JP2013130246A - 摩擦伝動ベルト及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ベルト走行における摩擦伝動面の粘着摩耗を抑え、且つ被水時における優れた異音抑制効果を長期に亘って得る。
【解決手段】ベルト本体10の少なくともプーリ接触部分がゴム組成物で形成されたVリブドベルトBにおいて、ベルト本体10のプーリ接触部分に、グラファイト16aとこれを当該プーリ接触部分に保持するためのバインダー樹脂16bとを配合してなる潤滑膜16を設け、バインダー樹脂16bとしてシリコン樹脂とアクリル樹脂とを混合したものを採用し、潤滑膜16におけるバインダー樹脂16bとグラファイト16aとの含有比率を、バインダー樹脂100重量部に対して、グラファイト5重量部以上且つ80重量部以下とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、ベルト本体がプーリに接触するように巻き掛けられて動力を伝達する摩擦伝動ベルト及びその製造方法に関し、特に、ベルト走行中の異音防止対策に関するものである。
近年、自動車走行中の摩擦伝動ベルトの異音発生を防止するニーズが高まっている。ベルト走行中の異音には多くの種類があるが、その一つに摩擦伝動ベルトが被水したときのベルトのスリップ音がある。この被水時におけるベルトのスリップ音を防止する手段は従来から種々提案されている。
例えば、特許文献1には、摩擦伝動ベルトの伝動面を、エチレン−α−オレフィンエラストマー100重合部に対して、溶解度指数が8.3〜10.7(cal/cm1/2の可塑剤を10〜25重量部、及び無機充填剤を60〜110重量部それぞれ配合したゴム組成物で構成し、無機充填剤により可塑剤を適度にブリードさせて潤滑剤として作用させることが開示されている。
特許文献2には、摩擦伝動ベルトの伝動面を、ゴム100重量部に対して、水酸基又は水分子を有する親水性無機物あるいは水と反応して親水性無機物となる親水性無機前駆体が用いられてなる親水性無機充填材が5重量部以上含有されたゴム組成物で形成することにより、伝動面の水に対する濡れ性を高めることが開示されている。
特許文献3には、摩擦伝動ベルトの伝動面を、エチレン−α−オレフィンエラストマー100重量部に対して低粘度の界面活性剤を1〜25重量部配合したゴム組成物で構成することにより、伝動面の親水性を向上させることが開示されている。
特開2007−232205号公報 特開2007−120526号公報 特開2008−185162号公報
しかしながら、特許文献1の構成では、可塑剤をブリードさせるため粘着摩耗や被水していないときに異音が発生しやすくなるという問題がある。特許文献2の構成では、親水性無機充填材の水との塗れ性が十分でなく、高負荷条件においては異音抑制効果が不十分である。また、特許文献3の構成では、ゴム表面の水との親和性が不十分なために十分な異音抑制効果を発揮することができない。しかも、同構成では、摩擦伝動面に低粘度の物質が存在するため、粘着摩耗が起きやすいという問題もある。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベルト走行による粘着摩耗を抑え、且つ被水時における優れた異音抑制効果を得ると共に、該異音抑制効果を長期に亘って持続させることにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、プーリ接触部分を形成するゴム組成物に対して密着性の優れたバインダー樹脂を用い、且つ該バインダー樹脂によってプーリ接触部分に減摩材として適量のグラファイトを保持させるようにした。
具体的には、本発明は、ベルト本体の少なくともプーリ接触部分がゴム組成物で形成された伝動摩擦ベルト及びその製造方法を対象としており、以下の解決手段を講じたものである。
すなわち、第1の発明は、摩擦伝動ベルトであって、上記プーリ接触部分に、グラファイトと該グラファイトを当該プーリ接触部分に保持するためのバインダー樹脂とを配合してなる潤滑膜が設けられている。上記バインダー樹脂は、シリコン樹脂とアクリル樹脂とが混合されてなる。そして、上記潤滑膜におけるバインダー樹脂とグラファイトとの含有比率は、バインダー樹脂100重量部に対してグラファイト5重量部以上且つ80重量部以下であることを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明の摩擦伝動ベルトにおいて、上記ベルト本体のプーリ接触部分の摩擦係数が0.3以上且つ0.7以下であることを特徴とする。
第3の発明は、第1又は第2の発明の摩擦伝動ベルトにおいて、上記ベルト本体がVリブドベルト本体であることを特徴とする。
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか1つの摩擦伝動ベルトを製造する方法において、上記ベルト本体のプーリ接触部分に対し、上記シリコン樹脂とアクリル樹脂とが混合されてなるバインダー樹脂に上記グラファイトが配合された潤滑材料を複数回に亘って塗布することにより、上記潤滑膜を形成することを特徴とする。
