JP2013135529A - 車両の制動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 摩擦ブレーキ装置を必要とすることなく、またエネルギーを浪費することなく、電気制動制御のみによって車輪が停止状態となるまで円滑且つ確実に制動力を付与する。
【解決手段】
車輪(ホイールW)の回転によって永久磁石同期電動機に生ずる回生電力を、変換制御手段IVを介して電力蓄積手段BTに蓄積してホイールに対し回生ブレーキを付与する回生制御手段RGBによって、車両の前後一方の車輪(FL及びFR)に対して制動力が付与される。車両の前後他方の車輪(RL及びRR)に対しては、電力を供給して車輪の回転を直接電磁的に抑制する電力供給型制動手段PSBによって、制動力が付与される。例えば、ロータの回転方向のステータに対する励磁と同相にステータが励磁され、車輪に対し励磁ブレーキが付与される。
【選択図】 図1
【解決手段】
車輪(ホイールW)の回転によって永久磁石同期電動機に生ずる回生電力を、変換制御手段IVを介して電力蓄積手段BTに蓄積してホイールに対し回生ブレーキを付与する回生制御手段RGBによって、車両の前後一方の車輪(FL及びFR)に対して制動力が付与される。車両の前後他方の車輪(RL及びRR)に対しては、電力を供給して車輪の回転を直接電磁的に抑制する電力供給型制動手段PSBによって、制動力が付与される。例えば、ロータの回転方向のステータに対する励磁と同相にステータが励磁され、車輪に対し励磁ブレーキが付与される。
【選択図】 図1
Description
本発明は、車両の制動装置に関し、特に、電気制動制御によって車輪の回転を停止させる車両の制動装置に係る。
車両の制動装置としては、液圧制動を行う液圧ブレーキ装置が一般的であるが、近時の電動自動車あるいは所謂ハイブリッド自動車においては電動機による回生制動が利用されている。例えば、下記の特許文献1には回生側と力行側の双方にモータトルクの余裕代を作り出し、モータトルクの制御幅を拡大する制動力制御装置が開示されている。また、特許文献2には、回生制動と液圧制動の協調制御が行われている。一方、下記の特許文献3には、電動モータの回転を直進運動に変換してピストンを推進し、摩擦パッドをディスクロータに押圧して制動力を発生する電動ブレーキ装置が開示されている。このように、駆動用の電動機を備えた車両における制動装置としては、電動機による回生制動(回生ブレーキ)のほかに、液圧ブレーキ装置あるいは上記の電動ブレーキ装置のように機械式ブレーキ手段による摩擦制動が併用されている。
更に、下記の特許文献4には、モータを逆転させるように励磁することで逆相制動を行うことが提案されているが、これは、永久磁石を用いない誘導電動機において一般的な制動手段であり、鉄道車両で採用されている。即ち、鉄道車両(電気車)においては、誘導電動機のみによって停止可能とするため、回生ブレーキに加え電気ブレーキあるいは停止ブレーキを行うことによって純電気ブレーキあるいは全電気ブレーキを行う電気車の制御装置が提案されており、回生制動に加え逆相制動が用いられる。例えば、下記の特許文献5には、速度低下とともに前進ブレーキより後進力行に切り替えて制動力を得る逆相電気ブレーキが開示されている。但、実際の鉄道車両においては依然摩擦制動が併用されており、例えば空気ブレーキ装置も装着されている。
前述の電動自動車あるいはハイブリッド自動車に供する制動装置としては、一般的に、永久磁石を有するロータ及びこのロータを回転駆動するステータを具備し、車両の各車輪にロータを連結する永久磁石同期電動機と、この永久磁石同期電動機に電力を供給してステータを励磁するバッテリ等の電力蓄積手段を備え、永久磁石同期電動機によって車輪の回転を抑制するように構成されており、特に、永久磁石がロータに埋め込まれた埋込永久磁石界磁式同期電動機(IPMと呼ばれる)が用いられている。更に、下記の特許文献6には、電気車が長い下り勾配を走行するときのように、回生エネルギーが多い走行状態において電力貯蔵装置が満充電になっても回生ブレーキ力を継続して使用することができ、機械ブレーキを使用しないでブレーキ制御が可能な電力貯蔵装置を備えた電気車制御装置が提案され、回生ブレーキ中に電力貯蔵装置が満充電状態になったときにブレーキチョッパを動作させてブレーキ抵抗で回生エネルギーを消費させる回生エネルギー吸収・消費制御を行うこととしている。
