JP2018172721A - 機械部品の製造方法 - Google Patents

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Kohei Mizuta
浩平 水田
大木 力
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力 大木
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Abstract

【課題】ソフトゾーンが形成されておらず、かつ圧縮残留応力が付与された環状の機械部品を提供する。【解決手段】環状の被処理部材を準備する工程(S10)と、加熱源としてレーザ光を用いて被処理部材を焼入する工程とを備える。焼入する工程は、被処理部材の表面にレーザ光を照射させながら、被処理部材とレーザ光とを被処理部材の周方向に相対的に移動させて、表面の温度をA1変態点以上の温度に加熱しかつ保持する工程(S20)と、被処理部材の表面へのレーザ光の照射を停止し、被処理部材を冷却する工程(S30)とを含む。【選択図】図2

Description

この発明は、機械部品の製造方法に関する。
従来、軸受を構成する軌道輪などの機械部品が知られている。機械部品において、たとえば高はめあい応力で使用されるリング状の機械部品は、割れ疲労強度が低く問題となる。
このような割れ疲労強度の問題を解決する手段として、たとえば機械部品の表面近傍のみ浸炭処理し、機械部品に圧縮残留応力を付与することにより、はめあい応力を相殺させる方法が知られている。しかし、上記方法は熱処理工程での生産性が低い。また、機械部品に圧縮残留応力を付与する方法として、高周波加熱焼入れを実施することも知られている。しかし、高周波加熱焼入れにおいて処理対象領域をキュリー点以上に加熱した際に、当該領域の深さ方向における内部まで加熱されてしまうため、薄肉部に対して圧縮残留応力を付与することは困難である。
機械部品に圧縮残留応力を付与する方法として、上述した方法以外にはレーザビームとワークとを相対回転させつつレーザビームをワークに向けて照射するレーザ焼入れ方法も知られている(たとえば、特開2005−213553号公報参照)。
特開2005−213553号公報
しかしながら、ワークに対し周方向にレーザビームを掃引照射して焼入れを行うと、得られた機械部品には周方向においてソフトゾーンが形成される。そのため、レーザ焼入れ方法は、軸受の軌道面などのソフトゾーンが許容されない機械部品の製造方法には、採用することが困難である。
上述した特許文献にも、機械部品にソフトゾーンが形成されないようにするための機械部品の製造方法の具体的な構成は開示されていない。また、上述した特許文献には、圧縮残留応力を付与する具体的な条件や、圧縮残留応力が付与された薄肉の軌道輪といった機械部品の具体的な構成は開示されていない。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、ソフトゾーンが形成されておらず、かつ圧縮残留応力が付与された環状の機械部品を提供することである。
本発明に従って機械部品の製造方法は、環状の被処理部材を準備する工程と、加熱源としてレーザ光を用いて被処理部材を焼入する工程とを備える。上記焼入する工程は、被処理部材の表面にレーザ光を照射させながら、被処理部材とレーザ光とを被処理部材の周方向に相対的に移動させて、表面の温度をA1変態点以上の温度に加熱しかつ保持する工程と、被処理部材の表面へのレーザ光の照射を停止し、被処理部材を冷却する工程とを含む。
このようにして得られた機械部品は、上記焼入する工程において表面の温度がA1変態点以上の温度に加熱しかつ保持されているため、周方向にソフトゾーンが形成されていない。また、このようにして得られた機械部品は、上記焼入する工程において加熱源としてレーザ光を用いて表面近傍のみが焼入れされるため、圧縮残留応力が付与されている。その結果、当該機械部品は従来の製法により製造された機械部品と比べて、割れ疲労強度が向上されている。
本開示によれば、ソフトゾーンが形成されておらず、かつ圧縮残留応力が付与された環状の機械部品を提供することができる。