第1の発明によれば、ベルト本体におけるプーリ接触部分に低摩擦係数の減摩材であるグラファイトを適度な濃度に有する潤滑膜が設けられているので、摩擦伝動ベルトをプーリに対して必要な摩擦伝動性を確保可能な範囲で良好に低摩擦化することができる。これにより、ベルト走行による摩擦伝動面の粘着摩耗を抑え、且つ被水時におけるベルトのスリップ異音を十分に抑制することができる。そして、上記潤滑膜におけるグラファイトを保持するバインダー樹脂として、ベルト本体のプーリ接触部分を形成するゴム組成物に対して密着性に優れたシリコン樹脂とアクリル樹脂とを混合した樹脂組成物を採用しているので、ベルト走行中にグラファイトが潤滑膜から脱落することを防止できる。これにより、経時による異音特性の悪化を抑えることができ、長期に亘ってベルト走行中のスリップ異音を十分に抑えることができる。したがって、ベルト走行による摩擦伝動面の粘着摩耗を抑え、且つ被水時における優れた異音抑制効果を得ると共に、該異音抑制効果を長期に亘って持続させることができる。
第2の発明によれば、ベルト本体のプーリ接触部分の摩擦係数が0.3以上且つ0.7以下であるので、プーリに対して十分な摩擦伝動性を確保しながらも被水時におけるベルトのスリップ異音を良好に抑制することができる。
第3の発明によれば、本発明は摩擦伝動ベルトの一種であるVリブドベルトに対しても有効であるので、同ベルトにおいて本発明の効果が具体的に奏される。
第4の発明によれば、ベルト本体のプーリ接触部分にグラファイトとバインダー樹脂とが配合された潤滑材料を複数回に亘って塗布することにより潤滑膜を形成するので、同濃度のグラファイトを含む潤滑膜を、潤滑材料におけるグラファイトの量を調整して1回の塗布で形成する場合に比べて、仕上り良く簡単に形成することができ、本発明に係る摩擦伝動ベルトを容易に得ることができる。
図1は、実施形態に係るVリブドベルトの構成を示す斜視図である。 図2は、実施形態に係るVリブドベルトの要部を拡大して示す断面図である。 図3は、ベルト成形型の縦断面図である。 図4は、ベルト成形型の一部を拡大して示す縦断面図である。 図5は、積層体を形成する工程を示す説明図である。 図6は、積層体を外型にセットする工程を示す説明図である。 図7は、外型を内型の外側に設ける工程を示す説明図である。 図8は、ベルトスラブを成型する工程を示す説明図である。 図9は、実施形態に係る自動車の補機駆動ベルト伝動装置のプーリレイアウトを示す図である。 図10は、摩擦係数測定装置の構成を示す図である。 図11は、注水異音試験の走行試験機のプーリレイアウトを示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
《発明の実施形態》
この実施形態では、本発明に係る摩擦伝動ベルトとして、VリブドベルトBを例に挙げて説明する。
本実施形態に係るVリブドベルトBの斜視図を図1に示す。
VリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動ベルト伝動装置を構成するのに用いられるものであり、ベルト周長が700mm〜3000mm程度、ベルト幅が10mm〜36mm程度、ベルト厚さが4.0mm〜5.0mm程度である。
このVリブドベルトBは、例えば、ベルト内周側に位置する圧縮ゴム層11と、中間に位置する接着ゴム層12と、ベルト外周側に位置する背面ゴム層13との三重層に構成されたVリブドベルト本体10を備え、該Vリブドベルト本体10がプーリに接触するように巻き掛けられて動力を伝達するように構成されている。
圧縮ゴム層11は、Vリブドベルト本体10のプーリ接触部分を構成している。この圧縮ゴム層11には、複数のVリブ15がベルト内周側に垂下するように設けられている。これら複数のVリブ15は、各々がベルト長さ方向に延びる横断面略逆三角形の突条に形成されていると共に、ベルト幅方向に並設されている。各Vリブ15は、例えば、リブ高さが2.0mm〜3.0mm程度、基端間の幅が1.0mm〜3.6mm程度に形成されている。また、リブ数は例えば3〜6個である(図1では6個の例を示す)。
この圧縮ゴム層11は、原料ゴムに種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤により架橋させたゴム組成物で形成されている。圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物の原料ゴムとしては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)、天然ゴムなどが挙げられる。なお、当該原料ゴムは、単一種で構成されていてもよく、また、複数種がブレンドされて構成されていて構わない。
原料ゴムは、上記のうち、エチレン−α−オレフィンエラストマーを含むことが好ましい。エチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンコポリマー(EPM)、エチレン−ブテンコポリマー(EDM)、エチレン−オクテンコポリマー(EOM)などが挙げられる。
配合剤としては、カーボンブラックなどの補強材、軟化剤、加工助剤、加硫助剤、架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤などが挙げられる。
補強材に用いられるカーボンブラックとしては、チャンネルブラック;SAFやISAF、N−339、HAF、N−351、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N−234などのファーネスブラック;FTやMTなどのサーマルブラック;アセチレンブラックなどが挙げられる。