上記のように、鉄道車両(電気車)においては誘導電動機のみによって停止可能とする技術が注目されているが、電動自動車あるいはハイブリッド自動車においては、永久磁石同期電動機による回生ブレーキに加え、液圧摩擦ブレーキ装置による摩擦ブレーキが併用されており、インホイールモータにおいても車輪を停止状態とするためには液圧摩擦ブレーキ装置が必須とされている。これは、ばね下荷重の低減に対する阻害要因であり、小型化に対しても制限となり、高価な装置となることは必至である。また、前掲の特許文献6では、機械ブレーキを使用しないでブレーキ制御が可能な装置が提案されているが、回生ブレーキのみでは不充分な場合があり、また、ブレーキチョッパを動作させてブレーキ抵抗で回生エネルギーを消費させることしているのでエネルギーの浪費となる。
そこで、本発明は、摩擦ブレーキ装置を必要とすることなく、またエネルギーを浪費することなく、電気制動制御のみによって車輪が停止状態となるまで円滑且つ確実に制動力を付与し得る車両の制動装置を提供することを課題とする。
上記の課題を達成するため、本発明は、請求項1に記載のように、永久磁石を有するロータ及び該ロータを回転駆動するステータを具備し、車両の少なくとも一対の車輪における各車輪に連結する当該ロータを内蔵する永久磁石同期電動機と、該永久磁石同期電動機に供給する電力を蓄積する電力蓄積手段と、該電力蓄積手段の電力を変換して前記ステータを励磁し前記ロータの回転を制御する変換制御手段と、前記車輪の回転によって前記永久磁石同期電動機に生ずる回生電力を、前記変換制御手段を介して前記電力蓄積手段に蓄積して前記車輪に対し回生ブレーキを付与する回生制御手段を備えた車両の制動装置において、電力を供給して前記車輪の回転を直接電磁的に抑制する電力供給型制動手段を備え、前記回生ブレーキによって車両の前後一方の一対の車輪に対し制動力を付与すると共に、前記電力供給型制動手段によって前記車両の前後他方の一対の車輪に対し制動力を付与するように構成したものである。
上記制動装置において、請求項2に記載のように、前記車輪の回転によって前記永久磁石同期電動機に生ずる回生電力を前記電力供給型制動手段に供給し、前記車両の前後他方の一対の車輪に対し制動力を付与する構成とするとよい。
前記電力供給型制動手段は、請求項3に記載のように、前記変換制御手段の制御に応じた前記ロータの回転方向の前記ステータに対する励磁と同相に、前記ステータを励磁して前記車輪に対し励磁ブレーキを付与する同相励磁制御手段を具備したものとし、前記励磁ブレーキによって前記車両の前後他方の一対の車輪に対し制動力を付与するように構成することができる。
上記制動装置においては、請求項4に記載のように、前記車両の前後一方の一対の車輪を前記車両前方の車輪とし、前記車両の前後他方の一対の車輪を前記車両後方の車輪とするとよい。
あるいは、本発明は、請求項5に記載のように、永久磁石を有するロータ及び該ロータを回転駆動するステータを具備し、車両の少なくとも一対の車輪における各車輪に連結する当該ロータを内蔵する永久磁石同期電動機と、該永久磁石同期電動機に供給する電力を蓄積する電力蓄積手段と、該電力蓄積手段の電力を変換して前記ステータを励磁し前記ロータの回転を制御する変換制御手段と、前記車輪の回転によって前記永久磁石同期電動機に生ずる回生電力を、前記変換制御手段を介して前記電力蓄積手段に蓄積して前記車輪に対し回生ブレーキを付与する回生制御手段を備えた車両の制動装置において、電力を供給して前記車輪の回転を直接電磁的に抑制する電力供給型制動手段を備え、前記回生ブレーキによって車両の前後一方の一対の車輪に対し制動力を付与すると共に、前記車輪の回転によって前記永久磁石同期電動機に生ずる回生電力と前記電力蓄積手段の電力の少なくとも一方の電力を前記電力供給型制動手段に供給し、前記車両の前後他方の一対の車輪に対し制動力を付与するように構成してもよい。
前記電力供給型制動手段は、請求項6に記載のように、前記変換制御手段の制御に応じた前記ロータの回転方向の前記ステータに対する励磁と同相に、前記ステータを励磁して前記車輪に対し励磁ブレーキを付与する同相励磁制御手段を具備したものとし、前記励磁ブレーキによって前記車両の前後他方の一対の車輪に対し制動力を付与するように構成することができる。
