、上部に位置したときにレーザ光Lによって加熱され、回転によって再び上部に近づくまでは冷却される。そして、クランクピン21の外周部の各部位においては、複数回に渡ってレーザ光Lの照射を受けることから、クランクピン21の表面から内部に向けて徐々に温度が上昇することになる。このように、回転するクランクピン21の外周部は特定箇所で繰り返し加熱されることから、クランクピン21の外周部はその周方向の部位毎に温度が変化した状態となっている。
ここで、図3はクランクピン21の外周部の部位αにおける加熱工程と冷却工程との温度変化を示す線図である。図4はクランクピン21の外周部の部位βにおける加熱工程と冷却工程との温度変化を示す線図である。なお、図3および図4に示す冷却工程においては連続冷却曲線(CCT曲線)を重ねて図示している。また、図5はレーザ光Lの照射が停止される時点のクランクピン21の加熱状態を示すイメージ図である。さらに、図6(a)〜(e)は加熱工程終盤におけるクランクピン21の加熱状態を示すイメージ図である。なお、図5および図6において、図3に示す温度変化の対象である部位αの一例を白抜きの丸で示し、図4に示す温度変化の対象である部位βを黒塗りの丸で示している。また、図5および図6に網掛けで示す領域は、変態点(オーステナイト化温度)Ac3を上回って加熱される領域であり、図5および図6にハッチングで示す領域は、変態点(マルテンサイト変態開始温度)Tmsを上回って加熱される領域である。さらに、図6(a)に示す状態は図3および図4に符号aで示す加熱状態に対応し、図6(b)に示す状態は図3および図4に符号bで示す加熱状態に対応し、図6(c)に示す状態は図3および図4に符号cで示す加熱状態に対応し、図6(d)に示す状態は図3および図4に符号dで示す加熱状態に対応している。
ここで、図3に示される温度変化の対象である部位αとは、図5に範囲α1で示すように、オーステナイト組織を得るための変態点Ac3を超えて加熱された後に急冷される部位となっている。また、図4に示される温度変化の対象である部位βとは、図5に範囲β1で示すように、レーザ光Lによって変態点Ac3を超えて加熱された後に、再び変態点Ac3を下回る範囲で加熱されてから急冷される部位となっている。すなわち、図4に温度変化が示される部位βとは、レーザ光Lが照射される上部に達する直前で、レーザ光Lの照射が停止されてしまう部位を意味している。
図2に示すように、回転するクランクピン21の外周部は特定箇所で繰り返して加熱されることから、図3に示すように、部位αにおいては、変態点Ac3に達するまで温度を上下させながら加熱される(加熱工程)。その後、レーザ光Lの照射停止に伴いクランクピン21は所定時間内に変態点Tmsを下回るように急冷される(冷却工程)。このように、クランクピン21が加熱されて急冷されることから、変態点Ac3を上回って得られたオーステナイト組織は、変態点Tmsを下回ることでマルテンサイト組織への変態を開始する。このような焼入れにおいては、図6(e)の拡大部分に示すように、表面から深さDa1の範囲のオーステナイト組織が、硬いマルテンサイト組織に変態することになる。すなわち、焼入れによって得られる硬化層の厚み、つまり焼入れ深さはDa1となる。
ここで、図3に符号γで示すように、冷却工程に入る直前において、部位αの温度は低下することになるが、その温度は変態点Tmsを上回る温度となっている。したがって、冷却工程直前においては、クランクピン21の外周部が全周に渡って変態点Tmsを上回る加熱状態、つまり全周に渡ってオーステナイト組織を維持する(マルテンサイト組織に変態しない)状態となっている。すなわち、冷却工程直前におけるクランクピン21の加熱状態とは、クランクピン21の外周部の周方向の各部位のうち、最も高温となる部位の温度は変態点Ac3を上回り、かつ最も低温となる部位の温度は変態点Ac3を下回るとともに変態点Tmsを上回る加熱状態となっている。