また、補強材としてはカーボンブラックの他にシリカも挙げられる。補強材は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていても構わない。補強材の配合量は、耐摩耗性及び耐屈曲疲労性のバランスが良好になるという観点から、原料ゴム100重量部に対して30〜80重量部であることが好ましい。
軟化剤としては、例えば、石油系軟化剤;パラフィンワックスなどの鉱物油系軟化剤;ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落下生油、木ろう、ロジン、パインオイルなどの植物油系軟化剤などが挙げられる。軟化剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていても構わない。軟化剤の配合量は、原料ゴム100重量部に対して例えば2〜30重量部である。
加工助剤としては、例えばステアリン酸などが挙げられる。加工助剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていても構わない。加工助剤の配合量は、原料ゴム100重量部に対して例えば0.5〜5重量部である。
加硫助剤としては、酸化マグネシウムや酸化亜鉛(亜鉛華)などの金属酸化物などが挙げられる。加硫助剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていても構わない。加硫助剤の配合量は、原料ゴム100重量部に対して例えば1〜10重量部である。
架橋剤としては、例えば、硫黄や有機過酸化物などが挙げられる。架橋剤は、硫黄が単独で使用されていてもよく、また、有機過酸化物が単独で使用されていてもよく、さらには、それら両方が併用されていても構わない。架橋剤の配合量は、硫黄の場合、原料ゴム100重量部に対して例えば0.5〜4.0重量部であり、有機過酸化物の場合、原料ゴム100重量部に対して例えば0.5〜8.0重量部である。
加硫促進剤としては、金属酸化物、金属炭酸塩、脂肪酸及びその誘導体などが挙げられる。加硫促進剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていても構わない。加硫促進剤の配合量は、原料ゴム100重量部に対して例えば0.5〜8重量部である。
老化防止剤としては、アミン系、キノリン系、ヒドロキノン系、フェノール系、亜リン酸エステル系のものが挙げられる。老化防止剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていても構わない。この老化防止剤の配合量は、原料ゴム100重量部に対して例えば0.1〜8.0重量部である。
接着ゴム層12は、断面横長矩形の帯状に構成され、例えば、厚さが1.0mm〜2.5mm程度に形成されている。接着ゴム層12には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように配された心線14が埋設されている。心線14は、ポリエステル繊維(PET)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN)、アラミド繊維、ビニロン繊維などの撚り糸で構成されている。心線14は、Vリブドベルト本体10に対する接着性を付与するために、成形加工前にレゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)水溶液に浸漬した後に加熱する接着処理及び/又はゴム糊に浸漬した後に乾燥させる接着処理が施されている。
背面ゴム層13も、断面横長矩形の帯状に構成され、例えば、厚さが0.4mm〜0.8mm程度に形成されている。この背面ゴム層13の表面は、ベルト背面が接触する平プーリとの間で生じる音を抑制する観点から、織布の布目が転写された形態に形成されていることが好ましい。
接着ゴム層12及び背面ゴム層13のそれぞれは、原料ゴムに種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤により架橋させたゴム組成物で形成されている。背面ゴム層13は、ベルト背面が接触する平プーリとの接触で粘着が生じるのを抑制する観点から、接着ゴム層12よりもやや硬めのゴム組成物で形成されていることが好ましい。
接着ゴム層12及び背面ゴム層13を形成するゴム組成物の原料ゴムとしては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)などが挙げられる。接着ゴム層12及び背面ゴム層13の原料ゴムは、上記圧縮ゴム層11の原料ゴムと同一であることが好ましい。
接着ゴム層12及び背面ゴム層13の原料ゴムに配合される配合剤としては、上記圧縮ゴム層11と同様に、例えば、カーボンブラックなどの補強材、軟化剤、加工助剤、加硫助剤、架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤などが挙げられる。
上記圧縮ゴム層11、接着ゴム層12及び背面ゴム層13は、別配合のゴム組成物で形成されていてもよく、同じ配合のゴム組成物で形成されていても構わない。
本実施形態に係るVリブドベルトの要部の拡大断面を図2に示す。
上記圧縮ゴム層11のVリブ15表面、つまりプーリと摩擦する摩擦伝動面には、図2に示すように、パウダー状のグラファイト16aとこれを保持するためのバインダー樹脂16bとを配合してなる潤滑膜16が設けられている。バインダー樹脂16bは、シリコン樹脂とアクリル樹脂とが混合されてなる。そして、当該潤滑膜16bにおけるバインダー樹脂とグラファイト16aとの含有比率は、バインダー樹脂100重量部に対して、グラファイト5重量部以上且つ80重量部以下である。