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、請求項1に記載の装置においては、車両の少なくとも一対の車輪に永久磁石同期電動機を装着し、回生ブレーキによって車両の前後一方の一対の車輪に対し制動力を付与すると共に、電力供給型制動手段によって車両の前後他方の一対の車輪に対し制動力を付与するように構成されているので、摩擦ブレーキ装置を必要とすることなく、またエネルギーを浪費することなく、電気制動制御のみによって円滑且つ確実に車両を停止させることができる。この結果、制動装置全体の小型軽量化が可能となり、燃費も向上する。
上記制動装置において、請求項2に記載のように構成すれば、回生電力を活用し回生ブレーキによって車両の前後一方の一対の車輪に対し制動力を付与すると共に、電力供給型制動手段によって車両の前後他方の一対の車輪に対し制動力を付与することができるので、エネルギーを有効に活用することができる。
また、請求項5に記載のように構成しても、摩擦ブレーキ装置を必要とすることなく、またエネルギーを浪費することなく、電気制動制御のみによって円滑且つ確実に車両を停止させることができる。
特に、電力供給型制動手段を請求項3又は6に記載のように構成すれば、励磁ブレーキによって車輪の低回転領域においても高回転領域と同等の制動力を発生させることができ、円滑且つ確実に車両を停止させることができる。
以下、本発明の望ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係る車両の制動装置の全体構成を示し、埋込永久磁石界磁式同期電動機IPM(以下、単に永久磁石同期電動機IPMという)は、図1では省略しているが、永久磁石を有するロータ及びこのロータを回転駆動するステータを具備して成り、ロータが車輪のホイール(図1にWで示す)に連結され、一体的に回転するように構成されている。尚、図1において、車輪FLは運転席からみて前方左側の車輪を示し、以下車輪FRは前方右側、車輪RLは後方左側、車輪RRは後方右側の車輪を示している。
そして、車両の前後一方の一対の車輪、例えば車両前方の車輪FL及びFRに対しては、ホイールWの回転によって永久磁石同期電動機IPMに生ずる回生電力を、変換制御手段IVを介して電力蓄積手段BTに蓄積してホイールWに対し回生ブレーキを付与する回生制御手段RGBが設けられている。これに対し、車両の前後他方の一対の車輪、例えば車両後方の車輪RL及びRRに対しては、電力を供給して車輪RL及びRRの回転を直接電磁的に抑制する電力供給型制動手段PSBが設けられている。
而して、回生制御手段RGBによって車両の前後一方の一対の車輪(FL及びFR)に対し制動力が付与され、電力供給型制動手段PSBによって車両の前後他方の一対の車輪(RL及びRR)に対し制動力が付与されるように構成されている。もしくは、図1に破線で示すように、前後一方の一対の車輪(例えばFL及びFR)の回転によって永久磁石同期電動機IPMに生ずる回生電力を電力供給型制動手段PSBに供給し、前後他方の一対の車輪(例えばRL及びRR)に対し制動力を付与するように構成してもよい。
あるいは、前後一方の一対の車輪(例えばFL及びFR)の回転によって永久磁石同期電動機IPMに生ずる回生電力と電力蓄積手段BTの電力の少なくとも一方の電力を電力供給型制動手段PSBに供給し、前後他方の一対の車輪(例えばRL及びRR)に対し制動力を付与するように構成してもよい。
上記電力供給型制動手段PSBとしては、変換制御手段IVの制御に応じたロータの回転方向のステータに対する励磁と同相に、ステータを励磁して車輪に対し励磁ブレーキを付与する同相励磁制御手段PEBを具備し、励磁ブレーキによって前後他方の一対の車輪(例えばRL及びRR)に対し制動力を付与するように構成することができ、その具体的構成例を図2に示す。
図2に示す実施形態においては、全車輪FL,FR,RL及びRRに対し、車輪毎に、駆動及び制動を行う手段として永久磁石同期電動機IPMを用いたモータジェネレータ(図3にMGで示す)を内蔵するインホイールモータIWMが装着されている。従って、回生制御手段RGBによって車輪毎に回生ブレーキを付与することができると共に、同相励磁制御手段PEBによって車輪毎に励磁ブレーキを付与することができ、後者によって電力供給型制動手段PSBが構成される。