このように、冷却工程直前において、最も低温となる部位の温度が変態点Tmsを上回ることから、クランクピン21の周方向の全部位において、マルテンサイト組織を析出させることなく、オーステナイト組織を維持することが可能となる。すなわち、図4に符号dで示される部位βのように、冷却工程直前に変態点Ac3を超えて加熱されない場合、つまり冷却工程直前に改めてオーステナイト組織に変態させる温度まで加熱されない場合であっても、マルテンサイト組織が析出していない状態から焼入れを行うことが可能となる。これにより、全周に渡って良好な焼入れ品質を得ることが可能となる。なお、図6(e)の拡大部分に示すように、部位βにおいても、深さDa2の範囲でオーステナイト組織が維持されることから、深さDa2で良好な硬化層を得ることが可能となる。
また、前述したように、全周に渡って良好な焼入れ品質を得るためには、冷却工程直前において最も低温となる部位の温度が変態点Tmsを上回っていれば良い。つまり、冷却工程直前において最も低温となる部位の温度が変態点Ac3を下回っても良いことから、クランクシャフト11の回転速度を引き下げることが可能となる。このように、クランクシャフト11の回転速度を低下させることは、レーザ光Lによる加熱周期を延ばすことになるため、各部位における1回当たりの加熱時間を延ばすことができ、レーザ出力を維持したまま深く焼入れを行うことが可能となる。すなわち、焼入れ深さを維持したままレーザ出力を抑制することができるため、焼入れコストを引き下げることが可能となる。
続いて、本発明の焼入れ装置(焼入れ方法)によって得られる効果について、クランクピン21を高速回転させた場合を比較例として挙げて説明する。ここで、図7はクランクピン21を高速回転させた場合の温度変化を示す線図である。また、図8(a)および(b)はクランクピン21の深さ方向の加熱状態を示すイメージ図であり、図9(a)および(b)はクランクピン21の外周面の温度分布を示す線図である。なお、図8(a)および図9(a)には高速回転しながら加熱されるクランクピン21の加熱状態や温度分布が示され、図8(b)および図9(b)には低速回転しながら加熱されるクランクピン21の加熱状態や温度分布が示されている。すなわち、図8(a)および図9(a)には図7の加熱工程で得られる加熱状態や温度分布が示され、図8(b)および図9(b)には図3の加熱工程で得られる加熱状態や温度分布が示されている。また、図8(a)および(b)に網掛けで示す領域は、変態点Ac3を上回って加熱される領域であり、図8(a)および(b)にハッチングで示す領域は、変態点Tmsを上回って加熱される領域である。また、図8および図9においては、レーザ光Lが照射される上部を0°とし、回転方向と同じ反時計回りに90°、180°、270°と角度を割り振っている。
図7、図8(a)および図9(a)に示すように、クランクシャフト11を高速回転させた場合には、レーザ光Lによる加熱周期が短くなることから、クランクピン21の外周面が全周に渡ってほぼ均一に加熱される。このように、回転速度を上昇させた場合には、図9(a)に示すように、クランクピン21の外周面の全てが変態点Ac3を上回って加熱されており、レーザ光Lの熱エネルギーが広い領域に分散することから、図8(a)に示すように、表面から浅い領域(Db1)だけが変態点Ac3を上回って加熱されることになる。一方、クランクピン21の回転速度を低下させた場合には、図9(b)に示すように、クランクピン21の外周面の一部が変態点Ac3を上回って加熱されており、レーザ光Lの熱エネルギーが狭い領域に集中することから、図8(b)に示すように、表面から深い領域(Da1)まで変態点Ac3を上回って加熱することが可能となる。すなわち、図8(b)に示すように、回転速度を上昇させた場合(例えば毎分330回転)には、焼入れ深さがDb1と浅くなるのに対し、図8(a)に示すように、回転速度を低下させた場合(例えば毎分30回転)には、焼入れ深さをDa1と深くすることが可能となる。なお、回転速度を低下させることは、図示するクランクシャフト11のように、重量バランスの問題から高速回転が困難な軸部材に対して、本発明を適用する際に特に有効となる。