本発明の実施の形態に係る機械部品を示す断面模式図である。 図1に示した機械部品の製造方法を説明するためのフローチャートである。 図3(A)はレーザ照射工程を説明するための平面模式図であり、図3(B)はレーザ照射工程を説明するための断面模式図である。 本発明の実施の形態に係る軸受を示す断面模式図である。 試料の周方向におけるビッカース硬度の分布を示すグラフである。 試料の断面におけるビッカース硬度の分布を示すグラフである。 試料の断面における残留応力の分布を示すグラフである。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態)
<機械部品の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る機械部品を示す断面模式図である。図1に示すように、機械部品1は、環状の形状を有している。機械部品1は、軸方向における一方端12の外径が他方端13の外径よりも短い。言い換えると、機械部品1は、軸方向における一方端12側が他方端13側よりも径方向の内側に位置している。機械部品1の一方端12は、軸受の内輪において小つば部となるべき部分である。機械部品1の他方端13は、内輪において大つば部となるべき部分である。機械部品1の外周面上において一方端12と他方端13との間には溝部が形成されている。溝部は周方向に延在している。溝部の底面は、軸方向に対して交差する方向に延びる表面14である。機械部品1の表面14は、内輪において転走面となるべき部分である。表面14にはレーザ焼入れによる硬化層15が形成されている。
上述した機械部品1の構成を異なる観点から言えば、本開示に従った図1に示す機械部品1は、高炭素クロム軸受鋼からなり、表面14を有する環状の本体部を備える。表面14における、試験荷重を0.3kNとしたビッカース硬度の最大値は650Hv以上である。表面14から、深さ方向において試験荷重を0.3kNとしたビッカース硬度が550Hvとなる位置までの距離である有効硬化層深さは800μm以下である。表面14からの深さが50μ以上500μm以下の領域における圧縮応力の値は200MPa以上である。
上記機械部品1では、表面14における固容炭素濃度が0.15mass%以上0.60mass%以下であり、好ましくは0.40mass%以上0.60mass%以下である。また、上記機械部品1において、本体部は、表面14と反対側に位置する裏面を有する。表面14と裏面との間の距離である厚さの平均値は1mm以上10mm以下である。機械部品1において、本体部は開口部を含む。表面14は、本体部において開口部を囲む環状の表面部分である。
上記機械部品1において、焼入れによる硬化層15は、溝部の底面のみに形成されているが、溝部の側壁にまで形成されていてもよい。また、溝部の側壁において底面との接続部を含む一部のみに硬化層15が形成されていてもよい。
<機械部品の作用効果>
上記のような構成の機械部品1によれば、機械部品1の表面14から所定の深さの領域に圧縮残留応力が付与されているので、機械部品1の割れ疲労強度を向上させることができる。なお、表面14におけるビッカース硬度の最大値の下限を650Hvとしたのは、浸炭焼入れ等の表面処理での有効硬化深さを基準とした。なお、ビッカース硬度測定はJIS規格Z 2244に準拠して行うことができる。
上述した機械部品1において、表面14からの有効硬化層深さの上限を800μmとしたのは、有効硬化層深さを800μm以下とすれば、厚さ1mm程度の薄肉の機械部品に対しても圧縮残留応力を付与できる。有効硬化層深さの下限は、10μmとしてもよい。有効硬化層深さの上限は、700μmとしてもよいし、600μmとしてもよい。有効硬化層深さの下限は、20μmとしてもよいし、50μmとしてもよい。
ここで、有効硬化層深さの測定は、JIS規格G 0559に準拠して行うことができる。有効硬化層深さを求めるための硬さ推移曲線を得るため実施する硬さ試験は、JIS規格Z 2244に準拠して実施ししてもよい。
また、上記機械部品1において、表面14からの深さが50μ以上500μm以下の領域における圧縮応力の値の下限を200MPaとしたのは、軸受のはめあい応力を相殺するおおよその下限値である。圧縮応力の下限は、250μmでもよく、300μmでもよい。