このように圧縮ゴム層11表面に潤滑膜16が設けられていることにより、ベルト走行による摩擦伝動面の粘着摩耗を抑え、且つ被水時における優れた異音抑制効果を得ると共に、該異音抑制効果を長期に亘って持続させることができる。
すなわち、Vリブドベルト本体10のプーリ接触部分には低摩擦係数の減摩材であるグラファイト16aを適度な濃度で有する潤滑膜16が設けられているので、VリブドベルトBをプーリに対して必要な摩擦伝動性を確保可能な範囲で良好に低摩擦化することができる。これにより、ベルト走行による摩擦伝動面の粘着摩耗を抑え、且つ被水時におけるベルトBのスリップ異音を十分に抑制することができる。そして、上記潤滑膜16におけるグラファイト16aを保持するバインダー樹脂16bとして、圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物に対する密着性の優れたシリコン樹脂とアクリル樹脂とを混合した樹脂組成物を採用しているので、ベルト走行中にグラファイト11aが潤滑膜16から脱落することを防止できる。これにより、経時による異音特性の悪化を抑えることができ、長期に亘ってベルト走行中のスリップ異音を十分に抑制することができる。
上記Vリブドベルト本体10のプーリ接触部分の摩擦係数は、0.3以上且つ0.7以下となっている。仮に、Vリブドベルト本体10のプーリ接触部分の摩擦係数が0.3未満であると、プーリに対して摩擦伝動性を十分に確保できない場合がある。また仮に、Vリブドベルト本体10のプーリ接触部分の摩擦係数が0.7よりも大きいと、被水時におけるベルトのスリップ異音を十分に抑制できない場合がある。これに対して、本実施形態の如くVリブドベルト本体10のプーリ接触部分の摩擦係数が0.3以上且つ0.7以下であれば、プーリに対して十分な摩擦伝動性を確保しながらも被水時におけるベルトのスリップ異音を良好に抑制することができる。
上記潤滑膜16におけるバインダー樹脂16bとグラファイト16aとの含有比率は、バインダー樹脂100重量部に対して、グラファイト5重量部以上且つ80重量部以下であることが好ましく、10重量部以上且つ40重量部以下であることがよりいっそう好ましい。グラファイト16aの平均粒子径は、例えば1.5μm〜100μm程度である。
潤滑膜16におけるバインダー樹脂とグラファイト16aとの含有比率は、熱重量分析装置により求めることができる。熱重量分析装置としては、例えばセイコーインスツル社製TG/DTA6300を挙げることができる。
−VリブドベルトBの製造方法−
次に、上記VリブドベルトBの製造方法について一例を挙げて説明する。このVリブドベルトBの製造に用いるベルト成形型20を図3及び図4に示し、それを用いたVリブドベルトBの製造方法を図5〜図8に示す。図3は、ベルト成形型の縦断面図である。図4は、ベルト成形型の一部分の拡大縦断面図である。
VリブドベルトBの製造では、図3及び図4に示すように、円筒状の内型21と外型22とを備えた成形型20が用いられる。内型21は、外型22の筒内部空間に挿入して用いられる。
内型21は、外周にベルト背面を所定形状に形成する成型面を有し、ゴムなどの可撓性材料で形成されている。一方、外型22は、内周にベルト内面をリブ形状に形成するための複数のリブ溝23が軸方向に一定ピッチで設けられた成形面を有し、金属などの剛性材料で形成されている。外型22には、水蒸気などの熱媒体や水などの冷媒を流通させて調温する調温機構(不図示)が設けられている。その他、ベルト成形型20には、内型21を内部から加圧膨張させるための加圧手段(不図示)が設けられている。
VリブドベルトBを製造するには、まず、原料ゴムに各配合剤を配合し、ニーダーやバンバリーミキサーなどの混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形などによってシート状に成形して圧縮ゴム層用の未架橋ゴムシート11’を作製する。さらに、接着層用及び背面ゴム層用の各未架橋ゴムシート12’,13’についても同様な方法により作製する。また、心線14用の撚り糸14’に対し、RFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理を行った後に、ゴム糊に浸漬して加熱乾燥する接着処理を行う。
次に、図5に示すように、表面が平滑な円筒ドラム24上にゴムスリーブ25を被せ、その上に、背面ゴム層用の未架橋ゴムシート13’及び接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’を順に巻き付けて積層した後に、その上から心線用の撚り糸14’をゴムスリーブ25に対して螺旋状に巻き付け、さらにその上から接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’及び圧縮ゴム層用の未架橋ゴムシート11’を順に巻き付けて、積層体10’を形成する。
次いで、積層体10’を設けたゴムスリーブ25を円筒ドラム24から外し、図6に示すように、それを外型22の内周面側に内嵌め状態にセットする。そして、図7に示すように、内型21を、外型22にセットされたゴムスリーブ25内に位置付けて密閉する。