図2においては、前述の電力蓄積手段BTとしてバッテリB1、昇圧手段RVとして昇圧回路C2、そして変換制御手段IVとしてインバータC1が設けられ、これらが電子制御ユニットECUによって制御され、前述の同相励磁制御手段PEB及び回生制御手段RGBとしての機能が実行される。本実施形態の永久磁石同期電動機IPMは、U、V及びWの三相コイルを有し、各相コイルへの励磁電流が電子制御ユニットECUによってPWM制御され、駆動時は電動機として機能し、回生ブレーキ時には発電機として機能し、インバータC1を介してバッテリB1に充電される。バッテリB1は二次電池が用いられるが、燃料電池でもよく、電力蓄積手段BTとしては大容量キャパシタを用いることとしてもよい。インバータC1は、バッテリB1の直流電圧をPWM信号に応じて交流電圧に変換し、永久磁石同期電動機IPMから所望のトルクを出力するように制御すると共に、回生ブレーキ時に永久磁石同期電動機IPMの発電交流電圧を直流電圧に変換して、バッテリB1に充電するように制御するもので、U、V及びWの各相コイル毎に制御される。
尚、車輪FL,FR,RL,RRには車輪速度センサ(図示せず)が配設され、これらが電子制御ユニットECUに接続されており、各車輪の回転速度、即ち車輪速度に比例するパルス数の車輪速度信号Swが電子制御ユニットECUに入力されるように構成されている。また、運転者によるアクセルペダル(図示せず)の踏み込み程度に応じたアクセル信号Saを出力するアクセルセンサ(図示せず)、運転者によるブレーキペダル(図示せず)の踏み込み程度に応じたブレーキ信号Sbを出力するブレーキペダルセンサ(図示せず)、変速装置(図示せず)のシフト位置に応じたシフト信号Ssを出力するシフトポジションセンサ(図示せず)、車両前方の車輪FL,FRの舵角θを検出する舵角センサ(図示せず)、車両のヨーレイトγを検出するヨーレイトセンサ(図示せず)等が電子制御ユニットECUに接続されている。更に、回生電力モニタ用のセンサとして、U、V及びWの各相コイルの回生電流(図2には代表してImで表す)を検出する電流センサ(図示せず)が電子制御ユニットECUに接続されており、常時回生電力が演算処理される。
本実施形態の電子制御ユニットECUは一般的な構成であるので、図示は省略するが、バスを介して相互に接続されたCPU、ROM、RAM、入出力ポート等から成るマイクロコンピュータを備えており、上記車輪速度信号Sw、アクセル信号Sa、ブレーキ信号Sb、シフト信号Ss、舵角θ、ヨーレイトγ等が夫々入力ポートからCPUに入力されるように構成されている。また、出力ポートからはインバータC1等に制御信号が出力されるように構成されている。而して、電子制御ユニットECUにおいては、駆動時のロータの回転方向のステータに対する励磁と同相に、ステータを励磁して励磁ブレーキを付与する同相励磁制御が行われると共に、永久磁石同期電動機IPMに生ずる回生電力をバッテリB1に蓄積して回生ブレーキを付与する回生制御が行われるように構成されている。図2の実施形態においては、上記のようにモニタされている回生電力とブレーキ信号Sb等に基づいて演算される必要制動力との差に基づき、回生ブレーキから励磁ブレーキへの切換タイミングが調整されるように構成されている。更に、励磁ブレーキへの切換タイミングで、昇圧回路C2を介して昇圧した電力をインバータC1に供給しステータを励磁するように構成されている。
次に、永久磁石同期電動機IPMをホイールW内に収容してインホイールモータIWMを構成した実施形態の具体的構造について、図3を参照して説明すると、車輪を構成するホイールWの内側にハブ2が固定され、このハブ2に出力シャフト3がスプライン結合されている。図3では、駆動及び制動を行う手段としてモータジェネレータMGを示しているが、これは図1の永久磁石同期電動機IPMに対応するものであり、その構成部品たるステータ4にコイル4cが巻回され、モータケース10の内側に固定されている。そして、永久磁石(図示せず)が埋め込まれたロータ5がステータ4の内側に配設され、ハブ2の中心軸周りを回転可能に支持されている。