なお、残留応力の測定方法としては、X線回折装置を用い、電界研磨を行うことで、深さ方向の応力分布を測定した。
上記機械部品1において、固溶炭素濃度の下限を0.15mass%としたのは、最高到達硬さが十分に得られないためである。さらに、固溶炭素濃度の下限を0.40mass%とすることで、十分に高い最高到達硬さを得ることができる。また、固溶炭素濃度の上限を0.60mass%としたのは、レンズマルテンサイトの生成が促進され、低強度になる可能性があるためである。固溶炭素濃度の下限は、0.40mass%でもよい。固溶炭素濃度の上限は、0.50mass%でもよい。
なお、表面における固溶炭素濃度の測定方法としては、析出物である炭化物(セメンタイト)の面積率から換算するという方法を用いることができる。
上記機械部品1において、表面14と裏面との間の距離である厚さの平均値の下限を1mmとしたのは、熱伝導によりただちに全体加熱となるため、表面焼入れ困難なためである。また、厚さの平均値の上限を10mmとしたのは、十分な厚さの製品では、他の加熱方法、たとえば高周波誘導加熱などでも適用可能なためである。厚さの平均値の下限は、2mmでもよく、3mmでもよい。厚さの平均値の上限は、9mmでもよく、8mmでもよく、7mmでもよい。
上記機械部品1において、表面14は、本体部において開口部を囲む環状の表面部分であり、当該機械部品1を軸受の軌道輪として好適に用いることができる。
<機械部品の製造方法>
図2は、図1に示した機械部品1の製造方法を説明するためのフローチャートである。図3(A)はレーザ照射工程を説明するための平面模式図であり、図3(B)はレーザ照射工程を説明するための断面模式図である。図2および図3を用いて機械部品1の製造方法を説明する。
機械部品1の製造方法では、まず図2に示すように準備工程(S10)を実施する。具体的には、工程(S10)において、機械部品1の本体部となる成形体を準備する。成形体は、たとえばJIS規格SUJ2からなり、図1に示すような形状の部材である。成形体は、任意の機械加工により作成することができる。
次に、加熱工程であるレーザ光照射工程(S20)を実施する。具体的には、機械部品1となるべき成形体の表面14(図3参照)にレーザ光51を照射させながら成形体とレーザ光51とを相対的に移動させることにより、表面14を加熱した。例えば、成形体を回転ステージ(図示せず)に固定し、図3の矢印に示すように回転軸53を中心として回転させた。回転軸53は、たとえば成形体の開口部中央を通るように配置される。このように成形体を回転させることで、環状の表面14の全周にわたってレーザ光51を照射できる。また、レーザ光51の集光部の面積が表面14の面積より小さい場合には、たとえば回転軸53に沿った方向にレーザ光51の照射位置を走査することで、表面14の全面にわたってレーザ光51を照射できる。このとき、成形体の回転速度、レーザ光51の出力密度(レーザ光51の出力、集光部の面積)、走査速度などを制御することで、成形体の表面14のごく浅い領域のみをA1点以上の温度に昇温できる。
成形体の回転速度は、成形体のサイズに応じて適宜設定され得るが、例えば600rpm以上6000rpm以下である。成形体の回転速度が600rpm未満である場合、表面14の上記周方向における各領域は、加熱部分がすぐに冷えるため、温度斑が生じる。また、焼入れ(加熱と自己冷却と)が繰り返し行われることになり、A1点以上の温度に保持され得ない。その結果、焼入れ後の成形体には、周方向にソフトゾーンが生じてしまう。
一方、成形体の回転速度が6000rpm超えである場合、レーザ光の反射率が高くなるため、加熱が困難になる。
レーザ光51の出力密度は、例えば25W/mm以上100W/mm以下である。該出力密度が25W/mm未満である場合、十分に加熱されない。
表面14の温度は、たとえば測温装置52により測定できる。測温装置52としては、たとえば放射温度計を用いることができる。上記のレーザ光51の照射により表面14の温度を所定の温度まで加熱した後、一定時間(たとえば1秒以上10秒以下)保持する。
