JP2013124429A - ポリグリコール酸樹脂繊維製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】使用時の耐薬品性や機械的特性などの物性が良好であり、使用後においては、分解速度及び最終分解物を制御でき、環境負荷が小さい生分解性樹脂繊維製品を提供すること。
【解決手段】目付が1〜500g/m、及び繊維径が300nm〜100μmであるポリグリコール酸樹脂繊維製品であって、該ポリグリコール酸樹脂繊維製品に含有されるポリグリコール酸樹脂の水溶液中の濃度が70質量%以下であり、(1)温度80℃の、濃度0.1質量%以上の水酸化ナトリウム水溶液に相当するアルカリ性水溶液中における形態破壊時間が1,000秒以下、(2)温度80℃の、濃度0.1質量%以上の塩酸水溶液に相当する酸性水溶液中における形態破壊時間が2日以下、または(3)温度90℃の、pH6〜8の水溶液中における形態破壊時間が4日以下であることを特徴とする前記のポリグリコール酸樹脂繊維製品。
【選択図】なし

Description

本発明は、使用時の耐溶剤性(以下、「(耐薬品性)」ということもある。)などの物性が良好であり、使用後においては分解速度及び最終分解物を制御でき、廃棄物の減容が可能で、環境負荷が小さいポリグリコール酸樹脂繊維製品に関する。
近年、地球環境保全意識の高揚に伴い、生分解性樹脂材料が、土壌や海中などの自然界に存在する微生物や酵素により分解されるため、環境に対する負荷が小さい高分子材料として注目されている。ここでいう生分解とは、樹脂材料の生体内分解や自然界における分解を総称し、自然界においては、加水分解や微生物による分解等の作用により分解し、生物に害の少ないモノマーとなったり、微生物による消費等により消滅したり、最終的に、水と二酸化炭素に変換されたりして、環境に与える負荷が低減される。
一般に、生分解性樹脂材料は、i)化学合成系、ii)微生物産生系、及びiii)天然物系の樹脂に分類される。
化学合成系の例としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンカーボネート、ポリエチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂、及び上記の各樹脂を形成するモノマーを組み合わせて得られる共重合体、更には、ポリエチレンサクシネート・テレフタレート共重合体、ポリ酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが知られている。
微生物産生系の例としては、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシバリレート、及びこれらの樹脂を形成するモノマーによる共重合体などが知られている。また、天然物系の例としては、でん粉、絹、キチン、キトサンなどが知られている。
これらのうち、生分解性の脂肪族ポリエステル樹脂は、生体内分解吸収性を有しているため、手術用縫合糸や人工皮膚などの医療用高分子材料として利用されている。その応用分野は拡大されており、特別の廃棄処理操作を要することなく、自然界において徐々に消失する性質を利用した用途が着目されている。徐放性肥料容器として、使用後に山野、田畑または市街に残置できるロープやセメント化粧枠等の土木用資材として、育苗ネットや温室フィルム等の農業用資材として、更に最近では、磁気カード類や包装材料等の日用雑貨またはマーカー等のゴルフ場用部材などとして、活用されている。
繊維関連の応用としては、例えば、特許文献1(特開平6−264343号公報)には、一般式−O−CHR−CO−(ただし、Rは、Hまたは炭素数1〜3のアルキル基を示す。)を主たる繰り返し単位とする脂肪族ポリエステル樹脂からなる生分解性農業用繊維集合体が開示されている。特許文献1には、該脂肪族ポリエステル樹脂で構成した繊維束や織物、編物、組物、不織布、多軸積層体等の布帛等が、防虫用シート、遮光用シート、防霜シート、防風シート、農作物保管用シート等の農業用シート類;保温、防草、遮光等を目的とした農業用不織布;防鳥網、防風網、キュウリ等のつる用網、い草の倒伏防止網等の農業用ネット類;ピーマン等の吊り紐、煙草乾燥用ロープ、荷造用紐やロープ等の農業用ロープ類;紐類あるいは結束用テープ等の農業用テープ類;苗床、種床等;と、極めて広い用途に用いることができることが記載されており、具体例として、粘度平均分子量30万のポリ乳酸から形成した目付100g/mの不織布を農業用の育苗布として用いることが記載されている。
また、特許文献2(特開2000−45164号公報)には、作物栽培時に直接地面に展張・敷設する生分解性マルチシートとして、ポリ乳酸系長繊維不織布が開示されている。さらに、特許文献3(特開2010−255135号公報)には、生分解性を有する第一成分及び第二成分を含有する生分解性不織布及びこれを用いた繊維製品が開示され、生分解性樹脂の具体例として、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリエチレンテレフタレート・グルタレート、ポリブチレンテレフタレート・アジペートを使用した不織布が記載されている。
ポリグリコール酸樹脂は、それ自体生分解性脂肪族ポリエステル樹脂として知られており、引張強度等の機械的性質に優れ、生分解速度が高く、加水分解性を備えることから、単独で、または、種々の添加剤や他の生分解性樹脂等と組み合わせて、特許文献4〜6(特開平9−41220号公報、特開平10−102323号公報、特開2007−77558号公報)に開示されるように、釣り糸や漁網等の水産資材として使用されることがあった。
将来に亘る深刻な環境問題の一つとして、原子力発電所事故や使用済み核燃料処理等に伴う放射性物質放出による大気、土壌及び水質汚染が、重大な問題となっている。土壌汚染に関しては、土壌を掘削して最終処分場まで運搬する「掘削除去法」や、汚染土壌から汚染濃度の高い微粒子を取り除く「分級洗浄法」などが知られている。水質汚染に関しては、ゼオライト等の吸着剤を作用させて汚染水の浮遊放射性物質を吸着させる方法や、ろ過膜による処理などが知られている。
しかし、いずれの処理においても、処理に用いた工程資材、梱包材、フィルター、防護服やマスク等の作業者装備品など、放射性物質と接触した可能性がある資材が多量に発生し、大きな問題となっている。これらの発生により、放射性物質を保管する工数負担、及び、スペース負担の増加に加え、放射能汚染の更なる拡散のおそれも懸念される。
したがって、放射性物質を取り扱う種々の処理作業等において使用した資材類及び副資材類を、速やかに、環境及び作業者の汚染を回避しつつ適切に処理し、放射能汚染物質の発生体積を可能な限り減少させ、環境負荷を低減できる手段が切望されている。
さらに、放射性物質のみならず、病原菌等の医療汚染物質を取り扱う種々の処理作業等においても、同様に、使用した資材類及び副資材類を、速やかに、環境及び作業者の汚染を回避しつつ適切に処理し、汚染物質の発生体積を可能な限り減少させ、環境負荷を低減できる手段が切望されている。
また、放射性物質や医療汚染物質を取り扱うに当たっては、多くの場合、種々の有機溶剤等の薬品類を使用するので、これらの作業に使用する衣服、マスク、フィルター等の繊維製品については、耐溶剤性(耐薬品性)に優れ、かつ、作業動作や障害物との接触等により破損しない機械的特性が求められている。
特開平6−264343号公報 特開2000−45164号公報 特開2010−255135号公報 特開平9−41220号公報 特開平10−102323号公報 特開2007−77558号公報
本発明の課題は、使用時の耐溶剤性(耐薬品性)や機械的特性などの物性が良好であり、使用後においては、分解速度及び最終分解物を制御でき、廃棄物の減容が可能で、環境負荷が小さい生分解性樹脂繊維製品を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決することについて鋭意研究した結果、ポリグリコール酸樹脂繊維製品は、その繊維製品の形態や使用する材料を選択することにより、課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、目付が1〜500g/m、及び繊維径が300nm〜100μmであるポリグリコール酸樹脂繊維製品であって、
該ポリグリコール酸樹脂繊維製品に含有されるポリグリコール酸樹脂の水溶液中の濃度が70質量%以下であり、温度80℃の、濃度0.1質量%以上の水酸化ナトリウム水溶液に相当するアルカリ性水溶液中において、ポリグリコール酸樹脂繊維製品が形態を維持できなくなるまでの形態破壊時間が1,000秒以下であることを特徴とする前記のポリグリコール酸樹脂繊維製品が提供される。
また、本発明によれば、目付が1〜500g/m、及び繊維径が300nm〜100μmであるポリグリコール酸樹脂繊維製品であって、
該ポリグリコール酸樹脂繊維製品に含有されるポリグリコール酸樹脂の水溶液中の濃度が70質量%以下であり、温度80℃の、濃度0.1質量%以上の塩酸水溶液に相当する酸性水溶液中において、ポリグリコール酸樹脂繊維製品が形態を維持できなくなるまでの形態破壊時間が2日以下であることを特徴とする前記のポリグリコール酸樹脂繊維製品が提供される。
さらに、本発明によれば、目付が1〜500g/m、及び繊維径が300nm〜100μmであるポリグリコール酸樹脂繊維製品であって、
該ポリグリコール酸樹脂繊維製品に含有されるポリグリコール酸樹脂の水溶液中の濃度が70質量%以下であり、温度90℃の、pH6〜8の水溶液中において、ポリグリコール酸樹脂繊維製品が形態を維持できなくなるまでの形態破壊時間が4日以下であることを特徴とする前記のポリグリコール酸樹脂繊維製品が提供される。