更に、ロータ5の中央にフランジ部5fが延出形成されており、これにサンギヤ6が装着されている。一方、モータケース10の内側にはリングギヤ8が固定されており、このリングギヤ8とサンギヤ6に噛合する遊星ギヤ7にキャリア9が装着されている。そして、キャリア9は出力シャフト3とスプライン結合し、これらが一体となって回転するように構成され、遊星歯車減速機構RM(以下、単に減速機構RMという)が構成されている。而して、モータジェネレータMGによるロータ5の回転は、サンギヤ6、遊星ギヤ7及びリングギヤ8を介して出力シャフト3に伝達され、ホイールWが減速回転駆動される。これに対し、車両減速時には、上記とは逆に、ホイールWの回転力がロータ5に伝達される。
モータケース10にはカバー11及びオイルポンプカバー12が固着され、これらで形成されるハウジング内にオイルポンプ13が内蔵されている。このオイルポンプ13は上記のキャリア9によって駆動されて潤滑油を汲み上げるように構成されており、汲み上げられた潤滑油は、出力シャフト3の中心部、オイルポンプカバー12及びモータケース10に設けられた油路内に供給され、モータジェネレータMG及び減速機構RMが冷却される。尚、モータケース10はその外周部で、アッパアーム14及びロアアーム15に接合され、サスペンション(図示せず)等を介して車体(図示せず)に連結されている。
上記の永久磁石同期電動機IPMを構成し回生ブレーキ及び励磁ブレーキを行うモータジェネレータMGに関し、図4を参照して制動時のトルク特性を説明する。先ず、車両走行状態から制動要求を受けて回生制御状態となると、そのときの回転数に応じて、図4に実線で示すように制動トルクTを発生しながら、回転数Nが低下する。即ち、図4の右側の定出力領域から定トルク領域に至る。そして、回転制動を継続するとモータジェネレータMG特有の所定回転数(Nc)を下回り、目標制動力たる目標制動トルク(Tt)から所定トルク差ΔTを減じた所定トルク(Tt−ΔT)を下回ったと判定されると、励磁ブレーキ制御領域(Bpe)に入ったと判定される。而して、電子制御ユニットECUによって同相励磁制御が行われ、図4に実線で示すように目標制動トルク(Tt)が維持される。尚、所定回転数(Nc)を下回ると、制動トルクTは図4に破線で示すように低下するので、そのときの回生電力に基づき実制動力を推定することができ、この実制動力の検出結果に基づき、励磁ブレーキ制御領域(Bpe)への移行を判定することができる。
ここで、永久磁石同期電動機IPMによる回生ブレーキ時及び励磁ブレーキ時の動作原理を図5を参照して説明する。図5は、永久磁石同期電動機IPMのトルク特性と、駆動時、回生ブレーキ時及び励磁ブレーキ時のロータ角度と電流の関係を示す波形図で、(B)乃至(D)におけるU、V、Wは三相コイルの各相電流を示す。図5(A)は永久磁石同期電動機IPMのトルク特性例で、一定電流を印加したときの通電位相と出力トルクの関係を示し、正トルク範囲と負トルク範囲が交互に生ずる。次に、図5(B)は力行時(駆動時)のロータ角度と駆動電流の一般的な関係を示し、図5(A)のモータ特性で最もトルクが大きい位相(b点)で通電される。逆に、図5(C)は回生ブレーキ時のロータ角度と回生電流の一般的な関係を示し、図5(A)のモータ特性で最もトルクが小さい位相(c点)で通電される。そして、図5(D)は励磁ブレーキ時の一例として、図5(A)に対し位相をずらすと共に(d点)、必要に応じて昇圧回路C2によって昇圧し、通電電流を増大(ΔId)させて制動継続電流としている。これにより、回生ブレーキによる制動力が小さくなっても、励磁ブレーキによって必要な制動力が確保される。また、ロータの回転が、励磁に対して先行する制動状態を保つことにより、安定した制動力を得ることができ、逆相制動のような大きなトルク脈動を回避できる。
図6は、車両前方又は後方の何れか一方の車輪が原動機(例えば内燃機関)ENG及びMGによって駆動され、他方の車輪にインホイールモータIWMが装着された態様の一例を示すもので、この例は後輪駆動であり、前方の一対の車輪(FL及びFR)にインホイールモータIWMが装着されている。上記の原動機ENG、MG及び図1の電力蓄積手段BT等によってハイブリッド自動車を構成し、回生ブレーキによって蓄積した電力を車両の駆動及びエンジン始動に利用することが好ましいが、MGを無くしてエンジン単独駆動でもよい。