本工程(S20)では、成形体に炭素を所定量溶け込ませる。例えば、成形体の表面の固溶炭素濃度が0.15mass%以上0.6mass%以下、好ましくは0.40mass%以上0.6mass%以下とるように溶け込ませる。
次に、冷却工程(S30)を実施する。具体的には、成形体を所定の温度まで加熱して一定時間保持した後、レーザ光の照射を停止して成形体を冷却する。当該冷却は、自己冷却作用により行われる。つまり、本工程(S30)では、例えば成形体に対するレーザ光の照射を停止することのみが行われてもよい。このようにしても、加熱領域が成形体のサイズ(体積)に対して比較的小さい場合には、成形体の表面14にレーザ光が照射されることにより表面14に生じた熱は、レーザ光の照射が停止された後に成形体内部に急速に熱伝達されることにより、急速に冷却される。
また、本工程(S30)における上記冷却は、自然空冷による方法、強制空冷による方法、水冷による方法、および油冷による方法からなる群から選択される少なくとも1つにより実施されてもよい。加熱領域が成形体のサイズ(体積)に対して比較的大きい場合には、自己冷却作用のみによっては十分急速に冷却されないため、上記いずれかの冷却方法により焼入れされるのが好ましい。ここで、自然空冷による方法は、成形体に対するレーザ光の照射が停止された後に成形体が所定の時間放置される点で、自己冷却作用のみによる冷却と異なる。
水冷による方法、および油冷による方法では、水や油などの冷媒曹に成形体を浸漬してもよいし、成形体に冷媒を噴射してもよい。この結果、表面14に焼入れによる硬化層15(図1参照)が形成される。その後、表面の洗浄や仕上げ加工などの後処理を実施することにより、図1に示した機械部品1を得ることができる。
<軸受の構成および作用効果>
図4は、本発明の実施の形態に係る軸受10を示す断面模式図である。図4に示す軸受10は、円錐ころ軸受であって、外輪2と、内輪1と、複数のころ4と、保持器3とを主に備えている。外輪2は、環形状からなり、内周面に転走面24を有している。内輪1は、環形状からなり、外周面に転走面としての表面14を有している。内輪1は、表面14が外輪2の転走面24に対向するように、外輪2の内周側に配置されている。内輪1は、図1に示した機械部品である。また、外輪2の転走面24に対して、図2および図3に示したレーザ焼入れ方法を適用して焼入れ硬化層を形成してもよい。
ころ4は、外輪2の内周面上に配置されている。ころ4はころ転動面44を有する。ころ転動面44においてころ4は内輪1の転走面である表面14および外輪2の転走面24に接触する。複数のころ4は、たとえば合成樹脂からなる保持器3により周方向に所定のピッチで配置されている。これにより、ころ4は、外輪2および内輪1の円環状の軌道上に転動自在に保持されている。また、軸受10は、外輪2の転走面24を含む円錐、内輪1の転走面である表面14を含む円錐、およびころ4が転動した場合の回転軸の軌跡を含む円錐のそれぞれの頂点が軸受10の中心線上の1点で交わるように構成されている。このような構成により、軸受10の外輪2および内輪1は、互いに相対的に回転可能となっている。
外輪2および内輪1は、軸受用材料の一例である鋼材、たとえば高炭素クロム軸受鋼により構成されていてもよい。たとえば、JIS規格SUJ2により外輪2および内輪1を構成してもよい。玉ころ4は、転動体であって、軸受用材料の一例である鋼材により構成されたていてもよいが、他の材料、たとえばセラミックスなどにより構成されていてもよい。
上述した軸受10の特徴的な構成を要約すれば、軸受10は、内輪1と、外輪2と、転動体としてのころ4とを備える。内輪1は転走面としての表面14を有する。外輪2は、内輪1の外周側に位置し、転走面24を有する。ころ4は、内輪1と外輪2との間に配置され、内輪1の転走面である表面14および外輪2の転走面24に接触する。内輪1および外輪2の少なくともいずれか一方が本実施形態に係る機械部品である。内輪1および外輪2の少なくとも一方の転走面は、上記機械部品の表面である。この場合、内輪1または外輪2の割れ疲労強度が向上しているため、疲労強度の向上した軸受10を得ることができる。