そして、本発明によれば、より好ましい実施の態様として、(a)重量平均分子量(Mw)が10,000〜800,000、(b)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布が1.5〜4.0、(c)溶融粘度(融点+20℃の温度、せん断速度122sec−1で測定)が30〜3,000Pa・s、及び(d)末端カルボキシル基濃度が0.05〜300eq/10gであるポリグリコール酸樹脂から形成された前記のポリグリコール酸樹脂繊維製品が提供される。
さらにまた、本発明によれば、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルカン類、及び塩素含有炭化水素類に対する溶解度が、沸点−10℃の温度において1質量%未満である前記のポリグリコール酸樹脂繊維製品が提供される。
本発明によれば、目付が1〜500g/m、及び繊維径が300nm〜100μmであるポリグリコール酸樹脂繊維製品であって、該ポリグリコール酸樹脂繊維製品に含有されるポリグリコール酸樹脂の水溶液中の濃度が70質量%以下であり、(1)温度80℃の、濃度0.1質量%以上の水酸化ナトリウム水溶液に相当するアルカリ性水溶液中において、ポリグリコール酸樹脂繊維製品が形態を維持できなくなるまでの形態破壊時間が1,000秒以下、(2)温度80℃の、濃度0.1質量%以上の塩酸水溶液に相当する酸性水溶液中において、ポリグリコール酸樹脂繊維製品が形態を維持できなくなるまでの形態破壊時間が2日以下、または(3)温度90℃のpH6〜8の水溶液中において、ポリグリコール酸樹脂繊維製品が形態を維持できなくなるまでの形態破壊時間が4日以下であるとともに、使用時の耐溶剤性(耐薬品性)や機械的特性などの物性が良好であり、使用後においては、作用する水溶液種の選択により、加水分解速度を制御することができ、廃棄物の減容を実現することができ、必要に応じ所望の段階で生分解処理を行うことで、最終的には水と二酸化炭素へと変換して環境負荷を低減できる生分解性樹脂繊維製品を提供することができるという効果を奏する。
1.ポリグリコール酸樹脂
本発明のポリグリコール酸樹脂繊維製品を形成するポリグリコール酸樹脂(以下、「PGA」ということがある。)は、式:(−O−CH−CO−)で表されるグリコール酸繰り返し単位のみからなるグリコール酸のホモポリマー(グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリド(GL)の開環重合物を含む)に加えて、上記グリコール酸繰り返し単位を70質量%以上含むPGA共重合体を含むものである。
上記グリコリド等のグリコール酸モノマーとともに、PGA共重合体を与えるコモノマーとしては、例えば、シュウ酸エチレン(すなわち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド類、ラクトン類、カーボネート類、エーテル類、エーテルエステル類、アミド類などの環状モノマー;乳酸(L−乳酸、D−乳酸またはDL−乳酸)、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類と、こはく酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類またはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物;またはこれらの2種以上を挙げることができ、最も好ましくはL−乳酸であり、したがって、最も好ましいPGA共重合体として、グリコール酸(GA)とL−乳酸(LLA)との共重合体、すなわちPGLLAが挙げられる。これらコモノマーは、その重合体を、上記グリコリド等のグリコール酸モノマーとともに、PGA共重合体を与えるための出発原料として用いることもできる。
本発明のPGA繊維製品を形成するPGA中の上記グリコール酸繰り返し単位は70質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上であり、最も好ましくは99質量%以上である実質的にPGAホモポリマーである。グリコール酸繰り返し単位の割合が小さすぎると、PGAに期待される強度、耐溶剤性(耐薬品性)や分解性が乏しくなる。グリコール酸繰り返し単位以外の繰り返し単位は、30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以下の割合で用いられ、グリコール酸繰り返し単位以外の繰り返し単位を含まないものでもよい。
本発明のPGA繊維製品を形成するPGAとしては、所望の高分子量ポリマーを効率的に製造するために、グリコリド70〜100質量%及び上記した他のコモノマー30〜0質量%を重合して得られるPGAが好ましい。他のコモノマーとしては、2分子間の環状モノマーであってもよいし、環状モノマーでなく両者の混合物であってもよいが、本発明が目的とするPGA布帛を作製するためには、環状モノマーを用いた重合が好ましい。以下、グリコリド70〜100質量%及び他の環状モノマー30〜0質量%を開環重合して得られるPGAについて詳述する。
〔グリコリド〕
開環重合によってPGAを形成するグリコリドは、ヒドロキシカルボン酸の1種であるグリコール酸の2分子間環状エステルである。グリコリドの製造方法は、特に限定されないが、一般的には、グリコール酸オリゴマーを熱解重合することにより得ることができる。グリコール酸オリゴマーの熱解重合法として、例えば、溶融解重合法、固相解重合法、溶液解重合法などを採用することができ、また、クロロ酢酸塩の環状縮合物として得られるグリコリドも用いることができる。なお、所望により、グリコリドとしては、グリコリド量の20質量%を限度として、グリコール酸を含有するものを使用することができる。
本発明のPGA繊維製品を形成するPGAは、グリコリドのみを開環重合させて形成してもよいが、他の環状モノマーを共重合成分として同時に開環重合させて共重合体を形成してもよい。共重合体を形成する場合には、グリコリドの割合は、70質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上であり、最も好ましくは99質量%以上である実質的にPGAホモポリマーである。
〔他の環状モノマー〕
グリコリドとの共重合成分として使用することができる他の環状モノマーとしては、ラクチドなど他のヒドロキシカルボン酸の2分子間環状エステルのほか、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等)、トリメチレンカーボネート、1,3−ジオキサンなどの環状モノマーを使用することができる。好ましい他の環状モノマーは、他のヒドロキシカルボン酸の2分子間環状エステルであり、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、L−乳酸、D−乳酸、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシヘプタン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、α−ヒドロキシステアリン酸、及びこれらのアルキル置換体などを挙げることができる。特に好ましい他の環状モノマーは、乳酸の2分子間環状エステルであるラクチドであり、L体、D体、ラセミ体、これらの混合物のいずれであってもよい。
他の環状モノマーは、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以下の割合で用いられる。グリコリドと他の環状モノマーとを開環共重合することにより、PGA(共重合体)の融点を低下させて加工温度を下げたり、結晶化速度を制御して押出加工性や延伸加工性を改善したりすることができる。しかし、これらの環状モノマーの使用割合が大きすぎると、形成されるPGA(共重合体)の結晶性が損なわれ、耐熱性、機械的強度などが低下する。なお、PGAが、グリコリド100質量%から形成される場合は、他の環状モノマーは0質量%であり、このPGAも本発明の範囲に含有される。
〔開環重合反応〕
グリコリドの開環重合または開環共重合(以下、総称して、「開環(共)重合」ということがある。)は、好ましくは、少量の触媒の存在下に行われる。触媒は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化錫(例えば、二塩化錫、四塩化錫など)や有機カルボン酸錫(例えば、2−エチルヘキサン酸錫などのオクタン酸錫)などの錫系化合物;アルコキシチタネートなどのチタン系化合物;アルコキシアルミニウムなどのアルミニウム系化合物;ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウム系化合物;ハロゲン化アンチモン、酸化アンチモンなどのアンチモン系化合物;などがある。触媒の使用量は、環状エステルに対して、質量比で、好ましくは1〜1,000ppm、より好ましくは3〜300ppm程度である。
グリコリドの開環(共)重合は、生成するPGAの分子量や溶融粘度等の物性を制御するために、ラウリルアルコール等の高級アルコールや、その他のアルコール類や水などのプロトン性化合物を分子量調節剤として使用することができる。グリコリドには通常、微量の水分と、グリコール酸及び直鎖状のグリコール酸オリゴマーからなるヒドロキシカルボン酸化合物類が不純物として含まれていることがあり、これらの化合物も重合反応に作用する。そのため、これらの不純物の濃度を、例えばこれらの化合物中のカルボン酸量を中和滴定などによりモル濃度として定量し、この定量値に基づいて、目的の分子量等に応じプロトン性化合物としてアルコール類や水を添加し、全プロトン性化合物のモル濃度をグリコリドに対して制御することにより生成PGAの分子量等を調整することができる。また、物性改良のために、グリセリンなどの多価アルコールを添加してもよい。