続いて、外型22を加熱すると共に、内型21の密閉された内部に加圧手段により例えば高圧空気を注入して内型21を内部から加圧する。このとき、図8に示すように、内型21が膨張し、外型22の成形面に、積層体10’のベルト成形用の未架橋シート11’,12’,13’が圧縮され、また、それらの架橋が進行して一体化すると共に撚り糸14’と複合化し、最終的に、円筒状のベルトスラブ(ベルト本体前駆体)Sが成型される。このベルトスラブSの成型温度は例えば100℃〜180℃程度、成型圧力は例えば0.5MPa〜2.0MPa程度、成型時間は例えば10分〜60分程度である。
そして、調温機構によりベルト成形型20を冷却すると共に内型21の内部を減圧して密閉を解き、内型21と外型22との間でゴムスリーブ25を介して成型されたベルトスラブSを取り出し、必要に応じてVリブ15側の表面を研磨して仕上げる。
しかる後、ベルト成形型20から取り出したベルトスラブSにおける圧縮ゴム層11のVリブ15表面に対し、シリコン樹脂とアクリル樹脂とが混合されてなるバインダー樹脂16bにグラファイト16aが配合された潤滑材料を複数回(例えば2〜3回程度)に亘って塗布し、その塗布膜を加熱及び/又は乾燥させることによって潤滑膜16を形成する。
最後に、潤滑膜16が形成されたベルトスラブSを所定幅に切断し、それぞれの表裏を裏返すことによりVリブドベルトBが製造される。
なお、ここでは、複数のリブ溝23が設けられた成形面を有する外型22を用いてVリブドベルトBを形成するとして説明したが、特にこれに限らない。例えば、表面にリブ溝が設けられていない円筒状金型を用いてVリブ15を有しないベルトスラブを成形した後に、該ベルトスラブの表面を研磨することによりVリブ15を形成して、VリブドベルトBを製造してもよい。
−VリブドベルトBを用いた伝動装置−
次に、上記VリブドベルトBを用いた自動車のエンジンルームに設けられる補機駆動ベルト伝動装置30について、一例を挙げて説明する。この補機駆動ベルト伝動装置30のプーリレイアウトを図9に示す。
補機駆動ベルト伝動装置30は、図9に示すように、VリブドベルトBが4つのリブプーリ31,32,35,36及び2つの平プーリ33,34の6つのプーリに巻き掛けられて動力を伝達するサーペンタインドライブ方式のものである。
この補機駆動ベルト伝動装置30は、最上位置のパワーステアリングプーリ31と、該パワーステアリングプーリ31の下方に配置されたACジェネレータプーリ32と、パワーステアリングプーリ31の左下方に配置されたテンショナプーリ33と、該テンショナプーリ33の下方に配置されたウォーターポンププーリ34と、テンショナプーリ33の左下方に配置されたクランクシャフトプーリ35と、該クランクシャフトプーリ35の右下方に配置されたエアコンプーリ36とを備えている。
これらのうちテンショナプーリ33及びウォーターポンププーリ34は平プーリであり、それ以外は全てリブプーリである。これらリブプーリ31,32,35,36及び平プーリ33,34は、例えば、金属のプレス加工品や鋳物、又はナイロン樹脂及びフェノール樹脂などの樹脂成型品で構成されており、また、プーリ径がφ50mm〜150mm程度である。
この補機駆動ベルト伝動装置30では、VリブドベルトBは、Vリブ15側が接触するようにパワーステアリングプーリ31に巻き掛けられ、次いで、ベルト背面が接触するようにテンショナプーリ33に巻き掛けられた後、Vリブ15側が接触するようにクランクシャフトプーリ35及びエアコンプーリ36に順に巻き掛けられ、さらに、ベルト背面が接触するようにウォーターポンププーリ34に巻き掛けられ、そして、Vリブ15側が接触するようにACジェネレータプーリ32に巻き掛けられ、最後にパワーステアリングプーリ31に戻るように設けられている。プーリ間で掛け渡されるVリブドベルトBのベルトスパン長は例えば50mm〜300mm程度である。プーリ間で生じ得るミスアライメントは0°〜2°程度である。
以上のような構成の補機駆動ベルト伝動装置30では、上記VリブドベルトBを用いているので、ベルト走行による摩擦伝動面の粘着摩耗が抑えられ、且つ被水時におけるスリップ異音の発生が抑制される。しかも、長期間に亘って補機駆動ベルト伝動装置30を運転した場合でも、被水によるスリップ異音の抑制効果が持続される。
なお、上記実施形態では、圧縮ゴム層11、接着ゴム層12及び背面ゴム層13によりVリブドベルト本体10が構成されているとしたが、特にこれに限定されるものではなく、圧縮ゴム層11及び接着ゴム層12によりVリブドベルト本体10が構成され、背面ゴム層13の代わりに、例えば、綿、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維などの糸で形成された織布、編物、不織布などで構成された補強布18が設けられたものであってもよい。
また、上記実施形態では、圧縮ゴム層11の全体を単一のゴム組成物で形成したが、特にこれに限定されるものではなく、Vリブ15表面の少なくともプーリ接触部分が上記ゴム組成物で形成されていればよい。
また、上記実施形態では、4つのリブプーリを有する補機駆動ベルト伝動装置30を例に挙げて説明したが、一対のリブプーリを含むものであれば特にこれに限定されるものではなく、さらに多くのリブプーリを有していても構わない。
また、上記実施形態では、摩擦伝動ベルトとしてVリブドベルトBを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ローエッジタイプのVベルトなどの他の摩擦伝動ベルトにも適用することができる。
上記実施形態に係るVリブドベルトBを評価すべく実施した評価試験について説明する。
−評価試験用ベルト−