W ホイール
IPM 永久磁石同期電動機
BT 電力蓄積手段
IV 変換制御手段
PSB 電力供給型制動手段
PEB 同相励磁制御手段
RGB 回生制御手段
ECU 電子制御ユニット
MG モータジェネレータ
RM 遊星歯車減速機構
2 ハブ
3 出力シャフト
4 ステータ
5 ロータ
10 モータケース
11 カバー
13 オイルポンプ
IPM 永久磁石同期電動機
BT 電力蓄積手段
IV 変換制御手段
PSB 電力供給型制動手段
PEB 同相励磁制御手段
RGB 回生制御手段
ECU 電子制御ユニット
MG モータジェネレータ
RM 遊星歯車減速機構
2 ハブ
3 出力シャフト
4 ステータ
5 ロータ
10 モータケース
11 カバー
13 オイルポンプ
Claims (6)
- 永久磁石を有するロータ及び該ロータを回転駆動するステータを具備し、車両の少なくとも一対の車輪における各車輪に連結する当該ロータを内蔵する永久磁石同期電動機と、該永久磁石同期電動機に供給する電力を蓄積する電力蓄積手段と、該電力蓄積手段の電力を変換して前記ステータを励磁し前記ロータの回転を制御する変換制御手段と、前記車輪の回転によって前記永久磁石同期電動機に生ずる回生電力を、前記変換制御手段を介して前記電力蓄積手段に蓄積して前記車輪に対し回生ブレーキを付与する回生制御手段を備えた車両の制動装置において、電力を供給して前記車輪の回転を直接電磁的に抑制する電力供給型制動手段を備え、前記回生ブレーキによって車両の前後一方の一対の車輪に対し制動力を付与すると共に、前記電力供給型制動手段によって前記車両の前後他方の一対の車輪に対し制動力を付与することを特徴とする車両の制動装置。
- 前記車輪の回転によって前記永久磁石同期電動機に生ずる回生電力を前記電力供給型制動手段に供給し、前記車両の前後他方の一対の車輪に対し制動力を付与することを特徴とする請求項1記載の車両の制動装置。
- 前記電力供給型制動手段は、前記変換制御手段の制御に応じた前記ロータの回転方向の前記ステータに対する励磁と同相に、前記ステータを励磁して前記車輪に対し励磁ブレーキを付与する同相励磁制御手段を具備し、前記励磁ブレーキによって前記車両の前後他方の一対の車輪に対し制動力を付与することを特徴とする請求項1又は2記載の車両の制動装置。
- 前記車両の前後一方の一対の車輪が前記車両前方の車輪であって、前記車両の前後他方の一対の車輪が前記車両後方の車輪であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両の制動装置。
- 永久磁石を有するロータ及び該ロータを回転駆動するステータを具備し、車両の少なくとも一対の車輪における各車輪に連結する当該ロータを内蔵する永久磁石同期電動機と、該永久磁石同期電動機に供給する電力を蓄積する電力蓄積手段と、該電力蓄積手段の電力を変換して前記ステータを励磁し前記ロータの回転を制御する変換制御手段と、前記車輪の回転によって前記永久磁石同期電動機に生ずる回生電力を、前記変換制御手段を介して前記電力蓄積手段に蓄積して前記車輪に対し回生ブレーキを付与する回生制御手段を備えた車両の制動装置において、電力を供給して前記車輪の回転を直接電磁的に抑制する電力供給型制動手段を備え、前記回生ブレーキによって車両の前後一方の一対の車輪に対し制動力を付与すると共に、前記車輪の回転によって前記永久磁石同期電動機に生ずる回生電力と前記電力蓄積手段の電力の少なくとも一方の電力を前記電力供給型制動手段に供給し、前記車両の前後他方の一対の車輪に対し制動力を付与することを特徴とする車両の制動装置。
- 前記電力供給型制動手段は、前記変換制御手段の制御に応じた前記ロータの回転方向の前記ステータに対する励磁と同相に、前記ステータを励磁して前記車輪に対し励磁ブレーキを付与する同相励磁制御手段を具備し、前記励磁ブレーキによって前記車両の前後他方の一対の車輪に対し制動力を付与することを特徴とする請求項5記載の車両の制動装置。
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