グリコリドの開環(共)重合は、塊状重合でも、溶液重合でもよいが、多くの場合、塊状重合が採用される。塊状重合の重合装置としては、押出機型、パドル翼を持った縦型、ヘリカルリボン翼を持った縦型、押出機型やニーダー型の横型、アンプル型、板状型、管状型など様々な装置の中から、適宜選択することができる。また、溶液重合には、各種反応槽を用いることができる。
重合温度は、実質的な重合開始温度である120℃から300℃までの範囲内で目的に応じて適宜設定することができる。重合温度は、好ましくは130〜270℃、より好ましくは140〜260℃、特に好ましくは150〜250℃である。重合温度が低すぎると、生成したPGAの分子量分布が広くなりやすい。重合温度が高すぎると、生成したPGAが熱分解を受けやすくなる。重合時間は、3分間〜50時間、好ましくは5分間〜30時間の範囲内である。重合時間が短すぎると重合が十分に進行し難く、所定の分子量を実現することができない。重合時間が長すぎると生成したPGAが着色しやすくなる。
生成したPGAを固体状態とした後、所望により、更に固相重合を行ってもよい。固相重合とは、後述するPGAの融点(Tm)未満の温度で加熱することにより、固体状態を維持したままで熱処理する操作を意味する。この固相重合により、未反応モノマー、オリゴマーなどの低分子量成分が揮発・除去される。固相重合は、好ましくは1〜100時間、より好ましくは2〜50時間、特に好ましくは3〜30時間で行われる。
〔重量平均分子量(Mw)〕
本発明のPGA繊維製品を形成するPGAは、重量平均分子量(Mw)が、10,000〜800,000の範囲にあるものが好ましく、より好ましくは20,000〜600,000、更に好ましくは30,000〜400,000、特に好ましくは50,000〜300,000の範囲にあるものを選択する。重量平均分子量(Mw)が小さすぎると、PGA繊維製品の強度が不足することがある。重量平均分子量(Mw)が大きすぎると、溶融樹脂の吐出性が低下し、成形が困難となったり、分解を短時間で行うことができる易分解性のPGA繊維製品を得ることが困難となったりする傾向にある。PGAの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析装置を使用して求めたものである。具体的には、PGA試料を、トリフルオロ酢酸ナトリウムを所定の濃度で溶解させたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解させた後、メンブレンフィルターでろ過して試料溶液を得て、この試料溶液をGPC分析装置に注入して分子量を測定した結果から、重量平均分子量(Mw)を算出する。
〔分子量分布(Mw/Mn)〕
本発明において、PGAの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布(Mw/Mn)を1.5〜4.0の範囲内にすることは、早期に分解を受けやすい低分子量領域の重合体成分や分解速度が遅い高分子量領域の重合体成分の量を低減させることで、分解速度を制御することができるので好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が大きすぎると、分解速度がPGAの重量平均分子量(Mw)に依存しなくなり、分解の制御が困難になることがある。分子量分布(Mw/Mn)が小さすぎると、PGA繊維製品の強度を、所要の期間持続することが困難になることがある。分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.6〜3.7、より好ましくは1.65〜3.5である。分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量(Mw)と同様に、GPC分析装置を使用して求めることができる。
〔溶融粘度〕
本発明において、PGAの溶融粘度(融点+20℃の温度、せん断速度122sec−1で測定)は、通常20〜5,000Pa・sの範囲であり、好ましくは25〜4,000Pa・s、より好ましくは30〜3,000Pa・sの範囲である。PGAの溶融粘度が大きすぎると、PGAの繊維を得ることが困難となることがあり、所望する特性を有するPGA繊維製品を得られないことがある。PGAの溶融粘度が小さすぎると、製造工程によっては曳糸性が確保できなかったり、PGA繊維及びPGA繊維製品の強度が不足することがある。
〔末端カルボキシル基濃度〕
本発明において、PGAの末端カルボキシル基濃度は、好ましくは0.05〜300eq/10g、より好ましくは0.1〜250eq/10g、更に好ましくは0.5〜200eq/10g、特に好ましくは1〜75eq/10gとすることによって、PGAの分解性能を最適な範囲に調整することができる。すなわち、PGAの分子中には、カルボキシル基及び水酸基が存在している。このうち分子末端にあるカルボキシル基の濃度、すなわち、末端カルボキシル基濃度が小さすぎると加水分解性が低すぎるため、PGAの分解速度が低下し、PGAの分解を短時間で行うことができる易分解性のPGA繊維製品を得ることが困難となることがある。他方、末端カルボキシル基濃度が大きすぎると、PGAの加水分解が早く進行するため、長期間に亘って、強度や耐溶剤性(耐薬品性)などPGAの優れた性能を発揮することができず、また、PGAの初期強度が低いため、強度の低下が速くなることがある。末端カルボキシル基濃度を調整するには、例えば、PGAを重合するときに、触媒または分子量調節剤の種類や添加量を変更するなどの方法によればよい。また、後述する末端封止剤を配合することによっても、末端カルボキシル基濃度を調整することができる。
〔融点(Tm)〕
本発明においては、PGAの融点は、通常190〜245℃であり、共重合成分の種類及び含有割合によって調整することができる。より好ましくは195〜240℃、更に好ましくは198〜235℃、特に好ましくは205〜230℃である。PGAのホモポリマーの融点は、通常220℃程度である。融点が低すぎると、PGA繊維または繊維製品の耐熱性が不十分になる傾向にある。融点が高すぎると、PGA繊維製品の製造が困難となったり、PGA繊維製品の柔軟性が不足することがある。PGAの融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気中で求めたものである。具体的には、試料PGAを、窒素雰囲気中、20℃/分の昇温速度で、−50℃から融点(Tm)+60℃付近の温度まで加熱する昇温過程で検出される、結晶溶融に伴う吸熱ピークの温度を意味する。該吸収ピークが複数みられる場合には、吸熱ピーク面積が最も大きいピークを融点(Tm)とする。
〔ガラス転移温度(Tg)〕
本発明において、PGAのガラス転移温度(Tg)は、通常25〜60℃であり、好ましくは30〜50℃、より好ましくは35〜45℃である。PGAのガラス転移温度(Tg)は、重量平均分子量(Mw)、分子量分布、共重合成分の種類及び含有割合等によって調整することができる。PGAのガラス転移温度(Tg)は、融点(Tm)の測定と同様に、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気中で求めたものである。具体的には、試料PGAを、窒素雰囲気中、20℃/分の昇温速度で、−50℃から融点(Tm)+60℃付近の温度まで加熱する昇温過程で検出される、ガラス状態からゴム状態への転移領域に相当する熱量変化の開始温度をガラス転移点(Tg)とする。ガラス転移温度(Tg)が低すぎると、得られるPGA繊維製品の表面が過度に軟化するなど、保管時の形状維持が困難になることがある。ガラス転移温度(Tg)が高すぎると、PGA繊維製品の製造が困難となったり、PGA繊維製品の柔軟性が不足することがある。
本発明のPGA繊維製品は、好ましくは、(a)重量平均分子量(Mw)が10,000〜800,000、(b)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布が1.5〜4.0、(c)溶融粘度(融点+20℃の温度、せん断速度122sec−1で測定)が30〜3,000Pa・s、及び(d)末端カルボキシル基濃度が0.05〜300eq/10gであるPGAから形成されたPGA繊維製品である。
〔他の樹脂〕
本発明のPGA繊維製品を形成するPGAは、更に、本発明の目的に反しない限度において、他の脂肪族ポリエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリグリコール類、変性ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリL−リジンなどのポリアミド類などの他の樹脂をブレンドして成形することができる。
該他の樹脂としては、好ましくは生分解性を有する樹脂、より好ましくは生分解性を有する脂肪族ポリエステル類、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリβ−プロピオラクトン、ポリカプロラクトンなどが挙げられ、特に好ましくはポリ乳酸である。
これら他の樹脂の配合量は、繊維製品100質量部中において、40質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは35質量部以下であり、ブレンドする樹脂によっては10質量部以下でもよい。
〔添加剤〕