評価試験用ベルトとしては、以下の実施例1〜4及び比較例1〜8のVリブドベルトを作製した。それぞれの潤滑膜の構成は表1にも示す。なお、便宜上、比較例についても、実施例と同一の構成要素には同一符合を付して以下に説明する。
<実施例1>
EPDM(Dupont Dow Elastomers社製、商品名:ノーデルIP4640)を原料ゴムとして、その原料ゴム100重量部に対して、補強材としてカーボンブラック(東海カーボン社製、商品名:シースト3)75重量部、軟化剤(日本サン石油社製、商品名:サンパー2280)5重量部、加工助剤としてのステアリン酸(日油社製、商品名:ビーズステアリン酸 椿)1重量部、加硫助剤としての酸化亜鉛(堺化学工業社製、商品名:亜鉛華1号)5重量部、架橋剤としての硫黄(細井化学社製、商品名:オイルサルファ)2.3重量部、及び加硫促進剤(大内新興化学株式会社製、商品名:EP−150)4重量部を配合して密閉式混練機で約5分間混練して未加硫ゴム組成物を得た。
そして、この未架橋ゴム組成物を圧縮ゴム層形成用の未架橋ゴムシート11’として、上記実施形態で述べた方法によりVリブドベルト本体10を成形加工した後に、その成形後のVリブドベルト本体10における圧縮ゴム層11のVリブ15表面に対し、シリコン樹脂(信越化学工業社製、商品名:KE−1414)とアクリル樹脂(DIC社製、商品名:A−9521)とが混合されてなるバインダー樹脂16bにグラファイト16a(SECカーボン社製、商品名:GSP−5)が配合された潤滑材料を2回に亘って塗布することにより潤滑膜16を形成したVリブドベルトBを作製し、これを実施例1とした。
なお、接着ゴム層12及び背面ゴム層13をEPDMを原料ゴムとする他のゴム組成物で構成した。また、心線14をポリエチレンテレフタレート繊維(PET)製の撚り糸で構成した。そして、ベルト周長を1200mm、ベルト幅を10.68mm、ベルト厚さを4.3mmとし、リブ数を3個とした。
この実施例1の潤滑膜16におけるシリコン樹脂とアクリル樹脂とグラファイト16aとの含有比率は、シリコン樹脂50重量部、アクリル樹脂50重量部、グラファイト5重量部である。
<実施例2>
圧縮ゴム層11のVリブ15表面に対して塗布する潤滑材料におけるバインダー樹脂16bとグラファイト16aとの配合比率を調整すると共に、その潤滑材料を2回に亘って上記Vリブ15表面に塗布することにより、潤滑膜16におけるシリコン樹脂とアクリル樹脂とグラファイト16aとの含有比率を、シリコン樹脂50重量部、アクリル樹脂50重量部、グラファイト40重量部としたことを除いて、実施例1と同一構成のVリブドベルトBを作製し、これを実施例2とした。
<実施例3>
圧縮ゴム層11のVリブ15表面に対して塗布する潤滑材料におけるバインダー樹脂16bとグラファイト16aとの配合比率を調整すると共に、その潤滑材料を2回に亘って上記Vリブ15表面に塗布することにより、潤滑膜16におけるシリコン樹脂とアクリル樹脂とグラファイト16aとの含有比率を、シリコン樹脂50重量部、アクリル樹脂50重量部、グラファイト80重量部としたことを除いて、実施例1と同一構成のVリブドベルトBを作製し、これを実施例3とした。
<実施例4>
圧縮ゴム層11のVリブ15表面に対して塗布する潤滑材料におけるバインダー樹脂16bとグラファイト16aとの配合比率を調整すると共に、その潤滑材料を3回に亘って上記Vリブ15表面に塗布することにより、潤滑膜16におけるシリコン樹脂とアクリル樹脂とグラファイト16aとの含有比率を、シリコン樹脂50重量部、アクリル樹脂50重量部、グラファイト40重量部としたことを除いて、実施例1と同一構成のVリブドベルトBを作製し、これを実施例4とした。
<比較例1>
圧縮ゴム層11のVリブ15表面に対して塗布する潤滑材料におけるバインダー樹脂16bとグラファイト16aとの配合比率を調整すると共に、その潤滑材料を2回に亘って上記Vリブ15表面に塗布することにより、潤滑膜16におけるシリコン樹脂とアクリル樹脂とグラファイト16aとの含有比率を、シリコン樹脂50重量部、アクリル樹脂50重量部、グラファイト4重量部としたことを除いて、実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例1とした。
<比較例2>
圧縮ゴム層11のVリブ15表面に対して塗布する潤滑材料におけるバインダー樹脂16bとグラファイト16aとの配合比率を調整すると共に、その潤滑材料を2回に亘って上記Vリブ15表面に塗布することにより、潤滑膜16におけるシリコン樹脂とアクリル樹脂とグラファイト16aとの含有比率を、シリコン樹脂50重量部、アクリル樹脂50重量部、グラファイト85重量部としたことを除いて、実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例2とした。
<比較例3>
圧縮ゴム層11のVリブ15表面に対して塗布する潤滑材料として、シリコン樹脂のみからなるバインダー樹脂にグラファイト16aを配合した潤滑材料を採用し、該潤滑材料を2回に亘って上記Vリブ15表面に塗布することにより、潤滑膜におけるシリコン樹脂とグラファイト16aとの含有比率を、シリコン樹脂100重量部、グラファイト40重量部としたことを除いて、実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例3とした。
<比較例4>