また、図9(b)に符号Xaで示すように、クランクピン21の外周部の周方向の各部位のうち、最も高温となる部位の温度は変態点Ac3を上回り、図9(b)に符号Xbで示すように、最も低温となる部位の温度は変態点Ac3を下回るとともに変態点Tmsを上回ることになる。このように、クランクピン21を低速回転させた場合には、クランクピン21を全周に渡って均一に加熱することが困難となるが、図8(b)に符号Xbで示すように、最も温度が低下する部位においても深さDa2の範囲で変態点Tmsを上回った状態となっている。すなわち、図5に示した範囲β1における部位のように、冷却工程直前に変態点Ac3を超えて加熱されない部位、つまり冷却工程直前に改めてオーステナイト組織に変態する温度まで加熱されない部位においても、マルテンサイト組織が析出していない状態で焼入れを行うことができるため、全周に渡って良好な焼入れ品質を得ることが可能となる。
これまで説明したように、加熱工程において、クランクピン21の外周部の周方向の各部位のうち、最も高温となる部位の温度は変態点Ac3を上回り、かつ最も低温となる部位の温度は変態点Ac3を下回るとともに変態点Tmsを上回ると、制御ユニット29はレーザ照射部24に対して停止信号を出力し、レーザ光Lの照射を停止してクランクピン21を冷却する。この場合に、制御ユニット29は、実験やシミュレーション等によって予め設定された回転速度、レーザ出力、照射時間に基づいて、回転機構部12やレーザ照射部24を制御しているが、これに限られることはなく、例えば焼入れ部位の温度を実測することにより、回転速度、レーザ出力、照射時間を制御しても良い。なお、前述した加熱工程においては、少なくともクランクピン21の外周部の表面温度のうち、最も高温となる部位の温度が変態点Ac3を上回り、かつ最も低温となる部位の温度が変態点Ac3を下回るとともに変態点Tmsを上回っていれば良い。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前述の説明では、軸部材としてクランクシャフト11を挙げているが、これに限られることはなく、カムシャフトや回転軸等の軸部材であっても良い。また、前述の説明では、円形の断面形状を備えるクランクピン21に対する焼入れについて説明したが、これに限られることはなく、例えば、楕円形の断面形状を備える軸部材に対しても本発明を有効に適用することが可能である。なお、オーステナイト化温度である変態点Ac3やマルテンサイト変態開始温度である変態点Tmsは、軸部材を構成する鉄鋼材料の種類に応じて変化するものである。例えば、鉄鋼材料がS45Cである場合には、変態点Ac3は約780℃であり、変態点Tmsは約350℃である。
10 焼入れ装置
11 クランクシャフト(軸部材)
12 回転機構部(回転機構)
20 クランクジャーナル(軸部材)
21 クランクピン(軸部材)
22 クランクピン(軸部材)
24 レーザ照射部(照射器)
29 制御ユニット(制御手段)
L レーザ光(エネルギービーム)
Ac3 変態点(オーステナイト化温度)
Tms 変態点(マルテンサイト変態開始温度)

Claims (2)

  1. 回転する軸部材にエネルギービームを照射し、前記軸部材の外周部に焼入れを行う焼入れ方法であって、
    エネルギービームによって加熱される前記外周部の周方向の各部位のうち、最も高温となる部位の温度がオーステナイト化温度を上回り、かつ最も低温となる部位の温度が前記オーステナイト化温度を下回るとともにマルテンサイト変態開始温度を上回る加熱状態から、エネルギービームの照射を停止して前記軸部材を冷却することを特徴とする焼入れ方法。
  2. 軸部材を回転させる回転機構と、回転する前記軸部材の外周部にエネルギービームを照射する照射器とを備え、前記軸部材の前記外周部に焼入れを行う焼入れ装置であって、
    前記照射器の作動状態を制御する制御手段を有し、
    前記制御手段は、エネルギービームによって加熱される前記外周部の周方向の各部位のうち、最も高温となる部位の温度がオーステナイト化温度を上回り、かつ最も低温となる部位の温度が前記オーステナイト化温度を下回るとともにマルテンサイト変態開始温度を上回る加熱状態から、エネルギービームの照射を停止させて前記軸部材を冷却することを特徴とする焼入れ装置。
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