本発明のPGA繊維製品を形成するPGAは、更に、物性を高め、また、他の各種物性を付加するなどのために各種の添加剤として、脂肪族ポリエステル系樹脂に通常使用されるような、可塑剤、末端封止剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、充填剤、核剤、内部離型剤、艶消し剤、導電性付与剤、帯電制御剤、帯電防止剤、滑剤、その他の加工助剤などを添加することができる。
特に、PGAに、カルボキシル基末端封止剤を配合すると、得られるPGA布帛の耐加水分解性や長期保管性が向上するので好ましい。すなわち、カルボキシル基末端封止剤を配合することにより、PGA布帛の耐加水分解性が改善され、保存中の分子量低下を一層抑制することができる。カルボキシル基末端封止剤としては、カルボキシル基末端封止作用を有し、脂肪族ポリエステルの耐水性向上剤として知られている化合物を用いることができる。カルボキシル基末端封止剤としては、例えば、N,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物;2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2−フェニル−2−オキサゾリン、スチレン・イソプロペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン化合物;2−メトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン等のオキサジン化合物;N−グリシジルフタルイミド、シクロへキセンオキシド、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート等のエポキシ化合物;などが挙げられる。これらのカルボキシル基末端封止剤の中でも、カルボジイミド化合物が好ましく、芳香族、脂環族、及び脂肪族のいずれのカルボジイミド化合物も用いられるが、とりわけ芳香族カルボジイミド化合物が好ましく、特に純度の高いものが耐水性改善効果を与える。カルボキシル基末端封止剤は、PGA100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部の割合で用いられる。
また、PGAに熱安定剤を配合すると、PGA繊維の成形時に耐熱性が向上するので、より好ましい。熱安定剤としては、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト等のペンタエリスリトール骨格構造を有するリン酸エステル;モノ−またはジ−ステアリルアシッドホスフェートあるいはこれらの混合物等の、炭素数が好ましくは8〜24のアルキル基を有するリン酸アルキルエステルまたは亜リン酸アルキルエステル;炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等の炭酸金属塩;一般に重合触媒不活性剤として知られる、ビス[2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジン]ドデカン酸、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンなどの−CONHNH−CO−単位を有するヒドラジン系化合物;3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール系化合物;トリアジン系化合物;などが挙げられる。熱安定剤は、PGA100質量部に対して、通常3質量部以下、好ましくは0.001〜1質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部、特に好ましくは0.01〜0.1質量部(100〜1,000ppm)の割合で用いられる。
2.ポリグリコール酸樹脂繊維製品
本発明のPGA繊維製品を形成するPGA繊維は、PGAのみ、PGA共重合体、PGAと他の樹脂をブレンドしたものを、公知である紡糸・紡績技術などにより長繊維または短繊維、さらには直接不織布にした形態のものを意味する。これらPGA繊維から形成されるPGA繊維製品は、PGA繊維を主成分とする布帛、及び、これらを備える積層体を含むものである。PGA繊維を主成分とする布帛としては、織布、編布、不織布、綿状体またはマットなどが挙げられるが、好ましくは不織布または織布であり、特に好ましくは不織布である。不織布としては、公知技術を用いて製造するメルトブロー不織布、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、水流または気流による3次元交絡不織布などが挙げられ、更には抄紙法によって製造した不織布でもよい。
本発明のPGA繊維製品は、PGA繊維を、60質量%以上含有する繊維製品であり、PGA繊維を、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上含有する繊維製品であって、PGA繊維のみから形成された布帛等の繊維製品でもよい。本発明のPGA繊維製品は、PGA繊維以外の繊維等を、40質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下含有してもよく、PGA以外の繊維等を含有しなくてもよい。PGA繊維以外の繊維等としては、PLA繊維等の生分解性脂肪族ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等の芳香族ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維等の周知の繊維でもよいし、低温融着性の繊維等が挙げられ、更に前記周知の繊維からあらかじめ形成された布帛等でもよい。好ましくは、PLA繊維である。PGA繊維の含有量が少なすぎると、生分解性や加水分解性が小さくなる結果、環境負荷が大きくなったり、交換や回収等の負担が増えたりすることがあり、また、機械的特性や耐溶剤性(耐薬品性)が十分でないことがある。
本発明のPGA繊維製品は、目付が1〜500g/m、及び繊維径が300nm〜100μmであることに特徴を有する。
〔目付〕
本発明のPGA繊維製品は、目付が1〜500g/mの範囲のものであり、好ましくは2〜400g/m、より好ましくは3〜300g/m、更に好ましくは4〜200g/mの範囲である。PGA繊維製品の目付は、JIS L 1096に準じて測定する。PGA繊維製品の目付が、1g/mより小さいと、繊維製品の強度が不足することがある。PGA繊維製品の目付が、500g/mより大きいと、布帛の柔軟性が低下したり、使用後のPGA繊維製品の加水分解または生分解に長時間を要したりする傾向がある。
〔繊維径〕
本発明のPGA繊維製品は、繊維径が300nm〜100μmの範囲のものであり、好ましくは500nm〜70μm、より好ましくは800nm〜50μm、更に好ましくは1〜30μmの範囲である。不織布等のPGA繊維製品の繊維径が100μm超であると、不織布等の繊維製品中の繊維の結節点が少なくなる結果、繊維製品の各種フィルター効果が低下することがある。PGA繊維製品の繊維径が300nm未満であると、PGA繊維製品が高密度化する反面、摩擦・磨耗による毛羽立ちが生じやすく、また使用後のPGA繊維製品の加水分解または生分解が速くなるため分解性の制御が困難となることがある。
PGA繊維製品を形成するPGA繊維の繊維径の測定は、電子顕微鏡観察により、10箇所のPGA繊維の繊維径を測定して、その平均値をPGA繊維の繊維径とする。
〔厚み」
本発明のPGA繊維製品の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜1,000μm、より好ましくは10〜700μm、更に好ましくは20〜500μmの範囲である。PGA繊維製品の厚みが小さすぎると、繊維製品の強度が不足することがある。PGA繊維製品の厚みが大きすぎると、使用後のPGA繊維製品の加水分解または生分解速度の制御が困難になる。PGA繊維製品の厚みは、JIS L 1096に準じて、荷重0.7kPaで測定したものである。
3.ポリグリコール酸樹脂繊維製品の製造方法
本発明のPGA繊維製品の製造方法は、特に限定されず、それ自体公知である技術を用いて紡糸・紡績した長繊維または短繊維から形成される、PGA繊維を主成分とする繊維製品を得るための通常の方法によって製造することができる。
例えば、PGA不織布の製造方法としては、メルトブロー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、水流または気流による3次元交絡法などが挙げられ、更には抄紙法によって、PGA不織布を製造することもできる。
さらに、製造されたPGA不織布に対して、熱処理機を使用して所要温度で所定時間の熱処理を行って、熱処理PGA不織布としてもよい。熱処理温度,処理時間は、不織布に含有される繊維の融点や含有量等により必ずしも一定しないが、不織布の繊維径を大きく変化させないために、融点未満の温度とすることが好ましく、通常、70〜200℃の温度で1秒間〜60分間の熱処理を行うことが好ましく、より好ましくは80〜180℃の温度で3秒間〜40分間、更に好ましくは90〜150℃の温度で5秒間〜30分間の熱処理をすればよい。
4.ポリグリコール酸樹脂繊維製品の水溶液による分解性
本発明のPGA繊維製品は、該PGA繊維製品に含有されるPGAの水溶液中の濃度(以下、「PGA濃度」ということがある。)が70質量%以下であり、かつ、所定温度である、水溶液、具体的には後述するアルカリ性水溶液、酸性水溶液、またはpH6〜8の水溶液中において、PGA繊維製品が形態を維持できなくなるまでの形態破壊時間(以下、単に「形態破壊時間」ということがある。)が、所定値以下であることを特徴とする。
〔形態破壊時間〕