圧縮ゴム層11のVリブ15表面に対して塗布する潤滑材料として、アクリル樹脂のみからなるバインダー樹脂にグラファイト16aを配合した潤滑材料を採用し、該潤滑材料を2回に亘って上記Vリブ15表面に塗布することにより、潤滑膜におけるアクリル樹脂とグラファイト16aとの含有比率を、アクリル樹脂100重量部、グラファイト40重量部としたことを除いて、実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例4とした。
<比較例5>
圧縮ゴム層11のVリブ15表面に対して塗布する潤滑材料として、シリコン樹脂のみからなるバインダー樹脂にグラファイト16aを配合した潤滑材料を採用し、該潤滑材料を3回に亘って上記Vリブ15表面に塗布することにより、潤滑膜におけるシリコン樹脂とグラファイト16aとの含有比率を、シリコン樹脂100重量部、グラファイト40重量部としたことを除いて、実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例5とした。
<比較例6>
圧縮ゴム層11のVリブ15表面に対して塗布する潤滑材料として、アクリル樹脂のみからなるバインダー樹脂にグラファイト16aを配合した潤滑材料を採用し、該潤滑材料を3回に亘って上記Vリブ15表面に塗布することにより、潤滑膜におけるアクリル樹脂とグラファイト16aとの含有比率を、アクリル樹脂100重量部、グラファイト40重量部としたことを除いて、実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例6とした。
<比較例7>
圧縮ゴム層11のVリブ15表面に対して塗布する潤滑材料として、シリコン樹脂とエポキシ樹脂(旭電化工業社製、商品名:アデカレジンEP−4100)とを混合してなるバインダー樹脂にグラファイト16aを配合した潤滑材料を採用し、該潤滑材料を2回に亘って上記Vリブ15表面に塗布することにより、潤滑膜におけるシリコン樹脂とエポキシ樹脂とグラファイト16aとの配合比率を、シリコン樹脂50重量部、エポキシ樹脂50重量部、グラファイト40重量部としたことを除いて、実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例7とした。
<比較例8>
圧縮ゴム層11のVリブ15表面に対して塗布する潤滑材料として、エポキシ樹脂のみからなるバインダー樹脂にグラファイト16aを配合した潤滑材料を採用し、該潤滑材料を2回に亘って上記Vリブ15表面に塗布することにより、潤滑膜におけるエポキシ樹脂とグラファイト16aとの配合比率を、エポキシ樹脂100重量部、グラファイト40重量部としたことを除いて、実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例8とした。
Figure 2013130246
−評価試験方法−
上記実施例1〜4及び比較例1〜8の各Vリブドベルトについて、Vリブ15表面の被水時の摩擦係数μ’を測定する摩擦係数測定試験と共に、被水時異音評価のための注水走行試験を実施した。
<摩擦係数測定試験>
摩擦係数測定試験に使用した摩擦係数測定装置40を図10に示す。
摩擦係数測定装置40は、プーリ径がφ60mmのリブプーリ41とその側方に設けられたロードセル42とを備えている。なお、ロードセル42は、後述の試験片がリブプーリ41に向かって水平に延びた後に巻き掛けられる、つまり巻掛け角度が90°となるように設けられている。
この摩擦係数測定装置40のロードセル42に、各試験片(Vリブドベルト)の一端を、Vリブ15側が下側となるように固定し、Vリブ15側が接触するようにリブプーリ41に巻き掛け、他端に分銅43を取り付けて吊した。それに続いて、分銅43を引き下げようとする方向にリブプーリ41を、一定の滑り速度0.135m/sとなるように43rpmの回転速度で回転させ、ロードセル42で試験片におけるロードセル42とリブプーリ41との間の水平部分に負荷される張力T1を計測した。このとき、試験片のリブプーリ41と分銅43との垂直部分に負荷される張力T2は分銅43の重さ分に相当するものである。
試験片としては、実施例1〜4及び比較例1〜8のVリブドベルトのそれぞれについて、3PKの形状のものを用いた。そして、上記摩擦係数測定装置40を用いて、雰囲気温度25±2℃においてこれらの摩擦係数μ’を測定した。なお、摩擦係数μ’は数1の式に基づいて算出した。数1中の「θ」は試験片のリブプーリ41への巻き付け角であり、ここでは、θ=π/2である。
Figure 2013130246
<注水走行試験>
注水走行試験に使用した被水時異音評価用のベルト走行試験機50のプーリレイアウトを図11に示す。
ベルト走行試験機50は、4軸走行試験機であって、最下位置に設けられたプーリ径が140mmの駆動プーリ51と、該駆動プーリ51の左上方に設けられたプーリ径が60mmの第1従動プーリ52と、駆動プーリ51の右上方に設けられたプーリ径が100mmの第2従動プーリ53と、第1従動プーリ52と第2従動プーリ53との中間位置に設けられたプーリ径が95mmのアイドラプーリ54とを備えている。これらのうちアイドラプーリ54は平プーリであり、それ以外のプーリ51,52,53は全てリブプーリである。そして、評価対象のVリブドベルトは、Vリブ側が駆動プーリ51及び第1従動プーリ52に接触するように巻き掛けられ、ベルト背面がアイドラプーリ54に接触するように巻き掛けられた後、Vリブ側が第2従動プーリ53に巻き掛けられ、最後に駆動プーリ51に戻るように設けられている。さらに、第1従動プーリ52がVリブドベルトに接している場所から側方に10cm離れた位置には騒音計55が設置されている。