本発明の実施の形態に係る機械部品の製造方法は、環状の成形体を準備する工程(S10)と、加熱源としてレーザ光51を用いて成形体を焼入する工程とを備える。上記焼入する工程は、成形体の表面14にレーザ光51を照射させながら、成形体とレーザ光51とを成形体の周方向に相対的に移動させて、表面14の温度をA1変態点以上の温度に加熱しかつ保持する工程(S20)と、成形体の表面14へのレーザ光の照射を停止し、成形体を冷却する工程(S30)とを含む。
このようにすれば、上記焼入する工程において表面14の温度がA1変態点以上の温度に加熱しかつ保持されているため、上記製造方法により得られた軸受10には周方向にソフトゾーンが形成されていない。また、当該軸受10(機械部品)は、上記焼入する工程において加熱源としてレーザ光51を用いて表面近傍のみが焼入れされるため、圧縮残留応力が付与されている。その結果、当該軸受10は従来の製法により製造された軸受と比べて、割れ疲労強度が向上されている。
上記加熱しかつ保持する工程(S20)では、成形体の回転速度が600rpm以上6000rpm以下とされる。これにより、上記焼入する工程において表面14の温度はA1変態点以上の温度に加熱されかつ保持され得る。
上記冷却する工程(S30)では、成形体が自己冷却作用により焼入れされる。このようにしても、ソフトゾーンが形成されておらず、かつ圧縮残留応力が付与された環状の機械部品を得ることができる。つまり、自己冷却作用による冷却速度が上記焼入する工程(S20)における焼入条件として十分である場合には、当該工程(S20)において成形体を冷却するための処理は不要とされ得る。
上記冷却する工程では、被処理部材が自然空冷、強制空冷、水冷、および油冷の群から選択される少なくとも1つの方法により焼入れされてもよい。このようにしても、ソフトゾーンが形成されておらず、かつ圧縮残留応力が付与された環状の機械部品を得ることができる。つまり、自己冷却作用による冷却速度が上記焼入する工程(S20)における焼入条件として不十分である場合には、当該工程(S20)において成形体を冷却するための処理が実施されればよい。
上記記焼入れする工程では、成形体の回転速度が600rpm以上6000rpm以下、レーザ光51の出力密度が25W/mm以上100W/mm以下、A1変態点以上の温度での保持時間が1秒以上10秒以下とされてもよい。
このようにすれば、深さ0.4mm程度の位置までビッカース硬度が700Hv以上となっており、周方向にソフトゾーンが形成されていない機械部品を得ることが出来る(後述する実施例参照)。
(実施例)
<試料>
加工対象の試料として、円錐ころ軸受(NTN社製 30206U)の内輪となるべき寸法の成形体を準備した。成形体の材質はJIS規格SUJ2である。
<レーザ加熱装置>
ドイツ国Laser Line社製のダイレクトダイオードレーザ装置を採用した。ダイレクトダイオードレーザ装置から出射するレーザ光は平均出力4kW、波長が980nm〜1025nmである。
<処理工程>
試料を回転ステージに固定し、回転速度2000rpmで回転させながら、転走面となるべき表面14(図1参照)にレーザ光を照射した。レーザ光の照射条件としては、以下のような条件を用いた。レーザ光のビーム形状は5mm×5mmの正方形とした。レーザ光の強度分布はトップハット型とした。レーザ光の出力密度は、25W/mm以上100W/mm以下とした。試料の表面に対するレーザ光の照射角度は、試料の表面14に対して垂直となる方向とした。
試料の表面温度は放射温度計を用いて測定した。レーザ光の照射領域の中央部の温度を測定し、当該温度が1100℃に到達後1秒均熱保持した。その後、レーザ光の照射を停止し、試料を水冷することで焼入れを行った。
<測定内容>
試料の表面(転走面)における周方向での硬度分布測定:
上記焼入れ後の試料について、周方向での硬度分布測定を行った。具体的には、試験荷重を0.3kNとしたビッカース硬度測定を、転走面の周方向において試料中心からの位相角度45°ごとに測定した。測定位置は、転走面の周方向に垂直な方向である幅方向での中央部とした。測定方法はJIS規格Z 2244に準拠した。
試料の表面(転走面)における深さ方向での硬度分布測定:
上記焼入れ後の試料について、転走面における深さ方向でのビッカース硬度分布を測定した。測定は、JIS規格G 0559に準拠して行った。測定は表面から2mmの深さの領域まで行った。ビッカース硬度測定は、試験荷重を0.3kNとし、JIS規格Z 2244に準拠した。
試料の表面(転走面)における深さ方向での残留応力分布測定:
上記焼入れ後の試料について、転走面における深さ方向での残留応力の分布を測定した。測定方法としては、X線回折装置を用い、電界研磨を行うことで、深さ方向の応力分布を測定した。
<結果>
試料の表面(転走面)における周方向での硬度分布測定:
図5は、試料の周方向におけるビッカース硬度の分布を示すグラフである。図5の横軸は試料中心からの位相角度(単位:°)を示し、縦軸はビッカース硬度(単位:Hv)を示す。図5からわかるように、周方向の全周において、ソフトゾーンは形成されておらず焼入れできていることがわかる。
試料の表面(転走面)における深さ方向での硬度分布測定:
図6は、試料の転走面における深さ方向でのビッカース硬度の分布を示すグラフである。図6の横軸は試料の転走面である表面からの深さ(単位:mm)を示し、縦軸はビッカース硬度(単位:Hv)を示す。図6からわかるように、深さ0.4mm程度の位置までビッカース硬度が700Hv以上となっており、当該領域では十分に焼入れがなされていることがわかる。
試料の表面(転走面)における深さ方向での残留応力分布測定:
図7は、試料の転走面における深さ方向での残留応力の分布を示すグラフである。図7の横軸は試料の転走面である表面からの深さ(単位:mm)を示し、縦軸は残留応力の値(単位:MPa)を示す。図7の縦軸においてゼロ未満のマイナスの残留応力は圧縮残留応力を意味し、ゼロ超えのプラスの残留応力は引張残留応力を意味する。図7からわかるように、深さ1.2mm程度の位置まで300MPa程度の圧縮残留応力が付与されていることがわかる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態および実施例に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
本開示は、比較的薄肉の機械部品に対して有利に適用される。
1 機械部品(内輪)、2 外輪、3 保持器、4 ころ、10 軸受、12 一方端、13 他方端、14,24 表面(転走面)、15 硬化層、44 転動面、51 レーザ光、52 測温装置、53 回転軸。

Claims (5)

  1. 環状の被処理部材を準備する工程と、
    加熱源としてレーザ光を用いて前記被処理部材を焼入する工程とを備え、
    前記焼入する工程は、
    前記被処理部材の表面に前記レーザ光を照射させながら、前記被処理部材と前記レーザ光とを前記被処理部材の周方向に相対的に移動させて、前記表面の温度をA1変態点以上の温度に加熱しかつ保持する工程と、
    前記被処理部材の表面への前記レーザ光の照射を停止し、前記被処理部材を冷却する工程とを含む、機械部品の製造方法。
  2. 前記加熱しかつ保持する工程では、前記被処理部材の回転速度が600rpm以上6000rpm以下とされる、請求項1に記載の機械部品の製造方法。
  3. 前記冷却する工程では、前記被処理部材が自己冷却作用により焼入れされる、請求項1または2に記載の機械部品の製造方法。
  4. 前記冷却する工程では、前記被処理部材が自然空冷、強制空冷、水冷、および油冷の群から選択される少なくとも1つの方法により焼入れされる、請求項3に記載の機械部品の製造方法。
  5. 前記焼入する工程では、前記被処理部材の回転速度が600rpm以上6000rpm以下、前記レーザ光の出力密度が25W/mm以上100W/mm以下、A1変態点以上の温度での保持時間が1秒以上10秒以下とされ、前記焼入する工程後の前記被処理部材の表面の炭素濃度が0.15mass%以上0.60mass%以下とされる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の機械部品の製造方法。
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