本発明において、PGA繊維製品の形態破壊時間とは、PGA繊維製品を所定温度の水溶液(本発明においては、アルカリ性水溶液、酸性水溶液、またはpH6〜8の水溶液である。)中に浸漬したとき、浸漬の開始時から、該PGA繊維製品が形態を維持できなくなるまでの時間をいい、具体的には、PGA繊維製品の、浸漬の開始時からの重量減少率が40%となるまでの時間を、形態破壊時間とする。
形態破壊時間の測定方法は、以下のとおりである。PGA繊維製品を所定質量、すなわち所定寸法に切り出して、必要十分な量のPGA繊維製品試料を得る。PGA繊維製品試料の質量(「浸漬前質量」という。)を測定した後、所定温度に調整した所定量の水溶液に浸漬し、あらかじめ設定した所定時間毎に、PGA繊維製品試料を取り出し、脱イオン水で洗浄し、水を拭き取って、質量(「浸漬後質量」という。)を測定する。浸漬後質量と浸漬前質量とから、重量減少率を算出し、PGA繊維製品の重量減少率が40%となるまで測定を継続する。通常、PGA繊維製品の重量減少率が40%となる時間は、PGA繊維製品の重量減少率が40%の近傍で40%未満の値となった時間と、該重量減少率が40%の近傍で40%を超える値となった時間とから、按分比例によって算出する。
形態破壊時間の測定に使用するPGA繊維製品試料の質量は、該PGA繊維製品試料を浸漬する水溶液に対して、PGA濃度が70質量%以下であるように定めることが必要である。PGA繊維製品試料の質量が、該PGA繊維製品試料を浸漬する水溶液に対して、PGA濃度として70質量%を超えるものとなる場合は、水溶液中におけるPGA繊維製品を形成するPGAの分解反応によって生成するグリコール酸が該水溶液中で飽和状態となり、PGAの分解反応の進行が、途中で停止してしまうことがある。したがって、前記のPGA濃度は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下の範囲とする。PGA繊維製品の形態や水溶液の種類によっては、PGA濃度を10質量%以下、更には5質量%以下としてもよい。PGA濃度の下限値は特にないが、浸漬前質量及び浸漬後質量の測定精度の観点から、0.1質量%以上、多くの場合0.3質量%以上とする。なお、PGA繊維製品が、PGA以外の材料を含有するものである場合は、PGA繊維製品試料中に含有されるPGAが、水溶液に対して濃度70質量%以下となるように、PGA繊維製品試料の質量(大きさ)、及び、該試料を浸漬する水溶液の質量(体積)を定める。
形態破壊時間の測定において、PGA繊維製品試料を、水溶液に浸漬して、あらかじめ設定した所定時間毎に取り出す、該あらかじめ設定した所定時間は、特に限定はないが、通常、想定される形態破壊時間の1/5〜1/100の範囲で時間を設定する。該あらかじめ設定した所定時間は、測定期間中、均一でもよいし、途中で変動させてもよい。例えば、重量減少率が30〜38%のあらかじめ定めた値(例えば、「36%」などと定める。)を超えた時点以降に、該重量減少率のあらかじめ定めた値(例えば、「36%」など。)に到達する以前における設定時間の1/2〜1/10に相当する設定時間に変更してもよい。
5.ポリグリコール酸樹脂繊維製品のアルカリ性水溶液による分解性
本発明のPGA繊維製品は、PGA濃度が70質量%以下であり、温度80℃の、濃度0.1質量%以上の水酸化ナトリウム水溶液に相当するアルカリ性水溶液中において、前記の形態破壊時間が1,000秒以下であることを特徴とする。
本発明のPGA繊維製品は、アルカリ性水溶液の水酸化ナトリウム濃度相当の濃度及び/またはアルカリ性水溶液中におけるPGA濃度、及び/または加水分解を行う温度を調整することによって、PGA繊維製品の加水分解速度を調整することができる。
すなわち、アルカリ性水溶液の濃度(水酸化ナトリウム濃度相当をいう。以下同じ。)を、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、特に好ましくは3質量%以上とすることによって、形態破壊時間が1,000秒未満の短時間でPGA繊維製品の加水分解を行うことができる。
また、アルカリ性水溶液中においては、PGA濃度を、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下の範囲とすることによって、形態破壊時間が1,000秒未満の短時間でPGA繊維製品の加水分解を行うことができる。
さらにまた、アルカリ性水溶液によるPGA繊維製品の加水分解を行う温度を、作業者や作業環境の安全等を考慮しつつ、80℃より高い温度とすれば、形態破壊時間が1,000秒未満の短時間でPGA繊維製品の加水分解を行うことができる。また、アルカリ性水溶液の濃度及び/またはPGA濃度との組み合わせにより、80℃より低い温度、例えば、20℃、40℃または60℃のような温度においてもPGA繊維製品の加水分解を行うことができ、形態破壊時間が1,000秒未満の短時間でPGA繊維製品の加水分解を行うことも可能である。
PGA繊維製品のアルカリ性水溶液による分解性を確認するためには、PGA繊維製品試料から、例えば、10cm×10cmの大きさに切り出して、必要十分な枚数のPGA繊維製品試料を得て、例えば体積50cmの、温度80℃に調整した、濃度0.1質量%以上の水酸化ナトリウム水溶液に相当するアルカリ性水溶液に浸漬することによって、形態破壊時間を測定すればよい。この測定方法による形態破壊時間が、好ましくは800秒以下、より好ましくは600秒以下、更に好ましくは500秒以下であると、アルカリ性水溶液による加水分解性が優れたものであるといえる。
6.ポリグリコール酸樹脂繊維製品の酸性水溶液による分解性
本発明のPGA繊維製品は、PGA濃度が70質量%以下であり、温度80℃の、濃度0.1質量%以上の塩酸水溶液に相当する酸性水溶液中において、前記の形態破壊時間が2日(48時間)以下であることを特徴とする。
本発明のPGA繊維製品は、酸性水溶液の塩酸濃度相当の濃度及び/または酸性水溶液中におけるPGA濃度、及び/または加水分解を行う温度を調整することによって、PGA繊維製品の加水分解速度を調整することができる。
すなわち、酸性水溶液の濃度(塩酸濃度相当をいう。以下同じ。)を、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、特に好ましくは3質量%以上とすることによって、形態破壊時間が2日未満の短時間でPGA繊維製品の加水分解を行うことができる。
また、酸性水溶液中においては、PGA濃度を、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下の範囲とすることによって、形態破壊時間が2日未満の短時間でPGA繊維製品の加水分解を行うことができる。
さらにまた、酸性水溶液によるPGA繊維製品の加水分解を行う温度を、作業者や作業環境の安全等を考慮しつつ、80℃より高い温度とすれば、形態破壊時間が2日未満の短時間でPGA繊維製品の加水分解を行うことができる。また、酸性水溶液の濃度及び/またはPGA濃度との組み合わせにより、80℃より低い温度、例えば、20℃、40℃または60℃のような温度においてもPGA繊維製品の加水分解を行うことができ、形態破壊時間が2日未満の短時間でPGA繊維製品の加水分解を行うことも可能である。
PGA繊維製品の酸性水溶液による分解性を確認するためには、PGA繊維製品から、例えば、10cm×10cmの大きさに切り出して、必要十分な枚数のPGA繊維製品試料を得て、例えば体積50cmの、温度80℃に調整した、濃度0.1質量%以上の塩酸水溶液に相当する酸性水溶液に浸漬することによって、形態破壊時間を測定すればよい。この測定方法による形態破壊時間が、好ましくは45時間以下、より好ましくは42時間以下、更に好ましくは38時間以下であると、酸性水溶液による加水分解性が優れたものであるといえる。
7.ポリグリコール酸樹脂繊維製品のpH6〜8の水溶液による分解性
本発明のPGA繊維製品は、PGA濃度が70質量%以下であり、温度90℃の、pH6〜8の水溶液中において、前記の形態破壊時間が4日以下であることを特徴とする。
本発明のPGA繊維製品は、pH6〜8の水溶液のpH、及び/またはpH6〜8の水溶液中におけるPGA濃度、及び/または加水分解を行う温度を調整することによって、PGA繊維製品の加水分解速度を調整することができる。
すなわち、本発明のPGA繊維製品は、温度90℃において、pH7の水に中においても分解することが可能なものであるが、さらに、pH6〜8の水溶液のpHを、好ましくは6〜6.8または7.2〜8、より好ましくは6〜6.5または7.5〜8とすることによって、形態破壊時間が4日未満の短時間でPGA繊維製品の加水分解を行うことができる。pH6〜8の水溶液としては、必要によりpHを調整した蒸留水、脱イオン水などの水を使用することができ、更に、ろ過した水道水、河川水、湖水、海水等を使用することも可能である。なお、pHの調整は、常法によって可能である。
また、pH6〜8の水溶液中においては、PGA濃度を、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下の範囲とすることによって、形態破壊時間が4日未満の短時間でPGA繊維製品の加水分解を行うことができる。
さらにまた、pH6〜8の水溶液によるPGA繊維製品の加水分解を行う温度を、作業者や作業環境の安全等を考慮しつつ、90℃より高い温度とすれば、形態破壊時間が4日未満の短時間でPGA繊維製品の加水分解を行うことができる。また、pH6〜8の水溶液のpH及び/またはPGA濃度との組み合わせにより、90℃より低い温度、例えば、20℃、40℃または60℃のような温度においてもPGA繊維製品の加水分解を行うことができ、形態破壊時間が4日未満の短時間でPGA繊維製品の加水分解を行うことも可能である。