上記ベルト走行試験機50に評価対象のVリブドベルトをセットし、1リブ当たり100Nのベルト張力が負荷されるようにアイドラプーリ54の位置決めを行い、そして、駆動プーリ51を時計回りに750rpmで回転させてベルト走行させた。ベルト走行中には、Vリブドベルトが駆動プーリ51に巻き掛かる直前位置に1分当たり100mlの水をかける注水処理を5分間の間隔をあけて2回行った。このときの雰囲気温度は25±5℃であった。そして、走行試験機50に設置された騒音計55により、1回目の注水処理時のベルト走行で発生する異音の大きさと、2回目の注水処理時のベルト走行で発生する異音の大きさとをそれぞれ測定した。
−評価試験結果−
各Vリブドベルトについての摩擦係数μ’の測定結果とベルト走行時の異音発生状況の評価結果とを表2に示す。ベルト走行時の異音発生状況は、測定された異音が60dB未満のときを「○」、60dB以上且つ80dB未満のときを「△」、80dB以上のときを「×」として評価した。
Figure 2013130246
表2の評価結果から明らかなように、潤滑膜におけるバインダー樹脂とグラファイトとの含有比率がバインダー樹脂100重量部に対してグラファイト4重量部である比較例1では、摩擦係数μ’を十分に低下させることができておらず、注水時の異音抑制効果も薄い。一方、潤滑膜におけるバインダー樹脂とグラファイトとの含有比率がバインダー樹脂100重量部に対してグラファイト85重量部である比較例2では、注水時の異音抑制効果はあるが、摩擦係数μ’が低下し過ぎており、プーリに対して必要な摩擦伝導性を確保できず伝動ベルトとしての性能が損なわれている。
これに対して、潤滑膜におけるバインダー樹脂16bとグラファイト16aとの含有比率がバインダー樹脂100重量部に対してグラファイト5重量部以上且つ80重量部以下である実施例1〜4では、摩擦係数を程良く低下させることができており、注水時の異音抑制効果もある。
また、バインダー樹脂がシリコン樹脂のみからなる比較例3及び5では、注水時の異音抑制効果はあるが、その持続性には欠けている。一方、バインダー樹脂がアクリル樹脂のみからなる比較例4及び6では、摩擦係数μ’を十分に低下させることができておらず、注水時の異音抑制効果も薄い。また、バインダー樹脂がシリコン樹脂及びエポキシ樹脂からなる比較例7では、注水時の異音抑制効果はあるが、その持続性に欠けている。さらに、バインダー樹脂がエポキシ樹脂のみからなる比較例8では、摩擦係数μ’を十分に低下させることができておらず、注水時の異音抑制効果も薄い。
これに対して、バインダー樹脂16bがシリコン樹脂及びアクリル樹脂からなる実施例1〜4では、上述の如く摩擦係数を程良く低下させることができ、且つ注水時の異音抑制効果もある上に、該異音抑制効果が持続性を有している。
以上の結果から、グラファイト16aを保持するバインダー樹脂16bとして、ベルトシリコン樹脂とアクリル樹脂とを混合した樹脂組成物を採用し、該バインダー樹脂16bとグラファイト16aとの含有比率を、バインダー樹脂100重量部に対してグラファイト5重量部以上且つ80重量部以下に調整した潤滑膜16をVリブ15表面に設けることで、VリブドベルトBにおいて、ベルト走行による粘着摩耗を抑え、且つ被水時における優れた異音抑制効果を得ると共に、該異音抑制効果を長期に亘って持続させることができることが分かる。
以上説明したように、本発明は、摩擦伝動ベルト及びその製造方法について有用であり、特に、ベルト走行による粘着摩耗を抑え、且つ被水時における優れた異音抑制効果を得ると共に、該異音抑制効果を長期に亘って持続させることが要望される摩擦伝動ベルト及びその製造方法に適している。
B Vリブドベルト(摩擦伝動ベルト)
10 Vリブドベルト本体
16 潤滑膜
16a グラファイト
16b バインダー樹脂

Claims (4)

  1. ベルト本体の少なくともプーリ接触部分がゴム組成物で形成された摩擦伝動ベルトであって、
    上記ベルト本体のプーリ接触部分には、グラファイトと該グラファイトを当該プーリ接触部分に保持するためのバインダー樹脂とを配合してなる潤滑膜が設けられ、
    上記バインダー樹脂は、シリコン樹脂とアクリル樹脂とが混合されてなり、
    上記潤滑膜におけるバインダー樹脂とグラファイトとの含有比率は、バインダー樹脂100重量部に対して、グラファイト5重量部以上且つ80重量部以下である
    ことを特徴とする摩擦伝動ベルト。
  2. 請求項1に記載の摩擦伝動ベルトにおいて、
    上記ベルト本体のプーリ接触部分の摩擦係数は0.3以上且つ0.7以下である
    ことを特徴とする摩擦伝動ベルト。
  3. 請求項1又は2に記載の摩擦伝動ベルトにおいて、
    上記ベルト本体はVリブドベルト本体である
    ことを特徴とする摩擦伝動ベルト。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の摩擦伝動ベルトを製造する方法において、
    上記ベルト本体のプーリ接触部分に対し、上記シリコン樹脂とアクリル樹脂とが混合されてなるバインダー樹脂に上記グラファイトが配合された潤滑材料を複数回に亘って塗布することにより、上記潤滑膜を形成する
    ことを特徴とする摩擦伝動ベルトの製造方法。
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