PGA繊維製品のpH6〜8の水溶液による分解性を確認するためには、PGA繊維製品試料から、例えば、10cm×10cmの大きさに切り出して、必要十分な枚数のPGA繊維製品試料を得て、例えば体積50cmの、温度90℃に調整したpH6〜8の水溶液に浸漬することによって、形態破壊時間を測定すればよい。この測定方法による形態破壊時間が、好ましくは3.5日以下、より好ましくは3日以下、更に好ましくは2.5日以下であると、pH6〜8の水溶液による加水分解性が優れたものであるといえる。
8.PGA繊維製品の耐溶剤性(耐薬品性)
本発明のPGA繊維製品は、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルカン類、及び塩素含有炭化水素類に対する溶解度が、沸点−10℃の温度において1質量%未満であると、放射性物質や医療汚染物質等を取り扱う環境において接触する可能性が高い溶剤に対して、十分な耐溶剤性(耐薬品性)を有するので、好ましい。本発明のPGA繊維製品は、通常、常温〜温度100℃の環境下で使用されるものであることから、これらの溶剤は、常圧下における沸点が、常温〜110℃の範囲にあるものから選ぶことが好ましい。
溶剤の具体例を挙げると、アルコール類としては、エタノール(沸点78℃)、n−プロパノール(沸点97℃)、イソプロパノール(沸点82℃)、2−ブタノール(沸点100℃)、イソブチルアルコール(沸点107℃)等であり、エステル類としては、酢酸メチル(沸点56℃)、酢酸エチル(沸点77℃)、酢酸プロピル(沸点102℃)等であり、エーテル類としては、ジメチルエーテル(沸点25℃)、ジエチルエーテル(沸点35℃)、ジイソプロピルエーテル(沸点68〜69℃)、テトラヒドロフラン(沸点66℃)等であり、ケトン類としては、アセトン(沸点57℃)、メチルエチルケトン(沸点80℃)、ジエチルケトン(沸点102℃)、メチルプロピルケトン(沸点102℃)、等であり、アルカン類としては、ペンタン(沸点36℃)、ヘキサン(沸点69℃)、ヘプタン(沸点98℃)等であり、塩素含有炭化水素類としては、ジクロロメタン(沸点40℃)、クロロホルム(沸点61℃)、四塩化炭素(沸点77℃)、ジロロエタン(沸点84℃)、トリクロロエタン(沸点74℃)、トリクロロエテン(沸点87℃)等である。
PGA繊維製品の、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルカン類、及び塩素含有炭化水素類に対する溶解度が、沸点−10℃の温度において1質量%未満であることは、該PGA繊維製品の、四塩化炭素に対する溶解度が、四塩化炭素の沸点−10℃である67℃の温度において1質量%未満であり、かつ、アセトンに対する溶解度が、アセトンの沸点−10℃である47℃の温度において1質量%未満であることにより、確認することができる。
PGA繊維製品の、温度67℃における四塩化炭素に対する溶解度、または、温度47℃におけるアセトンに対する溶解度の測定方法は、以下の方法によって行う。すなわち、PGA繊維製品を10cm×10cmの大きさに切り出して得たPGA繊維製品試料の質量を測定する。該PGA繊維製品試料を、温度67℃に調整した四塩化炭素50cmに1日間(24時間)浸漬した後、または、温度47℃に調整したアセトン50cmに1日間(24時間)浸漬した後、試料を取り出して、脱イオン水で洗浄し、水を拭き取って、質量を測定する。前記の四塩化炭素またはアセトンに浸漬する前の試料の質量と比較して、その差から、温度67℃における四塩化炭素に対する溶解度(質量%)、または、温度47℃におけるアセトンに対する溶解度(質量%)を算出する。これらの溶解度(質量%)が、いずれも1質量%未満であれば、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルカン類、及び塩素含有炭化水素類等、放射性物質や医療汚染物質を取り扱う現場において接触する可能性が高い溶剤に対して、十分な耐溶剤性(耐薬品性)を有する。
9.PGA繊維製品の用途
本発明のPGA繊維製品は、アルカリ性水溶液、酸性水溶液及び/またはpH6〜8の水溶液による加水分解性、並びに、耐溶剤性(耐薬品性)に優れたものである。したがって、放射性物質や医療汚染物質等を取り扱う環境などにおいて、使用時の耐溶剤性(耐薬品性)や機械的特性などの物性が良好であるとともに、使用後においては、分解速度及び最終分解物を制御することができ、また、廃棄物の減容を実現することができる。さらに、必要に応じ所望の段階で生分解処理を行うことで、最終的には水と二酸化炭素に変換されるため、環境負荷が小さい生分解性樹脂繊維製品が提供される。具体的には、従来から布帛等の繊維製品が用いられてきた用途、例えば、マスク類、フィルター類、カバー類、緩衝材類、放射線防護服や下着その他の被服類などに使用することができる。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を更に説明するが、本発明は、本実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例におけるPGA繊維製品またはPGA繊維製品を形成するPGAの物性または特性の測定方法は、以下のとおりである。
(1)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn):
PGAの重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析装置を用いて、以下の条件で行った。トリフルオロ酢酸ナトリウムを5mMの濃度で溶解したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に、PGA試料10mgを溶解させて10cmとした後、メンブレンフィルターでろ過して試料溶液を得て、この試料溶液10μlをGPC分析装置に注入して、下記の測定条件で分子量を測定することによって求めた。
<GPC測定条件>
装置:昭和電工株式会社製GPC104
カラム:昭和電工株式会社製HFIP−806M 2本(直列接続)+プレカラム:HFIP−LG 1本
カラム温度:40℃
溶離液:トリフルオロ酢酸ナトリウムを5mMの濃度で溶解させたHFIP溶液
検出器:示差屈折率計
分子量校正:分子量の異なる標準分子量のポリメタクリル酸メチル5種(Polymer laboratories Ltd.製)を用いて作成した分子量の検量線データを使用
(2)溶融粘度
PGAの溶融粘度は、キャピラリー(1mmφ×10mmL)を装着した株式会社東洋精機製作所製「キャピログラフ1−C」を用いて測定した。設定温度(融点+20℃)に加熱した装置に、サンプル約20gを導入し、5分間保持した後、せん断速度122sec−1での溶融粘度を測定した。
(3)末端カルボキシル基濃度
PGAの末端カルボキシル基濃度の測定は、PGA約300mgを、150℃で約3分間加熱してジメチルスルホキシド10cmに完全に溶解させ、室温まで冷却した後、指示薬(0.1質量%のブロモチモールブルー/アルコール溶液)を2滴加えた後、0.02規定の水酸化ナトリウム/ベンジルアルコール溶液を加えていき、目視で溶液の色が黄色から緑色に変わった点を終点とした。その時の滴下量よりPGA1トン(10g)あたりの当量として末端カルボキシル基濃度を算出した。
(4)融点(Tm)及びガラス転移温度(Tg)
PGA10mgを、示差走査熱量計(DSC;株式会社島津製作所製DSC−60)を使用して、窒素雰囲気中、20℃/分の昇温速度で、−50℃から融点(Tm)+60℃付近の温度まで加熱昇温するときの、昇温過程で検出される吸熱ピークから、PGAの融点(Tm)を検出し、昇温過程で検出されるガラス状態からゴム状態への転移領域に相当する熱量変化の開始温度から、PGAのガラス転移温度(Tg)を検出した。融点(Tm)が複数みられる場合には、吸熱ピーク面積が最も大きいピークの温度をPGAの融点(Tm)とした。
(5)繊維製品の目付
繊維製品の目付は、JIS L 1096に準じて測定した。
(6)繊維製品の繊維径
繊維製品を形成する繊維の繊維径の測定は、電子顕微鏡観察により、10箇所の繊維径を測定して、その平均値を、繊維の繊維径とした。
(7)繊維製品の厚み
繊維製品の厚みは、JIS L 1096に準じて、荷重0.7kPaで測定した。
(8)生分解性
繊維製品の生分解性は、縦5cm×横5cmの大きさに切り出した繊維製品の試料を、40℃に温度を保った土壌中に埋設し、1か月後に掘り出して、繊維製品の試料の状態を目視で観察した。
1.アルカリ性水溶液による分解性試験
[実施例1]
(PGA不織布の製造)
ペレット状のPGA(株式会社クレハ製、Mw:21万、Mw/Mn:2.3、溶融粘度(温度240℃、せん断速度122sec−1で測定):610Pa・s、融点:220℃、ガラス転移温度:43℃、末端カルボキシル基濃度:2eq/10g)を押出機で溶融し、紡糸口金を持つダイから吐出して得たPGA繊維をベルトコンベア上で集積することによって、PGAから形成したメルトブロー不織布(以下、「PGA不織布」ということがある。)を作製した。その際、吐出量とベルトコンベアの速度を調整することにより積層量を制御し、目付50g/m、厚み130μmのPGAの不織布を調製した。不織布を形成するPGA繊維の繊維径は4.4μmであった。
(PGA不織布の分解性試験)
調製されたPGA不織布を10cm×10cmの大きさに切り出して、必要量のPGA繊維製品試料を得た(試料の質量500mg)。このPGA不織布の試料を、温度80℃に調整した、水酸化ナトリウム濃度が5質量%である水酸化ナトリウム水溶液(以下、「5wt%NaOH」という。他のアルカリ性水溶液または酸性水溶液についても、同様の表記をする。)50cmに浸漬し(PGA濃度は、約1質量%)、形態破壊時間を測定して、アルカリ性水溶液による分解性試験を行った。形態破壊時間の測定における試料の取り出し間隔の所定時間(以下、「試料の取り出し間隔」ということがある。)は、水酸化ナトリウム水溶液への浸漬を開始してから30秒間とした。試料を取り出して、水洗し、水を拭き取って実施した。結果を表1に示す。
(PGA不織布の生分解性試験)
調製されたPGA不織布から前記の所定の大きさに切り出して調製したPGA不織布の試料を、40℃に温度を保った土壌中に埋設し、1か月後に掘り出して、不織布の状態を目視で観察したところ、該不織布は、一部ばらばらの状態で元の形状を保持しておらず、さらに、不織布端をピンセットでつかんで取り出そうとしたところ、崩れてしまって取り出すことができなかった。
[実施例2]
(PGA不織布の分解性試験)
実施例1において製造したPGA不織布を、温度80℃に調整した、水酸化ナトリウムの濃度が5質量%である水酸化ナトリウム水溶液に代えて、温度80℃に調整した、水酸化ナトリウムの濃度が1質量%である水酸化ナトリウム水溶液(1wt%NaOH)50cmに浸漬して、形態破壊時間を測定したことを除いて、実施例1と同様にして、アルカリ性水溶液による分解性試験を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
(PGA織布の製造)
実施例1において使用したペレット状のPGAを押出機で溶融し、紡糸口金を持つダイから吐出し、延伸して、PGA繊維を得た。得られたPGA繊維を平織りして、目付50g/m、厚み220μmのPGAから形成した織布(以下、「PGA織布」ということがある。)を調製した。織布を形成するPGA繊維の繊維径は11.5μmであった。
(PGA織布の分解性試験)
調製されたPGA織布を10cm×10cmの大きさに切り出してPGA繊維製品試料を得た(試料の質量500mg)。このPGA織布の試料について、実施例1と同様にして、アルカリ性水溶液による分解性試験を行った。結果を表1に示す。
(PGA織布の生分解性試験)
調製されたPGA織布から前記の所定の大きさに切り出して調製したPGA織布の試料を、40℃に温度を保った土壌中に埋設し、1か月後に掘り出して、織布の状態を目視で観察したところ、該織布は、一部ばらばらの状態で元の形状を保持しておらず、さらに、織布端をピンセットでつかんで取り出そうとしたところ、崩れてしまって取り出すことができなかった。
[実施例4]
(PGLLA不織布の製造)
実施例1において使用したペレット状のPGAに代えて、PGLLA(GA:LLA=9:1、株式会社クレハ製、Mw:20万、Mw/Mn:2.2、溶融粘度(温度220℃、せん断速度122sec−1で測定):600Pa・s、融点:200℃、ガラス転移温度:40℃、末端カルボキシル基濃度:2.5eq/10g)を使用したことを除いて、実施例1と同様にして、PGLLAから形成したメルトブロー不織布(以下、「PGLLA不織布」ということがある。)を作製し、目付50g/m、厚み105μmのPGLLA不織布を調製した。不織布を形成するPGLLA繊維の繊維径は3.7μmであった。
(PGLLA不織布の分解性試験)
調製されたPGLLA不織布を10cm×10cmの大きさに切り出して、PGLLA繊維製品試料を得た(試料の質量500mg)。このPGLLA不織布の試料について、実施例1と同様にして、アルカリ性水溶液による分解性試験を行った。結果を表1に示す。
(PGLLA不織布の生分解性試験)
調製されたPGLLA不織布から前記の所定の大きさに切り出して調製したPGLLA不織布の試料を、40℃に温度を保った土壌中に埋設し、1か月後に掘り出して、不織布の状態を目視で観察したところ、該不織布は、一部ばらばらの状態で元の形状を保持しておらず、さらに、不織布端をピンセットでつかんで取り出そうとしたところ、崩れてしまって取り出すことができなかった。
[実施例5]
(PGA/PLA不織布の製造)
実施例1において使用したペレット状のPGAと、ペレット状のPLA(NatureWorks社製、Mw:25万、Mw/Mn:2.1、融点:175℃、ガラス転移温度:57℃)とをPGA/PLA =70/30(質量比)でブレンドした後、押出機で溶融し、紡糸口金を持つダイから吐出して得た繊維(以下、「PGA/PLA繊維」ということがある。)を、ベルトコンベア上で集積することによって、PGA/PLA繊維からなるメルトブロー不織布(以下、「PGA/PLA不織布」ということがある。)を作製し、目付50g/m、厚み110μmのPGA/PLA不織布を調製した。不織布を形成するPGA/PLA繊維の繊維径は4.1μmであった。
(PGA/PLA不織布の分解性試験)
調製されたPGA/PLA不織布を10cm×10cmの大きさに切り出して、PGA/PLA繊維製品試料を得た(試料の質量500mg)。このPGA/PLA不織布の試料について、実施例1と同様にして、アルカリ性水溶液による分解性試験を行った。結果を表1に示す。
(PGA/PLA不織布の生分解性試験)
前記により調製したPGA/PLA不織布から前記の所定の大きさに切り出して調製した不織布の試料を、40℃に温度を保った土壌中に埋設し、1か月後に掘り出して、不織布の状態を目視で観察した。不織布端をピンセットでつかんで取り出すことは可能であったが、一部にしわ、ゆがみなどが生じており、生分解が進んでいることが示唆された。
[比較例1]
(PE不織布の分解性試験及び生分解性試験)
実施例1において製造したPGA不織布に代えて、ポリエチレン製の不織布から形成された市販の防護服〔DuPont社製、タイベック(登録商標)〕から切り出した不織布(以下、「PE不織布」ということがある。)の試料を使用したこと、PE不織布の試料の取り出し間隔を200秒間としたこと、及び、測定を9,000秒間経過まで実施したことを除いて、実施例1と同様にして、PE不織布について、アルカリ性水溶液(5wt%NaOH)による分解性試験を行った。PE不織布は、アルカリ性水溶液に浸漬する前の形態を維持していた。結果を表1に示す。また、40℃に温度を保った土壌中に埋設する試験を行ったところ、生分解性はみられなかった。
[比較例2]
(PP不織布の分解性試験及び生分解性試験)
比較例1において使用したPE不織布に代えて、ポリプロピレン製の不織布(小津産業株式会社製、目付20g/m、厚み130μm、繊維径5.7μm。以下、「PP不織布」ということがある。)を使用したことを除いて、比較例1と同様にして、PP不織布について、アルカリ性水溶液による分解性試験を行った。PP不織布は、アルカリ性水溶液に浸漬する前の形態を維持していた。結果を表1に示す。また、40℃に温度を保った土壌中に埋設する試験を行ったところ、生分解性はみられなかった。
[比較例3]
(PLA不織布の分解性試験及び生分解性試験)
比較例1において使用したPE不織布に代えて、実施例5で使用したペレット状のPLAから形成したPLA製の不織布(目付50g/m、厚み120μm、繊維径4.2μm。以下、「PLA不織布」ということがある。)を使用したことを除いて、比較例1と同様にして、PLA不織布について、アルカリ性水溶液(5wt%NaOH)による分解性試験を行った。結果を表1に示す。また、40℃に温度を保った土壌中に埋設する試験を行ったところ、不織布端をピンセットでつかんで取り出すことが可能であり、この試験期間では、生分解の明確な進行はみられなかった。
[比較例4]
(PLA不織布の分解性試験)
5wt%NaOHに代えて、温度80℃に調整した、1wt%NaOH50cmに浸漬して、形態破壊時間を測定したことを除いて、比較例3と同様にして、PLA不織布について、アルカリ性水溶液による分解性試験を行った。結果を表1に示す。
[比較例5]
(PLA/PGA不織布の分解性試験及び生分解性試験)
実施例5において製造した、PGA/PLA =70/30(質量比)からなるPGA/PLA不織布に代えて、PLA/PGA=80/20(質量比)からなるメルトブロー不織布(以下、「PLA/PGA不織布」ということがある。)を使用したことを除いて、比較例3と同様にして、PLA/PGA不織布について、アルカリ性水溶液(5wt%NaOH)による分解性試験を行った。結果を表1に示す。なお、40℃に温度を保った土壌中に埋設する試験を行ったところ、不織布端をピンセットでつかんで取り出すことが可能であり、生分解の明確な進行はみられなかった。
Figure 2013124429
表1の結果から、目付50g/m、繊維径3.7〜11.5μmであるPGAの不織布または織布、あるいはPGLLA不織布またはPGA/PLA不織布である実施例1〜5のPGA繊維製品は、温度80℃において、PGA濃度が70質量%以下の条件下で、濃度1質量%または濃度5質量%(濃度0.1質量%以上であることは明らかである。)の水酸化ナトリウム水溶液であるアルカリ性水溶液中における形態破壊時間が500秒以下であることから、極めて短時間でPGA繊維製品のアルカリ水溶液による加水分解を行うことができることが分かった。特に、水酸化ナトリウム濃度が5質量%または1質量%である実施例1と実施例2の結果から、アルカリ水溶液の濃度を調整することにより、PGA繊維製品の加水分解時間(加水分解速度)を制御することができることが分かった。
これに対して、比較例1のPE不織布及び比較例2のPP不織布は、温度80℃のアルカリ水溶液に9,000秒間浸漬しても、不織布の形態が維持されることから、アルカリ水溶液による加水分解を生じないことが分かった。また、一般に、生分解性脂肪族ポリエステルとして知られるPLA不織布は、濃度5質量%または濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液であるアルカリ性水溶液中による加水分解を生じるものの、形態破壊時間が2,000秒または6,300秒であり、短時間では加水分解処理が期待できないことが分かった。同様に、比較例5のPLA/PGA不織布の形態破壊時間は6,000秒であり、短時間では加水分解処理が期待できないことが分かった。
2.酸性水溶液またはpH6〜8の水溶液による分解性試験
[実施例6]
実施例1において調製したPGA不織布を10cm×10cmの大きさに切り出して得たPGA不織布試料を、温度80℃に調整した、濃度1質量%の塩酸水溶液50cmに浸漬し(PGA濃度は、約1質量%)、形態破壊時間を測定して、酸性水溶液による分解性試験を行った。試料の取り出し間隔は6時間とした。結果を表2に示す。
[比較例6]
実施例1において製造したPGA不織布に代えて、比較例3で使用したPLA不織布を使用したこと、及び、試料の取り出し間隔を24時間(1日間)としたことを除いて、実施例6と同様にして、PLA不織布について、酸性水溶液による分解性試験を行った。結果を表2に示す。
[実施例7]
実施例1において調製したPGA不織布を10cm×10cmの大きさに切り出して得たPGA不織布試料を、温度90℃の、pH6.3に調整した脱イオン水50cmに浸漬し(PGA濃度は、約1質量%)、形態破壊時間を測定して、pH6〜8の水溶液による分解性試験を行った。試料の取り出し間隔は6時間とした。結果を表2に示す。
[比較例7]
実施例1において製造したPGA不織布に代えて、比較例3で使用したPLA不織布を使用したこと、及び、試料の取り出し間隔を48時間(2日間)としたことを除いて、実施例7と同様にして、PLA不織布について、pH6〜8の水溶液による分解性試験を行った。結果を表2に示す。
Figure 2013124429
表2の結果から、目付50g/m、繊維径4.4μmであるPGA不織布である実施例6または実施例7のPGA繊維製品は、PGA濃度が70質量%以下で、温度80℃の、濃度1質量%(濃度0.1質量%以上であることは明らかである。)の塩酸水溶液である酸性水溶液中における形態破壊時間が1.5日であり、また、PGA濃度が70質量%以下で、温度90℃の、pH6.3の脱イオン水中における形態破壊時間が2日であることから、短時間でPGA繊維製品の酸性水溶液による加水分解を行うことができることが分かり、また、短時間でPGA繊維製品のpH6〜8の水溶液による加水分解を行うことができることが分かった。
これに対して、一般に、生分解性脂肪族ポリエステルとして知られるPLA不織布は、比較例6の結果から、酸性水溶液中における形態破壊時間が15日であり、また、比較例7の結果から、pH6〜8の水溶液における形態破壊時間が120日であり、いずれも短時間の加水分解処理が期待できないことが分かった。
3.耐溶剤性(耐薬品性)試験
[実施例8]
実施例1において調製したPGA不織布についての耐溶剤性試験を以下の方法によって行った。すなわち、PGA不織布から10cm×10cmの大きさに切り出して得たPGA繊維製品試料の質量を測定した。該PGA繊維製品試料を、温度67℃に調整した四塩化炭素50cmに1日間(24時間)浸漬した後、または、温度47℃に調整したアセトン50cmに1日間(24時間)浸漬した後、試料を取り出して、脱イオン水で洗浄し、水を拭き取って、質量を測定した。前記の四塩化炭素またはアセトンに浸漬する前の試料の質量と比較して、その差から、温度67℃における四塩化炭素に対する溶解度(質量%)、または、温度47℃におけるアセトンに対する溶解度(質量%)をそれぞれ算出した。結果を表3に示す。なお、耐溶剤性の結果は、以下の基準で評価した。
○: 溶解度(質量%)が1質量%未満
×: 溶解度(質量%)が1質量%以上
[実施例9]
実施例1において調製したPGA不織布に代えて、実施例3で使用したPGA織布を使用したことを除いて、実施例8と同様にして、耐溶剤性(耐薬品性)試験を行った。結果を表3に示す。
[実施例10]
実施例1において調製したPGA不織布に代えて、実施例4で使用したPGLLA不織布を使用したことを除いて、実施例8と同様にして、耐溶剤性(耐薬品性)試験を行った。結果を表3に示す。
[実施例11]
実施例1において調製したPGA不織布に代えて、実施例5で使用したPGA/PLA不織布を使用したことを除いて、実施例8と同様にして、耐溶剤性(耐薬品性)試験を行った。結果を表3に示す。
[比較例8]
実施例1において調製したPGA不織布に代えて、比較例3で使用したPLA不織布を使用したことを除いて、実施例8と同様にして、耐溶剤性(耐薬品性)試験を行った。結果を表3に示す。
[比較例9]
実施例1において調製したPGA不織布に代えて、比較例5で使用したPLA/PGA不織布を使用したことを除いて、実施例8と同様にして、耐溶剤性(耐薬品性)試験を行った。結果を表3に示す。
Figure 2013124429
表3の結果から、目付50g/m、繊維径3.7〜11.5μmであるPGA不織布または織布、PGLLA不織布及びPGA/PLA不織布である実施例8〜11のPGA繊維製品は、四塩化炭素に対する溶解度が、温度67℃において1質量%未満であり、かつ、アセトンに対する溶解度が、温度47℃において1質量%未満であることから、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルカン類、及び塩素含有炭化水素類等に対する溶解度が、沸点−10℃の温度において1質量%未満であり、耐溶剤性(耐薬品性)を有することが確認された。
これに対して、比較例8のPLA不織布、及び、比較例9のPLA/PGA不織布は、四塩化炭素に対する溶解度が、温度67℃において1質量%以上であり、かつ、アセトンに対する溶解度が、温度47℃において1質量%以上であることから、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルカン類、及び塩素含有炭化水素類等に対する溶解度が、沸点−10℃の温度において1質量%未満ではなく、耐溶剤性(耐薬品性)を有しないことが推認された。
本発明は、目付が1〜500g/m、及び繊維径が300nm〜100μmであるPGA繊維製品であって、該PGA繊維製品に含有されるPGAの水溶液中の濃度が70質量%以下であり、(1)温度80℃の、濃度0.1質量%以上の水酸化ナトリウム水溶液に相当するアルカリ性水溶液中における形態破壊時間が1,000秒以下、(2)温度80℃の、濃度0.1質量%以上の塩酸水溶液に相当する酸性水溶液中における形態破壊時間が2日以下、または(3)温度90℃の、pH6〜8の水溶液中における形態破壊時間が4日以下であるとともに、使用時の耐溶剤性(耐薬品性)や機械的特性などの物性が良好であり、使用後においては、分解速度及び最終分解物を制御でき、廃棄物の減容を実現することができ、必要に応じ所望の段階で生分解処理を行うことで、最終的には水と二酸化炭素へと変換して環境負荷が小さい生分解性樹脂繊維製品を提供することができるので、放射性物質や医療汚染物質等を取り扱う過酷な環境などにおいて使用するマスク類、フィルター類、カバー類、緩衝材類、放射線防護服や下着その他の被服類などに適用することができ、産業上の利用可能性が高い。

Claims (5)

  1. 目付が1〜500g/m、及び繊維径が300nm〜100μmであるポリグリコール酸樹脂繊維製品であって、
    該ポリグリコール酸樹脂繊維製品に含有されるポリグリコール酸樹脂の水溶液中の濃度が70質量%以下であり、
    温度80℃の、濃度0.1質量%以上の水酸化ナトリウム水溶液に相当するアルカリ性水溶液中において、
    ポリグリコール酸樹脂繊維製品が形態を維持できなくなるまでの形態破壊時間が1,000秒以下であることを特徴とする前記のポリグリコール酸樹脂繊維製品。
  2. 目付が1〜500g/m、及び繊維径が300nm〜100μmであるポリグリコール酸樹脂繊維製品であって、
    該ポリグリコール酸樹脂繊維製品に含有されるポリグリコール酸樹脂の水溶液中の濃度が70質量%以下であり、
    温度80℃の、濃度0.1質量%以上の塩酸水溶液に相当する酸性水溶液中において、
    ポリグリコール酸樹脂繊維製品が形態を維持できなくなるまでの形態破壊時間が2日以下であることを特徴とする前記のポリグリコール酸樹脂繊維製品。
  3. 目付が1〜500g/m、及び繊維径が300nm〜100μmであるポリグリコール酸樹脂繊維製品であって、
    該ポリグリコール酸樹脂繊維製品に含有されるポリグリコール酸樹脂の水溶液中の濃度が70質量%以下であり、
    温度90℃の、pH6〜8の水溶液中において、
    ポリグリコール酸樹脂繊維製品が形態を維持できなくなるまでの形態破壊時間が4日以下であることを特徴とする前記のポリグリコール酸樹脂繊維製品。
  4. (a)重量平均分子量(Mw)が10,000〜800,000、(b)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布が1.5〜4.0、(c)溶融粘度(融点+20℃の温度、せん断速度122sec−1で測定)が30〜3,000Pa・s、及び(d)末端カルボキシル基濃度が0.05〜300eq/10gであるポリグリコール酸樹脂から形成された請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリグリコール酸樹脂繊維製品。
  5. アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルカン類、及び塩素含有炭化水素類に対する溶解度が、沸点−10℃の温度において1質量%未満である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリグリコール酸樹脂繊維製品。
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